(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】睡眠状態計測装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20231122BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B7/04 Y
(21)【出願番号】P 2020018760
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 優
(72)【発明者】
【氏名】大越 健史
(72)【発明者】
【氏名】奥野 友博
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204598230(CN,U)
【文献】中国実用新案第205145022(CN,U)
【文献】特開2019-201946(JP,A)
【文献】特表2012-528701(JP,A)
【文献】特開2017-176198(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166752(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0132378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
A61B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の睡眠状態を計測する睡眠状態計測装置であって、
被験者頸部の周方向に沿うように略円弧状に形成された装着部と、
被験者頸部に当接して被験者の生体情報を計測する計測部と、
前記装着部と前記計測部との間の開度を調整できるように連結するヒンジ部とを備え、
前記計測部には、前記ヒンジ部の近傍にバイブレータが設けられ
、
前記計測部は、バッテリ及び前記バイブレータが収容された筐体を備え、
前記バイブレータは、前記バッテリよりも前記ヒンジ部に近い位置に設けられている、
睡眠状態計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠状態を計測するネックバンド式の睡眠状態計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中の鼾により周囲の人に迷惑がかかったり、鼾から無呼吸状態となり閉塞性無呼吸症候群を併発するおそれがある。そこで、被験者の睡眠状態を計測し、鼾や睡眠時無呼吸が発生している場合に、被験者の姿勢を変化させるために被験者に刺激を与えるような生体情報計測装置が望まれている。
【0003】
特許文献1には、マイクロフォンを各患者の首の周りに取り付けて、患者の睡眠中にマイクロフォンが受信した音を記録する方法が示されている。
【0004】
特許文献2には、人の身体の姿勢を検出する姿勢検出センサと、身体の姿勢が所定の姿勢の範囲を超えるとき、人へ振動触覚刺激アラームを供給するバイブレータとを備える睡眠姿勢警告装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-202939号公報
【文献】特表2015-511500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ネックバンド型の睡眠状態計測装置において、被験者の頸部から取得した計測情報に基づいて被験者の睡眠状態を把握し、当該計測情報に基づいて被験者頸部に刺激を与える一体型の睡眠状態計測装置の構造について明確に示された文献は発見されておらず、発明者らは当該構造について鋭意検討を行った。特に、検出精度を高めるために、被験者頸部に計測部を当接させて睡眠状態を計測する場合には、きちんと接触させるために接触圧を高めることが考えられる。しかしながら、接触圧を高めると、被験者に違和感が生じ、睡眠の妨げとなる恐れがある。
【0007】
すなわち、本発明は、被験者の装着時の違和感を緩和しつつ、被験者への刺激の伝達性がよいネックバンド式の睡眠状態計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る睡眠状態計測装置は、被験者頸部の周方向に沿うように略円弧状に形成された装着部と、被験者頸部に当接して被験者の生体情報を計測する計測部と、前記装着部と前記計測部との間の開度を調整できるように連結するヒンジ部とを備え、前記計測部には、前記ヒンジ部の近傍にバイブレータが設けられている。
【0009】
本態様によると、装着部と計測部とをヒンジ部で連結させるような構造にしているので、単一の部材でネックバンドを構成する場合と比較して、相対的に低い弾性力で様々な頸部形状の被験者に対して計測部を密着させることができる。このような連結構造を採用した場合には、装着部と計測部の両方にバイブレータを設けることが考えられるが、コストや配線等の問題がある。そこで、本態様では、バイブレータをヒンジ部の近傍に配置することにより、バイブレータの振動をヒンジ部を介して装着部に伝達させやすくしている。これにより、被験者の装着時の違和感を緩和しつつ、被験者への刺激の伝達性がよいネックバンド式の睡眠状態計測装置を提供することができる。さらに、バイブレータを計測部側に設けているので、電子部品を計測部側にまとめて配置することができる。これにより、ヒンジ部を介して装着部と計測部の間で電線をかけわたす必要がない。
【0010】
上記態様の睡眠状態計測装置において、前記計測部は、バッテリ及び前記バイブレータが収容された筐体を備え、前記バイブレータは、前記バッテリよりも前記ヒンジ部に近い位置に設けられている。
【0011】
これにより、バイブレータの振動がバッテリで減衰される問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、被験者の装着時の違和感を緩和しつつ、被験者への刺激の伝達性がよいネックバンド式の睡眠状態計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図9】呼吸音計測装置の外ケースを外して右斜め下側から見た側面図
【
図10】首の細い被験者が呼吸音計測装置を装着した例を示す模式図
【
図11】首の太い被験者が呼吸音計測装置を装着した例を示す模式図
【
図12】呼吸音計測装置の他の構成例を示す
図6相当の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
<呼吸音計測装置の構成>
図1及び
図8に示すように、呼吸音計測装置1は、被験者Pが、就寝前に、被験者頸部Pn(以下、単に頸部Pnという)に装着し、睡眠時における吸気・呼気の気流音(以下、単に呼吸音という)を計測するためのものである。具体的に、呼吸音計測装置1は、ネックバンド型の装置であり、被験者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されている。呼吸音計測装置1は、被験者Pの睡眠状態を計測する睡眠状態計測装置の一例である。
【0016】
具体的には、
図3に示すように、呼吸音計測装置1は、円弧状(例えば、略半円形状)に形成されたネックバンド型の装着部30と、呼吸音を計測するための計測部40とが、周知構造のヒンジ部60で連結された構成を有する。ヒンジ部60は、実線で示す展開位置と仮想線で示す折曲位置との間で、装着部30に対して計測部40を回動できるように支持している。計測部40が展開位置にある状態では、呼吸音計測装置1全体として円弧状体となるように構成される。
図3において、AXは、回動軸を示す。以下の説明では、被験者Pの呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、上下方向及び左右方向を定義する。また、被験者Pの正面(胸)側を前、背中側を後と定義する。また、呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、「被験者側」を定義するものとし、装着部30や計測部40等の説明に際して、被験者側を「内側」その反対側を「外側」として説明する場合がある。
【0017】
換言すると、装着部30の一方の端部は呼吸音計測装置1の一方の開放端部を構成する。装着部30の他方の端部には、計測部40の基端部がヒンジ部60を介して連結される。計測部40の先端部は、呼吸音計測装置1の他方の開放端部を構成する。なお、以下の説明では、呼吸音計測装置1の被験者頸部Pn側の面を「呼吸音計測装置1の内面10a」または単に「内面10a」と呼ぶ。すなわち、「呼吸音計測装置1の内面10a」とは、装着部30の内面に加えて、計測部40の内面42cを含む概念とする。
【0018】
《装着部》
装着部30は、(1)被験者Pが両手で呼吸音計測装置1の両開放端部を両側に広げて頸部Pnの後ろ側から頸部Pnに向かって装着することができ、(2)被験者Pが手を離した際に呼吸音計測装置1の内面10aの少なくとも一部が頸部Pnに密着するように頸部Pnを周方向の外側から挟み込み、(3)継続的な使用に耐えうる強度を有するのが好ましい。上記(1)~(3)の条件を満たしていれば、装着部30の具体的な構造及び構成材料は、特に限定されない。例えば、装着部30として板バネの周囲をエラストマー樹脂で取り巻いた弾性構造を採用したり、弾性があるポリプロピレンの樹脂を採用することができる。ただし、本開示の技術は、装着部30に板バネの構造を採用することや、エラストマー樹脂、ポリプロピレンの樹脂を用いることに限定されるものではない。
【0019】
《計測部》
-収容ケース-
図5及び
図6に示すように、計測部40は、内ケース42と外ケース43とを嵌め合わせることで内側に収容空間Qが形成された収容ケース41を有する。
【0020】
内ケース42は、外側に凸となるように丸みを帯びて形成された底板と、収容空間Qを取り囲むように底板の上下端及び先端から外側に向かって立ちあがる側板とを備える。内ケース42の底板には、先端側における上下の略中央位置に円形状の第1開口部42aが形成され、周方向及び上下の略中央位置に矩形状の第2開口部42bが形成される。
【0021】
第1開口部42aには、当接部70が収容ケース41の内側から挿通される。そして、当接部70は、基端部に形成されたフランジ部70c(
図6参照)により収容ケース41に抜け止めされる。第2開口部42bは、例えば、呼吸音計測装置1が頸部Pnに装着されたか否かを検出するために光学式の人検知センサ59を用いる場合に、測定光を通過させるための測定窓として用いられる。なお、第2開口部42bは、必ずしも必要ではなく、例えば、人検知センサ59を光学式以外の方式にする場合や人検知センサ59自体を設けない場合には不要である。
【0022】
図9に示すように、内ケース42の両側壁の基端部(装着部30側の端部)には、それぞれ、後述するヒンジ部60の回動軸部61を回動可能に支持するための軸受け42eが設けられる。軸受け42eの構成は、特に限定されないが、例えば、内ケース42の両側壁の基端部に、回動軸部61の外形よりも若干大きい軸挿通孔が形成される。
【0023】
図2~
図4に示すように、収容ケース41の外ケース43は、内ケース42の底板と対向するように配置された上板と、前述の収容空間Qを取り囲むように上板の上下端及び先端から内側に向かって立ちあがる側板とを備える。外ケース43の上板の基端側は、ヒンジ部の一部を覆うように形成されている。収容ケース41は、内ケース42と外ケース43の位置合わせをした後に、内ケース42の底板に形成されたねじ穴45(
図6参照)に挿入されたねじ46(
図6参照)によりねじ止め固定される。
【0024】
図6に示すように、収容ケース41の収容空間Qには、マイクロフォン74が取り付けられた第1基板73と、マイクロフォン74で取得された呼吸音を処理する電子部品等が実装された第2基板50と、呼吸音計測装置1の各構成要素に電源を供給するためのバッテリ51とが収容される。第1基板73と第2基板50との間は、フレキシブルケーブル76で接続される。なお、収容ケース41の形成材料は、装着部30と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0025】
なお、図示はしないが、計測部40の側板には、外側に向かって開口する挿入口が設けられており、挿入口を介して、コネクタ55に通信用/充電用のケーブルが差し込めるようになっている。
【0026】
-ヒンジ部-
ヒンジ部60は、
図3の実線で示す展開位置と
図3の仮想線で示す折曲位置との間で、装着部30に対して計測部40を回動できるように支持する。展開位置とは、計測部40が外側に向かって最大に開かれた位置であり、両者間の接合部分では内面10aが実質的にフラットになる。展開位置では、例えば、装着部30の先端部と計測部40の基端部とが互いに当接され、装着部30と計測部40との間の角度がそれ以上外側に広がらないように係止される。折曲位置とは、計測部40が装着部30に対して内側に向かって折り曲げられた位置である(
図2参照)。折曲位置では、例えば、計測部40の基端部が装着部30の外側の内壁に当接され、それ以上内側に曲がらないように係止される。展開位置と折曲位置との間の回動範囲R11は、特に限定されないが、例えば、40度程度である。40度程度の回動範囲があれば、幅広い体型の被験者Pに対応することができる。ただし、可動範囲(回動範囲)は、40度程度に限定されることはなく、例えば、可動範囲が40度を超えていてもよい。上記の展開位置と折曲位置との間の回動により、呼吸音計測装置1の開き具合が変わる。上記の構成は、「装着部と計測部との間の開度を調整すること」の一例を示している。
【0027】
図6に示すように、ヒンジ部60は、上記回動動作の中心軸である回動軸AXを構成する回動軸部61と、計測部40を折曲位置に向かって付勢する付勢手段62とを備える。
【0028】
回動軸部61の構成は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、内ケース42の両側壁の基端側に軸受けを設け、その軸受けに回動軸部61を回動可能に支持することで実現できる。
【0029】
付勢手段62の構成は、特に限定されないが、ここでは、ねじりコイルばねを用いた例を示している。付勢手段62は、一方の端部が収容ケース41に固定され、他方の端部が装着部30に固定される。なお、図示はしないが、ヒンジ部60として、蝶番とばねとが一体的に構成された、いわゆる蝶番ばねを用いてもよい。この場合においても、蝶番ばねは、収容ケース41及び装着部30のそれぞれに固定される。
【0030】
ここで、付勢手段62の付勢力は、圧縮コイルばね78の付勢力よりも大きくなるように構成される。このような構成にすることで、(1)被験者の体型(特に、首の大きさ)に応じた大枠の位置合わせを付勢手段62の作用により行い、(2)圧縮コイルばね78の作用により、被験者頸部Pnの呼吸音の計測場所(皮膚表面)に沿うように当接部70の当接面70bの角度を調節する、という動作をより好適に実現することができる。ここで、計測部40の基端側における収容空間Qに、ヒンジ部60周りからの異物の侵入を防ぐため隔壁44bを設けるようにしてもよい。このように、収容空間Q側に隔壁44bを設けることで、ヒンジ部60の可動性を高めつつ、防塵効果を得ることができる。なお、
図5に示すように、後述する隔壁44a及び隔壁44bが一体的に構成された隔壁44を設けてもよい。このような構成にすることにより、構成部材を削減することができ、かつ、組み立て作業の作業性を高めることができる。
図9では、隔壁44に右上がりのハッチングを付している。
【0031】
-当接部-
図2及び
図6に示すように、呼吸音計測装置1は、内ケース42の内面42cから内側(被験者Pの頸部Pn側)に向かって突出するように設けられた当接部70を備える。当接部70の先端には、被験者の呼吸音を導入するための導音口70aが形成され、その導音口70aを囲むようにリング状の当接面70bが形成されている。当接面70bは、呼吸音計測装置1が装着された際に、頸部Pnに当接する。このように、突出部70に当接面71aを設けることで頸部Pnとの接触面積を広くすることができ、呼吸音が外に漏れるのを防ぎ、集音効果を高めることができる。なお、当接部70の内側に中空空間70d(
図7参照)を設けて、強度を維持しつつ、軽量化を図るようにしてもよい。
【0032】
図6に示すように、当接部70の基端面は、中央部分が略矩形状に凹んでいて、矩形状の第1基板73が嵌め込まれている。そして、第1基板73の内表面の略中央には、マイクロフォン74が取り付けられている。
【0033】
なお、本開示において、マイクロフォンとは、音波を電気信号に変換する機器や装置や回路、及び、そのような機器等に用いるMEMSマイクロフォンのような音センサ等を広く含む概念で使用するものとし、その具体的な構成は特に限定されない。一方で、本実施形態では、説明の便宜上、「マイクロフォン」との用語を、MEMSマイクロフォンのような呼吸音を取得するための音センサについて用いるものとする。ただし、説明の便宜上そのようにしているのであって、「マイクロフォン」との用語の意味を限定することを意図するものではない。
【0034】
当接部70を構成する材料は、後述する第2導音空間RS2の円筒形状を維持するのに十分な硬度(所定の硬度)があればよく、特に限定されない。例えば、当接部70を構成する材料として、プラスティック樹脂(例えば、ポリオキシメチレン)を用いることができる。また、例えば、硬度50以上のポリプロピレンやシリコン樹脂を用いてもよい。
【0035】
図6に示すように、当接部70には、導音口70aから導入された呼吸音をマイクロフォン74に導くための導音空間RSが設けられている。導音空間RSは、第1導音空間RS1、第2導音空間RS2及び第3導音空間RS3で構成される。第1導音空間RS1は、第1基板73のマイクロフォン74と対応する位置に表裏方向に貫通形成された導音孔73aで形成される空間である。導音口70aには、マイクロフォン74に向かって内径が次第に狭まるテーパー状の集音部70e(
図2参照)が形成され、この集音部70eの内側の空間を第3導音空間RS3(
図6参照)と呼ぶ。そして、第1導音空間RS1と第3導音空間RS3との間が、円筒状の第2導音空間RS2で接続されている。第2導音空間RS2の内壁面に当接するように円筒状の遮音材77を設けてもよい。このような遮音材77を設けることで、呼吸音計測装置1に外部から与えられた衝撃等により生じた振動が伝搬し、導音空間RS内に固体伝搬音が発生するのを抑えることができる。呼吸音計測装置1の振動は、例えば、被験者Pが就寝中に体位変動をした場合等に呼吸音計測装置1が寝具や被験者の手などでこすれることにより生じる。
【0036】
遮音材77を形成する材料は、特に限定されないが、装着部30からの固体振動を吸収しつつ、頸部Pnから取得されて第2導音空間RS2を通過する呼吸音の音波は吸収しにくいような素材で形成されるのが好ましい。遮音材77には、例えば、シリコンゴムのような弾性材を好適に使用できる。
【0037】
当接部70の基端部には、第1基板73を覆うカバー75が取り付けられる。また、カバー75と外ケース43の天板との間には、圧縮コイルばね78が設けられる。呼吸音計測装置1が頸部Pnに装着されて当接部70が頸部Pnに押し当てられると、当接部70が収容ケース41の収容空間Q内に押し込まれ、装着部30の内端面からの当接部70の突出量が変わる。さらに、圧縮コイルばね78の作用により、当接面70bが頸部Pnの皮膚に密着する。これにより、被験者頸部Pnの皮膚への密着性が高まるとともに、被験者Pの装着感が向上し、被験者Pの肌への食い込みの痕が残りにくい。
【0038】
図10では、
図3よりも首の細い被験者の例を示している。
図10の例では、呼吸音計測装置1の装着時に、計測部40が展開位置のままだと、当接部70の当接面70bが頸部Pnに当たらない(
図10の仮想線参照)。本実施形態では、ヒンジ部60が折曲位置に向かって付勢されているので、計測部40が被験者頸部Pn側(内側)に向かって回動する。
図10では、回動角度R12(R11>R12)回動している例を示している。また、計測部40が頸部Pn側に入り込むことで、頸部Pn近傍での計測部40の内面42cも内側に向かって傾く。本実施形態では、頸部Pnから当接面70b受ける力に応じて当接部70の当接面70bの角度が変わる(
図10のR22参照)。すなわち、当接部70の当接面70bの角度が頸部Pnに沿うように変化する。また、当接部70には、圧縮コイルばね78の付勢力が作用しているので、被験者頸部Pnへの当接面70bの密着性を高めることができる。
【0039】
図11では、
図3よりも首の太い被験者の例を示している。
図11の例では、頸部Pnが装着部30の内側におさまりきらないが、前述のとおり呼吸音計測装置1は展開位置以上に開かないので、呼吸音計測装置1の装着時に、装着部30の外形サイズが外径サイズφ2(φ2>φ1)に広がっている。そして、当接部70の大部分が収容空間Q内に入りこみ、当接部70の計測部40からの突出量が非常に小さくなっている。このような動作をすることにより、当接部70が被験者頸部Pnに食い込むのを抑えている。また、この場合においても、圧縮コイルばね78の付勢力がはたらき、被験者頸部Pnへの当接面70bの密着性を高めている。
【0040】
なお、
図10及び
図11では、
図3よりも装着部30の長さが長い例を示しているが、このように装着部30の長さが異なってもよく、同様の効果が得られる。
【0041】
-第2基板-
図6に戻り、第2基板50は、内ケース42の底板(被験者側の板)上に、計測部40の長手方向(装着部30の周方向)に沿って延びるように配置されている。第2基板50は、収容ケース41に固定されている。具体的には、第2基板50が隔壁44に嵌合固定され、隔壁44が内ケース42に嵌合固定される。
【0042】
第2基板50には、制御部(図示省略)、計測結果を記憶するための記憶部(図示省略)、計測結果を外部機器(例えば、端末装置80)に送信するための通信モジュール53、体位/体動を検出するための加速度センサ(図示省略)、外部機器との通信及びバッテリへの充電をするためのコネクタ55、被験者に刺激を与えるためのバイブレータ56、電源ボタン57(
図2参照)、被験者用のモニタランプ58(
図2参照)、並びに、人検知センサ59等が実装されている。制御部は、呼吸音計測装置1の全体としての動作を制御する。制御部は、例えばマイクロプロセッサであって、CPUやメモリ等を有している。制御部は、バッテリ51からの電源供給を受け、記憶部(図示省略)に記憶されたプログラム等に基づいて動作する。
【0043】
-バイブレータ-
バイブレータ56は、制御部からの制御を受けて振動する。バイブレータ56は、例えば、被験者Pの所定音量以上のいびきをかいている状態(以下、いびき状態という)または、被験者Pが無呼吸状態の少なくとも一方において、振動するように制御される。
【0044】
バイブレータ56は、収容空間Q内において、ヒンジ部60の近傍に設けられる。本実施形態では、バイブレータ56が、第2基板50のヒンジ部60側の端部に実装された例を示している。第2基板50は、隔壁44に嵌合固定される。隔壁44は、内ケース42に嵌合固定される。そして、内ケース42の底板から隔壁44を貫通するようにねじ孔45(
図6参照)が形成されている。内ケース42、隔壁44及び外ケース43は、ねじ孔45に挿入されたねじ46(
図6参照)によりねじ止め固定される。すなわち、バイブレータ56は、振動が第2基板50及び隔壁44を通じて収容ケース41に伝達されるように構成されている。当接部70は、その少なくとも一部が収容ケース41に当接するので、収容ケース41に伝達された振動は、当接部70にも伝達される。
【0045】
また、バイブレータ56の振動は、
図6に白抜きの矢印で示すように、ヒンジ部60を通って装着部30に伝わる伝達ルートでも伝達される。これにより、バイブレータ56の振動は、計測部40(当接部70を含む)と、装着部30との両方から頸部Pnに伝わるようになっている。ここで、
図6に示すように、バイブレータ56をヒンジ部60の近傍に配置することで、バイブレータ56の振動が、装着部30に伝達されやすくすることができる。これにより、単一のバイブレータ56により、頸部Pnの周方向の複数の点から好適に被験者に振動を与えることができる。
【0046】
さらに、バイブレータ56に近接する場所で、隔壁44、内ケース42及び外ケース43がねじ46で固定されることで相互間を密着させることとなり、その固定場所の近傍にヒンジ部60が設けられているので、収容ケース41だけでなく、収容ケース41にヒンジ部60を介して連結された装着部30に対しても振動が伝わりやすくなっている。
【0047】
本実施形態において、バイブレータ56は、バッテリ51のヒンジ部60側の端よりヒンジ部60に近い位置に設けられている。換言すると、バイブレータ56は、バッテリ51の重心よりヒンジ部60に近い位置に設けられている。さらに、バイブレータ56は、収容ケース41の収容空間Q内において、ヒンジ部60側の端部に設けられている。そして、バイブレータ56とヒンジ部60との間には、振動を減衰させるような部品を配置しないようにしている。
図5において、L11は、ヒンジ部の中心位置G13からバイブレータ56の中心位置G12までの距離を示す。L12は、ヒンジ部の中心位置G13からバッテリ51のヒンジ部側の端までの距離を示す。L13は、ヒンジ部60の中心位置G13からバッテリ51の重心G11までの距離を示す。
【0048】
ここで、バッテリ51は、呼吸音計測装置1の中で、最も重量が大きい部品の1つである。また、前述のとおり、収容ケース41に収容されたバイブレータ56の振動は、ヒンジ部60を介して装着部30に伝達される。そこで、
図5のような位置にバイブレータ56を設けることで、バイブレータ56の振動が、バッテリ51で減衰される問題を回避することができる。これにより、ヒンジ部60による連結構造を有する呼吸音計測装置1において、バイブレータ56を収容ケース41と装着部30の両方に設けることなく、バイブレータ56の振動を頸部Pnに伝達させることができる。すなわち、呼吸音計測装置1において、単一のバイブレータで、被験者の姿勢を変化させやすくすることができる。
【0049】
-その他の構成-
当接部70と内ケース42の第1開口部42aとの間には、被験者の汗(湿気を含む)、塵、埃等の異物(以下、単に異物という)の侵入を防ぐための防塵壁を設けていない。これにより、当接部70の可動性を高めることができる。一方で、当接部70が収容空間Qに押し込まれた際に、当接部70と内ケース42の第1開口部42aとの隙間から侵入した異物が第2基板50やバッテリ51に侵入しないように、収容空間Qには、第1開口部42aと、第2基板50やバッテリ51のような電子部品等との間を仕切る隔壁44aが設けられる。
【0050】
図9に示すように、隔壁44は、収容空間Qにおいて、内ケース42と外ケース43の中間位置に、両ケース間を区切るように設けられている。隔壁44は、左上のコーナー部44cと右下のコーナー部44dにおいて、内ケース42に固定されている。また、隔壁44は、第2基板と嵌合部44eで嵌合するように構成されている。嵌合部44eは、例えば、第2基板50に実装されている発光ダイオードの光を、計測部40の側板に表示させるため、透光性部材で構成されている。このように、バイブレータ56が動作中に隔壁44が内ケース42の嵌合部44eで動かなくする働きをすることで、バイブレータ56から内ケース42に振動を減衰させることなく伝搬している。
【0051】
電源ボタン57は、例えば、計測部40の側板の外側に押しボタンが突出する構成であって、被験者Pが呼吸音計測装置1の電源のオン/オフ操作ができるようになっている。
【0052】
モニタランプ58は、例えば、発光ダイオードで構成されている。被験者Pは、嵌合部44eを介してモニタランプ58の発光状態を見ることで、呼吸音計測装置1の電源のオン/オフ状態や通信状態、充電状態等を確認できるようになっている。
【0053】
<その他の実施形態>
図12は、呼吸音計測装置1の他の構成例を示している。
図12は、上記実施形態における
図6相当図であり、
図6と共通の構成要素について、同じ符号を付している。
図12において、導音孔50aは、
図6の導音孔73aに相当する。
【0054】
図6と
図12の呼吸音計測装置1の構成を全体的に比較すると、
図6では、第1基板73と第2基板50の2つに分かれて、マイクロフォン74が第1基板73に実装されている。これに対し、
図12では、基板50が1つに統合され、マイクロフォン74もこの基板50に実装されている。
【0055】
また、
図6では、当接部70が計測部40に出没自在に支持され、計測部40に取り付けられた弾性部材78により突出方向に付勢されている。これに対し、
図12では、当接部70が収容ケース41に固定されている。
【0056】
具体的に、
図12の呼吸音計測装置1では、内ケース42のマイクロフォン74と対応する位置に、円形状の開口42dが形成されている。そして、内ケース42の底面には、開口42dの外周縁から被験者側に向かって一体的に突出する同径筒状の筒状突起49が設けられている。筒状突起49の内壁面には、外径が筒状突起49の内径よりも若干小さく、筒状突起49の内壁面に当接する円筒状の遮音材77が設けられている。また、筒状突起49の先端部(被験者側の端部)には、突出部70を抜け止めするためのフランジ49aが連続一体的に形成されている。
【0057】
また、
図12の構成では、内ケース42に当接固定された基板50の表面(外表面)にバイブレータ56が実装されている。これにより、バイブレータ56の振動が内ケース42に伝達されやすい。また、バイブレータ56は、互いの重心同士で比較すると、バッテリ51よりヒンジ部60に近い位置に設けられている。これにより、バイブレータ56の振動がヒンジ部60を介して装着部30に伝達される際に、その振動がバッテリ51で減衰される問題を回避することができる。また、バイブレータ56とヒンジ部60との間に、振動を減衰させるような部品を配置していない。これにより、バイブレータ56の振動が装着部30に伝達されやすくすることができる。
【0058】
なお、
図12において、L21は、ヒンジ部60の中心位置G23からバイブレータ56の中心位置G22までの距離を示す。L22は、ヒンジ部60の中心位置G23からバッテリ51の重心G21までの距離を示す。
【0059】
以上のように、
図12の構成においても、
図6の構成と同様に、ヒンジ部60による連結構造を有する呼吸音計測装置1において、バイブレータ56を収容ケース41と装着部30の両方に設けることなく、バイブレータ56の振動を頸部Pnに伝達させることができる。すなわち、呼吸音計測装置1において、単一のバイブレータで、被験者の姿勢を変化させやすくすることができる。
【0060】
また、上記の実施形態では、呼吸音計測装置について説明したが、本開示の技術は、他の生体情報計測装置についても適用が可能である。例えば、呼吸音を計測するための呼吸音計測装置、心拍を計測するための心拍計測装置に適用することができる。また、本開示の技術を血中酸素濃度の計測や血流の計測に適用してもよい。この場合、図示しないが、マイクロフォン74に代えて光学式のセンサを設けるとよい。具体的な計測方法は、従来から知られている方法を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、主に在宅等で被験者の睡眠状態を計測する装置として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 呼吸音計測装置(睡眠状態計測装置)
30 装着部
40 計測部
41 収容ケース(筐体)
51 バッテリ
56 バイブレータ
60 ヒンジ部