(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】負圧式把持システム、方法およびツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20231122BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20231122BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B90/00
(21)【出願番号】P 2020542299
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2019052893
(87)【国際公開番号】W WO2019154847
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-26
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520285684
【氏名又は名称】セプトゥラス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビュルステン,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】コヴァック,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ゴトベルグ,マスィアス
(72)【発明者】
【氏名】デンカー,マグナス
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510786(JP,A)
【文献】特表2017-519536(JP,A)
【文献】特開2016-027905(JP,A)
【文献】特開2015-173755(JP,A)
【文献】特開平8-140927(JP,A)
【文献】特表2017-531482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0066082(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0234813(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0015569(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0249932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 90/00
A61M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動いている標的を固定位置で把持し保持するための負圧式把持システムであって、
管状体、近位端、および少なくとも1つの遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションを有するカテーテルと、
前記管状体と接続された、真空ポンプまたは流体ポンプのような負圧発生装置と、
前記カテーテルの前記遠位端
セクションを位置決めするように構成された制御ユニットであって、前記標的に近接して前記少なくとも1つの遠位開口部を位置決めする際に前記カテーテルの前記少なくとも1つの遠位開口部によって前記標的を把持するために負圧が前記管状体内で生成されるように前記負圧発生装置の動作を制御するようにさらに構成され
、前記カテーテル内の測定された圧力が、前記負圧が生成された後に所定時間、所定の圧力閾値未満で維持されない場合に、前記負圧が遮断または解除されるように前記動作を制御するようにさらに構成される、制御ユニットと
を備える、負圧式把持システム。
【請求項2】
前記カテーテル内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサを備える、請求項1に記載の負圧式把持システム。
【請求項3】
前記管状体に対する固定位置で前記標的を保持するように構成される、請求項1~請求項
2のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項4】
複数の心周期にわたって心臓の少なくとも一部を固定位置で保持するように構成される、請求項1~請求項
3のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項5】
ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を運ぶためのフラッシュ容器をさらに備え、前記
フラッシュ容器は、前
記カテーテルの前記管状体に接続される、請求項1~請求項
4のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項6】
前記流体は、把持手順および任意選択で解放手順の後に、前記管状体内へ機械的におよび/または手動で押し流され、そのことにより吸引された血液をヒトまたは動物の体内へ流し戻す、請求項
5に記載の負圧式把持システム。
【請求項7】
前記制御ユニットはさらに、把持手順の間に吸引された血液が、把持手順が成功または失敗した後に、ヒトまたは動物の体内へ流し戻されるように、前記フラッシュ容器を制御するように構成される、請求項
5に記載の負圧式把持システム。
【請求項8】
前記遠位端セクションは、前記標的上で動作するように配置されたさらなるツールのための端部セクションチャンバを備える、請求項1~請求項
7のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項9】
前記カテーテルは、ヒトまたは動物の静脈または動脈に導入されるように適合される、請求項1~請求項
8のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項10】
前記管状
体内部に穿刺機構をさらに備え、前記穿刺機構は、生成された負圧によって引き込まれた組織を穿刺するように配置され
、前記穿刺機構は、遠隔操作可能である、請求項1~請求項
9のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項11】
内側管状部材をさらに備える、請求項1~請求項
10に記載の負圧式把持システム。
【請求項12】
前記内側管状部材は、前記カテーテルの前記近位端から挿入され得る、請求項
11に記載の負圧式把持システム。
【請求項13】
前記内側管状部材を保持し、および/または前記カテーテル内部で、または前記カテーテルから突出して、ツールもしくは機能を操作するように構成された操作ユニットをさらに備える、請求項
12に記載の負圧式把持システム。
【請求項14】
前記内側管状部材はスネアである、請求項
11に記載の負圧式把持システム。
【請求項15】
前記スネアの外側にロックプッシャシースをさらに備え、前記ロックプッシャシースは、前記スネアに沿って押し込まれて、
外部の縫合糸を締結機構に対して係止することができる、請求項
14に記載の負圧式把持システム。
【請求項16】
前記遠位開口部におけるステープル留めまたは締結機構をさらに備える、請求項1~請求項
15のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項17】
前記ステープル留めまたは締結機構は、螺旋状アンカーを備える、請求項
16に記載の負圧式把持システム。
【請求項18】
前記締結機構に取り付けられる縫合糸をさらに備える、請求項
16~請求項
17のいずれかに記載の負圧式把持システム。
【請求項19】
前記縫合糸は、前記内側管状部材内に配置された第1の側と、前記内側管状部材の外側に配置された第2の側とを備える、請求項
18に記載の負圧式把持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的を把持し保持するための負圧式把持システム、および、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓などの動いている標的を装置に対する固定位置で把持し保持するための方法に関する。本開示はさらに、負圧式把持システムに基づく縫合糸締結装置、注入装置および僧帽弁腱索修復装置、ならびに標的を把持および保持し、心臓の僧帽弁腱索修復を実施するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患は、先進国で最も一般的な慢性疾患であり、発展途上国で急速に増加している。世界保健機関によって明示されているように、高所得国における死亡原因の16%、中所得国における死亡原因の14%が心疾患である。心臓病のうち、虚血性心疾患は、最も一般的な死亡原因であり、第2位は弁膜症である。65歳を超える人の2%~4%が、何らかのタイプの弁膜症を患っていると推定される。最も一般的な弁膜症は、大動脈弁狭窄症であり、次いで、僧帽弁狭窄症および僧帽弁逆流症がある。さらに、心臓の他の弁が疾患の影響を受ける可能性があり、この場合、三尖弁逆流症および肺動脈弁逆流症が珍しくない。別のタイプの心疾患は、調律異常であり、規則的な心調律が乱され、かつ、拍動が遅すぎるか、速すぎるか、または不規則であるかのいずれかの状態である。最も一般的なタイプの不整脈は、心房細動と呼ばれる不規則で速いタイプであり、これは、世界中で33,000,000人を冒すと推定されている。この不規則な心調律は、多くの場合、心臓内の血餅の形成を引き起こし、これは、血液とともに移動して、動脈を閉塞する可能性がある。これが脳内で起こった場合、人は脳卒中を起こし、ひいては、心房細動という危険な疾患を起こすことになる。
【0003】
様々な種類の処置および外科手術(例えば、冠動脈血行再建、ペースメーカ療法、僧帽弁輪形成、僧帽弁尖形成、僧帽弁置換、断裂腱索の交換、経中隔穿刺のステップ、大動脈弁置換、三尖弁形成、三尖弁置換、肺動脈弁置換、中隔縮小療法、外科的筋切除などを含む)では、手術の成功を保証するために心臓切開手術が必要である。心臓切開外科手術は侵襲的であり、多くの場合、手術を受けた患者の不快感、相当なリスク、および長期の回復期を伴う。通常、心臓切開手術は、手術が行われている間に心臓を停止させることを可能にする、人工心肺装置の助けを借りて行われる。心臓を停止させることにより、外科医は、静止している臓器を手に取るだけでなく、心臓の内部へ接近できる。
【0004】
一部の心臓外科手術では、外科医が、人体内の動いている臓器または組織において手術を行う必要がある。拍動しているヒトの心臓は、心臓が動いている間に、非常に正確で、時には複雑な手術および処置を必要とし得る臓器の一例である。拍動している心臓にこのような手術を施すことは、さらに一層困難であることは明らかである。そのため、外科医の作業を容易にするために心臓を安定させる試みがなされてきた。例えば、拍動している心臓を手術の間に固定位置で保持するための多くの機械的アーム、ホルダ、ポジショナがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓などの動いている標的を固定位置で把持し保持するための負圧式把持システムであって、
-管状体、近位端、および少なくとも1つの遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションを有するカテーテルと、
-管状体と接続された、真空ポンプまたは流体ポンプまたはポンプモータのような負圧発生装置と、
-カテーテルの遠位端を位置決めするように構成された制御ユニットであって、標的に近接して少なくとも1つの遠位開口部を位置決めする際にカテーテルの少なくとも1つの遠位開口部によって標的を把持するために負圧が管状体内で生成されるように負圧発生装置の動作を制御するようにさらに構成された制御ユニットと
を備える、負圧式把持システムに関する。
【0006】
好ましくは、カテーテルは、心臓への経大腿アクセス、経頸静脈アクセス、経大動脈アクセス、経大静脈アクセス、経心尖アクセス、または鎖骨下動脈アクセスによって導入されるように配置された可撓性カテーテルである。したがって、心臓切開の心臓外科手術を回避することができるという意味で、該システムがより低侵襲的に使用され得る。好ましくは、負圧式把持システムは、心臓内部で動作するように配置される。このような構成では、カテーテルの遠位開口部は、標的(例えば、ヒト心臓)に近接して位置決めされ得、負圧生成によって標的を把持する際に、該装置は、組織を穿刺し、標的の内部で動作するように導入され得る。本発明のシステムは、拍動している心臓における手術を直接的に支援することが可能である。比較的小さく薄いカテーテルを有し、遠隔操作可能な遠位セクションを有することによって、例えば、カテーテルを大腿静脈もしくは大腿動脈から挿入することによって、外部からより低侵襲的に手術することが可能である。好ましくは、遠位セクションは、遠隔操作可能であり、コンピュータ支援制御および/または該装置のハンドル内の機構によって精密に操縦可能であり、好ましくは、遠位端は、例えば、撮像モダリティによってリアルタイムで追跡され得る。したがって、遠位セクションは、超音波またはX線方式の撮像システムによって直接追跡され得る、または代替的に、その位置を制御システムにシグナリングするための要素が遠位セクションにさらに設けられ得る。
【0007】
さらに、本発明者らは、負圧式把持装置が負圧機能によって標的に係止されたときに標的上で手術が行われる場合、カテーテルの遠位先端が処置ステップの標的である組織に対して安定され得、組織と装置との間の所望の関係が動的環境において維持され得る限り、心臓は身体または周囲の身体の一部/構造に対して完全に安定されなくてもよいことに気付いた。したがって、本開示の把持システムの一実施形態によれば、負圧式装置は、この処置の利点を達成するために心臓に対して固定される。遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、組織の特定の領域に対して牽引力を加えるか、または組織の特定の領域を安定させるために、剛性構成で係止され得るが、カテーテルの残りの部分は、可撓性にされ得る。そのためには、遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、遠位端の動きを制御するためのテンドンを備え得、好ましくは、テンドンは、管状体から遠位端セクションに沿って延在する。
【0008】
制御ユニット自体は、カテーテルとは別個のユニットとしてシステムに含まれ得、カテーテルの近位ハンドルに組み込まれ得、またはカテーテル・ハンドル装置構造全体に組み込まれ得る。後に挙げたこれらの一体型形態では、制御スイッチ、センサからの圧力データ、信号処理、ユーザへのフィードバックならびに警告、および弁機能のような流体および負圧の制御が、該装置の近位ハンドルおよびカテーテル要素に含まれる。例えば、制御ボタンおよびデータ処理チップがハンドルに組み込まれ得、弁機能および警告灯がカテーテルに含まれ得る。
【0009】
拍動している心臓に近接して、または拍動している心臓内で該装置を用いて手術する場合、標的に十分近接して遠位開口部を位置決めすることは難しい作業であり得る。結果として、標的を把持するために管状体内に負圧が生成されたときに、開口部が対象の組織を把持しない可能性がある。したがって、該装置は、好ましくは、カテーテル内の圧力を測定するための圧力センサを備える。次いで、遠位端を位置決めするための制御ユニットは、手術の間に吸引される血液量を制限するために所定時間、可撓性カテーテル内の測定圧力が所定の圧力閾値未満で維持されない場合に、負圧が遮断または解除されるように動作を制御するようにさらに構成され得る。失血のリスクをさらに減らすために、該システムは、ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を運ぶためのフラッシュ容器をさらに備え得、前記容器は、可撓性カテーテルの管状体に接続される。把持ステップを実施した後、成功または失敗であっても、カテーテルおよび負圧システムに引き込まれた血液は、患者の体内へ押し戻されるかまたは流されて戻され得る。好ましくは、その後、制御ユニットは、この機能を制御し、これは、例えば、管状カテーテルへの接続部によって実現され得、制御ユニットによって制御される電気モータまたは弁ポンプは、フラッシングプロセスを制御する。
【0010】
本開示はさらに、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓または心臓組織などの動いている標的を装置に対する固定位置で把持し保持するための方法であって、
-管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の端部セクションを有するカテーテルを有する装置を提供するステップと、
-遠位端を遠隔で操縦することによって、遠位開口部を標的に近接して位置決めするステップと、
-管状体内に負圧を生成するステップと、
-所定時間、管状体の圧力を測定するステップと、
-測定された圧力が所定時間より長い時間にわたって、所定の圧力閾値未満を維持する場合に、管状体内の負圧を維持して標的を保持し、そうでなければ負圧を解除するステップと
を含む、方法に関する。標的はさらに、他の組織を含み得、さらに拍動していない心臓を含み得る。
【0011】
本開示はさらに、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓または心臓組織などの動いている標的を装置に対する固定位置で把持し保持すると同時に、同じ装置または関連装置の負圧把持機構によって、装置に対する次の固定位置で、少なくとも1つの追加の標的(または同じ標的の第2の位置)を位置決めし、把持し、保持するための装置および方法に関する。次に、第1の標的に対して追加の標的を把持する手順は、少なくとも1回繰り返されて、制御され決定された方法で把持位置を次の標的まで漸増的に移動させ得る。一実施形態では、負圧式把持システムは、遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションを備える、少なくとも2つの個々に制御される負圧把持機構を備える。負圧式把持システムは、
-第1の負圧把持機構に対して、遠位端を遠隔で操縦することによって、第1の位置において標的に近接して第1の遠位開口部を位置決めするステップと、
-管状体内に負圧を生成するステップと、
-所定時間、管状体内の圧力を測定するステップと、
-測定された圧力が所定時間より長い時間にわたって、所定の圧力閾値未満を維持する場合に、管状体内の負圧を維持して標的を保持し、そうでなければ負圧を解除するステップと、
-標的上の第2の位置に、遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションを備える第2の負圧把持機構のための把持手順を繰り返すステップと
を実行するように構成され得る。あるいは、アンカー、例えば、マイクロ鉗子、締結具、またはねじを使用して、カテーテルを第1の位置に取り付け、その後、第1の遠位開口部を第2の位置に移動させてもよい。この装置および/または方法を使用することによって、該装置をある位置から別の位置に移動させることができる。第1および第2の負圧把持機構の位置決めおよび把持を交互に繰り返すことによって、非常に制御された方法で、標的部位の上または標的部位に沿って(「歩行」させるによって)装置を移動させることが可能である。
【0012】
該方法は、本開示の負圧式把持装置およびシステムの任意の実施形態を使用して実施され得る。特に、該装置は、第1のステップにおいて、ヒトまたは動物の心臓にアクセスするために、経大腿的に導入され得る。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】標的を把持し保持するための本開示の負圧式把持システムの一実施形態を示す図である。
【
図2】標的を把持し保持するための本開示の負圧式把持システムの別の実施形態を示す図である。
【
図3】管状体内に負圧を発生させるためのピストンの一実施形態を示す図である。
【
図4】管状体内に負圧を発生させるためのピストンの別の実施形態を示す図である。
【
図5】遠位セクションが遠位開口部を通して標的に(高周波のような)エネルギーを印加するための要素を備える、カテーテルの一実施形態を示す図である。
【
図6】ステープル、クリップ、または締結具が負圧によって引き込まれた組織を固定して、例えば、弁尖または標的組織をリモデリングする、ステープル留め機能を有するカテーテルの一実施形態を示す図である。
【
図7】本開示の負圧式把持装置を使用して標的に螺着または繋留するプロセスを示す図である。
【
図8】圧力制御式針を有する、本開示の負圧式把持システムの一実施形態を示す図である。
【
図9】圧力制御式中空針と注入される物質を含むチャンバとを有する、本開示の負圧式把持システムの一実施形態を示す図である。
【
図10】本開示の負圧式把持システムの一実施形態を示す図である。
【
図11】螺旋状アンカーおよび任意選択的に縫合糸を標的に固定または繋留するための機構を備えるカテーテルの一実施形態を示す図である。
【
図12】螺旋状アンカーおよび任意選択的に縫合糸を標的に固定または繋留するための機構を含む、カテーテルのさらなる実施形態を示す図である。
【
図13】カテーテル内部でツールを操作するための操作ユニットを有する、本開示の負圧式把持システムのさらなる実施形態を示す図である。
【
図14】カテーテルが螺旋状アンカーを固定または繋留し、テザーを調節するための機構を備える、僧帽弁腱索修復機能を有するカテーテルのさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションを有するカテーテルに関する。好適な実施形態では、カテーテルは、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓などの動いている標的を固定位置で把持し保持するための負圧式把持システムの形態で提供される。カテーテルは、真空ポンプ、流体ポンプ、またはポンプモータのような負圧発生装置に接続されるように配置され得る。負圧発生装置は、典型的には、管状体の近位端に接続される。可撓性遠位端セクションは、好ましくは、カテーテルの遠位端を位置決めするように構成された制御ユニットによって、遠隔操作可能である。制御ユニットはさらに、カテーテルの遠位開口部を標的に近接して位置決めしたときに遠位開口部によって標的を把持するために負圧が管状体内で生成されるように、負圧発生装置の動作を制御するようにさらに構成され得る。カテーテルの特徴への言及はいずれも、カテーテル単独または負圧式把持システムのいずれかに関連する特徴と考えられ得る。当業者には理解されるように、本開示で説明される特徴のいくつかは、厳密には負圧式把持システムに関連した特徴ではない。
【0016】
標的に近接して配置された後、説明されているように、負圧が標的を把持し保持し得る。したがって、一実施形態では、本発明は、例えば、大腿動脈、大腿静脈、または血管系への他のアクセス経路に導入され得る、可撓性カテーテルを備えるシステムであって、先端が遠隔制御され、把持手順後のシステムが管状体に対する固定位置で標的を保持するように構成される、システムと考えられ得る。本発明者らは、心臓などの動いている標的上でカテーテルを通して手術するために、標的は、カテーテルに対して係止される必要があるが、必ずしも、例えば、周囲組織に対しては係止される必要はないことに気付いた。動いている標的上で手術するための従来の固定ツールは、典型的には剛性であり、固定構造体に対して標的が動けないように物理的に標的を係止する。本発明は、この意味において、より柔軟なアプローチを可能にする。該システムは、必要な限り、例えば、かなりの心周期にわたって、または所与の手術が実行されるまで、固定位置で心臓または心臓の一領域を保持するように構成され得る。該システムは、カテーテルの管状体内に内側管状部材を備え得る。好ましくは、内側管状部材は、カテーテルの近位端から挿入され得る。これは、典型的には、カテーテルが正しく位置決めされたときに行われ得る。内側管状部材は、例えば、縫合糸またはカテーテルの遠位端で使用される任意の追加のツールを提供し得る。したがって、該システムは、カテーテルの内部でツールまたは機能を操作するように構成された操作ユニットをさらに備え得る。このような操作ユニットの一例が、
図13に示されている。本開示が「真空」に関連する限り、この用語は、一般に、大気圧よりはるかに低い圧力と表し得る。本発明に関して、「真空」および「負圧」は、カテーテル内の圧力がカテーテルの外側、特に、遠位開口部の外側よりも低いという意図で、少なくとも部分真空(不完全真空)として広く解釈される。
【0017】
遠位開口部は、カテーテルの遠位端近くの少なくとも1つの開口部と考えられ得る。一実施形態では、遠位開口部は、管の開放端であり、例えば、管の実質的に円形の開放端である。別の実施形態では、遠位開口部は、遠位端セクションの側壁の開口部である。
【0018】
一実施形態では、カテーテル装置は、15mm未満、好ましくは10mm未満、より好ましくは7mm未満、さらに好ましくは4mm未満の外径を有する。カテーテルは、カテーテルの開放端であり得る近位端を有し、近位端は典型的には負圧発生装置に接続される。管状体は、可撓性管であり得、可撓性カテーテルの近位セクションを構成し得る。次に、管状体は、遠位端セクションに接続されるか、または遠位端セクションにシームレスに変形される。このことにより、遠位端は遠隔操作可能かつ可撓性の部分であり得るが、管状体は、導入されると、通された静脈、動脈、または中隔壁のような解剖学的特徴によって所定位置で、ある程度保持され得る管であり得る。
把持方法、圧力センサ
【0019】
上述したように、本開示はさらに、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓などの動いている標的を装置に対する固定位置で把持し保持するための方法に関する。このようなプロセスでは、本開示のカテーテルおよび負圧式把持システムの任意の実施形態が使用され得る。
【0020】
記載されている方法を実施するためには、システムのカテーテルは、カテーテル内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサを備え得る。少なくとも1つの圧力センサは、遠位端セクションに配置され得る。圧力センサは、原理的には、代替的に、把持を試みた後にシステムが標的を把持したかどうかを示す圧力をシステムが測定するように、管状体と接続されている任意の場所に配置され得る。複数の圧力センサはさらに、カテーテル上および患者の循環系における異なる点の様々な所望の圧力読み取りを行うために、カテーテル上の様々な位置に配置され得る、または組み込まれ得る。例えば、管状体内の第1のセンサと、カテーテルの遠位端の第2のセンサとが存在し得る。前記センサは、様々な位置の圧力、例えば、障害物を検出するためのカテーテルシステム内の圧力差、および、システムとカテーテルの外側(例えば、患者に対して)の流体圧力との圧力差を測定するために使用され得る。典型的には、把持する試みが成功した場合は、低圧が維持されるが、把持手順が失敗した場合は、システムは吸引を維持し、圧力は成功した場合ほど低下しない。このようなシナリオは、患者の血液を激減させる可能性がある。したがって、本開示のシステムの一実施形態では、制御ユニットはさらに、可撓性カテーテル内の測定された圧力が所定時間、所定の圧力閾値未満で維持されない場合に、負圧が遮断または解除されるように動作を制御するように構成される。
失血防止
【0021】
体内、例えば、拍動している心臓の近くの真空/負圧によって動作する装置は、患者からの望ましくない血液量を吸引するリスクを抱え得る。本開示のシステムおよび方法は、吸引プロセスを制御することによって失血を防止することができる。圧力の制御に加えて、該システムは、ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を運ぶためのフラッシュ容器をさらに備え、前記容器は、可撓性カテーテルの管状体に接続される。1回または複数回の標的を把持する試みが成功または失敗した後に、管状体は、部分的にまたは完全に血液で満たされ得る。このことにより、フラッシュ容器は、失血を低減するために、患者の体内へ血液を押し戻し、および/または流し戻すように制御され得る。一実施形態では、該システムの制御ユニットはさらに、把持手順の間に吸引された血液が、把持手順が成功または失敗した後に、ヒトまたは動物の体内へ流し戻されるように、フラッシュ容器を制御するように構成される。好適な実施形態では、該システムはさらに、制御された方法で、液体を前方へ、この場合には管状体内へ押しやる、さらには患者の体内へ押し戻すように配置された電気モータまたはポンプを備える。あるいは、液体は、流体圧力またはガス圧力によって制御され得る。このことにより、フラッシュ容器からの流体の流れは、制御ユニットによって制御される電気モータまたはポンプによって実現され得る。
【0022】
代替の実施形態では、ピストンが負圧発生装置として使用される。このようなピストンは、ピストンの後退が管状体内に負圧を発生させるように配置され得る。ピストンはさらに、後退位置から前方へのピストンのさらなる移動が、把持手順の間、吸引された血液をヒトまたは動物へ押し戻すように配置され得る。ピストンは、手動でまたは自動で操作され得る。
【0023】
把持プロセスの後に、吸引された血液を患者の体内へ流し戻す/押し戻すために、該システムは、把持プロセスの間に吸引された血液量を測定するためのセンサまたは他の機能をさらに備え得る。
【0024】
この目的に適した任意のフラッシング液が使用され得る。これは、流体の組み合わせ、さらに薬物、薬剤および治療薬の送達を含み得、例えば、抗凝固薬または律動管理薬が含まれ得る。典型的には、生理食塩水および/またはグルコースが使用され得る。フラッシュ容器は、任意のこのような液体を収容し得る。
遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクション
【0025】
標的に直接アクセスせずに、カテーテルの遠位端を標的の近くに配置するために、可撓性遠位端セクションが使用され得る。このような可撓性遠位端セクションは、非常に小さいセグメント(例えば、10mm)から、より長いセグメント(例えば、50mm)まで変化し得る。好ましくは、遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、コンピュータ支援制御なしで、装置のハンドル内に生成されている機械力によって操縦可能である。遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、遠位端の動きおよび関節を制御するためのテンドンまたは他の機械的要素(例えば、カム、回転壁セクション、作用物質、空気圧もしくは油圧)を備え得、好ましくは、テンドンは、管状体から遠位端セクションに沿って延在する。遠位端セクションはさらに、制御ユニットによって制御される、好ましくは複数のセグメントおよび/または複数のジョイントを有する、ロボット管状アームのようなロボットセクションを備え得る。好ましくは、遠位端セクション、特に、遠位開口部は、例えば、超音波、X線方式の撮像技術または他の撮像技術に基づく撮像システムを用いて、遠位開口部の正確な位置を追跡しながら制御される。このような撮像システムは、患者の外部もしくは内部に存在し得る、または、カテーテル装置に組み込まれ得る(例えば、カテーテルに組み込まれた超音波撮像)。該装置の配向をさらに改善するために、カテーテルは、先端を別の装置または構成要素に対して配向するために、遠位にセンサをさらに備え得る。センサは、例えば、別の装置もしくは構成要素からの近接電流および/または磁場の存在を感知するように構成されたインピーダンスセンサ、磁束場コイル、または磁石であり得る。この実施形態から利益を得る応用の一例は、僧帽弁輪形成または僧帽弁形成のプロセスであり、リングが冠状静脈洞の中に挿入され、間接的な弁輪形成が行われる。このようなシナリオでは、本開示の負圧式把持システムが僧帽弁の内側で動作し、一方でリングは弁の外側に配置されて、僧帽弁および僧帽弁輪に伝達される張力または締め付け力を発生されることが可能である。
【0026】
該システムが、管状体内部の真空によって標的をうまく把持できたときに可撓性遠位端セクションを係止することができることは、有利であり得る。したがって、カテーテルおよびシステムの一実施形態では、遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、剛性構成で係止され得る。この点に関して、可撓性の遠位端セクションを剛性構成で係止するために、テンドンおよびロボット構造の実施形態の両方が使用され得る。該装置は、剛性構成と、遠位端セクションが可撓性である構成との間で選択するためのスイッチをさらに備え得る。
遠位端セクションの動作
【0027】
本開示のカテーテルおよびシステムの1つの利点は、動いている標的に対して位置係止され得るカテーテルを通して手術が実行され得るという点である。このことにより、手術中に、標的が自由にまたは限定的に動き続けることが可能であり得る。特に、さらなる機器がカテーテルの内部またはカテーテルに関連した位置に配置され、カテーテルが、この機器から見て、標的に対して真空によって位置係止されている場合、動いている標的も、固定標的と見なされる。
【0028】
一実施形態では、遠位端セクションは、標的上で動作するように配置されたさらなるツールのための端部セクションチャンバを備える。この種の機器は、例えば、高周波、超音波およびレーザエネルギーもしくは凍結療法のようなエネルギーを標的に伝達するための接触要素であり得る。接触要素は、好ましくは、遠位開口部に配置される。該装置はさらに、遠位開口部に配置された接触要素に接続された管状体内のワイヤを備え得、接触要素は、活性高周波エネルギーのようなエネルギーを標的に伝達するように構成され、好ましくは、標的は、心臓組織のような組織である。接触要素は、管状体を遮断すべきでなく、管状体を通して真空を生成する必要がある。一実施形態では、接触要素は、遠位開口部の中心に配置され、および/または接触要素は、遠位開口部全体を覆う。この実施形態はさらに、ワイヤを介して接触要素に対してエネルギーを生成するように構成されたエネルギー発生器を備え得る。本技術の使用について、以下の方法および応用においてさらに説明する。
【0029】
さらなる実施形態では、カテーテル壁自体は、上述したようにエネルギーを伝達するための要素である。この場合、前述の実施形態のように、エネルギー伝達要素は、単極性、多極性、および多相のエネルギー伝達を可能にするために、異なる極性および位相のセグメントを含み得る。
【0030】
カテーテルの遠位端に含まれ得る有用な機構の1つは、遠位開口部を通して引き込まれた組織を保持するための機構である。このような把持および/または切断機構は、遠位開口部の両側に配置された第1の把持/切断部および第2の把持/切断部を備え得る。組織がカテーテル内に吸引されたときにこれらの部分が互いに向かって移動される場合、これらの部分は、組織を機械的に係止することができる。この機構は、ワイヤを用いて、またはロボット制御によって操縦され得る。該機構は、吸引され係止された組織の手術/処置またはその組織を貫通した手術/処置を可能にし得る。例えば、該装置およびシステムは、外科用縫合糸、テザー、締結具、クリップ、メッシュ、織物材料、インプラント、または薬物送達装置を、管状体を通して吸引された組織内で遠隔で繋留するための機構をさらに備え得る。このような応用は、真空方式の保持に加えて、さらなる機械的固定により利益を得ることができる。カテーテルの管状体内に内側管状部材を有することが有用であり得る。内側管状部材は、例えば、縫合糸を提供し得る、または本開示に記載されている機構のいずれかの他の機構を提供し得る。任意選択で、縫合糸が2つの標的に締結され、それに応じて長さが調節される場合、縫合糸は、内側管状部材から入り、内側管状部材とカテーテルとの間に画定された空間に戻り得る。
【0031】
一例として、同じ種類の機構を使用して、心臓の弁のセグメントのような組織をステープル留めすることができる。一実施形態では、該装置は、遠位開口部にステープル留めまたは締結機構をさらに備える。ステープル留め機構は、遠位開口部の両側に配置された第1のステープル留め部および第2のステープル留め部を備え得、遠位開口部を通して吸引された組織は、第1のステープル留め部および第2のステープル留め部を互いに向けて移動させ、金属、ポリマーまたは生体吸収性ステープル、クリップ、ファスナ、成形ワイヤまたはねじ山を組織に通すことによってステープル留めされる。2つの部分はさらに、鋭利に作られた場合には、吸引された組織を切断するのに使用され得る。締結機構は、螺旋状アンカーを備え得る。縫合糸は、締結機構に取り付けられ得る。一例として、縫合糸は、螺旋状アンカーに取り付けられ得る。アンカーが標的に、例えば組織に締結される場合、縫合糸も取り付けられ、その後切断され得る。縫合糸は、内側管状部材内に配置された第1の側と、内側管状部材とカテーテルとによって画定された空間を通って戻る第2の側とを備え得る。
【0032】
カテーテルおよび負圧式把持システムは、管状装置の内部に穿刺機構をさらに備え得、穿刺機構は、生成された負圧によって吸引された組織を穿刺するように配置され、好ましくは、穿刺機構は、遠隔操作可能である。穿刺機構は、好ましくは、可撓性遠位端セクションに対する固定位置に取り付けられる。穿刺機構は、典型的には、針を備える。針は、可撓性カテーテルを通して軸方向に変位することが可能なワイヤ、管、または機械要素によって制御され得る。あるいは、針は、管状体を通るチャネル内の流体によって制御される。したがって、制御ユニットは、圧力上昇が針を前方に移動させ、圧力低下が針を後方に移動させるように、チャネル内の圧力を制御するように構成され得る。
【0033】
針の変形形態は、遠隔操作される中空針またはカニューレであり、それを通して、係止位置にある標的に物質が注入され得る。中空針またはカニューレは、注入される物質を含むチャンバに接続され得る。チャンバ内の物質は、チャンバの内容物を前方に押すポンプまたはプランジャによって、標的内へ注入され得る。プランジャは、同様に、すなわち、ワイヤによって、または流体を含むチャネルによって、およびプランジャを移動させるためにチャネル内の圧力を制御するための制御ユニットによって、針に接続され得る。このような構造は、中空針およびプランジャの前方移動が2段階で制御され、第1のステップで中空針が前方に移動され、第2のステップでプランジャが前方に移動され、そのことにより物質が注入される、2段作動機構を有し得る。このようなプロセスは、
図9A~
図9Dに示されている。
標的を把持し保持するための方法、システムの使用および応用
【0034】
本開示はさらに、標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓などの動いている標的を装置の少なくとも一部に対する固定位置で把持し保持するための方法に関する。好ましくは、該方法は、本開示のカテーテルおよび標的を把持し保持するための負圧式把持システムの一実施形態を使用して実施される。該方法は、標的が把持されると、標的上で異なる操作を実行するための追加のステップを含み得る。該方法は、
-管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の端部セクションを有するカテーテルを有する装置を提供するステップと、
-遠位端を遠隔で操縦することによって、遠位開口部を標的に近接して位置決めするステップと、
-管状体内に負圧を生成するステップと
を含み得る。提供される装置は、管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の端部セクションを有するカテーテルを有する本開示の装置またはシステムの任意の実施形態であり得る。
【0035】
確実に患者の血液が激減しないように、該方法はさらに、把持手順の間に、
-所定時間、管状体内の圧力を測定するステップと、
-測定された圧力が所定時間より長い時間にわたって、所定の圧力閾値未満を維持する場合に、管状体内の負圧を維持して標的を保持し、そうでなければ負圧を解除するステップと
を含み得る。
【0036】
該方法はさらに、ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を用いて、該装置の遠位端に向かって管状体をフラッシングし、そのことにより、把持および保持手順が成功または失敗した際に、血液をヒトまたは動物の体内へ流し戻すことができるようにするステップをさらに含み得る。代替的に、または組み合わせて、該方法は、把持および保持手順が成功または失敗した際に、吸引された血液をヒトまたは動物の体内に押し戻すか、または再注入するステップをさらに含み得る。一例として、ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を運ぶためのフラッシュ容器であって、可撓性カテーテルの管状体に接続されたフラッシュ容器が、この目的のために使用され得る。その後、該方法は、把持手順が成功または失敗した後に、流体を管状体内および患者の体内に押し込むために電気モータを制御するステップを含み得る。このような手順は、患者の体内に流し戻される必要がある血液の量を知るために、吸引された血液の量の測定を含み得る。該方法が、例えば、処置および/または手術のさらなる後続ステップを含む場合、フラッシングプロセスは、追加のステップの後に適用され得る、すなわち、シーケンスは、例えば、把持成功-処置-フラッシングとなり得ることを理解されたい。別の可能なシーケンスは、把持失敗-把持成功-処置-フラッシングとなる。
【0037】
標的を把持し保持するための方法は、遠位開口部を位置決めする前に、ヒトまたは動物の静脈または動脈によって該装置を導入するステップをさらに含み得る。これは、可撓性カテーテル、例えば、心臓にアクセスするために経大腿的に導入されるように配置された可撓性カテーテルを使用すれば可能である。比較的小さく薄いカテーテルおよび遠隔操作可能な遠位セクションを有することによって、例えば、カテーテルを大腿静脈に挿入することによって、外部からより低侵襲的に手術することが可能である。
【0038】
上述したように、該方法はさらに、標的に治療、処置または手術を施すステップを含み得る。次に、このようなプロセスの例を、本開示の負圧式把持システムおよび方法に関連して説明する。
【0039】
一実施形態では、該方法は、遠位開口部に配置された接触要素を通して心臓の僧帽弁輪および組織にエネルギーを印加するステップをさらに含む。したがって、該方法は、僧帽弁輪形成のための方法であると言える。僧帽弁輪形成は、2つの異なる方法で実施され得る。僧帽弁輪にエネルギー(高周波、温熱、冷熱、放射線、超音波、マイクロ波、および他の形態)を印加することによって、弁輪は収縮し、そのことにより僧帽弁輪縮小形成を実施する。エネルギーを印加するためには、エネルギー源は、より長い時間、弁輪の近くにある必要があり、これは、本開示の方法を適用することによって達成され得る。さらに、僧帽弁輪形成は、アンカーとして弁輪内に連続ねじを配置し、次にワイヤでねじをまとめて引っ張る、または代替的に、縫合糸またはワイヤループを組織に通して組織を一緒に引き寄せることによって実施されることができる。該方法は、カテーテルによる弁輪および心臓組織の補剛と収縮とを容易にし得る。僧帽弁輪および心臓組織のセグメントを順次捕捉することによって、エネルギーは、弁輪の全長にわたって送達され得る。該手順は
(1)該装置を大腿静脈または頸静脈に導入するステップと、
(2)ガイドワイヤを使用して右心房に入るステップと、
(3)例えば、内針を使用して心房中隔を穿刺するステップと、
(4)該装置の遠位端で中隔を横断するステップと、
(5)超音波誘導により、上部の開口部が弁輪の正確なセグメントの上方に位置するように、該装置を配置するステップと、
(6)該装置が適切な点で固定されるように負圧を作動させるステップと、
(7)高周波または他のエネルギー源を作動させるステップと、
(8)負圧を遮断するステップと、
(9)弁輪の長さが処置されるまで、例えば10~15回、反復するステップと、
(10)該装置を抜き取るステップと
を含み得る。
【0040】
ステップ5~6は、動いている標的を把持し保持するための本開示の方法に対応し得る。
【0041】
一実施形態では、該方法は、僧帽弁の弁部分をステープル留めまたは締結するステップをさらに含む。この方法は、例えば、僧帽弁尖逸脱に関連して使用され得る。したがって、該方法は、僧帽弁輪形成の処置のための方法であると言える。
【0042】
本開示の方法は、拍動している心臓に対して行われるカテーテルによる切除を容易にし得る。逸脱した僧帽弁の一部を捕捉することによって、ステープル留め技術を用いて、僧帽弁を縮小することができる。該手順は、
(1)該装置を大腿静脈または頸静脈に導入するステップと、
(2)ガイドワイヤを使用して右心房に入るステップと、
(3)例えば、内針を使用して心房中隔を穿刺するステップと、
(4)該装置で心房中隔を横断するステップと、
(5)超音波により、側方の開口部が逸脱したセグメント(通常はP2セグメント)の上に配置されるように、該装置を配置するステップと、
(6)弁の一部が開口部に吸引されるように負圧を作動させるステップと、
(7)ステープルまたは機器の締結機能を使用して、弁のセグメントを縮小するステップと、
(8)該装置を抜き取るステップと
を含み得る。
【0043】
ステップ5~6は、動いている標的を把持し保持するための本開示の方法に対応し得る。
【0044】
特に、
(1)装置を大腿静脈に導入するステップと、
(2)側方の開口部が処置される特定の部位に近接して位置するように、遠位端装置を配置するステップとは、
例えば、組織がカテーテル内に吸引されたときに互いに向かって移動される遠位開口部の両側に配置された第1の把持部および第2の把持部を用いて、機械的に遠位開口部を通して吸引された組織を保持/係止するさらなるステップとの組み合わせにおいて、重要であり得る。
【0045】
この位置から、さらなるステップが実行され得る。一実施形態では、該方法は、医療用部品を標的に繋留する、または取り付けるステップをさらに含む。これは、例えば、ペースメーカーリード挿入または腱索交換に関連して使用され得る。
【0046】
腱索断裂は、僧帽弁の一般的な疾患である。腱索は、僧帽弁を繋ぎ止めて、僧帽弁が広がって機能不全になるのを防ぐ構造である。腱索が断裂した場合、僧帽弁は適切に閉じなくなり、機能不全になる。
【0047】
本開示の方法は、腱索交換のために使用され得る。この実施形態では、該方法は、
(1)該装置を大腿静脈または頸静脈に導入するステップと、
(2)ガイドワイヤを使用して右心房に入るステップ、
(3)心房中隔を穿刺するステップと、
(4)該装置で心房中隔を横断するステップと、
(5)超音波により、端部が乳頭筋上に位置するように該装置を配置するステップと、
(6)乳頭筋が捕捉されるように負圧を作動させるステップと、
(7)ねじ、アンカー(例えば、螺旋状アンカー)、または他の固定技術を使用して縫合糸を乳頭筋内で固定するステップと、
(8)負圧を解除するステップと、
(9)断裂腱索を有する僧帽弁の弁尖へ該装置を移動させるステップと、
(10)僧帽弁の弁尖が捕捉されるように負圧を作動させるステップと、
(11)ねじ、アンカー、または他の締結技術を使用して、僧帽弁尖内で縫合糸を固定するステップと、
(12)負圧を解除するステップと、
(13)弁が十分に機能することができるように2本の縫合糸の長さを調節するステップと、
(14)縫合糸の長さを係止するステップと、
(15)縫合糸を切断するステップと、
(16)該装置を抜き取るステップと
を含み得る。当業者であれば理解できるように、ステップは必ずしも上記の順序で実行される必要はない。
【0048】
したがって、本開示はさらに、心臓の僧帽弁腱索修復を実行するための方法であって、
-管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の端部セクションを有するカテーテルを有する装置を提供するステップと、
-該装置を大腿静脈または頸静脈に導入するステップと、
-遠位端を遠隔で操縦することによって、遠位開口部を標的に近接して位置決めするステップと、
-ガイドワイヤを使用して心臓の右心房に入るステップと、
-心臓の心房中隔を穿刺して、心房中隔を横断するステップと、
-例えば超音波によって、端部が乳頭筋上に位置するように、該装置を配置するステップと、
-管状体内に負圧を生成し、そのことにより心臓の乳頭筋に遠位開口部を係止するステップと、
-例えば螺旋状アンカーを繋留することによって、乳頭筋に縫合糸を固定するステップと、
-負圧を解除して、断裂腱索を有する僧帽弁の弁尖へ該装置を移動させるステップと、
-管状体内に負圧を生成し、そのことにより僧帽弁の弁尖に遠位開口部を係止するステップと、
-例えば螺旋状アンカーを繋留することによって、僧帽弁尖に縫合糸を固定するステップと、
-弁が十分に機能することができるように2本の縫合糸の長さを調節するステップと
を含む方法に関する。
【0049】
したがって、本開示はさらに、心臓の僧帽弁腱索修復を実施するための器具に関し、該器具は、本開示の負圧式把持システムの任意の実施形態を備える。
【0050】
心臓の僧帽弁腱索修復を実行するプロセスにおいて、僧帽弁腱索修復のためのテザーを調節するステップは、特に困難であり得る。本開示はさらに、
図14に例示されている縫合糸またはテザーの調節を行うための機構をさらに備える、負圧式把持システムの一実施形態に関する。該装置は、テザーが貫通するスネアの形態の内側管状部材と、スネアに沿って押し込まれて、例えば、テザー/縫合糸を係止するための螺旋状アンカーに対して係止要素を締結することができる外側ロックプッシャシースとを有する。カテーテル内部のスネアは、好ましくは、テザーの緊張および係止の間に弁尖を妨げるのを最小限に抑えながら、弁機能および弁尖の密着が拍動している心臓で観察され得るように、可能な限り薄く設計され得る。スネアのみが手術中に弁を通過し、スネアが十分な薄さである場合、薄いスネアに対する弁尖の密着を十分に視認できる。このことは、拍動している心臓に対して処置を行う利点をより十分に維持し、テザーの長さ調節によって達成される弁の動態を観察する能力を向上させ得る。この装置を使用して心臓の僧帽弁腱索修復を実行するプロセスは、
-第1の螺旋状アンカーを弁尖内に配置し、そのことにより第1のテザー取付点を形成するステップと、
-第2の螺旋状アンカーを乳頭筋内に配置して、第2のテザー取付点を形成するステップと、
-所望の弁尖の機能および密着が達成されるまで残りのテザー延長部が第2の螺旋上アンカーの上を滑るように、残りのテザー延長部に張力を加えることによって、スネアを介してテザーの長さを摺動可能に調節するステップと、
-スネアの端部で、かつ第2の螺旋状アンカーの上でテザーロックを位置決めするステップと、
-所望のテザーの長さになると、ロックプッシャシースによって係止の外側部分に圧縮力を摺動可能に印加しながらスネアを緊張状態で保持することにより係止の内側部分を安定させることによって、テザーを第2の螺旋状アンカーに係止するステップと
を含み得る。係止は、例えば、ラチェットまたはスナップフィット機能などによって係止され得る内側係止要素および外側係止要素を有することによって実施され得る。
【0051】
該方法は、遠位開口部において管状装置内部の穿刺機構を使用して標的を穿刺するステップをさらに含み得る。説明したように、穿刺機構は、遠位開口部を通して遠位端セクション内部に配置された針の使用を伴い得る。穿刺は、標的を把持した後の処置ステップとして、または、例えば、心房中隔を穿刺し、続いて装置で中隔を横断することによって、心臓内の特定の位置に入る手段として、実行され得る。
【0052】
穿刺はまた、中空針によって行われてもよく、穿刺後に、中空針を通して標的内へ物質を注入するステップが続く。
図面の詳細な説明
【0053】
以下では、添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。図面は、例示的なものであり、本開示の負圧式システムおよび方法の特徴のいくつかを例示するためのものであり、本開示の発明を限定するものとして解釈すべきではない。
【0054】
図1は、標的を把持し保持するための本開示の負圧式把持システム(1)の一実施形態を示す。この実施形態は、カテーテル(2)に接続された外部負圧発生装置(7)を有する手持ち式装置を示す。システム(1)は、負圧発生装置(7)に接続された近位端(4)を有する管状体(3)を有するカテーテル(2)を有する。カテーテルは、遠位端(33)の遠位開口部(6)を有する可撓性遠位端セクション(5)を有する。遠位端セクション(5)は、3つの異なる位置で示されている。制御ユニット(8)は、負圧発生装置(7)および遠位端セクション(5)、特に遠位端(33)の位置決めを制御する。管状体(3)内には第1の圧力センサ(9)があり、カテーテル(2)の遠位端には第2のセンサ(9)がある。この手持ち式の実施形態では、該装置は、遠位端セクション(5)の屈曲を制御するためのホイール(36)の形態で遠位端(33)を位置決めするための位置決め制御要素(36)を備える。該実施形態は、圧力センサ(9)からの値に基づいて、把持を試みた後にシステムが標的を把持したかどうかを示すためのフィードバック灯(37)をさらに備える。さらに、負圧を直接作動/解除するための圧力制御ボタン(38)も存在する。レバー(39)は、該装置の遠位端(33)における追加の機能、例えば、ステープル留め/RF処置の作動またはステッチの配置を制御する。該装置は、流体またはRF接続のためのポート(40)および外部の負圧発生装置および圧力出口(41、42)を接続するためのポートを含む、外部のソースおよび装置と通信するためのさらなるポートを有する。実施形態に応じて、該装置はさらに、電気ケーブル(43)と、カテーテル(2)を通して使用され得るガイドワイヤを受容するためのガイドワイヤポート(44)とを備え得る。本開示で説明されているように、手持ち式装置と中央部との間で機能および構成要素の異なる区分化が可能であり、装置/システムの状況および使用に依存する。例えば、ガイドワイヤポート(44)は任意選択であり、把持フィードバックは、該装置上のフィードバック灯ではなく、スクリーン上に表示され得る。
【0055】
図2は、標的を把持し保持するための本開示の負圧式把持システム(1)の別の実施形態を示す。この実施形態では、該システムは、カテーテル(2)への接続部(13)を有するフラッシュ容器(12)を備える。該実施形態は、観察された圧力に基づいて負圧の生成を中断するための手動アクチュエータ(10)を有する制御ユニット(8)を備える。該実施形態は、血液および該装置によって切断された組織を収集するために使用され得るキャニスタ(11)をさらに備える。該システムは、弁(14)をさらに備える。
【0056】
図3は、管状体内に負圧を発生させるためのピストン機構(15)の一実施形態を示す。ピストン機構(15)は、接続部(18)と、ユーザが吸引された血液の量をスケール(17)上で見ることができるチャンバとを有する。ピストン機構(15)は、ばね(16)と、ばね(16)を操作するための手動アクチュエータ(34)とを有する。
図3Aでは、ばねは、圧縮位置にある。
図3Bでは、ばねは、負圧を発生させるために後退している。ばねが圧縮位置に戻ると、吸引された血液は患者の体内に押し戻され得る。
【0057】
図4は、管状体内に負圧を発生させるためのピストン機構(15)の別の実施形態を示す。チャンバ(19)は、カテーテル(2)と流体連通している。機能は、それ以外は、
図3の機能と同様である。
【0058】
図5は、遠位セクション(5)が遠位開口部(6)を通して標的にエネルギー(例えば、高周波)を印加するための要素(20)を備える、カテーテル(2)の一実施形態を示す。
図5Cでは、要素(20)が遠位開口部(6)の中央に配置されて、負圧を生成するために通路(22)が開放された状態であることが分かる。要素(20)は、カテーテル内のケーブル(21)を介して接続される。
図5Dは、要素(20)がカテーテル内部に生成された負圧によって保持された標的(23)にエネルギーをどのように印加するかを示している。
【0059】
図6は、ステープル留め機能を有するカテーテルの一実施形態を示す。管状体(3)は、遠位開口部を有する遠位端セクション(5)内へシームレスに延在する。吸引された組織(23)を保持し、この場合、その組織(23)をステープル留めするための第1の把持/ステープル留め機構(24)および第2の把持/ステープル留め機構(25)の2つの機構が存在する。同じ機構が、さらなる処置のために、吸引された標的を機械的に保持するために使用され得る。遠位開口部は、管の遠位端の遠位開口部、すなわち管の開放端上に、同じように配置され得る。螺旋状のねじまたはアンカーを使用して組織(23)に固定する、または取り付けることも可能である。
【0060】
図7は、本開示の負圧式把持装置を使用して、標的に螺着または繋留するプロセス(この場合、腱索交換)を示す。
図7Bでは、乳頭筋が捕捉され、縫合糸(26)がねじおよび/またはアンカー(27)を使用して固定される。
図7Cでは、該装置の遠位開口部が、断裂腱索を有する僧帽弁の弁尖に移動され、縫合糸(26)が、ねじ、アンカー、または他の技法を使用して僧帽弁尖内に固定される。
図7Dでは、2本の縫合糸の長さが固定される。
図7Eでは、縫合糸が切断される。本開示の装置は、
図7Bの位置および
図7Dの位置で、標的に取り付けられ得る。
図7C~
図7Eから分かるように、例えばコイルの形態の螺旋状のアタッチメントを使用して縫合糸(26)を固定することができる。
【0061】
図8は、遠位端セクション(5)に圧力制御式針(28)を有する、本開示の負圧式把持システム(1)の実施形態を示す。カテーテルは、負圧のための通路(30)を有する。負圧が印加されて、標的(23)が吸引され、遠位開口部(6)を通して保持されたときに、針(28)は、流体の圧力を制御することによって、流体連通されるチャネル(29)とチャンバ(31)とを通る流体によって制御され得る。
【0062】
図9は、圧力制御式中空針(28)と標的(23)に注入される物質を含む第2のチャンバ(32)とを有する、本開示の負圧式把持システム(1)の一実施形態を示す図である。負圧が印加されて、標的(23)が吸引され、遠位開口部(6)を通して保持されたときに、針(28)は、流体の圧力を制御することによって、流体連通されるチャネル(29)とチャンバ(31)とを通る流体によって制御され得る。第1のステップにおいて、ばね(28)は、圧力上昇によって圧縮され、標的(23)を穿刺する。第2のステップにおいて、同じ流体がプランジャ(35)を遠位開口部(6)に向かって前方に押し続け、第2のチャンバ(32)の物質を標的の中へ押し込む。
【0063】
図10は、本開示の負圧式把持システム(1)の一実施形態を示す。システム(1)は、負圧発生装置(図示せず)に接続された近位端(4)を有する外側管状体(3)を有するカテーテル(2)を有する。カテーテルは、遠位開口部(6)を有する可撓性遠位端セクション(5)を有する。内側管状部材(45)は、外側管状体(3)の近位側から挿入され得る。該システムはさらに、内側管状部材(45)に挿入されたツールを操作するための操作ユニット(46)を備える。このようなツールは、例えば、螺旋状アンカーならびに/または穿刺ツールならびに/またはクリッピングおよび/もしくは締結ツールならびに/または固定ツールであり得る。この例では、縫合糸(26)は、操作ユニット(46)を介して内側管状部材(45)に入る。
【0064】
図11は、螺旋状アンカー(27)および任意選択で縫合糸(26)を標的(23)に固定または繋留するための機構を備える、カテーテル(2)の一実施形態を示す。遠位端セクション(5)は、組織(23)を吸引するための遠位開口部(6)を有する。
図11Bでは、螺旋状アンカー(27)は、内側管状部材(45)を回転させることによって組織(23)に固定される。
図11Cでは、螺旋状アンカー(27)が組織(23)に締結されている。縫合糸(26)が螺旋状アンカー(27)に、たとえば結び付けられて、取り付けられているので、縫合糸(26)は組織(23)に締結されていると考えられ得る。
【0065】
図12は、螺旋状アンカー(27)および任意選択的で縫合糸(26)を標的に固定または繋留するための機構を備える、カテーテル(12)のさらなる実施形態を示す。この実施形態は、例えば、僧帽弁腱索修復に、特に有用であり得る。
図12Aでは、組織(23)は、遠位開口部(6)を通して吸引される。第1の螺旋状アンカー(27)は、組織(23)に締結される。組織(第1の標的)は、乳頭筋であり得る。
図12Bおよび
図12Cでは、縫合糸(26)は、内側管状部材(45)内に位置する第1の側と、内側管状部材(5)とカテーテル(2)との間に画定された空間を通って戻る第2の側とを有することに留意されたい。このようにして、第2の螺旋状アンカー(27’)は、僧帽弁の弁尖であり得る第2の標的(23’)に取り付けられ得る。
【0066】
図13は、カテーテル(2)内部のツールおよび/または内側管状部材を操作するための操作ユニット(46)を有する、本開示の負圧式把持システム(1)のさらなる実施形態を示す。該実施形態は、
図1の実施形態に類似しているが、カテーテル内の内側管状部材および/またはツールを挿入し、カテーテル内部のツールを操作するための操作ユニット(46)を有する。好ましくは、(外側の)カテーテルは、遠隔操作可能かつ可撓性の遠位部を有し、典型的には負圧に接続されるが、内側管状部材は、カテーテルの遠位端が位置決めされたときに導入され得る。次に、追加の機能を有する内側管状部材が、操作ユニット(46)によって制御され得る。該実施形態は、圧力センサ(9)からの値に基づいて、把持を試みた後にシステムが標的を把持したかどうかを示すためのフィードバック灯(37)をさらに備える。さらに、負圧を直接作動/解除するための圧力制御ボタン(38)と、遠位端(33)を位置決めするための位置決め制御要素(36)とが存在する。操作ユニット(46)は、カテーテル(2)内部の任意の機能、例えば、
図5~
図9および
図11~
図12に記載されている機能を制御するために使用され得る。
【0067】
図14は、僧帽弁腱索修復機能を有するカテーテルのさらなる実施形態を示しており、カテーテルは、螺旋状アンカーを固定または繋留し、テザーを調節するための機構を備える。
図14は、テザー(26)の調節および係止を示している。テザー(26)は、スネア(48)を介して調節され得る。螺旋状アンカー(27)が、標的(23)(例えば、乳頭筋または弁尖であり得る)に取り付けられる。メッシュカバー(49)は、締結位置において螺旋状アンカー(27)を覆う。スネア(48)の外側のロックプッシャシース(47)は、第1および第2の係止要素(50、51)を使用してテザー(26)を螺旋状アンカー(27)に係止するために、スネアに沿って遠位端に向かって押し込まれ得る。
本発明のさらなる詳細
【0068】
(1)標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓または心臓組織などの動いている標的を固定位置で把持し保持するための負圧式把持システムであって、
-管状体、近位端、および少なくとも1つの遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションを有するカテーテルと、
-管状体と接続された、真空ポンプまたは流体ポンプのような負圧発生装置と、
-カテーテルの遠位端を位置決めするように構成された制御ユニットであって、標的に近接して少なくとも1つの遠位開口部を位置決めする際にカテーテルの少なくとも1つの遠位開口部によって標的を把持するために負圧が管状体内で生成されるように負圧発生装置の動作を制御するようにさらに構成された制御ユニットと
を備える、負圧式把持システム。
(2)カテーテル内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサを備える、項目1に記載の負圧式把持システム。
(3)少なくとも1つの圧力センサは、遠位端セクションに配置される、項目2に記載の負圧式把持システム。
(4)制御ユニットはさらに、可撓性カテーテル内の測定された圧力が所定時間、所定の圧力閾値未満で維持されない場合に、負圧が遮断または解除されるように動作を制御するように構成される、項目2~項目3のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(5)管状体に対する固定位置で標的を保持するように構成される、項目1~項目4のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(6)複数の心周期にわたって心臓の少なくとも一部を固定位置で保持するように構成される、項目1~項目5のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(7)ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を運ぶためのフラッシュ容器をさらに備え、前記容器は、可撓性カテーテルの管状体に接続される、項目1~項目6のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(8)流体は、把持手順および任意選択で解放手順の後に、管状体内へ機械的におよび/または手動で押し込まれ、そのことにより吸引された血液をヒトまたは動物の体内へ流し戻す、項目7に記載の負圧式把持システム。
(9)制御ユニットはさらに、把持手順の間に吸引された血液が、把持手順が成功または失敗した後に、ヒトまたは動物の体内へ戻されるように、フラッシュ容器を制御するように構成される、項目7に記載の負圧式把持システム。
(10)フラッシュ容器からの流体の流れは、電気モータによって制御されるか、または流体圧力もしくはガス圧力によって制御される、項目9に記載の負圧式把持システム。
(11)ピストンが負圧発生装置として使用される、項目1~項目6のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(12)ピストンは、ピストンの後退が管状体内に負圧を発生させるように配置される、項目11に記載の負圧式把持システム。
(13)ピストンはさらに、後退位置から前方へのピストンのさらなる移動が、把持手順の間に吸引された血液をヒトまたは動物へ押し戻すように配置される、項目12に記載の負圧式把持システム。
(14)ピストンは、手動または自動で操作される、項目11~項目13のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(15)遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、コンピュータ支援制御および/または機械的制御によって操縦可能である、項目1~項目14のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(16)遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、遠位端の動きおよび/または関節を制御するためのテンドン、カム、回転壁セクション、作用物質、空気圧および/または油圧を備え、好ましくは、テンドンは、管状体から遠位端セクションに沿って延在する、項目1~項目15のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(17)遠隔操作可能かつ可撓性の遠位端セクションは、剛性構成で係止され得る、項目1~項目16のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(18)テンドンは、剛性構成で可撓性遠位端セクションを係止するために使用される、項目16~項目17に記載の負圧式把持システム。
(19)遠位端セクションは、標的上で動作するように配置されたさらなるツールのための端部セクションチャンバを備える、項目1~項目18のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(20)好ましくは、超音波またはX線方式の撮像のような撮像モダリティによって、遠位端を追跡するためのシステムをさらに備える、項目1~項目19のいずれか一項に記載の負圧式把持システム。
(21)可撓性遠位端セクションは、可撓性遠位端セクションの周囲に、好ましくは遠位開口部または遠位セグメントに環状、管状、および/または中空セクションのようなX線不透過性セクションまたは超音波マーカの形態のマーカを備える、項目1~項目20のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(22)カテーテルは、ヒトまたは動物の静脈または動脈に導入されるように適合される、項目1~項目21のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(23)遠位開口部に配置された接触要素に接続された管状体内のワイヤをさらに備え、接触要素は、活性高周波エネルギーのようなエネルギーを標的に伝達するように構成され、好ましくは、標的は、心臓組織のような組織である、項目1~項目22のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(24)接触要素は、遠位開口部の中心に配置され、および/または接触要素は、遠位開口部全体を覆う、項目23に記載の負圧式把持システム。
(25)ワイヤを介して接触要素に対してエネルギーを生成するように構成されたエネルギー発生器をさらに備える、項目23~項目24のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(26)管状装置内部に穿刺機構をさらに備え、穿刺機構は、生成された負圧によって引き込まれた組織を穿刺するように配置され、好ましくは、穿刺機構は、遠隔操作可能である、項目1~項目25のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(27)穿刺機構は、針を備える、項目26に記載の負圧式把持システム。
(28)針は、ワイヤによって制御され、または針は、管状体を通るチャネル内の流体によって制御され、チャネル内の圧力は、針の後方および前方の動きを制御する、項目27に記載の負圧式把持システム。
(29)物質を標的に注入するための、遠位開口部の遠隔操作可能な中空針をさらに備える、項目1~項目28のいずれか一項に記載の負圧式把持システム。
(30)中空針は、注入される物質を含むチャンバに接続される、項目29に記載の負圧式把持システム。
(31)中空針およびチャンバは、ワイヤによって、または管状体を介して、または流体およびプランジャを備えるチャネルによって、制御される、項目30に記載の負圧式把持システム。
(32)中空針およびプランジャの前方移動は2段階で制御され、第1のステップで中空針が前方に移動され、第2のステップでプランジャが前方に移動され、そのことにより物質が注入される、項目31に記載の負圧式把持システム。
(33)内側管状部材をさらに備える、項目1~項目32に記載の負圧式把持システム。
(34)内側管状部材は、カテーテルの近位端から挿入され得る、項目33に記載の負圧式把持システム。
(35)内側管状部材を保持し、および/またはカテーテル内部で、またはカテーテルから突出して、ツールもしくは機能を操作するように構成された操作ユニットをさらに備える、項目1~34のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(36)内側管状部材はスネアである、項目33に記載の負圧式把持システム。
(37)スネアの外側にロックプッシャシースをさらに備え、ロックプッシャシースは、スネアに沿って押し込まれて、縫合糸を締結機構に対して係止することができる、項目36に記載の負圧式把持システム。
(38)遠位開口部におけるステープル留めまたは締結機構をさらに備える、項目1~項目37のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(39)ステープル留めまたは締結機構は、遠位開口部の両側に配置された第1のステープル留め部および第2のステープル留め部を備え、遠位開口部を通して引き込まれた組織は、第1のステープル留め部および第2のステープル留め部を互いに向けて移動させ、金属ステープルまたはねじ山を組織に通すことによってステープル留めされる、項目38に記載の負圧式把持システム。
(40)ステープル留めまたは締結機構は、螺旋状アンカーを備える、項目38に記載の負圧式把持システム。
(41)締結機構に取り付けられる縫合糸をさらに備える、項目38~項目39のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(42)縫合糸は、内側管状部材内に配置された第1の側と、内側管状部材の外側に配置された第2の側とを備える、項目41および項目33に記載の負圧式把持システム。
(43)遠位開口部における把持および/または切断機構をさらに備え、該機構は、遠位開口部の両側に配置された第1の把持/切断部および第2の把持/切断部を備え、遠位開口部を通して引き込まれた組織は、第1の把持/切断部および第2の把持/切断部を互いに向けて移動させることによって把持/切断される、項目1~項目42のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(44)負圧によって引き込まれた組織に外科用縫合糸を遠隔で繋留するための機構をさらに備える、項目1~項目43のいずれかに記載の負圧式把持システム。
(45)標的、好ましくは、ヒトまたは動物の心臓または心臓組織などの動いている標的を装置の少なくとも一部に対する固定位置で把持し保持するための方法であって、
-管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の端部セクションを有するカテーテルを有する装置を提供するステップと、
-遠位端を遠隔で操縦することによって、遠位開口部を標的に近接して位置決めするステップと、
-管状体内に負圧を生成するステップと、
-所定時間、管状体内の圧力を測定するステップと、
-測定された圧力が所定時間より長い時間にわたって、所定の圧力閾値未満を維持する場合に、管状体内の負圧を維持して標的を保持し、そうでなければ負圧を解除するステップと
を含む、方法。
(46)ヒトまたは動物の体内へ移送されるのに適した流体を用いて該装置の遠位端に向かって管状体をフラッシングし、そのことにより、把持および保持手順が成功または失敗した際に、血液をヒトまたは動物の体内へ流し戻すステップをさらに含む、項目45に記載の標的を把持し保持するための方法。
(47)把持および保持手順が成功または失敗した際に、吸引された血液をヒトまたは動物の体内へ押し戻すステップをさらに含む、項目45に記載の標的を把持し保持するための方法。
(48)項目1~項目44のいずれかに記載のシステムを使用する、項目45~項目47のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(49)標的に治療、処置または手術を施すステップをさらに含む、項目45~項目48のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(50)遠位開口部を位置決めする前に、ヒトまたは動物の静脈または動脈によって該装置を導入するステップをさらに含む、項目45~項目49のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(51)遠位開口部に配置された接触要素を通して心臓の僧帽弁輪にエネルギーを印加するステップをさらに含む、項目45~項目50のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(52)遠位開口部のステープル留め機構を使用して、逸脱した僧帽弁の弁部分をステープル留めするステップをさらに含む、項目45~項目51のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(53)標的に医療用部品を繋留または取り付けるステップをさらに含む、項目45~項目52のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(54)遠位開口部において管状装置内部の穿刺機構を使用して標的を穿刺するステップをさらに含む、項目45~項目53のいずれかに記載の標的を把持し保持するための方法。
(55)穿刺機構は、中空針であり、中空針を通して標的内へ物質を注入するステップをさらに含む、項目54に記載の標的を把持し保持するための方法。
(56)心臓の僧帽弁腱索修復を実施するための方法であって、
-管状体、近位端、および遠位開口部を有する遠隔操作可能かつ可撓性の端部セクションを有するカテーテルを有する装置を提供するステップと、
-該装置を大腿静脈または頸静脈に導入するステップと、
-遠位端を遠隔で操縦することによって、遠位開口部を標的に近接して位置決めするステップと、
-ガイドワイヤを使用して心臓の右心房に入るステップと、
-心臓の心房中隔を穿刺して、心房中隔を横断するステップと、
-例えば超音波によって、端部が乳頭筋上に位置するように、該装置を配置するステップと、
-管状体内に負圧を生成し、そのことにより心臓の乳頭筋に遠位開口部を係止するステップと、
-例えば螺旋状アンカーを繋留することによって、乳頭筋に縫合糸を固定するステップと、
-負圧を解除して、断裂腱索を有する僧帽弁の弁尖へ該装置を移動させるステップと、
-管状体内に負圧を生成し、そのことにより僧帽弁の弁尖に遠位開口部を係止するステップと、
-例えば螺旋状アンカーを繋留することによって、僧帽弁尖に縫合糸を固定するステップと、
-弁が十分に機能することができるように2本の縫合糸の長さを調節するステップと
を含む、方法。
(57)項目1~項目44のいずれかに記載の負圧式把持システムを備える、心臓の僧帽弁腱索修復を実施するための器具または医療機。
(58)項目56に記載の方法を実行するように構成された、項目57に記載の器具。
(59)項目29~項目32のいずれかに記載の負圧式把持システムを備える注入装置。
(60)項目38~項目41のいずれかに記載の負圧式把持システムを備える縫合糸締結装置。