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特許7389557ストッパ構造体及びこれを備えたドリル体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ストッパ構造体及びこれを備えたドリル体
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20231122BHJP
   B23B 51/12 20060101ALI20231122BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B28D1/14
B23B51/12
B28D7/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019040074
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020142421
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】窪田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】衣川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039981(JP,A)
【文献】特開平02-243212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
B23B 51/12
B28D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク、及び当該シャンクの先端から延びるドリル部と、を有するドリル部材に取付け可能なストッパ構造体であって、
前記ドリル部は、らせん状の溝を有し、当該溝の縁部が刃として機能することで穿孔可能に構成され、
前記ドリル部の外周面に軸方向の位置が固定されるように密着する、弾性変形可能な筒状の緩衝部と、
前記ドリル部の軸方向において、前記緩衝部よりも先端側で、当該緩衝部と接するように配置される筒状のストッパ部であって、前記ドリル部に対して軸方向の位置が固定されて取付けられる、ストッパ部と、
を備え、
前記ストッパ部は、前記ドリル部に対して回転可能に取付けられ、
当該ストッパ構造体は、前記ドリル部において、前記溝のシャンク側の端部よりも先端側に取り付けられる、ストッパ構造体。
【請求項2】
前記ドリル部の外周において、前記緩衝部よりも後端側で、当該緩衝部と接するように固定される筒状のワッシャー部をさらに備えている、請求項に記載のストッパ構造体。
【請求項3】
前記ワッシャー部及びストッパ部は、金属により形成されている、請求項に記載のストッパ構造体。
【請求項4】
前記ドリル部材は、前記シャンクと前記ドリル部との間に段差を有し、
前記ワッシャー部は、前記段差に係合することで、前記ドリル部に対する軸方向の移動が規制されるように構成されている、請求項2または3に記載のストッパ構造体。
【請求項5】
前記緩衝部は、ウレタンゴムにより形成されている、請求項1からのいずれかに記載のストッパ構造体。
【請求項6】
前記緩衝部は、ショアA硬度が90以上の材料によって形成されている、請求項1からのいずれかに記載のストッパ構造体。
【請求項7】
シャンク、及び当該シャンクの先端から延びるドリル部と、を有する、ドリル部材と、
請求項1からのいずれかに記載のストッパ構造体と、
を備え、
前記ドリル部は、らせん状の溝を有し、当該溝の縁部が刃として機能することで穿孔可能に構成されている、ドリル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストッパ構造体及びこれを備えたドリル体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに、アンカー孔などの削孔を形成するとき、所定深さの削孔となるように、例えば、特許文献1,2のようなストッパ付のドリル体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開203-62827号公報
【文献】特開2014-39981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンクリートを穿孔する際には、ドリルの振動によって、ストッパがコンクリートの表面に接しても気付きにくく、所定深さよりもさらに掘り進んでしまうことがある。これにより、ストッパがアンカー孔の開口周縁のコンクリートを若干削ってから穿孔動作を止めることになっていた。
【0005】
また、コンクリート用のアンカー打設においては、穿孔が深すぎればアンカーの打ち込み拡張が不十分となり強度が設計通り発現されない懸念があり、設計通りの深さの穿孔を形成することが重要となることがある。
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ストッパ部が穿孔面に接したことを正確に認識することができ、正確な深さの穿孔を施すことができる、ストッパ構造体及びこれを備えたドリル体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るストッパ構造体は、シャンク、及び当該シャンクの先端から延びるドリル部と、を有するドリル部材に取付け可能なストッパ構造体であって、前記ドリル部の外周面に軸方向の位置が固定されるように密着する、弾性変形可能な筒状の緩衝部と、前記ドリル部の軸方向において、前記緩衝部よりも先端側で、当該緩衝部と接するように配置される筒状のストッパ部であって、前記ドリル部に対して軸方向の位置が固定されて取付けられる、ストッパ部と、を備えている。
【0007】
上記ストッパ構造体において、前記ストッパ部は、前記ドリル部に対して回転可能に取付けることができる。
【0008】
上記ストッパ構造体は、前記ドリル部の外周において、前記緩衝部よりも後端側で、当該緩衝部塗接するように固定される筒状のワッシャー部をさらに備えることができる。
【0009】
上記ストッパ構造体において、前記ドリル部材は、前記シャンクと前記ドリル部との間に段差を有し、前記ワッシャー部は、前記段差に係合することで、前記ドリル部に対する軸方向の移動が規制されるように構成することができる。
【0010】
上記ストッパ構造体において、前記ワッシャー部及びストッパ部は、金属により形成することができる。
【0011】
上記ストッパ構造体において、前記緩衝部は、ウレタンゴムにより形成することができる。
【0012】
上記ストッパ構造体において、前記緩衝部は、ショアA硬度が90以上の材料によって形成することができる。
【0013】
本発明に係るドリル体は、シャンク、及び当該シャンクの先端から延びるドリル部と、を有する、ドリル部材と、上述したいずれかのストッパ構造体と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ストッパ部がコンクリートの表面に接したことをいち早く感じることができる、ストッパ構造体及びこれを備えたドリル体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るドリル体の側面図である。
図2図1のドリル体を先端側から見た図である。
図3図1のドリル体を後端側から見た図である。
図4】ドリル部材の側面図及び一部拡大図である。
図5図1のドリル体の一部断面図及び一部拡大図である。
図6図1のドリル体の一部断面図及び一部拡大図である。
図7図1のドリル体の組み立て方法を示す断面である。
図8図1のドリル体の使用方法を示す図である。
図9】実施例に係るストッパ構造体の側面図である。
図10】実施例及び比較例に係るドリル部材の側面図である。
図11】実施例及び比較例に係るドリル体を用いたときに、測定された振動を示すグラフである。
図12】実施例及び比較例に係るドリル体を用いたときの、穿孔後のコンクリートの表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るストッパ構造体20及びこれを備えたドリル体100の一実施形態について説明する。このドリル体100は、アンカー部材を固定するためのアンカー孔をコンクリートに形成するために用いられる。
【0017】
<1.ドリル体の概要>
図1はドリル体の側面図、図2はドリル体を軸方向の先端側から見た図、図3はドリル体を軸方向の後端側から見た図である。図1図3に示すように、本実施形態に係るドリル体100は、ドリル部材10と、このドリル部材10に取付けられるストッパ構造体20と、を備えている。以下、これらについて、詳細に説明する。
【0018】
<2.ドリル部材>
図4はドリル部材の側面図である。図4に示すように、このドリル部材10は、棒状のシャンク1と、このシャンク1の先端にシャンク1と同一軸線上に一体的に連結されたドリル部2と、を備えている。シャンク1は、後述するハンマードリル装置200に連結されるものであり、軸方向の先端側から後端側へ第1大径部11、第1小径部12、第2大径部13、第2小径部14、及び固定部15がこの順で一体的に連結されたものである。第1大径部11、第1小径部12、第2大径部13、及び第2小径部14は、それぞれ円柱状に形成されている。一方、最後端の固定部15は、六角柱状に形成され、この部分がハンマードリル装置200に固定される。そして、このハンマードリル装置200によって、ドリル部材10は軸周りに回転しながら軸方向に打撃され、穿孔するようになっている。そして、第1大径部11の先端面から、ドリル部2が突出している。ドリル部2の最大外径は、シャンク1の先端面の外径よりも小さいため、ドリル部2とシャンク1の先端面との境界には第1段差111が形成されている。
【0019】
ドリル部2は、円柱体21の外周面に螺旋状の溝22が形成されたものであり、螺旋状の溝22の縁部が刃として穿孔を行うようになっている。また、図4の拡大図(b)に示すように、円柱体21の外周面において、上記シャンク1との第1段差111から先端側に所定長さだけ離れた位置には、第2段差23が形成されている。すなわち、この第2段差23を挟んで円柱体21の後端側の外径が、先端側の外径よりも大きくなっている。そして、円柱体21において、第2段差23から第1段差111までの外周面201は、テーパ状に形成されており、第1段差111にいくにしたがって外径が大きくなるように形成されている。ドリル部2において、このテーパ状に形成されている部位を第1部位201と称することとする。
【0020】
さらに、円柱体21において、第2段差23よりも先端側に所定長さだけ離れた位置には、径方向外方に突出する環状の突部24が形成されている。なお、ドリル部2において、第2段差23と突部24との間の部位を第2部位202と称し、突部24よりも先端側を第3部位203と称することとする。
【0021】
<3.ストッパ構造体>
次に、ストッパ構造体について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5及び図6は、ドリル部材に取付けられたストッパ構造体の断面図及び一部拡大図である。
【0022】
図5及び図6に示すように、このストッパ構造体20は、ドリル部材10のドリル部2に取付けられるものであり、軸方向の後端側から先端側へ並ぶワッシャー部3、緩衝部4、及びストッパ部5により構成されている。
【0023】
図5に示すように、ワッシャー部3は、後述する図9の例のようなクロムモリブデン鋼(SCM435)、或いはその他適宜な金属によって円筒状に形成されており、ドリル部2が挿通される貫通孔31が形成されている。そして、このワッシャー部3は、ドリル部2の第1部位201に圧入される。図5及びその拡大図に示すように、ワッシャー部3の貫通孔31の内壁面は、ドリル部2の第1部位201と密着するようにテーパ状に形成されており、後端側にいくにしたがって内径が大きくなるなっている。上述したように、第1部位201はテーパ状に形成されているため、ワッシャー部3と第1部位201とは楔効果により強固に固定され、ワッシャー部3はドリル部2に対して回転不能に固定される。
【0024】
また、ワッシャー部3の外径は、シャンク1の先端面の外径よりも大きくなっており、ワッシャー部3の後端面32が、第1段差111に係合している。これにより、ワッシャー部3が第1段差111よりも後端側に移動するのが規制されている。一方、ワッシャー部3の先端面33は、ドリル部2の第2段差23よりもやや後端側に位置している。また、ワッシャー部3の先端面33の外縁331は面取り加工がなされている。
【0025】
後述するように、ワッシャー部3がドリル部2に挿通された後、ドリル部2においてワッシャー部3から突出する部分は、加締め加工が施されるようになっている。より詳細には、第2段差23よりも後端部側の部分(以下、加締め部と称する)231がワッシャー部3の内径よりも大きくなるように加締め加工が施され、後端にいくにしたがって径が大きくなるようなテーパ状に形成される。これによって、ワッシャー部3はドリル部2の先端側に移動するのが規制される。
【0026】
次に、緩衝部4について説明する。図6及びその拡大図に示すように、緩衝部4は、ワッシャー部3とほぼ同じ外径を有する円筒状に形成されており、ドリル部2が挿通される貫通孔41が形成されている。緩衝部4は、後述する図9の例のようなウレタンゴム製のほか、その他の各種ゴム製材料、或いはPVAなどの熱可塑性樹脂などの適宜選択された弾性材料によって形成されているが、後述するように穿孔の際に軸方向に押圧力が作用しても、1~2mm程度しか圧縮されないような硬度を有している。特に望ましくは、緩衝部4が、ショアA硬度が90以上のウレタンゴム素材で形成されていると、振動吸収能力と、穿孔毎にばらつきなく正確な穿孔長でストップさせるという機能と、を両立させることができる。したがって、ストッパ構造体20の機能を最も効果的に発現させることができる。
【0027】
また、緩衝部4の貫通孔41の内径は、ドリル部2の円柱体21の外径よりもやや小さく(例えば、1mm程度小さい)、これによってドリル部2は、緩衝部4の貫通孔41に圧入されている。すなわち、ドリル部2にワッシャー部3が挿通され、加締め加工が施された後に、緩衝部4が圧入される。但し、緩衝部4はドリル部2に完全に固定されているわけではなく、力を加えることによって回転可能となっている。
【0028】
緩衝部4の先端面42は、ドリル部2の突部24よりもやや後端側に位置している。
【0029】
続いて、ストッパ部5について説明する。図6及びその拡大図に示すように、ストッパ部5は、緩衝部4よりも大きい外径を有する円筒状に形成されており、ドリル部2が挿通される貫通孔51が形成されている。ストッパ部5は、ワッシャー部3と同様に後述する図9の例のようなクロムモリブデン鋼(SCM435)、或いはその他適宜な金属によって形成されている。
【0030】
また、図5の拡大図(b)に示すように、ストッパ部5の貫通孔51は、軸方向に先端側から後端側へ並ぶ大径部511、小径部512、及びテーパ部513によって構成されている。小径部512はドリル部2の円柱体21の外径と同じ大きさであり、大径部511は小径部512よりもやや大きい(例えば、1mm程度大きい)内径を有しており、ドリル部2の突部24の外径と同じである。そして、テーパ部513は、小径部512の後端から後方にいくにしたがって内径が大きくなるように形成されている。テーパ部513の後端の内径はテーパ部513の先端の内径よりも1mm程度大きくなっている。
【0031】
また、ドリル部2の突部24は、大径部511に配置され、大径部511と小径部512との間の段差に係合するようになっている。これによって、ストッパ部5は、突部24によって先端側に移動するのが規制されている。
【0032】
ドリル部2の円柱体21の外周面はストッパ部5の小径部512に接し、突部24が大径部511に接しているため、ストッパ部5は、ドリル部2に対して完全に固定されているわけではなく、軸周りに回転可能となっている。
【0033】
なお、ドリル部2においては、ストッパ部5よりも先端側の部分において穿孔が行われるため、ドリル部2において、ストッパ部5から先端までの長さが、穿孔長さとなる。したがって、ストッパ構造体20の軸方向の長さは、所望の穿孔長さをドリル部2に確保するように設定される。
【0034】
<4.ドリル体の組み立て方法>
次に、ドリル体の組み立て方法について、図7を参照しつつ説明する。すなわち、ドリル部材10に対してストッパ構造体20を取り付ける。まず、図7(a)に示すように、ドリル部2の第1部位201にワッシャー部3を圧入する。このとき、ワッシャー部3の後端面32が第1段差111に接するまで圧入する。これに続いて、ドリル部2において、ワッシャー部3の先端面33から露出する加締め部231に対して加締め加工を施し、加締め部231の外径をワッシャー部3の内径よりも大きくする。以上の作業により、ワッシャー部3は、ドリル部2に対し軸方向の移動が規制され、さらに上述した楔効果により、ドリル部2に対して回転不能に固定される。
【0035】
続いて、図7(b)に示すように、ドリル部2に緩衝部4を圧入する。このとき、緩衝部4の後端面がワッシャー部3の先端面33に接するまで圧入する。
【0036】
これに続いて、図7(c)に示すように、ドリル部2にストッパ部5を圧入する。このとき、ストッパ部5の貫通孔51の小径部512がドリル部の突部24に引っかかるが、小径部512が突部24を乗り越えるように、緩衝部4に接触するまでストッパ部5を押し込む。これにより、突部24はストッパ部5の大径部511に配置され、ストッパ部5の先端側への移動が規制される。但し、上記のように、ストッパ部5はドリル部2に対して軸周りに回転可能となっている。こうして、ドリル体100の組み立てが完了する。
【0037】
<5.ドリル体の使用方法>
次に、上記のように構成されたドリル体100の使用方法について、図8を参照しつつ説明する。まず、図7(a)に示すように、ドリル部材10のシャンク1を公知のハンマードリル装置200に接続する。ハンマードリル装置200は、穿孔中、ドリル部材10を軸周りに回転させるとともに、軸方向に打撃振動を付与させるようになっている。
【0038】
そこで作業者は、ドリル体100を軸周りに回転させるとともに打撃振動を付与しながら、コンクリートTにドリル体100を押し付けつつ、アンカー孔T1を穿孔する。このとき、穿孔は、ドリル部2において、ストッパ部5よりも先端側の部分で行われるが、ストッパ部5、緩衝部4、及びワッシャー部3は、ドリル部2に配置固定されたワッシャー部と先端側への移動が規制されたストッパ部5の間で弾性材である緩衝部がストッパ部5を先端方向に若干押圧する様態でドリル部2の外周面に固定されているため、ストッパ構造体20がドリル部材10とともに回転する。
【0039】
穿孔中、ハンマードリル装置200を保持する作業者は装置自体が発生させる打撃振動とともに穿孔反力による振動を感じているが、穿孔が進み、ストッパ部5がコンクリートTの表面に接すると、作業者はストッパ部5がコンクリートTの表面に当たった感触を検知し、穿孔を中止する。また、ストッパ部5は、コンクリートTとの摩擦によって、回転が遅くなり、これによって、ドリル部2は、ストッパ部5に対して回転(空回り)するようになる。このように、ストッパ部5の回転が遅くなるため、これを視認することで、作業者は、ストッパ部5がコンクリートTに接し、所定の長さの穿孔が完了したことを確認することもできる。
【0040】
その後、作業者はアンカー孔T1からドリル体100を引き抜き、ハンマードリル装置200を停止させる。こうして、アンカー孔T1の穿孔が完了する。
【0041】
<6.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
(1)ハンマードリル装置200は、ドリル部材10に対し、回転力のみならず、軸方向の打撃振動を付与する。また、コンクリートTの穿孔中には、コンクリートTに不均一に含まれる粗骨材(砂利)、細骨材(砂)、硬化したセメントペースト等によって、ドリル部材10に不均一な反力が作用する。したがって、穿孔中、ドリル部材10には、軸方向、周方向、及び径方向の種々の力が作用して振動する。
【0042】
これに対して、本実施形態に係るストッパ構造体20には、ストッパ部5とワッシャー部3との間に弾性材料で形成された緩衝部4が設けられており、この緩衝部4がドリル部2に密着しているため、ドリル部材10が受ける振動を緩衝部4によって吸収することかできる。そのため、緩衝部4よりもシャンク1側に振動が伝達するのを抑制することができる。
【0043】
したがって、穿孔中に作業者が受ける振動を低減することができ、これによって作業者は、ストッパ部5がコンクリートTに接したときの振動、つまり穿孔中とは異なる新たな振動をいち早く感じることができる。したがって、所定長さの穿孔の完了後、即座に作業を終了することができる。これにより、正確な長さの穿孔を行うことができる。
【0044】
(2)緩衝部4によって軸方向に受ける力を緩衝することができるため、例えば、ストッパ部5がコンクリートTに接した後に、さらにストッパ部5をコンクリートTに押しつけたとしても、緩衝部4によってストッパ部5がコンクリートTを押しつける力を緩和することができる。したがって、ストッパ部5がコンクリートTに接した後に、さらにドリル体100を押し込んだとしても、ストッパ部5がコンクリートTの表面を削るのを抑制することができる。
【0045】
(3)ストッパ部5が、ドリル部材10に対して回転可能に取り付けられているため、ストッパ部5がコンクリートTの表面に接すると、ストッパ部5の回転が遅くなる。これにより、作業者は、ストッパ部5がコンクリートTに接し、所定の長さの穿孔が完了したことを視認することができる。また、ストッパ部5の回転が遅くなるため、ストッパ部5によって、コンクリートTの表面が削られるのを防止することができる。
【0046】
<7.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。但し、以下の変形例は適宜、組み合わせることができる。
【0047】
ワッシャー部3、緩衝部4、及びストッパ部5の形状は特には限定されず、多角形状に形成されていてもよい。また、これらの軸方向の長さ、外径も特には限定されない。
【0048】
ワッシャー部3、緩衝部4、及びストッパ部5のドリル部材10への固定方法は、上記実施形態で示したものに限定されない。上記のように、ワッシャー部3は軸方向及び周方向に移動しないようにドリル部材10に固定されていればよい。緩衝部4は、上記実施形態のように、ドリル部材10に回転可能に取り付けられていてもよいが、回転不能に取り付けられていてもよい。
【0049】
ワッシャー部3は必ずしも必要ではなく、例えば、ドリル部材10にワッシャー部3が一体的に形成されていれば、緩衝部4をそのまま取り付けることができる。また、ワッシャー部3を設けず、緩衝部4が、軸方向に移動しないようにドリル部材10に取り付けられるのであれば、そのようにしてもよい。
【実施例
【0050】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0051】
まず、実施例に係るドリル体を準備する。実施例に係るドリル体は、ドリル部材に、図9に示すストッパ構造体が取り付けられたものである。また、ドリル部材としては、図10(a)に示すものを準備した。比較例に係るドリル体は、ストッパ構造体を設けず、図10(b)に示すドリル部材のみを用いた。
【0052】
そして、ハンマードリル装置として、日立工機製のDH42を準備した。また、このハンマードリル装置には、加速度センサを接着剤によって固定し、これを加速度計(東京測定研究所製ARE-10000A)に接続した。そして、実施例及び比較例に係るドリル体を、ハンマードリル装置に接続し、ハンマードリル装置に生じる振動を測定しつつコンクリートの穿孔を行った。作業者は、穿孔中に異なる振動を感じてからさらに2秒間穿孔を行った後、穿孔を終了した。図11(a)が実施例のドリル体を用いたとき、図11(b)が比較例のドリル体を用いたときに測定された振動(加速度)のグラフである。
【0053】
図11(a)及び図11(b)を比較すると、実施例は、比較例に比べ、穿孔中にハンマードリル装置に生じる振動が抑制されていることが分かる。そのため、実施例では、比較例に比べ、穿孔中の振動と、ストッパ部がコンクリートに接したときに生じる振動との差異が大きくなっていることが分かる。したがって、実施例を用いると、作業者は、この振動の差異を感じやすくなり、ストッパ部がコンクリートに接したことをいち早く感じれることが分かった。
【0054】
また、図12は、穿孔後のコンクリートの表面を写した写真である。実施例を用いた図12(a)と比較例を用いた図12(b)とを比べると、実施例の方が、コンクリートの表面の削れが少ないことが分かる。これは、ストッパ部がコンクリートを押しつける力を緩衝部によって緩和したからであると考えられる。したがって、実施例を用いることで、コンクリートの表面の余分な削れを防止することもできることが分かった。この穿孔がアンカー孔である場合に、孔の周囲のコンクリートが過分に削れているとアンカーのぐらつき、強度低下につながる懸念もあり、本発明によれば、こうした懸念を低減することが出来る。
【符号の説明】
【0055】
1 シャンク
2 ドリル部
3 ワッシャー部
4 緩衝部
5 ストッパ部
10 ドリル体
20 ストッパ構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12