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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】気密試験装置及び気密試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
G01M3/26 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019170704
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021047119
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】河西 勉
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-048135(JP,U)
【文献】特開2009-216434(JP,A)
【文献】特開2008-145416(JP,A)
【文献】特開2014-114602(JP,A)
【文献】特開昭62-298740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が開口された自立可能な枠体と、前記開口部を開放する開放位置と前記開口部を前記枠体の一面側から密閉する密閉位置との間で変位可能に前記枠体に設けられた扉本体と、を備えて自立可能に構成されることで加振装置に載置可能に構成された模擬扉として構成され、前記開口部における前記扉本体の気密性能を測定する、気密試験装置であって、
前記枠体には、前記開口部を前記枠体の他面側から密閉するとともに気密空間を形成する容器が設けられ、
前記容器には、前記容器に連通される流路と、前記容器内の気圧を測定する圧力計と、が設けられ、
前記流路には、前記容器内に気体を流入させるコンプレッサと、前記容器への前記気体の流入量を計測する流量計と、が設けられ、
前記扉本体が密閉位置に配置された状態で、
前記圧力計で測定する前記容器内の気圧が所定時間一定となるように、前記コンプレッサが前記容器内に前記気体を流入させ、
前記所定時間内に前記流量計で計測した流入量に基づいて、前記扉本体による前記開口部の密閉部分からの気体の漏れ量を測定し、
前記枠体には、前記開口部の近傍に一対のガイドレールが設けられ、
前記一対のガイドレールが前記枠体において上下方向に沿って設けられ、
前記扉本体は、前記一対のガイドレールに沿って、前記開放位置と前記密閉位置との間をスライドして昇降可能に設けられ、
前記扉本体が下降することにより前記開口部を密閉し、
前記開口部の周囲と前記扉本体の周縁部とのうちいずれか一方には、前記扉本体が前記開口部を密閉した際に他方と当接するパッキンが設けられる、気密試験装置。
【請求項2】
記扉本体における前記一対のガイドレールの側には、前記ガイドレールの側に延出された軸心回りに、前記ガイドレールの内部で回転可能とされるガイドローラが設けられ
記扉本体が前記開口部を密閉する際に、前記ガイドレールが前記ガイドローラを案内して前記扉本体を前記枠体の側に変位させることにより、前記他方が前記パッキンを押圧する、請求項1に記載の気密試験装置。
【請求項3】
開口部が開口された自立可能な枠体と、前記開口部を開放する開放位置と前記開口部を前記枠体の一面側から密閉する密閉位置との間で変位可能に前記枠体に設けられた扉本体と、を備えて自立可能に構成されることで加振装置に載置可能に構成された模擬扉を用いて、前記開口部における前記扉本体の気密性能を測定する、気密試験方法であって、
前記枠体には、前記開口部の近傍に一対のガイドレールが設けられ、
前記一対のガイドレールが前記枠体において上下方向に沿って設けられ、
前記扉本体は、前記一対のガイドレールに沿って、前記開放位置と前記密閉位置との間をスライドして昇降可能に設けられ、
前記扉本体が下降することにより前記開口部を密閉し、
前記開口部の周囲と前記扉本体の周縁部とのうちいずれか一方には、前記扉本体が前記開口部を密閉した際に他方と当接するパッキンが設けられ、
前記枠体の他面側に、前記開口部を密閉するとともに気密空間を形成する容器を設け、
前記容器に、前記容器に連通される流路と、前記容器内の気圧を測定する圧力計と、を設け、
前記流路に、前記容器内に気体を流入させるコンプレッサと、前記容器への前記気体の流入量を計測する流量計と、を設け、
前記扉本体を密閉位置に配置した状態で、
前記圧力計で測定する前記容器内の気圧が所定時間一定となるように、前記コンプレッサが前記容器内に前記気体を流入させ、
前記所定時間内に前記流量計で計測した流入量に基づいて、前記扉本体による前記開口部の密閉部分からの気体の漏れ量を測定し、
前記扉本体を開放位置に配置した状態で前記枠体及び前記扉本体を加振装置上に載置して前記加振装置で加振した後に、前記扉本体を密閉位置に変位させ、
前記圧力計で測定する前記容器内の気圧が所定時間一定となるように、前記コンプレッサが前記容器内に前記気体を流入させ、
前記所定時間内に前記流量計で計測した流入量に基づいて、前記扉本体による前記開口部の密閉部分からの気体の漏れ量を測定する、気密試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は模擬扉の気密性能を測定する試験装置及び試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物等に設けられた気密扉の気密性能を試験するための気密試験装置及び方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の気密試験装置は、気密扉の表面との間に空間を形成するパネル状の気密カバー体を備える。そして、気密扉を密閉させた状態で当該空間に所定量の空気を送り込み、その空間に送り込んだ空気量等を測定することにより、気密扉の気密性能を測定する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-216434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献に記載の気密試験装置は、実際に気密扉を建物に備え付けた後で使用されるものであるため、開発段階における気密扉の気密性能を試験的又は予備的に測定することはできなかった。また、地震発生後の気密性能を測定するために、気密試験装置に揺れを加える加振実験を行うことも不可能であった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、気密扉の気密性能を試験的又は予備的に測定することができるとともに、地震発生後の気密性能を測定するために加振実験を行うことが可能となる、気密試験装置及び気密試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する気密試験装置を提供する。
【0007】
(1)
開口部が開口された自立可能な枠体と、前記開口部を開放する開放位置と前記開口部を前記枠体の一面側から密閉する密閉位置との間で変位可能に前記枠体に設けられた扉本体と、を備えて自立可能に構成されることで加振装置に載置可能に構成された模擬扉として構成され、前記開口部における前記扉本体の気密性能を測定する、気密試験装置であって、前記枠体には、前記開口部を前記枠体の他面側から密閉するとともに気密空間を形成する容器が設けられ、前記容器には、前記容器に連通される流路と、前記容器内の気圧を測定する圧力計と、が設けられ、前記流路には、前記容器内に気体を流入させるコンプレッサと、前記容器への前記気体の流入量を計測する流量計と、が設けられ、前記扉本体が密閉位置に配置された状態で、前記圧力計で測定する前記容器内の気圧が所定時間一定となるように、前記コンプレッサが前記容器内に前記気体を流入させ、前記所定時間内に前記流量計で計測した流入量に基づいて、前記扉本体による前記開口部の密閉部分からの気体の漏れ量を測定し、前記枠体には、前記開口部の近傍に一対のガイドレールが設けられ、前記一対のガイドレールが前記枠体において上下方向に沿って設けられ、前記扉本体は、前記一対のガイドレールに沿って、前記開放位置と前記密閉位置との間をスライドして昇降可能に設けられ、前記扉本体が下降することにより前記開口部を密閉し、前記開口部の周囲と前記扉本体の周縁部とのうちいずれか一方には、前記扉本体が前記開口部を密閉した際に他方と当接するパッキンが設けられる、気密試験装置。
【0008】
(2)
記扉本体における前記一対のガイドレールの側には、前記ガイドレールの側に延出された軸心回りに、前記ガイドレールの内部で回転可能とされるガイドローラが設けられ、前記扉本体が前記開口部を密閉する際に、前記ガイドレールが前記ガイドローラを案内して前記扉本体を前記枠体の側に変位させることにより、前記他方が前記パッキンを押圧する、(1)に記載の気密試験装置。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する気密試験方法を提供する。
【0010】
(3)
開口部が開口された自立可能な枠体と、前記開口部を開放する開放位置と前記開口部を前記枠体の一面側から密閉する密閉位置との間で変位可能に前記枠体に設けられた扉本体と、を備えて自立可能に構成されることで加振装置に載置可能に構成された模擬扉を用いて、前記開口部における前記扉本体の気密性能を測定する、気密試験方法であって、前記枠体には、前記開口部の近傍に一対のガイドレールが設けられ、前記一対のガイドレールが前記枠体において上下方向に沿って設けられ、前記扉本体は、前記一対のガイドレールに沿って、前記開放位置と前記密閉位置との間をスライドして昇降可能に設けられ、前記扉本体が下降することにより前記開口部を密閉し、前記開口部の周囲と前記扉本体の周縁部とのうちいずれか一方には、前記扉本体が前記開口部を密閉した際に他方と当接するパッキンが設けられ、前記枠体の他面側に、前記開口部を密閉するとともに気密空間を形成する容器を設け、前記容器に、前記容器に連通される流路と、前記容器内の気圧を測定する圧力計と、を設け、前記流路に、前記容器内に気体を流入させるコンプレッサと、前記容器への前記気体の流入量を計測する流量計と、を設け、前記扉本体を密閉位置に配置した状態で、前記圧力計で測定する前記容器内の気圧が所定時間一定となるように、前記コンプレッサが前記容器内に前記気体を流入させ、前記所定時間内に前記流量計で計測した流入量に基づいて、前記扉本体による前記開口部の密閉部分からの気体の漏れ量を測定し、前記扉本体を開放位置に配置した状態で前記枠体及び前記扉本体を加振装置上に載置して前記加振装置で加振した後に、前記扉本体を密閉位置に変位させ、前記圧力計で測定する前記容器内の気圧が所定時間一定となるように、前記コンプレッサが前記容器内に前記気体を流入させ、前記所定時間内に前記流量計で計測した流入量に基づいて、前記扉本体による前記開口部の密閉部分からの気体の漏れ量を測定する、気密試験方法。
【発明の効果】
【0011】
以上における本発明に係る気密試験装置によれば、気密扉を建物等に備え付ける前に気密試験を行うことができるため、気密扉の気密性能を試験的又は予備的に測定することができ、また、地震発生後の気密性能を測定するために加振実験を行うことが可能となる。また、簡易な構成で、扉本体により枠体の開口部を密閉することが可能となる。また、扉本体の自重を利用して扉本体を下降させることにより、より簡易な構成で枠体の開口部を密閉することが可能となる。
【0012】
また、以上における本発明に係る気密試験方法によれば、気密扉を建物等に備え付ける前に気密試験を行うことができるため、気密扉の気密性能を試験的又は予備的に測定することが可能となる。また、地震発生後の気密性能を模擬的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】昇降扉を開放した状態の気密試験装置を示す正面図。
図2】昇降扉を閉塞した状態の気密試験装置を示す正面図。
図3図2におけるA-A線断面図。
図4図2におけるB-B線断面図。
図5図2におけるC-C線断面図。
図6図2におけるD-D線断面図。
図7】容器の組付構成を示す平面断面図。
図8】ガイドローラ周辺の構成を示す平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では図1から図8を用いて、本発明の一実施形態に係る気密試験装置1について説明する。図1から図4に示す如く、気密試験装置1は、枠体2と扉本体20とを備えた気密性を有する模擬扉として構成される。以下では、図1及び図2における右方向を気密試験装置1の右側方として、また、図3及び図4における左側方を気密試験装置1の前方として説明する。
【0015】
図1から図4に示す如く、枠体2は自立可能に構成されており、具体的には主に複数のH形鋼が、ボルト・ナット等の連結部材により、又は、溶接により連結されて枠体2を構成している。より詳細には、枠体2は、基フレーム3a、縦フレーム3b、横フレーム3c、開口縦フレーム3d、開口横フレーム3e、連結フレーム3f、第一補強フレーム3g、及び、第二補強フレーム3hと、筋交4と、を組み合わせて構成される。なお、H型鋼を組み合わせる以外の他の構成により枠体2を構成しても差し支えない。
【0016】
図1及び図2に示す如く、枠体2の最下部には、床面に設置される五本の基フレーム3aが長手方向を前後に向けて配置される。左右両端の基フレーム3aの前側にはそれぞれ、前後に二本並んだ縦フレーム3bが立設される。また、左右両端から二本目の基フレーム3aの前側にはそれぞれ、前後に二本並んだ開口縦フレーム3dが立設される(図3を参照)。図2に示す如く、縦フレーム3b及び開口縦フレーム3dが複数の筋交4で互いに連結されることにより、枠体2の剛性が高められている。
【0017】
前側、及び、後側の縦フレーム3b及び開口縦フレーム3dの上端面は長手方向を左右に向けた横フレーム3cで連結される。また、前後に並んだ二本の縦フレーム3b及び開口縦フレーム3dの上端部及び上下方向中途部は、連結フレーム3fで連結される。
【0018】
開口縦フレーム3d・3dの下端部、及び、上下方向中途部は、開口横フレーム3eにより互いに連結される。また、中央の基フレーム3aの上面と下側の開口横フレーム3eの中央下面、下側の開口横フレーム3eの中央上面と上側の開口横フレーム3eの中央下面、及び、上側の開口横フレーム3eの中央上面と横フレーム3cの中央下面は、それぞれ中央フレーム3mにより連結される。
【0019】
図3及び図4に示す如く、基フレーム3aの後端部は、横フレーム3cと第一補強フレーム3gにより連結されている。また、第一補強フレーム3gの中央部は、その前側に位置する縦フレーム3b、開口縦フレーム3d、又は、開口横フレーム3eと第二補強フレーム3hにより連結されている。
【0020】
図1に示す如く、枠体2の前側には、二本の開口縦フレーム3d・3dと、二本の開口横フレーム3e・3eにより矩形の開口部2aが形成される。枠体2において、開口縦フレーム3d・3dと開口横フレーム3e・3eとの前面には、開口部2aの周囲に弾性樹脂製のパッキン2pが設けられている。パッキン2pは、図7及び図8に示す如く、扉本体20が開口部2aを閉塞した際に、扉本体20の後面における周縁部と当接する。なお、パッキン2pを扉本体20の後面の周縁部に設けることにより、扉本体20が開口部2aを閉塞した際に、パッキン2pと枠体2における開口部2aの周囲とが当接する構成とすることも可能である。
【0021】
枠体2には、扉本体20が設けられる。扉本体20は、開口部2aを開放する開放位置(図1を参照)と開口部2aを枠体2の前面側から密閉する密閉位置(図2を参照)との間で変位可能に構成される。気密試験装置1は、扉本体20が開口部2aを密閉した状態で、開口部2aにおける扉本体20の気密性能を測定する。本実施形態に係る気密試験装置1における枠体2の前面は、開口部2aの前方以外の部分がカバー部材5により被覆されている。
【0022】
図1及び図2に示す如く、気密試験装置1においては上方の開放位置に位置する扉本体20が下降することにより密閉位置に変位し、開口部2aを密閉する構成としている。なお、気密試験装置1における扉本体20の変位構成は、扉本体20が昇降する昇降扉に限定されることはなく、例えば扉本体20が水平方向にスライドする構成とすることも可能である。
【0023】
扉本体20は複数の枠部材及び板部材を組み合わせて構成された、前後方向に厚みのある部材である。図1及び図2に示す如く、扉本体20は、扉本体20の左右両側に立設された一対のガイドレール11・11の間で、ガイドレール11・11に沿って上下方向にスライド可能に設けられる。ガイドレール11・11は、枠体2における開口部2aの両側方近傍(開口縦フレーム3d・3dの前面)に、上下方向に沿って設けられる。
【0024】
図5図7、及び図8に示す如く、ガイドレール11・11は互いに対向する側の面に溝形状11aが形成される。この溝形状11aの内部には扉本体20から延出されるガイドローラ(開放側ガイドローラ26U及び閉塞側ガイドローラ26D)が挿入される。
【0025】
図5に示す如く、本実施形態においてガイドレール11における溝形状11aの内周面のうち、前側の面(枠体2から遠い側の面)の下側には、ガイドローラ26U・26Dを案内するための二個の突起部13a・13bが設けられている。
【0026】
扉本体20の左右両面からは、ガイドレール11・11の側(左右両側)の外側方に、扉本体20のスライド方向である上下方向に沿って、各二個のガイドローラ26U・26Dが延出して設けられている。詳細には、扉本体20における外側面において、扉本体20のスライド方向のうち扉本体20が開口部2aを開放する際にスライドする側である上側に、開放側ガイドローラ26Uが設けられる。同様に、扉本体20のスライド方向のうち扉本体20が開口部2aを閉塞する際にスライドする側である下側に、閉塞側ガイドローラ26Dが設けられる。
【0027】
ガイドローラ26U・26Dは、ガイドレール11・11の側に延出された開放側回動軸25U及び閉塞側回動軸25Dの軸心回りに、ガイドレール11・11の内部(溝形状11aの内部)で回転可能とされる。これにより、扉本体20がガイドレール11・11に沿ってスライドした際には、ガイドローラ26U・26Dがガイドレール11・11の溝形状11a(より詳細には溝形状11aにおける前後面)に沿って回転する。閉塞側ガイドローラ26Dは開放側ガイドローラ26Uよりも径が小さく形成されている。
【0028】
また、扉本体20の左右両面において、開放側ガイドローラ26Uの上側、及び、閉塞側ガイドローラ26Dの下側には、補助ローラ27が設けられる。そして、扉本体20がガイドレール11・11に沿ってスライドした際には、補助ローラ27がガイドレール11・11の溝形状11a(より詳細には溝形状11aにおける側面)に沿って回転する。
【0029】
扉本体20の内部には、動滑車である右側扉滑車30R、及び、左側扉滑車30Lが回動自在に配設される。そして、右側扉滑車30R及び左側扉滑車30Lには、扉本体20の外部に延出されているロープrが巻回される。
【0030】
枠体2における右側扉滑車30R及び左側扉滑車30Lの上方には、一対の定滑車である第二定滑車P2及び第三定滑車P3が固定される。第二定滑車P2及び第三定滑車P3には、ロープrのうち左右の扉滑車30R・30Lを挟んだ両端部がそれぞれ巻回される。
【0031】
図2に示す如く、ロープrは第二定滑車P2よりも一端側(図2における右側)で第一定滑車P1に巻回され、さらに一端部が枠体2に設けられた電動ウインチMに連結される。また、ロープrは第三定滑車P3よりも他端側(図2における左側)で第四定滑車P4に巻回され、さらに他端部が枠体2に設けられた手動ウインチHに連結される。手動ウインチHは通常時(電動ウインチMを主な駆動源として使用する時)には回動しないようにロックされている。
【0032】
上記の如く構成された気密試験装置1において、電動ウインチMが扉本体20を昇降駆動する。具体的には、電動ウインチMがロープrを巻き上げると、扉本体20は上方に引き上げられる。逆に、電動ウインチMがロープrを繰出すと、扉本体20は自重により下方に降下する。このように、本実施形態に係る気密試験装置1においては、電動ウインチMを駆動させて扉本体20を昇降させることにより、扉本体20がガイドレール11・11の間に形成された開口部2aを開閉可能としている。
【0033】
また、気密試験装置1においては、第二の駆動部である手動ウインチHによっても扉本体20を昇降駆動することを可能としている。具体的には、使用者が手動ウインチHのロックを解除し、手動ウインチHのハンドルを回動する。これによりロープrは巻き上げられ、扉本体20は上方に引き上げられる。逆に、使用者が手動ウインチHのハンドルを逆向きに回動させることにより、ロープrを繰出すと、扉本体20は自重により下方に降下する。このように、本実施形態に係る気密試験装置1においては、使用者が手動ウインチHを回動させて扉本体20を昇降させることによっても、扉本体20がガイドレール11・11の間に形成された開口部2aを開閉可能としている。
【0034】
本実施形態に係る気密試験装置1によれば上記の如く、電動ウインチM、及び/又は、手動ウインチHを駆動させることにより、扉本体20を昇降可能としている。このため、停電等の理由により電動ウインチMによる扉本体20の昇降が不能となった場合でも、手動ウインチHで扉本体20を昇降させることにより、気密試験装置1を開閉することが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る気密試験装置1においては、扉本体20が開口部2aを閉塞する際に、ガイドレール11・11がガイドローラ26U・26Dを案内して扉本体20を枠体2の側である後方に変位させるように構成される。具体的には、図5に示す如く、ガイドレール11における溝形状11aの内周面のうち前側(枠体2から遠い側の面)には、扉本体20が開口部2aを閉塞した際に、開放側ガイドローラ26Uが位置する部分に開放側突起部13aが設けられる。また、同じく溝形状11aの内周面のうち前側には、扉本体20が開口部2aを閉塞した際に、閉塞側ガイドローラ26Dが位置する部分に閉塞側突起部13bが設けられる。
【0036】
上記の構成において、扉本体20が下降すると、閉塞側ガイドローラ26Dは閉塞側突起部13bに当接し、これにより閉塞側ガイドローラ26Dが後方に案内される。同時に、開放側ガイドローラ26Uは開放側突起部13aに当接し、これにより開放側ガイドローラ26Uが後方に案内される。即ち、ガイドローラ26U・26Dが同時に後方に案内されることにより、扉本体20は下降しながら枠体2の側に変位する。これにより、扉本体20がパッキン2pに当接し、扉本体20の周縁部がパッキン2pを押圧するのである。
【0037】
上記の如く、本実施形態に係る気密試験装置1においては、扉本体20が開口部2aを閉塞する際に、ガイドレール11・11における突起部13a・13bがガイドローラ26U・26Dを案内して扉本体20を枠体2の側に変位させる。これにより、図8に示す如く、扉本体20の周縁部がパッキン2pを押圧するように構成されている。このように、本実施形態においては扉本体20と開口部2aの周囲とをパッキン2pを介して密着させることができるため、簡易な構成で閉状態の気密試験装置1における気密性又は水密性を確保することが可能となる。
【0038】
なお、パッキン2pを扉本体20における後面の周縁部に設けて、扉本体20が開口部2aを閉塞した際に枠体2における開口部2aの周囲とパッキン2pとが当接する構成としても良い。この場合は、扉本体20が開口部2aを閉塞する際に、扉本体20が枠体2の側に変位することにより、開口部2aの周囲がパッキン2pを押圧する。
【0039】
また、本実施形態に係る気密試験装置1においては、ガイドレール11・11の前側の内周面に設けた突起部13a・13bにより、それぞれ開放側ガイドローラ26Uと閉塞側ガイドローラ26Dとを案内する構成としている。これにより、簡易な構成で扉本体20を枠体2の側に変位させて、扉本体20と開口部2aの周囲とをパッキンを介して密着させることができるため、閉状態の気密試験装置1における気密性又は水密性を確保することが可能となる。
【0040】
なお、扉本体20を枠体2の側に変位させる構成は、上記の如く突起部13a・13bによる構成に限定されるものではない。例えば、扉本体20の側面に屈曲したガイド溝を設け、ガイドレール11・11から扉本体20に向けてガイド棒を延出し、このガイド棒をガイド溝に挿入する。そして、扉本体20を昇降させることにより、ガイド溝の形状に沿って扉本体20を変位させることも可能である。
【0041】
また、本実施形態に係る気密試験装置1は、一対のガイドレール11・11が枠体2において上下方向に沿って設けられ、扉本体20が下降することにより開口部2aを閉塞する構成としている。これにより、扉本体20が開口部2aを閉塞する際に、扉本体20の自重を利用して扉本体20を下降させるとともに枠体2の側に変位させて、扉本体20と開口部2aの周囲とをパッキン2pを介して密着させることができる。即ち、本実施形態に係る気密試験装置1によれば、扉本体を水平にスライドさせる構成と比較して、より簡易な構成で閉状態における気密性又は水密性を確保することが可能となる。
【0042】
本実施形態に係る気密試験装置1において、枠体2には、開口部2aを枠体2の後面側から密閉するとともに気密空間Sを形成する容器Chが設けられる。具体的には図3及び図4に示す如く、二本の上側の開口横フレーム3e・3eの間が上面蓋6Uで密閉され、また、二本の下側の開口横フレーム3e・3eの間が下面蓋6Dで密閉される。さらに、図6及び図7に示す如く、二本の右側の開口縦フレーム3d・3dの間が右側面蓋7Rで密閉され、また、二本の左側の開口縦フレーム3d・3dの間が左側面蓋7Lで密閉される。
【0043】
そして、図4図6、及び図7に示す如く、後側の開口横フレーム3e・3e、右後部の開口縦フレーム3d、及び、中央フレーム3mで形成された右後方の開口部が右背面蓋8Rで密閉され、また、後側の開口横フレーム3e・3e、左後部の開口縦フレーム3d、及び、中央フレーム3mで形成された左後方の開口部が左背面蓋8Lで密閉される。
【0044】
上記の如く、気密試験装置1においては、開口横フレーム3e・3e、開口縦フレーム3d・3d、及び、中央フレーム3mの間を、上面蓋6U、下面蓋6D、右側面蓋7R、左側面蓋7L、右背面蓋8R、及び、左背面蓋8Lで密閉することにより、開口部2aを後面側から密閉する容器Chが形成される。即ち、扉本体20と容器Chとで囲まれた内部の空間が気密空間S(図4及び図6に示す網掛け部分)として形成される。なお、本構成とは別に、枠体2から独立した容器を枠体2に組付ける構成とすることも可能である。また、気密空間Sを構成する容器Chを、扉本体20の前面側、又は、前後面の両側に設けることも可能である。
【0045】
本実施形態において、各蓋部材で各フレームの間を密閉する際には、連続溶接、または断続溶接+コーキング(シール)が採用される。なお、各蓋部材と各フレームとの間にパッキン(高い気密性能が求められる場合は二重パッキン)を介挿して、各蓋部材と各フレームとをボルト等の固定部材で締め付ける構成とすることも可能である。特に、右背面蓋8R及び左背面蓋8Lをフレームに組付ける際には、パッキンを介挿してより気密性を高める構成とすることが望ましい。
【0046】
本実施形態に係る気密試験装置1において、容器Chには、容器Chに連通される流路と、容器Ch内の気圧を測定する圧力計Pと、が設けられる。具体的には図1に示す如く、右背面蓋8Rには圧力測定孔Hpが開口され、左背面蓋8Lには給気孔Haが開口される。そして、図3図4、及び、図6に示す如く、圧力測定孔Hpには圧力計Pが接続される。また、給気孔Haには流路を介して、容器Ch内に空気等の気体を流入させるコンプレッサCと、容器Chへの気体の流入量を調節するバルブBと、容器Chへの気体の流入量を計測する流量計Fと、が設けられる。なお、本実施形態においては、流路における接続機器や、熱による影響を計算するための温度計等は図示を省略している。
【0047】
気密試験装置1においては、図2から図6に示す如く扉本体20を密閉位置に配置して気密空間Sを形成した状態で、圧力計Pで測定する容器Ch内の気圧が所定時間一定となるようにバルブBを調節しながら、コンプレッサCから容器Ch内に気体を流入させる。そして、所定時間内に流量計Fで計測した流入量に基づいて、扉本体20による開口部2aの密閉部分からの気体の漏れ量を測定する。さらに、測定した気体の漏れ量が気密扉における許容漏洩度以下となっているか否かを判定するのである。
【0048】
本実施形態に係る気密試験装置1によれば、気密扉の扉本体20を建物等に備え付ける前に、自立可能な枠体2を用いて気密試験を行うことができる。このため、実際に建物等が建設される前段階であっても、気密扉の気密性能を試験的又は予備的に測定することが可能となる。
【0049】
また、気密試験装置1を用いて、地震発生後の気密性能を測定するために加振実験を行うことができる。具体的には、気密試験装置1を加振装置に載置し、扉本体20を枠体2における開放位置に配置した状態で枠体2及び扉本体20を加振装置で加振する。その後、扉本体20を密閉位置に変位させて気密空間Sを形成し、圧力計Pで測定する容器Ch内の気圧が所定時間一定となるように、コンプレッサCが容器Ch内に気体を流入させる。そして、所定時間内に流量計Fで計測した流入量に基づいて、扉本体20による開口部2aの密閉部分からの気体の漏れ量を測定する。これにより、加振装置によって加えられた振動が気密扉に与える影響を測定することが可能となる。
【0050】
上記の如く、本実施形態に係る気密試験装置1を用いた場合、自立可能な枠体2を加振装置に載置可能であるため、地震発生後における気密試験装置1(気密扉)の気密性能を模擬的に測定することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0051】
1 気密試験装置 2 枠体
2a 開口部 2p パッキン
3a 基フレーム 3b 縦フレーム
3c 横フレーム 3d 開口縦フレーム
3e 開口横フレーム 3f 連結フレーム
3g 第一補強フレーム
3h 第二補強フレーム
3m 中央フレーム 4 筋交
5 カバー部材 6U 上面蓋
6D 下面蓋 7R 右側面蓋
7L 左側面蓋 8R 右背面蓋
8L 左背面蓋 11 ガイドレール
11a 溝形状 13a 開放側突起部
13b 閉塞側突起部 20 扉本体
25U 開放側回動軸 25D 閉塞側回動軸
26U 開放側ガイドローラ
26D 閉塞側ガイドローラ
27 補助ローラ 30L 左側扉滑車
30R 右側扉滑車 Ch 容器
S 気密空間 M 電動ウインチ
H 手動ウインチ Ha 給気孔
Hp 圧力測定孔 P1 第一固定プーリ
P2 第二固定プーリ P3 第三固定プーリ
P4 第四固定プーリ C コンプレッサ
B バルブ F 流量計
P 圧力計 r ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8