(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20231122BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20231122BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231122BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20231122BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L7/00
C08K3/36
C08K5/541
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021556543
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020495
(87)【国際公開番号】W WO2021241746
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020094135
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐和 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬佑
(72)【発明者】
【氏名】伊津野 翔
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199533(JP,A)
【文献】特開2019-048921(JP,A)
【文献】特開2013-108042(JP,A)
【文献】特開2016-003280(JP,A)
【文献】特開2016-037543(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099325(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/073828(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤とを含有し、
前記ゴム成分が、特定共役ジエン系ゴムと、天然ゴムとを含有し、
前記ゴム成分中、前記特定共役ジエン系ゴムの含有量が35質量%以上であり、前記天然ゴムの含有量が10質量%以上であり、
前記特定共役ジエン系ゴムが、
イソプレン単量体単位を70質量%以上含有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位を55~65質量%含有する重合体ブロック(B)とを備えるとともに、少なくとも1つの末端に下記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンによる変性構造を備える、共役ジエン系ゴムであって、
前記重合体ブロック(A)及び前記重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有し、
前記重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲であり、全体の重量平均分子量(Mw)が50,000~5,000,000の範囲であり、
全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が、30~45質量%であり、
全体のビニル結合含有量が、15~35質量%である、共役ジエン系ゴムであり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、50~150質量部であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記シリカの含有量に対して、3~30質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
【化1】
一般式(4)中、R
3~R
10は、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
9およびX
12は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
10は、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、X
10が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
11は、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X
11が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。
【請求項2】
前記特定共役ジエン系ゴムの芳香族ビニル単量体単位含有量が、35~45質量%である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
さらに、軟化点が50℃以上の熱可塑性樹脂を含有し、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1~20質量部である、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
さらに、重量平均分子量が3,000以上の液状ジエン系ゴムを含有し、
前記液状ジエン系ゴムの含有量が、前記シリカの含有量に対して、1.0~15.0質量%である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記液状ジエン系ゴムが、下記一般式(II)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有する、請求項
4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】
一般式(II)中、R
1は炭素数1から6の2価のアルキレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基又はフェニル基を表す。ただし、R
2、R
3及びR
4の少なくとも1つはメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基である。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤに用いられるゴム組成物として、変性共役ジエン系ゴムとシリカとを含有する組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、求められる安全レベルの向上に伴い、タイヤに対して、耐クラック成長性(クラックの成長し難さ)、耐グルーブクラック性(溝割れのし難さ)、耐摩耗性及び耐チッピング性のさらなる向上が求められている。
このようななか、本発明者らが特許文献1を参考にタイヤ用ゴム組成物を調製し、タイヤにしたときの耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性及び耐チッピング性を評価したところ、昨今求められているレベルを必ずしも満たすものではないことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、タイヤにしたときに耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性及び耐チッピング性に優れるタイヤ用ゴム組成物、並びに、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することを目的とする。
なお、以下、タイヤにしたときの、耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性、耐チッピング性を、単に、耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性、耐チッピング性とも言う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の変性共役ジエン系ゴムと天然ゴムとを所定の量で併用することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤とを含有し、
上記ゴム成分が、特定共役ジエン系ゴムと、天然ゴムとを含有し、
上記ゴム成分中、上記特定共役ジエン系ゴムの含有量が35質量%以上であり、上記天然ゴムの含有量が10質量%以上であり、
上記特定共役ジエン系ゴムが、
イソプレン単量体単位を含有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位を含有する重合体ブロック(B)とを備えるとともに、少なくとも1つの末端にシロキサン化合物による変性構造を備える、共役ジエン系ゴムであって、
上記重合体ブロック(A)及び上記重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有し、
上記重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲であり、全体の重量平均分子量(Mw)が50,000~5,000,000の範囲であり、
全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が、30~45質量%であり、
全体のビニル結合含有量が、15~35質量%である、共役ジエン系ゴムであり、
上記シリカの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、50~150質量部であり、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、3~30質量%である、タイヤ用ゴム組成物。
(2) 上記特定共役ジエン系ゴムの芳香族ビニル単量体単位含有量が、35~45質量%である、上記(1)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) さらに、軟化点が50℃以上の熱可塑性樹脂を含有し、
上記熱可塑性樹脂の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、1~20質量部である、上記(1)又は(2)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) 上記シリカが、CTAB吸着比表面積が190m2/g以上のシリカである特定シリカを20質量部以上含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) さらに、後述する一般式(I)で表されるアルキルトリエトキシシランを含有し、
上記アルキルトリエトキシシランの含有量が、上記シリカの含有量に対して、2.0~15.0質量%である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(6) さらに、重量平均分子量が3,000以上の液状ジエン系ゴムを含有し、
上記液状ジエン系ゴムの含有量が、上記シリカの含有量に対して、1.0~15.0質量%である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(7) 上記液状ジエン系ゴムが、後述する一般式(II)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有する、上記(6)に記載のタイヤ用ゴム組成物。
(8) 上記(1)~(7)のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造された、タイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、タイヤにしたときに耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性及び耐チッピング性に優れるタイヤ用ゴム組成物、並びに、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物及び上記タイヤ用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有される各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0011】
[A]タイヤ用ゴム組成物
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤とを含有し、
上記ゴム成分が、特定共役ジエン系ゴムと、天然ゴムとを含有し、
上記ゴム成分中、上記特定共役ジエン系ゴムの含有量が35質量%以上であり、上記天然ゴムの含有量が10質量%以上であり、
上記特定共役ジエン系ゴムが、
イソプレン単量体単位を含有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位を含有する重合体ブロック(B)とを備えるとともに、少なくとも1つの末端にシロキサン化合物による変性構造を備える、共役ジエン系ゴムであって、
上記重合体ブロック(A)及び上記重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有し、
上記重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲であり、上記共役ジエン系ゴムの全体の重量平均分子量(Mw)が50,000~5,000,000の範囲であり、
芳香族ビニル単量体単位含有量が、30~45質量%であり、
ビニル結合含有量が、15~35質量%である、共役ジエン系ゴムであり、
上記シリカの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、50~150質量部であり、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、3~30質量%である、タイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えらえる。特に、特定共役ジエン系ゴムと天然ゴムとを併用する点に特徴があると考えられる。
本発明の組成物に含有される特定共役ジエン系ゴムは特定のミクロ構造(芳香族ビニル単量体単位、ビニル結合含有量)を有するため、本発明の組成物において特定共役ジエン系ゴムと天然ゴムとは相溶し難い。そのため、天然ゴム本来の特性が反映され易く、耐摩耗性や耐チッピング性に優れるものと考えられる。
ここで、上記特定共役ジエン系ゴムのようなビニル結合含有量の少ないポリマーは加硫速度が遅いため、そのようなポリマーと天然ゴムとは共架橋し難く、クラックが発生し易くなる場合がある。一方、上記特定共役ジエン系ゴムはポリマー鎖中にアミノ基を有するため、該アミノ基が加硫速度を向上させ、天然ゴムとの共架橋が進み易い。結果として、本発明の組成物は、耐クラック成長性及び耐グルーブクラック性にも優れるものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
【0014】
[I]ゴム成分
本発明の組成物に含有されるゴム成分は、特定共役ジエン系ゴムと、天然ゴムとを含有する。
ここで、上記ゴム成分中、上記特定共役ジエン系ゴムの含有量は35質量%以上であり、上記天然ゴムの含有量は10質量%以上である。
上記ゴム成分は、上記特定共役ジエン系ゴム及び上記天然ゴムのいずれにも該当しないゴム成分(その他のゴム成分)を含有してもよい。
上記ゴム成分は、固体状であることが好ましい。
【0015】
[1]特定共役ジエン系ゴム
上述のとおり、ゴム成分は特定共役ジエン系ゴムを含有する。
上記特定共役ジエン系ゴムは、
イソプレン単量体単位を含有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位を含有する重合体ブロック(B)とを備えるとともに、少なくとも1つの末端にシロキサン化合物による変性構造を備える、共役ジエン系ゴムであって、
上記重合体ブロック(A)及び上記重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有し、
上記重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲であり、全体の重量平均分子量(Mw)が50,000~5,000,000の範囲であり、
全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が、30~45質量%であり、
全体のビニル結合含有量が、15~35質量%である、共役ジエン系ゴムである。
なお、特定共役ジエン系ゴムは、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が30~45質量%であるため、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の少なくとも一方は芳香族ビニル単量体単位を含有する。
【0016】
[重合体ブロック(A)]
重合体ブロック(A)は、イソプレン単量体単位を含有するもの(好ましくは、イソプレン単量体単位を主成分とするもの)であればよく、特に限定されず、イソプレン単量体単位のみからなるものであってよいし、あるいは、イソプレン単量体単位と、イソプレン単量体単位以外の単量体単位とからなるものであってもよい。この場合における、イソプレン単量体単位以外の単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位が好適に挙げられ、本発明の重合体ブロック(A)は、イソプレン単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位をも含有するものであることが好ましい。
【0017】
〔イソプレン単量体単位含有量〕
重合体ブロック(A)中における、イソプレン単量体単位の含有量(イソプレン単量体単位含有量)は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。また、イソプレン単量体単位含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは99質量%以下である。重合体ブロック(A)中のイソプレン単量体単位含有量を上記範囲とすることにより、共役ジエン系ゴムにシリカなどの配合剤を配合した場合に、共役ジエン系ゴムとシリカなどの配合剤との親和性をより高めることができ、これにより、得られるゴム架橋物を、低発熱性により優れたものとすることができる。
【0018】
〔イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量〕
重合体ブロック(A)における、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量は、3~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましい。イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。なお、本明細書中において、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量とは、イソプレン単量体単位中の、1,2-構造を有するイソプレン単量体単位および3,4-構造を有するイソプレン単量体単位の合計量を指すものとする。
【0019】
〔芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル化合物〕
芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。重合体ブロック(A)中における、芳香族ビニル単量体単位(例えば、スチレン単量体単位)の含有量(芳香族ビニル単量体単位含有量)(例えば、スチレン単量体単位含有量)は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、芳香族ビニル単量体単位含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは1質量%以上である。
【0020】
〔シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位〕
また、特定共役ジエン系ゴムは、重合体ブロック(A)及び後述する重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有するものである。以下においては、重合体ブロック(A)に、このようなシリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位が含有されている場合を例示して説明するが、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位は、重合体ブロック(A)および後述する重合体ブロック(B)の少なくとも一方に含有されていればよいため、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位が、後述する重合体ブロック(B)に含有されている場合には、重合体ブロック(A)には、必ずしも含有されている必要はない。
【0021】
<シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物>
シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を形成するための、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物としては、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基と、ビニル基を含有する化合物であればよく、特に限定されない。ここで、上記アミノ基は、シリカとの相互作用が高いという観点より、ケイ素原子含有アミノ基が好ましい。
【0022】
(好適な態様)
シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の好ましい態様としての、ケイ素原子含有アミノ基を含有するビニル化合物としては、たとえば、下記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
【0023】
【化1】
上記一般式(1)中、X
1は、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X
2、X
3およびX
4は、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。ただし、X
2、X
3およびX
4のうち少なくとも1つは置換アミノ基である。
【0024】
上記一般式(1)中、X1は、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基であり、好ましくは、化学的な単結合である。ヒドロカルビレン基としては、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、または、アリーレン基とアルキレン基とが結合した基などが挙げられる。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などが挙げられる。アルケンジイル基としては、ビニレン基、エチレン-1,1-ジイル基などが挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、フェニレン基とメチレン基とが結合した基、フェニレン基とエチレン基とが結合した基などが挙げられる。X1がヒドロカルビレン基である場合には、X1は、アリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0025】
上記一般式(1)中、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。X2、X3およびX4のうち、少なくとも1つが置換アミノ基であり、X2、X3およびX4のうち、2つが置換アミノ基であることがより好ましい。
【0026】
X2、X3およびX4を構成し得る置換アミノ基としては、下記一般式(2)で表される基が好適である。
【0027】
【0028】
上記一般式(2)中、R1およびR2は、互いに結合していても、あるいは、結合していなくてもよく、R1およびR2が互いに結合していない場合には、R1およびR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、または、トリヒドロカルビルシリル基を表し、R1とR2とが互いに結合している場合には、R1およびR2は、窒素原子および/または酸素原子を含有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
【0029】
R1およびR2を構成し得るヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、-オクチル基などの鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げられる。これらの中でも、鎖状アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
R1およびR2を構成し得るヒドロカルビル基が、置換基を有する場合には、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基などが挙げられ、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;フェノキシメチル基などのアリールオキシアルキル基;などが挙げられる。
【0030】
R1およびR2を構成し得るトリヒドロカルビルシリル基の具体例としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などが挙げられる。
【0031】
R1とR2とが互いに結合している場合において、R1およびR2を構成し得るヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル基などのアルキレン基;ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基などのアルケンジイル基;などが挙げられる。また、R1およびR2を構成し得るヒドロカルビレン基が、窒素原子および/または酸素原子を含有する場合には、窒素原子および/または酸素原子を含有するヒドロカルビレン基としては、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH2-CH2-で表される基、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-で表される基などが挙げられる。
R1およびR2は、アルキル基であるか、あるいは、R1とR2とは互いに結合してアルキレン基となっていることが好ましく、R1およびR2は、アルキル基であることがより好ましく、R1およびR2は、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。
【0032】
上記一般式(2)中、R1およびR2がヒドロカルビル基である場合における、上記一般式(2)で表される基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基;などが挙げられる。これらの中でも、ジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基がより好ましい。
【0033】
上記一般式(2)中、R1およびR2が、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基である場合における、上記一般式(2)で表される基の具体例としては、ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基などのジ(アルコキシアルキル)アミノ基などが挙げられる。
【0034】
上記一般式(2)中、R1およびR2が、トリヒドロカルビルシリル基である場合における、上記一般式(2)で表される基の具体例としては、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ基、N-トリメチルシリル-N-メチルアミノ基などのトリアルキルシリル基含有アミノ基などが挙げられる。
【0035】
上記一般式(2)中、R1とR2とが互いに結合して、ヒドロカルビレン基となっている場合における、上記一般式(2)で表される基の具体例としては、1-トリメチレンイミノ基、1-ピロリジノ基、1-ピペリジノ基、1-ヘキサメチレンイミノ基、1-へプタメチレンイミノ基、1-オクタメチレンイミノ基、1-デカメチレンイミノ基、1-ドデカメチレンイミノ基などの1-アルキレンイミノ基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(2)中、R1とR2とが互いに結合して、窒素原子および/または酸素原子を含有するヒドロカルビレン基となっている場合における、上記一般式(2)で表される基の具体例としては、1-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1-イミダゾリル基、モルホリノ基などが挙げられる。
【0037】
上記一般式(2)で表される基としては、ジアルキルアミノ基、1-アルキレンイミノ基が好ましく、ジアルキルアミノ基がより好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基がさらに好ましい。
【0038】
上記一般式(1)中、X2、X3およびX4を構成し得るヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;などが挙げられる。
【0039】
上記一般式(1)中、X2、X3およびX4を構成し得るヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;フェニル基、4-メチル-1-フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
X2、X3およびX4を構成し得るヒドロカルビル基が、置換基を有する場合には、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基などが挙げられ、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基などが挙げられる。
【0040】
上記一般式(1)中、X1が化学的な単結合であり、X2、X3およびX4のうち、1つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(1)で表されるケイ素原子含有アミノ基を含有するビニル化合物の具体例としては、(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシラン;[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシラン、[ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシランなどの[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]ジアルキルビニルシラン;(ジメチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジ(アルコキシアルキル)ビニルシラン;ピロリジノジメチルビニルシラン、ピペリジノジメチルビニルシラン、ヘキサメチレンイミノジメチルビニルシラン、4,5-ジヒドロイミダゾリルジメチルビニルシラン、モルホリノジメチルビニルシランなどの環状アミノジアルキルビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)中、X1がヒドロカルビレン基であり、X2、X3およびX4のうち、1つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(1)で表されるケイ素原子含アミノ基を含有するビニル化合物の具体例としては、(ジメチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0042】
上記一般式(1)中、X1が化学的な単結合であり、X2、X3およびX4のうち、2つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(1)で表されるケイ素原子含有アミノ基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン;ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルビニルシラン、ビス[ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ]エチルビニルシランなどのビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシラン;ビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルシラン;ビス(ピロリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ピペリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ヘキサメチレンイミノ)メチルビニルシラン、ビス(4,5-ジヒドロイミダゾリル)メチルビニルシラン、ビス(モルホリノ)メチルビニルシランなどのビス(環状アミノ)アルキルビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0043】
上記一般式(1)中、X1がヒドロカルビレン基であり、X2、X3およびX4のうち、2つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(1)で表されるケイ素原子含アミノ基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシランビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0044】
上記一般式(1)中、X1が化学的な単結合であり、X2、X3およびX4のうち、3つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(1)で表されるケイ素原子含有アミノ基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリス(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)ビニルシラントリス(ジ-n-プロピルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)ビニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルシランなどが挙げられる。
【0045】
上記一般式(1)中、X1がヒドロカルビレン基であり、X2、X3およびX4のうち、3つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(1)で表されるケイ素原子含有アミノ基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリス(ジメチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)-3-ビニルフェニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0046】
上記一般式(1)で表される化合物のなかでも、X1が化学的な単結合であるものが好ましく、X1が化学的な単結合であり、かつ、X2、X3およびX4のうち、2つが置換アミノ基である化合物がより好ましく、X1が化学的な単結合であり、かつ、X2、X3およびX4のうち、2つがジアルキルアミノ基である化合物が特に好ましい。
【0047】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルビニルシランが好ましく、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランが特に好ましい。
【0048】
また、上記一般式(1)で表される化合物以外の、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物としては、4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノスチレン、3-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノスチレン;4-ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、3-ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、4-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、3-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノアルキルスチレン;ピロリジノエチルスチレンなどが挙げられ、なかでも、ピロリジノエチルスチレンが好ましい。なお、ピロリジノエチルスチレンとしては、オルト体、メタ体、パラ体のいずれであってもよいが、メタ体、パラ体が好ましく、メタ体とパラ体との混合物であることがより好ましい。
【0049】
なお、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物として、上記一般式(1)で表される化合物を用いた場合には、特定共役ジエン系ゴム中には、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位として、下記一般式(3)で表される単位が導入されることとなる。
【0050】
【0051】
上記一般式(3)中、X5は、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X6、X7およびX8は、それぞれ独立して、水酸基、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。ただし、X6、X7およびX8のうち少なくとも1つは置換アミノ基である。
【0052】
なお、上記一般式(3)で表される単位において、X5は、上記一般式(1)で表される化合物中のX1に対応し、上記一般式(3)で表される単位において、X6、X7およびX8は、上記一般式(1)で表される化合物中のX2、X3およびX4にそれぞれ対応する。そのため、上記一般式(3)で表される単位において、X5、X6、X7およびX8は、上記一般式(1)で表される化合物中のX1、X2、X3およびX4とそれぞれ同じものとすることができる。また、上記一般式(1)で表される化合物として、X2、X3およびX4のうち少なくとも一つが、置換アミノ基、またはヒドロカルビルオキシ基であるものを用いた場合には、置換アミノ基、またはヒドロカルビルオキシ基が、任意の工程およびタイミングにおいて加水分解されることで、X2、X3およびX4のうち少なくとも一つを、水酸基とすることができる。
【0053】
<含有量>
重合体ブロック(A)中における、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位の含有量は、特に限定されず、重合体ブロック(A)を構成する全単量体単位に対する含有量が、好ましくは0.01~20質量%の範囲、より好ましくは0.02~2質量%の範囲、特に0.05~1質量%の範囲となるように調整することが好ましい。シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位の含有量を上記範囲とすることにより、ロールに対する付着の抑制効果、ならびに低発熱性、および操縦安定性の向上効果をより顕著なものとすることできる。
【0054】
<その他の単量体単位>
また、重合体ブロック(A)は、イソプレン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、およびシリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位以外のその他の単量体単位を含有していてもよい。このようなその他の単量体単位を構成するその他の化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、および1,3-ヘキサジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;などが挙げられる。重合体ブロック(A)中における、その他の単量体単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
〔重量平均分子量(Mw)〕
重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000の範囲であり、好ましくは1,500~20,000の範囲であり、より好ましくは2,000~10,000の範囲である。重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、ロールに対する付着の抑制効果、ならびに低発熱性、および操縦安定性の向上効果が得られなくなる。一方、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、得られるゴム架橋物の低発熱性が低下してしまう。
【0056】
〔Mw/Mn〕
また、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.0~1.5であることが好ましく、1.0~1.3であることがより好ましい。重合体ブロック(A)の分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によりポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0057】
[重合体ブロック(B)]
重合体ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位を含有するもの(好ましくは、1,3-ブタジエン単量体単位を主成分とするもの)であればよく、特に限定されず、1,3-ブタジエン単量体単位のみからなるものであってよいし、あるいは、1,3-ブタジエン単量体単位と、1,3-ブタジエン単量体単位以外の単量体単位とからなるものであってもよい。この場合における、1,3-ブタジエン単量体単位以外の単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位が好適に挙げられ、本発明の重合体ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位をも含有するものであることが好ましい。
【0058】
〔1,3-ブタジエン単量体単位含有量〕
重合体ブロック(B)中における、1,3-ブタジエン単量体単位の含有量(1,3-ブタジエン単量体単位含有量)は、好ましくは55~65質量%であり、より好ましくは55~63質量%、さらに好ましくは55~60質量%である。重合体ブロック(B)中の1,3-ブタジエン単量体単位含有量を上記範囲とすることにより、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。
【0059】
〔1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量〕
重合体ブロック(B)における、1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%、特に好ましくは20~35質量%である。重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0060】
〔芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル化合物〕
芳香族ビニル単量体単位を形成するための芳香族ビニル化合物としては、上述した重合体ブロック(A)の説明において例示したものを用いることができ、上述した芳香族ビニル化合物の中でも、スチレンが好ましい。重合体ブロック(B)の芳香族ビニル単量体単位含有量は、好ましくは35~45質量%、より好ましくは40~45質量%である。
【0061】
〔シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位〕
また、特定共役ジエン系ゴムは、上述した重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有するものであるが、特定共役ジエン系ゴムにおいては、このようなシリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位が、重合体ブロック(A)のみに含有される態様、重合体ブロック(B)のみに含有される態様、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の両方に含有される態様のいずれであってもよい。特定共役ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、少なくとも重合体ブロック(B)がシリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有するのが好ましい。
【0062】
<シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物>
シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を形成するための、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物としては、上述した重合体ブロック(A)の説明において例示したものを用いることができ、上述した重合体ブロック(A)の説明において好ましいものとして例示したものを好適に用いることができる。
【0063】
<含有量>
重合体ブロック(B)中における、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位の含有量は、特に限定されず、重合体ブロック(B)を構成する全単量体単位に対する含有量が、好ましくは0.01~20質量%の範囲、より好ましくは0.02~2質量%の範囲、特に0.05~1質量%の範囲となるように調整することが好ましい。
【0064】
<その他の単量体単位>
また、重合体ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、およびシリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位以外のその他の単量体単位を含有していてもよい。このようなその他の単量体単位を構成するその他の化合物としては、上述した重合体ブロック(A)において例示された化合物(ただし、1,3-ブタジエンを除く)と同様のものに加え、イソプレンを用いることができる。重合体ブロック(B)中における、その他の単量体単位の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0065】
[重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比]
特定共役ジエン系ゴム中における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比(重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)が複数存在する場合は、それぞれの合計質量を基準とした質量比)は、(重合体ブロック(A)の質量)/(重合体ブロック(B)の質量)で、0.001~0.2であることが好ましく、0.005~0.1であることがより好ましく、0.01~0.05であることが特に好ましい。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウェットグリップ性と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0066】
[各単位の含有量]
【0067】
〔1,3-ブタジエン単量体単位含有量〕
特定共役ジエン系ゴム全体の1,3-ブタジエン単量体単位の含有量(1,3-ブタジエン単量体単位含有量)は、特に限定されず、本発明の効果がより優れる理由から、55~65質量%であることが好ましく、55~63質量%であることがより好ましく、55~60質量%であることがさらに好ましい。ここで、特定共役ジエン系ゴム全体の1,3-ブタジエン単量体単位含有量とは、特定共役ジエン系ゴムを構成する全単量体単位に対する1,3-ブタジエン単量体単位の含有量を指す。
【0068】
〔芳香族ビニル単量体単位含有量〕
上述のとおり、特定共役ジエン系ゴム全体の芳香族ビニル単量体単位の含有量(芳香族ビニル単量体単位含有量)は、30~45質量%である。ここで、特定共役ジエン系ゴム全体の芳香族ビニル単量体単位含有量とは、特定共役ジエン系ゴムを構成する全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量を指す。
特定共役ジエン系ゴム全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、35~45質量%であることが好ましく、40~45質量%であることがより好ましい。
【0069】
〔シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位の含有量〕
特定共役ジエン系ゴム全体における、上述したシリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位の含有量(例えば、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量)は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.01~20質量%であることが好ましく、0.02~2質量%であることがより好ましく、0.05~1質量%であることがさらに好ましい。
【0070】
[ビニル結合含有量]
特定共役ジエン系ゴム全体における、共役ジエン単量体単位中(たとえば、イソプレン単量体単位および1,3-ブタジエン単量体単位)のビニル結合含有量(以下、単に「特定共役ジエン系ゴム全体のビニル結合含有量」とも言う)は、15~35質量%である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、20~35質量%であることが好ましく、25~35質量%であることがより好ましい。特定共役ジエン系ゴム全体のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0071】
[シロキサン化合物による変性構造]
上述のとおり、特定共役ジエン系ゴムは、少なくとも1つの末端にシロキサン化合物による変性構造を備える。なお、シロキサン化合物による変性構造は、その他の変性剤による変性構造を介して導入されていてもよい。
【0072】
〔好適な態様〕
シロキサン化合物としては、シロキサン構造(-Si-O-)を主鎖として有するものであればよく、特に限定されないが、側鎖に有機基を有するオルガノシロキサンが好ましく、下記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
【0073】
【0074】
上記一般式(4)中、R3~R10は、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X9およびX12は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X10は、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、X10が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。X11は、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X11が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。
【0075】
上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、上記一般式(4)中のR3~R10、X9およびX12を構成し得る炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0076】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X9、X10およびX12を構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0077】
さらに、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X9、X10およびX12を構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4~12の基としては、たとえば、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
【0078】
-Z1-Z2-E (5)
【0079】
上記一般式(5)中、Z1は、炭素数1~10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2~10の炭化水素基である。
【0080】
上記一般式(5)で表される基としては、Z2が酸素原子であるものが好ましく、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z1が炭素数1~3のアルキレン基であり、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0081】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X9およびX12としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基、または、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、X10としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基が好ましい。さらに、X9およびX12が炭素数1~6のアルキル基であり、X10がエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であることがより好ましい。
【0082】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X11、すなわち2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましい。
【0083】
【0084】
上記一般式(6)中、tは2~20の整数であり、X13は炭素数2~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R11は水素原子またはメチル基であり、X14は炭素数1~10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、tが2~8の整数であり、X13が炭素数3のアルキレン基であり、R11が水素原子であり、かつ、X14がメトキシ基であるものが好ましい。
【0085】
上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは1~200の整数、好ましくは20~150の整数、より好ましくは30~120の整数である。mが1~200であると、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
【0086】
また、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~120の整数である。kは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、3~400であることが好ましく、20~300であることがより好ましく、30~250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサンと活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖との反応が進行し易く、更に、m、nおよびkの合計数が400以下であると、上記一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
【0087】
[重量平均分子量(Mw)]
特定共役ジエン系ゴム全体の重量平均分子量(Mw)は、50,000~5,000,000の範囲であり、好ましくは75,000~3,000,000の範囲であり、より好ましくは100,000~1,000,000の範囲である。特定共役ジエン系ゴム全体の重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、このような共役ジエン系ゴムを含むゴム組成物へのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性をより高めることができ、さらには、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
【0088】
[Mw/Mn]
また、特定共役ジエン系ゴム全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる全体の分子量分布は、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.5であることがより好ましく、1.2~2.2であることが特に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0089】
[ムーニー粘度]
また、特定共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~100、より好ましくは30~90、特に好ましくは35~80である。なお、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0090】
[ガラス転移温度(Tg)]
特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、好ましくは20~-110℃であり、より好ましくは10~-70℃である。特定共役ジエン系ゴムのガラス転移温度は、たとえば、共役ジエン系ゴム中の芳香族ビニル単量体単位含有量、および共役ジエン単量体単位部分におけるビニル結合含有量を調節することによって、適宜調節することができる。
【0091】
[製造方法]
特定共役ジエン系ゴムは、たとえば、不活性溶媒中で、イソプレンを含む単量体(a)を、重合開始剤により重合し、活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程(工程A)と、
得られた活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)とを、混合して重合反応を継続させ、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を備える、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程(工程B)と、
得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端にシロキサン化合物を反応させる工程(工程C)とを経て製造することができる。
【0092】
〔活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程(工程A)〕
<単量体(a)>
重合体ブロック(A)を形成するための単量体(a)としては、イソプレンを含有するものであればよく、形成する重合体ブロック(A)の単量体組成(上述した単量体組成)に応じた単量体を用いればよい。たとえば、重合体ブロック(A)をイソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなるものとする場合には、単量体(a)としては、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含有するものとすればよい。また、重合体ブロック(A)を、イソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を有するものとする場合には、単量体(a)を、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物を含有するものとすればよい。
【0093】
<不活性溶媒>
重合体ブロック(A)を形成するために、イソプレンを含む単量体(a)の重合に用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタンイソペンタン、n-ヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-へキセン、2-へキセン、n-へプタンなどの鎖状または分岐状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;などが挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体濃度が、たとえば1~80質量%となる量であり、好ましくは5~50質量%となる量である。
【0094】
<重合開始剤>
重合体ブロック(A)を形成するために用いられる重合開始剤としては、イソプレンを含む単量体(a)を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムエチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼン、sec-ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンとの反応物、n-ブチルリチウムと1,3-ブタジエンとジビニルベンゼンとの反応物、n-ブチルリチウムとポリアセチレン化合物との反応物などの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;有機ルビジウム化合物;有機セシウム化合物などが挙げられる。その他にも、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等が挙げられる。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている公知の有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
【0095】
また、有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ-t-ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ-t-ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点からn-ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびへプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この有機アルカリ金属アミド化合物としては、特に限定されないが、たとえば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド及びリチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。
【0096】
(使用量)
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、イソプレンを含む単量体(a)100g当り、好ましくは4~250ミリモル、より好ましくは6~200ミリモル、特に好ましくは10~70ミリモルの範囲である。
【0097】
<単量体(a)を重合する際における重合温度>
イソプレンを含む単量体(a)を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。また、重合体ブロック(A)を共重合体鎖とする場合における結合様式としては、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。
【0098】
<極性化合物>
また、単量体(a)を重合するにあたり、重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、0.01~30モルが好ましく、0.05~10モルがより好ましい。極性化合物の使用量が上記範囲内にあると、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、しかも、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。また、上記範囲内で極性化合物の使用量を増加させることで、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を増加させることができる。
【0099】
〔活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程(工程B)〕
次いで、イソプレンを含む単量体(a)を重合することにより得られた、活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)とを、混合して重合反応を継続させることにより、重合体ブロック(B)を重合体ブロック(A)と一続きに形成することができ、これにより、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を備える、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。なお、形成された重合体ブロック(B)は、活性末端を有するものとなり、一方、重合体ブロック(A)からは、活性末端が消失する。
【0100】
<単量体(b)>
重合体ブロック(B)を形成するための単量体(b)としては、1,3-ブタジエンを含有するものであればよく、形成する重合体ブロック(B)の単量体組成(上述した単量体組成)に応じた単量体を用いればよい。たとえば、重合体ブロック(B)を1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなるものとする場合には、単量体(b)としては、1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含有するものとすればよい。また、重合体ブロック(B)を、1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を有するものとする場合には、単量体(b)を、1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物を含有するものとすればよい。
【0101】
(シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物)
なお、特定共役ジエン系ゴムは、上述した重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有するものである。そのため、上記製造方法においては、重合体ブロック(A)を形成するために用いられるイソプレンを含む単量体(a)、および、重合体ブロック(B)を形成するために用いられる1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物を含有させればよい。
【0102】
<不活性溶媒>
重合体ブロック(B)を形成するために、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の重合に用いられる不活性溶媒としては、特に限定されず、上述した不活性溶媒と同様のものを用いることができる。
【0103】
<活性末端を有する重合体ブロック(A)の使用量>
重合体ブロック(B)を形成する際における、活性末端を有する重合体ブロック(A)の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)100g当り、好ましくは0.1~5ミリモル、より好ましくは0.15~2ミリモル、さらに好ましくは0.2~1.5ミリモルの範囲である。
【0104】
<重合体ブロック(A)と1,3-ブタジエンを含む単量体(b)との混合方法>
重合体ブロック(A)と1,3-ブタジエンを含む単量体(b)との混合方法は、特に限定されず、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の溶液中に活性末端を有する重合体ブロック(A)を加えてもよいし、活性末端を有する重合体ブロック(A)の溶液中に1,3-ブタジエンを含む単量体(b)を加えてもよい。重合の制御の観点より、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の溶液中に活性末端を有する重合体ブロック(A)を加える方法が好ましい。
【0105】
<重合温度、重合様式>
1,3-ブタジエンを含む単量体(b)を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。重合体ブロック(B)を共重合体鎖とする場合には、結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0106】
<結合様式>
重合体ブロック(B)を共重合体鎖とする場合の各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0107】
<極性化合物>
また、重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節時と同様に、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。ただし、重合体ブロック(A)の調製時に、不活性溶媒に、重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するのに十分な量の極性化合物を添加している場合は、新たに極性化合物を添加しなくてもよい。ビニル結合含有量を調節するために用いられる極性化合物としては、上述した極性化合物と同様のものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.1~30モルの範囲で調節すればよい。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易で、あり、かつ、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0108】
<活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖>
このようにして、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。本発明においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、生産性の観点より、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)で構成され、かつ、重合体ブロック(B)の末端が活性末端であることが好ましいが、重合体ブロック(A)を複数有するものとしてもよいし、その他の重合体ブロックを有するものとしてもよい。たとえば、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)などの、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が挙げられる。この場合には、重合体ブロック(B)に続いて形成された重合体ブロック(A)の末端に、活性末端が形成されることとなる。共役ジエン系重合体鎖の活性末端側に重合体ブロック(A)を形成させる場合、イソプレンの使用量は、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、10~100モルであることが好ましく、15~70モルであることがより好ましく、20~35モルであることが特に好ましい。
【0109】
〔活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端にシロキサン化合物を反応させる工程(工程C)〕
次いで、得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端にシロキサン化合物を反応させることで、共役ジエン系重合体鎖の末端にシロキサン化合物による変性構造が導入する。
【0110】
<シロキサン化合物の使用量>
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物とを反応させる際における、シロキサン化合物の使用量は、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01~10モル、より好ましくは0.1~5モルである。シロキサン化合物の使用量が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。なお、シロキサン構造(-Si-O-)当たりのモル数を上記範囲とすることが好ましい。
【0111】
<シロキサン化合物と活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とを反応させる方法>
シロキサン化合物と活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とを反応させる方法は、特に限定されないが、これらを、それぞれが溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した重合反応において用いる不活性溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るための重合に用いた重合溶液に、シロキサン化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。さらに、この際においては、シロキサン化合物は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50質量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1分~1時間である。
【0112】
<シロキサン化合物を添加する時期>
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、シロキサン化合物を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にシロキサン化合物を添加することが望ましい。シロキサン化合物の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。なお、得られるゴム組成物の加工性をより高めるため、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、シロキサン化合物を添加し、反応させた後に、さらに有機金属化合物を混合してもよく、これにより、得られるゴム組成物の加工性を高めることができる(コンパウンド・ムーニーを低く抑えることができる。)。また、この際においては、有機金属化合物を混合した後、シロキサン化合物をさらに追加添加し、さらに反応させてもよい。有機金属化合物としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物などが挙げられる。
【0113】
このようにして、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させることで、共役ジエン系重合体鎖の少なくとも1つの末端に、シロキサン化合物による変性構造を導入することができる。反応後の共役ジエン系重合体鎖は、重合体鎖末端に、シロキサン化合物による変性構造が導入されたものであるが、これ以外にも、シロキサン化合物による変性がされていない未変性の共役ジエン系重合体鎖を含むものであってもよい。
【0114】
なお、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖として、重合体ブロック(A)の末端が活性末端であるもの(たとえば、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)で表される重合体鎖)を用いて、重合体ブロック(A)の末端に、シロキサン化合物を反応させることで、重合体ブロック(A)の末端にシロキサン化合物による変性構造を導入してもよいし、あるいは、重合体ブロック(B)の末端が活性末端であるもの(たとえば、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)で表される重合体鎖)を用いて、重合体ブロック(B)の末端に、シロキサン化合物を反応させることで、重合体ブロック(B)の末端にシロキサン化合物による変性構造を導入してもよい。得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めるという観点からは、重合体ブロック(B)の末端に、シロキサン化合物を反応させることで、重合体ブロック(B)の末端にシロキサン化合物による変性構造を導入することが好ましい。
【0115】
〔カップリング〕
また、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる前の状態のとき、あるいは、シロキサン化合物を反応させた後において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が残存している状態のときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤などを重合系内に添加して、カップリングを行ってもよい。
【0116】
〔失活〕
そして、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させた後は、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0117】
〔添加剤〕
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、シロキサン化合物による変性構造を末端に有する共役ジエン系ゴムの溶液に、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを反応溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより反応溶液から重合溶媒を分離して、固形状の、シロキサン化合物による変性構造を末端に有する共役ジエン系ゴムを回収する。さらに、所望により、伸展油を配合して、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100質量部に対して、通常5~100質量部である。
【0118】
[含有量]
上述のとおり、ゴム成分中の特定共役ジエン系ゴムの含有量は35質量%以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、40~85質量%であることが好ましく、45~80質量%であることがより好ましい。
【0119】
[2]天然ゴム
上述のとおり、ゴム成分は天然ゴムを含有する。
【0120】
[分子量]
天然ゴムの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50,000~5,000,000であることが好ましく、75,000~3,000,000であることがより好ましく、100,000~1,000,000であることがさらに好ましい。
【0121】
[含有量]
上述のとおり、ゴム成分中の天然ゴムの含有量は10質量%以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。ゴム成分中の天然ゴムの含有量の上限は、本発明の効果がより優れる理由から、65質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0122】
[3]特定共役ジエン系ゴムと天然との量比
ゴム成分中の上述した特定共役ジエン系ゴムの含有量に対する上述した天然ゴムの含有量の割合(天然ゴム/特定共役ジエン系ゴム)は、本発明の効果がより優れる理由から、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0123】
[4]その他のゴム成分
上記ゴム成分は、上述した特定共役ジエン系ゴム及び上述した天然ゴムのいずれにも該当しないゴム成分(その他のゴム成分)を含有してもよい。
そのようなその他のゴム成分としては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、上述した特定共役ジエン系ゴム以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、上述した特定共役ジエン系ゴム以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)であることが好ましい。
【0124】
[分子量]
その他のゴム成分の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50,000~5,000,000であることが好ましく、75,000~3,000,000であることがより好ましく、100,000~1,000,000であることがさらに好ましい。
【0125】
[含有量]
ゴム成分中のその他のゴム成分の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0~55質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
【0126】
[II]シリカ
本発明の組成物に含有されるシリカは特に制限されないが、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカが好ましい。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0127】
[1]含有量
本発明の組成物において、シリカの含有量は、上述したゴム成分100質量部に対して、50~150質量部である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、60~100質量部であることが好ましい。
【0128】
[2]好適な態様
上記シリカは、本発明の効果がより優れる理由から、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)吸着比表面積が190m2/g以上のシリカ(特定シリカ)を20質量部以上含むのが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、特定シリカを50~150質量部含むのが好ましく、60~100質量部含むのがより好ましい。
特定シリカのCTAB吸着比表面積の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、300m2/g以下であることが好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0129】
[III]シランカップリング剤
本発明の組成物に含有されるシランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0130】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
【0131】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0132】
[1]好適な態様
上記シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、下記一般式(S)で表される化合物であることが好ましい。
(CnH2n+1O)3-Si-CmH2m-S-CO-CkH2k+1 一般式(S)
一般式(S)中、nは1~3の整数を表し、mは1~5の整数(好ましくは、2~4の整数)を表し、kは1~15の整数(好ましくは、5~10の整数)を表す。
【0133】
[2]含有量
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、上述したシリカの含有量(特定シリカを含む全てのシリカの合計の含有量)に対して、3~30質量%である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5~20質量%であることが好ましい。
【0134】
また、本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、3~10質量部であることがさらに好ましい。
【0135】
[IV]任意成分
本発明の組成物は、必要に応じて、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0136】
[1]カーボンブラック
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0137】
[含有量]
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましい。
【0138】
[2]特定アルキルトリエトキシシラン
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、下記一般式(I)で表されるアルキルトリエトキシシラン(以下、「特定アルキルトリエトキシシラン」とも言う)を含有するのが好ましい。
【0139】
【0140】
上記一般式(I)中、R1は炭素数7~20のアルキル基を表す。Etはエチル基を表す。
上記炭素数7~20のアルキル基としては、具体的には、例えば、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、オクチル基、ノニル基が好ましい。
【0141】
[含有量]
本発明の組成物において、特定アルキルトリエトキシシランの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量(特定シリカを含む全てのシリカの合計の含有量)に対して、2.0~15.0質量%であることが好ましい。
【0142】
[3]熱可塑性樹脂
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、熱可塑性樹脂を含有するのが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂等の天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、テルペン樹脂が好ましく、テルペン樹脂としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族変性テルペン樹脂が好ましい。
【0143】
[軟化点]
熱可塑性樹脂(特に芳香族変性テルペン樹脂)の軟化点は、本発明の効果がより優れる理由から、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。上記軟化点の上限は、本発明の効果がより優れる理由から、170℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
ここで、軟化点は、JIS K2207:1996に準拠して測定された軟化点である。
【0144】
[含有量]
本発明の組成物において、熱可塑性樹脂(特に芳香族変性テルペン樹脂)の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましく、2~15質量部であることがさらに好ましい。
【0145】
[4]液状ジエン系ゴム
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、液状ジエン系ゴムを含有するのが好ましい。液状ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、液状SBR又は液状BRであることが好ましく、液状BRであることがより好ましい。
【0146】
[好適な態様]
上記液状ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れる理由から、下記一般式(II)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有するのが好ましい。
【0147】
【0148】
一般式(II)中、R1は炭素数1から6の2価のアルキレン基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基又はフェニル基を表す。ただし、R2、R3及びR4の少なくとも1つはメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基である。
【0149】
[分子量]
上記液状ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、3,000以上100,000未満であることが好ましく、5,000以上80,000未満であることがより好ましい。
【0150】
[含有量]
本発明の組成物において、液状ジエン系ゴムの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量(特定シリカを含む全てのシリカの合計の含有量)に対して、1.0~15.0質量%であることが好ましく、5.0~10.0質量%であることがより好ましい。
【0151】
[B]タイヤ
本発明のタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造されたタイヤである。本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0152】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0153】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0154】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
[特定共役ジエン系ゴム1の製造]
以下のとおり、特定共役ジエン系ゴム1を製造した。
【0156】
〔工程A〕
窒素置換された800ml容器に、シクロヘキサン140.89、およびテトラメチルエチレンジアミン3.0mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム30.0mmolを添加した。次いで、イソプレン113.6g、およびスチレン9.2gをゆっくりと添加し、50℃の容器内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を得た。この重合体ブロック(A)の、重量平均分子量(Mw)は6,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.5質量%、イソプレン単量体単位含有量は92.5質量%、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量は7.0質量%であった。
【0157】
〔工程B〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン6400g、テトラメチルエチレンジアミン2.95mmol、1,3-ブタジエン585g、スチレン615g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン(上記一般式(1)において、X1=化学的な単結合、X2及びX3=ジエチルアミノ基、X4=メチル基である化合物)0.95gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを7.01mmol加え、上記活性末端を有する重合体ブロック(A)をリチウム原子含有量に換算して0.51mmol加え、40℃で重合を開始した。重合開始10分後に、1,3-ブタジエン300gを60分間かけて連続的に添加した。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認した。このようにして、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を備える、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得た。
【0158】
ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン
【化8】
【0159】
〔工程C〕
次いで、下記式(9)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が7.15mmolとなるように添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤としてイルガノックス1520L(BASF社製)を共役ジエン系ゴム100質量部に対して0.20質量部、及び、伸展油(商品名「アロマックスT-DAE」、JX日鉱日石エネルギー社製)を共役ジエン系ゴム100質量部に対して15.0質量部、添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。
【0160】
得られた共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は590,000、スチレン単量体単位含有量は41質量%、ビニル結合含有量は25質量%であった。また、得られた共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.06質量%であった。また、得られた共役ジエン系ゴムのガラス転移温度は-26℃であった。
【0161】
【0162】
得られた共役ジエン系ゴムは、イソプレン単量体単位及びスチレン単量体単位を含有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位、スチレン単量体単位及びビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位(シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位)を含有する重合体ブロック(B)とを備えるとともに、末端に上記式(9)で表されるポリオルガノシロキサン(シロキサン化合物)による変性構造を備える共役ジエン系ゴムである。また、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は1,000~30,000の範囲であり、全体の重量平均分子量(Mw)は50,000~5,000,000の範囲である。また、全体のスチレン単量体単位含有量(芳香族ビニル単量体単位含有量)は30~45質量%であり、全体のビニル結合含有量は15~35質量%である。
したがって、得られた共役ジエン系ゴムは上述した特定共役ジエン系ゴムに該当する。
得られた共役ジエン系ゴムを特定共役ジエン系ゴム1とも言う。
【0163】
[比較共役ジエン系ゴム]
工程Bにおいて、テトラメチルエチレンジアミンの量を0.71mmol、1,3-ブタジエンの量を763g、スチレンの量を28.7gに変更した点以外は上述した特定共役ジエン系ゴム1の製造と同様の手順に従って共役ジエン系ゴムを製造した。
【0164】
得られた共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は750,000、スチレン単量体単位含有量は28質量%、ビニル結合含有量は59質量%であった。また、得られた共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.15質量%であった。また、得られた共役ジエン系ゴムのガラス転移温度は-21℃であった。
【0165】
得られた共役ジエン系ゴムは、イソプレン単量体単位及びスチレン単量体単位を含有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位、スチレン単量体単位及びビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位(シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位)を含有する重合体ブロック(B)とを備えるとともに、末端に上記式(9)で表されるポリオルガノシロキサン(シロキサン化合物)による変性構造を備える共役ジエン系ゴムである。また、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は1,000~30,000の範囲であり、全体の重量平均分子量(Mw)は50,000~5,000,000の範囲である。一方、得られた共役ジエン系ゴムは、全体のスチレン単量体単位含有量(芳香族ビニル単量体単位含有量)が30~45質量%の範囲外であり、全体のビニル結合含有量が15~35質量%の範囲外であるため、上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない。
得られた共役ジエン系ゴムを比較共役ジエン系ゴムとも言う。
【0166】
[タイヤ用ゴム組成物の調製]
下記表1に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表1に示す成分のうち硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃付近に温度を上げてから、5分間混合した後に放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄及び加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
なお、ゴム成分が油展品である場合、質量部はゴムの正味の量(オイルを除いた量)を表す。
【0167】
[評価]
得られたタイヤ用ゴム組成物について下記のとおり評価を行った。
【0168】
〔耐クラック成長性〕
JIS K6260によって、加硫ゴムにしたときの耐屈曲き裂成長性(耐クラック成長性)を測定した。結果は、比較例1の値を基準(3)として5段階で示した。
結果を表1に示す。値が大きい程、耐クラック成長性に優れることを表す。4以上であることが好ましい。
【0169】
〔耐グルーブクラック性〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を用いて空気入りタイヤを製造した。そして、得られた空気入りタイヤを試験車両に装着して一定距離を走行後、目視によりタイヤを観察することで、耐グルーブクラック性を評価した(5段階評価)。
結果を表1に示す。値が大きい程、耐グルーブクラック性に優れることを表す。4以上であることが好ましい。
【0170】
〔耐摩耗性〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6264-1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗量を測定した。そして下記式から耐摩耗性指数を算出した。
結果を表1に示す。指数が大きいほど摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れることを意味する。耐摩耗性指数は105以上であることが好ましい。
耐摩耗性指数=(比較例1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
【0171】
〔耐チッピング性〕
得られたタイヤ用ゴム組成物を用いて空気入りタイヤを製造した。そして、得られた空気入りタイヤを試験車両に装着して一定距離を走行後、目視によりタイヤを観察することで、耐チッピング性を評価した(5段階評価)。
結果を表1に示す。値が大きい程、耐チッピング性に優れることを表す。4以上であることが好ましい。
【0172】
【0173】
上記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・特定共役ジエン系ゴム1:上述のとおり製造した特定共役ジエン系ゴム1(上述のとおり、特定共役ジエン系ゴム1は上述した特定共役ジエン系ゴムに該当する)
・比較共役ジエン系ゴム:上述のとおり製造した比較共役ジエン系ゴム(上述のとおり、比較共役ジエン系ゴムは上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない)
・ゴム成分1:末端にポリオルガノシロキサン基を有し、イソプレンブロックを有する、溶液重合スチレンブタジエンゴム。(油展品(SBR100質量部に対して油展オイル25質量部を含む。)、スチレン単量体単位含有量:43質量%、ビニル結合含有量:30質量%、重量平均分子量:650,000、Tg:-26℃)(ゴム成分1は、シリカに対して相互作用可能な官能基としてアミノ基を含有するビニル化合物の単位を含有しないため、上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない。)
・NR:天然ゴム(TSR20、VON BUNDIT社製)
・NS612:日本ゼオン社製NS612(溶液重合SBR、スチレン単量体単位含有量:15質量%、ビニル結合含有量:31質量%、重量平均分子量:440,000、Tg:-61℃)(NS612は、上述した特定共役ジエン系ゴムに該当しない)
・7000GR:ULTRASIL 7000GR(シリカ、CTAB吸着比表面積:160m2/g、Evonik社製)
・9100GR:ULTRASIL 9100GR(シリカ、CTAB吸着比表面積:200m2/g、Evonik社製)
・N339:ショウブラックN339(カーボンブラック、キャボットジャパン社製)
・NXT:上述した一般式(S)で表されるシランカップリング剤(ここで、上述した一般式(S)中、n=2、m=3、k=7である。)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日油社製)
・老化防止剤:オゾノン6C(精工化学社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・アルキルシラン:オクチルトリエトキシシラン(KBE-3083、信越化学工業社製)(アルキルシランは上述した特定アルキルトリエトキシシランに該当する)
・熱可塑性樹脂:ヤスハラケミカル社製YSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点:125℃)
・変性LBR:以下のとおり製造した変性液状ジエン系ゴム
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、ヘキサン1200g及びn-ブチルリチウム(17質量%ヘキサン溶液)22gを仕込み、50℃に昇温した後、攪拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1460gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して攪拌し、水で重合体溶液を洗浄した。攪拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴムを得た。
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム700gを仕込み、60℃で3時間攪拌しながら窒素脱気をした。1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン1.0gと(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン25gを添加し、105℃で8時間反応させて、変性液状ジエン系ゴムを得た。得られた変性液状ジエン系ゴムの重量平均分子量は55,000であった。得られた変性液状ジエン系ゴムは、上述した一般式(II)で表されるシラン化合物に由来する官能基を有する液状BRである。
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%、鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤(CZ):大内新興化学工業社製ノクセラーCZ-G
・加硫促進剤(DPG):1,3-ジフェニルグアニジン(ソクシノールD-G、住友化学工業社製)
【0174】
なお、表1中、Stはスチレン単量体単位含有量(質量%)を表し、Vnはビニル結合含有量(質量%)を表し、Mwは重量平均分子量(×104)を表し、Tgはガラス転移温度(℃)を表す。
【0175】
表1から分かるように、特定共役ジエン系ゴムと天然ゴムとを所定の量で併用した実施例1~6は、優れた耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性及び耐チッピング性を示した。
実施例1と実施例2との対比(シリカとして7000GRを使用した態様同士の対比)から、ゴム成分中の特定共役ジエン系ゴムの含有量が50質量%以上である実施例1は、より優れた耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性及び耐チッピング性を示した。
また、実施例1と実施例3との対比(シリカの種類のみが異なる態様同士の対比)から、シリカが上述した特定シリカを20質量部以上含む実施例3は、より優れた耐摩耗性を示した。
また、実施例3と実施例4との対比(アルキルシランの有無のみが異なる態様同士の対比)から、特定アルキルトリエトキシシランを含有する実施例4は、より優れた耐摩耗性を示した。
また、実施例3と実施例5との対比(変性LBRの有無のみが異なる態様同士の対比)から、液状ジエン系ゴムを含有する実施例5は、より優れた耐摩耗性を示した。
また、実施例3と実施例6との対比(熱可塑性樹脂の有無のみが異なる態様同士の対比)から、熱可塑性樹脂を含有する実施例6は、より優れた耐摩耗性を示した。
【0176】
一方、特定共役ジエン系ゴムを含有しない比較例1、比較例3及び比較例5、特定共役ジエン系ゴムと天然ゴムとを併用するがゴム成分中の特定共役ジエン系ゴムの含有量が35質量%未満である比較例2、並びに、特定共役ジエン系ゴムと天然ゴムとを併用するがゴム成分中の天然ゴムの含有量が10質量%未満である比較例4は、耐クラック成長性、耐グルーブクラック性、耐摩耗性及び耐チッピング性の少なくとも1つが不十分であった。
【符号の説明】
【0177】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション