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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】抗GPC3抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231122BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231122BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231122BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231122BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20231122BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
G01N33/574 A
C12N5/078
C12P21/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022159364
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2019237695の分割
【原出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2022191318
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2017001732
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的がん医療実用化研究事業「がん認識抗体と遺伝子導入T細胞によるがん治療を目指した前臨床開発研究」 委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】517107531
【氏名又は名称】ノイルイミューン・バイオテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】玉田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】佐古田 幸美
(72)【発明者】
【氏名】中面 哲也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 桂吾
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097928(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/022739(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/049459(WO,A1)
【文献】特表2016-523518(JP,A)
【文献】国際公開第2013/070468(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/036973(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/056228(WO,A1)
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2009年,Vol.378,pp.279-284
【文献】Cancer Research,2004年,Vol.64,pp.2418-2423
【文献】Jpn. J. Clin. Immunol.,2016年,Vol.39, No.3,pp.164-171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるヒトGPC3(Glypican-3)由来のポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、
(3-1)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号23に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号24に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号25に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号26に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(6-1)配列番号51に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号52に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号53に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号55に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号56に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか
(8-1)配列番号71に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号72に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号73に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号74に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号75に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか或いは
(11-1)配列番号101に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号102に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号103に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号104に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号105に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号106に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含む;
前記抗体。
【請求項2】
(3-2)配列番号27に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(6-2)配列番号57に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号58に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか
(8-2)配列番号77に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号78に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか或いは
(11-2)配列番号107に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号108に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む;
請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
一本鎖抗体である請求項1又は2のいずれかに記載の抗体。
【請求項4】
配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるヒトGPC3(Glypican-3)由来のポリペプチドに特異的に結合する一本鎖抗体であって、
(7-1)配列番号61に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号62に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号63に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号64に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号65に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号66に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;或いは
(10-1)配列番号91に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号92に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号93に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号94に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号95に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号96に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含む;
前記一本鎖抗体
【請求項5】
(7-2)配列番号67に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号68に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;或いは
(10-2)配列番号97に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号98に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む;
請求項4に記載の一本鎖抗体
【請求項6】
一本鎖抗体が、
(3-3)配列番号167に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(6-3)配列番号170に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(7-3)配列番号171に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(8-3)配列番号172に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(10-3)配列番号174に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;或いは
(11-3)配列番号175に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;
請求項3~5のいずれかに記載の一本鎖抗体。
【請求項7】
(3-4)配列番号29に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号30に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(6-4)配列番号59に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号60に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか
(8-4)配列番号79に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号80に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか或いは
(11-4)配列番号109に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号110に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む;
請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項8】
請求項3~6のいずれかに記載の一本鎖抗体と、該一本鎖抗体のカルボキシル末端に融合した細胞膜貫通領域と、該細胞膜貫通領域のカルボキシル末端に融合した免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域とを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項9】
配列番号185~187のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む請求項に記載のCAR。
【請求項10】
請求項又はに記載のCARを発現する免疫担当細胞。
【請求項11】
さらに、インターロイキン7(IL―7)、及びケモカインリガンド19(CCL19)を発現する請求項10に記載の免疫担当細胞。
【請求項12】
請求項1~のいずれかに記載の抗体をコードする抗体遺伝子、又は請求項若しくはに記載のCARをコードするCAR遺伝子。
【請求項13】
プロモーターと、該プロモーターの下流に作動可能に連結されている請求項12に記載の抗体遺伝子、又は請求項12に記載のCAR遺伝子とを含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターが導入されている宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~のいずれかに記載の抗体を用いて、GPC3(Glypican-3)を検出する工程を備えたGPC3の検出方法。
【請求項16】
請求項1~のいずれかに記載の抗体、又はその標識物を含む、GPC3(Glypican-3)の検出用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPC3(Glypican-3)に特異的に結合する抗体(抗GPC3抗体);抗GPC3一本鎖抗体と、かかる抗GPC3一本鎖抗体のカルボキシル(C)末端に融合した細胞膜貫通領域と、かかる細胞膜貫通領域のC末端に融合した免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域とを含むキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:以下、「CAR」ともいう);CARを発現する免疫担当細胞;抗GPC3抗体遺伝子又はCAR遺伝子;抗GPC3抗体遺伝子又はCAR遺伝子を含むベクター;かかるベクターが導入された宿主細胞;GPC3を検出する方法;及びGPC3を検出するためのキット;に関する。
【背景技術】
【0002】
Glypican-3(GPC3)は、胎生期の組織、特に肝臓・腎臓で発現し、器官形成に関わる細胞外マトリックスタンパク質である。GPC3は、成人組織においては胎盤以外に発現は認められないものの、肝細胞がん、メラノーマ、卵巣明細胞がん、肺扁平上皮がん等の様々ながん組織において発現が認められる。このようにGPC3は、α-フェトプロテイン(α-fetoprotein;AFP)、癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen;CEA)等のタンパク質と同様に、胎生期の組織に発現するタンパク質であるため、胎児性癌抗原に分類される。すなわち、GPC3は、正常組織細胞においては発現しないが、がん細胞に特異的に発現する特徴を示すため、がん治療の標的分子や、腫瘍マーカー及び診断マーカーとして有用である。
【0003】
GPC3は、器官形成における細胞外マトリクスとして細胞接着や細胞増殖因子の受容体として機能するプロテオグリカンファミリーの1つである。GPC3のカルボキシル(C)末端側に位置する560番目のセリンに、GPI(Glycosylphosphatidylinositol)アンカーが付加する。GPIアンカーは、細胞膜脂質と共有結合し、GPC3を細胞表面上に局在させる役割を担っている。また、GPC3の495番目のセリンと、509番目のセリンは、ヘパラン硫酸鎖(HS鎖)が修飾している。HS鎖は、Wntシグナル、FGFシグナル、BMPシグナル等の複数の増殖シグナル伝達経路を調節することが知られている。がん種によっては、関わる増殖シグナル伝達経路が異なることが知られており、例えば、肝細胞がん(HCC)においては、Wntシグナル経路を刺激して細胞増殖する。グリピカンファミリーに共通する特徴として、細胞外領域にシステインが16個と豊富に含んでおり、複数の分子内ジスルフィド結合を形成して立体構造形成の安定化に寄与していると考えられている。細胞膜表面のGPC3は、フーリンコンバターゼ(furin convertase)により358番目のアルギニン(R)と、359番目のセリン(S)の間(R358/S359)で切断される可能性があることが報告されている。しかし、GPC3のアミノ(N)末端サブユニットは、分子内ジスルフィド結合により架橋されているため、フーリンコンバターゼによってN末端側サブユニット及びC末端側サブユニットの2つに切断された場合であっても、両者は解離することなく、全長型の構造を保持する可能性も考えられ、可溶性GPC3の構造については議論が分かれている。このように、細胞膜に局在するGPC3の立体構造は、GPC3のアイソフォームの構造も含めて、不明な点が多い。
【0004】
細胞膜におけるGPC3の構造は複雑であるため、GPC3に対する抗体を作製する上で、もっとも単純な構造領域をエピトープにすることが望ましいと考えられていた。既存の抗GPC3抗体の代表として、バイオモザイク社から販売されているモノクローナル抗体1G12がある。この抗体はGPC3の複雑な構造や局在を回避してデザインされた抗原(GPC3のC末側70残基のポリペプチド)をBalb/cマウスに免疫し、ハイブリドーマを作製し、当該抗原を用いたスクリーニングにより得られた抗体である。また国内製薬メーカーが開発した抗体GC33及びGC199も、同様のコンセプトを基にして樹立したモノクローナル抗体であり、GPC3のC末端側部分断片を抗原として得られた抗体である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4011100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、既存の抗体(例えば、GC33、GC199)とは異なるエピトープを認識し、かつ一本鎖抗体の状態でも細胞膜に局在するGPC3に特異的に結合できる抗GPC3抗体;かかる抗GPC3一本鎖抗体を含むCAR;かかるCARを発現する免疫担当細胞;上記抗GPC3抗体遺伝子又はCAR遺伝子;かかる抗GPC3抗体遺伝子又はCAR遺伝子を含むベクター;かかるベクターが導入された宿主細胞;GPC3を特異的に検出する方法;及びGPC3を特異的に検出するためのキット;を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、ハイブリドーマを樹立する従来のモノクローナル抗体作製法とは異なる手法であるファージディスプレイ法にて新規抗GPC3抗体を作製した。具体的には、ヒトGPC3の全長を免疫したマウス由来のB細胞を用いて、抗体遺伝子の免疫ライブラリーを合成し、一本鎖抗体(single chain Fv;scFv)ライブラリーに遺伝子を再構成してファージディスプレイに組み込み、ファージ表面に発現させ、組換え全長ヒトGPC3及び当該GPC3発現細胞株と、必要に応じて、さらにコンペティターとして上記既存抗体のエピトープであるGPC3のC末端側ポリペプチドとを用いたバイオパンニングを行い、抗GPC3抗体を作製した。また、作製した抗GPC3抗体は、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:CAR)を発現するT細胞(以下、「CAR-T細胞」ということがある)を用いたがん免疫療法に有用であることを確認した。本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるヒトGPC3(Glypican-3)由来のポリペプチドに特異的に結合する抗体であって、
(1-1)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(2-1)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号14に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号16に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(3-1)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号23に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、配列番号24に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号25に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号26に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(4-1)配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号34に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号35に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号36に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(5-1)配列番号41に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号43に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号44に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(6-1)配列番号51に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号52に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号53に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号55に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号56に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(7-1)配列番号61に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号62に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号63に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号64に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号65に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号66に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(8-1)配列番号71に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号72に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号73に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号74に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号75に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(9-1)配列番号81に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号82に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号83に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号84に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号85に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号86に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;
(10-1)配列番号91に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号92に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号93に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号94に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号95に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号96に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含むか;或いは
(11-1)配列番号101に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号102に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、及び配列番号103に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3と、
配列番号104に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号105に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号106に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3とを含む;
前記抗体(以下、「本件抗体」ということがある)。
〔2〕(1-2)配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(2-2)配列番号17に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(3-2)配列番号27に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(4-2)配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号38に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(5-2)配列番号47に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号48に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(6-2)配列番号57に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号58に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(7-2)配列番号67に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号68に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(8-2)配列番号77に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号78に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(9-2)配列番号87に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号88に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;
(10-2)配列番号97に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号98に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含むか;或いは
(11-2)配列番号107に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号108に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む;
上記〔1〕に記載の抗体。
〔3〕一本鎖抗体である上記〔1〕又は〔2〕のいずれかに記載の抗体。
〔4〕一本鎖抗体が、
(1-3)配列番号165に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(2-3)配列番号166に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(3-3)配列番号167に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(4-3)配列番号168に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(5-3)配列番号169に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(6-3)配列番号170に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(7-3)配列番号171に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(8-3)配列番号172に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(9-3)配列番号173に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(10-3)配列番号174に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;或いは
(11-3)配列番号175に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;
上記〔3〕に記載の抗体。
〔5〕一本鎖抗体が、
(1-3’-1)配列番号178に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(1-3’-2)配列番号179に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(1-3’-3)配列番号180に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(2-3’-1)配列番号181に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(2-3’-2)配列番号182に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;
(2-3’-3)配列番号183に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;或いは
(2-3’-4)配列番号184に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;
上記〔3〕に記載の抗体。
〔6〕(1-4)配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(2-4)配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(3-4)配列番号29に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号30に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(4-4)配列番号39に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号40に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(5-4)配列番号49に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号50に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(6-4)配列番号59に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号60に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(7-4)配列番号69に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号70に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(8-4)配列番号79に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号80に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(9-4)配列番号89に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号90に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;
(10-4)配列番号99に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号100に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含むか;或いは
(11-4)配列番号109に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号110に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む;
上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗体。
〔7〕上記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の抗体(以下、「本件一本鎖抗体」ということがある)と、本件一本鎖抗体のカルボキシル末端に融合した細胞膜貫通領域と、前記細胞膜貫通領域のカルボキシル末端に融合した免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域とを含むCAR(以下、「本件CAR」ということがある)。
〔8〕配列番号185~187のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む上記〔7〕に記載のCAR。
〔9〕上記〔7〕又は〔8〕に記載のCARを発現する免疫担当細胞(以下、「本件免疫担当細胞」ということがある)。
〔10〕さらに、インターロイキン7(IL―7)、及びケモカインリガンド19(CCL19)を発現する上記〔9〕に記載の免疫担当細胞。
〔11〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の抗体をコードする抗体遺伝子(以下、「本件抗体遺伝子」ということがある)、又は上記〔7〕若しくは〔8〕に記載のCARをコードするCAR遺伝子(以下、「本件CAR遺伝子」ということがある)。
〔12〕上記〔1〕~〔4〕及び〔6〕のいずれかに記載の抗体をコードする抗体遺伝子。
〔13〕プロモーターと、該プロモーターの下流に作動可能に連結されている上記〔11〕に記載の抗体遺伝子、又は上記〔11〕に記載のCARをコードするCAR遺伝子とを含むベクター(以下、「本件ベクター」ということがある)。
〔14〕プロモーターと、該プロモーターの下流に作動可能に連結されている上記〔12〕に記載の抗体遺伝子とを含むベクター。
〔15〕上記〔13〕又は〔14〕に記載のベクターが導入されている宿主細胞(以下、「本件宿主細胞」ということがある)。
〔16〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の抗体を用いて、GPC3(Glypican-3)を検出する工程を備えたGPC3の検出方法(以下、「本件検出方法」ということがある)。
〔17〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の抗体、又はその標識物を含む、GPC3(Glypican-3)の検出用キット(以下、「本件検出用キット」ということがある)。
【0009】
本発明の実施の他の形態として、GPC3の検出に使用するための本件抗体や、配列番号157で示されるアミノ酸配列からなる全長ヒトGPC3を、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット)に免疫する工程と、前記免疫非ヒト動物由来B細胞の全RNAから逆転写反応によりcDNAを合成し、抗体遺伝子を増幅して抗体遺伝子ライブラリーを作製する工程と、前記抗体遺伝子ライブラリーからscFvファージライブラリーを構築し、大腸菌に感染させてscFvを発現させたものに対して、前記全長ヒトGPC3や当該GPC3発現細胞株、必要に応じて、さらにコンペティターとしてGPC3のC末端側ポリペプチド(配列番号156に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来GPC3ポリペプチド)を用いたバイオパンニングを行う工程とを備えた本件抗体の製造方法を挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本件抗体は、IgG型のみならず、scFv型の状態であっても、細胞膜に局在するGPC3に特異的に結合する抗体である。また、CARにおけるscFvとして本件抗体を用いたCAR-T細胞は、優れた細胞傷害活性及びIFN-γ産生能を有する。このため、本件抗体は、がん免疫療法に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】5種類のシリーズ(A~Eシリーズ)からなるバイオパンニングの各ラウンド(工程)を示す図である。Aシリーズは、磁性ビーズに固定化した組換えGPC3をベイトにして3ラウンドバイオパンニングを行い、4~5ラウンドにGPC3発現細胞株をベイトとしてバイオパンニングを行うものである(5ラウンド目は1413#3のみ実施)。なお、1~4ラウンドでは既存の抗GPC3抗体(GC33及びGC199)を競合抗体として添加した。Bシリーズは、Aシリーズのラウンド2の後、競合抗体存在下でGPC3発現細胞をベイトにしてバイオパンニングを行うものである。Eシリーズは、Aシリーズのラウンド3の後、競合抗体なしの条件で、磁性ビーズに固定化した組換えGPC3をベイトにしてバイオパンニングを行うものである。Cシリーズは、GPC3発現細胞株をベイトとして2ラウンド、及び磁性ビーズに固定化した組換えGPC3をベイトとして2ラウンドの計4ラウンドを競合抗体非存在下で行った。Dシリーズは、競合抗体非存在下でAシリーズと同じバイオパンニングを行うものである。
図2】18種類の抗GPC3 scFvクローン(TF1413-02d023、02d028、02d030、02d039、02e003、02e004、02e014、02e030、02e040、03e001、03e004、03e005、03e015、03e016、03e019、03e027、03e034、及び03e045)及び既存の抗GPC3抗体(GC33及びGC199)と、3種類の細胞株(GPC3N末断片発現細胞株、GPC3C末断片発現細胞株、及びGPC3[全長]発現細胞株)とを用いて、フローサイトメトリー(FCM)を行った結果を示す図である。図中の数値は、FCMにより、GPC3を発現しない細胞株(SK-Hep-1細胞株)の蛍光強度を1としたときの相対値として示す。
図3】11種類のscFvクローン(TF1413-02d028、02d039、02e004、02e014、02e030、02e040、03e001、03e004、03e005、03e015、及び03e034)から作製したIgG抗体及び既存の抗GPC3抗体(GC33及びGC199)と、3種類の細胞株(GPC3N末断片発現細胞株、GPC3C末断片発現細胞株、及びGPC3[全長]発現細胞株)とを用いて、FCMを行った結果を示す図である。
図4】3種類の方法(EDTA、トリプシン、及び「EDTA+コラゲナーゼ」)で処理したGPC3発現細胞株と、3種類の抗体の組合せ(APCで標識した抗マウスIgG抗体[以下、「APC抗マウスIgG抗体」ということがある]、及びAPC抗マウスIgG抗体とscFvクローン[TF1413-02d028]抗体との組合せ)を用いてFACS(fluorescenceactivated cellsorting)した結果を示す図である。
図5】5種類のscFvクローン(TF1413-02d028、TF1413-02d039、TF1413-02e014、TF1413-02e030、及びTF1413-03e005)に由来するGPC3CAR-T細胞(GPC3を認識するscFvのCARを発現するT細胞)について、Sk-HEP-1GPC3細胞株に対する細胞傷害活性を解析した結果を示す図である。各グラフにおける右側のピークが、CD45陽性細胞(GPC3CAR-T細胞)を示し、左側のピークが、CD45陰性細胞(残存がん細胞[Sk-HEP-1GPC3細胞])を示す。各グラフの縦軸は細胞数を示す。各グラフにおける数値は、全細胞数(CD45陽性細胞及びCD45陰性細胞)に対するCD45陽性細胞の割合(%)を示す。コントロールとして、GPC3CARを発現しないT細胞(図中の「Non infection」)を用いた。
図6図5におけるCD45陰性細胞の割合(図6A)及びCD45陰性細胞数(図6B)を示すグラフである。ペアーの棒グラフのうち、左側の棒グラフが「mock」(Sk-HEP-1mock細胞株)を示し、右側の棒グラフが「GPC3」(Sk-HEP-1GPC3細胞株)を示す。
図7】5種類のscFvクローン(TF1413-02d028、TF1413-02d039、TF1413-02e014、TF1413-02e030、及びTF1413-03e005)に由来するGPC3CAR-T細胞について、Sk-HEP-1GPC3細胞株に対するIFN-γ産生能を解析した結果を示す図である。コントロールとして、GPC3CARを発現しないT細胞(図中の「Non infection」)を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本件抗体は、上記(1-1)~(11-1)のいずれかの重(H)鎖及び軽(L)鎖のCDR1~3を含み、かつ、配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来GPC3ポリペプチド(配列番号157に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来全長GPC3の32~471番目のアミノ酸残基[エクソン1~7]からなるアミノ[N]末端側ポリペプチド)の少なくとも一部(通常3~30アミノ酸残基の範囲内、好ましくは4~20アミノ酸残基、より好ましくは5~15アミノ酸残基)をエピトープとして特異的に結合する抗体であり、IgG型のみならず、scFv型の状態で、細胞膜に局在するGPC3に特異的に結合する抗体であり、通常、上記(1-1)~(11-1)のいずれかのH鎖CDR1~3を含むH鎖可変領域と、上記(1-1)~(11-1)のいずれかのL鎖CDR1~3を含むL鎖可変領域とが含まれる。ここで「特異的に結合する」とは、抗原-抗体間の特異性の高い認識機構によって、配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識し結合する抗体を意味する。したがって、本件抗体は、配列番号156に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来GPC3ポリペプチド(配列番号157に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来全長GPC3の472~580番目のアミノ酸残基[エクソン8~9]からなるカルボキシル[C]末端側ポリペプチド)に対して特異的に結合するものではない。
【0013】
本件抗体の由来、種類、クラス、形態等は特に制限されず、例えば本件抗体には、ヒト由来の抗体;マウス、ラット等の非ヒト動物由来の抗体;ポリクローナル抗体、オリゴクローナル抗体(数種~数十種の抗体の混合物)、モノクローナル抗体;抗体の一部領域(例えば、定常領域)を異なる生物種由来の領域に置換したキメラ抗体又はヒト化抗体、モノクローナル抗体をペプシンで消化して得られるF(ab′)抗体フラグメント、F(ab′)抗体フラグメントを還元して得られるFab′抗体フラグメント、モノクローナル抗体をパパインで消化して得られるFab等の抗体フラグメント、抗体重(H)鎖可変領域と抗体軽(H)鎖可変領域とを、アミノ酸架橋によって連結させたscFv等の組換え抗体;などが含まれる。本件抗体をCARとして用いる場合、scFvが好ましい。
【0014】
本件抗体は、分離されているものが好ましい。ここで「分離されている」とは、人為的操作によって、抗体を、本来存在する環境から取り出したり、抗体が本来存在する環境とは別の環境下で発現させる等して、抗体が本来存在している状態とは異なった状態で存在していることを意味する。すなわち、「分離されている抗体」には、ある個体由来の抗体であって、かつ外的操作(人為的操作)が施されずに、当該個体の体内中又は体内由来の組織若しくは体液(血液、血漿、血清等)中に含まれる状態の抗体は含まれない。また、本件抗体は、人為的操作によって作製した抗体(例えば、上記組換え抗体)が好ましい。かかる「人為的操作によって作製した細胞由来の抗体や当該細胞から産生される抗体」には、人為的操作の施されていない抗体、例えば、天然に存在するB細胞から産生される抗体は含まれない。
【0015】
本件抗体は、通常、H鎖及びL鎖のCDR1~3の各領域のN末端及びC末端には、フレームワーク領域(FR)が連結されている。かかるFRのうちH鎖FRとしては、H鎖CDR1のN末端に連結されているH鎖FR1や、H鎖CDR1のC末端(H鎖CDR2のN末端)に連結されているH鎖FR2や、H鎖CDR2のC末端(H鎖CDR3のN末端)に連結されているH鎖FR3や、H鎖CDR3のC末端に連結されているH鎖FR4を挙げることができる。また、上記FRのうちL鎖FRとしては、L鎖CDR1のN末端に連結されているL鎖FR1や、L鎖CDR1のC末端(L鎖CDR2のN末端)に連結されているL鎖FR2や、L鎖CDR2のC末端(L鎖CDR3のN末端)に連結されているL鎖FR3や、L鎖CDR3のC末端に連結されているL鎖FR4を挙げることができる。
【0016】
上記H鎖FR1としては、具体的には、(1-HFR1)配列番号7で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-HFR1)配列番号17で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-HFR1)配列番号27で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-HFR1)配列番号37で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-HFR1)配列番号47で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-HFR1)配列番号57で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-HFR1)配列番号67で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-HFR1)配列番号77で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-HFR1)配列番号87で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-HFR1)配列番号97で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-HFR1)配列番号107で示されるアミノ酸配列の1~30番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0017】
上記H鎖FR2としては、具体的には、(1-HFR2)配列番号7で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-HFR2)配列番号17で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-HFR2)配列番号27で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-HFR2)配列番号37で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-HFR2)配列番号47で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-HFR2)配列番号57で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-HFR2)配列番号67で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-HFR2)配列番号77で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-HFR2)配列番号87で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-HFR2)配列番号97で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-HFR2)配列番号107で示されるアミノ酸配列の36~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0018】
上記H鎖FR3としては、具体的には、(1-HFR3)配列番号7で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-HFR3)配列番号17で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-HFR3)配列番号27で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-HFR3)配列番号37で示されるアミノ酸配列の67~99番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-HFR3)配列番号47で示されるアミノ酸配列の67~99番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-HFR3)配列番号57で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-HFR3)配列番号67で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-HFR3)配列番号77で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-HFR3)配列番号87で示されるアミノ酸配列の67~99番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-HFR3)配列番号97で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-HFR3)配列番号107で示されるアミノ酸配列の67~98番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0019】
上記H鎖FR4としては、具体的には、(1-HFR4)配列番号7で示されるアミノ酸配列の109~118番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-HFR4)配列番号17で示されるアミノ酸配列の108~117番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-HFR4)配列番号27で示されるアミノ酸配列の106~115番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-HFR4)配列番号37で示されるアミノ酸配列の111~120番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-HFR4)配列番号47で示されるアミノ酸配列の108~117番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-HFR4)配列番号57で示されるアミノ酸配列の107~116番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-HFR4)配列番号67で示されるアミノ酸配列の106~115番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-HFR4)配列番号77で示されるアミノ酸配列の106~115番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-HFR4)配列番号87で示されるアミノ酸配列の111~120番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-HFR4)配列番号97で示されるアミノ酸配列の110~119番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-HFR4)配列番号107で示されるアミノ酸配列の109~118番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0020】
上記L鎖FR1としては、具体的には、(1-LFR1)配列番号8で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-LFR1)配列番号18で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-LFR1)配列番号28で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-LFR1)配列番号38で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-LFR1)配列番号48で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-LFR1)配列番号58で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-LFR1)配列番号68で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-LFR1)配列番号78で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-LFR1)配列番号88で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-LFR1)配列番号98で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-LFR1)配列番号108で示されるアミノ酸配列の1~23番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0021】
上記L鎖FR2としては、具体的には、(1-LFR2)配列番号8で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-LFR2)配列番号18で示されるアミノ酸配列の40~54番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-LFR2)配列番号28で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-LFR2)配列番号38で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-LFR2)配列番号48で示されるアミノ酸配列の41~55番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-LFR2)配列番号58で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-LFR2)配列番号68で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-LFR2)配列番号78で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-LFR2)配列番号88で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-LFR2)配列番号98で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-LFR2)配列番号108で示されるアミノ酸配列の35~49番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0022】
上記L鎖FR3としては、具体的には、(1-LFR3)配列番号8で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-LFR3)配列番号18で示されるアミノ酸配列の62~93番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-LFR3)配列番号28で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-LFR3)配列番号38で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-LFR3)配列番号48で示されるアミノ酸配列の63~94番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-LFR3)配列番号58で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-LFR3)配列番号68で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-LFR3)配列番号78で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-LFR3)配列番号88で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-LFR3)配列番号98で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-LFR3)配列番号108で示されるアミノ酸配列の57~88番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0023】
上記L鎖FR4としては、具体的には、(1-LFR4)配列番号8で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2-LFR4)配列番号18で示されるアミノ酸配列の103~113番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(3-LFR4)配列番号28で示されるアミノ酸配列の97~107番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(4-LFR4)配列番号38で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(5-LFR4)配列番号48で示されるアミノ酸配列の104~114番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(6-LFR4)配列番号58で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(7-LFR4)配列番号68で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(8-LFR4)配列番号78で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(9-LFR4)配列番号88で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;(10-LFR4)配列番号98で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;或いは(11-LFR4)配列番号108で示されるアミノ酸配列の98~108番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド、又は当該ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド;を挙げることができる。
【0024】
本件抗体のFRとしては、既知のヒト抗体のFRが好ましい。かかる「既知のヒト抗体のFR」としては、例えば、GenBank等の公知の配列データベースに登録されているヒト抗体のFR、ヒト抗体の各サブグループに由来する共通配列(Human Most Homologous Consensus Sequence;Kabat,E.A.らのSequences of Proteins of Immunological Interest,USDept. Health andHuman Services, 1991)から選択されたFR等を挙げることができる。
【0025】
本件抗体におけるH鎖CDR1は、通常、kabatによる番号付け(文献「kabat, E.A. et al., (1991) NIH Publication No. 91-3242,sequencesofproteins of immunological interest」参照)でH31~35の位置に存在する。また、本件抗体におけるH鎖CDR2は、通常、kabatによる番号付けでH50~52、H52A、及びH53~65の位置に存在する。また、本件抗体におけるH鎖CDR3は、通常、kabatによる番号付けでH95~100、H100A、H100B、H101、及びH102の位置に存在する。また、本件抗体におけるL鎖CDR1は、通常、kabatによる番号付けでL24~34の位置に存在する。また、本件抗体におけるL鎖CDR2は、通常、kabatによる番号付けでL50~56の位置に存在する。また、本件抗体におけるL鎖CDR3は、通常、kabatによる番号付けでL89~97の位置に存在する。
【0026】
本件抗体のうち、上記(1-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(1-2)のH鎖及びL鎖の可変(V)領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(1-3)の一本鎖抗体;や、上記(1-3’-1)の一本鎖抗体、上記(1-3’-2)の一本鎖抗体、及び上記(1-3’-3)の一本鎖抗体;や、上記(1-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(2-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(2-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(2-3)の一本鎖抗体;や、上記(2-3’-1)の一本鎖抗体、上記(2-3’-2)の一本鎖抗体、上記(2-3’-3)の一本鎖抗体、及び上記(2-3’-4)の一本鎖抗体;や、上記(2-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(3-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(3-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(3-3)の一本鎖抗体;や、上記(3-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(4-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(4-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(4-3)の一本鎖抗体;や、上記(4-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(5-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(5-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(5-3)の一本鎖抗体;や、上記(5-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(6-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(6-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(6-3)の一本鎖抗体;や、上記(6-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(7-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(7-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(7-3)の一本鎖抗体;や、上記(7-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(8-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(8-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(8-3)の一本鎖抗体;や、上記(8-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(9-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(9-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(9-3)の一本鎖抗体;や、上記(9-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(10-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(10-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(10-3)の一本鎖抗体;や、上記(10-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。また、上記(11-1)のH鎖及びL鎖のCDR1~3を含む抗体としては、上記(11-2)のH鎖及びL鎖のV領域を含むものを挙げることができ、具体的には、上記(11-3)の一本鎖抗体;や、上記(11-4)のH鎖及びL鎖を含む抗体;を挙げることができる。なお、一本鎖抗体における重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、通常ペプチドリンカーを介して結合している。
【0027】
本件CARとしては、本件一本鎖抗体と、本件一本鎖抗体のC末端に融合した細胞膜貫通領域と、かかる細胞膜貫通領域のC末端に融合した免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域とを含むものであればよく、ここで、本件一本鎖抗体と細胞膜貫通領域との間や、細胞膜貫通領域と免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域との間は、ペプチドリンカー又はIgG4ヒンジ領域を介して融合してもよい。
【0028】
本件抗体におけるペプチドリンカーの長さとしては、例えば、1~100アミノ酸残基、好ましくは10~50アミノ酸残基を挙げることができる。また、本件抗体におけるペプチドリンカーとしては、具体的には、1~4つのグリシンと、1つのセリンとからなるアミノ酸配列が3つ連続に連なったものを挙げることができる。
【0029】
上記細胞膜貫通領域としては、細胞膜を貫通することができるペプチドであればよく、例えば、CD8、T細胞受容体のα、β鎖、CD3ζ、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、EGFR(epidermal growth factor receptor)、又はGITR由来の細胞膜貫通領域を挙げることができ、具体的には、配列番号185に示されるアミノ酸配列の1~83番目のアミノ酸残基からなるヒトCD8細胞膜貫通領域を挙げることができる。また、上記細胞膜貫通領域としては、細胞膜を貫通することができるペプチドのC末端側の1~10アミノ酸残基、好ましくは6~7アミノ酸残基が削除されたものであってもよく、例えば、配列番号186に示されるアミノ酸配列の1~77番目のアミノ酸残基からなる、前記ヒトCD8細胞膜貫通領域の改変体1や、配列番号187に示されるアミノ酸配列の1~76番目のアミノ酸残基からなる、前記ヒトCD8細胞膜貫通領域の改変体2を挙げることができる。
【0030】
上記免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域としては、本件一本鎖抗体がヒトGPC3に結合した際に、免疫担当細胞内にシグナル伝達することが可能な領域であればよく、CD28、4-1BB(CD137)、GITR、CD27,OX40、HVEM、CD3ζ、Fc Receptor-associated γchainの細胞内領域のポリペプチドから選択される少なくとも1種又は2種以上を含むものが好ましく、CD28、4-1BB、及びCD3ζの細胞内領域のポリペプチド3種を含むものがより好ましい。かかるCD28の細胞内領域のポリペプチドとしては、具体的には、配列番号185に示されるアミノ酸配列の85~124番目のアミノ酸残基からなるヒトCD28の細胞内領域のポリペプチドを挙げることができる。また、上記「4-1BBの細胞内領域のポリペプチド」としては、具体的には、配列番号185に示されるアミノ酸配列の125~170番目のアミノ酸残基からなるヒト4-1BBの細胞内領域のポリペプチドを挙げることができる。また、上記CD3ζの細胞内領域のポリペプチドとしては、具体的には、配列番号185に示されるアミノ酸配列の172~283番目のアミノ酸残基からなるヒトCD3ζの細胞内領域のポリペプチドを挙げることができる。
【0031】
なお、配列番号185に示されるアミノ酸配列の84番目のアルギニン(Arg)、配列番号186に示されるアミノ酸配列の78番目のアルギニン、配列番号187に示されるアミノ酸配列の77番目のアルギニンは、上記ヒトCD8由来の細胞膜貫通領域のポリぺプチドと上記ヒトCD28の細胞内領域のポリペプチドの共通配列である。また、配列番号185に示されるアミノ酸配列の171番目のロイシン(Leu)、配列番号186に示されるアミノ酸配列の165番目のロイシン、配列番号187に示されるアミノ酸配列の164番目のロイシンは、上記ヒト4-1BBの細胞内領域のポリペプチドと上記ヒトCD3ζの細胞内領域のポリペプチドの共通配列である。
【0032】
本明細書において、「免疫担当細胞」とは、生体において免疫機能を担う細胞を意味する。免疫担当細胞としては、例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、B細胞等のリンパ球系細胞や、単球、マクロファージ、樹状細胞等の抗原提示細胞や、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞等の顆粒球を挙げることができる。具体的には、ヒト、イヌ、ネコ、ブタ、マウス等の哺乳動物由来のT細胞、好ましくはヒト由来のT細胞を好適に挙げることができる。また、T細胞は、血液、骨髄液等の体液や、脾臓、胸腺、リンパ節等の組織、若しくは原発腫瘍、転移性腫瘍、がん性腹水等のがん組織に浸潤する免疫担当細胞から単離、精製して得ることができ、さらに、ES細胞やiPS細胞から作製されたものを利用してもよい。かかるT細胞としては、アルファ・ベータT細胞、ガンマ・デルタT細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、腫瘍浸潤T細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、NKT細胞を挙げることができる。なお、免疫担当細胞の由来と投与対象とは同じであっても異なってもよい。さらに、投与対処がヒトの場合において、免疫担当細胞としては、投与対象としての患者本人から採取した自家細胞を用いても、他人から採取した他家細胞を用いてもよい。すなわち、ドナーとレシピエントは一致しても不一致でもよいが、一致することが好ましい。
【0033】
上記投与対象としては、哺乳動物又は哺乳動物細胞を好適に挙げることができ、かかる哺乳動物の中でも、ヒト、マウス、イヌ、ラット、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、サル、チンパンジーをより好適に挙げることができ、ヒトを特に好適に挙げることができる。
【0034】
本件CARは、好ましくは、がん治療において、がん患者から採取された免疫担当細胞の細胞表面上にエクスビボで発現させるために用いられる。免疫担当細胞としてT細胞を用いる場合、本件CARにおける細胞膜貫通領域と、かかる細胞膜貫通領域のC末端に融合した免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域とからなるペプチドとしては、具体的には、配列番号185~187のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。また、本件CARとしては、具体的に、上記(1-3)の一本鎖抗体、上記(2-3)の一本鎖抗体、上記(1-3’-1)の一本鎖抗体、上記(1-3’-2)の一本鎖抗体、上記(1-3’-3)の一本鎖抗体、上記(2-3’-1)の一本鎖抗体、上記(2-3’-2)の一本鎖抗体、上記(2-3’-3)の一本鎖抗体、及び上記(2-3’-4)の一本鎖抗体からなる群から選択される一本鎖抗体と、かかる一本鎖抗体のC末端に融合した、配列番号185~187のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものを挙げることができる。
【0035】
すなわち、上記本件CARとしては、
上記(1-3)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-1)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-1)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-1)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-2)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-2)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-2)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-3)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-3)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(1-3’-3)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-1)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-1)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-1)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-2)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-2)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-2)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-3)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-3)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-3)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-4)の一本鎖抗体と、配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-4)の一本鎖抗体と、配列番号186に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むものや、
上記(2-3’-4)の一本鎖抗体と、配列番号187に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含むもの、を挙げることができる。
【0036】
本件免疫担当細胞としては、CARを発現する免疫担当細胞であればよく、CARは通常天然には存在しないため、内在性ではなく、外来性のCARを発現する免疫担当細胞である。本件免疫担当細胞としては、さらに、IL―7及び/又はCCL19を発現するものが好ましい。免疫担当細胞がIL―7及び/又はCCL19の発現が認められない細胞、例えば、T細胞である場合や、免疫担当細胞がT細胞以外であってIL―7及び/又はCCL19の発現が低い細胞の場合には、本件免疫担当細胞としては、外来性のIL―7及び/又はCCL19を発現するものが好ましい。
【0037】
本件免疫担当細胞は、本件CAR遺伝子を含む本件ベクターや、IL―7及び/又はCCL19遺伝子を含むベクターを、免疫担当細胞へ導入することにより作製することができる。導入する方法としては、哺乳動物細胞にDNAを導入する方法であればよく、例えば、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133(1990))、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987))、ウイルス感染法等の方法を挙げることができる。かかるウイルス感染法としては、CAR発現ベクター(国際公開2016/056228号パンフレット)と、パッケージングプラスミドとをGP2-293細胞(タカラバイオ社製)、Plat-GP細胞(コスモ・バイオ社製)、PG13細胞(ATCC CRL-10686)、PA317細胞(ATCC CRL-9078)などのパッケージング細胞にトランスフェクションして組換えウイルスを作製し、かかる組換えウイルスをT細胞に感染させる方法を挙げることができる。
【0038】
また、本件免疫担当細胞は、本件CARをコードするヌクレオチドや、IL―7及び/又はCCL19をコードするヌクレオチドを、公知の遺伝子編集技術を用いて、適切なプロポーターの制御下で発現可能なように、細胞のゲノムに組み込むことによって製造してもよい。公知の遺伝子編集術としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN(転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ)、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)-Casシステム等のエンドヌクレアーゼを用いる技術が挙げられる。
【0039】
本件免疫担当細胞は、他の抗がん剤と併用して用いることができる。他の抗がん剤としては、シクロホスファミド、ベンダムスチン、イオスファミド、ダカルバジン等のアルキル化薬、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、メソトレキセート、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、エノシタビン等の代謝拮抗薬、リツキシマブ、セツキシマブ、トラスツズマブ等の分子標的薬、イマチニブ、ゲフェチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、トラメチニブ等のキナーゼ阻害剤、ボルテゾミブ等のプロテアソーム阻害剤、シクロスポリン、タクロリムス等のカルシニューリン阻害薬、イダルビジン、ドキソルビシンマイトマイシンC等の抗がん性抗生物質、イリノテカン、エトポシド等の植物アルカロイド、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン等のプラチナ製剤、タモキシフェン、ビカルダミド等のホルモン療法薬、インターフェロン、ニボルマブ、ペンブロリズマブ等の免疫制御薬を挙げることができる。
【0040】
上記「本件免疫担当細胞と他の抗がん剤と併用して用いる」方法としては、他の抗がん剤を用いて処理し、その後本件免疫担当細胞を用いる方法や、本件免疫担当細胞と他の抗がん剤を同時に用いる方法や、本件免疫担当細胞を用いて処理し、その後他の抗がん剤を用いる方法を挙げることができる。また、本件免疫担当細胞と他の抗がん剤と併用した場合には、がんの治療効果がより向上するとともに、それぞれの投与回数又は投与量を減らすことで、それぞれによる副作用を低減させることが可能となる。
【0041】
本件抗体遺伝子としては、本件抗体をコードする抗体遺伝子(ヌクレオチド)であれば特に制限されず、例えば、
(1-1D)配列番号111に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(1-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号111に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(1-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号111に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~324番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(1-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号112に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(1-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号112に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(1-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号112に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(1-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(2-1D)配列番号115に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(2-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号115に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(2-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号115に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~321番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(2-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号116に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~117番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(2-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号116に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の163~183番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(2-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号116に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の280~306番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(2-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(3-1D)配列番号119に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(3-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号119に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(3-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号119に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~315番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(3-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号120に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(3-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号120に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(3-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号120に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~288番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(3-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(4-1D)配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(4-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(4-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の298~330番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(4-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号124に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(4-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号124に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(4-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号124に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(4-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(5-1D)配列番号127に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(5-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号127に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(5-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号127に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の298~321番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(5-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号128に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~120番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(5-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号128に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の166~186番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(5-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号128に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の283~309番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(5-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(6-1D)配列番号131に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(6-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号131に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(6-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号131に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~318番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(6-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号132に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(6-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号132に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(6-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号132に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(6-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(7-1D)配列番号135に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(7-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号135に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(7-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号135に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~315番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(7-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号136に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(7-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号136に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(7-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号136に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(7-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(8-1D)配列番号139に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(8-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号139に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(8-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号139に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~315番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(8-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、配列番号140に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(8-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号140に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(8-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号140に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(8-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(9-1D)配列番号143に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(9-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号143に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(9-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号143に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の298~330番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(9-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号144に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(9-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号144に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(9-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号144に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(9-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(10-1D)配列番号147に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(10-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号147に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(10-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号147に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~327番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(10-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;と、
配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の70~102番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR1遺伝子(上記(10-1)のL鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の148~168番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR2遺伝子(上記(10-1)のL鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるL鎖V領域の265~291番目のヌクレオチド残基からなるL鎖CDR3遺伝子(上記(10-1)のL鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該L鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものや、
(11-1D)配列番号151に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の91~105番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR1遺伝子(上記(11-1)のH鎖CDR1をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR1遺伝子の縮重コドン改変体;配列番号151に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の148~198番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR2遺伝子(上記(11-1)のH鎖CDR2をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR2遺伝子の縮重コドン改変体;及び配列番号151に示されるヌクレオチド配列からなるH鎖V領域の295~324番目のヌクレオチド残基からなるH鎖CDR3遺伝子(上記(11-1)のH鎖CDR3をコードする遺伝子)、又は当該H鎖CDR3遺伝子の縮重コドン改変体;とを含むものを挙げることができる。
【0042】
さらに本件抗体遺伝子としては、
(1-2D)配列番号111に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号112に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(2-2D)配列番号115に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号17に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号116に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(3-2D)配列番号119に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号27に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号120に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(4-2D)配列番号123に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号37に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号124に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号38に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(5-2D)配列番号127に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号47に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号128に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号48に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(6-2D)配列番号131に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号57に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号132に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号58に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(7-2D)配列番号135に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号67に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号136に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号68に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(8-2D)配列番号139に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号77に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号140に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号78に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(9-2D)配列番号143に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号87に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号144に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号88に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(10-2D)配列番号147に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号97に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号148に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号98に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものや、
(11-2D)配列番号151に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖可変領域遺伝子(配列番号107に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域をコードする遺伝子)と、配列番号152に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖可変領域遺伝子(配列番号108に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域をコードする遺伝子)とを含むものを挙げることができる。
【0043】
特に本件抗体遺伝子としては、
(1-4D)配列番号113に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号114に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(2-4D)配列番号117に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号118に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(3-4D)配列番号121に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号29に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号122に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号30に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(4-4D)配列番号125に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号39に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号126に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号40に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(5-4D)配列番号129に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号49に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号130に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号50に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(6-4D)配列番号133に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号59に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号134に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号60に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(7-4D)配列番号137に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号69に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号138に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号70に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(8-4D)配列番号141に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号79に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号142に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号80に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(9-4D)配列番号145に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号89に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号146に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号90に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(10-4D)配列番号149に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号99に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号150に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号100に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものや、
(11-4D)配列番号153に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるH鎖遺伝子(配列番号109に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるH鎖をコードする遺伝子)と、配列番号154に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列からなるL鎖遺伝子(配列番号110に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるL鎖をコードする遺伝子)とを含むものを具体的に挙げることができる。
【0044】
本件CAR遺伝子としては、本件CARをコードする遺伝子(ヌクレオチド)であれば特に制限されず、例えば、
(1-3D)上記(1-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(2-3D)上記(2-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(3-3D)上記(3-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(4-3D)上記(4-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(5-3D)上記(5-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(6-3D)上記(6-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(7-3D)上記(7-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(8-3D)上記(8-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(9-3D)上記(9-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(10-3D)上記(10-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(11-3D)上記(11-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(1-3’-1D)上記(1-3’-1)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(1-3’-2D)上記(1-3’-2)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(1-3’-3D)上記(1-3’-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(2-3’-1D)上記(2-3’-1)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(2-3’-2D)上記(2-3’-2)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(2-3’-3D)上記(2-3’-3)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものや、
(2-3’-4D)上記(2-3’-4)の一本鎖抗体をコードする遺伝子、又は当該遺伝子の縮重コドン改変体を含むものを具体的に挙げることができる。
【0045】
本明細書において、「少なくとも80%以上の同一性」とは、同一性が80%以上であることを意味し、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、特により好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の同一性を意味する。
【0046】
本明細書において、用語「同一性」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列近似性の程度(これは、クエリー配列と他の好ましくは同一の型の配列(核酸若しくはタンパク質配列)とのマッチングにより決定される)を意味する。「同一性」を計算及び決定する好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.1990,215:403-410;Altschul et al.,Nucleic Acids Res.1997,25:3389-3402;Devereux et al.,Nucleic Acid Res.1984,12:387)、並びにBLASTN 2.0(Gish W.,http://blast.wustl.edu,1996-2002)、並びにFASTA(Pearson及びLipman,Proc. Natl.Acad.Sci.USA 1988,85:2444-2448)、並びに最も長く重複した一対のコンティグを決定及びアライメントするGCG GelMerge(Wibur及びLipman,SIAM J.Appl.Math.1984,44:557-567;Needleman及びWunsch,J.Mol.Biol.1970,48:443-453)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書において、「配列番号Xに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列」とは、換言すると、「配列番号Xに示されるアミノ酸配列において、0、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」であり、かつ、配列番号Xに示されるアミノ酸と同等の機能を有する。ここで、「1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1~30個の範囲内、好ましくは1~20個の範囲内、より好ましくは1~15個の範囲内、さらに好ましくは1~10個の範囲内、さらに好ましくは1~5個の範囲内、さらに好ましくは1~3個の範囲内、さらに好ましくは1~2個の範囲内の数のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を意味する。これらアミノ酸残基の変異処理は、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発等の当業者に既知の任意の方法により行うことができる。
【0048】
本件ベクターにおけるプロモーターとしては、プロモーターの下流に位置する本件抗体遺伝子がコードするmRNAの転写を開始させる領域であればよく、プロモーターには、通常転写開始点(TSS)が含まれる。
【0049】
本件ベクターにおけるプロモーターやベクターの種類は、導入する宿主細胞(又は宿主生物)の種類に応じて適宜選択することができる。
【0050】
宿主細胞としては、本件抗体遺伝子が転写されて本件抗体が発現するもの、又は本件CAR遺伝子のmRNAが転写されて本件CARが発現するものであればよく、本件ベクターとして「本件抗体遺伝子を含むベクター」を導入する場合には、宿主細胞として以下の酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、又は植物細胞を用いることができ、本件ベクターとして「本件CAR遺伝子を含むベクター」を導入する場合には、宿主細胞として上記免疫担当細胞を用いることができる。
【0051】
宿主細胞として酵母(例えば、Saccharomyces Cerevisiae、Schizosaccharomyces Pombe等)を用いる場合、本件ベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができ、プロモーターとしては、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーターなどを挙げることができる。
【0052】
また、宿主細胞として哺乳動物細胞(例えば、ヒト由来のナマルバ[Namalwa]細胞、サル由来のCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞、ヒト、マウス等由来のT細胞など)を用いる場合であって、本件ベクターが抗体遺伝子を含むベクターのとき、本件ベクターとしては、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107(特開平3-22979号公報;Cytotechnology,3,133,(1990))、pAS3-3(特開平2-227075号公報)、pCDM8(Nature,329,840,(1987))、pcDNA I/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103(J.Biochemistry,101,1307(1987))、pAGE210等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができる。一方、宿主細胞として哺乳動物細胞(例えば、ヒト由来の上記免疫担当細胞など)を用いる場合であって、本件ベクターがCAR遺伝子を含むベクターのとき、本件ベクターとしては、例えば、pMSGVベクター(Tamada k et al., Clin Cancer Res 18:6436-6445(2002))やpMSCVベクター(タカラバイオ社製)などのレトロウイルスベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができる。
【0053】
本件ベクターにおけるプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediateearly)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、NFATプロモーター、HIFプロモーター等を挙げることができる。
【0054】
また、宿主細胞として昆虫細胞(例えば、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9細胞、Sf21細胞、Trichoplusianiの卵巣細胞であるHigh5細胞等)を用いる場合、本件ベクターとしては、例えば、組換えバキュロウイルス作製法において用いられるトランスファーベクター、具体的には、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社製)等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができ、プロモーターとしては、例えば、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等を挙げることができる。
【0055】
また、宿主細胞として植物細胞(例えば、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等)を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等のベクター又はかかるベクター由来のものを挙げることができ、プロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等を挙げることができる。
【0056】
本件ベクターとしては、遺伝子発現効率をさらに高めるために、エンハンサー領域やリボソーム結合領域(RBS;ribosome binding site)の塩基配列をさらに含むものや、本件宿主細胞のスクリーニングのために、宿主細胞の種類に応じた薬剤耐性遺伝子(例えば、スペクチノマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子等)をさらに含むものが好ましい。エンハンサー領域は、通常プロモーターの上流に配置され、RBSは、通常プロモーターと本件遺伝子の間に配置される。本件ベクターに組み込む本件抗体遺伝子のヌクレオチド配列は、発現させる宿主細胞に合わせてコドン配列の最適化がされていてもよい。本件ベクターは、遺伝子組み換え技術を用いて公知の方法により作製することができる。
【0057】
本件宿主細胞は、本件ベクターを、宿主細胞の種類に応じた方法により、宿主細胞へ導入(トランスフェクション)することにより得ることができる。
【0058】
宿主細胞として上記酵母を用いる場合、本件ベクターの酵母への導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればよく、例えば、エレクトロポレーション法(Methods.Enzymol.,194,182(1990))、スフェロプラスト法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,84,1929(1978))、酢酸リチウム法(J.Bacteriology,153,163(1983))等の方法を挙げることができる。
【0059】
また、宿主細胞として上記哺乳動物細胞を用いる場合、本件ベクターの哺乳動物細胞への導入方法としては、哺乳動物細胞にDNAを導入する方法であればよく、例えば、上述のとおり、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133(1990))、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987))、ウイルス感染法等の方法を挙げることができる。かかるウイルス感染法としては、上述のとおり、CAR発現ベクター(国際公開2016/056228号パンフレット)と、パッケージングプラスミドとをGP2-293細胞(タカラバイオ社製)、Plat-GP細胞(コスモ・バイオ社製)、PG13細胞(ATCC CRL-10686)、PA317細胞(ATCC CRL-9078)などのパッケージング細胞にトランスフェクションして組換えウイルスを作製し、かかる組換えウイルスをT細胞に感染させる方法を挙げることができる。
【0060】
また、宿主細胞として上記昆虫細胞を用いる場合、本件ベクターの昆虫細胞への導入方法としては、例えば「CurrentProtocolsinMolecular Biology」、「Baculovirus ExpressionVectors,A Laboratory Manual,W.H.Freemanand Company,New York(1992)」、「Bio/Technology,6,47(1988)」等に記載の方法にしたがって、本件ベクター(トランスファーベクター)と、バキュロウイルス由来のゲノムDNAとを上記昆虫細胞にコトランスフェクションし、組換えバキュロウイルスを作製する方法を挙げることができる。かかるコトランスフェクションの方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987)等の方法を挙げることができる。
【0061】
また、宿主細胞として上記植物細胞を用いる場合、本件ベクターの植物細胞への導入方法としては、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(特開昭59-140885号公報、特開昭60-70080号公報)、エレクトロポレーション法(特開昭60-251887号公報)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(日本特許第2606856号公報、日本特許第2517813号公報)等の方法を挙げることができる。
【0062】
本件抗体は、上述の方法で得られた本件宿主細胞を、宿主細胞に応じた培養液中で培養することにより得ることができる。
【0063】
また、トランスジェニック動物作製技術を用いて本件抗体遺伝子(本件ベクター)が組み込まれたマウス、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ等のトランスジェニック動物を作製し、かかるトランスジェニック動物の血液、ミルク中などから本件抗体遺伝子に由来する抗体を大量に産生することもできる。
【0064】
さらに、配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるヒト由来GPC3ポリペプチドを含む物質(GPC3ポリペプチド抗原)を、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット)に免疫し、ファージディスプレイ法によりscFv遺伝子のファージライブラリーを作製し、かかるGPC3ポリペプチド抗原、及び/又はかかるGPC3ポリペプチド抗原を発現する細胞株(好ましくは、内在性GPC3を発現しない細胞株)と、好ましくは、さらにコンペティターとして配列番号159に示されるアミノ酸配列からなるGPC3のC末端側ポリペプチドとを用いたバイオパニング(Biopanning)法により、本件scFvを得ることができる。また、上記抗原を免疫した非ヒト動物から、細胞融合技術を用いて、抗体を産生するハイブリドーマを調製し、上記抗原を固相化したプレートを用いたELISA法によるスクリーニングにより、本件抗体を含む培養上清を得ることもできる。本件抗体は、かかる培養上清から公知の抗体精製技術を用いて分離し、精製することができる。
【0065】
本件検出方法としては、本件抗体を用いて、試料(例えば、血液、組織、尿等)中の細胞膜に局在する(細胞膜にアンカーされた)GPC3を検出する工程を備えた方法であればよく、具体的な検出方法としては、本件抗体を用いた免疫蛍光染色法、ウェスタンブロッティング法、ELISA等を挙げることができる。
【0066】
本件検出用キットとしては、「GPC3を検出するため」という用途に限定された、本件抗体又はその標識物を含むキットであり、かかるキットには、一般にこの種のキットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤の他、取扱説明書、GPC3を検出するための説明書等の添付文書が通常含まれる。
【0067】
本件検出方法や本件検出用キットにおいて、検出対象のGPC3の生物種は、マウス、ラット等の非ヒト動物であってもよいが、通常ヒトである。
【0068】
上記本件抗体の標識物における標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ(例えば、horseradish peroxidase[HRP])、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ-ス-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein;GFP)、シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescence Protein;CFP)、青色蛍光タンパク質(Blue Fluorescence Protein;BFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein;YFP)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescence Protein;RFP)、ルシフェラーゼ(luciferase)等の蛍光タンパク質、H、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質を挙げることができる。
【0069】
本明細書において引用された、学術文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。また、本出願は、日本特許出願2017-001732号(2017年1月10日出願)に基づく優先権を主張しており、この内容はその全体が本明細書に参照として取り込まれる。
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0071】
1.ヒトGPC3のN末端側ポリペプチドを認識する新規抗GPC3抗体の調製
[概要]
抗ヒトGPC3抗体を調製するための免疫動物としてSKG/Jclマウスを使用し、免疫する抗原として全長ヒトGPC3タンパク質を使用した。SKG/Jclマウスは、関節リウマチを自然発症する自己免疫疾患モデルマウスであり、加齢や飼育環境によって、自己成分に対しても抗体産生応答することが知られている。一方、GPC3は、ヒト及びマウスの間で相同性が高く、通常は正常マウスに免疫しても抗体産生産生が起こりにくいため、SKG/Jclマウスを免疫動物として使用した。GPC3を免疫したマウスのB細胞由来cDNAからscFvファージライブラリーを作製し、ファージディスプレイ法を応用して、抗ヒトGPC3抗体を単離した。
【0072】
免疫したマウスの抗血清には、多種類の抗体が含まれるが、GPC3に対して特異性の低い抗体や、GPC3のC末端側ポリペプチドを認識する抗体を産生するマウスを除き、GPC3のN末端側ポリペプチドに対して特異性を有する抗体を産生するマウスを選択する必要がある。そこでELISAとFCMを用いて、GPC3のN末端側ポリペプチドに特異的に結合する抗体産生を示すマウス個体を選択した。具体的には、免疫マウス由来B細胞の全RNAから逆転写反応によりcDNAを合成し、抗体遺伝子を増幅して抗体遺伝子ライブラリーを作製した。抗体遺伝子ライブラリーからscFvファージライブラリーを構築し、大腸菌に感染させてscFvを発現させたものに対して、組換えGPC3、GPC3発現細胞株、及びGPC3のC末端側ポリペプチドを用いたバイオパンニングを行うことにより、目的のscFv、すなわち、GPC3のN末端側ポリペプチドに対する抗体を発現するファージを濃縮した。さらに、得られたscFvについて、細胞中のGPC3、すなわち、GPI(Glycosylphosphatidylinositol)アンカーを介して細胞膜に局在(結合)するGPC3(膜型GPC3)に対する結合特異性を解析するために、cell based-ELISA、FCMを用いて検証した。また、結合特異性を有するクローンのH鎖可変領域及びL鎖可変領域のヌクレオチド配列をシーケンスし、かかる配列を基に、免疫マウス由来B細胞が産生する抗GPC3抗体のヌクレオチド配列を決定した。最後にGPC3のN末端側ポリペプチド断片及びC末端側ポリペプチド断片を細胞表面に発現させたマンマリアン・ディスプレイ法を用いて、scFvのエピトープがGPC3のN末端側ポリペプチド断片であることを確認した。以下に詳細な方法及び結果を示す。
【0073】
1-1 材料と方法
[細胞培養]
ヒトGPC3発現細胞として、JHH7細胞株、HepG2細胞株、及びヒトGPC3全長を強制発現させたSK-Hep-1細胞株(以下、「GPC3発現細胞株」ということがある)を用いて、抗GPC3抗体のバイオパンニング及びスクリーニングを行った。JHH7細胞株は、肝細胞がん由来のGPC3発現細胞株であり、当該細胞中には、GPI(Glycosylphosphatidylinositol)アンカーを介して細胞膜に結合するGPC3(膜型GPC3)が恒常的に発現している。一方、HepG2細胞株は、JHH7細胞株と同様に、肝細胞がん由来のGPC3発現細胞株であるが、膜型GPC3よりも、細胞膜に結合していない分泌型GPC3の発現が優勢な細胞株である。また、Sk-Hep-1細胞株は、GPC3未発現の肝細胞がん由来の細胞株である。このため、強制発現により膜型の全長GPC3のみや、一部のエクソンが欠損した部分長の膜型GPC3を発現する細胞株を作製することができる。
【0074】
4種類の細胞株(JHH7細胞株、HepG2細胞株、GPC3発現細胞株、及びヒト胎児腎臓上皮由来293T細胞株)の培養は、10% FBS(Gibco社製)及び1% ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社製)を含むDMEM培養液(Sigma-Aldrich社製)(以下、単に「DMEM培養液」という)中で37℃、5%CO条件下で行った。また、CHO-K1細胞株の培養は、10%FBS(Gibco社製)を含むHam's F12培養液(Sigma-Aldrich社製)中で37℃、5%CO条件下で行った。
【0075】
[免疫抗原]
6×HisタグがC末端に付加した組換えGPC3(R&D systems社製)をPBSにて0.1mg/mLに調整し、人工アジュバントTiterMaxGold(TiterMax社製)又はCFA(Freund's Adjuvant Complete)(F5881、Sigma-Aldrich社製)と等量混合してエマルジョンを作製したものを初回の免疫抗原として用いた。2回目以降の免疫抗原は、組換えGPC3をPBSにて10~100μg/mLで濃度調整したものを用いた。
【0076】
[GPC3発現細胞株の作製]
配列番号157で示されるアミノ酸配列からなる全長ヒトGPC3をコードする遺伝子(配列番号160で示されるヌクレオチド配列からなる全長ヒトGPC3遺伝子)を、pcDNA3.1ベクター(Thermo Fisher Scientific社製)に挿入してGPC3発現ベクターを作製した。GPC3発現ベクターを、SK-Hep-1細胞株に定法にしたがってトランスフェクションした後、G418(Roche diagnostics社製)を含むDMEM培養液中で培養することにより、GPC3全長が安定に発現するSK-Hep-1細胞株(GPC3発現細胞株)の樹立を行った。
【0077】
[マウスの免疫]
SKG/jclマウス(日本クレア、8週齢雌、SPF)を免疫動物として、組換えGPC3を、フットパットに1週間毎に合計4回免疫した。免疫開始から5週目に採血し、定法にしたがって血清を調製し、抗体価の確認用検体とした。
【0078】
[ELISAを用いた抗血清の血清抗体価]
免疫したマウスにおける抗GPC3抗体産生応答を確認するため、抗原固定化ELISAを用いて血清抗体価を測定した。0.5又は2μg/mLの組換えGPC3を、96ウェルマイクロプレート(Nunc社製)に50μL/ウェルずつ添加して室温で1時間、又は4℃で12時間インキュベートした。その後に、2% ブロックエース(DSファーマ社製)を、200μL/ウェルずつ添加してブロッキング処理を行った。GPC3免疫マウス由来の血清を、100倍~16500倍まで0.1%ブロックエース/PBS溶液にて段階希釈し、各希釈血清サンプルを50μL/ウェルずつ添加して、2時間、室温にてインキュベートし、抗原抗体反応処理を行った。Tween20含有PBS(PBST)溶液でウェルを洗浄した後、2μg/mL ペルオキシダーゼがコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch laboratories社製)を添加して2時間、室温にてインキュベートし、2次抗体反応処理を行った。PBST溶液で5回ウェルを洗浄後、水分を除去した後にTMB基質(Thermo Fisher Scientific社製)を50μL/ウェルずつ添加し、発色反応を行った。15分後に0.18M硫酸を50μL/ウェルずつ添加して、発色反応を停止させた後、450nmと540nmの吸光度をプレートリーダー(Bio-Rad社製)で測定した。450nmの測定値から、540nmの測定値を差し引いた補正値を用いて定量を行った。
【0079】
[FCMを用いた抗血清中の抗体の特異性]
免疫したマウスについて、さらに、膜型GPC3に対する抗血清の特異的結合性を確認するため、100倍希釈したマウス血清と、GPC3発現細胞株5×10個の細胞とを混合し、氷上で30分インキュベートした。FACS buffer(1%BSA/PBS溶液)を加えて遠心処理し、上清を除いた後、2次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)Alexa Fluor488(Thermo Fisher Scientific社製)1μg/mLを100μL添加し、氷上で30分インキュベートして2次抗体反応処理を行った。Alexa Fluor488の検出及び蛍光レベルの測定は、フローサイトメーター(FACSCanto)(BD Biosciences社製)を用いて行った。
【0080】
[scFvファージライブラリーの作製]
上記[フローサイトメーター]の項目に記載の方法により、膜型GPC3に結合する抗体が産生されたことが示されたマウスについて、B細胞由来の全RNAを定法に従って抽出し、全RNAをテンプレートとしたRT-PCRを定法に従って行い、cDNAを調製した。抗体H鎖及びL鎖の可変領域遺伝子をPCRにより増幅し、それらをフレキシブルリンカーで連結したscFvと、繊維状バクテリオファージM13のコートタンパク質g3p(cp3)との融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、pTZ19Rファージミドベクターのマルチクローニングサイトに挿入し、scFv発現ベクターを作製した。scFvライブラリーサイズは、大腸菌DH12S株(Invitrogen社製)の形質転換効率により算出した。形質転換したDH12S株にヘルパーファージであるM13KO7(Invitrogen社製)を感染させて、scFvを発現するファージライブラリーを作製した。
【0081】
[ファージscFvのバイオパンニングとクローン化]
Dynabeads His-Tag Isolation & Pulldown磁性ビーズ(VERITAS社製)に、6×Hisタグを介して固定化した組換えGPC3と、GPC3発現細胞株とを組み合わせたものをベイトして用いたファージscFvのバイオパンニングは、文献「J Mol Biol. 1991 Dec5;222(3):581-97.」、「JMedVirol.2007 Jun;79(6):852-62.」、「Proc Natl Acad SciU
SA. 2008 May 20;105(20):7287-92.」、「JOURNALOFVIROLOGY,Apr. 2004, p. 3325-3332 Vol. 78, No. 7」等に記載の方法にしたがって行った。5種類のシリーズ(A~Eシリーズ)からなるバイオパンニング(図1参照)の各ラウンド(工程)において、ポリクローナルなファージ抗体の一部をサンプリングし、scFvの結合特異性を確認するために、抗原固定化ELISAを、上記[ELISAを用いた抗血清の血清抗体価]の項目に記載の方法(血清に代えてファージを含む大腸菌の培養上清を用いた方法)にしたがって行うとともに、Cell based-ELISAを、下記[Cell-based ELISAによるscFvのスクリーニング]の項目に記載の方法にしたがって行った。なお、かかるバイオパンニングの各工程において、既存の抗GPC3抗体であるGC33(中外製薬社製)とGC199(中外製薬社製)を、ベイトにあらかじめ結合させておくことにより、既存抗体が認識するGPC3のC末端エピトープと同じ部分に結合するscFvファージが選択されないように工夫した。すなわち、この競合法により、既存の抗GPC3抗体と異なるGPC3エピトープを認識する新規抗体を選択的にパンニングすることが可能となる。バイオパンニングにより濃縮したファージを大腸菌DH12Sにトランスフォームし、LBアガロース寒天培地に播種し、シングルコロニーを分離した。さらに小スケールLB液体培地中で大腸菌を培養した後、プラスミドを抽出及び精製した。精製したプラスミドのDNAシーケンスを行い、scFvのH鎖及びL鎖の可変領域のヌクレオチド配列を決定した。
【0082】
[FCMによるscFvのスクリーニング]
GPC3発現細胞株(1サンプルあたり5×10個)に、scFvファージが分泌されている培養上清100μLを加え、混合した後、氷上で30分インキュベートした。FACS buffer(1%BSA/PBS溶液)を加えて遠心洗浄した後、2次抗体である抗マウス抗体-alexa488(Thermo Fisher Scientific社製)を1μg/mL加え、氷上で30分インキュベートした。その後、フローサイトメーター(FACSCanto、BD社製)にて細胞の蛍光染色を測定した。
【0083】
[Cell-based ELISAによるscFvのスクリーニング]
1ウェルあたり2×10個のGPC3発現細胞が接着した96ウェルマイクロプレートのDMEM培養液を除いた後、scFvの、細胞やプレートへの非特異的な結合を防ぐ目的で、2%BSA-PBS溶液を加え、氷上で30分間インキュベートした。次に、scFvファージが分泌されている大腸菌の培養上清100μLを添加し、氷上で45分間インキュベートした後、scFvのC末端側に融合したcp3に対するウサギ抗cp3抗体(MBL社製)を5μg/mLにて1ウェルあたり100μL添加し、さらに氷上で45分間インキュベートした。抗cp3抗体検出用の3次抗体として5000倍希釈したHRP標識抗ウサギIgG抗体(MBL社製)を1ウェルあたり100μL添加し、氷上で45分間インキュベートした後、HRPの基質としてo-フェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素を添加して発色させた。492nmの吸光度からバックグラウンドとして620nmでの吸光度を差し引いた数値にて定量を行った。なお、scFvではなく、IgG型抗体に変換済みの抗体を用いてcell-based ELISAを実施したときは、上記条件のうち、抗cp3抗体及びHRP標識抗ウサギIgG抗体に代えて、当該IgG型抗体の検出用の2次抗体として2000倍希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体(MBL社製)を用いた
【0084】
[scFvの可変領域遺伝子配列の決定]
膜型GPC3に結合するファージscFvの可変領域遺伝子配列は、ユニバーサルプライマーであるT7プライマー(配列番号176に示されるヌクレオチド配列からなるプライマー)及びcp3Rプライマー(配列番号177に示されるヌクレオチド配列からなるプライマー)を、それぞれH鎖V領域(V)解読用フォワードプライマー及びL鎖V領域(V)解読用リバースプライマーとして用い、シーケンサー(CEQ2000XL、ベックマンコールター社製)にて解読した。
【0085】
[抗体エピトープマッピングに用いる細胞株の作製]
クローングしたscFvのエピトープを同定するために哺乳動物ディスプレイ法を応用した。ヒトGPC3のエクソン1~7からなるGPC3N末断片(配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)をコードする遺伝子と、ヒトGPC3のエクソン8~9からなるGPC3C末断片(配列番号156に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)をコードする遺伝子とを、PCRにて増幅し、pDisplay発現ベクター(Thermo Fisher Scientific社製)のマルチクローニングサイト(MSC)に挿入した。なお、pDisplay発現ベクターは、目的タンパク質のC末端に、platelet-derived growth factor receptor(PDGFR)の膜貫通領域と融合させて任意の哺乳動物細胞の細胞表面にディスプレイ可能な発現ベクターである。また、pDisplay発現ベクターは、目的タンパク質のN末端に、HAタグが付加され、上記PDGFRのC末端には、mycタグが付加されるように構成されている。上記GPC3N末断片及びGPC3C末断片を発現するpDisplay発現ベクターを、SK-Hep-1細胞株や293T細胞株に遺伝子導入し、GPC3N末断片やGPC3C末断片が細胞表面に発現する細胞株(GPC3N末断片発現細胞株、及びGPC3C末断片発現細胞株)を単離し、scFvのエピトープマッピングに使用した。
【0086】
[FCMによる抗体エピトープマッピング]
GPC3N末断片発現細胞株、GPC3C末断片発現細胞株、及びGPC3発現細胞株(それぞれ、1サンプルあたり5×10個)と、scFvファージが分泌されている培養上清100μLとを混合し、氷上で30分インキュベートした。FACS buffer(1%BSA/PBS溶液)を加えて遠心洗浄した後、2次抗体である抗マウス抗体-alexa488(Thermo Fisher Scientific社製)を1μg/mL加え、氷上で30分インキュベートした。その後、フローサイトメーター(FACSCanto、BD社製)にて細胞の蛍光染色を測定した
【0087】
[組換えIgG発現ベクターの構築]
scFvからIgGへの変換を行うために、Mammalian PowerExpress system(Toyobo社製)の発現ベクターを用いた。pEH1.1ベクターのMSCに、scFvのH鎖可変領域と、マウスIgG2aH鎖由来の定常領域との融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を挿入した(pEH1.1-H)。また、pELX2.2ベクターのMSCに、scFvのL鎖可変領域と、マウスIgG2aL鎖由来の定常領域との融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を挿入した(pEH2.2-L)。次に、pEH2.2-LからEF1αプロモーターからL鎖遺伝子までのポリヌクレオチド断片を、制限酵素(BglII及びSalI)で切り出し、制限酵素(BglII及びSalI)で処理したpEH1.1-Hにライゲーションし、抗体H鎖及びL鎖が共発現するベクターを構築した。
【0088】
[組換えIgGの発現]
上記[組換えIgG発現ベクターの構築]に記載の方法にて作製した抗体H鎖及びL鎖の共発現ベクター32.6μgを、1.6mLのopti-MEM(Gibco社製)に希釈し、Transficient Transfection Reagent(MBL社製)65μLを、1.6mLのopti-MEMに希釈したものと混合し、室温で10分間インキュベートした。その後、10mLのDMEM培養液に懸濁したCHO-K1細胞(1×10個)と混合し、培養した。4時間後に無血清培地(Free Style expression CHO media[Gibco社製])を添加し、さらに4~6日培養して組換え抗体を含む培養上清を回収した。
【0089】
[抗体のアフィニティー精製]
Protein G Sepharose 4 Fast Flow(GE healthcare社製)又はBipo Resin Protein L(Protein Express社製)カラムを、エンプティーカラム(Bio-Rad社製)に1mL bed volumeに充填した後、10倍bed volume量のPBSでカラム樹脂を洗浄した。0.22ミクロンフィルターろ過した培養上清をカラムに添加して、抗体をカラム内のProteinG又はProtein Lにトラップした後、カラムを10倍bedvolume量のPBSで洗浄して非特異的に吸着した夾雑物を洗浄した。100mMグリシン-HCl(pH2.7)溶液を用いて抗体を溶出し、溶出液は1MTris-HCl(pH8.5)にてpHを中和した。吸光度計nanoDrop(Thermo fisher scientific社製)により280nmの吸光度を測定し、抗体濃度を算出した。競合抗体として用いたGC33抗体及びGC199抗体についても、同様の方法により発現ベクターをデザインし、作製した。
【0090】
1-2 結果
[免疫したマウスの抗血清評価]
組換えGPC3を4回免疫したSKG/jclマウスから採血し、血清中にGPC3に対する抗体が産生されているか確認したところ、組換えGPC3に対するELISと、GPC3発現細胞に対するFCMとの実験により、GPC3に対して結合性を有する抗体が検出された。このうち、抗体価の特に高かったマウス2匹(個体番号1413#2、1413#3)を抗体ライブラリー作製のソースとして用いた。
【0091】
[ファージライブラリーの構築]
形質転換効率から計算して見積もられたscFvライブラリー数は、マウス1413#2で5.8×10、マウス1413#3で4.3×10であった。本実施例で作製した免疫グロブリンライブラリーは、抗原であるGPC3を免疫して目的抗原に対する抗体応答が認められたマウスから作製したライブラリーであるため、ライブラリーサイズが小さい場合でも目的の抗体遺伝子が含まれる可能性が高いことが特徴である。また、ランダムな合成抗体ライブラリーに比べ、生体内で正しい立体構造を形成する抗体が含まれていることも有利な特徴である。
【0092】
[モノクローナルscFvの配列解析によるクローンの分類]
ピックアップしたモノクローナルscFvのDNA配列解析を行い、重複を除いてクローン分類を行った。その結果、マウス1413#2ライブラリーのDシリーズから7種類、Eシリーズから5種類、マウス1413#3ライブラリーのDシリーズから3種類、及びEシリーズから9種類の候補クローンが同定された。それら候補クローンの重鎖及び軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を解析し、重複する同一クローンを除いた結果、マウス1413#2ライブラリー由来の9種類のscFv、及びマウス1413#3ライブラリー由来の9種類のscFvの合計18種類のscFvが同定された。
【0093】
[抗GPC3 scFvクローンのエピトープマッピング解析]
上記[モノクローナルscFvの配列解析によるクローンの分類]の項目に記載の方法にしたがって同定された18種類のscFvを用いて、3種類の細胞株(GPC3N末断片発現細胞株、GPC3C末断片発現細胞株、及びGPC3発現細胞株)の各種GPC3との結合を、FCMにて解析した。その結果、18種類のscFvクローンのうち、14種類(TF1413-02d028、02d030、02d039、02e004、02e014、02e030、02e040、03e001、03e004、03e005、03e015、03e019、03e027、及び03e034)については、全長のGPC3及びGPC3N末断片(配列番号155に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)に結合するのに対して、GPC3C末断片(配列番号156に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)には結合しなかった(図2参照)。一方、既存の抗GPC3抗体であるGC33(中外製薬社製)やGC199(中外製薬社製)は、全長のGPC3及びGPC3C末断片に結合するのに対して、GPC3N末断片には結合しなかった。
以上の結果から、既存の抗GPC3抗体(GC33及びGC199)のGPC3C末端側のエピトープとは異なり、GPC3N末側のエピトープを認識する上記14種類の新規scFvが同定された。
【0094】
同定した14種類のscFvクローンのうち、結合力の特に高い上位11種類のscFvクローン(TF1413-02d028、02d039、02e004、02e014、02e030、02e040、03e001、03e004、03e005、03e015、及び03e034)を選択した。表1には、かかる11種類のscFvクローンのH鎖及びL鎖V領域と、配列番号との対応を示し、表2には、かかる11種類のscFvクローンのH鎖CDR1~3と、配列番号との対応を示し、表3には、かかる11種類のscFvクローンのL鎖CDR1~3と、配列番号との対応を示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
[抗GPC3 scFv抗体のIgG化とその結合能]
選択した上記11種類のscFvクローンについて、H鎖及びL鎖可変部領域を、マウスIgGの定常領域に結合し、組換えIgG発現用ベクターにて完全長の組換え抗体として発現させ、アフィニティー精製を行った。これらIgG抗体と、GPC3N末断片との結合能を、GPC3N末断片発現細胞株を用いて解析したところ、9種類のIgGクローン(TF1413-02d028、02d039、02e004、02e014、02e030、02e040、03e004、03e005、及び03e034)は、GPC3N末断片と結合性は維持されていたものの、残りの2種類のIgGクローン(TF1413-03e001、及び03e015)は、GPC3N末断片と結合性が消失した(図3参照)。また、上記9種類のIgGクローンは、GPC3C末断片には結合しなかった(図3参照)。
以上の結果は、11種類のscFvクローンのうち、9種類(TF1413-02d028、02d039、02e004、02e014、02e030、02e040、03e004、03e005、及び03e034)については、IgG型に変換可能なものであることを示している。表4には、上記11種類のIgGクローンのH鎖及びL鎖と、配列番号との対応を示す。
【0099】
【表4】
【実施例2】
【0100】
2.EDTA(Ethylenediaminetetraacetic acid)、トリプシン又はコラゲナーゼ処理したGPC3に対する新規抗GPC3抗体の結合性
[EDTA又はトリプシン処理した細胞の調製]
GPC3を強制発現させたSK-Hep-1細胞株を、2つのT-75フラスコで培養した。各フラスコの培養上清を吸引し、PBS 3mLで洗浄後、各フラスコに、0.02%のEDTA/PBS溶液(以下、単に「EDTA」という)3mL、又は0.05%のトリプシン溶液(以下、単に「トリプシン」という)を加え、37℃でそれぞれ5分間(EDTA)又は2分30秒間(トリプシン)インキュベートし、細胞をフラスコから剥離した。その後、各フラスコに7mLのDMEM培養液を加え、ピペッティングした後、細胞懸濁液を50mLコニカルチューブに回収した。さらに10mLのDMEM培養液で各フラスコを洗浄後、回収した洗浄液も各細胞懸濁液の入った50mLコニカルチューブにそれぞれ回収して遠心(1,500rpm、4℃、4分間)した。コニカルチューブから上清を吸引後、ペレットに10mLのDMEM培養液を加え、EDTA又はトリプシンで剥離した細胞数をそれぞれ計測した。
【0101】
EDTA又はトリプシン処理した細胞は、細胞数がそれぞれ2×10個/チューブとなるように調整し、FACS(EC800)解析を行った。FACS解析には、3種類の抗体(APCで蛍光標識した抗マウスIgG抗体[5μg/チューブ:Biolejend社製]、GC33抗体[1.0μg/チューブ:MBLライフサイエンス社製]、及び上記scFvクローン[TF1413-02d028]抗体[1.0μg/チューブ])を使用した。
【0102】
[コラゲナーゼ処理した細胞の調製]
上記のようにEDTAで剥離した1×10個の細胞を、50mLコニカルチューブに入れ、遠心(1,500rpm、4℃、4分間)して上清を吸引し、細胞塊(ペレット)を調製した。ペレットに5mLのコラゲナーゼP溶液を加え、30分間、37℃でインキュベートし、細胞懸濁液を調製後、30mLのDMEM培養液で洗浄しながら、100μmセルストレーナーに通した。細胞懸濁液を再度100μmセルストレーナーに通し、遠心(300g、4℃、10分間)して上清を吸引し、PBS 20mLを加えて洗浄後、遠心(300g、4℃、5分間)して上清を吸引した。5mLのDMEM培養液を加え懸濁した後、細胞数を計測し、2×10個/チューブの細胞を、FACS(EC800)解析した。FACS解析には、EDTA又はトリプシン処理をした細胞と同様に、3種類の抗体(APCで蛍光標識した抗マウスIgG抗体[5μg/チューブ:Biolejend社製]、GC33抗体[1.0μg/チューブ:MBLライフサイエンス社製]、及び上記scFvクローン[TF1413-02d028]抗体[1.0μg/チューブ])を使用した。結果を図4に示す。なお、図4において、横軸の右側にピークがある場合、GC33抗体又はscFvクローン[TF1413-02d028]抗体が、GPC3タンパク質に結合していることを示す。
【0103】
[結果]
図4に示すように、トリプシン処理やコラゲナーゼ処理したGPC3タンパク質に対する本発明の抗体(TF1413-02d028)の結合性は、著しく減少していた。これらの結果は、本発明の抗体は、GPC3タンパク質の立体構造を特異的に認識することを示しており、本発明の抗体は、生体における特異性が高いと考えられる。
【実施例3】
【0104】
3.新規抗GPC3抗体を利用したGPC3 CAR-T細胞の開発
[概要]
GPC3は、成人では胎盤以外には発現が認められない一方、肝細胞がん、メラノーマ、卵巣明細胞がん、肺扁平上皮がんなど様々ながん組織で発現している細胞表面分子であり、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor;CAR)を利用したCAR-T細胞療法の標的分子となりうる。そこで、実施例1で調製した11種類のscFvクローンを利用したGPC3CAR-T細胞を作製し、がん細胞傷害活性やインターフェロンγ(IFN-γ)産生能について解析した。
【0105】
[GPC3 CARベクターの作製]
実施例1で調製した11種類のscFvクローン(TF1413-02d028、02d039、02e004、02e014、02e030、02e040、03e001、03e004、03e005、03e015、及び03e034)について、それぞれのV及びVのアミノ酸配列に基づき、V-リンカー-V配列のscFvをデザインした(表5参照)。リンカーは、ポリペプチド「GGGGS」を3回繰り返した15アミノ酸残基からなるものを使用した。また、VのN末端には、配列番号188に示されるアミノ酸配列からなるヒトイムノグロブリンH鎖由来シグナルシーケンスを付加した。
【0106】
【表5-1】
【0107】
【表5-2】
表中、二重四角はリンカーを示し、一重下線はVを示し、二重下線はVを示す。
【0108】
表5の抗GPC3 scFvをコードするヌクレオチド配列は、ヒトコドンに最適化したものを合成し、CAR発現ベクターに挿入した。使用したCAR遺伝子は、scFvの下流に、ヒトCD8由来細胞膜貫通領域;及びヒトCD28/4-1BB/CD3zeta由来免疫担当細胞活性化シグナル伝達領域;からなる融合ペプチド(配列番号185に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)をコードする遺伝子と、2A自己切断配列、ヒトIL-7遺伝子、2A自己切断配列、ヒトCCL19遺伝子、2A自己切断配列、及びHSV-TK遺伝子とを有し、全体をMSGV1レトロウイルスベクターに組み込んだものである(国際公開2016/056228号パンフレット参照)。
【0109】
[GPC3 CAR-T細胞の作製]
上記11種類のscFvクローンに由来するGPC3 CARベクターを、各々GP2パッケージング細胞に一過性導入してレトロウイルスベクターを作製し、それらをT細胞に感染させて遺伝子導入し、GPC3CAR-T細胞を誘導した。遺伝子導入T細胞におけるGPC3CARを発現する細胞の割合は、5.3~39.2%とばらつきがあった。そこで、当該割合が25%以上を示す5種類のscFvクローン(TF1413-02d028、TF1413-02d039、TF1413-02e014、TF1413-02e030、及びTF1413-03e005)に由来するGPC3 CAR-T細胞を用いて、以下の機能アッセイを実施した。
【0110】
[GPC3 CAR-T細胞のGPC3発現細胞株に対する傷害活性]
GPC3 CAR-T細胞のがん細胞に対する傷害活性を検討するため、GPC3 CAR-T細胞と、GPC3発現細胞株、すなわち、肝細胞がん由来の細胞株であるSk-HEP-1に、GPC3を発現させた細胞株(Sk-HEP-1GPC3細胞株)や、GPC3を発現しない細胞株(Sk-HEP-1mock細胞株)との共培養アッセイを実施した。GPC3CAR-T細胞と、標的がん細胞(Sk-HEP-1GPC3細胞株、又はSk-HEP-1 mock細胞株)を、1:1(1×10/ウェルずつ)にて混合し、24ウェルプレートで培養した。48時間後に細胞を回収し、抗CD45抗体で染色し、CD45陽性細胞をGPC3CAR-T細胞として、CD45陰性細胞は、残存がん細胞[Sk-HEP-1GPC3細胞]としてFCMにて解析した。その結果、上記5種類のscFvクローンに由来するGPC3CAR-T細胞は、いずれもSk-HEP-1GPC3細胞を、ほぼ完全に傷害させる一方、Sk-HEP-1mock細胞に対しては傷害活性を示さなかった(図5及び6参照)。GPC3CAR-T細胞に対するネガティブコントロールとして、ウイルスベクターを感染させていない細胞(遺伝子非導入細胞[図5及び6中の「Non infection」])を用いた場合には、Sk-HEP-1 GPC3細胞、及びSk-HEP-1 mock細胞のいずれにも傷害活性を示さなかった。
【0111】
以上の結果より、選択した5種類の抗GPC3 scFvクローン(TF1413-02d028、TF1413-02d039、TF1413-02e014、TF1413-02e030、及びTF1413-03e005)に由来するGPC3CAR-T細胞は、GPC3を発現するがん細胞特異的に細胞傷害活性を発揮することが示された。
【0112】
[GPC3 CAR-T細胞のGPC3発現細胞認識によるIFN-γ産生能]
GPC3発現(陽性)がん細胞に対する傷害活性に加えて、GPC3 CAR-T細胞のIFN-γ産生能について解析した。GPC3CAR-T細胞と、標的がん細胞(Sk-HEP-1GPC3細胞株、又はSk-HEP-1mock細胞株)を、1:1(1×10/ウェルずつ)にて混合し、24ウェルプレートで48時間培養し、培養上清中に産生されるIFN-γの濃度をELISAにて測定した。その結果、上記5種類のscFvクローンに由来するGPC3CAR-T細胞は、いずれもGPC3の発現依存的なIFN-γの産生能を示し、特にクローンTF1413-02d028に由来するGPC3CAR-T細胞は、最も高いIFN-γ産生能を示した(図7参照)。
【実施例4】
【0113】
4.ヒト化抗体の作製
実施例1で調製した2種類のscFvクローン(TF1413-02d028及び02d039)をベースに、scFvヒト化抗体をデザインした(表6参照)。リンカーは、ポリペプチド「GGGGS」を3回繰り返した15アミノ酸残基からなるものを使用した。また、VのN末端には、配列番号188に示されるアミノ酸配列からなるヒトイムノグロブリンH鎖由来シグナルシーケンスを付加した。
【0114】
【表6-1】
【0115】
【表6-2】
表中、二重四角はリンカーを示し、一重下線はVを示し、二重下線はVを示す。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、がん免疫療法の分野に資するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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