IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヒラカワの特許一覧

特許7389452煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置
<>
  • 特許-煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置 図1
  • 特許-煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置 図2
  • 特許-煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置 図3
  • 特許-煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23L 17/14 20060101AFI20231122BHJP
   F23J 13/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F23L17/14 J
F23J13/00 Z
F23L17/14 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019131516
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017983
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】北川 幸治郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103343647(CN,A)
【文献】特開昭57-006225(JP,A)
【文献】特開昭57-021713(JP,A)
【文献】特開平10-030812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0044791(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107314386(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105737179(CN,A)
【文献】中国実用新案第207073956(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106322413(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106338078(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1679679(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0203976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 17/14
F23J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置からの上向きの煙道の下部に、同煙道を構成する壁体の内面に沿って流下する凝縮水を受ける内面側受け樋と、前記壁体の外面に沿って流下する凝縮水を受ける外面側受け樋と、前記内面側受け樋と外面側受け樋との間を仕切る仕切壁とを有し、
前記内面側受け樋と外面側受け樋とは、前記仕切壁に形成された連通路によって互いに連通しており、
外面側受け樋に、樋内に溜まった凝縮水を排出するための排出路が接続されており、
前記連通路は、内面側受け樋および外面側受け樋の内部に溜まった凝縮水によって水封されており、
前記仕切壁の外周に第1のフランジが設けられており、
第1のフランジの外周端面と、外面側受け樋を構成する外側樋壁との間に、上下方向の隙間が形成され、
前記煙道における内面側受け樋および外内面側受け樋よりも上側の部分に立ち上がり部が設けられ、
立ち上がり部の外周に第1フランジよりも小径の第2フランジが形成されており、
第2フランジは、第1フランジに固定されていることを特徴とする煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置
【請求項2】
水封するための凝縮水のレベルは、煙道外部と比べたときの煙道内の圧力変動に対応した水柱の高さよりも大きなものであることを特徴とする請求項1記載の煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラとして、燃焼ガスを排気するための煙道が、ボイラの本体部から上向きに設置されたものが知られている。一方、近年においては高効率ボイラの開発が進められている。近年の高効率ボイラにおいては、燃焼排ガスの温度が100度未満の低温であるものも存在する。このような低温の排ガスであっても、ボイラから上向きの煙道に流れ込むと、この種の煙道は一般的に保温が行われていないために、煙道の内壁面で冷やされ、この内壁面で凝縮水が発生する。発生した凝縮水は、この内壁面を伝ってボイラ側へ流下する。
【0003】
燃焼ガスから発生した凝縮水は、燃焼ガス中に含まれていた二酸化炭素や窒素酸化物が溶け込むことで、低pHすなわち酸性の状態となっている。このため、ボイラの腐食による不具合を引き起こす要因となっている。特に、ボイラからの排気口の部分には、ボイラからの排出熱を利用した給水予熱装置が設けられることが多いが、その場合はこの給水予熱装置にも腐食が発生する危険性がある。
【0004】
特許文献1には、上向きの煙道としての煙突の内部において、排気ガスに含まれる水分を凝縮させて回収するために、煙道内に、排気ガス中の水分を衝突させて付着させるための案内羽根を設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-13919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、付着水を、煙道内のドレーンに導入させたのち、煙道の外部へ回収させる旨の記載はあるものの、排気ガスが充満している煙道の内部からどのようにすれば排気ガスを伴わずに凝縮水だけを煙道外へ回収することができるのかについての具体的な説明はされていない。
【0007】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、煙道内で凝縮水が発生したときに、排気ガスを伴わずに凝縮水だけを煙道外に回収できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の、煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装置は、
燃焼装置からの上向きの煙道の下部に、同煙道を構成する壁体の内面に沿って流下する凝縮水を受ける内面側受け樋と、前記壁体の外面に沿って流下する凝縮水を受ける外面側受け樋と、前記内面側受け樋と外面側受け樋との間を仕切る仕切壁とを有し、
前記内面側受け樋と外面側受け樋とは、前記仕切壁に形成された連通路によって互いに連通しており、
外面側受け樋に、樋内に溜まった凝縮水を排出するための排出路が接続されており、
前記連通路は、内面側受け樋および外面側受け樋の内部に溜まった凝縮水によって水封されており、
前記仕切壁の外周に第1のフランジが設けられており、
第1のフランジの外周端面と、外面側受け樋を構成する外側樋壁との間に、上下方向の隙間が形成され、
前記煙道における内面側受け樋および外内面側受け樋よりも上側の部分に立ち上がり部が設けられ、
立ち上がり部の外周に第1フランジよりも小径の第2フランジが形成されており、
第2フランジは、第1フランジに固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、上記の回収装置において、水封するための凝縮水のレベルは、煙道外部と比べたときの煙道内の圧力変動に対応した水柱の高さよりも大きなものであることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
このような構成であると、内面側受け樋と外面側受け樋とが連通路によって連通されるとともに、この連通路が、受け樋内に溜まった凝縮水によって水封されているため、煙道を構成する壁体の内面で凝縮しこの内面に沿って流下することで内面側受け樋により受けられた凝縮水は、煙道内の排気ガスを伴わずに外面側受け樋すなわち煙道外へ導き出される。このため、煙道内で凝縮水が発生したときに、排気ガスを伴わずに凝縮水だけを煙道外に回収することができる。また、内面側受け樋のみならず、外面側受け樋をも有する構成であるために、煙道のつなぎ目から外部に漏れだした凝縮水などをも確実に回収することができる。
【0011】
水封するための凝縮水のレベルが、煙道外部と比べたときの煙道内の圧力変動に対応した水柱の高さよりも大きなものである場合には、煙道内の圧力変動にかかわらず水封状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の、煙道で発生した凝縮水の回収装置を備えた燃焼装 の、要部の断面構造を示すための、図3におけるI-I線に沿った拡大断面図である。
図2図1における要部を拡大して示す図である。
図3図1に示す部分の外観を示す図である。
図4】同回収装置が設置される煙道についての全体的な経路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図4において、10は燃焼装置としてのボイラであり、燃料を燃焼させることによって蒸気および、または温水を生成することができるように構成されている。ボイラ10からの排気ガスは、煙道12を通って煙突14に導かれ、必要であれば所定の排ガス処理を施されたうえで、煙突14から大気中に排出される。
【0014】
煙道12は、ボイラ10からの立ち上がり部16と、この立ち上がり部16と煙突14とを連結する連結部18とを備える。図示の例では。立ち上がり部16は上下方向に設置され、連結部18は横向きに設置されている。さらに、連結部18は、立ち上がり部16から煙突14に向かうにつれて下り勾配を形成するように、若干傾斜した構成とされている。
【0015】
上述のように、煙道12や煙突14の内部では、凝縮水が発生することがある。このうち、煙突14の内部で発生した凝縮水は、煙突14において矢印Aで示すように、煙突14の底部の適所から外部に回収される。その手法は任意である。煙道12における連結部18で発生した凝縮水は、上述のように連結部18が煙突14に向かうにつれて下り勾配を形成するように傾斜した構成とされていることから、煙突14に近付くように導かれ、矢印Bで示すように煙突14の近傍で煙道12の外部へ回収されるか、あるいは、煙突14まで導かれて、煙突14の内部で発生した凝縮水とともに回収される。
【0016】
煙道12の立ち上がり部16の内部で発生した凝縮水は、矢印Cで示すように上下方向に設置された立ち上がり部16の壁面に沿って流下する。このため、対策を講じないと、上述のように酸性の状態となっている凝縮水がボイラ10に入り込んで不都合が生じるおそれがある。
【0017】
そこで本発明においては、図1図3に示す凝縮水の回収装置22を設置して、煙道12の内部で発生した凝縮水がボイラ10に入り込まないようにしている。
【0018】
図3および図1に示すように、ボイラ10は、その上部に給水予熱器24を備えており、この給水予熱器24と煙道12の立ち上がり部16とが、ダクト26を介して互いに接合されている。ダクト26には点検孔28が設けられており、この点検孔28は蓋板30にて塞がれている。
【0019】
回収装置22は、ダクト26と煙道12の立ち上がり部16との間に設けられている。詳細には、図1図3に示すように、煙道12の立ち上がり部16は耐食性の鋼板によって円筒状に形成されている。32は、煙道12を構成する壁体である。
【0020】
回収装置22は、耐食性の鋼板による樋構造を呈した構成とされている。ここで、34は樋底板で、ダクト26の天板を兼ねた環状板によって構成され、横方向に配置されたうえで、ダクト26を構成する上下方向の壁部36の上端に溶接により取り付けられている。樋底板34の上面には、内側樋壁38と、仕切壁42と、外側樋壁40とが、溶接により接続されている。これらの内側樋壁38と、仕切壁42と、外側樋壁40とは、円型、角型に形成され、互いに径方向に間隔をあけた状態で、この順に径方向の内側から外側に向けて同心状に配置されている。そして、内側樋壁38よりも内周側の部分が、ダクト26の内部と煙道12の立ち上がり部16の内部とを繋ぐ排気ガス通路44を構成している。
【0021】
内側樋壁38と樋底板34と仕切壁42とによって、上向きに開口した環状の内面側受け樋46が構成されている。この内面側受け樋46は、排気ガス通路44よりも外周側において、立ち上がり部分16に連通した構成とされている。一方、仕切壁42と樋底板34と外側樋壁40とによって、上向きに開口した環状の外面側受け樋48が構成されている。この外面側受け樋48は、内面側受け樋46よりも外周側において、大気に開放された構成とされている。内面側受け樋46と外面側受け樋48も、同心円状に配置されている。
【0022】
外面側受け樋48には、横向きの排出路を構成する排水口50が設けられている。仕切壁42には、排水口50よりも下側の位置において、内面側受け樋46と外面側受け樋48とを連通させる連通路52が、貫通状態で形成されている。内面側受け樋46と外面側受け樋48とには、水54が溜められている。この水54は、排水口50の下縁56までのレベルとなる。このとき、連通路52は水没した状態となる。
【0023】
仕切壁42の上端の縁部の外周には、フランジ58が溶接されている。フランジ58には周方向に沿った複数の位置に締結孔60が貫通状態で形成されており、各締結孔60に対応したフランジ58の下面59には、ナット62が溶接されている。フランジ58は、その外径が外側樋壁40の内径よりも小径となるように構成され、その結果、フランジの外周端面64と外側樋壁40との間に上下方向の隙間66が形成されている。
【0024】
煙道12の立ち上がり部16の下端の外周にはフランジ68が形成されている。このフランジ68は、その外径がフランジ58における複数の締結孔60のピッチ円よりも小径に形成されて、その外周縁が締結孔60と重ならないように構成されている。70は環状の押さえ板で、締結孔60を通してナット62にねじ込まれるボルト72によって、フランジ58に締結されるように構成されている。その結果、煙道12のフランジ68がフランジ58と押さえ板70との間に挟み込まれ、それによって立ち上がり部16と凝縮水の回収装置22とが相互に固定されている。
【0025】
このような構成において、ボイラ10を運転する際には、外面側受け樋48と内面側受け樋46との中に水54を注ぎ込む、すると、この水54は、排水口50の下縁56のレベルまで貯留される。連通路52によって外面側受け樋48と内面側受け樋46とが連通されているため、これら外面側受け樋48と内面側受け樋46とで水54のレベルは等しくなる。余剰の水は、排水口50から外部に排出される。
【0026】
この状態では、連通路52は、外面側受け樋48と内面側受け樋46とに溜まった水54によって水封されている。すなわちダクト26と回収装置22と煙道12との内部も、外部に対して水封された状態となっている。一方、煙道12の内部は、外部に比べて±1.0hPa程度の圧力変動が生じることが一般的である。これに対応するために、排水口50の下縁56によって規定される水54のレベルと、連通路52の上縁との高低差を10mm程度以上としておけば、上記した圧力変動にかかわらず水封状体を維持することができる。すなわち、排水口50の下縁56と連通路52の上縁との上下方向の位置関係を煙道12の内部において予想される圧力変動の水柱高さよりも大きなものとしておくことにより、圧力変動に関係なく水封状体を維持することができる。これによって、煙道12の内部を流れる排気ガスが外部に漏れ出すことを、確実に防止することができる。
【0027】
ボイラ10を運転すると、燃料の燃焼により生じた排気ガスは、煙道12を通って煙突14に導かれたうえで外部に排出される。このとき、排気ガス温度が低い場合には、一般的に煙道12は保温されておらず、そのため排気ガスが冷やされて、煙道12の特に立ち上がり部16の壁体32の内面において凝縮水が発生する。この凝縮水は、壁体32の内面を伝わって流下し、内面側受け樋46に流れ込む。一方、煙道12はつなぎ目を有することが通例であるが、このつなぎ目から煙道12の壁体32の外面側へ凝縮水が漏れ出すことがある。この漏れ出した凝縮水は、壁体32の外面を伝わって流下し、押さえ板70の外面などを経たうえで、隙間66を通って外面側受け樋48に流れ込む。このとき、外面側受け樋48は、その上部の大部分が隙間66を除いてフランジ58により覆われているため、この外面側受け樋48に溜まった酸性の凝縮水が外部へ流れ出すことが防止される。
【0028】
これらの流れ込みによって、内面側受け樋46および外面側受け樋48の水量が増大するが、その増大分は連通路52および排水口50を経て外部へ排出される。また、凝縮水が特に内面側受け樋46に流れ込んで、この内面側受け樋46により受け止められることで、排気ガス中の二酸化炭素や窒素酸化物などの溶け込みによりpH値が下がったすなわち酸性化した凝縮水がボイラ10の内部に入り込むことを、確実に防止することができる。このため、ボイラ10に腐食による不具合が引き起こされないようにすることができる。
【0029】
内面側受け樋46および外面側受け樋48の大きさは、凝縮水の発生量に応じて適宜に変更することができる。排出口50は、その設置数を凝縮水の発生量に応じて適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0030】
12 煙道
32 壁体
46 内面側受け樋
48 外面側受け樋
50 排水口
52 連通路
54 水
図1
図2
図3
図4