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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/54 20060101AFI20231122BHJP
   E04B 7/16 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
E04H15/54
E04B7/16 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023103733
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2023-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523235275
【氏名又は名称】株式会社創健
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 史郎
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-005877(JP,Y1)
【文献】特開2002-078423(JP,A)
【文献】特開2008-306993(JP,A)
【文献】実用新案登録第2537007(JP,Y2)
【文献】実開昭54-078209(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/54
E04B 7/16
A01G 9/22,9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物であって、
半円柱形状を有する屋根部の骨格を構成する円弧状に湾曲したフレーム部と、
前記屋根部を覆うように、前記フレーム部に沿って長さ方向に張り渡されるシート部と、
前記シート部の前記長さ方向における第1端部に連結され、回転により、前記シート部を前記長さ方向にロール状に巻き取り可能に構成された第1回転軸部と、それぞれが前記シート部の前記第1端部とは前記長さ方向における反対側の第2端部に連結され、前記シート部の幅方向に間隔を空けて互いに並列に配列された複数の紐状体と、前記複数の紐状体を介して前記第2端部に連結され、回転により、前記複数の紐状体のそれぞれを並列に巻き取ることにより、前記シート部をロール状に巻き取り可能に構成された第2回転軸部と、を有し、前記第2回転軸部から前記第1回転軸部に前記シート部を巻き取っていき、前記第2回転軸部から繰り出された前記複数の紐状体が前記フレーム部の上に張り渡された状態にすることによって前記屋根部を開放し、前記第2回転軸部に前記複数の紐状体を巻き取って、前記第1回転軸部から繰り出された前記シート部を前記フレーム部の上に張り渡すことによって前記屋根部を閉塞する、開閉機構と、
を備え、
前記フレーム部は、前記フレーム部の上に張り渡されたときの前記シート部の配置領域における幅方向両側の側端部に沿って配置された一対のレール部を含み、
前記シート部の前記第1端部における両側の側端部にはそれぞれ、前記シート部が前記第1回転軸部または前記第2回転軸部の方に巻き取られるときに、前記一対のレール部に沿って移動する被ガイド部材が設けられており、
前記一対のレール部は、前記シート部に面する面に、略矩形断面を有するレール溝を有し、
前記被ガイド部材は、前記シート部における前記レール部と面する部位に設けられており、前記レール溝に嵌り、前記レール溝に沿って滑ることによって移動する矩形状の下側部位を有する、建築物。
【請求項2】
請求項1記載の建築物であって、
前記被ガイド部材は、前記下側部位の上に、前記下側部位よりも幅が小さい矩形状の上側部位が積層された構成を有している、建築物。
【請求項3】
請求項1記載の建築物であって、
前記第2回転軸部には、前記複数の紐状体のそれぞれを挟むように配置され、前記複数の紐状体の巻取りをガイドする複数の一対のガイド板が設けられている、建築物。
【請求項4】
請求項3記載の建築物であって、
前記一対のガイド板のそれぞれの端部には、前記紐状体が巻き取られる部位に向かって下降傾斜している傾斜面が設けられている、建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物には、例えば、換気や、機材の搬入・搬出等のために屋根を開閉可能に構成されているものがある。例えば、下記の特許文献1には、屋根を覆うように張り渡されたシートを引っ張って移動させることによって屋根を開閉する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、屋根を開放する際には、遊転ローラと駆動ローラとでシートを挟んでシートを引っ張って屋根からシートを外し、シート受箱の中に折り畳んで収納している。また、屋根を閉じる際には、シートに連結されたワイヤロープをウィンチ機構によって巻き取って、シート受箱からシートを引っ張り出してシートを屋根に張り渡している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-144323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の技術では、屋根の開閉のためのシートの移動にウィンチ機構と、クラッチ付きモータに連結された2本のローラが用いられており、屋根の開閉機構の構成が十分に簡素化されているとは言えない。また、屋根から取り外されたシートが嵩張る可能性があるため、屋根を開放する作業に手間がかかる場合がある。
【0006】
本開示の技術は、より簡素な構成で、容易に屋根を開閉することができる建築物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
[第1形態]本開示の技術の一形態は、建築物として提供される。第1形態の建築物は、屋根部の骨格を構成するフレーム部と、前記屋根部を覆うように、前記フレーム部の上に長さ方向に張り渡されるシート部と、前記シート部の前記長さ方向における端部に連結され、回転により、前記シート部を前記長さ方向にロール状に巻き取り可能に構成された回転軸部を有し、前記回転軸部に前記シート部を巻き取ることによって前記屋根を開放する開閉機構と、を備える。
第1形態の建築物によれば、回転軸部を回転させてシート部をロール状に巻き取る簡素な構成によって、屋根を容易に開くことができる。また、屋根を開いた後には、シート部が回転軸部にロール状に巻き取られているため、屋根から外されたシート部が嵩張ることを抑制することができる。
【0009】
[第2形態]上記第1形態に記載の建築物において、前記回転軸部は、前記シート部の前記端部である第1端部に連結された第1回転軸部であり、前記シート部の前記第1端部とは反対側の第2端部には、前記シート部の幅方向に間隔を空けて互いに並列に配列された複数の紐状体が連結されており、前記開閉機構は、さらに、前記複数の紐状体を介して前記第2端部に連結され、回転により、前記複数の紐状体のそれぞれを並列に巻き取り可能に構成された第2回転軸部を有し、前記開閉機構は、前記第2回転軸部から前記第1回転軸部に前記シート部を巻き取っていき、前記第2回転軸部から繰り出された前記複数の紐状体が前記フレーム部の上に張り渡された状態にすることによって前記屋根を開放し、前記第2回転軸部に前記複数の紐状体を巻き取って、前記第1回転軸部から繰り出された前記シート部を前記フレーム部の上に張り渡すことによって前記屋根を閉塞してもよい。
第2形態の建築物によれば、第1回転軸部へのシート部への巻き取りによって屋根を容易に開放することができ、第2回転軸部への複数の紐状体の巻き取りによって、屋根を容易に閉塞することができる。よって、2つの回転軸部材を用いた簡素な構成の開閉機構によって、屋根の容易な開閉を実現することができる。
【0010】
[第3形態]上記第2形態に記載の建築物において、前記第2回転軸部には、前記複数の紐状体のそれぞれを挟むように配置され、前記複数の紐状体の巻取りをガイドする複数の一対のガイド板が設けられてよい。
第3形態の建築物によれば、複数の一対のガイド板により、第2回転軸部に対する複数の紐状体およびシート部の巻き取りをより円滑化することができる。よって、屋根の開閉作業を、さらに容易化することができる。
【0011】
[第4形態]上記第3形態に記載の建築物において、前記一対のガイド板のそれぞれの端部には、前記紐状体が巻き取られる部位に向かって下降傾斜している傾斜面が設けられてよい。
第4形態の建築物によれば、第2回転軸への紐状体の巻き取りをより円滑に行うことができる。よって、屋根を閉塞する作業を、より一層、容易化することができる。
【0012】
[第5形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、および、第4形態のいずれかに記載の建築物において、前記フレーム部は、前記フレーム部の上に張り渡されたときの前記シート部の配置領域における幅方向両側の側端部に沿って配置された一対のレール部を含み、前記シート部の前記両側の側端部にはそれぞれ、前記シート部が前記回転軸部に巻き取られるときに、前記一対のレール部に沿って移動する被ガイド部材が設けられてよい。
第5形態の建築物によれば、シート部をフレーム部の上に張り渡す際に、シート部の側端部に設けられた被ガイド部材がレール部に沿って移動するため、シート部が幅方向に偏ってしまうことを抑制できる。よって、屋根の開閉作業をより一層、容易化することができる。
【0013】
本開示の技術は、建築物以外の形態で実現することが可能であり、例えば、屋根の開閉機構や開閉方法、屋根を構成するシート部の巻き取り機構や巻き取り方法、屋根の開閉機構を構成する回転軸部やシート部等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】屋根部が閉じられた状態の建築物を示す概略斜視図。
図2】屋根部が開放された状態の建築物を示す概略斜視図。
図3】フレーム部と2つの回転軸部を上方から見たときの模式図。
図4】展開されたシート部を示す概略平面図。
図5】第2回転軸部に設けられた一対のガイド板の一例を示す概略斜視図。
図6】レール部に嵌まっている被ガイド部材を示す概略斜視図。
図7】閉じられた状態の屋根部を示す概略平面図。
図8】屋根部においてシート部が巻き取られていく様子を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施形態:
図1および図2は、本実施形態の建築物10を示す概略斜視図である。図1は、建築物10の屋根部12が閉塞された状態を示しており、図2は、屋根部12が開放された状態を示している。
【0016】
ここで、本明細書での説明の便宜上、建築物10に関する方向として、「X方向」、「Y方向」、「Z方向」を以下のように定義する。X方向、Y方向、および、Z方向は互いに直交する。X方向は、建築物10の横方向であり、建築物10の正面に正対したときの左右方向に相当する。Y方向は、建築物10の奥行き方向であり、建築物10の正面から背面に向かう方向に相当する。Z方向は、建築物10の高さ方向であり、建築物10の基礎地盤面に対して垂直な方向である。
【0017】
本実施形態の建築物10は、建築物10の内部空間を囲む側壁部11と、建築物10の内部空間の上方を覆う屋根部12と、屋根部12を開閉するための開閉機構20と、を備える。側壁部11は、複数の柱と、柱の間に張り渡された壁部と、で構成される。側壁部11には、建築物10の入り口や窓などが設けられる。屋根部12は、側壁部11によって下方から支持されている。
【0018】
建築物10では、屋根部12は、開閉可能に構成されている。屋根部12は、骨格を構成するフレーム部15と、フレーム部15の上に張り渡されるシート部18と、を備える。
【0019】
建築物10において、屋根部12が閉じられている状態とは、図1に示すように、シート部18が、建築物10の内部空間全体の上方を覆うように、フレーム部15の上に張り渡された状態を意味する。屋根部12が開放されている状態とは、図2に示すように、フレーム部15が外部に露出し、フレーム部15の隙間を通じて建築物10の内部空間が、建築物10の外部と連通している状態を意味する。
【0020】
図2に示すように、屋根部12のフレーム部15は、複数の鉄骨部材を格子状に組むことによって構成される。本実施形態の屋根部12は、X方向の中央部が最も高くなる略半円柱形状の形状に構成されており、そのフレーム部15は、鉄骨部材として、複数の湾曲フレーム15aと、複数の直線状フレーム15bとを有する。
【0021】
複数の湾曲フレーム15aは、それぞれが円弧状に湾曲しており、Y方向に所定の間隔で配列されている。複数の直線状フレーム15bは、X方向に所定の間隔で配列されており、各湾曲フレーム15aと、その交点において連結されている。このように上に凸に湾曲した形状を有する屋根部12であれば、フレーム部15上へのシート部18の張り渡しが容易にできる。
【0022】
なお、本実施形態では、フレーム部15は、さらに、一対のレール部35を有する。一対のレール部35については後述する。
【0023】
シート部18は、例えば、フッ素加工されたポリエルテル生地によって構成される。シート部18は、ポリエルテル生地に限定されることはなく、他の様々な生地によって構成されてもよい。シート部18は、例えば、ナイロン生地や、コットン生地、ポリコットン生地によって構成されてもよい。なお、シート部18は、防炎生地によって構成されることが好ましい。
【0024】
図1および図2に加えて、図3図8を適宜参照しながら、建築物10が備える屋根部12の開閉機構20を説明する。図3は、屋根部12のフレーム部15と、開閉機構20が備える2つの回転軸部21,22とを上方から見たときの模式図である。図3では、便宜上、シート部18や、側壁部11、支持部23の図示を省略してある。図4は、屋根部12を構成するシート部18を示す概略平面図である。
【0025】
図3に示すように、開閉機構20は、第1回転軸部21と、第2回転軸部22と、を備える。第1回転軸部21と第2回転軸部22とはそれぞれ、フレーム部15のX方向における両側に、Y方向に沿って配置されている。図4に示すように、シート部18は、屋根部12において、その長さ方向がX方向となり、その幅方向がY方向となるように設置される。
【0026】
図1および図2に示すように、第1回転軸部21と第2回転軸部22とは、屋根部12の下方において支持部23に支持されている。図1および図2の例では、支持部23は、側壁部11から離間した位置において地盤に設置されている。他の実施形態では、支持部23は、側壁部11に連結されて側壁部11に支持されていてもよい。
【0027】
図3に示すように、第1回転軸部21と第2回転軸部22の端部にはそれぞれ、ハンドル部24が連結されている。ハンドル部24は、図示されているように、各回転軸部21,22の両端に設けられていてもよいし、一方の端部にのみ設けられていてもよい。図1および図2に示すように、第1回転軸部21と第2回転軸部22は、ハンドル部24の回転操作により回転する状態で、支持部23に保持されている。支持部23は、例えば、ベアリングを介して各回転軸部21,22を保持してもよい。
【0028】
図3および図4を参照する。第1回転軸部21の側面には、シート部18の長さ方向における第1端部19aが幅方向全体にわたって連結される。これにより、第1回転軸部21を、その中心軸周りに回転させることにより、第1回転軸部21の側面に、シート部18をロール状に巻き取ることができる。
【0029】
図4に示すように、シート部18の長さ方向における第2端部19bには、複数の紐状体30が、第2端部19bからシート部18の長さ方向に延び出るように連結されている。紐状体30は、例えば、平板なベルトによって構成することができ、ポリエステルを多層に編み込んで形成した細長い生地によって作製できる。各紐状体30は、シート部18の幅方向に渡って所定の間隔を空けて互いに並列に配列されている。
【0030】
図3および図4を参照する。第2回転軸部22の側面には、シート部18の第2端部19bが、上述した複数の紐状体30を介して連結される。これにより、第2回転軸部22を、その中心軸周りに回転させることにより、第2回転軸部22の側面に各紐状体30を並列に巻き取ることができ、シート部18を第2回転軸部22の方へと引き寄せることができる。
【0031】
図3および図5を参照する。図5は、第2回転軸部22に設けられた一対のガイド板32の一例を示す概略斜視図である。図5には、一対のガイド板32の間に1本の紐状体30が巻き取られている状態が例示されている。
【0032】
図3に示すように、第2回転軸部22には、各紐状体30ごとに一対のガイド板32が設けられている。図3および図5に示すように、一対のガイド板32のそれぞれは、第2回転軸部22が中心を貫通する略円盤状の部材によって構成される。一対のガイド板32のそれぞれは、各紐状体30の巻き取りをガイドできるように、各紐状体30を、第2回転軸部22の軸方向に挟むように設置されている。
【0033】
第2回転軸部22に一対のガイド板32が設けられていることによって、第2回転軸部22において各紐状体30が巻き取られる位置がばらつくことが抑制される。よって、第2回転軸部22による紐状体30の巻き取りが円滑化される。各紐状体30が第2回転軸部22に巻き取られた後に、続いて第2回転軸部22にシート部18がロール状に巻き取られる際には、シート部18は、各ガイド板32の径方向外側の端面に支持された状態でロール状に積層されていく。よって、第2回転軸部22へのシート部18の巻き取りが円滑化される。
【0034】
図5を参照する。本実施形態では、一対のガイド板32のそれぞれの径方向外側の端部には、紐状体30が巻き取られる部位に向かって下降傾斜している傾斜面33が設けられている。一対のガイド板32のそれぞれの傾斜面33は、第2回転軸部22の軸方向に互いに対向する。この傾斜面33が設けられていることによって、紐状体30が対応する一対のガイド板32の狭間の部位へと誘導される。よって、第2回転軸部22による紐状体30の巻き取りが、より一層、円滑化される。
【0035】
図3を参照する。上述したように、フレーム部15は、一対のレール部35を有する。一対のレール部35は、フレーム部15の上に張り渡されたときのシート部18の配置領域の幅方向両側の側端部に沿って配置される。本実施形態では、各レール部35は、図2に示すように、湾曲フレーム15aと同様に湾曲しており、フレーム部15のY方向両端に配置される。
【0036】
図3に示すように、各レール部35のシート部18に面する面には、レール溝36がX方向に渡って形成されている。レール溝36は、後に参照する図6に示すように、略矩形断面を有している。
【0037】
図4を参照する。シート部18における上記の各レール部35と面する部位に被ガイド部材38が設けられている。図4では、シート部18における被ガイド部材38の配置領域を破線で図示してある。被ガイド部材38は、第2端部19bにおけるX方向両側の側端部に設けられている。被ガイド部材38は、対応するレール部35に沿って移動可能に構成されている。
【0038】
図6を参照する。図6は、被ガイド部材38の一例を示す概略斜視図である。図6には、被ガイド部材38がレール部35のレール溝36に嵌まっている状態が例示されている。図6では、便宜上、シート部18を一点鎖線で図示してある。
【0039】
被ガイド部材38は、例えば、ジュラコン(登録商標)、つまり、ポリアセタールコポリマー(POM;polyacetal,polyoxymethylene)等の樹脂材料によって構成される。本実施形態では、被ガイド部材38は、幅が大きい矩形状の下側部位38bの上に、幅が小さい矩形状の上側部位38aが積層された構成を有している。被ガイド部材38では、下側部位38bの方が上側部位38aより体積が小さく、被ガイド部材38の重心は、下側部位38bに位置している。被ガイド部材38の下側部位38bは、レール溝36に嵌まった状態でレール溝36に沿って滑るように移動可能である。上側部位38aは、その上面においてシート部18に固定されている。
【0040】
シート部18が第1回転軸部21や第2回転軸部22の方に巻き取られていく際には、被ガイド部材38がレール部35に沿って移動する。そのため、シート部18の巻き取りの際に、シート部18の側端部が幅方向に偏ってしまうことが抑制される。よって、第1回転軸部21や第2回転軸部22によるシート部18の巻き取りや屋根部12へのシート部18の張り渡しをより円滑化することができる。本実施形態では、上記のように、上側部位38aの幅が狭く、レール部35のレール溝36に嵌まる下側部位38bの幅が広くなっている。そのため、被ガイド部材38の重量の増加を抑えながら、レール溝36に沿って移動する被ガイド部材38の姿勢をより安定化させることができる。さらに、上記のように、本実施形態では、被ガイド部材38の重心が下側部位38bに位置しているため、レール溝36に沿って移動する際の被ガイド部材38の姿勢が、より一層、安定化され、レール溝36からの被ガイド部材38の脱落が抑制される。
【0041】
図7、および、図8を参照して、建築物10における屋根部12の開閉動作を説明する。図7および図8は、建築物10の屋根部12を上方から見たときの概略平面図である。図7は、屋根部12が閉塞された状態を示しており、図8は、屋根部12が開放されていく途中の状態を示している。
【0042】
閉塞された状態の屋根部12を開放する際には、図7において、実線矢印で示すように、第1回転軸部21を回転させて、第1回転軸部21にシート部18をロール状に巻き取っていく。すると、図8において実線矢印で示すように、シート部18が第1回転軸部21に巻き取られていき、図2図8に示すように、第2回転軸部22から繰り出された複数の紐状体30がフレーム部15の上に張り渡されて、屋根部12が開放された状態となる。
【0043】
開放された状態の屋根部12を閉じる際には、図8において一点鎖線の矢印で示すように、第2回転軸部22を回転させて、第2回転軸部22に複数の紐状体30を巻き取っていく。これによって、図7において一点鎖線の矢印で示すように、第1回転軸部21に巻き取られたシート部18が、その長さ方向にフレーム部15の上へと引っ張られていき、シート部18がフレーム部15の上の全体を覆うように張り渡される。そして、図1に示すように、屋根部12が閉塞された状態となる。
【0044】
以上のように、本実施形態の建築物10によれば、第1回転軸部21を回転させてシート部18をロール状に巻き取る簡素な構成によって、屋根部12を容易に開放することができる。また、屋根部12が開放された後には、シート部18は、第1回転軸部21にロール状に巻き取られるため、屋根部12から取り外されたシート部18が嵩張ることが抑制される。
【0045】
また、本実施形態の建築物10では、第2回転軸部22へシート部18に連結されている複数の紐状体30を巻き取ることによって、第1回転軸部21に巻き取られたシート部18を屋根部12へと繰り出させることにより、屋根部12を閉塞することができる。よって、シート部18がロール状に巻き取られて屋根部12の開閉を繰り返し行うことができる。
【0046】
このように、本実施形態の建築物10によれば、より簡素な構成で、容易に屋根を開閉することが可能である。
【0047】
2.他の実施形態:
本開示の技術は、上述の各実施形態の構成に限定されることはなく、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の各実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0048】
(1)他の実施形態1:
上記実施形態において、第2回転軸部22は省略されてもよい。この場合でも、第1回転軸部21の回転によって、フレーム部15の上に張り渡されたシート部18をロール状に巻き取って屋根部12を開放するように構成することができる。
【0049】
(2)他の実施形態2:
上記実施形態において、紐状体30は、ベルトによって構成されていなくてもよく、例えば、ワイヤーによって構成されていてもよい。また、第2回転軸部22の複数の一対のガイド板32は省略されてもよいし、一対のガイド板32の傾斜面33も省略されてもよい。シート部18の被ガイド部材38やフレーム部15の一対のレール部35は省略されてもよいし、上記実施形態で説明したのとは異なる構成で実現されてもよい。例えば、レール部35は、レール溝36の代わりにリブを有し、被ガイド部材38は、そのリブを挟んだ状態でリブに沿って移動するように構成されていてもよい。
【0050】
(3)他の実施形態3:
上記実施形態において、第1回転軸部21は、第2回転軸部22と同様に、複数の紐状体30を介して、シート部18の第1端部19aに連結されていてもよい。また、この構成の場合には、第1回転軸部21には、上記実施形態の第2回転軸部22と同様に一対のガイド板32が設けられてもよい。
【0051】
(4)他の実施形態4:
上記実施形態において、屋根部12は半円柱形状の形状を有していなくてもよい。屋根部12は、例えば、略三角形状や略台形形状の断面を有するように構成されていてもよい。上記実施形態において、建築物10は、側壁部11を有していなくてもよく、屋根部12に相当する部位が直接、基礎地盤に設置される構成を有していてもよい。
【0052】
(5)他の実施形態5:
上記実施形態において、第1回転軸部21や第2回転軸部22は、例えば、モータ等の駆動力源によって回転させられることによって、シート部18を自動的に巻き取るように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…建築物、11…側壁部、12…屋根部、15…フレーム部、15a…湾曲フレーム、15b…直線状フレーム、18…シート部、19a…第1端部、19b…第2端部、20…開閉機構、21…第1回転軸部、22…第2回転軸部、23…支持部、24…ハンドル部、30…紐状体、32…一対のガイド板、33…傾斜面、35…一対のレール部、36…レール溝、38…被ガイド部材、38a…上側部位、38b…下側部位
【要約】
【課題】より簡素な構成で、容易に屋根を開閉することができる建築物を提供する。
【解決手段】建築物は、屋根部の骨格を構成するフレーム部と、前記屋根部を覆うように、前記フレーム部の上に長さ方向に張り渡されるシート部と、前記シート部の前記長さ方向における端部に連結され、回転により、前記シート部を前記長さ方向にロール状に巻き取り可能に構成された回転軸部を有し、前記回転軸部に前記シート部を巻き取ることによって前記屋根を開放する開閉機構と、を備える。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8