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特許7389366フルオロポリマー水性分散液の製造方法、排水の処理方法、及び、フルオロポリマー水性分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】フルオロポリマー水性分散液の製造方法、排水の処理方法、及び、フルオロポリマー水性分散液
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/16 20060101AFI20231122BHJP
   C08F 14/18 20060101ALI20231122BHJP
   C08F 6/12 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C08F6/16
C08F14/18
C08F6/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021516334
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020018042
(87)【国際公開番号】W WO2020218620
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2019085978
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 聡
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】石原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 陽平
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510737(JP,A)
【文献】特表2020-533435(JP,A)
【文献】特開平11-181009(JP,A)
【文献】国際公開第98/036017(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/034179(WO,A1)
【文献】特開2007-332321(JP,A)
【文献】特開2007-031713(JP,A)
【文献】特開昭55-120630(JP,A)
【文献】特開2013-245237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aを含み、前記重合体(I)の数平均分子量が、0.3×10以上であり、前記工程Aは、少なくとも前記精密濾過を実施するものであり、前記精密濾過は、平均細孔径が0.10μm以上の精密濾過膜を用いて行うことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記工程Aは、3℃以上の温度で実施する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記精密濾過は、平均細孔径が0.15μm以上の精密濾過膜を用いて行う請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記精密濾過は、0.01MPa以上の圧力で行う請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程Aの前に、前記処理前水性分散液に炭化水素系界面活性剤を添加する工程Bを含む請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程Bで添加される前記炭化水素系界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程Bで添加される前記炭化水素系界面活性剤は、下記一般式(i):
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物、及び、下記一般式(ii):
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状の1級若しくは2級のアルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である請求項5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上である水溶性重合体の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記水溶性重合体を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程A’を含み、前記水溶性重合体が、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)であり、前記水溶性重合体の数平均分子量が、0.3×10以上であり、前記工程A’は、少なくとも前記精密濾過を実施するものであり、前記精密濾過は、平均細孔径が0.10μm以上の精密濾過膜を用いて行うことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【請求項11】
炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上であり、かつ、イオン性基を含み、イオン交換率が53以下である重合体の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程A’’を含み、前記重合体が、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)であり、前記重合体の数平均分子量が、0.3×10以上であり、前記工程A’’は、少なくとも前記精密濾過を実施するものであり、前記精密濾過は、平均細孔径が0.10μm以上の精密濾過膜を用いて行うことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【請求項12】
下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下でフルオロモノマー(ただし、下記一般式(I)で表される単量体を除く)を重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aにより回収された排水から、前記重合体(I)を回収する工程を含み、前記重合体(I)の数平均分子量が、0.3×10以上であり、前記工程Aは、少なくとも前記精密濾過を実施するものであり、前記精密濾過は、平均細孔径が0.10μm以上の精密濾過膜を用いて行うことを特徴とする排水の処理方法。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリマー水性分散液の製造方法、排水の処理方法、及び、フルオロポリマー水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーの製造において、特定の含フッ素重合体を使用する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、式1で表される重合単位からなる重合体、または、式1で表される重合単位と式2で表される重合単位からなる共重合体(ただし、全重合単位に対する式1で表される重合単位は40モル%以上)、の存在下でテトラフルオロエチレンを重合することを特徴とする、平均アスペクト比が2以上のポリテトラフルオロエチレンの棒状微粒子を含む水性分散液の製造方法が記載されている。
【化1】

-CFCFX- ・・・式2
ただし、式1においてRは炭素数1~6のペルフルオロペルフルオロアルキレン基、Mはアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンであり、式2においてXはフッ素原子または塩素原子である。
【0004】
なお、特許文献2には、乳化重合で得られた、ペルフルオロオクタン酸のアンモニウム塩を含有する分散系において、フルオロポリマー固体の量を増加させる濃縮のために、限外濾過を用いたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-181009号公報
【文献】特表2006-523758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、着色が低減されたフルオロポリマー水性分散液を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、上記重合体(I)を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aを含むことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法を提供する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【0008】
上記工程Aは、3℃以上の温度で実施することが好ましい。
【0009】
上記工程Aは、少なくとも精密濾過を実施するものであることが好ましく、平均細孔径が0.05μm以上の精密濾過膜を用いて行うことがより好ましく、平均細孔径が0.075μm以上の精密濾過膜を用いて行うことが更に好ましく、平均細孔径が0.10μm以上の精密濾過膜を用いて行うことが更により好ましく、平均細孔径が0.15μm以上の精密濾過膜を用いて行うことが特に好ましい。
【0010】
上記精密濾過は、0.01MPa以上の圧力で行うことが好ましい。
【0011】
上記限外濾過は、0.01MPa以上の圧力で行うことが好ましい。
【0012】
上記工程Aの前に、上記処理前水性分散液に炭化水素系界面活性剤を添加する工程Bを含むことが好ましい。上記工程Bで添加される上記炭化水素系界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であることが好ましく、下記一般式(i):
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物、及び、下記一般式(ii):
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状の1級若しくは2級のアルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤であることがより好ましい。
【0013】
上記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0014】
本開示は更に、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上である水溶性重合体の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記水溶性重合体を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程A’を含むことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法を提供する。
【0015】
本開示はそして、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上であり、かつ、イオン性基を含み、イオン交換率が53以下である重合体の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程A’’を含むことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法を提供する。
本開示はまた、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下でフルオロモノマー(ただし、下記一般式(I)で表される単量体を除く)を重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aにより回収された排水から、前記重合体(I)を回収する工程を含むことを特徴とする排水の処理方法を提供する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
本開示は更に、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)、水、及び、フルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含むフルオロポリマー水性分散液であって、
前記フルオロポリマー水性分散液の明度L*と、前記フルオロポリマー水性分散液を精密濾過して得られる精密濾過後フルオロポリマー水性分散液の明度L*との差ΔL*が16未満であるフルオロポリマー水性分散液を提供する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【発明の効果】
【0016】
本開示の製造方法は、着色が低減されたフルオロポリマー水性分散液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の製造方法を具体的に説明する前に、本明細書で使用するいくつかの用語を定義又は説明する。
【0018】
本明細書において、フッ素樹脂とは、部分結晶性フルオロポリマーであり、フルオロプラスチックスである。フッ素樹脂は、融点を有し、熱可塑性を有するが、溶融加工性であっても、非溶融加工性であってもよい。
【0019】
本明細書において、溶融加工性とは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のフッ素樹脂は、後述する測定方法により測定されるメルトフローレートが0.01~500g/10分であることが通常である。
【0020】
本明細書において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0021】
本明細書において、部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
【0022】
本明細書において、パーフルオロゴム(パーフルオロエラストマー)とは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上であるポリマーである。本明細書において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0023】
本明細書において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0024】
架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0025】
本明細書において、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕は、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%以上であるフルオロポリマーであることが好ましい。
【0026】
本明細書において、フッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びフッ素ゴムは、いずれも、全重合単位に対するテトラフルオロエチレンの含有量が99モル%未満であるフルオロポリマーであることが好ましい。
【0027】
本明細書において、フルオロポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0028】
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、及び、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0029】
また、本明細書において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、及び、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
【0030】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基等が挙げられる。
【0031】
上記芳香族基は、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、例えば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基等が挙げられる。
【0032】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、例えば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基等が挙げられる。
【0033】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、例えばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよく、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0035】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0036】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、例えばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0037】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、例えばメタンスルホニル基等が挙げられる。
【0038】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、例えばベンゼンスルホニル基等が挙げられる。
【0039】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。
【0040】
上記アシルアミノ基は、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0041】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基等であってもよい。
【0042】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基等が挙げられる。
【0043】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0044】
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0045】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基等が挙げられる。
【0046】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
本明細書においては更に、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等が含まれる)。
【0048】
本明細書においては更に、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)。
【0049】
次に、本開示の製造方法を具体的に説明する。
【0050】
本開示の製造方法は、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマーを含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aを含む(以下「本開示の第1の製造方法」ともいう)。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
上記重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマーを含む水性分散液は着色する場合がある。本開示の第1の製造方法は、上記処理前水性分散液に特定の処理、すなわち限外濾過、精密濾過又は透析膜処理の少なくともいずれかを行うことによって、着色を顕著に低減できることを見いだし完成されたものである。
本開示の第1の製造方法で得られたフルオロポリマー水性分散液は、該水性分散液から得られるフルオロポリマー粉末の着色も低減することができる。
また、上記工程Aを行うことによって、得られるフルオロポリマー水性分散液を加熱した時に発生するフッ化水素量を大幅に低減することができる。
本開示の第1の製造方法において、上記処理前水性分散液に、上記工程Aを行うことによって、フルオロポリマーを含むフルオロポリマー水性分散液として、限外濾過膜、精密濾過膜又は透析膜を透過しない液を回収することができる。一方、排水として、限外濾過膜、精密濾過膜又は透析膜を透過する液を回収することができる。
本開示の第1の製造方法において、上記処理前水性分散液に、上記工程Aを行うことによって、上記処理前水性分散液から上記重合体(I)を除去することができる。
さらに、上記処理前水性分散液から上記重合体(I)のダイマーおよびトリマーを除去することができる。ダイマーおよびトリマーとしては、上記一般式(I)で表される単量体(以下、単量体(I)ということがある)のダイマーおよびトリマーが好ましいであってもよい。ダイマーおよびトリマーは、上記一般式(I)で表される単量体(I)として、1種の単量体(I)から形成されていてもよいし、構造の異なる2種以上の単量体(I)から形成されていてもよい。
【0051】
上記限外濾過又は精密濾過は、クロスフロー方式でもデッドエンド方式でもよく限定されないが、膜の目詰まりを低減する観点からクロスフロー方式が好ましい。
【0052】
上記限外濾過は、限外濾過膜を用いて行うことができる。限外濾過は、例えば、限外濾過膜を有する限外濾過装置を用いて行うことができ、遠心式限外濾過法、回分式限外濾過法、循環式限外濾過法等を採用できる。
【0053】
上記限外濾過膜の分画分子量は、通常、0.1×10~30×10Da程度である。上記限外濾過膜は、膜の目詰まりを抑制し、効率的に着色低減及びフッ化水素発生量の低減をできることから、分画分子量が1.0×10Da以上であることが好ましい。上記分画分子量は、1.5×10Da以上がより好ましく、3.0×10Da以上が更に好ましく、5.0×10Da以上が更により好ましく、8.0×10Da以上が殊更に好ましく、10.0×10Da以上が特に好ましく、15.0×10Da以上が最も好ましい。
また、上記分画分子量は、着色低減及びフッ化水素発生量の低減の観点から、30.0×10Da以下が好ましく、25.0×10Da以下がより好ましい。
上記限外濾過膜の分画分子量は、例えば、重量平均分子量が既知のポリスチレンを膜に通水し、90%阻止できる分子量を分画分子量とすることができる。ポリスチレンの定量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0054】
上記限外濾過膜は、有効膜面積が0.01~50mであることが好ましい。有効膜面積は0.012m以上がより好ましく、0.015m以上が更に好ましく、また、45m以下がより好ましく、40m以下が更に好ましい。
【0055】
上記限外濾過膜の形状としては従来公知のものが挙げられ限定されるものではないが、例えば、中空糸型、平膜型、スパイラル型、チューブラー型等が挙げられる。目詰まり抑止の観点からは、中空糸型が好ましい。
中空糸型限外濾過膜の内径は限定されないが、例えば、0.1~2mmであってよい。好ましくは、0.8~1.4mmである。
中空糸型限外濾過膜の長さは限定されないが、例えば、0.05~3mであってよい。好ましくは、0.05~2mである。
【0056】
上記限外濾過膜の材質としては、特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機材料、ステンレス等の金属、又はセラミック等の無機材料が挙げられる。
限外濾過膜の材質は、有機材料であることが好ましく、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリルニトリル、ポリスルホン、又は、ポリエーテルスルホンであることがより好ましく、ポリアクリルニトリル又はポリフッ化ビニリデンが更に好ましい。
【0057】
上記限外濾過膜として具体的には、DESAL社のG-5タイプ、G-10タイプ、G-20タイプ、G-50タイプ、PWタイプ、HWS UFタイプ;KOCH社のHFM-180、HFM-183、HFM-251、HFM-300、HFM-116、HFM-183、HFM-300、HFK-131、HFK-328、MPT-U20、MPS-U20P、MPS-U20S;Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30;旭化成社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズ;日東電工社製のNTR7410などが挙げられる。
【0058】
上記限外濾過は、着色低減及びフッ化水素発生量の低減の観点から、0.01MPa以上の圧力(水圧)で行うことが好ましい。より好ましくは、0.03MPa以上であり、更に好ましくは0.05MPa以上である。また、上記圧力は、耐圧の観点から、0.5MPa以下が好ましく、0.25MPa以下がより好ましく、0.2MPa以下が更に好ましい。
【0059】
上記精密濾過は、精密濾過膜を用いて行うことができる。精密濾過膜は、通常、0.05~1.0μmの平均細孔径を有する。
上記精密濾過膜は、効率的に着色低減できることから、平均細孔径が0.075μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.10μm以上であり、更に好ましくは0.15μm以上である。また、平均細孔径が1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは平均細孔径が0.50μm以下であり、更に好ましくは0.25μm以下である。
上記精密濾過膜の平均細孔径は、ASTM F316-03(バブルポイント法)に準拠して測定することが可能である。
【0060】
上記精密濾過膜は、有効膜面積が0.01~50mであることが好ましい。有効膜面積は0.012m以上がより好ましく、0.015m以上が更に好ましく、また、45m以下がより好ましく、40m以下が更に好ましい。
【0061】
上記精密濾過膜の形状としては従来公知のものが挙げられ限定されず、例えば、中空糸型、平膜型、スパイラル型、チューブラー型等が挙げられる。目詰まり抑止の観点からは、中空糸型が好ましい。
中空糸型精密濾過膜の内径は限定されないが、例えば、0.1~2mmであってよい。好ましくは、0.8~1.4mmである。
中空糸型精密濾過膜の長さは限定されないが、例えば、0.05~3mであってよい。好ましくは、0.05~2mである。
【0062】
上記精密濾過膜の材質としては、例えばセルロース系、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、セラミックス、金属等が挙げられる。中でも、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又は、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリアクリルニトリル又はポリフッ化ビニリデンが特に好ましい。
【0063】
精密濾過膜として具体的には、日本ガイシ社製のCefilt;旭化成社製マイクローザUシリーズ、マイクローザPシリーズ;住友電工社製のポアフロンSPMW、ポアフロンOPMW、ポアフロンPM;東レ社製のトレフィル;マイクロダイン・ナディア社製のNADIR MP005、NADIR MV020;Norit社製のX-flow等が挙げられる。
【0064】
上記精密濾過は、着色低減及びフッ化水素発生量の低減の観点から、0.01MPa以上の圧力(水圧)で行うことが好ましい。より好ましくは、0.03MPa以上であり、更に好ましくは0.05MPa以上である。また、上記圧力は、耐圧の観点から、0.5MPa以下が好ましく、0.25MPa以下がより好ましく、0.2MPa以下が更に好ましい。
【0065】
上記透析膜処理は、透析膜を用いて行う。透析膜は、通常、0.05×10~100×10Daの分画分子量を有する。
上記透析膜は、膜の目詰まりを抑制し、効率的に着色低減及びフッ化水素発生量の低減をできることから、分画分子量が1.0×10Da以上であることが好ましい。上記分画分子量は、1.5×10Da以上がより好ましく、3.0×10Da以上が更に好ましく、5.0×10Da以上が更により好ましく、8.0×10Da以上が殊更に好ましく、10.0×10Da以上が特に好ましく、15.0×10Da以上が最も好ましい。
また、上記分画分子量は、着色低減の観点から、30.0×10Da以下が好ましく、20.0×10Da以下がより好ましい。
上記透析膜の分画分子量は、例えば、限外濾過膜と同じ方法で測定することができる。
【0066】
上記透析膜の材質としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル系ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0067】
透析膜として具体的には、スペクトラムラボラトリーズ社製のSpectra/Por(登録商標)Float-A-Lyzer、Tube-A-Lyzer、Dialysis tubing、6Dialysis tubing、7Dialysis tubing等が例示される。
【0068】
上記工程Aは(上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理は)、3℃以上の温度で行うことが好ましい。より好ましくは、5℃以上であり、更に好ましくは、7℃以上であり、特に好ましくは、10℃以上である。温度を上記範囲にすることでより着色低減及びフッ化水素発生量の低減を図ることができる。上記温度は、80℃以下が好ましく、78℃以下がより好ましく、75℃以下が更に好ましく、70℃以下が特に好ましい。
【0069】
上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理の時間は特に限定されないが、30分以上であることが好ましく、60分以上であることがより好ましい。また、7200分以下が好ましく、4320分以下がより好ましい。
【0070】
上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理における処理量は特に限定されないが、0.001L/分以上であることが好ましく、0.01L/分以上であることがより好ましい。また、100L/分以下が好ましく、50L/分以下がより好ましい。
【0071】
上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理は、それぞれ、1回実施してもよいし、複数回繰り返して行ってもよい。例えば、1回以上であってよく、2回以上であってよく、3回以上であってよい。また、10回以下であってよい。
また、限外濾過、精密濾過及び透析膜処理を組合わせて実施してもよい。例えば、限外濾過と精密濾過を組み合わせてもよいし、限外濾過と透析膜処理を組み合わせてもよいし、精密濾過と透析膜処理を組み合わせてもよいし、限外濾過と精密濾過と透析膜処理を組合わせてもよい。
【0072】
上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理の中でも、限外濾過又は精密濾過が好ましく、精密濾過がより好ましい。
【0073】
上記工程Aは、特に、平均細孔径が0.1μm以上の精密濾過膜を用いて、0.01MPa以上の圧力、3~80℃で実施することが好ましい。
【0074】
本開示のフルオロポリマー水性分散液の製造方法において、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理を行いながら、処理前水性分散液に水を追加する工程、pH調整剤を添加して処理前水性分散液のpHを調整する工程を行ってもよい。
上記工程Aは、処理前水性分散液に水を追加する工程を含んでもよく、上記水は、段階的に追加してもよいし、連続的に添加してもよい。また、処理前水性分散液にpH調整剤を添加する工程を含んでもよい。
【0075】
上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理の終点は、適宜決定すればよく限定されない。例えば、得られるフルオロポリマー水性分散液の色に基づいて終点を決定してもよい。
【0076】
上記処理前水性分散液は、重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマーを含む。上記処理前水性分散液は、重合上がりの水性分散液であってもよいし、重合上がりの水性分散液を希釈又は濃縮したものであってもよいし、分散安定化処理したものであってもよい。
【0077】
上記処理前水性分散液は、着色低減及びフッ化水素発生量の低減の観点から、フルオロポリマーが70質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。また、処理時間の観点から、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましい。
【0078】
上記処理前水性分散液は、着色をより低減する観点及びフッ化水素発生量をより低減する観点から、pHが1~10であることが好ましく、2~9がより好ましい。上記pHはpH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤としては、酸又はアルカリであってよく、例えば、リン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が挙げられる。
【0079】
上記処理前水性分散液は、紫外線照射されたものであってもよい。照射される紫外線は、10~400nmの波長が好ましく、100~280nmの波長がより好ましい。
本開示の第1の製造方法は、工程Aの前に、処理前水性分散液に紫外線を照射する工程を含むことも好ましい。
【0080】
上記処理前水性分散液は、酸素源で処理されたものであってもよい。すなわち、本開示の第1の製造方法は、工程Aの前に、処理前水性分散液に酸素源を添加する工程を含むことも好ましい。着色低減及びフッ化水素発生量の低減の観点から、上記酸素源の添加量は、処理前水性分散液に対して2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、安全性の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
酸素源としては、空気、酸素リッチガス、オゾン含有ガス、過酸化水素、次亜塩素酸、亜硝酸塩等が挙げられる。
【0081】
上記処理前水性分散液は、上記フルオロポリマーと水性媒体を含む。また、重合で用いられた重合体(I)を含んでいてもよいし、重合後に炭化水素系界面活性剤が添加されていてもよい。
【0082】
上記水性媒体は、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0083】
上記処理前水性分散液は、明度L*が95以下であってよい。また、91以下であってよく、86以下であってよい。
上記明度L*は、X-rite測色計により測定する。
【0084】
上記重合体(I)は、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む。重合体(I)は重合単位(I)を2以上含むことが好ましい。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
としては、F、Cl、H又はCFが好ましい。また、Z及びZとしては、F又はCFが好ましい。
アニオン性基には、サルフェート基、カルボキシレート基などのアニオン性基に加えて、-COOHのような酸基、-COONHのような酸塩基などのアニオン性基を与える官能基が含まれる。なかでも、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基、又は、-C(CFOM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)であるアニオン性基であることが好ましい。
重合体(I)は、一般式(I)で表される1種の単量体に基づく重合単位(I)のみを含むものであってもよいし、一般式(I)で表される2種以上の単量体に基づく重合単位(I)を含むものであってもよい。
【0085】
上記Rは、連結基である。本明細書において「連結基」は、(m+1)価連結基であり、mが1の場合は二価連結基である。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
連結基は、鎖状又は分岐鎖状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
mは1以上の整数であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。mが2以上の整数である場合、Z、Z及びAは、同一であっても、異なっていてもよい。
次に、一般式(I)においてmが1である場合の好適な構成について説明する。
【0086】
上記Rは、例えば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、又は、2価の有機基であることが好ましい。
Rが2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
Rはまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化又は過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
Rとしては、例えば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、又は、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0087】
Rは、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素に置換されていてもよい。
Rとして好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-[CFCF(CF)O]-、-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-(CF-、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、c及びdは独立して少なくとも1以上である。a、b、c及びdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、c及びdの上限は、例えば、100である。
【0088】
Rとしては、下記一般式(r1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1である)で表される2価の基が好ましく、下記一般式(r2):
-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1である)で表される2価の基が好ましい。
【0089】
Rとして好適な具体的としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CH-等が挙げられる。中でも、上記Rは、酸素原子を含んでもよい、パーフルオロアルキレン基が好ましく、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、又は、-CF-O-CF(CF)CF-O-が好ましい。
【0090】
上記一般式(I)の-R-CZ-としては、下記式(s1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (s1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s1)において、Z及びZは、F又はCFがより好ましく、一方がFで他方がCFであることがさらに好ましい。
また、上記一般式(I)において、-R-CZ-としては、下記式(s2):
-CF-O-(CX -(O)-CZ- (s2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s2)において、Z及びZは、F又はCFがより好ましく、一方がFで他方がCFであることがさらに好ましい。
【0091】
上記一般式(I)の-R-CZ-としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、又は、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-が好ましく、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、又は、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-がより好ましい。
【0092】
上記重合体(I)は、高度にフッ素化されていることも好ましい。例えば、ホスフェート基部分(例えば、CHOP(O)(OM))及びサルフェート基部分(例えば、CHOS(O)OM)のようなアニオン性基(A)を除き、重合体(I)中のC-H結合の80%以上、90%以上、95%以上、又は100%がC-F結合で置換されていることが好ましい。
【0093】
上記重合体(I)は、アニオン性基(A)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(I)において、X、X、及びXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0094】
重合体(I)は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、重合体(I)は、アニオン性基(A)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0095】
上記アニオン性基(A)は、-SOM、-OSOM、-COOM、-SONR’CHCOOM、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、-CHCHOSOM、-P(O)(OM)、-SONR’CHCHOP(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)、-CHOSOM、-SONR’CHCHOSOM、又は、-C(CFOMであってよい。中でも、-SOM、-OSOM、-COOM、又は-P(O)(OM)が好ましく、-COOM、-SOM、-OSOM又は-C(CFOMがより好ましく、-SOM、-COOM又は-P(O)(OM)がさらに好ましく、-SOM又は-COOMが特に好ましく、-COOMが最も好ましい。
上記Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記Mとしては、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましく、-Na、-K又は-NHが更により好ましく、-Na又は-NHが特に好ましく、-NHが最も好ましい。
上記重合体(I)において、各重合単位(I)で異なるアニオン性基を有してもよいし、同じアニオン性基を有してもよい。
【0096】
上記重合体(I)は、下記式(Ia)で示される単量体に基づく重合単位(Ia)を含む重合体であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-A (Ia)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状又は分岐鎖状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってもよく、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0097】
上記重合体(I)は、下記式(Ib)で示される単量体に基づく重合単位(Ib)を含む重合体であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-A (Ib)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは式Iaで定義される過フッ素化二価連結基である。)
【0098】
一般式(I)において、Aはサルフェート基であることが好ましい形態の一つである。Aは、例えば、-CHOSOM、-CHCHOSOM、又は、-SONR’CHCHOSOMであり、式中、R’はH、又は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
がサルフェート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、例えば、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCFCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0099】
一般式(I)において、Aはスルホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては例えば、-SOMであり、式中、Mは上記と同じである。
がスルホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0100】
一般式(I)において、Aはカルボキシレート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、例えばCOOM又はSONR’CHCOOMであり、式中、R’はH又は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。Aがカルボキシレート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はH又はC1-4アルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0101】
式(I)において、Aはホスフェート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、例えば、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)又は-SONR’CHCHOP(O)(OM)であり、式中、R’は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
がホスフェートである場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0102】
式(I)において、Aはホスホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aがホスホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0103】
上記重合体(I)は、下記一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含む重合体(1)であることが好ましい。
CX=CY(-CZ-O-Rf-A) (1)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOM又は-C(CFOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)である。但し、X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
上記重合体(1)が重合単位(1)を含むものであることによって、安定かつ効率的にポリテトラフルオロエチレン等のフルオロポリマーを含むフルオロポリマー水性分散液を製造することができる。また、高い得量で、高分子量のポリテトラフルオロエチレン等のフルオロポリマーを含むフルオロポリマー水性分散液を得ることができる。なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0104】
上記一般式(1)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0105】
上記一般式(1)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0106】
上記一般式(1)において、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Zとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0107】
上記一般式(1)において、上記X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0108】
上記一般式(1)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、上記含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0109】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、例えば、一般式:
【化2】

(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0110】
上記一般式(1)において、Aは、-COOM、-SOM、-OSOM又は-C(CFOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基)である。
としては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記Mとしては、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましく、-Na、-K又は-NHが更により好ましく、-Na又は-NHが特に好ましく、-NHが最も好ましい。
上記Aとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0111】
一般式(1)で表される単量体としては、例えば、下記式(1a):
CX=CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-A (1a)
(式中、各Xは、同一であり、F又はHを表す。n5は0又は1~10の整数を表し、Aは、上記定義と同じ。)で表されるフルオロアリルエーテル化合物が好適なものとして例示される。
上記式(1a)において、上記n5は、一次粒子径が小さい粒子を得ることができる点で、0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
上記重合体(1)は、一般式(1a)で表されるフルオロアリルエーテル化合物の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0112】
上記重合単位(1)は、下記一般式(1A)で表される単量体に基づく重合単位(1A)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-A) (1A)
(式中、Rf及びAは前記と同じ。)
上記重合体(1)は、一般式(1A)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0113】
式(1A)で表される単量体として具体的には、下記式
【0114】
【化3】
【0115】
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、ただし、Z及びZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない;Aは上記定義と同じ)で表される単量体が挙げられる。より具体的には、
【0116】
【化4】
【0117】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0118】
【化5】
【0119】
であることが好ましい。
【0120】
上記一般式(1A)で表される単量体としては、式(1A)中のAが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、及び、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
【0121】
また、一般式(1)で表される単量体としては、下記式で表される単量体等も挙げられる。
【0122】
CF=CFCF-O-Rf-A
(式中、RfおよびAは上記と同じ)
【0123】
より具体的には、
【化6】

等が挙げられる。
【0124】
上記重合体(I)は、下記一般式(2)で表される単量体に基づく重合単位(2)を含む重合体(2)であることも好ましい。
CX=CY(-O-Rf-A) (2)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
【0125】
重合体(2)は、一般式(2)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
上記一般式(2)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0126】
上記一般式(2)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0127】
上記一般式(2)において、上記X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0128】
上記一般式(2)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
上記Rfの上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0129】
上記一般式(2)で表される単量体は、下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)及び(2e)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-A (2a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは前記と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-A (2b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-A (2c)
(式中、Xは、F又はCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-A (2d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-A (2e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
【0130】
上記式(2a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。
【0131】
上記式(2a)で表される単量体としては、例えば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0132】
上記式(2b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましい。
【0133】
上記式(2c)において、上記n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Aは、-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0134】
上記式(2d)において、上記Xは、水性分散液の安定性の点で、-CFであることが好ましく、上記n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Aは、-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0135】
上記式(2d)で表される単量体としては、例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(2e)において、n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H又はNHであることが好ましい。
一般式(2e)で表される単量体としては、例えば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0136】
上記重合体(I)は、下記一般式(3)で表される単量体に基づく重合単位(3)を含む重合体(3)であることも好ましい。
一般式(3):
CX=CY(-Rf-A) (3)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
重合体(3)は、一般式(3)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0137】
上記一般式(3)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(3)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
【0138】
上記一般式(3)で表される単量体は、下記一般式(3a):
CF=CF-(CFn1-A (3a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体、及び、下記一般式(3b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-A (3b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(3a)および一般式(3b)において、上記Aは、-SOM又はCOOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。上記Rは、H又は有機基を表す。
【0139】
上記式(3a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H又はNHであることが好ましい。
上記式(3a)で表される単量体としては、例えば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0140】
上記式(3b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0141】
次に、一般式(I)においてmが2以上の整数である場合の好適な構成について説明する。
【0142】
単量体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位(4)を含む重合体(4)であることも好ましい。
CF=CF-CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ-A) (4a)
(式中、Z、ZおよびAは上記定義と同じ、QF1およびQF2は、同一又は異なって、単結合、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキレン基又は炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素オキシアルキレン基である)
CF=CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ-A) (4b)
(式中、Z、Z、A、QF1およびQF2は上記定義と同じ)
【0143】
一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体としては、
【化7】

等が挙げられる。
【0144】
上記重合体(I)は、上記重合体(1)、重合体(2)及び重合体(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、重合体(1)がより好ましい。
【0145】
上記重合体(I)は、上記重合単位(I)のみからなる単独重合体であってもよいし、上記重合単位(I)と、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。重合媒体への溶解性の観点からは、重合単位(I)のみからなる単独重合体が好ましい。上記重合単位(I)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、上記重合体(I)は、2種以上の異なる一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含んでいてもよい。
【0146】
上記他の単量体としては、炭素数2又は3の含フッ素エチレン性単量体が好ましく、例えば、CF=CF、CF=CFCl、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
なかでも、共重合性が良好である点で、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CF=CFCl)及びフッ化ビニリデン(CH=CF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレンがより好ましい。従って、上記他の単量体に基づく重合単位は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位であることが好ましい。上記他の単量体に基づく重合単位は、各出現において、同一または異なっていてもよく、上記重合体(I)は、2種以上の異なる他の単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
【0147】
上記他の単量体としては、また、下記式(n1-2):
【0148】
【化8】
【0149】
(式中、X、Xは同じかまたは異なりH又はF;XはH、F、Cl、CHまたはCF;X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体が挙げられる。
【0150】
具体的には、CH=CFCF-O-Rf、CF=CF-O-Rf、CF=CFCF-O-Rf、CF=CF-Rf、CH=CH-Rf、CH=CH-O-Rf(式中、Rfは前記式(n1-2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0151】
上記他の単量体としては、式(n2-1):
【0152】
【化9】
【0153】
(式中、XはH、FまたはCH;Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体も挙げられる。上記Rf基は、
【0154】
【化10】
【0155】
(式中、d3は1~4の整数;e3は1~10の整数)などが挙げられる。
【0156】
上記他の単量体としては、式(n2-2):
CH=CHO-Rf (n2-2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテルも挙げられる。
【0157】
式(n2-2)の単量体として具体的には、
【0158】
【化11】
【0159】
(式中、e6は1~10の整数)などが好ましく挙げられる。
【0160】
より具体的には、
【0161】
【化12】
【0162】
などが挙げられる。
【0163】
その他、式(n2-3):
CH=CHCHO-Rf (n2-3)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル、式(n2-4):
CH=CH-Rf (n2-4)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体等も挙げられる。
【0164】
上記式(n2-3)、(n2-4)で表される単量体として具体的には、
【0165】
【化13】
【0166】
などの単量体が挙げられる。
【0167】
上記重合体(I)は、通常、末端基を有する。末端基は、重合時に生成する末端基であり、代表的な末端基は、水素、ヨウ素、臭素、鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び、鎖状又は分岐鎖状のフルオロアルキル基から独立に選択され、任意追加的に少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含有してもよい。上記アルキル基又はフルオロアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。
これらの末端基は、一般的には、重合体(I)の形成に使用される開始剤又は連鎖移動剤から生成するか、又は連鎖移動反応中に生成する。
【0168】
重合体(I)は、重合単位(I)の含有量が全重合単位に対して1.0モル%以上が好ましく、3.0モル%以上がより好ましく、5.0モル%以上が更に好ましく、10モル%以上が更により好ましく、20モル%以上が殊更好ましく、30モル%以上が特に好ましい。より好ましくは、40モル%以上であり、更に好ましくは、60モル%以上であり、更により好ましくは、80モル%以上であり、特に好ましくは、90モル%以上であり、実質的に100モル%であることが殊更に好ましく、重合単位(I)のみからなることが最も好ましい。
重合体(I)において、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、全重合単位に対して99.0モル%以下が好ましく、97.0モル%以下がより好ましく、95.0モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が更により好ましく、80モル%以下が殊更好ましく、70モル%以下が特に好ましい。より好ましくは、60モル%以下であり、更に好ましくは40モル%以下であり、更により好ましくは20モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下であり、実質的に0モル%が殊更に好ましく、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが特に殊更好ましい。
【0169】
上記重合体(I)の数平均分子量は、0.1×10以上が好ましく、0.2×10以上がより好ましく、0.3×10以上が更に好ましく、0.4×10以上が更により好ましく、0.5×10以上が殊更に好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、3.0×10以上が殊更特に好ましく、3.1×10以上が最も好ましい。また、75.0×10以下が好ましく、50.0×10以下がより好ましく、40.0×10以下が更に好ましく、30.0×10以下が殊更に好ましく、20.0×10以下が特に好ましい。上記数平均分子量及び後述の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出する値である。また、GPCによる測定ができない場合には、NMR、FT-IR等により得られた末端基数から計算された数平均分子量とメルトフローレートとの相関関係により、重合体(I)の数平均分子量を求めることができる。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定できる。
【0170】
上記重合体(I)の重量平均分子量は、0.2×10以上が好ましく、0.4×10以上がより好ましく、0.6×10以上が更に好ましく、0.8×10以上が更により好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、5.0×10以上がより特に好ましく、10.0×10以上が更に特に好ましく、15.0×10以上が殊更に好ましく、20.0×10以上が殊更特に好ましく、25.0×10以上が最も好ましい。また、150.0×10以下が好ましく、100.0×10以下がより好ましく、60.0×10以下が更に好ましく、50.0×10以下が特に好ましく、40.0×10以下が殊更に好ましい。
【0171】
上記重合体(I)は、53以下のイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。上記IXRは、イオン性基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数と定義される。加水分解によりイオン性となる前駆体基(例えば、-SOF)は、IXRを決定する目的ではイオン性基と見なされない。
上記IXRは、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が更により好ましく、5以上が殊更に好ましく、8以上が特に好ましい。また、IXRは43以下がより好ましく、33以下が更に好ましく、23以下が特に好ましい。
重合体(I)のイオン交換容量としては、好ましい順に、0.80meg/g以上、1.50meg/g以上、1.75meg/g以上、2.00meg/g以上、2.50meg/g以上、2.60meg/g以上、3.00meg/g以上、3.50meg/g以上である。イオン交換容量は、重合体(I)のイオン性基(アニオン性基)の含有量であり、重合体(I)の組成から計算により求められる。
上記重合体(I)において、イオン性基は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。上記重合体(I)は、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
重合体(I)は、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。重合体(I)のイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、及び、ホスファートからなる群から選択される。
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましいイオン性基は、スルホナート基である。
重合体(I)は、水溶性を有していることが好ましい。水溶性とは、容易に水性媒体に溶解又は分散する性質を意味する。水溶性を有する重合体(I)は、例えば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定できない。一方、非水溶性を有する重合体(I)は、例えば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定することができる。
【0172】
上記重合体(I)は上記の単量体を用いること以外は従来公知の方法により製造することができる。
【0173】
上記処理前水性分散液は、重合体(I)の含有量が上記水性分散液に対して0.0001~15質量%であることが好ましい。0.0001質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、15質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。
上記重合体(I)の含有量は、例えば固体19F-MAS NMR測定により求めることができる。
上記重合体(I)の含有量の測定方法としては、国際公開第2014/099453号、国際公開第2010/075497、国際公開第2010/075496号、国際公開第2011/008381、国際公開第2009/055521号、国際公開第1987/007619号、特開昭61-293476号公報、国際公開第2010/075494号、国際公開第2010/075359号、国際公開第2012/082454号、国際公開第2006/119224号、国際公開第2013/085864号、国際公開第2012/082707号、国際公開第2012/082703号、国際公開第2012/082454号、国際公開第2012/082451号、国際公開第2006/135825号、国際公開第2004/067588号、国際公開第2009/068528号、特開2004-075978号公報、特開2001-226436号公報、国際公開第1992/017635号、国際公開第2014/069165号、特開平11-181009号公報などに記載のそれぞれの重合体の測定方法が記載されている。
具体的な装置としてはBruker社製 AVANCE III HD400や、Bruker社製 AVANCE300などを用いることができる。
回転数は装置の共鳴周波数に応じて設定し、スピニングサイドバンドが上記フルオロポリマーや上記重合体(I)の含有量計算に使用するピークに重ならないように設定する。
例えば、重合体(I)がTFEとCH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体の共重合体の場合、上記処理前水性分散液中のTFEとCH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体の共重合体の含有量を求める際は、ブルカージャパン(株)製 AVANCE300を用いた場合、回転数を30kHzに設定してもよい。
例えば、重合体(I)がTFEとCH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体の共重合体の場合、上記処理前水性分散液中のTFEとCH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体の共重合体の含有量は、固体19F-MAS NMR測定(回転数30kHz)により得られたスペクトルから、下記式を用いて求めることができる。
Y=(400B/(5xA+3xB))×100
Y:TFEとCH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体の共重合体の含有量(mol%)
A:-120ppmのシグナルの積分値
B:-83ppmのCF及びCFシグナルの積分値の合計
ケミカルシフト値はPTFEの主鎖由来のシグナルのピークトップを-120ppmとした際のものを用いた。
x:TFEとCH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体の共重合体中の、CH=CF(CFOCFCFCOONH)で表される単量体に基づく重合単位の割合(mol%)
【0174】
上記処理前水性分散液は、重合体(I)の存在下に重合することによって得られる。より具体的には、重合体(I)の存在下に水性媒体中でフルオロモノマー(ただし、一般式(I)で表される単量体を除く)を重合することによって得られる。本開示の第1の製造方法は、工程Aの前に、重合体(I)の存在下に水性媒体中でフルオロモノマーを重合してフルオロポリマーを含む水性分散液(処理前水性分散液)を得る工程Cを含んでもよい。
【0175】
上記フルオロモノマーとしては、二重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。上記フルオロモノマーとしては、テトラフルオロエチレン[TFE]、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルエチレン、フルオロアルキルアリルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、一般式(100):CHX101=CX102Rf101(式中、X101およびX102は、一方がHであり、他方がFであり、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、フッ素化ビニルヘテロ環状体、及び、架橋部位を与えるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0176】
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(110):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(120):CF=CF-OCH-Rf121
(式中、Rf121は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(130):CF=CFOCFORf131
(式中、Rf131は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(140):CF=CFO(CFCF(Y141)O)(CF
(式中、Y141はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0177】
本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0178】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf111が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0179】
一般式(110)におけるパーフルオロ有機基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、上記一般式(110)において、Rf111が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf111が下記式:
【0180】
【化14】
【0181】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf111が下記式:
【0182】
【化15】
【0183】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0184】
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、
一般式(160):CF=CF-ORf161
(式中、Rf161は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。Rf161は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0185】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)、(130)及び(140)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0186】
一般式(160)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0187】
一般式(130)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0188】
一般式(140)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0189】
一般式(150)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CFCFSOF)OCFCFSOF及びCF=CFOCFCF(SOF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0190】
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf101が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf101が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf101の炭素数は1~6であることが好ましい。一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFH、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0191】
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(170):CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH=CH-C、及び、CH=CH-C13からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0192】
上記フルオロアルキルアリルエーテルとしては、例えば、
一般式(180):CF=CF-CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0193】
一般式(180)のRf111は、一般式(110)のRf111と同じである。Rf111としては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。一般式(180)で表されるフルオロアルキルアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFがさらに好ましい。
【0194】
上記フッ素化ビニルヘテロ環状体としては、一般式(230):
【化16】

(式中、X231及びX232は、独立に、F、Cl、メトキシ基又はフッ素化メトキシ基であり、Y231は式Y232又は式Y233である。
【0195】
【化17】

(式中、Z231及びZ232は、独立に、F又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。))で表されるフッ素化ビニルヘテロ環状体が挙げられる。
【0196】
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(180):CX181 =CX182-R 181CHR181183
(式中、X181及びX182は、独立に、水素原子、フッ素原子又はCH、R 181は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R181は、水素原子又はCH、X183は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(190):CX191 =CX192-R 191193
(式中、X191及びX192は、独立に、水素原子、フッ素原子又はCH、R 191は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基、X193は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(200):CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-X201
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X201は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、-CHIである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(210):CH=CFCFO(CF(CF)CFO)(CF(CF))-X211
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X211は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CHOHである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(220):CR221222=CR223-Z221-CR224=CR225226
(式中、R221、R222、R223、R224、R225及びR226は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Z221は、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン基若しくはオキシアルキレン基、又は、
-(Q)-CFO-(CFCFO)(CFO)-CF-(Q)
(式中、Qはアルキレン基又はオキシアルキレン基である。pは0又は1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0197】
183及びX193は、ヨウ素原子であることが好ましい。R 181及びR 191は炭素数が1~5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R181は、水素原子であることが好ましい。X201は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、-CHIであることが好ましい。X211は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CHOHであることが好ましい。
【0198】
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CF=CFOCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CH=CHCFCFI、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、及び、CF=CFO(CFCNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN及びCF=CFOCFCFCHIからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0199】
上記工程Cにおいて、上記フルオロモノマーとフッ素非含有モノマーとを重合してもよい。上記フッ素非含有モノマーとしては、上記フルオロモノマーと反応性を有する炭化水素系モノマー等が挙げられる。上記炭化水素系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオイン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステル等のアルキルアリルエステル類等が挙げられる。
【0200】
上記フッ素非含有モノマーとしては、また、官能基含有炭化水素系モノマー(但し、架橋部位を与えるモノマーを除く)であってもよい。上記官能基含有炭化水素系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、パーフルオロブテン酸等のカルボキシル基を有するフッ素非含有モノマー;グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のグリシジル基を有するフッ素非含有モノマー;アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル等のアミノ基を有するフッ素非含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド基を有するフッ素非含有モノマー等が挙げられる。
【0201】
上記工程Cにおいて、上記フルオロモノマーの1種又は2種以上を重合することにより、所望のフルオロポリマーの粒子を含む処理前水性分散液を得ることができる。
【0202】
上記工程Cにおいて、重合体(I)は、合計添加量で、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量を添加することが好ましい。より好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となるおそれがあり、10質量%を超えると、添加量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記化合物の添加量は、使用するモノマーの種類、目的とするフルオロポリマーの分子量等によって適宜決定される。
【0203】
上記工程Cは、更に、上記重合体(I)を連続的に添加する工程を含むことも好ましい。
上記重合体(I)を連続的に添加するとは、例えば、上記重合体(I)を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。上記重合体(I)は、上記重合体(I)と水を含む水溶液を調製して、該水溶液の状態で添加されてよい。
【0204】
上記工程Cにおいて、上記重合体(I)を連続的に添加する工程は、水性媒体中に形成されるフルオロポリマーの固形分含有量が0.5質量%以下であるときに、上記重合体(I)を水性媒体中に添加し始め、その後も重合体(I)を連続的に添加するものであることが好ましい。上記重合体(I)は、上記固形分含有量が0.3質量%以下であるときに添加し始めることがより好ましく、0.2質量%以下であるときに添加し始めることが更に好ましく、0.1質量%以下であるときに添加し始めることが更により好ましく、重合開始とともに、添加し始めることが特に好ましい。上記固形分含有量は、水性媒体及びフルオロポリマーの合計に対するフルオロポリマーの濃度である。
【0205】
工程Cにおいて、上記重合体(I)の添加量は、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量を添加することが好ましい。好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい下限は、0.01質量%であり、更に好ましい下限は、0.1質量%である。好ましい上限は10質量%であり、より好ましい上限は1.0質量%であり、更に好ましい上限は、0.50質量%である。
また、上記重合体(I)を連続的に添加する工程において、上記重合体(I)の添加量は、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量を添加することが好ましい。好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい下限は、0.01質量%であり、更に好ましい下限は、0.1質量%である。好ましい上限は10質量%であり、より好ましい上限は1.0質量%であり、更に好ましい上限は、0.50質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となるおそれがあり、10質量%を超えると、添加量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記化合物の添加量は、使用するモノマーの種類、目的とするフルオロポリマーの分子量等によって適宜決定される。
【0206】
上記工程Cでは、上記重合体(I)を少なくとも1種用いれば、フルオロポリマーを効率よく製造することが可能である。また、界面活性剤として、上記重合体(I)に包含される化合物を2種以上同時に用いてもよいし、揮発性を有するもの又はフルオロポリマーからなる成形体等に残存してもよいものであれば、上記重合体(I)以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用してもよい。
【0207】
上記工程Cにおいて、核形成剤を使用してもよい。上記核形成剤の好ましい量としては、核形成剤の種類により適宜選択できるが、例えば、上記水性媒体に対し、1000質量ppm以下であり、より好ましい量として500質量ppm以下であり、更に好ましい量として100質量ppm以下であり、特に好ましい量として50質量ppm以下であり、ことさら、好ましい量として10質量ppm以下である。
【0208】
上記工程Cは、更に、重合開始前、又は、水性媒体中に形成するポリテトラフルオロエチレン粒子等のフルオロポリマーの濃度が5.0質量%以下であるときに、核形成剤を水性媒体中に添加する工程を含むことが好ましい。重合初期に核形成剤を添加することによって、平均一次粒子径が小さく、安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
重合開始前、又は、水性媒体中に形成するPTFE粒子等のフルオロポリマーの濃度が5.0質量%以下であるときに添加する核形成剤の量は、得られるポリテトラフルオロエチレン等のフルオロポリマーに対して0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.1質量%以上であることが更により好ましい。上限は限定されるものではないが、例えば、2000質量%である。
【0209】
上記核形成剤を使用することにより、上記核形成剤の非存在下で重合を行うのと比較して、小さい一次粒子径を有するフルオロポリマーが得られる。
【0210】
上記核形成剤としては、ジカルボン酸、パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩、炭化水素含有界面活性剤等が挙げられる。上記核形成剤は、芳香環を含まないことが好ましく、脂肪族化合物であることが好ましい。
【0211】
上記核形成剤は、重合開始剤の添加より前、もしくは、重合開始剤の添加と同時に加えることが好ましいが、重合途中に加えることにより、粒度分布を調整することもできる。
【0212】
上記ジカルボン酸の好ましい量として、上記水性媒体に対し、1000質量ppm以下であり、より好ましい量として500質量ppm以下であり、更に好ましい量として100質量ppm以下である。
【0213】
上記パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素基によって隔てられる任意の鎖構造を有してよい。また、2種以上のフッ化炭素基が、分子中に存在してよい。代表的な構造は、下式に表される繰り返し単位を有する:
(-CFCF-CF-O-) (VII)
(-CF-CF-CF-O-) (VIII)
(-CF-CF-O-)-(-CF-O-) (IX)
(-CF-CFCF-O-)n-(-CF-O-) (X)
【0214】
これらの構造は、Kasaiによって、J.Appl.Polymer Sci.57,797(1995)に記載されている。この文献に開示されているように、上記PFPE酸又はその塩は、一方の末端または両方の末端にカルボン酸基またはその塩を有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、また、一方の末端または両方の末端に、スルホン酸、ホスホン酸基又はこれらの塩を有してよい。また、上記PFPE酸又はその塩は、各末端に異なる基を有してよい。単官能性のPFPEについては、分子の他方の末端は、通常、過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも1つ、より好ましくは、このようなフッ化炭素基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、上記PFPE酸又はその塩は、合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。1つの末端または両方の末端に酸基を有する2つ以上の上記PFPE酸又はその塩が、本開示の第1の製造方法に使用され得る。上記PFPE酸又はその塩は、好ましくは、6000g/モル未満の数平均分子量を有する。
【0215】
上記炭化水素含有界面活性剤の添加量は、上記水性媒体に対して、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは40質量ppm以下、更に好ましくは30質量ppm以下、更により好ましくは20質量ppm以下である。上記水性媒体中に存在する親油性核形成部位のppm量は、上記添加量よりも少ないと推測される。したがって、上記親油性核形成部位の量は、それぞれ上記の50質量ppm、40質量ppm、30質量ppm、20質量ppmよりも小さい。上記親油性核形成部位は分子として存在すると考えられるので、ごく少量の上記炭化水素含有界面活性剤でも、大量の親油性核形成部位を生成することができる。したがって、上記炭化水素含有界面活性剤を水性媒体に1質量ppm程度加えるだけでも、有益な効果が得られる。好ましい下限値は、0.01質量ppm、より好ましくは、0.1質量ppmである。
【0216】
上記炭化水素含有界面活性剤には、米国特許第7897682号明細書(Brothers et al.)および米国特許第7977438号明細書(Brothers et al.)に開示されるものなどのシロキサン界面活性剤を含む、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤が含まれる。
【0217】
上記炭化水素含有界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、非イオン性炭化水素界面活性剤)が好ましい。すなわち、核形成剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。上記非イオン性界面活性剤は、好ましくは芳香族部分を含まない。
【0218】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(i)
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物が挙げられる。
の炭素数は10~16が好ましく、12~16がより好ましい。Rの炭素数が18以下であると水性分散液の良好な分散安定性が得られやすい。またRの炭素数が18を超えると流動温度が高いため取扱い難い。Rの炭素数が8より小さいと水性分散液の表面張力が高くなり、浸透性やぬれ性が低下しやすい。
【0219】
ポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。
水性分散液の粘度および安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にAがオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
【0220】
より好ましくは、Rは、(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐鎖状または環状炭化水素基である。
【0221】
上記一般式(i)により表される化合物(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の具体例としては、C1327-O-(CO)10-H、C1327-O-(CO)-H、C1225-O-(CO)10-H、C1021CH(CH)CH-O-(CO)-H、C1327-O-(CO)-(CH(CH)CHO)-H、C1633-O-(CO)10-H、HC(C11)(C15)-O-(CO)-H等が挙げられる。上記一般式(i)により表される化合物(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の市販品としては、例えば、Genapol X080(製品名、クラリアント社製)、ノイゲンTDS-80(商品名)を例とするノイゲンTDSシリーズ(第一工業製薬社製)、レオコールTD-90(商品名)を例とするレオコールTDシリーズ(ライオン社製)、ライオノール(登録商標)TDシリーズ(ライオン社製)、T-Det A138(商品名)を例とするT-Det Aシリーズ(Harcros Chemicals社製)、タージトール(登録商標)15Sシリーズ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0222】
上記非イオン性界面活性剤は、平均約4~約18個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、平均約6~約12個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、またはその混合物であることも好ましい。この種類の非イオン性界面活性剤は、例えば、TERGITOL TMN-6、TERGITOL TMN-10、及びTERGITOL TMN-100X(いずれも製品名、ダウ・ケミカル社製)としても市販されている。
【0223】
また、非イオン性界面活性剤の疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れかであってもよい。
例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性化合物としては、例えば、下記一般式(ii)
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状の1級若しくは2級のアルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)で示される化合物が挙げられる。記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性化合物として具体的には、トライトン(登録商標)X-100(商品名、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0224】
上記非イオン性界面活性剤としてはポリオール化合物も挙げられる。具体的には、国際公開第2011/014715号に記載されたもの等が挙げられる。
ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2~10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(-OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性されている。
糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0226】
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。
【化18】

(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R及びRは、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR及びRのうちの少なくとも1個はHではない)によって表される化合物が挙げられる。R及びRの典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。
上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn-ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
【0227】
その他の非イオン性界面活性剤として、BASF社からPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマー、BASF社からIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレート、炭化水素含有シロキサン界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤であり、ここで、上記のヒドロカルビル基は、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換され、それによって、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基上の一価置換基は水素である。
【0228】
上記工程Cにおいて、上記重合体(I)とともに、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を使用してもよい。ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物としては、後述する変性モノマー(A)と同じ化合物を使用できる。
【0229】
また、上記工程Cにおいて、上記重合体(I)と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0230】
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。
【0231】
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1~12質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、PTFE等のフルオロポリマー重合後に、PTFE分散液等のフルオロポリマーを含む処理前水性分散液と完全に分離除去されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。
【0232】
上記工程Cにおいて、重合は、重合反応器に、水性媒体、上記重合体(I)、モノマー及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。
重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び上記重合体(I)等を追加添加してもよい。上記重合体(I)を重合反応が開始した後に添加してもよい。
【0233】
上記工程Cにおいて、通常、重合温度は、5~120℃であり、重合圧力は、0.05~10MPaGである。重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするフルオロポリマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0234】
上記重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするフルオロポリマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0235】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0236】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0237】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0238】
例えば、30℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0239】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
【0240】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行ないながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0241】
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0242】
上記工程Cにおいて、更に、目的に応じて、公知の連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤、分解剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
【0243】
上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、メタノール、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0244】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0245】
臭素化合物又はヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0246】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0247】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1~50,000質量ppmであり、好ましくは1~20,000質量ppmである。
【0248】
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0249】
ラジカル捕捉剤としては、重合系内の遊離基に付加もしくは連鎖移動した後に再開始能力を有しない化合物が用いられる。具体的には、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に連鎖移動反応を起こし、その後単量体と反応しない安定ラジカルを生成するか、あるいは、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に付加反応を起こして安定ラジカルを生成するような機能を有する化合物が用いられる。
一般的に連鎖移動剤と呼ばれるものは、その活性は連鎖移動定数と再開始効率で特徴づけられるが連鎖移動剤の中でも再開始効率がほとんど0%のものがラジカル捕捉剤と称される。
上記ラジカル捕捉剤は、例えば、重合温度におけるフルオロモノマーへの連鎖移動定数が重合速度定数より大きく、かつ、再開始効率が実質的にゼロ%の化合物ということもできる。「再開始効率が実質的にゼロ%」とは、発生したラジカルがラジカル捕捉剤を安定ラジカルにすることを意味する。
好ましくは、重合温度におけるフルオロモノマーへの連鎖移動定数(Cs)(=連鎖移動速度定数(kc)/重合速度定数(kp))が0.1より大きい化合物であり、上記化合物は、連鎖移動定数(Cs)が0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが更により好ましく、10以上であることが特に好ましい。
【0250】
本開示における上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、キノン化合物、テルペン、チオシアン酸塩、及び、塩化第二銅(CuCl)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、非置換フェノール、多価フェノール、サリチル酸、m-又はp-のサリチル酸、没食子酸、ナフトール等が挙げられる。
上記非置換フェノールとしては、о-、m-又はp-のニトロフェノール、о-、m-又はp-のアミノフェノール、p-ニトロソフェノール等が挙げられる。多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシン、ナフトレゾルシノール等が挙げられる。
芳香族アミン類としては、о-、m-又はp-のフェニレンジアミン、ベンジジン等が挙げられる。
上記キノン化合物としては、о-、m-又はp-のベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アリザリン等が挙げられる。
チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモン(NHSCN)、チオシアン酸カリ(KSCN)、チオシアン酸ソーダ(NaSCN)等が挙げられる。
上記ラジカル捕捉剤としては、なかでも、芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、非置換フェノール又は多価フェノールがより好ましく、ハイドロキノンが更に好ましい。
【0251】
上記ラジカル捕捉剤の添加量は、標準比重を小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は5%(モル基準)であり、更に好ましくは8%(モル基準)であり、更に好ましくは10%(モル基準)であり、更により好ましくは13%(モル基準)又は15%(モル基準)であり、殊更に好ましくは20%(モル基準)であり、特に好ましくは25%(モル基準)であり、特に好ましくは30%(モル基準)であり、特に好ましくは35%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)であり、更により好ましくは200%(モル基準)であり、殊更に好ましくは100%(モル基準)である。
【0252】
重合開始剤の分解剤としては、使用する重合開始剤を分解できる化合物であればよく、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、ジイミン塩、シュウ酸、シュウ酸塩、銅塩、及び、鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記重合開始剤の分解剤の添加量は、重合開始剤(レドックス開始剤)として組み合わされる酸化剤の量に対して、3~300質量%の範囲で添加する。好ましくは3~150質量%、更に好ましくは15~100質量%である。
上記重合開始剤の分解剤の添加量は、標準比重を小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は5%(モル基準)であり、更に好ましくは8%(モル基準)であり、更に好ましくは10%(モル基準)であり、更に好ましくは13%(モル基準)であり、更により好ましくは15%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)であり、更により好ましくは200%(モル基準)であり、殊更に好ましくは100%(モル基準)である。
【0253】
フルオロモノマーの重合中に、ラジカル捕捉剤または重合開始剤の分解剤を、水性媒体中に形成されるフルオロポリマーの濃度(水性媒体及びフルオロポリマーの合計に対する濃度)が5質量%以上である時に添加することが好ましい。より好ましくは、8質量%以上である時であり、更に好ましくは10質量%以上である時である。
また、水性媒体中に形成されるフルオロポリマーの濃度が40質量%以下である時に添加することが好ましい。より好ましくは、35質量%以下である時であり、更に好ましくは、30質量%以下である時である。
【0254】
フルオロモノマーの重合中に、ラジカル捕捉剤または重合開始剤の分解剤を連続的に添加してもよい。フルオロモノマーの重合中に、ラジカル捕捉剤または重合開始剤の分解剤を、一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することができる。
【0255】
上記工程Cにおいて、重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
【0256】
上記工程Cは、重合体(I)の存在下に、水性媒体中で上記フルオロモノマーを重合して、フルオロポリマー粒子の水性分散液を製造する工程、及び、上記フルオロポリマー粒子の水性分散液中で、上記フルオロモノマーをフルオロポリマー粒子にシード重合する工程を含むものであってもよい。
【0257】
上記工程Cは、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に、フルオロモノマーを重合するものであることが好ましい。
従来、水性媒体中でのフルオロポリマーの重合には含フッ素界面活性剤が使用されてきたが、本開示の第1の製造方法は、フルオロポリマーを含む処理前水性分散液が、含フッ素界面活性剤を使用しないで得られたものである場合であっても着色を低減したフルオロポリマー水性分散液を得ることができる。
本明細書において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対して含フッ素界面活性剤が10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0258】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0259】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
【0260】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0261】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、国際公開第2007/119526号、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
【0262】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0263】
上記一般式(N)で表される化合物としては、
下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、F又はCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1及びYn2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、一般式(N):
【化19】

(式中、Xn2、Xn3及びXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4及びRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
【0264】
上記一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)などが挙げられる。
【0265】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるものである。
【0266】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0267】
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0268】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0269】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0270】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0271】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0272】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0273】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0274】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0275】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0276】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化20】

(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-SOM、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0277】
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CFClO(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOONH(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
【0278】
上述したように上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が挙げられる。
【0279】
上記重合により、上記フルオロポリマーを含む処理前水性分散液を得ることができる。上記フルオロポリマーは、通常、上記重合を行うことにより得られる水性分散液の8~50質量%の濃度である。上記水性分散液中において、フルオロポリマーの濃度の好ましい下限は10質量%、より好ましい下限は15質量%、好ましい上限は40質量%、より好ましい上限は35質量%である。
【0280】
本開示の第1の製造方法は、工程Aの前に、上記処理前水性分散液に炭化水素系界面活性剤を添加する工程Bを含むことが好ましい。重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマーを含む水性分散液には、通常、重合で使用した重合体(I)が含まれるが、限外濾過、精密ろ過又は透析膜処理することにより重合で使用した重合体(I)の量が低減し、水性分散液の安定性が低下するおそれがある。そのため、工程Aの前に炭化水素系界面活性剤を添加することによって、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理中の水性分散液の安定性が向上し、着色成分の低減及びフッ化水素発生量の低減を効率的に行うことができる。また、工程Aを経て得られる水性分散液の安定性を向上させることができる。
上記工程Bは、例えば、炭化水素系界面活性剤を含む水を添加することで行ってもよい。
なお、本開示の第1の製造方法が上述した工程Cを含む場合、工程Bは、工程Cの後、工程Aの前に実施される。
【0281】
上記工程Bで添加される炭化水素系界面活性剤としては限定されず、上述した炭化水素系界面活性剤を使用することができるが、中でも、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、上述した工程Cにおいて核形成剤として挙げたものを全て採用できる。
【0282】
上記非イオン性界面活性剤としては限定されないが、例えば、上述した一般式(i)により表される化合物、及び、一般式(ii)により表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0283】
上記フルオロポリマーとしては、ポリマーにおけるモノマーのモル分率が最も多いモノマー(以下、「最多単量体」)がTFEであるTFE重合体(PTFE)、最多単量体がVDFであるVDF重合体、最多単量体がCTFEであるCTFE重合体等が挙げられる。
また、上記フルオロポリマーとしては、(I)非溶融加工性フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン重合体[TFE重合体(PTFE)]が、(II)溶融加工性フッ素樹脂として、エチレン/TFE共重合体[ETFE]、TFE/HFP共重合体[FEP]、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA、MFA等]、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、TFE/VDF共重合体、電解質ポリマー前駆体が、(III)フッ素ゴムとして、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/第3モノマー共重合体(上記第3モノマーは、VDF、HFP、CTFE、フルオロアルキルビニルエーテル類等)、TFEとフルオロアルキルビニルエーテル類とからなる共重合体;HFP/エチレン共重合体、HFP/エチレン/TFE共重合体;PVDF;VDF/HFP共重合体、HFP/エチレン共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体等の熱可塑性エラストマー;及び、特公昭61-49327号公報に記載の含フッ素セグメント化ポリマー等が挙げられる。
【0284】
上記フルオロポリマーは、53より高いイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。好ましいフルオロポリマーは、イオン性基を全く有さないか、または約100より高いイオン交換率をもたらす限られた数のイオン性基を有する。好ましいフルオロポリマーのイオン交換率は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。
【0285】
TFE重合体としては、好適には、TFE単独重合体であってもよいし、(1)TFE、(2)炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のTFE以外のフッ素含有モノマー、特にVDF、HFP若しくはCTFE、及び、(3)その他のモノマーからなる共重合体であってもよい。上記(3)その他のモノマーとしては、例えば、炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール;パーフルオロアルキルエチレン;ω-ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。
【0286】
TFE重合体としては、また、TFEと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有モノマーとの共重合体であってもよい。上記フッ素非含有モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のアルケン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類が挙げられる。TFE重合体としては、また、TFEと、炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のフッ素含有モノマーと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有モノマーとの共重合体であってもよい。
【0287】
VDF重合体としては、好適には、VDF単独重合体[PVDF]であってもよいし、(1)VDF、(2)炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のVDF以外のフルオロオレフィン、特にTFE、HFP若しくはCTFE、及び、(3)炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体等であってもよい。
【0288】
CTFE重合体としては、好適には、CTFE単独重合体であってもよいし、(1)CTFE、(2)炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のCTFE以外のフルオロオレフィン、特にTFE若しくはHFP、及び、(3)炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体であってもよい。
【0289】
CTFE重合体としては、また、CTFEと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有モノマーとの共重合体であってもよく、上記フッ素非含有モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のアルケン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0290】
上記フルオロポリマーは、ガラス状、可塑性又はエラストマー性であり得る。これらのものは非晶性又は部分的に結晶性であり、圧縮焼成加工、溶融加工又は非溶融加工に供することができる。
【0291】
工程Cでは、例えば、(I)非溶融加工性フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン重合体[TFE重合体(PTFE)]が、(II)溶融加工性フッ素樹脂として、エチレン/TFE共重合体[ETFE]、TFE/HFP共重合体[FEP]、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA、MFA等]、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、TFE/VDF共重合体、電解質ポリマー前駆体が、(III)フッ素ゴムとして、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/第3モノマー共重合体(上記第3モノマーは、VDF、HFP、CTFE、フルオロアルキルビニルエーテル類等)、TFEとフルオロアルキルビニルエーテル類とからなる共重合体;HFP/エチレン共重合体、HFP/エチレン/TFE共重合体;PVDF;VDF/HFP共重合体、HFP/エチレン共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体等の熱可塑性エラストマー;及び、特公昭61-49327号公報に記載の含フッ素セグメント化ポリマー等のフルオロポリマーを含む処理前水性分散液が好適に製造されうる。
【0292】
上記フルオロポリマーとしては、フッ素樹脂が好ましく、なかでも下記式により算出されるフッ素置換率が50%以上のフッ素樹脂がより好ましく、上記フッ素置換率が50%を超えるフッ素樹脂が更に好ましく、上記フッ素置換率が55%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が60%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が75%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が80%以上のフッ素樹脂が特に好ましく、上記フッ素置換率が90~100%のフッ素樹脂、すなわちパーフルオロ樹脂が最も好ましい。
(式)
フッ素置換率(%)=(フルオロポリマーを構成する炭素原子に結合するフッ素原子の個数)/((フルオロポリマーを構成する炭素原子に結合する水素原子の個数)+(フルオロポリマーを構成する炭素原子に結合するフッ素原子及び塩素原子の個数))×100
【0293】
上記パーフルオロ樹脂としては、上記フッ素置換率が95~100%のフッ素樹脂がより好ましく、PTFE、FEP又はPFAが更に好ましく、PTFEが特に好ましい。
【0294】
上記フルオロポリマーは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するフルオロポリマーとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEシェルとを含むPTFEが挙げられる。このようなPTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
【0295】
上記コアシェル構造としては、例えば、次の構造をとり得る。
コア:TFE単独重合体 シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:変性PTFE
コア:TFE単独重合体 シェル:変性PTFE
コア:低分子量PTFE シェル:高分子量PTFE
コア:高分子量PTFE シェル:低分子量PTFE
【0296】
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーにおいて、コアの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。コアの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは98.0質量%、更により好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
【0297】
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーにおいて、シェルの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。シェルの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは98.0質量%、更により好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
【0298】
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーにおいて、上記コア又は上記シェルを2層以上の構成とすることもできる。例えば、変性PTFEのコア中心部と、TFE単独重合体のコア外層部と、変性PTFEのシェルとを有する3層構造を有するフルオロポリマーであってよい。
【0299】
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーとしては、また、上記フルオロポリマーの1つの粒子が複数のコアを有するものも挙げられる。
【0300】
上述の(I)非溶融加工性フッ素樹脂、(II)溶融加工性フッ素樹脂及び(III)フッ素ゴムは、以下の態様で製造することが好ましい。
【0301】
(I)非溶融加工性フッ素樹脂
工程Cにおいて、TFEの重合は、通常、重合温度10~150℃、重合圧力0.05~5MPaGにて行われる。例えば、重合温度は、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。また、重合圧力は、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上が更に好ましく、また、5.0MPaG以下がより好ましく、3.0MPaG以下が更に好ましい。特に、フルオロポリマーの得量を向上させる観点からは、1.0MPaG以上が好ましく、1.2MPaG以上がより好ましく、1.5MPaG以上が更に好ましく、2.0MPaG以上がより好ましい。
【0302】
一の態様において、上記重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水を仕込み、脱酸素後、TFEを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下する場合は、初期圧力を維持するように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のTFEを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。圧力が低下しないように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給してもよい。
【0303】
上記TFE重合体がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である場合、TFEに加えて、従来知られている各種変性モノマーを併用することもできる。本明細書において、上記PTFEは、TFE単独重合体のみならず、TFEと変性モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、「変性PTFE」という。)をも含む概念である。
上記変性モノマーの合計量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.05質量%である。
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、TFE重合体の分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0304】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、フルオロモノマーおよび非フルオロモノマーが挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0305】
非フルオロモノマーとしては、特に限定されず、一般式:
CH=CRQ1-LRQ2
(式中、RQ1は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、単結合、-CO-O-*、-O-CO-*または-O-を表す。*はRQ2との結合位置を表す。RQ2は、水素原子、アルキル基またはニトリル基を表す。)で表されるモノマーが挙げられる。
【0306】
非フルオロモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレートブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ビニルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。非フルオロモノマーとしては、なかでも、ブチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸が好ましい。
【0307】
フルオロモノマーとして、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン;パーフルオロアリルエーテル等が挙げられる。
上記変性モノマーとしては、例えば、HFP、CTFE、パーフルオロビニルエーテル等のパーハロオレフィン;炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール等の環式のフッ素化された単量体;(パーフルオロアルキル)エチレン等のパーハロアルキルエチレン;ω-ヒドロパーハロオレフィン等が挙げられる。変性モノマーの供給は、目的や、TFEの供給に応じて、初期一括添加、又は、連続的若しくは間欠的に分割添加を行うことができる。
【0308】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0309】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0310】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0311】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
式:
【0312】
【化21】
【0313】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0314】
【化22】
【0315】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0316】
水素含有フルオロオレフィンとしては、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
【0317】
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0318】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、
一般式:CF=CF-CF-ORf
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0319】
上記一般式のRfは、一般式(A)のRfと同じである。Rfとしては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFがさらに好ましい。
【0320】
ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕を含むフルオロポリマー水性分散液を製造する場合は、工程Cにおいて、TFEの重合の開始時に、(ポリフルオロアルキル)エチレン、及び/又は、TFEとの共重合におけるモノマー反応性比rTFEが0.1~8であるコモノマー(3)を、最終的なPTFEの生成量に対して0.001~0.01質量%となるように重合系に含有させることができる。これにより、工程Cにおいて得られるPTFE水性分散液の安定性が、その後の加工性、成形性などを損なわない程度に高くなる。そして、このようにして得られたPTFE水性分散液を処理前水性分散液として用いることにより、耐熱性の高い成形品を得ることが可能なPTFE水性分散液(フルオロポリマー水性分散液)を製造できる。
【0321】
ここで、TFEとの共重合におけるモノマー反応性比とは、成長ラジカルがTFEに基づく繰り返し単位未満であるときに、該成長ラジカルがTFEと反応する場合の速度定数を、該成長ラジカルがコモノマーと反応する場合の速度定数で除した値である。この値が低いほど、コモノマーがTFEと高反応性であることを表す。上記反応性比は、コモノマーを様々な仕込み組成でTFEと共重合させ、開始直後の生成ポリマー中の組成を求め、上記組成からファインマン-ロスの式より算出できる。
【0322】
上記共重合は、例えば、内容積6.0Lのステンレス製オートクレーブに3600gの脱イオン脱気水、上記水に対して1000質量ppmのパーフルオロオクタン酸アンモニウム、100gのパラフィンワックスを使用して、圧力0.78MPaG、温度70℃で実施する。0.05g、0.1g、0.2g、0.5g、1.0gのコモノマーをそれぞれ反応器に加え、0.072gの過硫酸アンモニウム(対水20質量ppm)を加えて、重合圧力0.78MPaGを維持させるため、TFEを連続的に供給する。TFE仕込量が1000gに到達したとき、撹拌を停止して、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なう。冷却後、パラフィンワックスを分離除去することにより、生成ポリマーを含む水性分散液が得られる。上記水性分散液を撹拌して生成ポリマーを凝析させ、150℃で乾燥させる。得られた生成ポリマー中の組成を、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出する。
【0323】
上記変性モノマーとしては、モノマー反応性比が0.1~8であるコモノマー(3)も好ましく例示される。コモノマー(3)を存在させることによって、粒子径が小さいPTFE粒子を得ることができ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができる。
【0324】
モノマー反応性比が0.1~8であるコモノマー(3)としては、式(3a)~(3d)で表されるコモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CH=CH-Rf (3a)
(式中、Rfは炭素数が1~10のパーフルオロアルキル基である。)
CF=CF-O-Rf (3b)
(式中、Rfは炭素数が1~2のパーフルオロアルキル基である。)
CF=CF-O-(CFCF=CF (3c)
(式中、nは1又は2である。)
【0325】
【化23】

(式中、X及びXはF、Cl又はメトキシ基であり、Yは式Y1又はY2である。)
【0326】
【化24】

(式Y2中、Z及びZ’はF又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。)
【0327】
コモノマー(3)の含有量は、PTFEの全重合単位に対して0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%が更に好ましく、0.001質量%が更により好ましく、0.005質量%が殊更に好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0328】
上記変性モノマーとしては、平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、安定性に優れる水性分散液を得ることができることから、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン、及び、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記変性モノマーを使用することで、より平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、分散安定性に優れたPTFEの水性分散液を得ることができる。このようにして得られたPTFEの水性分散液を処理前水性分散液として用いることにより、平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、分散安定性に優れ、未凝析ポリマーが少ないフルオロポリマー水性分散液を製造することができる。
【0329】
上記変性モノマーは、TFEとの反応性の観点からは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及び(パーフルオロアルキル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位及び(パーフルオロアルキル)エチレン単位の合計量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%が更に好ましく、0.001質量%が更により好ましく、0.005質量%が殊更に好ましく、0.009質量%が特に好ましい。上限としては、好ましい順に、0.9質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0330】
上記変性モノマーは、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマー(以下「変性モノマー(A)」と記載する。)を含むことも好ましい。
【0331】
上記変性モノマー(A)を存在させることによって、一次粒子径が小さいPTFE粒子を得ることができ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができ、また、一次粒子のアスペクト比を小さくすることができる。すなわち、工程Cにおいて、変性モノマー(A)を使用することにより、最終的に得られるフルオロポリマー水性分散液中は分散安定性が高いものとなる。さらに、フルオロポリマー水性分散液に含まれるPTFEを、一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さいものとすることができる。
【0332】
上記変性モノマー(A)の使用量は、水性媒体の0.1質量ppmに相当する量を超える量であることが好ましく、0.5質量ppmを超える量であることがより好ましく、1.0質量ppmを超える量であることが更に好ましく、5質量ppm以上であることが更により好ましく、10質量ppm以上であることが特に好ましい。上記変性モノマー(A)の使用量が少なすぎると、得られるPTFEの平均一次粒子径が小さくならないおそれがある。
上記変性モノマー(A)の使用量は、上記範囲であればよいが、例えば、上限を5000質量ppmとすることができる。また、上記製造方法では、反応中または反応後の水性分散液の安定性を向上させるために、反応途中で変性モノマー(A)を系中に追加してもよい。
【0333】
上記変性モノマー(A)は水溶性が高いので、未反応の変性モノマー(A)が水性分散液中に残存したとしても、濃縮工程、あるいは凝析・洗浄工程での除去は容易である。
【0334】
上記変性モノマー(A)は、重合の過程で生成ポリマー中に取り込まれるが、重合系中の変性モノマー(A)の濃度そのものが低く、ポリマーに取り込まれる量が少ないため、PTFEの耐熱性が低下したり焼成後に着色したりする問題はない。
【0335】
上記変性モノマー(A)における親水基としては、例えば、-NH、-POM、-P(O)(OM)、-OPOM、-OP(O)(OM)、-SOM、-OSOM、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましい。
7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
【0336】
上記変性モノマー(A)における「ラジカル重合で反応可能な官能基」としては、例えば、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、下記式:
CX=CXR-
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H、CF、CFH、CFH、又は、CHであり;Rは連結基である。)で示すことができる。Rの連結基としては後述するRとしての連結基が挙げられる。
好ましくは-CH=CH、-CF=CH2、-CH=CF2、-CF=CF、-CH-CH=CH、-CF-CF=CH、-CF-CF=CF、-(C=O)-CH=CH、-(C=O)-CF=CH、-(C=O)-CH=CF、-(C=O)-CF=CF、-(C=O)-C(CH)=CH、-(C=O)-C(CF)=CH、-(C=O)-C(CH)=CF、-(C=O)-C(CF)=CF、-O-CH-CH=CH、-O-CF-CF=CH、-O-CH-CH=CF、-O-CF-CF=CF等の不飽和結合を有する基が挙げられる。
【0337】
上記変性モノマー(A)は、ラジカル重合で反応可能な官能基を有するので、上記重合において使用すると、重合反応初期に含フッ素モノマーと反応し、上記変性モノマー(A)に由来する親水基を有し安定性が高い粒子が形成されると推測される。このため、上記変性モノマー(A)の存在下に重合を行うと、粒子数が多くなると考えられる。
【0338】
上記重合は、上記変性モノマー(A)を1種存在させるものであってもよいし、2種以上存在させるものであってもよい。
【0339】
上記重合において、上記変性モノマー(A)として、不飽和結合を有する化合物を使用することができる。
変性モノマー(A)は、一般式(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CX=CX-(CZ-Y (4)
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Yは、親水基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり、kは0又は1である)
上記親水基としては、例えば、-NH、-POM、-P(O)(OM)、-OPOM、-OP(O)(OM)、-SOM、-OSOM、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記変性モノマー(A)を用いることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。また、一次粒子のアスペクト比をより小さくすることもできる。
【0340】
上記Rは、二価連結基である。連結基(R)は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
上記連結基(R)は、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基(R)は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0341】
上記Rは、例えば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、又は、2価の有機基であることが好ましい。
が2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
はまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化又は過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
としては、例えば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、-(C=O)-を含有する炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0342】
は、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含んでいてもよく、-(C=O)-を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素に置換されていてもよい。
として好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH-、-(C=O)-(CF-、-(C=O)-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF-、-(C=O)-(CH-O-(CH-、-(C=O)-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-C-、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、c及びdは独立して少なくとも1以上である。a、b、c及びdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、c及びdの上限は、例えば、100である。
【0343】
として好適な具体例としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CH-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-C-等が挙げられる。中でも、上記Rは、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、又は、-(C=O)-O-C-が好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
【0344】
上記一般式(4)における-R-(CZ-としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-が好ましく、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(C=O)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-がより好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
【0345】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、
【化25】

(式中、X及びYは上記と同じ。nは1~10の整数である。)等が挙げられる。
【0346】
としては、一般式(r1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である。)で表される2価の基も好ましい。
【0347】
上記一般式(4)の-R-(CZ-としてはまた、下記式(t1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (t1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t1)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
また、上記一般式(4)において、-R-(CZ-としては、下記式(t2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)-CZ- (t2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t2)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
【0348】
一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(4)において、X、X、及びXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。
上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0349】
一般式(4)で表される化合物は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0350】
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4a)で示される化合物であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-Y (4a)
(式中、Yは親水基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってもよく、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0351】
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4b)で示される化合物であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-Y (4b)
(式中、Yは親水基であり、Rfは式(4a)で定義される過フッ素化二価連結基である。)
【0352】
一般式(4)において、Yは-OSOMであることが好ましい形態の一つである。Yが-OSOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0353】
一般式(4)において、Yは-SOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-SOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0354】
一般式(4)において、Yは-COOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-COOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はH又はC1-4アルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0355】
一般式(4)において、Yは-OPOMまたは-OP(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-OPOMまたは-OP(O)(OM)である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM)、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0356】
一般式(4)において、Yは-POMまたは-P(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-POMまたは-P(O)(OM)である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))等が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0357】
上記一般式(4)で表される化合物としては、下記一般式(5):
CX=CY(-CZ-O-Rf-Y) (5)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される単量体、下記一般式(6):
CX=CY(-O-Rf-Y) (6)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される単量体、及び、下記一般式(7):
CX=CY(-Rf-Y) (7)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される単量体、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0358】
上記一般式(5)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Hであってもよいし、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0359】
上記一般式(5)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0360】
上記一般式(5)において、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Zとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0361】
上記一般式(5)において、上記X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0362】
上記一般式(5)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0363】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基としては、例えば、下記式:
【化26】

(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0364】
上記一般式(5)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)である。
7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。
7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記Mとしては、-H、金属原子又は-NR7y が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR7y がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましく、-Na、-K又は-NHが更により好ましく、-Na又は-NHが特に好ましく、-NHが最も好ましい。
上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0365】
一般式(5)で表される単量体は、一般式(5a)で表される単量体(5a)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-Y) (5a)
(式中、Rf及びYは前記と同じ。)
【0366】
一般式(5a)で表される単量体として具体的には、下記式
【0367】
【化27】
【0368】
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、Yは前記と同じ。ただし、Z及びZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される単量体が挙げられる。より具体的には、
【0369】
【化28】
【0370】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0371】
【化29】
【0372】
であることが好ましい。
【0373】
一般式(5a)で表される単量体としては、式(5a)中のYが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、及び、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
【0374】
一般式(5)で表される単量体は、一般式(5b)で表される単量体(5b)であることが好ましい。
CX =CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-Y (5b)
(式中、各Xは、同一であり、F又はHを表す。n5は、0又は1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
【0375】
上記式(5b)において、上記n5は、得られる水性分散液の安定性の点で0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、不純物として残留しにくく、得られた成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0376】
上記式(5b)で表されるパーフルオロビニルアルキル化合物としては、例えば、CH=CFCFOCF(CF)COOM、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0377】
また、一般式(5)で表される単量体としては、一般式(5c)で表される単量体等も挙げられる。
【0378】
CF=CFCF-O-Rf-Y (5c)
(式中、Rf及びYは上記と同じ)
【0379】
より具体的には、
【化30】

等が挙げられる。
【0380】
上記一般式(6)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0381】
上記一般式(6)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0382】
上記一般式(6)において、上記X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0383】
上記一般式(6)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0384】
上記一般式(6)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
の有機基としてはアルキル基が好ましい。Rとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記Mとしては、-H、金属原子又は-NR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又は-NR がより好ましく、-H、-Na、-K、-Li又は-NHが更に好ましく、-Na、-K又は-NHが更により好ましく、-Na又は-NHが特に好ましく、-NHが最も好ましい。
上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0385】
上記一般式(6)で表される単量体は、下記一般式(6a)、(6b)、(6c)、(6d)及び(6e)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-Y (6a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-Y (6b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-Y (6c)
(式中、Xは、F又はCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-Y (6d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-Y (6e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
【0386】
上記式(6a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0387】
上記式(6a)で表される単量体としては、例えば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0388】
上記式(6b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0389】
上記式(6c)において、上記n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、上記Mは、分散安定性がよくなる点で、H又はNHであることが好ましい。
【0390】
上記式(6d)において、上記Xは、水性分散液の安定性の点で、-CFであることが好ましく、上記n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0391】
上記式(6d)で表される単量体としては、例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(6e)において、上記n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
一般式(6e)で表される単量体としては、例えば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0392】
上記一般式(7)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(7)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
【0393】
上記一般式(7)で表される単量体は、下記一般式(7a):
CF=CF-(CFn1-Y (7a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される単量体、及び、下記一般式(7b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-Y (7b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記Yは、-SOM又は-COOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。上記R7yは、H又は有機基を表す。
【0394】
上記式(7a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(7a)で表されるパーフルオロビニルアルキル化合物としては、例えば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0395】
上記式(7b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0396】
上記変性モノマーは、変性モノマー(A)を含むことが好ましく、一般式(5a)、一般式(5b)、一般式(6a)、一般式(6b)、一般式(6c)、及び、一般式(6d)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(5a)または一般式(5b)で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0397】
変性モノマーとして変性モノマー(A)を用いる場合、上記変性モノマー(A)単位の含有量は、上記TFE重合体(PTFE)の全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%が更に好ましく、0.001質量%が更により好ましく、0.005質量%が殊更に好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0398】
上記TFE重合体の製造において、上記重合体(I)の添加量としては、上述した工程Cにおける重合体(I)の添加量を採用することができる。上記重合体(I)の添加量は、上記範囲であれば特に限定されない。添加量が多いとアスペクト比の大きい針状粒子が生成し、水性分散液がゲル状となり安定性が損なわれるおそれがある。上記重合体(I)の使用量(添加量)の下限は、水性媒体に対して、好ましくは0.0001質量%、より好ましくは0.001質量%、更に好ましくは0.01質量%、特に好ましくは0.02質量%である。上記重合体(I)の使用量(添加量)の上限は、水性媒体に対して、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%である。
【0399】
上記重合体(I)は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0400】
上記TFE重合体の製造において、重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
【0401】
上記レドックス系の重合開始剤としては、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0402】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
【0403】
上記TFE重合体の製造において、連鎖移動剤としては、公知のものが使用できるが、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水素等が挙げられるが、常温常圧で気体状態のものが好ましい。
【0404】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1~10000質量ppmであり、好ましくは1~5000質量ppmである。
【0405】
上記TFE重合体の製造において、更に、反応系の分散安定剤として、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素を、水性媒体100質量部に対して2~10質量部で使用することもできる。また、反応中のpHを調整するための緩衝剤として、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等を添加してもよい。
【0406】
上記TFE重合体の重合が終了した時点で、通常、固形分濃度が1.0~70質量%、平均一次粒子径が50~500nmのTFE重合体を含む処理前水性分散液を得ることができる。上記処理前水性分散液は、上記重合体(I)を少なくとも含む界面活性剤、及び、フルオロポリマーを含有する。また、上記重合体(I)を少なくとも含む界面活性剤を使用することによって0.5μm以下の微小粒子径のTFE重合体からなる粒子を有する処理前水性分散液を得ることができる。
上記処理前水性分散液における固形分濃度の下限は5質量%が好ましく、8質量%がより好ましい。上限は特に限定されないが40質量%であってもよく、35質量%であってもよい。
上記TFE重合体の平均一次粒子径の下限は100nmが好ましく、150nmがより好ましい。上限は400nmが好ましく、350nmがより好ましい。
上記平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。上記平均一次粒子径は、固形分濃度約1.0質量%に調整した水性分散液を作成し、動的光散乱法を使用して、25℃、溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・s、積算70回にて測定できる。動的光散乱法としては、例えばELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0407】
上記TFE重合体を含む処理前水性分散液に対し、上記工程Aを行うことにより、TFE重合体の水性分散液(フルオロポリマー水性分散液)が得られる。TFE重合体の水性分散液を凝析(凝集)し、TFE重合体を含む凝集物を回収することにより、TFE重合体ファインパウダーを製造できる。上記TFE重合体の水性分散液は、凝析、洗浄、乾燥を経てTFE重合体ファインパウダーとして各種用途に使用することができる。上記TFE重合体の水性分散液に対して凝析を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて5~20質量%のポリマー濃度になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0408】
上記凝集により生じる排水中の未凝集の上記TFE重合体濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
【0409】
上記凝析前や凝析中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加することにより、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのTFE重合体ファインパウダーを得ることができる。
【0410】
上記TFE重合体の水性分散液を凝析して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のTFE重合体に好ましくない影響を与える。これは、この種のTFE重合体からなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。
【0411】
上記乾燥は、10~300℃(10~250℃)、好ましくは100~300℃(100~200℃)の乾燥温度で行う。
【0412】
得られるTFE重合体ファインパウダーは、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
【0413】
上記TFE重合体の水性分散液は、また、非イオン性界面活性剤を加えることにより、安定化して更に濃縮し、目的に応じ、有機又は無機の充填剤を加えた組成物として各種用途に使用することも好ましい。上記組成物は、金属又はセラッミクスからなる基材上に被覆することにより、非粘着性と低摩擦係数を有し、光沢や平滑性、耐摩耗性、耐候性及び耐熱性に優れた塗膜表面とすることができ、ロールや調理器具等の塗装、ガラスクロスの含浸加工等に適している。
【0414】
上記TFE重合体の水性分散液からTFE重合体のオルガノゾルを調製することもできる。上記オルガノゾルは、上記TFE重合体及び有機溶剤を含むことができ、上記有機溶剤としては、エーテル系溶媒、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤が挙げられ、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド等を好適に使用できる。上記オルガノゾルの調製は、例えば、国際公開第2012/002038号に記載の方法により実施できる。
【0415】
上記TFE重合体の水性分散液又は上記TFE重合体ファインパウダーは、加工助剤として使用することも好ましい。加工助剤として使用する場合、上記水性分散液又は上記ファインパウダーをホストポリマー等に混合することにより、ホストポリマー溶融加工時の溶融強度向上や、得られたポリマーの機械的強度、電気特性、難燃性、燃焼時の滴下防止性、摺動性を向上することができる。
【0416】
上記TFE重合体の水性分散液又は上記TFE重合体ファインパウダーは、電池用結着剤、防塵用途として使用することも好ましい。
【0417】
上記TFE重合体の水性分散液又は上記TFE重合体ファインパウダーは、また、TFE重合体以外の樹脂と複合させてから加工助剤として使用することも好ましい。上記TFE重合体の水性分散液又は上記ファインパウダーは、例えば、特開平11-49912号公報、米国特許第5804654号明細書、特開平11-29679号公報、特開2003-2980号公報に記載されたPTFEの原料として好適である。上記水性分散液又は上記ファインパウダーを使用した加工助剤は、上記各刊行物に記載された加工助剤に比べてもなんら劣るものではない。
【0418】
上記TFE重合体の水性分散液は、溶融加工性フッ素樹脂の水性分散液と混合して凝析させることにより、共凝析粉末とすることも好ましい。上記共凝析粉末は、加工助剤として好適である。
【0419】
上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、ETFE、エチレン/TFE/HFP共重合体[EFEP]等が挙げられるが、中でもFEPが好ましい。
【0420】
上記水性分散液は、上記溶融加工性フッ素樹脂を含むことも好ましい。上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、ETFE、EFEP等が挙げられる。上記溶融加工性フッ素樹脂を含む上記TFE重合体の水性分散液は、塗料として使用できる。上記溶融加工性フッ素樹脂は、上記TFE重合体の粒子同士を充分に融着させることができるので、造膜性を向上させ、得られる被膜に光沢を出すことができる。
【0421】
上記共凝析粉末を添加するフッ素非含有樹脂は、パウダー状であってもよいし、ペレット状であってもよいし、エマルションであってもよい。上記添加は、各樹脂を充分に混合する点で、押出混練、ロール混練等の公知の方法により剪断力を与えながら行うことが好ましい。
【0422】
上記TFE重合体の水性分散液は、塵埃抑制処理剤として使用することも好ましい。上記塵埃抑制処理剤は、発塵性物質と混合し、該混合物に20~200℃の温度で圧縮-せん断作用を施すことによりTFE重合体をフィブリル化して発塵性物質の塵埃を抑制する方法、例えば特許第2827152号公報、特許第2538783号公報等の方法において、用いることができる。
上記TFE重合体の水性分散液は、例えば、国際公開第2007/004250号に記載の塵埃抑制処理剤組成物に好適に用いることができ、国際公開第2007/000812号に記載の塵埃抑制処理方法にも好適に用いることができる。
【0423】
上記塵埃抑制処理剤は、建材分野、土壌安定材分野、固化材分野、肥料分野、焼却灰及び有害物質の埋立処分分野、防爆分野、化粧品分野、猫砂に代表されるペット排泄用の砂等の塵埃抑制処理に好適に用いられる。
【0424】
上記TFE重合体の水性分散液は、分散紡糸法(Dispersion Spinning method)によりTFE重合体繊維を得る原料として使用することも好ましい。
上記分散紡糸法とは、上記TFE重合体の水性分散液とマトリックス高分子の水性分散液とを混合し、当該混合物を押出加工して中間体繊維構造物を形成し、該中間体繊維構造物を焼成することによって上記マトリックス高分子を分解及びTFE重合体粒子の焼結を行ってTFE重合体繊維を得る方法である。
【0425】
重合により得られる高分子量PTFE粉末は、延伸性及び非溶融加工性を有し、延伸体(多孔体)の原料としても有用である。本開示の第一の製造方法において、フルオロポリマーは、高分子量PTFEであってよい。フルオロポリマー水性分散液は、高分子量PTFEを含む場合には、延伸体(多孔体)の原料としても有用である。
この延伸体が膜である場合(PTFE延伸膜またはPTFE多孔膜)、公知のPTFE延伸方法によって延伸することができる。延伸することにより高分子量PTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなるPTFE多孔体(膜)となる。
好ましくは、シート状または棒状のペースト押出物を押出方向にロール延伸することで、一軸延伸膜を得ることができる。
更に、テンター等により幅方向に延伸して、二軸延伸膜も得ることができる。
延伸前に半焼成処理を行うことも好ましい。
【0426】
このPTFE延伸体は、高い空孔率を持つ多孔体であり、エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材、高分子電解質膜の支持材等として好適に利用できる。
また、繊維分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、換気/内圧調整分野、液濾過分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材としても有用である。
以下に、具体的な用途を例示する。
【0427】
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
【0428】
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルタ(産業用)、耐熱バグフィルタ(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
【0429】
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
【0430】
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
【0431】
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
【0432】
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
【0433】
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
【0434】
上述の重合体(I)を用いて、低分子量PTFEを製造することもできる。本開示の第一の製造方法において、フルオロポリマーは、低分子量PTFEであってよい。
低分子量PTFEは、重合により製造しても良いし、重合で得られた高分子量PTFEを公知の方法(熱分解、放射線照射分解等)で低分子量化して製造することもできる。
【0435】
分子量60万以下の低分子量PTFE(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させること等を目的とした添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器部材、トナー等の製造に好適である(例えば、特開平10-147617号公報参照。)。
【0436】
また、更に連鎖移動剤の存在下、水性媒体中に重合開始剤及び上記重合体(I)を分散させ、TFE、又は、TFEと共重合し得るモノマーとTFEを重合させることによって、低分子量PTFEを得てもよい。
【0437】
上記重合により得られる低分子量PTFEを粉末として用いる場合、上記水性分散液を凝析させることで粉末粒子とすることができる。
【0438】
本開示において、高分子量PTFEとは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有するPTFEを意味する。他方、低分子量PTFEとは、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しないPTFEを意味する。
【0439】
上記非溶融加工性とは、ASTM D 1238及びD 2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
【0440】
フィブリル化性の有無は、TFEの重合体から作られた粉末である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
【0441】
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。本開示において、「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0442】
上記低分子量PTFEは、380℃における複素粘度が1×10~7×10Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記複素粘度が上記の範囲内にあることを意味する。
【0443】
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも複素粘度が極めて高く、その正確な複素粘度を測定することは困難である。他方、上記低分子量PTFEの複素粘度は測定可能であるが、上記低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本開示では、上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、複素粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
【0444】
上記高分子量PTFEは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましく、335~345℃であることがより好ましい。上記低分子量PTFEは、ピーク温度が322~333℃であることが好ましく、324~332℃であることがより好ましい。上記ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。また、上記ピーク温度は、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEを10℃/分の条件で昇温させることにより得られる示差熱(DTA)曲線に現れる極大値に対応する温度として、特定できる。
【0445】
上記高分子量PTFEは、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0446】
上述の重合体(I)を用いて得られたPTFEファインパウダーから、未焼成テープ(生テープ)を得ることもできる。
【0447】
(II)溶融加工性フッ素樹脂
(1)工程Cにおいて、FEPの重合は、重合温度10~150℃、重合圧力0.3~6.0MpaGにて行うことが好ましい。
【0448】
FEPの好ましい単量体組成(質量%)は、TFE:HFP=(60~95):(5~40)、より好ましくは(85~92):(8~15)である。上記FEPとしては、また、更に第3成分としてパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類を用い、全単量体の0.1~2質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。
【0449】
上記FEPの重合において、上記重合体(I)の添加量としては、上述した工程Cにおける重合体(I)の添加量を採用することができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量を添加する。
【0450】
上記FEPの重合において、連鎖移動剤としては、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等を使用することが好ましく、pH緩衝剤としては、炭酸アンモニウム、燐酸水素二ナトリウム等を使用することが好ましい。
【0451】
本開示の第1の製造方法において、フルオロポリマーがFEPである場合には、得られるFEPの水性分散液を必要に応じて濃縮等の後処理した後、乾燥、粉末にし、次いで溶融押出することによってペレットにしても良い。FEPの水性分散液中の水性媒体は、必要に応じて非イオン性界面活性剤などの添加剤を含むものであってもよいが、水溶性アルコール等の水溶性有機溶媒を含むものであってもよいし、水溶性有機溶媒を含まないものであってもよい。
【0452】
また、溶融押出は、一般にペレット化可能な押出条件であれば、押出条件を適宜設定して行うことができる。
【0453】
本開示の第1の製造方法では、フルオロポリマーがFEPである場合には、FEPが、ポリマー主鎖及びポリマー側鎖の少なくとも一方の部位に、-CF、-CFH等の末端基を有しているものであってよいが、-COOH、-CHOH、-COF、-CF=CF-、-CONH、-COOCH等の熱的に不安定な基(以下「不安定末端基」という)は含有量が低いか、ないことが好ましい。
【0454】
上記不安定末端基は、化学的に不安定であることから、樹脂の耐熱性を低下させるだけでなく、得られた電線の減衰量が増大する原因となる。
【0455】
本開示の第1の製造方法では、フルオロポリマーは、不安定末端基と-CFH末端基とを合計した数が炭素数1×10個当たり50個以下であることが好ましい。より好ましくは炭素原子1×10個あたり20個未満であることが好ましく、さらに好ましくは5個以下であることが好ましい。上記不安定末端基および-CFH末端基が存在せず全て-CF末端基であってもよい。
【0456】
不安定末端基および-CFH末端基はフッ素化処理により-CF末端基に変換させて安定化させることができる。フッ素化処理方法は特に限定されないが、重合体を、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源にさらす方法を挙げることができる。上記フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスや、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、及び、フッ化ハロゲン、例えば、IF、ClF等が挙げられる。なかでも、フッ素化ガスとFEPを直接接触させる方法が好ましく、上記接触は、反応制御の点で、フッ素ガス濃度10~50質量%の希釈フッ素ガスを用いて行うことが好ましい。上記希釈フッ素ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスでフッ素ガスを希釈することにより得ることができる。上記フッ素ガス処理は、例えば、100~250℃の温度で行うことができる。なお、処理温度は、先の範囲に限定されることなく、状況に応じて適宜設定することができる。上記フッ素ガス処理は、希釈フッ素ガスを連続的又は間欠的に反応器内に供給して行うことが好ましい。このフッ素化処理は重合後の乾燥粉末でも溶融押出したペレットでもよい。
【0457】
FEPは、成形性がよく、成形不良が生じにくいことに加え、良好な耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、絶縁性、電気特性等を有する。
【0458】
上記FEPの粉末の製造方法は、上述した本開示の製造方法で得られたFEPを含むフルオロポリマー水性分散液を乾燥させて粉体化することによって粉末を得る方法である。
【0459】
上記粉末は、フッ素化されていてもよい。上記のフッ素化された粉末の製造方法は、上述した粉末の製造方法で得られた粉末にフッ素ガスを供給することでフッ素化させることによってフッ素化された粉末を得る方法である。
【0460】
上記FEPのペレットの製造方法は、FEPの粉末をペレット化することによってペレットを得る方法である。
【0461】
上記ペレットは、フッ素化されていてもよい。上記のフッ素化されたペレットの製造方法は、上述したペレットの製造方法で得られたペレットにフッ素ガスを供給することでフッ素化させることによってフッ素化されたペレットを得る方法である。
【0462】
このため、このFEPは、例えば、電線、発泡電線、ケーブル、ワイヤ等の被覆材、チューブ、フィルム、シート、フィラメント等の種々の成形品の製造に供することができる。
【0463】
(2)工程Cにおいて、PFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の重合は、通常、重合温度10~100℃、重合圧力0.3~6.0MPaGで行うことが好ましい。
【0464】
TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)=(90~99.7):(0.3~10)、より好ましくは(97~99):(1~3)である。上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、式:CF=CFORf(式中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基)で表されるものを使用することが好ましい。
【0465】
TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:パーフルオロアリルエーテル=(90~99.7):(0.3~10)、より好ましくは(97~99):(1~3)である。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、式:CF=CFCFORf(式中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基)で表されるものを使用することが好ましい。
【0466】
上記TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の重合において、上述の重合体(I)の添加量としては、上述した工程Cにおける重合体(I)の添加量を採用することができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量で添加することが好ましい。
【0467】
上記TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の重合において、連鎖移動剤としてシクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル、メタン、エタン等を使用することが好ましく、pH緩衝剤として、炭酸アンモニウム、燐酸水素二ナトリウム等を使用することが好ましい。
【0468】
本開示の第1の製造方法において、フルオロポリマーがPFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体またはTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体である場合には、得られるPFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体またはTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の水性分散液を必要に応じて濃縮等の後処理した後、乾燥、粉末にし、次いで溶融押出することによってペレットにしても良い。上記の水性分散液中の水性媒体は、必要に応じて非イオン性界面活性剤などの添加剤を含むものであってもよいが、水溶性アルコール等の水溶性有機溶媒を含むものであってもよいし、水溶性有機溶媒を含まないものであってもよい。
【0469】
また、溶融押出は、一般にペレット化可能な押出条件であれば、押出条件を適宜設定して行うことができる。
【0470】
上記の共重合体は、その耐熱性を向上させ、さらに成形品の薬液透過抑制効果をさらに強化する目的でフッ素ガス処理を施すことが好ましい。
【0471】
フッ素ガス処理は、フッ素ガスを薬液透過抑制剤に接触させることにより行なう。しかし、フッ素との反応は非常に発熱性であるから、フッ素を窒素のような不活性ガスで希釈することが好適である。フッ素ガス/不活性ガス混合物中のフッ素量は1~100質量%、好ましくは10~25質量%である。処理温度は150~250℃、好ましくは200~250℃であり、フッ素ガス処理時間は3~16時間、好ましくは4~12時間である。
フッ素ガス処理のガス圧は1~10気圧の範囲であるが、好ましくは大気圧が使用される。反応器を大気圧で用いる場合、フッ素ガス/不活性ガス混合物を反応器中へ連続的に通過させればよい。その結果、上記共重合体の不安定な末端は-CF末端に転化され、熱的に安定となる。
【0472】
上記共重合体およびその組成物の成形方法としては、従来のPFAの成形法と同様に圧縮成形、トランスファ成形、押出成形、射出成形、ブロー成形などの成形法が適用できる。
【0473】
このような成形法により所望の成形品を得ることができるが、成形品の例をあげると、シート、フィルム、パッキン、丸棒、角棒、パイプ、チューブ、丸槽、角槽、タンク、ウェハーキャリア、ウェハーボックス、ビーカー、フィルターハウジング、流量計、ポンプ、バルブ、コック、コネクター、ナット、電線、耐熱電線などがある。
【0474】
これらのうち、特に薬液の不透過性が要求される各種の化学反応装置、半導体製造装置、さらには酸系またはアルカリ系の薬液供給装置などに使用するチューブ、パイプ、タンク、コネクターなどに好適に使用できる。
【0475】
更に、PFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の水性分散液に、非イオン性界面活性剤を適宜加え、必要に応じて、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミドおよび/またはポリイミド、並びに金属粉末を、有機溶媒中に溶解または分散させることで、プライマー組成物を得ることができる。このプライマー組成物を金属表面に施し、かくして形成されたプライマー層上に溶融加工性フッ素樹脂組成物を施し、プライマー層と共に溶融加工性フッ素樹脂組成物層を焼成することからなる金属表面へのフッ素樹脂の被覆方法にも用いることができる。
【0476】
(3)工程Cにおいて、ETFEの重合は、重合温度10~100℃、重合圧力0.3~2.0MPaGで行うことが好ましい。
【0477】
ETFEの好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:エチレン=(50~99):(50~1)である。上記ETFEとしては、また、更に第3モノマーを用い、全単量体の0~20質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:第3モノマー=(63~94):(27~2):(1~10)である。上記第3モノマーとしては、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタ-1-エン、2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CH=CFCFCFCFH)、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン((CFC=CH)が好ましい。
【0478】
上記ETFEの重合において、上述の重合体(I)の添加量としては、上述した工程Cにおける重合体(I)の添加量を採用することができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量で添加する。
【0479】
上記ETFEの重合において、連鎖移動剤として、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等を使用することが好ましい。
【0480】
本開示の第1の製造方法において、フルオロポリマーがETFEである場合には、得られるETFEの水性分散液を必要に応じて濃縮等の後処理した後、乾燥、粉末にし、次いで溶融押出することによってペレットにしても良い。上記の水性分散液中の水性媒体は、必要に応じて非イオン性界面活性剤などの添加剤を含むものであってもよいが、水溶性アルコール等の水溶性有機溶媒を含むものであってもよいし、水溶性有機溶媒を含まないものであってもよい。
【0481】
また、溶融押出は、一般にペレット化可能な押出条件であれば、押出条件を適宜設定して行うことができる。
【0482】
上記ETFEのシートは、押出成形してシートにすることができる。すなわち、ETFE粉末、またはペレットを溶融させ、ダイから連続的に押し出し、冷却して得られるシート状の成形品にすることができる。ETFEには添加剤が添加されていてもよい。
【0483】
添加剤としては、公知のものを適宜用いることができる。具体例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、難燃剤、難燃フィラー、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。耐候性が優れる点からは無機系添加剤が好ましい。
上記ETFEのシートにおける添加剤の含有量は、ETFEのシートの総質量に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0484】
上記ETFEのシートは、機械的強度および外観に優れることから、膜構造建築物(運動施設、園芸施設、アトリウム等)用の膜材(屋根材、天井材、外壁材、内壁材、被覆材等)として好適である。また、膜構造建築物の膜材だけではなく、たとえば、屋外使用板材(防音壁、防風フェンス、越波柵、車庫天蓋、ショッピングモール、歩行路壁、屋根材)、ガラス飛散防止フィルム、耐熱・耐水シート、建材等(テント倉庫のテント材、日よけ用膜材、明かり取り用の部分屋根材、ガラスに替わる窓材、防炎仕切り用膜材、カーテン、外壁補強、防水膜、防煙膜、不燃透明仕切り、道路補強、インテリア(照明、壁面、ブランド等)、エクステリア(テント、看板等)等)、生活レジャー用品(釣りざお、ラケット、ゴルフクラブ、映写幕等)、自動車用材料(幌、制振材、ボディ等)、航空機材料、船舶材料、家電外装、タンク、容器内壁、フィルタ、工事用膜材、電子材料(プリント基板、配線基板、絶縁膜、離型膜等)、太陽電池モジュールの表面材料、太陽熱発電用のミラー保護材、ソーラー温水器の表面材等に有用である。
【0485】
(4)本開示の第1の製造方法を使用して、電解質ポリマー前駆体を含むフルオロポリマー水性分散液を製造することもできる。工程Cにおいて、電解質ポリマー前駆体の重合は、重合温度10~100℃、重合圧力0.1~2.0MPaGで行うことが好ましい。電解質ポリマー前駆体とは、下記に示すようなビニルエーテルモノマーからなり、加水分解処理を経てイオン交換性ポリマーに変換しうるものである。
【0486】
電解質ポリマー前駆体に用いられるビニルエーテルモノマーとしては、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表されるフルオロモノマーを挙げることができる。
電解質ポリマー前駆体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:ビニルエーテル=(50~99):(50~1)であり、より好ましくは、TFE:ビニルエーテル=(50~93):(50~7)である。
【0487】
上記電解質ポリマー前駆体は、全単量体の0~20質量%である範囲内で第3モノマーで変性させたものであってもよい。第3モノマーとしては、CTFE、フッ化ビニリデン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等を挙げることができる。
【0488】
このようにして得られた電解質ポリマー前駆体は、例えば膜状に成形した後、アルカリ溶液による加水分解及び、鉱酸による処理を経て、高分子電解質膜として燃料電池や電解装置及びレドックスフロー電池等に使用することができる。
また、電解質ポリマー前駆体の分散状態を維持したまま、アルカリ溶液による加水分解を施すことにより電解質ポリマー分散液を得ることができる。
引き続き、加圧容器内で、120℃以上に加熱することで、例えば、水/アルコール混合溶媒に溶解させ、溶液状態にすることが出来る。
このようにして得られた溶液は、例えば電極のバインダーとして使用したり、種々の添加剤と複合してキャスト製膜し、例えば防汚塗膜や有機アクチュエーター等に使用することができる。
【0489】
(5)TFE/VDF共重合体
工程Cにおいて、TFE/VDF共重合体の重合温度としては特に限定されず、0~100℃であってよい。重合圧力は、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0~9.8MPaGであってよい。
【0490】
TFE/VDF共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:VDF=(5~90):(95~10)である。TFE/VDF共重合体としては、また、更に第3モノマーを用い、全単量体の0~50モル%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:第3モノマー=(30~85):(10~69.9):(0.1~10)である。
【0491】
上記第3モノマーとしては、
式: CX1112=CX13(CX1415n1116
(式中、X11~X16は同一又は異なってH、F又はClを表し、n11は0~8の整数を表す。但し、TFE及びVDFを除く。)で示されるモノマー、又は、
式: CX2122=CX23-O(CX2425n2126
(式中、X21~X26は同一又は異なってH、F又はClを表し、n21は0~8の整数を表す。)で示されるモノマーが好ましい。
【0492】
また、第3モノマーはフッ素非含有エチレン性単量体でもよい。上記フッ素非含有エチレン性単量体は、耐熱性や耐薬品性を維持する点で、炭素数6以下のエチレン性単量体から選ばれることが好ましい。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等)、マレイン酸、イタコン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸ビニルスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0493】
TFE/VDF共重合体の重合において、上述の重合体(I)の添加量としては、上述した工程Cにおける重合体(I)の添加量を採用することができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~5質量%の量で添加する。
【0494】
重合により得られたTFE/VDF共重合体を、アンモニア水、アンモニアガス又はアンモニアを生成しうる窒素化合物と接触させることによりアミド化処理してもよい。
【0495】
上述した方法により得たTFE/VDF共重合体は、紡糸延伸方法によりTFE/VDF共重合体繊維を得る原料として使用することも好ましい。上記紡糸延伸方法とは、TFE/VDF共重合体を溶融紡糸してから冷却固化して未延伸糸を得た後、該未延伸糸を加熱筒状体中に走行させて延伸することによりTFE/VDF共重合体繊維を得る方法である。
【0496】
上記TFE/VDF共重合体を、有機溶剤に溶解させて、上記TFE/VDF共重合体の溶液を得ることもできる。上記有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;更に、それらの混合溶剤等の低沸点の汎用有機溶剤を挙げることができる。上記溶液は、電池用結着剤として使用できる。
【0497】
上記TFE/VDF共重合体の水性分散液をポリオレフィン樹脂からなる多孔性基材上にコーティングし複合多孔膜として使用することも好ましい。水性分散液に無機粒子、及びまたは有機系粒子を分散させ、多孔性基材上にコーティングし複合多孔膜として使用することも好ましい。このようにして得られた複合多孔膜はリチウム二次電池のセパレーターなどの使用することができる。
【0498】
上記溶融加工性フッ素樹脂の粉末は、粉体塗料として好適に利用できる。上記溶融加工性フッ素樹脂粉末からなる粉体塗料を基材に適用すると、表面が平滑な皮膜を得ることができる。平均粒径が1μm以上100μm未満である溶融加工性フッ素樹脂粉末は、特に静電塗装に使用する粉体塗料として好適であり、平均粒径が100μm以上1000μm以下である溶融加工性フッ素樹脂粉末は、特に回転塗装又は回転成形に使用する粉体塗料として好適である。
【0499】
上記溶融加工性フッ素樹脂粉末は、上述した本開示の第1の製造方法で得られた溶融加工性フッ素樹脂の水性分散液を乾燥させて粉体化することによって粉末を得る方法により製造できる。上記溶融加工性フッ素樹脂粉末を製造するための製造方法も本開示の一つである。
【0500】
(III)フッ素ゴム
工程Cにおいて、上記フッ素ゴムの重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水及び上記重合体(I)を仕込み、脱酸素後、モノマーを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して、反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のモノマーを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のモノマーを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のモノマーをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。この場合、ポリマーラテックスを連続的に反応容器より取り出すことができる。
【0501】
特に、上記フッ素ゴムとして、熱可塑性エラストマーを製造する場合、国際公開第00/01741号に開示されているように、一旦フルオロポリマー微粒子を高い上記濃度で合成してから希釈して更に重合を行うことで、通常の重合に比べて、最終的な重合速度を速くできる方法を使用することも可能である。
【0502】
上記フッ素ゴムの重合は、目的とするポリマーの物性、重合速度制御の観点から適宜条件を選択するが、重合温度は通常-20~200℃、好ましくは5~150℃、重合圧力は通常0.5~10MPaG、好ましくは1~7MPaGにて行われる。また、重合媒体中のpHは、公知の方法等により、後述するpH調整剤等を用いて、通常2.5~13に維持することが好ましい。
【0503】
上記フッ素ゴムの重合に用いるモノマーとしては、フッ化ビニリデンの他に、炭素原子と少なくとも同数のフッ素原子を有しフッ化ビニリデンと共重合し得る含フッ素エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。上記含フッ素エチレン性不飽和モノマーとしては、トリフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、へキサフルオロブテン、オクタフルオロブテンが挙げられる。なかでも、へキサフルオロプロペンは、それが重合体の結晶成長を遮断した場合に得られるエラストマーの特性のために特に好適である。上記含フッ素エチレン性不飽和モノマーとしては、また、トリフルオロエチレン、TFE及びCTFE等が挙げられるし、1種若しくは2種以上の塩素及び/又は臭素置換基をもった含フッ素モノマーを用いることもできる。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)も用いることができる。TFE及びHFPは、フッ素ゴムを製造するのに好ましい。
【0504】
フッ素ゴムの好ましい単量体組成(質量%)は、フッ化ビニリデン:HFP:TFE=(20~70):(30~48):(0~32)である。この組成のフッ素ゴムは、良好なエラストマー特性、耐薬品性、及び、熱的安定性を示す。
【0505】
上記フッ素ゴムの重合において、上述の重合体(I)の添加量としては、上述した工程Cにおける重合体(I)の添加量を採用することができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~20質量%の量で添加する。好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
【0506】
上記フッ素ゴムの重合において、重合開始剤としては、公知の無機ラジカル重合開始剤を使用することができる。上記無機ラジカル重合開始剤としては、従来公知の水溶性無機過酸化物、例えば、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムの過硫酸塩、過リン酸塩、過硼酸塩、過炭素塩又は過マンガン酸塩が特に有用である。上記ラジカル重合開始剤は、更に、還元剤、例えば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、ハイポ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜リン酸塩若しくはハイポ亜リン酸塩により、又は、容易に酸化される金属化合物、例えば第一鉄塩、第一銅塩若しくは銀塩により、更に活性化することができる。好適な無機ラジカル重合開始剤は、過硫酸アンモニウムであり、過硫酸アンモニウムと重亜硫酸ナトリウムと共にレドックス系において使用することが、より好ましい。
【0507】
上記重合開始剤の添加濃度は、目的とするフルオロポリマーの分子量や、重合反応速度によって適宜決定されるが、モノマー全量100質量%に対して0.0001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%の量に設定する。
【0508】
上記フッ素ゴムの重合において、連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができるが、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、ケトン、塩素化合物、カーボネート等を用いることができ、熱可塑性エラストマーでは、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、塩素化合物、ヨウ素化合物等を用いることができる。なかでも、アセトン、イソプロピルアルコールが好ましく、熱可塑性エラストマーの重合では、イソペンタン、マロン酸ジエチル及び酢酸エチルは、反応速度が低下しにくいという観点から好ましく、I(CFI、I(CFI、ICHI等のジヨウ素化合物は、ポリマー末端のヨウ素化が可能で、反応性ポリマーとして使用できる観点から好ましい。
【0509】
上記連鎖移動剤の使用量は、供給されるモノマー全量に対して、通常0.5×10-3~5×10-3モル%、好ましくは1.0×10-3~3.5×10-3モル%であることが好ましい。
【0510】
上記フッ素ゴムの重合において、乳化安定剤としてパラフィンワックス等を好ましく用いることができ、熱可塑性エラストマーの重合では、pH調整剤として、リン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を好ましく用いることができる。
【0511】
工程Cによって得られるフッ素ゴムを含む処理前水性分散液は、重合が終了した時点で、固形分濃度が1.0~40質量%、平均粒子径が0.03~1μm、好ましくは0.05~0.5μm、数平均分子量が1,000~2,000,000のものである。
【0512】
本開示の第1の製造方法によって得られるフッ素ゴムの水性分散液は、必要に応じて、炭化水素系界面活性剤等の分散安定剤の添加、濃縮等をすることにより、ゴム成形加工に適したディスパージョンにすることができる。上記ディスパージョンは、pH調節、凝固、加熱等を行い処理される。各処理は次のように行われる。
【0513】
上記pH調節は、硝酸、硫酸、塩酸若しくはリン酸等の鉱酸、及び/又は、炭素数5以下でpK=4.2以下のカルボン酸等を加え、pHを2以下とすることからなる。
【0514】
上記凝固は、アルカリ土類金属塩を添加することにより行われる。上記アルカリ土類金属塩としては、カルシウム又はマグネシウムの硝酸塩、塩素酸塩及び酢酸塩が挙げられる。
【0515】
上記pH調節及び上記凝固は、いずれを先に行ってもよいが、先にpH調節を行うことが好ましい。
【0516】
各操作の後、フッ素ゴムと同容量の水で洗浄を行い、フッ素ゴム内に存在する少量の緩衝液や塩等の不純物を除去し、乾燥を行う。乾燥は、通常、乾燥炉内で、高温下、空気を循環させながら、約70~200℃で行われる。
【0517】
上記フッ素ゴムとしては、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
【0518】
部分フッ素化ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム及びテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0519】
上記ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド45~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~15モル%とからなる共重合体であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド50~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50~20モル%とからなる共重合体である。
【0520】
上記ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(100):
CHX101=CX102Rf101
(式中、X101およびX102は、一方がHであり、他方がFであり、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(170):
CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロモノマー、架橋部位を与えるモノマー等のモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)で表されるフルオロモノマーが好ましい。
【0521】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VDF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕系ゴム、VDF/PMVE/TFE系ゴム、VDF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー系ゴムとしては、VDF/CH=CFCF系ゴムが好ましく、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴムとしては、VDF/TFE/CH=CFCF系ゴムが好ましい。
【0522】
上記VDF/CH=CFCF系ゴムは、VDF40~99.5モル%、及び、CH=CFCF0.5~60モル%からなる共重合体であることが好ましく、VDF50~85モル%、及び、CH=CFCF20~50モル%からなる共重合体であることがより好ましい。
【0523】
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体であることが好ましい。
【0524】
上記フッ素ゴムは、パーフルオロゴムであってもよい。上記パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0525】
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは、55~80/20~45であり、更に好ましくは、55~70/30~45である。
【0526】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
【0527】
TFE/炭素数が4~12の一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは、60~88/12~40であり、更に好ましくは、65~85/15~35である。
【0528】
TFE/炭素数が4~12の一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
【0529】
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0530】
上記パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(140)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(160)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(160)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0531】
上記パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
【0532】
上記フッ素ゴムは、高温における圧縮永久歪みに優れる点から、ガラス転移温度が-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-50℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-3℃以下であることが更に好ましい。
【0533】
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0534】
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0535】
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0536】
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
【0537】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃又は140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0538】
本開示の第1の製造方法において用いるフッ素ゴムを含む処理前水性分散液は、上記重合から得られるものであれば何れの形態にあってもよく、重合上がりの水性分散液であってもよいし、重合上がりの水性分散液を希釈又は濃縮したものであってもよいし、分散安定化処理したものであってもよい。また、本開示の第1の製造方法により得られるフッ素ゴムを含むフルオロポリマー水性分散液は、従来公知の方法で凝析、乾燥等することにより得られるガム(gum)又はクラム(crumb)として使用することもできる。工程Cで用いる重合体(I)は、水性分散液の安定性を向上させることが可能であり、上記のように重合途中で有機パーオキサイドのような開始剤、ヨウ素または臭素化合物のような連鎖移動剤など難水溶性物質を添加する重合方法においてより好ましく使用される。
【0539】
上記ガム(gum)は、フッ素ゴムからなる粒状の小さな塊であり、上記クラム(crumb)とは、フッ素ゴムが、室温でガムとして小粒状の形を保つことができず互いに融着した結果、不定形な塊状の形態となったものである。
【0540】
上記フッ素ゴムは、硬化剤、充填剤等を加え、フッ素ゴム組成物に加工することができる。
【0541】
上記硬化剤としては、ポリオール、ポリアミン、有機過酸化物、有機スズ、ビス(アミノフェノール)テトラアミン、又は、ビス(チオアミノフェノール)等が挙げられる。
【0542】
上記フッ素ゴム組成物は、上述のフッ素ゴムからなるものであるので、乳化剤を実質的に含有せず、成形加工時に架橋し易い点で優れている。
【0543】
上記フッ素ゴムを用いて成形加工することによりフッ素ゴム成形体を得ることができる。
上記成形加工する方法としては、特に限定されず、上述の硬化剤を用いて行う公知の方法が挙げられる。
【0544】
上記フッ素ゴム成形体は、シール、ガスケット、電線被覆、ホース、チューブ、積層体、アクセサリー等として好適であり、特に半導体製造装置用部品、自動車部品、等に好適である。
【0545】
本開示の第1の製造方法によって、フルオロポリマー水性分散液が得られる。
上記フルオロポリマー水性分散液は、炭化水素系界面活性剤を含んでよい。炭化水素系界面活性剤としては、上述した炭化水素系界面活性剤等が挙げられる。
上記炭化水素系界面活性剤は、重合により得られたフルオロポリマーを水性媒体に分散させるための分散剤として、好適に用いることができる。
【0546】
本開示は更に、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)、水性媒体、およびフルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含むフルオロポリマー水性分散液であって、該フルオロポリマー水性分散液の明度L*と、該フルオロポリマー水性分散液を精密濾過して得られる精密濾過後フルオロポリマー水性分散液(精密濾過膜使用の条件で精製した後のフルオロポリマー水性分散液)の明度L*との差ΔL*が16未満であるフルオロポリマー水性分散液を提供する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
上記精製(精密濾過)の具体的な方法は、フルオロポリマー水性分散液156.4gに1.82gの非イオン性界面活性剤を添加し、純水156.4gあたり0.72gの非イオン性界面活性剤を加えて追加水とし、精密濾過膜(ポリエチレン製、内径0.7mm、長さ130mm、平均細孔径0.1μm、有効膜面積150cm)に上記水性分散液を0.1MPaの水圧、25℃の温度で接触させる条件での精密ろ過である。
上記ΔL*は、下記式で表される値であり、精製後の明度L*から精製前の明度L*を減じた値の絶対値である。
ΔL*=|精製後の明度L*-精製前の明度L*|
上記ΔL*は12以下がより好ましく、8以下が更に好ましく、5以下が更により好ましく、3以下が殊更に好ましく、1以下が特に好ましい。
【0547】
本開示のフルオロポリマー水性分散液は上述した本開示の第1の製造方法により得ることができる。
【0548】
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液におけるフルオロポリマーとしては、フッ素樹脂がより好ましく、なかでも上述したフッ素置換率が50%以上のフッ素樹脂が更に好ましく、上記フッ素置換率が50%を超えるフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が55%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が60%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が75%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が80%以上のフッ素樹脂が特に好ましく、上記フッ素置換率が90~100%のフッ素樹脂、すなわちパーフルオロ樹脂が最も好ましい。上記パーフルオロ樹脂としては、上記フッ素置換率が95~100%のフッ素樹脂がより好ましく、PTFE、FEP、PFAが更に好ましく、PTFEが特に好ましい。PTFEとしては、本開示の第1の製造方法で記載した態様をいずれも採用できる。
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液におけるフルオロポリマーとしては、PTFE、FEP、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が好ましく、PTFEが更に好ましい。
【0549】
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液は、重合体(I)の含有量が、0.0001~10質量%であることが好ましい。0.0001質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、10質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。上記重合体(I)の含有量のより好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は5質量%であり、更に好ましい上限は3質量%である。
上記重合体(I)の含有量は上述したように固体NMRから測定することができる。
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液は、1種の単一の重合体(I)を含んでいてもよいし、2種以上の異なる重合体(I)を含んでいてもよい。
【0550】
上記重合体(I)としては、本開示の第1の製造方法で記載した態様を全て適用できる。
【0551】
本開示のフルオロポリマー水性分散液は、非イオン性界面活性剤を含むことも好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、上述した炭化水素系界面活性剤として挙げられる物が採用できる。特に、上記一般式(i)により表される化合物、及び、上記一般式(ii)により表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0552】
本開示の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液において、フルオロポリマーの含有量は限定されないが、例えば、0.01~80質量%であってよい。好ましくは、0.02質量%以上であり、より好ましくは、0.05質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、更に好ましくは55質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以下であり、最も好ましくは45質量%以下である。
本開示の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液における、フルオロポリマーの含有量は、例えば、MF膜により固体成分を分離する方法で求めることができる。
本開示の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液において、重合体(I)、水及びフルオロポリマーの合計量は95.0質量%以上が好ましく、99.0質量%以上が好ましく、99.9質量%以上が更に好ましく、実質的に重合体(I)、水及びフルオロポリマーのみからなることが特に好ましい。
【0553】
本開示の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、上記フルオロポリマー水性分散液は、明度L*が70以上であることが好ましい。より好ましくは、80以上であり、更に好ましくは、90以上である。明度L*は、86超であってよく、91超であってよく、95超であってよい。
上記明度L*は、X-rite測色計により測定する。
【0554】
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液は、含フッ素界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。本開示のフルオロポリマー水性分散液において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含まない」とは、フルオロポリマーに対して含フッ素界面活性剤が10質量ppm以下であることを意味する。含フッ素界面活性剤の含有量は、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更により好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界以下である。
上記含フッ素界面活性剤量は、公知な方法で定量できる。例えば、LC/MS/MS分析にて定量することが出来る。まず、得られた水性分散液をメタノールの有機溶剤に抽出し、抽出液をLC/MS/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる界面活性剤の構造式との一致を確認する。
その後、確認された界面活性剤を5水準以上の濃度の水溶液を作成し、それぞれの濃度のLC/MS/MS分析を行ない、エリア面積との検量線を作成する。
得られた水性分散液をメタノールにてソックスレー抽出を行ない、抽出液をLC/MS/MS分析を行なうことで定量測定することが出来る。
すなわち、含フッ素界面活性剤の含有量は、例えば、LC/MS/MS分析にて定量することができる。まず、水性分散液にメタノールを加え、抽出を行ない、得られた抽出液をLC/MS/MS分析する。さらに抽出効率を高めるために、ソックスレー抽出、超音波処理等による処理を行ってもよい。得られたLC/MS/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素界面活性剤の構造式との一致を確認する。その後、確認された含フッ素界面活性剤の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。そして、検量線を用いて、抽出液中の含フッ素界面活性剤のLC/MS/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素界面活性剤の含有量に換算することができる。
上記含フッ素界面活性剤としては、上述した本開示の第1の製造方法において例示したものと同じである。例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよく、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよく、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤であってよい。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、上記一般式(N)で表される化合物が挙げられ、具体的には、一般式(N)で表される化合物、一般式(N)で表される化合物、一般式(N)で表される化合物、一般式(N)で表される化合物、及び、一般式(N)で表される化合物が挙げられる。より具体的には、一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、一般式(XII)で表される化合物(XII)、一般式(XIII)で表される化合物(XIII)などが挙げられる。
【0555】
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液は、濃縮するか又は分散安定化処理してディスパージョンとしてもよいし、凝析又は凝集に供して回収し乾燥して得られる粉末その他の固形物としてもよい。
【0556】
本開示の第1の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液、並びに、本開示のフルオロポリマー水性分散液には、顔料や充填剤等の従来公知の添加剤を添加することができる。上記添加剤は、本開示の効果を妨げない範囲で使用すればよい。
【0557】
上記の濃縮操作によって、上記重合体(I)を除去してもよい。
【0558】
本開示の第1の製造方法を行うことにより得られたフルオロポリマー水性分散液は、また、用途によっては濃縮せずに分散安定化処理して、ポットライフの長い水性分散液に調製することもできる。使用する分散安定剤としては上記と同じものを挙げることができる。
【0559】
上記フルオロポリマー水性分散液の用途としては特に限定されず、水性分散液のまま適用するものとして、基材上に塗布し乾燥した後必要に応じて焼成することよりなる塗装;不織布、樹脂成形品等の多孔性支持体を含浸させ乾燥した後、好ましくは焼成することよりなる含浸;ガラス等の基材上に塗布し乾燥した後、必要に応じて水中に浸漬し、基材を剥離して薄膜を得ることよりなるキャスト製膜等が挙げられ、これら適用例としては、水性分散型塗料、電極用結着剤、電極用撥水剤等が挙げられる。
【0560】
上記フルオロポリマー水性分散液は、公知の顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤等の配合剤を配合することにより、又は、更に他の高分子化合物を複合して、コーティング用水性塗料として用いることができる。
また添加剤用途として、電極の活物質の脱落を抑える結着剤、バインダー用途、ドリップ防止剤などのコンパウンド用途、土砂や埃等の舞い立ちを防止する塵埃抑制処理用途等に用いることができる。
【0561】
上記フルオロポリマー水性分散液の粘度を調整する目的で、あるいは顔料、フィラーなどの混和性改良の目的で、アニオン性界面活性剤を好ましく含むことができる。アニオン性界面活性剤は、経済面、環境面で問題のない範囲で適宜添加することができる。
【0562】
上記アニオン性界面活性剤としては、非フッ素化アニオン性界面活性剤や含フッ素アニオン性界面活性剤が挙げられるが、フッ素を含まない非フッ素化アニオン性界面活性剤、即ち炭化水素アニオン界面活性剤が好ましい。
【0563】
粘度を調整する目的の場合、公知のアニオン性界面活性剤であれば種類は特に限定されないが、例えば国際公開第2013/146950号や国際公開第2013/146947号に記載されているアニオン性界面活性剤を用いることができる。例えば、炭素数6~40、好ましくは炭素数8~20、より好ましくは炭素数9~13の飽和又は不飽和の脂肪族鎖を有するものが挙げられる。上記飽和又は不飽和の脂肪族鎖は、直鎖又は分岐鎖の何れであってもよく、環状構造を有するものであってもよい。上記炭化水素は、芳香族性であってもよいし、芳香族基を有するものであってもよい。上記炭化水素は、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有するものであってもよい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルアリールサルフェート及びそれらの塩;脂肪族(カルボン)酸及びその塩;リン酸アルキルエステル、リン酸アルキルアリールエステル又はそれらの塩;等が挙げられるが、中でも、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、脂肪族カルボン酸またはそれらの塩が好ましい。
アルキルサルフェートまたはその塩としては、ラウリル硫酸アンモニウム、またはラウリル硫酸ナトリウム等が好ましい。
脂肪族カルボン酸またはその塩としては、コハク酸、デカン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ハイドロドデカン酸、またはそれらの塩が好ましい。
【0564】
アニオン性界面活性剤の添加量は、アニオン界面活性剤やその他配合剤の種類にもよるが、フルオロポリマーの固形分質量に対して10ppm~5000ppmであることが好ましい。
アニオン性界面活性剤の添加量の下限としては、50ppm以上がより好ましく、100ppm以上が更に好ましい。添加量が少なすぎると、粘度調整効果が乏しい。
アニオン性界面活性剤の添加量の上限としては、3000ppm以下がより好ましく、2000ppm以下が更に好ましい。添加量が多すぎると水性分散液の機械的安定性、貯蔵安定性が損なわれることがある。
【0565】
上記フルオロポリマー水性分散液の粘度を調整する目的で、アニオン性界面活性剤以外に、例えば、メチルセルロース、アルミナゾル、ポリビニルアルコール、カルボキシル化ビニルポリマー等を配合することもできる。
【0566】
上記フルオロポリマー水性分散液に、必要に応じ、フルオロポリマー水性分散液の特徴を損なわない範囲でその他の高分子化合物を含有するものであってもよい。
上記その他の高分子化合物としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド(分散安定剤)、ポリエチレングリコール(分散安定剤)、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0567】
上記フルオロポリマー水性分散液を凝析することにより得られるフルオロポリマーを含む凝析物に対し、洗浄、乾燥を行うことにより、フルオロポリマーを製造することができる。上記凝析、又は、洗浄により発生した排水、及び/又は、乾燥工程で発生するオフガスから、上記重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を回収し、精製することにより、上記重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を再利用してもよい。上記回収、及び、精製を行う方法としては特に限定されるものではないが、公知の方法により行うことができる。例えば、特表2011-520020号公報に記載の方法により、米国特許出願公開第2007/15937号明細書、米国特許出願公開第2007/25902号明細書、米国特許出願公開第2007/27251号明細書に記載の方法が挙げられ、具体的には以下の方法が挙げられる。
【0568】
上記排水から重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を回収する方法としては、排水にイオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、クレイ、ゼオライト等の吸着粒子を接触させて上記重合体(I)等を吸着させた後、排水と吸着粒子とを分離し、上記重合体(I)等を吸着した吸着粒子を回収する方法が挙げられる。上記重合体(I)等を吸着した吸着粒子を焼却すれば、上記重合体(I)等の環境への放出を防ぐことができる。
【0569】
また、上記重合体(I)等を吸着したイオン交換樹脂粒子から公知の方法により上記重合体(I)等を脱離・溶出させて回収することもできる。例えば、イオン交換樹脂粒子が陰イオン交換樹脂粒子である場合、鉱酸を陰イオン交換樹脂に接触させるにより重合体(I)等を溶出させることができる。続いて得られる溶出液に水溶性有機溶媒を添加すると通常2相に分離するので、重合体(I)等を含む下相を回収して中和することにより、重合体(I)等を回収できる。上記水溶性有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル等の極性溶媒が挙げられる。
【0570】
上記重合体(I)等をイオン交換樹脂粒子から回収する別の方法としては、アンモニウム塩と水溶性有機溶媒を使用する方法、アルコールと所望により酸とを使用する方法が挙げられる。後者の方法では上記重合体(I)等のエステル誘導体が生成するので、蒸留することによりアルコールと容易に分離でき、上記重合体(I)等を容易に回収できる。
【0571】
上記排水にフルオロポリマー粒子や他の固形分が含まれる場合、排水と吸着粒子とを接触させる前に、上記排水からこれらを除去しておくことが好ましい。フルオロポリマー粒子や他の固形分を除去する方法としては、アルミニウム塩等を添加することによりこれらを沈殿させた後、排水と沈殿物とを分離させ、沈殿物を除去する方法、電気凝固法等が挙げられる。また、機械的な方法により除去してもよく、例えば、交差流ろ過法、深層ろ過法、プレコートろ過法が挙げられる。
上記排水中の未凝集の上記フルオロポリマー濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
【0572】
上記オフガスから上記重合体(I)等を回収する方法としては、スクラバーを使用して、脱イオン水、アルカリ水溶液、グリコールエーテル溶媒等の有機溶媒等と接触させて、重合体(I)等を含むスクラバー溶液を得る方法が挙げられる。アルカリ水溶液として高濃度アルカリ水溶液を使用すると、上記重合体(I)等が相分離した状態でスクラバー溶液が回収できるので、上記重合体(I)等の回収と再利用が容易である。アルカリ化合物としてはアルカリ金属水酸化物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0573】
上記重合体(I)等を含むスクラバー溶液を逆浸透膜等を使用して濃縮してもよい。濃縮したスクラバー溶液は通常フッ素イオンを含むが、濃縮後更にアルミナを添加して該フッ素イオンを除去することにより、上記重合体(I)等の再利用を容易にすることもできる。また、スクラバー溶液に吸着粒子を接触させて上記重合体(I)等を吸着させて、上述した方法により重合体(I)等を回収してもよい。
【0574】
上記のいずれかの方法により回収した重合体(I)等は、フルオロポリマーの製造に再利用することができる。
【0575】
本開示はまた、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上である水溶性重合体の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記水溶性重合体を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程A’を含むことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法(以下「本開示の第2の製造方法」ともいう)を提供する。
本開示の第2の製造方法は、重合体(I)の代わりに炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上である水溶性重合体を用いること以外は、上述した本開示の第1の製造方法と同じ方法及び態様を全て採用できる。本開示の第2の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液は、1種の単一の水溶性重合体を含んでいてもよいし、2種以上の異なる水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0576】
上記水溶性重合体としては特に限定されず、上述した重合体(I)の中から炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上である水溶性の重合体を用いることができるし、上述した重合体(I)以外の炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上である水溶性の重合体を用いることもできる。
【0577】
上記水溶性重合体としては、例えば、下記一般式(I):
CX=CXR-CZ-A (I)
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである。)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む水溶性の重合体が挙げられる。
上記水溶性重合体において、上記重合単位(I)の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が更により好ましく、90質量%以上が殊更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が最も好ましい。
【0578】
上記水溶性重合体は、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル(FVE)等に基づく含フッ素モノマーに基づく重合単位を含んでよい。
【0579】
上記水溶性重合体はまた、非含フッ素モノマーに基づく重合単位を含んでもよい。非含フッ素モノマーとしては、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体であればよく、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸類、加水分解性シリル基含有単量体、水酸基含有アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、α-オレフィン類等が挙げられる。上記非含フッ素モノマーとしては、なかでも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸類、及び、加水分解性シリル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
また、非含フッ素モノマーとして、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
そのほか、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体を併用してもよい。
【0580】
上記アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1~10のアクリル酸アルキルエステル、又は、アルキル基の炭素数が1~10のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、上記アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有アクリル単量体であってもよい。
これらのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、n-ブチルアクリレート、及び、メチルメタクリレートであることが好ましい。
【0581】
上記非含フッ素モノマーとしては、なかでも、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルへキシルメタクリレート、及び、シクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは、加水分解性シリル基を含有しないものである。
【0582】
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、n-ブチルアクリレートとメチルメタクリレートとの組合せ又はn-ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2-エチルへキシルメタクリレートとの組合せが更に好ましく、n-ブチルアクリレートとメチルメタクリレートと2-エチルへキシルメタクリレートとの組合せが特に好ましい。加えて、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有アクリル単量体を組み合わせることも好ましい。
【0583】
上記不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3-アリルオキシプロピオン酸、3-(2-アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、ウンデシレン酸などがあげられる。なかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくい点、カルボキシル基の導入を制御しやすい点から、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3-アリルオキシプロピオン酸、及び、ウンデシレン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0584】
上記加水分解性シリル基含有単量体としては、
CH=CHCOO(CHSi(OCH
CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
CH=CHCOO(CHSi(OC
CH=CHCOO(CHSi(CH)(OC
CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(OC
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OC
CH=C(CH)COO(CHO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CH(CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)COO(CH11Si(OCH
CH=C(CH)COO(CH11Si(CH)(OCH
などがあげられる。これらの加水分解性シリル基含有単量体は、単独で用いてもよいし、
2種以上を併用してもよい。
【0585】
上記加水分解性シリル基含有単量体としては、なかでも、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0586】
上記水酸基含有アルキルビニルエーテル類としては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどが挙げられる。重合反応性が優れる点で、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0587】
カルボン酸ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0588】
α-オレフィン類としては、たとえばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン、スチレンなどがあげられる。
【0589】
上記水溶性重合体の数平均分子量は、0.1×10以上が好ましく、0.2×10以上がより好ましく、0.3×10以上が更に好ましく、0.4×10以上が特に好ましく、0.5×10以上が殊更に好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、3.0×10以上が殊更特に好ましく、3.1×10以上が最も好ましい。また、75.0×10以下が好ましく、50.0×10以下がより好ましく、40.0×10以下が更に好ましく、30.0×10以下が更に好ましく、20.0×10以下が特に好ましい。上記水溶性重合体の重量平均分子量は、0.2×10以上が好ましく、0.4×10以上がより好ましく、0.6×10以上が更に好ましく、0.8×10以上が更により好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、5.0×10以上がより特に好ましく、10.0×10以上が更に特に好ましく、15.0×10以上が殊更に好ましく、20.0×10以上が殊更特に好ましく、25.0×10以上が最も好ましい。また、150.0×10以下が好ましく、100.0×10以下がより好ましく、60.0×10以下が更に好ましく、50.0×10以下が特に好ましく、40.0×10以下が殊更に好ましい。
上記数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出する値である。
【0590】
上記水溶性重合体は、53以下のイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。上記IXRは、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が更により好ましく、5以上が殊更に好ましく、8以上が特に好ましい。また、IXRは43以下がより好ましく、33以下が更に好ましく、23以下が特に好ましい。
上記水溶性重合体において、イオン性基は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。上記水溶性重合体は、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
水溶性重合体は、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。水溶性重合体のイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、ホスファート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましいイオン性基は、スルホナート基である。
【0591】
本開示はまた、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%(質量%)以上であり、かつ、イオン性基を含み、イオン交換率が53以下である重合体の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程A’’を含むことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法(以下「本開示の第3の製造方法」ともいう)を提供する。
本開示の第3の製造方法は、重合体(I)の代わりに、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上であり、かつ、イオン性基を含み、イオン交換率が53以下である重合体(以下「重合体α」とも記載する)を用いること以外は、本開示の第1の製造方法と同じ方法を全て採用できる。本開示の第3の製造方法で得られるフルオロポリマー水性分散液は、1種の単一の重合体αを含んでいてもよいし、2種以上の異なる重合体αを含んでいてもよい。
【0592】
上記重合体αとしては特に限定されず、上述した重合体(I)の中から炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上(原子構成比率)である水溶性の重合体を用いることができるし、上述した重合体(I)以外の炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換された割合が50%以上であり、かつ、イオン性基を含み、イオン交換率が53以下である重合体を用いることもできる。
【0593】
上記重合体αとしては、例えば、下記一般式(I):
CX=CXR-CZ-A (I)
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである。)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む水溶性の重合体が挙げられる。
上記重合体αにおいて、上記重合単位(I)の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が更により好ましく、90質量%以上が殊更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が最も好ましい。
【0594】
上記重合体αは、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル(FVE)等に基づく含フッ素モノマーに基づく重合単位を含んでよい。
【0595】
上記重合体αはまた、非含フッ素モノマーに基づく重合単位を含んでもよい。非含フッ素モノマーとしては、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体であればよく、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸類、加水分解性シリル基含有単量体、水酸基含有アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、α-オレフィン類等が挙げられる。上記非含フッ素モノマーとしては、なかでも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸類、及び、加水分解性シリル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
また、非含フッ素モノマーとして、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の単量体、不飽和カルボン酸類、並びに、加水分解性シリル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
そのほか、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体を併用してもよい。
上記非含フッ素モノマーとしては、上記水溶性重合体において記載したものを使用することができる。
【0596】
上記重合体αの数平均分子量は、0.1×10以上が好ましく、0.2×10以上がより好ましく、0.3×10以上が更に好ましく、0.4×10以上が特に好ましく、0.5×10以上が殊更に好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、3.0×10以上が殊更特に好ましく、3.1×10以上が最も好ましい。また、75.0×10以下が好ましく、50.0×10以下がより好ましく、40.0×10以下が更に好ましく、30.0×10以下が更に好ましく、20.0×10以下が特に好ましい。上記重合体αの重量平均分子量は、0.2×10以上が好ましく、0.4×10以上がより好ましく、0.6×10以上が更に好ましく、0.8×10以上が更により好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、5.0×10以上がより特に好ましく、10.0×10以上が更に特に好ましく、15.0×10以上が殊更に好ましく、20.0×10以上が殊更特に好ましく、25.0×10以上が最も好ましい。
また、150.0×10以下が好ましく、100.0×10以下がより好ましく、60.0×10以下が更に好ましく、50.0×10以下が特に好ましく、40.0×10以下が殊更に好ましい。
上記数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出する値である。
【0597】
上記重合体αは、53以下のイオン交換率(IXR)を有する。上記IXRは、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が更により好ましく、5以上が殊更に好ましく、8以上が特に好ましい。また、IXRは43以下がより好ましく、33以下が更に好ましく、23以下が特に好ましい。
上記重合体αにおいて、イオン性基は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。
上記重合体αは、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
重合体αは、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。重合体αのイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、ホスファート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。
【0598】
本開示はまた、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下でフルオロモノマー(ただし、下記一般式(I)で表される単量体を除く)を重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aにより回収された排水から、前記重合体(I)を回収する工程を含むことを特徴とする排水の処理方法(以下「本開示の処理方法」ともいう)を提供する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【0599】
本開示の処理方法において、重合体(I)としては、本開示の第一の製造方法で用いる重合体(I)として上述したものを用いることができる。
本開示の処理方法において、フルオロモノマーとしては、本開示の第一の製造方法で用いる重合体(I)として上述したものを用いることができる。
本開示の処理方法において、フルオロポリマーとしては、本開示の第一の製造方法で用いるフルオロポリマーとして上述したものを用いることができる。
本開示の処理方法において、処理前水性分散液としては、本開示の第一の製造方法で用いる処理前水性分散液として上述したものを用いることができる。
本開示の処理方法において、工程Aを行う方法としては、本開示の第一の製造方法において工程Aを行う方法として上述した方法を用いることができる。
【0600】
処理前水性分散液に、上記工程Aを行うことによって、フルオロポリマーを含むフルオロポリマー水性分散液として、限外濾過膜、精密濾過膜又は透析膜を透過しない液を回収することができる。一方、排水として、限外濾過膜、精密濾過膜又は透析膜を透過する液を回収することができる。
【0601】
排水は、重合体(I)を含む。本開示の処理方法は、排水から重合体(I)を効率的に回収することができる。本開示の処理方法によって排水から回収した重合体(I)は、フルオロポリマーの重合に利用することができる。したがって、本開示の処理方法によれば、フルオロポリマーの重合に重合体(I)を用いる場合において、排水から重合体(I)を効率的に回収でき、さらに、重合体(I)の再利用が可能であるため、重合体(I)の消費量を低減できる。また、本開示の処理方法により、重合体(I)の環境への排出を防ぐことができる。
【0602】
本開示の処理方法の工程Aにおいて、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理のいずれかを1回のみ行うことが好ましく、限外濾過又は精密濾過を1回のみ行うことがより好ましく、精密濾過を1回のみ行うことが更に好ましい。
【0603】
排水中の重合体(I)の含有量は、特に限定されないが、回収効率を高める観点から、10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.2質量%以下が特に好ましい。また、0質量%超であってよく、0.005質量%超であってよく、0.006質量%超であってよく、0.008質量%超であってよく、0.010質量%以上であってよく、0.020質量%超であってよく、0.025質量%超であってよく、0.1質量%以上であってよい。
【0604】
排水は、フルオロポリマーを含有してもよい。排水中のフルオロポリマーの含有量は、特に限定されないが、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよい。
【0605】
重合体(I)を回収する工程は、排水に、濾過、吸着及び凝集のうち少なくとも1つを行う工程であることが好ましく、重合体(I)の回収効率をより一層向上できることから、排水に、少なくとも凝集を行うものであることが好ましい。
【0606】
排水に濾過を行う方法としては、特に限定されないが、排水を濾過膜に通す方法等が挙げられる。濾過における温度は特に限定されないが、例えば、0~50℃であってよい。
【0607】
排水を濾過膜に通すことにより、上記排水に含まれる重合体(I)を回収することができる。
【0608】
濾過膜の種類は特に限定されるものではなく、排水や濾過条件等に応じて適宜選択してよい。濾過膜としては、逆浸透膜、ナノ濾過膜、フィルター濾紙、精密濾過膜または限外濾過膜のいずれか1つを用いてよく、あるいは2種類以上の濾過膜を組み合わせて用いてもよい。具体的には、孔径が0.05nm~25μmの濾過膜を用いることができる。また、逆浸透膜、ナノ濾過膜、または限外濾過膜としては、孔径が0.05nm~0.5μmの濾過膜を用いることができる。
濾過膜は、例えば10%以上のNaCl阻止率を有するものであってよい。なお、NaCl阻止率は、NaCl溶液(原水)を濾過膜で濾過して透過水を得て、原水および透過水のNaCl濃度を測定し、下記式で算出した値である。
NaCl阻止率(%)=(1-(透過水のNaCl濃度)/(原水のNaCl濃度))×100
濾過膜の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平膜であってよく、スパイラル状であってよく、あるいは管状であってよい。また、複数の濾過膜を組み合わせて用いる場合、単膜を直列に配置してよく、予め複数の膜が積層されたいわゆる複合膜を用いてもよい。膜濾過において、濾過圧力は、処理対象の水や使用する濾過膜の種類等に応じて適宜設定してよい。
【0609】
濾過は、加圧濾過であることも好ましい。加圧濾過を行うことで、重合体(I)をより効率よく回収することができる。加圧濾過には公知の装置を適宜使用することができる。例えば、キャンドル型フィルタを備える加圧濾過機を用いて加圧濾過を行ってよい。加圧濾過装置を用いた場合、内圧をかけることにより、濾過助剤保持部材の表面に形成されたケーキ層を定期的に剥がすことができ、長時間にわたって安定して水の処理を行うことができる。別法として、排水は、減圧濾過によって重合体(I)を分離回収してもよい。加圧濾過または減圧濾過を行う場合、濾過圧力は、処理対象の排水や後述する濾過助剤および濾過助剤保持部材ならびに濾過装置の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0610】
濾過を行う際には、濾過助剤を用いてもよい。濾過助剤は、排水中の重合体(I)を捕捉する働きをする。濾過助剤を用いて濾過することにより、排水から、重合体(I)を捕捉した濾過助剤を濾物として回収することができる。濾過助剤は一般に、濾過抵抗の低減やろ材の目詰まり防止等、濾過特性向上を目的として用いられるものであり、通常は粒子状、粉状または繊維状の物質である。
【0611】
濾過助剤は特に限定されるものではなく、例えば、珪藻土、濾過砂(マンガン砂、マンガンゼオライト、活性炭、アンスラサイト、セラミックサンド等)、パーライト及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、硅藻土がより好ましい。
【0612】
濾過助剤の粒径が大きいほど濾過圧力の上昇が抑制され、濾過速度が速くなるので、単位時間当たりの排水の処理量は増大し得る。一方、濾過助剤の粒径が小さいほど、重合体(I)を捕捉する効果が高くなるので、濾液中の重合体(I)の濃度をより一層低減することができる。濾過助剤の平均粒径は、好ましくは1~1000μm、より好ましくは1~500μm、より一層好ましくは1~200μm、更に好ましくは10~100μm、特に好ましくは20~60μmである。また、濾過助剤の平均粒径が20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、更に好ましくは80μm以上であると、濾過速度をより速くすることができ、単位時間当たりの排水の処理量をより増大させることができる。また、濾過助剤の平均粒径が80μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは20μm以下であると、重合体(I)を捕捉する効果がより一層高くなり、濾液に含まれる重合体(I)の濃度をより一層低減することができる。なお、濾過助剤の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定した、体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)を意味する。
【0613】
濾過助剤としては、平均粒径が20~60μmの珪藻土であることが特に好ましい。
【0614】
濾過助剤は排水に添加されてよい。このように、濾過対象の液体に濾過助剤を直接添加しながら濾過を行うことを一般に「ボディフィード」とよぶ。ボディフィードは、濾過圧力の上昇を効果的に抑制し得るので、単位時間当たりの排水の処理量を増大させることができ、速い濾過速度を維持しつつ長時間の濾過操作を行うことができるという利点を有する。
【0615】
濾過助剤は、濾過助剤保持部材に保持されて使用されてもよい。濾過助剤保持部材は、濾過助剤を保持することで、排水を、重合体(I)を捕捉した濾過助剤と濾液とに分離(固液分離)する働きを有する。濾過助剤保持部材は、例えば、濾布、濾紙および金属メッシュ等の布状の部材、焼結金属およびスポンジ等の多孔質体、砂利および砂等の充填物であってよい。使用する濾過助剤保持部材の種類は、処理する排水等の条件に応じて適宜選択することができる。
【0616】
例えば、濾過助剤保持部材の表面に濾過助剤の層が形成されていてもよい。このように、濾過前に、濾過助剤保持部材の表面に濾過助剤の層を形成することを、一般に「プレコート」とよぶ。プレコートは、濾過助剤保持部材の目詰まりを効果的に防止し得るので、濾過圧力の上昇を抑制することができ、その結果、単位時間当たりの水の処理量を増大させることができる。
【0617】
濾過助剤保持部材の孔径は、使用する濾過助剤の粒径に応じて適宜設定することができる。濾過助剤保持部材の孔径は、例えば1~1000μmであってよい。濾過助剤保持部材の孔径が小さいほど、濾過助剤をより確実に保持することができる。一方、濾過助剤保持部材の孔径が大きいほど、濾過を行う際の圧力損失を低減することができる。珪藻土を濾過助剤として用いる場合、濾過助剤保持部材の孔径は、濾過助剤の平均粒径より小さいことが好ましく、例えば、濾過助剤の平均粒径の60%以下であることが好ましい。濾過助剤保持部材を構成する材料は特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、塩化ビニリデン、ビニロン等の合成繊維、ガラス繊維、綿等であってよい。
【0618】
本開示の処理方法において、ボディフィードまたはプレコートをそれぞれ単独で行ってよく、あるいはボディフィードおよびプレコートを組み合わせてもよい。ボディフィードとプレコートを組み合わせることにより、水中の重合体(I)をより一層効率よく捕捉し得、さらに、濾過圧力の上昇をより一層抑制し得るので、長時間にわたって高効率で重合体(I)の回収を行うことができる。
【0619】
濾過助剤の量は、処理される水や用いられる濾過助剤の種類等に応じて適宜設定することができ、特定の量に限定されるものではない。一例として、ボディフィードにおいて水に添加される濾過助剤の量は、重合体(I)を含有する水における濾過助剤の濃度が1~10000ppm、好ましくは10~1000ppm、より好ましくは20~100ppmになるような量であってよい。プレコートにおいて用いられる濾過助剤の量は、濾過助剤保持部材の表面に形成される濾過助剤の層の厚さが0.5~10mm、好ましくは1~7mmになるような量であってよい。
【0620】
吸着は、排水を吸着剤に接触させることにより行うことができる。排水を吸着剤に接触させる方法としては、常套的に採用されている方法を採用できる。例えば、排水に吸着剤を添加し、攪拌する方法、吸着剤を充填したカラムに排水を流すカラム法等によって実施できる。カラム法で使用する充填カラムは移動式、固定層式、又は、流動層式のいずれであってもよい。
排水に吸着剤を添加し、攪拌する方法を用いる場合、攪拌後に、重合体(I)を吸着した吸着剤を回収することが好ましい。回収する方法は限定されず、例えば、濾過等を用いることができる。濾過の方法としては、排水に濾過を行う方法として上述した方法を用いることができる。
【0621】
吸着剤は特に限定されるものではないが、例えば、イオン交換樹脂、キレート剤、合成吸着剤、活性炭、シリカゲル、クレイ、及び、ゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、吸着剤としては、アルミナやカーボンナノチューブ等も用いることができる。
吸着剤は、イオン交換樹脂、キレート剤、合成吸着剤及び活性炭からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。吸着剤としてイオン交換樹脂、キレート剤、合成吸着剤または活性炭を使用することで、重合体(I)の吸着率が向上し得る。吸着剤として、より好ましくはイオン交換樹脂である。イオン交換樹脂を用いることにより、重合体(I)の吸着率を更に高くすることができる。
吸着には、1種類の吸着剤を単独で用いてよく、2種類以上の吸着剤を組み合わせて用いてもよい。
【0622】
イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂のいずれであってもよい。陰イオン交換樹脂としては、例えば、官能基としてアミノ基および/または四級アンモニウム基を有するイオン交換樹脂を用いることができる。イオン交換樹脂は、好ましくは強塩基性陰イオン交換樹脂である。陰イオン交換樹脂の塩基性度は、ポリマー骨格および/または官能基の種類によって種々設定することができる。陰イオン交換樹脂として市販品を用いてよく、例えば、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオン(商標)SAシリーズなど、ピュロライト株式会社製のA200、A300、PFA694Eなど、オルガノ株式会社製のアンバーライト(商標)シリーズ、IRA4002OH等のアンバージェット(商標)シリーズ、を用いることができる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、官能基としてカルボン酸基および/またはスルホン酸基を有するイオン交換樹脂を用いることができる。陽イオン交換樹脂の酸性度は、ポリマー骨格および/または官能基の種類によって種々設定することができる。陽イオン交換樹脂として市販品を用いてよく、例えば、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオン(商標)SKシリーズなど、ピュロライト株式会社製のC100など、オルガノ株式会社製のアンバーライト(商標)シリーズ等を用いることができる。
イオン交換樹脂は、細孔径が1~5000Åであることが好ましい。回収効率の観点から、細孔径が50Å以上であることが好ましく、100Å以上がより好ましく、150Å以上が更に好ましい。また、200Å以上であってもよく、250Å以上であってもよい。
また、細孔径1000Å以下であってもよい。細孔径は、例えば、ガス吸着法で比表面積と全細孔容積を測定し、算出することができる。
イオン交換樹脂は、回収効率の観点から、総交換容量が0.1eq/L-Resin以上が好ましい。より好ましくは、0.5eq/L-Resin以上であり、更に好ましくは、0.9eq/L-Resin以上である。また、総交換容量は大きいほどよいが、例えば、上限は5.0eq/L-Resinであってよい。
また、イオン交換樹脂は、通常、球状であり、300~1300μm程度の平均粒子径を有している。
【0623】
キレート剤は、通常、金属イオンに配位してキレート化合物を形成しうる多座配位子を有する化合物である。材質やゲル型かMR型かは限定されず、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、フェノール重合体等に官能基を導入した樹脂が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、イミノジ酢酸型、イミノプロピオン酸型、アミノメチレンホスホン酸型等のアミノホスホン酸型、ポリアミン型、アミノカルボン酸型、ジチオカルバミン酸型、チオール型、アミドキシム型、ピリジン型等が挙げられる。
上記キレート剤は、球状であることが好ましく、300~1300μm程度の平均粒子径を有していてよい。
キレート剤の具体例としては、「ユニセレック」(商品名)シリーズ(ユニチカ(株)製)、「レバチット」(商品名)シリーズ(ランクセス(株)製)、「エポラス」(登録商標)(商品名) シリーズ(ミヨシ油脂(株)製)(Z-7、Z-100、SE-3、AS-4)などが挙げられる。
【0624】
合成吸着剤は、イオン交換基を持たない多孔質樹脂であり、合成吸着剤として知られている公知のものを採用することができる。イオン交換基としては、アミノ基、四級アンモニウム基、カルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。合成吸着剤として具体的には、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル-エチレングリコールジメタクリレート共重合体等のアクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、デキストラン系樹脂等が挙げられる。合成吸着剤として商業的に入手可能なものとしては、具体的には、スチレン系樹脂として、ダイヤイオンHP10、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、ダイヤイオンHP40、ダイヤイオンHP50、セパピーズSP207、セパピーズSP70、セパピーズSP825、セパピーズSP850、セパピーズSP207(以上、三菱ケミカル社製)、アンバーライトXAD1180N、アンバーライトXAD2000、アンバーライトXAD4、アンバーライトFPX66(以上、オルガノ社製)等;アクリル系樹脂として、ダイヤイオンHP2MG(三菱ケミカル社製)、アンバーライトHXAD-7HP(オルガノ社製)等が挙げられる。
合成吸着剤は、細孔径が1~5000Åであることが好ましい。回収効率の観点から、細孔径が50Å以上であることが好ましく、100Å以上がより好ましく、150Å以上が更に好ましい。また、200Å以上であってもよく、250Å以上であってもよい。また、細孔径1000Å以下であってもよい。細孔径は、例えば、ガス吸着法で比表面積と全細孔容積を測定し、算出することができる。
合成吸着剤は、比表面積が300m/g以上であることが好ましい。比表面積は400m/g以上がより好ましく、500m/g以上が更に好ましく、600m/g以上が殊更に好ましい。比表面積の上限は限定されないが、例えば2000m/g以下であってよく、1500m/g以下であってよく、1000m/g以下であってもよい。
また、合成吸着剤は、通常、球状であり、200~1300μm程度の平均粒子径を有している。
【0625】
活性炭は炭素質材料から製造できる。炭素質材料としては、炭化、賦活などにより活性炭を生成するものであればよく、木材、鋸屑、木炭、ヤシ殻、クルミ殻などの果実殻、果実種子などの植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などの石炭、石油ピッチ、石炭ピッチなどのピッチ、コークス、コールタール、石油タールなどのタール、石油蒸留残渣などの鉱物系、木綿、レーヨンなどのセルロース系繊維などの天然素材、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルなどの合成素材などを例示することができる。形状としては、粉末状、粒状、繊維状いずれでもよく、またそれらを成形したものであってもよい。
【0626】
活性炭は、比表面積が500m/g以上であることが好ましい。比表面積は1000m/g以上がより好ましく、1500m/g以上が更に好ましく、1800m/g以上が殊更に好ましく、2000m/g以上が特に好ましい。比表面積の上限は限定されないが、例えば2500m/gであってよい。
活性炭の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ペレット状、顆粒状、粉末状、球状粒子の形状であってよい。活性炭は市販品であってもよい。活性炭の市販品としては、例えば、大阪ガスケミカル株式会社製の白鷺(商標)など、カルゴン・カーボン・ジャパン株式会社製のFiltrasorb(商標)CAL、ダイアホープ(商標)、ダイアソーブ(商標)など、水ing株式会社製のエバダイヤ(商標)シリーズなどが挙げられる。
【0627】
吸着剤として活性炭を用いる場合、活性炭は高賦活活性炭であることが好ましい。高賦活活性炭を用いることにより、通常の活性炭と比較して重合体(I)の吸着率を高くすることができる。上記活性炭は、水蒸気賦活処理を行うことによって向上した吸着性能を有することが好ましい。水蒸気賦活処理において、活性炭を120℃以上、例えば130~350℃、特に150~1000℃の温度、および0.2MPa以上、例えば0.5~15MPa、特に1MPa~15MPaの圧力のスチームにさらすことが好ましい。水蒸気賦活処理時間は、一般に10秒~50時間、例えば10分~10時間であってよい。賦活において、炉内での加温を行ってもよい。
活性炭の表面にカチオンを添着させてもよい。カチオンの例としては、金属イオン、金属酸化物イオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。金属の例としては、周期表の1~13族の金属原子(例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca)、Ti、Zr、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn)が挙げられる。
【0628】
吸着において、重合体(I)を含有する水に対する吸着剤の量は限定されないが、例えば、重合体(I)を含有する水1000gに対して0.01~1000gであってよい。重合体(I)を含有する水1000gに対して、0.1g以上が好ましく、1g以上がより好ましく、5g以上が更に好ましい。また、500g以下が好ましい。
【0629】
吸着における温度は特に限定されないが、例えば、0~50℃であってよい。
【0630】
吸着において使用可能な吸着装置は、上述した吸着剤を備える吸着装置であれば特に限定されるものでなく、目的に応じて種々の吸着装置を適宜使用してよい。吸着装置は、例えば、吸着剤が充填された充填塔であってよく、具体的にはイオン交換塔または活性炭塔であってよい。
【0631】
本開示の処理方法は、排水から回収した、重合体(I)を吸着した吸着剤を回収することが好ましい。上記回収方法は特に限定されず従来公知の方法を用いてよい。例えば、重合体(I)が吸着した吸着剤を、上述した濾過により濾物として回収してもよい。
【0632】
凝集は、例えば、排水に凝集剤を添加することにより行うことができる。重合体(I)を回収する工程は、排水に凝集剤を添加する工程であることが好ましい。重合体(I)を回収する工程では、排水に凝集剤を添加した後、攪拌することが好ましい。攪拌時間は限定されず、水中の重合体(I)の量、凝集剤の添加量に応じて適宜設定すればよい。攪拌時間は、例えば、0分~100時間の範囲で適宜設定してよい。
【0633】
凝集剤としては、例えば、無機凝集剤、有機凝集剤、高分子凝集剤等が挙げられる。凝集剤の添加量は、水に含有される重合体(I)の量、凝集剤の種類等によって適宜選択すればよいが、例えば、重合体(I)に対して300重量%以下であってよく、0.01重量%以上であってよい。
【0634】
重合体(I)を回収する工程は特に、排水に無機凝集剤を添加する工程であることが好ましい。重合体(I)を回収する工程は、重合体(I)に凝集を行うものであり、排水に無機凝集剤を添加する工程であることが好適な態様の一つである。
無機凝集剤としては、金属塩等が挙げられ、市販品を用いてもよい。Mg2+、Ca2+等を含む海水、低分子量のカチオン性高分子凝集剤も使用可能である。
無機凝集剤の添加量は、重合体(I)に対して0.01重量%以上が好ましく、0.04重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上が更に好ましい。また、重合体(I)に対して300重量%以下が好ましく、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下が更に好ましい。
無機凝集剤の添加量は、重合体(I)を含有する水に対しては、1重量ppm以上が好ましく、10重量ppm以上がより好ましく、20重量ppm以上が更に好ましい。また、15000重量ppm以下が好ましく、10000重量ppm以下がより好ましく、5000重量ppm以下が更に好ましい。
【0635】
無機凝集剤としては金属塩が好ましい。金属塩である無機凝集剤としては、2価以上の金属元素を含む金属塩が好ましい。ここで、金属塩を構成する2価以上の金属元素は、Fe、AlおよびCaからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素がより好ましく、Fe、Alからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素がさらに好ましく、Alが特に好ましい。また、金属塩を構成する金属元素の対イオンとしては、硫酸イオン、水酸化物イオン、フッ素イオン、硝酸イオンおよび塩素イオンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、硫酸イオン、塩素イオンからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましく、硫酸イオンが特に好ましい。
本明細書において「金属塩」とは、単塩、複塩および/または錯塩を意味する。また、「2価以上の金属元素を含む塩」とは、2価以上の金属元素を含む単塩、複塩および/または錯塩を意味する。
【0636】
金属塩としては、例えば、アルミニウム塩(例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなど)、鉄塩(例えば、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄など)、カルシウム塩(例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、フッ化カルシウムなど)、並びに、2価以上の金属元素およびケイ素を含むケイ酸塩鉱物(例えば、カオリナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなど)からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩が好ましい。
ケイ酸塩鉱物としては、市販の凝集剤として、シリカアルミナ系凝集剤が挙げられる。例えば、日本活性白土社製のフロナイト723、フロナイト113、フロナイト101、フロナイトS、フロナイトDなどが挙げられる。
なお、凝集剤として用いることができる金属塩は、凝集剤を添加する工程において、金属塩を生成させる、または、金属塩の金属元素の対イオンを変換する態様であってもよい。
このような態様として、例えば、排水中に、金属水酸化物等の対イオンを有する金属塩を加える態様などが挙げられる。このような態様においては、金属塩の対イオンの変換が生じる。金属塩の対イオンの変換が生じることによって、より良好な不純物回収効果が得られる場合がある。
【0637】
無機凝集剤としては、鉄塩及びアルミニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩が好ましく、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属塩がより好ましく、硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種のアルミニウム塩が更に好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましい。
【0638】
高分子凝集剤としては、例えば、アルギン酸ソーダ、キチン・キトサン凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤などが挙げられ、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、及び、ノニオン性高分子凝集剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0639】
高分子凝集剤の添加量は、重合体(I)に対して0.001重量%以上であることが好ましく、0.004重量%以上であることがより好ましく、0.01重量%以上であることが特に好ましい。高分子凝集剤の添加量の上限値は特に制限はなく、重合体(I)に対して50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
高分子凝集剤の添加量は、排水に対しては、0.1重量ppm以上が好ましく、1重量ppm以上がより好ましく、2重量ppm以上が更に好ましい。
また、15000重量ppm以下が好ましく、10000重量ppm以下がより好ましく、5000重量ppm以下が更に好ましい。
【0640】
カチオン性高分子凝集剤としては、ジメチルアミノエチルメタアクリレート等のポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサン、尿素-ホルマリン樹脂等が挙げられる。
カチオン性高分子凝集剤の市販品としては、多木化学社製のタキフロックC-403、C-408、C-805、C-806、C-809;MTアクアポリマー社製のアロンフロックEC-509L、C-508、CX-400、C-303、CX-333等が挙げられる。
【0641】
アニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫酸塩等のポリアクリルアミド系の高分子凝集剤が挙げられる。
アニオン性高分子凝集剤の市販品としては、片山ナルコ社製のフロクランA1210;多木化学社製のタキフロックA-102、A-103、A-177T、A-108T、A-142、A-50;MTアクアポリマー社製のアコフロックA-95、A-110、A-150;MTアクアポリマー社製のスミフロックFA-40、FA-50;三菱ケミカル社製のダイヤフロックAP199、Ap120C、Ap784、DF732B等が挙げられる。
【0642】
ノニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
ノニオン性高分子凝集剤の市販品としては、多木化学社製のタキフロックN-100T、N-131、A-122T;MTアクアポリマー社製のアコフロックN-100、N-210;MTアクアポリマー社製のスミフロックFN-10H、FN-20H;三菱ケミカル社製のダイヤフロックNP500、NP780、DF500等が挙げられる。
【0643】
両性高分子凝集剤としてはアクリルアミドとアミノアルキルメタクリレートとアクリル酸ナトリウムの共重合体等が挙げられる。
両性高分子凝集剤の市販品としては、多木化学社製のタキフロックMC-601、MC-602、MC-603;三菱ケミカル社製のダイヤフロックKA003、KA606A等が挙げられる。
【0644】
高分子凝集剤の中でも、アニオン性高分子凝集剤が好ましい。
【0645】
凝集における温度は特に限定されないが、例えば、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。また、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下が更に好ましい。
【0646】
重合体(I)を回収する工程では、凝集剤として、無機凝集剤のみを添加してもよいし、高分子凝集剤のみを添加してもよいし、無機凝集剤と高分子凝集剤の両方を添加してもよい。また、無機凝集剤と高分子凝集剤を同時に添加してもよいし、無機凝集剤を添加した後に高分子凝集剤を添加してもよいし、高分子凝集剤を添加した後に無機凝集剤を添加してもよい。更に、高分子凝集剤と無機凝集剤を、複数回に分けて添加してもよいし、高分子凝集剤と無機凝集剤を交互に添加してもよい。
【0647】
重合体(I)を回収する工程は、排水に無機凝集剤を添加し、その後、高分子凝集剤を添加する工程であることが特に好ましい。無機凝集剤を添加することによって、重合体(I)の表面電荷を反対電荷によって中和することで凝集させてフロックを形成する。
その後、高分子凝集剤を添加することによってフロックを粗大化させることによって無機凝集剤で凝集したフロックを架橋して粗大なフロックを形成することができ、これによって、重合体(I)をより効率的に回収することができる。
この場合、無機凝集剤の添加量は、重合体(I)に対して0.01重量%以上であることが好ましく、0.04重量%以上であることがより好ましく、0.1重量%以上であることが特に好ましい。また、300重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましく、20重量%以下であることが殊更に好ましい。
上記無機凝集剤の添加量は、排水に対しては、1重量ppm以上が好ましく、10重量ppm以上がより好ましく、20重量ppm以上が更に好ましい。また、15000重量ppm以下が好ましく、10000重量ppm以下がより好ましく、5000重量ppm以下が更に好ましい。
高分子凝集剤の添加量は、重合体(I)に対して0.001重量%以上であることが好ましく、0.004重量%以上であることがより好ましく、0.01重量%以上であることが特に好ましい。また、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましい。
上記高分子凝集剤の添加量は、排水に対しては、0.1重量ppm以上が好ましく、1重量ppm以上がより好ましく、2重量ppm以上が更に好ましい。
また、15000重量ppm以下が好ましく、10000重量ppm以下がより好ましく、5000重量ppm以下が更に好ましい。
【0648】
重合体(I)を回収する工程において、重合体(I)を含有する水に無機凝集剤を添加した後、高分子凝集剤を添加する前に、重合体(I)を含有する水にpH調整剤を添加してpHを調整することも好ましい。pHを調整することによって、より効率的に重合体(I)を回収することができる。
重合体(I)を回収する工程においては、高分子凝集剤を添加する前に、上記pHを4.0以上にすることが好ましく、より好ましくは5.0以上、更に好ましくは6.0以上である。また、上記pHを11.0以下にすることが好ましく、より好ましくは9.0以下であり、更に好ましくは8.0以下である。
pH調整剤としては限定されず、例えば、酸化合物又はアルカリ化合物を用いることができる。上記酸化合物としては、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)、りん酸(HPO)等が挙げられ、特に、塩酸(HCl)又は硝酸(HNO)が好ましい。アルカリ化合物としては、例えば、NaOH、KOH等のアルカリ金属の水酸化物;Mg(OH)、Ca(OH)等のアルカリ土類金属の水酸化物;リン酸水素二ナトリウム等の緩衝作用のある塩等が挙げられ、有機化合物としては、例えば、アンモニア、アミン類等が挙げられる。
pHは、pHメーター(例えば、Horiba社製pHメーターD-20)により測定することができる。
【0649】
本開示の処理方法は、排水に凝集を行い、重合体(I)を凝集した後、凝集した重合体(I)を、排水から回収することが好ましい。凝集した重合体(I)を、排水から回収する方法は、限定されないが、例えば、濾過等が挙げられる。上記濾過の方法は限定されず、上述した方法を適宜採用できる。
本開示の処理方法は、上記重合体(I)を凝集した後、凝集した重合体(I)を回収することが好ましい。回収の方法は限定されないが、例えば、濾過等が挙げられる。上記濾過の方法は限定されず、上述した方法を適宜採用できる。
【0650】
重合体(I)を回収する工程は、排水に無機凝集剤を添加し、その後、高分子凝集剤を添加し、凝集した重合体(I)を含有する水を濾過する工程であることが特に好ましい。この態様において、排水に無機凝集剤を添加した後、高分子凝集剤を添加する前に、排水にpH調整剤を添加してpHを調整してよい。上記pHとしては上記範囲を採用することができ、例えば、pHを5.0~9.0(好ましくは6.0~8.0)に調整することも好ましい。
【0651】
重合体(I)を回収する工程は、排水における重合体(I)の濃度を、重合体(I)を回収する工程前の濃度に対して、50%以下にする工程であることが好ましい。より好ましくは40%以下であり、更により好ましくは30%以下であり、殊更に好ましくは20%以下であり、特に好ましくは10%以下である。
【0652】
重合体(I)を回収する工程によって、重合体(I)を含有する水から、重合体(I)を構成する構造単位を形成する単量体のダイマーおよびトリマーを除去することもできる。
【0653】
ダイマーおよびトリマーとしては、一般式(I)で表される単量体のダイマーおよびトリマーであってもよい。ダイマーおよびトリマーは、一般式(I)で表される単量体(I)として、1種の単量体(I)から形成されていてもよいし、構造の異なる2種以上の単量体(I)から形成されていてもよい。
【0654】
重合体(I)を回収する工程が、排水に、濾過助剤を用いた濾過、吸着剤を用いた吸着、または凝集剤を用いた凝集を行う工程である場合には、重合体(I)は、重合体(I)と、濾過助剤、吸着剤、または凝集剤とを含む組成物として回収される。これらの場合には、回収された組成物を、そのまま、フルオロポリマーの重合に利用することも可能であるが、回収された組成物から、さらに、重合体(I)を回収し、この重合体(I)をフルオロポリマーの重合に利用することが好ましい。回収された組成物から、重合体(I)を回収する方法としては、特に限定されないが、たとえば、回収された組成物を、水等の溶媒に接触させることにより、重合体(I)を溶媒中に溶出または分散させた後、溶媒中に溶出または分散した重合体(I)を回収する方法が挙げられる。
【実施例
【0655】
次に本開示の製造方法を実施例をあげて説明するが、本開示の製造方法はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0656】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0657】
平均一次粒子径
動的光散乱法により測定される。フルオロポリマー固形分濃度を約1.0質量%に調整したフルオロポリマー水性分散液を作成し、ELSZ-1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとした。
【0658】
固形分濃度
処理前水性分散液または白色水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、処理前水性分散液または白色水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を、固形分濃度として採用する。
【0659】
実施例では、下記式:
CH=CF(CFOCFCFCOONH
で表される単量体(変性モノマーa)の単独重合体(数平均分子量9万、重量平均分子量19万)(以下重合体Aという)を用いた。
上記数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC-8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF-801を1本、GPC KF-802を1本、GPC KF-806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定し、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出した。
【0660】
[実施例1]
約220nmの平均一次粒子径を有し、固形分濃度が23.3質量%のPTFEのフルオロポリマー水性分散液(処理前水性分散液)を、水性媒体に対して3000ppm(質量ppm)の重合体Aを用いたTFEの乳化重合により得た。
灰色の水性分散液(処理前水性分散液)156.4gに1.82gの非イオン性界面活性剤(T-Det A138、Hacros Chemicals製)を添加した。純水156.4gあたり0.72gの非イオン性界面活性剤(T-Det A138、Hacros Chemicals製)を加えて追加水を調製した。精密濾過膜(ポリエチレン製、内径0.7mm、長さ130mm、平均細孔径0.1μm、有効膜面積150cm)に上記水性分散液を0.1MPaの水圧、25℃の温度で接触させ、精密濾過を実施した。追加水を用いて、最終的に782gの濾過液が溶出するまで精密濾過を継続した。結果、固形分濃度が16.9重量%の205.1gの白色水性分散液(フルオロポリマー水性分散液)を得た。得られたフルオロポリマー水性分散液についてNMR分析を行ったところ、フルオロポリマー水性分散液中における、重合体Aの抽出可能な量は、753質量ppmであった。
上記灰色の水性分散液(処理前水性分散液)を縦横1cm各の石英セルに充填し、X-rite測色計により明度L*を測定した。この時の明度L*は83.42であった。
精密濾過を実施前のフルオロポリマー水性分散液(処理前水性分散液)と同様に、精密濾過を実施後のフルオロポリマー水性分散液を縦横1cm各の石英セルに充填し、X-rite測色計により明度L*を測定した。この時の明度L*は99.02であった。