(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20231122BHJP
F21S 8/00 20060101ALI20231122BHJP
F21V 5/02 20060101ALI20231122BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20231122BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20231122BHJP
F21W 111/02 20060101ALN20231122BHJP
F21Y 103/10 20160101ALN20231122BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231122BHJP
【FI】
F21S2/00 330
F21S8/00 100
F21S2/00 340
F21V5/02 100
F21V5/02 150
F21V5/02 300
F21V5/02 350
F21S2/00 350
G02B5/08 Z
G02B7/182
F21W111:02
F21Y103:10
F21Y115:10 300
F21Y115:10 500
(21)【出願番号】P 2019199739
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-126506(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096098(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/063759(WO,A1)
【文献】実開昭60-035403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21S 8/00
F21V 5/02
G02B 5/08
G02B 7/182
F21W 111/02
F21Y 103/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の走行方向に延びる照明光によって当該道路を照明する照明器具において、
前記照明光を透過する板状のベース板を有した光学部材を備え、
前記ベース板は、前記照明光が入射する側の入射面に、そこに入射する光を、前記ベース板の出射面から広角方向に出射させる複数の凸状の入射面凸部が設けられ
、
前記入射面凸部のそれぞれは、
その断面において長辺と短辺とを有する鋸歯形状であり、前記短辺で反射した前記照明光が前記長辺に入射する形状であり、
前記長辺は膨出する曲面形状に形成され、前記長辺と前記短辺とが交わる頂点は曲面形状に形成され、
前記入射面凸部に入射する光を前記ベース板の出射面に入射させる
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記ベース板は、前記照明光が出射する側の出射面に、そこに入射する光を全反射して前記広角方向に出射させる複数の凸状の出射面凸部が設けられている
ことを特徴とする請求項1
に記載の照明器具。
【請求項3】
前記出射面凸部のそれぞれは、
対向する第1凸部側面と第2凸部側面とを有する断面鋸歯形状であり、
前記第1凸部側面で全反射した光が隣の前記出射面凸部
の前記第2凸部側面に入射せず、前記第2凸部側面で全反射した光が隣の前記出射面凸部の前記第1凸部側面に入射しない配置間隔で前記走行方向に配置されている、ことを特徴とする請求項
2に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を照明する道路照明器具には、支柱に支持されて高所から路面を照明する器具の他に、道路脇の比較的低い位置から路面を照明する低位置道路照明器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低位置道路照明器具は、車両を運転する運転者の近くに設置されることから、運転者が眩しさ(グレア)を感じ易くなる。特に、道路の走行方向に広い範囲を照明する場合は、グレアの問題は、より顕著になる。
【0005】
本発明は、走行方向の広い範囲を照明しつつ、グレアを低減できる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、道路の走行方向に延びる照明光によって当該道路を照明する照明器具において、前記照明光を透過する板状のベース板を有した光学部材を備え、前記ベース板は、前記照明光が入射する側の入射面に、そこに入射する光を、前記ベース板の出射面から広角方向に出射させる複数の凸状の入射面凸部が設けられ、前記入射面凸部のそれぞれは、その断面において長辺と短辺とを有する鋸歯形状であり、前記短辺で反射した前記照明光が前記長辺に入射する形状であり、前記長辺は膨出する曲面形状に形成され、前記長辺と前記短辺とが交わる頂点は曲面形状に形成され、前記入射面凸部に入射する光を前記ベース板の出射面に入射させることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記照明器具において、前記ベース板は、前記照明光が出射する側の出射面に、そこに入射する光を全反射して前記広角方向に出射させる複数の凸状の出射面凸部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記照明器具において、前記出射面凸部のそれぞれは、対向する第1凸部側面と第2凸部側面とを有する断面鋸歯形状であり、前記第1凸部側面で全反射した光が隣の前記出射面凸部の前記第2凸部側面に入射せず、前記第2凸部側面で全反射した光が隣の前記出射面凸部の前記第1凸部側面に入射しない配置間隔で前記走行方向に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走行方向の広い範囲を照明しつつ、グレアを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る低位置道路照明器具の構成を示す斜視図である。
【
図2】低位置道路照明器具の内部構成を示す図であり、前面カバー及び器具正面遮光板を外した状態を示す正面図である。
【
図3】本体ケース内の路側帯照明用光源ユニットを拡大して示す斜視図である。
【
図4】本体ケース内の路側帯照明用光源ユニットを拡大して示す斜視図である。
【
図5】本体ケース内の路側帯照明用光源ユニットにおける横断面構成を示す図である。
【
図6】本体ケース内の路面照明用光源ユニットにおける横断面図である。
【
図7】路面照明用光源ユニットを正面側からみた斜視図である。
【
図8】路面照明用光源ユニットを背面側からみた斜視図である。
【
図9】
図7の路面照明用光源ユニットにおいて板状光学部材を外した状態を示す斜視図である。
【
図10】路面照明用平行光化レンズの横断面図である。
【
図11】±20度の光線が第1入射面に入射した際の主光線の入射角と、屈折後の出射角度幅の関係を示す図である。
【
図12】±11度の光線が出射面に入射した際の主光線の入射角と、出射時の出射角度幅の関係を示す図である。
【
図13】板状光学部材の構成を示す斜視図であり、(A)は正面側を示し、(B)は裏面側を示す。
【
図14】板状光学部材を正面からみた平面図である。
【
図16】ベース板による放射開口を器具外側からみたときの輝度分布の変化を示す図である。
【
図17】ベース板の縦断面における入射面凸部の断面構成を示す拡大図である。
【
図18】ベース板の縦断面における入射面凸部の断面構成を示す拡大図である。
【
図19】ベース板の縦断面における入射面凸部の断面構成を示す拡大図である。
【
図20】ベース板の縦断面における出射面凸部の断面構成を示す拡大図である。
【
図21】第1範囲第1区間から第1範囲第3区画、及び、第2範囲第1区画から第2範囲第2区画におけるベース板の断面形状を示す図である。
【
図22】板状光学部材の変形例を示す斜視図である。
【
図23】板状光学部材の他の変形例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る低位置道路照明器具1の構成を示す斜視図である。
低位置道路照明器具1は、道路脇に設けられた構造物(遮音壁や橋梁など)に、道路を走行する車両の運転者の視線と略同じ設置高さ(例えば1から1.2メートル近傍)で設置され、その設置位置から道路の路面を照明する器具である。かかる低位置道路照明器具1は、
図1に示すように、道路の走行方向Aに延びた直方体状の器具本体2を備え、器具本体2の正面2Fを道路の側に向けた姿勢で、器具本体2の両端部が上記構造物に固定金具4によって固定される。両端の固定金具4は、器具本体2を路面に対して傾動自在に支持することで、器具本体2の鉛直方向の取付角が調整可能になっている。また、器具本体2の両端部の側面の少なくとも一方(本実施形態では
図1における左側面のみ)には、車両の運転者の視線誘導用に発光する視線誘導発光部14が設けられており、各固定金具4に形成された発光窓5から視線誘導発光部14が露出し、車両の運転者が視認可能になっている。
【0013】
器具本体2は、
図1に示すように、正面が開口した直方体形状の金属製(例えばアルミニウム合金等)の本体ケース6を備え、その正面開口6Aは、本体ケース6にヒンジ結合された略矩形状の前面カバー8で閉塞される。前面カバー8は、ガラスや樹脂等の透明な材料で形成された矩形板材であり、防水パッキン7を挟んで本体ケース6に取り付けられる。
【0014】
本実施形態では、前面カバー8の裏面(本体ケース6の内側を向く面)に、その全面を覆う大きさの器具正面遮光板9が配置されており、この器具正面遮光板9の面内には、2つの路面照明光用開口10、及び、1つの路側帯照明光用開口12が形成されている。
路面照明光用開口10は、路面を照明する照明光Kb(
図6)を、器具本体2の内部から外部に通すための開口であり、路側帯照明光用開口12は、道路の路側帯(車道外側線でもよい)を照明する照明光Ka(
図5)を、器具本体2の内部から外に通すための開口である。これら路面照明光用開口10、及び路側帯照明光用開口12はいずれも、道路の走行方向Aに沿って延びる矩形状を成すことで当該走行方向Aに沿った広い範囲が照明光で照明できるようになっており、前面カバー8の面内では、これらが当該走行方向Aに沿って適宜の間隔で並んで配置されている。
【0015】
器具正面遮光板9が設けられることで、漏れ光の出射が抑えられる。また器具正面遮光板9の表裏両面には、光の反射を抑える塗装(例えば、艶消し黒塗装)が施されており、裏面側においては、器具本体2の内部で遮光された光成分による迷光の発生が防止され、また表面側においては、車両のヘッドライト等の反射が防止される。
【0016】
図2は、低位置道路照明器具1の内部構成を示す図であり、前面カバー8及び器具正面遮光板9を外した状態を示す正面図である。
同図に示すように、器具本体2の内部には、2つの路面照明用光源ユニット20と、1つの路側帯照明用光源ユニット22と、電源端子台24と、電源ボックス26とが収められている。
路面照明用光源ユニット20は、走行方向Aに延びた照明光Kbを路面照明光用開口10から出射して路面を照らす光源ユニットであり、路側帯照明用光源ユニット22は、走行方向Aに延びた照明光Kaを路側帯照明光用開口12から出射して路側帯を照らす光源ユニットである。これら路面照明用光源ユニット20、及び路側帯照明用光源ユニット22は、本体ケース6の内部において、路面照明光用開口10、及び路側帯照明光用開口12のそれぞれに対向配置される。
【0017】
電源端子台24は、器具本体2の外から引き込まれた商用電源の電力線と、電源ボックス26の配線とを結線する端子台である。電源ボックス26は、路面照明用光源ユニット20、及び路側帯照明用光源ユニット22を点灯する直流電力を生成する装置であり、AC-DC変換器を内蔵し、外部から供給される商用の交流電力を直流電力に変換する。なお、電源ボックス26は、外部からの調光指示に基づいて直流電力(例えば直流電流)を可変し、路面照明用光源ユニット20、及び路側帯照明用光源ユニット22の光量を可変してもよい。また、本体ケース6には、停電時等に使用する非常用の電力としてバッテリーを内蔵してもよい。
【0018】
図3、及び
図4は本体ケース6内の路側帯照明用光源ユニット22を拡大して示す斜視図であり、
図5は本体ケース6内の路側帯照明用光源ユニット22における断面構成を示す図である。なお、
図4は、
図3において、路側帯照明用光源ユニット22を固定するねじ41を省略した図である。また
図5に示す断面は、器具本体2の長手方向(すなわち、走行方向A)に垂直な面(以下、「横断面」と言う)を示す。
路側帯照明用光源ユニット22は、
図5に示すように、発光素子の一例たるLEDを光源とする路側帯照明用LED光源30と、路側帯照明用反射鏡32と、路側帯照明用支持体34と、路側帯照明用正面遮光板36と、路側帯照明用側面遮光板38(
図3)と、を備える。
路側帯照明用LED光源30は、走行方向Aに延びた矩形状のLED基板39と、このLED基板39の実装面に走行方向Aにライン状に並んで配置された複数のLED40と、を備え、走行方向Aに延びた光を放射する、いわゆる線状光源である。なお、線状光源として本実施形態ではSMDの光源素子をライン状に配置した基板を用いているが、これに限らず、光源素子のチップを、一方向に長い矩形形状に集積したCOBを使用してもよい。
【0019】
路側帯照明用反射鏡32は、走行方向Aに延び、路側帯照明用LED光源30に対面する路側帯照明制御反射面32Aを備える。路側帯照明制御反射面32Aは、路側帯照明光用開口12に対向配置され、路側帯照明用LED光源30のライン状の光を反射して、路側帯照明光用開口12を通じて道路の路側帯に配光する。なお、路側帯照明用反射鏡32の基材には、アルミニウム等の金属や、樹脂にアルミ蒸着処理をしたもの等の適宜の材が用いられる。
【0020】
路側帯照明用支持体34は、
図5に示すように、横断面において、路側帯照明制御反射面32Aの鉛直上方に、路側帯照明用LED光源30が位置するように、当該路側帯照明用LED光源30と、路側帯照明用反射鏡32とを、本体ケース6の中で支持する部材である。路側帯照明制御反射面32Aと、路側帯照明用LED光源30とが上下方向に配置されることで、本体ケース6の奥行き寸法Wが抑えられる。
奥行き寸法Wが抑えられることで、低位置道路照明器具1の取付位置と路面との関係に制限がある場合でも、その制限に適用し易くなる。
【0021】
路側帯照明用正面遮光板36は、
図5に示すように、路側帯照明用LED光源30よりも器具本体2の正面2F側(すなわち道路側)に設けられ、
図3に示すように、走行方向Aに延びる形状の板材である。この路側帯照明用正面遮光板36は、路側帯照明用LED光源30の放射光のうち、路側帯照明制御反射面32Aに入射せずに前面方向に向かう光成分を遮光する。これにより、水平方向から下方向にかけて、制御されずに出射される不必要な漏れ光を抑えられる。
【0022】
路側帯照明用正面遮光板36の下端には、
図5に示すように、器具本体2の背面2Bの側へL字状に折り曲げられて成る折曲部36Aが設けられており、この折曲部36Aによって、路側帯照明用LED光源30から路側帯照明制御反射面32Aに入射せずに、路側帯照明光用開口12を通じて下方に出射される光が確実にカットされる。
【0023】
さらに路側帯照明用側面遮光板38は、
図3に示すように、路側帯照明用光源ユニット22の走行方向Aにおける両端にそれぞれ設けられ、本体ケース6の内部で路側帯照明用LED光源30から走行方向Aに漏れ出る光を遮光する。これにより、路側帯照明用光源ユニット22から走行方向Aに向かう漏れ光が運転者に対するグレア源となったり、迷光になったりすることを防止できる。
【0024】
これら路側帯照明用正面遮光板36、折曲部36A、及び路側帯照明用側面遮光板38を備えることで、漏れ光が抑えられ、路側帯照明制御反射面32Aに反射制御された光成分だけが出射され、路側帯をライン状に際立たせるように照らすことができる。
【0025】
図3に示すように、路側帯照明用光源ユニット22は、両側の路側帯照明用側面遮光板38のそれぞれを、本体ケース6のベース板11に垂直に立設された一対の取付板37に、ねじ41で固定される。
図4に示すように、それぞれの取付板37には、上下の2箇所に、ねじ孔43A、43Bが設けられており、一方(本実施形態では上側)のねじ孔43Bが長孔になっている。これにより、路側帯照明用光源ユニット22が、他方のねじ孔43Aを回転軸として回動自在となり、路側帯照明用光源ユニット22をねじ止めする際、または、低位置道路照明器具1を現地に設置する際などに、路側帯照明用光源ユニット22の取付角度を微調整することができる。
【0026】
次いで、路面照明用光源ユニット20について詳述する。
図6は本体ケース6内の路面照明用光源ユニット20における横断面図である。
図7は路面照明用光源ユニット20を正面側からみた斜視図であり、
図8は路面照明用光源ユニット20を背面側からみた斜視図である。
図9は
図7の路面照明用光源ユニット20において板状光学部材60を外した状態を示す斜視図である。なお、
図8では、路面照明用支持体56の図示を省略している。
【0027】
路面照明用光源ユニット20は、
図6に示すように、発光素子の一例たるLEDを光源とする路面照明用LED光源50と、路面照明用平行光化レンズ52と、路面照明用反射板54と、路面照明用支持体56と、路面照明用正面遮光板58と、路面照明用側面遮光板59(
図7)と、板状光学部材60と、を備える。また
図7に示すように、路面照明用光源ユニット20は、路面照明用反射板54と、路面照明用正面遮光板58と、両端の路面照明用側面遮光板59と、によって、走行方向Aに延びる正面視略矩形状に区画された放射開口64を有し、この放射開口64から、走行方向Aに延びる照明光Kbを出射する。この放射開口64は、運転者に対するグレアを抑えるために、上記板状光学部材60によって覆われている。
【0028】
器具本体2においては、上述の通り、路面照明用光源ユニット20と前面カバー8の間に器具正面遮光板9が配置されており、路面照明用光源ユニット20の放射開口64が、器具正面遮光板9の路面照明光用開口10に対向配置される。器具正面遮光板9が設けられることで、器具本体2の内側で生じた意図しない漏れ光が軽減され、また器具本体2から上方への不必要な漏れ光となる光束(以下、「上方光束」という)、及び、器具本体2から直下方向に向い道路路肩部への不必要な漏れ光となる光束(以下、「直下光束」という)が抑えられる。
【0029】
次いで、路面照明用光源ユニット20の各部について詳述する。
路面照明用LED光源50は、
図6に示すように、LED基板61と、このLED基板61の実装面に実装されたLED62と、を備える。LED基板61は、
図8に示すように、走行方向Aに延びた矩形状を成し、このLED基板61に、各々が光点を形成する複数のLED62が走行方向Aにライン状に並んで配置された、いわゆる線状光源に構成されており、路面照明用LED光源50が走行方向Aに延びた光を放射する。なお、線状光源として本実施形態ではSMDの光源素子をライン状に配置した基板を用いているが、これに限らず、光源素子のチップを、一方向に長い矩形形状に集積したCOBを使用してもよい。
【0030】
路面照明用平行光化レンズ52は、路面照明用LED光源50と路面照明用反射板54との間に設けられ、
図8に示すように、走行方向Aに延びる柱状を成し、路面照明用LED光源50の放射光を平行化し、路面照明用反射板54に入射する透過型光学素子である。
【0031】
路面照明用反射板54は、
図8に示すように、走行方向Aに延びる板状部材であり、
図6に示すように、その内側の面には路面照明用LED光源50に対面する路面照明制御反射面54Aが形成されている。器具本体2の横断面において、路面照明制御反射面54Aは、路面照明光用開口10に対向配置され、路面照明用LED光源50が放射する走行方向Aに延びた光を反射して、路面照明光用開口10を通じて路面に配光する。この路面照明用反射板54の基材には、アルミニウム等の金属や、樹脂にアルミ蒸着処理をしたもの等の適宜の材が用いられる。
【0032】
路面照明用支持体56は、路面照明用LED光源50、及び路面照明用平行光化レンズ52と、路面照明用反射板54とを、本体ケース6の中で支持する部材であり、その表面は、光の反射を抑える塗料が塗られ、当該路面照明用支持体56での反射による迷光の発生が抑えられている。この路面照明用支持体56は、
図6に示すように、路面照明用LED光源50、及び路面照明用平行光化レンズ52が取り付けられる光源取付面57を有し、この光源取付面57に対し、その上方で路面照明用反射板54を支持している。
したがって、路面照明用反射板54の路面照明制御反射面54Aには、その下方から路面照明用平行光化レンズ52の光が入射し、路面照明制御反射面54Aが、その光を、下方の道路の路面に向けて反射する。
これにより、路面照明用反射板54は、下方から入射した光を下方の路面に向けて反射するので、上方に向う光を路面照明用反射板54で確実に反射し、漏れ光となる上方光束が抑制できる。
また、路面照明用LED光源50の光が路面照明用平行光化レンズ52を通じて上方に向けて放射される構成なので、下方に向かい道路路肩部に対する漏れ光となる、上述の直下光束も抑えることができる。
【0033】
この路面照明制御反射面54Aは、
図6に示すように、横断面において、器具本体2の正面2F側の先端部には、下方に折り曲げられて成る傾斜面54ASが形成されており、この傾斜面54ASが、そこに入射する光を背面2B側(道路側とは反対側)に反射する。これにより、漏れ光となる上方光束が抑えられる。
【0034】
また、路面照明制御反射面54Aにおいて、先端部の傾斜面54AS以外の部分(少なくとも路面照明用平行光化レンズ52に対向する範囲)は、
図6に示すように、その法線方向Bの鉛直角αが0度以上90度以下の面で形成されている。かかる路面照明制御反射面54Aが、その下方から入射する光を反射することで、漏れ光となる上方光束を軽減しつつ、主に鉛直角75度から90度の範囲に鋭いピークを有し、かつ路面の全体を効率良く照明する照明光Kbが得られる。
【0035】
なお、本実施形態において、路面照明用平行光化レンズ52から出射された光は完全な平行光ではなく、多少の拡がりを有しており、路面照明制御反射面54Aは、この拡がりによる配光の誤差を打ち消すために、横断面において、鉛直角αが異なる複数(本実施形態では3つ)の平面55K(
図8)で形成されている。なお、路面照明制御反射面54Aが横断面視において曲面形状であってもよい。
【0036】
路面照明用正面遮光板58は、
図6に示すように、器具本体2の横断面において、光源取付面57の正面2F側の端部57Tから上方に延出し、
図9に示すように、路面照明用平行光化レンズ52の正面2F側(前面カバー8の側)の略全範囲を覆う板材である。この路面照明用正面遮光板58により、路面照明用平行光化レンズ52から正面側に向かう迷光がカットされる。
さらに路面照明用正面遮光板58は、正面2F側の上端58Uが、光源取付面57の正面2F側の端部57Tよりも、前面カバー8に対して路面照明用平行光化レンズ52の側に位置するように折り曲げられた傾斜面に形成されており、漏れ光となる上記上方光束が抑えられている。
なお、路面照明用正面遮光板58は、路面照明用平行光化レンズ52に対向する面に、光の反射を抑える塗装(例えば艶消し黒塗装)が施されてもよい。
【0037】
路面照明用側面遮光板59は、
図7から
図9に示すように、路面照明用光源ユニット20の走行方向Aにおける両端にそれぞれ設けられ、本体ケース6の内部で路面照明用LED光源50から走行方向Aに漏れ出る光を遮光する。また両端の路面照明用側面遮光板59は、その内面は光の反射を抑える塗装(例えば、艶消し黒塗装)が施されている。これにより、路面照明用側面遮光板59での反射光が運転者へのグレア源となったり迷光になったりすることを避けることができる。
【0038】
ここで、本実施形態の路面照明用光源ユニット20において、路面照明用支持体56の光源取付面57は、
図6に示すように、器具本体2の横断面において、路面照明光用開口10の下縁10Bの高さ位置Hbよりも下に設けられることで、路面照明用LED光源50(LED62)の高さHaが、上記路面照明光用開口10の下縁10Bの高さ位置Hb、並びに、路面照明用正面遮光板58の上端の高さ位置Hcよりも低くなっており、これにより、漏れ光となる直下光束が抑えられている。
【0039】
さらに、光源取付面57が水平面Phに対して、器具本体2の背面2Bの側に傾斜角度βで傾斜した傾斜面に形成されることで、路面照明用LED光源50の光軸Faが鉛直上方よりも背面2B側(道路側とは反対側)に傾けられ、漏れ光となる直下光束、並びに、上方光束が、より確実に抑えられている。
【0040】
次いで、路面照明用平行光化レンズ52について詳述する。
路面照明用平行光化レンズ52は、上述の通り、路面照明用LED光源50が放射する走行方向Aに延びた放射光(入射光)を、器具本体2の横断面において平行化して、当該入射光と同一方向に延び、かつ、器具本体2の横断面において平行光化された光を出射する透過型光学素子であり、
図6に示すように、器具本体2の横断面において、背面2Bの側を向いた路面照明用LED光源50の出射光軸の方向を、鉛直上方に近付く向きに変え、自身の上方に配置された路面照明制御反射面54Aに向けて出射する機能を有する。
路面照明用平行光化レンズ52が、路面照明用LED光源50の光の方向を鉛直上方に近付く向きに変えることで、方向を変えない構成に比べ、路面照明制御反射面54Aを器具本体2の正面2F側に寄せることができるため、本体ケース6の奥行き寸法Wが抑えられ、路面照明用光源ユニット20を規定寸法内の筐体に納めることができる。
【0041】
図10は、かかる路面照明用平行光化レンズ52の横断面図である。
同図に示すように、路面照明用平行光化レンズ52は、横断面視略矩形状であり、正面側、及び背面側のそれぞれに、出射光の光軸Lを挟んで対向する第1外側面73と、第2外側面74と、を備える。また路面照明用平行光化レンズ52は、その底部に、路面照明用LED光源50からの入射光が入射する入射面70が形成され、上部には、入射光を平行光化した出射光を出射する出射面72が形成されている。この出射面72は、光軸Lに対し垂直な平面に形成されている。
【0042】
かかる路面照明用平行光化レンズ52は、前掲
図6に示すように、横断面において、光軸Lが器具本体2の背面2B側を向くように傾斜させて設けられることで出射面72が傾斜して設けられる。これにより、出射面72が水平に配置される場合に比べ、本体ケース6の奥行き寸法Wが抑えられる。
【0043】
路面照明用平行光化レンズ52は、
図10に示すように、入射面70に入射した入射光の進行方向(光軸Fa)を、その内部で正面2F側(道路側)に近付く方向に所定角度γだけ変えて平行光化し、出射面72から略垂直に出射する。
一般に、レンズの出射面における屈折では、レンズ内部から出射面への光線の入射角(出射面の法線と光線とが成す角)が小さいほど、入射角の幅に対する出射光の出射角の幅(拡がり角)が小さく抑えられる。本実施形態の路面照明用平行光化レンズ52では、レンズ内部で平行に平行化された光は、出射面72に垂直に入射して、そこから出射されるので、出射面72での拡がりを抑えた平行光が得られることとなる。
【0044】
ここで、本実施形態の路面照明用平行光化レンズ52は、横断面において、正面側と背面側とで、入射光を平行化するための光学的作用が異なっている。すなわち、路面照明用平行光化レンズ52は、正面側(以下、「第1の平行光化部P1」という)では、凸レンズの屈折作用によって入射光を平行化し、背面側(以下、「第2の平行光化部P2」という)では、全反射面の反射作用によって入射光を平行化している。
【0045】
具体的には、入射面70において、第1の平行光化部P1に対応する範囲であって少なくとも路面照明用LED光源50の放射光が入射し得る範囲には、平面の出射面72との間で平凸レンズを構成する凸面70P1が形成されている。第1の平行光化部P1では、当該平凸レンズによって入射光が平行光化され、出射面72から出射される。
一方、路面照明用平行光化レンズ52は、第2の平行光化部P2に対応する第2外側面74が放物面状の全反射面に形成されている。この全反射面の第2外側面74によって、入射面70のうち第2の平行光化部P2対応する箇所から入射した光線が、光軸L方向に全反射され、かつ平行光化されて出射面72から出射される。
【0046】
上述の通り、路面照明用平行光化レンズ52では、背面側を、全反射面の反射作用によって入射光を平行光化する第2の平行光化部P2としている。このように、屈折により平行光を作る第1の平行光化部P1と全反射面により平行光を作る第2の平行光化部P2とを組み合わせた構成により、従来のLEDの出射光軸が光軸Lと一致するようにLEDを配置したコリメータ光学系を利用した構成に比べ、コンパクトな構成が実現できる。また、LEDの出射光軸が道路側とは反対方向に斜めに向けて路面照明用LED光源50及び路面照明用平行光化レンズ52を配置することができ、器具本体2に光学系を配置したときに横断面における幅(本体ケース6の奥行き方向における幅)を抑え、コンパクトにできる。
なお、出射面72のうち、第1の平行光化部P1に対応する範囲の一部または全部を凸曲面とし、出射面72から出射される平行光の平行度をより高めてもよい。
【0047】
また、本実施形態の路面照明用平行光化レンズ52において、第1の平行光化部P1の第1外側面73は、そこに入射する光を、横断面において光軸Lの側に全反射する全反射面に形成されており、漏れ光の抑制、並びに、照明効率の向上が図られている。この全反射時の反射角は、反射光が前面カバー8に入射せず、かつ、路面照明用平行光化レンズ52の上方の上述した路面照明制御反射面54Aに入射する角度に設定されており、制御された照射範囲外の漏れ光が抑えられている。
【0048】
この路面照明用平行光化レンズ52は、上述の通り、第1の平行光化部P1と、第2の平行光化部P2とで、平行光化のための光学的作用が異なるため、入射面70においても、
図10に示すように、第1の平行光化部P1と、第2の平行光化部P2とで異なる形状(すなわち光軸Faを中心に非対称)に形成されている。具体的には、この入射面70において、第1の平行光化部P1に対応する箇所には、上述の凸面70P1が形成されているのに対し、第2の平行光化部P2に対応する箇所には、入射光の光軸Faに近い側から順に、第1入射面70P2-1、第2入射面70P2-2、及び第3入射面P2-3の3つの面が設けられている。
【0049】
第1入射面70P2-1は、LED62が放射する光線のうち、比較的光軸Faに近い成分、すなわち、当該光束の中で光量が比較的大きな光成分(いわゆる、LED62の光線のボリュームゾーン)が入射する面である。この第1入射面70P2-1に入射する光線は、LED62の幅に起因し、当該LED62の光源中心62Aからの主光線Skに対し、所定の角度幅範囲δaを有した光線群となり、本実施形態では角度幅範囲δaが約±20度となっている。第1入射面70P2-1に入射した光線の屈折後の出射角度幅εaは、できる限り小さいほうが、平行光化するために望ましい。
【0050】
図11は、±20度の光線が第1入射面70P2-1に入射した際の主光線Skの入射角と、屈折後の出射角度幅εaの関係を示す図である。なお、同図には、屈折率が1.49のアクリル透明材から路面照明用平行光化レンズ52が形成された場合を示す。
同図に示すように、主光線Skの入射角が大きくなるほど、屈折後の出射角度幅εaが小さくなる。ただし、入射角が大きくなるほど、第1入射面70P2-1への入射時のフレネル反射も増えロスが増大する。そこで、本実施形態では、フレネル反射の増大を抑えつつ、屈折後の出射角度幅εaが小さくなるように、入射角が約40度で、屈折後の出射角度幅εaが約22度となるような第1入射面70P2-1が設計されている。かかる設計の結果、第1入射面70P2-1は、横断面において、入射光の光軸Faに対して約45度で傾斜する傾斜面となっている。
【0051】
第1入射面70P2-1に入射して出射角度幅εaとなった光線は第2外側面74で全反射され、出射面72に入射する。出射面72内の出射点72Aに入射する入射光線は、その入射光線の主光線Sjに対して角度幅範囲δbを有した光線群となり、この角度幅範囲δbは、上記出射角度幅εaと概ね一致する。そして、第2外側面74は、出射面72から出射時の出射角度幅εbを最小とする入射角で当該出射面72に入射させるように、光線を全反射している。
【0052】
図12は、±11度の光線が出射面72に入射した際の主光線Sjの入射角と、出射時の出射角度幅εbの関係を示す図である。なお、同図には、屈折率が1.49のアクリル透明材から路面照明用平行光化レンズ52が形成された場合を示す。
同図に示すように、出射時の出射角度幅εbは、主光線Sjの入射角が大きくなるほど増大する。そこで、本実施形態では、出射時の出射角度幅εbを最小の角度幅(本実施形態では約34度)とするために、第2外側面74は、全反射した主光線が出射面72に入射する際の入射角が「0度」となるように設計されている。
【0053】
このように、第2の平行光化部P2においては、第1入射面70P2-1が、そこに入射した光線の屈折後の出射角度幅εaを、入射時の光線の角度幅範囲δaよりも小さくし、かつ、第2外側面74が、出射面72から出射時の出射角度幅εbを最小とする入射角で当該出射面72に入射させるように光線を全反射する。
これにより、出射面72から出射される光線の出射角度幅εbが抑えられ、第2の平行光化部P2から出射される光の平行度が高められる。
【0054】
第2入射面P2-2は、第1入射面P2-1と第3入射面P2-3とをつなぐ部位であり、横断面においてLED62の側に突出した凸状の面で形成されている。
第3入射面P2-3は、路面照明用LED光源50の放射光の光束のうち最外周側の光成分が入射する面であり、横断面において、第1入射面70P2-1よりも、入射光の光軸Faに対して大きな角度で傾斜している。したがって、第3入射面P2-3では、そこに入射した光線が、第1入射面70P2-1に比べて大きな屈折角で光軸Lの側に屈折され、第2外側面74による全反射によって平行光として出射面72から出射される。これにより、光の利用効率が高められる。
【0055】
次いで、板状光学部材60について詳述する。
図13は板状光学部材60の構成を示す斜視図であり、
図13(A)は正面側を示し、
図13(B)は裏面側を示す。また
図14は板状光学部材60を正面からみた平面図であり、
図15は板状光学部材60の縦断面図である。
板状光学部材60は、路面照明用光源ユニット20において、路面を照明する照明光Kbの放射開口64を覆い(
図7)、グレアを抑制するための光学部材であり、走行方向Aに延びた矩形状の透光性材料から成る所定厚み(例えば2mm)のベース板80を備える。ベース板80の両端には係止片81が一体形成され、これら係止片81で、路面照明用光源ユニット20の路面照明用側面遮光板59にねじ止め固定される。
【0056】
図16は、ベース板80による放射開口64を器具外側からみたときの輝度分布の変化を示す図である。
路面照明用光源ユニット20では、路面照明制御反射面54Aに路面照明用LED光源50の各LED62が映ることで、同図に示すように、路面照明用光源ユニット20の放射開口64にベース板80が設けられていない場合には、正面視において、縦横に並んだ個々のLED62の発光点がくっきりと見える。一方、斜視においては、路面照明用光源ユニット20から斜め方向に光が出射されていないため暗く見える。
【0057】
一方、ベース板80を設けた場合、正面視において、個々のLED62の発光点が走行方向Aに連なるように伸び、さらに、輝度が他よりも低い線(以下、「暗線」という)が縦縞状に入ったように見える。これにより、見かけの光源面積が広がり、かつ輝度の集中が緩和されるため、路面照明用光源ユニット20の眩しさが低減される。
【0058】
かかるベース板80の構成として、先ず、光が入射する側(裏面側)の面である入射面80Bの構成について詳述する。
入射面80Bには、前掲
図13(B)に示すように、入射光を広角方向に出射させるための多数の入射面凸部84が形成されている。これら入射面凸部84は、走行方向Aに並んで形成されており、各入射面凸部84は、裏面の平面視において、走行方向Aに対し垂直方向に、ベース板80の上縁80Uから下縁80Dまで延びる棒状に形成されている。
【0059】
図17は、ベース板80の縦断面における入射面凸部84の断面構成を示す拡大図である。
同図に示すように、入射面凸部84のそれぞれは、縦断面において、長辺84Aと短辺84Bとを有する略鋸歯状(三角形状)を成しており、各入射面凸部84が走行方向Aに隙間無く所定のピッチ(例えば1.5mm)で配置されている。
入射面凸部84のそれぞれは、長辺84Aに入射角θ1で入射し、そこで屈折した光線が出射面80Aの平らな箇所(出射面凸部82同士の間)に入射角θ2で入射し、そこでの屈折により広角方向に出射されるようになっている。入射角θ1は、入射時のフレネル反射を抑えるために略45度以下であって、なおかつ、入射角θ2として、そこに入射した光線が全反射しない角度(例えばアクリル樹脂の場合は約42度以下)が得られる角度に設定されている。
【0060】
また、入射面凸部84のそれぞれは、
図18に示すように、入射角θ1で長辺84Aに入射した光線のうち、短辺84Bに入射角θ3で入射する光成分は、当該短辺84Bで全反射し、出射面80Aの平らな箇所に入射角θ4で入射することで、そこでの屈折により出射される。なお、入射角θ3は、そこに入射した光線が全反射する角度(例えばアクリル樹脂の場合は約42度以上)であって、なおかつ、入射角θ4として、そこに入射した光線が全反射しない角度が得られる角度に設定されている。
【0061】
さらに
図19に示すように、短辺84Bに入射角θ5で入射した光線のうち、そこでフレネル反射した光成分は、隣の入射面凸部84の長辺84Aに入射角θ6で入射し、出射面80Aの平らな箇所に入射角θ7で入射する。そして、その光成分は、長辺84Aに入射した光線と同様、出射面80Aでの屈折により出射される。また短辺84Bに入射角θ5で入射した光線のうち、そこで屈折して内部に入射した成分は、出射面80Aの平らな箇所に入射角θ7で入射し、そこでの屈折により出射される。
なお、本実施形態では、入射角θ6についても、入射角θ1と同様に、入射時のフレネル反射を抑えるために略45度以下に設定されており、また入射角θ7は、そこに入射した光線が全反射しない角度に設定されている。
【0062】
このように、ベース板80の入射面80Bにおいて、各入射面凸部84が、そこに入射する入射光を、出射面80Aでの屈折により当該出射面80Aから広角方向に出射させることで、入射面凸部84が無い場合に比べ、ベース板80の出射光の出射範囲が広角方向に拡げられる。
これにより、個々のLED62の発光点が走行方向Aに連なるように伸び、個々の発光点の見かけの光源面積が広がるため、それぞれの発光点の輝度が弱まり、また、照明光Kbの出射範囲が広角に拡げられるため、前掲
図16に示すように、斜視においても、路面照明用光源ユニット20から光が放射されているように見える。これに加え、走行方向Aにおいては暗線が縦縞状に入ったように見えるので、個々の発光点への輝度の集中が更に緩和される。
【0063】
したがって、このベース板80によれば、出射面80Aから出射される照明光Kbの出射範囲が広角に拡げられることで走行方向Aのより広い範囲を照明光Kbで照明しつつ、個々の発光点の見かけの光源面積の拡大、及び輝度の集中の緩和によってグレアが抑えられることとなる。
【0064】
また、入射面凸部84のそれぞれは、そこに入射する光のフレネル反射を抑え、かつ、全反射を生じさせない角度で出射面80Aに入射する断面形状に形成されているので、光を広角に効率よく出射することができる。
【0065】
前掲
図17に示すように、各入射面凸部84の長辺84Aは、僅かに膨出する曲面形状に形成され、さらに、長辺84Aと短辺84Bとが交わる頂点84Cも曲面形状に形成されている。これらの曲面形状によって、輝度の明暗の輪郭をぼかすことができ、正面視したときに、走行方向Aにおいて、輝度の激しい強弱が連続することを緩和できる。
【0066】
なお、入射面凸部84は、必ずしも、ベース板80の上縁80Uから下縁80Dまでの全幅に亘って延びる必要はなく、また各入射面凸部84が多少の隙間をあけて配置されてもよい。
【0067】
次いで、ベース板80の構成として、光が出射する側(路面に対面する側)の面である出射面80Aの構成について詳述する。
出射面80Aには、前掲
図14に示すように、入射面80Bよりも大きいピッチの明暗線の縦縞を形成する多数の出射面凸部82が、走行方向Aに、所定の配置間隔Ta(例えば約5mm)で形成されている。各出射面凸部82は、ベース板80の長手方向である走行方向Aに対し垂直方向に、ベース板80の上縁80Uから下縁80Dまで延びる棒状に形成されている。
【0068】
図20は、ベース板80の縦断面における出射面凸部82の断面構成を示す拡大図である。
同図に示すように、出射面凸部82の対向する凸部側面82A、82Bのそれぞれは、そこに入射する光を走行方向Aに全反射する全反射面に形成されている。
凸部側面82A、82Bでの全反射によって、そこに入射した一部の光の進行方向が、広角方向(光の進行方向が走行方向A(ベース板80の出射面80A)に平行に近づく方向、水平角が大きくなる方向)に向けられる。したがって、ベース板80の出射面80Aから出射される照明光Kbの出射範囲が広角に拡げられる。また、少量だが別の一部の光は、フレネル反射や頂角Rの影響などで、走行方向Aの反対方向にも向けられる光も発生する。
図16の斜視輝度分布において、矢印Xで示す領域の輝度は、走行方向Aの反対方向に向けられた光の一部が出射面凸部82に反射して生じたものである。
【0069】
これにより、出射面80Aに出射面凸部82が無い場合(前掲
図16:比較例)に比べ、器具正面視においても、器具斜め視においても輝度が集中して見える箇所にも暗線が入って見るようになり、輝度の集中が更に緩和される。特に器具斜め視においては、光って見える見かけの面積も増加するので、この影響でも輝度の集中が緩和される。これによりグレアがより抑えられることとなる。
【0070】
ただし、出射面凸部82の凸部側面82A、82Bで全反射した光が、その隣の出射面凸部82に入射して器具内への戻り光となると、光利用効率が低下するため、走行方向Aにおける出射面凸部82の配置間隔Taは、当該再入射が少なく、広角な配光が得られ、眩しさ低減効果のバランスが良くなるように拡げられている。
【0071】
なお、本実施形態では、出射面凸部82を断面三角形状としたが、曲面形状であってもよいし、断面四角形などの断面多角形状でもよい。また、出射面凸部82は、必ずしも、ベース板80の上縁80Uから下縁80Dまでの全幅に亘って延びる必要はない。
【0072】
ここで、本実施形態の板状光学部材60は、前掲
図15に示すように、路面照明用光源ユニット20の路面照明用LED光源50における発光領域90の走行方向Aの全長よりもベース板80が長くなっており、発光領域90はベース板80の中央Oに合わせて配置されている。この場合、ベース板80の入射面80Bに発光領域90から入射する光の入射角は、発光領域90に相当する第1範囲G1と、その両側の第2範囲G2とで異なり、また第1範囲G1においても、走行方向Aにおける位置で異なる。
そこで、本実施形態では、ベース板80の出射面凸部82、及び入射面凸部84の断面形状が走行方向Aにおける位置ごとに、そこに入射する主たる光の入射角に合わせて調整されている。このとき、ベース板80の出射面凸部82、及び入射面凸部84の断面形状は、中央Oを中心に左右対称形状となる。
【0073】
さらに詳述すると、本実施形態では、前掲
図15に示すように、概ね第1範囲G1に相当する範囲を、中央Oに近い方から順に、第1範囲第1区間G1-1から第1範囲第3区画G1-3の3つに細かく区画し、また概ね第2範囲G2に相当する範囲を、中央Oに近い方から順に、第2範囲第1区画G2-1、及び第2範囲第2区画G2-2の2つに区画している。
そして、入射面80Bにあっては、これら第1範囲第1区間G1-1から第1範囲第3区画G1-3、及び、第2範囲第1区画G2-1から第2範囲第2区画G2-2のそれぞれごとに、また出射面80Aにあっては、第1範囲G1、及び第2範囲G2ごとに、入射面凸部84、及び出射面凸部82のそれぞれの断面形状が、その区画に入射する主たる光線の入射角に合わせて調整されている。
【0074】
図21は、第1範囲第1区間G1-1から第1範囲第3区画G1-3、及び、第2範囲第1区画G2-1から第2範囲第2区画G2-2におけるベース板80の断面形状を示す図である。
同図に示すように、出射面凸部82のそれぞれは、中央Oの第1範囲G1において、上述した凸部側面82A、82Bの長さが等しく、なおかつ、その高さが、底部(2等辺三角形の底面)の幅に対して、約1.8倍から約2.2倍程度に大きな断面2等辺三角形状(すなわち左右対称形状)に形成されている。高く設定されることで、全反射された光の入射面80Bへの戻りを防止し、全反射によって、走行方向Aの遠方(広角方向)に光を向けることができる。
一方、第2範囲G2においては、凸部側面82A、82Bの一方が長い断面三角形状を成している。この第2範囲G2において、出射面凸部82のそれぞれは、凸部側面82A、82Bのうち中央Oに近い方が他方よりも長く形成されている。また第2範囲G2の出射面凸部82は、第1範囲G1に比べて、その高さが低くなっている。
【0075】
また、入射面凸部84のそれぞれは、中央Oに位置する第1範囲第1区間G1-1において、上述した長辺84A、及び短辺84Bの長さが等しい断面左右対称形状を成している。また第1範囲第1区間G1-1以外の各区間では、入射面凸部84のそれぞれは、上述した断面鋸歯形状を成し、中央Oに近い方の辺が長辺84Aに形成され、また中央Oから離れた区間の入射面凸部84ほど、その高さが低くなっている。
【0076】
なお、ベース板80の走行方向Aにおける区画数は一例であり、適宜に変更可能である。また区画ごとに、入射面凸部84、及び出射面凸部82のそれぞれが同じ形状に固定されるのではなく、中央Oから板状光学部材60の端部にかけて連続的に形状を変化させてもよい。
【0077】
図15に示すように、板状光学部材60において、両端の係止片81が縦断面においてL字状を成すことで、係止片81に比べベース板80が発光領域90から離れた位置(道路側に寄った位置)に配置される。これにより、器具本体2にあっては、板状光学部材60が前面カバー8に近付けて配置されるので、見た目の発光面積をより大きくし、グレア低減効果を大きくできる。ベース板80に比べて、前面カバー8から奥まった位置に係止片81が位置するので、ベース板80よりも突出しないように取付用の螺子の頭を収めるスペースを確保できる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0079】
本実施形態の低位置道路照明器具1では、線状光源である路面照明用LED光源50と、この路面照明用LED光源50の上方に配置され、路面照明用LED光源50の光を道路の路面に向けて反射する路面照明用反射板54と、路面照明用LED光源50と路面照明用反射板54との間に設けられた路面照明用平行光化レンズ52と、を有した路面照明用光源ユニット20を備え、路面照明用LED光源50は、路面照明用平行光化レンズ52に、背面2B側(道路側とは反対側)に向けて光を入射し、路面照明用平行光化レンズ52は、入射された光の進行方向を、正面2F側(道路側)に近付く方向に変えて路面照明用反射板54に向けて出射する。
【0080】
この構成によれば、路面照明用反射板54は、下方からの光を、下方の路面に向けて反射するので、上方に向かう光を路面照明用反射板54で確実に反射し、不必要な漏れ光となる上方光束を抑制できる。また路面照明用LED光源50の光が路面照明用平行光化レンズ52を通じて上方に向けて放射される構成なので、下方に向かい道路路肩部に対する不必要な漏れ光となる、上述の直下光束も抑えることもできる。さらに路面照明用平行光化レンズ52には、路面照明用LED光源50から背面2B側に光が入射されるため、路面照明用LED光源50から正面2F側の道路に向かう光を無くすことができ、不必要な漏れ光をより確実に抑えることができる。
また路面照明用LED光源50と路面照明用反射板54とが上下方向に配置されることで、器具本体2の奥行き寸法をコンパクトにできる。
【0081】
本実施形態の低位置道路照明器具1では、路面照明用反射板54は、正面2F側の先端部に、路面照明用平行光化レンズ52よりも道路側に延出し、そこに入射した光を背面2B側に反射する傾斜面54ASを備える。
かかる傾斜面54ASが設けられることで、漏れ光となる上方光束が、より確実に抑えられ、また、光の利用効率を高めることができる。
【0082】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、路面照明用光源ユニット20には、路面照明用平行光化レンズ52の道路側に配置され、路面照明用平行光化レンズ52を覆い、かつ背面2B側に傾斜した路面照明用正面遮光板58を備える。
かかる路面照明用正面遮光板58が設けられることで、路面照明用平行光化レンズ52から正面2F側に向かう光を確実に遮光することができ、また、この遮光された光によって、漏れ光となる上方光束が生じることも回避できる。
【0083】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、路面照明用光源ユニット20は、一対の路面照明用側面遮光板59と、路面照明用反射板54と、路面照明用正面遮光板58とによって、照明光Kbを放射する放射開口64が区画されている。
放射開口64が、光を遮光する遮光板、及び光の配光を制御する反射板のみで区画されるので、非制御の光の放射を、精度良く抑えることができる。
【0084】
本実施形態の低位置道路照明器具1では、路面照明用光源ユニット20の正面2F側に、放射開口64から放射された光を通す路面照明光用開口10が形成された器具正面遮光板9を備える。
これにより、漏れ光の発生が、より確実に抑えられる。
【0085】
本実施形態の低位置道路照明器具1では、路面照明用光源ユニット20の放射開口64には、グレアを抑制する板状光学部材60が設けられている。
これにより、運転者の視線の高さ近くに、路面照明用光源ユニット20を配置した場合でも、グレアを抑えることができる。
【0086】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、路面照明用平行光化レンズ52は、路面照明用LED光源50の光を平行光化して路面照明用反射板54に向けて出射するものであり、路面照明用LED光源50の光が入射する入射面70での屈折によって、当該路面照明用LED光源50の光を平行光化する第1の平行光化部P1を、正面2F側に備え、入射した路面照明用LED光源50の光を第2外側面74での全反射によって平行光化する第2の平行光化部P2を、前記道路側と反対側に備える。
【0087】
路面照明用平行光化レンズ52によれば、入射面70に入射した光の全てを、屈折によって平行光化するレンズに比べ、道路側から反対側までの寸法を抑え、コンパクトにできる。
【0088】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、路面照明用平行光化レンズ52は、第1の平行光化部P1の第1外側面73が全反射面であるため、道路側である正面2F側に漏れる光を防止でき、漏れ光の発生を抑えることができる。
【0089】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、走行方向Aに延びた照明光Kbを透過する板状のベース板80を有した板状光学部材60を備え、ベース板80は、照明光Kbが入射する側の入射面80Bに、そこに入射する光を、ベース板80の出射面80Aから広角方向に出射させる複数の凸状の入射面凸部84が設けられている。
この構成によれば、出射面80Aから出射される照明光Kbの出射範囲が広角に拡げられることで走行方向Aのより広い範囲を照明光Kbで照明しつつ、個々の発光点の見かけの光源面積の拡大、及び輝度の集中の緩和によってグレアが抑えられる。
【0090】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、入射面凸部84のそれぞれは、そこに入射する光を、全反射を生じさせない角度で出射面80Aに入射する。これにより、照明光Kbを効率よく出射し、板状光学部材60による光利用効率の低下を抑制できる。
【0091】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、ベース板80は、照明光Kbが出射する側の出射面80Aに、そこに入射する光を全反射して広角方向に出射させる複数の凸状の出射面凸部82が設けられている。
これにより、出射面80Aに出射面凸部82が無い場合に比べ、輝度が集中して見える箇所にも暗線が入って見るようになり、輝度の集中が更に緩和され、グレアがより抑えられる。
【0092】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、出射面凸部82のそれぞれは、全反射した光が隣の出射面凸部82に入射しない配置間隔Taで走行方向Aに配置されている。この場合において、全反射した光であっても、実用上問題にならない程度の光であれば、隣の出射面凸部82に入射してもよい。
これにより、出射面凸部82で全反射した光が、実用上問題にならない程度の例外を除き、その隣の出射面凸部82に入射して戻り光となり光利用効率を低下させる、といった事がない。
【0093】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0094】
上述した実施形態の路面照明用光源ユニット20を、例えば、一方向に延びた光で壁面を照明する壁面照明用の光源ユニットに用いてもよい。この場合において、配光制御が不要であれば、路面照明用反射板54を備える必要はなく、例えば、光源ユニットは、路面照明用LED光源50(線状光源)と、路面照明用平行光化レンズ52(透光性光学素子)とを備えればよい。
【0095】
上述した実施形態の板状光学部材60において、
図22に示すように、ベース板80の入射面80Bの下縁80Dの側に、そこに入射する光を下方に向けるレンズ部194を設け、直下にも僅かに光を照射するようにしてもよい。
【0096】
上述した実施形態の板状光学部材60は、グレアを低減する機能を備えたが、これに限らず、そこを通過する照明光Kbを、走行方向Aの一方向に向け、いわゆるプロビームにする機能を備えてもよい。この場合、
図23(A)、及び
図23(B)に示すように、ベース板80の出射面80Aに、そこから出射する光を、走行方向Aの一方向に向ける多数のグリッド296が設けられる。
【0097】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0098】
1 低位置道路照明器具(照明器具)
2 器具本体
10 路面照明光用開口
20 路面照明用光源ユニット
50 路面照明用LED光源
60 板状光学部材
64 放射開口
80 ベース板
80A 出射面
80B 入射面
80D 下縁
80U 上縁
82 出射面凸部
84 入射面凸部
90 発光領域
A 走行方向
Kb 照明光