(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20231122BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B29D30/06
B29C33/02
(21)【出願番号】P 2019204427
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 誠也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-228941(JP,A)
【文献】特開昭56-144948(JP,A)
【文献】特開平04-129730(JP,A)
【文献】特開2017-159514(JP,A)
【文献】特開2006-248090(JP,A)
【文献】特開2014-061602(JP,A)
【文献】特開2003-236949(JP,A)
【文献】特開2013-233788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/06
B29C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモールドによって、凹凸を有するトレッド面を備える未加硫タイヤ
を加硫するタイヤ製造方法であって、
前記未加硫タイヤは、
タイヤ周方向に延びる主溝が形成される
複数の主溝予定部と、
前記主溝及び接地端によって区画される陸部が形成される
複数の陸部予定部と、を備え、
前記複数の陸部予定部は、前記陸部のうちタイヤ幅方向の最も外側に配置されるショルダー陸部が形成されるショルダー陸部予定部を備え、
前記ショルダー陸部予定部の前記トレッド面は、
タイヤ子午面における断面においてタイヤ幅方向に対する傾斜角が異なる複数の面を備え、
前記複数の面は、
前記ショルダー陸部予定部の中央に配置され、タイヤ子午面における断面におい
てタイヤ幅方向に対する傾斜角が最大となる最大傾斜面と、
前記主溝予定部に隣接するように前記ショルダー陸部予定部のタイヤ幅方向の端部に配置され、タイヤ子午面における断面におい
てタイヤ幅方向に対す
る傾斜角
が前記最大傾斜面の傾斜角より
も小さい
主溝隣接面と、を備え、
前記主溝予定部の前記トレッド面は、前記主溝予定部に隣接される前記陸部予定部の少なくとも一方の前記トレッド面よりも、タイヤ径方向の外側に配置され、
前記モールドは、前記主溝隣接面に接する主溝隣接成形部を備え、
前記主溝隣接成形部は、前記モールド内の気体を排出させる孔と、前記孔に対して移動することによって、前記孔を開閉する弁体と、を備える、タイヤの製造方法。
【請求項2】
タイヤ子午面における断面において、前記主溝隣接面の傾斜角は、前記最大傾斜面の傾斜角の85%以下である、請求項
1に記載の
タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、未加硫タイヤ及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、未加硫タイヤは、複数のモールドによって加硫される。そして、モールドは、内部の気体を排出させる孔と、孔に対して移動することによって、孔を開閉する弁体とを備えている。
【0003】
ところで、未加硫タイヤは、凹凸を有するトレッド面を備えている(例えば、特許文献1及び2)。そして、モールドにおける弁体の位置と、トレッド面の凹凸形状との関係によって、弁体と孔との間にゴムが侵入する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-202569号公報
【文献】特開2014-133392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、弁体と孔との間にゴムが侵入することを抑制することができる未加硫タイヤ及びタイヤ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
未加硫タイヤは、凹凸を有するトレッド面を備える未加硫タイヤであって、タイヤ周方向に延びる主溝が形成される主溝予定部と、前記主溝及び接地端によって区画される陸部が形成される陸部予定部と、を備え、前記トレッド面は、前記陸部予定部のうち、前記主溝予定部に隣接する主溝隣接面と、タイヤ子午面における断面において、タイヤ幅方向に対する傾斜角が最大となる最大傾斜面と、を備え、タイヤ子午面における断面において、タイヤ幅方向に対する前記主溝隣接面の傾斜角は、前記最大傾斜面の傾斜角よりも、小さい。
【0007】
また、タイヤ製造方法は、複数のモールドによって前記の未加硫タイヤを加硫することを含み、前記モールドは、前記主溝隣接面に接する主溝隣接成形部を備え、前記主溝隣接成形部は、前記モールド内の気体を排出させる孔と、前記孔に対して移動することによって、前記孔を開閉する弁体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、タイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る未加硫タイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
【
図4】
図4は、タイヤ製造装置の要部断面図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る未加硫タイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
【
図7】
図7は、同比較例に係る未加硫タイヤに対する製造方法を説明する要部断面図である。
【
図8】
図8は、同比較例に係る未加硫タイヤに対する製造方法を説明する要部断面図である。
【
図9】
図9は、
図2及び
図3に係る未加硫タイヤに対する製造方法を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、未加硫タイヤ及びタイヤ製造方法における一実施形態について、
図1~
図10を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
まず、未加硫タイヤからタイヤ製造方法によって製造されるタイヤ1について、
図1を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、タイヤ1は、ビードを有する一対のビード部1a,1aと、各ビード部1aからタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール部1b,1bと、一対のサイドウォール部1b,1bのタイヤ径方向D2の外端部に連接されるトレッド部1cとを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着される。
【0012】
図1において、第1の方向D1は、タイヤ1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3(図示していない)は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。また、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面であって、タイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であって、タイヤ赤道面S1と直交する面のことである。
【0013】
サイドウォール部1bは、タイヤ外表面を構成するサイドウォールゴム1dを備えており、トレッド部1cは、タイヤ外表面であるトレッド面1eを構成するトレッドゴム1fを備えている。なお、トレッド面1eは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端1h,1hという。また、当該接地面は、タイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面1eを指す。
【0014】
正規リムは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0015】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」である。なお、タイヤ1が乗用車用である場合には、180kPaとし、さらに、Extra Load又はReinforcedと記載されたタイヤ1である場合には、220kPaとする。
【0016】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧の対応荷重の85%とする。
【0017】
トレッドゴム1fは、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝1gと、複数の主溝1g及び接地端1hによって区画される陸部1i,1jとを備えている。主溝1g及び陸部1i,1jの個数は、特に限定されないが、本実施形態においては、主溝1gは、二つ備えられ、陸部1i,1jは、三つ備えられている。また、陸部1i,1jのうち、タイヤ幅方向D1の外側に配置される一対の陸部1i,1iは、ショルダー陸部1iといい、一対のショルダー陸部1i,1i間に配置される陸部1jは、センター陸部1jという。
【0018】
次に、未加硫タイヤについて、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0019】
図2に示すように、加硫されたタイヤ1と同様に、未加硫タイヤ2は、ビード(
図2においては、図示していない)を有する一対のビード部2a,2aと、各ビード部2aからタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール部2b,2bと、一対のサイドウォール部2b,2bのタイヤ径方向D2の外端部に連接されるトレッド部2cとを備えている。
【0020】
サイドウォール部2bは、タイヤ外表面を構成するサイドウォールゴム2dを備えており、トレッド部2cは、タイヤ外表面であるトレッド面2eを構成するトレッドゴム2fを備えている。トレッドゴム2fは、加硫後タイヤ1において接地端1hが形成される接地端予定部2hを備えている。
【0021】
また、
図3に示すように、トレッドゴム2fは、加硫後タイヤ1において主溝1gが形成される主溝予定部2gと、加硫後タイヤ1において陸部1i,1jが形成される陸部予定部2i,2jとを備えている。なお、ショルダー陸部1iが形成される陸部予定部2iは、ショルダー陸部予定部2iといい、センター陸部1jが形成される陸部予定部2jは、センター陸部予定部2jという。
【0022】
図3(
図6も同様)において、破線は、加硫後タイヤ1となった際に形成される主溝1gの位置及び大きさを示している。そして、トレッド面2eは、陸部予定部2i,2jのうち、主溝予定部2gに隣接する主溝隣接面3a,3bを備えている。なお、主溝隣接面3a,3bは、陸部予定部2i,2jのタイヤ幅方向D1の端縁を含んでいる。
【0023】
そして、トレッド面2eは、凹凸を有している。これにより、トレッド面2eは、タイヤ子午面における断面において、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角θ1が最大となる最大傾斜面4を備えている。本実施形態においては、最大傾斜面4は、ショルダー陸部予定部2iのタイヤ幅方向D1の中央に配置されている。
【0024】
そして、タイヤ子午面における断面において、主溝隣接面3a,3bがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する傾斜角θ2,θ3は、最大傾斜面4の傾斜角θ1よりも、小さくなっている。なお、特に限定されないが、主溝隣接面3a,3bの傾斜角θ2,θ3は、最大傾斜面4の傾斜角θ1の85%以下であることが好ましく、また、70%以下であることがより好ましい。また、特に限定されないが、主溝隣接面3a,3bの傾斜角θ2,θ3は、5°以下であることが好ましく、4.5°以下であることがより好ましい。
【0025】
また、主溝予定部2gのトレッド面2eは、主溝予定部2gに隣接されるセンター陸部予定部2jのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。具体的には、主溝予定部2gのトレッド面2eのタイヤ径方向D2の平均位置は、センター陸部予定部2jのトレッド面2eのタイヤ径方向D2の平均位置よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0026】
本実施形態においては、主溝予定部2gのトレッド面2eの全体は、センター陸部予定部2jのトレッド面2eの全体よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。なお、主溝予定部2gのトレッド面2eは、主溝予定部2gに隣接されるショルダー陸部予定部2iのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されている。
【0027】
次に、未加硫タイヤ2からタイヤ1を製造するタイヤ製造装置について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0028】
図4に示すように、タイヤ製造装置5は、未加硫タイヤ2を加硫することによってタイヤ1を製造するタイヤ加硫装置であって、複数のモールド5a~5cを備えている。複数のモールド5a~5cは、タイヤ1のサイドウォール部1bを成形するサイドモールド5a,5aと、タイヤ1のトレッド部1cを成形するトレッドモールド5bと、タイヤ1のビード部1aを成形するビードモールド5c,5cとを備えている。
【0029】
なお、サイドモールド5a,5a及びビードモールド5c,5cは、タイヤ幅方向D1に離間して一対備えられ、トレッドモールド5bは、サイドモールド5aの側方に配置され、タイヤ周方向D3(図示していない)に沿って環状に複数(
図4においては、一つのみ図示している)並列されている。なお、タイヤ製造装置5における方向D1~D3は、タイヤ製造装置5で成形されるタイヤ1に対する方向(タイヤ幅方向D1、タイヤ径方向D2、タイヤ周方向D3)を使用する。
【0030】
トレッドモールド5bは、陸部1i,1jを成形する陸部成形部5dと、主溝1gを成形するために、陸部成形部5dから突出する凸状の主溝成形部5eとを備えている。また、
図5に示すように、陸部成形部5dは、未加硫タイヤ2を加硫する際に、未加硫タイヤ2の主溝隣接面3a(
図3参照)に接する主溝隣接成形部5fを備えている。
【0031】
トレッドモールド5bは、ベントホール5gを有するモールド本体5hと、内部の気体を外部へ排出するために、ベントホール5gを開閉する開閉弁6とを備えている。なお、
図5において、ベントホール5g及び開閉弁6は、一つ図示されているが、複数備えられている。そして、少なくとも一つのベントホール5g及び開閉弁6は、主溝隣接成形部5fに配置されている。
【0032】
開閉弁6は、気体が通過可能な孔6aを有する弁座6bと、孔6aを閉止する閉止位置と孔6aを開放する開放位置とに移動可能な弁体6cと、弁体6cが閉止位置から開放位置へ向かうように、弁体6cに力を加える加力部6d(例えば、スプリング)とを備えている。即ち、弁体6cが孔6aに対して移動することによって、孔6aが開閉される。なお、開閉弁6は、ベントホール5gの端部に配置されている。
【0033】
次に、未加硫タイヤ2からタイヤ1を製造するタイヤ製造方法について、
図6~
図10を参照しながら説明する。
【0034】
まず、比較例に係る未加硫タイヤX2からタイヤを製造するタイヤ製造方法について、
図6~
図8を参照しながら説明する。
【0035】
図6に示すように、比較例に係る未加硫タイヤX2においては、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角θ4が最大となる最大傾斜面X4は、一方の主溝隣接面X3aである。そして、主溝予定部X2gのトレッド面X2eは、主溝予定部X2gに隣接される両方の陸部予定部X2i,X2jのトレッド面X2eよりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されている。
【0036】
なお、
図6において、X2fは、トレッドゴムX2fを示しており、X2hは、接地端予定部X2hを示している。また、他方の主溝隣接面X3bの傾斜角θ5は、一方の主溝隣接面X3aの傾斜角θ4よりも、小さくなっている。
【0037】
ところで、比較例に係る未加硫タイヤX2が加硫されると、
図7に示すように、主溝予定部X2gが主溝成形部5eに接する。そして、主溝隣接面X3aの傾斜角θ4が大きく、しかも、主溝予定部X2gのトレッド面X2eが、陸部予定部X2iのトレッド面X2eよりも、タイヤ径方向D2の内側に位置している。
【0038】
これにより、
図8に示すように、ゴムは、トレッドモールド5bの陸部成形部5dの表面に沿って、流れる。したがって、弁体6cと孔6aとの間にゴムが侵入するため、例えば、加硫されたタイヤ1において、エア混入によるゴム欠損が発生したり、また、例えば、開閉弁6が損傷したりする。
【0039】
それに対して、本実施形態に係る未加硫タイヤ2(
図3参照)からタイヤ1を製造するタイヤ製造方法について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
【0040】
本実施形態に係る未加硫タイヤ2が加硫されると、
図9に示すように、主溝予定部2gが主溝成形部5eに接する。そして、主溝隣接面3aの傾斜角θ2が小さく、しかも、主溝予定部2gのトレッド面2eが、陸部予定部2iのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の外側に位置している。
【0041】
これにより、
図10に示すように、ゴムは、弁体6cの移動方向に沿って、流れる。これにより、弁体6cと孔6aとの間にゴムが侵入することを抑制することができる。その結果、例えば、加硫されたタイヤ1において、エア混入によるゴム欠損が発生することを抑制することができたり、また、例えば、開閉弁6が損傷することを抑制することができたりする。
【0042】
以上より、本実施形態に係るタイヤ製造方法は、複数のモールド5a~5cによって前記の未加硫タイヤ2を加硫することを含み、前記モールド5bは、前記主溝隣接面3aに接する主溝隣接成形部5fを備え、前記主溝隣接成形部5fは、前記モールド5b内の気体を排出させる孔6aと、前記孔6aに対して移動することによって、前記孔6aを開閉する弁体6cと、を備える。
【0043】
そして、本実施形態に係る未加硫タイヤ2は、凹凸を有するトレッド面2eを備える未加硫タイヤ2であって、タイヤ周方向D3に延びる主溝1gが形成される主溝予定部2gと、前記主溝1g及び接地端1hによって区画される陸部1i,1jが形成される陸部予定部2i,2jと、を備え、前記トレッド面2eは、前記陸部予定部2i,2jのうち、前記主溝予定部2gに隣接する主溝隣接面3a,3bと、タイヤ子午面における断面において、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角θ1が最大となる最大傾斜面4と、を備え、タイヤ子午面における断面において、タイヤ幅方向D1に対する前記主溝隣接面3a,3bの傾斜角θ2,θ3は、前記最大傾斜面4の傾斜角θ1よりも、小さい。
【0044】
斯かる方法及び構成によれば、タイヤ幅方向D1に対する主溝隣接面3a,3bの傾斜角θ2,θ3は、タイヤ幅方向D1に対する最大傾斜面4の傾斜角θ1よりも、小さくなっている。これにより、主溝隣接面3a,3bに接する部分5fに、孔6aを開閉する弁体6cを備えるモールド5bに対して、未加硫タイヤ2が加硫される際に、ゴムが弁体6cの移動方向に沿って流れるため、弁体6cと孔6aとの間にゴムが侵入することを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る未加硫タイヤ2においては、前記主溝予定部2gの前記トレッド面2eは、前記主溝予定部2gに隣接される前記陸部予定部2i,2jの少なくとも一方2jの前記トレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置される、という構成である。
【0046】
斯かる構成によれば、主溝予定部2gのトレッド面2eが、主溝予定部2gに隣接される陸部予定部2i,2jの少なくとも一方2jのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されるため、未加硫タイヤ2が加硫される際に、主溝予定部2gがモールド5bに接した後に、主溝隣接面3a,3bがモールド5bに接する。これにより、主溝隣接面3a,3bに接する部分5fに、孔6aを開閉する弁体6cを備えるモールド5bに対して、未加硫タイヤ2が加硫される際に、ゴムが弁体6cの移動方向に沿って流れ易くなる。
【0047】
また、本実施形態に係る未加硫タイヤ2においては、タイヤ子午面における断面において、前記主溝隣接面3a,3bの傾斜角θ2,θ3は、前記最大傾斜面4の傾斜角θ1の85%以下である、という構成である。
【0048】
斯かる構成によれば、主溝隣接面3a,3bの傾斜角θ2,θ3が、最大傾斜面4の傾斜角θ1の85%以下であるため、主溝隣接面3a,3bに接する部分5fに、孔6aを開閉する弁体6cを備えるモールド5bに対して、未加硫タイヤ2が加硫される際に、ゴムが弁体6cの移動方向に沿って流れ易くなる。
【0049】
なお、未加硫タイヤ2及びタイヤ製造方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、未加硫タイヤ2及びタイヤ製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する変更例に係る構成や方法を選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0050】
上記実施形態に係る未加硫タイヤ2においては、主溝予定部2gのトレッド面2eは、主溝予定部2gに隣接される陸部予定部2i,2jの一方2jのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置される、という構成である。しかしながら、未加硫タイヤ2は、斯かる構成に限られない。
【0051】
例えば、主溝予定部2gのトレッド面2eは、主溝予定部2gに隣接される陸部予定部2i,2jの両方2i,2jのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置される、という構成でもよい。また、例えば、主溝予定部2gのトレッド面2eは、主溝予定部2gに隣接される陸部予定部2i,2jの両方2i,2jのトレッド面2eよりも、タイヤ径方向D2の内側に配置される、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…タイヤ、1a…ビード部、1b…サイドウォール部、1c…トレッド部、1d…サイドウォールゴム、1e…トレッド面、1f…トレッドゴム、1g…主溝、1h…接地端、1i…ショルダー陸部、1j…センター陸部、2…未加硫タイヤ、2a…ビード部、2b…サイドウォール部、2c…トレッド部、2d…サイドウォールゴム、2e…トレッド面、2f…トレッドゴム、2g…主溝予定部、2h…接地端予定部、2i…ショルダー陸部予定部、2j…センター陸部予定部、3a…主溝隣接面、3b…主溝隣接面、4…最大傾斜面、5…タイヤ製造装置、5a…サイドモールド、5b…トレッドモールド、5c…ビードモールド、5d…陸部成形部、5e…主溝成形部、5f…主溝隣接成形部、5g…ベントホール、5h…モールド本体、6…開閉弁、6a…孔、6b…弁座、6c…弁体、6d…加力部、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、S1…タイヤ赤道面