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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】作動流体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20231122BHJP
   F04C 11/00 20060101ALI20231122BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20231122BHJP
   F16H 61/00 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
F15B11/02 M
F04C11/00 B
F15B11/00 H
F16H61/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019220614
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021089049
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 剛史
(72)【発明者】
【氏名】長島 碧
(72)【発明者】
【氏名】津久井 謙
(72)【発明者】
【氏名】室田 和哉
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014101(JP,A)
【文献】特開平06-026453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
F04C 11/00
F15B 11/00
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムであって、
共通の駆動源の出力により駆動され供給通路を通じて前記流体機器へ作動流体を供給可能な第1ポンプ及び第2ポンプと、
前記第2ポンプの吐出通路を、前記供給通路及び前記供給通路とは別の通路の少なくとも一方に連通させる弁装置と、
前記流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて前記弁装置における連通状態を変更する制御部と、を備え、
前記弁装置は、前記吐出通路を前記供給通路にのみ連通させる第1連通状態と、前記吐出通路を前記別の通路にのみ連通させる第2連通状態と、前記第1連通状態から前記第2連通状態または前記第2連通状態から前記第1連通状態へと移行する間に前記吐出通路を前記供給通路及び前記別の通路に連通させる第3連通状態と、を有し、
前記別の通路は、前記第2ポンプから吐出された作動流体をタンクに戻すドレン通路、前記供給通路とは別に前記流体機器へ供給される作動流体が流通する通路、または、前記流体機器とは別の流体機器へ供給される作動流体が流通する通路であり、
前記制御部は、
前記弁装置の連通状態を前記第1連通状態から前記第2連通状態または前記第2連通状態から前記第1連通状態へと瞬時に切り換えた際に前記供給通路において生じると予測される圧力変動が大きいほど前記弁装置の連通状態を切り換える切換時間を長く設定し、
設定された前記切換時間を掛けて、前記弁装置の連通状態を前記第1連通状態から前記第2連通状態または前記第2連通状態から前記第1連通状態へと前記第3連通状態を介して切り換えることを特徴とする作動流体供給システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1ポンプから吐出される作動流体の第1吐出流量及び前記第2ポンプから吐出される作動流体の第2吐出流量を算出する吐出流量算出部と、
前記第1吐出流量及び前記第2吐出流量に基づいて前記供給通路において生じる圧力の変動を予測する圧力変動予測部と、
前記圧力変動予測部により予測された圧力の変動に応じて前記切換時間を設定する切換時間設定部と、を有し、
前記第2ポンプの吐出量が多いほど、前記圧力変動が大きくなると予測し、前記切換時間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載の作動流体供給システム。
【請求項3】
前記弁装置は、前記第1連通状態となる第1位置と、前記第2連通状態となる第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間において前記第3連通状態となる第3位置と、を有する切換弁であり、
前記制御部は、前記第3連通状態を介して前記第1連通状態から前記第2連通状態または前記第2連通状態から前記第1連通状態となるように、前記切換時間を掛けて前記切換弁の位置を切り換えることを特徴とする請求項1または2に記載の作動流体供給システム。
【請求項4】
前記別の通路は、前記第2ポンプから吐出された作動流体をタンクに戻すドレン通路であり、
前記第3位置において、前記吐出通路と前記別の通路とを連通する第2連通路の断面積は、前記吐出通路と前記供給通路とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定されることを特徴とする請求項3に記載の作動流体供給システム。
【請求項5】
前記弁装置は、
前記吐出通路を前記供給通路にのみ連通させる第1位置と、前記吐出通路を前記別の通路にのみ連通させる第2位置と、を有する第1切換弁と、
前記第1切換弁の下流側に設けられ、前記吐出通路を前記供給通路にのみ連通させる第1位置と、前記吐出通路を前記供給通路及び前記別の通路に連通させる第2位置と、を有
する第2切換弁と、を有し、
前記第1切換弁が前記第1位置にあり前記第2切換弁が前記第1位置にあるとき前記第1連通状態となり、前記第1切換弁が前記第2位置にあるとき前記第2連通状態となり、前記第1切換弁が前記第1位置にあり前記第2切換弁が前記第2位置にあるとき前記第3連通状態となり、
前記制御部は、前記第3連通状態を介して前記第1連通状態から前記第2連通状態または前記第2連通状態から前記第1連通状態となるように、前記切換時間を掛けて前記第1切換弁及び前記第2切換弁の位置を切り換えることを特徴とする請求項1または2に記載の作動流体供給システム。
【請求項6】
前記別の通路は、前記第2ポンプから吐出された作動流体をタンクに戻すドレン通路であり、
前記第2切換弁の前記第2位置において、前記吐出通路と前記別の通路とを連通する第2連通路の断面積は、前記吐出通路と前記供給通路とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定されることを特徴とする請求項5に記載の作動流体供給システム。
【請求項7】
前記弁装置は、前記第2切換弁の下流側に設けられ、前記吐出通路を前記供給通路にのみ連通させる第1位置と、前記吐出通路を前記供給通路及び前記別の通路に連通させる第2位置と、を有する第3切換弁をさらに有し、
前記第1切換弁が前記第1位置にあり前記第2切換弁が前記第1位置にあり前記第3切換弁が前記第1位置にあるとき前記第1連通状態となり、前記第1切換弁が前記第2位置にあるとき前記第2連通状態となり、前記第1切換弁が前記第1位置にあり前記第2切換弁が前記第1位置または前記第2位置にあり前記第3切換弁が前記第2位置にあるとき前記第3連通状態となり、
前記制御部は、前記第3連通状態を介して前記第1連通状態から前記第2連通状態または前記第2連通状態から前記第1連通状態となるように、前記切換時間を掛けて前記第1切換弁、前記第2切換弁及び前記第3切換弁の位置を切り換えることを特徴とする請求項5または6に記載の作動流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動源の出力により駆動され流体機器へ作動流体を供給可能なメインポンプ及びサブポンプと、サブポンプからの作動流体の供給先を切り換える切換弁と、を備えた作動流体供給システムが開示されている。この作動流体供給システムでは、サブポンプからの作動流体の供給先は、切換弁によって、メインポンプの吐出側またはメインポンプの吸込み側に切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-266978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作動流体供給システムでは、サブポンプからの作動流体の供給先がメインポンプの吐出側に切り換えられると流体機器へ供給される作動流体が急激に増えることにより供給圧力が上昇し、流体機器が安定して作動できなくなるおそれがある。同様に、サブポンプからの作動流体の供給先がメインポンプの吐出側から吸込み側に切り換えられると流体機器へ供給される作動流体が急激に減ることにより供給圧力が低下し、流体機器が安定して作動できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、少なくとも2つのポンプから作動流体が供給される流体機器への作動流体の供給状態が切り換えられたときに生じる供給圧力の変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムが、共通の駆動源の出力により駆動され供給通路を通じて流体機器へ作動流体を供給可能な第1ポンプ及び第2ポンプと、第2ポンプの吐出通路を、供給通路及び供給通路とは別の通路の少なくとも一方に連通させる弁装置と、流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて弁装置における連通状態を変更する制御部と、を備え、弁装置は、吐出通路を供給通路にのみ連通させる第1連通状態と、吐出通路を別の通路にのみ連通させる第2連通状態と、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと移行する間に吐出通路を供給通路及び別の通路に連通させる第3連通状態と、を有し、別の通路は、第2ポンプから吐出された作動流体をタンクに戻すドレン通路、供給通路とは別に流体機器へ供給される作動流体が流通する通路、または、流体機器とは別の流体機器へ供給される作動流体が流通する通路であり、制御部は、弁装置の連通状態を第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと瞬時に切り換えた際に供給通路において生じると予測される圧力変動が大きいほど弁装置の連通状態を切り換える切換時間を長く設定し、設定された切換時間を掛けて、弁装置の連通状態を第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと第3連通状態を介して切り換えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、弁装置による連通状態は、予測される圧力変動の大きさに応じて設定された切換時間を掛けて、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる。このため、弁装置による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路において生じる圧力変動が大きいと予測される場合には、切換時間を長くすることによって、第2ポンプから吐出された作動流体が供給通路と供給通路とは別の通路との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保されることになる。これにより、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2ポンプから供給通路へと供給される作動流体の流量が急激に増減することが回避される。
【0008】
また、本発明は、制御部が、第1ポンプから吐出される作動流体の第1吐出流量及び第2ポンプから吐出される作動流体の第2吐出流量を算出する吐出流量算出部と、第1吐出流量及び第2吐出流量に基づいて供給通路において生じる圧力の変動を予測する圧力変動予測部と、圧力変動予測部により予測された圧力の変動に応じて切換時間を設定する切換時間設定部と、を有し、第2ポンプの吐出量が多いほど、前記圧力変動が大きくなると予測し、切換時間を長く設定することを特徴とする。
【0009】
この発明では、第2ポンプの吐出量が多いほど切換時間が長く設定される。弁装置による連通状態を瞬時に切り換えた場合、第2ポンプの吐出量が多いほど、供給通路を流れる作動流体の流量の増減が大きくなることから供給通路において比較的大きな圧力変動が生じ易くなる。このため、第2ポンプの吐出量が多いほど切換時間を長くし、第2ポンプから吐出された作動流体が供給通路と供給通路とは別の通路との両方の通路に流入可能な状態となる時間を長くすることによって、第2ポンプから供給通路へと供給される作動油の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0010】
また、本発明は、弁装置が、第1連通状態となる第1位置と、第2連通状態となる第2位置と、第1位置と第2位置との間において第3連通状態となる第3位置と、を有する切換弁であり、制御部は、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態となるように、切換時間を掛けて切換弁の位置を切り換えることを特徴とする。
【0011】
この発明では、弁装置は、3つの位置を有する切換弁である。このように簡素な構成の切換弁の位置を、切換時間を掛けて切り換えることによって、第2ポンプから吐出された作動流体が供給通路と供給通路とは別の通路との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保される。これにより、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2ポンプから供給通路へと供給される作動流体の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0012】
また、本発明は、別の通路が、第2ポンプから吐出された作動流体をタンクに戻すドレン通路であり、第3位置において、吐出通路と別の通路とを連通する第2連通路の断面積は、吐出通路と供給通路とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、切換弁の第3位置において、吐出通路とドレン通路とを連通する第2連通路の断面積は、吐出通路と供給通路とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定される。これによりドレン通路に流入する作動流体の流量を制限するとともに供給通路に流入する作動流体の流量を確保することによって、第3位置に切り換えられたときに、第2ポンプから供給通路へと供給される作動流体の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0014】
また、本発明は、弁装置が、吐出通路を供給通路にのみ連通させる第1位置と、吐出通路を別の通路にのみ連通させる第2位置と、を有する第1切換弁と、第1切換弁の下流側に設けられ、吐出通路を供給通路にのみ連通させる第1位置と、吐出通路を供給通路及び別の通路に連通させる第2位置と、を有する第2切換弁と、を有し、第1切換弁が第1位置にあり第2切換弁が第1位置にあるとき第1連通状態となり、第1切換弁が第2位置にあるとき第2連通状態となり、第1切換弁が第1位置にあり第2切換弁が第2位置にあるとき第3連通状態となり、制御部は、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態となるように、切換時間を掛けて第1切換弁及び第2切換弁の位置を切り換えることを特徴とする。
【0015】
この発明では、弁装置は、2つの二位置切換弁である。このように簡素な構成の切換弁の位置を、切換時間を掛けて切り換えることによって、第2ポンプから吐出された作動流体が供給通路と供給通路とは別の通路との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保される。これにより、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2ポンプから供給通路へと供給される作動流体の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0016】
また、本発明は、別の通路が、第2ポンプから吐出された作動流体をタンクに戻すドレン通路であり、第2切換弁の第2位置において、吐出通路と別の通路とを連通する第2連通路の断面積は、吐出通路と供給通路とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定されることを特徴とする。
【0017】
この発明では、第2切換弁の第2位置において、吐出通路とドレン通路とを連通する第2連通路の断面積は、吐出通路と供給通路とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定される。これによりドレン通路に流入する作動流体の流量を制限するとともに供給通路に流入する作動流体の流量を確保することによって、第2切換弁が第2位置に切り換えられたときに、第2ポンプから供給通路へと供給される作動流体の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0018】
また、本発明は、弁装置が、第2切換弁の下流側に設けられ、吐出通路を供給通路にのみ連通させる第1位置と、吐出通路を供給通路及び別の通路に連通させる第2位置と、を有する第3切換弁をさらに有し、第1切換弁が第1位置にあり第2切換弁が第1位置にあり第3切換弁が第1位置にあるとき第1連通状態となり、第1切換弁が第2位置にあるとき第2連通状態となり、第1切換弁が第1位置にあり第2切換弁が第1位置または第2位置にあり第3切換弁が第2位置にあるとき第3連通状態となり、制御部は、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態となるように、切換時間を掛けて第1切換弁、第2切換弁及び第3切換弁の位置を切り換えることを特徴とする。
【0019】
この発明では、第2切換弁の下流側に第3切換弁がさらに設けられ、第2切換弁が第2位置にあるとき及び第3切換弁が第2位置にあるときに第3連通状態となる。このため、第2切換弁と第3切換弁とにおいて、吐出通路と供給通路とが連通する第1連通路の断面積及び吐出通路と供給通路とは別の通路とが連通する第2連通路の断面積の大きさをそれぞれ設定することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも2つのポンプから作動流体が供給される流体機器への作動流体の供給状態が切り換えられたときに生じる供給圧力の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムの構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムの切換弁の連通状態を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラの機能を説明するためのブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される制御の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る作動流体供給システムの構成を示す概略図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る作動流体供給システムの切換弁の連通状態を説明するための図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システム100について説明する。
【0024】
作動流体供給システム100は、作動流体によって作動する流体機器へ作動流体を供給するシステムである。以下では、作動流体供給システム100が、エンジン50と、エンジン50の出力を駆動輪に伝達する自動変速機70と、を備える車両に搭載され、ベルト式無段変速機構(CVT)を有する流体機器としての自動変速機70に対して作動流体を供給する場合について説明する。図1は、作動流体供給システム100の構成を示す概略図である。
【0025】
作動流体供給システム100は、駆動源としてのエンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動流体としての作動油を供給可能な第1ポンプとしての第1オイルポンプ10と、第1オイルポンプ10とともにエンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第2ポンプとしての第2オイルポンプ11と、第2オイルポンプ11からの作動油の供給先を切り換え可能な弁装置としての切換弁24と、切換弁24の作動を制御し自動変速機70への作動油の供給を制御する制御部としてのコントローラ40と、を備える。
【0026】
第1オイルポンプ10は、エンジン50によって回転駆動されるベーンポンプであり、第1吸込通路12を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、第1吐出通路13を通じて自動変速機70へと作動油を吐出する。第1吐出通路13は、第1オイルポンプ10から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁15を介して、自動変速機70へ供給される作動油が流通する供給通路14に接続される。
【0027】
第2オイルポンプ11は、第1オイルポンプ10と同様に、エンジン50によって回転駆動されるベーンポンプであり、第2吸込通路16を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、吐出通路としての第2吐出通路17を通じて作動油を吐出する。第2吐出通路17は、切換弁24を介して接続通路19及び第1ドレン通路20に接続される。接続通路19は、第2オイルポンプ11から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁21を介して供給通路14に接続される。一端が切換弁24に接続される第1ドレン通路20の他端は、タンクTに接続される。
【0028】
第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とは、別々に構成される2つのベーンポンプであってもよいし、2つの吸込領域と2つの吐出領域とを有する平衡型ベーンポンプのように1つのベーンポンプで構成されるものであってもよい。また、第1オイルポンプ10の吐出流量と第2オイルポンプ11の吐出流量とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
切換弁24は、電気的に駆動される比例ソレノイドバルブであり、図示しないスプールの位置を変位させることによって、第2吐出通路17が接続されるポートを、接続通路19を介して供給通路14が接続されるポート及び供給通路14とは別の通路としての第1ドレン通路20が接続されるポートの少なくとも一方のポートに連通させる。なお、供給通路14とは別の通路としては、第1ドレン通路20に限定されず、例えば、供給通路14とは別に自動変速機70へ供給される作動油が流通する通路や自動変速機70とは別の流体機器へ供給される作動油が流通する通路であってもよい。
【0030】
切換弁24は、図1及び図2に示すように、接続通路19を通じて第2吐出通路17と供給通路14とを連通させる第1位置24aと、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とを連通させる第2位置24bと、第1位置24aと第2位置24bとの間において第2吐出通路17を第1絞り24eを通じて供給通路14と連通させるとともに第2吐出通路17を第2絞り24fを通じて第1ドレン通路20と連通させる第3位置24cと、の3つの位置を有する。切換弁24の位置はコントローラ40によって制御されるが、切換弁24が故障した際にも第2オイルポンプ11から作動油が供給されるようにするために、非通電時は、第1位置24aとなるように付勢されている。
【0031】
なお、図2は、切換弁24内において、第2吐出通路17と接続通路19とが連通する通路を第1連通路とし、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する通路を第2連通路とした場合に、切換弁24の位置に応じて第1連通路及び第2連通路の断面積の大きさがそれぞれどのように変化するかを概略的に示した図である。
【0032】
図2に示されるように、第1連通路の断面積は、第1位置24aにおいて最大であり、第1位置24aから第2位置24bに向かうにつれて徐々に減少し、第2位置24bにおいてゼロ、すなわち、第2位置24bにおいて第1連通路が閉塞されるように設定されている。一方、第2連通路の断面積は、第2位置24bにおいて最大であり、第2位置24bから第1位置24aに向かうにつれて徐々に減少し、第1位置24aにおいてゼロ、すなわち、第1位置24aにおいて第2連通路が閉塞されるように設定されている。
【0033】
このように第1連通路の断面積及び第2連通路の断面積が設定されることで、第3位置24cでは、比較的小さい断面積となった第1連通路、すなわち、第1絞り24eを通じて第2吐出通路17と接続通路19とが連通するとともに、比較的小さい断面積となった第2連通路、すなわち、第2絞り24fを通じて第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通することになる。
【0034】
ここで、通常、第1ドレン通路20内の圧力は、供給通路14内の圧力と比べて低くなることから、第3位置24cにおいて第1連通路の断面積と第2連通路の断面積とを同じ大きさにしてしまうと、第2オイルポンプ11から吐出された作動油のほとんどは第1ドレン通路20へ流入することになってしまう。
【0035】
このため、第3位置24cにおける第1連通路の断面積である第1断面積A1、すなわち、第1絞り24eの断面積を第2連通路の断面積である第2断面積A2、すなわち、第2絞り24fの断面積よりも大きく設定することによって、第3位置24cにあるときに、第1ドレン通路20に流入する作動油の流量が供給通路14に流入する作動油の流量よりも多くなり過ぎてしまうことを防止している。第1絞り24eの断面積及び第2絞り24fの断面積は、第3位置24cにあるときに、第1ドレン通路20に流入する作動油の流量と供給通路14に流入する作動油の流量とがほぼ同等となるように設定されることが好ましい。
【0036】
なお、第3位置24cにおいて、第2吐出通路17と連通する通路がタンクTへと作動油を戻す第1ドレン通路20ではなく、何れかの流体機器へ供給される作動油が流通する通路である場合に、この通路内の圧力が供給通路14内の圧力とほぼ同じ大きさであれば、第1断面積A1と第2断面積A2とは同じ大きさに設定されてもよい。
【0037】
上記構成の切換弁24の位置が第1位置24aに切り換えられると、第2吐出通路17と接続通路19とが連通し、第2吐出通路17と第1ドレン通路20との連通が遮断された第1連通状態となる。第1連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は接続通路19及び供給通路14を通じて自動変速機70へと供給される。
【0038】
一方、切換弁24の位置が第2位置24bに切り換えられると、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通し、第2吐出通路17と接続通路19との連通が遮断された第2連通状態となる。第2連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1ドレン通路20を通じてタンクTへと排出される。
【0039】
なお、切換弁24の位置が第2位置24bにあるときには、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との両方がタンクTに連通した状態となり、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との圧力差がほぼゼロとなる。したがって、第2オイルポンプ11は無負荷運転状態、すなわち、第2オイルポンプ11を駆動させる負荷がエンジン50に対してほとんどかからない状態となる。このため、作動流体供給システム100の効率を向上させるためには、第2オイルポンプ11から作動油の吐出が不要である場合には、第2オイルポンプ11を無負荷運転状態とすることが好ましい。
【0040】
また、切換弁24の位置が第3位置24cを含む第1位置24aと第2位置24bとの間に切り換えられると、第2吐出通路17と接続通路19とが連通するとともに、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する第3連通状態となる。第3連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、接続通路19及び供給通路14を通じて自動変速機70へと供給されるとともに第1ドレン通路20を通じてタンクTへと排出される。
【0041】
このとき、供給通路14に流入する作動油の流量と第1ドレン通路20に流入する作動油の流量との比率は、第1連通路の断面積と第2連通路の断面積との比率や供給通路14内の圧力、第1ドレン通路20内の圧力に応じて変化する。なお、接続通路19と供給通路14との間には上述のように逆止弁21が設けられていることから、供給通路14内の作動油が接続通路19及び切換弁24を通じて第1ドレン通路20に流出することは避けられる。
【0042】
このように、作動流体供給システム100では、必要に応じて、第1オイルポンプ10に加えて第2オイルポンプ11からも自動変速機70へと作動油を供給することが可能である。
【0043】
なお、切換弁24の位置は、図示しないソレノイドによって図示しないスプールが直接駆動されることによって切り換えられるものであってもよいし、スプールに作用するパイロット圧力の有無や大小によって切り換えられるものであってもよく、切換弁24の駆動方式としては、コントローラ40からの指令に応じてその位置が切り換わればどのような方式が採用されてもよい。
【0044】
作動流体供給システム100は、自動変速機70へ供給される作動油の圧力を制御する圧力制御弁31をさらに備える。
【0045】
圧力制御弁31は、タンクTに接続される第2ドレン通路30を通じて供給通路14内の作動油をタンクTへと適宜排出する電磁式レギュレータであり、圧力制御弁31の作動は、供給通路14内の圧力を検出可能な圧力センサ32で検出された圧力が予め設定された大きさとなるようにコントローラ40によって制御される。つまり、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から自動変速機70へと供給される作動油の圧力の大きさは、圧力制御弁31によって常に適切な大きさに制御される。
【0046】
次に、図3を参照し、コントローラ40について説明する。図2は、コントローラ40の機能を説明するためのブロック図である。
【0047】
コントローラ40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースはコントローラ40に接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0048】
コントローラ40は、車両の各部に設けられた各種センサから入力される車両の状態を示す信号に基づき、切換弁24の位置を切り換え制御することで自動変速機70への作動油の供給状態を制御する。なお、コントローラ40は、エンジン50のコントローラ及び自動変速機70のコントローラを兼ねるものであってもよいし、エンジン50のコントローラ及び自動変速機70のコントローラとは別に設けられるものあってもよい。
【0049】
コントローラ40に入力される車両の状態を示す信号としては、例えば、車両の速度を示す信号や車両の加速度を示す信号、シフトレバーの操作位置を示す信号、アクセルの操作量を示す信号、エンジン50の回転数を示す信号、スロットル開度や燃料噴射量等のエンジン50の負荷を示す信号、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数を示す信号、自動変速機70内の作動油の油温を示す信号、自動変速機70に供給された作動油の圧力(ライン圧)を示す信号、自動変速機70の変速比を示す信号、第1オイルポンプ10の吐出圧を示す信号、第2オイルポンプ11の吐出圧を示す信号等である。
【0050】
コントローラ40は、自動変速機70への作動油の供給を制御するための機能として、各種センサから入力される信号に基づいて自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを演算する必要流量演算部41と、各種センサから入力される信号に基づいて第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2を算出する吐出流量算出部42と、必要流量演算部41で演算された流量と吐出流量算出部42で算出された流量との比較が行われる比較部43と、比較部43における比較結果に基づき自動変速機70への作動油の供給状態を設定する供給状態設定部45と、供給状態設定部45からの指令に応じて切換弁24の位置を切り換え制御する切換制御部46と、を有する。なお、これら必要流量演算部41等は、コントローラ40の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0051】
必要流量演算部41は、主にアクセル開度や車速、自動変速機70内の作動油の油温、自動変速機70に供給された作動油の圧力、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数、自動変速機70の変速比に基づいて自動変速機70で必要とされる作動油の流量を演算する。
【0052】
ここで、自動変速機70で必要とされる作動油の流量は、図示しないベルト式無段変速機構のバリエータのプーリ幅を変化させるために必要となる変速流量や油圧制御弁内の隙間や油圧回路上の隙間から漏れるリーク流量、自動変速機70を冷却ないし潤滑するために必要となる潤滑流量、図示しないオイルクーラに導かれる冷却流量などがある。
【0053】
これらの流量がどの程度の流量となるかは、予めマップ化されており、コントローラ40のROMに記憶されている。具体的には、変速流量は、変速比が大きく変化する場合、例えば、アクセル開度の上昇率が大きい加速時や車速の減速率が大きい減速時には大きな値となることから、アクセル開度や車速の変化率がパラメータとされる。なお、車両の加減速に関連するパラメータとしては、エンジン50の回転数や負荷の変化に影響を及ぼすスロットル開度や燃料噴射量などが用いられてもよい。リーク流量は、作動油の温度が上昇し作動油の粘度が低下するほど、また、供給される作動油の圧力が大きいほど大きな値となることから、作動油の温度や圧力がパラメータとされる。
【0054】
また、作動油の温度が上昇し作動油の粘度が低下するほど油膜切れが生じやすくなるため、作動油の温度が高いほど潤滑流量を多くする必要があり、また、自動変速機70内の回転軸の回転数が高いほど油膜切れが生じやすくなるため、自動変速機70内の回転軸の回転数が高いほど潤滑流量を多くする必要がある。これらを考慮し、潤滑流量は、例えば、作動油の温度や自動変速機70の入出力軸の回転数がパラメータとされる。
【0055】
また、作動油の温度は、潤滑性や油膜保持等の観点からは、所定の温度を超えないようにする必要があり、また、作動油を冷却するためには、オイルクーラに冷却風が導かれる状態、すなわち、所定以上の車速で車両が走行する状態である必要がある。このため、冷却流量は、主に作動油の温度と車速とがパラメータとされる。なお、これら変速流量、リーク流量、潤滑流量及び冷却流量を決定するためのパラメータは一例であり、例示されたパラメータと関連性があるパラメータが用いられてもよく、何をパラメータとするかはコントローラ40に入力される信号から適宜選定される。
【0056】
このように、必要流量演算部41では、変速流量、リーク流量、潤滑流量及び冷却流量を考慮して自動変速機70で単位時間あたりに必要とされる作動油の量である必要流量Qrが演算される。
【0057】
吐出流量算出部42は、主にエンジン50の回転数と第1オイルポンプ10の1回転あたりの理論吐き出し量である予め設定された第1基本吐出量D1とに基づいて第1オイルポンプ10から単位時間あたりに吐出される作動油の量である第1吐出流量Q1を算出し、主にエンジン50の回転数と第2オイルポンプ11の1回転あたりの理論吐き出し量である予め設定された第2基本吐出量D2とに基づいて第2オイルポンプ11から単位時間あたりに吐出される作動油の量である第2吐出流量Q2を算出する。
【0058】
第1オイルポンプ10の回転数と第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1とは、ほぼ比例して変化する関係にあり、また、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1は、油温によって変わる粘度や第1オイルポンプ10の吐出圧に応じて変化する。これらの関係は、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1を正確に算出するために予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。
【0059】
第1オイルポンプ10の回転数は、第1オイルポンプ10を駆動するエンジン50の回転数に応じて変化するため、吐出流量算出部42では、エンジン50の回転数と作動油の油温と第1オイルポンプ10の吐出圧とから第1吐出流量Q1が容易に算出される。
【0060】
なお、エンジン50の回転数に代えて、第1オイルポンプ10の回転数を用いて第1吐出流量Q1を算出してもよい。また、第1オイルポンプ10の吐出圧は、自動変速機70に供給された作動油の圧力であるライン圧に応じて変化するため、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1の算出にあたっては、第1オイルポンプ10の吐出圧に代えて、ライン圧が用いられてもよい。
【0061】
第2オイルポンプ11の第2吐出流量Q2についても第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1と同様にして算出される。なお、第2オイルポンプ11の第2吐出流量Q2の算出は、切換弁24の切換状態に関わらず、すなわち、第2オイルポンプ11が自動変速機70へ作動油を供給する状態にあるか否かに関わらず行われる。
【0062】
比較部43は、後述のように、必要流量演算部41で演算された必要流量Qrと吐出流量算出部42で算出された第1吐出流量Q1との比較や第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2との合計流量と必要流量Qrとの比較を行い、これらの比較結果に応じた信号を供給状態設定部45へ送信する。
【0063】
供給状態設定部45は、比較部43から送信された信号に基づき自動変速機70への作動油の供給状態を設定し、設定された供給状態となるように切換制御部46に信号を送信する。具体的には、供給状態設定部45は、切換弁24の位置が切換制御部46によって第2位置24bに切り換えられ、第2オイルポンプ11からは自動変速機70へ作動油が供給されず、第1オイルポンプ10のみから自動変速機70へ作動油が供給される第1供給状態と、切換弁24の位置が切換制御部46によって第1位置24aに切り換えられ、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11との2つのポンプから自動変速機70へ作動油が供給される第2供給状態と、の2つの状態から自動変速機70へ作動油を供給する供給状態を設定する。
【0064】
ここで、自動変速機70への作動油の供給状態を第1供給状態から第2供給状態に切り換える際に、切換弁24の位置を第2位置24bから第1位置24aへと瞬時に切り換えると、供給通路14に流入する作動油の流量が急激に増加することによって供給通路14内の圧力が急激に上昇し、圧力制御弁31による圧力の制御が追い付かず、自動変速機70へ供給される作動油の圧力が予め設定された圧力よりも大きくなってしまい、結果として、自動変速機70が安定して作動できなくなるおそれがある。
【0065】
同様に、自動変速機70への作動油の供給状態を第2供給状態から第1供給状態に切り換える際に、切換弁24の位置を第1位置24aから第2位置24bへと瞬時に切り換えると、供給通路14に流入する作動油の流量が急激に減少することによって供給通路14内の圧力が急激に下降し、自動変速機70へ供給される作動油の圧力が予め設定された圧力よりも小さくなってしまい、結果として、自動変速機70が安定して作動できなくなるおそれがある。
【0066】
このような供給通路14における圧力の変動を回避するために、コントローラ40は、仮に切換弁24の位置を瞬時に切り換えた場合に供給通路14において生じる圧力の変動を予測する圧力変動予測部47と、圧力変動予測部47により予測された圧力の変動に応じて切換弁24の位置の切り換えに掛ける切換時間を設定する切換時間設定部48と、をさらに有する。
【0067】
圧力変動予測部47は、吐出流量算出部42により算出された第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2に基づいて、予め記憶されたマップを用いて、供給通路14において生じる圧力の変動を予測する。
【0068】
マップは、例えば、切換弁24を切り換える速度または時間や切換弁24を切り換える前の供給通路14内の圧力、第1吐出流量Q1、第2吐出流量Q2、エンジン回転数、作動油の温度等をパラメータとし、これらのパラメータを変化させた場合に供給通路14において生じる圧力変動がどのように変化するのかが予測されたものであり、コントローラ40のROMに記憶されている。なお、コントローラ40のROMには、マップに代えて、これらをパラメータとして圧力変動を演算するための演算式が記憶されていてもよい。
【0069】
このようにして供給通路14を流れる作動油の流量が第1吐出流量Q1である状態から第2吐出流量Q2が加えられた状態となったときに供給通路14において生じる圧力の変動及び供給通路14を流れる作動油の流量が第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2とを合わせた流量である状態から第2吐出流量Q2が減じられた状態となったときに供給通路14において生じる圧力の変動が予測される。なお、予測される圧力変動は、第2吐出流量Q2が大きいほど、つまり、第2オイルポンプ11を駆動するエンジン50の回転数が高いほど大きくなる。
【0070】
切換時間設定部48は、上述のように圧力変動予測部47において予測された圧力変動に応じて、切換弁24の位置を第1位置24aから第2位置24bまたは第2位置24bから第1位置24aに切り換える切換時間を設定する。具体的には、切換時間は、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が自動変速機70の作動に影響を及ぼさない程度に小さい場合には、標準切換時間に設定され、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が自動変速機70の作動に影響を及ぼす程に大きい場合には、標準切換時間に所定の追加時間が追加された時間、つまり、標準切換時間よりも長い時間に設定される。標準切換時間の長さは、例えば、0.03秒から0.07秒、好ましくは0.05秒前後である。
【0071】
圧力変動に対して所定の追加時間をどの程度の長さにすべきかについては予め実験等によって求められマップ化されており、標準切換時間と共にコントローラ40のROMに記憶されている。なお、所定の追加時間の設定には、予測された圧力変動に加えて、切換弁24のスプールに作用する作動油の圧力等が勘案されてもよく、コントローラ40のROMには、これらをパラメータとして所定の追加時間を演算するための演算式が記憶されていてもよい。
【0072】
そして、上述の切換制御部46は、切換時間設定部48により設定された切換時間を掛けて、切換弁24の位置を第1位置24aから第2位置24bまたは第2位置24bから第1位置24aへと第3位置24cを介して切り換える。例えば、圧力変動予測部47により予測された圧力の変動が大きいほど、切換時間は長くなり、切換弁24の作動速度は比較的遅くなる。このように切換弁24の作動速度が遅くなると、切換弁24の位置が第3位置24cを含む第1位置24aと第2位置24bとの間に位置する時間、すなわち、第3連通状態となる時間が長くなる。
【0073】
したがって、切換弁24の位置が第1位置24aから第2位置24bへと切り換えられる過程では、第1ドレン通路20を通じてタンクTに排出される作動油が徐々に増加する一方で第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量は徐々に減少することになる。このため、供給通路14を流れる作動油の流量が急激に減少することが回避される。これにより自動変速機70へ供給される作動油の供給圧力が急激に下降してしまうことも回避され、結果として、自動変速機70を安定して作動させることが可能となる。
【0074】
同様に、切換弁24の位置が第2位置24bから第1位置24aへと切り換えられる過程では、第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量が徐々に増加する一方で第1ドレン通路20を通じてタンクTに排出される作動油の流量は徐々に減少することになる。このため、供給通路14を流れる作動油の流量が急激に増加することが回避される。これにより自動変速機70へ供給される作動油の供給圧力が急激に上昇してしまうことも回避され、結果として、自動変速機70を安定して作動させることが可能となる。
【0075】
次に、図4のフローチャートを参照し、自動変速機70へ作動油を供給する際に、上述の機能を有するコントローラ40により行われる制御について説明する。図4に示される制御は、コントローラ40によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0076】
まず、ステップS11において、コントローラ40には、車両の状態、特にエンジン50や自動変速機70の状態を示す各種センサの検出信号として、例えば、車両の速度を示す信号や車両の加速度を示す信号、シフトレバーの操作位置を示す信号、アクセルの操作量を示す信号、エンジン50の回転数を示す信号、スロットル開度や燃料噴射量等のエンジン50の負荷を示す信号、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数を示す信号、自動変速機70内の作動油の油温を示す信号、自動変速機70に供給された作動油の圧力(ライン圧)を示す信号、自動変速機70の変速比を示す信号、第1オイルポンプ10の吐出圧を示す信号、第2オイルポンプ11の吐出圧を示す信号等が入力される。
【0077】
ステップS12では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが必要流量演算部41において演算される。
【0078】
続くステップS13では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2が吐出流量算出部42において算出される。なお、第1オイルポンプ10の仕様と第2オイルポンプ11の仕様が全く同じであり、第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2とが同じ値になる場合には、何れか一方が算出されればよい。
【0079】
ステップS12で演算された必要流量QrとステップS13で算出された第1吐出流量Q1とは、ステップS14において比較部43により比較される。
【0080】
ステップS14において、第1吐出流量Q1が必要流量Qr以上であると判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10のみで自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが可能である場合には、ステップS15に進む。
【0081】
ステップS15では、自動変速機70への作動油の供給状態が供給状態設定部45により第1供給状態に設定される。この場合、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的少ないため、第1オイルポンプ10のみを駆動させることで必要流量Qrを賄うことができる。
【0082】
このような状況として、具体的には、急加速や急減速が行われない定常走行時であって変速流量がほとんど増減しない場合や、作動油の油温が例えば120℃以下であるためリーク流量が比較的少ない場合、作動油の油温が低温から中温であって冷却流量を確保する必要がない場合などが挙げられる。
【0083】
一方、ステップS14において、第1吐出流量Q1が必要流量Qrよりも小さいと判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10のみでは自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが不可能である場合には、ステップS16に進む。
【0084】
ステップS16では、自動変速機70への作動油の供給状態が供給状態設定部45により第2供給状態に設定される。この場合、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的多いため、第1オイルポンプ10に加えて第2オイルポンプ11を駆動させることで必要流量Qrが賄われる。
【0085】
このような状況として、具体的には、加減速を伴う走行時であって変速流量が増加する場合や、作動油の油温が例えば120℃を超えているためリーク流量が比較的多い場合、作動油の油温が高温であって冷却流量を確保する必要がある場合などが挙げられる。
【0086】
続くステップS17では、供給状態の変更が必要か否か、すなわち、上記ステップS14~S16において判定された供給状態が現在すでに設定されている供給状態と同じであるか否かが判定される。
【0087】
具体的には、現在の供給状態が第1供給状態であるときに第2供給状態に設定が変更された場合及び現在の供給状態が第2供給状態であるときに第1供給状態に設定が変更された場合には、供給状態の変更が必要であるとしてステップS18へと進む。
【0088】
一方、上記ステップS14~S16において判定された供給状態が第1供給状態であり、現在の供給状態が第1供給状態である場合及び上記ステップS14~S16において判定された供給状態が第2供給状態であり、現在の供給状態が第2供給状態である場合には、供給状態を変更する必要がないとして一旦処理を終了する。
【0089】
ステップS18では、圧力変動予測部47により、例えば、切換弁24を切り換える速度または時間や切換弁24を切り換える前の供給通路14内の圧力、第1吐出流量Q1、第2吐出流量Q2、エンジン回転数、作動油の温度等をパラメータとし、これらのパラメータを変化させた場合に供給通路14において生じる圧力変動がどのように変化するのかが予測されたマップを用いて、吐出流量算出部42により算出された第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2に基づいて、供給通路14において生じる圧力の変動が予測される。
【0090】
続くステップS19では、切換時間設定部48により、切換弁24の位置を第1位置24aから第2位置24bまたは第2位置24bから第1位置24aに切り換える切換時間が設定される。
【0091】
ステップS19において切換時間設定部48により切換時間が設定されると、続くステップS20において、切換制御部46により、切換弁24の位置が、設定された切換時間を掛けて切り換えられる。
【0092】
切換時間は、上述のように、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が大きいほど長い時間、例えば、0.07秒よりも長い時間に設定される。したがって、圧力変動が大きくなると予測される場合には、切換弁24の位置の切り換えが比較的ゆっくり行われ、供給通路14を流れる作動油の流量が急激に増減することが回避される。これにより自動変速機70へ供給される作動油の供給圧力が急激に上昇したり下降したりすることが回避され、供給通路14内の圧力は、圧力制御弁31によって適切な大きさに制御される。この結果、自動変速機70は安定して作動することになる。
【0093】
また、切換時間は、上述のように、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が小さいときは、例えば、0.03秒から0.07秒程度の比較的短い標準切換時間に設定される。したがって、圧力変動が小さいと予測される場合には、切換弁24の位置の切り換えが比較的早く行われ、供給通路14を流れる作動油の流量は速やかに増減することになる。つまり、供給通路14を流れる作動油の流量は、速やかに自動変速機70において必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うのに十分な流量となる。
【0094】
このように、圧力変動が小さいと予測される場合には、切換弁24の位置の切り換えを比較的早く行うことによって、自動変速機70を安定して作動させ続けることが可能であるとともに、第2オイルポンプ11が無駄に駆動されてしまう時間が短くなることで作動流体供給システム100の全体効率を向上させることができる。
【0095】
また、自動変速機70への作動油の供給状態が頻繁に切り換わってしまっても、上述のように、切換弁24の位置を切り換える切換時間が適切に設定されることによって自動変速機70に供給される作動油の圧力が変動することは抑制されることから、自動変速機70を安定して作動させることができる。
【0096】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0097】
上述の作動流体供給システム100では、切換弁24による連通状態は、切換弁24による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じると予測される圧力変動の大きさに応じて設定された切換時間を掛けて、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる。
【0098】
このため、切換弁24による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じる圧力変動が大きいと予測される場合には、切換時間を長くすることによって、第2吐出通路17と供給通路14とが連通するとともに第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保されることになる。
【0099】
これにより、切換弁24による連通状態が第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することが回避される。この結果、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から作動油が供給される自動変速機70への作動油の供給状態が切り換えられたときに、供給通路14において圧力変動が生じることを抑制することができる。
【0100】
一方で、切換弁24による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じる圧力変動が小さいと予測される場合には、切換時間を短くすることによって、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が短くなる。
【0101】
これにより、供給通路14を流れる作動油の流量は、速やかに増減することとなり、自動変速機70において必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うのに十分な流量となる。したがって、予測される圧力変動が小さい場合には切換時間を短くすることで、自動変速機70を安定して作動させ続けることができるとともに、第2オイルポンプ11から作動油が無駄に吐出される時間が短くなることによって作動流体供給システム100の全体効率を向上させることができる。
【0102】
<第2実施形態>
次に、図5~7を参照して、本発明の第2実施形態に係る作動流体供給システム200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0103】
作動流体供給システム200の基本的な構成は、第1実施形態に係る作動流体供給システム100と同様である。作動流体供給システム200では、弁装置として、切換弁24に代えて第1切換弁124、第2切換弁125及び第3切換弁126が設けられている点において作動流体供給システム100と相違する。
【0104】
第1オイルポンプ10や第2オイルポンプ11、圧力制御弁31の構成は、上記第1実施形態のものと同じであるため、その説明を省略する。
【0105】
第2吐出通路17を介して第2オイルポンプ11に接続される第1切換弁124は、第2吐出通路17が接続されるポートと第1接続通路18aが接続されるポートとを連通する第1位置124aと、第2吐出通路17が接続されるポートと第1ドレン接続通路20aが接続されるポートとを連通する第2位置124bと、を有する3ポート二位置の電磁式切換弁である。一端が第1切換弁124に接続される第1接続通路18aの他端は、第2切換弁125に接続され、一端が第1切換弁124に接続される第1ドレン接続通路20aの他端は、第1ドレン通路20に接続される。
【0106】
第1接続通路18aを介して第1切換弁124に接続される第2切換弁125は、第1接続通路18aが接続されるポートと第2接続通路18bが接続されるポートとを連通する第1位置125aと、第1接続通路18aが接続されるポートと第2接続通路18bが接続されるポートとを連通するとともに第1接続通路18aが接続されるポートと第2ドレン接続通路20bが接続されるポートとを絞り125cを通じて連通する第2位置125bと、を有する3ポート二位置の電磁式切換弁である。一端が第2切換弁125に接続される第2接続通路18bの他端は、第3切換弁126に接続され、一端が第2切換弁125に接続される第2ドレン接続通路20bの他端は、第1ドレン通路20に接続される。
【0107】
第2接続通路18bを介して第2切換弁125に接続される第3切換弁126は、第2接続通路18bが接続されるポートと接続通路19が接続されるポートとを連通する第1位置126aと、第2接続通路18bが接続されるポートと接続通路19が接続されるポートとを連通するとともに第2接続通路18bが接続されるポートと第3ドレン接続通路20cが接続されるポートとを絞り126cを通じて連通する第2位置126bと、を有する3ポート二位置の電磁式切換弁である。一端が第3切換弁126に接続される第3ドレン接続通路20cの他端は、第1ドレン通路20に接続される。
【0108】
これら切換弁124,125,126の位置はコントローラ40によって制御されるが、切換弁124,125,126が故障した際にも第2オイルポンプ11から作動油が供給されるようにするために、非通電時は、それぞれ第1位置124a,125a,126aとなるように付勢されている。なお、本実施形態では、ドレン接続通路20a,20b,20cを介して各切換弁124,125,126に接続される第1ドレン通路20が、供給通路14とは別の通路に相当する。
【0109】
次に、図6を参照し、これらの切換弁124,125,126内において、第2吐出通路17と接続通路19とが連通する通路を第1連通路とし、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する通路を第2連通路とした場合に、各切換弁124,125,126の位置に応じて第1連通路及び第2連通路の断面積の大きさがそれぞれどのように変化するかについて説明する。図6は、各切換弁124,125,126の位置に応じて第1連通路及び第2連通路の断面積の大きさがそれぞれどのように変化するかを概略的に示した図である。
【0110】
図6に示されるように、第1連通路の断面積は、第1切換弁124の位置が第1位置124aであるとき最大となり、第1切換弁124の位置が第2位置124bであるときゼロ、すなわち、第1切換弁124の位置が第2位置124bであるとき第1連通路が閉塞されるように設定されている。
【0111】
一方、第2連通路の断面積は、第1切換弁124の位置が第2位置124bであるとき最大となり、第1切換弁124の位置が第1位置124aであるとともに第2切換弁125及び第3切換弁126の位置が第2位置125b,126bであるときと、第1切換弁124及び第2切換弁125の位置が第1位置124a,125aであるとともに第3切換弁126の位置が第2位置126bであるときと、に段階的に減少し、すべての切換弁124,125,126の位置が第1位置124a,125a,126aであるときゼロ、すなわち、すべての切換弁124,125,126の位置が第1位置124a,125a,126aであるとき第2連通路が閉塞されるように設定されている。
【0112】
このように第1連通路の断面積及び第2連通路の断面積が設定されることで、第1切換弁124の位置が第1位置124aであるとともに第2切換弁125及び第3切換弁126の位置が第2位置125b,126bであるとき及び第1切換弁124及び第2切換弁125の位置が第1位置124a,125aであるとともに第3切換弁126の位置が第2位置126bであるときは、比較的大きい断面積の第1連通路を通じて第2吐出通路17と接続通路19とが連通するとともに、第1連通路と比較し断面積が小さい第2連通路を通じて第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通することになる。
【0113】
このため、第1切換弁124の位置が第1位置124aであるとともに第2切換弁125及び第3切換弁126の位置が第2位置125b,126bであるとき及び第1切換弁124及び第2切換弁125の位置が第1位置124a,125aであるとともに第3切換弁126の位置が第2位置126bであるときには、第1ドレン通路20に流入する作動油の流量が供給通路14に流入する作動油の流量よりも多くなり過ぎてしまうことが防止される。
【0114】
なお、第2吐出通路17と連通する第1ドレン通路20がタンクTへと作動油を戻す通路ではなく、何れかの流体機器へ供給される作動油が流通する通路である場合であって、この通路内の圧力が供給通路14内の圧力とほぼ同じ大きさである場合には、第2切換弁125の第2位置125bにおいて第1接続通路18aと第2接続通路18bとを連通する部分及び第3切換弁126の第2位置126bにおいて第2接続通路18bと接続通路19とを連通する部分にそれぞれ絞りを設けて、第1連通路の断面積を第2連通路の断面積と対称的に増減させることによって、供給通路14及び供給通路14とは別の通路に流入する作動油の流量を同等とすることが好ましい。
【0115】
上記構成の第1切換弁124の位置が第1位置124aに切り換えられるとともに、第2切換弁125の位置が第1位置125aに切り換えられ、第3切換弁126の位置が第1位置126aに切り換えられると、第2吐出通路17と接続通路19とが連通し、第2吐出通路17と第1ドレン通路20との連通が遮断された第1連通状態となる。第1連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は接続通路19及び供給通路14を通じて自動変速機70へと供給される。
【0116】
一方、第1切換弁124の位置が第2位置124bに切り換えられると、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通し、第2吐出通路17と接続通路19との連通が遮断された第2連通状態となる。第2連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1ドレン通路20を通じてタンクTへと排出される。
【0117】
なお、切換弁124の位置が第2位置124bにあるときには、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との両方がタンクTに連通した状態となり、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との圧力差がほぼゼロとなる。したがって、第2オイルポンプ11は無負荷運転状態、すなわち、第2オイルポンプ11を駆動させる負荷がエンジン50に対してほとんどかからない状態となる。このため、作動流体供給システム200の効率を向上させるためには、第2オイルポンプ11から作動油の吐出が不要である場合には、第2オイルポンプ11を無負荷運転状態とすることが好ましい。
【0118】
また、第1切換弁124の位置が第1位置124aに切り換えられるとともに、第2切換弁125及び第3切換弁126の少なくとも一方の位置が第2位置125b,126bに切り換えられると、第2吐出通路17と接続通路19とが連通するとともに、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する第3連通状態となる。第3連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、接続通路19及び供給通路14を通じて自動変速機70へと供給されるとともに第1ドレン通路20を通じてタンクTへと排出される。
【0119】
このとき、供給通路14に流入する作動油の流量と第1ドレン通路20に流入する作動油の流量との比率は、第1連通路の断面積と第2連通路の断面積との比率や供給通路14内の圧力、第1ドレン通路20内の圧力に応じて変化する。なお、接続通路19と供給通路14との間には上述のように逆止弁21が設けられていることから、供給通路14内の作動油が第2切換弁125や第3切換弁126を通じて第1ドレン通路20に流出することは避けられる。
【0120】
このように、作動流体供給システム200においても、上記第1実施形態と同様に、必要に応じて、第1オイルポンプ10に加えて第2オイルポンプ11からも自動変速機70へと作動油を供給することが可能である。
【0121】
なお、各切換弁124,125,126の位置は、図示しないソレノイドによって図示しない弁体が直接駆動されることによって切り換えられるものであってもよいし、弁体に作用するパイロット圧力の有無や大小によって切り換えられるものであってもよく、各切換弁124,125,126の駆動方式としては、コントローラ40からの指令に応じてその位置が切り換わればどのような方式が採用されてもよい。
【0122】
コントローラ40は、上記第1実施形態と同様の構成を有し、供給状態設定部45において、第1切換弁124の位置が切換制御部46によって第2位置124bに切り換えられ、第2オイルポンプ11からは自動変速機70へ作動油が供給されず、第1オイルポンプ10のみから自動変速機70へ作動油が供給される第1供給状態と、切換制御部46によってすべての切換弁124,125,126の位置が第1位置124a,125a,126aに切り換えられ、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11との2つのポンプから自動変速機70へ作動油が供給される第2供給状態と、の2つの状態から自動変速機70へ作動油を供給する供給状態を設定する。
【0123】
ここで、自動変速機70への作動油の供給状態を第1供給状態から第2供給状態に切り換える際に、各切換弁124,125,126を操作し、第2連通状態から第1連通状態へと瞬時に切り換えると、供給通路14に流入する作動油の流量が急激に増加することによって供給通路14内の圧力が急激に上昇し、圧力制御弁31による圧力の制御が追い付かず、自動変速機70へ供給される作動油の圧力が予め設定された圧力よりも大きくなってしまい、結果として、自動変速機70が安定して作動できなくなるおそれがある。
【0124】
同様に、自動変速機70への作動油の供給状態を第2供給状態から第1供給状態に切り換える際に、各切換弁124,125,126を操作し、第1連通状態から第2連通状態へと瞬時に切り換えると、供給通路14に流入する作動油の流量が急激に減少することによって供給通路14内の圧力が急激に下降し、自動変速機70へ供給される作動油の圧力が予め設定された圧力よりも小さくなってしまい、結果として、自動変速機70が安定して作動できなくなるおそれがある。
【0125】
このような供給通路14における圧力の変動を回避するために、コントローラ40は、上記第1実施形態と同様に、仮に第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと瞬時に切り換えた場合に供給通路14において生じる圧力の変動を予測する圧力変動予測部47と、圧力変動予測部47により予測された圧力の変動に応じて第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態への切り換えに掛ける切換時間を設定する切換時間設定部48と、をさらに有する。
【0126】
圧力変動予測部47は、上記第1実施形態における圧力変動予測部47と同様の機能を有する部分であるため、その説明を省略する。
【0127】
本実施形態において、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へ切り換えるには、上述のように、3つの切換弁124,125,126の位置を切り換える必要がある。つまり、3つの切換弁124,125,126の切り換えが完了するまでの時間が、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態への切り換えに掛けられる切換時間となる。このため、切換時間設定部48では、切換時間として、各切換弁124,125,126を切り換える時間の間隔が設定される。
【0128】
具体的には、第1連通状態から第2連通状態へと切り換える際に、第3切換弁126の位置を第1位置126aから第2位置126bに切り換えてから第2切換弁125の位置を第1位置125aから第2位置125bに切り換えるまでの切換時間間隔、及び第2切換弁125の位置を第1位置125aから第2位置125bに切り換えてから第1切換弁124の位置を第1位置124aから第2位置124bに切り換えるまでの切換時間間隔が、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態への切り換えに掛ける切換時間として設定される。
【0129】
また、第2連通状態から第1連通状態へと切り換える際に、第1切換弁124の位置を第2位置124bから第1位置124aに切り換えてから第2切換弁125の位置を第2位置125bから第1位置125aに切り換えるまでの切換時間間隔、及び第2切換弁125の位置を第2位置125bから第1位置125aに切り換えてから第3切換弁126の位置を第2位置126bから第1位置126aに切り換えるまでの切換時間間隔が、第3連通状態を介して第2連通状態から第1連通状態への切り換えに掛ける切換時間として設定される。
【0130】
各切換時間間隔は、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が自動変速機70の作動に影響を及ぼさない程度に小さい場合には、標準時間間隔に設定され、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が自動変速機70の作動に影響を及ぼす程に大きい場合には、標準時間間隔に所定の追加時間間隔が追加された切換時間間隔、つまり、標準時間間隔よりも長い切換時間間隔に設定される。標準時間間隔の長さは、例えば、0.03秒から0.07秒、好ましくは0.05秒前後である。
【0131】
圧力変動に対して所定の追加時間間隔をどの程度の長さにすべきかについては予め実験等によって求められマップ化されており、標準時間間隔と共にコントローラ40のROMに記憶されている。なお、所定の追加時間間隔の設定には、予測された圧力変動に加えて、各切換弁124,125,126の弁体に作用する作動油の圧力等が勘案されてもよく、コントローラ40のROMには、これらをパラメータとして所定の追加時間間隔を演算する演算式が記憶されていてもよい。
【0132】
そして、切換制御部46は、例えば、第1切換弁124の位置を切り換えてから第2切換弁125の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、第2切換弁125の位置を切り換えてから第3切換弁126の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、を合せた切換時間間隔が、切換時間設定部48により設定された切換時間間隔となるように、各切換弁124,125,126の切り換えを制御する。
【0133】
なお、切換時間設定部48は、例えば、第1切換弁124の位置を切り換えてから第2切換弁125の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、第2切換弁125の位置を切り換えてから第3切換弁126の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、をそれぞれ別々に設定してもよく、この場合、切換制御部46は、それぞれの切換時間間隔が切換時間設定部48により設定された切換時間間隔となるように、各切換弁124,125,126の切り換えを制御する。
【0134】
切換時間間隔は、上述のように、圧力変動予測部47により予測された圧力の変動が大きいほど長く設定される。そして、切換時間間隔が長く設定されるほど、第1切換弁124の位置が第1位置24aであって、第2切換弁125及び第3切換弁126の少なくとも一方の位置が第2位置125b,126bとなる時間、すなわち、第3連通状態となる時間が長くなる。
【0135】
したがって、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態へと切り換えられる過程では、第1ドレン通路20を通じてタンクTに排出される作動油が徐々に増加する一方で第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量は徐々に減少することになる。このため、供給通路14を流れる作動油の流量が急激に減少することが回避される。これにより自動変速機70へ供給される作動油の供給圧力が急激に下降してしまうことも回避され、結果として、自動変速機70を安定して作動させることが可能となる。
【0136】
同様に、第3連通状態を介して第2連通状態から第1連通状態へと切り換えられる過程では、第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量が徐々に増加する一方で第1ドレン通路20を通じてタンクTに排出される作動油の流量は徐々に減少することになる。このため、供給通路14を流れる作動油の流量が急激に増加することが回避される。これにより自動変速機70へ供給される作動油の供給圧力が急激に上昇してしまうことも回避され、結果として、自動変速機70を安定して作動させることが可能となる。
【0137】
次に、図7のフローチャートを参照し、自動変速機70へ作動油を供給する際に、上述の機能を有するコントローラ40により行われる制御について説明する。図7に示される制御は、コントローラ40によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0138】
図7のステップS11からステップS18までの制御内容は、図4に示される上記第1実施形態における制御と同じであるため、その説明を省略する。
【0139】
ステップS18に続くステップS21では、切換時間設定部48により、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へ切り換える切換時間間隔が設定される。
【0140】
ステップS21において切換時間設定部48により切換時間間隔が設定されると、続くステップS22において、切換制御部46により、各切換弁124,125,126の切り換えが制御される。
【0141】
第1連通状態から第2連通状態へと切り換える場合、第3切換弁126の位置を切り換えてから第2切換弁125の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、第2切換弁125の位置を切り換えてから第1切換弁124の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、を合せた切換時間間隔が、切換時間設定部48により設定された切換時間間隔となるように、各切換弁124,125,126の切り換えを制御する。
【0142】
第1連通状態から第2連通状態への切り換えは、以下の手順で行われる。
【0143】
まず、第1切換弁124の位置が第1位置124aであり、第2切換弁125の位置が第1位置125aであり、第3切換弁126の位置が第1位置126aである状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油がすべて供給通路14に供給される状態から、第3切換弁126の位置が第2位置126bに切り換えられる。この状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油の一部は、絞り126cを通じてタンクTに戻ることになるため、第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量は減少する。
【0144】
この状態から第2切換弁125の位置が第2位置125bに切り換えられることで、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、絞り126cに加えて、絞り125cを通じてタンクTに戻ることになる。このため、第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量はさらに減少する。
【0145】
さらに、この状態から第1切換弁124の位置が第2位置124bに切り換えられることで、第2吐出通路17と供給通路14との連通が遮断されるため、オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1ドレン接続通路20aを通じてすべてタンクTに戻ることになる。このように、各切換弁124,125,126の位置を順次第2位置124b,125b,126bに切り換えることによって、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する第2連通路の断面積を段階的に大きくすることにより、連通状態は、第1連通状態から第2連通状態へと切り換えられる。なお、第2切換弁125の位置の切り換えと第3切換弁126の位置の切り換えとは、どちらが先に行われてもよい。
【0146】
一方、第2連通状態から第1連通状態へと切り換える場合、第1切換弁124の位置を切り換えてから第2切換弁125の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、第2切換弁125の位置を切り換えてから第3切換弁126の位置を切り換えるまでの切換時間間隔と、を合せた切換時間間隔が、切換時間設定部48により設定された切換時間間隔となるように、各切換弁124,125,126の切り換えを制御する。
【0147】
第2連通状態から第1連通状態への切り換えは、以下の手順で行われる。
【0148】
まず、第2連通状態から第1連通状態へと切り換える場合、第1切換弁124の位置が第2位置124bであり、第2切換弁125の位置が第2位置125bであり、第3切換弁126の位置が第2位置126bである状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油がすべてタンクTに戻る状態から、第1切換弁124の位置が第1位置124aに切り換えられる。この状態では、第2吐出通路17が絞り125c及び絞り126cを通じてタンクTと連通する一方で、第2吐出通路17は供給通路14とも連通する。このため、第2オイルポンプ11から吐出された作動油の一部は供給通路14へと供給され、第2オイルポンプ11から吐出された残りの作動油はタンクTに戻ることになる。
【0149】
この状態から第2切換弁125の位置が第1位置125aに切り換えられることで、第1接続通路18aと第2ドレン接続通路20bとの連通が遮断され、第2吐出通路17とタンクTとは、絞り126cのみを通じて連通することになる。このため、タンクTに戻る作動油の流量は減少する一方で、第2オイルポンプ11から供給通路14に供給される作動油の流量は増加する。
【0150】
さらに、この状態から第3切換弁126の位置が第1位置126aに切り換えられることで、第2吐出通路17とタンクTとの連通が遮断され、オイルポンプ11から吐出された作動油は、すべて供給通路14へ供給されることになる。このように、各切換弁124,125,126の位置を順次第1位置124a,125a,126aに切り換えることによって、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する第2連通路の断面積を段階的に小さくすることにより、連通状態は、第2連通状態から第1連通状態へと切り換えられる。なお、第2切換弁125の位置の切り換えと第3切換弁126の位置の切り換えとは、どちらが先に行われてもよい。
【0151】
切換時間間隔は、上述のように、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が大きいほど長く、例えば、0.07秒よりも長く設定される。したがって、圧力変動が大きくなると予測される場合には、第1切換弁124の位置を切り換えてから第3切換弁126の位置の切り換えが完了するまでの時間、または、第3切換弁126の位置を切り換えてから第1切換弁124の位置の切り換えが完了するまでの時間が比較的長くなり、第3連通状態となる時間が確保されることから、供給通路14を流れる作動油の流量が急激に増減することが回避される。これにより自動変速機70へ供給される作動油の供給圧力が急激に上昇したり下降したりすることが回避され、供給通路14内の圧力は、圧力制御弁31によって適切な大きさに制御される。この結果、自動変速機70は安定して作動することになる。
【0152】
また、切換時間間隔は、上述のように、圧力変動予測部47により予測された圧力変動が小さいときは、例えば、0.03秒から0.07秒程度の比較的短い標準時間間隔に設定される。したがって、圧力変動が小さいと予測される場合には、第1切換弁124の位置を切り換えてから第3切換弁126の位置の切り換えが完了するまでの時間、または、第3切換弁126の位置を切り換えてから第1切換弁124の位置の切り換えが完了するまでの時間が比較的短くなり、供給通路14を流れる作動油の流量は速やかに増減することになる。つまり、供給通路14を流れる作動油の流量は、速やかに自動変速機70において必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うのに十分な流量となる。
【0153】
このように、圧力変動が小さいと予測される場合には、各切換弁124,125,126の位置の切り換えを比較的早く行うことによって、自動変速機70を安定して作動させ続けることが可能であるとともに、第2オイルポンプ11が無駄に駆動されてしまう時間が短くなることで作動流体供給システム200の全体効率を向上させることができる。
【0154】
また、自動変速機70への作動油の供給状態が頻繁に切り換わってしまっても、上述のように、各切換弁124,125,126の位置の切り換える切換時間間隔が適切に設定されることによって自動変速機70に供給される作動油の圧力が変動することは抑制されることから、自動変速機70を安定して作動させることができる。
【0155】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0156】
上述の作動流体供給システム200では、切換弁124,125,126による連通状態は、切換弁124,125,126による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じると予測される圧力変動の大きさに応じて設定された切換時間を掛けて、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる。
【0157】
このため、切換弁124,125,126による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じる圧力変動が大きいと予測される場合には、切換時間を長くすることによって、第2吐出通路17と供給通路14とが連通するとともに第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保されることになる。
【0158】
これにより、切換弁124,125,126による連通状態が第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することが回避される。この結果、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から作動油が供給される自動変速機70への作動油の供給状態が切り換えられたときに、供給通路14において圧力変動が生じることを抑制することができる。
【0159】
一方で、切換弁124,125,126による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じる圧力変動が小さいと予測される場合には、切換時間を短くすることによって、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が短くなる。
【0160】
これにより、供給通路14を流れる作動油の流量は、速やかに増減することとなり、自動変速機70において必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うのに十分な流量となる。したがって、予測される圧力変動が小さい場合には切換時間を短くすることで、自動変速機70を安定して作動させ続けることができるとともに、第2オイルポンプ11から作動油が無駄に吐出される時間が短くなることによって作動流体供給システム200の全体効率を向上させることができる。
【0161】
なお、上記第2実施形態では、第1切換弁124の下流に2つの切換弁125,126が設けられているが、第1切換弁124の下流に設けられる切換弁の数はこれに限定されず、第1切換弁124の下流に、第3連通状態となる位置を有する切換弁が1つ以上設けられていればよく、例えば、1つだけであってもよいし、3つ以上の複数個であってもよい。この場合も第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間を確保することによって、自動変速機70への作動油の供給状態が切り換えられたときに、供給通路14において圧力変動が生じることを抑制することができる。
【0162】
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0163】
上記各実施形態では、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11は、定容量型のベーンポンプである。これに代えて、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11は、可変容量型のベーンポンプやピストンポンプ、内接歯車ポンプ、外接歯車ポンプであってもよい。
【0164】
また、上記各実施形態では、自動変速機70に作動油を供給するポンプは、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11との2つのポンプである。自動変速機70に作動油を供給するポンプは、これらに限定されず、エンジン50の出力により駆動されるオイルポンプが弁装置とともにさらに複数設けられてもよいし、電動モータの出力により駆動されるオイルポンプが設けられてもよい。
【0165】
また、上記各実施形態では、作動流体として、作動油を使用しているが、作動油の代わりに水や水溶液等の非圧縮性流体を使用してもよい。
【0166】
また、上記各実施形態では、自動変速機70がベルト式無段変速機構(CVT)を備える変速機である場合について説明したが、自動変速機70は作動油の圧力を利用して作動するものであればどのような形式のものであってもよく、トロイダル式無段変速機構や遊星歯車機構を備えたものであってもよい。
【0167】
また、上記各実施形態では、作動流体供給システム100,200は、車両の動力伝達装置に作動流体を供給するものとして説明したが、本作動流体供給システム100,200が適用されるものは車両に限定されず、ポンプから供給される作動流体によって作動する流体機器を備えたものであれば、例えば、建設作業機や船舶、航空機、定置式設備に適用されてもよい。
【0168】
また、上記各実施形態では、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11は、エンジン50の出力により駆動されている。第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11を駆動する駆動源としては、エンジン50に限定されず、例えば、車両の駆動輪を駆動する電動モータであってもよい。
【0169】
また、上記各実施形態では、コントローラ40に入力される車両の状態を示す信号として種々の信号が列記されているが、これら以外にも、例えば、自動変速機70にトルクコンバータが設けられている場合は、トルクコンバータの作動状態や締結状態を示す信号がコントローラ40に入力されてもよい。この場合、トルクコンバータの状態を加味して、自動変速機70の必要流量Qrを演算したり、自動変速機70への作動油の供給状態の切り換えを制限したりしてもよい。例えば、トルクコンバータが半締結状態(スリップロックアップ状態)にあることが検出された場合には、作動油供給状態が他の供給状態に移行することを禁止してもよい。これにより、トルクコンバータを安定した作動状態に維持することができる。また、車両の減速状態を示す信号として、ブレーキの操作量及び操作速度を示す信号がコントローラ40に入力されてもよい。
【0170】
また、上記各実施形態では、コントローラ40の吐出流量算出部42では、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2が算出される。これに代えて、流量センサ等によって、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から吐出される実際の作動油の吐出流量を直接的に計測してもよい。
【0171】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0172】
作動流体供給システム100,200は、エンジン50の出力により駆動され供給通路14を通じて自動変速機70へ作動油を供給可能な第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11と、第2オイルポンプ11の吐出通路である第2吐出通路17を、供給通路14及び供給通路14とは別の通路である第1ドレン通路20の少なくとも一方に連通させる弁装置24,124,125,126と、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量に応じて弁装置における連通状態を変更するコントローラ40と、を備え、弁装置は、第2吐出通路17を供給通路14にのみ連通させる第1連通状態と、第2吐出通路17を第1ドレン通路20にのみ連通させる第2連通状態と、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと移行する間に第2吐出通路17を供給通路14及び第1ドレン通路20に連通させる第3連通状態と、を有し、コントローラ40は、弁装置の連通状態を第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じると予測される圧力変動の大きさに応じて弁装置の連通状態を切り換える切換時間を設定し、設定された切換時間を掛けて、弁装置の連通状態を第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態へと第3連通状態を介して切り換える。
【0173】
この構成では、切換弁24,124,125,126による連通状態は、予測される圧力変動の大きさに応じて設定された切換時間を掛けて、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる。このため、切換弁124,125,126による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じる圧力変動が大きいと予測される場合には、切換時間を長くすることによって、第2吐出通路17と供給通路14とが連通するとともに第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保されることになる。
【0174】
これにより、切換弁24,124,125,126による連通状態が第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することが回避される。この結果、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から作動油が供給される自動変速機70への作動油の供給状態が切り換えられたときに、供給通路14において圧力変動が生じることを抑制することができる。
【0175】
一方で、切換弁124,125,126による連通状態を瞬時に切り換えた際に供給通路14において生じる圧力変動が小さいと予測される場合には、切換時間を短くすることによって、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が短くなる。
【0176】
これにより、供給通路14を流れる作動油の流量は、速やかに増減することとなり、自動変速機70において必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うのに十分な流量となる。したがって、予測される圧力変動が小さい場合には切換時間を短くすることで、自動変速機70を安定して作動させ続けることができるとともに、第2オイルポンプ11から作動油が無駄に吐出される時間が短くなることによって作動流体供給システム100,200の全体効率を向上させることができる。
【0177】
また、コントローラ40は、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2を算出する吐出流量算出部42と、第1吐出流量Q1及び第2吐出流量Q2に基づいて供給通路14において生じる圧力の変動を予測する圧力変動予測部47と、圧力変動予測部47により予測された圧力の変動に応じて切換時間を設定する切換時間設定部48と、を有し、第2オイルポンプ11の吐出量が多いほど、圧力変動が大きくなると予測し、切換時間を長く設定する。
【0178】
この構成では、第2オイルポンプ11の吐出量が多いほど切換時間が長く設定される。切換弁24,124,125,126による連通状態を瞬時に切り換えた場合、第2オイルポンプ11の吐出量が多いほど、供給通路14を流れる作動油の流量の増減が大きくなることから供給通路14において比較的大きな圧力変動が生じ易くなる。このため、第2オイルポンプ11の吐出量が多いほど切換時間を長く設定し、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間を長くすることによって、第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0179】
また、弁装置は、第1連通状態となる第1位置24aと、第2連通状態となる第2位置24bと、第1位置24aと第2位置24bとの間において第3連通状態となる第3位置24cと、を有する切換弁24であり、コントローラ40は、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態となるように、切換時間を掛けて切換弁24の位置を切り換える。
【0180】
この構成では、弁装置は、第1連通状態となる第1位置24aと、第2連通状態となる第2位置24bと、第1位置24aと第2位置24bとの間において第3連通状態となる第3位置24cと、を有する切換弁24である。このように簡素な構成の切換弁24の位置を、切換時間を掛けて切り換えることによって、第3位置24cとなる状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保される。これにより、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0181】
また、別の通路は、第2オイルポンプ11から吐出された作動油をタンクTに戻す第1ドレン通路20であり、第3位置24cにおいて、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とを連通する第2連通路の断面積は、第2吐出通路17と供給通路14とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定される。
【0182】
この構成では、切換弁24の第3位置24cにおいて、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とを連通する第2連通路の断面積は、第2吐出通路17と供給通路14とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定される。通常、第1ドレン通路20内の圧力は、供給通路14内の圧力と比べて低くなることから、第3位置24cにおいて第1連通路の断面積と第2連通路の断面積とを同じ大きさにしてしまうと、第2オイルポンプ11から吐出された作動油のほとんどは第1ドレン通路20へ流入することになってしまう。このため、第3位置24cにおける第2連通路の断面積を第1連通路の断面積よりも小さく設定し、第1ドレン通路20に流入する作動油の流量を制限するとともに供給通路14に流入する作動油の流量を確保することによって、第3位置24cに切り換えられたときに、第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0183】
また、弁装置は、第2吐出通路17を供給通路14にのみ連通させる第1位置124aと、第2吐出通路17を第1ドレン通路20にのみ連通させる第2位置124bと、を有する第1切換弁124と、第1切換弁124の下流側に設けられ、第2吐出通路17を供給通路14にのみ連通させる第1位置125aと、第2吐出通路17を供給通路14及び第1ドレン通路20に連通させる第2位置125bと、を有する第2切換弁125と、を有し、第1切換弁124が第1位置124aにあり第2切換弁125が第1位置125aにあるとき第1連通状態となり、第1切換弁124が第2位置124bにあるとき第2連通状態となり、第1切換弁124が第1位置124aにあり第2切換弁125が第2位置125bにあるとき第3連通状態となり、コントローラ40は、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態となるように、切換時間を掛けて第1切換弁124及び第2切換弁125の位置を切り換える。
【0184】
この構成では、弁装置は、第1切換弁124と第2切換弁125との2つの二位置切換弁で構成される。このように切換弁124,125の位置を、切換時間を掛けて切り換えることによって、第3連通状態、すなわち、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が供給通路14と第1ドレン通路20との両方の通路に流入可能な状態となる時間が確保される。これにより、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することを回避することができる。また、構成が簡素であり制御が容易な二位置切換弁を弁装置として用いることで作動流体供給システム200の製造コストを低減することができる。
【0185】
また、別の通路は、第2オイルポンプ11から吐出された作動油をタンクTに戻す第1ドレン通路20であり、第2切換弁125の第2位置125bにおいて、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とを連通する第2連通路の断面積は、第2吐出通路17と供給通路14とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定される。
【0186】
この構成では、第2切換弁125の第2位置125bにおいて、第2吐出通路17と第1ドレン通路20とを連通する第2連通路の断面積は、第2吐出通路17と供給通路14とを連通する第1連通路の断面積よりも小さく設定される。通常、第1ドレン通路20内の圧力は、供給通路14内の圧力と比べて低くなることから、第2切換弁125の第2位置125bにおいて第1連通路の断面積と第2連通路の断面積とを同じ大きさにしてしまうと、第2オイルポンプ11から吐出された作動油のほとんどは第1ドレン通路20へ流入することになってしまう。このため、第2位置125bにおける第2連通路の断面積を第1連通路の断面積よりも小さく設定し、第1ドレン通路20に流入する作動油の流量を制限するとともに供給通路14に流入する作動油の流量を確保することによって、第2切換弁125の位置が第2位置125bに切り換えられたときに、第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することを回避することができる。
【0187】
また、弁装置は、第2切換弁125の下流側に設けられ、第2吐出通路17を供給通路14にのみ連通させる第1位置126aと、第2吐出通路17を供給通路14及び第1ドレン通路20に連通させる第2位置126bと、を有する第3切換弁126をさらに有し、第1切換弁124が第1位置124aにあり第2切換弁125が第1位置125aにあり第3切換弁126が第1位置126aにあるとき第1連通状態となり、第1切換弁124が第2位置124bにあるとき第2連通状態となり、第1切換弁124が第1位置124aにあり第2切換弁125が第1位置125aまたは第2位置125bにあり第3切換弁126が第2位置126bにあるとき第3連通状態となり、コントローラ40は、第3連通状態を介して第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態となるように、切換時間を掛けて第1切換弁124、第2切換弁125及び第3切換弁126の位置を切り換える。
【0188】
この構成では、第2切換弁125の下流側に第3切換弁126がさらに設けられ、第2切換弁125が第2位置125bにあるとき及び第3切換弁126が第2位置126bにあるときに第3連通状態となる。このため、第2切換弁125の第2位置125bと第3切換弁126の第2位置126bとにおいて、第2吐出通路17と供給通路14とが連通する第1連通路の断面積及び第2吐出通路17と第1ドレン通路20とが連通する第2連通路の断面積の大きさをそれぞれ設定することが可能である。このように第1連通路の断面積及び第2連通路の断面積の大きさを設定する自由度が向上することによって、第1ドレン通路20に流入する作動油の流量や供給通路14に流入する作動油の流量を制御し易くなるため、第1連通状態から第2連通状態または第2連通状態から第1連通状態に切り換えられる際に第2オイルポンプ11から供給通路14へと供給される作動油の流量が急激に増減することを確実に回避することができる。
【0189】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0190】
100,200・・・作動流体供給システム、10・・・第1オイルポンプ(第1ポンプ)、11・・・第2オイルポンプ(第2ポンプ)、14・・・供給通路、17・・・第2吐出通路(吐出通路)、19・・・接続通路、20・・・第1ドレン通路(供給通路とは別の通路、ドレン通路)、24・・・切換弁(弁装置)、24a・・・第1位置、24b・・・第2位置、24c・・・第3位置、40・・・コントローラ(制御部)、50・・・エンジン(駆動源)、70・・・自動変速機(流体機器)、124・・・第1切換弁(弁装置)、124a・・・第1位置、124b・・・第2位置、125・・・第2切換弁(弁装置)、125a・・・第1位置、125b・・・第2位置、126・・・第3切換弁(弁装置)、126a・・・第1位置、126b・・・第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7