(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電極合剤、電極および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20231122BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231122BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231122BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231122BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231122BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/13
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2023116673
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022118875
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 あきほ
(72)【発明者】
【氏名】山崎 穣輝
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 佑磨
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-255808(JP,A)
【文献】特開2019-200895(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092675(WO,A1)
【文献】特開2012-142311(JP,A)
【文献】特開2017-054822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着剤(A)、電極活物質(B)および添加剤(C)を含有する電極合剤であって、
結着剤(A)が、ビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素重合体を含有し、
添加剤(C)が、多価カルボン酸(C1)、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマー(C2)を含有する
電極合剤。
【請求項2】
多価カルボン酸(C1)が、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、シトラコン酸、琥珀酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の電極合剤。
【請求項3】
多価カルボン酸(C1)が、酒石酸である請求項1または2に記載の電極合剤。
【請求項4】
不飽和モノカルボン酸単位が、一般式(C2)で表される単量体(C2)に基づく単位である請求項1または2に記載の電極合剤。
一般式(C2):
【化6】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンである。)
【請求項5】
フッ素非含有ポリマー(C2)が、ポリアクリル酸である請求項1または2に記載の電極合剤。
【請求項6】
添加剤(C)の含有量が、結着剤(A)および電極活物質(B)の質量に対して、0.01~5.0質量%である請求項1または2に記載の電極合剤。
【請求項7】
多価カルボン酸(C1)とフッ素非含有ポリマー(C2)との質量比((C1)/(C2))が、9/91~91/9である請求項1または2に記載の電極合剤。
【請求項8】
結着剤(A)が、含フッ素重合体として、98.0モル%以上のビニリデンフルオライド単位を含有するポリビニリデンフルオライドを含有する請求項1または2に記載の電極合剤。
【請求項9】
ポリビニリデンフルオライドが、ビニリデンフルオライド単位のみからなる含フッ素重合体、ビニリデンフルオライド単位およびフッ素化単量体単位(ただし、ビニリデンフルオライド単位を除く)を含有する含フッ素重合体、ならびに、ビニリデンフルオライド単位および一般式(A1)で表される単量体(A1)に基づく単位を含有する含フッ素重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項8に記載の電極合剤。
一般式(A1):
【化7】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンである。)
【請求項10】
結着剤(A)が、98.0モル%未満のビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素共重合体をさらに含有する請求項8に記載の電極合剤。
【請求項11】
含フッ素共重合体が、ビニリデンフルオライド単位およびフッ素化単量体単位(ただし、ビニリデンフルオライド単位を除く)を含有する含フッ素共重合体であり、フッ素化単量体単位が、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、フルオロアルキルビニルエーテル単位、クロロトリフルオロエチレン単位および2,3,3,3-テトラフルオロプロペン単位からなる群より選択される少なくとも1種である請求項10に記載の電極合剤。
【請求項12】
電極活物質(B)が、リチウム複合酸化物を含有する請求項1または2に記載の電極合剤。
【請求項13】
電極活物質(B)が、一般式(B1)で表されるリチウム金属酸化物を含有する請求項1または2に記載の電極合剤。
一般式(B1):LiNi
ZM
(1-Z)O
2
(式中、zは、0.5≦z<1を満たし、Mは、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種である。)
【請求項14】
集電体と、
集電体の片面または両面に設けられており、請求項1または2に記載の電極合剤から形成される電極材料層と、
を備える電極。
【請求項15】
請求項14に記載の電極を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極合剤、電極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複合金属酸化物からなる正極活物質、高次構造型カーボンブラックからなる導電助剤、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよび柔軟性改質フッ素含有モノマーを少なくとも含む三元以上のフッ素系共重合体からなるバインダーおよび有機溶剤からなる合剤に、導電助剤100重量部当り、0.5~10重量部の有機酸を添加してなる非水系電池用正極合剤が記載されている。
【0003】
特許文献2には、電極活物質(A)と結着剤(B)と有機溶媒(C)を含むリチウム二次電池の電極合剤用スラリーであって、結着剤(B)が、
(B1)組成式(B1):
(VDF)m(TFE)n(HFP)l
(式中、VDFはフッ化ビニリデン由来の構造単位;TFEはテトラフルオロエチレン由来の構造単位;HFPはヘキサフルオロプロピレン由来の構造単位;0.45≦m≦1;0.05≦n≦0.5;0≦l≦0.1。ただし、m+n+l=1である)で示される含フッ素重合体、および
(B2)含フッ素重合体(B1)以外の溶剤可溶型熱可塑性樹脂
を含むことを特徴とするリチウム二次電池の電極合剤用スラリーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/063907号
【文献】国際公開第2010/092977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、粘度が変化しにくいという性質と、集電体と高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できるという性質とを、バランスよく併せ持つ電極合剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、結着剤(A)、電極活物質(B)および添加剤(C)を含有する電極合剤であって、結着剤(A)が、ビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素重合体を含有し、添加剤(C)が、多価カルボン酸(C1)、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマー(C2)を含有する電極合剤が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、粘度が変化しにくいという性質と、集電体と高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できるという性質とを、バランスよく併せ持つ電極合剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
特許文献1には、少量の有機酸の添加により、高次構造型カーボンブラックを導電助剤として含む正極合剤の集電体上での塗布時の浮揚りが効果的に防止され、乾燥による厚肉正極合剤層の形成時のヒビ割れが効果的に予防されることが記載されている。また、特許文献2には、溶剤可溶型熱可塑性樹脂が、集電体との接着性を向上させる働きをすることが記載されている。
【0010】
しかしながら、これらの従来の技術を用いて電極合剤を調製すると、時間の経過とともに電極合剤の粘度が上昇することが明らかになった。電極合剤を調製した後に電極合剤の粘度が次第に上昇していくと、電極合剤を用いて形成される電極材料層の厚みや密度を制御しにくくなり、所望の構成を有する電極材料層を備える電極を安定して製造することが困難となる問題がある。
【0011】
そこで、この問題を解決する手段を鋭意検討したところ、電極合剤に対して、多価カルボン酸、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマーを添加することにより、電極合剤を調製した後の電極合剤の粘度の上昇が抑制され、さらには、形成される電極材料層の集電体に対する密着性が向上することが見いだされた。
【0012】
すなわち、本開示の電極合剤は、結着剤(A)、電極活物質(B)および添加剤(C)を含有する電極合剤であって、添加剤(C)が、多価カルボン酸(C1)、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマー(C2)を含有する。各成分について、以下に詳述する。
【0013】
(結着剤(A))
本開示で用いる結着剤(A)は、ビニリデンフルオライド単位(VdF)を含有する含フッ素重合体を含有する。
【0014】
含フッ素重合体は、VdF単位のみからなるVdFホモポリマーであってよいし、VdF単位および他の単量体単位を含有する重合体であってもよい。他の単量体としては、VdFと共重合可能な単量体であればよく、フッ素化単量体(ただし、VdFを除く)であってもよいし、非フッ素化単量体であってもよい。
【0015】
フッ素化単量体(ただし、VdFを除く)としては、たとえば、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、(パーフルオロアルキル)エチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよびトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンが挙げられる。
【0016】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、炭素数1~5のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルビニルエーテルが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0017】
フッ素化単量体としては、なかでも、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、TFE、CTFE、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、HFPおよびフルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFEおよびHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEが特に好ましい。
【0018】
フッ素化単量体(ただし、VdFを除く)は、極性基を有していても有していなくてもよい。
【0019】
非フッ素化単量体としては、エチレン、プロピレン等の極性基を有しない非フッ素化単量体、極性基を有する非フッ素化単量体(以下、極性基含有単量体ということがある)等が挙げられる。
【0020】
非フッ素化単量体として、極性基を有するものを用いると、含フッ素重合体に極性基が導入され、これによって、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる。極性基としては、カルボニル基含有基、エポキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、アミノ基、アミド基およびアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、カルボニル基含有基、エポキシ基およびヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、カルボニル基含有基がさらに好ましい。上記ヒドロキシ基には、上記カルボニル基含有基の一部を構成するヒドロキシ基は含まれない。また、上記アミノ基とは、アンモニア、第一級または第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である。
【0021】
上記カルボニル基含有基とは、カルボニル基(-C(=O)-)を有する官能基である。上記カルボニル基含有基としては、一般式:-COOR(Rは、水素原子、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を表す)で表される基またはカルボン酸無水物基が好ましく、一般式:-COORで表される基がより好ましい。アルキル基およびヒドロキシアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~16であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~3である。一般式:-COORで表される基として、具体的には、-COOCH2CH2OH、-COOCH2CH(CH3)OH、-COOCH(CH3)CH2OH、-COOH、-COOCH3、-COOC2H5等が挙げられる。一般式:-COORで表される基が、-COOHであるか、-COOHを含む場合、-COOHは、カルボン酸金属塩、カルボン酸アンモニウム塩等のカルボン酸塩であってもよい。
【0022】
また、上記カルボニル基含有基としては、一般式:-X-COOR(Xは主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団であり、Rは、水素原子、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を表す)で表される基であってもよい。アルキル基およびヒドロキシアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~16であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~3である。
【0023】
上記アミド基としては、一般式:-CO-NRR’(RおよびR’は、独立に、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。)で表される基、または、一般式:-CO-NR”-(R”は、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基または置換もしくは非置換のフェニル基を表す。)で表される結合が好ましい。
【0024】
極性基含有単量体としては、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和二塩基酸;メチリデンマロン酸ジメチル等のアルキリデンマロン酸エステル;ビニルカルボキシメチルエーテル、ビニルカルボキシエチルエーテル等のビニルカルボキシアルキルエーテル;2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルメタクリレート等のカルボキシアルキル(メタ)アクリレート;アクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリロイルオキシエチルフタル酸等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルジカルボン酸エステル;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;一般式(A1):
【化1】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンである。)で表される単量体(A1);等が挙げられる。
【0025】
なお、本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸のいずれかを意味する。その他の化合物名中の「(メタ)」も同様に解釈される。また、原子団の主鎖の原子数は、直鎖の骨格部分の原子数であり、カルボニル基を構成する酸素原子や、メチレン基を構成する水素原子は主鎖の原子数に含まない。たとえば、単量体(A1)がアクリロイロキシエチルフタル酸である場合には、直鎖の骨格部分は-C-OCCO-C-CC-であり、その原子数は8である。
【0026】
極性基含有単量体としては、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、一般式(A1)で表される単量体(A1)が好ましい。
【0027】
一般式(A1)において、Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンを表す。無機カチオンとしては、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe等のカチオンが挙げられる。有機カチオンとしては、NH4、NH3R5、NH2R5
2、NHR5
3、NR5
4(R5は、独立に、炭素数1~4のアルキル基を表す。)等のカチオンが挙げられる。Yとしては、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、NH4が好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Al、NH4がより好ましく、H、Li、Al、NH4がさらに好ましく、Hが特に好ましい。なお、無機カチオンおよび有機カチオンの具体例は、便宜上、符号および価数を省略して記載している。
【0028】
一般式(A1)において、R1~R3は、独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。R1およびR2は、独立に、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0029】
一般式(A1)において、Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。原子団としては、炭素数1~8の炭化水素基、ヘテロ原子、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子およびリン原子からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、かつ原子数1~20の主鎖を含む分子量500以下の原子団が好ましい。
【0030】
炭化水素基は、2価の炭化水素基である。上記炭化水素基の炭素数は4以下が好ましい。上記炭化水素基としては、上記炭素数のアルキレン基、アルケニレン基等が挙げられ、なかでも、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、メチレン基およびエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0031】
Xがヘテロ原子である場合、該ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子およびリン原子からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0032】
Xが原子団である場合、該原子団中のヘテロ原子としては、酸素原子が好ましい。
【0033】
Xが原子団である場合、一般式(A1)中の一般式:-X-COOYで表される側鎖としては、以下のいずれかであることが好ましい。
一般式:-CO-R6-COOYで表される側鎖
(式中、R6は、原子数1~19の主鎖を含む分子量472以下の原子団を表す。Yは、上記のとおりである。)
一般式:-O-R7-COOYで表される側鎖
(式中、R7は、原子数1~19の主鎖を含む分子量484以下の原子団を表す。Yは、上記のとおりである。)
一般式:-COO-R8-COOYで表される側鎖、
(R8は、原子数1~18の主鎖を含む分子量456以下の原子団である。Yは、上記のとおりである。)
【0034】
Xが原子団である場合、単量体(A1)としては、N-カルボキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物;カルボキシエチルチオ(メタ)アクリレートなどのチオ(メタ)アクリレート化合物;ビニルカルボキシメチルエーテル、ビニルカルボキシエチルエーテルなどのビニルカルボキシアルキルエーテル類;2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルメタクリレート、アクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸、アクリロイロキシプロピルコハク酸、メタクリロイロキシプロピルコハク酸、アクリロイロキシエチルフタル酸、メタクリロイロキシエチルフタル酸;などが挙げられる。Xが原子団である場合、単量体(A1)としては、2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルメタクリレート、アクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸、アクリロイロキシプロピルコハク酸、メタクリロイロキシプロピルコハク酸が好ましい。
【0035】
単量体(A1)としては、一般式(A1)において、Xが単結合または炭素数1~8の炭化水素基である単量体(A1)が好ましい。
【0036】
単量体(A1)としては、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、(メタ)アクリル酸およびその塩、ビニル酢酸(3-ブテン酸)およびその塩、3-ペンテン酸およびその塩、4-ペンテン酸およびその塩、3-ヘキセン酸およびその塩、4-ヘプテン酸およびその塩、ならびに、5-ヘキセン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、(メタ)アクリル酸およびその塩がさらに好ましい。
【0037】
含フッ素重合体の上記極性基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.05~2.0モル%であり、より好ましくは0.10モル%以上であり、さらに好ましくは0.25モル%以上であり、特に好ましくは0.40モル%以上であり、より好ましくは1.5モル%以下である。
【0038】
本明細書において、含フッ素重合体における極性基含有単量体単位の含有量は、たとえば、極性基がカルボン酸等の酸基である場合、酸基の酸-塩基滴定によって測定できる。
【0039】
他の単量体としては、TFE、CTFE、(メタ)アクリル酸、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、HFP、および、フルオロアルキルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。(メタ)アクリル酸には、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0040】
含フッ素重合体の他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0001~50.0モル%であり、より好ましくは0.01モル%以上であり、さらに好ましくは0.10モル%以上であり、より好ましくは45.0モル%以下であり、さらに好ましくは40.0モル%以下であり、特に好ましくは35.0モル%以下である。
【0041】
含フッ素重合体が他の単量体単位を含有する場合、含フッ素重合体のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、50.0~99.9999モル%であり、より好ましくは55.0モル%以上であり、さらに好ましくは60.0モル%以上であり、特に好ましくは65.0モル%以上であり、より好ましくは99.99モル%以下であり、さらに好ましくは99.90モル%以下である。
【0042】
含フッ素重合体が他の単量体単位としてフッ素化単量体単位を含有する場合、フッ素化単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0001~50.0モル%であり、より好ましくは2.0モル%以上であり、さらに好ましくは3.0モル%以上であり、特に好ましくは4.0モル%以上であり、より好ましくは45.0モル%以下であり、さらに好ましくは40.0モル%以下であり、特に好ましくは35.0モル%以下である。
【0043】
含フッ素重合体が他の単量体単位としてフッ素化単量体単位を含有する場合、含フッ素重合体のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、50.0~99.999モル%であり、より好ましくは55.0モル%以上であり、さらに好ましくは60.0モル%以上であり、特に好ましくは65.0モル%以上であり、より好ましくは98.0モル%以下であり、さらに好ましくは97.0モル%以下であり、特に好ましくは96.0モル%以下である。
【0044】
含フッ素重合体が他の単量体単位として、極性基含有単量体などの非フッ素化単量体単位を含有する場合、非フッ素化単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0001~50.0モル%であり、より好ましくは0.01モル%以上であり、さらに好ましくは0.10モル%以上であり、より好ましくは5.0モル%以下であり、さらに好ましくは3.0モル%以下であり、特に好ましくは1.5モル%以下である。
【0045】
含フッ素重合体が他の単量体単位として非フッ素化単量体単位を含有する場合、含フッ素重合体のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50.0~99.999モル%であり、より好ましくは95.0モル%以上であり、さらに好ましくは97.0モル%以上であり、特に好ましくは98.5モル%以上であり、より好ましくは99.99モル%以下であり、さらに好ましくは99.90モル%以下である。
【0046】
本開示において、含フッ素重合体の組成は、たとえば、19F-NMR測定により測定できる。また、含フッ素重合体が他の単量体単位として極性基含有単量体単位を含有する場合、極性基含有単量体単位の含有量は、たとえば、極性基がカルボン酸等の酸基である場合、酸基の酸-塩基滴定によって測定できる。
【0047】
含フッ素重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは10000~3000000であり、より好ましくは30000以上であり、さらに好ましくは50000以上であり、特に好ましくは200000以上であり、より好ましくは2400000以下であり、さらに好ましくは2200000以下であり、特に好ましくは2000000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0048】
電極合剤の一実施形態においては、結着剤(A)が含有する、ビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素重合体が、ポリビニリデンフルオライドであってもよい。本開示において、ポリビニリデンフルオライドとは、全単量体単位に対して98.0モル%以上のVdF単位を含有する含フッ素重合体である。ポリビニリデンフルオライドは、VdF単位のみからなるVdFホモポリマーであってよいし、VdF単位および他の単量体単位を含有する重合体であってもよい。他の単量体としては、VdFと共重合可能な単量体であればよく、フッ素化単量体(ただし、VdFを除く)であってもよいし、非フッ素化単量体であってもよい。他の単量体としては、上述したものを用いることができる。
【0049】
ポリビニリデンフルオライドを構成する他の単量体としては、なかでも、CTFE、フルオロアルキルビニルエーテル、HFP、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、および、一般式(A1)で表される単量体(A1)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、ポリビニリデンフルオライドは、TFE単位を含有しないことが好ましい。
【0050】
ポリビニリデンフルオライドの他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、0~2.0モル%であり、好ましくは0~1.5モル%であり、より好ましくは0~1.0モル%である。
【0051】
ポリビニリデンフルオライドのVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、98.0モル%以上であり、好ましくは98.5モル%以上であり、より好ましくは99.0モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。
【0052】
ポリビニリデンフルオライドの重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは50000~3000000であり、より好ましくは80000以上であり、さらに好ましくは100000以上であり、特に好ましくは200000以上であり、より好ましくは2400000以下であり、さらに好ましくは2200000以下であり、特に好ましくは2000000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0053】
ポリビニリデンフルオライドとしては、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、ビニリデンフルオライド単位のみからなる含フッ素重合体、ビニリデンフルオライド単位およびフッ素化単量体単位(ただし、ビニリデンフルオライド単位を除く)を含有する含フッ素重合体、ならびに、ビニリデンフルオライド単位および一般式(A1)で表される単量体(A1)に基づく単位を含有する含フッ素重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、粘度の低変化率と電極材料層の高密着性とのバランスに優れることから、ビニリデンフルオライド単位のみからなる含フッ素重合体およびビニリデンフルオライド単位およびフッ素化単量体単位(ただし、ビニリデンフルオライド単位を除く)を含有する含フッ素重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0054】
電極合剤の一実施形態においては、結着剤(A)が、含フッ素共重合体を含有する。本開示において、含フッ素共重合体とは、全単量体単位に対して98.0モル%未満のVdF単位を含有する含フッ素重合体である。したがって、含フッ素共重合体は、VdF単位および他の単量体単位を含有する重合体である。他の単量体としては、VdFと共重合可能な単量体であればよく、フッ素化単量体(ただし、VdFを除く)であってもよいし、非フッ素化単量体であってもよい。他の単量体としては、上述したものを用いることができる。
【0055】
含フッ素共重合体を構成する他の単量体としては、なかでも、フッ素化単量体(ただし、VdFを除く)が好ましく、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル、CTFEおよび2,3,3,3-テトラフルオロプロペンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEがさらに好ましい。
【0056】
含フッ素共重合体の他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは43.0モル%以下であり、より好ましく40.0モル%以下であり、さらに好ましくは37.0モル%以下であり、2.0モル%超であり、好ましくは3.0モル%以上であり、より好ましくは5.0モル%以上であり、さらに好ましくは10.0モル%以上である。
【0057】
含フッ素共重合体のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは57.0モル%以上であり、より好ましくは60.0モル%以上であり、さらに好ましくは63.0モル%以上であり、98.0モル%未満であり、好ましくは97.0モル%以下であり、より好ましくは95.0モル%以下であり、さらに好ましくは90.0モル%以下である。
【0058】
含フッ素共重合体は、さらに、上述した極性基含有単量体単位を含有してもよい。含フッ素共重合体の極性基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.05~2.0モル%であり、より好ましくは0.10モル%以上であり、さらに好ましくは0.25モル%以上であり、特に好ましくは0.40モル%以上であり、より好ましくは1.5モル%以下である。
【0059】
含フッ素共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは50000~3000000であり、より好ましくは80000以上であり、さらに好ましくは100000以上であり、特に好ましくは200000以上であり、より好ましくは2400000以下であり、さらに好ましくは2200000以下であり、特に好ましくは2000000以下である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0060】
含フッ素共重合体としては、たとえば、VdF/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/TFE/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/TFE/4-ペンテン酸共重合体、VdF/TFE/3-ブテン酸共重合体、VdF/TFE/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/TFE/HFP/4-ペンテン酸共重合体、VdF/TFE/HFP/3-ブテン酸共重合体、VdF/TFE/2-カルボキシエチルアクリレート共重合体、VdF/TFE/HFP/2-カルボキシエチルアクリレート共重合体、VdF/TFE/アクリロイルオキシエチルコハク酸共重合体、VdF/TFE/HFP/アクリロイルオキシエチルコハク酸共重合体等が挙げられる。
【0061】
含フッ素共重合体としては、なかでも、VdF/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、VdF/CTFE共重合体、および、VdF/2,3,3,3-テトラフルオロプロペン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、VdF/TFE共重合体がより好ましい。
【0062】
VdF/TFE共重合体は、VdF単位およびTFE単位を含有する。含フッ素共重合体としてVdF/TFE共重合体を用いることにより、粘度が一層変化しにくい電極合剤が得られる。
【0063】
VdF単位の含有量としては、VdF/TFE共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは57.0モル%以上であり、より好ましくは60.0モル%以上であり、さらに好ましくは63.0モル%以上であり、好ましくは98.0モル%未満であり、より好ましくは90.0モル%以下であり、さらに好ましくは85.0モル%以下である。
【0064】
TFE単位の含有量としては、VdF/TFE共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは2.0モル%超であり、より好ましくは10.0モル%以上であり、さらに好ましくは15.0モル%以上であり、好ましくは43.0モル%以上であり、より好ましくは40.0モル%以下であり、さらに好ましくは37.0モル%以下である。
【0065】
VdF/TFE共重合体は、VdF単位およびTFE単位の他に、VdFおよびTFEと共重合可能な単量体(ただし、VdFおよびTFEを除く)に基づく単位を含むものであってもよい。VdFおよびTFEと共重合可能な単量体に基づく単位の含有量は、VdF/TFE共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは3.0モル%以下である。
【0066】
VdFおよびTFEと共重合可能な単量体としては、上述したフッ素化単量体、上述した非フッ素化単量体などが挙げられる。VdFおよびTFEと共重合可能な単量体としては、なかでも、フッ素化単量体および極性基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、HFP、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンおよび単量体(A1)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0067】
VdF/TFE共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)としては、好ましくは50000~2000000であり、より好ましくは80000以下であり、さらに好ましくは100000以下であり、より好ましくは1700000以上であり、さらに好ましくは1500000以上である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0068】
電極合剤の一実施形態においては、結着剤(A)が、ポリビニリデンフルオライドおよび含フッ素共重合体を含有する。結着剤(A)が、ポリビニリデンフルオライドおよび含フッ素共重合体を含有する場合、電極合剤の粘度の変化をより一層抑制することができる。
【0069】
電極合剤において、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、ポリビニリデンフルオライドと含フッ素共重合体との質量比(ポリビニリデンフルオライド/含フッ素共重合体)としては、好ましくは99/1~1/99であり、より好ましくは97/3以下であり、さらに好ましくは95/5以下であり、尚さらに好ましくは90/10以下であり、より好ましくは3/97以上であり、さらに好ましくは5/95以上であり、尚さらに好ましくは10/90以上である。
【0070】
電極合剤における結着剤(A)の含有量は、電極合剤中の固形分の質量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。結着剤(A)の含有量を上記範囲とすることにより、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られる。
【0071】
(電極活物質(B))
本開示で用いる電極活物質は、正極活物質であってもよいし、負極活物質であってもよい。
【0072】
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものを用いることができ、リチウム複合酸化物が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。上記正極活物質としては、リチウム含有遷移金属リン酸化合物も好ましい。上記正極活物質が、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物等の、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質であることも好ましい。
【0073】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO3等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。上記置換したものとしては、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・マンガン・アルミニウム複合酸化物、リチウム・チタン複合酸化物等が挙げられ、より具体的には、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiMn1.8Al0.2O4、LiMn1.5Ni0.5O4、Li4Ti5O12、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2等が挙げられる。
【0074】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、リチウム含有遷移金属リン酸化合物の具体例としては、たとえば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0075】
特に、高電圧、高エネルギー密度、あるいは、充放電サイクル特性等の観点から、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiFePO4が好ましい。
【0076】
また、電極活物質(B)としては、一般式(B1)で表されるリチウム金属酸化物が好ましく挙げられる。
一般式(B1):LiNiZM(1-Z)O2
(式中、zは、0.5≦z<1を満たし、Mは、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種である。)
【0077】
一般式(B1)において、zは、0.5≦z<1を満たす係数であり、さらに高容量の二次電池を得ることができることから、好ましくは0.6≦z<1であり、より好ましくは0.7≦z≦0.9である。本開示の電極合剤は、電極活物質(B)としてNiを多く含有するリチウム金属酸化物を用いた場合でも、粘度が変化しにくい。
【0078】
一般式(B1)で表されるリチウム金属酸化物としては、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、および、LiNi0.90Mn0.05Co0.05O2からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、および、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0079】
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0080】
これら表面付着物質は、たとえば、溶媒に溶解または懸濁させて正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解または懸濁させて正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により正極活物質表面に付着させることができる。
【0081】
表面付着物質の量としては、正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上、上限として好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での非水電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
【0082】
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電剤との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
【0083】
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g/cm3以上、好ましくは1.5g/cm3以上、さらに好ましくは1.6g/cm3以上、最も好ましくは1.7g/cm3以上である。正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極材料層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電剤や共重合体の必要量が増加し、正極材料層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極材料層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、大きすぎると、正極材料層内における非水電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、通常2.5g/cm3以下、好ましくは2.4g/cm3以下である。
【0084】
正極活物質のタップ密度は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(たとえば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
【0085】
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、最も好ましくは3μm以上で、通常20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高嵩密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作製すなわち活物質と導電剤や共重合体等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引いたりする等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上混合することで、正極作製時の充填性をさらに向上させることもできる。
【0086】
なお、本開示におけるメジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA-920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0087】
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、正極活物質の平均一次粒子径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.08μm以上、最も好ましくは0.1μm以上で、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.6μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。なお、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0088】
正極活物質のBET比表面積は、0.2m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上、さらに好ましくは0.4m2/g以上で、4.0m2/g以下、好ましくは2.5m2/g以下、さらに好ましくは1.5m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極材料層形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
【0089】
BET比表面積は、表面積計(たとえば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
【0090】
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、たとえば、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、また、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0091】
なお、本開示において、正極活物質は1種を単独で用いても良く、異なる組成または異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
【0092】
本開示の電極合剤が正極活物質を含有する場合、結着剤の含有量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部であり、より好ましくは0.1~2.0質量部である。
【0093】
負極活物質としては、Liと合金化した場合またはLiと結合した場合に、Li基準で2.5V以下の電位を示す負極活物質が挙げられる。
【0094】
負極活物質として、金属を含有する負極活物質を用いることができる。負極活物質に含まれる金属は、通常、Li、Naなどのアルカリ金属と電気化学的に合金化可能な金属である。
【0095】
負極活物質としては、Si、Zn、Sn、W、Al、Sb、Ge、Bi、InなどのLiと電気化学的に合金化可能な金属単体;Si、Zn、Sn、W、Al、Sb、Ge、Bi、Inなどを含む合金;リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金などのリチウム合金;酸化錫や酸化ケイ素などの金属酸化物;チタン酸リチウム;などが挙げられる。負極活物質として、これらのなかから、1種または2種以上を用いることができる。
【0096】
負極活物質としては、Si、Sn、V、NbおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物が好ましく、Si(Si単体)、Siの酸化物、Siを含有する合金、Sn(Sn担体)、Snの酸化物およびSnを含有する合金がより好ましく、SiおよびSiOx(0<x<2)からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0097】
また、負極活物質として、黒鉛粉末などの炭素質材料を用いてもよい。炭素質材料は、金属を含有する負極活物質とともに用いることができる。炭素質材料としては、天然黒鉛、人造炭素質物質、人造黒鉛質物質、炭素質物質{たとえば天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、或いはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークスおよびこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物(たとえば、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、或いは乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直留系重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等分解系石油重質油、さらにアセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジン等のN環化合物、チオフェン、ビチオフェン等のS環化合物、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクリロニトリル、ポリピロール等の有機高分子、含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂)およびこれらの炭化物、または炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n-ヘキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液およびこれらの炭化物}を400から3200℃の範囲で一回以上熱処理された炭素質材料などが挙げられる。
【0098】
負極合剤が金属を含有する負極活物質および炭素質材料を含有する場合、金属を含有する負極活物質と炭素質材料との質量比は、好ましくは1/99~99/1であり、より好ましくは5/95~95/5であり、さらに好ましくは10/10~90/10である。
【0099】
本開示の電極合剤が負極活物質を含有する場合、結着剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0.01~20.0質量部であり、より好ましくは0.1~10.0質量部である。
【0100】
電極活物質(正極活物質または負極活物質)の含有量は、得られる電極の容量を増やすために、電極合剤の固形分中40質量%以上が好ましい。
【0101】
本開示の電極合剤において、結着剤(A)と電極活物質(B)との質量比(A/B)は、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、好ましくは0.01/99.99~10/90であり、より好ましくは0.5/99.5以上であり、さらに好ましくは1/99以上であり、より好ましくは4/96以下であり、さらに好ましくは3/97以下である。
【0102】
(導電剤)
電極合剤は、さらに導電剤を含んでもよい。導電剤としては、たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック類やグラファイト等の炭素材料、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン等が挙げられる。
【0103】
導電剤の含有量は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部であり、より好ましくは0.01~2.0質量部である。
【0104】
(添加剤(C))
本開示の電極合剤は、添加剤(C)として、多価カルボン酸(C1)、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマー(C2)を含有する。電極合剤に、多価カルボン酸(C1)およびフッ素非含有ポリマー(C2)を添加することによって、電極合剤の粘度変化率を低くすることができる。さらには、電極合剤に、多価カルボン酸(C1)およびフッ素非含有ポリマー(C2)を添加することによって、多価カルボン酸(C1)およびフッ素非含有ポリマー(C2)のいずれか一方のみを含有する電極合剤から形成される電極材料層よりも、集電体との剥離強度が高い電極材料層を形成することができる。
【0105】
多価カルボン酸(C1)は、分子内に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物であり、飽和多価カルボン酸であってもよいし、不飽和多価カルボン酸であってもよい。多価カルボン酸(C1)としては、ジカルボン酸が好ましく、不飽和ジカルボン酸がより好ましい。
【0106】
多価カルボン酸(C1)としては、なかでも、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、シトラコン酸、琥珀酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、酒石酸がより好ましい。
【0107】
フッ素非含有ポリマー(C2)は、フッ素原子を含有しておらず、不飽和モノカルボン酸単位を含有するポリマーである。本開示において、不飽和モノカルボン酸は、フッ素原子を含有しておらず、分子内に1以上の不飽和結合と1のカルボキシル基とを有する化合物をいい、たとえば、分子内に1の(メタ)アクリロイル基と1のカルボキシル基とを有する化合物が挙げられる。
【0108】
不飽和モノカルボン酸としては、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、一般式(C2)で表される単量体(C2)が好ましい。
一般式(C2):
【化2】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンである。)
【0109】
一般式(C2)におけるR1~R3、XおよびYとしては、一般式(A1)におけるR1~R3、XおよびYと同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0110】
単量体(C2)としては、一般式(C2)において、Xが単結合または炭素数1~8の炭化水素基である単量体(C2)が好ましく、Xが単結合である単量体(C2)がより好ましい。
【0111】
単量体(C2)としては、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、(メタ)アクリル酸およびその塩が好ましい。すなわち、フッ素非含有ポリマー(C2)としては、ポリ(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0112】
フッ素非含有ポリマー(C2)は、不飽和モノカルボン酸単位とともに、非フッ素化単量体単位(ただし不飽和モノカルボン酸単位を除く)を含有してもよい。非フッ素化単量体としては、結着剤(A)としての含フッ素重合体が含有し得る非フッ素化単量体として例示したものを同様に例示することができる。
【0113】
フッ素非含有ポリマー(C2)中の不飽和モノカルボン酸単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは90.0モル%以上であり、より好ましくは95.0モル%以上であり、さらに好ましくは99.0モル%以上であり、特に好ましくは99.9モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。
【0114】
フッ素非含有ポリマー(C2)中の非フッ素化単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは10.0モル%以下であり、より好ましくは5.0モル%以下であり、さらに好ましくは1.0モル%以下であり、特に好ましくは0.1モル%以下であり、好ましくは0モル%以上である。
【0115】
フッ素非含有ポリマー(C2)の数平均分子量は、好ましくは1500000以下であり、より好ましくは1000000以下であり、さらに好ましくは500000以下であり、好ましくは3000以上であり、より好ましくは50000以上であり、さらに好ましくは100000以上である。数平均分子量が高いと溶解度の観点で電極合剤スラリーの均一化が難しくなるおそれがあり、分子量が低すぎると電極合剤スラリーの粘度が低くなるおそれがある。
【0116】
多価カルボン酸(C1)とフッ素非含有ポリマー(C2)との質量比((C1)/(C2))は、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られることから、好ましくは1/99~99/1であり、より好ましくは3/97以上であり、さらに好ましくは6/94以上であり、尚さらに好ましくは9/91以上であり、特に好ましくは15/85以上であり、より好ましくは97/3以下であり、さらに好ましくは94/6以下であり、さらに好ましくは91/9以下であり、特に好ましくは85/15以下である。
【0117】
特に、多価カルボン酸(C1)とフッ素非含有ポリマー(C2)との質量比((C1)/(C2))が、15/85~85/15であると、粘度が尚一層変化しにくく、さらには、集電体と尚一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤を得ることができる。質量比((C1)/(C2))は、最も好ましくは20/80以上であり、最も好ましくは80/20以下である。
【0118】
電極合剤における添加剤(C)の含有量は、電極合剤中の結着剤(A)および電極活物質(B)の質量に対して、好ましくは0.01~5.0質量%であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下であり、特に好ましくは2.0質量%以下である。添加剤(C)の含有量を上記範囲とすることにより、粘度が一層変化しにくく、さらには、集電体と一層高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できる電極合剤が得られる。
【0119】
(溶媒)
本開示の電極合剤は、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、有機溶剤が挙げられる。
【0120】
有機溶剤としては、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酪酸ブチル、酢酸エチル等の鎖状炭酸エステル系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4-フルオロ-1、3ジオキソラン-2-オン等の環状炭酸エステル、;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-n-ヘキシルオキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のβ-アルコキシプロピオンアミド類;リン酸トリエチル、リン酸トリメチル等のリン酸エステル;さらに、それらの混合溶剤等の低沸点の汎用有機溶剤を挙げることができる。
【0121】
有機溶剤としては、また、一般式(1)で表される溶剤を用いることもできる。
【0122】
一般式(1):
【化3】
(式中、R
11、R
12およびR
13は、独立に、Hまたは1価の置換基であり、ただし、R
11、R
12およびR
13の合計炭素数は6以上であり、R
11、R
12およびR
13の少なくとも1つはカルボニル基を有する有機基である。R
11、R
12およびR
13は、いずれか2つが結合して環を形成してもよい。)
【0123】
一般式(1)で表される溶剤としては、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N-ブチル-2-ピロリドン(NBP)、アクリロイルモルフォリン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N,N’ ,N’-テトラエチルウレア、N,N-ジメチルアセトアセタミド、N-オクチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジエチルアセタミドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0124】
溶媒としては、なかでも、塗布性に優れている点から、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、および、一般式(1)で表される溶媒からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N-ブチル-2-ピロリドン(NBP)、アクリロイルモルフォリン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N,N’ ,N’-テトラエチルウレア、N,N-ジメチルアセトアセタミド、N-オクチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジエチルアセタミドからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、
N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-エチル-2-ピロリドンおよびN-ブチル-2-ピロリドンらなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、
N-メチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0125】
本開示の電極合剤において、溶媒の含有量は、集電体への塗布性、乾燥後の薄膜形成性等を考慮して決定される。本開示の電極合剤において、結着剤(A)および電極活物質(B)の合計含有量は、電極合剤の固形分中、好ましくは50~90質量%であり、より好ましくは60~85質量%であり、さらに好ましくは65~80質量%である。また、本開示の電極合剤において、添加剤(C)および溶媒の合計含有量は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%であり、さらに好ましくは20~35質量である。
【0126】
本開示の電極合剤において、固形分の濃度は好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
【0127】
電極合剤の粘度は、塗布が容易であり、所望の厚みを有する正極材料層を得ることも容易であることから、好ましくは1000~80000mPa・sであり、より好ましくは3000mPa・s以上であり、さらに好ましくは5000mPa・s以上であり、より好ましくは70000mPa・s以下であり、さらに好ましくは60000mPa・s以下である。上記粘度は、B型粘度計により、25℃で測定できる。
【0128】
本開示の電極合剤は、二次電池用電極合剤であってよく、リチウムイオン二次電池用電極合剤であってよい。また、本開示の電極合剤は、正極の作製に用いる正極合剤であってもよく、負極の作製に用いる負極合剤であってもよいが、正極合剤であることが好ましい。
【0129】
(電極)
本開示の電極は、集電体と電極材料層とを備えている。電極材料層は、本開示の電極合剤を用いて形成され、集電体の片面に設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。本開示の電極は、正極材料層を備える正極であってもよいし、負極材料層を備える負極であってもよい。
【0130】
電極材料層の密度は、好ましくは1.5~5.0g/cm3であり、より好ましくは2.0~4.5g/cm3である。
【0131】
電極材料層の密度は、電極材料層の質量および体積から算出できる。
【0132】
電極材料層の厚みは、より一層高い電池特性が得られることから、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上であり、特に好ましくは45μm以上であり、好ましくは170μm以下であり、より好ましくは150μm以下である。また、電極材料層の厚みは、85μm以下であってもよく、69μm未満であってもよい。
【0133】
電極材料層の厚みは、マイクロメーターにより測定できる。本開示における電極材料層の厚みは、電極材料層が集電体の両面に設けられている場合には、片面当たりの厚みである。
【0134】
本開示の電極が備える集電体としては、たとえば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属箔あるいは金属網等が挙げられ、なかでも、アルミニウム箔が好ましい。
【0135】
本開示の電極は、本開示の電極合剤を集電体に塗布する製造方法により、好適に製造することができる。電極合剤を塗布した後、さらに、塗膜を乾燥させ、得られた乾燥塗膜をプレスしてもよい。
【0136】
電極合剤の、集電体への塗布量としては、好ましくは10mg/cm2以上であり、より好ましくは17.5mg/cm2以上であり、好ましくは60mg/cm2以下であり、より好ましくは50mg/cm2以下である。電極合剤の塗布量は、単位面積当たりの電極合剤の乾燥重量である。
【0137】
(二次電池)
また、本開示によれば、上記の電極を備える二次電池が提供される。
【0138】
本開示の電極合剤から形成される電極材料層は、正極材料層であってもよいし、負極材料層であってもよい。
【0139】
本開示の二次電池は、正極、負極、非水電解液を備え、正極および負極の一方または両方が、上記の電極であるものが好ましい。また、本開示の二次電池は、正極、負極、非水電解液を備え、正極が、上記の電極であるものが好ましい。また、正極と負極との間にセパレータを介在させてもよい。
【0140】
非水電解液は、特に限定されないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の公知の溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。電解質も従来公知のものがいずれも使用でき、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、炭酸セシウム等を用いることができる。
【0141】
本開示の電極は、捲回型二次電池用電極として、好適に利用できる。また、本開示の二次電池は、捲回型二次電池であってよい。
【0142】
本開示の電極は、非水電解液二次電池用として、以上に説明した液状電解質を用いたリチウムイオン二次電池だけでなく、ポリマー電解質リチウム二次電池にも有用である。また、電気二重層キャパシタ用としても有用である。
【0143】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0144】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
結着剤(A)、電極活物質(B)および添加剤(C)を含有する電極合剤であって、
結着剤(A)が、ビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素重合体を含有し、
添加剤(C)が、多価カルボン酸(C1)、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマー(C2)を含有する
電極合剤が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
多価カルボン酸(C1)が、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、シトラコン酸、琥珀酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸からなる群より選択される少なくとも1種である第1の観点による電極合剤が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
多価カルボン酸(C1)が、酒石酸である第1または第2の観点による電極合剤が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
不飽和モノカルボン酸単位が、一般式(C2)で表される単量体(C2)に基づく単位である第1~第3のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
一般式(C2):
【化4】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンである。)
<5> 本開示の第5の観点によれば、
フッ素非含有ポリマー(C2)が、ポリアクリル酸である第1~第4のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
添加剤(C)の含有量が、結着剤(A)および電極活物質(B)の質量に対して、0.01~5.0質量%である第1~第5のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
多価カルボン酸(C1)とフッ素非含有ポリマー(C2)との質量比((C1)/(C2))が、9/91~91/9である第1~第6のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
結着剤(A)が、含フッ素重合体として、98.0モル%以上のビニリデンフルオライド単位を含有するポリビニリデンフルオライドを含有する第1~第7のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
ポリビニリデンフルオライドが、ビニリデンフルオライド単位のみからなる含フッ素重合体、ビニリデンフルオライド単位およびフッ素化単量体単位(ただし、ビニリデンフルオライド単位を除く)を含有する含フッ素重合体、ならびに、ビニリデンフルオライド単位および一般式(A1)で表される単量体(A1)に基づく単位を含有する含フッ素重合体からなる群より選択される少なくとも1種である第8の観点による電極合剤が提供される。
一般式(A1):
【化5】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンである。)
<10> 本開示の第10の観点によれば、
結着剤(A)が、98.0モル%未満のビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素共重合体をさらに含有する第8または第9の観点による電極合剤が提供される。
<11> 本開示の第11の観点によれば、
含フッ素共重合体が、ビニリデンフルオライド単位およびフッ素化単量体単位(ただし、ビニリデンフルオライド単位を除く)を含有する含フッ素共重合体であり、フッ素化単量体単位が、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、フルオロアルキルビニルエーテル単位、クロロトリフルオロエチレン単位および2,3,3,3-テトラフルオロプロペン単位からなる群より選択される少なくとも1種である第10の観点による電極合剤が提供される。
<12> 本開示の第12の観点によれば、
電極活物質(B)が、リチウム複合酸化物を含有する第1~第11のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
<13> 本開示の第13の観点によれば、
電極活物質(B)が、一般式(B1)で表されるリチウム金属酸化物を含有する第1~第12のいずれかの観点による電極合剤が提供される。
一般式(B1):LiNi
ZM
(1-Z)O
2
(式中、zは、0.5≦z<1を満たし、Mは、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種である。)
<14> 本開示の第14の観点によれば、
集電体と、
集電体の片面または両面に設けられており、第1~第13のいずれかの観点による電極合剤から形成される電極材料層と、
を備える電極が提供される。
<15> 本開示の第15の観点によれば、
第14の観点による電極を備える二次電池が提供される。
【実施例】
【0145】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0146】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0147】
(含フッ素重合体の組成)
含フッ素重合体の組成は、溶液NMR法により測定した。
測定装置:バリアン社製 VNMRS400
共鳴周波数:376.04(Sfrq)
パルス幅:30°(pw=6.8)
【0148】
(含フッ素重合体中のアクリル酸単位の含有量)
含フッ素重合体におけるアクリル酸単位の含有量は、カルボキシル基の酸-塩基滴定によって測定した。具体的には、約0.5gの含フッ素重合体を、70~80℃の温度でアセトンに溶解させた。5mlの水を、含フッ素重合体の凝固を回避するように激しい撹拌下に滴々加えた。約-270mVでの中性転移で、酸性度の完全な中和まで0.1Nの濃度を有するNaOH水溶液での滴定を実施した。測定結果から、含フッ素重合体1g中に含まれるアクリル酸単位の含有物質量を求め、アクリル酸単位の含有量を算出した。
【0149】
(重量平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。東ソー社製のHLC-8320GPCおよびカラム(SuperAWM-Hを3本直列に接続)を用い、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を流速0.3ml/分で流して測定したデータ(リファレンス:ポリスチレン)より、重量平均分子量を算出した。
【0150】
(粘度)
正極合剤の粘度は、B型粘度計(東機産業社製、TV-10M)を用いて、温度25℃、湿度0.2%、ロータNo.M4、回転速度6rpmの条件にて測定し、測定開始から10分経過後の測定値を粘度とした。
【0151】
(粘度変化率)
合剤調製時の粘度(η0)、合剤調製から48時間経過後の粘度(ηn)をそれぞれ測定し、粘度変化率(Xn)を下記の式により求めた。
Xn=ηn/η0×100[%]
【0152】
(正極の正極材料層と正極集電体との剥離強度)
正極を切り取ることにより、1.2cm×7.0cmの試験片を作製した。試験片の正極材料層側を両面テープで可動式治具に固定した後、正極集電体の表面にテープを張り、100mm/分の速度でテープを90度に引っ張った時の応力(N/cm)をオートグラフにて測定した。オートグラフのロードセルには50Nを用いた。
【0153】
実施例および比較例では、結着剤(A)として、下記の重合体を用いた。
含フッ素重合体(A-I):ポリビニリデンフルオライド
VdF=100(モル%)
重量平均分子量:900000
含フッ素重合体(A-II):ポリビニリデンフルオライド
VdF=100(モル%)
重量平均分子量:1800000
含フッ素重合体(A-III):アクリル酸単位含有ポリビニリデンフルオライド
VdF/アクリル酸=99/1(モル%)
重量平均分子量;1000000
含フッ素重合体(A-IV):VdF/TFE共重合体
VdF/TFE=80/20(モル%)
重量平均分子量:1000000
含フッ素重合体(A-V): VdF/HFP共重合体
VdF/HFP = 94.5/5.5
重量平均分子量:600000
含フッ素重合体(A-VI):VdF/CTFE共重合体
VdF/CTFE = 97.6/2.4
重量平均分子量:800000
【0154】
実施例および比較例で用いたその他の材料は以下のとおりである。
正極活物質(B)
NMC811:LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2
添加剤(C)
酒石酸
ポリアクリル酸(PAA)(分子量Mn=250000)
導電剤
カーボンブラック(SuperP Li、イメリス社製)
【0155】
実施例1~11、比較例1~8
結着剤(A)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、濃度が8質量%の結着剤(A)の溶液を調製した。結着剤(A)の溶液と、正極活物質(B)、添加剤(C)および導電剤とを混合し、正極合剤を調製した。各成分の使用量および正極合剤の固形分濃度を表1および表2に示す。得られた正極合剤の粘度を測定し、粘度変化率を算出した。結果を表1および表2に示す。
【0156】
(正極の作製)
得られた正極合剤を、正極集電体(厚さ20μmのアルミ箔)の片面に均一に塗布し、120℃で60分間乾燥させることにより、NMPを完全に揮発させた後、ロールプレス機を用いて、10tの圧力を印加してプレスすることにより、正極集電体の片面に正極材料層を備える正極を作製した。正極合剤の塗布量は、22.5mg/cm2であり、正極材料層の密度は3.4g/cm2であった。得られた正極を用いて、正極の正極材料層と正極集電体との剥離強度を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0157】
【0158】
【要約】
【課題】粘度が変化しにくいという性質と、集電体と高い剥離強度で密着する電極材料層を形成できるという性質とを、バランスよく併せ持つ電極合剤を提供すること。
【解決手段】結着剤(A)、電極活物質(B)および添加剤(C)を含有する電極合剤であって、結着剤(A)が、ビニリデンフルオライド単位を含有する含フッ素重合体を含有し、添加剤(C)が、多価カルボン酸(C1)、および、不飽和モノカルボン酸単位を含有するフッ素非含有ポリマー(C2)を含有する電極合剤が提供される。
【選択図】 なし