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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/531 20230101AFI20231122BHJP
   H04N 25/53 20230101ALI20231122BHJP
   H04N 25/76 20230101ALI20231122BHJP
   H04N 25/77 20230101ALI20231122BHJP
   H04N 25/778 20230101ALI20231122BHJP
   H04N 25/779 20230101ALI20231122BHJP
【FI】
H04N25/531
H04N25/53
H04N25/76
H04N25/77
H04N25/778
H04N25/779
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019155804
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021034963
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】鴫谷 美子
(72)【発明者】
【氏名】識名 紀之
(72)【発明者】
【氏名】竹中 真太郎
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-094142(JP,A)
【文献】特開2009-225341(JP,A)
【文献】特開平10-155132(JP,A)
【文献】特開2015-222885(JP,A)
【文献】特開2006-041867(JP,A)
【文献】特開2018-137628(JP,A)
【文献】特開2009-188732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 - 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 -23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 -25/61
H04N 25/615-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行に渡って配された複数の画素を備える撮像装置であって、
前記複数の画素の各々が、光電変換により電荷を生成して蓄積する光電変換部と、前記光電変換部から電荷が転送される検出部と、前記検出部に接続され前記検出部の電位に応じた画素信号を出力する増幅部と、前記光電変換部に蓄積された電荷をリセットするリセット部と、を含み、
前記画素の前記光電変換部のリセットを前記行ごとに解除することにより前記光電変換部における電荷の蓄積を開始するシャッタ走査と、前記増幅部から前記画素信号を前記行ごとに信号線へ出力する読み出し走査と、を行うように前記複数の画素を制御する走査部と、
前記シャッタ走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第1同期信号と、前記読み出し走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第2同期信号とを前記走査部に出力する制御部と、を有し、
前記走査部は、
前記第1同期信号及び前記第2同期信号に基づく前記複数の画素の制御において、前記複数の行の一部又は全部の行について行われる前記読み出し走査の期間の長さが互いに異なる第1駆動方式と第2駆動方式とを切り替えるように構成されており、
前記第1駆動方式から前記第2駆動方式に駆動方式を切り替える際に、前記第1駆動方式による前記読み出し走査が終了する前に前記第2駆動方式による前記シャッタ走査を開始するように構成されている
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1同期信号と前記第2同期信号は、互いに異なる周期の制御パルスを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記走査部は、前記シャッタ走査において、前記第1同期信号に含まれる制御パルスの周期とは異なる周期で各行の画素の駆動を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2同期信号に含まれる制御パルスの周期は、駆動方式に応じて変化する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2同期信号に含まれる制御パルスの周期は、前記第1同期信号に含まれる制御パルスの周期のn倍(nは1以上の整数)である
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記走査部は、前記シャッタ走査において、前記第1同期信号に含まれる制御パルスの周期のn倍の周期で各行の画素の駆動を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記走査部は、前記シャッタ走査において、n個の制御パルスが入力されるごとに1行の画素の駆動を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記走査部は、前記読み出し走査において、前記第2同期信号に含まれる制御パルスの周期と同一の周期で各行の画素の駆動を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記制御部に入力された第3同期信号に含まれる制御パルスに基づいて前記第1同期信号及び前記第2同期信号の制御パルスを生成する
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1同期信号に含まれる制御パルスの周期は、前記第3同期信号に含まれる制御パルスの周期と同一である
ことを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第2同期信号に含まれる制御パルスの周期は、前記第3同期信号に含まれる制御パルスの周期のn倍(nは1以上の整数)である
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記第1駆動方式による前記読み出し走査の開始から前記第2駆動方式による前記シャッタ走査の開始までの期間の長さをINH、前記第1駆動方式による前記読み出し走査の期間の長さをTR6、前記第2駆動方式による前記読み出し走査の期間の長さをTR7、前記第1同期信号に含まれる制御パルスの周期をHD12、前記第1駆動方式において前記第2同期信号に含まれる制御パルスの周期をHD13、前記第2駆動方式において前記第2同期信号に含まれる制御パルスの周期をHD14とするとき、
HD13>HD14である場合において、INH≧TR6-TR7+HD12を満たす
ことを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
HD13>HD14である場合において、INH=TR6-TR7+HD12を満たす
ことを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
HD13≦HD14である場合において、INH≧HD13を満たす
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記走査部は、前記第1駆動方式から前記第2駆動方式に駆動方式を切り替える際に、前記第1駆動方式による前記シャッタ走査が終了する前に前記第2駆動方式による前記シャッタ走査を開始するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記シャッタ走査の条件を同時刻に複数個設定できるように構成されている
ことを特徴とする請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記複数の画素の各々は、第1光電変換部及び第2光電変換部を含み、
前記第1駆動方式は、前記第1光電変換部及び前記第2光電変換部の一方のみに基づく画素信号と、前記第1光電変換部及び前記第2光電変換部の両方に基づく画素信号とを出力する方式であり、
前記第2駆動方式は、前記第1光電変換部及び前記第2光電変換部の一方のみに基づく画素信号を出力せず、前記第1光電変換部及び前記第2光電変換部の両方に基づく画素信号を出力する方式である
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記複数の行のうちの一部又は全部の行について同時に前記読み出し走査を行う期間の長さが、前記第1駆動方式と前記第2駆動方式とで互いに異なる
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記複数の行のうちの一部又は全部の行の読み出し動作が行単位で順次行われる読み出し走査の長さが、前記第1駆動方式と前記第2駆動方式とで互いに異なる
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記第1同期信号は第1周期の制御パルスを含み、前記第1同期信号の前記制御パルスの間隔は1行のシャッタ動作の期間の長さを規定し、
前記第2同期信号は前記第1周期とは異なる第2周期の制御パルスを含み、第2同期信号の前記制御パルスの間隔は1行の読み出し動作の期間の長さを規定し、
1行の前記読み出し動作の期間の長さが、前記第1駆動方式と前記第2駆動方式とで互いに異なる
ことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記画素から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の撮像装置と、
機械装置と、
前記撮像装置からの信号に基づく情報に基づいて前記機械装置を制御する制御装置と、
を有することを特徴とする機器。
【請求項23】
複数の行に渡って配された複数の画素を備える撮像装置であって、
前記複数の画素の各々が、光電変換により電荷を生成して蓄積する光電変換部と、前記光電変換部から電荷が転送される検出部と、前記検出部に接続され前記検出部の電位に応じた画素信号を出力する増幅部と、前記光電変換部に蓄積された電荷をリセットするリセット部と、を含み、
前記画素の前記光電変換部のリセットを前記行ごとに解除することにより前記光電変換部における電荷の蓄積を開始するシャッタ走査と、前記増幅部から前記画素信号を前記行ごとに信号線へ出力する読み出し走査と、を行うように前記複数の画素を制御する走査部と、
前記シャッタ走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第1同期信号と、前記読み出し走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第2同期信号とを前記走査部に出力する制御部と、を有する撮像装置の駆動方法であって、
前記第1同期信号及び前記第2同期信号に基づいて、第1駆動方式により前記複数の画素を制御するステップと、
前記第1同期信号及び前記第2同期信号に基づいて、前記複数の行の一部又は全部の行について行われる前記読み出し走査の期間の長さが前記第1駆動方式とは異なる第2駆動方式により前記複数の画素を制御するステップと、
を有し、
前記第1駆動方式による前記読み出し走査が終了する前に前記第2駆動方式による前記シャッタ走査が開始する
ことを特徴とする撮像装置の駆動方法。
【請求項24】
前記複数の行について前記読み出し走査を行う期間の長さが、前記第1駆動方式と前記第2駆動方式とで互いに異なる
ことを特徴とする請求項23に記載の駆動方法。
【請求項25】
前記複数の行の読み出し動作が行単位で順次行われる読み出し走査の長さが、前記第1駆動方式と前記第2駆動方式とで互いに異なる
ことを特徴とする請求項23に記載の駆動方法。
【請求項26】
前記第1同期信号は第1周期の制御パルスを含み、前記第1同期信号の前記制御パルスの間隔は1行のシャッタ動作の期間の長さを規定し、
前記第2同期信号は前記第1周期とは異なる第2周期の制御パルスを含み、第2同期信号の前記制御パルスの間隔は1行の読み出し動作の期間の長さを規定し、
1行の前記読み出し動作の期間の長さが、前記第1駆動方式と前記第2駆動方式とで互いに異なる
ことを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1項に記載の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサ等の撮像装置において、動画撮影等のために複数の画像を連続的に取得するものがある。このような撮像装置には、複数の画像を連続的に取得している最中にシャッタ動作、読み出し動作等に関連する駆動方式を変更することができるものもある。
【0003】
特許文献1には、フレーム単位で駆動方式を切り替えることができる撮像装置が開示されている。特許文献1の撮像装置は、駆動方式を第1駆動方式から第2駆動方式に切り替える際に、読み出し動作の駆動方式を1フレームに相当する期間だけ第1駆動方式に維持したままシャッタ動作の駆動方式を第2駆動方式に切り替える。更に、特許文献1の撮像装置は、駆動方式の切り替え時に走査速度が変わらないように、駆動方式によらず同じ走査速度で読み出しの走査を行う。これにより、駆動方式の切り替え時に各行の光電変換素子における電荷の蓄積時間を一定に保つことができ、無効データが出力されないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-104241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている駆動方式の切り替え手法では、読み出し動作の周期が駆動方式によらず一定であるため、駆動方式間で読み出し時間が異なる場合が考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、複数の画像を連続的に取得する際に読み出し時間が異なる駆動方式への切り替えが可能な撮像装置及び撮像装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、複数の行に渡って配された複数の画素を備える撮像装置であって、前記複数の画素の各々が、光電変換により電荷を生成して蓄積する光電変換部と、前記光電変換部から電荷が転送される検出部と、前記検出部に接続され前記検出部の電位に応じた画素信号を出力する増幅部と、前記光電変換部に蓄積された電荷をリセットするリセット部と、を含み、前記画素の前記光電変換部のリセットを前記行ごとに解除することにより前記光電変換部における電荷の蓄積を開始するシャッタ走査と、前記増幅部から前記画素信号を前記行ごとに信号線へ出力する読み出し走査と、を行うように前記複数の画素を制御する走査部と、前記シャッタ走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第1同期信号と、前記読み出し走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第2同期信号とを前記走査部に出力する制御部と、を有し、前記走査部は、前記第1同期信号及び前記第2同期信号に基づく前記複数の画素の制御において、前記複数の行の一部又は全部の行について行われる前記読み出し走査の期間の長さが互いに異なる第1駆動方式と第2駆動方式とを切り替えるように構成されており、前記第1駆動方式から前記第2駆動方式に駆動方式を切り替える際に、前記第1駆動方式による前記読み出し走査が終了する前に前記第2駆動方式による前記シャッタ走査を開始するように構成されていることを特徴とする撮像装置が提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によれば、複数の行に渡って配された複数の画素を備える撮像装置であって、前記複数の画素の各々が、光電変換により電荷を生成して蓄積する光電変換部と、前記光電変換部から電荷が転送される検出部と、前記検出部に接続され前記検出部の電位に応じた画素信号を出力する増幅部と、前記光電変換部に蓄積された電荷をリセットするリセット部と、を含み、前記画素の前記光電変換部のリセットを前記行ごとに解除することにより前記光電変換部における電荷の蓄積を開始するシャッタ走査と、前記増幅部から前記画素信号を前記行ごとに信号線へ出力する読み出し走査と、を行うように前記複数の画素を制御する走査部と、前記シャッタ走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第1同期信号と、前記読み出し走査における各行の画素の駆動タイミングを決定する第2同期信号とを前記走査部に出力する制御部と、を有する撮像装置の駆動方法であって、前記第1同期信号及び前記第2同期信号に基づいて、第1駆動方式により前記複数の画素を制御するステップと、前記第1同期信号及び前記第2同期信号に基づいて、前記複数の行の一部又は全部の行について行われる前記読み出し走査の期間の長さが前記第1駆動方式とは異なる第2駆動方式により前記複数の画素を制御するステップと、を有し、前記第1駆動方式による前記読み出し走査が終了する前に前記第2駆動方式による前記シャッタ走査が開始することを特徴とする撮像装置の駆動方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の画像を連続的に取得する際に読み出し時間が異なる駆動方式への切り替えが可能な撮像装置及び撮像装置の駆動方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る撮像装置における画素の構成例を示す回路図である。
図3】第1実施形態に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図4】第1比較例に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図5】第2比較例に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図6】第3比較例に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図7】第1実施形態に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図8】第1実施形態に係る制御部及び垂直走査部の構成例を示すブロック図である。
図9】第2実施形態に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図10】第3実施形態に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図11】第4実施形態に係る撮像装置における画素の構成例を示す回路図である。
図12】第4実施形態に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図13】第4実施形態に係る撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図14】第4実施形態に係る撮像装置の読み出し動作に要する時間を模式的に示す図である。
図15】第5実施形態に係る撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
図16】第6実施形態に係る撮像システム及び機器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る撮像装置100の概略構成を示すブロック図である。撮像装置100は、画素部10、垂直走査部30、列回路40、水平走査部50、信号出力部60、制御部70及びCPU80を有している。
【0012】
画素部10には、複数の行及び複数の列に渡って配された複数の画素Pが配されている。図1には、(n+1)行×(m+1)列の2次元状に配された画素P(0,0)から画素P(n,m)が示されている。ここで、画素P(X,Y)の表記においては、Xが行番号を表しており、Yが列番号を表している。先頭行の行番号は0行目であり、先頭列の列番号は0列目であるものとする。なお、本明細書では、画素部10内の特定の位置に配された画素Pを示すときは「画素P(n,m)」のように行番号及び列番号とともに表記し、画素部10内の位置を特定しない場合には単に「画素P」と表記するものとする。
【0013】
画素部10の各行には、第1の方向(図1においてX方向)に延在して、制御線20が配されている。制御線20は、第1の方向に並ぶ画素Pにそれぞれ接続され、これら画素Pに共通の信号線をなしている。本明細書では、制御線20が延在している第1の方向を行方向と表記することがある。
【0014】
また、画素部10の各列には、第1の方向と交差する第2の方向(図1においてY方向)に延在して、出力線22が配されている。出力線22は、第2の方向に並ぶ画素Pにそれぞれ接続され、これら画素Pに共通の信号線をなしている。本明細書では、出力線22の延在する第2の方向を、列方向と表記することがある。
【0015】
各行の制御線20は、垂直走査部30に接続されている。また、各列の出力線22は、列回路40に接続されている。列回路40には、水平走査部50と、信号出力部60とが接続されている。垂直走査部30、列回路40、水平走査部50には、制御部70が接続されている。制御部70には、CPU80が接続されている。
【0016】
垂直走査部30は、画素P内の読み出し回路を駆動するための制御信号を、制御線20を介して画素Pに供給する回路部である。垂直走査部30は、制御部70からの信号を受けて動作し、画素部10のシャッタ走査と読み出し走査とを行う。なお、シャッタ走査とは、画素部10の一部又は全部の行の画素Pに対して、光電変換素子のリセット及びリセットの解除を行単位で順次行い、露光(電荷の蓄積)を開始させる動作をいう。読み出し走査とは、画素部10の一部又は全部の行の画素Pに対して、光電変換素子に蓄積された電荷に基づく画素信号を行単位で順次出力させる動作をいう。
【0017】
列回路40は、増幅回路、アナログ・デジタル変換(AD変換)回路、メモリ等を備える。列回路40は、画素Pから出力される画素信号を増幅し、AD変換を行い、デジタル画素信号としてメモリに保持する。
【0018】
水平走査部50は、制御部70からの信号を受けて動作し、列回路40の各列のメモリに順次、制御信号を出力する。水平走査部50から制御信号を受信した列回路40は、対応する列のメモリに保持されたデジタル画素信号を信号出力部60へと出力する。
【0019】
信号出力部60は、デジタル信号処理部、パラレル・シリアル変換回路、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)回路等の外部インターフェース等を備える。信号出力部60は、列回路40から受信したデジタル画素信号に対してデジタル信号処理を実施し、シリアルデータとして撮像装置100の外部に出力する。
【0020】
制御部70は、垂直走査部30、列回路40、水平走査部50等に、これらの動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給するための回路部である。これら制御信号の少なくとも一部は、撮像装置100の外部から供給されてもよい。
【0021】
CPU80は、制御部70を制御する。制御部70は、CPU80から同期信号などの制御信号や動作モードなどの設定信号を受けて動作する。CPU80は、撮像装置100が搭載される撮像システム内、すなわち撮像装置100の外部に設けられていてもよい。
【0022】
なお、列回路40は、必ずしもAD変換の機能を備える必要はなく、例えば、撮像装置100の外部でAD変換を行うようにしてもよい。この場合、水平走査部50及び信号出力部60の構成は、アナログ信号の処理に適合するように適宜変更される。
【0023】
図2は、本実施形態に係る画素Pの構成例を示す回路図である。図2に示す回路は、ローリングシャッタ駆動を適用する撮像装置に用いられる典型的な画素構成である。画素部10を構成する複数の画素Pの各々は、光電変換部PDと、転送トランジスタM1と、FDリセットトランジスタM2と、増幅トランジスタM3と、選択トランジスタM4と、を含む。なお、図2には一例として、第n行、第m列に配置された画素P(n,m)を示しているが、他の画素Pも同様である。
【0024】
光電変換部PDは、光電変換素子、例えばフォトダイオードである。光電変換部PDを構成するフォトダイオードのアノードは接地ノードに接続され、カソードは転送トランジスタM1のソースに接続されている。転送トランジスタM1のドレインは、FDリセットトランジスタM2のソース及び増幅トランジスタM3のゲートに接続されている。転送トランジスタM1のドレイン、FDリセットトランジスタM2のソース及び増幅トランジスタM3のゲートの接続ノードは、いわゆるフローティングディフュージョンFDである。フローティングディフュージョンFDは、容量成分を含み、電荷保持部として機能するとともに、この容量成分からなる電荷電圧変換部を構成する。FDリセットトランジスタM2のドレイン及び増幅トランジスタM3のドレインは、電源ノード(電圧VCC)に接続されている。増幅トランジスタM3のソースは、選択トランジスタM4のドレインに接続されている。選択トランジスタM4のソースは、出力線22に接続されている。出力線22には、図示しない電流源が接続されている。なお、トランジスタのソースとドレインの呼称は、トランジスタの導電型又は着目する機能等に応じて異なることがあり、上述のソースとドレインとは逆の名称で呼ばれることもある。
【0025】
図2に示す回路構成の場合、各行の制御線20は、転送ゲート信号線、FDリセット信号線及び選択信号線を含む。
【0026】
転送ゲート信号線は、対応する行に属する画素Pの転送トランジスタM1のゲートに接続されており、垂直走査部30から供給される制御信号PTXを転送トランジスタM1のゲートに供給する。例えば、画素P(n,m)には、第n行の転送ゲート信号線を介して制御信号PTX(n)が供給される。
【0027】
FDリセット信号線は、対応する行に属する画素PのFDリセットトランジスタM2のゲートに接続されており、垂直走査部30から供給される制御信号PRESをFDリセットトランジスタM2のゲートに供給する。例えば、画素P(n,m)には、第n行のFDリセット信号線を介して制御信号PRES(n)が供給される。
【0028】
選択信号線は、対応する行に属する画素Pの選択トランジスタM4のゲートに接続されており、垂直走査部30から供給される制御信号PSELを選択トランジスタM4のゲートに供給する。例えば、画素P(n,m)には、第n行の選択信号線を介して制御信号PSEL(n)が供給される。
【0029】
画素Pの各トランジスタがNチャネルトランジスタで構成される場合、垂直走査部30からハイレベルの制御信号が供給されると対応するトランジスタがオンとなり、垂直走査部30からローレベルの制御信号が供給されると対応するトランジスタがオフとなる。ここでは、ハイレベルが論理値「1」に対応し、ローレベルが論理値「0」に対応するものとする。なお、画素Pの各トランジスタは、Pチャネルトランジスタで構成してもよい。画素Pの各トランジスタをPチャネルトランジスタで構成する場合、各トランジスタを駆動する制御信号の信号レベルはNチャネルトランジスタの場合とは逆になる。
【0030】
被写体の光学像が画素部10に入射すると、各画素Pの光電変換部PDは、入射光をその光量に応じた量の電荷に変換(光電変換)するとともに、生じた電荷を蓄積する。転送トランジスタM1は、オンになることで光電変換部PDに蓄積された電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。
【0031】
フローティングディフュージョンFDは、光電変換部PDから転送された電荷を保持するとともに、その容量成分による電荷電圧変換によって、光電変換部PDから転送された電荷の量に応じた電圧を示す、電荷を検出するための検出部である。増幅トランジスタM3は、ドレインに電圧VCCが供給され、ソースに選択トランジスタM4を介してバイアス電流が供給される構成となっている。増幅トランジスタM3は、フローティングディフュージョンFDに接続されたゲートを入力ノードとする増幅部を構成する。このようにして、増幅トランジスタM3はソースフォロワ回路を構成する。これにより増幅トランジスタM3は、フローティングディフュージョンFDの電圧に基づく画素信号(第m列の画素Pにおいては画素信号Vout(m))を、選択トランジスタM4を介して出力線22に出力する。
【0032】
FDリセットトランジスタM2は、オンになることでフローティングディフュージョンFDを電圧VCCに応じた電圧にリセットする。また、FDリセットトランジスタM2と転送トランジスタM1とが同時にオンになることで、光電変換部PDを電圧VCCに応じた電圧にリセットすることができる。FDリセットトランジスタM2と転送トランジスタM1とは、光電変換部PDをリセットするリセット部を構成する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る撮像装置100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図3は、画素部10の各行におけるシャッタ動作及び読み出し動作の概略を示している。なお、図3には、第n行の動作のみを例示している。
【0034】
シャッタ動作では、制御信号PRES(n)、PTX(n)をハイレベルに制御し、転送トランジスタM1及びFDリセットトランジスタM2を同時にオンにする。これにより、光電変換部PDを転送トランジスタM1及びFDリセットトランジスタM2を介して電源ノードに接続し、光電変換部PDを電圧VCCに応じた電位にリセットする。この後に、制御信号PTX(n)をローレベルに制御して光電変換部PDのリセットを解除するタイミングが、光電変換部PDにおける電荷の蓄積期間の開始、すなわち露光開始の時刻となる。
【0035】
読み出し動作では、制御信号PRES(n)をローレベルに、制御信号PSEL(n)、PTX(n)をハイレベルに制御し、FDリセットトランジスタM2がオフの状態で、転送トランジスタM1及び選択トランジスタM4を同時にオンにする。これにより、光電変換部PDに蓄積されている電荷がフローティングディフュージョンFDへと転送される。この後に、制御信号PTX(n)をローレベルに制御してフローティングディフュージョンFDへの電荷の転送を終了するタイミングが、光電変換部PDにおける電荷の蓄積期間の終了、すなわち露光終了の時刻となる。
【0036】
光電変換部PDからフローティングディフュージョンFDへと電荷が転送されることにより、フローティングディフュージョンFDは転送された電荷の量に応じた電位となる。これにより、増幅トランジスタM3は、フローティングディフュージョンFDの電位に応じた画素信号を、選択トランジスタM4を介して出力線22に出力する。このように、読み出し動作は、光電変換部PDで生じた電荷をフローティングディフュージョンFDへ転送する電荷転送を含み、光電変換部PDで生じた電荷に基づく画素信号の読み出しを行う動作である。このように、画素部10の行を順次選択して上述の1行の画素駆動を行うことにより、ローリングシャッタ駆動によるシャッタ走査及び読み出し走査が行われる。
【0037】
n行目の読み出し走査の期間の開始時刻は、出力線22へのn行目の信号の出力が開始する時刻であるものとする。また、読み出し走査の期間の終了時刻は、出力線22へのn行目の信号の出力が終了する時刻であるものとする。n行目の読み出し走査において出力線22への信号の出力が複数回行われる場合もあり得る。この場合、読み出し走査の期間の開始時刻は、出力線22へのn行目の信号の出力が最初に開始する時刻であるものとする。また、読み出し走査の期間の終了時刻は、出力線22へのn行目の信号の出力が最後に終了する時刻であるものとする。
【0038】
画素Pが選択トランジスタM4を有する回路構成である場合、図3に示されているように、1フレームの読み出しにおけるn行目の読み出し走査の期間の開始時刻は、制御信号PSEL(n)が立ち上がる時刻であるものとする。また、n行目の読み出し走査の期間の終了時刻は、制御信号PSEL(n)が立ち下がる時刻であるものとする。すなわち、n行目の読み出し走査の期間の長さは、上述の開始時刻から終了時刻までの時間である。1行の読み出し走査において、制御信号PSEL(n)の立ち上がり及び立ち下がりが複数回行われる場合がある。このような場合には、n行目の読み出し走査の期間の開始時刻は、制御信号PSEL(n)が最初に立ち上がる時刻であるものとし、n行目の読み出し走査の期間の終了時刻は、制御信号PSEL(n)が最後に立ち下がる時刻であるものとする。
【0039】
画素Pが選択トランジスタM4を有しない回路構成である場合、すなわち、図2において増幅トランジスタM3のソースが出力線22に直接接続されている場合には、制御信号PSEL(n)は用いられない。このような場合には、出力線22へのn行目の信号の出力の開始と終了は、増幅トランジスタM3のドレインの電位の制御、あるいは、増幅トランジスタM3のゲートの電位の制御によって、増幅トランジスタM3をON/OFFするタイミングで定義される。
【0040】
次に、図4図5及び図6を参照して、第1比較例、第2比較例及び第3比較例に係る撮像装置100の駆動方法をそれぞれ説明し、その後、図7を参照して本実施形態に係る撮像装置100の駆動方法を説明する。ここで、第1乃至第3比較例及び本実施形態の撮像装置100は、いずれも図1から図3に示されているような構成を有する。すなわち、第1比較例、第2比較例、第3比較例及び本実施形態の間の相違点は、撮像装置100の駆動方法である。なお、これらの比較例及び実施形態の説明において、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0041】
まず、図4に示す第1比較例に係る撮像装置100の駆動方法を説明する。図4には、水平同期信号が入力されるごとに1行分のデータの読み出しが行われる駆動例が示されている。図4の上段には、垂直同期信号、水平同期信号、シャッタ走査開始信号及び読み出し走査開始信号のタイミングが示されている。
【0042】
シャッタ走査開始信号及び読み出し走査開始信号は、制御部70から垂直走査部30へと所定のタイミングで出力される制御信号である。シャッタ走査開始信号は、垂直走査部30に対してシャッタ走査の開始を指示する信号である。読み出し走査開始信号は、垂直走査部30に対して読み出し走査の開始を指示する信号である。
【0043】
図4の下段には、上段に示した信号に対応した動作の概略が示されている。「シャッタ走査S1、S2」、「読み出し走査R1、R2」として示される矩形のブロック群の各々が、図3で説明した「シャッタ動作」、「読み出し動作」に対応する。すなわち、図4の下段は、各行のシャッタ動作が行ごとに順次行われる動作がシャッタ走査であり、各行の読み出し動作が行ごとに順次行われる動作が読み出し走査であることを、視覚的に表している。
【0044】
シャッタ走査は、垂直走査部30がシャッタ走査開始信号の制御パルスを受信することに応じて開始される。また、読み出し走査は、垂直走査部30が読み出し走査開始信号の制御パルスを受信することに応じて開始される。シャッタ走査の終了時刻は、読み出し走査の終了時刻よりも蓄積時間の分だけ早い時刻である。図4の駆動例では、水平同期信号の制御パルスの間隔(水平同期信号の周期)で規定される1水平期間の間に1行分の読み出し動作が行われ、次の1水平期間の間に次の行の読み出し動作が行われる。また、1水平期間の間に1行分のシャッタ動作が行われ、次の1水平期間の間に次の行のシャッタ動作が行われる。このように、シャッタ動作及び読み出し動作が行ごとに順次行われることにより、シャッタ走査及び読み出し走査が行われる。
【0045】
本比較例の駆動方法では、蓄積時間が異なる第1駆動方式及び第2駆動方式の切り替えが可能である。図4では、シャッタ走査S1及び読み出し走査R1が第1駆動方式に対応し、シャッタ走査S2及び読み出し走査R2が第2駆動方式に対応する。第1駆動方式と第2駆動方式とでは、シャッタ走査と読み出し走査の間隔が互いに異なっている。これにより、第1駆動方式の蓄積時間T1と第2駆動方式の蓄積時間T2とが互いに異なっている。なお、第1駆動方式から第2駆動方式への切り替えのタイミングは、典型的にはシャッタ走査S2の開始時刻であるが、読み出し走査R1の終了時刻から、シャッタ走査S2の開始時刻の間であってもよい。本例では、各行のシャッタ動作と読み出し動作の時間間隔が一定である。そのためすべての行において蓄積時間が一定となるため、有効なデータを得ることができる。
【0046】
次に、図5に示す第2比較例に係る撮像装置100の駆動方法を説明する。本比較例は、駆動方式の変更の際に水平同期信号の周期が変わる例である。水平同期信号の周期を変える場合の例としては、駆動方式の変更により1水平期間における読み出し時間が変わる場合が挙げられる。図5では、時刻t1に水平同期信号の周期をHD1からHD2に変更し、時刻t3に水平同期信号の周期をHD2からHD3に変更する例を示している。ここで、HD1、HD2及びHD3は、HD2>HD1及びHD2>HD3の関係を満たす。なお、時刻t2においては、水平同期信号の周期は変更されていない。
【0047】
読み出し走査R3は時刻t1から開始される。読み出し走査R3に対応するシャッタ走査S3は、蓄積時間がT3になるように時刻t1よりも前に開始される。シャッタ走査S3の途中で時刻t1になると、水平同期信号の周期がHD1からHD2に変化することにより、図5に示されているようにシャッタ走査S3の傾きが変化する。この傾きの変化に起因して、蓄積時間が全ての行で一定にはならない。そのため、読み出し走査R3により読み出されたデータは無効データとなる。
【0048】
読み出し走査R4は時刻t2から開始される。読み出し走査R4に対応するシャッタ走査S4は、蓄積時間がT4になるように時刻t2よりも前に開始される。シャッタ走査S4の途中で時刻t2になったとき、水平同期信号の周期はHD2のままで変化しない。シャッタ走査S4の傾きは一定であるため、蓄積時間が全ての行で一定となる。そのため、読み出し走査R4により読み出されたデータは有効データとなる。
【0049】
時刻t3から開始される読み出し走査R5とこれに対応するシャッタ走査S5とについては、シャッタ走査S3及び読み出し走査R3の場合と同様に、蓄積時間が全ての行で一定にはならない。そのため、読み出し走査R5により読み出されたデータも無効データとなる。第2比較例のように水平同期信号の周期をシャッタ走査の途中で変更すると、シャッタ走査の傾きが変化する。この傾きの変化に起因して、周期の変更直後に読み出されたデータは無効データとなることがある。
【0050】
次に、図6に示す第3比較例に係る撮像装置100の駆動方法を説明する。本比較例は、第2比較例と同様に水平同期信号の周期が変わる場合において、無効データの発生を避ける手法の例である。図6では、時刻t4において読み出し時間をTR1からTR2に変更するために水平同期信号の周期をHD4からHD5に変更する例を示している。ここで、HD4及びHD5は、HD4>HD5の関係を満たす。
【0051】
本比較例では、第2比較例とは異なり、読み出し走査R6が終了した後の時刻t4において水平同期信号の周期がHD4からHD5に変更され、シャッタ走査S7が開始する。すなわち、本比較例では、シャッタ走査S7の途中で水平同期信号の周期が変化しない。これにより、シャッタ走査S7の傾きは一定であるため、蓄積時間が全ての行で一定となる。そのため、読み出し走査R7により読み出されたデータは有効データとなる。
【0052】
このように本比較例では、水平同期信号の周期の変更直後に読み出されたデータも有効データとなる。しかしながら、本比較例では、読み出し走査R6とシャッタ走査S7とが重複しないように読み出し走査R6の終了を待ってからシャッタ走査S7を開始するため、シャッタ走査S7の開始が遅れる。そのため、読み出し走査R7の開始の遅れ又は蓄積時間T7の減少が問題となり得る。
【0053】
次に、図7に示す本実施形態に係る撮像装置の駆動方法を説明する。本実施形態の駆動方法では、周期を個別に設定可能なシャッタ用水平同期信号と読み出し用水平同期信号が用いられる。シャッタ用水平同期信号と読み出し用水平同期信号は、水平同期信号に基づいて制御部70によって生成される。シャッタ用水平同期信号は、シャッタ走査における各行の画素Pの駆動タイミングを示す第1同期信号である。読み出し用水平同期信号は、読み出し走査における各行の画素Pの駆動タイミングを示す第2同期信号である。
【0054】
図7に示されているシャッタ設定(A、B、C)と読み出し設定(A、B、C)は、シャッタ走査開始信号と読み出し走査開始信号に基づくタイミングで更新される。ここで、シャッタ設定と読み出し設定とは、具体的には、読み出しに必要な1水平期間の周期の設定、垂直走査の加算方式などに代表される読み出し方式、読み出し領域等であり得る。
【0055】
本実施形態においても第1乃至第3比較例と同様に蓄積時間が異なる第1駆動方式及び第2駆動方式の切り替えが可能である。図7では、例えば、シャッタ走査S8及び読み出し走査R8が第1駆動方式に対応し、シャッタ走査S9及び読み出し走査R9が第2駆動方式に対応する。あるいは、シャッタ走査S9及び読み出し走査R9が第1駆動方式に対応し、シャッタ走査S10及び読み出し走査R10が第2駆動方式に対応するものとしてもよい。第1駆動方式と第2駆動方式とでは、シャッタ走査と読み出し走査との間隔(蓄積時間T8、T9、T10)が互いに異なっている。また、第1駆動方式と第2駆動方式とでは、読み出し走査の期間の長さ(TR3、TR4、TR5)が互いに異なっている。
【0056】
図7では、時刻t5に読み出し用水平同期信号の周期をHD8からHD9に変更し、時刻t7に読み出し用水平同期信号の周期をHD9からHD10に変更する例を示している。ここで、HD8、HD9及びHD10は、HD9=2×HD8=2×HD10の関係を満たす。なお、時刻t6においては、読み出し用水平同期信号の周期は変更されていない。また、水平同期信号の周期HD6、シャッタ用水平同期信号の周期HD7、読み出し用水平同期信号の周期HD8は、HD6=HD7=HD8の関係を満たす。
【0057】
読み出し走査R8は時刻t5から開始される。読み出し走査R8に対応するシャッタ走査S8は、蓄積時間がT8になるように時刻t5よりも前に開始される。シャッタ走査S8における各行のシャッタ動作はシャッタ用水平同期信号を基準として行われる。ここで、読み出し走査R8に対応する読み出し用水平同期信号の周期HD9は、シャッタ用水平同期信号の周期HD7の2倍である。そのため、図7に図示されているように、シャッタ走査S8においては、シャッタ用水平同期信号が2回入力されるごとに1行分のシャッタ動作が行われる。これにより、シャッタ走査S8の傾きと読み出し走査R8の傾きとが一致する。また、時刻t5に読み出し走査用水平同期信号の周期がHD8からHD9に変更されてもシャッタ走査S8の傾きが変化せず、蓄積時間が全ての行で一定となる。そのため、読み出し走査R8により読み出されたデータは有効データとなる。
【0058】
読み出し走査R9は時刻t6から開始される。読み出し走査R9に対応するシャッタ走査S9は、蓄積時間がT9になるように時刻t6よりも前に開始される。ここで、読み出し走査R9に対応する読み出し用水平同期信号の周期HD9は、シャッタ用水平同期信号の周期HD7の2倍である。そのため、図7に図示されているように、シャッタ走査S9においては、シャッタ走査S8と同様にシャッタ用水平同期信号が2回入力されるごとに1行分のシャッタ動作が行われる。これにより、シャッタ走査S9の傾きと読み出し走査R9の傾きとが一致する。また、時刻t6においてシャッタ走査S9の傾きが変化しないため、蓄積時間が全ての行で一定となる。そのため、読み出し走査R9により読み出されたデータは有効データとなる。
【0059】
読み出し走査R10は時刻t7から開始される。読み出し走査R10に対応するシャッタ走査S10は、蓄積時間がT10になるように時刻t7よりも前に開始される。ここで、読み出し走査R10に対応する読み出し用水平同期信号の周期HD10は、シャッタ用水平同期信号の周期HD7と同じである。そのため、図7に図示されているように、シャッタ走査S10においては、シャッタ用水平同期信号が1回入力されるごとに1行分のシャッタ動作が行われる。これにより、シャッタ走査S10の傾きと読み出し走査R10の傾きとが一致する。また、時刻t7に読み出し走査用水平同期信号の周期がHD9からHD10に変更されてもシャッタ走査S10の傾きが変化せず、蓄積時間が全ての行で一定となる。そのため、読み出し走査R10により読み出されたデータは有効データとなる。
【0060】
以上のように、本駆動方法では、シャッタ用水平同期信号と読み出し用水平同期信号に基づいてシャッタ走査と読み出し走査をそれぞれ行う。これにより、シャッタ動作のタイミングは、読み出し動作のタイミングに対して独立に設定可能である。また、シャッタ用水平同期信号と読み出し用水平同期信号の周期の比率に応じてシャッタ動作の頻度が定められていることにより、各行の蓄積時間を一定に保つことができる。
【0061】
シャッタ用水平同期信号と読み出し用水平同期信号の周期の比率とシャッタ動作の頻度との関係についてより一般化して説明する。CPU80等から入力される水平同期信号の周期をHD、読み出し用水平同期信号の周期をHDR、シャッタ用水平同期信号の周期をHDSとする。このとき、HDR=n×HDS=n×HD(nは1以上の整数)の関係が成り立つように各周期を設定する。すなわち、読み出し用水平同期信号の周期は、シャッタ用水平同期信号及び水平同期信号の周期のn倍である。更に、シャッタ用水平同期信号の駆動パルスがn個入力されるごとに1行分のシャッタ動作が行われるようにする。このように設定することで、シャッタ走査と読み出し走査の傾きが一致するため、各行の蓄積時間を一定に保つ走査が実現される。
【0062】
したがって、本実施形態の駆動方法では、第2比較例及び第3比較例と同様に水平同期信号の周期の変更を伴う駆動方式の変更が可能であり、読み出し動作の周期を変えることができる。すなわち、本実施形態では、複数の画像を連続的に取得する際に読み出し時間が異なる駆動方式への切り替えが可能な撮像装置100が提供される。更に、本実施形態では、駆動方法の変更時にも各行の蓄積時間を同一にすることができるため、第2の比較例で述べた無効データの発生を避けることができる。また、本実施形態では、駆動方式の変更が行われる場合であっても読み出し走査が終了する前に次のシャッタ走査を開始することができるため、第3の比較例で述べた読み出し走査の開始の遅れ及び蓄積時間Tの減少を避けることができる。
【0063】
図8は、図7に示す駆動を実現するための制御部70及び垂直走査部30の構成例を示すブロック図である。なお、図8に示す制御部70及び垂直走査部30の構成は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0064】
制御部70は、レジスタ制御部71、内部同期信号生成部72及びタイミング制御部73を有する。垂直走査部30は、読み出し走査制御部31及びシャッタ走査制御部32を有する。
【0065】
レジスタ制御部71は、読み出し走査及びシャッタ走査に関する設定(読み出し走査設定及びシャッタ走査設定)、これらの走査に対応する蓄積時間の設定(蓄積時間設定)等の情報を保持している。レジスタ制御部71は、読み出し走査設定及びシャッタ走査設定を内部同期信号生成部72及びタイミング制御部73に供給し、蓄積時間設定をタイミング制御部73に供給する。
【0066】
内部同期信号生成部72は、読み出し走査設定及びシャッタ走査設定に基づいて、撮像装置100の内部又は外部から入力される同期信号(第3同期信号)から読み出し用水平同期信号及びシャッタ用水平同期信号を生成する。ここで、図7に示されているように、読み出し用水平同期信号の周期は同期信号の周期と同一であり、シャッタ用水平同期信号の周期は同期信号の周期の整数倍である。内部同期信号生成部72は、読み出し用水平同期信号及びシャッタ用水平同期信号をタイミング制御部73に供給する。また、内部同期信号生成部72は、読み出し用水平同期信号を読み出し走査制御部31に供給し、シャッタ用水平同期信号をシャッタ走査制御部32に供給する。
【0067】
タイミング制御部73は、入力される各種設定、読み出し用水平同期信号及びシャッタ用水平同期信号に基づいて、読み出し走査の開始を指示する読み出し走査開始信号及びシャッタ走査の開始を指示するシャッタ走査開始信号を生成する。ここで、シャッタ走査開始信号の制御パルスの時刻は、各読み出しの蓄積時間設定により規定される蓄積時間が実現されるように、読み出し走査開始信号の制御パルスの時刻よりも前の時刻に生成される。
【0068】
読み出し走査制御部31は、制御部70から読み出し用水平同期信号及び読み出し走査開始信号を受けて動作する。読み出し走査制御部31は、読み出し用水平同期信号の制御パルスが入力されるごとに読み出し行を選択し、対応する行の読み出し走査制御信号を画素部10に出力する。
【0069】
シャッタ走査制御部32は、制御部70からシャッタ用水平同期信号及びシャッタ走査開始信号を受けて動作し、画素部10にシャッタ走査制御信号を出力する。シャッタ走査制御部32は、シャッタ用水平同期信号の1つの制御パルスが入力されるごと又は所定数の制御パルスが入力されるごとにシャッタ行を選択し、対応する行のシャッタ走査制御信号を画素部10に出力する。なお、読み出し走査制御信号及びシャッタ走査制御信号は対応する行の制御信号PSEL、PRES、PTXを含む。
【0070】
制御部70及び垂直走査部30を以上のように構成することで、図7に示す駆動を実現することができる。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、複数の画像を連続的に取得する際に読み出し時間が異なる駆動方式への切り替えが可能な撮像装置100及び撮像装置100の駆動方法が提供される。
【0072】
なお、図7に示されているタイミングチャートは、1水平期間において1つの行のみを読み出す場合の例を示しているが、これに限られるものではない。ある水平期間において複数のシャッタ行及び読み出し行を選択し、選択された複数の行の露光時間が一定になるように制御することで、1水平期間に複数の行から画素信号を一括して読み出すことが可能である。
【0073】
また、図8において内部同期信号生成部72に入力される同期信号の周期は、切り替え可能な種々の駆動方式のなかで一番短い駆動方式の読み出しの周期に一致するように設定され得る。これにより、1水平期間に読み出されるデータの量が少ない駆動方式においても読み出し時間の損失が少ない駆動が実現される。
【0074】
[第2実施形態]
図9を参照して第2実施形態を説明する。本実施形態の撮像装置100の駆動方法は、第1駆動方式による読み出し走査が終了した直後に第2駆動方式によるシャッタ走査も終了するように構成されている。この構成を例として、第1駆動方式による読み出し走査と第2駆動方式によるシャッタ走査とが並行して行われる場合の制約条件について説明する。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する場合がある。特に、本実施形態の装置構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0075】
図9は、本実施形態に係る撮像装置100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図9では、シャッタ走査S11及び読み出し走査R11が第1駆動方式に対応し、シャッタ走査S12及び読み出し走査R12が第2駆動方式に対応する。第1駆動方式の読み出し走査R11の期間の長さTR6と第2駆動方式の読み出し走査R12の期間の長さTR7とは互いに異なっている。
【0076】
図9では、時刻t9に読み出し用水平同期信号の周期をHD13からHD14に変更する例を示している。ここで、HD13及びHD14は、HD13=2×HD14(すなわちHD13>HD14)の関係を満たす。水平同期信号の周期HD11、シャッタ用水平同期信号の周期HD12、読み出し用水平同期信号の周期をHD14は、HD11=HD12=HD14の関係を満たす。TR6=HD13×(n+1)であり、TR7=HD14×(n+1)であることから、TR6=2×TR7の関係が成り立つ。
【0077】
図9に示されているように、読み出し走査R11の読み出し走査開始信号の制御パルスとシャッタ走査S12の読み出し走査開始信号の制御パルスとの時間間隔をINHとする。このとき、図9のように読み出し走査R11の直後にシャッタ走査S12が終了するための条件は、INH=TR6-TR7+HD11(あるいは、INH=TR6-TR7+HD12)である。INHがこれよりも短い場合には、読み出し走査R11がシャッタ走査S12に追いついて、同じ行で読み出し動作とシャッタ動作が同時に行われることになるため、読み出し走査R11が正常に行われなくなる。したがって、HD13>HD14の場合には、INH≧TR6-TR7+HD11(あるいは、INH≧TR6-TR7+HD12)となるように各信号のタイミングを設定することにより、読み出し走査R11が正常に行われ得る。
【0078】
なお、図9とは逆にHD13≦HD14である場合には、読み出し走査R11がシャッタ走査S12に追いつくことはないため上述の条件は不要である。しかしながら、読み出し動作とシャッタ動作が同時刻に行われると読み出し走査R11が正常に行われなくなる。そのため、0行目の読み出し動作が終了してからシャッタ走査S12を行う必要がある。すなわち、HD13≦HD14の場合には、INH≧HD13となるように各信号のタイミングを設定することにより、読み出し走査R11が正常に行われ得る。
【0079】
以上のように、HD13>HD14の場合には、INH≧TR6-TR7+HD11(あるいは、INH=TR6-TR7+HD12)となるように各信号のタイミングを設定する。また、HD13≦HD14の場合には、INH≧HD13の条件を満たすように各信号のタイミングを設定する。これにより、読み出し走査とシャッタ走査が並行して行われる場合であっても、正常に画素信号の読み出しを行うことができる。
【0080】
また、図9に示されているように、HD13>HD14の場合には、INH=TR6-TR7+HD11を満たしていることが望ましい。また、HD13≦HD14の場合には、INH=HD13の関係を満たしていることが望ましい。これらのように各信号のタイミングを設定することで、読み出し走査とシャッタ走査の間の空き時間を最小にすることができる。
【0081】
[第3実施形態]
図10を参照して第3実施形態を説明する。本実施形態の撮像装置100の駆動方法は、第1駆動方式によるシャッタ走査が終了する前に第2駆動方式によるシャッタ走査が開始するように構成されている。なお、本実施形態の説明において、第1実施形態又は第2実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する場合がある。特に、本実施形態の装置構成は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0082】
図10は、本実施形態に係る撮像装置100の駆動方法を示すタイミングチャートである。図10では、シャッタ走査S13及び読み出し走査R13が第1駆動方式に対応し、シャッタ走査S14及び読み出し走査R14が第2駆動方式に対応する。第1駆動方式の読み出し走査R13の期間の長さTR8と第2駆動方式の読み出し走査R14の期間の長さTR9とは互いに異なっている。また、本実施形態においては、読み出し走査R13に対応する読み出し用水平同期信号の周期HD17と読み出し走査R14に対応する読み出し用水平同期信号の周期HD18との間には、2×HD17=HD18の関係が成り立つ。
【0083】
図10では、シャッタ走査S13が終了する時刻t11よりも前の時刻t10にシャッタ走査S14が開始する。これにより、読み出し走査R13とシャッタ走査S14の間の空き時間を少なくすることができる。
【0084】
ここで、時刻t10から時刻t11の間の期間では2つのシャッタ走査S13、S14が並行して行われる。シャッタ走査S13とシャッタ走査S14は、異なる駆動方式によるものであるため、これらの走査には異なる設定が必要となる。そこで、図10の「シャッタ設定1」及び「シャッタ設定2」に示されているように、シャッタ走査の条件を同時刻に複数個設定できるように撮像装置100のレジスタ制御部71を構成することにより、本実施形態の駆動が実現可能である。
【0085】
本実施形態によれば、第1駆動方式によるシャッタ走査が終了する前に第2駆動方式によるシャッタ走査が開始することにより、読み出し走査とシャッタ走査の間の空き時間を少なくすることができる。
【0086】
[第4実施形態]
図11乃至図14を参照して第4実施形態を説明する。本実施形態では第1乃至第3実施形態の第1駆動方式と第2駆動方式の切り替え手法を焦点検出用信号の取得が可能な画素構成に適用した例を説明する。本実施形態の撮像装置100は、1つの画素Pが複数の光電変換部を有しており、画素Pが焦点検出用信号と撮像用信号とを出力可能である点が第1乃至第3実施形態と相違する。なお、本実施形態の説明において、第1乃至第3実施形態と共通する部分についての説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0087】
図11は、本実施形態に係る画素Pの構成例を示す回路図である。画素Pは、2つの光電変換部PDA、PDB(第1光電変換部、第2光電変換部)と、2つの転送トランジスタM1A、M1Bと、FDリセットトランジスタM2と、増幅トランジスタM3と、選択トランジスタM4と、を含む。
【0088】
光電変換部PDA、PDBを構成するフォトダイオードのアノードは接地ノードに接続されている。光電変換部PDAを構成するフォトダイオードのカソードは転送トランジスタM1Aのソースに接続されている。光電変換部PDBを構成するフォトダイオードのカソードは転送トランジスタM1Bのソースに接続されている。転送トランジスタM1A、M1Bのドレインは、FDリセットトランジスタM2のソース及び増幅トランジスタM3のゲートに接続されている。
【0089】
本実施形態では、2つの転送ゲート信号線が、対応する行に属する画素Pの転送トランジスタM1A、M1Bのゲートにそれぞれ接続されている。2つの転送ゲート信号線は、垂直走査部30から供給される制御信号PTXA、PTXBを転送トランジスタM1A、M1Bのゲートにそれぞれ供給する。
【0090】
図12は、本実施形態に係る撮像装置100の第1駆動方式による駆動方法を示すタイミングチャートであり、図13は、本実施形態に係る撮像装置100の第2駆動方式による駆動方法を示すタイミングチャートである。図12及び図13は、画素部10の各行におけるシャッタ動作及び読み出し動作の概略を示している。なお、図12及び図13には、第n行の動作のみを例示している。
【0091】
まず、図12を参照して、第1駆動方式による駆動方法について説明する。第1駆動方式は、一方の光電変換部PDAで生成された電荷のみに基づく画素信号(A像)と、光電変換部PDA及び光電変換部PDBの両方で生成された電荷に基づく画素信号(A+B像)との読み出しを連続して行う駆動方式である。シャッタ動作については図3と概ね同様であるため説明を省略する。
【0092】
A像の読み出し動作では、制御信号PRES(n)をローレベルに、制御信号PSEL(n)、PTXA(n)をハイレベルに制御し、FDリセットトランジスタM2がオフの状態で、転送トランジスタM1A及び選択トランジスタM4を同時にオンにする。これにより、光電変換部PDAに蓄積されている電荷がフローティングディフュージョンFDへと転送される。増幅トランジスタM3は、フローティングディフュージョンFDの電位に応じたA像の画素信号を、選択トランジスタM4を介して出力線22に出力する。このようにして、光電変換部PDAで生成された電荷に基づくA像の読み出しが行われる。
【0093】
A像の読み出し動作に続いて、A+B像の読み出し動作が行われる。A+B像の読み出し動作では、制御信号PRES(n)をローレベルに、制御信号PSEL(n)、PTXA(n)、PTXB(n)をハイレベルに制御する。このとき、FDリセットトランジスタM2がオフの状態で、転送トランジスタM1A、M1B及び選択トランジスタM4が同時にオンになる。これにより、光電変換部PDAに蓄積されている電荷と光電変換部PDBに蓄積されている電荷とがフローティングディフュージョンFDへと転送される。増幅トランジスタM3は、フローティングディフュージョンFDの電位に応じたA+B像の画素信号を、選択トランジスタM4を介して出力線22に出力する。このようにして、光電変換部PDAで生成された電荷に基づくA+B像の読み出しが行われる。
【0094】
A+B像の画素信号からA像の画素信号を減算することにより、光電変換部PDBで生成された電荷に基づく画素信号(B像)を得ることができる。このようにして得られたA像の画素信号及びB像の画素信号は、焦点検出等に用いられ得る。また、A+B像の画素信号は画像の生成に用いられ得る。カメラにおいては焦点検出の結果に基づいて合焦動作が行われる。
【0095】
次に、図13を参照して、第2駆動方式による駆動方法について説明する。第2駆動方式は、A+B像の画素信号のみの読み出しを行う駆動方式である。本駆動方式は、図12に示されている第1駆動方式に対して、A像の読み出し動作が省略されている。それ以外の点は、図12と概ね同様であるため説明を省略する。
【0096】
第2駆動方式では、A像及びB像の画素信号を得ることはできないが、読み出しに要する時間を第1駆動方式に比べて短縮することができる。読み出し時間の違いについて図14(a)及び図14(b)を参照して説明する。
【0097】
図14(a)は、第1駆動方式による読み出し動作に要する時間を模式的に示す図である。図14(a)に示されているように、第1駆動方式による読み出し動作では、水平同期信号の1周期である期間Taの間に、N変換、A変換、A+B変換の3回のAD変換が行われる。なお、読み出し動作に要する時間の大部分はAD変換の時間であるため、ここではAD変換の時間のみを考慮するものとする。図14(a)の「AD変換」の欄の三角形はAD変換に用いられるランプ信号の電位の推移を模式的に示している。ここで、N変換は、リセット状態のフローティングディフュージョンFDの電位を示す信号のAD変換を意味する。また、A変換、A+B変換は、それぞれ、A像の画素信号、A+B像の画素信号のAD変換を意味する。垂直同期信号の1周期(フレーム期間)においてはn+1行分の読み出しが行われる。したがって、垂直同期信号の1周期の長さは少なくともTa×(n+1)よりも大きくなければならない。
【0098】
図14(b)は、第2駆動方式による読み出し動作に要する時間を模式的に示す図である。図14(b)に示されているように、第2駆動方式による読み出し動作では、水平同期信号の1周期である期間Tbの間に、N変換、A+B変換の2回のAD変換が行われる。ここで、垂直同期信号の1周期の長さは少なくともTb×(n+1)よりも大きい。第2駆動方式では、水平同期信号の1周期内に行われるAD変換の回数が少ないため、Tb<Taとすることができ、読み出しに要する時間を第1駆動方式に比べて短縮することができる。
【0099】
以上のように、第1駆動方式では、A像及びB像の画素信号が得られるが読み出しに要する時間が長い。これに対し、第2駆動方式では、A像及びB像の画素信号は得られないが、読み出しに要する時間が短い。A像及びB像の画素信号は焦点検出に用いられる信号であるため、これらの信号の取得は毎フレーム行う必要がない場合もある。
【0100】
そこで、本実施形態では、第1乃至第3実施形態の手法により第1駆動方式と第2駆動方式とをフレームに応じて切り替える。これにより、常に第1駆動方式を用いる場合と比べて、全体の読み出し時間を短縮することができる。
【0101】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による撮像システムについて、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【0102】
上述の第1乃至第4実施形態で述べた撮像装置100は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。図15には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。種々の撮像システムを具備する機器は、電子機器、情報機器、通信機器、医療機器、産業機器、分析機器、輸送機器などである。
【0103】
図15に例示した撮像システム200は、撮像装置201、被写体の光学像を撮像装置201に結像させるレンズ202、レンズ202を通過する光量を可変にするための絞り204、レンズ202の保護のためのバリア206を有する。レンズ202及び絞り204は、撮像装置201に光を集光する光学系である。撮像装置201は、第1乃至第4実施形態で説明した撮像装置100であって、レンズ202により結像された光学像を画像データに変換する。
【0104】
撮像システム200は、また、撮像装置201より出力される出力信号の処理を行う信号処理部208を有する。信号処理部208は、撮像装置201が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換を行う。また、信号処理部208はその他、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部208の一部であるAD変換部は、撮像装置201が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置201とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置201と信号処理部208とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0105】
撮像システム200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部210、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)212を有する。更に撮像システム200は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体214、記録媒体214に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)216を有する。なお、記録媒体214は、撮像システム200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0106】
更に撮像システム200は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部218、撮像装置201と信号処理部208に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部220を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム200は少なくとも撮像装置201と、撮像装置201から出力された出力信号を処理する信号処理部208とを有すればよい。撮像システム200を備える機器はモーターやアクチュエータ等の機械装置を備えることができる。全体制御・演算部218は、撮像装置201からの信号に基づく情報に基づいて機械装置を制御する制御装置でありうる。機械装置は、合焦や防振(ブレ補正)のためにレンズ202を移動させたり、絞り204を動作させたり、防振のために撮像装置301を移動させたりする。これら機械装置を制御する情報は、撮像装置201から得られた信号に基づくものでありうる。
【0107】
撮像装置201は、撮像信号を信号処理部208に出力する。信号処理部208は、撮像装置201から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部208は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0108】
第1乃至第4実施形態による撮像装置100を適用することにより、駆動方式の切り替えが可能な撮像システムを実現することができる。
【0109】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による撮像システム及び移動体(輸送機器)について、図16(a)及び図16(b)を用いて説明する。図16(a)及び図16(b)は、本実施形態による撮像システム及び機器(輸送機器、移動体)の構成を示す図である。
【0110】
図16(a)は、車載カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上述の第1乃至第4実施形態のいずれかに記載の撮像装置100である。撮像システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、撮像システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、撮像システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0111】
撮像システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制する等により衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステム等の画面に警報情報を表示する、シートベルト又はステアリングに振動を与える等によりユーザに警告を行う。ブレーキやエンジンなどの機械装置が、撮像装置310からの信号に基づく情報に基づいて、制御ECU330などの制御装置によって制御される。
【0112】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム300で撮像する。図16(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置320が、撮像システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0113】
他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(輸送機器)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0114】
[変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0115】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した形態も本発明の実施形態である。
【0116】
また、上述の実施形態に示した撮像システムは、本発明の撮像装置100を適用しうる撮像システムの例を示したものであり、本発明の撮像装置100を適用可能な撮像システムは図15図16(a)及び図16(b)に示した構成に限定されるものではない。
【0117】
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0118】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0119】
10 画素部
30 垂直走査部
70 制御部
100 撮像装置
M1、M1A、M1B 転送トランジスタ
M2 FDリセットトランジスタ
M3 増幅トランジスタ
P 画素
PD、PDA、PDB 光電変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16