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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ダイシングダイボンドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231122BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231122BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231122BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J133/00
C09J7/38
C09J7/35
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019038249
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145212
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】杉村 敏正
(72)【発明者】
【氏名】大西 謙司
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】福井 章洋
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016787(JP,A)
【文献】特開2018-182297(JP,A)
【文献】特開2017-183705(JP,A)
【文献】特開2010-153774(JP,A)
【文献】特開平09-153471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 133/00
C09J 7/38
C09J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、
前記ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着しているダイボンドフィルムとを備え、
前記ダイシングテープにおける前記粘着剤層の側の表面は、SUS平面に対し、-15℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の条件での剥離試験において0.3N/20mm以上の剥離粘着力を示し、
前記ダイシングテープは、幅20mmのダイシングテープ試験片について初期チャック間距離100mm、-15℃、および引張速度200mm/分の条件で行われる引張試験において歪み値30%で生ずる引張応力が50N/20mm以下であり、
前記粘着剤層は、-15℃での貯蔵弾性率が100MPa以下である、ダイシングダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層は、-15℃での貯蔵弾性率が0.1MPa以上である、請求項1に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層は、ガラス転移温度が-40℃以下のポリマーを含有する、請求項1または2に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーおよびイソシアネート系架橋剤を含有する、請求項1からのいずれか一つに記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して0.1質量部以上である、請求項に記載のダイシングダイボンドフィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して2質量部以下である、請求項またはに記載のダイシングダイボンドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造過程で使用することのできるダイシングダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程においては、ダイボンディング用のチップ相当サイズの接着フィルムを伴う半導体チップ、即ち接着剤層付き半導体チップを得るうえで、ダイシングダイボンドフィルムが使用される場合がある。ダイシングダイボンドフィルムは、例えば、基材および粘着剤層からなるダイシングテープと、その粘着剤層側に剥離可能に密着しているダイボンドフィルムとを有する。ダイボンドフィルムは、ワークである半導体ウエハを上回るサイズの円盤形状を有し、例えば、そのダイボンドフィルムを上回るサイズの円盤形状を有するダイシングテープに対してその粘着剤層側に同心円状に貼り合わされている。ダイシングテープの粘着剤層においてダイボンドフィルムに覆われていないダイボンドフィルム周りの領域には、リングフレームが貼り付けられうる。リングフレームは、ダイシングテープに貼り付けられた状態において、各種装置の備える搬送アームなど搬送機構がワーク搬送時に機械的に当接する部材である。
【0003】
このようなダイシングダイボンドフィルムは、例えば次のようにして使用される。まず、ダイシングテープにおけるダイボンドフィルム周りの粘着領域にリングフレームが貼り付けられた状態で、ワークである半導体ウエハがダイボンドフィルム上に貼り合わされる。次に、ダイシングダイボンドフィルムないしそのダイボンドフィルムに保持された状態にある半導体ウエハに対してブレードダイシングが行われる。ブレードダイシングでは、半導体ウエハおよびこれに密着しているダイボンドフィルムが、高速回転するダイシングブレードによる切削加工を受けて、小片の接着フィルムをそれぞれが伴う複数の半導体チップへと個片化される。
【0004】
一方、ダイシングダイボンドフィルムを使用して接着剤層付き半導体チップを得る他の方法として、ダイシングダイボンドフィルムをエキスパンドしてダイボンドフィルムを割断するエキスパンド工程を経る手法が知られている。
【0005】
この手法では、まず、ダイシングダイボンドフィルムにおいて、ダイシングテープにおけるダイボンドフィルム周りの粘着領域にリングフレームが貼り付けられた状態で、ダイボンドフィルム上に半導体ウエハが貼り合わせられる。半導体ウエハは、例えば、後にダイボンドフィルムと共に割断されて複数の半導体チップへと個片化可能なように、所定の加工を施されたものである。
【0006】
次に、ダイシングダイボンドフィルムとそれに保持された状態にある半導体ウエハに対し、エキスパンド装置が使用されてエキスパンド工程が実施される。エキスパンド工程では、それぞれが半導体チップに密着している複数の接着フィルム小片がダイシングテープ上のダイボンドフィルムから生じるように当該ダイボンドフィルムを割断すべく、エキスパンド装置によってダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープが半導体ウエハの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされる。この工程では、ダイボンドフィルムにおける割断箇所に相当する箇所でダイボンドフィルム上の半導体ウエハにおいても割断が生じ、ダイシングダイボンドフィルム上ないしダイシングテープ上にて半導体ウエハの個片化が図られる。このような手法によると、ダイシングブレードが使用される上述のブレードダイシングにおける研削加工によると生じることがあるワークの割れや欠けを回避することが可能である。この割れや欠けは、ダイシング対象の半導体ウエハが薄いほど生じやすい。
【0007】
例えば以上のように使用されるダイシングダイボンドフィルムに関する技術については、例えば下記の特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-2173号公報
【文献】特開2010-177401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のエキスパンド工程は、ダイボンドフィルムに割断が生じやすいように-15℃程度の低温条件で実施される場合がある。しかしながら、ダイシングダイボンドフィルムを使用してそのような低温条件でエキスパンド工程を実施する場合、従来、リングフレームからダイシングテープが剥がれてしまうことがある。
【0010】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、接着剤層付き半導体チップを得るためのエキスパンド工程を低温条件で実施するのに適したダイシングダイボンドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により提供されるダイシングダイボンドフィルムは、ダイシングテープおよびダイボンドフィルムを備える。ダイシングテープは、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有する。ダイボンドフィルムは、ダイシングテープの粘着剤層に剥離可能に密着している。また、本ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープにおける粘着剤層の側の表面は、SUS平面に対し、-15℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の条件(第1の条件)での剥離試験において0.3N/20mm以上の剥離粘着力を示す。この剥離粘着力は、例えば、ダイシングテープから切り出されるダイシングテープ試験片をSUS板の表面などSUS平面に対して貼り合わせた後に、当該試験片について上記第1の条件で剥離試験を行うことによって測定することができる。このような構成の本ダイシングダイボンドフィルムは、半導体装置の製造において接着剤層付き半導体チップを得る過程での上述のようなエキスパンド工程に使用し得るものである。
【0012】
半導体装置の製造過程においては、上述のように、接着剤層付き半導体チップを得るうえで、ダイシングダイボンドフィルムを使用して行うエキスパンド工程が実施される場合がある。エキスパンド工程実施時には、ダイシングダイボンドフィルムないしそのダイシングテープは、リングフレームが貼り付けられた状態にある。ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープの粘着剤層側表面が、上記第1の条件での剥離試験においてSUS平面に対して0.3N/20mm以上の剥離粘着力を示すという構成は、例えば-15℃の低温条件で上述のようなエキスパンド工程(ダイシングダイボンドフィルムが使用される)を実施する場合にリングフレームからのダイシングダイボンドフィルムないしそのダイシングテープの剥離を抑制するのに適することを、本発明者らは見出だした。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。当該構成は、例えば-15℃の低温条件で実施されるエキスパンド工程において、ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープのリングフレーム貼着部が、同工程で受ける程度の引っ張り力に抗してリングフレームに貼着し続けるうえで好適なのである。これとともに、例えば-15℃の低温条件でエキスパンド工程を実施する場合にリングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するのに適した、本ダイシングダイボンドフィルムの同構成は、ダイボンドフィルムに割断が生じやすいように-15℃程度の低温条件で上述のエキスパンド工程を実施するのに適する。例えば-15℃の低温条件で実施されるエキスパンド工程においてダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープのリングフレーム貼着部がリングフレームに貼着し続けるうえで好適であり、且つ、ダイボンドフィルムに割断が生じやすいように-15℃程度の低温条件でエキスパンド工程を実施するのに適した本ダイシングダイボンドフィルムは、割断のための上述のエキスパンド工程を低温条件で実施するのに適する。
【0013】
以上のように、本ダイシングダイボンドフィルムは、接着剤層付き半導体チップを得るためのエキスパンド工程を低温条件で実施するのに適するのである。
【0014】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、低温条件でのエキスパンド工程に使用される場合にリングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するという観点からは、ダイシングテープ粘着剤層側表面がSUS平面に対して上記第1の条件での剥離試験で示す剥離力粘着力は、好ましくは0.35N/20mm以上、より好ましくは0.4N/20mm以上である。同粘着力は、例えば10N/20mm以下である。
【0015】
本ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープは、幅20mmのダイシングテープ試験片について初期チャック間距離100mm、-15℃、および引張速度200mm/分の条件で行われる引張試験において歪み値30%で生ずる引張応力が、好ましくは50N/20mm以下あり、より好ましくは45N/20mm以下、より好ましくは40N/20mm以下である。このような構成は、本ダイシングダイボンドフィルムを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合において、本ダイシングダイボンドフィルムのエキスパンド後のダイシングテープのリングフレーム貼着部に発生する残留応力を抑制するうえで好適であり、従って、リングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するうえで好適である。また、本ダイシングダイボンドフィルムが使用されるエキスパンド工程においてエキスパンド中のダイシングテープからダイボンドフィルムに対して充分な割断力としての引張応力を作用させて当該ダイボンドフィルムを適切に割断するという観点からは、同引張応力は好ましくは5N/20mm以上である。
【0016】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、そのダイシングテープの粘着剤層における-15℃での貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上である。このような構成は、本ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープ粘着剤層において、低温環境下で、それにせん断力が作用する場合の当該せん断力に抗するための凝集力を確保するうえで好適であり、従って、本ダイシングダイボンドフィルムが-15℃程度の低温条件でのエキスパンド工程に使用される場合にリングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するうえで好適である。
【0017】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、そのダイシングテープの粘着剤層における-15℃での貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)は、好ましくは100MPa以下、より好ましくは80MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。このような構成は、本ダイシングダイボンドフィルムを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合において、本ダイシングダイボンドフィルムのエキスパンド後のダイシングテープのリングフレーム貼着部に発生する残留応力を抑制するうえで好適であり、従って、リングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するうえで好適である。
【0018】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、ダイシングテープの粘着剤層は、好ましくは、ガラス転移温度が-40℃以下のポリマーを含有する。粘着剤層におけるこのポリマーの含有割合は、例えば50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上である。このような構成は、-15℃程度の低温条件下において、同ポリマーひいてはダイシングテープ粘着剤層についてゴム状態すなわちゴム弾性を有する状態を実現するのに適し、従って、本ダイシングダイボンドフィルムを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合リングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するうえで好適である。
【0019】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、ダイシングテープの粘着剤層は、好ましくは、アクリル系ポリマーおよびイソシアネート系架橋剤を含有する。このような構成によると、ダイシングテープ粘着剤層についてその粘着力や貯蔵弾性率、凝集力など物性を制御しやすい。
【0020】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、ダイシングテープ粘着剤層のイソシアネート系架橋剤含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。このような構成は、ダイシングテープ粘着剤層において、低温条件下での上述の凝集力を確保するうえで好適であり、従って、本ダイシングダイボンドフィルムが-15℃程度の低温条件でのエキスパンド工程に使用される場合にリングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するうえで好適である。
【0021】
本ダイシングダイボンドフィルムにおいて、ダイシングテープの粘着剤層のイソシアネート系架橋剤含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。このような構成は、本ダイシングダイボンドフィルムを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合において、本ダイシングダイボンドフィルムのエキスパンド後のダイシングテープのリングフレーム貼着部に発生する残留応力を抑制するうえで好適であり、従って、リングフレームからのダイシングテープの剥離を抑制するうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一の実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムの平面図である。
図2図1に示すダイシングダイボンドフィルムの断面模式図である。
図3図1および図2に示すダイシングダイボンドフィルムが使用される半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図4図3に示す工程の後に続く工程を表す。
図5図4に示す工程の後に続く工程を表す。
図6図5に示す工程の後に続く工程を表す。
図7図6に示す工程の後に続く工程を表す。
図8図7に示す工程の後に続く工程を表す。
図9図1および図2に示すダイシングダイボンドフィルムが使用される半導体装置製造方法の変形例における一部の工程を表す。
図10図9に示す工程の後に続く工程を表す。
図11図1および図2に示すダイシングダイボンドフィルムが使用される半導体装置製造方法の変形例における一部の工程を表す。
図12図11に示す工程の後に続く工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2は、本発明の一の実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムXを表す。図1は、ダイシングダイボンドフィルムXの平面図である。図2は、ダイシングダイボンドフィルムXの断面模式図である。
【0024】
ダイシングダイボンドフィルムXは、ダイシングテープ10とダイボンドフィルム20とを含む積層構造を有する。ダイシングテープ10は、基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有する。粘着剤層12は、ダイボンドフィルム20側に粘着面12aを有する。ダイボンドフィルム20は、ダイシングテープ10の粘着剤層12ないしその粘着面12aに剥離可能に密着している。本実施形態では、ダイシングテープ10およびダイボンドフィルム20は、図1に示すように、円盤形状を有し且つ同心円状に配されている。ダイシングテープ10の粘着剤層12においてダイボンドフィルム20に覆われていないダイボンドフィルム周りの領域には、リングフレームが貼り付けられうる。リングフレームは、ダイシングテープ10に貼り付けられた状態において、各種装置の備える搬送アームなど搬送機構がワーク搬送時に機械的に当接する部材である。このようなダイシングダイボンドフィルムXは、半導体装置の製造において接着剤層付き半導体チップを得る過程でのエキスパンド工程に使用することのできるものである。
【0025】
ダイシングダイボンドフィルムXにおけるダイシングテープ10の基材11は、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおいて支持体として機能する要素である。基材11は例えばプラスチック基材であり、当該プラスチック基材としてはプラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、およびシリコーン樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、およびエチレン-ヘキセン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。基材11は、一種類の材料からなってもよいし、二種類以上の材料からなってもよい。基材11は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。基材11上の粘着剤層12が後述のように紫外線硬化型である場合、基材11は紫外線透過性を有するのが好ましい。また、基材11は、プラスチックフィルムよりなる場合、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0026】
基材11は、熱収縮性を有するのが好ましい。また、基材11がプラスチックフィルムよりなる場合、ダイシングテープ10ないし基材11について等方的な熱収縮性を実現するうえでは、基材11は二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0027】
基材11における粘着剤層12側の表面は、粘着剤層12との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、およびイオン化放射線処理が挙げられる。化学的処理としては例えばクロム酸処理が挙げられる。
【0028】
基材11の厚さは、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおける支持体として基材11が機能するための強度を確保するという観点からは、好ましくは40μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上である。また、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材11の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0029】
ダイシングテープ10の粘着剤層12は、粘着剤を含有する。この粘着剤は、ダイシングダイボンドフィルムXの使用過程において外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤(粘着力低減可能型粘着剤)であってもよいし、ダイシングダイボンドフィルムXの使用過程において外部からの作用によっては粘着力が低下しないか或いは実質的に低下しない粘着剤(粘着力非低減型粘着剤)であってもよい。粘着剤層12中の粘着剤として粘着力低減可能型粘着剤を用いるか或いは粘着力非低減型粘着剤を用いるかについては、ダイシングダイボンドフィルムXを使用して個片化される半導体チップの個片化の手法や条件など、ダイシングダイボンドフィルムXの使用態様に応じて、適宜に選択することができる。
【0030】
粘着剤層12中の粘着剤として粘着力低減可能型粘着剤を用いる場合、ダイシングダイボンドフィルムXの使用過程において、粘着剤層12が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを、使い分けることが可能である。例えば、ダイシングダイボンドフィルムXが後記のエキスパンド工程に使用される時には、粘着剤層12からのダイボンドフィルム20の浮きや剥離を抑制・防止するために粘着剤層12の高粘着力状態を利用する一方で、それより後、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10から接着剤層付き半導体チップをピックアップするための後記のピックアップ工程では、粘着剤層12から接着剤層付き半導体チップをピックアップしやすくするために粘着剤層12の低粘着力状態を利用することが可能である。
【0031】
このような粘着力低減可能型粘着剤としては、例えば、ダイシングダイボンドフィルムXの使用過程において放射線照射によって硬化させることが可能な粘着剤(放射線硬化性粘着剤)や加熱発泡型粘着剤などが挙げられる。本実施形態の粘着剤層12では、一種類の粘着力低減可能型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力低減可能型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層12の全体が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12の一部が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層12が単層構造を有する場合、粘着剤層12の全体が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12における所定の部位(例えば、ワーク貼付け対象領域である中央領域)が粘着力低減可能型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、リングフレーム貼付け対象領域であって、中央領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層12が多層構造を有する場合、多層構造をなす全ての層が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよいし、多層構造中の一部の層が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよい。
【0032】
粘着剤層12のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射によって硬化するタイプの粘着剤が挙げられ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を好適に用いることができる。
【0033】
粘着剤層12のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0034】
上記のアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(即ちラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。アクリル系ポリマーのための(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、アクリル酸2-エチルヘキシルが用いられる。また、(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層12にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーの構成モノマー全体における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、好ましくは40mol%以上、より好ましくは60mol%以上である。また、アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。
【0035】
上記のアクリル系ポリマーは、例えばその凝集力や耐熱性の改質の観点から、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための他の共重合性モノマー、即ち、アクリル系ポリマーの構成モノマーである他の共重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。窒素原子含有モノマーとしては、例えば4-アクリロイルモルフォリンが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための上記共重合性モノマーとしては、好ましくは、ヒドロキシ基含有モノマーおよび/または窒素原子含有モノマーが用いられ、より好ましくは(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび/または4-アクリロイルモルフォリンが用いられる。
【0036】
上記のアクリル系ポリマーがヒドロキシ基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含むものである場合、即ち、アクリル系ポリマーがその構成モノマーとしてヒドロキシ基含有モノマーを含む場合、当該アクリル系ポリマーにおけるヒドロキシ基含有モノマーの割合は、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上であり、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下である。
【0037】
上記のアクリル系ポリマーが窒素原子含有モノマーに由来するモノマーユニットを含むものである場合、即ち、アクリル系ポリマーがその構成モノマーとして窒素原子含有モノマーを含む場合、当該アクリル系ポリマーにおける窒素原子含有モノマーの割合は、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上であり、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下である。
【0038】
アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味するものとする。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の多官能性モノマーが用いられてもよいし、二種類以上の多官能性モノマーが用いられてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層12にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーの構成モノマー全体における多官能性モノマーの割合は、好ましくは40mol%以下、好ましくは30mol%以下である。
【0039】
アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXの使用される半導体装置製造方法における高度の清浄性の観点からは、ダイシングテープ10ないしダイシングダイボンドフィルムXにおける粘着剤層12中の低分子量物質は少ない方が好ましいところ、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万~300万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)により測定して得られた、標準ポリスチレン換算の値をいうものとする。
【0040】
粘着剤層12に含有される粘着剤たるベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-40℃以下である。ポリマーのガラス転移温度については、下記のFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(理論値)を用いることができる。Foxの式は、ポリマーのガラス転移温度Tgと、当該ポリマーにおける構成モノマーごとの単独重合体のガラス転移温度Tgiとの関係式である。下記のFoxの式において、Tgはポリマーのガラス転移温度(℃)を表し、Wiは当該ポリマーを構成するモノマーiの重量分率を表し、Tgiはモノマーiの単独重合体のガラス転移温度(℃)を示す。単独重合体のガラス転移温度については文献値を用いることができ、例えば「新高分子文庫7 塗料用合成樹脂入門」(北岡協三 著,高分子刊行会,1995年)や「アクリルエステルカタログ(1997年度版)」(三菱レイヨン株式会社)には、各種の単独重合体のガラス転移温度が挙げられている。一方、モノマーの単独重合体のガラス転移温度については、特開2007-51271号公報に具体的に記載されている手法によって求めることも可能である。
【0041】
Foxの式 1/(273+Tg)=Σ[Wi/(273+Tgi)]
【0042】
粘着剤層12ないしそれをなすための粘着剤は、アクリル系ポリマーなどベースポリマーの数平均分子量を高めるために例えば、架橋剤を含有してもよい。アクリル系ポリマーなどベースポリマーと反応して架橋構造を形成するための架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤としてのポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、アジリジン化合物、およびメラミン系架橋剤が挙げられる。粘着剤層12ないしそれをなすための粘着剤における架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどベースポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。同含有量は、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
【0043】
放射線硬化性粘着剤をなすための上記の放射線重合性モノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。放射線硬化性粘着剤をなすための上記の放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100~30000程度のものが適当である。放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される粘着剤層12の粘着力を適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5~500質量部であり、より好ましくは40~150質量部である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
【0044】
粘着剤層12のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤は、形成される粘着剤層12内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制するうえで好適である。
【0045】
内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。そのような基本骨格をなすアクリル系ポリマーとしては、上述のアクリル系ポリマーを採用することができる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
【0046】
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好ましい。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いので、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの観点からは、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好ましい。この場合、放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物、即ち、放射線重合性の不飽和官能基含有イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0047】
粘着剤層12のための放射線硬化性粘着剤は、好ましくは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、およびアシルホスフォナートが挙げられる。α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテルが挙げられる。ケタール系化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。粘着剤層12における放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して例えば0.05~20質量部である。
【0048】
粘着剤層12のための上記の加熱発泡型粘着剤は、加熱によって発泡や膨張をする成分(発泡剤や熱膨張性微小球など)を含有する粘着剤である。発泡剤としては、種々の無機系発泡剤および有機系発泡剤が挙げられる。熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、およびアジド類が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物、ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、並びに、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物が、挙げられる。上記のような熱膨張性微小球をなすための、加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、およびペンタンが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルベーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスルホンが挙げられる。
【0049】
上述の粘着力非低減型粘着剤としては、例えば、粘着力低減可能型粘着剤に関して上述した放射線硬化性粘着剤を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤や、感圧型粘着剤などが、挙げられる。放射線硬化性粘着剤は、その含有ポリマー成分の種類および含有量によっては、放射線硬化されて粘着力が低減された場合においても当該ポリマー成分に起因する粘着性を示し得て、所定の使用態様で被着体を粘着保持するのに利用可能な粘着力を発揮することが可能である。本実施形態の粘着剤層12においては、一種類の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層12の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層12の一部が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層12が単層構造を有する場合、粘着剤層12の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、上述のように、粘着剤層12における所定の部位(例えば、リングフレーム貼付け対象領域であって、ウエハ貼付け対象領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、ウエハ貼付け対象領域である中央領域)が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層12が多層構造を有する場合、多層構造をなす全ての層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、多層構造中の一部の層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。
【0050】
一方、粘着剤層12のための感圧型粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を用いることができる。粘着剤層12が感圧型粘着剤としてアクリル系粘着剤を含有する場合、当該アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのようなアクリル系ポリマーとしては、例えば、放射線硬化性粘着剤に関して上述したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0051】
粘着剤層12ないしそれをなすための粘着剤は、上述の各成分に加えて、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、および、顔料や染料などの着色剤を、含有してもよい。着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
【0052】
粘着剤層12の厚さは、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~30μm、より好ましくは5~25μmである。このような構成は、例えば、粘着剤層12が放射線硬化性粘着剤を含む場合に当該粘着剤層12の放射線硬化の前後におけるダイボンドフィルム20に対する接着力のバランスをとるうえで、好適である。
【0053】
以上のようなダイシングテープ10における粘着剤層12の側の表面は、SUS平面に対し、-15℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の条件(第1の条件)での剥離試験において示す剥離粘着力が、0.3N/20mm以上であり、好ましくは0.35N/20mm以上、より好ましくは0.4N/20mm以上である。同粘着力は、例えば10N/20mm以下である。この剥離粘着力は、例えば、ダイシングテープ10から切り出されるダイシングテープ試験片をSUS板の表面などSUS平面に対して貼り合わせた後に、当該試験片について上記第1の条件で剥離試験を行うことによって測定することができる。剥離粘着力の測定には、例えば、引張試験機(商品名「オートグラフ AGS-J」,株式会社島津製作所製)を使用することができる。ダイシングテープ10における当該剥離粘着力の調整は、例えば、粘着剤層12中のポリマーをなすためのモノマーの組成(種類と比率)の調整や、用いる架橋剤の種類の選択とその量の調整、同ポリマーの分子量の調整、粘着付与剤の添加によって、行うことが可能である。
【0054】
ダイシングテープ10は、幅20mmのダイシングテープ10試験片について初期チャック間距離100mm、-15℃、および引張速度200mm/分の条件で行われる引張試験において歪み値30%で生ずる引張応力が、好ましくは50N/20mm以下あり、より好ましくは45N/20mm以下、より好ましくは40N/20mm以下である。同引張応力は例えば5N/20mm以上である。この引張応力については、例えば、引張試験機(商品名「オートグラフ AGS-50NX」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。ダイシングテープ10における当該引張応力の調整は、例えば、基材11の構成材料の選択や、基材11の厚さの調整、基材11についての製膜条件や延伸条件の調整による結晶化度の制御によって、行うことが可能である。
【0055】
ダイシングテープ10の粘着剤層12における-15℃での貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上である。同貯蔵弾性率は、好ましくは100MPa以下、より好ましくは80MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。この貯蔵弾性率については、例えば、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリック社製)を使用して行う動的粘弾性測定により求めることができる。本測定は、直径7.9mmのパラレルプレートの治具に対して測定用サンプルである円柱状ペレット(直径7.9mm)を固定した状態で行われる。測定用サンプルである円柱状ペレットは、例えば、貯蔵弾性率同定対象である粘着剤層の構成材料よりなる約2mmの厚さの粘着剤シートを打抜き加工して得ることができる。また、本測定において、測定モードはせん断モードとし、測定温度範囲は例えば-70℃~150℃とし、昇温速度は5℃/分とし、周波数は1Hzとする。粘着剤層12の貯蔵弾性率の調整は、例えば、粘着剤層12中のポリマーをなすためのモノマーの組成(種類と比率)の調整や、用いる架橋剤の種類の選択とその量の調整、同ポリマーの分子量の調整、オリゴマーの添加、フィラーの添加によって、行うことが可能である。
【0056】
ダイシングダイボンドフィルムXにおけるダイボンドフィルム20は、熱硬化性を示すダイボンディング用接着剤として機能しうる構成を有する。ダイボンドフィルム20は、樹脂成分として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有してもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有してもよい。熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成をダイボンドフィルム20が有する場合、当該ダイボンドフィルム20は熱硬化性樹脂を更に含む必要はない。このようなダイボンドフィルム20は、単層構造を有してもよいし、隣接層間で組成の異なる多層構造を有してもよい。
【0057】
ダイボンドフィルム20が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。ダイボンドフィルム20は、一種類の熱硬化性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化性樹脂を含有してもよい。エポキシ樹脂は、ダイボンディング対象である半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にあることから、ダイボンドフィルム20中の熱硬化性樹脂として好ましい。また、エポキシ樹脂に熱硬化性を発現させるための硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、およびグリシジルアミン型の、エポキシ樹脂が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、ダイボンドフィルム20中のエポキシ樹脂として好ましい。
【0059】
エポキシ樹脂の硬化剤として作用しうるフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、および、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂が挙げられる。ダイボンドフィルム20は、エポキシ樹脂の硬化剤として、一種類のフェノール樹脂を含有してもよいし、二種類以上のフェノール樹脂を含有してもよい。フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂は、ダイボンディング用接着剤としてのエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる場合に当該接着剤の接続信頼性を向上させる傾向にあるので、ダイボンドフィルム20中のエポキシ樹脂用硬化剤として好ましい。
【0060】
ダイボンドフィルム20がエポキシ樹脂とその硬化剤としてのフェノール樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.8~1.2当量である割合で、両樹脂は配合される。このような構成は、ダイボンドフィルム20の硬化にあたって当該エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の硬化反応を十分に進行させるうえで好ましい。
【0061】
ダイボンドフィルム20における熱硬化性樹脂の含有割合は、ダイボンドフィルム20においてその熱硬化型接着剤としての機能を適切に発現させるという観点からは、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0062】
ダイボンドフィルム20中の熱可塑性樹脂は例えばバインダー機能を担うものであり、ダイボンドフィルム20が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフッ素樹脂が挙げられる。ダイボンドフィルム20は、一種類の熱可塑性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を含有してもよい。アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いことから、ダイボンドフィルム20中の熱可塑性樹脂として好ましい。
【0063】
ダイボンドフィルム20が熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。
【0064】
アクリル樹脂のモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル樹脂の構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、粘着剤層12のためのアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アクリル樹脂の構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。
【0065】
アクリル樹脂は、例えばその凝集力や耐熱性の改質の観点から、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。アクリル樹脂のモノマーユニットをなすための他の共重合性モノマー、即ち、アクリル樹脂の構成モノマーである他の共重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。これらモノマーについて、具体的には、粘着剤層12のためのアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記したものを挙げることができる。
【0066】
ダイボンドフィルム20が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有する場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、粘着剤層12のためのアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすための熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびイソシアネート基が挙げられる。これらのうち、グリシジル基およびカルボキシ基を好適に用いることができる。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル樹脂やカルボキシ基含有アクリル樹脂を好適に用いることができる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基の種類に応じて、それと反応を生じうる硬化剤が選択される。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂の熱硬化性官能基がグリシジル基である場合、硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として上記したのと同様のフェノール樹脂を用いることができる。
【0067】
ダイボンディングのために硬化される前のダイボンドフィルム20について、ある程度の架橋度を実現するためには、例えば、ダイボンドフィルム20に含まれる上述の樹脂成分の分子鎖末端の官能基等と反応して結合を生じうる多官能性化合物を架橋剤としてダイボンドフィルム形成用樹脂組成物に配合しておくのが好ましい。このような構成は、ダイボンドフィルム20について、高温下での接着特性を向上させるうえで、また、耐熱性の改善を図るうえで、好適である。そのような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、および、多価アルコールとジイソシアネートの付加物が挙げられる。ダイボンドフィルム形成用樹脂組成物における架橋剤含有量は、当該架橋剤と反応して結合を生じうる上記官能基を有する樹脂100質量部に対し、形成されるダイボンドフィルム20の凝集力向上の観点からは好ましくは0.05質量部以上であり、形成されるダイボンドフィルム20の接着力向上の観点からは好ましくは7質量部以下である。また、ダイボンドフィルム20における架橋剤としては、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物をポリイソシアネート化合物と併用してもよい。
【0068】
ダイボンドフィルム20に配合される上記のアクリル樹脂および上記の熱硬化性官能基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは-40~10℃である。ポリマーのガラス転移温度については、上記のFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(理論値)を用いることができる。
【0069】
ダイボンドフィルム20は、フィラーを含有してもよい。ダイボンドフィルム20へのフィラーの配合は、ダイボンドフィルム20の弾性率や、降伏点強度、破断伸度などの物性を調整するうえで好ましい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。フィラーは、球状、針状、フレーク状など各種形状を有していてもよい。また、ダイボンドフィルム20は、一種類のフィラーを含有してもよいし、二種類以上のフィラーを含有してもよい。
【0070】
上記の無機フィラーの構成材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、および非晶質シリカが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の単体金属や、合金、アモルファスカーボン、グラファイトなども挙げられる。ダイボンドフィルム20が無機フィラーを含有する場合の当該無機フィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、同含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0071】
上記の有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、およびポリエステルイミドが挙げられる。ダイボンドフィルム20が有機フィラーを含有する場合の当該有機フィラーの含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、同含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0072】
ダイボンドフィルム20がフィラーを含有する場合の当該フィラーの平均粒径は、好ましくは0.005~10μm、より好ましくは0.05~1μmである。当該フィラーの平均粒径が0.005μm以上であるという構成は、ダイボンドフィルム20において、半導体ウエハ等の被着体に対する高い濡れ性や接着性を実現するうえで好適である。当該フィラーの平均粒径が10μm以下であるという構成は、ダイボンドフィルム20において十分なフィラー添加効果を得るとともに耐熱性を確保するうえで好適である。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」,株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。
【0073】
ダイボンドフィルム20は、熱硬化触媒を含有してもよい。ダイボンドフィルム20への熱硬化触媒の配合は、ダイボンドフィルム20の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を十分に進行させたり、硬化反応速度を高めるうえで、好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリ(ブチルフェニル)フォスフィン、トリ(p-メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、およびベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物には、トリフェニルフォスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、およびトリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレートおよびジシアンジアミドが挙げられる。トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボランが挙げられる。ダイボンドフィルム20は、一種類の熱硬化触媒を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化触媒を含有してもよい。
【0074】
ダイボンドフィルム20は、必要に応じて、一種類の又は二種類以上の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
【0075】
ダイボンドフィルム20の厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは7μm以上、より好ましくは10μm以上である。また、ダイボンドフィルム20の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは140μm以下、より好ましくは135μm以下である。
【0076】
以上のような構成を有するダイシングダイボンドフィルムXは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0077】
ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10については、用意した基材11上に粘着剤層12を設けることによって作製することができる。例えば樹脂製の基材11は、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法などの製膜手法によって、作製することができる。製膜後のフィルムないし基材11には、必要に応じて所定の表面処理が施される。粘着剤層12の形成においては、例えば、粘着剤層形成用の粘着剤組成物を調製した後、まず、当該組成物を基材11上または所定のセパレータ上に塗布して粘着剤組成物層を形成する。粘着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。次に、この粘着剤組成物層において、加熱によって、必要に応じて乾燥させ、また、必要に応じて架橋反応を生じさせる。加熱温度は例えば80~150℃であり、加熱時間は例えば0.5~5分間である。粘着剤層12がセパレータ上に形成される場合には、当該セパレータを伴う粘着剤層12を基材11に貼り合わせ、その後、セパレータが剥離される。これにより、基材11と粘着剤層12との積層構造を有する上述のダイシングテープ10が作製される。
【0078】
ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20の作製においては、まず、ダイボンドフィルム20形成用の接着剤組成物を調製した後、所定のセパレータ上に当該組成物を塗布して接着剤組成物層を形成する。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、並びに、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが、挙げられる。接着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。次に、この接着剤組成物層において、加熱によって、必要に応じて乾燥させ、また、必要に応じて架橋反応を生じさせる。加熱温度は例えば70~160℃であり、加熱時間は例えば1~5分間である。以上のようにして、セパレータを伴う形態で上述のダイボンドフィルム20を作製することができる。
【0079】
ダイシングダイボンドフィルムXの作製においては、次に、ダイシングテープ10の粘着剤層12側にダイボンドフィルム20を例えば圧着して貼り合わせる。貼合わせ温度は、例えば30~50℃であり、好ましくは35~45℃である。貼合わせ圧力(線圧)は、例えば0.1~20kgf/cmであり、好ましくは1~10kgf/cmである。粘着剤層12が上述のような放射線硬化性粘着剤を含む場合、当該貼り合わせの前に粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよいし、当該貼り合わせの後に基材11の側から粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。或いは、ダイシングダイボンドフィルムXの製造過程では、そのような放射線照射を行わなくてもよい(この場合、ダイシングダイボンドフィルムXの使用過程で粘着剤層12を放射線硬化させることが可能である)。粘着剤層12が紫外線硬化型粘着剤層である場合、粘着剤層12を硬化させるための紫外線照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングダイボンドフィルムXにおいて粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域は、例えば図2に示すように、粘着剤層12におけるダイボンドフィルム貼合せ領域内のその周縁部を除く領域Rである。
【0080】
以上のようにして、ダイシングダイボンドフィルムXを作製することができる。ダイシングダイボンドフィルムXには、ダイボンドフィルム20側に、少なくともダイボンドフィルム20を被覆する形態でセパレータ(図示略)が設けられていてもよい。セパレータは、ダイボンドフィルム20や粘着剤層12が露出しないように保護するための要素であり、ダイシングダイボンドフィルムXを使用する際には当該フィルムから剥がされる。
【0081】
半導体装置の製造過程においては、上述のように、接着剤層付き半導体チップを得るうえで、ダイシングダイボンドフィルムを使用して行うエキスパンド工程が実施される場合がある。エキスパンド工程実施時には、ダイシングダイボンドフィルムないしそのダイシングテープは、リングフレームが貼り付けられた状態にある。一方、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10の粘着剤層12側表面は、上述のように、SUS平面に対し、-15℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の条件(第1の条件)での剥離試験において0.3N/20mm以上の剥離粘着力を示す。このような構成は、例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程(ダイシングダイボンドフィルムが使用される)を実施する場合にリングフレームからのダイシングダイボンドフィルムないしそのダイシングテープの剥離を抑制するのに適することを、本発明者らは見出だした。例えば、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。当該構成は、例えば-15℃の低温条件で実施されるエキスパンド工程において、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10のリングフレーム貼着部が、同工程で受ける程度の引っ張り力に抗してリングフレームに貼着し続けるうえで好適なのである。これとともに、例えば-15℃の低温条件でエキスパンド工程を実施する場合にリングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するのに適した、ダイシングダイボンドフィルムXの同構成は、ダイボンドフィルム20に割断が生じやすいように-15℃程度の低温条件でのエキスパンド工程を実施するのに適する。例えば-15℃の低温条件で実施されるエキスパンド工程においてダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10のリングフレーム貼着部がリングフレームに貼着し続けるうえで好適であり、且つ、ダイボンドフィルム20に割断が生じやすいように-15℃程度の低温条件でエキスパンド工程を実施するのに適したダイシングダイボンドフィルムXは、接着剤層付き半導体チップを得る過程におけるエキスパンド工程を低温条件で実施するのに適する。
【0082】
以上のように、ダイシングダイボンドフィルムXは、接着剤層付き半導体チップを得るためのエキスパンド工程を低温条件で実施するのに適するのである。
【0083】
ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、低温条件でのエキスパンド工程に使用される場合にリングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するという観点からは、ダイシングテープ10の粘着剤層12側表面がSUS平面に対して上記第1の条件での剥離試験で示す剥離力粘着力は、上述のように、好ましくは0.35N/20mm以上、より好ましくは0.4N/20mm以上である。同粘着力は、例えば10N/20mm以下である。
【0084】
ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10は、幅20mmのダイシングテープ10試験片について初期チャック間距離100mm、-15℃、および引張速度200mm/分の条件で行われる引張試験において歪み値30%で生ずる引張応力が、上述のように、好ましくは50N/20mm以下あり、より好ましくは45N/20mm以下、より好ましくは40N/20mm以下である。このような構成は、ダイシングダイボンドフィルムXを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合において、ダイシングダイボンドフィルムXのエキスパンド後のダイシングテープ10のリングフレーム貼着部に発生する残留応力を抑制するうえで好適であり、従って、リングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するうえで好適である。また、ダイシングダイボンドフィルムXが使用されるエキスパンド工程においてエキスパンド中のダイシングテープ10からダイボンドフィルム20に対して充分な割断力としての引張応力を作用させて当該ダイボンドフィルム20を適切に割断するという観点からは、同引張応力は好ましくは5N/20mm以上である。
【0085】
ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、そのダイシングテープ10の粘着剤層12における-15℃での貯蔵弾性率は、上述のように、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上である。このような構成は、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10の粘着剤層12において、低温環境下で、それにせん断力が作用する場合の当該せん断力に抗するための凝集力を確保するうえで好適であり、従って、ダイシングダイボンドフィルムXが-15℃程度の低温条件でのエキスパンド工程に使用される場合にリングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するうえで好適である。
【0086】
ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、そのダイシングテープ10の粘着剤層12における-15℃での貯蔵弾性率は、上述のように、好ましくは100MPa以下、より好ましくは80MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。このような構成は、ダイシングダイボンドフィルムXを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合において、ダイシングダイボンドフィルムXのエキスパンド後のダイシングテープ10のリングフレーム貼着部に発生する残留応力を抑制するうえで好適であり、従って、リングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するうえで好適である。
【0087】
ダイシングダイボンドフィルムXにおけるダイシングテープ10の粘着剤層12に含有される粘着剤たるベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、上述のように、好ましくは-40℃以下である。このような構成は、-15℃程度の低温条件下において、同ポリマーひいては粘着剤層12についてゴム状態すなわちゴム弾性を有する状態を実現するのに適し、従って、ダイシングダイボンドフィルムXを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合リングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するうえで好適である。
【0088】
ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、ダイシングテープ10の粘着剤層12は、好ましくは、アクリル系ポリマーおよびイソシアネート系架橋剤を含有する。このような構成によると、粘着剤層12についてその粘着力や貯蔵弾性率、凝集力など物性を制御しやすい。
【0089】
ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、ダイシングテープ10の粘着剤層12のイソシアネート系架橋剤含有量は、上述のように、アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。このような構成は、粘着剤層12において、低温条件下での上述の凝集力を確保するうえで好適であり、従って、ダイシングダイボンドフィルムXが-15℃程度の低温条件でのエキスパンド工程に使用される場合にリングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するうえで好適である。
【0090】
ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、ダイシングテープ10の粘着剤層12のイソシアネート系架橋剤含有量は、上述のように、アクリル系ポリマー100質量部に対し、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。このような構成は、ダイシングダイボンドフィルムXを使用して例えば-15℃の低温条件でのエキスパンド工程を実施する場合において、ダイシングダイボンドフィルムXのエキスパンド後のダイシングテープ10のリングフレーム貼着部に発生する残留応力を抑制するうえで好適であり、従って、リングフレームからのダイシングテープ10の剥離を抑制するうえで好適である。
【0091】
図3から図8は、以上のようなダイシングダイボンドフィルムXが使用される半導体装置製造方法を表す。
【0092】
本半導体装置製造方法においては、まず、図3(a)および図3(b)に示すように、半導体ウエハWに改質領域30aが形成される。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。本工程では、粘着面T1aを有するウエハ加工用テープT1が半導体ウエハWの第1面Wa側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT1に半導体ウエハWが保持された状態で、ウエハ内部に集光点の合わせられたレーザー光がウエハ加工用テープT1とは反対の側から半導体ウエハWに対してその分割予定ラインに沿って照射され、多光子吸収によるアブレーションに因って半導体ウエハW内に改質領域30aが形成される。改質領域30aは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための脆弱化領域である。半導体ウエハにおいてレーザー光照射によって分割予定ライン上に改質領域30aを形成する方法については、例えば特開2002-192370号公報に詳述されているところ、本実施形態におけるレーザー光照射件は、例えば以下の条件の範囲内で適宜に調整される。
<レーザー光照射条件>
(A)レーザー光
レーザー光源 半導体レーザー励起Nd:YAGレーザー
波長 1064nm
レーザー光スポット断面積 3.14×10-8cm2
発振形態 Qスイッチパルス
繰り返し周波数 100kHz以下
パルス幅 1μs以下
出力 1mJ以下
レーザー光品質 TEM00
偏光特性 直線偏光
(B)集光用レンズ
倍率 100倍以下
NA 0.55
レーザー光波長に対する透過率 100%以下
(C)半導体基板が載置される載置台の移動速度 280mm/秒以下
【0093】
次に、ウエハ加工用テープT1に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化され、これにより、図3(c)に示すように、複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Aが形成される(ウエハ薄化工程)。研削加工は、研削砥石を備える研削加工装置を使用して行うことができる。
【0094】
次に、図4(a)に示すように、ダイシングダイボンドフィルムXが半導体ウエハ30Aおよびリングフレーム41に貼り合わせられる。具体的には、ウエハ加工用テープT1に保持された状態にある半導体ウエハ30Aとそれを囲むように配されたリングフレーム41に対し、ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20が半導体ウエハ30Aに貼着するとともに、ダイシングテープ10ないしその粘着剤層12がリングフレーム41に貼着するように、ダイシングダイボンドフィルムXの貼合せ作業が行われる。この後、図4(b)に示すように、半導体ウエハ30Aからウエハ加工用テープT1が剥がされる。ダイシングダイボンドフィルムXにおける粘着剤層12が放射線硬化性粘着剤層である場合には、ダイシングダイボンドフィルムXの製造過程での上述の放射線照射に代えて、半導体ウエハ30Aのダイボンドフィルム20への貼り合わせの後に、基材11の側から粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングダイボンドフィルムXにおいて粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域は、例えば、図2に示すように、粘着剤層12におけるダイボンドフィルム20貼合わせ領域内のその周縁部を除く領域Rである。
【0095】
次に、図5(a)に示すように、半導体ウエハ30Aとリングフレーム41とを伴う当該ダイシングダイボンドフィルムXがそのリングフレーム41を介してエキスパンド装置の保持具42に固定される。
【0096】
次に、相対的に低温の条件下での第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)が、図5(b)に示すように行われ、半導体ウエハ30Aが複数の半導体チップ31へと個片化されるとともに、ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20が小片のダイボンドフィルム21に割断されて、接着剤層付き半導体チップ31が得られる。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングダイボンドフィルムXの図中下側においてダイシングテープ10に当接して上昇され、半導体ウエハ30Aの貼り合わされたダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10が、半導体ウエハ30Aの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このエキスパンドは、ダイシングテープ10において例えば15~32MPaの引張応力が生ずる条件で行われる。クールエキスパンド工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。クールエキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43が上昇する速度)は、例えば1~400mm/秒である。また、クールエキスパンド工程におけるエキスパンド量は、例えば3~16mmである。クールエキスパン工程でのエキスパンドに関するこれら条件については、後記のクールエキスパン工程においても同様である。
【0097】
このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングダイボンドフィルムXのダイボンドフィルム20が小片のダイボンドフィルム21に割断されて接着剤層付き半導体チップ31が得られる。具体的に、本工程では、半導体ウエハ30Aにおいて脆弱な改質領域30aにクラックが形成されて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着しているダイボンドフィルム20において、半導体ウエハ30Aの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、ウエハのクラック形成箇所に対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生ずる引張応力が作用する。その結果、ダイボンドフィルム20において半導体チップ31間のクラック形成箇所に対向する箇所が割断されることとなる。本工程の後、図5(c)に示すように、突き上げ部材43が下降されて、ダイシングテープ10におけるエキスパンド状態が解除される。
【0098】
次に、相対的に高温の条件下での第2エキスパンド工程が、図6(a)および図6(b)に示すように行われ、接着剤層付き半導体チップ31間の距離(離間距離)が広げられる。本工程では、エキスパンド装置の備えるテーブル44が上昇され、ダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10がエキスパンドされる。テーブル44は、テーブル面上のワークに負圧を作用させて当該ワークを真空吸着可能なものである。第2エキスパンド工程における温度条件は、例えば10℃以上であり、好ましくは15~30℃である。第2エキスパンド工程におけるエキスパンド速度(テーブル44が上昇する速度)は、例えば0.1~10mm/秒である。また、第2エキスパンド工程におけるエキスパンド量は例えば3~16mmである。後記のピックアップ工程にてダイシングテープ10から接着剤層付き半導体チップ31を適切にピックアップ可能な程度に、本工程では接着剤層付き半導体チップ31の離間距離が広げられる。テーブル44の上昇によってダイシングテープ10がエキスパンドされた後、テーブル44はダイシングテープ10を真空吸着する。そして、テーブル44によるその吸着を維持した状態で、図6(c)に示すように、テーブル44がワークを伴って下降される。本実施形態では、この状態において、ダイシングダイボンドフィルムXにおける半導体ウエハ30A周り(半導体チップ31保持領域より外側の部分)が加熱されて収縮させられる(ヒートシュリンク工程)。その後、テーブル44による真空吸着状態が解除される。ヒートシュリンク工程を経ることにより、ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、上述の第1エキスパンド工程や第2エキスパンド工程にて引き伸ばされて一旦弛緩したウエハ貼合わせ領域に所定程度の張力が作用しうる状態となり、前記真空吸着状態解除後であっても半導体チップ31の上記の離隔距離が固定される。
【0099】
本半導体装置製造方法では、第1エキスパンド工程の後、ダイシングダイボンドフィルムXの更なるエキスパンドを経ずに、ダイシングダイボンドフィルムXにおける半導体ウエハ30A周り(半導体チップ31保持領域より外側の部分)を加熱して収縮させてもよい。このようなヒートシュリンク工程により、ダイシングダイボンドフィルムXにおいて、上述の第1エキスパンド工程にて引き伸ばされて一旦弛緩したウエハ貼合わせ領域に所定程度の張力を作用させて、半導体チップ31間において所望の離隔距離を確保してもよい。
【0100】
次に、接着剤層付き半導体チップ31を伴うダイシングテープ10における半導体チップ31側を水などの洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程を必要に応じて経た後、図7に示すように、接着剤層付き半導体チップ31をダイシングテープ10からピックアップする(ピックアップ工程)。例えば、ピックアップ対象の接着剤層付き半導体チップ31について、ダイシングテープ10の図中下側においてピックアップ機構のピン部材45を上昇させてダイシングテープ10を介して突き上げた後、吸着治具46によって吸着保持する。ピックアップ工程において、ピン部材45の突き上げ速度は例えば1~100mm/秒であり、ピン部材45の突き上げ量は例えば50~3000μmである。
【0101】
次に、図8(a)に示すように、ピックアップされた接着剤層付き半導体チップ31が、所定の被着体51に対してダイボンドフィルム21を介して仮固着される。被着体51としては、例えば、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)フィルム、および配線基板が挙げられる。
【0102】
次に、図8(b)に示すように、半導体チップ31の電極パッド(図示略)と被着体51の有する端子部(図示略)とをボンディングワイヤー52を介して電気的に接続する(ワイヤーボンディング工程)。半導体チップ31の電極パッドや被着体51の端子部とボンディングワイヤー52との結線は、加熱を伴う超音波溶接によって実現され、ダイボンドフィルム21を熱硬化させないように行われる。ボンディングワイヤー52としては、例えば金線、アルミニウム線、または銅線を用いることができる。ワイヤーボンディングにおけるワイヤー加熱温度は、例えば80~250℃である。また、その加熱時間は数秒~数分間である。
【0103】
次に、図8(c)に示すように、被着体51上の半導体チップ31やボンディングワイヤー52を保護するための封止樹脂53によって半導体チップ31を封止する(封止工程)。本工程では、ダイボンドフィルム21の熱硬化が進む。本工程では、例えば、金型を使用して行うトランスファーモールド技術によって封止樹脂53が形成される。封止樹脂53の構成材料としては、例えばエポキシ系樹脂を用いることができる。本工程において、封止樹脂53を形成するための加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば60秒~数分間である。本工程(封止工程)で封止樹脂53の硬化が充分には進行しない場合には、本工程の後に封止樹脂53を完全に硬化させるための後硬化工程が行われる。封止工程においてダイボンドフィルム21が完全に熱硬化しない場合であっても、後硬化工程において封止樹脂53と共にダイボンドフィルム21の完全な熱硬化が可能となる。後硬化工程において、加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば0.5~8時間である。
【0104】
以上のようにして、半導体装置を製造することができる。
【0105】
本半導体装置製造方法おいては、半導体ウエハ30AがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされるという上述の構成に代えて、次のようにして作製される半導体ウエハ30BがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされてもよい。
【0106】
半導体ウエハ30Bの作製においては、まず、図9(a)および図9(b)に示すように、半導体ウエハWに分割溝30bが形成される(分割溝形成工程)。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。本工程では、粘着面T2aを有するウエハ加工用テープT2が半導体ウエハWの第2面Wb側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT1に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWの第1面Wa側に所定深さの分割溝30bがダイシング装置等の回転ブレードを使用して形成される。分割溝30bは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための空隙である(図面において分割溝30bを模式的に太線で表す)。
【0107】
次に、図9(c)に示すように、粘着面T3aを有するウエハ加工用テープT3の、半導体ウエハWの第1面Wa側への貼り合わせと、半導体ウエハWからのウエハ加工用テープT2の剥離とが、行われる。
【0108】
次に、図9(d)に示すように、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化される(ウエハ薄化工程)。このウエハ薄化工程によって、本実施形態では、複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Bが形成される。半導体ウエハ30Bは、具体的には、当該ウエハにおいて複数の半導体チップ31へと個片化されることとなる部位を第2面Wb側にて連結する部位(連結部)を有する。半導体ウエハ30Bにおける連結部の厚さ、即ち、半導体ウエハ30Bの第2面Wbと分割溝30bの第2面Wb側先端との間の距離は、例えば1~30μmである。以上のようにして作製される半導体ウエハ30Bが半導体ウエハ30Aの代わりにダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされたうえで、図4から図8を参照して上述した各工程が行われてもよい。
【0109】
図10(a)および図10(b)は、半導体ウエハ30BがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされた後に行われる第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を具体的に表す。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングダイボンドフィルムXの図中下側においてダイシングテープ10に当接して上昇され、半導体ウエハ30Bの貼り合わされたダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10が、半導体ウエハ30Bの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このようなクールエキスパンド工程により、半導体ウエハ30Bにおいて薄肉で割れやすい部位に割断が生じて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、本工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着しているダイボンドフィルム20において各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝に対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生ずる引張応力が作用する。その結果、ダイボンドフィルム20において半導体チップ31間の分割溝に対向する箇所が割断されることとなる。こうして得られる接着剤層付き半導体チップ31は、図7を参照して上述したピックアップ工程を経た後、半導体装置製造過程における実装工程に供されることとなる。
【0110】
本半導体装置製造方法おいては、図9(d)を参照して上述したウエハ薄化工程に代えて、図11に示すウエハ薄化工程を行ってもよい。図9(c)を参照して上述した過程を経た後、図11に示すウエハ薄化工程では、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、当該ウエハが所定の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化されて、複数の半導体チップ31を含んでウエハ加工用テープT3に保持された半導体ウエハ分割体30Cが形成される。本工程では、分割溝30bそれ自体が第2面Wb側に露出するまでウエハを研削する手法(第1の手法)を採用してもよいし、第2面Wb側から分割溝30bに至るより前までウエハを研削し、その後、回転砥石からウエハへの押圧力の作用により分割溝30bと第2面Wbとの間にクラックを生じさせて半導体ウエハ分割体30Cを形成する手法(第2の手法)を採用してもよい。採用される手法に応じて、図9(a)および図9(b)を参照して上述したように形成される分割溝30bの、第1面Waからの深さは、適宜に決定される。図11では、第1の手法を経た分割溝30b、または、第2の手法を経た分割溝30bおよびこれに連なるクラックについて、模式的に太線で表す。このようにして作製される半導体ウエハ分割体30Cが半導体ウエハ30Aや半導体ウエハ30Bの代わりにダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされたうえで、図4から図8を参照して上述した各工程が行われてもよい。
【0111】
図12(a)および図12(b)は、半導体ウエハ分割体30CがダイシングダイボンドフィルムXに貼り合わされた後に行われる第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を具体的に表す。本工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43が、ダイシングダイボンドフィルムXの図中下側においてダイシングテープ10に当接して上昇され、半導体ウエハ分割体30Cの貼り合わされたダイシングダイボンドフィルムXのダイシングテープ10が、半導体ウエハ分割体30Cの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばされるようにエキスパンドされる。このようなクールエキスパンド工程により、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着しているダイボンドフィルム20において、半導体ウエハ分割体30Cの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝30bに対向する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生ずる引張応力が作用する。その結果、ダイボンドフィルム20において半導体チップ31間の分割溝30bに対向する箇所が割断されることとなる。こうして得られる接着剤層付き半導体チップ31は、図7を参照して上述したピックアップ工程を経た後、半導体装置製造過程における実装工程に供されることとなる。
【実施例
【0112】
〔実施例1〕
〈ダイシングテープ(DT)の作製〉
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)100モル部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)21モル部と、重合開始剤である過酸化ベンゾイルと、重合溶媒であるトルエンとを含む混合物を、60℃で10時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。この混合物において、過酸化ベンゾイルの含有量はモノマー成分(2EHA,HEA)100質量部に対して0.4質量部であり、トルエンの含有量はモノマー成分100質量部に対して80質量部である。この重合反応により、アクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマーP1につきFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(Tg)は、-60.6℃である。次に、アクリル系ポリマーP1含有の当該溶液に、18モル部の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を加えた後、50℃で60時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。これにより、側鎖にメタクリロイル基を有するアクリル系ポリマーP2を含有するポリマー溶液を得た。次に、当該ポリマー溶液に、アクリル系ポリマーP2100質量部に対して0.75質量部の架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と、2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」,BASF社製)とを加えて混合し、粘着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について120℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次に、ラミネーターを使用して、この粘着剤層の露出面にエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)製の基材S1(商品名「RB0103」,厚さ125μm,倉敷紡績株式会社製)を室温で貼り合わせた。以上のようにして、基材と粘着剤層とを含む実施例1のダイシングテープを作製した。実施例1ならびに後記の各実施例および各比較例におけるダイシングテープ粘着剤層の組成を表1に掲げる(表1では、アクリル系ポリマーの構成モノマーについては、モノマー間のモル比が記され、架橋剤および光重合開始剤については、アクリル系ポリマー100質量部に対する質量比が記されている)。
【0113】
〈ダイボンドフィルムの作製〉
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジンSG-708-6」,重量平均分子量は70万,ガラス転移温度Tgは4℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂(商品名「JER828」,三菱ケミカル株式会社製)11質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH-7851SS」,明和化成株式会社製)5質量部と、無機フィラー(商品名「SO-25R」,球状シリカ,平均粒径は500nm,株式会社アドマテックス製)110質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度20質量%の接着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ10μmの実施例1のダイボンドフィルムを作製した。
【0114】
〈ダイシングダイボンドフィルムの作製〉
PETセパレータを伴う実施例1の上述のダイボンドフィルムを所定直径の円盤形に打ち抜き加工した。次に、当該ダイボンドフィルムからPETセパレータを剥離し且つ上述のダイシングテープからPETセパレータを剥離した後、当該ダイシングテープにおいて露出した粘着剤層と、ダイボンドフィルムにおいてPETセパレータの剥離によって露出した面とを、ロールラミネーターを使用して貼り合わせた。この貼り合わせにおいて、貼合わせ速度を10mm/分とし、温度条件を23℃とし、圧力条件を0.15MPaとした。次に、このようにしてダイボンドフィルムと貼り合わせられたダイシングテープを、ダイシングテープの中心とダイボンドフィルムの中心とが一致するように、所定直径の円盤形に打ち抜き加工した。次に、ダイシングテープにおける粘着剤層に対し、EVA基材の側から紫外線を照射した。紫外線照射においては、高圧水銀ランプを使用し、照射積算光量を300mJ/cm2とした。以上のようにして、ダイシングテープとダイボンドフィルムとを含む積層構造を有する実施例1のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0115】
〔実施例2〕
〈ダイシングテープの作製〉
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)75モル部と、4-アクリロイルモルフォリン(ACMO)25モル部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)22モル部と、重合開始剤である過酸化ベンゾイルと、重合溶媒であるトルエンとを含む混合物を、60℃で10時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。この混合物において、過酸化ベンゾイルの含有量はモノマー成分(2EHA,ACMO,HEA)100質量部に対して0.4質量部であり、トルエンの含有量はモノマー成分100質量部に対して80質量部である。この重合反応により、アクリル系ポリマーP3を含有するポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマーP3につきFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(Tg)は、-42.7℃である。次に、アクリル系ポリマーP3含有の当該溶液に、18モル部の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を加えた後、50℃で60時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。これにより、側鎖にメタクリロイル基を有するアクリル系ポリマーP4を含有するポリマー溶液を得た。次に、当該ポリマー溶液に、アクリル系ポリマーP4100質量部に対して0.75質量部の架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)と、2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」,BASF社製)とを加えて混合し、粘着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について120℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次に、ラミネーターを使用して、この粘着剤層の露出面にエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)製の基材S1(商品名「RB0103」,厚さ125μm,倉敷紡績株式会社製)を室温で貼り合わせた。以上のようにして、実施例2のダイシングテープを作製した。
【0116】
〈ダイボンドフィルムの作製〉
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジンSG-708-6」,重量平均分子量は70万,ガラス転移温度Tgは4℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂(商品名「JER828」,三菱ケミカル株式会社製)11質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH-7851SS」,明和化成株式会社製)5質量部と、無機フィラー(商品名「SO-25R」,球状シリカ,平均粒径は500nm,株式会社アドマテックス製)110質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度20質量%の接着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ10μmの実施例2のダイボンドフィルムを作製した。
【0117】
〈ダイシングダイボンドフィルムの作製〉
PETセパレータを伴う実施例2の上述のダイボンドフィルムを所定直径の円盤形に打ち抜き加工した。次に、当該ダイボンドフィルムからPETセパレータを剥離し且つ上述のダイシングテープからPETセパレータを剥離した後、当該ダイシングテープにおいて露出した粘着剤層と、ダイボンドフィルムにおいてPETセパレータの剥離によって露出した面とを、ロールラミネーターを使用して貼り合わせた。この貼り合わせにおいて、貼合わせ速度を10mm/分とし、温度条件を23℃とし、圧力条件を0.15MPaとした。次に、このようにしてダイボンドフィルムと貼り合わせられたダイシングテープを、ダイシングテープの中心とダイボンドフィルムの中心とが一致するように、所定直径の円盤形に打ち抜き加工した。次に、ダイシングテープにおける粘着剤層に対し、EVA基材の側から紫外線を照射した。紫外線照射においては、高圧水銀ランプを使用し、照射積算光量を300mJ/cm2とした。以上のようにして、ダイシングテープとダイボンドフィルムとを含む積層構造を有する実施例2のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0118】
〔実施例3〕
ダイシングテープ粘着剤層の形成に用いるHEAを21モル部に代えて20モル部としたこと、および、基材S1に代えてEVA製の基材S2(商品名「RB0104」,厚さ125μm,倉敷紡績株式会社製)を用いたこと、以外は実施例1のダイシングテープと同様にして、実施例3のダイシングテープを作製した。そして、このダイシングテープを実施例1のダイシングテープの代わりに用いたこと以外は実施例1のダイシングダイボンドフィルムと同様にして、実施例3のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0119】
〔実施例4〕
基材S1に代えてEVA製の基材S2(商品名「RB0104」,厚さ125μm,倉敷紡績株式会社製)を用いたこと以外は実施例2のダイシングテープと同様にして、実施例4のダイシングテープを作製した。そして、このダイシングテープを実施例2のダイシングテープの代わりに用いたこと以外は実施例2のダイシングダイボンドフィルムと同様にして、実施例4のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0120】
〔実施例5〕
ダイシングテープ粘着剤層の形成に用いるHEAを21モル部に代えて20モル部としたこと、および、基材S1に代えてポリオレフィン系の基材S3(商品名「DDZフィルム」,厚さ90μm,グンゼ株式会社製)を用いたこと、以外は実施例1のダイシングテープと同様にして、実施例5のダイシングテープを作製した。基材S3は、「ポリエチレン層/ポリプロピレン層/ポリエチレン層」の積層構造を有する。そして、このダイシングテープを実施例1のダイシングテープの代わりに用いたこと以外は実施例1のダイシングダイボンドフィルムと同様にして、実施例5のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0121】
〔実施例6〕
基材S1に代えてポリオレフィン系の基材S3(商品名「DDZフィルム」,厚さ90μm,グンゼ株式会社製)を用いたこと以外は実施例2のダイシングテープと同様にして、実施例6のダイシングテープを作製した。そして、このダイシングテープを実施例2のダイシングテープの代わりに用いたこと以外は実施例2のダイシングダイボンドフィルムと同様にして、実施例6のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0122】
〔実施例7〕
ダイシングテープ粘着剤層の形成に用いる架橋剤(商品名「コロネートL」,ポリイソシアネート化合物,東ソー株式会社製)を0.75質量部に代えて2質量部としたこと、および、基材S1に代えてポリ塩化ビニル製の基材S4(商品名「V9K」,厚さ100μm,アキレス株式会社)を用いたこと、以外は実施例2のダイシングテープと同様にして、実施例7のダイシングテープを作製した。そして、このダイシングテープを実施例2のダイシングテープの代わりに用いたこと以外は実施例2のダイシングダイボンドフィルムと同様にして、実施例7のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0123】
〔比較例1〕
ダイシングテープ粘着剤層の形成に用いる架橋剤(商品名「コロネートL」,東ソー株式会社製)を0.75質量部に代えて4質量部としたこと、および、基材S1に代えてポリオレフィン系の基材S3(商品名「DDZ」,厚さ90μm,グンゼ株式会社)を用いたこと、以外は実施例2のダイシングテープと同様にして、比較例1のダイシングテープを作製した。そして、このダイシングテープを実施例2のダイシングテープの代わりに用いたこと以外は実施例2のダイシングダイボンドフィルムと同様にして、比較例1のダイシングダイボンドフィルムを作製した。
【0124】
〔対SUS粘着力〕
実施例1~7および比較例1の各ダイシングダイボンドフィルムにおけるダイシングテープの粘着剤層側表面について、次のようにして、SUS平面に対する粘着力を調べた。まず、ダイシングテープからダイシングテープ試験片(幅20mm×長さ140mm)を切り出した。次に、ダイシングテープ試験片をその粘着剤層側を介してSUS板(SUS403製)に貼り合わせた。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行った。貼り合わせの後、この貼り合わせ体を30分間静置した。そして、引張試験機(商品名「オートグラフ AGS-J」,株式会社島津製作所製)を使用して、-15℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の条件で、SUS板からダイシングテープ試料片を剥離する剥離試験を行い、SUS平面に対するダイシングテープの剥離粘着力(N/20mm)を測定した。その結果を表1に掲げる。
【0125】
〈貯蔵弾性率〉
実施例1~7および比較例1の各ダイシングダイボンドフィルムにおけるダイシングテープの粘着剤層について、動的粘弾性測定によって貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)を調べた。測定用のサンプルは、次のようにして用意した。まず、複数の粘着剤層片を貼り合わせて約2mmの厚さの粘着剤シートを作製した。次に、このシートを打抜いて、測定用サンプルである円柱状のペレット(直径7.9mm)を得た。そして、測定用サンプルについて、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリックス社製)を使用して、直径7.9mmのパラレルプレートの治具に固定した後に動的粘弾性測定を行った。本測定において、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を-70℃~150℃とし、昇温速度を5℃/分とし、周波数を1Hzとした。粘着剤層について本測定から求められた-15℃での貯蔵弾性率を表1に掲げる。
【0126】
〔引張応力〕
実施例1~7および比較例1の各ダイシングダイボンドフィルムにおけるダイシングテープについて、引張試験を行って引張応力を調べた。具体的には、まず、ダイシングテープからダイシングテープ試験片(幅20mm×長さ140mm)を切り出した。実施例および比較例ごとに5枚のダイシングテープ試験片を用意した。そして、引張試験機(商品名「オートグラフ AGS-50NX」,株式会社島津製作所製)を使用して引張試験を行い、歪み値30%で生ずる引張応力を測定した。本引張試験において、初期チャック間距離は100mmであり、温度条件は-15℃であり、引張速度は200mm/分である。同一のダイシングダイボンドフィルムに由来する5枚のダイシングテープ試験片に係る測定値の平均値を、当該ダイシングテープにおける-15℃での引張応力(N/20mm)とした。その結果を表1に掲げる。
【0127】
〈エキスパンド工程の評価〉
実施例1~7および比較例1の各ダイシングダイボンドフィルムを使用して、以下のような貼合せ工程とその後のエキスパンド工程を行った。
【0128】
貼合せ工程では、ウエハ加工用テープ(商品名「ELPUB-3083D」,日東電工株式会社製)に保持された状態にある、半導体ウエハ分割体とそれを囲むリングフレーム(直径12インチ,SUS製,株式会社ディスコ製)に対し、ダイシングダイボンドフィルムのダイボンドフィルムが半導体ウエハ分割体に貼着するとともに、ダイシングテープ粘着剤層がリングフレームに貼着するように、ダイシングダイボンドフィルムの貼合せ作業を行った。その後、半導体ウエハ分割体とリングフレームからウエハ加工用テープを剥離した。半導体ウエハ分割体は、次のようにして形成して用意したものである。まず、ウエハ加工用テープ(商品名「V12S-R2」,日東電工株式会社製)にリングフレームと共に保持された状態にあるシリコンベアウエハ(直径300mm,厚さ780μm,東京化工株式会社製)について、その一方の面の側から、ダイシング装置(商品名「DFD6361」,株式会社ディスコ製)を使用してその回転ブレードによって個片化用の分割溝(幅20~25μm,深さ50μm,一区画6mm×12mmの格子状をなす)を形成した。次に、ウエハの分割溝形成面とリングフレームにウエハ加工用テープ(商品名「ELPUB-3083D」,日東電工株式会社製)を貼り合わせた後、上記のウエハ加工用テープ(商品名「V12S-R2」)をウエハとリングフレームから剥離した。この後、バックグラインド装置(商品名「DGP8760」,株式会社ディスコ製)を使用してウエハの他方の面(分割溝の形成されていない面)の側からの研削によって当該ウエハを厚さ20μmに至るまで薄化した。以上のようにして、半導体ウエハ分割体(ウエハ加工用テープに保持された状態にある)を形成した。この半導体ウエハ分割体には、複数の半導体チップ(6mm×12mm)が含まれている。
【0129】
エキスパンド工程は、ダイセパレート装置(商品名「ダイセパレータ DDS2300」,株式会社ディスコ製)を使用して、そのクールエキスパンドユニットにて行った。具体的には、まず、半導体ウエハ分割体とそれを囲むリングフレームを伴う上述のダイシングダイボンドフィルムを装置内にセットし、同装置のクールエキスパンドユニットにて、半導体ウエハ分割体を伴うダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープをエキスパンドした。このクールエキスパンド工程において、温度は-15℃であり、エキスパンド速度は100mm/秒であり、エキスパンド量は7mmである。ダイシングダイボンドフィルムのダイシングテープにおいて、このようなエキスパンド工程を経ることによってリングフレームからの剥離を生じなかった場合を「良」と評価し、そのような剥離を生じた場合を「不良」と評価した。その結果を表1に掲げる。
【0130】
【表1】
【符号の説明】
【0131】
X ダイシングダイボンドフィルム
10 ダイシングテープ
11 基材
12 粘着剤層
20,21 ダイボンドフィルム
W,30A,30B 半導体ウエハ
30C 半導体ウエハ分割体
30a 改質領域
30b 分割溝
31 半導体チップ
図1
図2
図3
図4
図5
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図12