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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】照明方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/155 20200101AFI20231122BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231122BHJP
   H05B 47/17 20200101ALI20231122BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20231122BHJP
   H05B 45/20 20200101ALI20231122BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231122BHJP
【FI】
H05B47/155
F21S2/00 230
H05B47/17
H05B45/10
H05B45/20
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020140209
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035707
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 洋邦
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 克典
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080620(JP,A)
【文献】特開2017-157480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0270180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/155
F21S 2/00
H05B 47/17
H05B 45/10
H05B 45/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類以上の発光素子を備えた光源部から光を照射する照明方法であって、
前記光源部から照射される光の輝度をA(cd/m)とした場合、λを波長、S(λ)を前記光源部から照射される光の分光放射輝度、ipRGC(λ)を作用関数として下記の数式で表されるipRGC作用量を、相関色温度および前記ipRGC作用量をパラメータとする2次元平面の任意の相関色温度において、基準光源の前記ipRGC作用量より、前記光源部の前記ipRGC作用量の方が小さくもしくは大きくなるように、前記光源部から光を照射すること
を特徴とする照明方法。
【数3】
【請求項2】
前記光源部は、少なくとも2種類以上の異なるピーク波長の発光素子を備えており、
請求項1記載の第1の照明方法と、前記第1の照明方法で照明される光と相関色温度が同等かつ前記基準光源の前記ipRGC作用量と同等の光を照射する第2の照明方法と、を切り替えることが可能であること
を特徴とする照明方法。
【請求項3】
前記第1の照明方法で照明される光と、前記第2の照明方法で照明される光と、はまぶしさが異なること
を特徴とする請求項2記載の照明方法。
【請求項4】
相関色温度と、前記ipRGC作用量をパラメータとする2次元平面において、(相関色温度、ipRGC作用量)=(2700、0.6)、(2700、1.5)、(8000、1.5)、(8000、0.6)で囲まれる領域内の光を照射すること
を特徴とする請求項1~3いずれか1つに記載の照明方法。
【請求項5】
前記光源部は、ピーク波長が430±10nmの第1の発光素子と、ピーク波長が500±10nmの第2の発光素子と、ピーク波長が570±10nmの第3の発光素子と、ピーク波長が630±10nmの第4の発光素子と、を備えること
を特徴とする請求項1~4いずれか1つに記載の照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を有する照明装置において、発光素子から出射される光のうち短波長の波長帯の光をカットするバンドパスフィルタと発光素子とを組み合わせることで、グレア(まぶしさ)を軽減させる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-17144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来技術では、グレアを軽減させるものの、光をカットするフィルタを使用することから光の一部が無駄となるため、発光素子から供給される視対象面の照度が低下してしまう。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、発光素子のみでグレアを制御することができ、グレアを制御しつつ視対象面の照度を確保することができる照明方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る照明方法は、少なくとも1種類以上の発光素子を備えた光源部から光を照射する照明方法であって、前記光源部から照射される光の輝度をA(cd/m)とした場合、λを波長、S(λ)を前記光源部から照射される光の分光放射輝度、ipRGC(λ)を作用関数として下記の数式で表されるipRGC作用量を、相関色温度および前記ipRGC作用量をパラメータとする2次元平面の任意の相関色温度において、基準光源の前記ipRGC作用量より、前記光源部の前記ipRGC作用量の方が小さくもしくは大きくなるように、前記光源部から光を照射することを特徴とする。
【数3】
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光素子のみでグレアを制御することができ、グレアを制御しつつ視対象面の照度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る照明方法を用いた照明装置の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る光源部および制御部の一例を示す図である。
図3図3は、ipRGCおよびL錐体、M錐体、S錐体の感度曲線を示す図である。
図4図4は、錐体の感度曲線を導くための等色関数を示す図である。
図5A図5Aは、本検討の条件を示す図である。
図5B図5Bは、本検討で得られたipRGCおよびグレアの関係を示す図である。
図6A図6Aは、2700Kの相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図である。
図6B図6Bは、2700K+の相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図である。
図6C図6Cは、8000Kの相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図である。
図6D図6Dは、8000K-の相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図である。
図7図7は、相関色温度およびipRGC作用量の関係(その1)を示す図である。
図8図8は、相関色温度およびipRGC作用量の関係(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係る照明方法は、少なくとも1種類以上の発光素子を備えた光源部から光を照射する照明方法であって、光源部から照射される光の輝度をA(cd/m)とした場合、λを波長、S(λ)を光源部から照射される光の分光放射輝度、ipRGC(λ)を作用関数として下記の数式で表されるipRGC作用量を、相関色温度およびipRGC作用量をパラメータとする2次元平面の任意の相関色温度において、基準光源のipRGC作用量より、光源部のipRGC作用量の方が小さくもしくは大きくなるように、光源部から光を照射する。
【数3】
【0010】
また、以下に説明する実施形態に係る照明方法は、光源部は、少なくとも2種類以上の異なるピーク波長の発光素子を備えており、上記第1の照明方法と、第1の照明方法で照明される光と相関色温度が同等かつ基準光源のipRGC作用量と同等の光を照射する第2の照明方法と、を切り替えることが可能である。
【0011】
また、以下に説明する実施形態に係る照明方法は、第1の照明方法で照明される光と、第2の照明方法で照明される光と、はまぶしさが異なる。
【0012】
また、以下に説明する実施形態に係る照明方法は、相関色温度と、ipRGC作用量をパラメータとする2次元平面において、(相関色温度、ipRGC作用量)=(2700、0.6)、(2700、1.5)、(8000、1.5)、(8000、0.6)で囲まれる領域内の光を照射する。
【0013】
また、以下に説明する実施形態に係る照明方法は、光源部は、ピーク波長が430±10nmの第1の発光素子と、ピーク波長が500±10nmの第2の発光素子と、ピーク波長が570±10nmの第3の発光素子と、ピーク波長が630±10nmの第4の発光素子と、を備える。
【0014】
以下、実施形態に係る照明方法について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1および図2を参照して実施形態に係る照明方法を用いた照明装置10について説明する。図1は、実施形態に係る照明方法を用いた照明装置10の一例を示す図(概略斜視図)である。図2は、実施形態に光源部20および制御部30の一例を示す図(模式的な平面図)である。
【0016】
図1に示すように、照明装置10は、本体11と、カバー12と、光源部20と、制御部30(図2参照)とを備える。照明装置10は、たとえば、カバー12を下方に向けて天井面に取り付けられる、いわゆるベースライトである。なお、照明装置10は、天井面に限らず、たとえば、壁面などの任意の取り付け対象に取り付けられてよい。また、複数の照明装置10が連結されてもよい。また、照明装置10は、ベースライトに限定されず、任意の形態の照明装置が採用可能である。
【0017】
本体11は、天井面に取り付けられる取付部であり、カバー12を支持する支持部でもある。本体11の内部には、光源部20や電源部(図示せず)、後述する制御部30などが収容される。カバー12は、照明装置10の発光面を覆うカバーであり、後述する発光素子21から出射される光を拡散する。
【0018】
光源部20は、電源部から供給される電力によって駆動され、下方に向けて光を出射する。光源部20は、1種類の発光素子21、もしくはそれぞれピーク波長が異なった複数の発光素子21を備えている。好ましくは、光源部20は、それぞれピーク波長が異なった2種類以上の発光素子21を備えている。さらに好ましくは、光源部20は、それぞれピーク波長が異なった4種類以上の発光素子21を備えている。
【0019】
図2に示す光源部20は、4種類の発光素子21(第1~第4発光素子21a~21d)を備えた一例を示すものである。発光素子21は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)である。なお、LEDには、窒素ガリウム系LEDであるInGaN系LEDが採用可能である。発光素子21は、制御部30とそれぞれ電気的に接続される。それぞれピーク波長が異なった複数種類の発光素子21を備える場合は、発光素子21のピーク波長ごとに独立して制御可能なように、発光素子21は制御部30と電気的に接続される。
【0020】
第1発光素子21aは、例えば約630nmのピーク波長を有する発光色が赤色の発光素子であり、光源部20に1つないし複数個配設されている。第2発光素子21bは、例えば約570nmのピーク波長を有する発光色が黄色の発光素子であり、光源部20に1つないし複数個配設されている。第3発光素子21cは、例えば500nmのピーク波長を有する発光色が青緑色の発光素子であり、光源部20に1つないし複数個配設されている。第4発光素子21dは、例えば約430nmのピーク波長を有する発光色が青色の発光素子であり、光源部20に1つないし複数個配設されている。なお、第1~第4の発光素子21a~21dは、図2に示すようにそれぞれが隣り合う配置に限定されるものではなく、例えば千鳥配置など、任意の配置で配設される。
【0021】
制御部30は、照明装置10を制御するコントローラである。制御部30は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサにより実装できる。あるいは、制御部30は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路により実装されてもよい。
【0022】
また、制御部30は、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置を含む。
【0023】
また、制御部30は、光源部20の出力を制御する。すなわち、制御部30は、発光素子21の出力をそれぞれ制御する。このため、制御部30は、発光素子21の発光ピーク強度を調整することが可能である。光源部20が、それぞれピーク波長が異なった複数の発光素子21を備える場合は、ピーク波長が異なる発光素子21ごとに発光ピーク強度を調整することが可能ある。
【0024】
ところで、発光素子21から出射される光のうち、グレア(まぶしさ)が生じるとされる500nm以下の波長の光である、いわゆるブルーライトと呼ばれる短波長の波長帯の光を除去してまぶしさを軽減させることが要求されている。この場合、たとえば、短波長の波長帯の光をカットするバンドパスフィルタなどを用いた場合は、発光素子21から供給される視対象面の照度が低下する。そのため、視対象面の照度を低下されることなくグレア(まぶしさ)を軽減できる手法が必要とされていた。
【0025】
現在、まぶしさに影響する視細胞として、第三の視細胞である内因性光感受性網膜神経節細胞(以下、ipRGCという)が関与している可能性が高いことが明らかになってきている。そこで、視対象面の照度を低下されることなくグレア(まぶしさ)を軽減できる手法として、光源によってipRGCの作用量を調整することを検討した。
【0026】
以下、図3図8を参照して本検討について説明する。図3は、ipRGCおよびL錐体、M錐体、S錐体の感度曲線を示す図である。図4は、錐体の感度曲線を導くための等色関数を示す図である。なお、ここでの等色関数はCIE2006の関数を使用して計算しているが、CIE1931の関数を用いてもよい。
【0027】
図5Aは、本検討の条件を示す図であり、図5Bは、本検討で得らえたipRGCおよびグレアの関係を示す図である。図6Aは、本検討で用いた2700Kの相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図、図6Bは、本検討で用いた2700K+の相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図、図6Cは、本検討で用いた8000Kの相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図、図6Dは、本検討で用いた8000K-の相関色温度の場合の分光スペクトルを示す図である。
【0028】
図7は、相関色温度およびipRGC作用量の関係(その1)を示す図である。図8は、相関色温度およびipRGC作用量の関係(その2)を示す図である。
【0029】
図3に示すように、ipRGCの感度(比視感度ともいう)曲線と、明るい(たとえば、1000cd/m程度の)場所における視細胞の錐体(L錐体、M錐体、S錐体)の感度曲線と比較した場合、ipRGCの感度曲線のピーク波長は、視細胞の錐体の感度曲線のピーク波長とは異なる。L錐体の感度曲線のピーク波長は、約570nm、M錐体の感度曲線のピーク波長は、約543nm、S錐体の感度曲線のピーク波長は、約442nmに対して、ipRGCの感度曲線のピーク波長は、約490nmである。ipRGCや各錐体の作用量は、図3に示す感度曲線を用いて導出可能である。
【0030】
ipRGC作用量は、波長380~780nmの範囲におけるipRGCの比視感度ipRGC(λ)の相対値と、光源の分光放射輝度S(λ)を積算して波長λで積分することで、ipRGC基本作用量が算出される(数1)。なお、分光放射輝度S(λ)の単位は、W/m/srである。
【数1】
【0031】
数1で求められるipRGC基本作用量は、光源の輝度Aが高いほど、大きい値が得られるため、数1で求められるipRGC基本作用量を正規化したものをipRGC作用量(反応量ともいう)として用いる。具体的には、本検討においては、数1で求められるipRGC基本作用量を1000cd/mあたりの数値に換算したものをipRGC作用量として定義する(数2)。
【数2】
【0032】
したがって、ipRGC作用量は、下記の数式(数3)によって求められる。
【数3】
【0033】
例えば、100cd/mの光源を用いて算出したipRGC基本作用量の場合は、ipRGC基本作用量を10倍した値がipRGC作用量であり、10000cd/mの光源を用いて算出したipRGC基本作用量の場合は、ipRGC基本作用量を0.1倍した値がipRGC作用量である。
【0034】
なお、ipRGC作用量としては、ipRGC基本作用量を1000cd/mあたりの数値に換算した値ではなく、任意の数値に換算した値で定義しても良い。その場合、数2において、1000(cd/m)の部分が任意の数値に置き換えられた数式でipRGC作用量が導出される。またipRGC作用量としては、必ずしも輝度(cd/m)を基準として正規化する必要があるわけではなく、光束(lm)、照度(lx)、光度(cd)など、国際単位系の光の単位の適切なものを基準として正規化しても良い。
【0035】
ここから、本検討の内容をより詳細に説明する。ipRGC作用量の影響を確認するために、輝度、L錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量を変えずに、ipRGC作用量を調節することを検討した。ipRGC作用量の調整によりまぶしさが制御することができれば、まぶしさを軽減させつつ視対象面の照度も確保することが可能となる。なお、視対象面の照度については、錐体の感度曲線と関係が深い、図4に示すような等色関数(CIE2006の等色関数)を用いて計算するため、ipRGC作用量と独立して算出することが可能である。なお、等色関数はCIE1931の関数を用いても良い。
【0036】
本検討においては、分光スペクトルのピーク波長が約430nmの発光素子と、分光スペクトルのピーク波長が約500nmの発光素子と、分光スペクトルのピーク波長が約570nmの発光素子と、分光スペクトルのピーク波長が約630nmの発光素子とを用いた光源を使用している。
【0037】
そして、図5Aに示すように、L錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量が同一、かつipRGC作用量が異なる2700Kと2700K+の2つの光源で、どちらがまぶしく感じるかの被験者実験と、L錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量が同一、かつipRGC作用量が異なる8000Kと8000K-の2つの光源で、どちらがまぶしく感じか被験者実験を行った。
【0038】
なお、図5Aには輝度の表記は省略しているが、2700K、2700K+、8000K、8000K-は、いずれも同一の輝度である。そして、図5Aに示すように、2700Kの相関色温度の場合、(L作用量、M作用量、S作用量、ipRGC作用量)=(1.6、1.1、0.2、0.6)であり、2700K+の相関色温度の場合、(L作用量、M作用量、S作用量、ipRGC作用量)=(1.6、1.1、0.2、1.5)である。また、図5Aに示すように、8000Kの相関色温度の場合、(L作用量、M作用量、S作用量、ipRGC作用量)=(1.5、1.3、1.0、1.5)であり、8000K-の相関色温度の場合、(L作用量、M作用量、S作用量、ipRGC作用量)=(1.5、1.3、1.0、0.6)である。
【0039】
2700Kは、相関色温度が2700Kであり、かつ2700Kの基準光源と同一のipRGC作用量に近づくように調整された光源である。2700K+は、2700KとL錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量が同一、かつipRGC作用量が後述する8000Kと同等になるように調整された光源である。2700Kの分光スペクトルを図6Aに、2700K+の分光スペクトルを図6Bに示す。
【0040】
8000Kは、相関色温度が8000Kであり、かつ8000Kの基準光源と同一のipRGC作用量に近づくように調整された光源である。8000K-は、8000KとL錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量が同一、かつipRGC作用量が先述した2700Kと同等になるように調整された光源である。8000Kの分光スペクトルを図6Cに、8000K-の分光スペクトルを図6Dに示す。
【0041】
また、被験者実験の結果を図5Bに示す。ipRGC作用量が制御された2700K(2700K+)の相関色温度の場合、8000Kの相関色温度と同等のまぶしさを感じることがわかった。また、ipRGC作用量が制御された8000K(8000K-)の相関色温度の場合、2700Kの相関色温度と同等のまぶしさを感じることがわかった。つまり、一般的にグレアの高い(まぶしい)光である8000Kの相関色温度の光と、一般的にグレアの低い(まぶしくない)光である2700Kの相関色温度の光とにおいて、ipRGC作用量を制御することで、8000Kの相関色温度だが2700K相当のグレア(まぶしくない)の光を作り出したり、2700Kの相関色温度だが8000K相当のグレア(まぶしい)光を作り出したりすることが可能である。
【0042】
本検討においては、ipRGC作用量の影響を確認するために、L錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量が同一となる2つのスペクトルで比較を行ったが、L錐体の作用量、M錐体の作用量、S錐体の作用量が非同一の条件下でも、ipRGC作用量の制御により上述した光を作り出すことは可能である。
【0043】
また、本検討において確認を行った領域を図7に示す。図7は、横軸に相関色温度[K]、縦軸に1000cd/mあたりのipRGC作用量、を設けた2次元平面であり、(相関色温度、ipRGC作用量)=(2700、0.6)、(2700、1.5)、(8000、1.5)、(8000、0.6)の4点で囲まれる領域である。
【0044】
例えば光1として、(相関色温度、1000cd/mあたりのipRGC作用量)=(K1,α)、光2として、(相関色温度、1000cd/mあたりのipRGC作用量)=(K2,β)、を作成したとする。なお、K1とK2は、図7に示す相関色温度の範囲内の任意の点である。このとき、α>βの場合は光1の方がまぶしく感じる。
【0045】
反対にα<βの場合は光2の方がまぶしく感じる。これらの場合において、K1≠K2の条件でも、αとβの大小によりまぶしさの差を感じ取ることは可能であるが、K1=Kの条件下の方が、よりまぶしさの差を顕著に感じとることが可能となる。
【0046】
ipRGC作用量の調整によるまぶしさの感じ方の制御は、2700Kと8000Kの関係だけではなく、あらゆる相関色温度に適用可能である。図8に相関色温度ごとの基準光源における1000cd/mあたりのipRGC作用量を示す。基準光源とは、黒体放射もしくはCIE昼光である。
【0047】
1600Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約0.25である。2000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約0.39である。2700Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約0.61である。3000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約0.70である。4000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約0.94である。5000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約1.12である。6500Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約1.33である。8000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約1.47である。10000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約1.60である。25000Kの基準光源においては、ipRGC作用量は約1.93である。
【0048】
なお、図8を簡略化した場合、1600K以上10000K以下の間と、10000Kより大きく25000K以下の間とで、2種類の傾きに分類することが可能である。1600K以上10000K以下の間は、下記の数式(数4)に示す傾きであり、10000Kより大きく25000K以下の間は、下記の数式(数5)に示す傾きである。
【数4】

【数5】
【0049】
そして、ある一定の相関色温度において、図8に示す基準光源のipRGC作用量よりipRGC作用量が低い光源は、基準光源よりまぶしくない光源となる。また、図8に示す基準光源のipRGC作用量よりipRGC作用量が大きい光源は、基準光源よりまぶしい光源となる。
【0050】
そのため、ピーク波長が異なった2種類以上の発光素子21を備えたモジュールにおいて、任意の相関色温度の基準光源相当のipRGC作用量(例えば、図8に示す値を中心として±20%程度の値)の光を照明する方法と、この方法で照明された相関色温度と同等の相関色温度(例えば、相関色温度のばらつきが±500K)かつ基準光源相当のipRGC作用量からipRGC作用量を減少もしくは増大させた光を照明する方法と、を切り替えることができれば、用途に応じてまぶしさの違う2つの光を切り替えることが可能となり、汎用性が高い。この場合において、基準光源相当のipRGC作用量からipRGC作用量を減少もしくは増大させる値については、1600K以上10000K以下の相関色温度では、基準光源相当のipRGC作用量の幅と、相関色温度のバラつきを考慮して、ipRGC作用量を0.1以上減少もしくは増大させることが好ましい。また、10000Kより大きく25000K以下の相関色温度では、基準光源相当のipRGC作用量の幅と、相関色温度のバラつきを考慮して、ipRGC作用量を0.015以上減少もしくは増大させることが好ましい。
【0051】
上述した実施形態においては、ipRGCと、相関色温度と、をパラメータとして説明したが、別の例では、演色性をパラメータとして用いても良い。つまり、ipRGCを固定したまま相関色温度を変化させる(まぶしさは変化しないが相関色温度は変化させる)使い方や、相関色温度を固定したままipRGCを変化させる(相関色温度は変化しないがまぶしさは変化する)使い方に加えて、ipRGCと相関色温度を固定したまま演色性を変化させる(相関色温度やまぶしさは変化しないが演色性は変化する)使い方も可能である。
【0052】
例えば、430nm、500nm、570nm、630nmのピーク波長を持つ4種類の発光素子を用いると2700K、かつ任意のipRGCに固定した条件において、様々な演色性(Ra)を実現することができる。なお、この状態で演色性(Ra)が高くなる方向に演色性を変化可能な幅を広げたい場合は、例えば、第5の発光素子として650nm以上にピークを持つ発光素子を追加しても良い。
【0053】
また、本検討においては、430nmと、500nmと、570nmと、630nmとの異なるピーク波長を備えた4種類の発光素子を用いている。430nmのピーク波長の発光素子は、S錐体の感度曲線(ピーク波長は約442nm)に合わせて、500nmのピーク波長の発光素子は、ipRGCの感度曲線(ピーク波長は約490nm)に合わせて、570nmのピーク波長の発光素子は、M錐体の感度曲線(ピーク波長は約543nm)に合わせて、630nmのピーク波長の発光素子は、L錐体の感度曲線(ピーク波長は約570nm)に合わせて、それぞれの錐体の作用量を調整可能なように選定している。しかし、それぞれの感度曲線のピーク波長とはいずれも合致していない。これは、相関色温度可変の光源を想定しているためであり、4種類の発光素子を備えた相関色温度可変のモジュールにおいては、上記構成であれば、色度座標において広範囲の色の作成でき、かつその色域に影響を与えないように、ipRGC作用量を調整することが可能である。発光波長のバラつきを考慮すると、ピーク波長が430±10nm、500±10nm、570±10nm、630±10nmの4種類の発光素子を選定すれば良い。
【0054】
なお、発光ピーク波長の値のうち、430nmは相関色温度、500nmはipRGC作用量、570nmは照度および輝度、630nmは演色性にそれぞれ寄与する傾向がある。
【0055】
以上説明したように、実施形態に係る照明方法は、少なくとも1種類以上の発光素子を備えた光源部20から光を照射する照明方法であって、光源部20から照射される光の輝度をA(cd/m)とした場合、λを波長、S(λ)を光源部20から照射される光の分光放射輝度、ipRGC(λ)を作用関数として下記の数式で表されるipRGC作用量を、相関色温度およびipRGC作用量をパラメータとする2次元平面の任意の相関色温度において、基準光源のipRGC作用量より、光源部のipRGC作用量の方が小さくもしくは大きくなるように、光源部20から光を照射する。
【0056】
このように、ipRGCの比視感度ipRGC(λ)と対応する波長λを相関色温度とは別に独立して制御することができる。このため、発光素子21のみでグレアを制御することができ、たとえば、短波長の波長帯をカットするバンドパスフィルタなどを用いることなく、発光素子21のみでまぶしさを軽減させつつ視対象面の照度を確保することができる。
【0057】
また、実施形態に係る照明方法は、光源部20は、少なくとも2種類以上の異なるピーク波長の発光素子21を備えており、上記した照明方法(第1の照明方法)と、第1の照明方法で照明される光と相関色温度が同等かつ基準光源のipRGC作用量と同等の光を照射する第2の照明方法と、を切り替えることが可能である。このため、用途に応じてまぶしさの違う2つの光を切り替えることが可能となる。
【0058】
また、実施形態に係る照明方法は、第1の照明方法で照明される光と、第2の照明方法で照明される光と、はまぶしさが異なる。このため、用途に応じてまぶしさの違う2つの光を切り替えることで、汎用性が高くなる。
【0059】
また、実施形態に係る照明方法は、相関色温度と、前記ipRGC作用量をパラメータとする2次元平面において、(相関色温度、ipRGC作用量)=(2700、0.6)、(2700、1.5)、(8000、1.5)、(8000、0.6)で囲まれる領域内の光を照射する。このため、8000Kの相関色温度だが2700K相当のグレア(まぶしくない)の光を作り出したり、2700Kの相関色温度だが8000K相当のグレア(まぶしい)光を作り出したりすることが可能である。
【0060】
また、実施形態に係る照明方法は、光源部20は、ピーク波長が430±10nmの第1の発光素子21aと、ピーク波長が500±10nmの第2の発光素子21bと、ピーク波長が570±10nmの第3の発光素子21cと、ピーク波長が630±10nmの第4の発光素子21dと、を備える。ipRGCの比視感度ipRGC(λ)と対応する波長λを相関色温度とは別に独立して制御することができるため、発光素子21のみでグレアを制御することができ、たとえば、短波長の波長帯をカットするバンドパスフィルタなどを用いることなく、発光素子21のみでまぶしさを軽減させつつ視対象面の照度を確保することができる。なお、ここでは上記の4つのピーク波長としたが、有彩色の光を実現するときは、第3の発光素子21cのピーク波長を540±10nmに変更してもよい。
【0061】
なお、上記した実施形態では、発光素子21にはLEDを用いているが、これに限定されず、発光素子21として、たとえば、蛍光体を採用してもよい。
【0062】
また、上記した実施形態では、照明装置10に適用する照明方法としているが、これに限定されず、たとえば、このような照明方法を、表示装置のバックライトなどに適用することも可能である。たとえば、表示装置のバックライトに適用することで、ナイトモードなどのグレア(まぶしさ)を制御することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 照明装置
11 本体
12 カバー
20 光源部
21 発光素子
21a 第1の発光素子
21b 第2の発光素子
21c 第3の発光素子
21d 第4の発光素子
30 制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8