(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20231122BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20231122BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R33/07
G01R33/02 Z
H01L21/66 W
H01L21/66 Y
(21)【出願番号】P 2020020832
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(73)【特許権者】
【識別番号】302042379
【氏名又は名称】株式会社東栄科学産業
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂行
(72)【発明者】
【氏名】内海 良一
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-024518(JP,A)
【文献】特開平04-334077(JP,A)
【文献】特開2007-147568(JP,A)
【文献】特開2012-198102(JP,A)
【文献】特開2004-151056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 33/07
G01R 33/02
H10N 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗メモリもしくは磁気センサを含む被試験デバイスが形成された被試験ウェハを試験する試験装置であって、
テストヘッドと、
試験工程において前記被試験ウェハが載置されるステージと、
前記テストヘッドに取り付けられる接続ユニットと、
前記接続ユニットに対して着脱可能に取り付けられ、前記試験工程において、前記被試験ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される試験用プローブカードと、
前記接続ユニットの内部に設けられ、前記試験工程において、前記試験用プローブカードを介して前記被試験ウェハに磁場を印加する磁場印加装置と、
を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記磁場印加装置は、
コアと、
前記コアに巻装されるコイルと、
前記コイルを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記接続ユニットは、前記テストヘッドから前記駆動回路に対する制御信号を受信するインタフェース回路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記磁場印加装置は、
コアと、
前記コアに巻装されるコイルと、を備え、
前記コイルを駆動する駆動回路は、前記接続ユニットの外部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
複数の磁気検出ユニットが形成されており、前記試験装置の診断工程において、前記被試験ウェハに替えて前記ステージに載置され、各磁気検出ユニットにより前記磁場印加装置が発生する磁場を測定可能な診断用ウェハと、
前記診断工程において前記試験用プローブカードに替えて使用され、前記診断用ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される診断用プローブカードと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のメモリとして、磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)が開発されている。磁気抵抗メモリは、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)の磁化状態を利用して情報を記録するため、SRAM(Static RAM)やDRAM(Dynamic RAM)などの電荷を利用したメモリと異なり、不揮発性を有する。
【0003】
MRAMは、データの書き込みに際して、MTJに磁場を印加することにより、MTJの磁化の状態を変化させる必要がある。言い換えると、外部の磁場によってMTJの磁化の状態が変化すると、データが破壊される。そのため、MRAMは、電気的特性に加えて、外部印加磁場などの磁気的特性も含めて今後、仕様が定められ、MRAMは、組み立て工程前に磁気的特性を試験する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-024518号公報
【文献】特開2008-139305号公報
【文献】特開2004-151056号公報
【文献】特開2012-198102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ウェハ上のデバイスに磁場を印加可能な試験装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、磁気抵抗メモリまたは磁気センサを含む被試験デバイスが形成された被試験ウェハを試験する試験装置に関する。試験装置は、磁気抵抗メモリもしくは磁気センサを含む被試験デバイスが形成された被試験ウェハを試験する試験装置であって、テストヘッドと、試験工程において被試験ウェハが載置されるステージと、試験工程において、被試験ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される試験用プローブカードと、試験用プローブカードとテストヘッドの間に設けられる接続ユニットと、接続ユニットに設けられ、試験工程において被試験ウェハに磁場を印加する磁場印加装置と、を備える。
【0007】
電磁石は与える電流量に依って磁場強度が変化するため、それ自体が発熱体となるため、周囲の温度に影響を及ぼす。本態様によれば、磁場印加装置を、ウェハによって、温度制御すべきステージと分離することができる。
【0008】
磁場印加装置に対する制御信号は、テストヘッドと接続ユニットの間の既存のインタフェースを利用して伝送されてもよい。磁場印加装置を、ステージの下側や側方に設ける場合、磁場印加装置に対する制御信号を伝送するための配線やインタフェースを、新たに追加する必要がある。これに対して既存のインタフェースを利用することで、システムを簡素化できる。
【0009】
磁場印加装置は、コアと、コアに巻装されるコイルと、コイルを駆動する駆動回路と、を備えてもよい。接続ユニットは、テストヘッドから駆動回路に対する制御信号を受信するインタフェース回路をさらに備えてもよい。
【0010】
磁場印加装置は、コアと、コアに巻装されるコイルと、を備えてもよい。コイルを駆動する駆動回路は、接続ユニットの外部に設けられてもよい。
【0011】
試験装置は、複数の磁気検出ユニットが形成されており、試験装置の診断工程において、被試験ウェハに替えてステージに載置され、各磁気検出ユニットにより磁場印加装置が発生する磁場を測定可能な診断用ウェハと、診断工程において試験用プローブカードに替えて使用され、診断用ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される診断用プローブカードと、をさらに備えてもよい。
【0012】
診断用ウェハに形成した磁気検出ユニットは、被試験ウェハに形成される被試験デバイスと同じ高さに存在することとなる。したがって、診断用ウェハ上の磁気検出ユニットによって、被試験ウェハに形成される被試験デバイスに印加されるであろう外部磁場を正確に測定することが可能となる。磁気検出ユニットの出力は、診断用プローブカードを介してテストヘッドに入力され、テストヘッドあるいはテスタ本体のハードウェアを有効利用して処理することができる。
【0013】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、ウェハ上のデバイスに磁場を印加できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施の形態1に係る試験装置のブロック図である。
【
図4】変形例1に係る磁場印加装置の断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る試験装置を示す図である。
【
図7】診断工程における試験装置の構成を示す図である。
【
図11】
図11(a)~(c)は、変形例4に係る磁気検出ユニットおよびテストヘッドの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、被試験ウェハ10を示す図である。被試験ウェハ10には、複数の被試験デバイス12が形成されており、ダイシングすることにより、被試験デバイス12のチップが得られる。本実施の形態において被試験デバイス12はMRAMであり、MRAMのセルを構成するMTJや、その周辺回路、コンタクト用の複数のピン(電極)を有する。破線14は、後述の試験装置100Eによって同時測定される範囲(同測領域という)を示しており、通常、試験装置100Eは、複数の(たとえば256個、128個など)被試験デバイス12を同時に測定する。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る試験装置100Eのブロック図である。試験装置100Eは、
図1の被試験ウェハ10を試験するウェハ検査装置である。試験装置100Eは、テスタ本体110、テストヘッド120、ステージ130、磁場印加装置140、ウェハ接続HiFix150、試験用プローブカード160を備える。
【0019】
テスタ本体110は、テストプログラムを実行する演算処理装置を備え、試験装置100Eを統合的に制御する。
【0020】
テストヘッド120には、被試験デバイス12に電力を供給するデバイス電源122や、電圧電流測定器(DVM)124、パターン発生器126、などのハードウェアが内蔵される。これらのハードウェアは、テスタ本体110によって制御される。これらのハードウェアの一部は、テスタ本体110に設けられてもよい。インタフェース回路(トランシーバ)128は、ウェハ接続HiFix150に設けられるインタフェース回路152との間で、データを送受信可能に構成される。インタフェース回路128の種類は特に限定されないが、たとえばイーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)などのプロトコルを採用してもよい。
【0021】
ステージ130はチャックとも称され、試験工程においてその上に、被試験ウェハ10が載置される。ステージ130は、X,Y、Z方向に移動可能であり、さらにZ軸周りのθ方向に回動可能であってもよい。
【0022】
磁場印加装置140は、試験工程において被試験ウェハ10に外部磁場BEXを印加する。具体的には磁場印加装置140は、被試験ウェハ10の同測領域14に、言い換えると、同測領域14に含まれる複数の被試験デバイス12に対して、実質的に均一な外部磁場BEXを印加するように構成されている。磁場印加装置140の構成は特に限定されないが、外部磁場BEXの大きさや波形を電気的に制御可能な電磁石で構成するとよい。
【0023】
MRAMには、垂直磁場を印加するタイプと、水平磁場を印加するタイプが存在する。磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXの向きは、MRAMの種類に応じて定められ、本実施の形態では、外部磁場BEXは被試験ウェハ10に対して垂直方向を向くものとする。
【0024】
試験用プローブカード160は、パフォーマンスボードとも称され、試験工程において、被試験ウェハ10に対してプローブコンタクト可能に構成される。具体的には試験用プローブカード160の底面には、被試験ウェハ10の複数のピンと接触可能な複数のプローブ針162が設けられる。
【0025】
テストヘッド120と試験用プローブカード160の間には、ウェハ接続HiFix150あるいはHiFIX(High Fidelity Tester Access Fixture)と呼ばれる接続ユニット(インタフェース)が設けられ、ウェハ接続HiFix150を経由して、テストヘッド120と試験用プローブカード160の間の信号が伝送される。本実施の形態において、磁場印加装置140の主要部は、ウェハ接続HiFix150に設けられている。磁場印加装置140に対する制御信号は、テストヘッド120のインタフェース回路128と、ウェハ接続HiFix150のインタフェース回路152の間の通信によって伝送することができる。
【0026】
以上が試験装置100Eの基本構成である。通常の試験工程では、同測領域14に含まれる複数の被試験デバイス12に対して、磁場印加装置140によって外部磁場BEXを印加しながら、被試験デバイス12であるMRAMに対するデータの書き込みや読み出しを行い、被試験デバイス12が正常に動作するか否かが検査される。ステージ130によって被試験ウェハ10の位置を移動させ、同じ処理を繰り返すことにより、被試験ウェハ10の全チップが検査される。
【0027】
図3は、磁場印加装置140の断面図である。磁場印加装置140は、コア142と、コア142に巻装されるコイル144を備える。この構成によれば、被試験ウェハ10に対して垂直な外部磁場B
EXを印加できる。磁場印加装置140は上述のようにウェハ接続HiFix150に内蔵されている。
図3では、試験用プローブカード160は省略している。
【0028】
続いて、試験装置100Eの利点を説明する。
【0029】
さらに、本実施の形態では、磁場印加装置140をウェハ接続HiFix150に内蔵することとした。多くの試験装置において、被試験ウェハ10の温度特性が検査され、ステージ130の温度は動的に制御される。磁場印加装置140を構成する電磁石は、与える電流量に依って磁場強度が変化するとともに、それ自体が発熱体となるため、磁場印加装置140を、温度制御可能なステージ130と近接して配置させると、ステージ130の温度制御に悪影響を及ぼすおそれがある。本実施の形態によれば、磁場印加装置140を、試験用プローブカード160および被試験ウェハ10(あるいは診断用ウェハ170および診断用プローブカード180)によって、熱源であるステージ130と分離することができ、熱の影響を受けにくくできる。
【0030】
また、磁場印加装置140をステージ130の下側あるいは側方に配置することも可能であるが、その場合、テストヘッド120から磁場印加装置140を制御するための制御ラインを、別途設ける必要がある。これに対して本実施の形態によれば、磁場印加装置140をウェハ接続HiFix150に内蔵しているため、テストヘッド120とウェハ接続HiFix150の間の既存のインタフェース回路128,152を利用して、磁場印加装置140に対する制御信号を伝送できるため、システムを簡素化できる。さらに磁場印加装置140を、テストヘッド120に内蔵されるハードウェアと同列に扱うことが可能となるため、磁場印加装置140に対する制御命令を、テスタ本体110が実行するテストプログラムに記述することが可能となる。
【0031】
これまでの説明では、被試験ウェハ10に対して垂直方向の外部磁場B
EXを発生したがその限りでなく、磁場印加装置140は、被試験ウェハ10の面内方向の外部磁場B
EXを印加するよう構成されてもよい。
図4は、変形例1に係る磁場印加装置140Dの断面図である。
図4では、試験用プローブカード160は省略している。
【0032】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る試験装置100を示す図である。試験装置100は、診断工程において、磁場印加装置140が発生する外部磁場B
EXを測定可能となっている。磁場印加装置140の診断、校正のために、試験装置100は、診断用ウェハ170および診断用プローブカード180とともに使用される。
【0033】
図6は、診断用ウェハ170を示す図である。診断用ウェハ170は、試験装置100の診断工程において、被試験ウェハ10に替えてステージ130に載置される。診断用ウェハ170には、磁場印加装置140が発生する磁場B
EXを測定可能な複数の磁気検出ユニット172が形成されている。
図6には、同測領域14が破線で示される。同測領域14は、均一な外部磁場B
EXの印加を保証すべき範囲といえる。診断用ウェハ170の材料は特に限定されないが、シリコンやSiC、GaNなどの半導体基板であってもよいし、半導体以外の基板であってもよい。
【0034】
複数の磁気検出ユニット172は、同測領域14あるいはそれより広い範囲にわたって配置され、外部磁場BEXの強度分布を取得可能となっている。ここでは9個の磁気検出ユニット172が示されるが、磁気検出ユニット172の個数は限定されず、高い空間分解能が必要であれば、その個数を多くし、そうで無い場合はその個数を減らすことができる。
【0035】
図5に戻る。診断用プローブカード180は診断用ウェハ170とセットで使用され、診断工程において試験用プローブカード160に替えてウェハ接続HiFix150に装着される。診断用プローブカード180は、診断用ウェハ170と対向して設けられ、診断用ウェハ170に対してプローブコンタクト可能に構成される。具体的には診断用プローブカード180の底面には、診断用ウェハ170の複数のピンと接触可能な複数のプローブ針182が設けられる。
【0036】
図7は、診断工程における試験装置100の構成を示す図である。診断用ウェハ170には、複数の磁気検出ユニット172が形成されている。磁気検出ユニット172は、磁気センサ174と、磁気センサ174の出力であるホール信号H+,H-を差動増幅するアンプ176を含み、三端子構造(VDD,GND,OUT)を有する。磁気検出ユニット172の電源ピンVDDには、ウェハ接続HiFix150および診断用プローブカード180を介して、デバイス電源122が発生する電源電圧が供給される。また磁気検出ユニット172の接地ピンVDDには、ウェハ接続HiFix150および診断用プローブカード180を介して、デバイス電源122の接地電圧が供給される。また磁気検出ユニット172の出力ピンOUTには、磁気センサ174が受けた外部磁場B
EXに応じた検出信号が発生する。出力ピンOUTは、ウェハ接続HiFix150および診断用プローブカード180を介して、DVM124と接続されており、検出信号がデジタル信号として取り込まれる。
【0037】
ウェハ接続HiFix150には、磁場印加装置140が設けられる。なお、スペースの関係で磁場印加装置140を縮小して示すが、実際には、複数の磁気検出ユニット172をカバーする面積を有する。磁場印加装置140は、ひとつまたは複数のコア142と、各コア142に巻装されるコイル144と、駆動回路146を備える。駆動回路146は、テストヘッド120から供給される制御信号を受け、制御信号に応じて、コイル144に流れる電流を制御し、外部磁場BEXを発生させる。
【0038】
診断工程においては、診断用ウェハ170に形成される複数N個の磁気検出ユニット172の全部に対して、一斉にコンタクトを取り、N個すべての磁気検出ユニット172を利用して、N点の外部磁場BEXを一斉に測定するようにしてもよい。あるいはN点の外部磁場BEXを一斉に測定するのではなく、何回かに分けて測定してもよい。
【0039】
以上が試験装置100の構成である。続いて、試験装置100の利点を説明する。
【0040】
診断用ウェハ170に形成した磁気検出ユニット172は、被試験ウェハ10に形成される被試験デバイス12と同じ高さに存在することとなる。したがって、診断用ウェハ170上の磁気検出ユニット172によって、被試験ウェハ10に形成される被試験デバイス12に印加されるであろう外部磁場BEXを正確に測定することが可能となる。
【0041】
磁気検出ユニット172は診断用ウェハ170に半導体プロセスで集積化して作製することができるため、従来の市販の磁気プローブよりも高密度に配置することができる。したがって、N個の磁気検出ユニット172によって、磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXを多点で測定でき、その強度分布を得ることができる。
【0042】
従来の市販磁気プローブを用いる手法では、磁気プローブに専用の計測器を用いる必要があり、計測器の出力をテスタ本体110に取り込みたい場合、ユーザは、複雑な試験システムを構築する必要がある。これに対して、本実施の形態では、磁気検出ユニット172から得られる電気信号を、テストヘッド120に内蔵されるハードウェア、すなわち試験装置100が標準的に備えるハードウェアを利用して処理することができ、さらに、得られた磁気分布に関するデータをテスタ本体110が直接的に処理することが可能である。
【0043】
続いて実施の形態2に関連する変形例を説明する。
【0044】
(変形例1)
図8は、変形例1に係る試験装置100Aを示す図である。この変形例1では、診断用プローブカード180において、複数の磁気検出ユニット172のGNDピンは共通に接続され、接地されている。診断用プローブカード180においてGNDピン同士をショートすることにより、インピーダンスを下げることができ、ノイズに対する耐性を高めることができる。
【0045】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る試験装置100Bを示す図である。磁気検出ユニット172は、磁気センサ174と、電源ピンVDD、接地ピンGND、一対の出力ピンOUTP,OUTNを有する。磁気センサ174が発生する正極と負極の電気信号H+,H-は、出力ピンOUTP,OUTNを経由して、診断用プローブカード180に供給される。この例では、磁気センサ174はホール素子である。診断用プローブカード180は、電気信号H+,H-を差動増幅するアンプ184を備える。アンプ184の出力は、ウェハ接続HiFix150を経由してDVM124に供給され、取り込まれる。
【0046】
上述の変形例1は、変形例2に比べてプローブ針182の本数を減らすことができるという利点がある。一方、変形例2は、アンプ184としてディスクリート部品を利用できるため、診断用ウェハ170に集積化されるアンプ176よりも性能が安定した、および/または高性能なものを用いることができる。
【0047】
(変形例3)
図10は、変形例3に係る試験装置100Cを示す図である。磁気検出ユニット172の構成は変形例2と同様である。変形例3では、磁気センサ174が発生する正極と負極の電気信号H+,H-は、出力ピンOUTP,OUTN、診断用プローブカード180、ウェハ接続HiFix150を介して、DVM124に供給され、取り込まれる。変形例3は、ホール信号H+,H-の信号レベルが十分に大きく、S/N比が高いプラットフォームにおいて有効である。
【0048】
(変形例4)
磁気検出ユニット172は、磁気センサ174としてホール素子に替えて、磁場に応じて抵抗が変化するMR(磁気抵抗)センサを備えてもよい。
図11(a)~(c)は、変形例4に係る磁気検出ユニット172およびテストヘッド120の回路図である。
図11(a)、(b)の磁気検出ユニット172E、172FはMR素子178を含む。
図11(a)のテストヘッド120Eは、電流印加/電圧測定によって、MR素子178の抵抗値の変化を検出する。
図11(b)のテストヘッド120Fは、電圧印加/電流測定によって、MR素子178の抵抗値の変化を検出する。
図11(c)の磁気検出ユニット172Gは、MR素子178に加えて、抵抗179を含む。テストヘッド120Gは、FORCEピンとGNDピンの間に定電圧を印加し、SENSEピンに発生する電圧を測定する。抵抗179を、診断用プローブカード180に設けてもよい。
【0049】
(変形例5)
実施の形態では、被試験ウェハ10を分割して検査する場合を説明したが、ウェハ一括方式(Full Wafer Contact)にも本発明は適用可能である。この場合、磁場印加装置140は、被試験ウェハ10の全面にわたり、均一な磁場を印加可能に構成される。
【0050】
(変形例6)
図12は、変形例6に係る試験装置100Fを示す図である。ステージ130には温度制御機構が組み込まれている場合がある。車載向け用途のデバイスは-50℃~170℃の温度範囲で動作することが要求される場合があり、その場合、ステージ130の温度も、-50℃~-70℃まで冷却される。ステージ130の冷却の結果、ウェハ接続HiFix150の温度が低下すると、結露が発生するおそれがある。そこでウェハ接続HiFix150には、ドライエア供給源154からドライエアが供給可能となっている。
【0051】
磁場印加装置140は発熱体であるため、その発熱が、試験用プローブカード160やステージ130に影響を及ぼすことは好ましくない。ドライエアのみによる空冷では、冷却能力が不足する様な場合には、ウェハ接続HiFix150を冷却するための冷却チラー190を設けることで、試験用プローブカード160やステージ130への熱的な影響を低減できる。
【0052】
図13は、磁場印加装置140Fの構成例を示す図である。磁場印加装置140Fには、コア142と密に接触して熱的に結合された冷却機構156が設けられる。冷却機構156の内部には、冷媒パイプ192を経由して冷媒が流入し、冷却機構156の内部で熱を奪った冷媒が、冷却機構156から冷媒パイプ192を介して排出される。
【0053】
またウェハ接続HiFix150を冷却することで、作業者が接触してやけどを負うなどの被災を防止できる。
【0054】
また、磁場印加装置140からは、被試験ウェハ10に印加すべき外部磁場B
EXとは別に、望ましくない漏洩磁場が発生する。この漏洩磁場は、被試験ウェハ10や試験装置100自体、あるいは周囲の機器や人体に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、
図13に示すように、磁場印加装置140Fは、漏洩磁場を遮蔽する磁気シールド機構158を備える。
【0055】
(変形例7)
実施の形態では、磁場印加装置140に対する制御信号を、テストヘッド120のインタフェース回路128とウェハ接続HiFix150のインタフェース回路152の通信で伝送することとしたがその限りでなく、それとは別の経路で伝送するようにしてもよい。
【0056】
磁場印加装置140のコントローラを追加し、テスタ本体110から、コントローラに制御信号を与え、このコントローラが磁場印加装置140の発生磁場を制御するようにしてもよい。
【0057】
また、磁場印加装置140のうち、主要部であるコア142およびコイル144がウェハ接続HiFix150に内蔵されていればよく、周辺回路である駆動回路146は、ウェハ接続HiFix150の外部に設けてもよい。この場合、テスタ本体110から駆動回路146を制御するようにしてもよい。
【0058】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0059】
100 試験装置
110 テスタ本体
120 テストヘッド
122 デバイス電源
124 DVM
126 パターン発生器
128 インタフェース回路
130 ステージ
140 磁場印加装置
142 コア
144 コイル
146 駆動回路
150 ウェハ接続HiFix
152 インタフェース回路
154 ドライエア供給源
156 冷却機構
158 磁気シールド機構
160 試験用プローブカード
162 プローブ針
170 診断用ウェハ
172 磁気検出ユニット
174 磁気センサ
176 アンプ
178 MR素子
179 抵抗
180 診断用プローブカード
182 プローブ針
184 アンプ
190 冷却チラー
10 被試験ウェハ
12 被試験デバイス
14 同測領域