(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】セパレータ継手及びセパレータシステム
(51)【国際特許分類】
H02G 9/06 20060101AFI20231122BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H02G9/06
H02G1/06
(21)【出願番号】P 2019171665
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】澤田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】森 勇樹
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-236117(JP,A)
【文献】特開2017-216819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/06
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護管本体内を仕切るセパレータ部材に、軸状部材を介して接続されるセパレータ継手であって、
前記セパレータ部材に接触する第1継手壁を備え、
前記第1継手壁には、前記軸状部材が内部に配置される継手貫通孔が形成され、
前記第1継手壁における前記継手貫通孔が開口する外面に沿う方向を沿面方向とし、前記外面に直交する方向を厚さ方向としたときに、
前記継手貫通孔の前記沿面方向の長さは、前記厚さ方向の第1側から第2側に向かうに従い長くなるセパレータ継手。
【請求項2】
前記継手貫通孔の前記沿面方向のいずれかの内面は、前記継手貫通孔の前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ沿う断面視において、前記厚さ方向に沿って延びている請求項1に記載のセパレータ継手。
【請求項3】
前記継手貫通孔は、前記第1継手壁における前記厚さ方向の前記第1側の外面に形成される第1開口を備え、
前記第1開口は、前記厚さ方向に見たときに円形状を呈している請求項1又は2に記載のセパレータ継手。
【請求項4】
前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ直交する方向を直交方向としたときに、
前記継手貫通孔は、前記第1継手壁における前記厚さ方向の前記第2側の外面に形成される第2開口を備え、
前記第2開口の前記直交方向の長さ、及び前記第1開口の前記直交方向の長さは、互いに同等である請求項3に記載のセパレータ継手。
【請求項5】
前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ直交する方向を直交方向としたときに、
前記直交方向に前記第1継手壁を見たときに、前記第1継手壁に対して前記厚さ方向の前記第1側に鈍角以下の角度をなす第2継手壁を備える請求項1から4のいずれか一項に記載のセパレータ継手。
【請求項6】
前記第1継手壁における前記第2継手壁に接続される端部を
連結端部としたときに、
前記継手貫通孔の前記沿面方向における前記
連結端部側の内面は、前記継手貫通孔の前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ沿う断面視において、前記厚さ方向の前記第2側に向かうに従い漸次、前記
連結端部に近づくように傾斜している請求項5に記載のセパレータ継手。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセパレータ継手と、
前記セパレータ部材と、
前記軸状部材と、
を備え、
前記沿面方向は、前記セパレータ部材の幅方向であるセパレータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ継手及びセパレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無電柱化による景観の保護、地震等の災害時における被害の軽減等のために、電話線等の通信ケーブルを道路の路面下に埋設することが行われている。通信ケーブルを埋設する際に、例えば特許文献1及び2に開示された保護管本体が用いられている。
特許文献1及び2に開示された保護管本体では、引込用ケーブル、幹線用ケーブルといった、通信ケーブルの種類別に保護管本体内に通信ケーブルを収容するために、保護管本体内をセパレータ部材で仕切っている。
【0003】
保護管本体内には、複数のセパレータ部材が、保護管の管軸方向に並べて配置されている。管軸方向に隣り合うセパレータ部材は、セパレータ継手、及びリベット等の軸状部材を介して互いに接続されている。セパレータ部材とセパレータ継手とは、セパレータ部材に形成された本体貫通孔、及びセパレータ継手に形成された継手貫通孔内にそれぞれ配置された軸状部材により接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-017666号公報
【文献】特開2008-044037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、セパレータ部材とセパレータ継手とを重ね合わせる位置がずれる場合等には、セパレータ部材の本体貫通孔内に挿入した軸状部材を、セパレータ継手の継手貫通孔内に挿入し難くなる。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、軸状部材をセパレータ部材側から挿入しやすくしたセパレータ継手、及びこのセパレータ継手を備えるセパレータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のセパレータ継手は、保護管本体内を仕切るセパレータ部材に、軸状部材を介して接続されるセパレータ継手であって、前記セパレータ部材に接触する第1継手壁を備え、前記第1継手壁には、前記軸状部材が内部に配置される継手貫通孔が形成され、前記第1継手壁における前記継手貫通孔が開口する外面に沿う方向を沿面方向とし、前記外面に直交する方向を厚さ方向としたときに、前記継手貫通孔の前記沿面方向の長さは、前記厚さ方向の第1側から第2側に向かうに従い長くなることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、継手貫通孔の沿面方向の長さが厚さ方向の第1側から第2側に向かうに従い長くなっていて、継手貫通孔の沿面方向の第1側の内面と、継手貫通孔の沿面方向の第2側の内面とは、互いに平行ではないる。言い換えると、継手貫通孔の沿面方向の第1側の内面に沿う方向と、継手貫通孔の沿面方向の第2側の内面に沿う方向と、は異なる。このセパレータ継手を使用する際には、セパレータ部材に、第1継手壁の厚さ方向の第1側の外面を接触させる。このとき、セパレータ部材側から軸状部材を挿入すると、継手貫通孔における厚さ方向の第1側の端部(開口)を軸状部材が通った後で、継手貫通孔内で軸状部材の向きを変えて第2側に向かって挿入することができる。具体的には、この軸状部材を、継手貫通孔の第1直交方向の第1側の内面に沿って挿入することもできるし、継手貫通孔の第1直交方向の第2側の内面に沿って(すなわち、第1直交方向の第1側の内面に沿って挿入する場合とは異なる向きに)挿入することもできる。従って、軸状部材をセパレータ部材側からセパレータ継手に挿入しやすくすることができる。
【0009】
また、前記セパレータ継手において、前記継手貫通孔の前記沿面方向のいずれかの内面は、前記継手貫通孔の前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ沿う断面視において、前記厚さ方向に沿って延びていてもよい。
ここで言う内面が厚さ方向に沿うとは、内面と厚さ方向とが平行、又は内面と厚さ方向とがなす角度が10度以下であることを意味する。
この発明によれば、継手貫通孔内に軸状部材を厚さ方向に沿って挿入しやすくすることができる。
【0010】
また、前記セパレータ継手において、前記継手貫通孔は、前記第1継手壁における前記厚さ方向の前記第1側の外面に形成される第1開口を備え、前記第1開口は、前記厚さ方向に見たときに円形状を呈していてもよい。
ここで言う第1開口が円形状を呈しているとは、第1開口における径が最も短い部分の径に対する、第1開口における径が最も長い部分の径の比が1.0以上1.2以下であることを意味する。
この発明によれば、第1開口が円形状を呈しているため、継手貫通孔の軸線周りの向きによる第1開口の径は、この向きによらずほぼ一定になる。従って、この向きにより第1開口内の軸状部材のガタつきが変化するのを抑制することができる。
【0011】
また、前記セパレータ継手において、前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ直交する方向を直交方向としたときに、前記継手貫通孔は、前記第1継手壁における前記厚さ方向の前記第2側の外面に形成される第2開口を備え、前記第2開口の前記直交方向の長さ、及び前記第1開口の前記直交方向の長さは、互いに同等であってもよい。
この発明によれば、第2開口の直交方向の長さが、第1開口の直交方向の長さ程度に抑えられる。このため、例えば、軸状部材が、継手貫通孔内に配置される軸部と、軸部よりも大径の頭部と、を備える場合において、軸部を頭部に対して厚さ方向の第1側に配置された状態で、第2開口から継手貫通孔内に軸部を挿入するとき等に、頭部が第2開口に係止しやすくすることができる。
【0012】
また、前記セパレータ継手において、前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ直交する方向を直交方向としたときに、前記直交方向に前記第1継手壁を見たときに、前記第1継手壁に対して前記厚さ方向の前記第1側に鈍角以下の角度をなす第2継手壁を備えてもよい。
ここで言う第2継手壁は、第1継手壁と直接的に連結されていない形態も含む。すなわち、例えば、第1継手壁と第2継手壁との間に、これらの両継手壁を連結する継手連結壁が配置されている形態なども含む。第2継手壁が第1継手壁に継手連結壁を介して連結されている場合、第2継手壁が第1継手壁に対してなす角度とは、第2継手壁と第1継手壁との延長線同士が交差することにより形成される角度を意味する。
【0013】
例えば、セパレータ部材が通信ケーブルを支持する第1本体壁及び第2本体壁を備える場合について説明する。第1本体壁及び第2本体壁を直交方向に見たときに、第1本体壁及び第2本体壁は鈍角以下の第1角度をなしている。例えば、セパレータ部材は、第1角度をなす側が上方になるように配置して用いられる。
この状態で、第1本体壁の下面に第1継手壁の厚さ方向の第1側の外面を接触させ、第2本体壁の下面に第2継手壁を接触させる。すると、継手貫通孔は、角度をなす側とは反対側(下方又は斜め下方)に向かうに従い、沿面方向の長さが長くなるように配置される。従って、軸状部材をセパレータ部材側から下方又は斜め下方に向かって挿入しやすくすることができる。
【0014】
また、前記セパレータ継手において、前記第1継手壁における前記第2継手壁に連結される端部を連結端部としたときに、前記継手貫通孔の前記沿面方向における前記連結端部側の内面は、前記継手貫通孔の前記沿面方向及び前記厚さ方向にそれぞれ沿う断面視において、前記厚さ方向の前記第2側に向かうに従い漸次、前記連結端部に近づくように傾斜していてもよい。
この発明によれば、継手貫通孔内に、厚さ方向よりも上下方向に近づくように延びる空間を形成することができる。このため、軸状部材をセパレータ部材側からより下方に向かって挿入しやすくすることができる。
【0015】
また、本発明のセパレータシステムは、前記のいずれかに記載のセパレータ継手と、前記セパレータ部材と、前記軸状部材と、を備え、前記沿面方向は、前記セパレータ部材の幅方向であってもよい。
この発明によれば、軸状部材をセパレータ部材側からセパレータ継手に挿入しやすくしたセパレータ継手を用いてセパレータシステムを構成することができる。この際に、沿面方向はセパレータ部材の幅方向である。このため、例えば継手貫通孔内に軸状部材を挿入する際に、軸状部材がこの幅方向に向きを変えやすい場合であっても、継手貫通孔により軸状部材を挿入しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセパレータ継手によれば、軸状部材をセパレータ部材側から挿入しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のセパレータ継手が用いられるケーブル保護管路の斜視図である。
【
図2】同ケーブル保護管路が備えるケーブル保護管の一部を破断した斜視図である。
【
図3】同ケーブル保護管のセパレータ部材の正面図である。
【
図4】同セパレータ部材及びセパレータ継手の要部の縦断面図である。
【
図5】同セパレータ部材に本体貫通孔等を形成するための加工用治具を説明する断面図である。
【
図8】同セパレータ継手の要部を厚さ方向の下方から第1側に見た図である。
【
図10】
図9を厚さ方向の下方から第1側に見た図である。
【
図11】リベットが挿入される向きが変わった場合の同セパレータ部材及びセパレータ継手の要部の断面図である。
【
図13】従来のセパレータ部材及びセパレータ継手の要部の断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態のセパレータ継手が曲管用のセパレータ部材に接続された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るセパレータ継手の一実施形態を、
図1から
図15を参照しながら説明する。
本実施形態のセパレータ継手は、
図1に示すケーブル保護管路1に用いられる。ケーブル保護管路1は、いわゆる一管セパレート方式のケーブル保護管2を備えている。ケーブル保護管2内には、通信ケーブル100が収容されている。ケーブル保護管2は、地中Gに埋設され、地中Gに通信ケーブル100を設置するためのものである。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ケーブル保護管2は、保護管本体10と、セパレータ部材15と、セパレータ継手35と、を備えている。なお、
図2では一部のセパレータ部材15を二点鎖線で示している。
図2に示すように、保護管本体10は円管状に形成されている。保護管本体10の内周面には、この内周面から保護管本体10の径方向(以下、単に径方向と言う)内側に向かって突出する凸部11が一対形成されている。一対の凸部11は、保護管本体10の管軸Oを挟むように配置されている。すなわち、一対の凸部11のうちの一方の凸部11は、他方の凸部11に対して、管軸O回りに180度移動した位置に配置されている。
なお、一対の凸部11の配置はこれに限定されず、一対の凸部11は保護管本体10の周方向の任意の位置に配置することが可能である。
保護管本体10及び一対の凸部11は、硬質塩化ビニル等の強度の高い合成樹脂材料を押出し成形することで一体に形成されている。保護管本体10は、管軸Oが水平面に沿うよう配置されている。なお、保護管本体10が配置される向きは、これに限定されない。
【0020】
図2に示すように、セパレータ部材15は、保護管本体10の内部空間Sを上下方向に仕切っている。なお、セパレータ部材15が保護管本体10内を仕切る方向は上下方向に限定されず、管軸O方向に見たときの左右方向等でもよい。
図2及び
図3に示すセパレータ部材15は、いわゆる直管用のセパレータ部材である。セパレータ部材15は、板状部16と、一対の板ばね部25と、を備えている。なお、
図3は、セパレータ部材15を管軸Oに沿って見た、セパレータ部材15の正面図である。
板状部16は、本体連結壁17と、第1本体壁18と、第2本体壁19と、を備えている。本体連結壁17、第1本体壁18、及び第2本体壁19は、それぞれ平板状に形成されている。
本体連結壁17は、本体連結壁17の厚さ方向が上下方向に沿うように配置されている。
【0021】
第1本体壁18は、本体連結壁17の幅方向(管軸O方向に見たときに本体連結壁17の厚さ方向に直交する方向。以下では単に幅方向と言う)の第1端部から、本体連結壁17から離間するに従い漸次、上方に向かうように傾斜している。第2本体壁19は、本体連結壁17の幅方向の第2端部から、本体連結壁17から離間するに従い漸次、上方に向かうように傾斜している。
図3に示すように管軸Oに沿って見たときに、第1本体壁18及び第2本体壁19がなす第1角度θ1は、鈍角以下(0度よりも大きく180度未満)である。
ここで、第1角度θ1とは、第1本体壁18及び第2本体壁19が互いに接触していない場合には、第1本体壁18の外面の延長線L1と第2本体壁19の外面の延長線L2とがなす角度のことを意味する。第1本体壁18及び第2本体壁19が互いに接触している場合には、実際に第1本体壁18の外面と第2本体壁19の外面とがなす角度のことを意味する。
例えば、セパレータ部材15は、第1角度θ1をなす側が上方になるように配置して用いられている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、第1本体壁18には本体貫通孔18aが形成されている。なお、
図4は、管軸Oに直交する断面図である。
本体貫通孔18aは、上下方向に沿って延びている。本体貫通孔18aは、第1本体壁18を上下方向に見たときに円形状を呈している。
第2本体壁19には、本体貫通孔18aと同様に本体貫通孔19aが形成されている。
【0023】
図3に示すように、板ばね部25は、ばね本体26と、第1凹部27と、を備えている。
ばね本体26は、第1本体壁18及び第2本体壁19における径方向外側の各端部から下方に向かって延びている。ばね本体26は、径方向外側に向かって凸となるように、保護管本体10の内周面に沿って湾曲している。
第1凹部27は、径方向内側に向かって窪んでいる。第1凹部27は、ばね本体26における本体壁18,19に接続される端部に設けられている。第1凹部27は、保護管本体10の凸部11に嵌め合っている(
図2参照)。
本体壁18,19と第1凹部27との間には、第2凹部28がそれぞれ形成されている。第2凹部28は、径方向外側に向かって窪んでいる。
セパレータ部材15は、硬質塩化ビニル等の強度の高い合成樹脂材料を押出し成形すること等で一体に形成されている。
なお、セパレータ部材15が配置される向きは、これに限定されない。
【0024】
図2に示すように、セパレータ部材15は、内部空間Sを、板状部16よりも上方の上側管路S1と、板状部16よりも下方の下側管路S2と、に仕切っている。
板状部16の上側の外面は、上側管路S1に引込用ケーブルを収納するために、例えば、保護管本体10の内周面との間には直径φ100mmの円が内接可能な程度の収容空間が確保可能に設定されている。
【0025】
なお、押出し成形された直後のセパレータ部材15に本体貫通孔18a,19aは形成されていない。本体貫通孔18a,19aは、例えば特許文献2に開示された加工用治具を用いた後加工により形成される。以下にその後加工の概要について説明する。
【0026】
この後加工には、
図5に示す加工用治具110が用いられる。加工用治具110は、下側部材111と、上側部材115と、スライダープレート120と、を備えている。
下側部材111の天板部112は、図示しない立板部等によって水平面に対して傾斜するように支持されている。天板部112には、穿孔用のガイド孔112aが形成されている。
上側部材115の傾斜部116は、天板部112とともにセパレータ部材15の第1本体壁18を上下方向に挟む。傾斜部116には、穿孔用のガイド孔116aが形成されている。
スライダープレート120は、上側部材115上に、水平面に沿うように設けられている。スライダープレート120には、穿孔用のガイド孔120aが形成されている。これらガイド孔112a,116a,120aは、上下方向に沿う同軸上に配置されるように位置が調整される。
ガイド孔112a,116a,120aに、電気ドリルDのキリD1を貫通させる。すると、第1本体壁18に上下方向に沿って延びる本体貫通孔18aが形成される。
本体貫通孔19aは、本体貫通孔18aと同様に形成される。
【0027】
図6及び
図7に示すように、セパレータ継手35は、継手連結壁37と、第1継手壁38と、第2継手壁39と、を備えている。なお、
図6ではセパレータ部材15を二点鎖線で示している。
継手連結壁37、第1継手壁38、及び第2継手壁39は、それぞれ平板状に形成され、
図6に示す平面視でそれぞれ矩形状を呈している。第1継手壁38、継手連結壁37、及び第2継手壁39は、幅方向にこの順で並べて配置されている。
継手連結壁37の長手方向(管軸O方向)の各端部には、連結貫通孔42がそれぞれ形成されている。連結貫通孔42は、継手連結壁37の厚さ方向に延びていて、継手連結壁37の厚さ方向に見たときに円形状を呈している。
【0028】
第1継手壁38は、継手連結壁37の幅方向の第1端部から、継手連結壁37から離間するに従い漸次、上方に向かうように傾斜している。第1継手壁38の管軸O方向の長さ、及び継手連結壁37の管軸O方向の長さは、互いに同等である。
ここで、第1継手壁38における、継手連結壁37を介して第2継手壁39に連結される端部を連結端部38aと言う。なお、セパレータ継手35が継手連結壁37を備えない場合には、連結端部38aは第1継手壁38における第2継手壁39に直接連結される端部である。
【0029】
第2継手壁39は、継手連結壁37の幅方向の第2端部から、継手連結壁37から離間するに従い漸次、上方に向かうように傾斜している。第2継手壁39の管軸O方向の長さ、及び継手連結壁37の管軸O方向の長さは、互いに同等である。
継手連結壁37、第1継手壁38、及び第2継手壁39の管軸O方向の中心の位置は、互いに一致している。
図7に示すように管軸Oに沿って見たときに、第1継手壁38及び第2継手壁39がなす第2角度(角度)θ2は、鈍角以下である。
ここで、第2角度θ2とは、第1継手壁38及び第2継手壁39が互いに接触していない場合には、第1継手壁38の外面の延長線L6と第2継手壁39の外面の延長線L7とがなす角度のことを意味する。第1継手壁38及び第2継手壁39が互いに接触している場合には、実際に第1継手壁38の外面と第2継手壁39の外面とがなす角度のことを意味する。第2角度θ2は、第1角度θ1と同程度である。
【0030】
第1継手壁38、第2継手壁39に形成されている継手貫通孔43,44については、後で詳しく説明する。
【0031】
図2に示すように、継手連結壁37、第1継手壁38、第2継手壁39の管軸O方向の第1端部は、本体連結壁17、第1本体壁18、第2本体壁19の下方から、本体連結壁17、第1本体壁18、第2本体壁19の下面にそれぞれ接触している。
継手連結壁37、第1継手壁38、第2継手壁39は、本体連結壁17、第1本体壁18、第2本体壁19に平行にそれぞれ配置されている。
第1継手壁38及び第2継手壁39は、セパレータ部材15の第1凹部27により第1継手壁38及び第2継手壁39の下方からそれぞれ支持されている。
セパレータ継手35は、第2角度θ2をなす側が上方になるように配置して用いられている。
【0032】
ここで、
図4に示すように、管軸Oに直交する断面において、第1継手壁38における継手貫通孔43が開口する外面(上面)に沿う方向を沿面方向Yとする。この外面に直交する方向を、厚さ方向Xとする。そして厚さ方向Xのうち、上方に向く側を第1側X1とし、下方に向く側を第2側X2とする。沿面方向Y及び厚さ方向Xにそれぞれ直交する方向を直交方向Zとする。直交方向Zは、管軸O方向である。沿面方向Yは、セパレータ部材15の幅方向(第1本体壁18及び第2本体壁19が並ぶ方向)である。
【0033】
図4及び
図6に示すように、第1継手壁38には、管軸O方向に沿って複数の継手貫通孔43が形成されている。
図8は、継手貫通孔43を厚さ方向Xの下方から第1側X1に見た図である。
図4は、沿面方向Y及び厚さ方向Xにそれぞれ沿う断面図である。
図4及び
図8に示すように、継手貫通孔43の沿面方向Yの長さは、厚さ方向Xの第1側X1から第2側X2に向かうに従い長くなる。
継手貫通孔43の沿面方向Yにおける第2継手壁39とは反対側の外側内面(内面)43aは、厚さ方向Xに沿って延びている。継手貫通孔43の沿面方向Yにおける連結端部38a側の内側内面(内面)43bは、厚さ方向Xの第2側X2に向かうに従い漸次、連結端部38aに近づくように傾斜している。継手貫通孔43の断面形状は、台形状である。
第1本体壁18の下面に、第1継手壁38の厚さ方向Xの第1側X1の外面が接触している。
【0034】
このように、継手貫通孔43の沿面方向Yの長さが厚さ方向Xの第1側X1から第2側X2に向かうに従い長くなっていて、継手貫通孔43の内側内面43bと外側内面43aとは、互いに平行ではない。言い換えると、継手貫通孔43の内側内面43bに沿う方向と外側内面43aに沿う方向とは異なる。
継手貫通孔43は斜め下方に向かうに従い、沿面方向Yの長さが長くなるように配置される。直交方向Zに見て、第2角度θ2は、第1継手壁38に対して厚さ方向Xの第1側X1に形成される(
図4参照)。
【0035】
ここで、
図4及び
図8に示すように、第1継手壁38における厚さ方向Xの第1側X1の外面に形成される継手貫通孔43の開口を、第1開口43cと言う。第1継手壁38における厚さ方向Xの第2側X2の外面に形成される継手貫通孔43の開口を、第2開口43dと言う。
図8に示すように、第1開口43cは、厚さ方向Xに見たときに円形状を呈している。第1開口43cの直交方向Zの長さ、及び第2開口43dの直交方向Zの長さは、互いに同等である。
例えば、第2角度θ2が140度で、後述するリベット50Aの径が4mmの場合について説明する。この場合、
図4に示すように、上下方向に沿うように見たときの第1開口43cにおける幅方向の長さM1は、4.3mmである。
【0036】
図6に示すように、第2本体壁19には、管軸O方向に沿って複数の継手貫通孔44が形成されている。継手貫通孔44は、管軸Oを含む鉛直面に対して、継手貫通孔43と面対称に形成されている。
セパレータ継手35は、硬質塩化ビニル等の強度の高い合成樹脂材料を射出成形することで一体に形成されている。また、セパレータ継手35は、塩化ビニルシートのプレス加工等によっても製造することができる。
【0037】
セパレータ部材15とセパレータ継手35とは、
図9及び
図10に示すリベット(軸状部材)50を介して接続されている。なお、このリベット50、セパレータ部材15、及びセパレータ継手35で、セパレータシステム55を構成する(
図2参照)。
リベット50は、軸部51と、軸部51よりも大径の第1頭部52、第2頭部53と、を備えている。
軸部51は、円柱状に形成され、セパレータ部材15の本体貫通孔18aの内部、及びセパレータ継手35の継手貫通孔43の内部にそれぞれ配置されている。
軸部51は、継手貫通孔43の内側内面43bに沿って配置されている。第1頭部52は、軸部51の第1端部に接続され、第1本体壁18の上面にこの上面の上方から係止している。第2頭部53は、軸部51の第2端部に接続され、第1継手壁38の下面にこの下面の下方から係止している。
【0038】
図示はしないが、リベット50の軸部51は、セパレータ部材15の本体貫通孔19aの内部、及びセパレータ継手35の継手貫通孔44の内部にそれぞれ配置されている。そして、第1頭部52は、第2本体壁19の上面にこの上面の上方から係止している。第2頭部53は、第2継手壁39の下面にこの下面の下方から係止している。
こうして、セパレータ部材15とセパレータ継手35とがリベット50を介して接続されている。
【0039】
図1に示すように、ケーブル保護管2の上側管路S1には、通信ケーブル100である引込用ケーブル100aが収容されている。
下側管路S2には、さや管103内に配置された通信ケーブル100である幹線用ケーブル100bが収容されている。
【0040】
以上のように構成されたケーブル保護管2は、以下のようにして施工される。
地中Gに、保護管本体10を埋設する。
保護管本体10内に、セパレータ部材15の先端部(管軸O方向の端部)を配置する。この際に、一対の凸部11にセパレータ部材15の一対の第1凹部27を嵌め合わせる。
セパレータ部材15の基端部に、セパレータ継手35をリベット50を介して接続する。この際に、セパレータ部材15側から本体貫通孔18a内に、第2頭部53が形成される前のリベット50であるリベット50A(
図9参照)を挿入する。継手貫通孔43における厚さ方向Xの第1側X1の端部(第1開口43c)をリベット50Aが通った後で、継手貫通孔43内でリベット50Aの向きを変えて第2側X2に向かって挿入することができる。具体的には、
図9及び
図10に示すように、リベット50Aを継手貫通孔43の内側内面43bに沿って挿入することもできる。また、リベット50の接続の仕方によっては、
図11及び
図12に示すように、リベット50Aを継手貫通孔43の外側内面43aに沿って挿入することもできる。従って、リベット50Aをセパレータ部材15側からセパレータ継手35に挿入しやすくすることができる。
【0041】
なお、第1継手壁38は水平面に対して傾斜しているため、リベット50Aを挿入する際に、セパレータ部材15の幅方向にリベット50Aの向きが変わりやすい。
管軸Oに直交する断面において、継手貫通孔43内でリベット50の向きが変えられる。このため、地震等の振動が保護管本体10に与えられたときに、継手貫通孔43内でリベット50の向きを変えてこの振動を吸収することができる。
【0042】
前記工程の後で、リベット50Aに第2頭部53を形成して、リベット50とする。本体貫通孔18a及び継手貫通孔43内に挿入したリベット50を介して、セパレータ部材15とセパレータ継手35とが接続される。
同様に、本体貫通孔19a及び継手貫通孔44内に挿入したリベット50を介して、セパレータ部材15とセパレータ継手35とを接続する。以上の工程で、セパレータ部材15とセパレータ継手35とを接続する。
セパレータ継手35の基端側に、別のセパレータ部材15を配置する。そして、この別のセパレータ部材15とセパレータ継手35とを、リベット50を介して接続する。セパレータ継手35を介して接続したセパレータ部材15を、保護管本体10内に挿入する。
【0043】
本実施形態のセパレータ継手35では、継手貫通孔43の外側内面43aは、厚さ方向Xに沿って延びている。このため、継手貫通孔43内にリベット50を厚さ方向Xに沿って挿入しやすくすることができる。
継手貫通孔43の第1開口43cは、厚さ方向Xに見たときに円形状を呈している。これにより、継手貫通孔43の軸線周りの向きによる第1開口43cの径は、この向きによらずほぼ一定になる。従って、この向きにより第1開口43c内のリベット50のガタつきが変化するのを抑制することができる。
【0044】
第1開口43cの直交方向Zの長さ、及び第2開口43dの直交方向Zの長さは、互いに同等である。第1継手壁38における第2開口43dの直交方向Zの長さが、第1開口43cの直交方向Zの長さ程度に抑えられる。このため、リベット50の第2頭部53が第2開口43dに係止しやすくすることができる。
セパレータ継手35は、第1継手壁38及び第2継手壁39を備えている。セパレータ部材15の第1本体壁18の下面に第1継手壁38の上面(厚さ方向Xの第1側X1の外面)を接触させ、第2本体壁19の下面に第2継手壁39の上面を接触させる。すると、継手貫通孔43は、斜め下方に向かうに従い沿面方向Yの長さが長くなるように配置される。従って、リベット50をセパレータ部材15側から斜め下方に向かって挿入しやすくすることができる。
【0045】
継手貫通孔43の内側内面43bは、厚さ方向Xの第2側X2に向かうに従い漸次、連結端部38aに近づくように傾斜している。これにより、継手貫通孔43内に、厚さ方向Xよりも上下方向に近づくように延びる空間を形成することができる。このため、リベット50をセパレータ部材15側からより下方に向かって挿入しやすくすることができる。
また、本実施形態のセパレータシステム55によれば、リベット50をセパレータ部材15側から挿入しやすくしたセパレータ継手35を用いてセパレータシステム55を構成することができる。この際に、沿面方向Yはセパレータ部材15の幅方向である。このため、例えば継手貫通孔43内にリベット50Aを挿入する際に、リベット50Aがこの幅方向に向きを変えやすい場合であっても、継手貫通孔43によりリベット50Aを挿入しやすくすることができる。
【0046】
図13及び
図14に、従来のセパレータ継手125を、リベット50を介してセパレータ部材15に接続する例を示す。セパレータ継手125には、セパレータ継手35の継手貫通孔43に代えて、継手貫通孔126が形成されている。継手貫通孔126は、上下方向に沿って延びている。継手貫通孔126は、上下方向に見たときに円形状を呈している。
例えば、第2角度θ2が140度で、リベット50Aの径が4mmの場合について説明する。
図13に示すように、リベット50Aを厚さ方向Xに沿って挿入する場合には、上下方向に沿うように見たときの継手貫通孔126の径M2は、5.0mm必要である。このように、従来のセパレータ継手125では、本実施形態の継手貫通孔43に比べて、第1継手壁38の上面に形成される開口の幅方向の長さが長くなる。
なお、従来のセパレータ継手において継手貫通孔を厚さ方向Xに沿って形成する場合には、厚さ方向Xに沿うように見たときの継手貫通孔の径は、4.3mmとなる。ただしこの継手貫通孔内でリベット50Aの向きを変えることはできない。
【0047】
図15に示すように、セパレータ継手35の連結貫通孔42は、セパレータ継手35をリベット50を介して、公知の曲管用のセパレータ部材60と接続するのに用いられる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、前記断面視において、外側内面43aは厚さ方向Xに沿って延びていなくてもよい。継手貫通孔43の第1開口43cは、厚さ方向Xに見たときに円形状を呈していなく、だ円形状や長円形状等を呈していてもよい。第1開口43cの直交方向Zの長さ、及び第2開口43dの直交方向Zの長さは、互いに同等でなくてもよい。
【0049】
セパレータ継手35は、継手連結壁37を備えず、第1継手壁38及び第2継手壁39を備えてもよい。さらにセパレータ継手は、第2継手壁39を備えなくてもよい。
セパレータ部材15は、本体連結壁17及び一対の板ばね部25を備えなくてもよい。
軸状部材はリベット50であるとしたが、軸状部材はリベット50に限定されず、ボルト及びナット等であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 保護管本体
15 セパレータ部材
35 セパレータ継手
38 第1継手壁
38a 連結端部
43 継手貫通孔
43a 外側内面(内面)
43b 内側内面(内面)
43c 第1開口
43d 第2開口
50,50A リベット(軸状部材)
55 セパレータシステム
X 厚さ方向
X1 第1側
X2 第2側
Y 沿面方向
Z 直交方向
θ2 第2角度(角度)