(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】造粒物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20231122BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20231122BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231122BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20231122BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20231122BHJP
B01J 2/04 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/04
A61K47/26
A61K35/20
A23L5/00 D
B01J2/04
(21)【出願番号】P 2019204098
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 康行
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第94/008709(WO,A1)
【文献】Chemical Engineering,1965年,Vol.72,pp.163-168(技術常識を示す文献)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 35/00-35/768
A23L 5/00- 5/30
A23L 29/00-29/30
B01J 2/00- 2/30
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)粉体の凝集度が20%以上の
乳脂肪球皮膜成分又はその含有物である粉体 90~99.8質量%
(B)平均粒子径が0.5~15μmの微粒二酸化ケイ素 0.1~4質量%
(C)ショ糖脂肪酸エステル 0.1~6質量%
を混合
する工程と、得られる混合原料を湿式造粒する工程を含む、造粒物の製造方法。
【請求項2】
前記混合原料における成分(A)に対する成分(B)の含有質量比[(B)/(A)]が0.001~0.045である請求項1記載の造粒物の製造方法。
【請求項3】
前記混合原料における成分(A)に対する成分(C)の含有質量比[(C)/(A)]が0.001~0.067である請求項1又は2記載の造粒物の製造方法。
【請求項4】
前記混合原料に多糖類を含む水溶液を噴霧して造粒することを含む、請求項1~3のいずれか1項記載の造粒物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項記載の製造方法で得られる造粒物を圧縮成型する工程を含む、圧縮成型製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造粒は、粉末原料を、原料より大きな粒状に加工する操作である。造粒物の製造には、多量の空気で原料を流動させながら混合、造粒、乾燥を同一装置で行う流動層造粒装置が広く使用されている。流動層造粒装置で製造された造粒物は、球形が多く、比較的多孔質で、溶解性が良好である。一方で、原料に凝集性が高い粉体を含む場合は、造粒時に粉体が流動しにくく、造粒が困難という問題がある。
【0003】
上記問題に対して、特許文献1には、付着凝集性の高いプランルカスト水和物を軽質無水ケイ酸等の流動化剤と混合し、流動層造粒機にて造粒を行う固形製剤用組成物の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、グルコサミンと、リン酸カルシウムや微粒二酸化ケイ素等の滑沢剤を混合し、流動層造粒機にて造粒を行う顆粒の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-211005号公報
【文献】特開2012-62279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、造粒物の生産性の面で未だ課題がある。一方、特許文献2では、グルコサミンを流動性の悪い粉体として造粒しているが、本発明者がグルコサミン(特許文献2の実施例で使用の「発酵グルコサミンK」)の凝集度を測定したところ19%と高くなく、特許文献2は高凝集性の粉体を対象に造粒する技術ではなかった。
【0006】
本発明は、凝集性が高い粉体を含む造粒物を生産性良く製造する方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、凝集性が高い粉体と微粒二酸化ケイ素とショ糖脂肪酸エステルとを所定量ずつ混合し造粒することで、造粒時に粉体を流動させることができ、高収率で凝集性が高い粉体を含む造粒物を製造できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)粉体の凝集度が20%以上の粉体 90~99.8質量%
(B)平均粒子径が0.5~15μmの微粒二酸化ケイ素 0.1~4質量%
(C)ショ糖脂肪酸エステル 0.1~6質量%
を混合して得られる混合原料を湿式造粒する工程を含む、造粒物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、造粒時に凝集性が高い粉体の流動性を良好にできるため、凝集性が高い粉体を含む造粒物を生産性良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の造粒物の製造方法は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)粉体の凝集度が20%以上の粉体 90~99.8質量%
(B)平均粒子径が0.5~15μmの微粒二酸化ケイ素 0.1~4質量%
(C)ショ糖脂肪酸エステル 0.1~6質量%
を混合して得られる混合原料を湿式造粒する工程、を有する。
【0011】
本明細書において、(A)粉体は、粉体の凝集度が20%以上の粉体である(但し、(A)粉体は、後述の成分(B)と成分(C)を除く)。粉体の凝集度は、粉体が単一の粉体の場合はその単一粉体の凝集度であり、粉体が2種以上の粉体からなる混合粉体の場合はその混合粉体の凝集度である。
粉体の凝集度は20%以上であるが、本発明の効果を享受し易い点から、好ましくは25%以上、より好ましくは28%以上、更に好ましくは31%以上であり、造粒時の粉体流動性の点から、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは57%以下である。
粉体の凝集度は、粉体特性評価装置 パウダテスタ(登録商標) PT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定することができる。詳細は後記実施例のとおりである。
【0012】
本発明において、(A)粉体は、流動性の悪い粉体(A1)と、それよりも流動性の良い粉体(A2)を含む混合粉体であることが好ましい。なお、かかる場合、混合粉体としての凝集度が上記の凝集度を満たす。
粉体としては、医薬又は食品の分野において利用される粉体が好適に用いられる。医薬又は食品原料粉体は、天然物、合成物を問わない。
【0013】
本発明において、(A)粉体の凝集度が20%以上の粉体は、本発明の効果を享受し易い点から、好ましくは乳脂肪球皮膜成分又はその含有物である。
乳脂肪球皮膜成分は、乳脂肪球を被覆している膜、及び膜を構成する成分の混合物と定義されている。乳脂肪球皮膜は、一般的に、乾燥重量の約半分が脂質で構成され、当該脂質としては、トリグリセライドやリン脂質、スフィンゴ糖脂質が含まれることが知られている(三浦晋、FOOD STYLE21、2009及びKeenan TW、Applied Science Publishers、1983、pp89-pp130)。リン脂質としては、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質、ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミン等のグリセロリン脂質が含まれることが知られている。
また、脂質以外の成分としては、ミルクムチンと呼ばれる糖タンパク質が含まれることが知られている(Mather、Biochim Biophys Acta、1978)。
【0014】
乳脂肪球皮膜成分は、製造性の点から、乳脂肪球被膜成分中の脂質の含有量が、10質量%以上、更に20質量%以上、更に30質量%以上であることが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100質量%以下、更に90質量%以下、更に60質量%以下であることが好ましい。
【0015】
乳脂肪球皮膜成分は、製造性の点から、乳脂肪球被膜成分中のリン脂質の含有量が、5質量%以上、更に8質量%以上、更に10質量%以上、更に15質量%以上であることが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100質量%以下、更に85質量%以下、更に70質量%以下、更に60質量%以下であることが好ましい。
【0016】
乳脂肪球皮膜成分は、製造性の点から、リン脂質としてスフィンゴミエリンを含むのが好ましい。乳脂肪球皮膜成分中のスフィンゴミエリンの含有量は、1質量%以上、更に2質量%以上、更に3質量%以上であることが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、50質量%以下、更に30質量%以下、更に25質量%以下、更に20質量%以下であることが好ましい。
また、同様の点から、乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量は、3質量%以上、更に5質量%以上、更に10質量%以上、更に15質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下、更に40質量%以下、更に35質量%以下、更に30質量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、乳脂肪球皮膜成分中の脂質、リン脂質及びスフィンゴミエリンの含有量、並びに乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量は、乳脂肪球皮膜成分の乾燥物に対する質量割合とする。
【0017】
乳脂肪球皮膜成分は、原料乳から遠心分離法や有機溶剤抽出法等の公知の方法により得ることができる。例えば、特開平3-47192号公報に記載の乳脂肪球皮膜成分の調製方法を用いることができる。また、特許第3103218号公報、特開2007-89535号公報に記載の方法等を用いることができる。さらに、透析、硫安分画、ゲルろ過、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、溶媒分画等の手法により精製することにより純度を高めたものを用いてもよい。
【0018】
乳脂肪球皮膜成分の原料乳としては、牛乳やヤギ乳等が挙げられる。なかでも、食経験が豊富であり、安価な点から、牛乳が好ましい。また、原料乳には、生乳、全粉乳や加工乳等の乳の他、乳製品も含まれ、乳製品としては、バターミルク、バターオイル、バターセーラム、ホエータンパク質濃縮物(WPC)等が挙げられる。
バターミルクは、牛乳等を遠心分離して得られるクリームからバター粒を製造する際に得られ、当該バターミルク中に乳脂肪球皮膜成分が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜成分としてバターミルクをそのまま使用してもよい。同様に、バターオイルを製造する際に生じるバターセーラム中にも乳脂肪球皮膜成分が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜成分としてバターセーラムをそのまま使用してもよい。
【0019】
乳脂肪球皮膜成分は、市販品を用いることもできる。斯かる市販品としては、メグレジャパン(株)「BSCP」、雪印乳業(株)「ミルクセラミドMC-5」、(株)ニュージーランドミルクプロダクツ「Phospholipid Concentrate シリーズ(500,700)」等が挙げられる。
【0020】
乳脂肪球皮膜成分と混合される粉体としては、乳脂肪球皮膜成分よりも流動性の良い粉体が好ましい。斯かる粉体は、例えば、賦形剤が挙げられる。
賦形剤としては、有機系賦形剤又は無機系賦形剤が挙げられ、有機系賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、蔗糖、麦芽糖、ブドウ糖、結晶セルロース等の糖、マルチトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、トレハロース、還元パラチノース等の糖アルコールが挙げられる。無機系賦形剤としては例えば、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。なかでも、造粒時の粉体流動性の点から、有機系賦形剤が好ましく、乳糖、デンプン類、糖アルコールが好ましく、更に糖アルコールが好ましく、更にマルチトール、エリスリトール、キシリトールが好ましく、更にマルチトールが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。糖アルコールは、無水物、水和物のいずれでもよい。
【0021】
乳脂肪球皮膜成分の含有物における乳脂肪球皮膜成分と賦形剤の混合割合は任意の割合とすることができるが、風味・嗜好性の点から、好ましくは1:1~1:0.1である。
【0022】
混合原料中に占める(A)粉体の含有量は90~99.8質量%であるが、有効成分の高含有化の点から、96.5~99.1質量%であることが好ましい。
【0023】
混合原料が乳脂肪球皮膜成分又はその含有物を含む場合、混合原料中のリン脂質の含有量は、風味の点から、1質量%以上、更に2質量%以上、更に3質量%以上、更に4質量%以上であることが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、60質量%以下、更に50質量%以下、更に40質量%以下、更に30質量%以下であることが好ましい。
また、同様の点から、混合原料中のスフィンゴミエリンの含有量は、0.5質量%以上、更に0.7質量%以上、更に1質量%以上であることが好ましく、また、5質量%以下、更に3.5質量%以下、更に3質量%以下であることが好ましい。
【0024】
本明細書において、(B)微粒二酸化ケイ素は、食品添加物として利用可能な粉体が好適に用いられ、その平均粒子径は0.5~15μmである。微粒二酸化ケイ素の平均粒子径は、粉体流動性の点から、好ましくは3.0~10μm、より好ましくは5.0~10μmである。
微粒二酸化ケイ素は、既知の製法を利用して調製しても、また、市販の微粒二酸化ケイ素を用いてもよい。
【0025】
混合原料に占める(B)平均粒子径が0.5~15μmの微粒二酸化ケイ素の含有量は0.1~4質量%であるが、造粒時の粉体流動性の点から、0.5質量%以上であることが好ましく、また、造粒進行の点から、2.0質量%以下であることが好ましい。
【0026】
混合原料に占める、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比[(B)/(A)]は、造粒時の粉体流動性の点から、0.001以上、更に0.005以上であることが好ましく、また、造粒進行の点から、0.045以下、更に0.021以下であることが好ましい。
【0027】
本明細書において、(C)ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖の水酸基に脂肪酸がエステル結合してなる非イオン性界面活性剤である。ショ糖脂肪酸エステルは、モノエステルの他、ジエステル、トリエステル、ポリエステルが含有されていてもよい。風味の点からは、ショ糖脂肪酸エステルのモノエステル含有量は50質量%以下、更に40質量%以下、更に30質量%以下であることが好ましい。
【0028】
(C)ショ糖脂肪酸エステルのエステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。なかでも、ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、風味の点から、炭素数12~24、更に炭素数18~22であることが好ましい。
【0029】
(C)ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、特に制限されないが、風味の点から、1~16、更に3~11であることが好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス、Hydrophile―lipophile balance)は、ショ糖脂肪酸エステルの全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものである。ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、グリフィン(Griffin)の式により求められる。
【0030】
(C)ショ糖脂肪酸エステルは、既知の合成法を利用して調製しても、また、市販のショ糖エステルを用いてもよく、また、市販品のショ糖脂肪酸エステルを分画し、再構成することによって調製してもよい。
【0031】
混合原料に占める(C)ショ糖脂肪酸エステルの含有量は0.1~6質量%であるが、造粒物の収率の点から、0.4質量%以上であることが好ましく、また、収率及び造粒進行の点から、1.5質量%以下であることが好ましい。
【0032】
混合原料に占める、成分(A)に対する成分(C)の含有質量比[(C)/(A)]は、造粒物の収率の点から、0.001以上、更に0.004以上であることが好ましく、また、収率及び造粒進行の点から、0.067以下、更に0.016以下であることが好ましい。
【0033】
成分(A)、(B)及び(C)の混合方法は、撹拌、振盪等の適宜の方法を採用することができる。混合装置を使用してもよく、湿式造粒装置内で行ってもよい。混合順序は任意の順序でよい。
【0034】
混合原料には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、甘味料、酸味料、香料、着色料、保存料、結合剤、崩壊剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0035】
混合原料を湿式造粒する方法としては、例えば、転動造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法等が挙げられる。なかでも、流動層造粒法が好ましい。
流動層造粒法では、空気流により混合原料の流動層を成形させ、その層中に、多糖類を含む水溶液を噴霧し、液架橋により粒子同士を付着凝集させて造粒するのが好ましい。
【0036】
多糖類としては、澱粉、α化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉、架橋処理澱粉、デキストリン等の澱粉類;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;アルギン酸、カラギーナン、アラビアガム、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、又はこれらの塩類等の酸性多糖系や、グアーガム、ポリデキストロース、プルラン、ヘミセルロース、大豆食物繊維、ローカストビーンガム等の中性多糖系の水溶性食物繊維等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸性多糖系の水溶性食物繊維の塩類としてはアルカリ金属塩が好ましく、更にカリウム塩、ナトリウム塩が好ましい。
多糖類は、造粒物の水分散性の点、呈味の点から、水溶性食物繊維が好ましく、プルラン、グアーガム、アルギン酸ナトリウムがより好ましく、プルラン、グアーガムが更に好ましい。
【0037】
混合原料に噴霧する水溶液中の多糖類の含有量は、製造性の点、分散性の点から、0.1~5質量%、更に2~4質量%であることが好ましい。
【0038】
多糖類を含む水溶液の噴霧液量は、造粒物の口どけ及び水分散性の点から、混合原料の質量に対して、好ましくは30質量%以下である。
【0039】
湿式造粒時の温度は、風味の点から、90℃以下が好ましい。
また、噴霧速度は、製造性の点から、2~8mL/min、更に3~7mL/min、更に4~5mL/minが好ましい。
また、噴霧圧は、製造性の点から、0.09~0.16MPa、更に0.11~0.14MPaが好ましい。
湿式造粒後、乾燥し、必要に応じて整粒してもよい。乾燥工程は、造粒工程と同時に行われてもよい。
【0040】
このようにして高収率で凝集性が高い粉体を含む造粒物を得ることができる。
本発明の方法によって得られる造粒物の収率は91%以上が好ましく、95%以上が更に好ましい。ここで、造粒物の収率低下は、造粒工程における使用原料の装置内壁面付着に起因し、流動性が低いものほど優先的に付着する傾向にある。すなわち、収率が低下するほど、得られる造粒物組成は原料組成に対して均一性が失われやすい。特に、原料の成分(A)が混合粉体である場合、混合粉体を構成する流動性の悪い成分(A1)が、装置内壁面へ選択的に付着してしまうこともある。かかる場合、収率が91%未満であると、成分(A1)としては、装置内壁面付着により原料の10%以上失われる可能性が高くなる。そうすると均質性低下の要因となりうる他、成分(A1)が有効成分である場合は、有効成分量担保にもより留意が必要となる。
【0041】
造粒物の粒度は、求める用途によって適宜決定することができるが、平均粒子径が200~500μm、更に200~400μmの範囲であることが水への分散性の点から好ましい。また、メジアン径(D50)は、150~400μm、更に180~400μmの範囲であることが水への分散性の点から好ましい。
【0042】
造粒物は、散剤、顆粒剤等としてそのまま服用に供することもできる。また、これを圧縮成型して錠剤等の圧縮成型製剤とすることもできるし、カプセルに充填してカプセル剤とすることもできる。
圧縮成型製剤は、常法に従い、造粒物を、必要に応じて薬学的に許容される担体等と混合して、打錠成型機で圧縮して成型(顆粒圧縮法)するのが好ましい。打錠成型機としてはロータリー式打錠機や単発式打錠機等通常使用されるものを用いることができる。
【実施例】
【0043】
[凝集度の測定]
測定機器名称:粉体特性評価装置 パウダテスタPT-X
メーカー:ホソカワミクロン(株)
測定環境:室内温度25±2℃、相対湿度60±5%
使用篩:目開き(上)710μm、(中)355μm、(下)250μm
バイブレーター振幅:1.0mm
振動時間:ゆるめ、固めかさ密度より自動設定
【0044】
[平均粒子径、メジアン径の測定]
試験方法:乾式レーザー回折/散乱方式
粒子径基準:体積基準
測定機器名称:レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960
メーカー:(株)堀場製作所
測定条件:圧縮空気0.3MPa
屈折率:1.60
【0045】
[原料]
乳脂肪球皮膜成分は牛乳から調製したものを使用した。
乳脂肪球皮膜成分の含水量は3.1質量%であった。乳脂肪球皮膜成分の組成は、乾燥物換算で、炭水化物:10.4質量%、脂質:34.3質量%、タンパク質:47.1質量%であった。また、乳脂肪球皮膜成分中、リン脂質の含有量は乾燥物換算で17.0質量%であり、スフィンゴミエリンの含有量は3.6質量%であった。
【0046】
上記の乳脂肪球皮膜成分の分析は次のとおり行った。
(1)タンパク質の分析
タンパク質量はケルダール法を用いて、窒素・タンパク質換算係数6.38として求めた。
【0047】
(2)脂質の分析
脂質量は酸分解法で求めた。試料を1g量りとり、塩酸を加え分解した後、ジエチルエーテル及び石油エーテルを加え、攪拌混和した。エーテル混合液層を取り出し、水洗した。溶媒を留去させ、乾燥させた後、重量を秤量することで脂質量を求めた、
【0048】
(3)炭水化物の分析
炭水化物量は試料の質量から試料中のタンパク質量、脂質質量、灰分量、及び水分量を除くことにより求めた。
なお、灰分量は、直接灰化法 (550℃で試料を灰化させ重量測定)、水分量は、常圧加熱乾燥法 (105℃4時間乾燥させ重量測定)により求めた。
【0049】
(4)リン脂質の分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち2mLを分取し、溶媒留去後、550℃16時間加熱処理により灰化した。灰分を6M塩酸水溶液5mLに溶解後、蒸留水を添加し、総量を50mLとした。3mLを分取し、モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をリン脂質量とした。
【0050】
(5)スフィンゴミエリンの分析
試料約0.4gを量り取り、内標準溶液(0.25%リン酸トリフェニルの重水素化メタノール溶液)2mLを加え、超音波抽出を行った。これを遠心分離し、得られた上清をメンブレンフィルターに通液した。ろ液を回収し、31P-NMR法で分析した。
【0051】
また、次の原料を用いた。
マルチトール:アマルティMR-50、三菱商事ライフサイエンス(株)
微粒二酸化ケイ素:平均粒子径7.8μm(レーザー回折/散乱法、屈折率:1.54)、カープレックスFPS-500、DSLジャパン(株)
ショ糖脂肪酸エステル1:リョートーシュガーエステルB-370F、HLB=3、三菱ケミカルフーズ(株)
ショ糖脂肪酸エステル2:リョートーシュガーエステルS1170F、HLB=11、三菱ケミカルフーズ(株)
プルラン:重量平均分子量70,000、(株)林原
【0052】
[成分(A)]
成分(A)として、乳脂肪球皮膜成分とマルチトールを1:1の質量比で混合した混合粉体を用いた。混合粉体の凝集度は54.2%、粉体含水率は1.7%であった。
【0053】
実施例1~3及び比較例1
[造粒物の調製]
表1に示す組成で混合した原料を最終重量が200gとなるように流動層造粒機(フロイント社製FLOW COATER FL-LABO、以下同じ。)に投入した。プルランは水道水に完全溶解させ、プルランの3質量%水溶液を、吸気温度83℃、吸気風量0.2m3/min、噴霧速度約4mL/min、噴霧圧0.12MPa、噴霧液量58mLにて噴霧、造粒した後、風量0.3m3/minにて排気温度が39℃となるまで乾燥を行い、目開き1mmの篩を用いて篩過し造粒物を調製した。
【0054】
[造粒時の粉体流動性]
流動層造粒時の混合原料の流動性について目視観察し、評価を行った。
問題なく粉体が流動状態を維持したものを「〇」、粉体の一部のみしか流動しない又は流動しない状態を「×」とした。
【0055】
【0056】
[結果]
表1から明らかなように、乳脂肪球皮膜成分とマルチトールの混合粉体に加え、微粒二酸化ケイ素及びショ糖脂肪酸エステルを混合した実施例1~3の混合原料では、造粒時の粉体流動性に優れていることが確認された。また、製造した造粒物の平均粒子径、及びメジアン径も好ましい粒度であることが確認された。
一方、比較例1では、造粒時に混合原料の流動が停止していまい、造粒が為しえないこと、造粒物の平均粒子径、メジアン径が小さく、造粒が進行していないことが確認された。
【0057】
実施例4~11及び比較例2~4
[造粒物の調製]
表2に示す組成で混合した混合原料を最終重量が200gとなるように流動層造粒機に投入し、実施例1と同様にして造粒物を調製した。
【0058】
[造粒物の収率の評価]
造粒物の収率は、以下の式より算出した。
収率(%)=(造粒物質量/投入した混合原料質量)×100
【0059】
【0060】
[結果]
表2から明らかなように、乳脂肪球皮膜成分とマルチトールの混合粉体に加え、微粒二酸化ケイ素及びショ糖脂肪酸エステルを混合した実施例4~11では、造粒物の収率が95%以上と高く、生産性良く造粒物を製造できることが確認された。
これに対し、比較例2では、収率が低下し、また、比較例3及び4では造粒物の平均粒子径、メジアン径が小さく、造粒が進行しておらず、また、収率も低いことが確認された。