(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】山腹保全資材
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20231122BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
E02B7/02 B
E02D17/20 101
(21)【出願番号】P 2020000003
(22)【出願日】2020-01-01
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019001450
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507395441
【氏名又は名称】株式会社パルパルス
(74)【代理人】
【識別番号】100194249
【氏名又は名称】小林 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石森 良房
(72)【発明者】
【氏名】岡部 宏秋
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143468(JP,A)
【文献】実開昭54-024903(JP,U)
【文献】特開昭60-212522(JP,A)
【文献】特開2001-098556(JP,A)
【文献】特開2002-360061(JP,A)
【文献】特開2001-140239(JP,A)
【文献】特開平11-181779(JP,A)
【文献】特開2002-004292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流入する土砂等を夾雑物として後充填させ、土砂を上流側の外面で堰き止めると共に、内部に流入する水を排水可能とする山腹保全資材であって、
渦巻状に複数層を有して巻回された網部材で構成され、
巻回中心に中心空間が形成されると共に前記中心空間に連設され、前記中心空間から周方向に沿って渦巻状に形成された
渦巻空間を有する渦巻状金網構造体本体部と、
前記中心空間内に前記巻回中心の中心軸方向を列方向として前記列方向に沿ってコイル形状に形成されたコアコイルを予め1または複数配置され、前記中心空間を保持するコアコイル列と、
前記渦巻空間の層厚を保持する層厚保持機能を備えたコイル形状に形成されたサイドコイルが前記列方向に沿って予め1または隔設して複数配置されるサイドコイル列を前記渦巻空間の渦巻方向を行方向として前記渦巻空間内に予め複数行並設されたサイドコイル群と、を備え、
前記中心空間内におけるコアコイルの線材体積および前記渦巻空間内における前記サイドコイル群の複数の前記サイドコイルの線材体積を除いた空間を前記後充填される後充填物の充填スペースとするスケルトン状に構成された山腹保全資材。
【請求項2】
請求項1に記載の山腹保全資材において、
前記サイドコイル群を構成する行方向において隣接する前記サイドコイル列の間に、前記層厚保持機能を有しない弾性を有する多孔性のブロック状のフィルタブロックが前記列方向に沿って1または隔設して複数配置されるフィルタブロック列を設けたことを特徴とする山腹保全資材。
【請求項3】
請求項
2に記載の山腹保全資材において、
前記
フィルタブロックは不織状のヤシ繊維を絡ませて嵩高としたブロック
状であることを特徴とする山腹保全資材。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の山腹保全資材において、
前記渦巻状金網構造体本体部
を構成する前記網部材の内周面または外周面の全面にシート状フィルタ部材である濾布が設けられていることを特徴とする山腹保全資材。
【請求項5】
請求項
1に記載の山腹保全資材において、前記
サイドコイルの外周にシート状のフィルタ部材である濾布が設けられていることを特徴とする山腹保全資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等により傾斜地等で生じる土壌の侵食を阻止する環境保全技術に係り、詳しくは土砂、流木等の固形物を堰き止め、水を通過させる土壌侵食抑止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
森林、山岳地、丘陵地、牧草地、道路の法面等において、気象災害、野生動物の食害等による草木の消失、また火山ガス等により草木が枯れると地表面が露出する。このような荒れた地表面は、降水により水の流れが生じると、地表面が洗堀されて細い溝(リル)が形成され、掘削された土砂等が水により運搬されて侵食が進行し沢状に発達した地形(ガリ)が生じる。
【0003】
このように運搬される土砂等を堰き止めてリル、ガリの成長を抑止し、植生を回復できる山腹保全資材である土砂堰き止め体が提案されている(特許文献1)。この土砂堰き止め体は、金網などネットを渦巻状(ロール状)に複数回巻回した巻回体と、巻回体の内側に敷き詰められてロール状に充填された中詰め材を有し、中央部が太く、両端部に向かうに従って外径が小さくなる紡錘形状に形成されている。
【0004】
土砂堰き止め体の巻回体は、外観が三日月形状に湾曲し、巻回体の中央部分よりも両端を流水の上流側に設置し、アンカーなどで地面に固定する。流水により運搬される土砂は、巻回体が流水に向かう面に堰き止められるが、水は巻回体内を通過し、下流側に流れる。巻回体の前面側に堰き止められた土砂は堆砂し、巻回体の上流側で土壌が回復し、下流側では洗堀が阻止されて環境保全が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の土砂堰き止め体は、基礎工事が不要で、人力での搬送が可能という優れた施工性を有するだけでなく、土壌および植生の回復という優れた特性を有している。
【0007】
本発明の目的は、従来の土砂堰き止め体が備えたこのような優れた性能をさらに発展させ、施工および環境保全のより一層の向上を図る山腹保全資材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を実現する山腹保全資材の構成は以下の通りである。
【0009】
第1の構成は、内部に流入する土砂等を夾雑物として後充填させ、土砂を上流側の外面で堰き止めると共に、内部に流入する水を排水可能とする山腹保全資材であって、渦巻状に複数層を有して巻回された網部材で構成され、巻回中心に中心空間が形成されると共に前記中心空間に連設され、前記中心空間から周方向に沿って渦巻状に形成された渦巻空間を有する渦巻状金網構造体本体部と、前記中心空間内に前記巻回中心の中心軸方向を列方向として前記列方向に沿ってコイル形状に形成されたコアコイルを予め1または複数配置され、前記中心空間を保持するコアコイル列と、前記渦巻空間の層厚を保持する層厚保持機能を備えたコイル形状に形成されたサイドコイルが前記列方向に沿って予め1または隔設して複数配置されるサイドコイル列を前記渦巻空間の渦巻方向を行方向として前記渦巻空間内に予め複数行並設されたサイドコイル群と、を備え、前記中心空間内におけるコアコイルの線材体積および前記渦巻空間内における前記サイドコイル群の複数の前記サイドコイルの線材体積を除いた空間を前記後充填される後充填物の充填スペースとするスケルトン状に構成することができる。
【0013】
第2の構成は、第1の構成において、前記サイドコイル群を構成する行方向において隣接する前記サイドコイル列の間に、前記層厚保持機能を有しない弾性を有する多孔性のブロック状のフィルタブロックが前記列方向に沿って1または隔設して複数配置されるフィルタブロック列を設けた構成とすることができる。
【0016】
第3の構成は、第2の構成において、前記フィルタブロックは不織状のヤシ繊維を絡ませて嵩高としたブロック状とすることができる。
【0017】
第4の構成は、上記いずれかの構成において、前記渦巻状金網構造体本体部を構成する前記網部材の内周面または外周面の全面にシート状フィルタ部材である濾布が設けられていることを特徴とする山腹保全資材。
【0018】
第5の構成は、第1の構成において、前記サイドコイルの外周にシート状のフィルタ部材である濾布が設けられた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、コアコイルとサイドコイルにより後充填物の充填スペースを予め確保しているので、山腹保全資材の軽量化を図りつつ、後充填物が充填するまでの期間の短縮化が図れる。また、一人又は数人によって運搬から施工までの作業が可能となる。また、山腹保全資材を設置後、中間空間および渦巻空間内に後充填物が充填されると、後充填物によりフィルタ層が形成されて自然に透水流路が形成されるため、透水流路に詰まりが生じ難く、確実に濁水を清水化して排水することができる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、フィルタブロックの追加により渦巻空間内に対する予め充填される予充填材の体積密度が増えて山腹保全資材の軽量化に寄与すると共に、フィルタブロックによるフィルタ機能により濁水を清水にして排水させるフィルタ機能の性能を高めることができる。さらに、フィルタブロックに後充填物が充填されてフィルタの高機能化が図れ、またフィルタフィルタブロックの個数調整で、後充填物が満杯に充填する期間の調整が行える。
【0029】
請求項4、5に係る発明によれば、短期間の土木工事等に伴って生じる土砂を堰き止めると共に排水の浄化に適しており、内部空間は空洞であるため、工事終了後の撤去も容易に行える。濁水の懸濁度が強い場合でも、澄んだ水を排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明による山腹保全資材の第1実施形態を示す外正面図。
【
図2】(a)は
図1に示す山腹保全資材のA-A矢視断面図、(b)は変形例を示す
図1に示す山腹保全資材のA-A矢視断面図。
【
図3】(a)は
図1に示す山腹保全資材の展開状態を示す平面図、(b)は(a)のB-B矢視図。
【
図4】
図1に示す金網のピッチとコイル状スペーサのピッチとの関係を説明する平面図。
【
図5】第1実施形態の山腹保全資材の設置状態を示す側断面図。
【
図6】第2実施形態の山腹保全資材の中央縦断面図。
【
図7】第3実施形態の山腹保全資材の中央縦断面図。
【
図8】第4実施形態の山腹保全資材の展開状態を示す平面図。
【
図9】(a)は
図8に示すフィルタブロックの斜視図、(b)は(a)に示す土砂堰き止め体の中央縦断面図。
【
図10】(a)~(d)は第5実施形態の山腹保全資材の展開状態を示す図。
【
図11】第6実施形態の山腹保全資材の中央縦断面図。
【
図12】
図11に示す予充填材を示し、(a)は予充填材の展開図、(b)は(a)の予充填材を巻回した状態での正面図、(c)は(b)の予充填材の中央縦断面図。
【
図13】第7実施形態の山腹保全資材の中央縦断面図。
【
図14】
図13に示す連結予充填図を示し、(a)は展開図、(b)は中央縦断面図。
【
図15】第3実施形態を示し、(a)(b)は予充填材の側断面図、(c)~(f)はシート状濾布の断面図、(g)は積層濾布の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0036】
第1実施形態
【0037】
図1から
図5は本発明による山腹保全資材である土砂堰き止め体の第1実施形態を示す。
図1から
図4に基づいて土砂堰き止め体1の構成を説明する。
【0038】
図1から
図3に示すように、土砂堰き止め体1は、外形が長さ方向中央部の直径が最も大径で、長さ方向両端に向かうに従って外径が漸減する紡錘形状の渦巻状(ロール状)金網構造体に形成される。
図1、
図2(a)および
図3に示すように、土砂堰き止め体1は、網部材、例えばひし形金網(JIS G3552)2をロール状に例えば3ないし4巻きに巻回(3ないし4層巻き)した渦巻き状の巻回体とした構成であって、内側の層の金網と外側の層の金網とが巻き開始端部2Aと巻き終端部2Bとの間で密着しないようにコイル形状に形成された予充填材であるコイルスペーサ3を巻き込んで径方向に所定長さの層厚を有する内部空間4を形成している。
【0039】
金網2の巻き開始端部2Aに位置するコイルスペーサ3は前記巻回体の中心に位置して巻回体中心の空間(以下、中心空間とする)4Aを保持しており、これをコアコイル3Cとする。中心空間4Aに連設される渦巻状の空間(以下渦巻空間とする)4B内に配置される複数のコイルスペーサ3は、コアコイル3Cと平行に巻回方向に適当な隙間を有して配置され、これらをサイドコイル3Pとする。ロール状金網構造体をなす土砂堰き止め体1は、コアコイル3Cを巻き中心とし、内部空間4を有して渦巻状にひし形金網2を巻回して構成されるロール状金網構造体本体である堰き止め体本体部1Aと、内部空間4の層厚を維持する予め充填される予充填材であるコアコイル3Cと複数のサイドコイル3Pとにより構成される。なお、ひし形金網2に対するコアコイル3Cとサイドコイル3Pの配置、および巻回方法については後記する。
【0040】
ひし形金網2は、波形に形成された金属製の列線21を行方向(列線21と直交方向)に連結した構成で、隣り合う列線の折曲線部22の角部23が引っ掛け合って連結される。そして、隣り合う列線21の折曲線部22の間でひし形の網目24が形成される。ひし形金網2の折曲線部22は、
図3(b)に示すように、表裏方向に沿って短い長さの中間折り曲げ部25だけ折り曲げ、更に所定の角度(85度)折り曲げて波形を形成している。
【0041】
また、
図3に示すように、各列線21の長さ方向の端部がナックル無しの状態の場合、この中間折り曲げ部25の折り曲げ長さにより、互いに引っ掛け合う折曲線部22を中心に隣り合う列線21が回転可能となっている。さらに、各列線21は、網目24内を移動可能となっている。列線21が有するこのような移動の自由により、サイドコイル3Pを巻き込みながらひし形金網2を巻回する際に、ひし形金網2の長さ方向(列方向)両端部を絞ることにより、堰き止め体1を紡錘形状に形成することができる。
【0042】
図4(a)に示すように、コイルスペーサ3は、金属製の線材31をコイル状に形成した構成で、筒状の外観、本実施形態では円筒状の外観を有する。コイルスペーサ3は、内部空間4を維持するために、径方向外方から内側に向けて外力が加わっても変形し難く、また
図1に示すように、撓むことができる弾性力を備えた材質を選択することが望ましく、さらには耐食性に優れていることが望ましい。本実施形態では、鉄線に溶融亜鉛アルミ合金メッキ(HZA)を施したものを使用している。
【0043】
図4(a)に示すように、コイルスペーサ3のコイルピッチをP1とし、
図4(b)に示すようにひし形金網2の網目24の列線方向の網目ピッチをP2とすると、本実施形態では、コイルピッチP1と網目ピッチP2を等しくしている。また、コイルピッチP1を網目ピッチP2の整数倍(2倍以上)としても良い。
【0044】
このように、コイルピッチP1と網目ピッチP2を等ピッチ又は2倍あるいは3倍としているのは、コイルスペーサ3を巻き込みながらひし形金網2を巻回する際、コイルを列方向において網目24の中央に合わせると、その列における網目24の中央にコイルの外周部が嵌まり込み、巻回方向である行方向と列方向への移動が規制される。このため、堰き止め体本体部1Aを巻回する際にコイルスペーサ3が所定位置からずれるのを防止できる。
【0045】
すなわち、網目24はナットの雌ねじ、コイルスペーサ3はボルトの雄ねじに置き替えた場合、ひし形金網2の巻回の際にコイルスペーサ3に軸廻りの回転力が付与されると、コイルスペーサ3が螺進する。コイルスペーサ3、特にサイドコイル3Pが螺進すると、サイドコイル3Pの列方向の位置がずれ、前述したひし形金網2の列方向両端部の絞り込みが不十分になるおそれがある。
【0046】
勿論、コイルピッチP1が堰き止め体本体部1Aの網目ピッチP2と等ピッチあるいは整数倍でなくても良く、例えばコイルを列方向の複数個所で列線21に紐やテープ等の結束部材で結束し、コイルの行方向と列方向への移動を阻止しても良い。さらに、コイルスペーサ3の長さ方向の片半部分を右巻きコイル部、他半部分を左巻きコイル部とすることで、コイルスペーサ3の螺進動作が相殺されてひし形金網2の巻回の際にコイルスペーサ3の移動が抑制される。
【0047】
次に、ひし形金網を有する堰き止め体本体部1Aにコイルスペーサ3を配置する配置状態と、堰き止め体本体部1Aの巻回方法について
図3を参照して説明する。
【0048】
図3(a)は堰き止め体本体部1Aを構成するひし形金網を展開した平面図を示す。矩形平面のひし形金網2上には、列方向に沿って延びるコアコイル3Cと複数のサイドコイル3Pが行方向に所定間隔を有して並設される。並設されるコアコイル3Cとサイドコイル3Pは、等しい外径を有するが、堰き止め体本体部1Aの巻き開始端部2A側から巻き終端部2Bに向けて順に長さを短くしている。
図3(a)は説明を容易とするために、サイドコイル3Pを4本(3Pa、3Pb、3Pc、3Pd)配置しているが、サイドコイル3Pは
図2に示すように適宜の本数を巻回方向に適宜の間隔を有して配置する。
【0049】
図3(a)に戻り、巻き開始端部2A側に位置する最長のコイルスペーサ3であるコアコイル3Cから巻き終端部2B側に位置する最短長のコイルスペーサ3であるサイドコイル3Pdまでの各コイルスペーサ3は、長さ方向の中央をひし形金網2の堰き止め体本体部1Aの列方向中央に合わせて配置する。コアコイル3Cおよびサイドコイル3Pa~3Pdの列方向両端を結ぶ直線L1、L2と、コアコイル3Cと最短長のサイドコイル3Pdとを結ぶ列方向の直線L3、L4により囲む領域が台形形状に形成される。
【0050】
すなわち、土砂堰き止め体1の全長および長さ方向中央での外径、コイルスペーサ3の外径、巻回回数が決まれば、前記台形と相似の台形形状を用いることにより、必要とするコイルスペーサ3の長さを決定することができる。
【0051】
図3(a)に示すようにひし形金網2上に行方向に沿ってコアコイル3C、サイドコイル3Pa~3Pdを所定間隔で並設し、巻き開始端部2Aからコアコイル3Cを巻き込みながらひし形金網2を巻き始める。次いで、2番目に長いサイドコイル3Paを巻き込みながらひし形金網2を巻き込むが、2番目に長いサイドコイル3Paの両端は、最も長いコアコイル3Cの両端よりも内側にあるため、絞り込みが可能となる。同様にして3番目、4番目に長いサイドコイル3Pc、3Pdを巻き込みながら両端部の絞り込みを行い、最も短い最後のサイドコイル3Pdを巻き込みながら両端部を絞り込む。そして、結束バンド等で巻き終了端2Bをひし形金網2に列方向の複数個所で結束する。最後に、土砂堰き止め体1の両端部を行方向に引っ張ることにより、
図1に示す湾曲した三日月状の外観に形成される。この引張作業は、土砂堰き止め体1を設置する施工場所において行う。
【0052】
上記した構成の土砂堰き止め体1の設置について、
図1および
図5を参照して以下に説明する。
【0053】
図1に示す三日月状の土砂堰き止め体1は、平衡斜面、地表面が雨水等で侵食され始めた凹面流路、洗堀されて形成された細い溝(リル)、あるいは、掘削された土砂等が水により運搬されて侵食が進行し沢状に発達したガリ等に設置される。その際、土砂堰き止め体1は、湾曲底部の中央部分Dを傾斜面50の下流側に、両端部Eを上流側に配置し、不図示のアンカーボルト等により固定する。土砂堰き止め体1は例えば上流側から下流側に千鳥状に複数あるいは間隔を有して並設される。はっきりした流路、すなわちリル化、ガリ化したところでは、これらの流路に沿って間隔を持ち設置する。設置態様は施工場所によって種々選択される。
【0054】
図5に示すように、ひし形金網2を有する堰き止め体本体部1Aと、コアコイル3C及び複数のサイドコイル3Pとにより構成されるスケルトン状の土砂堰き止め体1は、設置初期において水と共に移動する土、小石、木片、落葉落枝等の流下物51がひし形金網2の網目24およびコイルスペーサ3の線材の間に流入し、すり抜ける物もあればすり抜けられずに引っ掛かる夾雑物となるものがあり、これらが成長し、網目24およびコイルスペーサ3の線材間が塞がれる。さらに夾雑物となった小石や木片、落葉落枝等の流下物51の引っ掛かりが成長すると、土砂堰き止め体1のひし形金網2の層間の内部空間4内に土砂等が詰まり始め、これらが後に充填される後充填物となるフィルタ層52を形成する。
【0055】
すなわち、内部空間4内には、前記予充填材が実質的に占める体積を除いた空隙部分の容積を前記後充填物が充填される後充填容積として確保される。前記予充填材が実質的に占める体積とは、例えばコイルスペーサ3のコイルの体積であって、コイルスペーサ3の内径部の空間は後充填容積の一部を占める。前記予充填材の実質的に占める体積を増やせば、内部空間4に対する予充填材の充填率が大きくなる。
【0056】
フィルタ層52は濾過機能を有し、水は通すが土砂等を堰き止める効果を発揮する。一方、フィルタ層52の形成で、水に搬送された土砂等は、土砂堰き止め体1の湾曲した前面側(上流側)Fに堰き止められて堆積し、土砂堰き止め体1の上流側に形成されたピット54内の堆積土砂53の嵩が高くなる。
【0057】
土砂堰き止め体1内に後充填物として流入する小石や木片、落葉落枝等の流下物51は、水の流れに依存して水の流れを許容しつつ徐々に詰まりながら自然に成長するため、水は上流側から下流側に形成された複雑な流路を通って土砂堰き止め体1の後面側から排水される。堆積土砂等53の荷重は、土砂堰き止め体1の前面側にはあまり作用しない。これは鉛直方向に作用する分力の存在等によるものと考えられる。その際、排水される流速は減速されるため、下流側の地盤が削られ難くなり、山腹の保全が図られる。
【0058】
本実施形態の土砂堰き止め体1によれば、土砂堰き止め体1をひし形金網2と、予充填材である複数のコイルスペーサ3により構成し、コイルスペーサ3をコイル形状とすることで、軽量化を図ることができる。このため、作業者が手に持ったり、担いだりして土砂堰き止め体1を施工現場まで運搬することができる。特に急傾斜地での作業には非常に有利となる。また、組み立て作業が非常に簡単であり、熟練した技能がなくても容易にしかも迅速に組み立てることができる。
【0059】
また、堆積土砂53に溜まった水は透水して土砂堰き止め体1内に浸入し、土砂堰き止め体1の濾過機能により濁水が澄んだ清水として排水される。土砂堰き止め体1を川や海に近い山腹に設置すると、川や海に濁水が流入するのを防止でき、川や海が汚染されるのを防止することができる。
【0060】
本実施形態では、堰き止め体本体部1Aを構成する網部材としてひし形金網2を例にして説明したが、亀甲ネット(商品名:STKネット、粕屋製綱株式会社)のように、強度、耐候性を有する資材のようにコイル強度に耐えられるものであれば利用することができ、巻回自体の実施に問題はない。
【0061】
本実施形態において、中心空間4Aはコアコイル3Cが配置されているだけであり、渦巻空間4Bは複数のサイドコイル3Pが配置されているだけであるため、全体としての内部空間4の容積に対し、コアコイル3Cと複数のサイドコイル3Pの総体積は非常に少ない。また、コイルスペーサ3は空隙率(コイルスペーサ3の容積に対してコイル線材の体積)が非常に大きい。このことから、コイルスペーサ3は、内部空間4に充填される予充填材であって、内部空間4の容積に対する予充填材の体積比を密度とすると、低密度の予充填材といえる。
【0062】
土砂堰き止め体1は、設置前の状態(デフォルト状態とする)において内部空間4内の容積の殆どが空の状態(高空隙率とする)である。このため、設置初期において降雨による水と共に流れる土砂等は渦巻空間4B内にとどまり難いが、落葉、落枝、砂利等が金網に引っ掛かると渦巻空間4B内へ土砂等がとどまり始めて自然に充填される。またひし形金網2の外周表面に落葉落枝が付着すると、流水抵抗が大きくなり、排水流量の調節機能が働くと共に、土砂堰き止め効果が増す。なお、排水は完全に停止することはなく、渦巻空間4B内の自然充填物内に排水流路が出来上がり、排水が確保される。土砂堰き止め体1は、豪雨の場合を除き一般的な降雨が続くと、デフォルト状態から土砂堰き止め効果が表れるまでにある程度の時間を要する。デフォルト状態での内部空間4内に予め配置される予充填材の充填密度が高くなるのに応じてデフォルト状態から土砂堰き止め効果が表れる時間を短縮することができる。
変形例
【0063】
【0064】
図2(b)に示すように、ひし形金網2の内面側全面にシート状フィルタ部材で構成される濾布11(図中破線で示す)を予め敷き詰め、濾布11の上にコイルスペーサ3を載せて濾布11と共にひし形金網2の巻回を行う。したがって、巻き開始端部2Aから巻き終端部2Bとの間で、ひし形金網2の径方向に重なる内面と外面との間で、ひし形金網2の径方向に重なる内面と外面との間に形成される内部空間4は、径方向内側の内周面側を金網、径方向外側の外周面側を濾布11としている。
【0065】
シート状フィルタ部材として、例えば、不織布を利用することができる。本実施形態において、シート状フィルタ部材としては、多機能フィルタ(商品名:多機能フィルター株式会社製)を例示することができる。なお、シート状フィルタ部材11はこれに限られるものではなく、土砂等に対する強度と透水性と耐候性を備えている他のシート状フィルタを採用することも可能である。前記多機能フィルタとは、例えば、植物の毛細根に似た極細の撥水性繊維をランダムに配した不織布マットであり、97~98%の空隙率をもった不織布構造体(ウエブ)である。
【0066】
この変形例によれば、土砂堰き止め体1のロール状の土砂堰き止め体本体部1A内には土砂が入らないためフィルタ層52は形成されず、濁水の浄化と土砂の堰き止めは濾布11により実行される。
【0067】
本変形例の土砂堰き止め体1は、恒久的に設置するのではなく、短期間に仮設置して土砂の堰き止めと排水浄化を行い、期間経過後に撤去する場合に適している。すなわち、仮設置時には堰き止め体本体部1A内には土砂が流入しないのでフィルタ層52が存在せず、撤去時点においても堰き止め体本体部1A内は中空状況であり土砂堰き止め体1の重量が増加せずに軽量状態が維持されているため、容易に撤去できる。
【0068】
第2実施形態
【0069】
図6は第2実施形態の土砂堰き止め体の中央断面図で、外観形状および基本的な構成は
図1に示す第1実施形態の土砂堰き止め体1と同様で、
図2と同様の断面図である。なお、
図6において
図1~
図4に示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図6に示す土砂堰き止め体10において、コイルスペーサ3の外周にシート状フィルタ部材で構成される筒型濾布12(図中破線で示す)を外装してフィルタ付きコイルスペーサ30としている。フィルタ付きコイルスペーサ30は、ひし形金網2の巻回中心の中心空間4Aに配置されたフィルタ付きコイルスペーサ30をコアコイル30Cとし、中心空間4Aに連設される渦巻空間4Bに1個分のコイルスペーサ3を空けた間隔(1ピッチ間隔とする)に配置したフィルタ付きコイルスペーサ3をサイドコイル30Pとしている。そして、コアコイル30Cを巻回中心にして内部空間4を有するようにひし形金網2を渦巻状に巻回した構成の堰き止め体本体部10Aと、複数のサイドコイル30Pにより土砂堰き止め体10を構成する。なお、サイドコイル30Pの配置間隔はこれに限定されるものではなく、例えば0.5ピッチ間隔、2ピッチ間隔等であっても良い。
【0071】
本実施形態の土砂堰き止め体10によれば、第1実施形態の土砂堰き止め体1の有する効果に加え、排水の濾過機能を向上させることができる。水に溶けた土は非常に細かな粒子となって濁水となる。
図5を参照すると、濁水は内部空間4内に土砂等により溜まって形成されるフィルタ層52によって濾過され、濁りのない清水が排水されるが、フィルタ付きコイルスペーサ30はコイルスペーサ3の外周に設けた筒型濾布12により、更に細かな粒子を捕捉し、より一層濁りのない澄んだ清水を排水することができる。
【0072】
本実施形態において、前記予充填材であるフィルタ付きコイルスペーサ30は、濾布12を通過して灰や砂等がコイルスペーサ3内に後から流入し夾雑物として堆積する。このことから、フィルタ付きコイルスペーサの内径部の空間は前記後充填容積の一部を占める。
【0073】
第3実施形態
【0074】
図7は第3実施形態の土砂堰き止め体100の中央断面図で、外観形状および基本的な構成は
図1に示す第1実施形態の土砂堰き止め体1と同様で、
図2と同様の断面図である。なお、
図7において
図1~
図6に示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態の土砂堰き止め体100は、
図6に示すフィルタ付きコイルスペーサ(No.1~No.29)30を隙間ゼロの0ピッチでひし形金網2に巻回される。No.1のフィルタ付きコイルスペーサ30をコアコイル30Cとし、No.2~No.29のフィルタ付きコイルスペーサ30をサイドコイル30Pとする。ひし形金網2を巻回してコアコイル30Cを配する巻回中心の中心空間4Aに連設して渦巻空間4Bを形成した堰き止め体本体部100Aと、予充填材であるコアコイル30Cと複数のサイドコイル30Pにより土砂堰き止め体100を構成する。また、
図2(b)に示す変形例とは逆に、ひし形金網2の外周側に前記多機能フィルタを用いた濾布11を設けた構成としている。ひし形金網2に対して濾布11の密着性の保持が難しい場合、例えば線材を交互にねじり合わせ六角形の網目をした亀甲金網を濾布11の外周又は内周面に一体に設けた多機能フィルタを使用することもできる。
【0076】
本実施形態の土砂堰き止め体100は、設置後に降雨によって水と共に流下物51が渦巻空間4B内に流入し、予充填材であるシート状フィルタ部材12により砂利等の目の粗い固形物を堰き止めると共に、濁水の細粒物が捕捉されて濾過水が土砂堰き止め体100内に浸入する。土砂堰き止め体100内に浸入した濾過水は、フィルタ付きコイルスペーサ(No.1~No.29)30のシート状フィルタ部材12による更なる濾過が行われ、この濾過処理が繰り返される。
【0077】
このため、土砂堰き止め体100から排水される清水は、濁りのない非常に澄んだ水となる。特に、フィルタ付きコイルスペーサ(No.1~No.29)30は、巻回方向において隙間なく(0ピッチ)配置されているため、高効率な濾過処理が行える。
【0078】
図7において、No.1~No.29のフィルタ付きコイルスペーサ30は、奇数ナンバー(No.1、3、5・・・)のフィルタ付きコイルスペーサ30を配置し、偶数ナンバー(No.2、4、6・・・)のフィルタ付きコイルスペーサ30は不要として隙間を設けるようにしても良い。また、No.1フィルタ付きコイルスペーサ30を除いて、他のフィルタ付きコイルスペーサ30をランダムに除いたような構成にフィルタ付きコイルスペーサ30を配置するようにしても良い。このように場合、排水流量を多くすることができ、
図5に示すように、堆積土砂53から濁水が溢れないようにすることができる。
【0079】
なお、上記した各実施形態において、コイルスペーサ30内に笹の桿等の細い葉っぱ付きの木の枝等を列方向の一端開口から挿入して充填することもできる。この場合、コイルスペーサ30内に充填された充填物により、更なる濾過機能を向上させることができ、また第1、第2実施形態では目詰まりの成長促進の役割を果たすことができる。
【0080】
第4実施形態
【0081】
【0082】
図8および
図9において、
図1から
図3に示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0083】
山腹保全資材の設置場所は、火山灰地,粘土質地,砂地,砂利地,スコリアや軽石等が堆積した地盤というように千差万別であり、また落葉,落枝が水と共に流れる箇所もある。このため、本実施形態の山腹保全資材である土砂堰き止め体200は、内部空間4内の予充填材の充填率を大きくする構成であって、渦巻空間4B内に流入する後充填物を設置地盤の地質に合わせて効率良く充填可能とする。また、土砂堰き止め体200は、豪雨の場合除いてデフォルト状態から土砂が渦巻空間4B内に満杯に充填するまの移行期間を長短可能とする。
【0084】
以下に、第4実施形態による土砂堰き止め体200の構成を説明する。
【0085】
本実施形態の土砂堰き止め体200は、第1実施形態と同様に紡錘形状としている。このため、
図8に示すように、ひし形金網2の巻き開始端部2A側を底辺とする台形形状の領域(直線L1~L4で囲まれる範囲)内に予充填材201を配置する。そして、ひし形金網2を巻き開始端部2A側から巻回することにより、
図9(b)に示す渦巻形状の断面を有する土砂堰き止め体200を形成する。
【0086】
予充填材であるコアコイル3Cとサイドコイル3Pとフィルタブロック202を行方向に沿って略等間隔に10行配置した構成を充填材群201としている。巻き開始端部2A側から巻き終端部2B側に向けて順に1行から10行とすると、1行目にコアコイル3C、3行目と5行目と7行目にサイドコイル3Pを配置し、2行目と4行目と6行目と8行目から10行目までフィルタブロック202を配置している。
【0087】
1行目に配置するコアコイル3Cは列方向に沿って適当間隔を有して直列に3本配置し、3行目と5行目に配置するサイドコイル3Pは列方向に沿って適当間隔を有して直列に3本配置し、さらに7行目に配置するサイドコイル3Pは列方向に沿って適当間隔を有して直列に2本配置する。コアコイル3Cとサイドコイル3Pは、長手方向の長さを等長とし、各行毎に長さの異なる一本のコアコイル3C、サイドコイル3Pを用意する必要がないようにしている。
【0088】
フィルタブロック202は、2行目と4行目が列方向に沿って適当間隔を有して直列に3本配置し、6行目と8行目と9行目は列方向に沿って適当間隔を有して直列に2本配置し、10行目は1本配置している。複数のフィルタブロック202は長手方向の長さを等長とし、各行毎に長さの異なる1本のフィルタブロック202を用意する必要がないようにしている。
【0089】
フィルタブロック202は、
図9(a)に示すように、天然のフィルタ素材であるヤシ繊維により直方体形状に形成されると共に袋状としたフィルタブロック本体202A内に多孔質の濾材202B、例えば軽石が充填された構成としている。フィルタブロック本体202Aは、袋状の内部に濾材202Bを充填後、袋の口を縫合して濾材202Bが漏れ出ないようにしている。フィルタブロック本体202Aのヤシ繊維のメッシュよりも濾材202Bのメッシュを細かくしている。また、フィルタブロック本体202Aは、
図8において、ひし形金網2との載置面側に接着剤が塗布され、フィルタブロック202をひし形金網2の上面に位置決めして載置することでフィルタブロック202が接着固定される。フィルタブロック202の厚みは、サイドコイル3Pの外径よりも大きくし、ひし形金網2を巻回した際に、渦巻空間4Bを形成するひし形金網2の内周面と外周面との間に厚み方向に加圧されて挟持される。
【0090】
図9(b)に示すように、ひし形金網2を巻回することにより、中心空間4Aにコアコイル3Cが配置され、2層目と3層目の渦巻空間4B内にフィルタブロック202とサイドコイル3Pが交互に配置され、さらに3層目の最外周の渦巻空間4B内には巻回方向に3つのフィルタブロック202のみが間隔を有して配置される。コアコイル3Cとサイドコイル3Pは上記した各実施形態と同様に内部空間4の層厚を維持する機能を有し、またフィルタブロック202は渦巻空間4Bの空間に対する密度を大きくする機能とフィルタ機能を有する。
【0091】
本実施形態の土砂堰き止め体200は、ロール状金網構造体本体である堰き止め体本体部200Aと、渦巻空間4内に配置される予充填材群201とにより構成される。フィルタブロック202は渦巻空間4Bの2層と3層において巻回方向にサイドコイル3Pを挟んで疎に配置され、さらに3層において最外周の渦巻空間4Bに配置されるフィルタブロック202はサイドコイル3Pを挟んでいないため密に配置される。
【0092】
土砂堰き止め体200をリル、ガリ等に設置して土砂の堰き止めおよび排水流速の調整を行い山腹の保全を行う作用を以下に説明する。
【0093】
土砂堰き止め体200は、例えばリルの上流側から下流側に向けて複数個所に離れて設置することにより、通過する水の流速を段階的に減速させる。降雨により例えばリルを流れる水は土砂等を削りながら下流側に設置した土砂堰き止め体200に達する。地盤が火山灰であれば水と共に軽石や火山灰が流れ、固い地盤であれば地表に堆積した落葉落枝が水と共に流れる。また、砂地、粘土質等の地盤では砂利等が流れる。勿論、目の粗い土や目の細かい土等と共に砂利や石、岩、倒木等も一緒に流れ落ちる。複数の地層が露出するリル等では各地層の堆積物が混ざって水と共に流れる。
【0094】
降雨により水と共に砂利、土等が土砂堰き止め体200の上流側に当たり、堰き止め体本体部200Aの最外周のひし形金網2の網目を通過し、また網目に引っ掛かる。渦巻空間4B内に予めフィルタブロック202を配置しているため、渦巻空間4Bに対する予充填材群201の密度はフィルタブロック202により高められる。このため、土砂堰き止め体200を通過する水の排水抵抗が増し、デフォルト状態から早期に排水流速を低速化可能である。排水抵抗はフィルタブロック202が土砂等を捕集することにより増し、またフィルタブロック202の間に土砂等が充填されることにより増す。さらに最外周のひし形金網2の外周面に落葉落枝等が付着し、網目に砂利などが挟まることによっても排水抵抗は増す。
【0095】
渦巻空間4B内に流入した土砂等の夾雑物が後充填され始めると、土砂堰き止め体200の上流側に形成される
図5に示すピット54内に土砂等が堆積する。土砂堰き止め体200を例えば火山灰地のリル等に設置した場合、粒径の小さい火山灰と火山灰よりも粒径の大きい砂利等が土砂堰き止め体200に向けて流れてくる。ここで、粒径の細かな火山灰と砂利等が混在して流れてくる場合、フィルタブロック202は粒径の大きな砂利等をフィルタブロック本体202Aで捕集し、粒径の小さな火山灰をフィルタブロック本体202A内の軽石等の濾材202Bにより捕集する。
【0096】
フィルタブロック202により砂利と火山灰が捕集されるのに並行して隣接するフィルタブロック202の間に落葉落枝や石等が夾雑物として引っ掛かると火山灰と砂利の流れを堰き止め、フィルタブロック202の渦巻空間4B内に火山灰と砂利が後充填物として充填される。渦巻空間4B内に後充填される火山灰、土、砂利、落葉落枝、石等の後充填物は互いに固着していないため通水性を備えている。渦巻空間4B内に流入した砂利や火山灰、土等の後充填物が充填されると、土砂堰き止め体200の上流側に形成されるピット54(
図5参照)内に砂利、火山灰、土等の堆積物が堆積する。ピット54内の堆積物も渦巻空間4B内の後充填物も共に通水性を備えているため、降雨が過ぎ去った後にピット54内に貯まった水は土砂堰き止め体200を通して排水されるが、ピット54内の堆積物はそのまま堆積する。
【0097】
降雨による水によって川床の土等は削られてそのまま下流まで流されずにピット54内に保持されるため、山腹の保全がなされる。また、土砂堰き止め体200から排水される水は減速されるため、川床を削る作用を減少させることができる。さらに、ピット54は調整池のような役割を果たすため、ピット54内の水位が上がると土砂堰き止め体200の上縁から水が受け流されるようにして溢れ出る。このため、溢れ出た水の流速は減速されることになる。
【0098】
本実施形態の土砂堰き止め体200は上記した各実施形態と同様にデフォルト状態では渦巻空間4B内に土砂等を予め充填せずに軽量化を図り、作業員が一人で簡単に持ち運び可能とする。但し、渦巻空間4B内に予充填材であるフィルタブロック202を配置して渦巻空間4Bに対する予充填材群201の密度を高め、降雨量と降雨時間にも左右されるが土砂堰き止め体200の設置後から渦巻空間4B内に土砂等が流入して後充填物の充填が短い期間で完了できるようにしている。土砂堰き止め体200の機能は、ピット54内に土砂等を堆積させ、かつピット54内の土砂等を浸透した水を土砂堰き止め体200内を通して排水させるものである。このため、従来例で示したように予め渦巻空間4B内にスコリア、木屑等を満充填しておけば、設置後すぐに土砂堰き止め体200の機能を発揮できる。
【0099】
しかし、このようなスコリアや木屑は軽量ではあるが満充填すると非常に重くなり、設置場所まで作業者が運ぶのが困難となる。これに対し、本実施形態の土砂合堰き止め体200は、渦巻空間4Bに対する予充填材201を低密度で予め充填し、フィルタブロック202を空隙率が高く軽量(低比重)の材料を使用することにより、軽量化を図っている。また、渦巻空間4Bに対するフィルタブロック202の充填密度を調節することにより、ピット54内に流入した土砂等の夾雑物を短期間に後充填物として充填させることが可能となる。
【0100】
また、フィルタブロック202は異なる粒径の土砂や火山灰等を捕集し、土砂堰き止め体200から排水される水にできる限り土砂、火山灰等が混じらないようにすることができる。なお、本実施形態において、堰き止め対象として火山灰を含む場合を例にして説明したがこれに限定されるものではない。また、金網としてひし形金網2を例にしているが、これに限定されるものではなく、亀甲金網等の他の構造の金網であっても良い。
【0101】
第5実施形態
【0102】
図10は本発明の第5実施形態を示す。
図10(a)~
図10(d)は
図8と同様に、ひし形金網2の上面に予充填材を配置した状態での土砂堰き止め体をそれぞれ示している。なお、
図1~
図3に示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0103】
図10(a)~
図10(d)に示す各土砂堰き止め体300、310、320、330は、ひし形金網2を巻き開始端部2A側から巻き終端部2Bに向けて巻回することにより、中心空間4Aと渦巻形状の渦巻空間4Bが形成される。
【0104】
図10(a)に示す土砂堰き止め体300は、予充填材であるコアコイル3Cと予充填材である平面渦巻形状に形成された渦巻フィルタ302とにより予充填材群301を構成する。第1実施形態から第4実施形態では、渦巻空間4Bの層厚を保持するためにサイドコイル3Pを利用しているが、本実施形態の土砂堰き止め体300は、渦巻空間4Bの層厚に相当する厚みを有する渦巻フィルタ302が渦巻空間4Bの層厚保持機能を兼用している。渦巻フィルタ302は、わら縄、ヤシ繊維縄等の天然素材のフィルタ材、または多孔質材のウレタンフォーム角材等の人工フィルタ材のように、厚み方向に圧縮力が加わってもつぶれ難い腰があってひし形金網2の巻回に追従できるように可撓性を有する材料が用いられる。
【0105】
土砂堰き止め体300の渦巻空間4Bに対して渦巻フィルタ302の体積が一定の割合で占めており、予充填材の密度を高める。このため、土砂堰き止め体300を設置後、降雨によって水と共に流入した土砂等が早期に渦巻空間4B内に後充填され、ピット54内への土砂等の早期の堆積を可能とする。
【0106】
渦巻フィルタ302は、ひし形金網2の略中央に配置されているため、巻回すると長手方向両側が絞られた紡錘形状の外観になる。また、渦巻フィルタ302は平面渦巻形状に形成されているため、ひし形金網2に対して向きなどにとらわれずに配置することができる。
【0107】
図10(b)に示す土砂堰き止め体310は、予充填材であるコアコイル3Cと、予充填材である底辺を欠いた台形枠形状の複数の枠状フィルタ312とにより予充填材群311を構成する。複数の枠状フィルタ312は、相似形状の大、中、小の3サイズが用意され、上辺を巻き終端部2B側にして
図10(b)に示すように配置される。複数の枠状フィルタ312は、わら縄、ヤシ繊維縄等の天然素材のフィルタ材、または多孔質材のウレタンフォーム角材等の人工フィルタ材のように、厚み方向に圧縮力が加わってもつぶれ難い腰があってひし形金網2の巻回に追従できるように可撓性を有する材料が用いられる。
【0108】
図10(b)の土砂堰き止め体310は、渦巻空間4B内に複数の枠状フィルタ312を配置することで、流入する土砂や石、岩等が後充填物として充填される。大サイズの枠状フィルタ312(312L)は粒径の大きな砂利等を捕集し、中サイズの枠状フィルタ312(312M)は大サイズの枠状フィルタ312Lを通過した粒径の砂利等を捕集し、小サイズの枠状フィルタ312(312S)は中サイズの枠状フィルタ312Mを通過した砂利等を捕集するように、フィルタのメッシュを異ならせるようにしても良い。小サイズの枠状フィルタ312Sは、最も内側に配置されると共に、ひし形金網2の巻き開始端部2A側に位置するため、ひし形金網2を巻回した際に、内部空間4の1層目、2層目に位置する。このことから、渦巻空間4Bは、径方向の外側には粒径の大きな砂利が充填され易く、内側には粒径の小さな砂利が充填され易くなり、砂利等が粒径によって層状に充填される。したがって、土砂堰き止め体310内を通過する水は、できる限り砂利等を含まない状態で排水される。
【0109】
図10(a)の土砂堰き止め体300と
図10(b)の土砂堰き止め体310はコアコイル3Cにより中心空間4Aを形成し、良好な排水性の確保、中心での曲げ剛性の確保等を行っているが、
図10(c)に示す土砂堰き止め体320、
図10(d)に示す土砂堰き止め体330はフィルタ部材により中心空間4Aを形成するようにしている。
【0110】
図10(c)に示す土砂堰き止め体320は、フィルタ部材である予充填材である複数の塊状フィルタ322を有する。塊状フィルタ322は、平面略小判形状に形成され、内部空間4の層厚に相当する厚みを有する。複数の塊状フィルタ322は、
図8に示す予充填材群201と同様に台形枠内に行方向及び列方向に間隔を有してひし形金網2の上面に配置され予充填群321を構成する。巻き開始端部2A側に配置した第1行目の5個の塊状フィルタ322がひし形金網2の巻き開始初期で巻き込まれて中心空間4Aを形成する。第2行目は4個の塊状フィルタ322、第3行目は3個の塊状フィルタ322、巻き終端部2B側の第4行目は2個の塊状フィルタ322を配置している。
【0111】
塊状フィルタ322は、渦巻フィルタ302、枠状フィルタ312と同様にわら縄、ヤシ繊維縄等の天然素材のフィルタ材、または多孔質材のウレタンフォーム角材等の人工フィルタ材のように、厚み方向に圧縮力が加わってもつぶれ難い腰があってひし形金網2の巻回に追従できるように可撓性を有する材料が用いられる。なお、塊状フィルタ322の行方向(巻回方向)の幅が狭く、ひし形金網2の巻回に追従不要の場合には、可撓性を備えていなくても良い。
【0112】
土砂堰き止め体320は、行方向及び列方向に配置した複数の予充填材である塊状フィルタ321により内部空間4に対する密度を高める。また、塊状フィルタ322の個数を変更することにより予充填材321の内部空間4に対する密度を調節することができる。
【0113】
図10(d)に示す土砂堰き止め体330は、フィルタ部材である列方向の長さが異なる複数の予充填材である柱状フィルタ332を有する。柱状フィルタ332は、角柱または円柱状に形成され、内部空間4の層厚に相当する厚みを有する。長さの異なる複数の柱状フィルタ332は、
図8に示す予充填材群201と同様に台形枠内に行方向に間隔を有してひし形金網2の上面に配置される予充填群331を構成する。巻き開始端部2A側に配置した最も長い第1行目の柱状フィルタ332がひし形金網2の巻回の開始初期で巻き込まれて中心空間4Aを形成する。第2行目から第4行目に配置される3本の柱状フィルタ332は、
図10(d)に示すように順次長さを短くしている。柱状フィルタ332は、塊状フィルタ322と同様の材料が使用される。
【0114】
土砂堰き止め体330の予充填材である複数の柱状フィルタ332は、内部空間4の中心空間4Aおよび渦巻空間4Bの層厚を保持する部材を兼用し、内部空間4に対する密度を高める。
【0115】
上記した各実施形態は、土砂堰き止め体の長手方向中央における外径が30cm~50cm程度、長手方向の長さが1m~1.5m程度を想定し、一人の作業者が手にもって容易に搬送できる重量、例えば10kg以下、好ましくは3kg以下を想定している。これに対し、雨水により洗堀されたガリのように川幅が数メートルで深い谷について土砂堰き止め体を設置する場合、例えば長手方向の中央直径が1.5m程度、長手方向の長さを3~5m程度のサイズの土砂堰き止め体が想定される。このような設置場所では、拳よりも大きなサイズの石、岩木片が水と共に流れるため、土砂堰き止め体の渦巻空間内にこのようなサイズの石等が夾雑物として自然に入り込み充填可能とする網目を用いることが望ましい。勿論、このような大サイズの土砂堰き止め体を網目の大きな金網を用いて形成しても、数人の作業者により楽に搬送可能な重量、例えば40kg程度以下の重量に軽量化することが望まれる。
【0116】
第6実施形態
【0117】
図11および
図12は第6実施形態を示す。なお、上記の各実施形態の図面に示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0118】
本実施形態の土砂堰き止め体400は上述した大サイズの土砂堰き止め体に対応している。土砂堰き止め体400の基本的な構成は、
図10(c)、
図10(d)に示す土砂堰き止め体1と同様の渦巻形状にひし形金網410を巻回した堰き止め体本体部400Aと、堰き止め体本体部400Aの内部空間401(
図2(a)の内部空間4に相当)に配置した複数の予充填材402とを備える。内部空間401は、中心空間401A(
図2(a)の中心空間4Aに相当)および渦巻空間401B(
図2(a)の渦巻空間4Bに相当)を有し、内部空間401の層厚を保持すると共に内部空間401の密度を大きくする複数の予充填材402が内部空間401に配置される。予充填材402は、ひし形金網410の巻き開始端部410Aと巻き終端部410Bとの間に配置される。
【0119】
予充填材402は、
図1および
図2(a)に示すような土砂堰き止め体1と同様の構造で、長手方向の直径(外径)が一定の筒形状としている。予充填材402として、中心空間401Aの形成と保持を行う予め充填されるコア充填材403であり、渦巻空間401Bに予め充填される複数のサイド充填材404である。コア充填材403とサイド充填材404とは同一のものを使用している。コア充填材403の外径を例えば25cmとし、土砂堰き止め体400の外径をコア充填材403の外径の6倍とすると、土砂堰き止め体400外径は150cm(1.5m)となる。
【0120】
予充填材402の構成について
図12を参照して以下に説明するが、
図1、
図2(a)および
図3に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
図12(a)に示すように、ひし形金網2の上面に予充填材402であるコアコイル3Cと、予充填材402である複数本(本実施形態では13本)のサイドコイル3Pを適当間隔で巻き開始端部2Aから巻き終端部2Bとの間に配置する。コアコイル3Cとサイドコイル3Pは、軸方向長さおよび外径が同一で、ひし形金網2の列方向両端よりも若干内側に配置される。ひし形金網2にコアコイル3Cとサイドコイル3Pを
図12(a)に示すように配置し、巻き開始端部2A側からコアコイル3Cを巻き込みながら巻回すると、
図12(b)に示す正面図のように、円筒形状の外観を有する予充填材402が形成される。予充填材402として、
図12(c)に示すように、渦巻空間4B内に複数本のサイドコイル3Pが配置される。
【0121】
予充填材402を構成するひし形金網2の網目を第1網目とし、土砂堰き止め体400の金網410の網目を第2網目とする。第1網目の寸法として、例えば26mm、32mm、40mm等が例示できる。これに対し、第2網目の寸法として75mm、100mm、130mmを例示できる。勿論、第1網目と第2網目の寸法は、例示した値に限定されるものではなく、第2の網目にはこぶし大の石が通過でき、第1の網目には小石が通過できる程度のサイズを想定できる。
【0122】
本発明において、山腹保全資材の保全対象とする山腹は、単に山腹として捉えるだけでなく、水文学的視野が求められる。降雨によって、急斜面、緩斜面、遷急線を含んだ傾斜面など、多様な立地のもとで集水流下の源となる0次谷から、次元を上げていくにつれ、複雑化する流出物(デブリ)を提供する。このように、流域としての視点が本資材に深く関わる。流出にあっては、水の動きが粘土質、シルト質、砂質、各サイズの礫質を伴い、土砂礫を含んだ濁水濁流へと発達する。
【0123】
第6実施形態では、土砂堰き止め体400の金網410の網目を例えば130mm、予充填材402のひし形金網2の網目を例えば26mmとすると、土砂堰き止め体400の渦巻空間401B内に拳サイズの岩等が流入し、他の流入物等と共に夾雑物として渦巻空間401B内に流入充填される。また、予充填材402の渦巻空間4B内に流入した砂利や小石、木片、落葉落枝等の夾雑物が流入充填される。
【0124】
第6実施形態によれば、上記した各実施形態と同様に、土砂堰き止め体400の渦巻空間401B内には、土砂堰き止め体400の設置後に岩等の流下物が流入し夾雑物として充填される大サイズの夾雑物流入空間が複数の予充填材402が実質的に占める体積を除いた容積(後充填容積)で形成される。予充填材402は、ひし形金網2とコイルスペーサ(コアコイル3C、サイドコイル3P)3で構成された低比重の部材であるため、土砂堰き止め体400の軽量化に寄与する。また、複数の予充填材402の渦巻空間4B内には、砂利、小石、木片、落葉落枝等の小サイズの流下物が流入し夾雑物として充填される小サイズの夾雑物流入空間が形成される。
【0125】
土砂堰き止め体400は、設置後に、土砂堰き止め体400の前記大サイズの夾雑物流入空間と、予充填材402の小サイズの夾雑物流入空間にそれぞれ夾雑物が流入し充填される。土砂堰き止め体400内に夾雑物が充填され始めると、ピット54(
図5参照)内への土砂、岩等の堆積が始まり、下流側への土砂、岩等の流下物が堰き止められる。そして、土砂堰き止め体400の渦巻空間401Bに充填される夾雑物によって発揮されるフィルタ機能により濁水が浄化されて排水される。
【0126】
なお、土砂堰き止め体400と予充填材402は、外観形状が
図1に示す紡錘形状としても良く、外径が長手方向に沿って同径の筒形状としても良い。
【0127】
第7実施形態
【0128】
図13及び
図14は第7実施形態を示し、上記した第6実施形態の変形例である。なお、上記の各実施形態の図面に示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0129】
第7実施形態の土砂堰き止め体400´が第6実施形態の土砂堰き止め体400と異なるのは、隣接する2個の予充填材402に対してひし形金網2を帯状に延ばした帯部2Cにより連結した構成の連結予充填材420に置き換えた構成としている点である。このため、中心空間401Aに配置されるコア充填材403と、コア充填材403に隣接する渦巻空間401Bの最も内側に配置されるサイド充填材404とを一組として連結予充填材420としている。
【0130】
連結予充填材420は、
図14(a)に示すように、ひし形金網2の行方向両端部を巻き開始端部2Aとし、行方向中央部に行方向に沿って所定長さの帯部2Cを確保して、帯部2Cの行方向両端と各巻き開始端部2Aとの間にそれぞれ複数本のコイルスペーサ3(3C、3P)を所定間隔で並設している。各巻き始端部2A側のコイルスペーサ3をコアコイル3Cとし、他のコイルスペーサ3をサイドコイル3Pとしている。
図14(a)に示す所定本数のコイルスペーサ3をひし形金網2に配置した状態で、両側の巻き開始端部2Aからコアコイル3Cを巻き込みながら巻回を開始し、さらにサイドコイル3Pを順次巻き込みながら帯部3Cまで巻回すると、
図14(b)に示すように連結充填材420が形成される。なお、所定の層数までひし形金網2を巻回した後は、不図示の針金をひし形金網2の網目に通して固定する。
【0131】
本実施形態によれば、土砂堰き止め体400´の渦巻空間401B内に配置される連結充填材420は、帯部3Cに流入した砂利、小石、木片、落葉落枝等が引っ掛かって夾雑物として渦巻空間401B内に充填される。このため、流入充填により渦巻空間401B内に砂利、土砂等が満充填されるまでの期間をより短縮させることができる。
【0132】
第8実施形態
【0133】
図15は第8実施形態を示す。なお、上記した各実施形態の図面示す要素と同じ要素には同じ名称と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0134】
図8~
図10に示す実施形態において、予充填材要素としてのコイルスペーサ3と予充填材であるフィルタブロック202を並設した構成としている。そして、フィルタブロック202は、不織状のヤシ繊維を絡ませて嵩高で高空隙率のシートに成型したフィルタブロック本体202Aを用いている。
【0135】
これに対し、
図15(a)に示す予充填材ユニット500は、長尺のシート状濾布501で複数のコイルスペーサ3を包み、ユニット化した構成としている。複数本のコイルスペーサ3とシート状濾布501に組み込んでユニット化した予充填材ユニット500は、ひし形金網2の上面に配置されて巻き開始端部(不図示)側から巻き上げられて不図示の渦巻空間内に充填される。
【0136】
シート状濾布501は、例えば上述したフィルタブロック本体202Aを構成する資材である不織状のヤシ繊維を絡ませて嵩高で高空隙率としているシート状部材、ポリエステル不織布等の濾材が使用される。シート状濾布501は、コイルスペーサ3が内挿される略Ω形状の凹部501a内に配置される。凹部501aは、Ω形状に予成型により形成する方法を例示することができる。予充填材ユニット500は、巻回状態で隣接するコイルスペーサ3同士は2重に重なったシート状濾布501を介して配置されるため、実質的にシート状濾布501を積層状態で使用することができ、濾過効果を向上させることができる。シート状濾布501を蛇腹状とすることでシート状濾布501の表面積を多くし、濾過効果を増大させることができる。
【0137】
また、予充填材ユニット500は、平面サイズを例えば50cm×50cmとし、複数の凹部501aを内にコイルスペーサ3を挿入してユニット化した構成としても良い。そして、例えば150cm×150cmサイズのひし形金網2の上面に、予充填材ユニット500を例えば3行×3列に配置し、ひし形金網2を予充填材ユニット500と共に巻回するようにしても良い。目途によってはユニットのみ交換も可能である。
【0138】
図15(b)に示す予充填材ユニット510は、複数本のコイルスペーサ3を長尺のシート状濾布501の上面と裏面に互い違いに配置した構成で、例えばシート状濾布501を正弦波形状に成形し、シート状濾布501の表裏両面に交互に形成された各凹部501bにコイルスペーサ3を配置する。コイルスペーサ3を凹部501bに針金、紐等で固定することで複数のコイルスペーサ3とシート状濾布501を一体化することで、ひし形金網2の上面にシート状濾布501と複数のコイルスペーサ3を一度に配置することができる。この場合、シート状濾布501の長さは
図15(a)の予充填材ユニット510に用いる場合よりも短くなる。
【0139】
シート状濾布501として、
図15(c)~
図15(f)に示す構成を例示することができる。
図15(c)のシート状濾布501Aは、上述した不織布の多機能フィルタで構成される第1不織布フィルタ層520aと第2不織布フィルタ層520bの間に、天然繊維や樹脂繊維等で構成される起毛化した繊維素材を嵩高のシート材として空隙率を高めた起毛層521を挟み込んだサンドイッチ構造とし、第2不織布フィルタ層520bの下面に接着剤層522を設け、接着剤層522を介してひし形金網2の上面、または
図15(a)(b)に示すコイルスペーサ3の外周に接着固定できるようにしている。
【0140】
図15(d)のシート状濾布501Bは、
図15(c)のシート状濾布501Aから第1不織布フィルタ層520aを取り除いた構成としている。
図15(e)のシート状濾布501Cは、
図15(c)に示す起毛層521の空隙内に不織布フィルタを構成する繊維を充填した混合フィルタ層523で構成し、混合フィルタ層523の下面に接着剤層522を設けた構成としている。シート状濾布501(501A、501B、501C)は起毛層521により、粒径の小さい砂、火山灰を捕集することができるため、予充填材としての捕集率が高い。
【0141】
図15(f)のシート状濾布501Dは、
図15(e)に示すシート状濾布501Cを重ねた構成で、互いの接着剤層522を向かい合わせて接着して構成している。
【0142】
図15(g)は、
図15(e)に示すシート状濾布501Dを多層(本実施形態では3層)に積層した積層構造の積層濾布構造体501Eを示す。積層濾布構造体501Eの厚みが例えば渦巻空間4Bの層厚を超える場合には、例えば
図8に示すフィルタブロック202に代え、また
図10(a)に示す渦巻フィルタ302、
図10(b)に示す枠状フィルタ312、
図10(c)に示す塊状フィルタ322の資材として使用することもできる。しかし、積層濾布構造体501Eには起毛層の部分が存在するために腰が弱く、渦巻空間4Bの所定の層厚を維持できない。このため、積層濾布構造体501E内に積層方向に沿ってバネ等の弾性を有する支柱530を内蔵して一体化するようにしても良い。積層濾布構造体501Eが渦巻空間4Bを構成する内周側と外周側の金網2を均等に押圧できるように複数本の支柱530を適宜の間隔で配置することができる。このような支柱530を備えた積層濾布構造体501Eは上記した各実施形態の予充填材として用いることもできる。
【0143】
上記した各実施形態において、山腹保全資材としての土砂堰き止め体の構成要素としてひし形金網を例にして説明したが、網材であれば良い。またひし形金網の列線21の両端部の形状は、コイル状に複数回巻回したカールナックルとしてものを使用することもできる。
【0144】
図2(b)および
図7に示すように、ひし形金網2の内周面、外周面に濾布11を設けているが、他の実施形態のひし形金網2、410にも同様に濾布11を設けても良い。
【符号の説明】
【0145】
1、10、100、200、300、310、320、330、400、400´:土砂堰き止め体(山腹保全資材)
1A、10A、100A、200A、400A:堰き止め体本体部(ロール状金網構造体本体)
D:湾曲底部の中央部分 E:両端部 F:前面側(上流側)
2、410:ひし形金網
2A、410A:巻き開始端部 2B、410B:巻き終端部 2C:帯部
21:列線 22:折曲線部 23:角部 24:網目
25:中間折り曲げ部
3:コイルスペーサ 3C、30C:コアコイル 3P、30P:サイドコイル
30:フィルタ付きコイルスペーサ 31:線材
4、401:内部空間 4A、401A:中心空間 4B、401B:渦巻空間
11:濾布 12:筒型濾布
50:傾斜面 51:流下物 52:フィルタ層 53:堆積土砂
54:ピット
202:フィルタブロック 202A:フィルタブロック本体 202B:濾材
201、301、311、321、331:予充填材群 402:予充填材
500、510:予充填材ユニット
403:コア充填材 404:サイド充填材 420:連結予充填材
302:渦巻フィルタ 312(312L、312M、312S):枠状フィルタ
322:塊状フィルタ 332:柱状フィルタ
501(501A、501B、501C)シート状濾布
501a:凹部 501b:凹部
520a:第1不織布フィルタ層 520b:第2不織布フィルタ層
521:起毛層 522:接着剤層 523:混合フィルタ層
501A:シート状濾布 501B:シート状濾布 501C:シート状濾布
501D:シート状濾布 501E:積層濾布構造体 530:支柱
P1:コイルピッチ P2:網目ピッチ L1、L2、L3、L4:直線