(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/58 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
H01H13/58 A
(21)【出願番号】P 2023559843
(86)(22)【出願日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2023029729
【審査請求日】2023-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114145
【氏名又は名称】ミック電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】宮田 宗親
(72)【発明者】
【氏名】石井 皓太
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04812603(US,A)
【文献】特開2009-218100(JP,A)
【文献】実開昭58-101438(JP,U)
【文献】特開2016-122576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一円周上に互いに離間して配置された複数の端子を有するベースと、
前記複数の端子の上に配置された複数の接点部を有する可動接点ブラシと、
前記複数の接点部を前記複数の端子に接触または離間させるカムを有し、前記ベース
において前記複数の端子と同心に設けられた軸部の軸心周りに回転可能に支持されたロータと、
前記ロータに設けられたギアに当接し、前記ベースの
前記軸部の軸心に直交する方向に移動して前記ロータを回転させるアクチュエータと、
前記アクチュエータに当接し、押し込み操作により前記アクチュエータを移動させ、ばね力により弾性復帰するボタンと、を備えた
ことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記アクチュエータによる前記ロータを回転させる機構は、
前記アクチュエータに対向配置された上側突起及び下側突起と、
前記ロータに上下2段に積層され、前記上側突起が当接する上段ギア及び前記下側突起が当接する下段ギアと、から構成されており、
前記上段ギアと前記下段ギアは、回転半径が異なり、かつ、ギア歯が回転方向において互いにずれた位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記ボタンを弾性復帰させる機構は、
前記ベースに設けられた傾斜面と、
前記アクチュエータにより圧縮されたコイルスプリングを収容し、その反発力で前記傾斜面に押し付けられたスプリングホルダと、から構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の押しボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のシートヒータを操作するスイッチとして好適な押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスイッチとして、下記の特許文献1に記載されたシーソースイッチが知られている。このシーソースイッチは、ケースに支持されたノブが傾倒し、ケース内の可動接点の接点部が端子に接触するかあるいは離間することで導通状態と非導通状態を切り替えることができ、かつ、その状態を保持するロック機構を備えている。このスイッチによれば、ケースの上部に設けられた操作体の左端部分を押すと電源Vccと接点Aが導通し、その導通状態(HIGH設定)がロックされる。一方、操作体の右端部分を押すと接点Aの導通が解除され、電源Vccと接点Bが導通し、その導通状態(LOW設定)がロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の前記シーソースイッチによると、例えばHIGH設定からLOW設定に回路を切り替える場合、操作体の右端部分を押してロックされている状態を解除し、電源を一旦OFFの状態に切り替える必要がある。そして、操作体の右端部分をもう一度押して電源をONの状態にしてからロックしなければならず、このロックを解除するための操作が面倒であるという問題があった。また、回路の切替がHIGH設定とLOW設定の2通りしかないため、例えばMID設定のように細かな温度設定のシートヒータに適用することができないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な操作で回路を切り替えることができ、かつ、多数の回路の切替にも対応することができる押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る押しボタンスイッチは、同一円周上に互いに離間して配置された複数の端子を有するベースと、前記複数の端子の上に配置された複数の接点部を有する可動接点ブラシと、前記複数の接点部を前記複数の端子に接触または離間させるカムを有し、前記ベースにおいて前記複数の端子と同心に設けられた軸部の軸心周りに回転可能に支持されたロータと、前記ロータに設けられたギアに当接し、前記ベースの前記軸部の軸心に直交する方向に移動して前記ロータを回転させるアクチュエータと、前記アクチュエータに当接し、押し込み操作により前記アクチュエータを移動させ、ばね力により弾性復帰するボタンと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る押しボタンスイッチにおいて、前記アクチュエータによる前記ロータを回転させる機構は、前記アクチュエータに対向配置された上側突起及び下側突起と、前記ロータに上下2段に積層され、前記上側突起が当接する上段ギア及び前記下側突起が当接する下段ギアと、から構成されており、前記上段ギアと前記下段ギアは、回転半径が異なり、かつ、ギア歯が回転方向において互いにずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る押しボタンスイッチにおいて、前記ボタンを弾性復帰させる機構は、前記ベースに設けられた傾斜面と、前記アクチュエータにより圧縮されたコイルスプリングを収容し、その反発力で前記傾斜面に押し付けられたスプリングホルダと、から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る押しボタンスイッチによれば、前記構成を採用したことにより、簡単な操作で回路を切り替えることができ、かつ、多数の回路の切替にも対応することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る押しボタンスイッチの外観を示す斜視図。
【
図3】同スイッチを構成するベースの構造を示す平面図。
【
図4】同スイッチを構成するトップケースの構造を示す平面図。
【
図5】同スイッチを構成する可動接点ブラシの構造を示す平面図。
【
図6】同スイッチを構成するボタンの構造を示す平面図。
【
図7】同スイッチを構成するアクチュエータの構造を示す平面図。
【
図8】同スイッチを構成するスプリングホルダの構造を示す平面図。
【
図9】同スイッチを構成するロータの構造を示す平面図。
【
図10】同スイッチの組み立て時の状態を示す断面図。
【
図11】同スイッチにおけるボタン押し込み時のロータの回転動作を示す説明図。
【
図12】同スイッチにおけるボタン自動復帰時のロータの回転動作を示す説明図。
【
図13】同スイッチにおけるロータの回転動作に伴う回路の状態を示す説明図。
【
図14】同スイッチにおける接点部と端子の接触状態を示す説明図。
【
図15】同スイッチにおけるスプリングホルダとベースの関係を示す説明図。
【
図16】同スイッチにおけるギアを上下2段にした理由を示す説明図。
【
図17】同スイッチにおける各回路の切替タイミングを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の押しボタンスイッチ1は、自動車のシートヒータを操作するスイッチとして適用したものである。この押しボタンスイッチ1は、ケース2の上部に設けられた操作体3を押すとボタン60が矢印A方向に沈み込み、指を離すとボタン60が矢印B方向に自動復帰するオートリターンタイプのスイッチである。回路図に示すとおり、操作体3を1回押す毎に、内部の回路はOFF(停止)→LOW(弱:SW1がON)→MID(中:SW2がON)→HIGH(強:SW3がON)→OFF(停止)の順番で切り替わるように構成されている。
【0013】
図2に示すように、本実施形態の押しボタンスイッチ1は、ベース30の上にトップケース40を被せたケース2の内部に可動接点ブラシ50が収容されており、この可動接点ブラシ50を動かすためのボタン60、アクチュエータ70、スプリングホルダ80、及びロータ90からなる操作体3が設置された構造になっている。以下、この押しボタンスイッチ1の詳細な構造について、各部品に分解して説明する。
【0014】
図3に示すベース30は、絶縁性を有する樹脂材料で構成されており、方形箱型のベース本体31の外壁面にトップケース40を装着するための係止爪32,32,…が形成されている。ベース本体31の内部には、可動接点ブラシ50(
図5参照)とロータ90(
図9参照)を収容するための円形台座33が設けられている。円形台座33の中心にはロータ90を軸心周りに回転可能に支持する軸部34が設けられ、円形台座33の左右両側にはスプリングホルダ80(
図8参照)が当接して移動する傾斜面35,35が設けられている。円形台座33の床面には導電性を有する金属板を打ち抜き加工した固定接点パターン10がインサート成形されている。固定接点パターン10は、円形台座33の同一円周上90度毎に、第1スイッチ端子11、第2スイッチ端子12、第3スイッチ端子13、グランド端子14が互いに離間して配置されている。なお、ベース30の上面には、プリント基板20(
図2参照)が装着され、基板21上にスイッチの表示灯であるLED22と抵抗23が実装されている。
【0015】
図4に示すトップケース40は、絶縁性を有する樹脂材料で構成されており、前記ベース30を覆う天板41と左右両側の側板42,42からなる断面コ字型に成形されている。天板41の上面と側板42の底面にはボタン60を装着するための係止爪43,43,…が形成されている。側板42の左右上方にはこの押しボタンスイッチ1を車内に取り付けるための取付片44,44が設けられており、側板42の左右両側面には2列の係止孔45,45が形成されている。この係止孔45,45に前記係止爪32,32を係止することにより、ベース30にトップケース40が装着され、部品を収容するケース2が構成されている。
【0016】
図5に示す可動接点ブラシ50は、導電性を有する金属板51で構成されており、方形状の金属板51の各辺に切り込み加工を施して4本の板ばね片52,52,…が形成されている。各々の板ばね片52の中間位置には、上方に向かって湾曲状に折り曲げた湾曲部53,53,…が設けられている。各々の板ばね片52の先端位置には、接触不良を防ぐために二股に分岐して鈍角に折り曲げた接点部54,54,…が設けられている。全部で4個ある接点部54は、時計回りに第1スイッチ接点部55、第2スイッチ接点部56、第3スイッチ接点部57、グランド接点部58として割り当てられている。
【0017】
図6に示すボタン60は、絶縁性を有する樹脂材料で構成されており、前記ケース2を覆う方形箱型のボタン本体61と、ボタン本体61の上面に突出形成された扁平矩形状の操作部62とを備えている。ボタン本体61には、正面及び背面に2列の係止孔63,63が設けられており、左右両側面に前記取付片44,44を避けるための凹部64,64が設けられている。
【0018】
図7に示すアクチュエータ70は、絶縁性を有する樹脂材料で構成されており、扁平箱型のアクチュエータ本体71の上面に前記ボタン60を装着するための一対の凸部72,72が設けられている。アクチュエータ本体71の背面には、ロータ90(
図9参照)を回転させる機構として、鋭角の先端を有する上側突起73と下側突起74が設けられている。上側突起73と下側突起74は、互いに180度対向する位置に配置され、前記軸部34の軸心に直交する方向に往復移動する。
【0019】
図8に示すスプリングホルダ80は、絶縁性を有する樹脂材料で構成されており、前記ボタン60を弾性復帰させる機構として、扁平箱型のホルダ本体81の上面に円筒状の収容部82が設けられ、この収容部82に金属線を螺旋状に巻いたコイルスプリング83が収容される。ホルダ本体81の底面には、前記ボタン60の押し込み時及び自動復帰時のクリック感を付与するためのクリック片84,84が形成されている。
【0020】
図9に示すロータ90は、絶縁性を有する樹脂材料で構成されており、円盤状のロータ本体91の正面に上下2段に積層された上段ギア92と下段ギア93が設けられている。本実施形態では上段ギア92は歯数12、圧力角18度、下段ギア93は歯数12、圧力角12度に設定されている。また、上段ギア92と下段ギア93は、回転半径が異なり、ギア歯の位置が円周方向(回転方向)において互いに所定角度ずらした位置に配置された構造になっている。ロータ本体91の背面の中心には、前記ベース30の軸部34に嵌められる円筒状の軸受94が設けられている。軸受94を中心とした外側の同一円周上には、第1スイッチ接点部55、第2スイッチ接点部56、第3スイッチ接点部57を所定範囲で接触させる3個の円弧カム95,96,97が等間隔で突出形成されている。軸受94を中心とした内側の円周上には、グランド接点部58を常時接触させる円形カム98が一連となって突出形成されている。
【0021】
押しボタンスイッチ1を構成する部品は以上のとおりであるが、組み立て時には、まず
図10(A)に示すようにベース30の円形台座33の上に可動接点ブラシ50が載置される。これにより、固定接点パターン10の第1スイッチ端子11、第2スイッチ端子12、第3スイッチ端子13の上に、第1スイッチ接点部55、第2スイッチ接点部56、第3スイッチ接点部57がそれぞれ非接触状態で配置される。次に、
図10(B)に示すようにロータ90を可動接点ブラシ50の上に被せ、ロータ90の軸受94(
図9参照)がベース30の軸部34(
図3参照)に嵌め込まれる。さらに、
図10(C)に示すようにコイルスプリング83が収容されたスプリングホルダ80をアクチュエータ70に装着し、ベース30の上にアクチュエータ70が載置され、その上からトップケース40を被せてベース30に装着する。最後に、ボタン60をアクチュエータ70に固定し、ボタン60の係止孔63(
図6参照)にトップケース40の係止爪43(
図4参照)を嵌めてボタン60をトップケース40に装着する。
【0022】
このようにして、ボタン60、アクチュエータ70、スプリングホルダ80、及びロータ90からなる操作体3が構成される。これにより、押しボタンスイッチ1は、操作体3を指で押すとボタン60が沈み込み、アクチュエータ70に押されたロータ90がベース30の軸部34を中心に所定角度回転し、可動接点ブラシ50を動作させて接点を切り替える。一方、操作体3から指を離し、ボタン60を押していた力を解除すると、スプリングホルダ80に収容されたコイルスプリング83のばね力によってボタン60が元の位置に弾性復帰するように構成されている。
【0023】
以上が本実施形態の押しボタンスイッチ1の構造であるが、次にボタン60の操作によるロータ90の回転動作について説明する。
図11(A)はボタン60が自由位置にあるときのケース2の内部の状態を示している。このとき、アクチュエータ70の下側突起74はロータ90の下段ギア93に接触しているが、上側突起73は上段ギア92に接触していない。ここで、
図11(B)に示すようにボタン60の操作部62を矢印A方向に押し込むと、ボタン本体61に接触している凸部72が押されてアクチュエータ70が軸心と直交する方向に移動し、上側突起73が上段ギア92に衝突してロータ90を反時計回りに回転させ始める。また、
図11(C)に示すようにボタン60の操作部62を矢印A方向に更に押し込むと、上側突起73が上段ギア92に接触しながらロータ90を更に回転させる。このとき、アクチュエータ70は移動したままの状態なので、回転中にロータ90の下段ギア93と下側突起74は接触しない。
【0024】
図12(A)はボタン60がフルストローク(図中S)移動したときのケース2の内部の状態を示している。このとき、上側突起73が上段ギア92の歯底に接触するまでロータ90を回転させるので、ロータ90は
図11(A)の自由位置から上段ギア92の圧力角(18度)の角度だけ回転する。ここで、ボタン60を押していた力を解除すると、コイルスプリング83のばね力によってボタン60が自動復帰する。このとき、
図12(B)に示すようにアクチュエータ70がボタン60を矢印B方向に押し上げ、下側突起74が下段ギア93に衝突してロータ90を反時計回りに回転させ始める。そして、
図12(C)に示すようにボタン60が自由位置まで戻ると、ロータ90は
図12(A)のフルストローク位置から下段ギア93の圧力角(12度)の角度だけ回転する。すなわち、ボタン60を1回押す毎に、ロータ90は、ボタン60がフルストローク位置に移動するまでに18度、ボタン60が自由位置に戻るまでに12度、合計30度回転することになる。
【0025】
次に、ロータ90の回転動作に伴う回路の切替について説明する。
図13は接点の位置関係を理解し易くするためにトップケース40、ボタン60、アクチュエータ70の図示を省略し、ロータ90の背面側の円弧カム95,96,97の位置を網掛けで表示してある。
図13(A)はボタン60が自由位置にあるときのケース2の内部の状態を示している。このとき、ロータ90の円形カム98が可動接点ブラシ50の湾曲部53を常時押圧しており、押し下げられたグランド接点部58がグランド端子14に常時接触している。これに対し、3個の円弧カム95,96,97はいずれも可動接点ブラシ50の湾曲部53を押圧していないので、第1スイッチ接点部55、第2スイッチ接点部56、第3スイッチ接点部57はいずれも第1スイッチ端子11、第2スイッチ端子12、第3スイッチ端子13から離れており接触していない(
図14(A)参照)。これが、回路OFFの状態である。
【0026】
ここで、ボタン60を1回押すと、
図12で説明したとおりロータ90が反時計回りに30度回転するので、カム位置も30度回転して移動する。すると、
図13(B)に示すように1個の円弧カム95が可動接点ブラシ50の湾曲部53を押圧し、押し下げられた第1スイッチ接点部55が第1スイッチ端子11に接触する。このとき、グランド接点部58はグランド端子14に常時接触しているが、第2スイッチ接点部56と第3スイッチ接点部57はどちらも第2スイッチ端子12と第3スイッチ端子13に接触していない。これが、SW1がONの状態である。
【0027】
ここで、ボタン60をもう1回押すと、ロータ90が反時計回りに更に30度回転し、カム位置も更に30度回転して移動する。すると、
図13(C)に示すように、接触していた円弧カム95が湾曲部53から離れ、次の円弧カム96が湾曲部53を押圧し、押し下げられた第2スイッチ接点部56が第2スイッチ端子12に接触する。このとき、グランド接点部58はグランド端子14に常時接触しているが、第1スイッチ接点部55と第3スイッチ接点部57はどちらも第1スイッチ端子11と第3スイッチ端子13に接触していない。これが、SW2がONの状態である。
【0028】
ここで、ボタン60を更にもう1回押すと、ロータ90が反時計回りに更に30度回転し、カム位置も更に30度回転して移動する。すると、
図13(D)に示すように、接触していた円弧カム96が湾曲部53から離れ、次の円弧カム97が湾曲部53を押圧し、押し下げられた第3スイッチ接点部57が第3スイッチ端子13に接触する(
図14(B)参照)。このとき、グランド接点部58はグランド端子14に常時接触しているが、第1スイッチ接点部55と第2スイッチ接点部56はどちらも第1スイッチ端子11と第2スイッチ端子12に接触していない。これが、SW3がONの状態である。最後に、ボタン60をもう1回押すと、ロータ90が反時計回りに更に30度回転し、
図13(A)に示した回路OFFの状態に戻る。
【0029】
次に、ボタン60の復帰動作について説明する。
図15に示すように、ボタン60が自由位置にあるとき、スプリングホルダ80に収容されたコイルスプリング83はアクチュエータ70に当接して圧縮されており、その反発力でクリック片84をベース30に押し付けている。ここで、矢印A方向にボタン60を押していくと、アクチュエータ70とスプリングホルダ80が押し込まれ、クリック片84がコイルスプリング83のばね力に逆らいながらベース30の傾斜面35を登っていく。傾斜面35は、拡大図に示すように最初は傾斜角度が30度であるが途中から傾斜角度が15度に変化しているため、クリック片84がこの傾斜角度の境界線を越える際に抵抗力が変わって指先にクリック感が得られるようになっている。一方、指を離してボタン60を押していた力を解除すると、コイルスプリング83のばね力で下向きに押されたクリック片84が反対に傾斜面35を下っていき、それに伴ってアクチュエータ70に押されたボタン60が元の自由位置に自動復帰するように構成されている。
【0030】
なお、本実施形態では、ロータ90に上段ギア92と下段ギア93を設けたが、ギアを上下2段にした理由は次のとおりである。
図16(A)に示すように、仮に1段のギア(歯数12、回転角度15度)に設定した場合、ギアの形状が点対称であるため、図のように自由位置の状態のとき、下側突起74の位置では回転しているギア歯に干渉してしまう。これを避けるためには、この下側突起74の位置ではロータ90が更に15度回転している状態でなければならない。したがって、本実施形態では
図16(B)に示すように、ロータ90のギアを回転半径の異なる上下2段にしてギア歯の位置を円周方向(回転方向)にずらすことにより、ボタン60の押し込み時と自動復帰時に、180度対向する位置のギア歯と突起との干渉を防いでいる。
【0031】
また、本実施形態では、上段ギア92の圧力角を18度、下段ギア93の圧力角を12度に設定したが、上下のギアの圧力角を変えている理由は次のとおりである。この押しボタンスイッチ1は、ボタン60を1回押す毎に内部の回路がOFF→SW1がON→SW2がON→SW3がON→OFFの順番で切り替わる。
図17は各回路の切替タイミングを示したものであり、接点がONしている箇所を網掛けで表示してある。同図に示すように、各回路の切替タイミングは、ボタン60を押し込んでいる最中に行っており、各回路の切り替わり時はOFFになっている。切替タイミングを狭くすると部品の精度が必要になるからである。そこで、ボタン60を押し込んだときのロータ90の回転角度が大きいほど切替にかかる角度が大きくとれて有利なため、押し込み時の回転角度を自動復帰時の回転角度よりも大きく設定してある(押し込み時18度、自動復帰時12度)。
【0032】
以上説明した実施形態では、回路のON/OFFする接点の数を3個(SW1,SW2,SW3)としたが、接点の数はこれに限られない。例えば、固定接点パターン10のスイッチ端子の数、可動接点ブラシ50の接点部の数、ロータ90の円弧カムの数を増やすことにより、ON/OFFする接点の数を4個以上(SW1,SW2,SW3,SW4,…)に設定することも可能である。すなわち、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において当業者の通常の創作能力によって適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1:押しボタンスイッチ
2:ケース
3:操作体
10:固定接点パターン
11:第1スイッチ端子
12:第2スイッチ端子
13:第3スイッチ端子
14:グランド端子
20:プリント基板
21:基板
22:LED
23:抵抗
30:ベース
31:ベース本体
32:係止爪
33:円形台座
34:軸部
35:傾斜面
40:トップケース
41:天板
42:側板
43:係止爪
44:取付片
45:係止孔
50:可動接点ブラシ
51:金属板
52:板ばね片
53:湾曲部
54:接点部
55:第1スイッチ接点部
56:第2スイッチ接点部
57:第3スイッチ接点部
58:グランド接点部
60:ボタン
61:ボタン本体
62:操作部
63:係止孔
64:凹部
70:アクチュエータ
71:アクチュエータ本体
72:凸部
73:上側突起
74:下側突起
80:スプリングホルダ
81:ホルダ本体
82:収容部
83:コイルスプリング
84:クリック片
90:ロータ
91:ロータ本体
92:上段ギア
93:下段ギア
94:軸受
95:円弧カム
96:円弧カム
97:円弧カム
98:円形カム
【要約】
押しボタンスイッチ(1)は、同一円周上に互いに離間して配置された複数の端子を有するベース(30)と、複数の端子の上に配置された複数の接点部を有する可動接点ブラシ(50)と、複数の接点部を複数の端子に接触または離間させるカムを有し、ベース(30)の軸心周りに回転可能に支持されたロータ(90)と、ロータ(90)に設けられたギアに当接し、ベース(30)の軸心に直交する方向に移動してロータ(90)を回転させるアクチュエータ(70)と、アクチュエータ(70)に当接し、押し込み操作によりアクチュエータ(70)を移動させ、ばね力により弾性復帰するボタン(60)と、を備えて構成されている。