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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20231122BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20231122BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20231122BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20231122BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/56
C12C5/02
C12G3/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019164503
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021040524
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】大沢 千晶
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 利久
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-095541(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131575(WO,A1)
【文献】特開2017-006077(JP,A)
【文献】特開2017-063726(JP,A)
【文献】特開2018-126079(JP,A)
【文献】特開2017-216891(JP,A)
【文献】特開2018-042575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
C12C
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦味価(BU)が5未満であり、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を固形分含有量として0.02w/v%以上0.2w/v%以下含有し、さらに酢酸エチルを1.0mg/L以上60mg/L以下含有する、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記酢酸エチルを4.0mg/L以上50mg/L以下含有する、請求項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有させる工程と、酢酸エチルを含有させる工程と、前記ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量を0.02w/v%以上0.2w/v%以下とする工程と、前記酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上60mg/L以下とする工程と、を含む、苦味価(BU)が5未満であるビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項4】
苦味価(BU)が5未満であるビールテイスト飲料において、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物と、酢酸エチルと、を含有させ、且つ前記ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量を0.02w/v%以上0.2w/v%以下ならびに前記酢酸エチルの含有量を1.0mg/L以上60mg/L以下とする、苦味価(BU)が5未満であるビールテイスト飲料におけるビールらしい香味および苦味の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料、およびその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料は、ビールらしい香味や苦味(ビール様の風香味)を有する飲料であって、酒税法により定義されるビール、発泡酒、その他醸造酒、ならびにリキュールのいずれかに属するビールテイストアルコール飲料が知られているが、近年、ノンアルコールビールテイスト飲料なども販売されている。
【0003】
さらに、特許文献1には、ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料として、0.3~5ppmのクワシンおよび/または0.5~5ppmのキニーネを含んでなるビールテイスト飲料が開示され、ホップ由来のイソα酸を実質的に含有しない構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-006077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、本発明者らは、苦味のキレを付与することが可能な原料であるゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有するビールテイスト飲料を開発している。このゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物は、ホップを使用しなくても飲料に苦味のキレを付与できるという点において優れているが、ビールテイスト飲料として好ましくない特有の香り等も若干含まれているため、ビールテイスト飲料への使用という観点においてさらなる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ホップを使用しなくてもビールらしい香味および苦味を有するビールテイスト飲料、およびその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有し、さらに酢酸エチルを0.50mg/L以上含有するビールテイスト飲料とすることにより、ホップを使用しなくてもビールらしい香味および苦味を有するビールテイスト飲料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)~(6)である。
(1)ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有し、さらに酢酸エチルを0.50mg/L以上含有する、ビールテイスト飲料。
(2)前記ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量が0.02w/v%以上0.2w/v%以下である、(1)に記載のビールテイスト飲料。
(3)前記酢酸エチルを4.0mg/L以上50mg/L以下含有する、(1)または(2)に記載のビールテイスト飲料。
(4)苦味価(BU)が5未満である、(1)~(3)のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
(5)ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有させる工程と、酢酸エチルを含有させる工程と、前記酢酸エチルの含有量を0.50mg/L以上とする工程とを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
(6)ビールテイスト飲料において、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物と、酢酸エチルとを含有させ、且つ前記酢酸エチルの含有量を0.50mg/L以上とする、ビールテイスト飲料におけるビールらしい香味および苦味の向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホップを使用しなくてもビールらしい香味および苦味を有するビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有し、さらに酢酸エチルを0.50mg/L以上含有するビールテイスト飲料(以下においては「本発明のビールテイスト飲料」という場合もある)、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有させる工程と、酢酸エチルを含有させる工程と、前記酢酸エチルの含有量を0.50mg/L以上とする工程とを含むビールテイスト飲料の製造方法(以下においては「本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法」という場合もある)等である。
【0011】
まず、本発明のビールテイスト飲料について詳細に説明する。
なお、本発明において「ビールテイスト飲料」とは、ビールらしい香味や苦味、つまりビール様の風香味を有する飲料を意味する。したがって、本発明の「ビールテイスト飲料」には、酒税法(昭和二十八年法律第六号)により定義される発泡性酒類(ビール、発泡酒、その他醸造酒、ならびにリキュール)に属するビール様の風香味を有するアルコール飲料や、上記した酒税法により定義される発泡性酒類には属さないがビール様の風香味を有するアルコール飲料(例えば非発泡性アルコール飲料)、ビール様の風香味を有する清涼飲料水(例えばノンアルコールビールテイスト飲料)などが包含される。また、本発明のビールテイスト飲料は、酵母等による発酵工程(酵母等が糖類などの有機物からアルコールなどの代謝産物を生成する工程)を経て製造された発酵飲料であってもよく、あるいはこの発酵工程を行うことなく製造された非発酵飲料であってもよい。
【0012】
そして、本発明のビールテイスト飲料は、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有する。ゲンチアナは、リンドウ科の多年草であるゲンチアナ(Gentiana lutea LINNE)の根または根茎であり、これを乾燥、微粉末化したものなどを使用することができる。
また、ゲンチアナ抽出物は、この根または根茎から水、熱水、およびエタノールからなる群から選ばれる1以上を溶媒として用いて抽出して得られた抽出物であり、この溶媒の少なくとも一部が除去された濃縮物や乾燥物、上記溶媒により希釈された希釈物なども包含される。さらに、このゲンチアナやゲンチアナ抽出物は、市販品(例えば食品添加物など)であってもよい。
本発明のビールテイスト飲料は、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有することにより、ホップを使用しなくても苦味のキレを有する。
【0013】
さらに、本発明のビールテイスト飲料は、上記したゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物に加えて、酢酸エチル(Ethyl acetate:C)を0.50mg/L以上含有する。酢酸エチルは、酢酸とエタノールとがエステル結合してなる化合物であり、香気成分のひとつである。本発明のビールテイスト飲料においては、ビールテイスト飲料全量に対して酢酸エチルの含有量を0.50mg/L以上とすることにより、ビールらしい香味や苦味を維持しつつ、ビールテイスト飲料としては好ましくない香りである濡れた草の香りを抑制することができ、さらに、ビールテイスト飲料の後味のキレも増強させることができる。
なお、この酢酸エチルは、市販品の製剤を使用して含有させてもよく、あるいは、酢酸エチル含有原料(例えば蒸留酒、香料など)を使用して含有させてもよく、また発酵により生成したものであってもよい。
【0014】
そして、本発明のビールテイスト飲料においては、この酢酸エチルの含有量を0.80mg/L以上とするのが好ましく、1.0mg/L以上とするのがより好ましく、2.0mg/L以上とするのがさらに好ましく、3.0mg/L以上とするのがさらに好ましく、4.0mg/L以上とするのがさらに好ましく、5.0mg/L以上とするのがさらに好ましく、6.0mg/L以上とするのがさらに好ましく、8.0mg/L以上とするのがさらに好ましく、10mg/L以上とするのがさらに好ましい。これにより、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有する本発明のビールテイスト飲料において、ビールテイスト飲料として好ましくない濡れた草の香りがさらに抑制された、よりビールらしい香味を有するビールテイスト飲料を得ることができる。
【0015】
また、本発明のビールテイスト飲料においては、この酢酸エチルの含有量を、好ましくは60mg/L以下、より好ましくは50mg/L以下、さらに好ましくは45mg/L以下、さらに好ましくは40mg/L以下、さらに好ましくは35mg/L以下、さらに好ましくは30mg/L以下となるように調整すると、ビールテイスト飲料として好ましくない濡れた草の香りが抑制され、且つよりビールらしい香味および口当たりのよい苦味(ビールテイスト飲料のドリンカビリティを増加させる心地よい苦味)を有するビールテイスト飲料を得ることができるため非常に好適である。
例えば、本発明のビールテイスト飲料における酢酸エチル含有量の好適範囲の一例としては、4.0mg/L以上50mg/L以下の範囲が挙げられる。
【0016】
さらに、本発明のビールテイスト飲料においては、上記したゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を、ビールテイスト飲料全量に対して固形分含有量として好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは0.02w/v%以上、さらに好ましくは0.025w/v%以上、さらに好ましくは0.03w/v%以上、さらに好ましくは0.035w/v%以上、さらに好ましくは0.04w/v%以上、さらに好ましくは0.05w/v%以上となるように調整し、および/または、固形分含有量として好ましくは0.3w/v%以下、より好ましくは0.2w/v%以下、さらに好ましくは0.15w/v%以下、さらに好ましくは0.13w/v%以下、さらに好ましくは0.1w/v%以下となるように調整してもよい。ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量がこのような範囲であると、本発明のビールテイスト飲料において、ゲンチアナ由来の口内に広がる渋味が抑制され、ビールらしい香味および口当たりのよい苦味をさらに向上させることができる。
例えば、本発明のビールテイスト飲料におけるゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量の好適範囲の一例としては、0.02w/v%以上0.2w/v%以下の範囲が挙げられる。
【0017】
そして、本発明のビールテイスト飲料におけるゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量と酢酸エチルの含有量との比率は、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量(w/v%):酢酸エチルの含有量(w/v%(g/100mL)に換算した量)が1:0.005~0.15であることが好ましく、1:0.01~0.1であることがより好ましく、1:0.015~0.08であることがさらに好ましい。ビールらしい香味および口当たりのよい苦味をバランスよく向上させることができるからである。
【0018】
ここで、本発明のビールテイスト飲料における酢酸エチルの含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.22 低沸点香気成分」に記載されている方法によって測定される値である。
また、本発明のビールテイスト飲料におけるゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量は、乾燥減量法によって測定された、添加されたゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分量から算出される値である。
【0019】
なお、本発明のビールテイスト飲料は、ホップ由来成分を含有していてもよいが、ホップ由来成分を含有していなくてもビールらしい香味および苦味を有することが特徴である。例えば、本発明のビールテイスト飲料は、苦味価(BU)が5未満であってもよく、4.5以下であってもよく、4.0以下であってもよく、3.5以下であってもよく、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよく、1.0以下であってもよく、0.5以下であってもよい。この苦味価は、ホップ等の使用量、品種、種類、添加タイミングなどによって調整することができる。ここで、この苦味価(BU)は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定される値である。
【0020】
本発明のビールテイスト飲料にホップを使用する場合には、その種類としては、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスなどが例示される。使用するホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、特段限定されない。
さらに、本発明のビールテイスト飲料には、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物に加えて、例えば、ベルベリン(キハダおよび/またはキハダ抽出物など)、カフェイン、クワシン、菊花抽出物、ペプチド類、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、キナ抽出物などのホップの代替原料となり得る他の素材や、苦味系アミノ酸(Val、Met、Ile、Leu、およびHisからなる群から選ばれる1以上)などの他の苦味素材を使用することもできる。
【0021】
そして、本発明のビールテイスト飲料は、前述の酢酸エチル、ならびにゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物に加えて、原料として麦または麦加工物、米、とうもろこし、豆類、果実、香辛料などを任意に使用することができる。また、発酵飲料を製造する場合などにおいては、発酵促進等のために、原料として糖類を使用してもよい。なお、この「原料」とは、本発明のビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水およびホップ以外のものを指す。
ここで、上記した麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。また、麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。この麦エキスは、麦から糖分および窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。麦芽は、麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分および窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0022】
さらに、本発明のビールテイスト飲料には、本発明の効果に影響を与えない範囲において、飲料に通常配合され得る酸味料、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、塩類等を含んでいてもよい。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウムなどが挙げられる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などが挙げられる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンなどが挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、リチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどが挙げられる。塩類としては、例えば、食塩(塩化ナトリウム)、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0023】
また、本発明のビールテイスト飲料は、ビールテイストアルコール飲料であってもよい。その場合のアルコール度数は特に限定されないが、一例としては、下限は1v/v%以上、より好ましくは2v/v%以上、さらに好ましくは3v/v%以上、さらに好ましくは4v/v%以上、さらに好ましくは5v/v%以上が示され、上限は好ましくは20v/v%以下、より好ましくは15v/v%以下、さらに好ましくは10v/v%以下、さらに好ましくは9v/v%以下、さらに好ましくは8v/v%以下、さらに好ましくは7v/v%以下、さらに好ましくは6v/v%以下が示される。
あるいは、本発明のビールテイスト飲料は、アルコール度数1v/v%未満、より好ましくは0.5v/v%未満、さらに好ましくは0.1v/v%未満、さらに好ましくは0.005v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。
【0024】
ここで、本発明において「アルコール度数(v/v%)」とは、改訂BCОJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.3 アルコール」に記載されている方法(8.3.6アルコライザー法)によって測定される値である。そして、本発明において「アルコール」とは、エタノールを意味する。
【0025】
なお、本発明のビールテイスト飲料のアルコール度数は、その製造工程において、発酵条件を制御する方法、原料液(本発明のビールテイスト飲料の製造工程における、ビールテイスト飲料のもととなる工程液)に焼酎、ブランデー、各種スピリッツ(ウォッカ等)、原料用アルコールなどの蒸留酒を配合する方法などによって調整することができる。
【0026】
さらに、本発明のビールテイスト飲料は、発泡性であると、その飲用時においてよりビールらしい香味および苦味を感じ易いため好ましい。ここで、本発明において「発泡性」とは、20℃における炭酸ガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることを意味する。そして、この炭酸ガス圧は、0.294MPa(3.0kg/cm)以下としてもよい。なお、炭酸ガスは、発酵により生成されたものであってもよいし、炭酸水やカーボネーション(炭酸ガス圧入)工程により付与されたものであってもよい。そして、このカーボネーション工程は、バッチ式で行ってもよいし、配管路に炭酸ガス圧入システム(カーボネーター)が組み込まれたインライン方式で連続的に行ってもよい。また、このカーボネーション工程は、フォーミング(泡噴き)の発生等を避けるために、液温を10℃以下(より好ましくは4℃以下)として行うのが好適である。
なお、本発明のビールテイスト飲料は、20℃における炭酸ガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満である非発泡性ビールテイスト飲料としてもよい。
【0027】
また、本発明のビールテイスト飲料においては、本発明の効果に影響を与えない範囲において、上記以外の任意の成分をさらに含んでもよい。
【0028】
次に、本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法について詳細に説明する。
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物を含有させる工程と、酢酸エチルを含有させる工程と、ビールテイスト飲料全量に対して酢酸エチルの含有量を0.50mg/L以上とする工程とを含めば、その他の工程については常法にしたがえばよく、特段限定はされない。なお、酢酸エチルを含有させる工程には、酵母等の微生物により酢酸エチルを生成させる発酵工程を含んでもよい。そして、上記各工程に加えて、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量を所定の範囲に調整する工程や、酢酸エチルの含有量をさらに所定の範囲に調整する工程を含んでいてもよい。また、上記した各工程は、2工程以上を1工程において併せて行ってもよく、あるいは各工程をそれぞれ2工程以上に分けて行ってもよい。
【0029】
そして、本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法においては、上記した各工程を備えることによりビールらしい香味および苦味を有するビールテイスト飲料を製造することができるため、ホップを添加する工程を備えていなくてもよい。つまり、本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、ホップを添加する工程を含まない構成であってもよい。
あるいは、本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法がホップを添加する工程を含む構成である場合でも、苦味価(BU)を5未満とする工程を備えていてもよい。
【0030】
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法の一例としては、まず、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物、ならびに所定量の酢酸エチルを含む調合液を調製し、必要であればホップなどをこの調合液に添加し、これも必要に応じてスピリッツ等の添加などによるアルコール度数の調整工程や、炭酸水の添加、カーボネーション等による炭酸ガス圧の調整工程などを行い、濾過工程、殺菌工程などを行って製品とする。さらに、この製品をアルミニウムやスチールなどの金属製容器、ガラス製容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ(プラスチックパウチ)容器などに充填して密封する容器充填工程を行ってもよい。特に、気体、水分、光線などの遮断性が高く、長期間常温において品質を維持することが可能であることから、金属製容器に充填され密封された構成とするのがより好ましい。
【0031】
また、本発明に係るビールテイスト発酵飲料を製造する方法の一例としては、まず、仕込工程において麦芽、大麦等を含む原料を使用して常法により麦汁を調製し、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物、必要であればホップなどをこの麦汁に添加して煮沸する煮沸工程を行い、さらに沈殿物を除去して得た発酵前液にビール酵母を添加して所定の条件において発酵工程を行い、所定量の酢酸エチルを生成させる方法が示される。発酵後は発酵液の貯酒(熟成工程)、濾過工程などを行って製品とする。これも必要であれば、任意の工程において、スピリッツ等の添加やアルコールの除去などによるアルコール度数の調整や、カーボネーション等を行ってもよい。また、これも同様に製品を金属製容器などに充填して密封してもよい。
【0032】
そして、上記したいずれの製造方法の例においても、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の添加は、調合液や発酵前液を調製する工程だけでなく、煮沸工程、発酵工程、アルコール度数や炭酸ガス圧の調整工程、熟成工程、濾過工程、殺菌工程などにおいても可能であり、また酢酸エチルは、発酵工程において生成させることに加え、任意の工程において製剤や酢酸エチル含有原料などを添加することとしてもよい。ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量調整や、酢酸エチルの含有量調整も同様である。
【0033】
なお本発明は、ビールテイスト飲料において、ゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物と、酢酸エチルとを含有させ、且つこの酢酸エチルの含有量を0.50mg/L以上とする、ビールテイスト飲料におけるビールらしい香味および苦味の向上方法を提供するものであるとも言える。そしてこの方法では、ビールテイスト飲料において、例えばゲンチアナおよび/またはゲンチアナ抽出物の固形分含有量を0.02w/v%以上0.2w/v%以下とし、あるいは酢酸エチルの含有量を4.0mg/L以上50mg/L以下とすることにより、ビールテイスト飲料における濡れた草の香り抑制、ならびにビールらしい香味および口当たりのよい苦味の向上方法を提供することもできる。
【0034】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例
【0035】
まず、ベースとなる純水にカラメル色素を最終サンプルの含有量として0.04w/v%となるように添加、溶解した液体に、酢酸エチル製剤を最終サンプルの酢酸エチル含有量が15mg/Lとなるように添加し、さらにゲンチアナ抽出物(水抽出物)を最終サンプルの固形分含有量として下記表1上段に記載の含有量となるように添加した。そして、炭酸ガス圧が2.2kg/cmとなるように炭酸水により調整した。このようにして、酢酸エチルの含有量が15mg/Lであり、ゲンチアナ抽出物の固形分含有量が異なるサンプル1-1から1-6のノンアルコールビールテイスト飲料を作製した。なお、コントロールとして、ゲンチアナ抽出物を含まない以外は上記と同様にして調整したサンプル1-0も作製した。
【0036】
また、これとは別に、ベースとなる純水にカラメル色素を最終サンプルの含有量として0.04w/v%となるように添加、溶解した液体に、ゲンチアナ抽出物(水抽出物)を最終サンプルの固形分含有量として0.05w/v%となるように添加し、さらに酢酸エチル製剤を最終サンプルの酢酸エチル含有量として下記表1上段に記載の量となるように添加した。そして、炭酸ガス圧が2.2kg/cmとなるように炭酸水により調整した。このようにして、ゲンチアナ抽出物の固形分含有量が0.05w/v%であり、酢酸エチルの含有量が異なるサンプル2-1から2-6のノンアルコールビールテイスト飲料を作製した。なお、コントロールとして、酢酸エチルを含まない以外は上記と同様にして調整したサンプル2-0も作製した。
【0037】
さらに、これらとは別に、ベースとなる純水にカラメル色素を最終サンプルの含有量として0.04w/v%となるように添加、溶解した液体に、酢酸エチル製剤を最終サンプルの含有量が15mg/Lとなるように添加し、且つゲンチアナ抽出物(水抽出物)を最終サンプルの固形分含有量が0.05w/v%となるように添加し、さらに最終サンプルのアルコール度数が約5.0v/v%となるようにスピリッツを添加した。そして、炭酸ガス圧が2.2kg/cmとなるように炭酸水により調整した、ビールテイストアルコール飲料(サンプル3-1)も作製した。
【0038】
そして、この得られた各サンプルおよびコントロールにおける、口当たりのよい苦味(ドリンカビリティを増加させる心地よい苦味)、およびゲンチアナ抽出物に由来する濡れた草の香り(ビールテイスト飲料として好ましくない香り)について、訓練され官能的識別能力を備えた5名のパネリストにより、以下に示す評価基準を用いて比較官能によって官能評価を行った。
【0039】
[口当たりのよい苦味の評価基準]
サンプル1-0における口当たりのよい苦味を1(ほとんど感じない)とし、このサンプル1-0との対比として、5(非常に感じる)、4(感じる)、3(やや感じる)、2(若干感じる)、1(ほとんど感じない:サンプル1-0と同等)の5段階により比較官能評価を行った。
[濡れた草の香りの評価基準]
サンプル1-0における濡れた草の香りを5(ほとんど感じない)とし、このサンプル1-0との対比として、5(ほとんど感じない:サンプル1-0と同等)、4(若干感じる)、3(やや感じる)、2(感じる)、1(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。
【0040】
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表1下段に示した。この結果から、ゲンチアナ抽出物を含有するビールテイスト飲料において、酢酸エチルを所定量以上含有させることにより、ビールテイスト飲料として好ましくない香りである濡れた草の香りが抑制されることが明らかとなった。そして、特に、ビールテイスト飲料において、酢酸エチルの含有量を1~60mg/L、より好ましくは7~30mg/L含有させ、且つゲンチアナ抽出物を固形分含有量として0.02~0.2w/v%含有させることにより、濡れた草の香りが抑制され且つ口当たりのよい苦味を良好に感じる、ビールらしい香味および苦味がより向上したビールテイスト飲料となることが明らかとなった。
【0041】
【表1】