(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】インフレーション成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20231122BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20231122BHJP
B29C 55/28 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/10
B29C55/28
(21)【出願番号】P 2019064475
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一優
(72)【発明者】
【氏名】八若 佐知
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-100248(JP,A)
【文献】特表2005-537161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/92
B29C 48/10
B29C 55/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の吐出口からチューブ状に樹脂を押し出すダイと、
押し出されたチューブ状の樹脂に関するデータを取得する取得部と、
取得されたデータに基づいて、
前記吐出口とチューブ状の樹脂を引き取りながら扁平に折りたたむピンチロールとの間における少なくとも1つの高さ位置にお
いてチューブ状の樹脂の中心位置がダイの基準軸上にあるか否かを判定する判定部と、
を備え
、
1つの高さ位置においてチューブ状の樹脂の中心位置がダイの基準軸上にあるか否かを判定する場合、前記取得部は吐出口から吐出した樹脂がピンチロールに到達するまでの時間よりも短い周期でチューブ状の樹脂に関するデータを取得し、複数の高さ位置においてチューブ状の樹脂の中心位置がダイの基準軸上にあるか否かを判定する場合、前記取得部は複数の高さ位置のチューブ状の樹脂に関するデータを取得することを特徴とするインフレーション成形装置。
【請求項2】
環状の吐出口からチューブ状に樹脂を押し出すダイと、
押し出されたチューブ状の樹脂に関するデータを取得する取得部と、
取得されたデータに基づいて、
前記吐出口とチューブ状の樹脂を引き取りながら扁平に折りたたむピンチロールとの間におけるチューブ状の樹脂が、ダイの基準軸に対して回転対称であるか否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とするインフレーション成形装置。
【請求項3】
前記取得部は、少なくとも1つの高さ位
置について、周方向の複数の位置のそれぞれにおける樹脂に関するデータを取得する請求項1または2に記載のインフレーション成形装置。
【請求項4】
前記取得部は、樹脂に関するデータとして、チューブ状の樹脂の外観形状を示す画像データを取得することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインフレーション成形装置。
【請求項5】
前記取得部は、樹脂に関するデータとして、チューブ状の樹脂の温度分布を示すデータを取得することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインフレーション成形装置。
【請求項6】
前記取得部は、樹脂に関するデータとして、チューブ状の樹脂の周りの風速データを取得することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインフレーション成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーション成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶かした樹脂をダイからチューブ状に押し出し、その内側に空気を吹き込んで膨らませて薄いフィルム状に成形するインフレーション成形が知られている。従来では、リップ幅や冷却風の風量、風温を調節することにより、樹脂の厚みを目標範囲内に収める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイから押し出されたチューブ状の樹脂が不安定な状態になると、その品質が低下しうる。したがって、インフレーション成形では、チューブ状の樹脂が安定した状態か否かを常時監視して、不安定になった場合にはいち早く対策を講じる必要がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、チューブ状の樹脂が安定した状態にあるか否かを検知できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインフレーション成形装置は、環状の吐出口からチューブ状に樹脂を押し出すダイと、押し出されたチューブ状の樹脂に関するデータを取得する取得部と、取得されたデータに基づいて、少なくとも1つの高さ位置におけるチューブ状の樹脂の中心位置がダイの基準軸上にあるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もまた、インフレーション成形装置である。この装置は、環状の吐出口からチューブ状に樹脂を押し出すダイと、押し出されたチューブ状の樹脂に関するデータを取得する取得部と、取得されたデータに基づいて、チューブ状の樹脂が、ダイの基準軸に対して回転対称であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チューブ状の樹脂が安定した状態にあるか否かを検知できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るインフレーション成形装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1のダイおよび厚み調節部の縦断面図である。
【
図3】
図1のダイおよび厚み調節部の上面図である。
【
図4】
図1の制御装置の機能および構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、
図4の判定部による判定方法を説明する図である。
【
図6】
図1のインフレーション成形装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施の形態に係るインフレーション成形装置の判定部による判定方法を説明する図である。
【
図8】第3の実施の形態に係るインフレーション成形装置の判定部による判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施の形態に係るインフレーション成形装置1の概略構成を示す。インフレーション成形装置1は、ダイ10と、厚み調節部2と、一対の安定板4と、ピンチロール5と、厚み取得部6と、バブルデータ取得部26と、制御装置7と、を備える。
【0013】
ダイ10は、押出機(不図示)より供給された溶けた樹脂を、リング状のスリット18(
図3で後述)から押し出すことにより、バブルを成形する。「バブル」は、インフレーション成形により得られる中間体であり、チューブ状の樹脂フィルムを指す。
【0014】
厚み調節部2は、バブルの厚みを調節するとともに、バブルを冷却する。
【0015】
一対の安定板4は、厚み調節部2の上方に配置され、バブルを一対のピンチロール5の間に案内する。ピンチロール5は、安定板4の上方に配置され、案内されたバブルを引っ張り上げながら扁平に折りたたむ。扁平に折りたたまれた樹脂フィルムは、巻取機(不図示)によって巻き取られる。
【0016】
厚み取得部6は、厚み調節部2と安定板4との間に配置される。厚み取得部6は、周方向の各位置におけるバブルの厚みを所定の周期で繰り返し検出する。本実施の形態では、厚み取得部6は、バブルの周りを回りながら、周方向の各位置におけるバブルの厚みを検出する。厚み取得部6により取得された厚みデータは制御装置7に送信される。
【0017】
バブルデータ取得部26は、バブルに関するデータを所定の周期で繰り返し取得する。本実施の形態のバブルデータ取得部26は、例えばデジタルカメラなどの可視光カメラやサーモグラフィなどの赤外線カメラであり、バブルに関するデータとして、バブルの外観形状を示す画像を所定の周期で繰り返し取得(撮像)する。
【0018】
具体的には、バブルデータ取得部26は、例えばロボットアームに搭載され、バブルの周りを回るように移動可能に構成される。そしてバブルデータ取得部26は、周方向に所定の間隔で、例えば45°間隔で、画像を取得する。バブルデータ取得部26は、これを所定の周期で繰り返す実行する。変形例として、インフレーション成形装置1が複数のバブルデータ取得部26を含み、これらが周方向に所定の間隔で、例えば45°間隔で配置されてもよい。バブルデータ取得部26は、取得した画像データを制御装置7に送信する。
【0019】
制御装置7は、インフレーション成形装置1を統合的に制御する装置である。
【0020】
図2は、ダイ10および厚み調節部2の縦断面図である。
図3は、ダイ10および厚み調節部2の上面図である。
図3では、冷却装置3の表示を省略している。
【0021】
ダイ10は、ダイ本体11と、内周部材12と、外周部材14と、を含む。内周部材12は、ダイ本体11の上面に載置される略円柱状の部材である。外周部材14は、環状の部材であり、内周部材12を環囲する。内周部材12と外周部材14との間には、リング状に上下方向に延びるスリット18が形成される。このスリット18を溶けた樹脂が上側に向かって流れ、スリット18の吐出口(すなわち上端開口)18aから樹脂が押し出される。
【0022】
ダイ本体11の外周には、複数のヒータ19が装着される。また、外周部材14の外周にもヒータ19が装着される。ダイ本体11および外周部材14は、ヒータ19によって所要の温度に加熱される。これにより、ダイ10の内部を流れる樹脂を適度な温度および状態に保つことができる。
【0023】
厚み調節部2は、冷却装置3と、複数(ここでは32個)の調節ユニット16と、を含む。
【0024】
冷却装置3は、ダイ10の上方に配置される。冷却装置3は、エアーリング8と、環状の整流部材9と、を備える。エアーリング8は、内周部が下方に凹んだリング状の筐体である。エアーリング8の内周部には、上側に開口したリング状の吹出口8aが形成されている。吹出口8aは特に、中心軸Aを中心とするリング状のスリット18と同心となるよう形成される。
【0025】
エアーリング8の外周部には、複数のホース口8bが周方向に等間隔で形成されている。複数のホース口8bのそれぞれにはホース(不図示)が接続され、このホースを介してブロワー(不図示)からエアーリング8内に冷却風が送り込まれる。エアーリング8内に送り込まれた冷却風は、吹出口8aから吹き出てバブルに吹き付けられる。
【0026】
整流部材9は、吹出口8aを取り囲むようエアーリング8内に配置される。整流部材9は、エアーリング8内に送り込まれた冷却風を整流する。これにより、冷却風は、周方向において均一な流量、風速で、吹出口8aから吹き出る。
【0027】
複数の調節ユニット16は、外周部材14の上端側を囲むように周方向に例えば等間隔に配置される。調節ユニット16は特に、片持ち状に外周部材14に取り付けられる。複数の調節ユニット16の上方には冷却装置3が固定される。複数の調節ユニット16はそれぞれ、外周部材14に径方向内向きの押圧荷重または径方向外向きの引張荷重を付与できるよう構成される。外周部材14は、押圧荷重または引張荷重が付与されることによって弾性変形する。したがって、複数の調節ユニット16を調節することによって、リップ幅を周方向で部分的に調節でき、バブルの厚みを周方向で部分的に制御できる。バブルの厚みに周方向でばらつきが生じている場合、例えば、厚みが薄い部分に対応する(例えば厚みが薄い部分の下方に位置する)調節ユニット16から外周部材14に引張荷重を付与させ、厚みが薄い部分の下方の吐出口18aの間隙を大きくする。これにより、バブルの厚みのばらつきが小さくなる。
【0028】
調節ユニット16は、一例としては
図3に示すように、制御装置7からの制御指令に基づいて駆動するアクチュエータ24と、回動軸32を支点として支持され、アクチュエータ24の回転力を受けるレバー34と、外周部材14により軸線方向に変位可能に支持され、レバー34の作用点に支持された作動ロッド36と、含む。そして、レバー34の回転力が作動ロッド36の軸線方向の力に変換され、その軸線方向の力が内周部材12または外周部材14に対する荷重となり、レバー34がレバー34の作用点において作動ロッド36に直接力を付与する。
【0029】
図4は、制御装置7の機能および構成を模式的に示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0030】
制御装置7は、種々の通信プロトコルにしたがって厚み取得部6およびバブルデータ取得部26との通信処理を実行する通信部40と、ユーザによる操作入力を受け付け、また各種画面を表示部に表示させるU/I部42と、通信部40およびU/I部42から取得されたデータをもとにして各種のデータ処理を実行するデータ処理部46と、データ処理部46により参照、更新されるデータを記憶する記憶部48と、を含む。
【0031】
記憶部48は、バブルデータ記憶部64を含む。バブルデータ記憶部64は、バブルデータ取得部26から送信されたバブルに関するデータを、本実施の形態ではバブルの外観形状を示す画像データを記憶する。
【0032】
データ処理部46は、受信部50と、判定部52と、提示部54と、調節部56と、を含む。
【0033】
受信部50は、厚み取得部6が所定の周期で送信する厚みデータを受信する。また受信部50は、バブルデータ取得部26が所定の周期で送信するバブルに関するデータを受信し、受信するたびに受信したデータをバブルデータ記憶部64に記憶させる。
【0034】
判定部52は、バブルの外観形状を示す画像がバブルデータ記憶部64に新たに記憶されるたびに、新たに記憶されたバブルの外観形状を示す画像に基づいて、バブルが安定な状態にあるか否かを所定の周期で繰り返し判定する。
【0035】
図5(a)~(d)は、判定部52による判定方法を説明する図である。
図5(a)~(d)は、周方向の或る位置から撮像されたバブルの外観形状を示す画像である。
図5(a)は、バブルが安定な状態にある。
図5(b)~(d)はバブルが不安定な状態にあり、
図5(b)ではバブルが揺れたり傾いたりしており、
図5(c)ではバブルがねじれており、
図5(d)ではバブルが部分的に凹んでいる。
【0036】
まず判定部52は、周方向に所定の間隔で取得された複数の画像のそれぞれについて、公知の画像処理技術を用いてバブルの輪郭を検出し、検出された輪郭から、各高さ位置における、二次元画像上でのバブルの中心位置Cを特定する。
【0037】
そして判定部52は、周方向に所定の間隔で取得された複数の画像のすべてにおいて、各高さ位置での中心位置Cが実質的にダイ10の基準軸(例えば中心軸A)上にある場合、バブルはその中心軸がダイ10の基準軸と一致した状態にある、言い換えるとバブルは基準軸に対して回転対称な形状になっている、さらに言い換えるとバブルは安定な状態にある、と判定する。なお、中心位置Cが実質的に基準軸上にあるとは、中心位置Cが基準軸上にあることや、基準軸から中心位置Cまでの水平方向の距離が所定の距離未満であることをいう。
【0038】
また判定部52は、周方向に所定の間隔で取得された複数の画像のうちの少なくとも1つの画像において、少なくとも1つの高さ位置での中心位置Cが実質的にダイ10の基準軸上にない場合、バブル全体が揺れたり傾いたりしていてあるいはバブルが部分的に膨らみもしくは凹んでいて、バブルはその中心軸がダイ10の基準軸と一致しない状態にある、言い換えるとバブルは基準軸に対して非回転対称な形状になっている、さらに言い換えるとバブルは不安定な状態にある、と判定する。
【0039】
提示部54は、厚み取得部6から送信された厚みデータをユーザに提示する。提示部54は、例えば所定のディスプレイに厚みデータを表示することにより、厚みデータをユーザに提示する。また提示部54は、判定部52による判定結果をユーザに提示する。提示部54は、例えば、バブルが不安定な状態と判定された場合、所定のディスプレイに表示することにより、その旨をユーザに提示する。また例えば、提示部54は、
図5に示すような画面、すなわちバブルの外観形状を撮像した画像に各高さ位置での中心位置Cを描き込んだ画面をディスプレイに表示する。この際、提示部54は、周方向の各位置で撮像したバブルの外観形状の画像をディスプレイに表示してもよい。ユーザは、ディスプレイに表示されるこれらのデータを考慮して、各種調節要素の調節量を決定すればよい。
【0040】
ユーザは、樹脂の内側に吹き付ける空気の風量、リップ幅、冷却風の風量などの、バブルの厚みや形状に影響しうる各種調節要素の調節量を決定する。調節部56は、ユーザの決定にしたがって、各種調節要素を調節する。例えば調節部56は、ユーザにより決定された荷重を外周部材14に付与するように調節ユニット16に制御指令を送信する。各調節ユニット16は、この制御指令にしたがって動作する。これによりリップ幅が調節される。
【0041】
以上のように構成されたインフレーション成形装置1の動作を説明する。ここでは、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定する動作について説明する。
図6は、その動作を示すフローチャートである。
図6のフローは、成形が開始されると実行される。
【0042】
制御装置7は、バブルデータ取得部26により取得されたバブルの外観形状を示す画像を受信する(S10)。制御装置7は、取得した各画像について、各高さ位置におけるバブルの中心位置Cを特定する(S12)。制御装置7は、各画像の各高さ位置における中心位置Cがダイ10の基準軸上にあるか否かを確認することにより、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定する(S14)。制御装置7は、判定結果をユーザに提示する(S16)。ユーザは、この判定結果とともに、バブルの厚みを参考にして、各種調節要素の調節量を決定する。制御装置7は、成形が終了した場合(S18のY)、フローを終了し、成形が終了していない場合(S18のN)、処理をS10に戻す。
【0043】
以上説明した本実施の形態によれば、バブルが安定な状態にあるか否か、具体的にはバブルの中心軸がダイ10の基準軸と一致しているか否か、言い換えるとバブルがダイ10の基準軸に対して回転対称であるか否か、を判定できる。これにより、ユーザは、バブルが不安定になるといち早くこれを察知でき、いち早く対策を講じることが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、
図5に示すような画面、すなわちバブルの外観形状を撮像した画像に各高さ位置での中心位置Cを描き込んだ画面をディスプレイに表示される。これにより、ユーザは、バブルが安定な状態にあるか否かをひと目で把握することができる。
【0045】
以上、本発明の一側面について、第1の実施の形態をもとに説明した。続いて第1の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0046】
・第1の実施の形態についての第1の変形例
第1の実施の形態では、判定部52は、各高さ位置、すなわち複数の高さ位置における中心位置Cを特定し、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定する場合について説明したが、中心位置Cを特定する高さ位置の数、すなわちバブルが不安定な状態にあるか否かを判定するために監視する高さ位置の数は特に限定されない。バブルは下流(上方)に向かって流れるため、実験等で決定した適切な高さ位置で適切な周期で監視すれば、1つの高さ位置を監視するだけで、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定できる。つまり、判定部52は、少なくとも1つの高さ位置における中心位置を特定し、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定すればよい。
【0047】
・第1の実施の形態についての第2の変形例
バブルの外観形状を示す画像に基づいてバブルが不安定か否かを判定する方法は、第1の実施の形態のそれには限定されない。
【0048】
例えば判定部52は、周方向に所定の間隔で取得された複数の画像のそれぞれについて、検出されたバブルの輪郭が、ダイ10の基準軸に対して対称か否かを判定してもよい。
【0049】
そして判定部52は、周方向に所定の間隔で取得された複数の画像のすべてにおいてバブルの輪郭が基準軸に対して対称である場合、バブルはその中心軸がダイ10の基準軸と一致した状態にある、言い換えるとバブルは基準軸に対して回転対称な形状になっている、さらに言い換えるとバブルは安定な状態にある、と判定する。
【0050】
また判定部52は、周方向に所定の間隔で取得された複数の画像のうちの少なくとも1つの画像においてバブルの輪郭が基準軸に対して非対称である場合、バブル全体が揺れたり傾いたりしていてあるいはバブルが部分的に膨らみもしくは凹んでいて、バブルはその中心軸がダイ10の基準軸と一致しない状態にある、言い換えるとバブルは基準軸に対して非回転対称な形状になっている、さらに言い換えるとバブルは不安定な状態にある、と判定する。
【0051】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、バブルの外観形状を示す画像に基づいて、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定する場合について説明した。第2の実施の形態では、バブルの表面温度の分布に基づいて、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定する。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0052】
本実施の形態のバブルデータ取得部26は、例えば温度センサであり、バブルに関するデータとして、バブルの表面温度を取得(計測)する。バブルデータ取得部26は、例えばロボットアームに搭載され、バブルの周りを移動しながら、周方向の各位置で、例えば1°間隔で、バブルの表面温度を取得する。ある高さ位置での表面温度の取得が終了すると、バブルデータ取得部26を上方または下方に移動させ、その高さ位置で、バブルの周りを移動しながら周方向の各位置でバブルの表面温度を取得する。こうして、所定の高さ範囲の各高さ位置における、周方向の各位置のバブルの表面温度を取得する。なお、各高さ位置ごとにバブルデータ取得部26が用意されてもよい。変形例として、バブルデータ取得部26は赤外線カメラであってもよい。バブルデータ取得部26は、取得した表面温度データを制御装置7に送信する。
【0053】
バブルデータ記憶部64は、バブルデータ取得部26から送信された、所定の高さ範囲の各高さ位置における、周方向の各位置のバブルの表面温度データを記憶する。
【0054】
判定部52は、バブルデータ記憶部64に記憶されたバブルの表面温度データに基づいて、バブルが安定な状態にあるか否かを判定する。
【0055】
図7は、判定部52による判定方法を説明する図である。
図7において、横軸は周方向の任意の位置を基準とする角度であり、縦軸は表面温度である。
図7は、ある高さ位置における周方向の表面温度の分布を表示する。判定部52は、表面温度が計測されたすべての高さ位置において、表面温度が周方向で実質的に一定である場合、例えば周方向における表面温度のレンジ(最大温度T
maxと最小温度T
minとの差)が所定の温度以下の場合、各高さ位置におけるバブルの断面形状は実質的に円形であり、その円の中心位置はダイ10の基準軸上にあり、バブルはその中心軸がダイ10の基準軸と一致した状態にある、言い換えるとバブルは基準軸に対して回転対称な形状になっている、さらに言い換えるとバブルは安定な状態にある、と判定する。
【0056】
また判定部52は、少なくとも1つの高さ位置において、表面温度が周方向で実質的に一定でない場合、例えば周方向における表面温度のレンジが所定の温度を超えている場合、バブルは不安定な状態にある、と判定する。
【0057】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
以上、本発明の一側面について、第2の実施の形態をもとに説明した。続いて第2の実施の形態に関連する変形例を説明する。
【0059】
第2の実施の形態では、判定部52は、各高さ位置、すなわち複数の高さ位置における表面温度の周方向分布を特定し、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定する場合について説明したが、表面温度の周方向分布を特定する高さ位置の数、すなわちバブルが不安定な状態にあるか否かを判定するために監視する高さ位置の数は特に限定されない。バブルは下流(上方)に向かって流れるため、実験等で決定した適切な高さ位置で適切な周期で監視すれば、1つの高さ位置を監視するだけで、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定できる。つまり、判定部52は、少なくとも1つの高さ位置における表面温度の周方向分布を特定し、バブルが不安定な状態にあるか否かを判定すればよい。
【0060】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、バブルの周囲の風速の分布に基づいて、バブルが安定な状態にあるか否かを判定する。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0061】
本実施の形態のバブルデータ取得部26は、例えば風速センサであり、バブルに関するデータとして、バブルの周りの風速データを取得(計測)する。バブルデータ取得部26は、例えばロボットアームに搭載され、例えばダイ10の基準軸を中心とする、バブルを環囲する所定の円周上を移動しながら、また例えばバブルから一定の距離を保つようにバブルの周りを移動しながら、周方向の各位置で、例えば1°間隔で、風速を取得する。バブルデータ取得部26は、取得した風速データを制御装置7に送信する。
【0062】
バブルデータ記憶部64は、バブルデータ取得部26から送信された、バブルの周囲の風速データを記憶する。
【0063】
判定部52は、バブルデータ記憶部64に記憶されたバブルの周囲の風速データに基づいて、バブルが安定な状態にあるか否かを判定する。
【0064】
図8は、判定部52による判定方法を説明する図である。
図8において、横軸は周方向の任意の位置を基準とする角度であり、縦軸は風速である。判定部52は、風速が周方向で実質的に一定の場合、例えば周方向における風速のレンジ(最大風速V
maxと最小風速V
maxの差)が所定の風速以下の場合、バブルデータ取得部26が設置された高さ以下すなわち風速が取得される高さ以下において、バブルの断面形状は実質的に円形であり、その円の中心位置はダイ10の基準軸上にあり、バブルはその中心軸がダイ10の基準軸と一致した状態にある、言い換えるとバブルは基準軸に対して回転対称な形状になっている、さらに言い換えるとバブルは安定な状態にあると判定する。また、判定部52は、風速が周方向で一定でない場合、例えば周方向における風速のレンジが所定値を超える場合、当該高さ以下において、バブルは不安定な状態にある、と判定する。
【0065】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
以上、本発明の一側面について、第3の実施の形態をもとに説明した。
【0067】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0068】
1 インフレーション成形装置、 7 制御装置、 10 ダイ、 26 バブルデータ取得部、 52 判定部。