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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】エアクッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/08 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
A47C27/08 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022552977
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2022020360
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2022033630
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511184752
【氏名又は名称】株式会社ジュート
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】森平 茂生
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-130198(JP,A)
【文献】特開2001-149395(JP,A)
【文献】特開平11-318644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板袋状物の外周部に沿って、外側溶着部を有するエアクッションであって、下記構成(1)~(4)を有していることを特徴とするエアクッション。
(1)平面視した場合に、少なくとも、着座した時に使用者に触れる部位である着座部として第1空気室と、当該第1空気室の左方に配置された、側方支持部としての第2空気室と、前記第1空気室の右方に配置された、対向する側方支持部としての第3空気室と、を有する構成。
(2)前記第1空気室と、前記第2空気室及び前記第3空気室との間を、充填空気が相互移動するように通過部を介して、連通してある構成。
(3)前記第1空気室、前記第2空気室、及び前記第3空気室の間を区分するU字状の内側溶着部(但し、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部を除く。)を有する構成。
(4)前記U字状の内側溶着部を第1内側溶着部とした場合に、前記第1内側溶着部とは別に、前記第1空気室に、一つ又は複数のU字状の第1´内側溶着部が、所定間隔で設けてある構成。
【請求項2】
前記U字状の内側溶着部を第1内側溶着部とした場合に、当該第1内側溶着部に接し、平面視した場合に、正方形状、長方形状、逆V字状、及び、逆U字状から選択される少なくとも一つの形状を有する第2内側溶着部を設けることを特徴とする請求項1に記載のエアクッション。
【請求項3】
前記第1空気室の後方に配置された、後方支持部としての第4空気室を有することを特徴とする請求項1に記載のエアクッション。
【請求項4】
前記平板袋状物を平面視した場合に、当該平板袋状物の下方外周部を、前記第2空気室及び前記第3空気室に跨がる、二山形状とすることを特徴とする請求項1に記載のエアクッション。
【請求項5】
前記第2空気室及び前記第3空気室に跨る、水平状又は曲線状のさらなる内側溶着部を有することを特徴とする請求項1に記載のエアクッション。
【請求項6】
前記着座部の表面に、所定規則パターン又はランダムパターンを有する、滑り止め部を設けることを特徴とする請求項1に記載のエアクッション。
【請求項7】
前記第2空気室及び前記第3空気室の少なくとも一つに、前記充填空気の充填口が設けてあることを特徴とする請求項1に記載のエアクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクッションに関し、特に、利用者における骨盤の支持性等に優れたエアクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン(PC)を使用した会社におけるデスクワーク、及び家庭におけるテレワーク等による作業の増加に伴って、利用者が、デスクに付随した椅子に座った状態で、所定作業等を行う勤務時間が著しく長くなっている。
このようなデスクワークやテレワーク等の勤務時間の増加は、過度な骨盤の後傾や前傾による猫背や反り腰につながりやすく、腰椎や胸椎に負担をかけ、そのため、腰痛、椎間板ヘルニア等を引き起こす深刻な原因になっていた。
【0003】
そこで、利用者の利用性を向上させたクッションが、各種提案されている。
かかるクッションとして、例えば、ネッククッションやマット等と組み合わせ、利用者の首や腰の位置等に合わせて、高さを調整できるクッションが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図11(a)に示すように、内部に発泡材料等の弾性体を収容した、少なくとも二つのエアバッグ(201´、201´´)を垂直方向に対向させて配置してなるクッション200である。
そして、一つのエアバッグ(201´)には、空気の充填及び排出を制御するための空気制御ユニットが設けてあり、かつ、それぞれ対向するエアバッグの表面に通路穴及び接続部が形成されており、二つのエアバッグ(201´、201´´)が、直接的に接続されてなるクッション200である。
【0004】
又、利用者が着座した状態において、尻部にかかる圧力を分散できる、座圧緩和エアクッションが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図11(b)に示すように、本体301と、尻部の位置に合わせた一対の凹部302と、中心に設けられた圧迫防止穴303と、周囲に設けられた中空のリム部304と、本体301及びリム部304を繋ぐ空気流通細孔と、を備えてなる座圧緩和エアクッション300である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2015/0366368A1公報(特許請求の範囲、図面等)
【文献】実用新案登録第3000758号公報(実用新案登録請求の範囲、図面等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のクッションは、利用者の腰等を、左右方向から支える構造ではないことから、利用者が着座した場合に、骨盤の傾きを防止することができないという問題があった。
更に言えば、ネッククッションやマット等と組み合わせたとしても、利用者が身体を左右方向に傾けた場合に、エアバッグ自体は骨盤の傾きに追従せず、結果として、腰椎や胸椎への負荷を有効に低減できないという問題も見られた。
【0007】
又、特許文献2に記載の座圧緩和エアクッションについても、周囲のリム部が腰部につき、左右方向から支える構造ではないことから、利用者の体形や着座時の姿勢によっては、周囲のリムへの空気の流入が不均一になって、骨盤の傾きを防止することができないという問題があった。
更に、かかる座圧緩和エアクッションは、構造自体が複雑であって、製造工程が多く、かつ、安定的な製造が困難となり、ひいては、経済的に不利になりやすいという問題があった。
【0008】
そこで、本願の発明者は、このような問題点に鑑み鋭意努力した結果、所定の内側溶着部を介して、複数の空気室を設けて、利用者の着座時における充填空気の流動を利用することによって、利用者における優れた骨盤の支持性等を発揮できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、利用者の着座時における充填空気の流動により、連通した複数の空気室が、鉛直方向に沿って、傾斜した状態で立ち上がり、それによって、腰部の周囲を包み込むことができ、ひいては、利用者が左右方向へ身体を傾けたような場合であっても、優れた骨盤の支持性等を維持できるエアクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、平板袋状物の外周部に沿って、外側溶着部を有するエアクッションであって、平面視した場合に、少なくとも、着座部としての第1空気室と、当該第1空気室の左方に配置された、側方支持部としての第2空気室と、第1空気室の右方に配置された、対向する側方支持部としての第3空気室と、を、有しており、第1空気室と、第2空気室及び第3空気室との間を、充填空気が相互移動するように通過部を介して、連通しており、かつ、第1空気室、第2空気室、及び第3空気室の間を区分するU字状の内側溶着部を有することを特徴とするエアクッションが提供され、上述した問題を解決することができる。
より具体的には、平板袋状物の外周部に沿って、外側溶着部を有するエアクッションであって、下記構成(1)~(4)を有していることを特徴とするエアクッションである。
(1)平面視した場合に、少なくとも、着座した時に使用者に触れる部位である着座部としての第1空気室と、当該第1空気室の左方に配置された、側方支持部としての第2空気室と、第1空気室の右方に配置された、対向する側方支持部としての第3空気室と、を有する構成。
(2)第1空気室と、第2空気室及び第3空気室との間を、充填空気が相互移動するように通過部を介して、連通してある構成。
(3)第1空気室、第2空気室、及び第3空気室の間を区分するU字状の内側溶着部(但し、左右の臀部の2つの膨らみに対応する位置に設けられ、空気を封入したときの中空部より厚みが薄く、空気が移動不可能にされた固着部を除く。)を有する構成。
(4)U字状の内側溶着部を第1内側溶着部とした場合に、当該第1内側溶着部とは別に、第1空気室に、一つ又は複数のU字状の第1´内側溶着部が、所定間隔で設けてある構成。
すなわち、本発明のエアクッションによれば、着座した際に、第1空気室が上方から圧縮されることで、第1内側溶着部が、下方に押し下げられるとともに、充填空気が平面方向に沿って外周部側に広がり、第2空気室及び第3空気室が、内側に傾斜したような状態で、鉛直方向に沿って、容易に立ち上がる。
よって、着座時に、所定の空気室が容易に立ち上がり、骨盤の周囲を左右から包み込むように支持することができ、利用者が左右方向へ身体を傾けたような場合であっても、優れた骨盤の支持性等を維持することができる。
更に言えば、エアクッションの非使用時には、薄く折り畳んで、コンパクトな形状にすることが容易であり、かつ、軽量であることから、持ち運びや保管についても容易である。
加えて、利用者の体形や体重によらず、第1空気室における着座性を更に良好にするとともに、着座時における充填空気の流れを、より精度よく、制御することができる。
【0010】
又、本発明を構成するにあたり、上記U字状の内側溶着部を第1内側溶着部とした場合に、第1内側溶着部とは別に、第1空気室に、一つ又は複数のU字状の第1´内側溶着部を、所定間隔で設けることが好ましい。
このような構成とすることにより、利用者の体形や体重によらず、第1空気室における着座性を更に良好にするとともに、着座時における充填空気の流れを、より精度よく、制御することができる。
【0011】
又、本発明を構成するにあたり、上記U字状の内側溶着部を第1内側溶着部とした場合に、第1内側溶着部に接し、平面視した場合に、正方形状、長方形状、逆V字状、及び、逆U字状から選択される少なくとも一つの形状を有する第2内側溶着部を設けることが好ましい。
このような構成とすることにより、第2空気室と、第3空気室との間の直接的な空気の移動を制御し、着座時における充填空気の流れを、より精度よく、制御することができる。
【0012】
又、本発明を構成するにあたり、第1空気室の後方に配置された、後方支持部としての第4空気室を有することが好ましい。
このような第4空気室を有する構成とすることにより、後方からも骨盤を支持することができ、第2空気室と、第3空気室とともに、利用者における優れた骨盤の支持性等を更に発揮することができる。
【0013】
又、本発明を構成するにあたり、平板袋状物を平面視した場合に、当該平板袋状物の下方外周部を、第2空気室及び第3空気室に跨がる、二山形状とすることが好ましい。
このような構成とすることにより、第2空気室及び第3空気室の立ち上がりをより円滑にすることができる。
【0014】
又、本発明を構成するにあたり、第2空気室及び第3空気室に跨る、水平状又は曲線状のさらなる内側溶着部を有することが好ましい。
このようなさらなる内側溶着部(以下、第3内側溶着部と称する場合がある。)を有する構成とすることにより、第2空気室及び第3空気室が立ち上がる際に、第3内側溶着部に沿って、これらの空気室が折曲り、腰部への当接性を更に向上させることができる。
【0015】
又、本発明を構成するにあたり、着座部の表面に、所定規則パターン又はランダムパターンを有する、滑り止め部を設けることが好ましい。
このような滑り止め部を設けた構成とすることにより、着座部の表面における滑り防止性が高まり、ひいては、充填空気がよりスムーズに移動して、骨盤の支持性を向上させることができる。
【0016】
又、本発明を構成するにあたり、第2空気室及び第3空気室の少なくとも一つに、充填空気の充填口を設けることが好ましい。
このような構成とすることにより、所定のポンプ等を組み合わせて、充填空気の充填量や、吐出風量を、容易かつ精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1(a)~(b)は、第1の実施形態のエアクッションを平面視した場合の全体図である。
図2(a)~(c)は、第1の実施形態のエアクッションにおける空気の流れ、及びそれに伴う空気室の立ち上がりの仕組みを説明するために供する図である。
図3(a)~(b)は、それぞれ第1の実施形態における、別のエアクッションの具体例を説明するために供する図である。
図4(a)~(b)は、それぞれ第1の実施形態における、更に別のエアクッションの具体例を説明するために供する図である。
図5(a)~(c)は、それぞれ第1の実施形態の滑り止め部における所定規則パターンを説明するために供する図である。
図6は、第2の実施形態のエアクッションの製造方法を説明するために供するフロー図である。
図7は、第3の実施形態のエアクッションの使用方法を説明するために供するフロー図である。
図8(a)~(c)は、骨盤の傾斜角度を説明するために供する図である。
図9(a)~(c)は、座面がアクリル製の椅子に、第1の実施形態のクッションを設置し、着座した場合の座圧分布を示すために供する図であり、図9(d)は、座面がアクリル製の椅子に直接着座した場合の座圧分布を示すために供する図である。
図10(a)~(c)は、座面にウレタンクッションを有する椅子に、第1の実施形態のクッションを設置し、着座した場合の座圧分布を示すために供する図であり、図10(d)は、座面がアクリル製の椅子に直接着座した場合の座圧分布を示すために供する図である。
図11(a)~(b)は、それぞれ従来のクッションを説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)に例示するように、平板袋状物11の外周部に沿って、外側溶着部20を有するエアクッション10であって、平面視した場合に、少なくとも、着座部としての第1空気室12と、当該第1空気室12の左方に配置された、側方支持部としての第2空気室14と、第1空気室12の右方に配置された、対向する側方支持部としての第3空気室16と、を、有しており、第1空気室12と、第2空気室14及び第3空気室16との間を、充填空気が相互移動するように通過部30を介して、連通しており、かつ、第1空気室12、第2空気室14、及び第3空気室16の間を区分するU字状の第1内側溶着部22を有することを特徴とするエアクッション10である。
以下、本発明のエアクッション10の第1の実施形態につき、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
1.平板袋状物
平板袋状物11(以下、単に、袋状物11と称する場合がある。)は、図1(a)に示すように、エアクッション10の外装として、充填口(図示せず。)等から充填された空気を内部に保持できるとともに、空気を充填した状態で、所定の厚さを有する平板状の部材である。
より具体的には、一対のシート状物の外周を溶着して袋状とした構成、シート状物を折り曲げて、折り曲げ線以外の外周を溶着して袋状とした構成、筒状としたシート状物の開口部を溶着して袋状とした構成等とすることが好ましい。
この理由は、簡易な構成であっても、外部への空気のリークを防止できるエアクッション10に適した、概ね平板状の袋状物11を形成することができる場合があるためである。
【0020】
(1)材質
又、袋状物を構成する、一対のシートの材質としては、外部への空気のリークを防止できる材質であって、溶着できるものであれば、特に限定されないものの、通常、結晶性樹脂の場合は、融点(非結晶性樹脂の場合には、ガラス転移温度又は軟化点)が低い樹脂を用いることが好ましい。
より具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)等の少なくとも一つから構成されている単層シートや、複数樹脂に由来した複数シートの積層物であることが好ましい。
この理由は、このような樹脂に由来したシートを一つ又は複数組み合わせて用いることにより、所定溶着によって、容易に融解して、弾性率が所望範囲であって、かつ、柔軟性がある袋状物とすることができる場合があるためである。
更に、このような樹脂に由来したシートを用いることにより、外部からの衝撃や内部の空気圧に対する強度に優れ、骨盤の優れた支持性を長期間発揮することができる場合があるためである。
なお、エアクッションに対する肌触り性や装飾性、更には、人工皮革性等を向上させるために、一対のシートの材質として、上述材料からなる起毛シートや、微細表面エンボスや、微細表面処理されたシート等を用いることも好ましい。
【0021】
又、袋状物を構成する材質の融点としては、溶着装置等の使用によって破損しない温度であれば特に限定されないものの、通常、50~300℃の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、このような融点であれば、溶着装置等の使用によって破損しにくいとともに、エアクッションとして好適な柔軟性を有する場合があるためである。
従って、袋状物を構成する材質の融点を60~280℃の範囲内の値であることがより好ましく、80~250℃の範囲内の値であることが更に好ましい。
【0022】
又、袋状物において、周囲又は表面に保護カバーを設けることが好ましい。
この理由は、保護カバーを設けることで、耐久性をより向上させることができるとともに、着座した際の接触感覚をより良好にすることができる場合があるためである。
すなわち、保護カバーが、繊維を編み込んだ織布から構成されていることが好ましい。
具体的には、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維等の少なくとも一つの繊維を編み込んだ織布から構成されていることが好ましく、これらの繊維を芯糸として、他の繊維を巻き付けたカバードヤーンを編み込んだ織布から構成されていることがより好ましい。
【0023】
(2)形状
又、袋状物の平面形状は、尻部の下方において、それに連なる腰部を支持することができる形状であれば、特に限定されないものの、通常、平面視した場合に、円形、楕円形、三角形、逆三角形、四角形(正方形や長方形を含む)、多角形(例えば、5~10角形)、ひし形、異形及びこれらの形状の一部が内側に窪んだ形状等の少なくとも一つとすることが好ましい。
この理由は、このような形状とすることで、より簡易な構成であっても、比較的広い着座面積を確保できるとともに、第2空気室及び第3空気室が立ち上がりやすくなり、骨盤の優れた支持性を容易に発揮できる場合があるためである。
又、骨盤の支持性をより向上させる観点から、後述の第4空気室が後方に突出する形状となるように、袋状物の形状を、平面視した場合に、逆凸形状、大小の円形を重ねたひょうたん形状、逆ツボ型形状、スペード形状等の少なくとも一つとすることが、より好ましい。
【0024】
又、袋状物の平面形状は、平板袋状物を平面視した場合に、当該平板袋状物の下方外周部を、第2空気室及び第3空気室に跨がる、二山形状とすることが好ましい。
具体的には、図1(a)に示すように、袋状物11の下方外周部36が、第2空気室及び第3空気室に跨る部位において、二山形状を有することが好ましい。
この理由は、このような形状とすることで、第2空気室及び第3空気室の立ち上がりが、より円滑になる場合があるためである。
【0025】
(3)大きさ
又、袋状物の平面形状の大きさを示す最大径は、尻部の下方に敷いて、腰部を支持することができる値であれば、特に限定されないものの、通常、150~1000mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような最大径とすることにより、椅子や地面に敷いて着座した場合に、前後方向や左右方向へのふらつきを防止でき、より安定して骨盤を支持することができる場合があるためである。
従って、袋状物の平面形状の最大径を300~800mmの範囲内の値とすることがより好ましく、400~700mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、袋状物の平面形状の最大径は、袋状物の平面形状についての外接円における直径として、定義することができる。
【0026】
(4)空気を充填した状態の厚さ
又、袋状部の厚さは、設置平面を基準とし、空気を充填した状態における鉛直方向に沿った袋状物の最上位表面の高さH1(図2(b)参照。)と定義することできる。
このとき、袋状部の厚さは、着座時の適度なクッション性を得ることができる厚さが好適であって、利用者の体形や体重等を考慮して適宜変更することができるが、通常、10~150mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような厚さとすることにより、椅子や地面に敷いて着座した場合に、尻部への密着性に優れるとともに、過度な沈み込みを防止して、骨盤の支持性をより向上させることができる場合があるためである。
従って、袋状物の厚さを20~120mmの範囲内の値とすることがより好ましく、30~100mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0027】
2.外側溶着部
外側溶着部20は、図1(a)に示すように、充填空気が、袋状物11の外部にリークしないように、袋状物11の外周部の少なくとも一部を、所定の溶着装置を用いた加熱や加圧等により、溶着面が、平坦、又はエンボス形状となるように溶着した部位である。
【0028】
又、外側溶着部は、シール性等を向上させるために、溶着する一対のシート状物の間に、中間層として、接着剤層を設けることが好ましい。
具体的には、かかる接着剤層として、通常、ホットメルト接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、EVA接着剤、SBR系接着剤、NBR系接着剤等の少なくとも一つを用いることが好ましい。
この理由は、このような接着剤層を設けることにより、各種シートを、より隙間なく、強固に接着することができ、袋状物の外部に流出する、充填空気のリーク量をより少なくすることができる場合があるためである。
【0029】
又、外側溶着部の幅は、繰り返し着座して使用する際に、溶着した部分が剥がれない接着力を維持できる幅であれば、特に限定されないものの、通常、3~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような幅とすることで、隙間なく、強固に接着することができ、袋状物の外部に、充填空気がリークすることをより効果的に防止できる場合があるためである。
従って、外側溶着部の幅は、4~25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~20mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0030】
3.空気室
(1)第1空気室
第1空気室12は、図1(a)に示すように、袋状物を平面視した場合に、第1内側溶着部22よりも、前方に配置された部位であり、着座部として、尻部の下方に敷かれる部位である。
具体的には、後述の第2空気室14及び第3空気室16に対して、後述の通過部30を介して、連通しており、着座時の圧力を受けて、内部に充填されている空気を、第2空気室14、及び第3空気室16に押し出す構成である。
【0031】
又、第1空気室12の高さは、設置平面を基準とし、空気を充填した状態における鉛直方向に沿った第1空気室12を構成する袋状物の最上位表面の高さH4(図2(b)参照。)と定義することできる。
このとき、第1空気室12の高さは、座骨に対するクッション性が十分確保できる高さであれば、特に限定されないものの、通常、5~60mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような高さにすることにより、使用者が第1空気室12に着座した際の、使用者の尾骨に対するクッション性がより向上する場合があるためである。
又、このような高さとすることにより、第1空気室の体積がより大きくなり、使用者が着座した際に、第1空気室から後述する第2空気室14及び第3空気室16に空気が流れやすくなり、第2空気室14及び第3空気室16が、立ち上がりやすくなる場合があるためである。
従って、内部に空気を充填した場合における、第1空気室12の高さを、10~55mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15~50mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0032】
(2)第2空気室及び第3空気室
第2空気室14及び第3空気室16は、図2に示すように、側方支持部として、矢印X1(図2(a)参照。)に沿った充填空気の流入によって、鉛直方向に沿って、傾斜した状態で立ち上がる構成である。
そして、腰部を周囲から包み込むことによって、骨盤を左右から支持する部位であり、平面視した場合に、後述の第1内側溶着部22を介して、第1空気室12の左右に、それぞれ配置された構成である。
具体的には、第1空気室12と、後述の通過部30を介して、連通しており、第1空気室12からの空気の流入によって、立ち上がる構成である。
【0033】
以下、各空気室が立ち上がる仕組みを、図2(a)~(c)を参照して、具体的に説明する。
まず、エアクッション10を、椅子の座面40に対して設置する。この際、第1内側溶着部22の最下面は、椅子の座面40に接することなく、椅子の座面40から高さH2(図2(b)参照。)の位置にある。
次いで、エアクッション10に着座することによって、第1空気室12が、上方から圧力P1を受ける。
そして、第1空気室12の空気が、矢印X1で示される経路に沿って、第2空気室14及び第3空気室16に流入することで、第2空気室14及び第3空気室16が膨らむ。
更に、第1内側溶着部22の最下面が、高さH2から、椅子の座面40に向かって移動し、同時に、平面に沿って、基準線D1からY1方向に第1内側溶着部22xの位置まで広がる。
これにより、第1内側溶着部22における第2空気室14及び第3空気室16側の端部38を起点として、外側溶着部20が、Y2方向に押し上げられる。
すなわち、第2空気室14及び第3空気室16が高さH3(図2(c)参照。)まで立ち上がる。
従って、第1内側溶着部22に沿って形成された谷間を折り目として、第2空気室14及び第3空気室16が容易に立ち上がる。
なお、第2空気室14及び第3空気室16を立ち上げた状態の高さH3は、設置平面を基準とし、空気を充填した状態における鉛直方向に沿った第2空気室14及び第3空気室16を構成する袋状物の最上位部位の高さ(図2(c)参照。)として定義できる。
【0034】
又、第2空気室及び第3空気室を立ち上げた状態の高さH3は、腰部の周囲を支持できる高さであれば、特に限定されないものの、通常、50~250mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような高さとすることにより、腰部の周囲を安定して押さえることができ、骨盤の支持性を、より向上させることができる場合があるためである。
従って、第2空気室及び第3空気室を立ち上げた状態の高さを60~200mmの範囲内の値とすることがより好ましく、80~150mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0035】
(3)第4空気室
又、空気室として、第1空気室、第2空気室、第3空気室の他に、第4空気室を有することも好ましい。
具体的には、第4空気室18は、図3(a)~(b)に示すように、後方支持部として、通過部30を通る矢印X2に沿った空気の流入によって立ち上がり、腰部を押さえることで、骨盤を後方から支持する部位であり、平面視した場合に、後述の第2内側溶着部24を介して、第1空気室12の後方に、配置された構成であることも好ましい。
この理由は、支持部として、かかる後方支持部が加わることにより、第2空気室、第3空気室とともに、腰部の周囲をより安定して押さえることができ、骨盤の支持性を更に向上させることができる場合があるためである。
【0036】
又、第4空気室18が立ち上がる仕組みとしては、第2空気室14及び第3空気室16が立ち上がる際の、第2空気室14及び第3空気室16と、第1内側溶着部22との動きを、第4空気室18と、第2内側溶着部24との動きに置き換えた構成と考えることができる。
具体的には、着座によって、第1空気室12の空気が、第4空気室18に流入することで、第4空気室18が膨らむ。
更に、第2内側溶着部24が、下方に押し下げられるとともに、第4空気室18の外側溶着部が上方に押し上げられ、第4空気室18が立ち上がる。
【0037】
又、第4空気室の立ち上がった状態の高さとしては、基本的に、第2空気室及び第3空気室の構成と同じ構成とすることが好ましいが、使用環境や使用者の体形等を考慮して、所定の範囲内で、異なる構成とすることも好ましい。
【0038】
又、第4空気室は、身体を左右に傾ける等により、第2空気室、又は第3空気室に圧力がかかった場合に、かかる空気室内の空気の流入を受けて、他方の空気室に、空気を押し出す構成である。
この理由は、このような構成とすることにより、身体を左右に傾けた場合であっても、優れた骨盤の支持性を維持することができる場合があるためである。
【0039】
4.内側溶着部
(1)主構成
内側溶着部の主構成としては、図1(a)~(b)に示すように、第1空気室12、第2空気室14及び第3空気室16を隔てるとともに、内側溶着部をガイドとして、空気の流動を制御するように、袋状物の所定箇所を、溶着装置を用いた加熱や加圧等により、溶着面が、平坦、又はエンボス形状となるように溶着した部位である。
従って、基本的に、外側溶着部20と同じ構成の溶着部とすることが好ましいが、形成のしやすさや溶着強度を考慮して、異なる態様とすることも好ましい。
【0040】
(2)第1内側溶着部
第1内側溶着部22は、図1(a)~(b)に示すように、第1空気室12、第2空気室14及び第3空気室16を隔てており、平面視した場合に、U字状に湾曲した溶着部である。
具体的には、第1内側溶着部22の形状を、線状とすることが好ましい。
この理由は、このような形状とすることにより、より安定して空気を案内することができる場合があるためである。
なお、本発明の内側溶着部における「U字状」の形状とは、平面視した場合に、内側溶着部を内接する円の直径が、エアクッションを内接する円の直径よりも小さい形状と定義する。
【0041】
又、第1内側溶着部の端部の形状は、溶着が外れにくい形状であれば、特に限定されないものの、通常、円形状、楕円状、四角形(正方形や長方形を含む)、多角形(例えば、5~10角形)、矢印状、T字状、ラッパ状等の少なくとも一つとすることが好ましい。
この理由は、空気を充填した際に、袋状物に発生したしわが集中して、支持性が低下することを効果的に防ぐことができる場合があるためである。
【0042】
そして、図1(a)~(b)に示すように、第1内側溶着部22の端部形状を所定形状とし、かつ、当該所定形状の円相当径をφ1とし、第1内側溶着部22の幅をW1としたときに、下記関係式(1)を満足することが好ましい。
φ1>W1 (1)
この理由は、このように端部の大きさ(円相当径等)を比較的大きい内側溶着部の構成とすることにより、第1内側溶着部22における端末の面積を大きくして、固定性やシール性を高めることができる場合があるためである。
その上、このような第1内側溶着部22の端部形状を所定形状とし、かつ、上記関係式(1)を満足することによって、着座時における充填空気の流れを所望の態様に、制御することができる場合があるためである。
【0043】
又、第1内側溶着部の長さL1(図1(a)~(b)参照。)、すなわち、端部間距離を100~700mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような端部間距離とすることにより、第1空気室、第2空気室及び第3空気室の容積のバランスが良好で、第1空気室内の空気を、第2空気室及び第3空気室に、より安定して案内しやすくなる場合があるためである。
従って、第1内側溶着部の端部間距離を200~600mmの範囲内の値とすることがより好ましく、300~500mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0044】
又、第1内側溶着部の幅W1(図1(a)~(b)参照。)は、使用時に、溶着部を介した各空気室間のリークを防止でき、溶着した部分が剥がれてしまわない接着力を維持できる幅であれば、特に限定されないものの、通常、3~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような幅とすることで、より隙間なく、強固に接着することができ、内側溶着部を介した各空気室間のリーク量をより少なくすることができる場合があるためである。
従って、内側溶着部の幅は、4~25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~20mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0045】
又、第1内側溶着部の端部における円相当径φ1を、通常、5~35mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような円相当径とすることにより、空気を流動させた場合の気流の乱れを効果的に防止でき、連通する空気室に対して、より安定して空気を案内することができる場合があるためである。
従って、第1内側溶着部の端部における円相当径φ1を6~30mmの範囲内とすることがより好ましく、8~25mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0046】
又、図1(b)に示すように、第1内側溶着部22とは別に、第1空気室12において、一つ又は複数のU字状の第1´内側溶着部22´が、所定間隔で設けてあることが好ましい。
この理由は、利用者の体形や体重によらず、第1空気室における着座性を更に良好にするとともに、着座時における充填空気の流れを、より精度よく、制御することができる場合があるためである。
【0047】
又、第1´内側溶着部が、複数の溶着部からなる場合に、第1´内側溶着部における溶着部の数を2~10の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、このような数とすることにより、第1空気室内の空気を、第2空気室及び第3空気室に、安定して案内しやすくなり、第2空気室及び第3空気室の立ち上がり性をより向上させ、ひいては、骨盤をより安定して支持することができる場合があるためである。
従って、第1´内側溶着部における溶着部の数を3~8の範囲内の値とすることがより好ましく、4~6の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0048】
又、第1´内側溶着部が、複数の溶着部からなる場合に、第1内側溶着部における溶着部を、前方から後方に広がる、波紋状に配置された構成とすることが好ましい。
この理由は、第1空気室を複数の波紋状に区分することができ、着座時に、第1空気室から押し出される空気量のばらつきを、より容易に抑えることができる場合があるためである。
【0049】
又、第1´内側溶着部が、複数の溶着部からなる場合に、第1´内側溶着部における溶着部の間隔を10~300mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような間隔で配置された構成とすることにより、着座時に、第1空気室から押し出される空気量のばらつきを、より容易に抑えることができる場合があるためである。
従って、第1´内側溶着部における溶着部の間隔を20~200mmの範囲内の値とすることがより好ましく、30~150mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0050】
又、第1´内側溶着部が、複数の溶着部からなる場合に、第1´内側溶着部における溶着部の間隔を、後方から、順に、狭くすることが好ましい。
この理由は、袋状物に空気を充填した場合に、第1空気室を、前方に傾斜させることができ、骨盤の支持性を、より向上させることができる場合があるためである。
従って、第1´内側溶着部における溶着部の間隔を、後方から、順に、3~50mmずつ狭くすることが好ましく、5~40mmずつ狭くすることがより好ましく、8~30mmずつ狭くすることが更に好ましい。
【0051】
(3)第2内側溶着部
又、内側溶着部として、第1内側溶着部の他に、第2内側溶着部を有することが好ましい。
具体的には、第2内側溶着部24は、図1(a)~(b)、図3(a)~(b)及び図4(a)~(b)に示すように、第1内側溶着部22に接し、平面視した場合に、正方形状、長方形状、逆V字状、及び、逆U字状から選択される少なくとも一つの形状を有することが好ましい。
この理由は、このような形状とすることにより、第2空気室と、第3空気室との間の直接的な空気の移動を防ぐことができる場合があるためである。
【0052】
又、第2内側溶着部が、正方形状の溶着部である場合に、一辺の長さを30~150mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような長さとすることにより、第2空気室と、第3空気室との間の直接的な空気の移動をより確実に防ぐことができる場合があるためである。
従って、第2内側溶着部における正方形の一辺の長さを35~120mmの範囲内の値とすることがより好ましく、40~100mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0053】
又、第2内側溶着部が、長方形状の溶着部である場合に、長辺の長さを35~160mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような長さとすることにより、溶着性がより向上する場合があるためである。
従って、第2内側溶着部における長方形の長辺の長さを40~130mmの範囲内の値とすることがより好ましく、45~110mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0054】
又、第2内側溶着部が、長方形状の溶着部である場合に、短辺の長さを30~150mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような長さとすることにより、第2空気室と、第3空気室との間の直接的な空気の移動をより確実に防ぐことができる場合があるためである。
従って、第2内側溶着部における長方形の短辺の長さを35~120mmの範囲内の値とすることがより好ましく、40~100mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0055】
又、第2内側溶着部が、逆V字状、又は、逆U字状の溶着部である場合には、第2内側溶着部の形状を、線状(直線や湾曲線を含む。)とすることがより好ましい。
この理由は、このような形状とすることにより、より安定して空気を案内することができる場合があるためである。
【0056】
又、第2内側溶着部が、逆V字状、又は、逆U字状の溶着部である場合に、第2内側溶着部の長さ、すなわち、端部間距離を50~350mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような端部間距離とすることにより、第1空気室、第2空気室及び第3空気室の容積のバランスが良好になり、第2空気室及び第3空気室による骨盤の支持性を向上させることができる場合があるためである。
従って、第2内側溶着部の端部間距離を60~300mmの範囲内の値とすることがより好ましく、80~250mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0057】
又、第2内側溶着部が、逆V字状、又は、逆U字状の溶着部である場合に、第2内側溶着部の幅は、使用時に、溶着部を介した各空気室間のリークを防止でき、溶着した部分が剥がれてしまわない接着力を維持できる幅であれば、特に限定されないものの、通常、3~50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような幅とすることで、より隙間なく、強固に接着することができ、内側溶着部を介した各空気室間のリーク量をより少なくすることができる場合があるためである。
従って、内側溶着部の幅は、5~40mmの範囲内の値とすることがより好ましく、8~30mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0058】
又、第2内側溶着部が、逆V字状、又は、逆U字状の溶着部である場合に、第2内側溶着部の端部の形状は、基本的に、第1内側溶着部と同じ構成とすることが好ましいが、通過部の幅等を広く形成する観点等から、異なる構成とすることも好ましい。
【0059】
又、特に図示しないものの、第1内側溶着部と、第2内側溶着部との間に、折り曲げ部を設けることが好ましい。
具体的には、折り曲げ部として、袋状物におけるくびれ部、左右方向に沿って、破線状に溶着した破線状部、表面にジグザグのエンボスを有する蛇腹部等を設けてあることが好ましい。
この理由は、このように折り曲げ部を設けることにより、第4空気室の立ち上がり性が向上して、骨盤の支持性を、より向上させることができる場合があるためである。
【0060】
(4)第3内側溶着部
又、内側溶着部として、第1内側溶着部及び第2内側溶着部の他に、さらなる内側溶着部(以下、第3内側溶着部と称する場合がある。)を有することも好ましい。
具体的には、第3内側溶着部34は、図4(a)に示すように、第2空気室14及び第3空気室16に跨ることが好ましい。
この理由は、このように第3内側溶着部を設けることにより、第2空気室及び第3空気室が立ち上がる際に、第3内側溶着部が折り曲げ部として機能することで、第2空気室及び第3空気室が折曲り、腰部への当接性が向上し、後方からも骨盤を支持することができる場合があるためである。
【0061】
又、第3内側溶着部は、水平状又は曲線状であることが好ましい。
この理由は、このような形状により、第2空気室及び第3空気室が折曲り、腰部への当接性をより向上させることができる場合があるためである。
【0062】
(5)変形例
又、内側溶着部の変形例としては、図示しないものの、第1内側溶着部と、第2内側溶着部と、を所定間隔離して配置し、それぞれ内側溶着部の、左側端部と、右側端部と、を、それぞれ直線で結んだ形状とすることが好ましい。
この理由は、このような形状とすることにより、直線状の溶着部を形成でき、第2空気室及び第3空気室が、溶着部に沿って、より立ち上がりやすくなる場合があるためである。
【0063】
又、別の例としては、図示しないものの、V字状の第1内側溶着部と、逆V字状の第2内側溶着部と、を頂点どうし接合して配置した形状とすることが好ましい。
この理由は、このような形状とすることにより、簡易な溶着装置であっても形成することが容易になる場合があるためである。
【0064】
5.通過部
通過部30は、図1(a)~(b)に示すように、袋状物11を平面視した場合に、溶着部の切れ目、すなわち、非溶着部に相当する部分であって、所定の空気室間における、空気を通過させる流路としての部位である。
具体的には、溶着部の末端と、外周部との間に、少なくとも一つの非溶着部を設け、このような非溶着部からなる通過部30として、外周部に沿って設けてあることが好ましい。
この理由は、所定の通過部を、このように配置していることにより、外周部の近傍で、膨らみが不十分となることを、より容易に防ぐことができる場合があるためである。
なお、クッションを平面視した場合に、通過部の幅につき、すなわち、溶着部の末端と、外周部との間を通過部としたときに、その距離を、通常、5~80mmの範囲内の値とすることが好ましく、10~60mmの範囲内の値とすることがより好ましく、20~40mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0065】
6.滑り止め部
滑り止め部32は、図1に示すように、袋状物11を平面視した場合に、着座部、すなわち、第1空気室12の表面にあたる、袋状物11に設けることが好ましい。
この理由は、このように滑り止め部を設けた着座部とすることで、着座部の滑り防止性が高まり、ひいては、充填空気がよりスムーズに移動して、骨盤の支持性を向上できる場合があるためである。
【0066】
又、滑り止め部32の形態は、所定の滑り防止性を発揮できるものであれば、特に限定されないものの、通常、円若しくは楕円のドット状、ライン状、三角形状、四角形(正方形や長方形を含む)状、ハニカム形状、又は、多角形状や異形状の所定規則パターン又はランダムパターンであることが好ましい。
より具体的には、図5(a)~(c)に示すような、ドット状、三角形状、又は、多角形状を有するとともに、三次元的には、凹部、及び凸部、あるいは、いずれか一方を有する滑り止め部32´~32´´´であることが好ましい。
又、図示しないものの、上記所定パターンの凹凸部を反転させた、反転ドット状、反転三角形状、又は、反転多角形状の、凹部を有する滑り止め部であることも好ましい。
この理由は、このような構成とすることで、長期間に渡たって、良好な滑り防止性等を維持することができる場合があるためである。
【0067】
又、滑り止め部の材質は、所定の滑り防止性を発揮できるものであれば、特に限定されないものの、通常、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、又は、天然ゴム等の少なくとも一つからなるゴム材料から構成してあることが好ましい。
この理由は、このようなゴム材料から構成することで、着座部の滑り防止性のみならず、防汚性やクッション性をより高められる場合があるためである。
その上、このようなゴム材料であれば、スクリーン印刷法やロール印刷等も容易であって、かつ、袋状物に対する密着性も優れている場合があるためである。
【0068】
更に、図示しないものの、滑り止め部を、クッションの裏面に設けることも好ましい。
この理由は、このように滑り止め部を設けることで、クッションとクッションを設置した面との摩擦力が向上し、クッションを設置した面からクッションが滑り落ちづらくなる場合があるためである。
又、クッションの裏面に設けられる滑り止め部の形態や材質は、特に限定されないものの、滑り防止性の観点から、着座部に設けられた滑り止め部と同様の形態や材質であることが好ましい。
【0069】
7.充填口
袋状物は、特に図示しないものの、充填空気の充填口として、空気を袋状物の外部から導入できる孔部を少なくとも一つ設けてあることが好ましい。
具体的には、袋状物は、第2空気室及び第3空気室の少なくとも一つに、充填空気の充填口を設けてあることが好ましい。
又、袋状物が第4空気室を有する場合には、第2空気室~第4空気室の少なくとも一つに、充填空気の充填口を設けてあることが好ましい。
この理由は、充填口を設けることで、袋状物の内部に、より迅速かつ容易に、空気を充填することができるとともに、着座した際に、使用者と、充填口とが干渉してしまうことを効果的に防ぐことができる場合があるためである。
【0070】
又、充填口は、第2空気室又は第3空気室の下方に配置されていてもよい。
この理由は、このように配置されていることにより、第1空気室に、より迅速に空気を充填できるとともに、着座した際に、使用者と、充填口とが干渉してしまうことを、より効果的に防ぐことができる場合があるためである。
【0071】
又、充填口の直径は、取扱性等を考慮して定めることが好ましいが、通常、3~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、取扱性等を向上させるべく、市販の空気入れを使用しても良いし、あるいは、直接口から吹き込んでも空気を充填することができ、ひいては、より迅速かつ容易に、袋状物の内部に空気を充填することができる場合があるためである。
従って、充填口の径を4~20mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~10mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0072】
又、充填口において、後述の空気充填装置と接続する接続具を設けてあることが好ましい。
具体的には、接続具として、ホースジョイント、ネジ型カプラ、嵌合型カプラ、ワンタッチ継手等の少なくとも一つが設けてあることが好ましい。
この理由は、充填した空気の逆流を、効果的に防止するとともに、後述の空気充填装置との着脱が容易にできる場合があるためである。
【0073】
又、充填口が、複数設けてある場合に、充填口の数を2~4個の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、各空気室に充填口を設けることにより、より迅速に空気を充填することができる場合があるためである。
【0074】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図6に例示するように、第1の実施形態のエアクッションの製造方法であって、下記工程(A)~(D)を有することを特徴とするエアクッションの製造方法である。
(A)一対のシート状物の外周部に沿って溶着し、外側溶着部を備えた平板袋状物とする工程。
(B)平板袋状物の内側の所定箇所を溶着して、着座部としての第1空気室と、当該第1空気室の左方に配置された、側方支持部としての第2空気室と、第1空気室の右方に配置された、対向する側方支持部としての第3空気室とを形成し、かつ、第1空気室と、第2空気室及び第3空気室との間を、充填空気が相互移動するように通過部を介して、連通した平板袋状物とする工程。
(C)平板袋状物に、少なくとも一つの、充填空気の充填口を設ける工程。
(D)平板袋状物に設けた充填口を介して、充填空気を導入し、エアクッションとする工程。
以下、本発明のエアクッションの製造方法の実施形態につき、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、第1の実施形態と重複する部分の説明は、適宜省略するものとする。
【0075】
1.前工程
まず、前工程として、所定の袋状物を形成するための一対のシート状物を準備する(図6のステップS1参照。)。
なお、袋状物の内容については、基本的に第1の実施形態で既に説明したものと同様の内容が好ましいことから、ここでの再度の説明は省略する。
【0076】
2.工程(A)
工程(A)は、所定の溶着装置によって、一対のシート状物の外周に沿って一部に溶着し、外側溶着部を形成する工程である(図6のステップS2参照。)。
具体的には、溶着装置は、コテ式溶着器、熱板式溶着器、熱風式溶着器、高周波溶着器、超音波溶着器及びレーザー溶着器等の少なくとも一つを用いて、加熱や加圧等により、溶着面が、平坦、又はエンボス形状となるように溶着することが好ましい。
この理由は、溶着ムラを防止でき、所定の形状の溶着部を、容易に形成することができる場合があるためである。
【0077】
又、外側溶着部は、大型溶着装置によって、一度に溶着する方法や、小型溶着装置によって、小さい溶着部を部分的に重ねる方法等によって、形成することが好ましい。
【0078】
又、溶着温度は、使用する溶着装置の種類や溶着時間等によって異なるものの、通常、80~500℃の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、袋状物の変形や外観不良が生じるのを防止でき、強固に溶着することが、より容易になる場合があるためである。
従って、溶着温度は、100~400℃の範囲内の値であることがより好ましく、150~300℃の範囲内の値であることが更に好ましい。
【0079】
3.工程(B)
工程(B)は、内側溶着部を形成することで、少なくとも第1~第3空気室を形成する工程である(図6のステップS3参照。)。
具体的には、第1内側溶着部を形成して、当該第1内側溶着部の前方に、第1空気室を形成するとともに、それぞれ第2空気室及び第3空気室を形成する。
【0080】
4.工程(C)
工程(C)は、平板袋状物に、少なくとも一つの、充填空気の充填口を設ける工程である(図6のステップS4参照。)。
具体的には、第2空気室及び第3空気室の少なくとも一つに、充填口としての所定の孔部を、穴あけ用パンチ具、ハトメ用パンチ具、目打ち、ドリル、レーザー等によって、形成することが好ましい。
この理由は、このような器具を用いることにより、簡易な器具であっても、より効率的に孔部を形成することができる場合があるためである。
【0081】
5.工程(D)
工程(D)は、所定の空気充填装置によって、充填口を介して、袋状物に空気を充填し、平板状のエアクッションを形成する工程である(図6のステップS5参照。)。
具体的には、空気充填装置は、袋状物の内部に空気を充填できる装置であれば良いが、通常、ダイヤフラム式ポンプ、ベローズ式ポンプ、電磁式ポンプ、ピストン式ポンプ等、の少なくとも一つを用いて、袋状物の内部に空気を充填することが好ましい。
【0082】
又、エアポンプの吐出風量は、使用するポンプによって異なるものの、通常、0.1~120L/minの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、袋状物の内部に、迅速に空気を充填でき、より容易に平板状のエアクッションを形成することができる場合があるためである。
従って、エアポンプの吐出風量を0.5~50L/minの範囲内の値とすることがより好ましく、1~30L/minの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0083】
6.変形例
又、第4空気室を有するエアクッションの製造方法を実施するに際して、第2の実施形態の変形例として、第1内側溶着部を形成した後に、所定の第2内側溶着部を形成することで、第4空気室を形成する製造方法も好適である。
すなわち、下記工程(A´)~工程(D´)により、エアクッションを製造することも好ましい。
【0084】
(1)工程(A´)
工程(A)と同様に、外側溶着部を形成する。
【0085】
(2)工程(B´)
次いで、第1内側溶着部を形成して、当該第1内側溶着部の前方に、第1空気室を形成するとともに、第2内側溶着部を形成して、当該第2内側溶着部の後方に、第4空気室を形成する。
更に、第1内側溶着と、第2内側溶着部と、を接合するように、間を溶着することで、第1空気室の左右に、それぞれ第2空気室及び第3空気室を形成する。
【0086】
(3)工程(C´)
次いで、工程(C)と同様に、充填空気の充填口を設ける。
【0087】
(4)工程(D´)
次いで、工程(D)と同様に、充填口を介して、袋状物に空気を充填し、平板状のエアクッションを形成する。
【0088】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、図7に例示するように、第1の実施形態のエアクッションの使用方法であって、下記工程(i)~(iii)を有することを特徴とするエアクッションの使用方法である。
(i)第1空気室に対して、着座する工程。
(ii)第1空気室内の充填空気を、第2空気室及び、第3空気室に流入させ、第2空気室及び第3空気室を膨らませて、立ち上げる工程。
(iii)立ち上げた第2空気室及び第3空気室に対して、尻部及び腰部を当接させ、骨盤を支える工程。
以下、本発明のエアクッションの使用方法の実施形態につき、適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する部分の説明は、適宜省略するものとする。
【0089】
1.前工程
まず、前工程として、所定のエアクッションを、平面に沿って、着座位置に配置することが好ましい(図7のステップS1´参照。)。
なお、エアクッションの内容や使用方法については、基本的に第1の実施形態及び第2の実施形態で既に説明したものと同様の内容が好ましいことから、ここでの再度の説明は省略するものとする。
【0090】
2.工程(i)
工程(i)は、所定のエアクッションに、利用者が着座する工程である(図7のステップS2´参照。)。
具体的には、利用者が、後方に腰部を向けるとともに、第1空気室に、尻部を載せて着座する工程である。
なお工程(i)は、後述する工程(ii)と実質的に同時であっても良い。
【0091】
このとき、腰部の左右方向における中心位置を、第1空気室の左右方向における中心位置と合わせて着座することが好ましいが、例えば、左右に50mm程度ずつ、多少ズレたような場合であっても良い。
この理由は、このように左右にずれて着座した場合であっても、第2空気室及び第3空気室が変形することによって、骨盤の支持性が低下することを、より効果的に防ぐことができる場合があるためである。
【0092】
3.工程(ii)
工程(ii)は、第2及び第3空気室を立ち上げる工程である(図7のステップS3´参照。)。
具体的には、第1空気室内の空気を、第2空気室及び第3空気室に流入させ、それぞれの空気室を膨らませることによって、第1空気室の厚さよりも、第2空気室、及び第3空気室の高さを、所定高さまで高くする工程である。
【0093】
又、所定の空気室を立ち上げた状態の高さが、高すぎる場合には、袋状物の内部に充填した空気を抜いたり、より前方に着座して、第1空気室から押し出す空気量を減らしたりすることによって調整することができる。
そして、所定の空気室を立ち上げた状態の高さが、低すぎる場合には、逆に、空気を更に充填したり、より後方に着座して、第1空気室から押し出す空気量を増やしたりすることによって調整することができる。
【0094】
又、所定の空気室を立ち上げる時間は、着座から時間を空けないことが好ましいが、立ち上げた状態の高さの調整等を行うために、着座から1~10秒の範囲内の値で立ち上がることも好ましい。
従って、所定の空気室を立ち上げる時間は、2~8秒の範囲内の値とすることがより好ましく、3~5秒の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0095】
4.工程(iii)
工程(iii)は、骨盤を支持する工程である(図7のステップS4´参照。)。
具体的には、立ち上げた第2及び第3空気室によって、腰部の周囲を押さえることで、骨盤を所定の傾斜角度で支持する工程である。
【0096】
そして、支持する骨盤の傾斜角度θは、図8(a)~(c)に示すように、骨盤の鉛直方向に沿った上下の頂点を通る仮想直線が、鉛直方向に対して前傾した状態をプラス、後傾した状態をマイナスとして、-30~30°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような傾斜角度で支持することにより、より効果的に、腰椎や胸椎への負担を軽減できる場合があるためである。
従って、支持する骨盤の傾斜角度θを、-20~20°の範囲内の値とすることがより好ましく、-10~10°の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0097】
5.変形例
又、第4空気室を有するエアクッションの使用方法を実施するに際して、第3の実施形態の変形例として、第4空気室を膨らませて、立ち上げた第4空気室によって、腰部の周囲を押さえることで、骨盤を所定の傾斜角度で支持する使用方法も好適である。
すなわち、下記工程(i´)~工程(iii´)により、エアクッションを使用することも好ましい。
【0098】
(1)工程(i´)
工程(i)と同様に、利用者が着座する工程である。
なお工程(i´)は、後述する工程(ii´)と実質的に同時であっても良い。
【0099】
(2)工程(ii´)
工程(ii´)は、第2~第4空気室を立ち上げる工程である。
具体的には、第1空気室内の空気を、第2空気室及び第3空気室に流入させ、それぞれの空気室を膨らませることによって、第1空気室の厚さよりも、第2空気室、及び第3空気室の高さを、所定高さまで高くする工程である。
更に、流入した第1空気室の空気が、第2空気室及び第3空気室内の空気を押し出し、第4空気室に空気を流入させ、膨らませることによって、第1空気室の厚さよりも、第4空気室の高さを、所定高さまで高くする工程である。
【0100】
(3)工程(iii´)
工程(iii´)は、骨盤を支持する工程である。
具体的には、立ち上げた第2~第4空気室によって、腰部の周囲を押さえることで、骨盤を所定の傾斜角度で支持する工程である。
【実施例
【0101】
以下、実施例を用いて、更に本発明を詳細に説明する。
但し、本発明は、特に理由なく、下記の実施例の記載に限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
1.エアクッションの製造
上述した方法により、図4(b)に示すエアクッションを製造した。
具体的には、平板袋状物の構成材料として、最大径が600mmである一対の逆ツボ型形状のシート状物を用意した。
次いで、一対の逆ツボ型形状のシート状物を外周に沿って溶着し、平板袋状物とした。
更に、得られた平板袋状物に、U字状の第1内側溶着部、U字状の3つの第1´内側溶着部及び逆U字状の第2内側溶着部を形成し、第1空気室、第2空気室、第3空気室及び第4空気室をそれぞれ形成した。
このとき、第1内側溶着部の端部間距離は、350mmであり、第1内側溶着部と第1内側溶着部に隣接する第1´内側溶着部の距離、及び、3つの第1´内側溶着部どうしの距離は、それぞれ、後方から、順に、125mm、80mm及び73mmであった。
最後に、平板袋状物に充填空気の充填口を設け、設けた充填口から空気を充填し、図4(b)に示すエアクッションとした。
このとき、空気を充填したエアクッションの袋状部の厚さ(H1)は、50mmであり、第1空気室12の厚さ(H4)は、40mmであった。
【0103】
2.エアクッションの評価
(1)評価1:座面がアクリル製の椅子に対する座り心地性能
座面がアクリル製の椅子を準備し、当該椅子の座面上に製造したエアクッションを設置した。
次いで、体重80kgの評価者が、背もたれに背をつけずに、両足を地面に付けた状態で、膝と腿の角度が90°となるようにエアクッションに座り、下記基準に沿ってエアクッションの座り心地性能を評価し、得られた評価結果を表1に示した。
◎:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地がかなり改善した。
〇:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地が改善した。
△:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地に変化が見られなかった。
×:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地が悪化した。
【0104】
(2)評価2:座面がアクリル製の椅子における座圧分布
座面がアクリル製の椅子と、シート型圧力測定装置(X3 Pro Electronics、XSENSOR社製)とを準備し、椅子の座面上にシート型圧力測定装置のシートセンサを設置した。
次いで、当該シートセンサ上に製造したエアクッションを設置し、体重80kgの使用者が、背もたれに背をつけずに、両足を地面に付けた状態で、膝と腿の角度が90°となるようにエアクッションに座った状態での座圧分布を測定した。測定により得られた座圧分布を、図9(a)に示すように、座圧が1kPa未満の領域をA領域、座圧が1kPa~4kPa未満の間の領域をB領域、座圧が4kPa~7.5kPa未満の間の領域をC領域、座圧が7.5~12.5kPa未満の間の領域をD領域、座圧が12.5kPa以上の領域をE領域とし、5つの領域に分けた。
更に、5つの領域に分けた座圧分布を、以下の基準により評価し、得られた評価結果を表1に示した。
◎:座圧が集中しているところが全く観察されなかった。
〇:座圧が集中しているところがわずかに観察された。
△:座圧が集中しているところが観察された。
×:座圧が顕著に集中しているところが観察された。
【0105】
(3)評価3:座面にウレタンクッションを有する椅子に対する座り心地性能
座面にクッションを有する椅子を準備し、当該椅子の座面上に製造したエアクッションを設置した。
次いで、体重80kgの評価者が、背もたれに背をつけずに、両足を地面に付けた状態で、膝と腿の角度が90°となるようにエアクッションに座り、下記基準に沿ってエアクッションの座り心地性能を評価し、得られた評価結果を表1に示した。
◎:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地がかなり改善した。
〇:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地が改善した。
△:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地に変化が見られなかった。
×:エアクッションを用いない場合と比べて、座り心地が悪化した。
【0106】
(4)評価4:座面にウレタンクッションを有する椅子に対する座圧分布
座面にクッションを有する椅子と、シート型圧力測定装置(X3 Pro Electronics、XSENSOR社製)とを準備し、椅子の座面上にシート型圧力測定装置のシートセンサを設置した。
次いで、当該シートセンサ上に製造したエアクッションを設置し、体重80kgの使用者が、背もたれに背をつけずに、両足を地面に付けた状態で、膝と腿の角度が90°となるようにエアクッションに座った状態での座圧分布を測定した。測定により得られた座圧分布を、図10(a)に示すように、座圧が1kPa未満の領域をA´領域、座圧が1kPa~2.5kPa未満の間の領域をB´領域、座圧が2.5kPa~5kPa未満の間の領域をC´領域、座圧が5kPa~8.5kPa未満の間の領域をD´領域、座圧が8.5kPa以上の領域をE´領域とし、5つの領域に分けた。
更に、5つの領域に分けた座圧分布を、以下の基準により評価し、得られた評価結果を表1に示した。
◎:座圧が集中しているところが全く観察されなかった。
〇:座圧が集中しているところがわずかに観察された。
△:座圧が集中しているところが観察された。
×:座圧が顕著に集中しているところが観察された。
【0107】
[実施例2]
実施例2においては、図3(b)に示すように、3つのU字状内側溶着部と、逆V字状の第2内側溶着部と、後方支持部としての第4空気室と、を有し、以下の構成とした以外は、実施例1と同様にエアクッションを製造し、評価した。
すなわち、製造したエアクッションは、平板袋状物の最大径が675mmであり、第1内側溶着部の端部間距離は、365mmであり、第1内側溶着部と第1内側溶着部に隣接する第1´内側溶着部の距離、及び、第1´内側溶着部どうしの距離は、それぞれ130mm及び80mmであった。
又、空気を充填したエアクッションの袋状部の厚さ(H1)は、60mmであり、第1空気室12の厚さ(H4)は、50mmであった。
更に、得られた評価結果を表1に、座面がアクリル製の椅子に対する座圧分布を図9(b)に、座面にウレタンクッションを有する椅子に対する座圧分布を図10(b)にそれぞれ示した。
【0108】
[実施例3]
実施例3においては、図1(b)に示すように、3つのU字状内側溶着部と、逆V字状の第2内側溶着部と、二山形状の下方外周部と、を有し、以下の構成とした以外は、実施例1と同様にエアクッションを製造し、評価した。
すなわち、製造したエアクッションは、平板袋状物の最大径が665mmであり、第1内側溶着部の端部間距離は、375mmであり、第1内側溶着部と第1内側溶着部に隣接する第1´内側溶着部の距離、及び、第1´内側溶着部どうしの距離は、それぞれ100mm及び80mmであった。
又、空気を充填したエアクッションの袋状部の厚さ(H1)は、60mmであり、第1空気室12の厚さ(H4)は、50mmであった。
更に、得られた評価結果を表1に、座面がアクリル製の椅子に対する座圧分布を図9(c)に、座面にウレタンクッションを有する椅子に対する座圧分布を図10(c)にそれぞれ示した。
【0109】
[比較例1]
比較例1においては、エアクッションを使用しなかった以外は、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に、座面がアクリル製の椅子に対する座圧分布を図9(d)に、座面にウレタンクッションを有する椅子に対する座圧分布を図10(d)にそれぞれ示した。
【0110】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上の説明のとおり、本発明のエアクッション、エアクッションの製造方法及びエアクッションの使用方法によれば、所定の内側溶着部を介して、複数の空気室を設けることにより、利用者の左右方向への身体の傾きによらず、優れた骨盤の支持性を発揮できるようになった。
すなわち、エアクッションとして、着座時に、安定して空気を流動させることができ、腰部の周囲の空気室の立ち上がり性をより向上させることができるようになった。
そして、第2空気室及び第3空気室が、適度に変形することで、身体が固定されてしまうことを防止できるとともに、身体を左右に傾けた場合であっても、優れた骨盤の支持性を維持することができるようになった。
従って、本発明は、着座時の骨盤の前後の傾斜を、腰椎や胸椎に負担の掛かりづらい状態に支持することで、腰痛や椎間板ヘルニア等を防止するエアクッションとして使用されることが期待される。
又、空気室の立ち上がり性に優れることから、本発明のエアクッションを座面とする自動車用シートや、座椅子等として使用することが期待できる。
更に、内部の密閉性や内部に充填された流体の流動性に優れることから、空気の代わりに液体を充填することで、骨盤の支持性に優れたウォータークッションとすることも期待される。
よって、本発明は、座布団として使用されるクッションのみならず、車両用シート、椅子、座椅子、ベッド、枕等、幅広く使用されることが期待される。
【要約】
着座時に、所定の空気室が立ち上がるエアクッションであって、利用者の左右方向への身体の傾きによらず、骨盤の支持性に優れたエアクッションを提供する。
平板袋状物の外周部に沿って、外側溶着部を有するエアクッションであって、着座部としての第1空気室と、側方支持部としての第2空気室と、側方支持部としての第3空気室とを、有しており、各空気室の間を、充填空気が相互移動するように通過部を介して、連通しており、かつ、各空気室の間を区分するU字状の内側溶着部を有する。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図11