(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電極取付構造及び回止部材
(51)【国際特許分類】
C23F 13/18 20060101AFI20231122BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20231122BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20231122BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C23F13/18
C23F13/02 B
C23F13/02 E
F28D7/16 A
F28F19/00 541
(21)【出願番号】P 2019206566
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000211891
【氏名又は名称】株式会社ナカボーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 忠彦
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-051320(JP,A)
【文献】特開平01-315943(JP,A)
【文献】実開昭61-101116(JP,U)
【文献】実開昭60-059411(JP,U)
【文献】特開2009-121635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/18
C23F 13/02
F28F 19/00
F28D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ネジ孔を有する電気防食用電極を他の部材に着脱自在に取り付けるための電極取付構造であって、
前記雌ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を周面に有する導電性のネジ部材と、
前記ネジ部材が挿通される貫通孔を有し、該貫通孔に該ネジ部材が挿通された状態で、前記他の部材における前記電気防食用電極の取付面とは反対側に位置する非取付面に固定される支持部材と、
前記ネジ部材に挿通され螺合される固定部材と
、
前記支持部材と前記電気防食用電極との間に介在配置される鍔部とを具備し、
前記雌ネジ孔は、前記電気防食用電極を前記ネジ部材の軸方向に貫通しており、
前記ネジ部材は、前記支持部材の前記貫通孔を挿通し且つ前記取付面及び前記非取付面の双方から外方に延出しており、該ネジ部材の該取付面からの延出部が、前記電気防食用電極の前記雌ネジ孔に螺合される第1の部分とされ、該ネジ部材の該非取付面からの延出部が、前記固定部材が挿通される第2の部分とされており、
前記鍔部は、環状をなし、使用時には前記第1の部分が挿通され且つ前記支持部材及び前記電気防食用電極の双方に接触し、
更に、前記第2の部分に前記固定部材とともに挿通され、前記ネジ部材及び該固定部材を回り止めする環状の回止部材を具備し、
前記回止部材は、前記ネジ部材及び前記支持部材に対して絶縁性を有し、且つ外輪郭と、該外輪郭よりも内側に位置し前記ネジ部材の挿通孔を画成する内輪郭とを有し、該内輪郭の平面視形状が非円形形状である、電極取付構造。
【請求項2】
前記内輪郭の平面視形状が、四角形形状、六角形形状又は歯車形状であり、
前記歯車形状は、周方向の全長にわたって凸部と凹部とが交互に形成され、且つ複数の該凸部の頂部を結ぶ仮想線と複数の該凹部の底部を結ぶ仮想線とで同心円を形成する形状である、請求項1に記載の電極取付構造。
【請求項3】
前記外輪郭の平面視形状が、四角形形状、六角形形状又は歯車形状であり、
前記歯車形状は、周方向の全長にわたって凸部と凹部とが交互に形成され、且つ複数の該凸部の頂部を結ぶ仮想線と複数の該凹部の底部を結ぶ仮想線とで同心円を形成する形状である、請求項1又は2に記載の電極取付構造。
【請求項4】
前記内輪郭の平面視形状と前記外輪郭の平面視形状とが相似である、請求項1~3の何れか1項に記載の電極取付構造。
【請求項5】
前記第2の部分における前記回止部材に対応する部分は、該第2の部分の軸方向と直交する方向の断面視形状が、前記内輪郭の平面視形状と同形状である、請求項1~4の何れか1項に記載の電極取付構造。
【請求項6】
前記回止部材は、繊維強化プラスチックを含んで構成されている、請求項1~5の何れか1項に記載の電極取付構造。
【請求項7】
前記支持部材は、前記第2の部分を包囲し、該第2の部分に挿通された前記回止部材を収容可能な凹部を画成する第2の部分対応部を具備し、
前記凹部の平面視形状が、前記外輪郭の平面視形状と同形状である、請求項1~6の何れか1項に記載の電極取付構造。
【請求項8】
雌ネジ孔を有する電気防食用電極を、該雌ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を周面に有する導電性のネジ部材と、該ネジ部材に螺合される固定部材と
、支持部材と、該支持部材と該電気防食用電極との間に介在配置される鍔部とを用いて、他の部材に取り付ける場合に、該ネジ部材に該固定部材に隣接するように挿通され、該ネジ部材及び該固定部材の回り止めとして用いられる環状の回止部材であって、
前記雌ネジ孔は、前記電気防食用電極を前記ネジ部材の軸方向に貫通しており、
前記支持部材は、前記ネジ部材が挿通される貫通孔を有し、該貫通孔に該ネジ部材が挿通された状態で、前記他の部材における前記電気防食用電極の取付面とは反対側に位置する非取付面に固定され、
前記鍔部は、環状をなし、使用時には前記ネジ部材が挿通され且つ前記支持部材及び前記電気防食用電極の双方に接触し、
前記回止部材は、絶縁性材料からなり、且つ外輪郭と、該外輪郭よりも内側に位置し前記ネジ部材の挿通孔を画成する内輪郭とを有し、該内輪郭の平面視形状が非円形形状である、回止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気防食用電極を他の部材に取り付けるときに使用する電極取付構造、回止部材及び回止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却水として海水を用いる熱交換器や復水器等の海水利用設備においては、海水による金属の腐食を防止するために電気防食法が利用されている。電気防食法として、流電陽極方式と外部電源方式とが知られている。流電陽極方式は、例えば、海水利用設備の海水入口水室内に流電陽極を取り付け、該流電陽極の犠牲作用によって防食する電気防食方法である。一方、外部電源方式は、例えば特許文献1に記載されているように、海水利用設備の海水入口水室内に鉄電極などの溶解性電極又は白金チタンなどの不溶性電極を取り付け、該電極に直流電流を供給することで防食する電気防食方法である。
【0003】
図9には、従来の外部電源方式による電気防食構造の一例が示されている。
図9に示す電気防食構造50は、熱交換器、復水器等の海水利用設備60の電気防食に使用されるもので、陽極となる溶解性又は不溶性の電気防食用電極51と、陰極となる防食対象物である海水利用設備60とは別の補助陰極52と、両極51,52間に介在配置される絶縁板53と、防食対象物の電位検出のための照合電極54と、外部電源装置55とを含んで構成されている。海水利用設備60は、冷却管61、管板62及びこれらを内包する水室63を備えている。電気防食用電極51は、水室63の内部に設置される。外部電源装置55は、水室63の外部に設置され、電気防食構造50が備える各電極(電気防食用電極51、補助陰極52、照合電極54)及び海水利用設備60と電気的に接続されて電源となるとともに、海水利用設備60の電位、及び防食電流と補助電流との和を一定値に制御する定電流定電位電源装置として機能する。このような構成の電気防食構造50による電気防食では、電気防食用電極(陽極)51から発生した鉄イオンが冷却管61の内面に耐食性の酸化鉄皮膜を形成するとともに、外部電源方式による電気防食作用を発現し、鉄イオンによる防食と外部電源方式による電気防食との併用により優れた防食効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9に示す従来の電気防食構造50において、電気防食用電極51は、水室63を構成する壁材64に電極取付構造1Zによって着脱自在に取り付けられている。電極取付構造1Zは、
図10に示すように、周面に雄ネジ部20が形成されたネジ部材2と、該ネジ部材2が挿通される貫通孔30を有する支持部材3と、該ネジ部材2に挿通される固定部材4,8とを具備する。支持部材3は、貫通孔30にネジ部材2が挿通された状態で、壁材64における電極51の取付面64aとは反対側に位置する、非取付面64bに固定されている。
【0006】
ネジ部材2は、支持部材3の貫通孔30を挿通し且つ壁材64の取付面64a及び非取付面64bの双方から外方に延出している。ネジ部材2の取付面64aからの延出部は、電極51の雌ネジ孔510に螺合される第1の部分2Aとされ、ネジ部材2の非取付面64bからの延出部は、固定部材4が挿通される第2の部分2Bとされている。つまりネジ部材2は、該ネジ部材2の軸方向(図中符号Xで示す方向)の一方側に、電極51が挿通される第1の部分2Aを有し、他方側に、固定部材4が挿通される第2の部分2Bを有する。
【0007】
支持部材3は、外面の一部が軸方向Xと直交する方向に張り出したフランジ部3Fを有し、該フランジ部3Fは、壁材64の非取付面64bに設けられたフランジ座65に、ボルト35によって固定されている。壁材64におけるフランジ座65に包囲された部分には、壁材64を厚み方向に貫通する貫通孔66が穿設されており、壁材64に固定された支持部材3の一部が、貫通孔66に挿通され、更に取付面64aから外方に延出し、その延出部の先端側に位置するネジ部材2の第1の部分2Aが、電極51の雌ネジ孔510に螺合されている。第1の部分2Aにおける非取付面64bの近傍には、軸方向Xと直交する方向に張り出した鍔部6が設けられており、第1の部分2Aに螺合された電極51は鍔部6と接触している。
【0008】
支持部材3は、ネジ部材2に対して絶縁されている。支持部材3がネジ部材2に対して絶縁されておらずに導通していると、所定の防食効果が得られなくなるためである。具体的には、支持部材3におけるネジ部材2との接触部分、例えば、貫通孔30を画成する内壁面は、樹脂などの非導電性素材(図示せず)で被覆されている。また、支持部材3は、ネジ部材2の第2の部分2Bに挿通される固定部材4の少なくとも一部を収容可能な凹部330を有しているところ、この凹部330に樹脂などの非導電性素材からなる充填材7が充填されている。
【0009】
電極取付構造1Zを用いて電気防食用電極51を壁材64に取り付ける場合、先ず、壁材64の非取付面64bにボルト35を用いて支持部材3を取り付けるとともに、支持部材3の貫通孔30を挿通するネジ部材2の第2の部分2Bに固定部材4を通して締め付けることで、ネジ部材2を支持部材3に対して固定する。その後、支持部材3の凹部330に充填材7を充填し固化させる。こうして支持部材3を壁材64の非取付面64bに固定した状態では、非取付面64bとは反対側の取付面64aから第1の部分2Aが延出している。次に、電極51の雌ネジ孔510に第1の部分2Aを挿入し、電極51を第1の部分2A周りに回転させ、電極51が鍔部6に当接するまで斯かる回転動作を続ける。こうして、第1の部分2Aの雄ネジ部20に電極51の雌ネジ孔510を螺合させた後、該第1の部分2Aの先端部に固定部材8を通して締め付ける。
【0010】
図10に示す形態では、非取付面64b側の固定部材4、すなわちネジ部材2の第2の部分2Bに挿通される固定部材4として、ナット41とワッシャー42とが用いられている。
図10に示す形態では、第2の部分2Bに2個のナット41が挿通・螺合され、これら2個のナット41と支持部材3との間に、1個のワッシャー42が介在配置されている。また、
図10に示す形態では、取付面64a側の固定部材8、すなわちネジ部材2の第1の部分2Aに挿通される固定部材8として、ナット81とワッシャー82とが用いられている。
図10に示す形態では、第1の部分2Aに1個のナット81が挿通・螺合され、この1個のナット81と絶縁板53との間に、1個のワッシャー82が介在配置されている。
【0011】
前述した電気防食用電極51の取付作業において、電極51をネジ部材2の第1の部分2A周りに回転させながら鍔部6に向けて移動させる工程で、電極51が鍔部6に当接したときの衝撃によってネジ部材2の第2の部分2Bを締め付けていたナット41の締め付けが緩んでしまい、その結果、ネジ部材2が軸周りに連れ回りし、電極51の取付が困難になるという問題が発生し得ることが判明した。また、このようにナット41の締め付けが緩んでこれが回転すると、ナット41の周辺に充填されていた充填材7が破損し、その結果、防食効果が低下するおそれがある。
【0012】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る技術を提供することであり、詳細には、電気防食用電極を他の部材に確実に取り付けることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、雌ネジ孔を有する電気防食用電極を他の部材に着脱自在に取り付けるための電極取付構造であって、前記雌ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を周面に有する導電性のネジ部材と、前記ネジ部材が挿通される貫通孔を有し、該貫通孔に該ネジ部材が挿通された状態で、前記他の部材における前記電気防食用電極の取付面とは反対側に位置する非取付面に固定される支持部材と、前記ネジ部材に挿通され螺合される固定部材とを具備し、前記ネジ部材は、前記支持部材の前記貫通孔を挿通し且つ前記取付面及び前記非取付面の双方から外方に延出しており、該ネジ部材の該取付面からの延出部が、前記電気防食用電極の前記雌ネジ孔に螺合される第1の部分とされ、該ネジ部材の該非取付面からの延出部が、前記固定部材が挿通される第2の部分とされており、更に、前記第2の部分に前記固定部材とともに挿通され、前記ネジ部材及び該固定部材を回り止めする環状の回止部材を具備し、前記回止部材は、前記ネジ部材及び前記支持部材に対して絶縁性を有し、且つ外輪郭と、該外輪郭よりも内側に位置し前記ネジ部材の挿通孔を画成する内輪郭とを有し、該内輪郭の平面視形状が非円形形状である、電極取付構造である。
【0014】
また本発明は、雌ネジ孔を有する電気防食用電極を他の部材に着脱自在に取り付けるための電極取付構造であって、前記雌ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を周面に有する導電性のネジ部材と、前記ネジ部材が挿通される貫通孔を有し、該貫通孔に該ネジ部材が挿通された状態で、前記他の部材における前記電気防食用電極の取付面とは反対側に位置する非取付面に固定される支持部材と、前記ネジ部材に挿通され螺合される固定部材とを具備し、前記ネジ部材は、前記支持部材の前記貫通孔を挿通し且つ前記取付面及び前記非取付面の双方から外方に延出しており、該ネジ部材の該取付面からの延出部が、前記電気防食用電極の前記雌ネジ孔に螺合される第1の部分とされ、該ネジ部材の該非取付面からの延出部が、前記固定部材が挿通される第2の部分とされており、更に、前記第2の部分及び前記支持部材を該第2の部分の軸方向と直交する方向に貫通し、前記ネジ部材及び前記固定部材を回り止めする棒状の回止部材を具備する、電極取付構造である。
【0015】
また本発明は、雌ネジ孔を有する電気防食用電極を、該雌ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を周面に有する導電性のネジ部材と、該ネジ部材に螺合される固定部材とを用いて、他の部材に取り付ける場合に、該ネジ部材に該固定部材に隣接するように挿通され、該ネジ部材及び該固定部材の回り止めとして用いられる環状の回止部材であって、絶縁性材料からなり、且つ外輪郭と、該外輪郭よりも内側に位置し前記ネジ部材の挿通孔を画成する内輪郭とを有し、該内輪郭の平面視形状が非円形形状である、回止部材である。
【0016】
また本発明は、雌ネジ孔を有する電気防食用電極を、該雌ネジ孔に螺合可能な雄ネジ部を周面に有する導電性のネジ部材と、該ネジ部材に螺合される固定部材とを用いて、他の部材に取り付ける場合に、該ネジ部材及び該固定部材の回り止めとして用いられる回止機構であって、前記ネジ部材が挿通される貫通孔を有し、該貫通孔に該ネジ部材が挿通された状態で、前記他の部材における前記電気防食用電極の取付面とは反対側に位置する非取付面に固定される支持部材と、前記ネジ部材及び前記固定部材を回り止めする棒状の回止部材とを具備し、前記支持部材は、前記ネジ部材における前記非取付面からの延出部を包囲し、該延出部に挿通された前記固定部材を収容可能な凹部を画成する固定部材収容部を具備し、前記固定部材収容部及び前記延出部に、前記回止部材が挿通される挿通孔が設けられている、回止機構である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気防食用電極を他の部材に確実に取り付けることができる技術として、電極取付構造、回止部材及び回止機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の電極取付構造の一実施形態の使用状態を示す図であり、該実施形態の軸方向に沿う模式的な端面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電極取付構造の模式的な分解斜視図である。
【
図3】
図2は、
図1のI-I線での模式的な端面図であり、環状の回止部材の一実施形態の平面図でもある。
【
図4】
図4は、本発明の電極取付構造の他の実施形態の使用状態を示す図であり、該実施形態の軸方向に沿う模式的な端面図(
図1相当図)である。
【
図5】
図5は、
図4のI-I線での模式的な端面図であり、環状の回止部材の他の実施形態の平面図(
図3相当図)でもある。
【
図6】
図6は、本発明の電極取付構造の更に他の実施形態の使用状態を示す図であり、該実施形態の軸方向に沿う模式的な端面図(
図1相当図)である。
【
図7】
図7は、
図6のI-I線での模式的な端面図であり、環状の回止部材の更に他の実施形態の平面図(
図3相当図)でもある。
【
図8】
図8は、本発明の電極取付構造の更に他の実施形態の模式的な分解斜視図(
図2相当図)である。
【
図9】
図9は、従来の電気防食構造の一例の概略構成図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す電気防食構造における電気防食用電極及び電極取付構造の軸方向に沿う模式的な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0020】
図1~
図3には、本発明の電極取付構造の第1実施形態である電極取付構造1Aが示されている。電極取付構造1Aは、熱交換器、復水器等の海水利用設備の電気防食において、電気防食用電極を他の部材に着脱自在に取り付けるために使用されるものである。電極取付構造1Aは、前述した海水利用設備60の電気防食に使用される電気防食構造50(
図9参照)を構成し得るものであり、電極取付構造1Z(
図10参照)に代えて使用可能なものである。以下では、電極取付構造1Aについて、電極取付構造1Zと異なる構成を主に説明し、前述の
図9及び
図10に記載の形態と同様の構成(該形態の説明が適宜適用可能な構成)については、該形態と同じ符号を付して説明を簡略化するか又は省略する。
【0021】
電極取付構造1Aは、
図1及び
図2に示すように、雌ネジ孔510を有する電気防食用電極51を「他の部材」、具体的には、海水利用設備60の水室63(
図9参照)を構成する壁材64の一方の面(取付面64a)に着脱自在に取り付けるためのものである。電極51は、鉄電極などの溶解性電極又は白金チタンなどの不溶性電極である。第1実施形態では、電極51における壁材64の取付面64aに臨む端面とは反対側に位置する端面に、絶縁板53を取り付ける。また、壁材64は、取付面64a、貫通孔66の内壁面及び非取付面64bにおいて電気絶縁性を有する樹脂材料やゴム材料で被覆されている。
【0022】
第1実施形態では、電極51は、ネジ部材2の軸方向Xにおいて複数(具体的には2個)の小電極51Pに分割されており、その複数の小電極51Pどうしが軸方向Xに連結されて構成されている。複数の小電極51Pは、それぞれ
図2に示すように、雌ネジ孔510を有しており、複数の小電極51Pそれぞれの雌ネジ孔510の連結体に、電極取付構造1Aが具備する後述するネジ部材2が挿通され螺合される。
【0023】
電極取付構造1Aは、電極51の雌ネジ孔510に螺合可能な雄ネジ部20を周面に有する導電性のネジ部材2と、該ネジ部材2が挿通される貫通孔30を有し、該貫通孔30に該ネジ部材2が挿通された状態で、壁材64(他の部材)における電極51の取付面64aとは反対側に位置する非取付面64bに固定される支持部材3と、該ネジ部材2に挿通され螺合される固定部材4,8とを具備する。
【0024】
ネジ部材2は、支持部材3の貫通孔30を挿通し且つ壁材64の取付面64a及び非取付面64bの双方から外方に延出しており、該ネジ部材2の取付面64aからの延出部は、電極51の雌ネジ孔510に螺合される第1の部分2Aとされ、該ネジ部材2の非取付面64bからの延出部は、固定部材4が挿通される第2の部分2Bとされている。またネジ部材2は、第1の部分2Aと第2の部分2Bとの間に、使用時に壁材64の貫通孔66の内部に位置し、取付面64a及び非取付面64bから外方に延出しない非延出部2Cを有している。
【0025】
第1実施形態では、ネジ部材2は、該ネジ部材2の周面に雄ネジ部20を部分的に有している。具体的には
図2に示すように、雄ネジ部20は、ネジ部材2において、第1の部分2A及び第2の部分2Bそれぞれの軸方向Xの先端側の周面に形成されており、両部分2A,2Bの軸方向Xの他端側及び非延出部2Cの周面には形成されていない。このネジ部材2における雄ネジ部20の非形成部は、ネジ部材2における支持部材3の貫通孔30に対応する部分(使用時に貫通孔30に収容される部分)、及びネジ部材2における後述する回止部材10Aに対応する部分21(使用時に回止部材10Aに包囲される部分)である。
【0026】
ネジ部材2の素材としては、導電性を有し且つ実用上十分な強度を有する材料であればよく、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、銅合金、チタン、チタン合金等の金属を用いることができる。
【0027】
第1実施形態では、支持部材3は、貫通孔30を画成する筒状のネジ部材保持部31と、壁材64の非取付面64bにボルト35によって固定される固定部32と、ネジ部材2の第2の部分2Bを包囲し、該第2の部分2Bに挿通された回止部材10Aを収容可能な凹部330を画成する第2の部分対応部33とを具備する。固定部32は平板状、より具体的には円盤状をなし、該固定部32の一方の面から該固定部32に対して垂直にネジ部材保持部31が延出し、該固定部32の他方の面から該固定部32に対して垂直に第2の部分対応部33が延出している。固定部32は、ネジ部材保持部31よりも直径(差し渡し長さ)が長く、ネジ部材保持部31の周面よりも外方に張り出したフランジ部3Fを有しているところ、このフランジ部3Fすなわち該固定部32の周縁部には、ボルト35が挿入・螺合されるボルト挿入孔320が複数(具体的には4個)穿設されている。
【0028】
支持部材3の素材としては、実用上十分な強度を有する材料であればよく、導電性の有無は問わず、例えば、金属、プラスチックであり得る。支持部材3の素材としては、典型的には、ネジ部材2と同様に金属が用いられる。
【0029】
第1実施形態では、支持部材3(ネジ部材保持部31、固定部32、第2の部分対応部33)は金属製であり導電性を有しているところ、ネジ部材2に対して絶縁されている。具体的には、支持部材3は、貫通孔30を画成するネジ部材保持部31の内壁面においてネジ部材2の周面と接触し得るところ、該内壁面は、樹脂などの非導電性素材からなる絶縁スリーブ36によって被覆されており、貫通孔30において絶縁スリーブ36がネジ部材2と接触するようになされている。また、ネジ部材保持部31の外壁面も絶縁スリーブ36によって被覆されており、水室63内の海水及び貫通孔66の内壁面に対して絶縁されている。
【0030】
第1実施形態では、電極取付構造1Aは、ネジ部材2の第1の部分2Aに挿通される固定部材(取付面64a側に配置される固定部材)8と、ネジ部材2の第2の部分2Bに挿通される固定部材(非取付面64b側に配置される固定部材)4とを具備している。第1の部分2Aに挿通される固定部材8は、2個のナット81を含む。第2の部分2Bに挿通される固定部材4は、2個のナット41と1個のワッシャー42とを含む。
【0031】
第1実施形態では、電極取付構造1Aは、使用時に支持部材3と電極51との間に介在配置される鍔部6を具備する。鍔部6は、
図2に示すように環状をなし、使用時には
図1に示すように、ネジ部材2の第1の部分2Aが挿通され、且つ支持部材3(ネジ部材保持部31)及び電極51(小電極51P)の双方に接触する。
【0032】
電極取付構造1Aは、ネジ部材2の第2の部分2Bに固定部材4(ナット41、ワッシャー42)とともに挿通され、該ネジ部材2及び該固定部材4を回り止めする環状の回止部材10Aを具備する。この回止部材10Aは、従来の電極取付構造1Z(
図10参照)が具備しない特徴的な構成である。
【0033】
回止部材10Aは、ネジ部材2及び支持部材3に対して絶縁性を有している。回止部材10Aが両部材2,3に対して絶縁されておらずに導通していると、所定の防食効果が得られなくなるおそれがある。回止部材10Aの素材としては、導電性を有しない材料であればよく、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーカーボネート等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
前述の回止部材10Aの素材のうち、特にFRPは強度に優れていることから、回止部材10Aの素材として有用である。すなわち回止部材10Aは、FRPを含んで構成されていることが好ましく、FRPからなることがより好ましい。FRPとしては、公知のものを特に制限無く用いることができる。特に好ましいFRPとして、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)を例示できる。
【0035】
回止部材10Aは、
図3に示すように、外輪郭11と、該外輪郭11よりも内側に位置しネジ部材2(第2の部分2B)の挿通孔を画成する内輪郭12とを有しているところ、該内輪郭12の平面視形状が非円形形状である点で特徴付けられる。回止部材10Aの内輪郭12の平面視形状が非円形形状であるということは、第2の部分2Bの挿通孔の平面視形状が非円形形状であるということである。第1実施形態では、回止部材10Aの内輪郭12(第2の部分2Bの挿通孔)の平面視形状は四角形形状、より具体的には正方形形状である。
【0036】
回止部材10Aは、前述したとおり、雌ネジ孔510を有する電気防食用電極51を、該雌ネジ孔510に螺合可能な雄ネジ部20を周面に有する導電性のネジ部材2と、該ネジ部材2に螺合される固定部材4(ナット41、ワッシャー42)とを用いて、壁材64(他の部材)に取り付ける場合に、該ネジ部材2に該固定部材4に隣接するように挿通され、該ネジ部材2及び該固定部材4の回り止めとして用いられる環状の回止部材である。そして、回止部材10Aの主たる特徴として、1)絶縁性材料からなる点と、2)外輪郭11と、該外輪郭11よりも内側に位置しネジ部材2(第2の部分2B)の挿通孔を画成する内輪郭12とを有し、該内輪郭12の平面視形状が非円形形状である点とが挙げられる。
【0037】
第1実施形態では、回止部材10Aは、ネジ部材2の軸方向Xにおいて固定部材4(ナット41、ワッシャー42)よりも電極51に近い位置に配置される。より具体的には、回止部材10Aは、
図1に示すように、該回止部材10Aにおけるネジ部材2(第2の部分2B)の挿通孔が、支持部材3の貫通孔30に連接されるように配置される。
【0038】
電極取付構造1Aを用いた電極51の壁材64(他の部材)への取付作業は、前述した従来の電極取付構造1Zを用いた場合の取付作業と基本的には同じである。すなわち、先ず、壁材64の非取付面64bにボルト35を用いて支持部材3を取り付けるとともに、支持部材3に挿通されたネジ部材2の第2の部分2Bに、回止部材10A並びに固定部材4としてワッシャー42及びナット41を順次通し、該ナット41を締め付けることで、ネジ部材2を支持部材3に対して固定する。こうして支持部材3を壁材64の非取付面64bに固定した状態では、取付面64aから第1の部分2Aが延出している。次に、第1の部分2Aに鍔部6を通し、該鍔部6を支持部材3(ネジ部材保持部31)と接触するように配置した後、該第1の部分2Aに、電極51及び絶縁板53を順次通す。第1実施形態では、電極51を構成する複数(図示の形態では2個)の小電極51Pそれぞれの雌ネジ孔510に第1の部分2Aを順次通すところ、このとき、小電極51Pを第1の部分2A周りに回転させ、小電極51Pが鍔部6に当接するまで斯かる回転動作を続ける。こうして、第1の部分2Aの雄ネジ部20に電極51(小電極51Pの連結体)の雌ネジ孔510を螺合させ、更に絶縁板53を通した後、該第1の部分2Aの先端部に固定部材8としてナット81を通して締め付ける。そして、ネジ部材2と外部電源装置55(
図9参照)とをリード線を介して電気的に接続する。具体的には
図2に示すように、ネジ部材2の第2の部分2Bの先端部(ナット41よりも軸方向Xの外方位置)に、外部電源装置55とネジ部材2とを結ぶリード線が接続された圧着端子15を接続する。圧着端子15は、ネジ16とワッシャー17との間に介在配置され、該ネジ16は、第2の部分2Bに穿孔された雌ネジ孔に螺合される。
【0039】
前述したように、従来の電極取付構造1Zを用いた電極51の壁材64(他の部材)への取付作業では、電極51を第1の部分2A周りに回転させながら鍔部6に向けて移動させる工程で、電極51が鍔部6に当接したときの衝撃によって、第2の部分2Bを締め付けている固定部材4、特にナット41の締め付けが緩んでしまい、その結果、ネジ部材2が連れ回りして電極51の取り付けが困難になるという問題があった。これに対し、電極取付構造1Aを用いた場合には、第2の部分2Bに固定部材4とともに挿通された回止部材10Aの内輪郭12の平面視形状が非円形形状(四角形形状)、換言すれば、第2の部分2Bの挿通孔の平面視形状が非円形形状(四角形形状)であるため、内輪郭12(第2の部分2Bの挿通孔)の平面視形状が円形形状である場合に比べて、回止部材10Aにネジ部材2が係合しやすくなることから、ネジ部材2が連れ回りし難く、したがって、電極51を壁材64等の他の部材に確実に取り付けることができる。また回止部材10Aは、ネジ部材2及び支持部材3に対して絶縁性を有しているため、回止部材10Aによって電気防食構造50による所定の防食効果を阻害されるおそれはない。
【0040】
また第1実施形態では、回止部材10Aが、ネジ部材2の軸方向Xにおいて固定部材4(ナット41、ワッシャー42)よりも電極51に近い位置に配置され、電極51と固定部材4との間に回止部材10Aが介在配置されるため、電極51の取付作業で電極51(小電極51P)が鍔部6に当接したときの衝撃を回止部材10Aで受けることができ、斯かる衝撃でナット41をはじめとする固定部材4による締め付けが緩むという不都合を効果的に防止し得る。特に回止部材10AがFRPを含んで構成されている場合には、この衝撃に対する耐性に優れるため、前述の回止部材10Aによる作用効果(特に固定部材4の連れ回り防止効果)がより一層確実に奏され得る。
【0041】
第1実施形態では、
図3に示すように、回止部材10Aは、内輪郭12の平面視形状のみならず、外輪郭11の平面視形状も非円形形状であり、具体的には、外輪郭11の平面視形状は、内輪郭12の平面視形状と同じく四角形形状(正方形形状)である。すなわち回止部材10Aにおいては、内輪郭12の平面視形状と外輪郭11の平面視形状とが相似である。斯かる構成により、前述の回止部材10Aによる作用効果(特に固定部材4の連れ回り防止効果)がより一層確実に奏され得る。
【0042】
また第1実施形態では、
図3に示すように、ネジ部材2の第2の部分2Bにおける回止部材10Aに対応する部分21は、軸方向Xと直交する方向の断面視形状が、内輪郭12の平面視形状と同形状、すなわち四角形形状(正方形形状)である。斯かる構成により、前述の回止部材10Aによるネジ部材2及び固定部材4の連れ回り防止効果がより一層確実に奏され得る。
【0043】
また第1実施形態では、支持部材3は前述したとおり、ネジ部材2の第2の部分2Bを包囲し、該第2の部分2Bに挿通された回止部材10Aを収容可能な凹部330を画成する第2の部分対応部33を具備しているところ、凹部330の平面視形状(凹部330を画成する第2の部分対応部33の内輪郭の平面視形状)が、外輪郭11の平面視形状と同形状、すなわち四角形形状(正方形形状)である(
図3参照)。斯かる構成により、前述の回止部材10Aによるネジ部材2及び固定部材4の連れ回り防止効果がより一層確実に奏され得る。
【0044】
つまり第1実施形態では、
図3に示すように、ネジ部材2の第2の部分2Bの一部(部分21)の輪郭が、軸方向Xと直交する方向の断面視において非円形形状(四角形形状)をなし、且つこの非円形形状の部分21の周面に、回止部材10Aの内周面(内輪郭12)が密着し、且つ回止部材10Aの外周面(外輪郭11)に、支持部材3の第2の部分対応部33が密着している。斯かる構成により、電極51の取付作業で電極51(小電極51P)が鍔部6に当接したときの衝撃力が、第2の部分対応部33を介して支持部材3を壁材64に固定しているボルト35に伝わりやすくなるため、前述の回止部材10Aによるネジ部材2及び固定部材4の連れ回り防止効果がより一層確実に奏され得る。
【0045】
回止部材10Aの各部の寸法は特に限定されず、ネジ部材2の各部の寸法等に応じて適宜設定することができる。回止部材10Aの厚み、すなわち回止部材10Aの軸方向Xの長さは、電極51の取付作業において電極51が鍔部6に当接したときの衝撃を緩和する等の観点から、好ましくは8~20mm、より好ましくは10~15mmである。
【0046】
図4~
図8には、本発明の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前述した第1実施形態の電極取付構造1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、電極取付構造1Aについての説明が適宜適用される。
【0047】
図4及び第2実施形態の電極取付構造1Bでは、
図5に示すように、回止部材10Bの内輪郭12の平面視形状が六角形形状であるとともに、回止部材10Bの外輪郭11の平面視形状も六角形形状であり、内輪郭12の平面視形状と外輪郭11の平面視形状とが相似である。また、第2の部分2Bにおける回止部材10Bに対応する部分21は、軸方向Xと直交する方向の断面視形状が、回止部材10Bの内輪郭12の平面視形状と同形状、すなわち六角形形状であり、該部分21の周面に回止部材10Bの内周面(内輪郭12)が密着している。
【0048】
また電極取付構造1Aでは、支持部材3の第2の部分対応部33の凹部330の平面視形状(第2の部分対応部33の内輪郭の平面視形状)が、回止部材10Aの外輪郭11の平面視形状と同形状であり、回止部材10Aの周面(外輪郭11)に第2の部分対応部33が密着していて、回止部材10Aと第2の部分対応部33との間には実質的に隙間が存在していなかったが(
図3参照)、電極取付構造1Bでは、
図5に示すように、凹部330の平面視形状(第2の部分対応部33の内輪郭の平面視形状)が、回止部材10Bの外輪郭11の平面視形状とは異なっており、したがって、回止部材10Bの周面(外輪郭11)に第2の部分対応部33が密着しておらず、回止部材10Bとこれを包囲する第2の部分対応部33との間に介在部材9が介在されている。介在部材9は第2の部分対応部33に溶接又は溶着の手段により接合されている。介在部材9の素材としては、実用上十分な強度を有する材料であればよく、導電性の有無は問わず、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。
【0049】
電極取付構造1Bによっても電極取付構造1Aと同様の効果が奏される。特に電極取付構造1Bでは、回止部材10Bの作用により、電極51の取付作業時にネジ部材2及び固定部材4(ナット41、ワッシャー42)の連れ回りが防止されるため、充填材7の破損が防止され、所定の防食効果が確実に奏され得る。
【0050】
図6に示す第3実施形態の電極取付構造1Cでは、
図7に示すように、回止部材10Cの内輪郭12の平面視形状が歯車形状であるとともに、回止部材10Cの外輪郭11の平面視形状が六角形形状である。前記歯車形状は、周方向の全長にわたって凸部13と凹部14とが交互に形成され、且つ複数の凸部13の頂部を結ぶ仮想線(図示せず)と複数の凹部14の底部を結ぶ仮想線(図示せず)とで同心円を形成する形状である。また、第2の部分2Bにおける回止部材10Cに対応する部分21は、軸方向Xと直交する方向の断面視形状が、回止部材10Cの内輪郭12の平面視形状と同形状、すなわち歯車形状であり、該部分21の周面に回止部材10Bの内周面(内輪郭12)が密着している。また、支持部材3の第2の部分対応部33の凹部330の平面視形状(第2の部分対応部33の内輪郭の平面視形状)が、回止部材10Cの外輪郭11の平面視形状と同形状、すなわち六角形形状であり、回止部材10Cの周面(外輪郭11)に第2の部分対応部33が密着している。電極取付構造1Cによっても電極取付構造1Aと同様の効果が奏される。
【0051】
図8に示す第4実施形態の電極取付構造1Dは、ネジ部材2及び固定部材4(ナット41、ワッシャー42)を回り止めする回止部材として、第2の部分2B及び支持部材3を軸方向Xと直交する方向に貫通する棒状の回止部材10Dを具備する点で、環状の回止部材を具備する前述の電極取付構造1A,1B,1Cと異なる。
【0052】
第4実施形態では、支持部材3は、第2の部分2Bを包囲し、該第2の部分2Bに挿通された固定部材4(ナット41、ワッシャー42)を収容可能な凹部330を画成する第2の部分対応部33を具備しているところ、棒状の回止部材10Dが挿通される挿通孔として、
図8に示すように、第2の部分対応部33に回止部材用挿通孔34が設けられているとともに、第2の部分2Bに回止部材用挿通孔22が設けられている。電極取付構造1Dの使用状態では、回止部材10Dが両挿通孔34,22を貫通するように配置される。回止部材10Dの素材としては、導電性を有しない材料であればよく、典型的には、回止部材10Aと同様にFRP等のプラスチックが用いられる。
【0053】
電極取付構造1Dは、棒状の回止部材10Dを含む回止機構を具備することで、電極取付構造1Aと同様の効果を奏し得る。前記回止機構は、具体的には、雌ネジ孔510を有する電気防食用電極51を、該雌ネジ孔510に螺合可能な雄ネジ部20を周面に有する導電性のネジ部材2と、該ネジ部材2に螺合される固定部材4(ナット41、ワッシャー42)とを用いて、壁材64(他の部材)に取り付ける場合に、該ネジ部材2及び該固定部材4の回り止めとして用いられる回止機構であって、ネジ部材2が挿通される貫通孔30を有し、該貫通孔30に該ネジ部材2が挿通された状態で、壁材64(他の部材)における電極51の取付面64aとは反対側に位置する非取付面64bに固定される支持部材3と、ネジ部材2及び固定部材4を回り止めする棒状の回止部材10Dとを具備するものである。前記回止機構において、支持部材3は、ネジ部材2における非取付面64bからの延出部(図示の形態では第2の部分2B)を包囲し、該延出部に挿通された固定部材4を収容可能な凹部330を画成する固定部材収容部(図示の形態では第2の部分対応部33)を具備する。前記回止機構において、前記固定部材収容部(第2の部分対応部33)及び前記延出部(第2の部分2B)に、回止部材10Dが挿通される挿通孔34,22が設けられている。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、また、一の実施形態が具備する構成は、他の実施形態が具備し得る。
例えば、前記実施形態では、1つの電極取付構造において、回止部材10A,10B,10Cの如き環状の回止部材、及び棒状の回止部材10Dを含む回止機構のうちの一方のみが採用されていたが、両方が採用されてもよい。すなわち例えば、電極取付構造1A,1B,1Cにおいて、電極取付構造1Dが具備する回止機構(棒状の回止部材10Dと回止部材用挿通孔とを含む回止機構)が採用されてもよく、その場合、ネジ部材2の第2の部分2B及び支持部材3の第2の部分対応部33に加えて更に、環状の回止部材10A,10B,10Cにも回止部材用挿通孔が設けられる。
また、環状の回止部材において外輪郭11と内輪郭12との平面視形状の組み合わせは、前記実施形態に制限されず、任意に組み合わせ可能であり、例えば、回止部材10A(
図3参照)において、外輪郭11の平面視形状は六角形形状又は歯車形状でもよい。また、回止部材10B(
図5参照)において、外輪郭11の平面視形状は四角形形状又は歯車形状でもよい。また、回止部材10C(
図7参照)において、外輪郭11の平面視形状は四角形形状又は歯車形状でもよい。
また、前記実施形態では、電気防食用電極51は、ネジ部材2の軸方向において複数の小電極に分割されていたが、複数に分割されていなくてもよく、本発明は種々の電気防食用電極に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1A,1B,1C,1D,1Z 電極取付構造
2 ネジ部材
20 雄ネジ部
2A 第1の部分
2B 第2の部分
2C 非延出部
21 回止部材対応部
22 回止部材用挿通孔
3 支持部材
30 貫通孔
31 ネジ部材保持部
32 固定部
3F フランジ部
320 ボルト挿入孔
33 第2の部分対応部(固定部材収容部)
330 凹部
34 回止部材用挿通孔
35 ボルト
36 絶縁スリーブ
4 非取付面側の固定部材(第2の部分が挿通される固定部材)
41 ナット
42 ワッシャー
6 鍔部
7 充填材
8 取付面側の固定部材(第1の部分が挿通される固定部材)
81 ナット
82 ワッシャー
9 介在部材
10A,10B,10C,10D 回止部材
11 環状の回止部材の外輪郭
12 環状の回止部材の内輪郭
13 凸部
14 凹部
50 電気防食構造
51 電気防食用電極
510 雌ネジ孔
52 補助陰極
53 絶縁板
54 照合電極
55 外部電源装置
60 海水利用設備
61 冷却管
62 管板
63 水室
64 壁材(電気防食用電極が取り付けられる他の部材)
64a 電気防食用電極の取付面
64b 電気防食用電極の非取付面
65 フランジ座
66 貫通孔