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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】圧縮機、及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20231122BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F04B39/00 106A
H02K5/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022209885
(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公開番号】P2023129252
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2022032903
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】小島 功二
(72)【発明者】
【氏名】岡村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】森 誠也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 彩
(72)【発明者】
【氏名】福永 剛
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-185463(JP,A)
【文献】特開平05-126047(JP,A)
【文献】特開2021-178884(JP,A)
【文献】特開平03-260380(JP,A)
【文献】特開平05-144493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/00
F04D 29/00
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(120)で駆動する圧縮機構(130)と、
前記圧縮機構を内部に密閉するケーシング(110)と、
前記ケーシングの一部を貫通する給電用のターミナル(200)と、
を備え、
前記ターミナルは、本体(210)と、前記モータから延びるリード線(160)が接続される導電ピン(220)と、前記本体に前記導電ピンを絶縁固定するガラス部材(240)と、を有し、
前記導電ピン又は前記リード線の一部である第1部と、前記ケーシング又は前記ターミナルの前記本体の一部である第2部と、の間には、前記第1部と前記第2部とを結ぶブリッジ部材(250a~250k)が設けられており、
前記ブリッジ部材は、前記圧縮機構の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉(FF)が前記ブリッジ部材に付着したときに、前記ブリッジ部材前記第1部と前記第2部とを結ぶ電路(EC)形成を促す第1部材(254a~254g)または第1構造(258h~258k)を有する、
圧縮機(100)。
【請求項2】
モータ(120)で駆動する圧縮機構(130)と、
前記圧縮機構を内部に密閉するケーシング(110)と、
前記ケーシングの一部を貫通する給電用のターミナル(200)と、
を備え、
前記ターミナルは、本体(210)と、前記モータから延びるリード線(160)が接続される導電ピン(220)と、前記本体に前記導電ピンを絶縁固定するガラス部材(240)と、を有し、
前記導電ピン又は前記リード線の一部である第1部と、前記ケーシング又は前記ターミナルの前記本体の一部である第2部と、の間には、前記第1部と前記第2部とを結ぶブリッジ部材(250a~250k)が設けられており、
前記圧縮機構の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉(FF)が前記ブリッジ部材に付着したときに、前記ブリッジ部材には、前記第1部と前記第2部とを結ぶ電路(EC)が形成され、
前記第1部から離れた、前記ブリッジ部材の一部には、導電体(254a~254g)が固定される、
圧縮機(100)。
【請求項3】
モータ(120)で駆動する圧縮機構(130)と、
前記圧縮機構を内部に密閉するケーシング(110)と、
前記ケーシングの一部を貫通する給電用のターミナル(200)と、
を備え、
前記ターミナルは、本体(210)と、前記モータから延びるリード線(160)が接続される導電ピン(220)と、前記本体に前記導電ピンを絶縁固定するガラス部材(240)と、を有し、
前記導電ピン又は前記リード線の一部である第1部と、前記ケーシング又は前記ターミナルの前記本体の一部である第2部と、の間には、前記第1部と前記第2部とを結ぶブリッジ部材(250a~250k)が設けられており、
前記圧縮機構の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉(FF)が前記ブリッジ部材に付着したときに、前記ブリッジ部材には、前記第1部と前記第2部とを結ぶ電路(EC)が形成され、
前記ブリッジ部材は、前記摩耗粉を捕集するための保持構造(258h~258k)を有し、
前記ブリッジ部材には、前記摩耗粉を捕集して前記電路の形成を促すための磁石が固定される、
圧縮機(100)。
【請求項4】
前記ブリッジ部材は、絶縁部材によって形成される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機(100)。
【請求項5】
前記ブリッジ部材には、前記導電ピンが貫通する穴(251a~251k)が形成される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機(100)。
【請求項6】
前記導電体は、磁性を有する、
請求項2に記載の圧縮機(100)。
【請求項7】
前記第1部と、前記ブリッジ部材との接触箇所は、絶縁されている、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機(100)。
【請求項8】
前記ブリッジ部材は、前記ガラス部材よりも前記摩耗粉が堆積しやすい位置に設置される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機(100)。
【請求項9】
前記圧縮機構によって圧縮される冷媒は、ISO817における、等級2Lの微燃性の冷媒、等級2の可燃性の冷媒、または等級3の強燃性の冷媒である、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機(100)。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機(100)を有する冷媒回路(10)、
を備える、
冷凍サイクル装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮機、及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開第2021/001921号)に示されているように、圧縮機におけるターミナルの導電ピンを、ガラス部材によって、ターミナルの本体に絶縁固定する技術がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧縮機構の摺動部で生じる摩耗紛が、冷媒流により圧縮機内部を循環する場合、特許文献1では、ガラス部材に摩耗粉が付着することにより、導電ピン間等で短絡が生じ、ガラス部材が溶融して、導電ピンが脱落する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の圧縮機は、圧縮機構と、ケーシングと、ターミナルと、を備える。圧縮機構は、モータで駆動する。ケーシングは、圧縮機構を内部に密閉する。ターミナルは、ケーシングの一部を貫通する。ターミナルは、給電に用いられる。ターミナルは、本体と、導電ピンと、ガラス部材と、を有する。導電ピンには、モータから延びるリード線が接続される。ガラス部材は、本体に導電ピンを絶縁固定する。第1部と、第2部と、の間には、第1部と第2部とを結ぶブリッジ部材が設けられている。第1部は、導電ピン又はリード線の一部である。第2部は、ケーシング又はターミナルの本体の一部である。圧縮機構の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉がブリッジ部材に付着したときに、ブリッジ部材には、第1部と第2部とを結ぶ電路が形成される。
【0005】
第1観点の圧縮機は、圧縮機構の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉がブリッジ部材に付着したときに、ブリッジ部材には、第1部と第2部とを結ぶ電路が形成される。その結果、ケーシングを通じて電流が地絡し、圧縮機が停止することにより、圧縮機は、ガラス部材が溶融して、導電ピンが脱落することを防止することができる。
【0006】
第2観点の圧縮機は、第1観点の圧縮機であって、ブリッジ部材は、絶縁部材によって形成される。
【0007】
第3観点の圧縮機は、第1観点又は第2観点の圧縮機であって、ブリッジ部材には、導電ピンが貫通する穴が形成される。
【0008】
第4観点の圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれかの圧縮機であって、第1部から離れた、ブリッジ部材の一部には、導電体が固定される。
【0009】
第4観点の圧縮機は、このような構成により、ブリッジ部材に、第1部と第2部とを結ぶ電路を、形成されやすくすることができる。
【0010】
第5観点の圧縮機は、第4観点の圧縮機であって、導電体は、磁性を有する。
【0011】
第5観点の圧縮機は、このような構成により、ブリッジ部材に、第1部と第2部とを結ぶ電路を、より形成されやすくすることができる。
【0012】
第6観点の圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれかの圧縮機であって、ブリッジ部材は、摩耗粉を捕集するための保持構造を有する。
【0013】
第6観点の圧縮機は、このような構成により、ブリッジ部材に、第1部と第2部とを結ぶ電路を、形成されやすくすることができる。
【0014】
第7観点の圧縮機は、第6観点の圧縮機であって、ブリッジ部材には、摩耗粉を捕集するための磁石が固定される。
【0015】
第7観点の圧縮機は、このような構成により、ブリッジ部材に、第1部と第2部とを結ぶ電路を、より形成されやすくすることができる。
【0016】
第8観点の圧縮機は、第1観点から第7観点のいずれかの圧縮機であって、第1部と、ブリッジ部材との接触箇所は、絶縁されている。
【0017】
第9観点の圧縮機は、第1観点から第8観点のいずれかの圧縮機であって、ブリッジ部材は、ガラス部材よりも摩耗粉が堆積しやすい位置に設置される。
【0018】
第9観点の圧縮機は、このような構成により、導電ピン間等で短絡が生じる前に、ケーシングを通じて電流を地絡させることができる。
【0019】
第10観点の圧縮機は、第1観点から第9観点のいずれかの圧縮機であって、圧縮機構によって圧縮される冷媒は、ISO817における、等級2Lの微燃性の冷媒、等級2の可燃性の冷媒、または等級3の強燃性の冷媒である。
【0020】
導電ピンが脱落することを防止することができる圧縮機は、圧縮機から冷媒が漏洩し、漏洩した冷媒が、圧縮機の周囲の空気と混ざり合い、電流の短絡によって発生するスパークにより着火されて爆発することを防止することができる。そのため、第10観点の圧縮機では、ISO817における、等級2Lの微燃性の冷媒、等級2の可燃性の冷媒、または等級3の強燃性の冷媒を、安心して使用することができる。
【0021】
第11観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第10観点のいずれかの圧縮機を有する冷媒回路、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】冷凍サイクル装置のブロック構成図である。
図3】圧縮機の概略構造を示す側面視断面図である。
図4図3中のIV-IV矢視の、圧縮機の圧縮機構の概略断面図である。
図5】圧縮機に取り付けられた状態のターミナルを、圧縮機の内側から見た図である。
図6】圧縮機のターミナルの概略構造を示す側面視断面図である。
図7】圧縮機のターミナルに設けられるブリッジ部材の概略斜視図である。
図8】ブリッジ部材を設置していないターミナルに、圧縮機構の摺動部で生じる摩耗粉が付着し、電路が形成される様子を示す図である。
図9】ブリッジ部材を設置したターミナルに、圧縮機構の摺動部で生じる摩耗粉が付着し、電路が形成される様子を示す図である。
図10】変形例1Aにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図11】変形例1Bにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図12】変形例1Bにおけるターミナルの概略構造を示す側面視断面図である。
図13】変形例1Bにおけるターミナルの概略構造を示す側面視断面図である。
図14】変形例1Bにおけるブリッジ部材を設置したターミナルを、圧縮機の内側から見た図である。
図15】変形例1Cにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図16】変形例1Cにおけるターミナルの概略構造を示す側面視断面図である。
図17】変形例1Cにおけるブリッジ部材を設置したターミナルを、圧縮機の内側から見た図である。
図18】変形例1Dにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図19】変形例1Dにおけるターミナルの概略構造を示す側面視断面図である。
図20】変形例1Dにおけるターミナルの概略構造を示す側面視断面図である。
図21】変形例1Eにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図22】変形例1Eにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図23】変形例1Eにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
図24】変形例1Eにおけるブリッジ部材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一実施形態に係る、圧縮機100と、圧縮機100を有する冷媒回路10を備える冷凍サイクル装置1と、について説明する。
【0024】
(1)冷凍サイクル装置
(1-1)全体構成
図1は、冷凍サイクル装置1の概略構成図である。図2は、冷凍サイクル装置1のブロック構成図である。冷凍サイクル装置1では、冷媒回路10において、冷媒が、圧縮され、放熱又は凝縮し、減圧され、加熱されて蒸発した後に、再び圧縮される、という蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。本実施形態では、冷媒は、ISO817における、等級2Lの微燃性の冷媒、等級2の可燃性の冷媒、または等級3の強燃性の冷媒である。例えば、本実施形態における冷媒は、等級2Lの微燃性の冷媒であるR32(単一冷媒)、R454C(混合冷媒)等であってもよいし、等級2の可燃性の冷媒であるR152a等であってもよいし、等級3の強燃性の冷媒であるR290(プロパン)等であってもよい。ただし、冷媒の種類は、これらに限定されない。
【0025】
冷凍サイクル装置1は、図1に示すように、主として、熱源ユニット20と、利用ユニット30と、冷凍サイクル装置1の動作を制御するコントローラ7と、を有する。
【0026】
(1-2)詳細構成
(1-2-1)熱源ユニット
熱源ユニット20は、例えば、屋外や機械室等に設置される。
【0027】
熱源ユニット20は、主として、圧縮機100と、流路切換機構22と、熱源熱交換器23と、膨張機構24と、熱源ファン25と、アキュムレータ41と、を有する(図1参照)。また、熱源ユニット20は、熱源ユニット20を構成する各部の動作を制御する第1制御部27を有している。
【0028】
圧縮機100は、吸込口から吸い込んだ冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を圧縮し、冷凍サイクルにおける高圧まで昇圧し、吐出口から吐出する機器である。圧縮機100は、例えば、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮機構がモータによって駆動される密閉型の圧縮機である。本実施形態では、圧縮機100はロータリ圧縮機である。圧縮機100のモータは、インバータにより運転周波数の制御が可能である。圧縮機100の詳細については後述する。
【0029】
流路切換機構22は、冷媒回路10の流路の切り換えを行う機構である。本実施形態では、流路切換機構22は四方切換弁である。冷凍サイクル装置1が冷房運転を行う際、流路切換機構22は、冷媒回路10の状態を第1状態(図1中の実線参照)に切り換える。冷凍サイクル装置1が暖房運転を行う際、流路切換機構22は、冷媒回路10の状態を第2状態(図1中の破線参照)に切り換える。
【0030】
熱源熱交換器23は、冷凍サイクル装置1の冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器または凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する。
【0031】
膨張機構24は、冷媒回路10を流れる冷媒の圧力や流量を調節するための機構である。本実施形態では、膨張機構24は、弁開度を調節可能な電子膨張弁である。
【0032】
熱源ファン25は、熱源ユニット20の図示しないケーシングの外部の、熱源としての空気が、ケーシングの内部に吸入されて熱源熱交換器23へと供給され、熱源熱交換器23において冷媒と熱交換した空気が、ケーシングの外部へと排出されるように、空気流れを生成する。
【0033】
アキュムレータ41は、気液分離機能を有すると共に、冷媒回路10における余剰冷媒を液冷媒として貯留することが可能な冷媒容器である。
【0034】
第1制御部27は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。第1制御部27は、後述する利用ユニット30の第2制御部34と通信線を介して接続されており、第2制御部34との間で制御信号等の送受信を行う。
【0035】
(1-2-2)利用ユニット
利用ユニット30は、例えば、対象空間である室内の壁面、天井、床等や、対象空間の屋根裏等に設置される。
【0036】
利用ユニット30は、主として、利用熱交換器31と、利用ファン32と、を有する(図1参照)。また、利用ユニット30は、利用ユニット30を構成する各部の動作を制御する第2制御部34を有している。
【0037】
利用熱交換器31は、冷凍サイクル装置1の冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器または凝縮器として機能する。
【0038】
利用ファン32は、空調対象空間の空気が、利用ユニット30の図示しないケーシングの内部に吸入されて利用熱交換器31へと供給され、利用熱交換器31において冷媒と熱交換した空気が、ケーシングの外部へと吹き出されるように、空気流れを生成する。
【0039】
第2制御部34は、CPUやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。第2制御部34は、熱源ユニット20の第1制御部27と通信線を介して接続されており、第1制御部27との間で制御信号等の送受信を行う。
【0040】
(1-2-3)コントローラ
図2に示すように、冷凍サイクル装置1では、熱源ユニット20の第1制御部27と、利用ユニット30の第2制御部34とが通信線を介して接続されることで、冷凍サイクル装置1の動作を制御するコントローラ7が構成されている。
【0041】
コントローラ7は、図示しないリモコンからの指示や、熱源ユニット20及び利用ユニット30に設けられた各種センサの検出値等に基づいて、熱源ユニット20及び利用ユニット30の各種構成の動作を制御する。
【0042】
(2)圧縮機
図3は、圧縮機100の概略構造を示す側面視断面図である。図4は、図3中のIV-IV矢視の、圧縮機100の圧縮機構130の概略断面図である。図5は、圧縮機100に取り付けられた状態のターミナル200を、圧縮機100の内側から見た図である。図6は、圧縮機100のターミナル200の概略構造を示す側面視断面図である。図7は、圧縮機100のターミナル200に設けられるブリッジ部材250aの概略斜視図である。
【0043】
本実施形態の圧縮機100は、図3に示すように、1シリンダ型のロータリ圧縮機である。ただし、圧縮機100の型式は、これに限定されるものではなく、例えば、2シリンダ型のロータリ圧縮機であってもよいし、スクロール圧縮機や、スクリュー圧縮機であってもよい。
【0044】
圧縮機100は、主として、ケーシング110と、モータ120と、圧縮機構130と、駆動軸140と、ターミナル200と、ブリッジ部材250aと、を有する。
【0045】
(2-1)ケーシング
ケーシング110は、縦型円筒状の容器である。
【0046】
ケーシング110は、上下が開口した円筒状の円筒部材112と、円筒部材112の上端及び下端にそれぞれ設けられた、椀状の上蓋114a及び下蓋114bと、を有する(図3参照)。円筒部材112と、上蓋114a及び下蓋114bとは、気密を保つように溶接により固定されている。
【0047】
円筒部材112には吸入管接続部116が設けられており、吸入管接続部116には吸入管42aが挿入されている。吸入管接続部116に挿入される吸入管42aは、圧縮機構130に連結されている(図3参照)。上蓋114aには、吐出管接続部118が設けられており(図3参照)、吐出管接続部118には吐出管42bか接続される。圧縮機構130により圧縮された高圧の冷媒は、吐出管接続部118を介して吐出管42bに吐出される。
【0048】
ケーシング110の内部には、モータ120、圧縮機構130、及び駆動軸140が密閉されている(図3参照)。ケーシング110の上蓋114aには、ターミナル200が取り付けられている。
【0049】
(2-2)モータ
モータ120は、圧縮機構130を駆動する。モータ120は、圧縮機構130の上方に配置されている。
【0050】
モータ120は、主として、ステータ122と、ロータ124とを有する。ロータ124は、環状に形成されたステータ122の内側に、ステータ122とわずかな隙間(エアギャップ)を隔てて配置される(図3参照)。
【0051】
ステータ122は、主として、環状のステータコアと、ステータコアに巻きつけられた巻線122bと、ステータコアの上端面の上方及び下端面の下方に配置されるインシュレータと、を含む(図3参照)。ステータコアには、インシュレータを介して巻線122bが巻き付けられる。巻線122bは、リード線160(図5及び図6参照)を介して、ケーシング110に取り付けられているターミナル200に接続されている。巻線122bには、外部電源から、ターミナル200及びリード線160を介して電力が供給される。ステータコアに巻き付けられた巻線122bにリード線160を介して電流が流されることで、ステータ122に回転磁界が発生する。
【0052】
ロータ124は、円筒形状の部材である。ロータ124は、図示されない複数の永久磁石を有している。ロータ124は、環状の電磁鋼板が複数積層されて形成されている。複数の永久磁石は、ロータ124の回転軸(駆動軸140の回転軸)を取り囲むように配置されている。ロータ124の中空部には、駆動軸140が挿入されて固定されている。駆動軸140は、ロータ124と圧縮機構130とを連結している。
【0053】
モータ120に電流が供給され、巻線122bに電流が流されると、ステータ122に発生する回転磁界によりロータ124が回転する。ロータ124が回転すると、ロータ124と接続された駆動軸140も回転し、駆動軸140を介して圧縮機構130に駆動力が付与される。
【0054】
(2-3)圧縮機構
圧縮機構130は、吸入管42aから吸入される冷媒を圧縮する機構である。
【0055】
圧縮機構130は、モータ120の下方の、ケーシング110の下部側に収容されている(図3参照)。
【0056】
ロータリ型の圧縮機構130は、図3及び図4のように、主として、フロントヘッド132と、シリンダ134と、ピストン136と、リアヘッド138と、マフラー139と、を有する。フロントヘッド132、シリンダ134、ピストン136、及びリアヘッド138は、例えば鋳鉄製である。
【0057】
(2-3-1)シリンダ
シリンダ134は、上下の端面が開口した円筒状の円筒部134aと、平面視において円筒部134aから外側(ケーシング110側)に延びる外延部134bとを有する(図4参照)。外延部134bの端部は、ケーシング110の円筒部材112と固定されており、これにより、シリンダ134は円筒部材112と固定されている。
【0058】
円筒部134aの内周面で囲まれた円柱状の空間には、冷媒を圧縮するためのピストン136が収容される(図4参照)。
【0059】
外延部134bには、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を吸入する吸入穴134baが形成されている(図4参照)。吸入穴134baには、外延部134bの外周面に形成された吸入穴134baの開口から、吸入管42aの先端部が挿入される(図3参照)。
【0060】
シリンダ134の上方には、円筒部134aの上方の開口を塞ぐように、フロントヘッド132が配置される(図3参照)。シリンダ134の下方には、円筒部134aの下方の開口を塞ぐようにリアヘッド138が配置される(図3参照)。シリンダ134の円筒部134aの内周面と、フロントヘッド132の下面と、リアヘッド138の上面と、によりシリンダ室135が形成される。シリンダ室135にはピストン136が配置される(図3参照)。シリンダ134の円筒部134aの内周面と、フロントヘッド132の下面と、リアヘッド138の上面と、シリンダ室135に配置されるピストン136の外周面とにより、冷媒が圧縮される圧縮室S1が形成される(図3及び図4参照)。
【0061】
また、シリンダ134には、後述するブッシュ137及びピストン136のブレード136bが配置されるブレード揺動空間134cが形成されている。
【0062】
(2-3-2)フロントヘッド
フロントヘッド132は、図3に示すように、シリンダ134の円筒部134aの上方の開口を閉塞するフロントヘッド円板部132aと、フロントヘッド円板部132aの中央部から上方向に延びる上軸受部132bと、を有する。上軸受部132bは、円筒状であり、駆動軸140の軸受として機能する。
【0063】
フロントヘッド円板部132aには、圧縮室S1で圧縮された冷媒が吐出される吐出穴132aaが形成されている(図4参照)。
【0064】
(2-3-3)リアヘッド
リアヘッド138は、図3に示すように、シリンダ134の円筒部134aの下方の開口を閉塞するリアヘッド円板部138aと、リアヘッド円板部138aの中央部から下方向に延びる下軸受部138bと、を有する。下軸受部138bは、円筒状であり、駆動軸140の軸受として機能する。
【0065】
(2-3-4)ピストン
ピストン136は、シリンダ室135に配置されている。ピストン136は、駆動軸140に装着されている。
【0066】
ピストン136は、円筒状のローラ136aと、ローラ136aの外面から、ローラ136aの径方向に延びる板状のブレード136bと、が一体化された部材である。
【0067】
ローラ136aは、シリンダ室135に配置されている。ローラ136aの中空部には、駆動軸140が嵌め込まれている。
【0068】
ピストン136のブレード136bは、シリンダ134に形成されているブレード揺動空間134cに配置され、ブレード揺動空間134cに配置されるブッシュ137を介してシリンダ134に揺動可能に支持される。また、ブレード136bは、ブレード136bの長手方向に、ブッシュ137に対して摺動可能になっている。圧縮機100の運転中には、ブレード136bは、シリンダ134に対して揺動するとともに、ブレード揺動空間134cに入り込んだり、ブレード揺動空間134cから出て行ったりする動きを繰り返す。
【0069】
ピストン136のローラ136a及びブレード136bは、図4に示すように、シリンダ室135を仕切る形で、ピストン136の公転によって容積が変化する圧縮室S1を形成している。駆動軸140が回転すると、ローラ136aはシリンダ134に対して公転する。これに従い、圧縮室S1の容積が変化し、吸入管42aから吸い込まれた低圧の冷媒が圧縮され高圧の冷媒となり、吐出穴132aaからマフラー空間S2へと吐出される。
【0070】
(2-3-5)マフラー
マフラー139は、図3に示すように、フロントヘッド132のフロントヘッド円板部132aの周縁部の上面に取り付けられている。
【0071】
マフラー139は、フロントヘッド円板部132aの上面及び上軸受部132bの外周面と共にマフラー空間S2を形成する。マフラー空間S2は、圧縮室S1からの冷媒の吐出に伴う騒音の低減を図るための空間である。
【0072】
(2-4)ターミナル
ターミナル200は、ケーシング110の上蓋114aを貫通して、取り付けられる。ターミナル200は、モータ120への給電に用いられる。
【0073】
ターミナル200は、主として、本体210と、3本のターミナルピン220(導電ピン)と、ガラス部材240と、を有する(図5及び図6参照)。
【0074】
(2-4-1)本体
本体210は、ターミナルピン220を支持する部材である。本体210の材質は、例えば鉄やステンレス鋼である。本体210は、概ねハット形状の部材である。本体210は、概ね円筒状の側壁部212と、側壁部212の一端側を封鎖する円板214と、を有する。側壁部212の他端側(円板214の存在しない側)は開口している。ターミナル200は、本体210の円板214の存在している側がケーシング110の外側に、本体210の開口している側がケーシング110の内側にそれぞれ配置されるように、ケーシング110に取り付けられる。ターミナルピン220が固定されている本体210の側壁部212は、ケーシング110の上蓋114aに溶接により固定されている。
【0075】
(2-4-2)ターミナルピン
ターミナルピン220は、円柱状の部材である。ターミナルピン220の材質は、例えば鉄クロム合金や銅である。ターミナルピン220は、本体210の円板214に形成されている穴214aを貫通して延びる(図6参照)。3本のターミナルピン220は、互いに概ね平行に延びる。
【0076】
各ターミナルピン220のケーシング110の内側の端部には、端子板230が固定されている(図5及び図6参照)。各端子板230には、モータ120のステータ122の巻線122bとターミナル200とを接続するためのリード線160が接続される(図5及び図6参照)。言い換えると、各ターミナルピン220には、モータ120から延びるリード線160が接続される。なお、ここでは描画を省略しているが、各ターミナルピン220のケーシング110の外側の端部にも、外部の電源の電線を接続するための端子板が設けられてもよい。
【0077】
(2-4-3)ガラス部材
ガラス部材240は、本体210にターミナルピン220を絶縁固定するためのシール部材(固定接着剤)である。ガラス部材240は、例えば、ソーダバリウム系のガラスや、ホウケイ酸系のガラスである。
【0078】
(2-5)ブリッジ部材
ブリッジ部材250aは、円柱状の部材である(図7参照)。ブリッジ部材250aは、ガラス等の絶縁部材によって形成される。ブリッジ部材250aには、各ターミナルピン220が貫通する円柱状の穴251aが形成される。各穴251aから離れた、ブリッジ部材250aの上面252aの一部及び側面253aには、導電体254aが固定される。本実施形態では、導電体254aは、鉄等の磁性を有する材質である。しかし、これに限定されず、導電体254aは、銅等の磁性を有しない材質であってもよい。上面252aにおいて、各穴251aと、導電体254aとの距離D1は、3.2mm以上であることが好ましい。
【0079】
図6に示すように、ブリッジ部材250aは、上面252aをケーシング110の内側に向けて、ガラス部材240を覆うように、ケーシング110の内側から外側に向かって各穴251aに各ターミナルピン220を差し込むことにより設置される。ブリッジ部材250aの下面257aは、導電体254aが円板214のケーシング110の内側部分に接触するように、円板214のケーシング110の内側部分に接着される。言い換えると、ターミナルピン220の一部と本体210の一部との間には、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶブリッジ部材250aが設けられている。ブリッジ部材250aは、ガラス部材240よりも、圧縮機構130の摺動部で生じる摩耗粉FFが堆積しやすい位置に設置される。各ターミナルピン220の一部から離れた、ブリッジ部材250aの上面252aの一部及び側面253aには、導電体254aが固定される。各ターミナルピン220の一部と、ブリッジ部材250aとの接触箇所は、絶縁されている。
【0080】
(3)圧縮機の動作
圧縮機100では、モータ120が運転されて駆動軸140が回転すると、駆動軸140の回転により、圧縮機構130のピストン136のローラ136aが公転する。ローラ136aが公転すると、吸入管42aと連通する圧縮室S1の容積が次第に大きくなり、吸入管42aから圧縮室S1へと低圧の冷媒が吸入される。さらにピストン136のローラ136aが公転すると、圧縮室S1と吸入管42aとの連通状態が解消され、吐出穴132aaと連通状態となる圧縮室S1において冷媒の圧縮が始まる。その後、吐出穴132aaと連通状態となる圧縮室S1の容積は次第に減少し、冷媒の圧力が高くなる。圧縮室S1の容積の減少に伴い高圧となった冷媒は、吐出穴132aaに設けられた吐出弁を押し開いて、吐出穴132aaからマフラー空間S2へと吐出される。マフラー空間S2に流入した冷媒は、マフラー139の図示しないマフラー吐出穴から圧縮機構130の上方の空間へと流入する。圧縮機構130の上方の空間に流入した冷媒は、モータ120のステータ122とロータ124との間の隙間等を通過し、モータ120を冷却した後に、吐出管接続部118を介して吐出管42bへと吐出される。
【0081】
(4)圧縮機構の摺動部で生じる摩耗粉がターミナルに付着したときの動作
図8は、ブリッジ部材250aを設置していないターミナル200(従来のターミナルに相当)に、圧縮機構130の摺動部で生じる摩耗粉FFが付着し、電路ECが形成される様子を示す図である。図9は、ブリッジ部材250aを設置したターミナル200に、圧縮機構130の摺動部で生じる摩耗粉FFが付着し、電路ECが形成される様子を示す図である。
【0082】
圧縮機構130は、摺動部として、例えば、ピストン136と、シリンダ134、フロントヘッド132及びリアヘッド138と、の摺動部や、駆動軸140と、フロントヘッド132の上軸受部132b及びリアヘッド138の下軸受部138bと、の摺動部等を有する。また、本実施形態では、ロータリ圧縮機を想定しているが、スクロール圧縮機では、摺動部として、例えば、クランク軸と、クランク軸の軸受部と、の摺動部や、可動スクロールと、固定スクロールと、の摺動部(周縁部)や、オルダム継手のキーと、キー溝と、の摺動部等を有する。
【0083】
ターミナル200には、圧縮機構130の摺動部で生じる摩耗粉FFが付着する。図8に示すように、ブリッジ部材250aを設置していないターミナル200では、ガラス部材240に比較的多くの摩耗粉FFが付着する。ガラス部材340に摩耗粉FFが付着すると、摩耗粉FFを介し、隣接するターミナルピン220間等で電流が流れ(ターミナルピン220間等で短絡し)、ジュール熱が発生する。ジュール熱が発生すると、ガラス部材240が溶融し、ターミナルピン220が本体210から脱落する恐れがある。さらに、ターミナルピン220が本体210から脱落することにより、圧縮機100から冷媒が漏洩し、漏洩した冷媒(特に、微燃性、可燃性、または強燃性の冷媒)が、圧縮機100の周囲の空気と混ざり合い、電流の短絡によって発生するスパークにより着火されて爆発する恐れがある。
【0084】
そのため、ターミナルピン220間等で短絡が生じるような量の摩耗粉FFが、ガラス部材340に付着する前に、圧縮機100を停止させることが好ましい。
【0085】
図9に示すように、本実施形態におけるターミナル200では、ブリッジ部材250aは、ガラス部材240よりも摩耗粉FFが堆積しやすい位置に設置される。そのため、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250aに付着したときに、ブリッジ部材250aには、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、ターミナルピン220、摩耗粉FF、導電体254a、本体210及びケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100を有する冷凍サイクル装置1のブレーカが落ちることにより、圧縮機100を停止させることができる。
【0086】
(5)特徴
(5-1)
従来、圧縮機におけるターミナルの導電ピンを、ガラス部材によって、ターミナルの本体に絶縁固定する技術がある。
【0087】
圧縮機構の摺動部で生じる摩耗紛が、冷媒流により圧縮機内部を循環する場合、従来では、ガラス部材に摩耗粉が付着することにより、ターミナルピン間等で短絡が生じ、ガラス部材が溶融して、ターミナルピンが脱落する恐れがある。
【0088】
本実施形態の圧縮機100は、圧縮機構130と、ケーシング110と、ターミナル200と、を備える。圧縮機構130は、モータ120で駆動する。ケーシング110は、圧縮機構130を内部に密閉する。ターミナル200は、ケーシング110の一部を貫通する。ターミナル200は、給電に用いられる。ターミナル200は、本体210と、ターミナルピン220と、ガラス部材240と、を有する。ターミナルピン220には、モータ120から延びるリード線160が接続される。ガラス部材240は、本体210にターミナルピン220を絶縁固定する。ターミナルピン220の一部と、ターミナル200の本体210の一部と、の間には、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶブリッジ部材250aが設けられている。圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250aに付着したときに、ブリッジ部材250aには、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECが形成される。
【0089】
圧縮機100は、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250aに付着したときに、ブリッジ部材250aには、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、ケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100が停止することにより、圧縮機100は、ガラス部材240が溶融して、ターミナルピン220が脱落することを防止することができる。
【0090】
(5-2)
本実施形態の圧縮機100では、ブリッジ部材250aは、絶縁部材によって形成される。
【0091】
(5-3)
本実施形態の圧縮機100では、ブリッジ部材250aには、各ターミナルピン220が貫通する穴251aが形成される。
【0092】
(5-4)
本実施形態の圧縮機100は、各ターミナルピン220の一部から離れた、ブリッジ部材250aの上面252aの一部及び側面253aには、導電体254aが固定される。
【0093】
その結果、圧縮機100は、ブリッジ部材250aに、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECを、形成されやすくすることができる。
【0094】
(5-5)
本実施形態の圧縮機100では、導電体254aは、磁性を有する。
【0095】
その結果、圧縮機100は、ブリッジ部材250aに、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECを、より形成されやすくすることができる。
【0096】
(5-6)
本実施形態の圧縮機100では、各ターミナルピン220の一部と、ブリッジ部材250aとの接触箇所は、絶縁されている。
【0097】
(5-7)
本実施形態の圧縮機100では、ブリッジ部材250aは、ガラス部材240よりも摩耗粉FFが堆積しやすい位置に設置される。
【0098】
その結果、圧縮機100は、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、ケーシング110を通じて電流を地絡させることができる。
【0099】
(5-8)
本実施形態の圧縮機100では、圧縮機構130によって圧縮される冷媒は、ISO817における、等級2Lの微燃性の冷媒、等級2の可燃性の冷媒、または等級3の強燃性の冷媒である。
【0100】
ターミナルピン220が脱落することを防止することができる圧縮機100は、圧縮機100から冷媒が漏洩し、漏洩した冷媒が、圧縮機100の周囲の空気と混ざり合い、電流の短絡によって発生するスパークにより着火されて爆発することを防止することができる。その結果、圧縮機100では、ISO817における、等級2Lの微燃性の冷媒、等級2の可燃性の冷媒、または等級3の強燃性の冷媒を、安心して使用することができる。
【0101】
(5-9)
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、圧縮機100を有する冷媒回路10、を備える。
【0102】
(6)変形例
(6-1)変形例1A
図10は、本変形例におけるブリッジ部材250bの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250aの代わりに、ブリッジ部材250bが用いられてもよい。図10に示すように、ブリッジ部材250bは、ブリッジ部材250aと異なり、上面252bの中心から見て、各穴251bが存在する方向のみに、導電体254bが固定される。上面252bにおいて、各穴251bと、導電体254bとの距離D2は、3.2mm以上であることが好ましい。
【0103】
(6-2)変形例1B
図11は、本変形例におけるブリッジ部材250cの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250aの代わりに、ブリッジ部材250cが用いられてもよい。図11に示すように、ブリッジ部材250cは、円錐状の部材である。ブリッジ部材250cには、各ターミナルピン220が貫通する円柱状の穴251cが形成される。穴251cから離れた、ブリッジ部材250cの側面253cの一部には、直方体状の導電体254cが固定される。ブリッジ部材250cの側面253cにおいて、上端252cと、導電体254cとの距離D3は、3.2mm以上であることが好ましい。
【0104】
図12及び図13は、本変形例におけるターミナル200の概略構造を示す側面視断面図である。図14は、本変形例におけるブリッジ部材250cを設置したターミナル200を、圧縮機100の内側から見た図である。図12に示すように、ブリッジ部材250cは、下面257cをケーシング110の外側に向けて、ガラス部材240を覆うように、ケーシング110の内側から外側に向かって穴251cに各ターミナルピン220を差し込むことにより設置される。ブリッジ部材250cの下面257cは、導電体254cが円板214のケーシング110の内側部分に接触するように、円板214のケーシング110の内側部分に接着される。図14に示すように、ブリッジ部材250cは、導電体254cの位置が、円板214の中心から見て、各ターミナルピン220の後ろ側となるように固定される。しかし、これに限定されず、ブリッジ部材250cは、導電体254cの位置が、各ターミナルピン220から見た冷媒流の下流側となるように固定されてもよい。
【0105】
ブリッジ部材250cは、ガラス部材240よりも摩耗粉FFが堆積しやすい位置に設置される。そのため、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250cに付着したときに、ブリッジ部材250cには、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、ターミナルピン220、摩耗粉FF、導電体254c、本体210及びケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100を有する冷凍サイクル装置1のブレーカが落ちることにより、圧縮機100を停止させることができる。
【0106】
また、図13に示すように、ブリッジ部材として、ブリッジ部材250cのサイズを変更したブリッジ部材250dが用いられてもよい。ブリッジ部材250dは、穴251cの上端252d付近の側面が、リード線160の芯線部分160aに接触するように設置される。言い換えると、リード線160の一部(芯線部分160a)と本体210の一部との間には、リード線160の一部と本体210の一部とを結ぶブリッジ部材250dが設けられている。リード線160の一部から離れた、ブリッジ部材250dの側面253dの一部には、導電体254dが固定されている。また、リード線160の一部と、ブリッジ部材250dとの接触箇所は、絶縁されている。
【0107】
この場合、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250dに付着したときに、ブリッジ部材250dには、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、リード線160の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、リード線160、摩耗粉FF、導電体254d、本体210及びケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100を有する冷凍サイクル装置1のブレーカが落ちることにより、圧縮機100を停止させることができる。
【0108】
(6-3)変形例1C
図15は、本変形例におけるブリッジ部材250eの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250aの代わりに、ブリッジ部材250eが用いられてもよい。図15に示すように、ブリッジ部材250eは、円柱状の部材255eと、直方体状の部材256eとを接続した部材である。ブリッジ部材250eには、各ターミナルピン220が貫通する円柱状の穴251eが形成される。穴251eから離れた、ブリッジ部材250eの直方体状の部材256eの上面252e及び側面253eには、直角に曲がった導電体254eが固定される。ブリッジ部材250eの上面252eにおいて、穴251eと、導電体254eとの距離D4は、3.2mm以上であることが好ましい。
【0109】
図16は、本変形例におけるターミナル200の概略構造を示す側面視断面図である。図17は、本変形例におけるブリッジ部材250eを設置したターミナル200を、圧縮機100の内側から見た図である。図16に示すように、ブリッジ部材250eは、下面257eをケーシング110の外側に向けて、ケーシング110の内側から外側に向かって穴251eに各ターミナルピン220を差し込むことにより設置される。ブリッジ部材250eは、各ターミナルピン220に固定される。図17に示すように、ブリッジ部材250eは、導電体254eの位置が、円板214の中心から見て、各ターミナルピン220の後ろ側となるように固定される。しかし、これに限定されず、ブリッジ部材250eは、導電体254eの位置が、各ターミナルピン220から見た冷媒流の下流側となるように固定されてもよい。ブリッジ部材250eは、側面253e側の導電体254eが、本体210の側壁部212に接触するように固定される。
【0110】
ブリッジ部材250eは、ガラス部材240よりも摩耗粉FFが堆積しやすい位置に設置される。そのため、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250eに付着したときに、ブリッジ部材250eには、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、ターミナルピン220の一部と本体210の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、ターミナルピン220、摩耗粉FF、導電体254e、本体210及びケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100を有する冷凍サイクル装置1のブレーカが落ちることにより、圧縮機100を停止させることができる。
【0111】
(6-4)変形例1D
図18は、本変形例におけるブリッジ部材250fの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250aの代わりに、ブリッジ部材250fが用いられてもよい。図18に示すように、ブリッジ部材250fは、円柱状の部材255fと、直角に曲がった部材256fとを接続した部材である。ブリッジ部材250fには、各ターミナルピン220が貫通する円柱状の穴251fが形成される。穴251fから離れた、ブリッジ部材250fの直角に曲がった部材256fの上面252f及び側面253fには、直角に曲がった導電体254fが固定される。ブリッジ部材250fの上面252fにおいて、穴251fと、導電体254fとの距離D5は、3.2mm以上であることが好ましい。
【0112】
図19及び図20は、本変形例におけるターミナル200の概略構造を示す側面視断面図である。図19に示すように、ブリッジ部材250fは、上面252fをケーシング110の内側に向けて、ケーシング110の内側から外側に向かって穴251fに各ターミナルピン220を差し込むことにより設置される。ブリッジ部材250fは、各ターミナルピン220に固定される。ブリッジ部材250fは、導電体254fの位置が、円板214の中心から見て、各ターミナルピン220の後ろ側となるように固定される。しかし、これに限定されず、ブリッジ部材250fは、導電体254fの位置が、各ターミナルピン220から見た冷媒流の下流側となるように固定されてもよい。ブリッジ部材250fは、下面257f側の導電体254fの端部が、ケーシング110の上蓋114aに接触するように固定される。言い換えると、ターミナルピン220の一部とケーシング110の一部(上蓋114a)との間には、ターミナルピン220の一部とケーシング110の一部とを結ぶブリッジ部材250fが設けられている。
【0113】
ブリッジ部材250fは、ガラス部材240よりも摩耗粉FFが堆積しやすい位置に設置される。そのため、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250fに付着したときに、ブリッジ部材250fには、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、ターミナルピン220の一部とケーシング110の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、ターミナルピン220、摩耗粉FF、導電体254f、及びケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100を有する冷凍サイクル装置1のブレーカが落ちることにより、圧縮機100を停止させることができる。
【0114】
また、図20に示すように、ブリッジ部材として、ブリッジ部材250fのサイズを変更したブリッジ部材250gが用いられてもよい。ブリッジ部材250gは、穴251gの上面252g付近の側面が、リード線160の芯線部分160aに接触するように設置される。言い換えると、リード線160の一部(芯線部分160a)とケーシング110の一部(上蓋114a)との間には、リード線160の一部とケーシング110の一部とを結ぶブリッジ部材250gが設けられている。
この場合、圧縮機構130の摺動部で生じる所定量以上の摩耗粉FFがブリッジ部材250gに付着したときに、ブリッジ部材250gには、ターミナルピン220間等で短絡が生じる前に、リード線160の一部とケーシング110の一部とを結ぶ電路ECが形成される。その結果、リード線160、摩耗粉FF、導電体254g、及びケーシング110を通じて電流が地絡し、圧縮機100を有する冷凍サイクル装置1のブレーカが落ちることにより、圧縮機100を停止させることができる。
【0115】
(6-5)変形例1E
図21は、本変形例におけるブリッジ部材250hの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250bの代わりに、ブリッジ部材250hが用いられてもよい。図21に示すように、ブリッジ部材250hは、ブリッジ部材250bにおける導電体254bの代わりに、上面252hの穴251hから、下面257hにかけて、摩耗粉FFを捕集するための溝258h(保持構造)を有する。
【0116】
図22は、本変形例におけるブリッジ部材250iの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250cの代わりに、ブリッジ部材250iが用いられてもよい。図22に示すように、ブリッジ部材250iは、ブリッジ部材250cにおける導電体254cの代わりに、穴251iの上端252iから、下面257iにかけて、摩耗粉FFを捕集するための溝258iを有する。
【0117】
図23は、本変形例におけるブリッジ部材250jの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250eの代わりに、ブリッジ部材250jが用いられてもよい。図23に示すように、ブリッジ部材250jは、ブリッジ部材250eにおける導電体254eの代わりに、上面252jの穴251jから、下面257jにかけて、摩耗粉FFを捕集するための溝258jを有する。
【0118】
図24は、本変形例におけるブリッジ部材250kの概略斜視図である。ブリッジ部材として、ブリッジ部材250fの代わりに、ブリッジ部材250kが用いられてもよい。図24に示すように、ブリッジ部材250kは、ブリッジ部材250fにおける導電体254fの代わりに、上面252kの穴251kから、下面257kにかけて、摩耗粉FFを捕集するための溝258kを有する。
【0119】
ブリッジ部材250h~250kは、摩耗粉FFを捕集するための溝258h~258kを有する。その結果、圧縮機100は、250h~250kに、ターミナルピン220又はリード線160の一部と、ケーシング110又は本体210の一部とを結ぶ電路ECを、形成されやすくすることができる。
【0120】
また、ブリッジ部材250h~250kの溝258h~258kの底部には、摩耗粉FFを捕集するための磁石が固定されてもよい。その結果、圧縮機100は、250h~250kに、ターミナルピン220又はリード線160の一部と、ケーシング110又は本体210の一部とを結ぶ電路ECを、より形成されやすくすることができる。
【0121】
(6-6)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0122】
1 冷凍サイクル装置
10 冷媒回路
100 圧縮機
110 ケーシング
120 モータ
130 圧縮機構
160 リード線
200 ターミナル
210 本体
220 ターミナルピン(導電ピン)
240 ガラス部材
250a~250k ブリッジ部材
251a~251k 穴
254a~254g 導電体
258h~258k 溝(保持構造)
EC 電路
FF 摩耗粉
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【文献】国際公開第2021/001921号
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