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特許7389531開頭術用非固定型インプラント及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】開頭術用非固定型インプラント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20231122BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20231122BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20231122BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61F2/28
A61L27/18
A61L27/54
A61L27/58
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023506179
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 KR2021008115
(87)【国際公開番号】W WO2022030759
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0097049
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517336290
【氏名又は名称】ティーアンドアール バイオファブ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】T & R BIOFAB CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】542ho,237 Sangidaehak-ro Siheung-si Gyeonggi-do 15073 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】ファン ユンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ダミ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ウォンス
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-512083(JP,A)
【文献】米国特許第5545226(US,A)
【文献】米国特許第6197037(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0094428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28
A61L 27/18
A61L 27/54
A61L 27/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開頭術によって生じた頭蓋骨(1)と骨皮弁(2)との間隙を補完するためのインプラントであって、
骨皮弁(2)の外周形状に従うように成形できる可撓性楔部(100)と、
前記可撓性楔部(100)の上部又は下部に結合され、可撓性楔部(100)の両側面に延びる複数の翼部(200)と、を含み、
前記複数の翼部(200)は、多孔質構造を有し、一側の翼部(201)は骨皮弁(2)に隣接してその上に配置され、他側の翼部(202)は頭蓋骨(1)に隣接してその上に配置され
前記可撓性楔部(100)は、複数の翼部(200)の上方又は下方に複数のラインが積層されて構成され、
前記複数のラインは、突出部(┏┓)と溝部(┗┛)とが交互に繰り返されて連結された構造を有し、底面に対して鋭角を有するように傾斜したAパターンラインと鈍角を有するように傾斜したBパターンラインを含む、開頭術用非固定型インプラント。
【請求項2】
前記可撓性楔部(100)と複数の翼部(200)は、高分子とリン酸カルシウム化合物が10:0~5:5の重量比で混合された材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって印刷されることを特徴とする、請求項1に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項3】
前記翼部(200)は、第1方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第1層と、前記第1方向に対して60~120度の角度を有する第2方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第2層と、を含む格子状多孔質構造であることを特徴とする、請求項1に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項4】
前記可撓性楔部(100)の最上端と最下端の幅は、互いに同一であり、可撓性楔部(100)の中間部の幅よりは大きいことを特徴とする、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項5】
前記高分子は、ポリエチレン(Polyethylene)、メタロセン-PE(m-PE)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリイソブチレン(polyisobutylene)、ポリ-4-メチルペンテン-1(poly-4-methylpentene-1)、ポリブタジエン(polybutadiene)、ポリイソプレン(polyisoprene)、ポリシクロオクテン(polycyclooctene)、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル(ABS)、スチレン-アクリロニトリル-アクリレート(ASA)、スチレン-エチレン(Styrene-ethylene)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロプレン及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート(Poly-Butyl acrylate)、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアセテート、ポリアクリルニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアミド(Polyamide)、ポリイミド(polyimides)、ポリアミドイミド(polyamide imides)、ポリエーテルイミド(polyether imides)、ポリエステルイミド(polyester imides)、ポリ(エーテル)ケトン(poly(ether)ketones)、ポリスルホン(polysulphones)、ポリエーテルスルホン(polyethersulphones)、ポリアリールスルホン(polyarylsulphone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulphide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazoles)、ポリヒダントイン(polyhydantoins)、テレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)テレフタレート、ポリエチレンナフチレート、ポリ-1,4-ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシナフタレート、ポリラクチド(polylactides)、ポリグリコリド(polyglycoides)、ポリカプロラクトン(polycaprolactones)、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアミド(polyamides)、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリエステルアミド(polyesteramides)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリジオキサノン(polydioxanones)、ポリアセタール(polyacetals)、ポリケタール(polyketals)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリオルソカーボネート(polyorthocarbonates)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutyrates)、ポリヒドロキシバレレート(polyhydroxyvalerates)、ポリアルキレンオキサレート(polyalkylene oxalate)、ポリアルキレンサクシネート(polyalkylene succinates)、ポリ(リンゴ酸)(poly(malic acid))、ポリ(アミノ酸)(poly(amino acid))、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリヒドロキシセルロース(polyhydroxycellulose)、キチン(chitine)、キトサン(chitosan)、ポリ(L-乳酸)(poly(L-lactic acid))、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(poly(lactide-co-glycolide))、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート(poly(hydroxybutyrate-co-valerate))、及びこれらのコポリマー(copolymers)とターポリマー(terpolymers)よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項6】
前記リン酸カルシウム化合物は、ヒドロキシアパタイト(Hydroxyapatite、HAP)、炭酸アパタイト(Carbonated apatite)、リン酸三カルシウム(Tricalcium Phosphate、TCP)、リン酸水素カルシウム(Calcium Hydrogen Phosphate)、第1リン酸カルシウム(Monocalcium phosphate)、第2リン酸カルシウム(Dicalcium phosphate)、二水素リン酸カルシウム(Calcium dihydrogen phosphate)、第3リン酸カルシウム(Tricalcium phosphate)、第10リン酸カルシウム(Octacalcium phosphate)、及びピロリン酸カルシウム(Calcium pyrophosphate)よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項7】
前記高分子とリン酸カルシウム化合物とが混合された材料には、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、デキストラン(dextran)及びアルジネート(alginate)よりなる群から選択される天然高分子物質が少なくとも1種さらに含まれることを特徴とする、請求項2に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項8】
前記高分子とリン酸カルシウム化合物とが混合された材料には、骨形成タンパク質(BMP)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、転換成長因子(TGFbeta)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGE)、インスリン様成長因子(IGF-1)、チオレドキシン(TRX)、幹細胞因子(SCF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒト成長ホルモン(Human Growth Hormone)及びアンジオゲニン(Angiogenin)のうちの少なくとも1種がさらに含まれることを特徴とする、請求項2に記載の開頭術用非固定型インプラント。
【請求項9】
開頭術により生じた頭蓋骨(1)と骨皮弁(2)との間隙を補完するためのインプラント(10)の製造方法であって、
高分子とリン酸カルシウム化合物とを10:0~5:5の重量比で混合して材料を準備するステップと、
前記材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって複数の翼部(200)を印刷するステップと、
前記複数の翼部(200)の上方に前記材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって複数のラインを積層させて可撓性楔部(100)を形成するステップと、を含み、
前記複数の翼部(200)は、多孔質構造を有し、一側の翼部(201)は骨皮弁(2)に隣接してその上に配置され、他側の翼部(202)は頭蓋骨(1)に隣接してその上に配置され
前記可撓性楔部(100)を形成するステップは、
前記可撓性楔部(100)は、複数の翼部(200)の上方又は下方に複数のラインが積層されて構成され、
前記複数のラインは、突出部(┏┓)と溝部(┗┛)が交互に繰り返されて連結された構造を有し、底面に対して鋭角を有するように傾斜したAパターンラインと鈍角を有するように傾斜したBパターンラインを含むように形成される、開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【請求項10】
前記複数の翼部(200)を印刷するステップは、
第1方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第1層を形成するステップと、前記第1方向に対して60~120度の角度を有する第2方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第2層を形成するステップと、を含み、
第1層を形成するステップと、第2層を形成するステップとが順次行われるが、少なくとも2回繰り返し行われることを特徴とする、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【請求項11】
前記可撓性楔部(100)の最上端と最下端の幅は、互いに同一であり、可撓性楔部(100)の中間部の幅よりは大きく形成する、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【請求項12】
前記高分子は、ポリエチレン(Polyethylene)、メタロセン-PE(m-PE)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリイソブチレン(polyisobutylene)、ポリ-4-メチルペンテン-1(poly-4-methylpentene-1)、ポリブタジエン(polybutadiene)、ポリイソプレン(polyisoprene)、ポリシクロオクテン(polycyclooctene)、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル(ABS)、スチレン-アクリロニトリル-アクリレート(ASA)、スチレン-エチレン(Styrene-ethylene)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロプレン及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート(Poly-Butyl acrylate)、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアセテート、ポリアクリルニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアミド(Polyamide)、ポリイミド(polyimides)、ポリアミドイミド(polyamide imides)、ポリエーテルイミド(polyether imides)、ポリエステルイミド(polyester imides)、ポリ(エーテル)ケトン(poly(ether)ketones)、ポリスルホン(polysulphones)、ポリエーテルスルホン(polyethersulphones)、ポリアリールスルホン(polyarylsulphone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulphide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazoles)、ポリヒダントイン(polyhydantoins)、テレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)テレフタレート、ポリエチレンナフチレート、ポリ-1,4-ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシナフタレート、ポリラクチド(polylactides)、ポリグリコリド(polyglycoides)、ポリカプロラクトン(polycaprolactones)、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアミド(polyamides)、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリエステルアミド(polyesteramides)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリジオキサノン(polydioxanones)、ポリアセタール(polyacetals)、ポリケタール(polyketals)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリオルソカーボネート(polyorthocarbonates)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutyrates)、ポリヒドロキシバレレート(polyhydroxyvalerates)、ポリアルキレンオキサレート(polyalkylene oxalate)、ポリアルキレンサクシネート(polyalkylene succinates)、ポリ(リンゴ酸)(poly(malic acid))、ポリ(アミノ酸)(poly(amino acid))、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリヒドロキシセルロース(polyhydroxycellulose)、キチン(chitine)、キトサン(chitosan)、ポリ(L-乳酸)(poly(L-lactic acid))、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(poly(lactide-co-glycolide))、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート(poly(hydroxybutyrate-co-valerate))、及びこれらのコポリマー(copolymers)とターポリマー(terpolymers)よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【請求項13】
前記リン酸カルシウム化合物は、ヒドロキシアパタイト(Hydroxyapatite、HAP)、炭酸アパタイト(Carbonated apatite)、リン酸三カルシウム(Tricalcium Phosphate、TCP)、リン酸水素カルシウム(Calcium Hydrogen Phosphate)、第1リン酸カルシウム(Monocalcium phosphate)、第2リン酸カルシウム(Dicalcium phosphate)、二水素リン酸カルシウム(Calcium dihydrogen phosphate)、第3リン酸カルシウム(Tricalcium phosphate)、第10リン酸カルシウム(Octacalcium phosphate)、及びピロリン酸カルシウム(Calcium pyrophosphate)よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【請求項14】
前記高分子とリン酸カルシウム化合物とが混合された材料には、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、デキストラン(dextran)及びアルジネート(alginate)よりなる群から選択される天然高分子物質が少なくとも1種さらに含まれることを特徴とする、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【請求項15】
前記高分子とリン酸カルシウム化合物とが混合された材料には、骨形成タンパク質(BMP)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、転換成長因子(TGFbeta)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGE)、インスリン様成長因子(IGF-1)、チオレドキシン(TRX)、幹細胞因子(SCF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒト成長ホルモン(Human Growth Hormone)及びアンジオゲニン(Angiogenin)のうちの少なくとも1種がさらに含まれることを特徴とする、請求項に記載の開頭術用非固定型インプラントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開頭術によって生じた頭蓋骨と骨皮弁との間隙を補完するためのインプラントに関し、高分子単独、又は骨成分と同様の骨伝導性に優れたセラミック系化合物をさらに含む素材を用いて3Dプリンタによって製作されたインプラント及びその提供方法を含む。
【0002】
本発明による開頭術用非固定型インプラントは、3Dプリンティング技術によって製作され、構造的柔軟性を有し、多様な欠損部に適用可能であり、挿入部の楔形の形状により欠損部に正確に結着されて別途の固定装置が不要であるという利点がある。
【0003】
課題固有番号:P0008811
部処名:産業通商資源部
研究管理専門機関:韓国産業技術振興院
研究事業名:3Dプリンティング医療機器産業技術実証事業
研究課題名:高分子ベースの生分解性素材を活用した手術用カスタマイズ3Dプリンティングインプラントの実証
寄与率:1/1
主管機関:(株)ティーアンドアール バイオファブ
研究期間:2019年4月1日~2022年12月31日
【背景技術】
【0004】
頭蓋部を介して神経外科手術を行う場合、患者の脳に接近するために開頭術が実行され、この過程で切削による骨間の欠損部である間隙が残る。このような骨間の隙間は露出した脳を保護することができず、切開面で血液の流れが円滑ではないため骨融解を引き起こす可能性があり、手術後に間隙に沿って皮膚の陥没が生じて患者が審美的に不満足を引き起こすという問題点がある。
【0005】
従来技術では、かかる問題点を解決するために、金属メッシュ或いは骨セメントなどを用いて欠損部を補完する方法が使用されてきた。
【0006】
Ti(Titanium)或いはTi(Titanium)合金などの金属メッシュを用いて施術が行われる場合には、皮膚が陥没する問題点を防止することができるという利点があるものの、骨組織の治癒が誘導できず、頭蓋骨に固定するための別途の固定装置が必要であるという欠点がある。また、金属素材の特性により治療用放射線が照射される場合、放射線が金属素材を通過できず効果的な放射線治療が不可能であり、移植された金属インプラントによる放射線の散乱により周辺組織の壊死や皮弁の退縮などによりインプラント露出などの副作用が発生する可能性がある。
【0007】
このような問題点の対応方案として用いられる骨セメントを用いた頭蓋骨陥没部位の再建術は、金属メッシュを用いた施術の欠点が一定程度補完されたが、無定形の形状を頭蓋骨の間隙に埋めるための長い作業時間により手術者の使用利便性が低下し、セメントの硬化プロセス中に発熱反応により周辺組織が損傷するおそれがあるという問題点は依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を効果的に解決するために、高分子素材と共に骨伝導性に優れたセラミック系複合素材及び生体材料を用いるインプラントを提供するためのものであって、三次元設計を介して間隙に正確に結着され且つ使用利便性が増大した非固定型インプラント及びその製造方法を提供しようとする。
【0009】
また、本発明は、開頭術によって生成された欠損部がインプラントによって正確に結着されるように機能し、生体適合性、骨結合力、組織浸透性が向上した、3Dプリンタで製造された非固定型インプラント及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例による開頭術用非固定型インプラント10は、脳手術中に頭蓋骨1から除去された骨皮弁2を再付着させるためのものであって、骨皮弁2の外周形状に従うように成形できる可撓性楔部100と、前記可撓性楔部100の上部又は下部に結合され、可撓性楔部100の両側面に延びる複数の翼部200と、を含む。
【0011】
前記複数の翼部200は、多孔質構造を有し、一側の翼部201は骨皮弁2に隣接してその上に配置され、他側の翼部202は頭蓋骨1に隣接してその上に配置される。
【0012】
前記可撓性楔部100と複数の翼部200は、高分子とリン酸カルシウム化合物が10:0~5:5の重量比で混合された材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって印刷されることが好ましい。
【0013】
前記翼部200は、第1方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第1層と、前記第1方向に対して60~120度の角度を有する第2方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第2層と、を含む、格子状多孔質構造であることがさらに好ましい。
【0014】
また、前記可撓性楔部100は、複数の翼部200の上方又は下方に複数のラインが積層されて構成され、前記複数のラインは、突出部(┏┓)と溝部(┗┛)とが交互に繰り返されて連結された構造を有し、底面に対して鋭角を有するように傾斜したAパターンラインと鈍角を有するように傾斜したBパターンラインとが積層された形態で製造されることが好ましい。
【0015】
このとき、前記可撓性楔部100の最上端と最下端の幅は、互いに同一であり、可撓性楔部100の中間部の幅よりは大きいことがさらに好ましい。これは、頭蓋骨1と骨皮弁2を安定的に固定することができるからである。
【0016】
前記可撓性楔部100及び複数の翼部200の3Dプリンティングに用いられる材料である高分子としては、ポリエチレン(Polyethylene)、メタロセン-PE(m-PE)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリイソブチレン(polyisobutylene)、ポリ-4-メチルペンテン-1(poly-4-methylpentene-1)、ポリブタジエン(polybutadiene)、ポリイソプレン(polyisoprene)、ポリシクロオクテン(polycyclooctene)、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル(ABS)、スチレン-アクリロニトリル-アクリレート(ASA)、スチレン-エチレン(Styrene-ethylene)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロプレン及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート(Poly-Butyl acrylate)、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアセテート、ポリアクリルニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアミド(Polyamide)、ポリイミド(polyimides)、ポリアミドイミド(polyamide imides)、ポリエーテルイミド(polyether imides)、ポリエステルイミド(polyester imides)、ポリ(エーテル)ケトン(poly(ether)ketones)、ポリスルホン(polysulphones)、ポリエーテルスルホン(polyethersulphones)、ポリアリールスルホン(polyarylsulphone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulphide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazoles)、ポリヒダントイン(polyhydantoins)、テレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)テレフタレート、ポリエチレンナフチレート、ポリ-1,4-ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシナフタレート、ポリラクチド(polylactides)、ポリグリコリド(polyglycoides)、ポリカプロラクトン(polycaprolactones)、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアミド(polyamides)、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリエステルアミド(polyesteramides)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリジオキサノン(polydioxanones)、ポリアセタール(polyacetals)、ポリケタール(polyketals)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリオルソカーボネート(polyorthocarbonates)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutyrates)、ポリヒドロキシバレレート(polyhydroxyvalerates)、ポリアルキレンオキサレート(polyalkylene oxalate)、ポリアルキレンサクシネート(polyalkylene succinates)、ポリ(リンゴ酸)(poly(malic acid))、ポリ(アミノ酸)(poly(amino acid))、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリヒドロキシセルロース(polyhydroxycellulose)、キチン(chitine)、キトサン(chitosan)、ポリ(L-乳酸)(poly(L-lactic acid))、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(poly(lactide-co-glycolide))、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート(poly(hydroxybutyrate-co-valerate))及びこれらのコポリマー(copolymers)とターポリマー(terpolymers)よりなる群から選択される少なくとも一つが使用できる。
【0017】
また、リン酸カルシウム化合物としては、ヒドロキシアパタイト(Hydroxyapatite、HAP)、炭酸アパタイト(Carbonated apatite)、リン酸三カルシウム(Tricalcium Phosphate、TCP)、リン酸水素カルシウム(Calcium Hydrogen Phosphate)、第1リン酸カルシウム(Monocalcium phosphate)、第2リン酸カルシウム(Dicalcium phosphate)、二水素リン酸カルシウム(Calcium dihydrogen phosphate)、第3リン酸カルシウム(Tricalcium phosphate)、第10リン酸カルシウム(Octacalcium phosphate)、及びピロリン酸カルシウム(Calcium pyrophosphate)よりなる群から選択される少なくとも1種が使用できる。
【0018】
前記高分子とリン酸カルシウム化合物とが混合された材料には、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、デキストラン(dextran)及びアルジネート(alginate)よりなる群から選択される天然高分子物質が少なくとも1種さらに含まれることができる。
【0019】
高分子とリン酸カルシウム化合物とが混合された材料、或いは高分子、リン酸カルシウム化合物及び天然高分子物質が混合された材料には、必要に応じて、骨形成タンパク質(BMP)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、転換成長因子(TGFbeta)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGE)、インスリン様成長因子(IGF-1)、チオレドキシン(TRX)、幹細胞因子(SCF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒト成長ホルモン(Human Growth Hormone)及びアンジオゲニン(Angiogenin)の中から選択される少なくとも1種がさらに含まれることも可能である。
【0020】
本発明の他の実施例として、開頭術により生じた頭蓋骨1と骨皮弁2との間隙を補完するためのインプラントの製造方法が挙げられるが、高分子とリン酸カルシウム化合物とを10:0~5:5の重量比で混合して材料を準備するステップと、前記複合材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって複数の翼部200を印刷するステップと、前記複数の翼部200の上方に前記複合材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって複数のラインを積層させて可撓性楔部100を形成するステップと、を含む。
【0021】
このとき、前記複数の翼部200は、多孔質構造を有し、一側の翼部201は骨皮弁2に隣接してその上に配置され、他側の翼部202は頭蓋骨1に隣接してその上に配置されるように形成することが好ましい。
【0022】
前記複数の翼部200を印刷するステップは、第1方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第1層を形成するステップと、前記第1方向に対して60~120度の角度を有する第2方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第2層を形成するステップと、を含み、第1層を形成するステップと、第2層を形成するステップとが順次行われる。
【0023】
前記可撓性楔部100を形成するステップは、前記可撓性楔部100は、複数の翼部200の上方又は下方に複数のラインが積層されるように行われ、前記複数のラインは、突出部(┏┓)と溝部(┗┛)が交互に繰り返されて連結された構造を有し、底面に対して鋭角を有するように傾斜したAパターンラインと鈍角を有するように傾斜したBパターンラインを含むように形成されることが好ましい。
前記可撓性楔部100の最上端と最下端の幅は、互いに同一であり、可撓性楔部100の中間部の幅よりは大きく形成することがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による開頭術用非固定型インプラントは、PCL(ポリカプロラクトン(polycaprolactone))等の高分子を用いて製造され、高い延伸特性により開頭術後に発生した曲線状欠陥にも柔軟に適用可能であり、頭蓋骨の隙間に挿入される部分は、楔形構造に設計され、挿入後には隙間に別途の固定装置なしにも固定できるため、欠損部への正確な結着能力を有するという効果がある。
【0025】
また、本発明による開頭術用非固定型インプラントは、リン酸カルシウムなどのセラミック系化合物素材をさらに含むことができ、実際に骨を構成する無機成分と結晶学的、化学的に類似し、骨と直接結合する特性と共に優れた骨伝導性を有する。
【0026】
また、高分子物質として生分解性高分子を使用する場合には、別途の除去が必要ない体内吸収特性により約24ヶ月の分解期間を有することができ、特有の多孔質構造によりインプラントの内部に組織が浸透して新生骨に置き換えられるか或いは体内に吸収されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)及び(b)は本発明による開頭術用非固定型インプラントの平面図及び斜視図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ図1の(i)方向及び(ii)方向に切断された断面図である。
図3】本発明による開頭術非固定型インプラントの楔部を交互に構成する例示的なパターンであるパターンA及びBを図示的に示した図である。
図4】本発明による開頭術非固定型インプラントの楔部の断面構造を図示的に示した図である。
図5】本発明による開頭術非固定型インプラントの柔軟な構造を示す写真である。
図6】本発明による開頭術非固定型インプラントを用いて頭蓋骨1から除去された骨皮弁2を再付着させる前と後を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施例によって詳細に説明する前に、本明細書及び請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的又は辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術思想に合致する意味と概念で解釈されるべきであることを明らかにする。
【0029】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0030】
以下では、本発明の実施例について説明する。しかし、本発明の範疇は以下の好適な実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の権利範囲内で本明細書に記載された内容の様々な変形形態を実施することができる。
【0031】
本発明による開頭術用非固定型インプラントは、開頭術によって生成された欠損部がインプラントにより正確に結着されるように機能し、生体適合性、骨結合力、組織浸透性が向上した効果を有するものであって、FDM方式の3Dプリンタによって製造された非固定型インプラントである。
【0032】
図1及び図2を参照すると、本発明による開頭術用非固定型インプラント10は、脳手術中に頭蓋骨1から除去された骨皮弁2を再付着させるためのものであって、骨皮弁2の外周形状に従うように成形される可撓性楔部100と、前記可撓性楔部100の上部或いは下部に結合され、可撓性楔部100の両側面に延びる複数の翼部200と、を含む。
【0033】
前記複数の翼部200は、多孔質構造を有するように3Dプリンタによって製作できるが、一側の翼部(201或いは202)は骨皮弁2に隣接してその上に配置され、他側の翼部(202或いは201)は頭蓋骨1に隣接してその上に配置される。
【0034】
前記可撓性楔部100と複数の翼部200は、高分子とリン酸カルシウム化合物とが10:0~5:5の重量比で混合された材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって順次印刷される。
【0035】
前記リン酸カルシウム化合物としては、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)が使用されることが好ましいが、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)は、粉砕乳鉢或いは篩を用いて平均粒径約100μmのものが使用できる。
【0036】
まず、図1(a)の平面図と図1(b)の斜視図から確認されるように、前記翼部200は、複数のラインが一定の間隔で配置される層が複数積層されて構成される。すなわち、第1方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第1層と、前記第1方向に対して60~120度の角度を有する第2方向に延びる複数のラインが、300~500μmの幅及び300~500μmの間隔を有するように配置される第2層と、が含まれる。
【0037】
このような第1層と第2層が順次積層された基本単位ユニットが1回~5回の範囲で積層される方式で翼部200を構成する。
【0038】
各層を構成するラインの幅と間隔は、一定に保たれることが好ましく、適切なレベルで変化することも可能であるが、一定の厚さの構成ラインが方向性をもって配列されるために一定の幅と間隔を有する場合、優れた機械的強度だけでなく、十分な弾性力と可撓性(flexibility)を有する。
【0039】
図1から確認されるように、このような翼部200は、六角形などの多角形の形状を有することが好ましいが、以後、楔部100が垂直に形成される中心部の幅が最も長く、前記中心部の左右に対称な構造を持つことが好ましく、六角形の形状を有することが好ましいが、必ずしもこのような形状に限定されるものではない。
【0040】
その後、このような翼部200の中心部に垂直に楔部100がFDM方式の3Dプリンティング方式で形成されるが、前述した翼部200と同じ材質で形成されることが好ましい。翼部200の上に垂直積層される楔部100の積層形態は、水平(0度)を基準として60度~120度の範囲で傾斜した形態のラインで構成できるが、各ライン間の間隔は、2~3mmであり(図3のP)、中間が途切れない一筆描き方式でライン間の間隔が一定に保たれるように形成される(図3参照)。
【0041】
このとき、楔部100の一層の高さは100~200μmであり、楔部の全高は3~8mmの値を有することが好ましい。楔部100の一層を構成するとき、ライン間の間隔(図3のP)を調節して横方向に柔軟性を制御することができるが、このとき、一方向にのみ曲げられるか或いは一方向に柔軟性を与えないために、図3に示すように、パターンAとパターンBとを層別に交差して積層することが好ましい。
【0042】
交差積層方式としては、図3に示したパターンAとパターンBを交互に積層するABABAB形態だけでなく、AABBAAあるいはAAABBB等の形態で交差積層することも可能であり(下記の表1~3参照)、このような積層規則が維持されて6層以上が積層されることも可能であるので、表1~3のように必ずしも6層のみに限定されるものではない。
【0043】
すなわち、前記可撓性楔部100は、複数の翼部200の中心部の上方或いは下方に複数のラインが積層されて構成され、前記複数のラインは、突出部(┏┓)と溝部(┗┛)が交互に繰り返されて連結された構造を持つが、底面に対して鋭角を有するように傾斜したAパターンラインと鈍角を有するように傾斜したBパターンラインとを含むが、前記底面となす角度の大きさは、鋭角の場合には45~90°、鈍角の場合には135~90°の範囲を有するが、実際に形成されるAパターンとBパターンの傾斜角度の和が180°となる相互対称構造を有することがさらに好ましい。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
このように翼部200の中心部に垂直に形成される楔部100に沿って切断する場合(図1の(i)方向)の断面が図2(b)に示されており、楔部100を含む翼部200の最大幅に沿って切断された(図1の(ii)方向)断面が図2(a)に示されている。
【0048】
図2(a)から確認されるように、前記可撓性楔部100の最上端と最下端の幅は、互いに同一であり、可撓性楔部100の中間部の幅よりは大きく形成されることが好ましい。
【0049】
これは、開頭術適用の際に、骨皮弁2と頭蓋骨1との間の空隙部分に前記楔部100が挿入されるが、最上端の幅と最下端の幅が中間部に比べて大きいことにより、楔部が安定的に挿入されて固定できるためである。
【0050】
図4には、図2(a)の形態を有する本発明による開頭術用非固定型インプラント10の楔部と翼部の断面構造を図式的に示した。前述したように、楔部の最初層と最後層の幅(図4、A)は、互いに同一であり、約3~10mmの範囲が好ましい。また、楔部の中間部(図4、B)は、相対的に最も狭い幅を有するが、約2~9mmの幅を有することがさらに好ましい。
【0051】
このような構造を持つ開頭術用非固定型インプラントは、高分子とリン酸カルシウム化合物とが10:0~5:5の重量比で混合された複合材料を用いて製造できる。
【0052】
このとき、使用できる高分子は、ポリエチレン(Polyethylene)、メタロセン-PE(m-PE)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリイソブチレン(polyisobutylene)、ポリ-4-メチルペンテン-1(poly-4-methylpentene-1)、ポリブタジエン(polybutadiene)、ポリイソプレン(polyisoprene)、ポリシクロオクテン(polycyclooctene)、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル(ABS)、スチレン-アクリロニトリル-アクリレート(ASA)、スチレン-エチレン(Styrene-ethylene)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロプレン及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート(Poly-Butyl acrylate)、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアセテート、ポリアクリルニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアミド(Polyamide)、ポリイミド(polyimides)、ポリアミドイミド(polyamide imides)、ポリエーテルイミド(polyether imides)、ポリエステルイミド(polyester imides)、ポリ(エーテル)ケトン(poly(ether)ketones)、ポリスルホン(polysulphones)、ポリエーテルスルホン(polyethersulphones)、ポリアリールスルホン(polyarylsulphone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulphide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazoles)、ポリヒダントイン(polyhydantoins)、テレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)テレフタレート、ポリエチレンナフチレート、ポリ-1,4-ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシナフタレート、ポリラクチド(polylactides)、ポリグリコリド(polyglycoides)、ポリカプロラクトン(polycaprolactones)、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアミド(polyamides)、ポリウレタン(polyurethanes)、ポリエステルアミド(polyesteramides)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリジオキサノン(polydioxanones)、ポリアセタール(polyacetals)、ポリケタール(polyketals)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリオルソカーボネート(polyorthocarbonates)、ポリホスファゼン(polyphosphazenes)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutyrates)、ポリヒドロキシバレレート(polyhydroxyvalerates)、ポリアルキレンオキサレート(polyalkylene oxalate)、ポリアルキレンサクシネート(polyalkylene succinates)、ポリ(リンゴ酸)(poly(malic acid))、ポリ(アミノ酸)(poly(amino acid))、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリヒドロキシセルロース(polyhydroxycellulose)、キチン(chitine)、キトサン(chitosan)、ポリ(L-乳酸)(poly(L-lactic acid))、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(poly(lactide-co-glycolide))、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート(poly(hydroxybutyrate-co-valerate))、及びこれらのコポリマー(copolymers)とターポリマー(terpolymers)よりなる群から選択される少なくとも一つ或いは二つが使用できるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0053】
また、リン酸カルシウム化合物は、天然骨とは無機成分が類似したもので、骨が伝導されて成長できるように助けることができるものであれば、特に限定されずに使用可能である。
【0054】
一例として、ヒドロキシアパタイト(Hydroxyapatite、HAP)、炭酸アパタイト(Carbonated apatite)、リン酸三カルシウム(Tricalcium Phosphate、TCP)、リン酸水素カルシウム(Calcium Hydrogen Phosphate)、第1リン酸カルシウム(Monocalcium phosphate)、第2リン酸カルシウム(Dicalcium phosphate)、二水素リン酸カルシウム(Calcium dihydrogen phosphate)、第3リン酸カルシウム(Tricalcium phosphate)、第10リン酸カルシウム(Octacalcium phosphate)、及びピロリン酸カルシウム(Calcium pyrophosphate)よりなる群から選択された少なくとも1種を使用することができる。
【0055】
選択的に、前記高分子とリン酸カルシウム化合物には、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、デキストラン(dextran)或いはアルジネートなどの天然高分子物質が少なくとも1種さらに含まれることができ、好ましくは、前記高分子100重量部に対して前記天然高分子物質が100重量部以内の範囲で含まれることができる。
【0056】
また、選択的に、前記高分子とリン酸カルシウム化合物には、骨形成タンパク質(BMP)、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、転換成長因子(TGFbeta)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGE)、インスリン様成長因子(IGF-1)、チオレドキシン(TRX)、幹細胞因子(SCF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒト成長ホルモン(Human Growth Hormone)及びアンジオゲニン(Angiogenin)の中の少なくとも1種をさらに追加することも可能であり、好ましくは、前記高分子100重量部に対して1.0重量部以下の範囲で含まれることができる。
【0057】
図5には、このような本発明の一実施例による開頭術用非固定型インプラント10の構成成分、及び翼部及び楔部特有の構造的特性である柔軟性を確認するために、様々な方式で物理的な力を加えて曲げたときの様子を確認した写真が提示されている。
【0058】
物理的な力を加えたとき、破断なく柔軟に曲がることを確認することができ、様々な曲率を有する開頭術切開が行われても安定して、頭蓋骨1と分離された骨皮弁2との間に形成された隙間を埋めながらこれらを固定させることができることが分かる(翼部には追加的に別途のホールを形成して頭蓋骨と頭蓋骨皮弁(flap)がねじ固定できる)。
【0059】
特に、従来のインプラントの場合、本発明の楔部に対応する中心軸が一体型の構造を持っており、機械的強度を維持しながら、同時に力を加えて一定の角度以上にインプラントを曲げることが不可能であったが(一定のレベル以上の機械的強度を有する場合、曲げ角度が増加するにつれて、もはや曲がらずに破断する)、本発明によるインプラントの場合、図1及び表1~表3から確認される特有の楔構造を持つ中心軸により、機械的強度を維持しながらも同時に柔軟性を極大化することができ、図5(b)のように360度に曲げることができるという利点がある。
【0060】
本発明の他の実施例として、開頭術用非固定型インプラント10の製造方法が挙げられるが、高分子とリン酸カルシウム化合物を10:0~5:5の重量比で混合して材料を準備するステップと、前記材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって複数の翼部200を印刷するステップと、前記複数の翼部200の上方に前記材料を用いてFDM方式の3Dプリンタによって複数のラインを積層させて可撓性楔部100を形成するステップと、を含む。
【0061】
前記複数の翼部200は、多孔質構造を有し、一側の翼部201は骨皮弁2に隣接してその上に配置され、他側の翼部202は頭蓋骨1に隣接してその上に配置されることができるが、翼部には追加的に別途のホールを形成して頭蓋骨と頭蓋骨皮弁のそれぞれに開頭術用非固定型インプラントをねじ固定することができる。
【0062】
前記高分子とリン酸カルシウム化合物が混合された複合材料FDM方式の3Dプリンタを用いて印刷するために、高分子をまず混合容器に投入した後、40分間160±20℃で溶融させ、その後、リン酸カルシウムを定量して、溶融した高分子と混合した後、約1200rpmの速度で2分間撹拌する混合ステップを約6回繰り返し行った。
【0063】
このように製造された複合材料を3Dプリンタシリンジに入れた後、500μmのノズルを用いて吐き出した。このときの吐出温度は120度に維持し、吐出のための空気圧は500kPaに維持した。プリンティング速度は、積層される層ごとに異なる値を有することができるように設定されたが、約700~1000mm/minの範囲に制御した。
【0064】
このように製造された開頭術用非固定型インプラント10の適用前(a)と適用後(b)の写真を図6に示した。頭蓋骨1と骨皮弁(flap)2との間に安定して本発明による開頭術用非固定型インプラント10が位置して頭蓋骨1と骨皮弁2を固定していることを確認することができる。
【0065】
本発明は、上述した特定の実施例及び説明に限定されるものではなく、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも様々な変形実施が可能であり、それらの変形も本発明の保護範囲内にある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、高分子素材と共に骨伝導性に優れたセラミック系複合素材及び生体材料を使用するインプラントを提供するためのものであって、三次元設計によって隙間に正確に結着され且つ使用利便性が増大した非固定型インプラント及びその製造方法を提供することができ、開頭術によって生成された欠損部が正確に結着でき、生体適合性、骨結合力、組織浸透性が向上した、3Dプリンタで製造された非固定型インプラント及びその製造方法を提供することができる。
【0067】
また、本発明による開頭術用非固定型インプラントは、PCL(ポリカプロラクトン(polycaprolactone))等の高分子を用いて製造されることにより、高い延伸特性により開頭術後に発生した曲線状欠陥にも柔軟に適用可能であり、頭蓋骨の間隙に挿入される部分は楔形構造に設計され、挿入後には間隙に別途の固定装置なしにも固定できるため、欠損部への正確な結着能力を有する効果があるので、産業上利用可能性がある。
【符号の説明】
【0068】
1 頭蓋骨
2 頭蓋骨皮弁(flap)
10 開頭術用非固定型インプラント
100 可撓性楔部
200 翼部
201 一側の翼部
202 他側の翼部
図1
図2
図3
図4
図5
図6