(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/493 20060101AFI20231122BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20231122BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20231122BHJP
A61F 13/64 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61F13/493
A61F13/51
A61F13/56 211
A61F13/64
(21)【出願番号】P 2020013318
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 史子
(72)【発明者】
【氏名】今本 彩
(72)【発明者】
【氏名】奈良井 哲
(72)【発明者】
【氏名】村田 千恵
(72)【発明者】
【氏名】安達 香奈
(72)【発明者】
【氏名】西浦 伸忠
(72)【発明者】
【氏名】長野 亜希子
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025139(JP,A)
【文献】実開平07-028526(JP,U)
【文献】特開2014-204756(JP,A)
【文献】特表2000-503244(JP,A)
【文献】特開平08-280725(JP,A)
【文献】特開2008-307298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0034896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/493
A61F 13/51
A61F 13/56
A61F 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の臀部の下に敷いて装着を行うことが可能であり、
製品の前後方向の中央より前側に延びる腹側部分と、
製品の前後方向の中央より後側に延びる背側部分と、
製品の前後方向の中央よりも前側から、前後方向の中央よりも後側まで延びる、股間部分と、
前記股間部分よりも後側で、左右両側に突出する後ウイングと
、
前記後ウイングに設けられた、前記腹側部分と着脱可能に連結される連結部と、を備え、
前記股間部を含む範囲にわたり吸収体が内蔵され、
前記背側部分は、前記吸収体よりも幅方向の両側に延び出たサイドフラップ、及び前記吸収体よりも後側に延び出たエンドフラップを有している、連結式吸収性物品であって、
前記後ウイングを構成する部材に、仰臥姿勢又は伏臥姿勢にある装着者の腰の側縁を合わせることにより装着者と製品との横方向の位置が適切となる目印が印刷されており、
前記目印は、前記ウイングの内面から視認可能であ
り、
前記背側部分の外面における、前記吸収体と重なる部分内に、パッチシートが積層されており、
前記パッチシートの幅方向の両端部は、前記吸収体と重なる部分に位置するとともに、その内側に対向する対向面と接合された接合部を有しており、
前記パッチシートにおける幅方向の一方側の前記接合部と他方側の前記接合部との間の部分は、前記パッチシートの前後方向の全体にわたり前記対向面と接合されていない非接合部となっており、
前記非接合部と前記対向面とにより、前側に入口及び後側に出口をそれぞれ有する筒状部分が形成され、
片方の手又はその親指以外の四本の手指が、前記入口から後側に向かって一つの前記筒状部分内に挿入されるとともに、その挿入された手又は手指の先端側が前記パッチシートの後端から突き出て手のひらが前記パッチシートと重なることにより、前記吸収体と重なる部分から前記エンドフラップにわたり手のひら及び手指で支えられるとともに、前記パッチシートとその対向面との間に前記手のひらが挟まれて、前記パッチシートの前記非接合部と対向面との隙間が厚み方向に広がりつつ前記接合部の間隔が狭くなることにより、製品が手側に反るように構成されている、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
装着者の臀部の下に敷いて装着を行うことが可能であり、
製品の前後方向の中央より前側に延びる腹側部分と、
製品の前後方向の中央より後側に延びる背側部分と、
製品の前後方向の中央よりも前側から、前後方向の中央よりも後側まで延びる、股間部分と、
前記股間部分よりも後側で、左右両側に突出する後ウイングと、
前記後ウイングに設けられた、前記腹側部分と着脱可能に連結される連結部と、を備え、
前記股間部を含む範囲にわたり吸収体が内蔵され、
前記背側部分は、前記吸収体よりも幅方向の両側に延び出たサイドフラップ、及び前記吸収体よりも後側に延び出たエンドフラップを有している、連結式吸収性物品であって、
前記後ウイングを構成する部材に、仰臥姿勢又は伏臥姿勢にある装着者の腰の側縁を合わせることにより装着者と製品との横方向の位置が適切となる目印が印刷されており、
前記目印は、前記ウイングの内面から視認可能であり、
前記背側部分の外面における、前記吸収体と重なる部分内に、パッチシートが積層されており、
幅方向に対して30~90度の角度で交差する方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、
前記パッチシートの前記第1方向の両端部は、前記吸収体と重なる部分に位置するとともに、その内側に対向する対向面と接合された接合部を有しており、
前記パッチシートにおける前記第1方向の一方側の前記接合部と他方側の前記接合部との間の部分は、前記パッチシートの前記第2方向の全体にわたり前記対向面と接合されていない非接合部となっており、
前記非接合部と前記対向面とにより、前記第2方向の一方側に入口及び他方側に出口をそれぞれ有する筒状部分が形成され、
前記筒状部分の入口は前記第1方向に延びており、
片方の手又はその親指以外の四本の手指が、前記入口から前記第2方向に沿って一つの前記筒状部分内に挿入されるとともに、その挿入された手又は手指の先端側が前記パッチシートの縁から突き出て手のひらが前記パッチシートと重なることにより、前記吸収体と重なる部分からその周囲にわたり手のひら及び手指で支えられるとともに、前記パッチシートとその対向面との間に前記手のひらが挟まれて、前記パッチシートの前記非接合部と対向面との隙間が厚み方向に広がりつつ前記接合部の間隔が狭くなることにより、製品が手側に反るように構成されている、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項3】
前記目印として、所定の幅方向の寸法を有する一本又は複数本の帯状目印が前後方向に沿って連続している、
請求項1
又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記目印として、所定の幅方向の寸法及び所定の前後方向の寸法を有する間欠目印が前後方向に間隔を空けて複数設けられている、
請求項1
~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記目印の全幅が5~20mmである、
請求項
3又は
4記載の吸収性物品。
【請求項6】
仰臥姿勢又は伏臥姿勢にある装着者の腰の側縁が前記目印の幅方向の最も内側の縁に位置する状態が、目標の装着状態となるように構成された、
請求項
3~
5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結式(テープタイプ)使い捨ておむつやパッドタイプ使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品においては、装着の際、ベッドや寝床の上に広げておき、その上に臀部を載せるという手順を踏むものがある。このような吸収性物品としては、装着時に背側部分の両側部を腹側部分の両側部に連結する連結式(テープタイプ)使い捨ておむつ(例えば特許文献2参照)や、パッドタイプ使い捨ておむつ等を例示することができる。
【0003】
しかしながら、吸収性物品上の適切な位置に、装着者の臀部を載せることができないと、適切な装着状態とならず、漏れにつながるおそれがある。このような場合、従来は臀部の位置を変更しながら、何度も装着作業を繰り返すことが行われており、交換作業が煩雑となっていた。
【0004】
特に、保育器内での交換作業のように、交換作業者の位置が装着者の一方の脇に制限される場合には、装着者の腰の両側に均等に製品がはみ出ているか否かが分からないため、製品の横方向の位置が適切であるか否かを簡単に判別することができなかった。
【0005】
また、低出生体重児に装着する場合、身体に触れる時間は可能な限り短い方が好ましく、また、身体の移動も少ないことが望ましいため、何度も臀部の位置を変更することは好ましいことではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2001-509402号公報
【文献】特開2013-146392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、臀部の位置決めを容易にすること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
装着者の臀部の下に敷いて装着を行うことが可能であり、
製品の前後方向の中央より前側に延びる腹側部分と、
製品の前後方向の中央より後側に延びる背側部分と、
製品の前後方向の中央よりも前側から、前後方向の中央よりも後側まで延びる、股間部分と、
前記股間部分よりも後側で、左右両側に突出する後ウイングとを備え、
前記後ウイングを構成する部材に、仰臥姿勢又は伏臥姿勢にある装着者の腰の側縁を合わせることにより装着者と製品との横方向の位置が適切となる目印が印刷されており、
前記目印は、前記ウイングの内面から視認可能である、
ことを特徴とする、吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本吸収性物品上に、装着者の臀部を載せるとき、仰臥姿勢又は伏臥姿勢にある装着者の腰の側縁を目印に合わせることにより装着者と製品との横方向の位置を適切に合わせることができる。よって、保育器内での交換作業のように、交換作業者の位置が装着者の一方の脇に制限される場合であっても、装着者の下に敷かれた製品のうち装着者の下から交換作業者側にはみ出た部分の目印と装着者の腰の側縁との位置関係に基づいて、装着者と製品との横方向の位置が適切であるか否かを判別することができ、臀部の位置決めが容易となる。
【0010】
<第2の態様>
前記目印として、所定の幅方向の寸法を有する一本又は複数本の帯状目印が前後方向に沿って連続している、
第1の態様の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
本態様のような帯状目印を有していると、製品の前後方向と装着者の体の向きとを合わせつつ、装着者と製品との横方向の位置を適切に合わせることができる。
【0012】
<第3の態様>
前記目印として、所定の幅方向の寸法及び所定の前後方向の寸法を有する間欠目印が前後方向に間隔を空けて複数設けられている、
第1又は2の態様の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
本態様のような帯状目印を有していると、製品の前後方向と装着者の体の向きとの関係及び製品の前後方向の位置を合わせつつ、装着者と製品との横方向の位置を適切に合わせることができる。
【0014】
<第4の態様>
前記目印の全幅が5~20mmである、
第2又は3の態様の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
吸収性物品に適合する装着者の体寸にはある程度の範囲がある。一方、目印の幅が広すぎると、装着者の腰の側縁を目印に合わせたとしても、装着者の正中線に関して製品の幅方向中心がずれ(左右非対称の装着状態となる)やすくなる。よって、目印の全幅は本態様の範囲内であることが好ましい。なお、目印の全幅は、目印が幅方向に間隔を空けて複数ある場合には、すべての目印を含む領域の幅を意味する。
【0016】
<第5の態様>
仰臥姿勢又は伏臥姿勢にある装着者の腰の側縁が前記目印の幅方向の最も内側の縁に位置する状態が、目標の装着状態となるように構成された、
第2~4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
本態様の吸収性物品は、適切な装着位置にある程度の幅を有するものでありながら、最適な位置では目印全体が視認可能となるため、目印の見え方により装着位置の適切さの程度を判別することができる。
【0018】
<第6の態様>
前記背側部分の外面に挿入口が開口する挿入部が設けられており、
前記挿入部は、前記挿入口に通じる筒状部分を有し、
片方の手又はその手指が、前記挿入口のウエスト側以外からその反対側に向かう挿入方向に沿って、前記挿入口を経て前記筒状部分内に挿入されるように構成されている、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
吸収性物品は柔軟で変形しやすいため、吸収性物品の端部を掴んでいるだけでは、ベッド等の上に敷く際に折れ曲がることがあり、敷きやすさの点で改善の余地がある。
【0020】
特に、乳幼児では脚を片手で持って臀部を持ち上げ、反対の手で臀部の下に吸収性物品を敷くことがよく行われる。この際、吸収性物品における臀部の下に位置する部分が、内側又は外側に折れ曲がった状態になりやすく、この折れ曲がりを直す作業が必要になったり、何度も敷き直すことになったりすることがある。このような交換の手間は、乳幼児及び交換作業者の双方にとってストレスになることはいうまでもない。
【0021】
さらに、低出生体重児に装着する場合、身体に触れる時間は可能な限り短い方が好ましく、また、身体の移動も少ないことが望ましいため、作業のやり直しは好ましいことではない。
【0022】
これに対して、本吸収性物品は、製品の外面に手の内面を対向させて挿入部に片方の手又はその手指を入れることにより、片方の手又はその手指に製品の背側部分をはめることができる。そして、この状態で、手の甲を下向きにして製品をベッド等の上に配置しつつ、その上に臀部を載せる。この際、製品と手とは一体化しているから、手の位置を微調整するだけで、臀部を載せる位置を微調整することができる。そして、好ましくは製品の手と重ならない部分に臀部の一部を載せた状態(臀部を載せる前であってもよいし、臀部を載せた後でもよい)で、手又は手指を製品の挿入部から抜き取ることにより、簡単かつ正確に臀部の下に製品を敷くことができる。
【0023】
特に、片方の手指又は手に製品の背側部分をはめることにより、製品を片手でしっかりと保持できるため、例えば、乳幼児では脚を片手で持って臀部を持ち上げ、反対の手で臀部の下に吸収性物品を敷くといった作業も、非常に簡単になる。また、夜間等の薄暗い状況下でも交換作業が容易になる。
【0024】
<第7の態様>
前記筒状部分の入口は、幅方向に対して30~90度の角度で交差する第1方向に延びているとともに、前記片方の手又はその手指の挿入方向は、前記第1方向と直交する第2方向である、
第6の態様の吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
本吸収性物品の挿入部は挿入口に通じる筒状部分を有し、その筒状部分の入口は、幅方向に対して30~90度の角度で交差する第1方向に沿って延びているとともに、第1方向と直交する第2方向が挿入方向となっているため、製品の側方から左右いずれか一方の手指又は手を挿入する場合に手又は腕の向きがより自然な向きになる。よって、保育器内での交換作業のように、装着者の横から手を入れて臀部の下に製品を敷く場合であっても、製品を手指又は手にはめた状態で無理なく作業することができる。
【0026】
<第8の態様>
前記後ウイングに、前記腹側部分と着脱可能に連結される連結部を備えた、連結式吸収性物品である、
第1~7のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0027】
(作用効果)
前述の各態様の特徴は、本態様のような連結式吸収性物品に適用すると特に意義がある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、臀部の位置決めが容易になる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図4】(a)
図1の5-5断面図、及び(b)
図1の7-7断面図である。
【
図5】(a)
図1の8-8断面図、及び(b)
図1の9-9断面図である。
【
図7】(a)製品の挿入部に手指を挿入した状態を示す平面図、及び(b)挿入部に手指を挿入した製品を広げた状態を示す側面図である。
【
図8】(a)挿入部に手指を挿入した製品を、装着者の臀部の下に敷いた状態を示す斜視図、及び(b)装着者の臀部の下に敷いた製品の挿入部から手指を引き抜いた状態を示す平面図である。
【
図9】(a)(b)ともに、テープタイプ使い捨ておむつの内面の要部を示す、おむつを展開した状態における平面図である。である。
【
図10】臀部の位置決め基準を概略的に示す平面図である。
【
図11】パッチシートの(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図12】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図13】挿入部に手指を挿入した製品を、装着者の臀部の下に敷いた状態を示す斜視図である。
【
図14】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図15】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図16】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図17】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図18】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図19】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図20】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1~
図7はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xは連結テープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。また、断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としてのホットメルト接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0031】
また、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった親水性繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(同一又は類似の不織布層が積層されたSSS不織布等の他、異なる不織布層が積層された、スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。積層不織布は、すべての層を含む一体の不織布として製造され、すべての層にわたる繊維結合加工がなされたものを意味し、別々に製造された複数の不織布をホットメルト接着剤等の接合手段により貼り合わせたものは含まない。
【0032】
本テープタイプ使い捨ておむつは、前後方向LDの中央より前側に延びる腹側部分Fと、前後方向LDの中央より後側に延びる背側部分Bとを有している。また、本テープタイプ使い捨ておむつの形状は、製品の前後方向の中央よりも前側から、製品の前後方向中央よりも後側まで延びる股間部分Mと、製品の前後方向の中央よりも前側に離れた位置で、左右両側に突出する前ウイング80と、製品の前後方向の中央よりも後側に離れた位置で、左右両側に突出する後ウイング90とを有するものとなっている。さらに、本テープタイプ使い捨ておむつは、股間部を含む範囲に内蔵された吸収体56と、吸収体56の表側を覆う液透過性のトップシート30と、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11と、液不透過性シート11の裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。
【0033】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。
【0034】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0035】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0036】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0037】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0038】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、通常の場合、50~350g/m2とすることができる。
【0039】
(包装シート)
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0040】
この包装シート58は、
図3に示すように、一枚で吸収体56の全体を包む構造とするほか、上下2枚等の複数枚のシートで吸収体56の全体を包むようにしてもよい。包装シート58は省略することもできる。
【0041】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。
【0042】
トップシート30は、前後方向では製品前端から後端まで延び、幅方向WDでは吸収体56よりも側方に延びているが、例えば後述する起き上がりギャザー60の起点が吸収体56の側縁よりも幅方向中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート30の幅を吸収体56の全幅より短くする等、適宜の変形が可能である。
【0043】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0044】
中間シート40としては、不織布等の液透過性のシートを用いることができる。中間シート40としては、特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0045】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。また、中間シート40は、おむつの全長にわたり設けてもよいが、図示例のように排泄位置を含む前後方向LDの中間部分にのみ設けてもよい。
【0046】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するものが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
【0047】
液不透過性シート11は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましいが、他の遮水手段が存在する場合等、必要に応じて、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56の端部を覆わない構造とすることもできる。
【0048】
(外装不織布)
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。外装不織布12の繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2であると好ましいが、これに限定されるものではない。
【0049】
(起き上がりギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、装着者の肌側に立ち上がる起き上がりギャザー60が設けられていると好ましい。もちろん、起き上がりギャザー60は省略することもできる。
【0050】
起き上がりギャザー60を採用する場合、その構造は特に限定されず、公知のあらゆる構造を採用できる。図示例の起き上がりギャザー60は、実質的に幅方向WDに連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状のギャザー弾性部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、またギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性部材は、
図1及び
図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0051】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端から幅方向の外側の部分は各サイドフラップSFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向の外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
【0052】
脚周りにおいては、起き上がりギャザー60の接合始端より幅方向の中央側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性部材63の収縮力により立ち上がり、身体表面に密着するようになる。
【0053】
(エンドフラップ、サイドフラップ)
図示例のテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップEFと、吸収体56の両方の側縁よりも側方にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のサイドフラップSFとを有している。サイドフラップSFは、図示例のように、吸収体56を有する部分から連続する本体シート(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
【0054】
(平面ギャザー)
各サイドフラップSFには、糸ゴム等の細長状弾性部材からなるサイド弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップSFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。サイド弾性部材64は、図示例のように、ギャザーシート62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向の外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップSFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。サイド弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0055】
平面ギャザーは、サイド弾性部材64の収縮力が作用する部分(図中ではサイド弾性部材64が図示された部分)である。よって、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64が存在する形態の他、平面ギャザーよりも前側、後側又はその両側にわたりサイド弾性部材64が存在しているが、平面ギャザーの部位以外ではサイド弾性部材が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、サイド弾性部材64を挟むシートに固定されていなかったり、あるいはその両方であったりすることにより、平面ギャザー以外の部位に収縮力が作用せず(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)に、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64の収縮力が作用する構造も含まれる。
【0056】
(前ウイング)
本テープタイプ使い捨ておむつは、製品の前後方向の中央よりも前側に離れた位置で、左右両側に突出する前ウイング80を有している。前ウイングは省略する(つまり、製品の最も幅の狭い部分から製品の前端まで幅が変化しない形状とする)こともできる。
【0057】
前ウイング80の幅方向WDの寸法は適宜定めることができるが、例えば物品全長Lの5~20%(特に7~15%)とすることができる。前ウイング80の幅方向WDの寸法は、後述する後ウイング90の幅方向WDの寸法とほぼ同じにすることができる。
【0058】
(後ウイング)
本テープタイプ使い捨ておむつは、製品の前後方向の中央よりも後側に離れた位置で、左右両側に突出する後ウイング90を有している。
【0059】
後ウイング90の幅方向WDの寸法は適宜定めることができ、前ウイング80の幅方向の寸法と同じにするほか、前ウイング80の幅方向の寸法よりも小さく又は大きくすることもできる。
【0060】
(中間部分)
前ウイング80と後ウイング90との間における製品の両方の側縁15は、例えば、前後方向LDに対する鋭角側交差角が±2度未満の方向を中心として、当該中心と直交する方向に±5mmの幅の範囲を通るほぼ直線状の部分を有することができる。前ウイング80と後ウイング90との間における製品の両方の側縁15は、波状や弧状をなしていてもよい(図示略)し、図示例のように直線状であってもよい。
【0061】
(ウイングの形成)
図示例のように、サイドフラップSFの側部を凹状に切除することにより、前ウイング80の下縁から、前ウイング80と後ウイング90との間における製品の両方の側縁15を経て後ウイング90の下縁に至る凹状縁の全体を形成することができる。この場合、サイドフラップSFの積層構造により前ウイング80及び後ウイング90の積層構造が決まり、図示例ではギャザーシート62及び外装不織布12により前ウイング80及び後ウイング90が形成される。図示しないが、サイドフラップSFから側方に突出する前延長シートを設け、前ウイング80の全体又は先端側の一部を前延長シートにより形成してもよい。同様に、サイドフラップSFから側方に突出する後延長シートを設け、後ウイング90の全体又は先端側の一部を後延長シートにより形成してもよい。前延長シート及び後延長シートとしては各種の不織布を用いることができ、特に、繊度1.0~3.5dtex、目付け60~100g/m2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布を用いるのが好ましい。
【0062】
(連結部)
後ウイング90には、着用時に腹側部分Fと着脱可能に連結される連結部13Aを備えている。すなわち、着用に際しては、後ウイング90の両側部を装着者の腹側に持ち込み、後ウイング90の連結部13Aを腹側部分Fの外面に連結する。連結部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)を設ける他、粘着剤層を設けてもよい。フック材は、その連結面に多数の係合突起を有するものであり、係合突起の形状としては、レ字状、J字状、マッシュルーム状、T字状、ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等、公知のあらゆる形状を採用することができる。
【0063】
連結部13Aは、後ウイング90に直接的に取り付けることができるほか、図示例のように、連結部13Aを有する連結テープ13を後ウイング90に取り付けることもできる。連結テープ13の構造は特に限定されないが、図示例では、サイドフラップSFに固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bと、このテープ本体部13Bの幅方向WD中間部に設けられた連結部13Aとを有し、この連結部13Aより先端側が摘み部となっている。テープ取付部13Cからテープ本体部13Bまでを形成するシート材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができる。
【0064】
腹側部分Fの外面における連結部13Aの連結箇所は、適宜定めることができ、左右の前ウイング80の間に位置する本体部のみを連結個所とするものであってもよいし、本体部の側部から前ウイング80の基端側までの範囲を連結個所とするもであってもよい。これらの連結個所は、連結部13Aの連結が容易になっていることが好ましい。例えば、連結部13Aがメカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)である場合、腹側部分Fの外面における連結個所を、メカニカルファスナーのループ材(雌材)又は不織布で形成すればよい。ループ材としては、プラスチックフィルムにループ糸を縫い付けたものも知られているが、繊維の連続方向が幅方向WDの長繊維不織布(繊度2.0~4.0dtex、目付け20~50g/m2、厚み0.3~0.5mm程度のスパンボンド不織布等)に、少なくとも幅方向WDに間欠的に繊維相互を溶着した溶着部を設けたものが通気性、柔軟性の観点から好ましい。図示例のように腹側部分Fの外面における連結個所を含む領域が外装不織布12で形成されている場合、何も付加せずに、外装不織布12にフック材を連結することができる。必要に応じて、腹側部分Fの外面における連結個所にのみループ材を貼り付けてもよい。また、連結部13Aが粘着材層の場合には、粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムを、腹側部分Fの外面における連結個所に貼り付けることもできる。
【0065】
(挿入部)
図2、
図6及び
図7に示すように、背側部分Bの外面に挿入口20iが開口する挿入部20が設けられており、挿入部20は、挿入口20iに通じる扁平な筒状部分21を有し、片方の手100の手指101(一部の手指101のみでもよいし、手100全体であってもよい)が、ウエスト側以外の方向から製品の外面に沿って、挿入口20iを経て筒状部分21内に挿入されるように構成されていると好ましい。
【0066】
挿入部20を有するテープタイプ使い捨ておむつは、次のようにして装着者200の下に敷いて装着を行うことができる。すなわち、まず
図7(a)に示すように、製品1の外面に手100の内面を対向させて挿入部20に片方の手100の手指101を入れ、その手指101に製品1の背側部分Bをはめる。製品1が前後方向LDに折り畳まれている場合には、この後(又は挿入部20を手指101にはめる前に)、
図7(b)に示すように製品1を手100に沿うように広げる。そして、この状態で、
図8(a)に示すように、手100の甲を下向きにして製品1をベッド等の上に配置しつつ、その上に装着者200の臀部を載せる。この際、製品1と手100とは一体化しているから、手100の位置を微調整するだけで、臀部を載せる位置を微調整することができる。図中の符号102は腕102を示している。その後、手指101を製品1の挿入部20から抜き取ることにより、
図8(b)に示すように、簡単かつ正確に装着者200の臀部の下に製品1を敷くことができる。テープタイプ使い捨ておむつの場合の場合には、この後、前述のように、後ウイング90の連結部13Aを腹側部分Fの外面に連結する。
【0067】
このように、本テープタイプ使い捨ておむつでは、片方の手100の手指101に製品1の背側部分Bをはめることにより、製品1を片手100でしっかりと保持できるため、例えば、乳幼児では脚を片手100で持って臀部を持ち上げ、反対の手100で臀部の下にテープタイプ使い捨ておむつを敷くといった作業も、非常に簡単になる。また、夜間等の薄暗い状況下でも交換作業が容易になる。なお、製品1の挿入部20から手指101を抜く際、製品1の手100と重ならない部分に装着者200の臀部の一部を載せた状態(臀部を載せる前であってもよいし、臀部を載せた後でもよい)とすることにより、製品1がずれにくく、かつ手指101を挿入部20から抜き取りやすくなる。
【0068】
挿入部20は、挿入口20iから筒状部分21にわたり、親指以外の手指101を三本以上又は手100を挿入可能であると好ましい。これにより、本製品1を手指101にはめたとき、背側部分Bを幅方向WDに広げながら、背側部分Bの広範囲を手100で支えることができる。よって、前述の装着作業がより容易となる。
【0069】
挿入部20の挿入方向20dは、
図2及び
図12に示す例のように一方向であってもよいし、
図13~
図17に示す例のように、複数方向であってもよい。また、挿入方向20dが一方向又は対向する二方向の場合、
図13に示す例のように、筒状部分21は挿入方向20dに間隔を空けて複数設けられていてもよい。挿入方向20dが対向しない複数の方向(互いに交差する方向)の場合、
図14~
図17に示すように、各挿入方向20dに対して筒状部分21を1つずつ設けることができる。
【0070】
挿入部20の挿入方向20dは、ウエスト側以外からその反対側に向かう方向であれば特に限定されるものではない。例えば、
図2に示す例のように、挿入部20の挿入方向20dは、挿入口20iの前側から後側に向かう方向とすると、手100の向きと製品1の向きとの関係が分かりやすく、装着作業において手100の向きを調節することにより製品1の向きを調節しやすいものとなるため好ましい。
【0071】
挿入方向20dが後ろ向きとなる場合、筒状部分21の入口と21iの前後方向LDの位置は適宜定めることができるが、挿入部20の挿入方向20dを前から後に向かう方向20dとする場合、製品の前後方向LDの中央を0%とし、製品1の後端の位置を100%としたとき、筒状部分21の入口20iは30~70%の範囲に位置していると、本製品1を手100にはめたとき、背側部分Bの前後方向LDの広範囲をバランスよく手100で支えることができる。よって、前述の装着作業がより容易となる。なお、筒状部分が前後方向LD等に複数存在する場合には、筒状部分の入口は、最も前側に位置する筒状部分の入口を意味する。
【0072】
特に、成人男性・女性の中指の長さの平均が80mmであることを考慮すると、筒状部分21の入口(筒状部分21を構成する内壁iw及び外壁xwのうち外壁xwの入側の縁)21iと製品1の後端との前後方向LDの間隔(一定でない場合には最小値)Y2が70~90mmであると、
図7(a)に示すように、製品1を手100にはめた状態では指先が製品1の後端とほぼ同じ位置になるため好ましい。これにより、本製品1を手100にはめて装着作業を行う際、指先の触感で製品1後端の位置を把握することができ、例えば暗所等のように製品1を視認しにくい状況でも、製品1を適切な位置に配置することができる。
【0073】
図12~
図20に示すように、筒状部分21の入口(筒状部分21を構成する内壁iw及び外壁xwのうち外壁xwの入側の縁)21iが、幅方向WDに対して30~90度の角度θで交差する第1方向に延びていることにより、手指101の挿入方向20dは、第1方向と直交する第2方向となっているのも好ましい。幅方向WDに対する第1方向の角度θは、45~90度であるとより好ましく、60~90度であると特に好ましい。挿入部20は第1方向に延びる筒状部分21の入口21iを有する限り、
図14~
図17に示す例のように、第1方向以外の方向(幅方向WD等)に延びる筒状部分21の入口21iを有していてもよい。
【0074】
このように、筒状部分21の入口21iが、幅方向WDに対して30~90度の角度θで交差する第1方向に沿って延びているとともに、第1方向と直交する第2方向が挿入方向となっていると、製品1の側方から左右いずれか一方の手指101又は手100を挿入する場合に手100又は腕102の向きがより自然な向きになる。よって、保育器内での交換作業のように、装着者200の横から手100を入れて臀部の下に製品1を敷く場合であっても、製品1を手指101又は手100にはめた状態で無理なく作業することができる。
【0075】
第1方向及び第2方向は、交換作業者が作業時におむつにはめる手100(通常は利き手100)が左右いずれであるか、及び装着者200の左右いずれ側に立って交換作業を行うかに応じて適宜定めることができる。例えば、以下のとおりである。なお、以下の「左」及び「右」は装着者200を基準とするものである。
(A)
図12、
図17~
図19に示すように、挿入方向20d(第2方向)が背側部分Bの左斜め後ろ向き(第1方向が右斜め後ろ向き)の挿入部20を有する場合、交換作業者が右手に本テープタイプ使い捨ておむつをはめて、仰臥姿勢の装着者200の右側に立って作業を行うのに適している。
(B)
図14、
図17~
図19に示すように、挿入方向20d(第2方向)が背側部分Bの右斜め後ろ向き(第1方向が左斜め後ろ向き)の挿入部20を有する場合、交換作業者が左手に本テープタイプ使い捨ておむつをはめて、仰臥姿勢の装着者200の左側に立って作業を行うのに適している。
(C)
図17に示すように、挿入方向20d(第2方向)が背側部分Bの左斜め前向き(第1方向が右斜め前向き)の挿入部20を有する場合、交換作業者が左手に本テープタイプ使い捨ておむつをはめて、仰臥姿勢の装着者200の右側に立って作業を行うのに適している。
(D)
図17に示すように、挿入方向20d(第2方向)が背側部分Bの右斜め前向き(第1方向が左斜め前向き)の挿入部20を有する場合、交換作業者が右手に本テープタイプ使い捨ておむつをはめて、仰臥姿勢の装着者200の左側に立って作業を行うのに適している。
(E)
図15及び
図16に示すように、挿入方向20d(第2方向)が左向きの挿入部20を有する場合、交換作業者が左手又は右手に本テープタイプ使い捨ておむつをはめて、仰臥姿勢の装着者200の右側に立って作業を行うのに適している。
(F)
図15及び
図16に示すように、挿入方向20d(第2方向)が右向きの挿入部20を有する場合、交換作業者が左手又は右手に本テープタイプ使い捨ておむつをはめて、仰臥姿勢の装着者200の左側に立って作業を行うのに適している。
【0076】
特に、図示例のように、上記(A)(B)の両方、上記(C)(D)の両方、又は上記(E)(F)の両方の挿入部20を有していると好ましい。つまり、
図13~
図17に示すように、背側部分Bにおける幅方向WDの一方側及び他方側に、挿入口20iがそれぞれ設けられていると、装着者200の左右どちらから臀部の下に製品1を敷く場合であっても、交換作業者の左右いずれか一方の手100又は腕102の角度をより自然な向きに維持することができるため好ましい。
【0077】
挿入方向20dが斜め方向又は幅方向の場合、筒状部分21の入口21iの位置は適宜定めることができるが、背側部分Bの前後方向LDの寸法をLBとしたとき、背側部分Bの前後方向LDの中央かつ幅方向WDの中央を中心とした半径Rが0.8×LBの領域A内に、筒状部分21の入口21iが配置されていると、本製品1を手100にはめたとき、背側部分Bの前後方向LDの広範囲をバランスよく手100で支えることができる。よって、前述の装着作業がより容易となる。なお、筒状部分が前後方向LD等に複数存在する場合には、筒状部分の入口は、最も前側に位置する筒状部分の入口を意味する。
【0078】
挿入方向20dに関係なく、筒状部分21における挿入方向20dと直交する方向(図示例では幅方向WD)の寸法X1は、挿入方向20dに一定であってもよいし、変化してもよい。
図13に示すように、筒状部分21が挿入方向20dに間隔を空けて複数設けられている場合、各筒状部分21における挿入方向20dと直交する方向の寸法X1は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図15~
図17に示すように、挿入方向20dが異なる筒状部分21が複数設けられている場合も、同様に、各筒状部分21における挿入方向20dと直交する方向の寸法X1は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
筒状部分21の寸法の一例は以下のとおりである。すなわち、筒状部分21の第1方向(挿入方向20dと直交する方向)の寸法X1は60~90mmであると好ましい。また、筒状部分21の第2方向(挿入方向20d)の寸法はY1は20~60mmであると好ましい。なお、筒状部分21の挿入方向20dと直交する方向の寸法は、一定でない場合には最小値を意味する。また、筒状部分21の挿入方向の寸法とは、筒状部分が挿入方向20d等に複数存在する場合には、最も入側に位置する筒状部分の入口と、最も出側に位置する筒状部分の出口との、挿入方向の間隔を意味する(
図15参照)。これら寸法X1,Y1は、挿入方向20dが複数存在する場合には、最小値を意味する。この範囲内であると、人差し指、中指及び薬指の三本又は親指以外の四本を挿入部20に挿入するのに適するようになる。この場合、親指や小指が自由になることにより、より広範囲かつ自由に製品1を支持することができる利点がある。また、筒状部分21の挿入方向20dの寸法が十分に長いことにより、背側部分Bを手100の形に合わせて広げやすくなり、例えば前後方向LDの広範囲を平坦に維持しやすくなる。
【0080】
挿入部20は、例えばテープタイプ使い捨ておむつに備わる既存の部材に切れ目や非接合部24を設けたり、シートを用いて扁平筒状や扁平袋状に組み立てた組立体を背側部分Bの外面に取り付けたりすることにより構築することもできるが、図示例のように背側部分Bの外面に専用のパッチシート22を付加することにより構築するのも好ましい。すなわち、
図2、
図12、
図14及び
図15に示される例では、背側部分Bの外面における、吸収体56と重なる部分に、帯状のパッチシート22が積層されており、パッチシート22の長手方向の両端部は、その内側に対向する対向面(図示例では外装シートの外面)と接合された接合部23を有し、パッチシート22における長手方向の一方側の接合部23と他方側の接合部23との間の部分は、対向面と接合されていない非接合部24となっており、非接合部24(外壁xw)と対向面(iw)とにより筒状部分21が形成されている。この場合、挿入部20に手指101を挿入したときに、非接合部24と対向面との隙間(筒状部分21の内空)が広がりつつ接合部23の間隔が狭くなることにより、
図8に示すように製品1が手100側に反るように変形する。したがって、製品1の端が装着者200側に折れ曲がりにくく、ベッド等の上に敷きやすくなる。特に、図示例のように、パッチシート22の接合部23が吸収体56と重なる部分に設けられていると、挿入部20に手指101又は手100を挿入したときに、挿入部20が変形しにくくなり、手指101又は手100がよりしっかりと挿入部20に挟まれるため好ましい。
【0081】
また、
図15に示す例のように、前後方向LDに延びる帯状のパッチシート22が幅方向WD中央部に設けられるとともに、非接合部24が幅方向WDの両端まで設けられていると、幅方向WDの一方側及び他方側に、挿入口20iがそれぞれ設けられることになる。よって、装着者200の左右どちらから臀部の下に製品1を敷く場合であっても、交換作業者の手100又は腕102の角度をより自然な向きに維持することができる。
【0082】
幅方向WDに対する第1方向の角度を90度未満とする場合、
図12及び
図14に示すように、帯状のシートを傾斜させて配置することもできる。しかし、この場合、作業者が両利きでない限り装着者200の左右どちらからでも挿入しやすいものとはならない。そこで、
図16~
図19に示すように、パッチシート22の接合部23を多角形の各頂点をなすように配置し、接合部23以外の部分を非接合部24とするのも好ましい。この場合、多角形の各頂点をなすように配置される接合部23の間、つまり接合部23を結んで形成される多角形の各辺がそれぞれ筒状部分21の入口21iとなる。よって、非常に簡素な構造で、前述したように様々な方向から手指101又は手100を挿入できるようになる。例えば、交換作業者の立ち位置や利き手100の違いに関係なく、交換作業者の手100又は腕102の角度をより自然な向きに維持できるようになる。なお、接合部23は、
図16は前後方向LD及び幅方向WDに沿う辺を有する正方形、
図18及び
図19は幅方向WDに沿う辺を有する正三角形、
図17は正六角形の頂点をなすように配置しているが、これに限定されるものはない。
【0083】
パッチシート22を用いて挿入部20を形成する場合、パッチシート22と対向面との接合部23はパッチシート22の縁まで設けられていてもよいが、パッチシート22の縁から離間していてもよい。挿入方向20dにおける接合部23とパッチシート22の縁との離間距離は適宜定めることができるが、通常の場合、1~5mm程度であると余分な部分が少なくなるため好ましい。前者の場合、図示しないがパッチシート22の挿入側の縁とその内側に対向する部分との間が挿入口20iとなるだけでなく、筒状部分21の入口21iとなる。後者の場合、図示例のように最も挿入側に位置する接合部23の間が筒状部分21の入口21iとなる。
図2、
図12、
図14~
図18、及び
図20に示す例のように、筒状部分21の入口21iはパッチシート22の縁と平行に延びていると好ましいが、
図19に示す例のように非平行であってもよい。
【0084】
パッチシート22の寸法は、前述の挿入部20の寸法以上であれば特に限定されるものではない。また、パッチシート22の形状は、
図16~
図18に示される例では接合部23の配置に合わせて、帯状(長方形状)、三角形、六角形等の多角形状としているが、接合部23の配置に関係なくハート形(
図17参照)や星形、雲形等の非幾何学的形状としたりすることもできる。
【0085】
挿入方向20dと直交する方向における接合部23の間隔又は非接合部24の寸法により、筒状部分21の幅が定まる。接合部23の寸法は適宜定めることができるが、挿入方向20dと直交する方向の接合部23の寸法は1~5mmであることが好ましい。また、挿入方向20dの接合部23の寸法(接合部23を挿入方向20dに間隔を空けて複数設ける場合は総寸法)はパッチシート22の挿入方向20dの寸法の?~?倍程度とすることができる。パッチシート22と対向面との接合部23は、パッチシート22及び対向面の少なくとも一方の溶着により、又はホットメルト接着剤などの接着剤により行うことができる。
【0086】
パッチシート22と対向面との接合部23は、
図2に示すように、挿入部20の挿入方向20dと直交する方向の両側に、挿入方向20dに連続的に一つだけ設けるほか、
図15に示すように、挿入方向20dに間隔を空けて複数設けることができる。前者の場合、パッチシート22のほぼ全体にわたる筒状部分21が一つだけ形成され、後者の場合、筒状部分21が挿入方向20dに間隔を空けて複数形成され、各筒状部分21に対して順番に手指101を挿入することになる(換言すると、実質的に単一の筒状部分21が形成される)。また、図示例のように、パッチシート22と対向面との接合部23をパッチシート22の挿入側と反対側には設けずに、手指101が挿入部20の反対側に突き抜ける構造とするほか、
図20に示すように、パッチシート22と対向面との接合部23をパッチシート22の挿入方向20dの終端部(図示例では後端部)に設け、ポケット状又は袋状の挿入部20とすることもできる。
【0087】
パッチシート22の素材は特に限定されるものではなく、不織布等の非伸縮性素材の他、弾性フィルム、伸縮不織布等のそれ自体で弾性伸縮する素材を用いることもできる。不織布としては、30~60g/m2程度のスパンボンド不織布を好適に用いることができる。
【0088】
パッチシート22を用いて挿入部20を形成する場合、挿入方向20dと直交する方向に弾性伸縮する伸縮部75を少なくとも非接合部24に有すると、挿入部20に手指101等を挿入したときに伸縮部75が伸長し、手指101又は手100に良好にフィットするため好ましい。また、挿入部20に挿入した指を広げることにより、挿入部20の幅を広げて、より広範囲に製品1を支持することができる。
【0089】
このような伸縮部を有するパッチシート22は、パッチシート22の素材として弾性フィルムを用いることでも実現可能であるが、
図11に示すように、二枚の不織布等の支持シート層71をホットメルト接着剤等の接着剤により貼り合わせるとともに、両支持シート層71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性部材72を挿入方向20dと直交する方向に沿って伸長した状態で固定したものを用いることもできる。この場合における支持シート層71の素材は特に限定されるものではないが、繊度1.6~6.0dtex、目付け10~30g/m
2、厚み0.1~1.3mmの不織布であると好ましい。弾性部材72の伸長率は150~250%程度であるのが好ましい。また、弾性部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420~1120dtexのものを3~10mmの間隔で5~15本程度設けるのが好ましい。
【0090】
弾性部材72を内蔵するパッチシート22における伸縮方向の両端部は、製造時に吸引により保持して取付けを行うために非伸縮部76となっていてもよい。非伸縮部76の寸法は接合部23の寸法以上とすることが好ましいが、これに限定されない。また、非伸縮部76の間に位置する伸縮部75の寸法は挿入口20i及び挿入部20の寸法を考慮して適宜定めればよい。非伸縮部76は弾性部材72を有しない領域としてもよいが、伸縮部75及び非伸縮部76にわたり弾性部材72を取り付けるとともに、非伸縮部76では弾性部材72を切断する等により、非伸縮部76に弾性部材72が残留するもののほとんど又は全く伸縮しない構造としてもよい。
【0091】
なお、伸縮部75を有するパッチシート22を背側部分Bの外面に取り付ける場合、伸縮部75を伸長した状態で貼り付けると、装着状態でテープタイプ使い捨ておむつが伸縮部75の伸縮方向に収縮し、漏れや装着感の悪化につながるおそれがある。よって、伸縮部75を有するパッチシート22を背側部分Bの外面に取り付ける場合、その伸縮方向の伸長率は110%以下であることが好ましい。
【0092】
パッチシート22の内面の平均摩擦係数が高いと、手指101又は手100を挿入部20から抜こうとしたときに、製品1が手指101又は手100とともに動いてズレてしまい、作業をやり直す必要が生じるおそれがある。これに対して、パッチシート22の内面の平均摩擦係数MIUが0.1~0.2である(十分に低い)と、製品1を動かさずに手指101又は手100を挿入部20から抜きやすくなるため好ましい。パッチシート22の対向面の平均摩擦係数MIUも同様の範囲内であると好ましい。
【0093】
また、パッチシート22の外面の平均摩擦係数MIUが0.2~0.3である(十分に高い)と、ベッド等の表面との摩擦により、手指101又は手100を挿入部20から抜こうとしたときに、製品1が手指101又は手100とともに動きにくくなるため好ましい。なお、パッチシート22の外面の平均摩擦係数は、パッチシート22の内面の平均摩擦係数の?~?倍であると特に好ましいが、これに限定されるものではない。
【0094】
以上に説明した挿入部20は設けなくてもよい。
【0095】
(目印)
後ウイング90を構成する部材に、仰臥姿勢(又は伏臥姿勢でもよい)にある装着者200の腰の側縁201を合わせることにより装着者200と製品1との横方向の位置が適切となる目印2が印刷されており、この目印2が、前記ウイングの内面から視認可能であると、
図8(b)に示すように、本テープタイプ使い捨ておむつ上に、装着者200の臀部を載せるとき、仰臥姿勢にある装着者200の腰の側縁201を目印2に合わせることにより装着者200と製品1との横方向の位置を適切に合わせることができる。よって、保育器内での交換作業のように、交換作業者の位置が装着者200の一方の脇に制限される場合であっても、装着者200の下に敷かれた製品1のうち装着者200の下から交換作業者側にはみ出た部分の目印2と装着者200の腰の側縁201との位置関係に基づいて、装着者200と製品1との横方向の位置が適切であるか否かを判別することができ、臀部の位置決めが容易となる。
【0096】
目印2の形状、寸法は適宜定めることができる。例えば、
図1に示すように、所定の幅方向WDの寸法2Wを有する一本又は複数本の帯状目印2が前後方向LDに沿って連続していると、製品1の前後方向LDと装着者200の体の向きとを合わせつつ、装着者200と製品1との横方向の位置を適切に合わせることができる。
【0097】
また、
図9(a)(b)に示すように、所定の幅方向WDの寸法2W及び所定の前後方向LDの寸法2Lを有する間欠目印2が前後方向LDに間隔を空けて複数設けられているのも好ましい。この場合、製品1の前後方向LDと装着者200の体の向きとの関係及び製品1の前後方向LDの位置を合わせつつ、装着者200と製品1との横方向の位置を適切に合わせることができる。間欠目印2は、
図9(a)に示すように四角形等の幾何学的形状であってもよいし、
図9(b)に示すようにキャラクター等の絵であってもよい。
【0098】
テープタイプ使い捨ておむつに適合する装着者200の体寸にはある程度の範囲がある。一方、目印2の幅が広すぎると、装着者200の腰の側縁201を目印2に合わせたとしても、装着者200の正中線に関して製品1の幅方向WD中心がずれ(左右非対称の装着状態となる)やすくなる。よって、目印2の全幅2Xは5~20mmであると好ましい。なお、目印2の全幅22Xは、目印2が幅方向WDに間隔を空けて複数ある場合には、すべての目印2を含む領域の幅を意味する。
【0099】
目印2の位置は適宜定めることができるが、目印2が所定の幅方向WDの寸法2Wを有する場合、仰臥姿勢(又は伏臥姿勢でもよい)にある装着者200の腰の側縁201が目印2の最も内側の縁2eに位置する状態が、目標の装着状態となるように構成されていると好ましい。このような目印2を有すると、適切な装着位置にある程度の幅を有するものでありながら、最適な位置では目印2全体が視認可能となるため、目印2の見え方により装着位置の適切さの程度を判別することができる。例えば、交換作業者が、仰臥姿勢にある装着者200の腰の側縁201と目印2の位置とを平面視で比較したとき、
図10(a)に示すように、目印2の一部(例えば二本ある帯状目印2のうちの一本や、体の側方に顔があるキャラクター目印2の顔だけ等)が見え、残部が隠れているときには十分ではあるが、最適な位置からはおむつがずれており、
図10(b)に示すように、目印2の全体が見えるとともに、装着者200の腰の側縁201が目印2の最も内側の縁2eに整合しているときにはおむつが最適な位置にあることとなる。
【0100】
目印2が印刷される部材は、後ウイング90を構成する部材であれば特に限定されず、不織布からなるギャザーシート62や外装不織布12であってもよい。しかし、これらの素材は鮮明な印刷が困難である。よって、液不透過性シート11に樹脂フィルムを用いるとともに、この樹脂フィルムを後ウイング90まで側方に延長し、この延長部分の表側の面に目印2を印刷することが好ましい。この場合、目印2はギャザーシート62を介して透けて見える必要があるため、ギャザーシート62には光線透過性に優れる不織布を用いることが好ましい。また、目印2は、後ウイングの外面から視認不可能であっても、視認可能になっていてもよい。後者の場合、図示例では、目印2が外装不織布12を介して透けて見える必要があるため、外装不織布12には光線透過性に優れる不織布を用いることが好ましい。
【0101】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0102】
・「内側」とは、特に方向が示されていない場合には、装着状態で装着者の肌に近い方(表側)を意味し、「外側」とは、特に方向が示されていない場合には、装着状態で装着者の肌から遠い方(裏側)を意味する。
【0103】
・「内面」とは部材の、装着状態で装着者の肌に近い方の面を意味し、「外面」とは装着状態で装着者の肌から遠い方の面を意味する。
【0104】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0105】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0106】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0107】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0108】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0109】
・「平均摩擦係数MIU」は、カトーテック株式会社製の摩擦感テスターKES-SE(10mm角ピアノワイヤセンサ)を用いて測定される値を意味する。
【0110】
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0111】
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0112】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【0113】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、装着者の臀部の下に敷いて装着を行うことが可能な吸収性物品に適用できるものであり、例えば上述のテープタイプ使い捨ておむつの他に、パッドタイプ使い捨ておむつ等にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0115】
B…背側部分、EF…エンドフラップ、F…腹側部分、L…全長、LD…前後方向、M…股間部分、SF…サイドフラップ、WD…幅方向、1…製品、2…目印、11…液不透過性シート、12…外装不織布、13…連結テープ、13A…連結部、15…側縁、20…挿入部、20d…挿入方向、20i…挿入口、21…筒状部分、21i…入口、22…パッチシート、23…接合部、24…非接合部、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、62…ギャザーシート、64…サイド弾性部材、75…伸縮部、80…前ウイング、90…後ウイング、100…手、101…手指、102…腕、200…装着者。