(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】すり合わせガラス栓の開栓方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20231122BHJP
B67B 7/02 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G01N35/02 B
B67B7/02
(21)【出願番号】P 2019122143
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】392017705
【氏名又は名称】アラインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】隅田 章
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃弘
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-160377(JP,A)
【文献】特開2004-101495(JP,A)
【文献】特開平03-232621(JP,A)
【文献】特開2012-126410(JP,A)
【文献】特開2011-126697(JP,A)
【文献】特開平05-228379(JP,A)
【文献】特開2003-014770(JP,A)
【文献】特開昭61-012905(JP,A)
【文献】特開2005-271991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00- 37/00
B67B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製の容器体の開口にすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓の開栓方法であって、
第1の保持構造により前記ガラス栓を保持するガラス栓保持工程と、
前記ガラス栓保持工程の前又は後に行われ、
貫通孔が穿設されかつ復元可能に変形する変形材を介して前記容器体を第2の保持構造
に保持する容器体保持工程と、
前記容器体から前記ガラス栓を引き抜いて開栓する第1のガラス栓開栓工程と、
前記第1のガラス栓開栓工程において前記ガラス栓を開栓することができなかった場合に行われる第2のガラス栓開栓工程と、を備え、
前記第1のガラス栓開栓工程は、
前記第2の保持構造において、前記貫通孔を通じて吸引し続けることにより、前記容器体を起立させつつ、その中心軸を前記第2の保持構造の保持面に対して変位可能にした状態を維持したまま、
前記ガラス栓又は前記容器体を前記ガラス栓
の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作を行う
と同時に、
前記第1の保持構造により前記ガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行
い、
前記第2のガラス栓開栓工程は、
前記第2の保持構造において、前記貫通孔を通じて吸引し続けることにより、前記容器体を起立させつつ、その中心軸を前記第2の保持構造の保持面に対して変位可能にした状態を維持したまま、
前記第1の保持構造により前記ガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、
以下に示す動作C及び動作Dのいずれかを行うことを特徴とするすり合わせガラス栓の開栓方法。
動作C:前記ガラス栓に対して前記ガラス栓の前記中心軸方向への振動を付加する動作
動作D:前記ガラス栓に対して前記ガラス栓の前記中心軸と直交する方向への振動を付加する動作 【請求項2】
前記第2のガラス栓開栓工程において、前記動作C又は前記動作D
を行う場合に、以下に示す動作A又は動作B
を併せて行うことを特徴とする請求項
1に記載のすり合わせガラス栓の開栓方法。
動作A:前記ガラス栓又は前記容器体を前記ガラス栓の前記中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作
動作B:前記ガラス栓又は前記容器体を前記ガラス栓の前記中心軸を基軸にして正逆それぞれの方向へ所望の値以下のトルクを作用させる動作を切り替える切替動作
【請求項3】
前記動作Cにおける前記振動は、前記ガラス栓の中心軸方向と同一方向に振動する一対の振動発生装置を同位相で振動させることで発生させ、
前記動作Dにおける前記振動は、一対の前記振動発生装置を逆位相で振動させることで発生させる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のすり合わせガラス栓の開栓方法。
【請求項4】
ガラス製の容器体の開口にすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓を自動で開栓するための装置であって、
前記ガラス栓を保持する第1の保持構造と、
前記容器体を保持する第2の保持構造と、
前記第1の保持構造又は前記第2の保持構造を前記ガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる回動機構と、を備え、
前記第1の保持構造は、
前記ガラス栓をその中心軸方向でかつ前記容器体から離れる方向にスライドさせるスライド機構
と、
前記ガラス栓に付加する振動を発生可能に構成され、前記回動機構及び前記スライド機構の組み合わせによる開栓動作で前記ガラス栓を開栓できなかった際、前記スライド機構により前記ガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、以下に示す動作C及び動作Dのいずれかを行う振動発生装置と、を備え、
前記第2の保持構造は、
前記容器体の底面側に配される吸引機構と、
前記容器体の前記底面と前記吸引機構の間に介設され、復元可能に変形し、その厚み方向を貫通して前記吸引機構につながる貫通孔が穿設された変形材を備え、
前記第1の保持構造による前記ガラス栓の引き抜き動作時に、前記底面側を前記吸引機構で吸引して、前記容器体を起立させつつ、その中心軸を前記第2の保持構造の保持面に対して変位可能にしていることを特徴とするすり合わせガラス栓の開栓装置。
動作C:前記ガラス栓に対して前記振動発生装置により前記ガラス栓の前記中心軸方向への振動を付加する動作
動作D:前記ガラス栓に対して前記振動発生装置により前記ガラス栓の前記中心軸と直交する方向への振動を付加する動作
【請求項5】
前記振動発生装置は、前記ガラス栓の前記中心軸方向への振動を発生させる振動発生装置であり、かつ前記ガラス栓の前記中心軸を中心として相対する位置に対を成して配置され、
対を成す前記振動発生装置同士を同位相で振動させることで、前記ガラス栓に対して前記ガラス栓の前記中心軸方向への振動を付加し、
対を成す前記振動発生装置同士を逆位相で振動させることで、前記ガラス栓に対して前記ガラス栓の前記中心軸と直交する方向への振動を付加することを特徴とする請求項4に記載のすり合わせガラス栓の開栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製の容器体の開口にすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓を、人手によらず開栓するすり合わせガラス栓の開栓方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製薬業界等においてはデータインテグリティ(データの完全性)が注目されている。このため、ガラス器具を用いた分析用サンプルの希釈作業などにおいてもデータインテグリティの観点から、すべての作業のデータを記録として正確に残すべくその作業の自動化が望まれている。
他方、従来から、例えばメスフラスコなどのガラス製の容器体の開口にすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓(以下、「すり合わせガラス栓」という。)を自動的に外すことが難しく、分析作業を自動化する際のネックになっていた。
【0003】
一般に、すり合わせガラス栓を備えるガラス器具では、容器体における開口の内側面の断面形状、およびガラス栓の中心軸に対する断面形状はともに完全な真円ではない。
このため、ガラス器具を用いた分析作業時等において、容器体の開口にガラス栓を挿入して回動させて嵌設し、その後、必要な作業を終えてガラス栓を引き抜いて開栓しようとする場合に、しばしばガラス栓が抜けないという事態が生じていた。
この原因としては、様々なものが考えられるが、例えば表面が平滑でないガラス製の容器体の開口の内側面に、同じく表面が平滑でないガラス栓の外側面がかみ込んで抜けなくなる場合がある。あるいは、ガラス製の容器体内に収容される収容物が化学反応等することにより生じた析出物や異物が、容器体の開口やガラス栓に付着してガラス栓が抜けにくくなる場合もある。
そして、すり合わせガラス栓に上述のような状況が生じている場合は、ガラス栓に対してその引き上げ方向に強い力を付加しても、容易にガラス栓を引き抜くことはできない。
また、一般にガラスは耐熱性や耐薬品性に優れるという利点を有する一方で、金属や合成樹脂と比較すると、脆くて破損しやすいという欠点を有している。このため、開栓が困難になったすり合わせガラス栓を開栓しようとして、大きな外力を付加することは、ガラス器具自体を破損させるおそれがあり、適切な対応ではなかった。
このような状況下において、すり合わせガラス栓を人手により開栓する場合、自らの感覚を頼りにしながら、ガラス栓に付加する力やその方向を微妙に調整しながら開栓を試みることが行われている。あるいは、すり合わせガラス栓の嵌設部分をバーナーで炙るなどして、ガラスを熱膨張させて開栓を試みることもある。
他方、このような作業を完全に自動化する場合は、人の感覚に頼っていた部分、すなわち、開栓が困難になったガラス栓の状態を見極めるとともに、そのようなガラス栓に対してどの方向にどの程度の大きさの力を作用させるかという意思決定を、シンプルな装置や簡単なロジックで置換することが容易でなかった。
このため、これまですり合わせガラス栓の開栓動作を完全に自動化することができなかった。
【0004】
本発明が有するようなすり合わせガラス栓の開栓作業を自動化するという課題を有する先行技術は現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先行技術としては、例えばゴムや合成樹脂製の栓や、合成樹脂製のネジ式のキャップを自動で開栓又は取り外すための装置等に関する発明がいくつか開示されている。
【0005】
より具体的には、ガラス器具の開口に設けられるゴム製又は合成樹脂製の栓の自動開栓に関する先行技術文献としては、例えば特許文献1の「採血管用開栓装置」、特許文献2の「真空採血管の開栓装置」、特許文献3の「試験管栓抜き装置」及び特許文献4の「真空採血管開栓装置」のようなものが知られている。
さらに、ガラス器具の開口に設けられる栓及びネジ式のキャップの自動開栓に関する先行技術文献としては、例えば特許文献5の「開栓装置及び分注装置」が知られている。
加えて、ガラス器具の開口に設けられるネジ式のキャップの自動開栓に関する先行技術文献としては、例えば特許文献6の「開栓治具」や、特許文献7の「自動キャップ除去装置」のようなものが知られている。
なお、本願出願人は、過去にネジ式のキャップの自動開栓に関する発明をし、出願している(特許文献8の「キャップ除去装置およびそれを用いた自動キャップ除去装置」)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-339733号公報
【文献】特開平5-264418号公報
【文献】特開平5-228379号公報
【文献】特開平1-263558号公報
【文献】特開2003-14770号公報
【文献】特開平9-295694号公報
【文献】特開2000-39438号公報
【文献】特開平11-147595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような特許文献1乃至8に開示されている発明において、操作対象である栓又はネジ式のキャップは通常、ゴムや合成樹脂製である。このため、その装着対象が、例えば試験管のようなガラス製の容器体であっても、操作対象である栓又はネジ式のキャップがその操作中に破損するリスクは極めて低い。
つまり、特許文献1乃至8に開示されている発明の場合は、栓又はネジ式のキャップに対してこれらの最大静止摩擦力を超えるような力を付加しさえすれば容易に開栓又は開封することができる。
これに対して、開栓が困難になったすり合わせガラス栓に対してその最大静止摩擦力を超えるような力を付加する場合は、すり合わせガラス栓を確実に開栓できる保証がない上、ガラス栓が一層抜け難くなる可能性がある。さらには、ガラス栓及び/又はガラス製の容器体が破損するリスクが極めて高くなる。
したがって、従来公知のゴムや合成樹脂からなる栓やネジ式のキャップを自動で開栓又は開封する技術を組み合わせるだけでは、開栓が困難になったすり合わせガラス栓を自動で開栓することはできなかった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、すり合わせガラス栓を人手によらず自動で開栓する方法及び装置を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、開栓が困難になったすり合わせガラス栓を人手によらず開栓する方法及び装置を提供することにある。
加えて、本発明の目的は、開栓が困難になったすり合わせガラス栓を人手によらず開栓する場合に、ガラス器具の破損が起きにくい方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため第1の発明であるすり合わせガラス栓の開栓方法は、ガラス製の容器体の開口にすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓の開栓方法であって、第1の保持構造によりガラス栓を保持するガラス栓保持工程と、ガラス栓保持工程の前又は後に行われ、第2の保持構造により容器体を保持する容器体保持工程と、容器体からガラス栓を引き抜いて開栓する第1のガラス栓開栓工程と、を備え、第1のガラス栓開栓工程は、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、ガラス栓又は容器体をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作を行う、ことを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明においてガラス栓保持工程は、第1の保持構造によりガラス栓を保持するという作用を有する。また、容器体保持工程は、上述のガラス栓保持工程の前又は後に行われ、第2の保持構造により容器体を保持するという作用を有する。
さらに、第1のガラス栓開栓工程は、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、ガラス栓又は容器体をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作を行うことで、ガラス栓及び容器体の破損を防止しつつ、容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置を、ガラス栓の周方向(正逆方向のいずれか)でかつガラス栓の引き上げ方向にわずかでも変位させるという作用を有する。
また、第1のガラス栓開栓工程において、ガラス栓又は容器体に作用させるトルクを所望の値以下に設定することで、第1のガラス栓開栓工程を実施したことでかえってガラス栓の引き抜きが一層困難になるという自体を回避するという作用を有する。
なお、本発明においてガラス栓又は容器体に対してトルクを作用させる理由は、ガラス栓又は容器体に対してそれぞれの最大静止摩擦力を超える外力を作用させるためではなく、容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置をわずかでも変位させるためである。また、本発明においてガラス栓又は容器体に対してトルクを作用させることは、ガラス栓の引き抜きを一層困難にする要因にもなり得る。このため、第1の発明において、ガラス栓又は容器体に作用させるトルクは、ガラス栓又は容器体が破損しない程度に設定される必要があるだけでなく、ガラス栓又は容器体の嵌設位置を変位させることができる範囲内のより小さい値に設定されることが望ましい。
そして、第1のガラス栓開栓工程において容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置がわずかでも変位して、それにより容器体の開口内側面上におけるガラス栓の最大静止摩擦力が大幅に低減した場合は、第1の保持構造によりガラス栓が引き上げられて開栓される。
なお、第1の発明における第1の開栓工程では、ガラス栓又は容器体を動作さる際にこれらの破損を防止するために、ガラス栓又は容器体に作用させるトルクの上限値を設定する必要がある。その一方で、操作対象であるガラス栓又は容器体がどの程度のトルクに耐えうるかについては、ガラス栓又は容器体を構成するガラスの組成、サイズ(直径等)、厚み、双方の接触面積、傷の有無、異物の混入の有無等により変動するため一様に特定することができない。このため、第1の発明では、操作対象であるガラス栓又は容器体に作用させるトルクの上限値を具体的に明記することに代えて「所望の値以下のトルク」と記載している。
【0010】
第2の発明であるすり合わせガラス栓の開栓方法は、上述の第1の発明であって、第1のガラス栓開栓工程においてガラス栓を開栓することができなかった場合に行われる第2のガラス栓開栓工程と、を備え、第2のガラス栓開栓工程は、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、以下に示す動作A乃至動作Dのいずれかを行う、ことを特徴とするものである。また、動作Aは「ガラス栓又は容器体をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作」である。さらに、動作Bは「ガラス栓又は容器体をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆それぞれの方向へ所望の値以下のトルクを作用させる動作を切り替える切替動作」である。加えて、動作Cは「ガラス栓に対してガラス栓の中心軸方向への振動を付加する動作」である。また、動作Dは「ガラス栓に対してガラス栓の中心軸と直交する方向への振動を付加する動作」である。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明における第1のガラス栓開栓工程を実施しても開栓することができなかったガラス栓、すなわち開栓がより困難なガラス栓を自動で開栓する方法である。
より具体的には、第2の発明における第2のガラス栓開栓工程は、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、上記動作A乃至動作Dのいずれかを行うことで、ガラス栓及び容器体の破損を防止しつつ、容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置を、先の第1のガラス栓開栓工程を完了した時点のガラス栓の嵌設位置から、容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置をわずかでも変位させるという作用を有する。
また、第2のガラス栓開栓工程において、ガラス栓又は容器体に作用させるトルクを所望の値以下設定することで、第2のガラス栓開栓工程を実施したことでかえってガラス栓の開栓が一層困難になるのを防止するという作用を有する。
なお、第1の発明と同様の理由により、第2のガラス栓開栓工程においてガラス栓又は容器体に作用させるトルクは、ガラス栓又は容器体が破損しない程度に設定される必要があるだけでなく、ガラス栓又は容器体の嵌設位置を変位させることができる範囲内のより小さい値に設定されることが望ましい。
そして、第2のガラス栓開栓工程において容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置がわずかでも変位して、それにより容器体の開口内側面上におけるガラス栓の最大静止摩擦力が大幅に低減した場合は、第1の保持構造によりガラス栓が引き上げられて開栓される。
なお、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作と同時に動作Aを行うことで、ガラス栓をその周方向(正逆方向のいずれか)でかつガラス栓の引き上げ方向にわずかでも変位させるという作用を有する。また、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に動作Bを行うことで、ガラス栓をその周方向(正逆それぞれの方向)でかつガラス栓の引き上げ方向にわずかでも変位させるという作用を有する。さらに、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に動作Cを行うことで、ガラス栓をその引き上げ方向にわずかでも変位させるという作用を有する。また、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に動作Dを行うことで、ガラス栓の中心軸と直交する方向でかつガラス栓の引き上げ方向にわずかでも変位させるという作用を有する。
なお、第2の発明における第2の開栓工程においても、ガラス栓又は容器体を動作させる際にこれらの破損を防止するために、ガラス栓又は容器体に作用させるトルクの上限値を設定する必要がある。その一方で、操作対象であるガラス栓又は容器体がどの程度のトルクに耐えうるかについては、上述の通り特定することができない。このため、第2の発明においても、操作対象であるガラス栓又は容器体に作用させるトルクの上限値を具体的に明記することに代えて「所望の値以下のトルク」と記載している。
【0011】
第3の発明であるすり合わせガラス栓の開栓方法は、上述の第2の発明であって、第2のガラス栓開栓工程において、動作A又は動作Bを行う場合に、動作C又は動作Dを併せて行う、ことを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第2の発明における第2のガラス栓開栓工程を実施しても開栓することができないガラス栓、すなわち開栓が一層困難なガラス栓を自動で開栓する方法である。
第3の発明の第2のガラス栓開栓工程において、動作A又は動作Bを行う場合に、動作C又は動作Dを併せて行うことで、ガラス栓及び容器体の破損を防止しつつ、容器体の開口においてガラス栓の嵌設位置の変位を一層起こり易くするという作用を有する。
そして、第3の発明の第2のガラス栓開栓工程において容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置がわずかでも変位して、それにより容器体の開口内側面上におけるガラス栓の最大静止摩擦力が大幅に低減した場合は、第1の保持構造によりガラス栓が引き上げられて開栓される。
【0012】
第4の発明であるすり合わせガラス栓の開栓方法は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明において、第2の保持構造により容器体を保持する場合に、容器体の中心軸は、第2の保持構造の保持面に対して変位可能である、ことを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明では、第1のガラス栓開栓工程又は第2のガラス栓開栓工程において、第1の保持構造の動作の基準となる軸と、第2の保持構造の動作の基準となる軸とが完全に一致せずわずかにずれている場合に、第2の保持構造の保持面に対する容器体の中心軸を変位させることで、第1,第2の保持構造のそれぞれの動作の基準となる軸を一致させ易くするという作用を有する。
これにより、第1のガラス栓開栓工程又は第2のガラス栓開栓工程において、第1の保持構造の動作の基準となる軸と、第2の保持構造の動作の基準となる軸とが完全に一致していない場合でも、操作対象のガラス器具(ガラス栓及び/又は容器体)の局所に応力が作用するのを抑制するという作用を有する。
【0013】
第5の発明であるすり合わせガラス栓の開栓装置は、ガラス製の容器体の開口にすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓を自動で開栓するための装置であって、ガラス栓を保持する第1の保持構造と、容器体を保持する第2の保持構造と、第1の保持構造又は第2の保持構造をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる回動機構と、を備え、第1の保持構造は、ガラス栓をその中心軸方向でかつ容器体から離れる方向にスライドさせるスライド機構を備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第1の発明を物の発明(装置)として特定したものである。
また、上述の第5の発明において、第1の保持構造はガラス栓を保持するという作用を有する。さらに、第2の保持構造は、容器体を保持するという作用を有する。加えて、回動機構は、第1の保持構造又は第2の保持構造をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させるという作用を有する。また、スライド機構は、第1の保持構造により保持されるガラス栓をその中心軸方向でかつ容器体から離れる方向にスライドさせるという作用を有する。
そして、上述のような第5の発明によれば、第1の保持構造によりガラス栓をその中心軸方向に引き抜く動作を行うと同時に、ガラス栓又は容器体をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作を行う、という作用を有する。
この結果、容器体の開口におけるガラス栓の嵌設位置がわずかでも変位して、それにより容器体の開口内側面上におけるガラス栓の最大静止摩擦力が大幅に低減した場合は、第1の保持構造によりガラス栓が引き上げられて開栓される。
なお、第5の発明において回動機構によりガラス栓又は容器体に付加されるトルクが「所望の値以下」と特定されている理由は、上述の第1の発明の第1の開栓工程においてガラス栓又は容器体に付加されるトルクが「所望の値以下」と特定されている理由と同じである。
【0014】
第6の発明であるすり合わせガラス栓の開栓装置は、上述の第5の発明であって、第1の保持構造は、ガラス栓の中心軸方向及び/又はガラス栓の中心軸と直交する方向への振動を発生させる振動発生装置を備えていることを特徴とするものである。
なお、第6の発明において第1の保持構造が、「ガラス栓の中心軸方向及びガラス栓の中心軸と直交する方向への振動を発生させる振動発生装置を備えている」が意味するところのものは、第1の保持構造が「ガラス栓の中心軸方向への振動を発生させる振動発生装置と、ガラス栓の中心軸と直交する方向への振動を発生させる振動発生装置の両者を備えている」場合と、第1の保持構造が「ガラス栓の中心軸方向と、ガラス栓の中心軸と直交する方向の2つの方向に同時に振動を付与する振動発生装置を備えている」場合の両方である。
上述のような第6の発明によれば、開栓が困難なすり合わせガラス栓の、容器体の開口における嵌設位置の変位を起こり易くするという作用を有する。
そして、ガラス栓の引き抜き動作時に、ガラス栓に対してその中心軸方向又はガラス栓の中心軸と直交する方向への振動を付加することで、ガラス栓の嵌設位置がわずかでも変位して、それにより容器体の開口内側面上におけるガラス栓の最大静止摩擦力が大幅に低減した場合は、第1の保持構造によりガラス栓が引き上げられて開栓される。
【0015】
第7の発明であるすり合わせガラス栓の開栓装置は、上述の第6の発明であって、振動発生装置は、ガラス栓の中心軸方向への振動を発生させる振動発生装置であり、かつガラス栓の中心軸を中心として相対する位置に対を成して配置され、対を成す振動発生装置同士を同位相で振動させることで、ガラス栓に対してガラス栓の中心軸方向への振動を付加し、対を成す振動発生装置同士を逆位相で振動させることで、ガラス栓に対してガラス栓の中心軸と直交する方向への振動を付加する、ことを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明は、上述の第6の発明を具体的かつ詳細に記載したものである。
上記構成の第7の発明において、第1の保持構造に設けられて対を成す振動発生装置を同位相で振動させる場合は、ガラス栓の中心軸に対して直交する方向に作用する外力が相殺される。これにより、ガラス栓に対してその中心軸方向と平行な方向への振動が付加される。
また、第1の保持構造に設けられて対を成す振動発生装置を逆位相で振動させる場合は、ガラス栓の中心軸と平行な方向に作用する外力が相殺される一方で、ガラス栓の中心軸に対して直交する方向に作用する外力は相殺されない。これにより、ガラス栓に対してその中心軸に対して直交する方向への外力が付加される。
よって、第7の発明によれば、振動発生装置を備えない場合と比較して、ガラス栓の嵌設位置の変位を起こり易くするという作用を有する。
【0016】
第8の発明であるすり合わせガラス栓の開栓装置は、上述の第5乃至第7の発明のいずかにおいて、第1の保持構造とガラス栓の間に介設され、又は、第2の保持構造と容器体の間に介設され、復元可能に変形する変形材を備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第8の発明は、上述の第5乃至第7のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。また、第8の発明において、変形材は、第1の保持構造の動作の基準となる軸と、第2の保持構造の動作の基準となる軸とが完全に一致せずわずかにずれている場合に、第1の保持構造の保持面に対するガラス栓の中心軸を、又は、第2の保持構造における保持面に対する容器体の中心軸を、わずかに変位させるという作用を有する。
これにより、第1,第2の保持構造においてその動作の基準となるそれぞれの軸が完全に一致していない場合でも、ガラス器具(ガラス栓及び/又は容器体)の局所に応力が作用するのを抑制するという作用を有する。
【0017】
第9の発明であるすり合わせガラス栓の開栓装置は、上述の第8の発明において、変形材は、第2の保持構造と容器体の間に介設され、第2の保持構造は、容器体の底面側に配されるとともに、吸引機構を備え、第2の保持構造において容器体は、その底面が吸引機構で吸引されることで起立状に保持される、ことを特徴とするものである。
上記構成の第9の発明は、上述の第8の発明による作用と同じ作用を有する。また、第9の発明において、第2の保持構造と容器体の間に介設される変形材は、第1の保持部又は第2の保持部の回動動作時に、第2の保持構造の保持面に対する容器体の中心軸を必要に応じてわずかに変位させるという作用を有する。
さらに、第9の発明において、容器体の底面側に配される吸引機構を備えた第2の保持構造は、容器体の底面を吸引することで容器体を起立状に保持するという作用を有する。
これにより、第1の保持構造の動作の基準となる軸と、第2の保持構造の動作の基準となる軸とが完全に一致していない場合でも、ガラス器具(ガラス栓及び/又は容器体)の局所に応力が作用するのを抑制するという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、すり合わせガラス栓を人手によらず開栓することができるという効果を有する。
この結果、すり合わせガラス栓を備えたガラス器具を用いた一連の分析作業等を自動化することができる。この場合、すり合わせガラス栓を備えたガラス器具を用いた一連の分析作業等において作業を自動化することが可能になり、データインテグリティを実現することができる。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明における第1のガラス栓開栓工程において開栓することができなかったすり合わせガラス栓を開栓できる可能性が高くなる。
よって、第2の発明によれば、上述の第1の発明による効果を一層向上させることができる。
【0020】
第3の発明によれば、上述の第2の発明による効果を一層向上させることができる。
【0021】
第4の発明によれば、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果に加えて、すり合わせガラス栓を人手によらず開栓する際に、操作対象であるガラス器具(ガラス栓及び/又は容器体)の破損を一層確実に防止することができる。
よって、第4の発明によれば、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果を一層確実に発揮させることができる。
【0022】
第5の発明は、上述の第1の発明を物の発明(装置)として特定したものである。
よって、第5の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。
また、第5の発明によれば、シンプルな構造でありながら、人手によらずすり合わせガラス栓開栓することができる装置を提供することができる。
【0023】
第6の発明は、上述の第5の発明により効果と同じ効果に加えて、すり合わせガラス栓の開栓装置が振動発生装置を備えていない場合に比べて、ガラス栓を自動で開栓できる可能性を高めることができる。
この結果、第5の発明と比較して、より高性能なすり合わせガラス栓の開栓装置を提供することができる。
【0024】
第7の発明は、上述の第6の発明による効果と同じ効果に加えて、ガラス栓の中心軸方向に及びその直交方向に振動を付加するために必要な振動発生装置を1種類にすることができる。
よって、第7の発明によれば、高性能な自動開栓装置の構造をシンプルにできる。この結果、第7の発明によれば、高性能な自動開栓装置を廉価に提供することができる。
【0025】
第8の発明は、上述の第5乃至第7のそれぞれの発明による効果と同じ効果に加えて、すり合わせガラス栓を備えたガラス器具の開栓操作時に、第1の保持構造の動作の基準となる軸と、第2の保持構造の動作の基準となる軸とのズレが原因で、ガラス器具が破損するのを防止することができる。
よって、第8の発明によれば、上述の第5乃至第7のそれぞれの発明と比較して、より信頼性の高い装置を提供することができる。
【0026】
第9の発明では、操作対象のガラス器具として、様々なサイズや外形を有するものが想定される。
そして、第9の発明によれば、上述の第8の発明による効果と同じ効果に加えて、様々なサイズや外形を有するガラス器具(ガラス器具の底面が平坦状でないものも含む)を起立状態で保持することができる。つまり、第9の発明によれば、操作対象であるガラス器具の外形やサイズに応じて第2の保持構造の保持面の形状を変更する必要がない。
したがって、第9の発明によれば、様々な外形やサイズのガラス器具に対して汎用性の高い装置を、廉価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置のシステム構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置の側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置における第1の保持構造の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置における第1の保持構造の正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置の正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置を裏側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態に係るすり合わせガラス栓開栓方法およびその装置について
図1乃至
図7を参照しながら説明する。
【0029】
はじめに、本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法の説明に先立って、本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置の概要について
図1を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置のシステム構成図である。
本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1は、ガラス製の容器体14の開口14aにすり合わせた状態で嵌設されるガラス栓15を人手によらず開栓するための装置である。
このような本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1は、
図1に示すように、ガラス栓15を保持する第1の保持構造2と、容器体14を保持する第2の保持構造3と、第2の保持構造3をガラス栓15の中心軸15aを基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる回動機構4Bを備え、さらに、第1の保持構造2は、ガラス栓15をその中心軸15a方向でかつ容器体14から離れる方向にスライドさせるスライド機構5を備えてなるものである。
なお、
図1に示す本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、第2の保持構造3に回動機構4Bを備える場合を例に挙げているが、第2の保持構造3に回動機構4Bを設ける代わりに、第1の保持構造2にガラス栓15をその中心軸15aを基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる回動機構4Aを備えていてもよい。
そして、上述のような本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1を用いて自動でガラス器具24からガラス栓15を開栓する手順を方法の発明として特定したものが本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法である。
【0030】
引き続き本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法について
図2を参照しながら説明する。
図2は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法のフローチャートである。なお、
図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23における最初の工程は、先の
図1に示すすり合わせガラス栓の開栓装置1の第2の保持構造3で容器体14を保持する容器体保持工程(ステップS01)である。
また、このステップS01に続く工程は、先の
図1に示すすり合わせガラス栓の開栓装置1の第1の保持構造2によりガラス栓15を保持するガラス栓保持工程(ステップS02)である。
【0031】
なお、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23におけるステップS01,ステップS02は、
図2に示す順序で実施しても良いし、ステップS02とステップS01を入れ替えて実施してもよい。
さらに、このステップS01及びステップS02を完了した時点で、又は、完了した後に、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸とを略一致させておくことが望ましい。また、上述のような動作の基準となる軸を一致させる技術については、従来公知の芯出しに関する技術を支障なく採用することができる。
【0032】
そして、このステップS01及びステップS02を完了した後に続く工程が、容器体14からガラス栓15を引き抜いて開栓する第1のガラス栓開栓工程(ステップS03)である。
このステップS03は、
図2に示すように、第1の保持構造2によりガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜く動作を行うと同時に、容器体14をガラス栓15の中心軸15aを基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作を行う工程である。
【0033】
従来から、すり合わせガラス栓の開栓方法としては様々な方法が提案されている。これに対して、本願の発明者らは、ガラス器具24のガラス栓15を自動で開栓するために、ガラス栓15や容器体14に対する操作を様々に変えながら、またそれらの組み合わせを様々に変えて試みた結果、ガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜きながら、ガラス栓15又は容器体14をその中心軸15aを基軸にして正逆いずれかの方向にトルクを作用させることが、ガラス栓15の開栓に特に有効であることを見出した。
そして、上述の操作の結果、容器体14の開口14aにおけるガラス栓15の嵌設位置にわずかでも変位が生じた場合は、容器体14の開口14aに対するガラス栓15の最大静止摩擦力が大幅に低下して、その後にガラス栓15に対して大きなトルクを作用させなくとも容易にガラス栓15を引き抜くことができることを見出した。
その一方で、ガラス栓15に対する上述のような操作は、場合によっては容器体14の開口14aに対するガラス栓15の噛み込みをさらに助長するおそれがある。この場合は、上述のような操作を行ったがために、ガラス栓15の引き抜きが一層困難になる場合がある。
このため、ガラス栓15に対して上述のような操作を行う場合は、ガラス栓15や容器体14が破損しない程度のトルクを作用させることはもちろんのこと、ガラス栓15や容器体14に作用させるトルクはより小さい方が望ましい。
つまり、本願発明は、容器体14の開口14aに嵌設されるガラス栓15に対して、その最大静止摩擦力を超えるような外力を付加してガラス栓15を開栓するという技術ではなく、容器体14の開口14aに嵌設されるガラス栓15の嵌設位置を何らかの手段によりわずかに変位させて、これにより容器体14の開口14aに対するガラス栓15の最大静止摩擦力を大幅に低減させて、大きな外力に拠らずガラス栓15を引き抜くという技術である。
【0034】
したがって、本実施の形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23における上述のようなステップS03を実施した場合は、容器体14の開口14aにおいてガラス栓15の嵌設位置の変位が起こり易くなる。
この場合、ガラス栓15や容器体14に対して大きな外力を作用させなくとも、容易に開口14aからガラス栓15を引き抜いて開栓することができる。
【0035】
また、上述の第1のガラス栓開栓工程(ステップS03)を実施した場合でもガラス栓15を開栓することができなかった場合(ステップS04)に行う工程が、以下に示す第2のガラス栓開栓工程(ステップS05)である。
このステップS05は、
図2に示すように、第1の保持構造2によりガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜く動作を行うと同時に、以下に示す動作A乃至動作Dのいずれかを行う工程である。
なお、上述の「動作A」は「ガラス栓15又は容器体14をガラス栓15の中心軸15aを基軸にして正逆いずれかの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作」である。また、「動作B」は「ガラス栓又は容器体をガラス栓の中心軸を基軸にして正逆それぞれの方向へ所望の値以下のトルクを作用させる動作を切り替える切替動作」である。さらに、「動作C」は「ガラス栓15に対してガラス栓15の中心軸15a方向への振動を付加する動作」である。そして、「動作D」は「ガラス栓15に対してガラス栓15の中心軸15aと直交する方向への振動を付加する動作」である。
【0036】
このように、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23のステップS05では、第1の保持構造2によりガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜く動作を行うと同時に、上述の動作A乃至動作Dのいずれかを行うことで、容器体14の開口14aにおいてガラス栓15の嵌設位置の変位を一層生じ易くすることができる。
そして、
図2に示すステップS05を実施した際に、ガラス栓15の嵌設位置がわずかでも変位した場合で、容器体14の開口14aにおけるガラス栓15の最大静止摩擦力が大幅に低下した場合は、容器体14の開口14aからガラス栓15を引き抜くことができる。
【0037】
なお、上述の第2のガラス栓開栓工程(ステップS05)を実施した場合でもガラス栓15を開栓することができなかった場合(ステップS06)は、
図2に示すように、ガラス栓15が開栓できるまでステップS05を繰り返し実施すればよい。
【0038】
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23のステップS05では、特に動作A又は動作Bを行う場合に、動作C又は動作Dを併せて行ってもよい(任意選択構成要素)。
この場合、ガラス栓15又は容器体14に対して所望の値以下のトルクを作用させると同時に、ガラス栓15に対してその中心軸15a方向への及び/又は中心軸15aと直交する方向への振動を付加することで、ガラス栓15に対して上述のような振動を付加しない場合に比べて、ガラス栓15の嵌設位置の変位を一層起こり易くすることができる。
この結果、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23によりガラス栓15を人手によらず開栓できる可能性を向上させることができる。
【0039】
なお、すり合わせガラス栓を備えるガラス器具24に作用させる外力の方向が多岐にわたるほど、あるいは、ガラス器具24に作用させる外力の種類(引っ張り、トルク、振動等)が増えるほど、ガラス器具24からガラス栓15が引き抜き易くなる半面、ガラス栓15の開栓操作時にガラス器具24が破損するリスクも高くなる。
したがって、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23では、まずガラス器具24に作用させる外力の方向、及び、ガラス器具24に作用させる外力の種類、並びに、ガラス器具24に作用させる外力の大きさを必要最小限度にしてガラス栓15の開栓を試み(ステップS03)、それでガラス栓15を開栓できない場合に、ガラス器具24に作用させる外力の方向、及び/又は、ガラス器具24に作用させる外力の種類、並びに、ガラス器具24に外力を作用させる頻度、を段階的に増やしていくよう構成しておくことが望ましい。
【0040】
より具体的には、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23では、まず、すり合わせガラス栓の開栓装置1によりガラス栓15を引き抜きつつ、ガラス栓15又は容器体14に対して所望の値以下のトルクを作用させる(
図2中のステップS03)。この時、ガラス栓15又は容器体14に付加するトルクの値が予め設定された値に達してもガラス栓15を開栓できない場合(
図2中のステップS04)は、ガラス栓15又は容器体14に作用させるトルクの向きを反転させて、同じ動作を再度ガラス器具24に対して実施する(
図2中のステップS05において動作Aを選択する場合に対応)。
そして、上記ステップS05を実施してもなおガラス栓15を開栓できない場合(
図2中のステップS06)は、その都度トルクの作用方向を反転させながら所望回数だけ動作Aを選択するステップS05を繰り返す。
さらに、それでもなおガラス栓15を開栓できない場合(
図2中のステップS06)は、動作Bを選択するステップS05に移行するように本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23を構成してもよい。
【0041】
そして、上述の動作Bを選択するステップS05を所望回数繰り返してもなおガラス栓15を開栓できない場合(
図2中のステップS06)は、動作C又は動作Dを選択するステップS05に移行するように本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23を構成してもよい。
また、上述の動作C又は動作Dを選択するステップS05を実施してもなおガラス栓15を開栓できない場合(
図2中のステップS06)は、動作A又は動作Bと、動作C又は動作Dを同時に選択するステップS05に移行するように本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23を構成してもよい(本願の第3の発明に対応)。
したがって、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23を上述のように構成することで、ガラス器具24に対して作用させる外力の方向、及び/又は、ガラス器具24に作用させる外力の種類、並びに、ガラス器具24に外力を作用させる頻度を、段階を追って増やすことができる。この場合、ガラス器具24に対する物理的な負荷を最小限度にしながら、人手によらずガラス栓15を開栓することができる。
【0042】
先にも述べたが、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23では、ステップS03やステップS05を実施する際に、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸が略一致していることが望ましい。
しかしながら、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1を実際に作動させる場合は、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸を略一致させておくことができない場合がある。
あるいは、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸が略一致していても、操作対象のガラス器具24の中心軸14bが偏っている、あるいは中心軸14bが歪んでいる場合も想定される。
このような場合、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸が略一致しないまま、あるいは、ガラス栓15の中心軸15aと容器体14の中心軸14bが略一致しないまま、ステップS03やステップS05を実施すると、ガラス器具24の局所にこれらの軸の不一致に伴う応力が作用して、最悪の場合ガラス器具24が破損してしまう。
【0043】
このような事情に鑑み、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23では、例えば第2の保持構造3により容器体14を保持する場合に、第2の保持構造3の保持面9a(
図1を参照)に対して容器体14の中心軸14bを変位可能にしてもよい(任意選択構成要素)。
より具体的には、第2の保持構造3における保持面9aと容器体14の間に、例えば復元可能に変形する変形材11を介設しておいてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸が略一致しない場合に、変形材11が所望に変形して容器体14の中心軸14bの位置を所望に変位させて、これらの軸の不一致が原因でガラス器具24の局所に意図しない応力が作用するのを防止することができる。
なお、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23では、第2の保持構造3の保持面9a(
図1を参照)に対して容器体14の中心軸14bを変位可能にするための変形材11を備えることに代えて、第1の保持構造2の保持面に対してガラス栓15の中心軸15aを変位可能にするための何らかの構成を備えていてもよい。この場合も、ステップS03やステップS05を実施する際に、ガラス器具24が破損するのを好適に防止することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23では、第2の保持構造3の保持面9aと容器体14の間に変形材11を介設する場合を例に挙げて説明しているが、ガラス器具24に作用する意図しない応力を緩和する方法は上述のものに特定される必要はない。
例えば、第2の保持構造3の保持面9aの随所に圧力検知センサを設けておき、保持面9aに作用する圧力が略均一になるように第2の保持構造3の動作の基準となる軸を調整する構成を備えることによっても同様の効果を発揮させることができる。
あるいは、光学的手段により得られた画像を処理するなどして、第1の保持構造2や第2の保持構造3の動作の基準となる軸の位置を検出し、この検出値に基づいてこれらのずれを解消するような構成を備えることによっても同様の効果を発揮させることができる。
【0045】
上述のような本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23によれば、ガラス器具24に対して単純な操作を付加するだけで、高い確実性をもってガラス栓15を開栓することができる。
この場合、すり合わせガラス栓の開栓装置1を用いることですり合わせガラス栓の開栓作業を自動化することができる。この結果、すり合わせガラス栓を備えたガラス器具24を用いる一連の分析作業等を全て自動化することができる。
よって、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓方法23によれば、すり合わせガラス栓を備えたガラス器具24を用いる一連の分析作業等において作業を自動化することが可能になり、データインテグリティを実現することができる。
【0046】
次に、
図1及び
図3乃至
図7を参照しながら、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1の具体的な形態の一例について説明する。
まず、
図1及び
図3乃至
図5を参照しながら本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1における第1の保持構造2及びその周辺設備について説明する。
図3は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置の側面図である。また、
図4は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置における第1の保持構造の平面図である。さらに、
図5は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置における第1の保持構造の正面図である。なお、
図4は
図3中に示す保持用チャック7,7及びその周辺を同図中の符号Eで示す方向から見た図である。また、
図5は
図4中に示す保持用チャック7,7及びその周辺を同図中の符号Hで示す方向から見た図である。さらに、
図1,2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4に示すように、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1における第1の保持構造2は、例えば、ガラス栓15の頭部15cを挟持して保持することができる対をなす保持用チャック7,7を備えている。また、このような保持用チャック7,7は、例えば開閉機構8(
図3,4を参照)により、その開閉動作が行われる。
より具体的には、
図4に示すように、保持用チャック7,7がガラス栓15の中心軸15aに対して直交する方向(
図4中の符号Gで示す方向)にスライドして、互いに近接する又は離間することで、保持用チャック7,7によるガラス栓15の頭部15cの保持状態と開放状態を切替えることができる。なお、
図4では、保持用チャック7,7によりガラス栓15の頭部15cを挟持している状態を示している。
なお、
図4では、第1の保持構造2における保持用チャック7,7をスライドさせて開閉する場合を例に挙げて説明しているが、保持用チャック7,7の開閉方法は上述の方法に特定される必要はない。例えば保持用チャック7,7のそれぞれに回動軸を設けておき、この回動軸を基軸にして保持用チャック7,7のそれぞれを回動させることで保持用チャック7,7を開閉させてもよい。また、本実施形態のすり合わせガラス栓の開栓装置1における開閉機構8としては、上記以外の従来公知の保持用チャック7,7の開閉構造を支障なく採用することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、上述のような保持用チャック7,7を備える開閉機構8はさらに、例えばレール上を走行する、あるいはラックとピニオンからなる移動機構等からなるスライド機構5に接続されている(
図3,4を参照)。なお、スライド機構5の具体的な構成についても特に特定する必要はなく、保持用チャック7,7を備える開閉機構8をガラス栓15の中心軸15a方向(
図3中に符号Fで示す方向)にスライドさせることができるよう構成されるものであれば、どのような構成であってもよい。
したがって、開閉機構8を備えた保持用チャック7,7がスライド機構5によりスライドさせることで、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1において、ガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜く動作を行うことができる(
図4を参照)。
さらに、上述のような保持用チャック7,7を備える開閉機構8をスライドさせるスライド機構5は、例えば台20上に立設される支柱16に取設されて用いられてもよい(
図3を参照)。
【0048】
また、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1における第1の保持構造2は、上述の構成に加えて、ガラス栓15に対してその中心軸15a方向及び/又は中心軸15aに対して直交する方向への振動を付加することができる振動発生装置6を備えていてもよい(任意選択構成要素)
そして、第1の保持構造2が上述のような振動発生装置6を備えている場合は、ガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜く動作を行う際に、ガラス栓15に対して所望方向への振動を付加することができる。
この場合、ガラス栓15の引き抜き動作時に、容器体14の開口14aにおけるガラス栓15の嵌設位置の変位を起こり易くすることができる。
そして、ガラス栓15の引き抜き動作時に、ガラス栓15の嵌設位置をわずかでも変位させることができた場合は、高い確実性をもってガラス栓15を引く抜くことができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1の第1の保持構造2では、例えば
図4,5に示すように、保持用チャック7,7のそれぞれに同種の振動発生装置6を設けてもよい(任意選択構成要素)。なお、この場合の振動発生装置6としては、例えばガラス栓15の中心軸15a方向と略同一方向に振動する打撃シリンダを用いることができる。
そして、保持用チャック7,7のそれぞれに振動発生装置6(例えば、打撃シリンダ)を設け、かつ保持用チャック7,7によりガラス栓15の頭部15cを挟持した状態で、対を成す振動発生装置6同士を同位相で振動させた場合(以下、この動作を「動作X」という。)は、ガラス栓15に対して、その中心軸15a方向への振動を付加することができる。
また、保持用チャック7,7のそれぞれに振動発生装置6(例えば、打撃シリンダ)を設け、かつ保持用チャック7,7によりガラス栓15の頭部15cを挟持して保持した状態で、対を成す振動発生装置6同士を逆位相で振動させた場合(以下、この動作を「動作Y」という。)は、ガラス栓15に対して、その中心軸15aと直交する方向への振動を付加することができる。
【0050】
より具体的には、上述の動作Xの実施時に、ガラス栓15に対してその中心軸15a方向への振動が付加されるだけでなく、ガラス栓15の中心軸15aに対して直交する方向への分力も発生してガラス栓15に付加される。この時、対を成す振動発生装置6のそれぞれが、ガラス栓15の中心軸15aを中心にして相対する位置に設けられるとともに、これらの振動発生装置6が同位相で振動することで、上述の中心軸15aに対して直交する方向への分力は相殺される。この結果、ガラス栓15に対してその中心軸15a方向への振動のみが付加されることになる。
他方、上述の動作Yの実施時も、ガラス栓15の中心軸15aに対して直交する方向への分力が発生する。この時、対を成す振動発生装置6のそれぞれが、ガラス栓15の中心軸15aを中心にして相対する位置に設けられるとともに、振動発生装置6同士が逆位相で振動するため、上述の中心軸15aに対して直交する方向への分力は相殺されない。また、この動作Yの実施時に、対をなす振動発生装置6において発生するガラス栓15の中心軸15aと平行な方向への振動は相殺される。この結果、動作Yの実施時は、ガラス栓15の中心軸15aと直交(略直交)する方向への振動のみがガラス栓15に対して付加されることになる。
【0051】
このように、本実施形態に係る第1の保持構造2が、ガラス栓15の中心軸15a方向と略平行な方向への振動を発生する振動発生装置6を備え、さらに、この振動発生装置6をガラス栓15の中心軸15aを中心として相対する位置に対をなすように配置しておくことで、ガラス栓15に対してその中心軸15a方向に振動を付加する動作(動作X)と、同中心軸15aと直交(略直交)する方向に振動を付加する動作(動作Y)の2種類の動作を容易に実現することができる。
この場合、一種類の振動発生装置6を備えるだけで、上述の動作X,Yの両方を実現することができるので、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1の構造をシンプルにすることができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る第1の保持構造2が、例えば打撃シリンダからなる振動発生装置6を1対のみ備える場合は、ガラス栓15の全周にわたってその中心軸15aに対して直交する方向への振動を付加することができない。
この場合は、ガラス栓15をその中心軸15aを基軸にして少しずつ回動させながら、繰り返しガラス栓15に対して振動を付加すればよい。
あるいは、第1の保持構造2に、例えば打撃シリンダからなる振動発生装置6を複数対設けておくことで、ガラス栓15をその中心軸15aを基軸にして少しずつ回動させる動作を行う頻度を少なくする、あるいは、この動作を不要にすることができる。
【0053】
続いて、
図1,3,6及び
図7を参照しながら、本実施の形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1における第2の保持構造3及びその周辺設備について説明する。
図6は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置の正面図である。また、
図7は本発明の実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置を裏側から見た図である。なお、
図6は
図3中に示す符号Dで示す方向からすり合わせガラス栓の開栓装置1全体を見た図である。また、
図1乃至
図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図6に示すように、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1は、例えば第2の保持構造3においてガラス器具24における容器体14を保持した後、この第2の保持構造3を第1の保持構造2が設けられている支柱16の正面に移動して第1の保持構造2によりガラス器具24のガラス栓15を保持するよう構成してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、
図1,3,6に示すように、第2の保持構造3は、容器体14を載置するための載置台9と、この載置台9に保持される容器体14に対してその中心軸14bを基軸にして正逆それぞれの方向に所望の値以下のトルクを作用させることができる回動機構4Bと、この載置台9を所望方向に移動させる位置制御機構12を備えていてもよい。
【0054】
そして、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1が上述のような構成を備える場合は、
図6,7に示すように、設置ポジションSにおいて載置台9への容器体14の設置(第2の保持構造3による容器体14の保持)を完了した後、位置制御機構12におけるシリンダ12a及びピストン12bを動作させて、載置台9を支柱16の正面の開栓ポジションTに移動させればよい。なお、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1において、載置台9とピストン12bは、連結軸12cにより連結されている。また、連結軸12cは、支柱16が立設されている台20を厚み方向に穿設してなる孔20aに挿通されることで、台20の裏側から台20の上面側に位置する載置台9(第2の保持構造3)を操作することができる構造になっている。
そして、位置制御機構12を動作させてガラス器具24の容器体14が保持された載置台9を第1の保持構造2の真下(開栓ポジションS)に配置し、この状態で保持用チャック7,7によりガラス栓15の頭部15cを保持することで、ガラス栓15を開栓するための準備が完了する。
なお、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、図示しない別形態とすることで、ガラス器具24におけるガラス栓15を第1の保持構造2で保持した後に、第2の保持構造3によりガラス器具24の容器体14を保持してガラス栓15を開栓するための準備を完了するよう構成してもよい。
【0055】
次に、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1における第2の保持構造3の具体的態様の一例について説明する。
図1,3,6に示すように、第2の保持構造3は、例えばガラス器具24を載置するための載置台9と、この載置台9の厚み方向を貫通しながら挿設される真空吸引用のチューブ18と、このチューブ18に接続される真空吸引設備10を備えていてもよい。
本実施形態に係る第2の保持構造3が上述のような構成を備える場合は、載置台9上に操作対象であるガラス器具24を載置して、真空吸引設備10により容器体14の底面を吸引することで、載置台9上にガラス器具24を起立状態で保持することができる。
【0056】
本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1において操作対象となるすり合わせガラス栓を備えたガラス器具24としては、様々なサイズ及び形態のものが想定される。そして、このようなガラス器具24のうち特に平坦面上に載置して用いられるものは、その外形がどのような形状を有していても、ガラス器具24の底面が略平坦状をなしているという点が共通している。
したがって、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、特に底面が略平坦状をなしているガラス器具24を第2の保持構造3で保持する場合に、第2の保持構造3が載置台9と、この載置台の底面(保持面9a)に連結されるチューブ18と、このチューブ18に接続される真空吸引設備10を少なくとも備えていることで、載置台9の保持面9aに底面が略平坦状をなしているガラス器具24を吸着して保持することができる。
よって、上述のような載置台9、チューブ18及び真空吸引設備10を備えてなる第2の保持構造3を用いる場合は、平坦面上に載置して用いるタイプのガラス器具24に対して特に汎用性の高いすり合わせガラス栓の開栓装置1を提供することができる。
【0057】
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1の第2の保持構造3では、
図1,3,6に示すように、載置台9上に容器体14を真空吸引して保持する際に、容器体14と載置台9の間に復元可能に変形する変形材11を介設してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、底面が平坦状でないガラス器具24(例えば、丸底フラスコ等)についても載置台9、チューブ18及び真空吸引設備10を備えた第2の保持構造3により、その起立状態を維持しながら保持することができる。
この場合、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1が、載置台9と容器体14の間に変形材11を備える場合は、変形材11を備えない場合と比較して、ガラス器具24のサイズ及び形態に対する汎用性が一層高い装置を廉価に提供することができる。
さらに、第2の保持構造3が載置台と容器体14の間に介設される変形材11を備える場合は、ガラス栓15の開栓操作時に、ガラス栓15を保持している第1の保持構造2の動作の基準となる軸(ここではガラス栓15の中心軸15aと同じ)と、容器体14を保持している第2の保持構造3の動作の基準となる軸(ここでは容器体14の中心軸14bと同じ)が完全に一致せず、わずかにずれているような場合に、容器体14の押圧力で変形材11が変形することで、載置台9の保持面9aに対する容器体14の中心軸14bの位置を変位させることができるという効果も発揮させることができる。
つまり、ガラス栓15の開栓操作時に、ガラス栓15の中心軸15aと、容器体14の中心軸14bとを略一致させることができる。
この場合、ガラス栓15の開栓操作中に、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸が略一致していないことが原因で、ガラス器具24(ガラス栓15及び/又は容器体14)の局所に応力が作用して、ガラス器具24が意図せず破損するのを防止することができる。
【0058】
なお、本実施形態に係る載置台9に変形材11を設ける場合は、この変形材11上にガラス器具24を真空吸引により保持するために、変形材11はチューブ18の中空部と連通する貫通孔11aを備えている必要がある。
この場合、載置台9上にガラス器具24を真空吸引することで起立状態にして保持しつつ、ガラス器具24に対して意図しない応力が作用した場合に、変形材11を変形させて容器体14の中心軸14bの位置を所望に変位させることでガラス器具24に作用する応力を緩和することができる。この結果、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1によるガラス栓15の開栓操作時に、ガラス器具24が破損するのを防ぐことができる。
また、変形材11の材質としては、例えばゴム、合成樹脂、シリコン等の復元性を有する材料からなる平板又はシート体を使用することができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1は、上述のような載置台9に保持される容器体14に対して、その中心軸14bを基軸にして正逆それぞれの方向に所望の値以下のトルクを作用させることができる回動機構4B(
図1を参照)を備えている。
より具体的には、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1は、
図7に示すように、例えば載置台9がその裏面側に歯車21を備えており、この歯車21を正逆それぞれの方向に回動させることで、この動作に連動して載置台9がその中心軸(容器体14の中心軸14bと同じ)を基軸に正逆それぞれの方向に回動するよう構成されている。
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、
図7に示すように、台20の裏面側における開栓ポジションSに、歯車22を備えたモータ17が設けられている。これにより、位置制御機構12を動作させて、載置台9とともに歯車21を開栓ポジションSに移動することで、歯車22に歯車21を歯合させることができる。そして、この状態でモータ17を作動させることで、載置台9をその中心軸(容器体14の中心軸14bと同じ)を基軸にして正逆それぞれの方向に回動させるようなトルクを付加することができる。
よって、上述のような本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1によれば、ガラス栓15の開栓操作時に、ガラス栓15をその中心軸15a方向に引き抜く動作を行うと同時に、第2の保持構造3により、容器体14に対してその中心軸14bを基軸に正逆いずれかの方向へ所望の値以下のトルクを作用させる動作(上述の動作A)を付加する、あるいは、容器体14に対してその中心軸14bを基軸にして正逆それぞれの方向へ所望の値以下のトルクを作用させる動作を切り替える切替動作(上述の動作B)を付加することができる。
【0060】
また、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、
図1,3,6に示すような載置台9上に容器体14を真空吸引して保持するタイプの第2の保持構造3に代えて、容器体14を挟持して保持するタイプの第2の保持構造3を用いることもできる(任意選択構成要素)。
上述のように構成されるすり合わせガラス栓の開栓装置1では、例えば容器体14の開口14aの近くを第2の保持構造3により保持することができる。この場合、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸とのずれを生じ難くすることができる。したがって、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1において容器体14を挟持して保持するタイプの第2の保持構造3を用いる場合は、特にガラス器具24のサイズが大きい場合や、容器体14の強度が著しく低い場合に、ガラス栓15の開栓操作時にガラス器具24の破損を起こり難くすることができる。
【0061】
また、第2の保持構造3が容器体14を挟持して保持するタイプを用いる場合も、容器体14を挟持する挟持具と容器体14との間に変形材11を介設してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、図示しない挟持具(第2の保持構造3)で容器体14を保持した際に、その保持面に対して容器体14の中心軸14bを変位させることができる。
そして、この場合も載置台9が変形材11を備える場合と同様に、ガラス栓15の開栓操作時に、ガラス器具24の局所に意図しない応力が作用して破損するのを防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、ガラス栓15に対して、引き抜き動作のみを、又は、引き抜き動作及び振動動作(動作C及び/又は動作D)、を付加しつつ、容器体14に対して、その中心軸14bを基軸にして正逆いずれか又はそれぞれの方向に所望の値以下のトルクを作用させる動作(動作A、又は、動作B)を付加する、場合を例に挙げて説明しているが、容器体14に対してトルクを付加する代わりに、ガラス栓15に対して付加(動作A、又は、動作B)できるようにすり合わせガラス栓の開栓装置1を構成してもよい(図示せず、任意選択構成要素)。
より具体的には、
図1に示すように、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1は、第2の保持構造3に回動機構4Bを備えることに代えて、第1の保持構造2に回動機構4Aを備えていてもよい。この場合も、第2の保持構造3が回動機構4Bを備える場合と同様の作用効果を発揮させることができる。
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1において、第1の保持構造2が回動機構4Aを備える場合は、第2の保持構造3である載置台9又は同様の機能を有する図示しない挟持具と容器体14との間に変形材11を備えていてもよいし、ガラス栓15と第1の保持構造2との間に変形材11を介設してもよい。
この場合、ガラス栓15に振動発生装置6において発生する振動が伝わり難くなるというデメリットが生じるものの、ガラス栓15に対して動作A又は動作Bを付加する場合や、これに加えてさらにガラス栓15に対して動作C及び/又は動作Dを付加する際に、ガラス栓15が破損するのを防止できるというメリットを発揮させることができる。
【0063】
あるいは、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1において、第2の保持構造3が回動機構4Bを備える場合、又は、第1の保持構造2が回動機構4Aを備える場合、のいずれの場合も、第1の保持構造2とガラス栓15の間、及び、第2の保持構造3と容器体14の間、の両方に変形材11を備えていてもよい(任意選択構成要素)。
この場合、操作対象であるガラス器具24のサイズが特に小さい場合や、ガラス器具24の強度が低い場合に、ガラス栓15の開栓操作時にガラス器具24が破損するリスクを低減できるというメリットを有する。
また、この場合、第1の保持構造2とガラス栓15の間に介設される変形材11の材質や厚みと、第2の保持構造3と容器体14の間に介設される変形材11の材質や厚み、は必ずしも統一していなくともよい。
より具体的には、例えば第1の保持構造2とガラス栓15の間に介設される変形材11については、振動発生装置6からの振動の伝達を良好にする目的で硬質又は薄いものを採用してもよい。他方、第2の保持構造3と容器体14の間に介設される変形材11については、これとは対照的に保持面9aに対する容器体14の中心軸14bの変位を容易にするために、変形材11として軟質なものを採用する、あるいは、変形材11の厚みを十分に厚くしてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、振動(動作C又は動作D)をガラス栓15に対してのみ付加する場合を例に挙げているが、容器体14の開口14aに振動を付加する場合も同様の作用効果を期待することができる。
なお、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1においては、例えば制御部13において第1の保持構造2やその関連設備、並びに、第2の保持構造3やその関連設備の各動作が所望に制御されている。
【0065】
また、先のすり合わせガラス栓の開栓方法23の説明においても述べたが、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、ガラス栓15又は容器体14に対してトルクを作用させる場合、その値が所望の値以下となるように調整する必要がある。
このような事情に鑑み、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、例えばガラス栓15又は容器体14に作用するトルクを検出するトルク検出センサを設けておき、この検出値に基づいてモータ17の出力を制御部13により所望に制御できるよう構成してもよい。この場合は、操作対象であるガラス器具24のサイズや強度に応じて最適なトルクをガラス栓15又は容器体14に付加することができるというメリットがある。この場合、高性能でかつ汎用性に優れたすり合わせガラス栓の開栓装置1を提供することができる。
あるいは、上述のようなトルク検出センサを利用した制御に代えて、例えばモータ17としてサーボモーターを用いるなどしてガラス栓15又は容器体14に作用するトルクを自動で制御できるよう構成してもよい。この場合は、トルク検出センサや制御部13を利用してトルクを制御する場合に比べて、すり合わせガラス栓の開栓装置1の構造をシンプルにできるというメリットがある。この場合は、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1を廉価に提供できる。
【0066】
また、上述の通り本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、ガラス器具24のガラス栓15又は容器体14に対してトルクを作用させる場合に、第1の保持構造2,第2の保持構造3のいずれを用いてもよい。そして、この場合は、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸を極力一致させる必要がある。
このような事情に鑑み、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1では、例えば第1の保持構造2にスライド機構5及び回動機構4Aを設けるとともに、第2の保持構造3では単に容器体14を保持するよう構成してもよい(任意選択構成要素)。あるいは、上記構成に加えて、第1の保持構造2又は第2の保持構造3が、振動発生装置6を備えるよう構成してもよい(任意選択構成要素)。
そして、本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1を上述のように構成する場合は、第1の保持構造2によりガラス栓15を引き抜きながら、同じく第1の保持構造2によりガラス栓15に対してトルクを付加することができる。また、この場合は、第2の保持構造3が回動機構4Bを備えていないため、第1の保持構造2の動作の基準となる軸と、第2の保持構造3の動作の基準となる軸の不一致による不具合(ガラス器具24の破損)が起こり難い。
よって、上記構成の本実施形態に係るすり合わせガラス栓の開栓装置1によれば、ガラス器具24の開栓操作時に、ガラス栓15の中心軸15aと容器体14の中心軸14bを一致させるための設備、あるいは、これらの軸が一致していない状況を緩和するための設備等を簡素化することができる。したがって、上記構成のすり合わせガラス栓の開栓装置1によれば、高性能な装置を廉価に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように本発明は、すり合わせガラス栓を人手によらず開栓するための方法及び装置であり、分析設備等に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…すり合わせガラス栓の開栓装置 2…第1の保持構造 3…第2の保持構造 4A,4B…回動機構 5…スライド機構 6…振動発生装置 7…保持用チャック 8…開閉機構 9…載置台 9a…保持面 10…真空吸引設備 11…変形材 11a…貫通孔 12…位置制御機構 12a…シリンダ 12b…ピストン 12c…連結軸 13…制御部 14…容器体 14a…開口 14b…中心軸 15…ガラス栓 15a…中心軸 15c…頭部 16…支柱 17…モータ 18…チューブ 19…レール 20…台 20a…孔 21…歯車 22…歯車 23…すり合わせガラス栓の開栓方法 24…ガラス器具 S…設置ポジション T…開栓ポジション