(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
F16K5/04 E
F16K5/04 J
(21)【出願番号】P 2020141802
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】512100490
【氏名又は名称】日機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】伊深 芳安
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-533632(JP,A)
【文献】特開平08-270817(JP,A)
【文献】特開2004-132469(JP,A)
【文献】登録実用新案第3129137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
F16K 27/00-27/12
F16K 39/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した有底円筒状の弁箱を有して、該弁箱の側壁の対向位置に流体の出入口を設けたバルブ本体と、上部に回転操作用のツマミを有して、前記弁箱に回転可能に挿入され、前記出入口を連通可能な貫通路を設けた弁体と、前記弁体の前記貫通路よりも上部に環装する漏水防止用Oリングと、閉止時に前記出入口の少なくとも一方と対峙する前記弁体の外周面に取付けられる止水用Oリングとを備え、前記弁箱の内周面の底側には、内向きに突出する抜け止め凸部を前記内周面に沿って円弧状に設ける一方、前記弁体の下部には、前記抜け止め凸部の内側に挿入自在な小径円柱部を形成するとともに、該小径円柱部の外周面には、前記小径円柱部の挿入時に前記抜け止め凸部に嵌め殺しの状態で嵌合する爪部を外向きに突設し
、さらに前記弁箱の前記抜け止め凸部よりも下方には、前記弁体の回動範囲を開閉位置それぞれで規制可能に前記爪部が当接するストッパ部を設けたことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記出入口のうち前記止水用Oリングにより止水される開口には、縦横のうち少なくとも一方向の格子部を設けた請求項1記載のバルブ。
【請求項3】
前記出入口のうち少なくとも出口を前記止水用Oリングにより止水する請求項1または2記載のバルブ。
【請求項4】
前記抜け止め凸部と前記爪部のそれぞれは、少なくとも互いに対向する位置に一対設けた請求項1、2または3記載のバルブ。
【請求項5】
前記抜け止め凸部の突端上角部と前記爪部の突端下角部のうち少なくとも一方は、下り勾配のテーパ状に面取りした請求項1から4のうち何れか一項記載のバルブ。
【請求項6】
前記小径円柱部の底面に凹陥部を設けて前記爪部の内側を空洞とし、前記爪部を前記抜け止め凸部に嵌合する際に前記凹陥部に向けて変形可能とした請求項1から5のうち何れか一項記載のバルブ。
【請求項7】
前記止水用Oリングは、前記弁体の前記外周面に形成した正面視円形の環状溝に取付けられる請求項1から
6のうち何れか一項記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブ本体に弁体を回転自在に収容し、弁体を90度回転させて開閉を行うコック式のバルブに係り、弁体の抜け止め構造の改良により、より少ない部品数で構成可能な新規なバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11・12は、本出願人が金属加工機械のクーラント液の供給システム等に使用するものとして、すでに実施しているバルブを示したものである。この既存のバルブは、バルブ本体100と、弁体200と、底キャップ300の三部材から構成され、いずれも樹脂製である。バルブ本体100は、上下が開口した円筒状の弁箱101の側面に流体の出入り口102・103が形成された継手(ポート)104・105を直線上に位置して設けている。弁体200は、バルブ本体100の弁箱101に上部開口から回転自在に挿入するもので、円柱部201には90度回転させることで、出入り口102・103と連通する通液孔202が水平に貫設されている。また、円柱部201の側面には遮断用の弁座203と、上部には開閉用ツマミ204がそれぞれ一体的に設けられている。なお、400・401は、通液孔202の上下に装着する漏水防止用のOリングである。
【0003】
そして、弁体200は底キャップ300との嵌合によってバルブ本体100から抜け止めされている。すなわち、弁体200の円柱部201は、バルブ本体100の下部開口から底部205が若干突出する長さを有し、この底部205の外周にはテーパ状の爪部206が周設されている。これに対して底キャップ300は、バルブ本体100の弁箱101の外径とほぼ同径の中空円盤状をなし、その中心には、爪部206の外径よりもやや小径の小径孔301を介して、爪部206が下側から係止する段部302が形成されている。したがって、バルブ本体100の底側に底キャップ300をセットしておき、上方から弁体200をバルブ本体100に挿入する際、力嵌めにより爪部206が小径孔301を超えた段階で段部302にパチンと係止されることで、弁体200と底キャップ300が嵌め殺しの状態で嵌合し、弁体200が抜け止めされる。
【0004】
なお、別の抜け止め構造を有するものとして、コック本体(バルブ本体)の上部に栓体(弁体)の抜け出しを防止するための略U字形状の抜止め部材が挿通状に取付けられるコック(バルブ)も公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11・12に示した本出願人による既存バルブも、特許文献1のコックも、シール部材を除けば、バルブ本体と、弁体と、さらに弁体の抜け止め部材(底キャップや略U字形状の抜止め部材)を備えた三部材構成となっているが、バルブ本体と弁体の二部材のみで抜け止めが実現できれば、部品数が少なくなって部品管理や組み立てが容易となることはもちろん、コスト面でも大幅に有利となる。特に、上述したクーラント液の供給システムのように、様々な角度から金属加工機械に対してクーラント液を供給するために液供給ノズルを多数本装備するシステムでは、バルブの必要数も多くなることから、バルブ1個当たりの低コスト化がシステム全体の低コスト化に直結する。
【0007】
また機能面においても、本出願人による既存バルブでは、上下一対のOリング400・401によって通液時(開弁時)にバルブ本体100の上下開口から流体が漏れ出すことは防止できるが、弁座203はシール部材を備えず、円柱部201に一体成形されたものであるため、閉弁時の止液性を保証するには、耐圧を0.2Mpa程度に抑制する必要があり、これを超える高圧での噴射ができないなど、用途が限定されることになる。また、一定の止液性を担保するには、弁座203の成形精度を高める必要もあるが、これもまた、バルブの製造コストを高める要因となっている。
【0008】
一方、特許文献1のコックは、コック本体1の出入口2の内部口縁に弁座パッキン4を取付けることで閉弁時の止水性を高めているが、ここで採用されている弁座パッキン4は、湾曲状に成形した特殊な形状であるため、弁座パッキン4自体のコストが嵩み、三部構成であることも相俟って、バルブ全体のコストを抑えることができないものとなっている(符号は特許文献1に記載のもの)。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、より少ない部材数とすることで低コストでありながら、機能面においても高い耐圧を有するバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明では、上部が開口した有底円筒状の弁箱を有して、該弁箱の側壁の対向位置に流体の出入口を設けたバルブ本体と、上部に回転操作用のツマミを有して、前記弁箱に回転可能に挿入され、前記出入口を連通可能な貫通路を設けた弁体と、前記弁体の前記貫通路よりも上部に環装する漏水防止用Oリングと、閉止時に前記出入口の少なくとも一方と対峙する前記弁体の外周面に取付けられる止水用Oリングとを備え、前記弁箱の内周面の底側には、内向きに突出する抜け止め凸部を前記内周面に沿って円弧状に設ける一方、前記弁体の下部には、前記抜け止め凸部の内側に挿入自在な小径円柱部を形成するとともに、該小径円柱部の外周面には、前記小径円柱部の挿入時に前記抜け止め凸部に嵌め殺しの状態で嵌合する爪部を外向きに突設するという手段を用いた。
【0011】
上述した手段によれば、弁体をバルブ本体に対して嵌め殺しの状態で嵌合する構造としたので、弁体の抜け出しを防止する部材が不要となる分、部品数を少なくすることができる。また、弁体を90度回転させて開閉を行うという基本的な性能は従来のままであり、その際、弁体の爪部は抜け止め凸部の下側に回転可動域があるため、通常通り弁体を開閉動作させることができる。また、シール部材として漏水防止用Oリングと止水用Oリングを備えるので、通水時の漏水防止作用と止水作用の双方が確実に得られると同時に、耐圧を0.5Mpa程度まで高めることができる。さらに、これらシール部材は何れもOリングで構成されるため、シール部材に係るコスト上昇を抑制することができる。
【0012】
こうした手段を基本として、前記出入口のうち前記止水用Oリングにより止水される開口には、縦横のうち少なくとも一方向の格子部を設けることが好ましい。この場合の格子部は、止水用Oリングが出口で抜け出すのを防止する。さらに、前記開口が変形することを防止する機能も有する。つまり、前記開口の変形により止水用Oリングの密着性が損なわれ、予定する止水作用が得られないという事態を避けるための技術的手段であって、特に、バルブ本体と弁体とは、プラスチックのチップまたは粉末を溶融し、一定の型に射出して成形する射出成形によって製造することが、低コストで大量生産できるために好ましいが、当該成形法では離型時の軟化状態で前記開口が変形するおそれがあるため、格子部を設けることがより有効な手段となる。
【0013】
さらに、前記止水用Oリングでは、前記出入口のうち少なくとも出口を止水することが好ましい。本発明のバルブでは、閉弁時に入口の開口は弁体の側面によってほぼ止水状態にあるため、弁体と弁箱の隙間に流入する流体のみを止水するには出口のみを止水するだけで十分だからである。
【0014】
なお、前記抜け止め凸部と前記爪部は、それぞれ1つずつでも弁体の抜け出しを防止することが可能であるが、圧力によって弁体がわずかでも傾くと通水性や止水性に支障を来すため、弁体の姿勢を安定させるためには、前記抜け止め凸部と前記爪部のそれぞれを互いに対向する位置に一対設けることが好ましい。
【0015】
さらに、前記抜け止め凸部の突端上角部と前記爪部の突端下角部のうち少なくとも一方は、下り勾配のテーパ状に面取りすることが好ましい。爪部を抜け止め凸部に嵌め殺しの状態で嵌合する際、それぞれの角部が直角であると当該嵌合が困難となり、無理嵌めすれば抜け止め凸部や爪部が破損するおそれがあるが、テーパ状の角部とすることで、嵌合の際に滑りが生じて、上述した破損を生ずることなく、爪部を嵌め殺しの状態で嵌合することができるからである。
【0016】
さらにまた、前記小径円柱部の底面に凹陥部を設けて前記爪部の内側を空洞とし、前記爪部を前記抜け止め凸部に嵌合する際に前記凹陥部に向けて変形可能とすることが好ましい。抜け止め効果を高めるために、抜け止め凸部や爪部を大きくしたり、分厚くしたり、数を増やした場合でも、当該手段であれば、爪部の変形により、比較的簡単に嵌め殺しの状態で嵌合することができるからである。
【0017】
他方、弁体の回転による基本的な開閉操作に係る手段として、前記弁箱の前記抜け止め凸部よりも下方には、前記弁体の回動範囲を開閉位置それぞれで規制可能に前記爪部が当接するストッパ部を設けることが好ましい。開閉操作する際、弁体の回転が止まることで感覚的に開閉状態を把握することができるからである。言い換えれば、確実な開閉状態とするには、作業員は弁体の回転が止まるまで操作する必要があると認識することができるからである。
【0018】
なお、前記止水用Oリングは、前記弁体の前記外周面に形成した正面視円形の環状溝に取付けることが好ましい。止水用Oリングが環状溝に嵌まり込むことで、弁体を弁箱に挿入する際や弁体の開閉操作時に止水用Oリングが位置ズレすることを防止できるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、抜け止め構造として弁体をバルブ本体に対して直接嵌め殺しの状態で嵌合する構造としたので、シール部材を除けば弁体とバルブ本体の二部材構成となり、部品の管理や組み付けが容易となる他、バルブの製造コストも抑制することができる。しかも、シール部材は漏水防止用Oリングと止水用Oリングとを備え、何れもOリングで構成できるためシール部材に係るコストを抑えながら、通水時の漏水防止作用と止水作用の双方が確実に得られ、耐圧を従来同じサイズのバルブと比べて2倍以上に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバルブの分解斜視図
【
図3】同、バルブ本体の(a)平面図、(b)正面図
【
図4】
図3における(a)A-A線断面図、(b)B-B線断面図、(c)C-C線断面図
【
図5】同、弁体の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)底面図
【
図6】
図5における(a)D-D線断面図、(b)E-E線断面図、(c)F-F線断面図
【
図7】同、弁体をバルブ本体に組み付ける手順を示す工程図
【
図8】同、組み付けが完成したバルブの(a)通水状態の断面図、(b)止水状態の断面図
【
図9】同、バルブの開閉操作を示す(a)通水状態の水平断面図、(b)開閉途中の水平断面図、(c)止水状態の水平断面図
【
図10】同、継手のバリエーションを例示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1~
図6は本発明の一実施形態に係るバルブと構成部材の詳細を示したもので、バルブ自体の構成部材はバルブ本体10と弁体20の二部材であり、これにシール部材として漏水防止用Oリング30と止水用Oリング40を採用している。なお、バルブ本体10と弁体20は、ポリアセタール樹脂(POM)などの耐薬品性、耐衝撃性、耐熱性に優れた樹脂を射出成形により製造することが好ましいが、成形材料や成形法はこれに限定するものではない。
【0022】
各部材について詳説すると、バルブ本体10は、
図3・4にも示されるように、弁箱11の一次側と二次側に継手12・13を一体的に設けてなり、弁箱11は上部が開口した円筒状の側壁14に底壁15を一体に設けたものである。また、弁箱内部の弁室16には流体の入口17と出口18が対向して開口され、入口17と出口18それぞれは継手12・13と連通している。
【0023】
さらに、流体の出入口のうち出口18には、その開口に上下平行する横方向(水平方向)の柱部材によって格子部19を設けている。この格子部19は、止水用Oリング40が水圧によって出口18から抜け出るのを防止するものである。また、バルブ本体10を上述した射出成形により製造する場合において、離型時の軟化状態で出口18の開口が変形することを防止するためのものである。なお、格子部を構成する柱部材の本数は本実施形態に限定されず、また、左右平行する縦方向(垂直方向)の格子状、あるいは井桁状に縦横交差する格子状とすることも可能である。さらに、出口18のみに格子部19を設けたのは、正確な開口形状の保持により、止水用Oリング40との密着性を担保するためであるが、入口17にも格子部を設けることを排除するものではない。
【0024】
そして、弁箱11(側壁14)の内周面11aの底側には、本発明の特徴点と言うべく、弁体20の抜け止め凸部50を設けている。この抜け止め凸部50は、弁箱11の底壁15から離れた所定高さ位置に、弁箱11の内周面11aから弁室16に向かって突設しており、この実施形態では内周面11aに沿った平面視円弧状のものを互いに対向する位置に一対設けている(
図3(a)参照)。また、この実施形態では、抜け止め凸部50の突端上角部を面取りして、下り勾配のテーパ状角部51により形成している(
図4参照)。このようにすることで、後述する弁体20の爪部を確実に嵌め殺しの状態で嵌合できるようにしている(
図7参照)。つまり、抜け止め凸部50の高さ位置は、弁体の爪部を嵌め殺し状態で嵌合した後、弁体20の開閉動作に伴う爪部の回転運動と干渉しない高さであり、当該嵌合後の爪部とのクリアランスを最小限としている。
【0025】
さらに弁箱11の内周面11aには、抜け止め凸部50よりも下方に位置してストッパ部60を設けている。この実施形態におけるストッパ部60は、側壁14と底壁15がなす弁室16のコーナ部において、互いに対向する位置に円弧状のものを一対設けている(
図3(a)、
図4参照)。このストッパ部60は、後述するように、弁体20の回転操作による開閉操作時に爪部が当接して、弁体20の回動範囲を開閉位置で規制するもので(
図9参照)、この実施形態では、その上面と抜け止め凸部50の下面がほぼ同一水平面に位置するように設定している(
図4参照)。
【0026】
次に、弁体20は、
図5・6にも示されるように、バルブ本体10の弁箱11に挿入される円柱部21を主部として、該円柱部21には流体の流路となる貫通路22を水平方向に貫設しており、その上部には、弁箱11の上部開口を閉塞する直径のフランジ部21aを介して、回転(開閉)操作用のツマミ23を一体に設けている。円柱部21の外径は弁箱11の内径より若干小径として、円柱部21以下を弁箱11の上部開口から弁室16に回転可能に挿入できるようにしている。つまり、円柱部21の外周面と弁箱11の内周面11aのクラランスは、弁体20の回転に必要な量を確保すれば、極限に小さくして、常に弁体20の全体の姿勢を安定させることが好ましい。弁体20全体が不用意に傾くと正常な通水・止水が行われないからである。また、弁体20に対する漏水防止用Oリング30の装着構造として、円柱部21の上部にはフランジ部21aとの間で環状凹部24を形成しており、この環状凹部24に漏水防止用Oリング30を環装可能としている。さらに、止水用Oリング40の装着構造として、円柱部21の外周面一部には正面視円形の環状溝25を形成しており、この環状溝25に止水用Oリング40を位置ズレしないように取付けられるようにしている。
【0027】
そして、円柱部21の下部には、本発明の特徴点と言うべく、抜け止め構造を採用している。すなわち、円柱部21の下部には、円柱部21よりも小径の小径円柱部70を同軸に設けるとともに、該小径円柱部70の外周面の対向位置に外向きに突出する爪部80を一対設けている。より具体的には、小径円柱部70はバルブ本体10における抜け止め凸部50の内側に挿入可能な外径とし、そこから一対の爪部80を、その突端が円柱部21の側面と面一となる突出量をもって外向きに突出している。これら一対の爪部80は小径円柱部70の外周面に沿った平面視円弧状に形成しており、突端下角部は面取りされて、下り勾配のテーパ状角部81により形成している。
【0028】
さらに、この実施形態では、小径円柱部70の底面に90度毎に扇状の凹陥部71を形成している(
図5(d)、
図6(c)参照)。この凹陥部71によって爪部80の内側には空洞が形成され、若干ではあるが、爪部80が凹陥部71に向かって内向きに斜傾変形することを許容している。
【0029】
続いて、ここまで詳説した各部材の組み付け方法と使用方法を
図7~9にしたがって説明する。まず、各部材の組み付けは、弁体20の環状凹部24と環状溝25のそれぞれに漏水防止用Oリング30と止水用Oリング40を取付けておき(
図2参照)、この状態で弁体20をバルブ本体10の弁室16に挿入する(
図7(a)参照)。そして、挿入課程の後半では、爪部80が抜け止め凸部50と干渉するが、この干渉に抗して爪部80を抜け止め凸部50の下側に嵌め殺し状態で嵌合する(
図7(b)参照)。ここで、干渉が生ずる爪部80の突端下角部と抜け止め凸部50の突端上角部はテーパ状角部81・51となっているので、嵌合時に滑りが生じて、直角な角部のままとするよりも嵌合が容易となる。さらに、この実施形態では、弁体20の底面に形成した凹陥部71の存在によって、嵌合時に爪部80が若干内向きに弾性的に斜傾して、より嵌合を容易なものとしている。そして、爪部80が弾性的に復元してパチンと嵌合することで、弁体20を抜け止めの状態でバルブ本体10への組み付けが完了する(
図7(c)参照)。なお、嵌合後に干渉する爪部80の突端上角部と抜け止め凸部50の突端下角部はともに直角な角としているから、完全な嵌め殺し状態となり、弁体20の抜け出しを確実に防止することができる。
【0030】
このように組み付けが完了した本バルブの使用方法は、従来のコック式バルブと同じであり、ツマミ23をつまんで弁体20を90度の範囲で正逆に回動すれば、開閉させることができる(
図8・9参照)。通水時には、バルブ本体10と弁体20の上部隙間は、常時、漏水防止用Oリング30により漏水が防止されている。また、止水時にあっては、弁室16の出口18の周囲に止水用Oリング40が密着して、完全な止水状態となる(
図8)。
【0031】
また、弁体20の回動操作は、爪部80の両端がバルブ本体10に設けたストッパ部60の両端と交互に当接することで、開閉に必要な90度の範囲で規制されている(
図9参照)。したがって、作業者は弁体20がそれ以上回転しないことを自身の感覚で得ることで、確実に開閉を切り替えることができる。
【0032】
なお、本発明のバルブは、適用する配管システムに応じて呼び径などの寸法を多種用意することができることはもちろん、
図10に示したように、一次側(入口側)の継手12についても、同図(a)に示したユニバーサルジョイント式(嵌め込み式)の継手12A、(b)に示した外ネジ式(雄ネジ式)の継手12B、(c)に示した内ネジ式(雌ネジ式)の継手12Cのように、いくつものバリエーションを用意することができる。特に、本発明のバルブは樹脂によって成型することができるので、継手などに関しては多数のバリエーションのものを容易に成型することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 バルブ本体
11 弁箱
11a 弁箱の内周面
12 一次側継手
13 二次側継手
14 側壁
15 底壁
16 弁室
17 入口
18 出口
19 格子部
20 弁体
21 円柱部
22 貫通路
23 ツマミ
24 環状凹部
25 環状溝
30 漏水防止用Oリング
40 止水用Oリング
50 抜け止め凸部
51 テーパ状角部
60 ストッパ部
70 小径円柱部
71 凹陥部
80 爪部
81 テーパ状角部