(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】防振制御装置及び方法、及び、撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20231122BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20231122BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20231122BHJP
【FI】
G03B5/00 G
G03B15/00 H
H04N23/68
(21)【出願番号】P 2019104795
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 友美
(72)【発明者】
【氏名】鷲巣 晃一
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-128015(JP,A)
【文献】特開2014-191017(JP,A)
【文献】特開2010-117659(JP,A)
【文献】特開2006-064776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から出力された画像信号から得られた複数の動きベクトルのそれぞれから、複数の異なる周波数成分の第1の信号を抽出する第1の抽出手段と、
装置の振動を検出した検出信号から、前記複数の異なる周波数成分の第2の信号を抽出する第2の抽出手段と、
前記複数の動きベクトルの前記第1の信号と、前記第2の信号との相関値を、前記周波数成分ごとにそれぞれ取得する取得手段と、
前記周波数成分ごとの前記相関値に基づいて、前記複数の動きベクトルのいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記動きベクトルを用いて防振制御を行う防振制御手段と
を有することを特徴とする防振制御装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記複数の動きベクトルそれぞれについて、前記周波数成分ごとの前記相関値を取得し、前記周波数成分ごとの相関値のうち、相関の高い周波数帯域における相関値を代表相関値として取得し、
前記選択手段は、前記代表相関値の高さに基づいて、前記複数の動きベクトルのいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の防振制御装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記複数の動きベクトルそれぞれについて、前記周波数成分ごとの前記相関値を取得し、前記周波数成分ごとの相関値のうち、最も相関の高い相関値を前記代表相関値として取得することを特徴とする請求項2に記載の防振制御装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記複数の動きベクトルのうち、前記代表相関値が最も高い動きベクトルを選択することを特徴とする請求項2または3に記載の防振制御装置。
【請求項5】
前記検出信号に基づいて、前記周波数成分ごとに重み付け係数を算出する算出手段を更に有し、
前記取得手段は
、前記重み付け係数
により前記周波数成分ごと
に重み付けして前記相関値を取得し、前記周波数成分ごとの前記相関値のうち、相関の高い周波数帯域における相関値を前記代表相関値
として取得することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の防振制御装置。
【請求項6】
装置の振動を検出した角速度信号の振幅と、前記選択手段により選択された動きベクトルの振幅との比から、補正値を
求める演算手段と、
前記角速度信号を、前記補正値を用いて補正する補正手段と、を更に有し、
前記撮像素子から画像信号が得られない場合に、前記防振制御手段は、前記補正手段により補正された角速度信号を用いて防振制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防振制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の防振制御装置と、
前記撮像素子と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
撮像素子から出力された画像信号から得られた複数の動きベクトルのそれぞれから、複数の異なる周波数成分の第1の信号を抽出する第1の抽出工程と、
装置の振動を検出した検出信号から、前記複数の異なる周波数成分の第2の信号を抽出する第2の抽出工程と、
前記複数の動きベクトルの前記第1の信号と、前記第2の信号との相関値を、前記周波数成分ごとにそれぞれ取得する取得工程と、
前記周波数成分ごとの前記相関値に基づいて、前記複数の動きベクトルのいずれかを選択する第2の選択工程と、
前記第2の選択工程で選択された前記動きベクトルを用いて防振制御を行う防振制御工程と
を有することを特徴とする防振制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の防振制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振制御装置及び方法、及び、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子から時系列に出力される複数の画像から動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルに基づいて、像ぶれを抑制する防振制御装置がある。
【0003】
特許文献1には、次の様な動きベクトルの検出方法が開示されている。即ち、撮影した画像を複数のエリアに分割し、各エリアの動きベクトルの平均値と標準偏差によって定まる範囲内の動きベクトルのみを選択し、更に各エリアのコントラスト係数を求める。そして、求めた各エリアのコントラスト係数をもとに重み付け係数を求めたのち、選択した動きベクトルの加重平均を求め、これを全体の動きベクトルとする。これにより信頼性の高低を評価して全体の動きベクトルを適確に求めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、各エリアのベクトルを演算して信頼性の高い動き量と方向を求めているが、ノイズ、被写体の動き、像倍率変動、被写体距離などにより像面上には様々な誤差ベクトルが発生しており、それらを正確に分離できない。その為に精度の高い振れ補正ができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、振れ補正のために検出された、画像に含まれる複数の被写体の動きベクトルの内、適切な動きベクトルを選択して、精度の高い振れ補正ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の防振制御装置は、撮像素子から出力された画像信号から得られた複数の動きベクトルのそれぞれから、複数の異なる周波数成分の第1の信号を抽出する第1の抽出手段と、装置の振動を検出した検出信号から、前記複数の異なる周波数成分の第2の信号を抽出する第2の抽出手段と、前記複数の動きベクトルの前記第1の信号と、前記第2の信号との相関値を、前記周波数成分ごとにそれぞれ取得する取得手段と、前記周波数成分ごとの前記相関値に基づいて、前記複数の動きベクトルのいずれかを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された前記動きベクトルを用いて防振制御を行う防振制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振れ補正のために検出された、画像に含まれる複数の被写体の動きベクトルの内、適切な動きベクトルを選択できるため、精度の高い振れ補正を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態の撮像システムにおける防振システムの制御構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態における動きベクトルの分布例を示す図。
【
図3】第1の実施形態における防振システムによる動きベクトルの処理を説明する図。
【
図4】第1の実施形態における動きベクトルの方向分けの説明図。
【
図5】第1の実施形態における速度ベクトルの帯域分けと相関度の説明図。
【
図6】第1の実施形態における動きベクトル選択処理のフローチャート。
【
図7】第1の実施形態における各分割領域の動きベクトルの一例を示す模式図。
【
図8】第2の実施形態の撮像システムにおける防振システムの制御構成を示すブロック図。
【
図9】第2の実施形態における速度ベクトルの帯域分けと相関度の説明図。
【
図10】第2の実施形態における振れ補正処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における、カメラ本体11aと、カメラ本体11aに装着して用いられる交換レンズ11bとを有する撮像システム11における防振システムの制御構成を示すブロック図である。
【0012】
カメラ本体11aに設けられたカメラCPU12aは、撮影者からの撮影指示操作などに応じて、カメラ本体11a内の防振動作を含む、撮像システム11全体の動作を制御する。なお、カメラCPU12aで行われる演算動作については、説明を分かり易くするために、カメラ本体11a外の点線12a内にその処理内容を示している。
【0013】
また、交換レンズ11bに設けられたレンズCPU12bは、カメラ本体11aからの撮影指示などに応じて、交換レンズ11b内の防振動作を含む、交換レンズ11b全体の動作を制御する。
【0014】
また、交換レンズ11bに含まれる不図示の撮影光学系は、防振レンズ13を含み、カメラ本体11aからの振れ補正信号に応じて防振レンズ13を駆動することで、振れ補正を行う。このような防振レンズ13を有する撮影光学系を介して、光軸10に沿った被写体の光束が撮像素子14に入射し、撮像素子14は、入射した被写体の光束に応じた画像信号を出力する。撮像素子14から出力された画像信号には画像処理が行われ、得られた画像データは記録や表示等に用いられる。
【0015】
動きベクトル検出部32は、撮像素子14から出力された画像信号から、画像に含まれる被写体ごとに動きベクトルを求める。
【0016】
ここで動きベクトルの誤差について説明する。
図2は、動きベクトル検出部32が求めた各被写体の動きベクトルを示しており、ここでは一例として、撮像領域26内において、至近側にある主被写体27と、遠景被写体28と、暗い被写体29の動きベクルを示している。主被写体27におけるベクトル21を、像面で補正すべき振れの方向と量(スカラー値)を表す動きベクトルとする。これに対し、遠景被写体28では、ベクトル22が示す振れの方向はベクトル21と同じであるが、振れの量(スカラー値)が小さくなっている。これは、カメラ本体11aにシフト振れが発生している場合に、その振れのベクトルはカメラ本体11aから被写体までの距離が短いほど大きくなる為である。また、暗い被写体29におけるベクトル23は、ノイズが重畳している為に正しい動きベクトルが得られていない。
【0017】
また、被写体がカメラ本体11aの撮影方向に沿って前後する場合、或いはカメラ本体11aが撮影方向に沿って前後する場合は、像倍率の変化が生ずる為に撮像画面の中心から放射方向に像倍率変化に対応するベクトルが発生する。このベクトルが、像面で補正すべき振れを表す動きベクトル21に重畳したものを、動きベクトル24として表している。また、主被写体27が動いた場合には、その動きによるベクトルが発生する。このベクトルが動きベクトル21に重畳したものを、動きベクトル25として表している。
【0018】
このように様々な要因で動きベクトルに変化が生じる為に、振れ補正能力が変化してしまう。したがって、動きベクトル量や方向以外の情報を用いて正しい振れを表す動きベクトルを選択し、選択したベクトルに基づいて振れ補正を行うことが好ましい。
【0019】
そこで、本実施形態においては動きベクトルの周波数情報を用いて、補正すべき振れを表す動きベクトルを選択し、振れ補正を行う。具体的には、特定の周波数帯域において加速度センサなどの振動検出手段の検出信号と相関の有る動きベクトルを選択し、その動きベクトルが有る領域の画像情報を用いて振れ補正を行う。
【0020】
図1において、加速度検出部16から出力された加速度信号は、不図示の積分器により1階積分されて速度信号に変換されたのち、複数のバンドパスフィルタ33b,34b,35bで帯域分けされる。バンドパスフィルタ(BPF)33b,34b,35bは、本実施形態では一例として、それぞれ0.5Hz、1Hz、3Hzの周波数成分を抽出する特性を有している。BPF33b,34b,35bにより帯域が分けられた速度信号は、それぞれ相関検出部36a,36b,36cに入力される。
【0021】
一方、動きベクトル検出部32は、撮像素子14の画像信号から、
図2に示す例では動きベクトル21~25を求め、更に、各動きベクトルの時間変化を示す速度ベクトル21’~25’を求める。求められた速度ベクトルは、複数のBPF33a,34a,35aで帯域分けされる。BPF33a,34a,35aはBPF33b,34b,35bにそれぞれ対応しており、本実施形態では一例として、同じように0.5Hz、1Hz、3Hzの周波数成分を抽出する特性を有している。各BPF33a,34a,35aで処理された速度ベクトルは、それぞれ相関検出部36a,36b,36cに入力される。
【0022】
なお、加速度検出部16は、撮像面上で直交2軸の検出方向(x方向、y方向)の検出を行う。この方向と整合させるように、各速度ベクトルも
図4に示す様にx方向及びy方向に分解する。例えば、動きベクトル21から求められた速度ベクトル21’は、矢印21x、21yのようにx成分とy成分に分解される。そして、速度ベクトルと速度信号は、x方向とy方向それぞれについてBPF33a,34a,35a及びBPF33b,34b,35bにより別々に処理された後、相関検出部36a,36b,36cに入力される。
【0023】
図5は、x方向とy方向それぞれについて帯域が分けられた速度ベクトルと速度信号の概念を示した例である。
図5に示す様に、y方向の速度ベクトルの波形51と速度信号の波形52から0.5Hz成分のみを抽出した波形51a,52aの相関は高くない。これに対し、1.0Hz成分及び3.0Hz成分のみを抽出した波形51b,52b及び51c,52cは、いずれも高い相関を示している。その為、y方向においては1.0Hz、3.0Hzにおいて、速度ベクトルの信頼性が高いことになる。
【0024】
また、x方向の速度ベクトルの波形53と速度信号の波形54から0.5Hz成分のみを抽出した波形53a,54aの相関は比較的高く、1.0Hz成分のみを抽出した波形53b,54bは高い相関を示している。それに対して、3.0Hz成分のみを抽出した波形53c,54cは相関が高くない。その為、x方向においては0.5Hz、1.0Hzにおいて、速度ベクトルの信頼性が高いことになる。
【0025】
上記から、x方向及びy方向ともに相関の高い1.0Hzにおいて、速度ベクトルの信頼性が最も高いことになる。
【0026】
このように、速度信号と相関の高い周波数帯域を求める処理を、撮像画面内で異なる動きベクトルから求めた各速度ベクトルについて行い、各周波数成分の中で最も信頼性の高い相関値を、各速度ベクトルに対応する動きベクトルの代表相関値とする。
【0027】
図3は上述した処理を示しており、分配器31で画像信号を領域分けした後に動きベクトル検出部32で求められた動きベクトル21~25に対応する速度ベクトル21’~25’
をBPF33a,34a,35aで処理し、各周波数成分を抽出する。また、加速度検出部16からの速度信号をBPF33b,34b,35bで処理し、各周波数成分を抽出する。そして各速度ベクトルの各周波数成分における相関値を、相関検出部36a,36b,36cで求める。選択部37は、相関検出部36a,36b,36cより得られる相関値を比較して、各動きベクトル21から25から信頼性の高い動きベクトルを選択する。また代表相関値の値が近い場合などには、主被写体領域にある動きベクトルの信頼性を高くする。なお、主被写体領域を判別する主被写体判別方法には、例えば画面中央により近い被写体領域を主被写体領域とする方法や、画面内で至近のものを主被写体領域とする方法、オートフォーカス機能のピント合わせ領域を主被写体領域とする方法などがある。
【0028】
図1に戻り、選択部37は動きベクトル検出部32から出力される各領域における動きベクトルの中から、最も信頼性の高い動きベクトルを選択し、駆動部15は、その動きベクトル信号に基づいて防振レンズ13を駆動して振れ補正を行う。
【0029】
一般的に、動きベクトルは撮像素子14を有するカメラ本体11aで求め、振れ補正は交換レンズの種類に対応した適切な振れ補正方法を用いて行うことで、高精度な振れ補正を行うことができる。本実施形態では、カメラ本体11aで動きベクトルを求め、交換レンズ11bの防振レンズ13を駆動して振れ補正を行う構成として説明を行ったが、本発明はこれに限られるものでは無い。例えば、カメラ本体11a内の撮像素子14を光軸10と直交する平面内で駆動することにより振れ補正を行う構成としても良いし、画像の切り出し位置をフレームごとに調整する電子防振により振れ補正を行う構成としても良い。
【0030】
図6は、第1の実施形態における動きベクトル選択処理を示すフローチャートである。この処理は、カメラ本体11aにおいて画像取り込み開始とともにスタートする。また、構図に変化が生じた場合には、再スタートされる。
【0031】
S101では、撮像画面を複数の領域に分け、各領域毎に動きベクトルを検出する。
図7は、複数の領域それぞれについて動きベクトルを求めた例を示す。そして、得られた複数の動きベクトルを、その方向と量ごとにグループ分けし、分けられたグループの面積の大きい順に、例えば5つのグループを選択する。そして、選択された各グループの代表的な動きベクトルを求める。一例として、同一グループに分けられた領域の動きベクトルを平均したものを代表的な動きベクトルとする。この作業は、例えば、
図3における分配器31が行う。
【0032】
S102では、選択されたグループの動きベクトルから得られた速度ベクトルの軌跡を更新してゆく。これにより
図5に示す波形51,53が得られる。
【0033】
S103では、選択されたグループの速度ベクトルのx方向、y方向それぞれについて、各周波数成分を抽出する。これにより
図5の波形51a~51c及び波形53a~53cが得られる。このとき、同時に速度信号からも各周波数成分を抽出し、
図5の波形52a~52c及び54a~54cを求める。
【0034】
S104では、S103で求めた速度ベクトルと速度信号を、周波数成分毎にそれぞれx方向、y方向について比較し、相関値を求める。
【0035】
S105では、S104で求められたx方向及びy方向それぞれについて各周波数成分の相関値を用いて、各グループの代表相関値を求める。ここで
図5を用いて説明した様に、x方向及びy方向とも相関が高い周波数帯域における相関値を、そのグループの代表相関値とする。
【0036】
S106では、S101で選択されたすべてのグループの代表相関値が得られるまで、S103からS105を循環する。
【0037】
S107では、各グループの代表相関値の中から、最も高い代表相関値を有するグループを選択する。そして選択されたグループの動きベクトルを用いて、振れ補正を行う。例えば、
図2においては、最も高い代表相関値を有する被写体27のグループの動きベクトル21を用いて振れ補正を行う。
【0038】
上記の通り本第1の実施形態によれば、動きベクトルを複数の異なる周波数成分に分けて速度信号との相関を求め、その相関値を利用して、動きベクトルを選択することにより、精度の高い振れ補正を行うことができる。
【0039】
<変形例>
上述した第1の実施形態における
図6のS104で各周波数帯域の相関値を算出する際に、各周波数帯域の速度ベクトルの波形に重み付け係数をかけて、重み付けした相関値を求めても良い。
【0040】
この場合、まず、加速度検出部16の出力を各周波数成分に分離した波形に基づいて、周波数成分ごとの重み付け係数を計算する。重み付け係数は、加速度検出部16の出力を各周波数成分に分離した波形の最大値と最小値の差、もしくはエネルギーを演算することによって求める。そして、求めた重み付け係数を、各速度ベクトルの対応する周波数帯域の相関値にかけ合わせ、得られた周波数帯域毎の相関値の内、各周波数帯域の中で最も信頼性の高い相関値を、各速度ベクトルに対応する動きベクトルの代表相関値とする。
【0041】
このように相関値を重み付けすることで、振れ成分として支配的な周波数帯域を考慮に入れて動きベクトルを選択することができるため、より精度の高い振れ補正を行うことが可能になる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0043】
静止画の撮影では、露光中に撮像信号が得られない為に、露光中の動きベクトルを検出できないという問題がある。第2の実施形態では、静止画露光中も高精度な振れ補正を行うことを目的とし、角速度検出部を更に設けたところが第1の実施形態と異なる。具体的には、静止画撮影前の動きベクトルを用いて角速度検出部から得られる信号の補正値を求め、その補正値を用いて補正された信号を用いて、静止画露光中の振れ補正を行う。
【0044】
図8は、第2の実施形態における、カメラ本体11aと、カメラ本体11aに装着して用いられる交換レンズ11bとを有する撮像システム11における防振システムの制御構成を示すブロック図である。なお、
図1と同様の構成には同じ参照番号を付して説明を省略する。
図1に示す構成と比較して、カメラ本体11aにはジャイロセンサなどの角速度検出部71が設けられ、カメラCPU12aにおける制御が異なっている。なお、角速度検出部71は、直交3軸の検出方向(x軸まわり、y軸まわり、z軸まわり)の検出を行っている。そのため、以降の処理では、x軸まわり成分とy軸まわり成分、z軸まわり成分それぞれについて処理が行われる。
【0045】
角速度検出部71から出力される角速度信号は、角速度を像面速度に変換する変換部75を介して、バンドパスフィルタ(BPF)72に入力する。変換部75は、角速度信号を撮影光学系の敏感度と撮影光学系の焦点距離を用いて、撮像素子14上での動きの速さを示す像面速度信号に換算する。
【0046】
BPF72の抽出周波数は、選択部37が選択した最も高い信頼性を有する周波数帯域に設定される。例えば、図
5に示す例では、最も高い信頼性を示していたのは波形51b,53bの1Hzであった。この場合、変換部75から出力された像面速度信号における1Hz成分をBPF72により抽出する。これにより
図9の下部のグラフに示す波形81を得る。なお、
図9の上部のグラフは、
図5における周波数1Hzの波形51bのグラフであり、波形81と波形51bを比較する。
【0047】
変換部75から出力された像面速度信号と、速度ベクトルはこの周波数帯域で高い相関を示すが、シフトブレの影響により振幅が異なる。そこで比較部73は、速度ベクトルの1Hz成分の波形51bにおける振幅82を例えば2秒間求め、同様にして求めた波形81の振幅83と比較して、その比を補正値とする。補正部74は、このようにして求めた補正値を用いて、像面速度信号を補正する。
【0048】
スイッチ76は、動きベクトルが取得できる場合には、選択部37により選択された動きベクトルを駆動部15に送り、静止画露光中の様に動きベクトルが取得できない場合には、補正部74により補正された像面速度信号を駆動部15に送る。
【0049】
駆動部15は、像面速度信号を補正した結果に基づいて防振レンズ13を駆動して、振れ補正を行う。
【0050】
このように、動きベクトルを使って予め求めた補正値を利用することで、動きベクトルの検出が行えない静止画露光中も高精度に振れ補正することが可能になる。
【0051】
図10は、第2の実施形態における振れ補正処理を示すフローチャートであり、この処理はカメラの主電源オン、或いはレリーズボタン17の半押しでスタートする。
【0052】
S201では、第1の実施形態で説明した様にして選択された動きベクトルを用いて、振れ補正を行う。この時の振れ補正は、防振レンズ13や撮像素子14による光学防振、或いは画像切り出しによる電子防振などで行われる。
【0053】
S202では、S201で選択されている速度ベクトルにおける最も高い信頼性を示す周波数帯域を設定周波数とし、像面速度信号からこの周波数成分の信号を抽出する。
【0054】
S203では、S202で抽出された像面速度信号(
図9の波形81)と、選択された速度ベクトルの、最も高い信頼性を示す周波数成分(
図9の波形51b)とを比較し、その比を補正値とする。なお、この処理で補正値を取得する度に補正値を更新する。
【0055】
S204では、静止画露光開始の指示であるレリーズボタン17の全押し(SW2 ON)がされたかどうかを判断し、SW2がONとなるまで、S201、S202、S203の処理を循環して待機する。そして、SW2がONとなると、S205に進む。
【0056】
S205では、S203で更新された補正値で、変換部75からの像面速度信号を補正し、その値に基づいて、駆動部15は防振レンズ13を駆動して振れ補正を開始する。
【0057】
S206では、静止画露光が完了するまで、S205、S206を循環して待機し、静止画露光が完了すると、S201に戻る。
【0058】
上記の通り第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果に加えて、静止画撮影の様に動きベクトルが取得できない状態でも、高精度な振れ補正を行うことができる。
【0059】
また、第1の実施形態では、選択された動きベクトルの全帯域信号(
図4の波形51)を用いて振れ補正を行っていた。これに対し、第2の実施形態では望ましい周波数帯域で抽出された動きベクトル(
図4の波形51b)と同じ周波数帯域の角速度信号を用いて補正値を求めるため、安定した補正値を得ることができる。
【0060】
<他の実施形態>
なお、本発明は、複数の機器から構成されるシステム(例えば、カメラヘッド、防振制御装置、情報処理装置)に適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、撮像装置)に適用してもよい。
【0061】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
11:撮像システム、11a:カメラ本体、11b:交換レンズ、12a:カメラCPU、12b:レンズCPU、13:防振レンズ、14:撮像素子、15:駆動部、16:加速度検出部、32:動きベクトル検出部、33a,34a,35a,33b,34b,35b:バンドパスフィルタ(BPF)、36a,36b,36c,36a,36b,36c,72:相関検出部、37:選択部、71:角速度検出部、73:比較部、74:補正部、75:変換部、76:スイッチ