(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】油水分離槽
(51)【国際特許分類】
B01D 17/028 20060101AFI20231122BHJP
B01D 17/025 20060101ALI20231122BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20231122BHJP
E03F 5/16 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B01D17/028 A
B01D17/025 502Z
B01D17/025 504
C02F1/40 A
E03F5/16
(21)【出願番号】P 2019201005
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502045884
【氏名又は名称】株式会社赤羽コンクリート
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利典
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-082755(JP,A)
【文献】実開昭57-055512(JP,U)
【文献】特開2002-339449(JP,A)
【文献】特開平08-173980(JP,A)
【文献】特開2019-034278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
C02F 1/40
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも流入側分離室と流出側分離室を有する
プレキャストコンクリート製油水分離槽であって、
前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記流入側分離室と連通する流入用開口部と、前記流出側分離室の下部と連通する流出用開口部と、前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流入側分離室と前記流出側分離室に区画する区画壁と、前記区画壁の下部に設けられた流通用開口部とを備え、前記流出側分離室は、底面部
を備え、
さらに、前記底面部は、前記底面部より上方に延び、前記流通用開口部と前記流出用開口部間を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記流通用開口部および前記流出用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記流出側分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されていることを特徴とする
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項2】
流入側分離室と、流出側分離室と、前記流入側分離室と前記流出側分離室間に位置する中間分離室を有する
プレキャストコンクリート製油水分離槽であって、
前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記流入側分離室と連通する流入用開口部と、前記流出側分離室の下部と連通する流出用開口部と、前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流入側分離室と前記中間分離室に区分する第1の区画壁と、前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流出側分離室と前記中間分離室に区分する第2の区画壁と、前記第1の区画壁の下部に設けられた第1の流通用開口部と、前記第2の区画壁の下部に設けられた第2の流通用開口部とを備え、前記中間分離室は、底面部
を備え、
さらに、前記底面部は、前記底面部より上方に延び、前記第1の流通用開口部および前記第2の流通用開口部を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第1の流通用開口部および前記第2の流通用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記中間分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されていることを特徴とする
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項3】
流入側分離室と、流出側分離室と、前記流入側分離室と前記流出側分離室間に位置する第1の中間分離室および第2の中間分離室とを有する
プレキャストコンクリート製油水分離槽であって、
前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記流入側分離室と連通する流入用開口部と、前記流出側分離室の下部と連通する流出用開口部と、前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流入側分離室と前記第1の中間分離室に区分する第1の区画壁と、前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流出側分離室と前記第2の中間分離室に区分する第2の区画壁と、前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記第1の中間分離室と前記第2の中間分離室に区分する第3の区画壁と、前記第1の区画壁の下部に設けられた第1の流通用開口部と、前記第2の区画壁の下部に設けられた第2の流通用開口部と、前記第3の区画壁の下部に設けられた第3の流通用開口部とを備え、前記第2の中間分離室は、底面部
を備え、
さらに、前記底面部は、前記底面部より上方に延び、前記第3の流通用開口部および前記第2の流通用開口部を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第3の流通用開口部および前記第2の流通用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記第2の中間分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されていることを特徴とする
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項4】
前記第1の中間分離室は、底面部と、前記底面部より上方に延び、前記第1の流通用開口部および前記第3の流通用開口部を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第1の流通用開口部および前記第3の流通用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記第1の中間分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されている請求項3に記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項5】
前記流出側分離室は、底面部と、前記底面部より上方に延び、前記第2の流通用開口部と前記流出用開口部間を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第2の流通用開口部および前記流出用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記流出側分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されている請求項2ないし4のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項6】
前記第2の流通用開口部は、その上端が、前記第1の流通用開口部の上端より、若干下方に位置している請求項2ないし5のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項7】
前記板状部材は、金属製の平板である請求項1ないし6のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項8】
前記板状部材は、湾曲した板状部材または波状の板状部材である請求項1ないし7のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項9】
前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記板状部材の前記両側部が進入可能な内壁面に形成された2つの溝を備えている請求項1ないし
8のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項10】
前記板状部材を有する分離室は、底部開口部と、前記底部開口部を封鎖する底面部材を備え、前記底面部材は、前記底面部を形成する底面部形成部と、前記底面部形成部より上方に延びる前記板状部材を備え、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部形成部に固定されている請求項1ないし
9のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項11】
前記
プレキャストコンクリート製油水分離槽は、少なくとも1つの前記分離室と連通する上部開口部および底部開口部と、前記分離室の側壁および前記区画壁を有し、一体成形された分離槽本体と、前記底部開口部を封鎖するとともに、前記分離槽本体に固定された底面部材を備え、さらに、前記分離槽本体の前記上部開口部は、内側に向かって延びる上部補強部と、前記上部補強部の内側に形成された上部開口を有している請求項1ないし
10のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項12】
少なくとも1つの前記流通用開口部は、上下方向寸法よりも幅方向寸法が大きくされている請求項1ないし
11のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項13】
前記流入用開口部は、前記流入側分離室の上部と連通しており、前記流入側分離室は、前記板状部材を備えておらず、かつ、前記流入用開口部には、異物捕集用ネットが装着されている請求項1ないし
12のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【請求項14】
前記分離室内における前記板状部材の位置は、前記分離室の中央よりも、流入側の前記流通用開口部側となる位置に設けられている請求項1ないし
13のいずれかに記載の
プレキャストコンクリート製油水分離槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油の混入した水から、油を回収するための油水分離槽、具体的には、ガソリンスタンド、洗車場、油を利用する工場などで用いられるのに適した油水分離槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油水分離槽は、油が混入した排水を滞留させて、油と水との比重の差により、油水を分離し、上層に溜まった油分を除去するために用いられる。
油水分離槽としては、施工現場にて作成する(いわゆる、現場打ち工法)タイプのものや、あらかじめ工場で作成した油水分離槽を現場に運搬して設置する(いわゆる、プレキャスト工法)タイプのものがある。あらかじめ工場で作成した油水分離槽を用いることにより、施工期間を短縮できるという利点がある。
また、近年の人手(職人)不足などに起因する施工現場での作業負荷軽減の要請からも、現場打ち工法からプレキャスト工法への移行が進められている。
【0003】
このような施工(プレキャスト工法)において用いられる油水分離槽としては、例えば、実用新案登録第2597949号公報(特許文献1)のようなプレキャスト式油水分離槽がある。このプレキャスト式油水分離槽は、上端および下端双方の少なくとも一部が開放された略筒型のコンクリート製の外枠と、この外枠の内部に設けられた少なくとも1枚のコンクリート製の仕切壁によって仕切られた複数の区画と、隣接するこれら複数の区画を連通するように仕切壁に埋設された、当該仕切壁の壁厚と略長さの等しい樹脂製の連通管とを有している。
また、本願出願人も、先に、特許文献1に対して、連接する油水分離槽間における漏水を確実に防止でき、かつ、分離槽連接を容易に行うための技術として、特開2019-034278号公報(特許文献2)の構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第2597949号公報
【文献】特開2019-034278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本願発明者による更なる検討の結果、特許文献1および特許文献2に開示の技術についても、未だに、現場での作業負荷が大きいことが明らかとなった。
すなわち、特許文献1の油水分離槽では、油水分離槽の底面を現場にて作成する必要がある。また、特許文献1および特許文献2の油水分離槽では、油水分離槽を機能させるための管部材を現場にて取り付ける必要があり、さらに必要に応じて、液密性を確保するための作業(モルタルの充填など)を行わなければならない。加えて、プレキャスト工法に用いられる油水分離槽は、運搬や設置などの作業負荷も考えると、できるだけ軽量であることが望ましい。
そこで、本発明は、油水分離機能を確保しつつ、運搬や設置を含めた現場(工場外)での作業負荷を軽減できる油水分離槽を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 少なくとも流入側分離室と流出側分離室を有するプレキャストコンクリート製油水分離槽であって、
前記プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記流入側分離室と連通する流入用開口部と、前記流出側分離室の下部と連通する流出用開口部と、前記プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流入側分離室と前記流出側分離室に区画する区画壁と、前記区画壁の下部に設けられた流通用開口部とを備え、前記流出側分離室は、底面部を備え、
さらに、前記底面部は、前記底面部より上方に延び、前記流通用開口部と前記流出用開口部間を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記流通用開口部および前記流出用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記流出側分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されているプレキャストコンクリート製油水分離槽。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(2) 流入側分離室と、流出側分離室と、前記流入側分離室と前記流出側分離室間に位置する中間分離室を有するプレキャストコンクリート製油水分離槽であって、
前記プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記流入側分離室と連通する流入用開口部と、前記流出側分離室の下部と連通する流出用開口部と、前記プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流入側分離室と前記中間分離室に区分する第1の区画壁と、前記プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流出側分離室と前記中間分離室に区分する第2の区画壁と、前記第1の区画壁の下部に設けられた第1の流通用開口部と、前記第2の区画壁の下部に設けられた第2の流通用開口部とを備え、前記中間分離室は、底面部を備え、
さらに、前記底面部は、前記底面部より上方に延び、前記第1の流通用開口部および前記第2の流通用開口部を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第1の流通用開口部および前記第2の流通用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記中間分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されているプレキャストコンクリート製油水分離槽。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(3) 流入側分離室と、流出側分離室と、前記流入側分離室と前記流出側分離室間に位置する第1の中間分離室および第2の中間分離室とを有するプレキャストコンクリート製油水分離槽であって、
前記プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記流入側分離室と連通する流入用開口部と、前記流出側分離室の下部と連通する流出用開口部と、前記プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流入側分離室と前記第1の中間分離室に区分する第1の区画壁と、前記プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記流出側分離室と前記第2の中間分離室に区分する第2の区画壁と、前記プレキャストコンクリート製油水分離槽内を前記第1の中間分離室と前記第2の中間分離室に区分する第3の区画壁と、前記第1の区画壁の下部に設けられた第1の流通用開口部と、前記第2の区画壁の下部に設けられた第2の流通用開口部と、前記第3の区画壁の下部に設けられた第3の流通用開口部とを備え、前記第2の中間分離室は、底面部を備え、
さらに、前記底面部は、前記底面部より上方に延び、前記第3の流通用開口部および前記第2の流通用開口部を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第3の流通用開口部および前記第2の流通用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記第2の中間分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されており、前記板状部材と前記底面部が一体化しているプレキャストコンクリート製油水分離槽。
【0009】
(4) 前記第1の中間分離室は、底面部と、前記底面部より上方に延び、前記第1の流通用開口部および前記第3の流通用開口部を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第1の流通用開口部および前記第3の流通用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記第1の中間分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されている上記(3)に記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(5) 前記流出側分離室は、底面部と、前記底面部より上方に延び、前記第2の流通用開口部と前記流出用開口部間を横切るように設けられた板状部材を備え、前記板状部材は、上端が前記第2の流通用開口部および前記流出用開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が、前記流出側分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部に固定されている上記(2)ないし(4)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(6) 前記第2の流通用開口部は、その上端が、前記第1の流通用開口部の上端より、若干下方に位置している上記(2)ないし(5)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(7) 前記板状部材は、金属製の平板である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(8) 前記板状部材は、湾曲した板状部材または波状の板状部材である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(9) 前記プレキャストコンクリート製油水分離槽は、前記板状部材の前記両側部が進入可能な内壁面に形成された2つの溝を備えている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(10) 前記板状部材を有する分離室は、底部開口部と、前記底部開口部を封鎖する底面部材を備え、前記底面部材は、前記底面部を形成する底面部形成部と、前記底面部形成部より上方に延びる前記板状部材を備え、かつ、前記板状部材の下端部は、前記底面部形成部に固定されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(11) 前記プレキャストコンクリート製油水分離槽は、少なくとも1つの前記分離室と連通する上部開口部および底部開口部と、前記分離室の側壁および前記区画壁を有し、一体成形された分離槽本体と、前記底部開口部を封鎖するとともに、前記分離槽本体に固定された底面部材を備え、さらに、前記分離槽本体の前記上部開口部は、内側に向かって延びる上部補強部と、前記上部補強部の内側に形成された上部開口を有している上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(12) 少なくとも1つの前記流通用開口部は、上下方向寸法よりも幅方向寸法が大きくされている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(13) 前記流入用開口部は、前記流入側分離室の上部と連通しており、前記流入側分離室は、前記板状部材を備えておらず、かつ、前記流入用開口部には、異物捕集用ネットが装着されている上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
(14) 前記分離室内における前記板状部材の位置は、前記分離室の中央よりも、流入側の前記流通用開口部側となる位置に設けられている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のプレキャストコンクリート製油水分離槽。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプレキャストコンクリート製油水分離槽は、少なくとも1つの分離室において、底面部を備え、さらに、底面部は、底面部より上方に延び、排水が流入する開口部と排水が流出する開口部間を横切るように設けられた板状部材を備え、板状部材は、上端がそれらの開口部よりも所定長上方に位置し、両側部が分離室の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材の下端部は底面部に固定されている。そのため、油水分離機能を確保しつつ、排水の漏れを阻止し、さらに、運搬や設置を含めた現場(工場外)での作業負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の油水分離槽(2槽タイプ)の実施例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す油水分離槽を製造する際の一工程を示す断面説明図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す油水分離槽を製造する際の他の一工程を示す断面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の油水分離槽(2槽タイプ)の他の実施例を示す、
図2に対応する断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の油水分離槽(2槽タイプ)の他の実施例を示す、
図2に対応する断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の油水分離槽(2槽タイプ)の他の実施例を示す、
図2に対応する断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の油水分離槽(3槽タイプ)の実施例を示す、
図2に対応する断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の油水分離槽(4槽タイプ)の実施例を示す、
図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油水分離槽(2槽タイプ)を図面に示した実施例を用いて説明する。なお、以下、特に断りのない限り、
図2における上下方向を油水分離槽の上下方向として説明する。また、
図2の左右方向において左側から右側へ向かって排水が流れるものとし、左側を流入側、右側を流出側として説明する。図中、排水の流れを細線矢印にて示すことがある。
【0013】
図2に示されるように、本実施例の油水分離槽1は、流入側分離室2と流出側分離室4を有する、いわゆる2槽タイプのものである。油水分離槽1は、流入側分離室2と連通する流入用開口部21と、流出側分離室4の下部と連通する流出用開口部41と、油水分離槽1内を流入側分離室2と流出側分離室4に区画する区画壁6と、区画壁6の下部に設けられた流通用開口部61とを備える。さらに、流出側分離室4は、底面部42と、底面部42より上方に延び、流通用開口部61と流出用開口部41間を横切るように設けられた板状部材44を備える。板状部材44は、上端が流通用開口部61および流出用開口部41よりも所定長上方に位置し、両側部が、流出側分離室4の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材44の下端部は、底面部42に固定されており、板状部材44と底面部42が一体化している。
【0014】
また、油水分離槽1は、分離室2,4と連通する上部開口部25,45および底部開口部26,46と、分離室2,4の側壁および区画壁6を有し、一体成形された分離槽本体10と、底部開口部26,46を封鎖するとともに、分離槽本体10に固定された底面部材27,47を備え、さらに、分離槽本体10の上部開口部25,45は、分離室2,4内に向かって延びる上部補強部28,48と、上部補強部28,48の内側に形成された上部開口29,49を有している。
【0015】
詳細には、
図2および
図3に示されるように、流入側分離室2は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。この実施例では、環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁30,31,32,33により構成されている。
【0016】
流入側分離室2の流入側の側壁30の上部には貫通孔34が形成されており、そこに流入管35が液密に装着されている。流入管35は、略直管状で、流入側分離室2内に突出しており、油が混じった排水が、流入管35を介して油水分離槽1の流入側分離室2に流入する。流入側分離室2内に開口する流入管35の一端部にて、流入用開口部21が構成されている。
【0017】
流入用開口部21は、流入側分離室2の上部と連通している。流入側分離室2は、後に詳述するような(流出側分離室4に設けられているような)板状部材(44)を備えておらず、流入用開口部2には、異物捕集用ネット36が装着されている。異物捕集用ネット36により、流入用開口部21から不可避的に油水分離槽1(流入側分離室2)内に流入する異物がトラップ(捕集)される。これにより、油水分離槽1内、特に流入側分離室2への異物の堆積が抑制され、油水分離槽1の性能の維持や、異物除去のための作業負荷軽減に寄与する。異物捕集用ネット36は、流入用開口部21(流入管35)に着脱(交換)可能に取り付けられている。
【0018】
油水分離槽1(分離槽本体10)は、流入側分離室2と連通する上部開口部25を備える。さらに、上部開口部25は、内側(言い換えれば、上部開口部の中央方向)に向かって延びる環状の上部補強部28と、上部補強部28の内側に形成された上部開口29を有している。上部補強部28には、蓋71が載置されている。蓋71によって上部開口29が閉塞される。蓋71としては、鋼製、特に、ダクタイル鋼製のものが好適である。蓋71は、油水分離槽1(上部補強部28)に装脱可能なものとなっている。蓋71は、槽内視認用の開閉可能な窓部を備えるものであってもよい。
【0019】
油水分離槽1(分離槽本体10)は、流入側分離室2と連通する底部開口部26を備える。流入側分離室2の底部開口部26は、分離槽本体10に固定された底面部材27(第1部材38および第2部材39)によって封鎖されている。底面部材27によって、流入側分離室2の底面部22が形成されている(底面部形成部23)。
【0020】
流入側分離室2の流出側の側壁31は、油水分離槽1内を流入側分離室2と流出側分離室4とに区画する区画壁6を構成している。区画壁6の下部には流通用開口部61が設けられている。流入側分離室2と流出側分離室4とは、流通用開口部61を通じて、連通している。
【0021】
図4に示されるように、流通用開口部61は、上下方向寸法Hよりも幅方向寸法Wが大きくされている。これにより、流通用開口部61の上端をできるだけ下方に位置させたまま、流通用開口部61の開口面積を大きくすることができる。流通用開口部61の開口面積を大きくすることで、流通用開口部61を通過する際の排水の流速を抑制できるため、油水分離機能を向上できる。また、流通用開口部61の上端は、排水の流路長を長くしたり、下流側の分離室(流出側分離室4)の上部に滞留している油分を撹拌しないために、できるだけ下方に位置させることが好ましい。流入側分離室2においては、不可避的に流入した異物が下部に堆積するため、流通用開口部61の下端を下方に設定するのに限界がある。そのため、流通用開口部61の上下方向寸法Hよりも幅方向寸法Wを大きくすることに意義がある。特に、W:Hは、2:1~10:1であることが好ましく、特に、2:1~8:1であることが好ましい。また、流通用開口部61の上下方向寸法Hは、30~150mmであることが好ましく、特に、50~100mmであることが好ましい。また、幅方向寸法Wは、60~600mmであることが好ましく、特に、100~500mmであることが好ましい。
【0022】
図2および
図3に示されるように、流出側分離室4は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁50,51,52,53により構成されている。上述した流入側分離室2の側壁31と流出側分離室4の流入側の側壁50は、共通壁であり、油水分離槽1内を流入側分離室2と流出側分離室4とに区画する区画壁6を構成している。
【0023】
流出側分離室4の流出側の側壁51の上部には貫通孔54が形成されており、そこに排出管55が液密に装着されている。排出管55は、略L字管状で、一方の端部が流出側分離室4の外部にて、開口しており、他方の端部が流出側分離室4の下部(後述する板状部材44の上端よりも上下方向で下側)にて、開口している。流出側分離室4内に開口する排出管55の端部において、流出用開口部41が構成されている。
【0024】
油水分離槽1(分離槽本体10)は、流出側分離室4と連通する上部開口部45を備える。上部開口部45は、上述した上部開口部25と同様の構成を備えており、上部補強部48と上部開口49を有している。上部補強部48には、上述した蓋71と同様の蓋72が載置されている。
【0025】
油水分離槽1(分離槽本体10)は、流出側分離室4と連通する底部開口部46を備える。流出側分離室4の底部開口部46は、分離槽本体10に固定された底面部材47によって封鎖されている。詳細には、底面部材47を構成する第1部材58および第2部材59によって、流出側分離室4の底面部42を形成する底面部形成部43が構成されている。
【0026】
流出側分離室4は、底面部42より上方に延び、流通用開口部61と流出用開口部41間を横切るように設けられた板状部材44を備える。板状部材44は、上端が流通用開口部61および流出用開口部41よりも所定長上方に位置し、両側部が、流出側分離室4の内壁(側壁52および53)に近接している。板状部材44の下端部は、底面部42(第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部42とが一体化されている。
【0027】
より詳細には、板状部材44を有する流出側分離室4は、底部開口部46と、底部開口部46を封鎖する底面部材47を備え、底面部材47は、底面部42を形成する底面部形成部43(第1部材58および第2部材59)と、底面部形成部43より上方に延びる板状部材44を備え、かつ、板状部材44の下端部は、底面部形成部43(ここでは、底面部形成部43を構成する第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部形成部43とが一体化されている。
【0028】
板状部材44の材質は、特に限定されないが、比較的薄くても強度が確保できる金属製の平板であることが好ましい。ここでは、ステンレス製の薄い平板とされている。
なお、板状部材44は、湾曲した板状部材や波状の板状部材であってもよい。波状の板状部材における波形状は、縦波状(上下方向に延びる)、横波状(横方向に延びる)のいずれでもよい。強度面より、縦波状(上下方向に延びる)のものが好ましい。また、湾曲した板状部材としては、流通用開口部61側に突出するもの、逆に、流通用開口部61と離間する方向に突出するものであってもよい。
また、板状部材44は、ほぼ垂直であることが好ましいが、流通用開口部61側に傾斜するもの、逆に、流通用開口部61と離間する方向に傾斜するものであってもよい。
【0029】
流通用開口部61と板状部材44間の距離は、100~500mmであることが好ましく、特に、200~400mmであることが好ましい。また、流通用開口部61の上端と板状部材44の上端の上下方向の距離は、50~900mmであることが好ましく、特に、300~700mmであることが好ましい。
板状部材44は、分離室4の底部を、流入側と流出側に区分している。分離室4内における板状部材44の位置は、分離室4内を流入側と流出側に、1:9~9:1に区分するものであることが好ましく、特に、3:7~7:3に区分するものであることが好ましい。これにより、分離室4内における、板状部材44と分離室4の内壁や流通用開口部61、流出用開口部41との間の部分における排水の流れの変化を抑制できる。
なお、流出側分離室4内における板状部材44の位置は、分離室4の流出側の側壁51よりも、流入側の側壁50に近接する位置に設けることが好ましい。言い換えれば、分離室内における板状部材の位置は、分離室の流通方向中央よりも、流入側の側壁側(流入側の流通用開口部側)となる位置に設けることが好ましい。これにより、分離室内の板状部材44よりも流出側に、流入側よりも大きく、静置状態もしくは流れの穏やかな貯留部を形成できる。そして、板状部材を有することにより、当該貯留部の液体に、流入側の流通用開口部41から流入する液体流が影響を与えることもない。
【0030】
図3に示されるように、油水分離槽1は、板状部材44の両側部が進入可能な内壁面(側壁52,53)に形成された2つの溝56,57を備えている。言い換えれば、板状部材44の両側部が、側壁52,53にそれぞれ形成された溝56,57内に収容されている。なお、側壁52,53に溝56,57が形成されておらず、板状部材44の両側部が、流出側分離室4の内壁(側壁52,53)に接触もしくは近接していてもよい。
【0031】
次に、上述のような油水分離槽1を製造する工程について、
図5および
図6を用いて説明する。なお、
図5および
図6においては、油水分離槽1が、上述した
図2とは上下方向が反対に示されているが、各図に示される上下方向に基づいて説明する。
【0032】
まず、
図5に示されるようにして、分離槽本体10を形成する。上部開口部25,45等を形成する下部型枠81を作業用定盤82に載置し、この上に筒状をなす外周型枠83、および上部に段形成部84を有する内周型枠85を同心状に直立させる。外周型枠83および内周型枠85の間(隙間)からコンクリート材料86を注入し、養生後、内周型枠85のみを先行して脱型する。これにより、分離室2,4と連通する上部開口部25,45および底部開口部26,46と、分離室2,3の各側壁および区画壁6を有し、一体成形された分離槽本体10が得られる。
【0033】
次いで、
図6に示されるように、上述した段形成部84により底部開口部26,46の周縁に形成された段部87に、予め別個に作成した同質のコンクリート材料からなる第1部材38,58を載置する。ここで、流出側分離室4の側の段部87(底部開口部46上)に載置される第1部材58には、予め板状部材44が一体的に固定されている。
【0034】
そして、上部に形成された凹部88(段部87および第1部材38,58に囲まれた空間)にコンクリート材料86を注入し、養生後、下部型枠81および外周型枠83を脱型する。これにより、第2部材39,59を含む底面部材27,47が形成される。
【0035】
上述のような工程を経て、プレキャストコンクリート製の分離槽本体10を有する油水分離槽1が製造される。なお、プレキャストコンクリート製の分離槽本体10には、補強用の鋼材が埋設されていることが好ましい。また、油水分離槽1を構成する流入管35や排出管55、蓋71,72、異物捕集用ネット36等は、予め工場にて取り付けてもよいし、現場にて取り付けることとしてもよい。
【0036】
このような油水分離槽1の分離室(流出側分離室4)においては、板状部材44が流通用開口部61と流出用開口部41間を横切るように設けられるとともに、板状部材44の上端が流通用開口部61および流出用開口部41よりも所定長上方に位置している。そのため、
図2に細線矢印にて示されるように、流通用開口部61から流出側分離室4に流入した排水が、板状部材44によって上部に導かれ、そこで油分と水分の分離が促進される。また、流通用開口部61から流入する油分を含んだ排水が、直接、流出用開口部41に流れ込むことが阻止される。さらに、油水分離槽1の分離室(流出側分離室4)においては、板状部材44よりも流入側に、下部(流入側の流通用開口部61)から、流速が抑制された略層流状態の排水が流入する。そして、分離室4に流入した排水は、略層流状態のまま板状部材44を乗り越えて流出側へ越流する。そのため、油水分離槽1全体として、排水の乱流の発生が抑制され、油水分離機能を向上できる。
【0037】
また、流出側分離室4においては、板状部材44の下端部は、底面部42(第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部42が一体化されている。そのため、板状部材44を設けるための現場での作業は不要である。また、そのような板状部材44を含む底面部材47(第1部材58、第2部材59および板状部材44)が、底部開口部46を封鎖するように分離槽本体10に固定されている。そのため、油水分離槽1の底部から排水が漏れることが阻止される。また、板状部材44が金属製(ステンレス製)の薄い平板であれば、板状部材をコンクリートで形成する場合に比べて、軽量化を図ることができる。
【0038】
図7ないし
図9には、本発明の油水分離槽(2槽タイプ)の他の実施形態が、それぞれ示されている。ここで示される油水分離槽において、上述した油水分離槽1と略同様の構成については、同一の名称および符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0039】
図7に示される油水分離槽90では、流出側分離室4の底部開口部46を封鎖する底面部材91において、第1部材92が流出側分離室4の底部開口部46と略同等の面積(上述した底部開口部46の周縁に形成された段部87に載置可能な面積)を有する金属製の平板からなり、板状部材44の下端部が第1部材92の上面に溶接等の手法により固定(一体化)されている。ここで、第1部材92は、金属製で比較的薄い平板部材であるため、油水分離槽90の軽量化を図ることができる。
【0040】
また、油水分離槽90においては、区画壁6の下部(下方)に形成される仕切部93が低く形成されており、流入側分離室2の第2部材39と、流出側分離室4の第2部材59とが、そのような仕切部93を跨ぐように一体に連結されている。これにより、油水分離槽90の製造工程において、各第2部材39,59を一度のコンクリート材料の注入で一体的に形成することができる。
【0041】
図8に示される油水分離槽100では、各分離室2,4の底面部(底面部形成部)101,102が、各側壁および区画壁6と一体成形され、分離槽本体103が構成されている。言い換えれば、分離槽本体103において、底部開口部は形成されていない。流出側分離室4の底面部102には、板状部材44の下端部が固定されている。分離槽本体103の上部(各分離室2,4の上部)は開放されており、各側壁および区画壁6の上部に、別体の天板部材104が載置されている。天板部材は、各分離室2,4と連通する上部開口部105,106を備え、各上部開口部105,106は、分離室2,4内に向かって延びる上部補強部107,108と、上部補強部107,108の内側に形成された上部開口109,110を有している。
【0042】
このような油水分離槽100においても、流出側分離室4の底面部102に固定された板状部材44による油水分離機能が発揮されるとともに、流入側分離室2および流出側分離室4がそれぞれ底面部101,102を備えるため、油水分離槽100からの排水漏れを阻止することができる。
【0043】
図9に示される油水分離槽111では、流入側分離室2にも板状部材24が設けられている。板状部材24は、底面部22より上方に延び、流入用開口部21と流通用開口部61間を横切るように設けられる。板状部材24の上端は流通用開口部61よりも所定長上方に位置している。言い換えれば、流入側分離室2において、板状部材24によって、流入用開口部21と流通用開口部61とが直接的に連通することが妨げられている。板状部材24の両側部は、流入側分離室2の内壁(側壁32,33)に接触もしくは近接している。板状部材24の下端部は流入側分離室2の底面部22(ここでは、底面部22を構成する第1部材38)に固定されている。
【0044】
このような油水分離槽111においては、流入側分離室2においても、板状部材24による油水分離機能が発揮されるため、油水分離槽111全体の油水分離機能を向上できる。
【0045】
次に、本発明の油水分離槽(3槽タイプ)を図面に示した実施例を用いて説明する。なお、以下、特に断りのない限り、
図10における上下方向を油水分離槽の上下方向として説明する。また、
図10の左右方向において左側から右側へ向かって排水が流れるものとし、左側を流入側、右側を流出側として説明する。図中、排水の流れを細線矢印にて示すことがある。また、ここで示される油水分離槽において、上述した油水分離槽1と対応する構成については、同一の名称や符号を用いて詳細な説明を省略することがある。
【0046】
図10に示されるように、本実施例の油水分離槽200は、流入側分離室2と、流出側分離室4と、流入側分離室2と流出側分離室4間に位置する中間分離室220を有する、いわゆる3槽タイプのものである。油水分離槽200は、流入側分離室2と連通する流入用開口部21と、流出側分離室4の下部と連通する流出用開口部41と、油水分離槽200内を流入側分離室2と中間分離室220に区分する第1の区画壁240と、油水分離槽200内を流出側分離室4と中間分離室220に区分する第2の区画壁250と、第1の区画壁240の下部に設けられた第1の流通用開口部241と、第2の区画壁250の下部に設けられた第2の流通用開口部251とを備える。さらに、中間分離室220は、底面部222と、底面部222より上方に延び、第1の流通用開口部241および第2の流通用開口部251を横切るように設けられた板状部材224を備え、板状部材224は、上端が第1の流通用開口部241および第2の流通用開口部251よりも所定長上方に位置し、両側部が、中間分離室220の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材224の下端部は、底面部222に固定されており、板状部材224と底面部222が一体化している。
【0047】
図10に示されるように、本実施例の油水分離槽200においては、第2の流通用開口部251は、その上端が、第1の流通用開口部241の上端よりも、若干(
図10中にhで示す分)下方に位置している。
【0048】
また、油水分離槽200において、流出側分離室4は、底面部42と、底面部42より上方に延び、第2の流通用開口部251と流出用開口部41間を横切るように設けられた板状部材44を備える。板状部材44は、上端が第2の流通用開口部251および流出用開口部41よりも所定長上方に位置し、両側部が、流出側分離室4の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材44の下端部は、底面部42に固定されており、板状部材44と底面部42が一体化している。
【0049】
油水分離槽200は、分離室2,220,4と連通する上部開口部25,225,45および底部開口部26,226,46と、分離室2,220,4の側壁および区画壁240,250を有し、一体成形された分離槽本体210と、底部開口部26,226,46を封鎖するとともに、分離槽本体210に固定された底面部材27,227,47を備え、さらに、分離槽本体210の上部開口部25,225,45は、分離室2,220,4内に向かって延びる上部補強部28,228,48と、上部補強部28,228,48の内側に形成された上部開口29,229,49を有している。
【0050】
詳細には、
図10および
図11に示されるように、流入側分離室2は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。この実施例では、環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁30,31,32,33により構成されている。
【0051】
流入側分離室2の流入側の側壁30の上部には貫通孔34が形成されており、そこに流入管35が液密に装着されている。流入管35は、略直管状で、流入側分離室2内に突出しており、油が混じった排水が、流入管35を介して油水分離槽200の流入側分離室2に流入する。流入側分離室2内に開口する流入管35の一端部にて、流入用開口部21が構成されている。
【0052】
流入用開口部21は、流入側分離室2の上部と連通している。流入側分離室2は、後に詳述するような(流出側分離室4に設けられているような)板状部材(44)を備えておらず、流入用開口部2には、異物捕集用ネット36が装着されている。異物捕集用ネット36により、流入用開口部21から不可避的に油水分離槽200(流入側分離室2)内に流入する異物がトラップ(捕集)される。これにより、油水分離槽200内、特に流入側分離室2への異物の堆積が抑制され、油水分離槽200の性能の維持や、異物除去のための作業負荷軽減に寄与する。異物捕集用ネット36は、流入用開口部21(流入管35)に着脱(交換)可能に取り付けられている。
【0053】
油水分離槽200(分離槽本体210)は、流入側分離室2と連通する上部開口部25を備える。さらに、上部開口部25は、内側(言い換えれば、上部開口部の中央方向)に向かって延びる環状の上部補強部28と、上部補強部28の内側に形成された上部開口29を有している。上部補強部28には、蓋71が載置されている。蓋71によって上部開口29が閉塞される。蓋71としては、鋼製、特に、ダクタイル鋼製のものが好適である。蓋71は、油水分離槽200(上部補強部28)に装脱可能なものとなっている。蓋71は、槽内視認用の開閉可能な窓部を備えるものであってもよい。
【0054】
油水分離槽200(分離槽本体210)は、流入側分離室2と連通する底部開口部26を備える。流入側分離室2の底部開口部26は、分離槽本体210に固定された底面部材27(第1部材38および第2部材39)によって封鎖されている。底面部材27によって、流入側分離室2の底面部22が形成されている(底面部形成部23)。
【0055】
流入側分離室2の流出側の側壁31は、油水分離槽200内を流入側分離室2と中間分離室220とに区画する第1の区画壁240を構成している。第1の区画壁240の下部には第1の流通用開口部241が設けられている。流入側分離室2と中間分離室220とは、第1の流通用開口部241を通じて、連通している。
【0056】
図10および
図11に示されるように、第1の流通用開口部241は、上下方向寸法H1よりも幅方向寸法W1が大きくされている。これにより、第1の流通用開口部241の上端をできるだけ下方に位置させたまま、第1の流通用開口部241の開口面積を大きくすることができる。第1の流通用開口部241の開口面積を大きくすることで、第1の流通用開口部241を通過する際の排水の流速を抑制できるため、油水分離機能を向上できる。また、第1の流通用開口部241の上端は、排水の流路長を長くしたり、下流側の分離室(中間分離室220)の上部に滞留している油分を撹拌しないために、できるだけ下方に位置させることが好ましい。流入側分離室2においては、不可避的に流入した異物が下部に堆積するため、第1の流通用開口部241の下端を下方に設定するのに限界がある。そのため、第1の流通用開口部241の上下方向寸法H1よりも幅方向寸法W1を大きくすることに意義がある。特に、W1:H1は、2:1~10:1であることが好ましく、特に、2:1~8:1であることが好ましい。また、第1の流通用開口部241の上下方向寸法H1は、30~150mmであることが好ましく、特に、50~100mmであることが好ましい。また、幅方向寸法W1は、60~600mmであることが好ましく、特に、100~500mmであることが好ましい。
【0057】
図10および
図11に示されるように、中間分離室220は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁230,231,232,233により構成されている。上述した流入側分離室2の側壁31と中間分離室220の流入側の側壁230は、共通壁であり、油水分離槽200内を流入側分離室2と中間分離室220とに区画する第1の区画壁240を構成している。
【0058】
油水分離槽200(分離槽本体210)は、中間分離室220と連通する上部開口部225を備える。さらに、上部開口部225は、内側(言い換えれば、上部開口部の中央方向)に向かって延びる環状の上部補強部228と、上部補強部228の内側に形成された上部開口229を有している。上部補強部228には、上述した蓋71と同様の蓋73が載置されている。
【0059】
油水分離槽200(分離槽本体210)は、中間分離室220と連通する底部開口部226を備える。中間分離室220の底部開口部226は、分離槽本体210に固定された底面部材227(第1部材238および第2部材239)によって封鎖されている。底面部材227によって、中間分離室220の底面部222が形成されている(底面部形成部223)。
【0060】
中間分離室220の流出側の側壁231は、油水分離槽200内を中間分離室220と流出側分離室4とに区画する第2の区画壁250を構成している。第2の区画壁250の下部には第2の流通用開口部251が設けられている。中間分離室220と流出側分離室4とは、第2の流通用開口部251を通じて、連通している。
【0061】
図10および
図11に示されるように、第2の流通用開口部251は、上下方向寸法H2よりも幅方向寸法W2が大きくされている。これにより、第2の流通用開口部251の上端をできるだけ下方に位置させたまま、第2の流通用開口部251の開口面積を大きくすることができる。第2の流通用開口部251の開口面積を大きくすることで、第2の流通用開口部251を通過する際の排水の流速を抑制できるため、油水分離機能を向上できる。また、第2の流通用開口部251の上端は、排水の流路長を長くしたり、下流側の分離室(流出側分離室4)の上部に滞留している油分を撹拌しないために、できるだけ下方に位置させることが好ましい。本実施例の油水分離槽200においては、第2の流通用開口部251は、その上端が、第1の流通用開口部241の上端よりも、若干(
図10中にhで示す分)下方に位置している。特に、W2:H2は、2:1~10:1であることが好ましく、特に、2:1~8:1であることが好ましい。また、第2の流通用開口部251の上下方向寸法H2は、30~150mmであることが好ましく、特に、50~100mmであることが好ましい。また、幅方向寸法W2は、60~600mmであることが好ましく、特に、100~500mmであることが好ましい。
【0062】
中間分離室220は、底面部222より上方に延び、第1の流通用開口部241と第2の流通用開口部251間を横切るように設けられた板状部材224を備える。板状部材224は、上端が第1の流通用開口部241および第2の流通用開口部251よりも所定長上方に位置し、両側部が、中間分離室220の内壁(側壁232および233)に近接している。板状部材224の下端部は、底面部222(第1部材238)に固定されており、板状部材224と底面部222とが一体化されている。
【0063】
より詳細には、板状部材224を有する中間分離室220は、底部開口部226と、底部開口部226を封鎖する底面部材227を備え、底面部材227は、底面部222を形成する底面部形成部223(第1部材238および第2部材239)と、底面部形成部223より上方に延びる板状部材224を備え、かつ、板状部材224の下端部は、底面部形成部223(ここでは、底面部形成部223を構成する第1部材238)に固定されており、板状部材224と底面部形成部223とが一体化されている。
【0064】
板状部材224の材質は、特に限定されないが、比較的薄くても強度が確保できる金属製の平板であることが好ましい。ここでは、ステンレス製の薄い平板とされている。
なお、板状部材224は、湾曲した板状部材、波状の板状部材であってもよい。波状の板状部材における波形状は、縦波状(上下方向に延びる)、横波状(横方向に延びる)のいずれでもよい。強度面より、縦波状(上下方向に延びる)ものが好ましい。また、湾曲した板状部材としては、第1の流通用開口部241側に突出するもの、逆に、第1の流通用開口部241と離間する方向に突出するものであってもよい。
また、板状部材224は、ほぼ垂直であることが好ましいが、第1の流通用開口部241側に傾斜するもの、逆に、第1の流通用開口部241と離間する方向に傾斜するものであってもよい。
【0065】
図11に示されるように、油水分離槽200は、板状部材224の両側部が進入可能な内壁面(側壁232,233)に形成された2つの溝236,237を備えている。言い換えれば、板状部材224の両側部が、側壁232,233にそれぞれ形成された溝236,237内に収容されている。なお、側壁232,233に溝236,237が形成されておらず、板状部材224の両側部が、中間分離室220の内壁(側壁232,233)に接触もしくは近接していてもよい。
【0066】
図10および
図11に示されるように、流出側分離室4は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁50,51,52,53により構成されている。上述した中間分離室220の側壁231と流出側分離室4の流入側の側壁50は、共通壁であり、油水分離槽200内を中間分離室220と流出側分離室4とに区画する第2の区画壁250を構成している。
【0067】
流出側分離室4の流出側の側壁51の上部には貫通孔54が形成されており、そこに排出管55が液密に装着されている。排出管55は、略L字管状で、一方の端部が流出側分離室4の外部にて、開口しており、他方の端部が流出側分離室4の下部(後述する板状部材44の上端よりも上下方向で下側)にて、開口している。流出側分離室4内に開口する排出管55の端部において、流出用開口部41が構成されている。
【0068】
油水分離槽200(分離槽本体210)は、流出側分離室4と連通する上部開口部45を備える。上部開口部45は、上述した上部開口部25と同様の構成を備えており、上部補強部48と上部開口49を有している。上部補強部48には、上述した蓋71と同様の蓋72が載置されている。
【0069】
油水分離槽200(分離槽本体210)は、流出側分離室4と連通する底部開口部46を備える。流出側分離室4の底部開口部46は、分離槽本体210に固定された底面部材47によって封鎖されている。詳細には、底面部材47を構成する第1部材58および第2部材59によって、流出側分離室4の底面部42を形成する底面部形成部43が構成されている。
【0070】
流出側分離室4は、底面部42より上方に延び、第2の流通用開口部251と流出用開口部41間を横切るように設けられた板状部材44を備える。板状部材44は、上端が第2の流通用開口部251および流出用開口部41よりも所定長上方に位置し、両側部が、流出側分離室4の内壁(側壁52および53)に近接している。板状部材44の下端部は、底面部42(第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部42とが一体化されている。
【0071】
より詳細には、板状部材44を有する流出側分離室4は、底部開口部46と、底部開口部46を封鎖する底面部材47を備え、底面部材47は、底面部42を形成する底面部形成部43(第1部材58および第2部材59)と、底面部形成部43より上方に延びる板状部材44を備え、かつ、板状部材44の下端部は、底面部形成部43(ここでは、底面部形成部43を構成する第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部形成部43とが一体化されている。
【0072】
板状部材44の材質は、特に限定されないが、比較的薄くても強度が確保できる金属製の平板であることが好ましい。ここでは、ステンレス製の薄い平板とされている。
なお、板状部材44は、湾曲した板状部材や波状の板状部材であってもよい。波状の板状部材における波形状は、縦波状(上下方向に延びる)、横波状(横方向に延びる)のいずれでもよい。強度面より、縦波状(上下方向に延びる)ものが好ましい。また、湾曲した板状部材としては、第2の流通用開口部251側に突出するもの、逆に、第2の流通用開口部251と離間する方向に突出するものであってもよい。
また、板状部材44は、ほぼ垂直であることが好ましいが、第2の流通用開口部251側に傾斜するもの、逆に、第2の流通用開口部251と離間する方向に傾斜するものであってもよい。
【0073】
流通用開口部241,251と板状部材224,44間の距離は、100~500mmであることが好ましく、特に、200~400mmであることが好ましい。また、流通用開口部241,251上端と板状部材224,44の上端の上下方向の距離は、50~900mmであることが好ましく、特に、300~700mmであることが好ましい。
板状部材224,44は、分離室220,4の底部を、流入側と流出側に区分している。分離室220,4内における板状部材224,44は位置は、分離室220,4内を流入側と流出側に、1:9~9:1に区分するものであることが好ましく、特に、3:7~7:3に区分するものであることが好ましい。これにより、分離室220,4内における、板状部材224,44と分離室220,4の内壁や流通用開口部241,251,流出用開口部41との間の部分における排水の流れの変化を抑制できる。
なお、中間分離室220、流出側分離室4内における板状部材224,44の位置は、各分離室の流出側の側壁よりも、流入側の側壁に近接する位置に設けることが好ましい。言い換えれば、各分離室内における板状部材の位置は、分離室の流通方向中央よりも、流入側の側壁側(流入側の流通用開口部側)となる位置に設けることが好ましい。これにより、分離室220,4内の板状部材224,44よりも流出側に、流入側よりも大きく、静置状態もしくは流れの穏やかな貯留部を形成できる。そして、板状部材を有することにより、当該貯留部の液体に、流入側の流通用開口部241,251から流入する液体流が影響を与えることもない。
【0074】
図11に示されるように、油水分離槽200は、板状部材44の両側部が進入可能な内壁面(側壁52,53)に形成された2つの溝56,57を備えている。言い換えれば、板状部材44の両側部が、側壁52,53にそれぞれ形成された溝56,57内に収容されている。なお、側壁52,53に溝56,57が形成されておらず、板状部材44の両側部が、流出側分離室4の内壁(側壁52,53)に接触もしくは近接していてもよい。
【0075】
このような油水分離槽200は、上述した油水分離槽1と同等の工程で製造することができる。すなわち、先ず、コンクリート製の分離槽本体210を一体成形する。次いで、分離槽本体210の底部開口部26,226,46の周縁に形成された段部(図示せず)に、予め別個に作成したコンクリート製の第1部材38,238,58(第1部材238,58には、予め板状部材224,44が一体的に固定されている)を載置する。そして、第1部材38,238,58上に形成された凹部にコンクリート材料を注入し、第2部材39,239,59を含む底面部材27,227,47を形成する。
【0076】
このような油水分離槽200の分離室(中間分離室220,流出側分離室4)においては、板状部材224,44が流入側の開口部241,251と流出側の開口部251,41間を横切るように設けられるとともに、板状部材224,44の上端がそれらの開口部241,251,41よりも所定長上方に位置している。そのため、
図10に細線矢印にて示されるように、分離室220,4に流入した排水が、板状部材224,44によって上部に導かれ、そこで油分と水分の分離が促進される。また、分離室220,4に流入する油分を含んだ排水が、直接、流出側の開口部251,41に流れ込むことが阻止される。さらに、油水分離槽200の分離室(中間分離室220,流出側分離室4)においては、板状部材224,44よりも流入側に、下部(流入側の流通用開口部241,251)から、流速が抑制された略層流状態の排水が流入する。そして、分離室220,4に流入した排水は、略層流状態のまま板状部材224,44を乗り越えて流出側へ越流する。そのため、油水分離槽200全体として、排水の乱流の発生が抑制され、油水分離機能を向上できる。
【0077】
また、板状部材224,44の下端部は、底面部222,42(第1部材238,58)に固定されており、板状部材224,44と底面部222,42が一体化されている。そのため、板状部材224,44を設けるための現場での作業は不要である。また、そのような板状部材224,44を含む底面部材227,47が、底部開口部226,46を封鎖するように分離槽本体210に固定されている。そのため、油水分離槽200の底部から排水が漏れることが阻止される。また、板状部材224,44が金属製(ステンレス製)の薄い平板であれば、板状部材をコンクリートで形成する場合に比べて、軽量化を図ることができる。
【0078】
なお、詳述はしないが、本実施例の油水分離槽200においても、上述した
図7ないし
図9に示されるような他の実施形態が、適宜に対応させて適用され得ることが、理解されるべきである。
【0079】
次に、本発明の油水分離槽(4槽タイプ)を図面に示した実施例を用いて説明する。なお、以下、特に断りのない限り、
図12における上下方向を油水分離槽の上下方向として説明する。また、
図12の左右方向において左側から右側へ向かって排水が流れるものとし、左側を流入側、右側を流出側として説明する。図中、排水の流れを細線矢印にて示すことがある。また、ここで示される油水分離槽において、上述した油水分離槽1と対応する構成については、同一の名称や符号を用いて詳細な説明を省略することがある。
【0080】
図12に示されるように、本実施例の油水分離槽300は、流入側分離室2と、流出側分離室4と、流入側分離室2と流出側分離室4間に位置する第1の中間分離室320および第2の中間分離室340とを有する、いわゆる4槽タイプのものである。油水分離槽300は、流入側分離室2と連通する流入用開口部21と、流出側分離室4の下部と連通する流出用開口部41と、油水分離槽300内を流入側分離室2と第1の中間分離室320に区分する第1の区画壁360と、油水分離槽300内を流出側分離室4と第2の中間分離室340に区分する第2の区画壁370と、油水分離槽300内を第1の中間分離室320と第2の中間分離室340に区分する第3の区画壁380と、第1の区画壁360の下部に設けられた第1の流通用開口部361と、第2の区画壁370の下部に設けられた第2の流通用開口部371と、第3の区画壁380の下部に設けられた第3の流通用開口部381とを備える。さらに、第2の中間分離室340は、底面部342と、底面部342より上方に延び、第3の流通用開口部381および第2の流通用開口部371を横切るように設けられた板状部材344を備え、板状部材344は、上端が第3の流通用開口部381および第2の流通用開口部371よりも所定長上方に位置し、両側部が、第2の中間分離室340の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材344の下端部は、底面部342に固定されており、板状部材344と底面部342が一体化している。
【0081】
図12に示されるように、本実施例の油水分離槽300においては、第2の流通用開口部371は、その上端が、第1の流通用開口部361の上端よりも、若干(
図12中にh1で示す分)下方に位置している。また、第3の流通用開口部381は、その上端が、第1の流通用開口部361の上端よりも、若干(
図12中にh2で示す分)下方に位置している。
【0082】
油水分離槽300においては、第1の中間分離室320は、底面部322と、底面部322より上方に延び、第1の流通用開口部361および第3の流通用開口部381を横切るように設けられた板状部材324を備える。板状部材324は、上端が第1の流通用開口部361および第3の流通用開口部381よりも所定長上方に位置し、両側部が、第1の中間分離室320の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材324の下端部は、底面部322に固定されており、板状部材324と底面部322が一体化している。
【0083】
油水分離槽300においては、流出側分離室4は、底面部42と、底面部42より上方に延び、第2の流通用開口部371と流出用開口部41間を横切るように設けられた板状部材44を備える。板状部材44は、上端が第2の流通用開口部371および流出用開口部41よりも所定長上方に位置し、両側部が、流出側分離室4の内壁に接触もしくは近接し、かつ、板状部材44の下端部は、底面部42に固定されており、板状部材44と底面部42が一体化している。
【0084】
油水分離槽300は、分離室2,320,340,4と連通する上部開口部25,325,345,45および底部開口部26,326,346,46と、分離室2,320,340,4の側壁および区画壁360,370,380を有し、一体成形された分離槽本体310と、底部開口部26,326,346,46を封鎖するとともに、分離槽本体310に固定された底面部材27,327,347,47を備え、さらに、分離槽本体310の上部開口部25,325,345,45は、分離室2,320,340,4内に向かって延びる上部補強部28,328,348,48と、上部補強部28,328,348,48の内側に形成された上部開口29,329,349,49を有している。
【0085】
詳細には、
図12および
図13に示されるように、流入側分離室2は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。この実施例では、環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁30,31,32,33により構成されている。
【0086】
流入側分離室2の流入側の側壁30の上部には貫通孔34が形成されており、そこに流入管35が液密に装着されている。流入管35は、略直管状で、流入側分離室2内に突出しており、油が混じった排水が、流入管35を介して油水分離槽1の流入側分離室2に流入する。流入側分離室2内に開口する流入管35の一端部にて、流入用開口部21が構成されている。
【0087】
流入用開口部21は、流入側分離室2の上部と連通している。流入側分離室2は、後に詳述するような(流出側分離室4に設けられているような)板状部材(44)を備えておらず、流入用開口部2には、異物捕集用ネット36が装着されている。異物捕集用ネット36により、流入用開口部21から不可避的に油水分離槽300(流入側分離室2)内に流入する異物がトラップ(捕集)される。これにより、油水分離槽300内、特に流入側分離室2への異物の堆積が抑制され、油水分離槽300の性能の維持や、異物除去のための作業負荷軽減に寄与する。異物捕集用ネット36は、流入用開口部21(流入管35)に着脱(交換)可能に取り付けられている。
【0088】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、流入側分離室2と連通する上部開口部25を備える。さらに、上部開口部25は、内側(言い換えれば、上部開口部の中央方向)に向かって延びる環状の上部補強部28と、上部補強部28の内側に形成された上部開口29を有している。上部補強部28には、蓋71が載置されている。蓋71によって上部開口29が閉塞される。蓋71としては、鋼製、特に、ダクタイル鋼製のものが好適である。蓋71は、油水分離槽300(上部補強部28)に装脱可能なものとなっている。蓋71は、槽内視認用の開閉可能な窓部を備えるものであってもよい。
【0089】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、流入側分離室2と連通する底部開口部26を備える。流入側分離室2の底部開口部26は、分離槽本体310に固定された底面部材27(第1部材38および第2部材39)によって封鎖されている。底面部材27によって、流入側分離室2の底面部22が形成されている(底面部形成部23)。
【0090】
流入側分離室2の流出側の側壁31は、油水分離槽300内を流入側分離室2と第1の中間分離室320とに区画する第1の区画壁360を構成している。第1の区画壁360の下部には第1の流通用開口部361が設けられている。流入側分離室2と第1の中間分離室320とは、第1の流通用開口部361を通じて、連通している。
【0091】
図12および
図13に示されるように、第1の流通用開口部361は、上下方向寸法H3よりも幅方向寸法W3が大きくされている。これにより、第1の流通用開口部361の上端をできるだけ下方に位置させたまま、第1の流通用開口部361の開口面積を大きくすることができる。第1の流通用開口部361の開口面積を大きくすることで、第1の流通用開口部361を通過する際の排水の流速を抑制できるため、油水分離機能を向上できる。また、第1の流通用開口部361の上端は、排水の流路長を長くしたり、下流側の分離室(第1の中間分離室320)の上部に滞留している油分を撹拌しないために、できるだけ下方に位置させることが好ましい。流入側分離室2においては、不可避的に流入した異物が下部に堆積するため、第1の流通用開口部361の下端を下方に設定するのに限界がある。そのため、第1の流通用開口部361の上下方向寸法H3よりも幅方向寸法W3を大きくすることに意義がある。特に、W3:H3は、2:1~10:1であることが好ましく、特に、2:1~8:1であることが好ましい。また、第1の流通用開口部361の上下方向寸法H3は、30~150mmであることが好ましく、特に、50~100mmであることが好ましい。また、幅方向寸法W3は、60~600mmであることが好ましく、特に、100~500mmであることが好ましい。
【0092】
図12および
図13に示されるように、第1の中間分離室320は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁330,331,332,333により構成されている。上述した流入側分離室2の側壁31と第1の中間分離室320の流入側の側壁330は、共通壁であり、油水分離槽300内を流入側分離室2と第1の中間分離室320とに区画する第1の区画壁360を構成している。
【0093】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、第1の中間分離室320と連通する上部開口部325を備える。さらに、上部開口部325は、内側(言い換えれば、上部開口部の中央方向)に向かって延びる環状の上部補強部328と、上部補強部328の内側に形成された上部開口329を有している。上部補強部328には、上述した蓋71と同様の蓋74が載置されている。
【0094】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、第1の中間分離室320と連通する底部開口部326を備える。第1の中間分離室320の底部開口部326は、分離槽本体310に固定された底面部材327(第1部材338および第2部材339)によって封鎖されている。底面部材327によって、第1の中間分離室320の底面部322が形成されている(底面部形成部323)。
【0095】
第1の中間分離室320の流出側の側壁331は、油水分離槽300内を第1の中間分離室320と第2の中間分離室340とに区画する第3の区画壁380を構成している。第3の区画壁380の下部には第3の流通用開口部381が設けられている。第1の中間分離室320と第2の中間分離室340とは、第3の流通用開口部381を通じて、連通している。
【0096】
図12および
図13に示されるように、第3の流通用開口部381は、上下方向寸法H5よりも幅方向寸法W5が大きくされている。これにより、第3の流通用開口部381の上端をできるだけ下方に位置させたまま、第3の流通用開口部381の開口面積を大きくすることができる。第3の流通用開口部381の開口面積を大きくすることで、第3の流通用開口部381を通過する際の排水の流速を抑制できるため、油水分離機能を向上できる。また、第3の流通用開口部381の上端は、排水の流路長を長くしたり、下流側の分離室(第2の中間分離室340)の上部に滞留している油分を撹拌しないために、できるだけ下方に位置させることが好ましい。本実施例の油水分離槽300においては、第3の流通用開口部381は、その上端が、第1の流通用開口部361の上端よりも、若干(
図12中にh2で示す分)下方に位置している。特に、W5:H5は、2:1~10:1であることが好ましく、特に、2:1~8:1であることが好ましい。また、第3の流通用開口部381の上下方向寸法H5は、30~150mmであることが好ましく、特に、50~100mmであることが好ましい。また、幅方向寸法W5は、60~600mmであることが好ましく、特に、100~500mmであることが好ましい。
【0097】
第1の中間分離室320は、底面部322より上方に延び、第1の流通用開口部361と第3の流通用開口部381間を横切るように設けられた板状部材324を備える。板状部材324は、上端が第1の流通用開口部361および第3の流通用開口部381よりも所定長上方に位置し、両側部が、第1の中間分離室320の内壁(側壁332および333)に近接している。板状部材324の下端部は、底面部322(第1部材338)に固定されており、板状部材324と底面部322とが一体化されている。
【0098】
より詳細には、板状部材324を有する第1の中間分離室320は、底部開口部326と、底部開口部326を封鎖する底面部材327を備え、底面部材327は、底面部322を形成する底面部形成部323(第1部材338および第2部材339)と、底面部形成部323より上方に延びる板状部材324を備え、かつ、板状部材324の下端部は、底面部形成部323(ここでは、底面部形成部323を構成する第1部材338)に固定されており、板状部材324と底面部形成部323とが一体化されている。
【0099】
板状部材324の材質は、特に限定されないが、比較的薄くても強度が確保できる金属製の平板であることが好ましい。ここでは、ステンレス製の薄い平板とされている。
なお、板状部材324は、湾曲した板状部材、波状の板状部材であってもよい。波状の板状部材における波形状は、縦波状(上下方向に延びる)、横波状(横方向に延びる)のいずれでもよい。強度面より、縦波状(上下方向に延びる)ものが好ましい。また、湾曲した板状部材としては、第1の流通用開口部361側に突出するもの、逆に、第1の流通用開口部361と離間する方向に突出するものであってもよい。
また、板状部材324は、ほぼ垂直であることが好ましいが、第1の流通用開口部361側に傾斜するもの、逆に、第1の流通用開口部361と離間する方向に傾斜するものであってもよい。
【0100】
図13に示されるように、油水分離槽300は、板状部材324の両側部が進入可能な内壁面(側壁332,333)に形成された2つの溝336,337を備えている。言い換えれば、板状部材324の両側部が、側壁332,333にそれぞれ形成された溝336,337内に収容されている。なお、側壁332,333に溝336,337が形成されておらず、板状部材324の両側部が、第1の中間分離室320の内壁(側壁332,333)に接触もしくは近接していてもよい。
【0101】
図12および
図13に示されるように、第2の中間分離室340は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁350,351,352,353により構成されている。上述した第1の中間分離室320の側壁331と第2の中間分離室340の流入側の側壁350は、共通壁であり、油水分離槽300内を第1の分離室320と第2の中間分離室340とに区画する第3の区画壁380を構成している。
【0102】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、第2の中間分離室340と連通する上部開口部345を備える。さらに、上部開口部345は、内側(言い換えれば、上部開口部の中央方向)に向かって延びる環状の上部補強部348と、上部補強部348の内側に形成された上部開口349を有している。上部補強部348には、上述した蓋71と同様の蓋75が載置されている。
【0103】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、第2の中間分離室340と連通する底部開口部346を備える。第2の中間分離室340の底部開口部346は、分離槽本体310に固定された底面部材347(第1部材358および第2部材359)によって封鎖されている。底面部材347によって、第2の中間分離室340の底面部342が形成されている(底面部形成部343)。
【0104】
第2の中間分離室340の流出側の側壁351は、油水分離槽300内を第2の中間分離室340と流出側分離室4とに区画する第2の区画壁370を構成している。第2の区画壁370の下部には第2の流通用開口部371が設けられている。第2の中間分離室340と流出側分離室4とは、第2の流通用開口部371を通じて、連通している。
【0105】
図12および
図13に示されるように、第2の流通用開口部371は、上下方向寸法H4よりも幅方向寸法W4が大きくされている。これにより、第2の流通用開口部371の上端をできるだけ下方に位置させたまま、第2の流通用開口部371の開口面積を大きくすることができる。第2の流通用開口部371の開口面積を大きくすることで、第2の流通用開口部371を通過する際の排水の流速を抑制できるため、油水分離機能を向上できる。また、第2の流通用開口部371の上端は、排水の流路長を長くしたり、下流側の分離室(流出側分離室4)の上部に滞留している油分を撹拌しないために、できるだけ下方に位置させることが好ましい。本実施例の油水分離槽300においては、第2の流通用開口部371は、その上端が、第1の流通用開口部361の上端よりも、若干(
図12中にh1で示す分)下方に位置している。特に、W4:H4は、2:1~10:1であることが好ましく、特に、2:1~8:1であることが好ましい。また、第2の流通用開口部371の上下方向寸法H4は、30~150mmであることが好ましく、特に、50~100mmであることが好ましい。また、幅方向寸法W4は、60~600mmであることが好ましく、特に、100~500mmであることが好ましい。
【0106】
第2の中間分離室340は、底面部342より上方に延び、第3の流通用開口部381と第2の流通用開口部371間を横切るように設けられた板状部材344を備える。板状部材344は、上端が第3の流通用開口部381および第2の流通用開口部371よりも所定長上方に位置し、両側部が、第2の中間分離室340の内壁(側壁352および353)に近接している。板状部材344の下端部は、底面部342(第1部材358)に固定されており、板状部材344と底面部342とが一体化されている。
【0107】
より詳細には、板状部材344を有する第2の中間分離室340は、底部開口部346と、底部開口部346を封鎖する底面部材347を備え、底面部材347は、底面部342を形成する底面部形成部343(第1部材358および第2部材359)と、底面部形成部343より上方に延びる板状部材344を備え、かつ、板状部材344の下端部は、底面部形成部343(ここでは、底面部形成部343を構成する第1部材358)に固定されており、板状部材344と底面部形成部343とが一体化されている。
【0108】
板状部材344の材質は、特に限定されないが、比較的薄くても強度が確保できる金属製の平板であることが好ましい。ここでは、ステンレス製の薄い平板とされている。
なお、板状部材344は、湾曲した板状部材、波状の板状部材であってもよい。波状の板状部材における波形状は、縦波状(上下方向に延びる)、横波状(横方向に延びる)のいずれでもよい。強度面より、縦波状(上下方向に延びる)ものが好ましい。また、湾曲した板状部材としては、第3の流通用開口部381側に突出するもの、逆に、第3の流通用開口部381と離間する方向に突出するものであってもよい。
また、板状部材344は、ほぼ垂直であることが好ましいが、第3の流通用開口部381側に傾斜するもの、逆に、第3の流通用開口部381と離間する方向に傾斜するものであってもよい。
【0109】
図13に示されるように、油水分離槽300は、板状部材344の両側部が進入可能な内壁面(側壁352,353)に形成された2つの溝356,357を備えている。言い換えれば、板状部材344の両側部が、側壁352,353にそれぞれ形成された溝356,357内に収容されている。なお、側壁352,353に溝356,357が形成されておらず、板状部材344の両側部が、第2の中間分離室340の内壁(側壁352,353)に接触もしくは近接していてもよい。
【0110】
図12および
図13に示されるように、流出側分離室4は、上下方向に延びる環状(角筒状、具体的には、四角筒状)の側壁を備える。環状の側壁は、矩形状に配置された4枚の側壁50,51,52,53により構成されている。上述した第2の中間分離室340の側壁351と流出側分離室4の流入側の側壁50は、共通壁であり、油水分離槽300内を第2の中間分離室340と流出側分離室4とに区画する第2の区画壁370を構成している。
【0111】
流出側分離室4の流出側の側壁51の上部には貫通孔54が形成されており、そこに排出管55が液密に装着されている。排出管55は、略L字管状で、一方の端部が流出側分離室4の外部にて、開口しており、他方の端部が流出側分離室4の下部(後述する板状部材44の上端よりも上下方向で下側)にて、開口している。流出側分離室4内に開口する排出管55の端部において、流出用開口部41が構成されている。
【0112】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、流出側分離室4と連通する上部開口部45を備える。上部開口部45は、上述した上部開口部25と同様の構成を備えており、上部補強部48と上部開口49を有している。上部補強部48には、上述した蓋71と同様の蓋72が載置されている。
【0113】
油水分離槽300(分離槽本体310)は、流出側分離室4と連通する底部開口部46を備える。流出側分離室4の底部開口部46は、分離槽本体310に固定された底面部材47によって封鎖されている。詳細には、底面部材47を構成する第1部材58および第2部材59によって、流出側分離室4の底面部42を形成する底面部形成部43が構成されている。
【0114】
流出側分離室4は、底面部42より上方に延び、第2の流通用開口部371と流出用開口部41間を横切るように設けられた板状部材44を備える。板状部材44は、上端が第2の流通用開口部371および流出用開口部41よりも所定長上方に位置し、両側部が、流出側分離室4の内壁(側壁52および53)に近接している。板状部材44の下端部は、底面部42(第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部42とが一体化されている。
【0115】
より詳細には、板状部材44を有する流出側分離室4は、底部開口部46と、底部開口部46を封鎖する底面部材47を備え、底面部材47は、底面部42を形成する底面部形成部43(第1部材58および第2部材59)と、底面部形成部43より上方に延びる板状部材44を備え、かつ、板状部材44の下端部は、底面部形成部43(ここでは、底面部形成部43を構成する第1部材58)に固定されており、板状部材44と底面部形成部43とが一体化されている。
【0116】
板状部材44の材質は、特に限定されないが、比較的薄くても強度が確保できる金属製の平板であることが好ましい。ここでは、ステンレス製の薄い平板とされている。
なお、板状部材44は、湾曲した板状部材や波状の板状部材であってもよい。波状の板状部材における波形状は、縦波状(上下方向に延びる)、横波状(横方向に延びる)のいずれでもよい。強度面より、縦波状(上下方向に延びる)ものが好ましい。また、湾曲した板状部材としては、第2の流通用開口部371側に突出するもの、逆に、第2の流通用開口部371と離間する方向に突出するものであってもよい。
また、板状部材44は、ほぼ垂直であることが好ましいが、第2の流通用開口部371側に傾斜するもの、逆に、第2の流通用開口部371と離間する方向に傾斜するものであってもよい。
【0117】
図13に示されるように、油水分離槽300は、板状部材44の両側部が進入可能な内壁面(側壁52,53)に形成された2つの溝56,57を備えている。言い換えれば、板状部材44の両側部が、側壁52,53にそれぞれ形成された溝56,57内に収容されている。なお、側壁52,53に溝56,57が形成されておらず、板状部材44の両側部が、流出側分離室4の内壁(側壁52,53)に接触もしくは近接していてもよい。
【0118】
このような油水分離槽300は、上述した油水分離槽1と同等の工程で製造することができる。すなわち、先ず、コンクリート製の分離槽本体310を一体成形する。次いで、分離槽本体310の底部開口部26,326,346,46の周縁に形成された段部(図示せず)に、予め別個に作成したコンクリート製の第1部材38,338,358,58(第1部材338,358,58には、予め板状部材324,344,44が一体的に固定されている)を載置する。そして、第1部材38,338,358,58上に形成された凹部にコンクリート材料を注入し、第2部材39,339,359,59を含む底面部材27,327,347,47を形成する。
【0119】
このような油水分離槽300の分離室(第1の中間分離室320,第2の中間分離室340,流出側分離室4)においては、板状部材324,344,44が流入側の開口部361,381,371と流出側の開口部381,371,41間を横切るように設けられるとともに、板状部材324,344,44の上端がそれらの開口部361,381,371,41よりも所定長上方に位置している。そのため、
図12に細線矢印にて示されるように、分離室320,340,4に流入した排水が、板状部材324,344,44によって上部に導かれ、そこで油分と水分の分離が促進される。また、分離室320,340,4に流入する油分を含んだ排水が、直接、流出側の開口部381,371,41に流れ込むことが阻止される。さらに、油水分離槽300の分離室(第1の中間分離室320,第2の中間分離室340,流出側分離室4)においては、板状部材324,344,44よりも流入側に、下部(流入側の流通用開口部361,381,371)から、流速が抑制された略層流状態の排水が流入する。そして、分離室320,340,4に流入した排水は、略層流状態のまま板状部材324,344,44を乗り越えて流出側へ越流する。そのため、油水分離槽300全体として、排水の乱流の発生が抑制され、油水分離機能を向上できる。
【0120】
また、板状部材324,344,44の下端部は、底面部322,342,42(第1部材338,358,58)に固定されており、板状部材324,344,44と底面部322,342,42が一体化されている。そのため、板状部材324,344,44を設けるための現場での作業は不要である。また、そのような板状部材324,344,44を含む底面部材327,347,47が、底部開口部326,346,46を封鎖するように分離槽本体310に固定されている。そのため、油水分離槽300の底部から排水が漏れることが阻止される。また、板状部材324,344,44が金属製(ステンレス製)の薄い平板であれば、板状部材をコンクリートで形成する場合に比べて、軽量化を図ることができる。
【0121】
流通用開口部361,371,381と板状部材324,344,44間の距離は、100~500mmであることが好ましく、特に、200~400mmであることが好ましい。また、流通用開口部361,371,381の上端と板状部材324,344,44の上端の上下方向の距離は、50~900mmであることが好ましく、特に、300~700mmであることが好ましい。
板状部材324,344,44は、分離室320,340,4の底部を、流入側と流出側に区分している。分離室320,340,4内における板状部材324,344,44は位置は、分離室320,340,4内を流入側と流出側に、1:9~9:1に区分するものであることが好ましく、特に、3:7~7:3に区分するものであることが好ましい。これにより、分離室320,340,4内における、板状部材324,344,44と分離室320,340,4の内壁や流通用開口部361,381,371,流出用開口部41との間の部分における排水の流れの変化を抑制できる。
なお、第1の中間分離室320,第2の中間分離室340,流出側分離室4内における板状部材324,344,44の位置は、各分離室の流出側の側壁よりも、流入側の側壁に近接する位置に設けることが好ましい。言い換えれば、各分離室内における板状部材の位置は、分離室の流通方向中央よりも、流入側の側壁側(流入側の流通用開口部側)となる位置に設けることが好ましい。これにより、分離室320,340,4内の板状部材324,344,44よりも流出側に、流入側よりも大きく、静置状態もしくは流れの穏やかな貯留部を形成できる。そして、板状部材を有することにより、当該貯留部の液体に、流入側の流通用開口部361,381,371から流入する液体流が影響を与えることもない。
【0122】
なお、詳述はしないが、本実施例の油水分離槽300においても、上述した
図7ないし
図9に示されるような他の実施形態が、適宜に対応させて適用され得ることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0123】
1,90,100,111 油水分離槽
10,103 分離槽本体
2 流入側分離室
21 流入用開口部
4 流出側分離室
41 流出用開口部
42 底面部
44 板状部材
6 区画壁
61 流通用開口部
200 油水分離槽
210 分離槽本体
220 中間分離室
222 底面部
224 板状部材
240 第1の区画壁
241 第1の流通用開口部
250 第2の区画壁
251 第2の流通用開口部
300 油水分離槽
310 分離槽本体
320 第1の中間分離室
340 第2の中間分離室
342 底面部
344 板状部材
360 第1の区画壁
361 第1の流通用開口部
370 第2の区画壁
371 第2の流通用開口部
380 第3の区画壁
381 第3の流通用開口部