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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】摺動部材
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/06 20060101AFI20231122BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20231122BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20231122BHJP
   C22C 38/04 20060101ALI20231122BHJP
   B22F 7/04 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C22C9/06
C22C9/02
C22C38/00 301Z
C22C38/04
B22F7/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019175167
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050398
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花井 亮
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-212211(JP,A)
【文献】特開2013-049887(JP,A)
【文献】特開2003-194061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/00- 9/10
C22C 33/00-38/60
B22F 1/00- 8/00
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面および接合表面を有する裏金層と、
前記裏金層の前記接合表面上に設けられた銅合金からなる、摺動面を有する摺動層と
を備える摺動部材であって、
銅合金の組成は、0.5~12質量%のSn、0.5~15質量%のNi、0.06~0.2質量%のPを含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、
前記裏金層は、0.07~0.35質量%の炭素を含有する亜共析鋼からなり、フェライト相およびパーライトからなる組織を有し、
前記裏金層は、前記接合表面から内部に向かって延在する空孔含有領域を有し、
前記摺動面に垂直な断面視にて、前記空孔含有領域には前記接合表面に開口しない複数の閉空孔が存在し、該閉空孔の平均径は5~15μmであり、前記空孔含有領域の厚さは10~60μmであり、
前記空孔含有領域の体積V1に対する前記閉空孔の全体積V2の割合は、V2/V1=0.05~0.1である、摺動部材。
【請求項2】
前記摺動面に垂直な断面視にて、前記閉空孔と前記接合表面との平均離間距離は5~15μmである、請求項1に記載された摺動部材。
【請求項3】
前記摺動面に垂直な断面視にて、隣接する前記閉空孔どうしの前記接合表面に平行方向の平均離間距離は5~15μmである、請求項1または請求項2に記載された摺動部材。
【請求項4】
前記摺動面に垂直な断面視にて、前記閉空孔の平均アスペクト比は2.5以下である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項5】
前記裏金層の厚さ方向中央部における組織中のパーライトの体積割合Pcと、前記空孔含有領域におけるパーライトの体積割合Psが
Ps/Pc≦0.5
の関係を満たす、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項6】
前記裏金層のうち前記空孔含有領域を除く領域の組成は、0.07~0.35質量%のC、0.4質量%以下のSi、1質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.05質量%以下のSを含み、残部がFe及び不可避不純物である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【請求項7】
前記銅合金は、0.01~10質量%のFe、0.01~5質量%のAl、0.01~5質量%のSi、0.1~5質量%のMn、0.1~30質量%のZn、0.1~5質量%のSb、0.1~5質量%のIn、0.1~5質量%のAg、0.5~25質量%のPb、0.5~20質量%のBiのうちから選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関や自動変速機に用いられる軸受や各種機械に用いられる軸受などの摺動部材に関するものである。詳細には、本発明は、裏金層上に形成された摺動層を備える摺動部材に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から内燃機関や自動変速機等の軸受部には、銅合金からなる摺動層を鋼裏金層上に設けた摺動材料を円筒形状や半円筒形状に成形したすべり軸受などの摺動部材が用いられている。例えば、特許文献1および特許文献2には、銅鉛軸受合金やリン青銅を摺動層に用いた摺動部材が記載されている。このような摺動部材では、銅合金からなる摺動層により摺動特性とともに耐焼付や耐摩耗性が得られ、他方、裏金層は銅合金の支持体として機能するとともに摺動部材に強度を付与している。
【0003】
内燃機関や自動変速機の運転時、摺動部材は、摺動層の摺動面で、相手軸部材からの動荷重を支承する。例えば、すべり軸受は、内燃機関や自動変速機等の軸受ハウジングの円筒形状の軸受保持穴に装着して用いられ、回転する相手軸部材からの動荷重を受ける。近年、内燃機関や自動変速機は、低燃費化のため軽量化がなされ、従来よりも軸受ハウジングの剛性が低くなっている。そのため、内燃機関の運転時、内燃機関および内燃機関に接続する自動変速機の軸受部では、相手軸部材からの動荷重負荷により軸受ハウジングが弾性変形しやすくなっている。軸受ハウジングの軸受保持穴に装着された摺動部材(すべり軸受)は、軸受ハウジングの変形に伴い周方向に弾性変形する。このようにすべり軸受に変動する周方向力が加わると、従来の摺動部材は、銅合金からなる摺動層と鋼裏金層の弾性変形量の違いにより、これらの界面でせん断が起こる場合があり、摺動部材が破損する問題があった。
【0004】
特許文献3は、軸受合金層と鋼裏金層との接合強度を向上させることを課題にしている。特許文献3では、銅合金としてCu-Sn-Fe系合金を用い、熱処理によりSn-Fe化合物を析出させ、銅合金の結晶粒を微細化させており、それにより軸受合金層と鋼裏金層との接合強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-322462号公報
【文献】特開2002-220631号公報
【文献】特開2006-22896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献3の手法によっても軸受合金層と鋼裏金層との接合強度を高められるが、動荷重負荷がかかった場合の軸受合金層と鋼裏金層とのせん断の抑制には不十分であった。したがって、本発明の目的は、従来に比べて摺動層と裏金層との強固な接合を有する摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、背面および接合表面を有する裏金層と、裏金層の接合表面上に設けられた銅合金からなる摺動層とを備える摺動部材が提供される。摺動層は摺動面を有する。この銅合金の組成は、0.5~12質量%のSn、0.5~15質量%のNi、0.06~0.2質量%のPを含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、裏金層は、0.07~0.35質量%の炭素を含有する亜共析鋼からなり、フェライト相およびパーライトからなる組織を有する。裏金層は、接合表面から内部に向かって延在する空孔含有領域を有する。摺動面に垂直な断面視にて、空孔含有領域には、接合表面に開口しない複数の閉空孔が存在し、この閉空孔の平均径は5~15μmであり、空孔含有領域の厚さは10~60μmである。空孔含有領域の体積V1に対する閉空孔の全体積V2の割合は、V2/V1=0.05~0.1になっている。
【0008】
本発明による摺動部材は、摺動層との界面となる裏金層の接合表面に、上記の空孔含有領域を有する。この空孔含有領域は、複数の閉空孔を有するために弾性変形しやすくなっており、摺動層の銅合金との弾性変形量の差が小さくなっている。このため、摺動部材に外力が加わった場合、摺動層の銅合金と裏金層の空孔含有領域との弾性変形量の差が小さく、摺動層の銅合金と裏金層とのせん断が起き難い。
【0009】
本発明の一具体例によれば、摺動面に垂直な断面視にて、閉空孔と接合表面との平均離間距離は5~15μmであることが好ましい。
【0010】
本発明の一具体例によれば、摺動面に垂直な断面視にて、隣接する閉空孔どうしの接合表面に平行方向の平均離間距離は5~15μmであることが好ましい。
【0011】
本発明の一具体例によれば、摺動面に垂直な断面視にて、閉空孔の平均アスペクト比は2.5以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の一具体例によれば、裏金層の厚さ方向中央部における組織中のパーライトの体積割合Pcと、空孔含有領域におけるパーライトの体積割合Psが
Ps/Pc≦0.5
の関係を満たすことが好ましい。
【0013】
本発明の一具体例によれば、裏金層のうち空孔含有領域を除く領域の組成は、0.07~0.35質量%のC、0.4質量%以下のSi、1質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.05質量%以下のSを含み、残部がFe及び不可避不純物であることが好ましい。
【0014】
本発明の一具体例によれば、銅合金は、0.01~10質量%のFe、0.01~5質量%のAl、0.01~5質量%のSi、0.1~5質量%のMn、0.1~30質量%のZn、0.1~5質量%のSb、0.1~5質量%のIn、0.1~5質量%のAg、0.5~25質量%のPb、0.5~20質量%のBiのうちから選ばれる1種以上をさらに含むことが好ましい。
【0015】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は、添付図面を参照して以下の本発明の非限定的具体例の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る摺動部材の一例における摺動面に垂直方向の断面の模式図。
図2図1に示す裏金層の空孔含有領域付近の断面組織の模式図。
図2A図1に示す裏金層の厚さ方向中央部での断面組織の模式図。
図3】閉空孔と接合表面との離間距離L1および閉空孔どうしの間の離間距離L2を説明する図。
図4】閉空孔のアスペクト比A1を説明する図。
図5】本発明に係る摺動部材の他の例における裏金層の空孔含有領域付近の断面組織の模式図。
図6】従来の摺動部材の摺動面に垂直方向の断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図6に従来の摺動部材11の断面の模式図を示す。摺動部材11は、裏金層12の一方の表面上に銅合金14からなる摺動層13が形成されている。裏金層12は、炭素の含有量が0.07~0.35質量%の亜共析鋼であり、その組織は通常の亜共析鋼の組織を示す。すなわち、フェライト相6を主とし、粒状のパーライト7がフェライト相の素地に分散している(図2A参照)。この組織が、厚さ方向の全体に均質に形成されている。そのため、裏金層12は、外力に対する変形抵抗が裏金層12の厚さ方向にわたって概ね均一になっている。
【0018】
上記のように軸受装置の運転時には、相手軸部材からの動荷重負荷により軸受ハウジングは弾性変形しやすくなっているので、従来の摺動部材11では、軸受ハウジングの軸受保持穴に装着された摺動部材(すべり軸受)は、軸受ハウジングの変形に伴い変動する周方向力が加わりそれに伴い弾性的な変形を生じる。従来の摺動部材11は、裏金層12が通常の亜共析鋼の組織であり、摺動層13の銅合金14よりも強度が高く変形抵抗が大きくなっているため、裏金層12と摺動層13との界面では、裏金層12と摺動層13の銅合金14との弾性変形量の差が大きく、そのため、裏金層12と摺動層13との間でせん断が発生し易い。
【0019】
本発明に係る摺動部材1の一具体例を図1図2図2Aを参照して説明する。図1は、裏金層2上に銅合金4からなる摺動層3を形成した摺動部材1の断面を示す模式図である。摺動層3は、裏金層2の反対側に摺動面31を有する。裏金層2は、一方の表面(接合表面21)上に摺動層3が形成されており、接合表面21の反対側に背面22を有する。銅合金層4との界面となる裏金層2の接合表面21には、下記に説明する空孔含有領域5が形成されている。
【0020】
なお、本発明の摺動部材は、摺動層および/または裏金層の表面にSn、Bi、Pbまたは、これら金属を基とする合金からなる被覆層や、合成樹脂または合成樹脂を基とする被覆層を任意に有してもよい。その場合でも本明細書では摺動層3の表面を「摺動面31」と称する。
【0021】
図2は、裏金層2の接合表面21付近の組織を示す拡大図であり、裏金層2には、その接合表面21から内部に向かって一定の距離だけ延在し、多数の閉空孔を有する空孔含有領域が存在する。他方、図2Aは、裏金層2の厚さ方向中央部(以後、単に「裏金層2の中央部」という)の組織を示す拡大図である。なお、図2および図2Aでは、組織中のフェライト相6とパーライト7は、理解を容易にするために誇張して描かれている。
【0022】
摺動層3の銅合金4の組成は、0.5~12質量%のSn、0.5~15質量%のNi、0.06~0.2質量%のPを含み、残部がCu及び不可避不純物である。Sn、Ni,P成分は、銅合金の強度を高める成分であるが、含有量が上記下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記上限値を超える場合には、銅合金が脆くなる。なお、後述する焼結時に摺動層3の銅合金4のNi成分およびP成分は、銅合金4との界面となる裏金層2の接合表面付近に拡散し、後述する裏金層2の空孔含有領域5の形成にも関係する。
その焼結時に摺動層3の銅合金4の裏金層2の接合表面と接する付近には、裏金層2に含まれる成分が拡散することがあるが、この場合も本発明の範囲である。
【0023】
また、銅合金4の組成は、0.5~12質量%のSn、0.5~15質量%のNi、0.06~0.2質量%のPを含み、さらに、選択成分として0.01~10質量%のFe、0.01~5質量%のAl、0.01~5質量%のSi、0.1~5質量%のMn、0.1~30質量%のZn、0.1~5質量%のSb、0.1~5質量%のIn、0.1~5質量%のAg、0.5~25質量%のPb、0.5~20質量%のBiから選ばれる1種以上を含むようにすることもできる。Fe、Al、Si、Mn、Zn、Sb、In、Agは、銅合金4の強度を高める成分であるが、含有量が上記下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記上限値を超える場合には、銅合金4が脆くなる。Pb、Biは、銅合金4の潤滑性を高める成分であるが、含有量が上記下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記上限値を超える場合には、銅合金4が脆くなる。なお、銅合金4にこれら選択成分を2種以上含有させる場合、合計で40質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
摺動層3は、任意で、Al、SiO、AlN、MoC、WC、FeP、FePから選ばれる1種以上の硬質粒子を0.1~10体積%をさらに含むことができる。これら硬質粒子は、摺動層3の銅合金4の素地に分散して摺動層3の耐摩耗性を高めるが、含有量が上記下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記上限値を超える場合には、摺動層3が脆くなる。
【0025】
摺動層3は、任意で、MoS、WS、黒鉛、h-BNから選ばれる1種以上の固体潤滑剤を0.1~10体積%をさらに含むことができる。これら固体潤滑剤は、摺動層3の銅合金4の素地に分散して摺動層3の潤滑性を高めるが、含有量が上記下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記上限値を超える場合には、摺動層3が脆くなる。
【0026】
裏金層2は、炭素の含有量が0.07~0.35質量%である亜共析鋼である。この裏金層2の組織は、図2Aに示すように、フェライト相6とパーライト7とからなるものである。炭素含有量が0.07質量%未満の亜共析鋼を用いる場合には、裏金層2の強度が低く、摺動部材1の強度が不十分となる。他方、炭素含有量が0.35質量%を超える亜共析鋼を用いると、裏金層2が脆くなくなってしまう。
【0027】
なお、上記のとおり焼結時に摺動層3の銅合金4のNi成分およびP成分は、銅合金4との界面となる裏金層2の接合表面付近(空孔含有領域5)に拡散する。そのために、空孔含有領域5は、裏金層2のうち空孔含有領域を除く領域(以下、「主領域」という)よりもNi成分およびP成分が多くなっている。裏金層2の主領域の組成は、0.07~0.35質量%の炭素を含有し、さらに、0.4質量%以下のSi、1質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.05質量%以下のSのいずれか一種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる組成にできる。なお、裏金層2の組織は、フェライト相6とパーライト7とからなるが、このことは微細な析出物(走査電子顕微鏡を用い1000倍で組織観察を行っても検出できない析出物相)を含むことを排除するものではない。
【0028】
裏金層2におけるフェライト相6は、炭素の含有量が最大で0.02質量%と少なく、純鉄に近い組成の相である。一方、裏金層2におけるパーライト7は、フェライト相と鉄炭化物であるセメンタイト(FeC)相とが薄い板状に交互に並んで形成されるラメラ組織を有し、フェライト相6よりも強度が高い。
図2に示す断面組織では、裏金層2は、空孔含有領域5(閉空孔51を除く)と主領域とで、フェライト相6とパーライト7の体積割合がほぼ同じになっている。
【0029】
空孔含有領域5は、複数の閉空孔51を有する。閉空孔51は、接合表面21近くのフェライト相6の結晶粒内または結晶粒間に形成されており、接合表面21に接しない、すなわち開口しないようになっている。また、複数の閉空孔51は、摺動面31に垂直(すなわち、裏金層2の接合表面21に垂直)な断面視にて、接合表面21からほぼ同距離だけ離間して配されるものが多く、また、接合表面21に平行方向にもほぼ同距離だけ離間し配されているものが多い。(図2参照)。
【0030】
空孔含有領域5は、摺動面31に垂直な断面視にて、閉空孔51を包含するように規定された、接合表面21から内部に向かって一定厚さT1を有する領域である。空孔含有領域5の厚さT1は10~60μmである。厚さT1は、15~45μmであることがより好ましい。詳しくは、空孔含有領域5は、摺動面31に垂直な断面視にて、断面組織中で接合表面21から最も離間する閉空孔51の輪郭(裏金層2の内部側)に接し、且つ、接合表面21に平行な仮想線(図2の点線L)を引いたときに、接合表面21から仮想線Lまでの間の領域である。閉空孔51は、空孔含有領域5以外の裏金層の組織中には観察されない。ただし、径が0.5μm未満の微小な欠陥などの空隙や小孔が存在することはあるが、それらは閉空孔51とはみなさない。
【0031】
なお、裏金層2の厚さは、一般的な摺動部材では最小でも0.7mmであるので、空孔含有領域5の厚さT1が10~60μmの範囲内であれば、裏金層2の強度への影響が少ない。さらに、裏金層の厚さTに対する空孔含有領域5の厚さT1の割合X1が0.07以下とすることが好ましい。
【0032】
焼結時に摺動層3の銅合金4のNi成分およびP成分は拡散して、裏金層2の空孔含有領域5のフェライト相6に固溶される形態になる。空孔含有領域5(閉空孔51を除く)におけるNi成分の割合は0.5~5質量%程度であり、P成分の割合は0.02~0.25質量%程度である。
裏金層2の接合表面21付近への銅合金4のNi成分およびP成分の拡散は、摺動部材の摺動面31に垂直方向の断面組織を複数箇所(例えば5箇所)、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いて成分測定を行うことにより確認できる。
後述する焼結時に裏金層2の摺動層3との界面となる接合表面21付近(空孔含有領域5の付近)には、銅合金のNi成分およびP成分以外に、Cu成分、Sn成分、または上記選択成分が拡散することがあるが、この場合も本発明の範囲である。
【0033】
空孔含有領域5の体積V1に対する閉空孔51の全体積V2の割合は、5~10%(V2/V1=0.05~0.1)とする。V2/V1の値が5%未満では、空孔含有領域5の変形抵抗が高すぎて、摺動層3の銅合金4との変形抵抗の差(外力を受けた際の弾性変形量の差)を小さくする効果が不十分となる。V2/V1の値が10%を超えると、裏金層2の空孔含有領域5の変形抵抗が低くなりすぎて、外力を受けた際、閉空孔51の周囲の裏金層2(フェライト相6)が座屈(塑性変形)することがある。
【0034】
閉空孔51の平均径は5~15μmである。閉空孔51の平均径が5μm未満であると、V2/V1の値が5%未満となりやすく、閉空孔51の平均径が15μm超えると、V2/V1の値が10%を超えやすくなり、好ましくない。
なお、閉空孔51の最大径が、空孔含有領域5の厚さT1よりも小さくなることは明らかである。
【0035】
空孔含有領域5の体積V1に対する閉空孔51の全体積V2の割合V2/V1は、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の厚さ方向に平行な方向(摺動面31に垂直な方向)に切断された複数箇所(例えば5箇所)の断面組織(切断面を研磨、エタノールと3%硝酸との混合液であるナイタール液でエッチングした)において、裏金層2の接合表面21付近を倍率500倍で電子像を撮影し、その画像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image-Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、上記のように空孔含有領域5を区分し、空孔含有領域5の接合表面21から距離(厚さ)を確認した後、空孔含有領域5の組織中の閉空孔51の面積率を測定する。この面積割合の値は、空孔含有領域5の全体積V1に対する閉空孔51の全体積V2の割合に相当する。ただし、電子像の撮影倍率は、500倍に限定されないで、他の倍率に変更することができる。
【0036】
閉空孔51の平均径は、上記の手法で得られた断面の電子像を上記の像解析手法を用い閉空孔51の面積を測定し、それを円と想定した場合の平均直径(円相当径)に換算して求める。ただし、上記のとおり、0.5μm未満の微小なものは閉空孔51とはみなさない。
【0037】
閉空孔51の接合表面21からの平均離間距離L1は2.5~25μmとすることが好ましく、さらに5~15μmとすることがより好ましい。ここで、接合表面21からの平均離間距離L1は、摺動面31に垂直な断面視にて、接合表面21に垂直方向の距離である(図3参照)。この平均離間距離L1は、上記の手法で得られた電子像を上記の像解析手法を用い、各閉空孔51の接合表面21に最も近い位置(閉空孔の輪郭)から接合表面21までの間の長さを測定し平均することで求める。
【0038】
この平均離間距離L1が2.5μm未満であると、裏金層2の接合表面21と閉空孔51との間の鋼材料(すなわち、空孔含有領域5の素地部)の厚さが薄くなりすぎて、外力を受けた際、接合表面21と閉空孔51との間で座屈(塑性変形)することがある。この平均離間距離L1が25μmμmを超えると、接合表面21と閉空孔51との間の鋼材料(すなわち、空孔含有領域5の素地部)の厚さが厚くなりすぎて、摺動層3の銅合金4との変形抵抗の差(外力を受けた際の弾性変形量の差)を小さくする効果が不十分となる。
【0039】
隣接する閉空孔51どうしの平均離間距離L2は2.5~25μmとすることが好ましく、さらに5~15μmとすることがより好ましい。ここで、隣接する閉空孔51どうしの平均離間距離L2は、摺動面31に垂直な断面視にて、接合表面21に平行方向の距離である(図3参照)。この平均離間距離L2は、上記の手法で得られた電子像を上記の像解析手法を用い、閉空孔51と該空孔51に最も近くに位置する他の閉空孔51との間(閉空孔51の輪郭(線)どうしの間)の接合表面21に平行方向の長さ(閉空孔の輪郭間の長さ)を測定し平均することで求める。
【0040】
この平均離間距離L2が2.5μm未満であると、閉空孔51どうしの間の鋼材料(すなわち、空孔含有領域5の素地部)の厚さ(長さ)が薄くなりすぎて、外力を受けた際、閉空孔51どうしの間で裏金層2が座屈(塑性変形)することがある。この平均離間距離L2が25μmを超えると、摺動層3の銅合金4との変形抵抗の差(外力を受けた際の弾性変形量の差)を小さくする効果が不十分となる。
【0041】
閉空孔51の平均アスペクト比A1は3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。ここで、閉空孔51の平均アスペクト比A1は、摺動面31に垂直な断面視にて長軸と短軸との比の平均で表される。閉空孔51が略球状であると、外力を受けた際、閉空孔51の変形(閉空孔51の周囲の空孔含有領域5の素地部の変形)が起こり難い。なお、閉空孔51は、その長軸が接合表面21に略平行を向いて配向したものが多いことが好ましい。
【0042】
閉空孔51のアスペクト比A1は、上記の手法で得られた電子像を、上記の像解析手法を用い、各閉空孔51の長軸の長さL3と短軸の長さS1の比(長軸の長さL3/短軸の長さS1)の平均として求める(図4参照)。なお、閉空孔の長軸の長さL3は、上記電子像中の閉空孔の長さが最大となる位置での長さを示し、閉空孔の短軸の長さS1は、この長軸の長さL3の方向に直交する方向での長さが最大となる位置での長さを示す。
【0043】
図5に、本発明による摺動部材の他の具体例の断面模式図を示す。この例では、裏金層2の空孔含有領域5の組織中のパーライト7の割合が少なくなっている点で図2の例とは異なる。その他の構成は図2と同じであるので説明は省略する。
【0044】
図5は、裏金層2の接合表面21付近の空孔含有領域5の組織を示す拡大図である。図5では、組織中のフェライト相6とパーライト7は、理解を容易にするために誇張して描かれている。裏金層2の厚さ方向中央部(以後、単に「裏金層2の中央部」という)の組織は、図2Aに示す組織と同じになっている。
【0045】
空孔含有領域5の組織中のパーライト7の体積割合は、裏金層2の中央部における組織中のパーライト7の体積割合に対して50%以上少なくなっている。すなわち、裏金層2の中央部における組織中のパーライトの体積割合Pcと、空孔含有領域5におけるパーライトの体積割合Psが、Ps/Pc≦0.5になっている。
【0046】
組織中のパーライト7の面積率は、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の厚さ方向に平行な方向(摺動面31に垂直な方向)に切断された複数箇所(例えば5箇所)の断面組織において、裏金層2の中央部、及び、裏金層2の空孔含有領域51をそれぞれ倍率500倍で電子像を撮影し、その画像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image-Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、組織中のパーライト7の面積率を測定する。そして、裏金層2の中央部における組織中のパーライト7に対して、空孔含有領域51における組織中(閉空孔5を除く)のパーライト7の面積割合が50%以上少なくなっていることが確認できる。
【0047】
なお、裏金層2の中央部は、厳密な意味での裏金層2の厚さ方向に中央部位置でなくてもよい。これは、裏金層2の背面22から空孔含有領域51付近までの間の組織が、実質的にほぼ同じ組織(フェライト相6/パーライト7の面積割合がほぼ同じ)になっているからである。したがって、本明細書では「裏金層2の中央部」は、裏金層2の厚さ方向の中央部位置およびその近傍を含んでいる。なお、上記観察において組織中のパーライト7の体積割合は、断面視における面積割合として測定したが、この面積割合の値は、組織中のパーライト7の体積割合に相当する。
【0048】
組織中のパーライト7の体積割合が裏金層2の中央部における組織中のパーライト7の体積割合に対して50%以上少なくなっている組織部(低パーライト領域)23は、接合表面21から空孔含有領域51を超えて裏金層の厚さ方向の内部側にも形成されている(図5参照)。)
摺動面31に垂直な断面視にて、低パーライト領域23の厚さT2(接合表面21からの厚さ)は、空孔含有領域5の厚さT1に対して1.1~1.5倍(T2/T1=1.1~1.5)とすることが好ましい。
【0049】
裏金層2は、炭素の含有量が0.07~0.35質量%の亜共析鋼である。亜共析鋼の組織はフェライト相6とパーライト7とからなり、パーライト7の割合は、炭素の含有量に応じて決まるが、通常は30体積%以下である。裏金層2の中央部はこのような亜共析鋼の通常の組織である。
しかし、摺動層3との界面となる裏金層2の接合表面21の空孔含有領域5は、組織中のパーライト7の体積割合が、裏金層2の中央部における組織中のパーライト7の体積割合に対して50%以上少なくなっている。フェライト相6は、パーライト7に比較して銅合金との弾性変形差が小さいため、摺動部材に外力が加わった場合、摺動層3の銅合金4と裏金層2の空孔含有領域5との界面での弾性変形量の差が小さく、その界面でのせん断が起き難くなり、摺動層3の銅合金4と裏金層2との接合をさらに強くすることができる。
他方、裏金層2に必要な強度は、裏金層2のうちの低パーライト領域23を除き、通常の量のパーライトを有する亜共析鋼の組織であるので、強度が高い。このため、摺動部材1は、軸受ハウジングへの装着に伴う周方向応力や軸受装置の運転時に摺動部材に加わる周方向力による塑性変形が起き難い。
【0050】
以下に、本実施形態に係る摺動部材の作製方法について説明する。
【0051】
まず、摺動層の上記組成の銅合金の粉末を準備する。また、摺動層に上記硬質粒子や上記固体潤滑剤を含有させる場合は、銅合金粉末と硬質粒子や固体潤滑剤粒子との混合粉を作製する。
【0052】
準備した銅合金粉末または混合粉を上記組成の鋼(亜共析鋼)板上に散布した後、粉末散布層を加圧することなく、焼結炉を用いて800~950℃の還元雰囲気で1次焼結を行い、鋼板上に多孔質銅合金層を形成し、室温まで冷却する。
【0053】
次に、多孔質銅合金層を緻密化し、さらに、鋼板の多孔質銅合金層と接する表面付近を活性化するために1次圧延を行う。従来の摺動部材の製造においては、この1次圧延は、多孔質銅合金層の空孔を減少させて緻密化することを目的として行われており、鋼板はほとんど圧延されなかった。しかし、本発明に係る摺動部材の製造では、この1次圧延での圧延率を従来よりも高くし、多孔質銅合金層が緻密化された後もさらに圧延する。1次圧延前の多孔質銅合金層の硬さは鋼板の硬さよりも低いが、この1次圧延にて多孔質銅合金層の空隙が減少し緻密化されるまでの間は、多孔質銅合金層のみが塑性変形するため十分に加工硬化させることができる。さらに、この緻密化し、且つ、加工硬化した多孔質銅合金層がさらに圧延されると、硬さの関係が逆転し、多孔質銅合金層が鋼板よりも硬さが大きくなり(例えば1次圧延後の圧延部材の緻密化された銅合金層の表面のビッカース硬さが、鋼板の背面のビッカース硬さよりも15Hv程度大きい)、鋼板も圧延されるようになる。このため、1次圧延にて、硬さが高くなった銅合金層と接する鋼板の表面付近は、内部に比べてより多くの結晶歪が導入されて活性な状態となる。
【0054】
次に、圧延された部材を焼結炉内で650℃以上鋼裏金の再結晶温度未満(例えば、700℃未満)の温度の還元雰囲気中での保持時間2~10分の回復処理を行った後、800~950℃の還元雰囲気で2次焼結を行い、銅合金層を焼結して、室温まで冷却する。この際に、裏金層の銅合金層との界面となる表面に空孔含有領域が形成される。
【0055】
空孔含有領域の形成機構は以下のように考えられる。
上記回復処理において、鋼板には回復現象が起こる。回復現象とは、鋼板が、再結晶温度未満の温度に加熱されることで、1次圧延(冷間加工)によりFe原子配列に導入された結晶歪(原子空孔)の一部が、鋼板の表面(接合表面)に移動(拡散)し、消滅する現象である。
【0056】
1次圧延にて緻密化された銅合金層と接する鋼板の表面付近に導入された結晶歪(原子空孔)は、上記回復処理により、結晶歪(原子空孔)の一部が、銅合金層と接する鋼板の表面側へ向かって移動するが、上記回復処理時には、同時に銅合金に含まれるNi成分およびP成分が、原子空孔と置き換わるように鋼板の接合表面付近への拡散が起こり、銅合金のNi成分およびP成分が拡散した領域よりも内部側の鋼板の結晶歪(原子空孔)の接合表面への拡散(移動)の抵抗となる。このため、Ni成分およびP成分が拡散した領域よりも内部側の結晶歪(原子空孔部)の多くは、銅合金のNi成分およびP成分が拡散した領域と、Ni成分およびP成分が拡散していない領域の境界付近にて、部分的に集合化して閉空孔が形成されると考える。
【0057】
ただし、銅合金に含まれるP成分が0.06質量%未満の場合には、銅合金に含まれるNi成分の鋼板の表面付近への拡散が起き難くなり、空孔含有領域が形成され難くなる。詳細は不明であるが、銅合金がP成分を多く(0.06質量%以上)含むために上記回復処理において、銅合金に発生するCu-P系液相の量が多くなり、Ni成分およびP成分の鋼板の表面付近への拡散を促進していると考えられる。
【0058】
また、上記1次圧延にて、圧延部材の緻密化された銅合金層の表面のビッカース硬さが、鋼板の背面のビッカース硬さよりも20Hv程度以上大きくした場合には、銅合金層との界面となる裏金層の表面に低パーライト領域23が形成される。
【0059】
また、低パーライト領域23の形成機構は以下のように考えられる。
2次焼結工程の昇温中のA1変態点(727℃)に達する前に、圧延部材の裏金層(鋼板)は、内部に比べて活性な状態にある銅合金層との界面となる接合表面付近が先に再結晶現象が起こる。このため、A1変態点に達する直前は、裏金層の接合表面付近と内部とで組織中のフェライト相とパーライトの割合は変わらないが、フェライト相の結晶粒は、表面付近が内部に比べて大きくなる。
【0060】
A1変態点に達すると、裏金層は、パーライトがオーステナイト相に変態し、フェライト相とオーステナイト相からなる組織となる。(A1変態点に達した直後では、裏金層は、接合表面付近と内部とでは組織中のオーステナイト相の割合およびオーステナイト相に固溶する炭素濃度は差がない。)裏金層は、その後のA1変態点を超えてA3変態点(組織がオーステナイト単相の組織になる温度)に達するまでの昇温とともに、組織中のフェライト相はオーステナイト相に徐々に変態し、組織中のフェライト相の割合が減少する。
【0061】
裏金層の接合表面付近の組織中のフェライト相は、内部のフェライト相に比べて結晶粒径が大きく安定なため、オーステナイト相への変態が起き難い。この昇温中、裏金層の表面部付近の組織中のオーステナイト相の割合は、内部の組織中のオーステナイト相の割合よりも常に小さくなる。
組織中のフェライト相は、炭素原子をほとんど固溶しない(最大で約0.02質量%)ため、裏金層の表面付近のオーステナイト相はパーライトに含まれていた炭素原子を固溶することになるが、その量は内部よりも少ない(体積)。そのために、裏金層の表面付近と内部のオーステナイト相では、炭素の濃度差が発生する。この濃度差をなくすように表面付近のオーステナイト相含まれる炭素原子が内部のオーステナイト相へ拡散し、表面付近の組織中に含まれる炭素の量は、内部の組織中に含まれる炭素の量よりも少なくなる。
【0062】
その後の冷却過程において、裏金層はA1変態点に達すると、フェライト相とパーライトからなる組織となるが、上記のように昇温過程において、
(i)銅合金層との界面となる接合表面付近の組織中に含まれる炭素量は、内部の組織中に含まれる炭素量よりも少なかったこと、及び、
(ii)昇温中の表面付近と内部での組織中に残るフェライト相の体積割合が違うこと
により、冷却後、表面付近の組織中のパーライトの体積割合は、内部の組織中パーライトの体積割合よりも少なくなったと考えられる。
【0063】
従来の摺動部材の製造においては、1次圧延にて多孔質焼銅合金層が緻密化する程度にのみ圧延するので、裏金層は圧延されない。そのため、裏金層(鋼板)の緻密化した銅合金層との界面付近に内部よりも多くの結晶歪が導入されて活性な状態となることがない。したがって、上記と同じ条件の回復処理を行っても、その後の2次焼結工程後の裏金層の組織は、空孔含有領域は形成されず、また、表面付近と内部とでパーライトの体積割合も変わらない組織となる。
【0064】
また、(先行技術文献3のように、)緻密化のための圧延の後に2次焼結を行なった銅合金層および裏金層からなる部材に対して、さらに2次圧延を行って銅合金層と裏金層とを共に圧延しても、2次焼結での熱処理により既に銅合金の硬さが裏金層の硬さよりも低くなっているので、また、銅合金層は既に緻密化されているので、2次圧延において銅合金層のみが優先し塑性変形(加工硬化)することもない。このように、2次圧延中に銅合金層が裏金よりも加工硬化し十分に硬くなることがないため、銅合金層との界面付近のみが内部より多くの結晶歪が導入されて活性な状態となることがない。このため、この圧延部材は、上記と同じ条件の回復処理および2次焼結工程での焼結条件と同じ条件で3次焼結を施しても、空孔含有領域は形成されず、また、裏金層の表面付近と内部とでパーライトの割合が変わらない組織となる。
【0065】
本発明の摺動部材は、内燃機関や自動変速機に用いられる軸受に限定されないで、各種機械に用いられる軸受に適用できる。また、軸受の形状は、円筒形状や半円筒形状に限定されないで、例えば、軸部材の軸線方向負荷を支承する円環形状や半円環形状のスラスト軸受や、自動変速機のクラッチ部(ワンウェイクラッチ)に用いられる略コ字状断面を有する円環形状のエンドプレート等にも適用できる。
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6