(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】アルカリプロテアーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/57 20060101AFI20231122BHJP
C12N 9/54 20060101ALI20231122BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231122BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N9/54
C12N15/63 Z
C12N1/21
(21)【出願番号】P 2019230074
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日置 貴大
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-187669(JP,A)
【文献】特開2014-158428(JP,A)
【文献】特開2004-000122(JP,A)
【文献】国際公開第99/018218(WO,A1)
【文献】特開2011-234685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00- 9/99
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼであって、
該
改変プロ配列
は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有
するアミノ酸配列からなる親プロ配列において、配列番号1の3位に相当する位置
のアミノ酸残基をLeu
に置換したアミノ酸配列からなり、
該アルカリプロテアーゼの成熟酵素
は、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からな
り、かつ、
該改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼは、該親プロ配列を含むアルカリプロテアーゼと比べて、該成熟酵素の生産性が向上している、
アルカリプロテアーゼ。
【請求項2】
前記
改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼが、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるシグナル配列をさらに含む、請求項1記載のアルカリプロテアーゼ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の
改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼをコードする
、ポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項5】
請求項3記載のポリヌクレオチド又は請求項4記載のベクターを含有する形質転換体。
【請求項6】
枯草菌又はその変異株である、請求項5記載の形質転換体。
【請求項7】
請求項5又は6記載の形質転換体を培養することを含む、アルカリプロテアーゼの製造方法。
【請求項8】
改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼの製造方法であって、
配列番号1のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる親プロ配列において、配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基をLeuに置換することを含み、
該アルカリプロテアーゼの成熟酵素
は、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からな
り、かつ、
該改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼは、該親プロ配列を含むアルカリプロテアーゼと比べて、該成熟酵素の生産性が向上している、
方法。
【請求項9】
前記親プロ配列における配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基がPheである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼが、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるシグナル配列をさらに含む、
請求項8又は9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリプロテアーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼは、衣料用洗剤等の洗浄剤に配合される酵素として有用である。特許文献1には、タンパク質汚れだけでなく、タンパク質と皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有する、バチルス属細菌由来の分子量約43,000のアルカリプロテアーゼが記載されている。当該アルカリプロテアーゼは、分泌とフォールディングに重要な働きを担うプレプロ配列を有するプレプロタンパク質の形態で発現された後、細胞外に分泌される。その発現から分泌の過程で、該アルカリプロテアーゼは、プレプロ配列がプロセシングにより切断されて成熟酵素となる。特許文献2には、当該アルカリプロテアーゼのプレプロ配列の52位、75位又は142位のアミノ酸残基を置換することにより、該アルカリプロテアーゼの分泌能を高め、生産性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開公報第99/18218号
【文献】特開2004-187669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アルカリプロテアーゼの生産性向上に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アルカリプロテアーゼのプロ配列における所定のアミノ酸残基を置換することで、成熟アルカリプロテアーゼの生産性が顕著に向上することを見出した。
【0006】
したがって、本発明は、プロ配列を含むアルカリプロテアーゼであって、
該プロ配列が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し且つ配列番号1の3位に相当する位置にLeuを有するアミノ酸配列からなり、
該アルカリプロテアーゼの成熟酵素が、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、
アルカリプロテアーゼを提供する。
また本発明は、前記アルカリプロテアーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。
また本発明は、前記ポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。
また本発明は、前記ポリヌクレオチド又はベクターを含有する形質転換体を提供する。
また本発明は、前記形質転換体を培養することを含む、アルカリプロテアーゼの製造方法を提供する。
さらに本発明は、改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼの製造方法であって、
配列番号1のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる親プロ配列において、配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基をLeuに置換することを含み、
該アルカリプロテアーゼの成熟酵素が、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、
方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、アルカリプロテアーゼの生産性が顕著に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
【0009】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,227:1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0010】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
【0011】
本明細書において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列上の「相当する位置」又は「相当する領域」は、目的配列と参照配列(例えば、配列番号1のアミノ酸配列)とを、最大の相同性を与えるように整列(アラインメント)させることにより決定することができる。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアラインメントは、公知のアルゴリズムを用いて実行することができ、その手順は当業者に公知である。例えば、アラインメントは、Clustal Wマルチプルアラインメントプログラム(Thompson,J.D.et al,1994,Nucleic Acids Res.22:4673-4680)をデフォルト設定で用いることにより、行うことができる。Clustal Wは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI[www.ebi.ac.uk/index.html])や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ[www.ddbj.nig.ac.jp/searches-j.html])のウェブサイト上で利用することができる。上述のアラインメントにより参照配列の任意の位置にアラインされた目的配列の位置は、当該任意の位置に「相当する位置」とみなされる。また、相当する位置により挟まれた領域、または相当するモチーフからなる領域は、相当する領域とみなされる。
【0012】
当業者であれば、上記で得られたアミノ酸配列のアラインメントを、最適化するようにさらに微調整することができる。そのような最適アラインメントは、アミノ酸配列の類似性や挿入されるギャップの頻度等を考慮して決定するのが好ましい。ここでアミノ酸配列の類似性とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントしたときにその両方の配列に同一又は類似のアミノ酸残基が存在する位置の数の全長アミノ酸残基数に対する割合(%)をいう。類似のアミノ酸残基とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸のうち、極性や電荷の点で互いに類似した性質を有しており、いわゆる保存的置換を生じるようなアミノ酸残基を意味する。そのような類似のアミノ酸残基からなるグループは当業者にはよく知られており、例えば、アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;ロイシンとイソロイシン等がそれぞれ挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書において、「アミノ酸残基」とは、タンパク質を構成する20種のアミノ酸残基、アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はQ)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リシン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)及びバリン(Val又はV)を意味する。
【0014】
本明細書において、所与のポリペプチドの「親」ポリペプチドとは、そのアミノ酸残基に所定の変異がなされることにより、当該変異ポリペプチドとなるポリペプチドをいう。言い換えると、「親」ポリペプチドとは、変異ポリペプチドに当該変異が加えられる前のポリペプチドである。
【0015】
本発明は、アルカリプロテアーゼの改変プロ配列を提供する。当該改変プロ配列は、配列番号1のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる親プロ配列における配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基を、ロイシンに置換したアミノ酸配列からなる。
【0016】
本発明の改変プロ配列の親プロ配列としては、配列番号1のアミノ酸配列からなるプロ配列が挙げられ、例えば、配列番号1のアミノ酸配列からなる、アルカリプロテアーゼKP43[バチルス・エスピーKSM-KP43(FERM BP-6532)由来;特許文献1参照]のプロ配列が挙げられる。該親プロ配列の別の例としては、アルカリプロテアーゼ由来の、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるプロ配列が挙げられる。そのようなプロ配列の例としては、プロテアーゼKP9865(GenBank Accession No.AB084155)[バチルス・エスピーKSM-9865(FERM P-18566)由来;特開2003-199559号公報参照]のプロ配列が挙げられる。
【0017】
当該親プロ配列において、配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基はLeu以外であればよく、好ましくはPhe又はProであり、より好ましくはPheである。一方、改変プロ配列において、配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基はLeuである。
【0018】
また本発明は、当該改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼを提供する。これは、該改変プロ配列とアルカリプロテアーゼの成熟酵素領域とを含む、アルカリプロテアーゼ前駆体である。該成熟酵素は、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼである。該成熟酵素は、好ましくはpH8以上のアルカリ性領域で作用するアルカリプロテアーゼであり、より好ましくは、以下の酵素核的性質を有するアルカリプロテアーゼである:pH8以上のアルカリ性領域で作用する;酸化剤耐性を有する(該アルカリプロテアーゼを50mM過酸化水素、5mM塩化カルシウムを含む20mMブリットンロビンソン緩衝液(pH10)中、30℃で20分間放置した後の残存活性が5%以上である);50℃、pH10で10分間処理したとき80%以上の残存活性を有する;かつ、SDS-PAGEによる分子量が43,000±2,000である。
【0019】
当該成熟酵素の例としては、配列番号2のアミノ酸配列からなる、上述したアルカリプロテアーゼKP43の成熟酵素が挙げられる。該成熟酵素の別の例としては、配列番号2のアミノ酸配列に対して以下のアミノ酸置換を行った変異体が挙げられる:46位をロイシンに置換、57位をアラニンに置換、103位をアルギニンに置換、107位をリジンに置換、124位をリジン又はアラニンに置換、136位をアラニンに置換、193位をアラニンに置換、195位をアスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、セリン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アラニン、アスパラギン酸、トリプトファン、グリシン又はフェニルアラニンに置換、247位をスレオニン又はアルギニンに置換、257位をバリンに置換、342位をアラニンに置換、66位のアスパラギン酸への置換と264位のセリンへの置換による二重置換(以上、特開2002-218989号公報)、84位をアルギニンに置換、104位をプロリンに置換、256位をアラニン又はセリンに置換、369位をアスパラギンに置換(以上、特開2002-306176号公報)、251位をアスパラギン、スレオニン、イソロイシン、バリン、ロイシン又はグルタミンに置換、あるいは、256位をセリン、グルタミン、アスパラギン、バリン又はアラニンに置換(以上、特開2003-125783号公報)。該成熟酵素のさらなる例としては、上述したプロテアーゼKP9865、及びプロテアーゼA-1(GenBank Accession No.AB046406)[NCIB12289由来、国際公開公報第88/01293号]の成熟酵素が挙げられる。
【0020】
該アルカリプロテアーゼ前駆体は、プロ配列と成熟酵素領域とを含むアルカリプロテアーゼのプロタンパク質であってもよいが、シグナル配列(プレ配列)とプロ配列と成熟酵素領域とを含むアルカリプロテアーゼのプレプロタンパク質であってもよい。したがって、本明細書におけるアルカリプロテアーゼ前駆体とは、プロ配列又はプレプロ配列を含む未成熟なアルカリプロテアーゼであり得る。
【0021】
本発明において、アルカリプロテアーゼのプロ配列は、該プロテアーゼのフォールディングに関与する。プロ配列を含むアルカリプロテアーゼ前駆体において、該プロ配列は、該アルカリプロテアーゼ前駆体の成熟酵素領域のN末端側に位置する。該プロ配列は、分子内シャペロニンとして作用し、細胞膜の通過前後において成熟アルカリプロテアーゼが正確な立体構造をとるために必須の領域である。プロ配列は最終的に成熟アルカリプロテアーゼにより切断され、さらに小さなペプチドへと分解される。
【0022】
本発明において、アルカリプロテアーゼのプロ配列は、シグナル配列(プレ配列)と連結されてプレプロ配列として存在していてもよい。その場合、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体は、プレプロタンパク質である。該アルカリプロテアーゼのプレプロタンパク質において、シグナル配列はプロ配列のN末端側に位置する。シグナル配列は、アルカリプロテアーゼの細胞外への分泌に関与する。該プレプロタンパク質が細胞膜を通過する際に、シグナル配列はシグナルペプチダーゼにより切断され、プロタンパク質が生成される。該シグナル配列の例としては、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる配列が挙げられ、例えば、上述したアルカリプロテアーゼKP43及びプロテアーゼKP9865のシグナル配列が挙げられる。
【0023】
したがって、一実施形態において、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し且つ配列番号1の3位に相当する位置にLeuを有するアミノ酸配列からなるプロ配列を含み、かつ、該アルカリプロテアーゼの成熟酵素は、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0024】
別の一実施形態において、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し且つ配列番号1の3位に相当する位置にLeuを有するアミノ酸配列からなるプロ配列を含み、さらに、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるシグナル配列を含み、かつ、該アルカリプロテアーゼの成熟酵素は、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。例えば、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し且つ配列番号4の34位に相当する位置にLeuを有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであり得る。
【0025】
親プロ配列のアミノ酸を変異させる手段としては、当技術分野で公知の各種変異導入技術を使用することができる。例えば、置換を導入すべきアミノ酸配列(親プロ配列)をコードするポリヌクレオチド(以下、親遺伝子ともいう)を、変異したアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(以下、変異遺伝子ともいう)に変更し、該変異遺伝子から目的の変異を有する改変プロ配列を発現させることができる。
【0026】
親遺伝子への変異の導入は、基本的には、当業者に周知の様々な部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。部位特異的変異導入法は、例えば、インバースPCR法やアニーリング法などの任意の手法により行うことができる。市販の部位特異的変異導入用キット(例えば、Stratagene社のQuickChange II Site-Directed Mutagenesis Kitや、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit等)を使用することもできる。
【0027】
親遺伝子への部位特異的変異導入は、最も一般的には、導入すべきヌクレオチド変異を含む変異用プライマーを用いて行うことができる。該変異用プライマーは、親遺伝子における変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を含む領域にアニーリングし、かつその変異すべきアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)に代えて変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)を有するヌクレオチド配列を含むように設計すればよい。変異前及び変異後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)は、当業者であれば通常の教科書等に基づいて適宜認識し選択することができる。あるいは、部位特異的変異導入は、導入すべきヌクレオチド変異を含む相補的な2つのプライマーを別々に用いて変異部位の上流側及び下流側をそれぞれ増幅したDNA断片を、SOE(splicing by overlap extension)-PCR(Gene,1989,77(1):p61-68)により1つに連結する方法を用いることもできる。
【0028】
親遺伝子を含む鋳型DNAは、親プロ配列を含むアルカリプロテアーゼを産生する株(例えばバチルス・エスピーKSM-KP43)などから、常法によりゲノムDNAを抽出するか、又はRNAを抽出し逆転写によりcDNAを合成することによって、調製することができる。あるいは、親プロ配列のアミノ酸配列に基づいて、対応するヌクレオチド配列を化学合成して鋳型DNAとして用いてもよい。必要に応じて、親遺伝子は、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体を発現させる形質転換体の種にあわせて、コドン至適化されてもよい。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database([www.kazusa.or.jp/codon/])から入手可能である。
【0029】
親遺伝子は、親プロ配列のみをコードしていてもよいが、親プロ配列と成熟酵素領域を含むアルカリプロテアーゼのプロタンパク質、又はシグナル配列と親プロ配列と成熟酵素領域を含むアルカリプロテアーゼのプレプロタンパク質をコードしていてもよい。親遺伝子の例としては、配列番号1のアミノ配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ配列をコードするポリヌクレオチド、配列番号5のヌクレオチド配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、などが挙げられる。
【0030】
例えば、親遺伝子から改変プロ配列のみをコードする変異遺伝子を作成し、これを宿主のゲノム上の親プロ配列と置き換えてもよい。あるいは、改変プロ配列をコードするポリヌクレオチドとアルカリプロテアーゼの成熟酵素をコードするポリヌクレオチドとを連結して変異遺伝子を作成し、これを宿主に導入し、発現させてもよい。あるいは、改変プロ配列を含むプロタンパク質又はプレプロタンパク質をコードする変異遺伝子を作成し、これを宿主に導入し、発現させてもよい。
【0031】
したがって、本発明はまた、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチドを提供する。当該本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖又は2本鎖のDNA、cDNA、RNAもしくは他の人工核酸を含み得る。該DNA、cDNA及びRNAは、化学合成されていてもよい。また当該本発明のポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレーム(ORF)に加えて、非翻訳領域(UTR)のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また当該本発明のポリヌクレオチドは、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体の産生用の形質転換体の種にあわせて、コドン至適化されていてもよい。
【0032】
本発明はまた、当該本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。該ベクターは、該本発明のポリヌクレオチドを常法により任意のベクター中に挿入することにより作製することができる。該ベクターの種類は特に限定されず、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YACベクター、シャトルベクター等の任意のベクターであってよい。また該ベクターは、限定ではないが、好ましくは、細菌内、好ましくはバチルス属細菌(例えば枯草菌又はその変異株)内で増幅可能なベクターであり、より好ましくは、バチルス属細菌内で導入遺伝子の発現を誘導可能な発現ベクターである。中でも、バチルス属細菌と他の生物のいずれでも複製可能なベクターであるシャトルベクターは、本発明の変異体を組換え生産する上で好適に用いることができる。好ましいベクターの例としては、限定するものではないが、pHA3040SP64、pHSP64R又はpASP64(特許第3492935号)、pHY300PLK(大腸菌と枯草菌の両方を形質転換可能な発現ベクター;Jpn J Genet,1985,60:235-243)、pAC3(Nucleic Acids Res,1988,16:8732)等のシャトルベクター;pUB110(J Bacteriol,1978,134:318-329)、pTA10607(Plasmid,1987,18:8-15)等のバチルス属細菌の形質転換に利用可能なプラスミドベクター、等が挙げられる。また大腸菌由来のプラスミドベクター(例えばpET22b(+)、pBR322、pBR325、pUC57、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBluescript等)を用いることもできる。
【0033】
本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体を組換え生産する場合、当該ベクターは発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターは、転写プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位等の宿主における発現に必須な各種エレメント;ポリリンカー、エンハンサー等のシスエレメント;ポリA付加シグナル;リボソーム結合配列(SD配列);薬剤(例えばアンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等)耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子、などの有用な配列を必要に応じて含み得る。あるいは、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチドが、上記の有用な配列を含んでいてもよい。
【0034】
本発明はまた、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチド又はそれを含有するベクターを含む、形質転換体を提供する。該形質転換体は、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体をコードするポリヌクレオチド、又はそれを含有するベクターを宿主に導入することにより製造することができる。
【0035】
当該形質転換体の宿主としては、枯草菌等のバチルス属(Bacillus)菌や、クロストリジウム属(Clostridium)菌、酵母などが挙げられ、このうちバチルス属菌が好ましく、枯草菌又はその変異株がより好ましい。したがって、本発明の形質転換体は、好ましくは組換えバチルス属細菌であり、より好ましくは枯草菌又はその変異株の組換え体である。枯草菌変異株としては、aprXと、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAから選択される遺伝子とを欠失した株(特開2006-174707)などが挙げられる。
【0036】
ポリヌクレオチドやベクターの宿主細胞への導入には、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、パーティクルガン法、PEG法等の周知の形質転換技術を適用することができる。例えば枯草菌又はその変異株に適用可能な方法としては、コンピテントセル形質転換法(J Bacteriol,1967,93:1925-1937)、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol Lett,1990,55:135-138)、プロトプラスト形質転換法(Mol Gen Genet,1979,168:111-115)、Tris-PEG法(J Bacteriol,1983,156:1130-1134)などが挙げられる。
【0037】
当該本発明の形質転換体から、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体を発現させることができる。発現したアルカリプロテアーゼ前駆体はフォールディングとプロ配列の切断を経て、アルカリプロテアーゼの成熟酵素になる。さらに、本発明のアルカリプロテアーゼ前駆体がシグナル配列を有するプレプロタンパク質である場合、該成熟酵素は細胞外に分泌生産される。本発明の改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼ前駆体を発現する細胞は、親プロ配列を含むアルカリプロテアーゼ前駆体を発現する細胞と比べて、アルカリプロテアーゼの成熟酵素の生産性が顕著に向上する。さらに本発明による改変プロ配列は、特許文献2に開示されるような従来の改変アルカリプロテアーゼ前駆体と比べても、成熟酵素の生産性を顕著に向上させる。
【0038】
したがって、本発明はまた、本発明の形質転換体を培養することを含むアルカリプロテアーゼの製造方法を提供する。アルカリプロテアーゼ製造のための当該形質転換体の培養は、当該分野の一般的な方法に従って行うことができる。例えば、該形質転換体が枯草菌又はその変異株である場合、その培養のための培地は、枯草菌の生育に必要な炭素源、及び無機窒素源もしくは有機窒素源を含む。炭素源としては、例えばグルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖、メタノールなどが挙げられる。無機窒素源もしくは有機窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などが挙げられる。必要に応じて、該培地は、他の栄養素、例えば無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、スペクチノマイシン、エリスロマイシン等)などを含んでいてもよい。培養条件、例えば温度、通気撹拌条件、培地のpH及び培養時間等は、微生物の種や形質、培養スケール等に応じて適宜選択され得る。
【0039】
培養後、得られた培養物から、常法によりアルカリプロテアーゼの成熟酵素を回収する。例えば、培養物を回収し、必要に応じて超音波や加圧等による菌体破砕処理を行い、ろ過、遠心分離、限外ろ過、塩析、透析、クロマトグラフィー等を適宜組み合わせることにより、該培養物から成熟酵素を回収することができる。アルカリプロテアーゼ前駆体がシグナル配列を有し成熟酵素が細胞外に分泌生産される場合、細胞を破砕することなくアルカリプロテアーゼの成熟酵素を回収することができる。成熟酵素の精製度は特に限定されない。例えば、培養上清やその粗分離精製物を、成熟酵素を含む組成物として取得することができる。
【0040】
回収されたアルカリプロテアーゼは、衣料洗浄剤、漂白剤、硬質表面洗浄用洗浄剤、排水管洗浄剤、義歯洗浄剤、医療器具用の殺菌洗浄剤などとして使用することができる。
【0041】
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途、方法等を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0042】
〔1〕プロ配列を含むアルカリプロテアーゼであって、
該プロ配列が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し且つ配列番号1の3位に相当する位置にLeuを有するアミノ酸配列からなり、
該アルカリプロテアーゼの成熟酵素が、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、
アルカリプロテアーゼ。
〔2〕好ましくは、前記プロ配列を含むアルカリプロテアーゼが、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるシグナル配列をさらに含む、〔1〕記載のアルカリプロテアーゼ。
〔3〕前記成熟酵素が、
好ましくはpH8以上のアルカリ性領域で作用するアルカリプロテアーゼであり、
より好ましくは、以下の酵素核的性質:
pH8以上のアルカリ性領域で作用する;
酸化剤耐性を有する(該アルカリプロテアーゼを50mM過酸化水素、5mM塩化カルシウムを含む20mMブリットンロビンソン緩衝液(pH10)中、30℃で20分間放置した後の残存活性が5%以上である);
50℃、pH10で10分間処理したとき80%以上の残存活性を有する;かつ、
SDS-PAGEによる分子量が43,000±2,000である、
を有するアルカリプロテアーゼである、
〔1〕又は〔2〕記載のアルカリプロテアーゼ。
【0043】
〔4〕前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載のアルカリプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド。
〔5〕好ましくは、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、〔4〕記載のポリヌクレオチド。
〔6〕前記〔4〕又は〔5〕記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
〔7〕前記〔4〕又は〔5〕記載のポリヌクレオチド、又は前記〔6〕記載のベクターを含有する形質転換体。
〔8〕枯草菌又はその変異株である、〔7〕記載の形質転換体。
〔9〕親プロ配列を含むアルカリプロテアーゼを発現する細胞と比べて、アルカリプロテアーゼの成熟酵素の生産性が向上している、〔7〕又は〔8〕記載の形質転換体。
〔10〕好ましくは、前記親プロ配列が、配列番号1のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ配列番号1の3位に相当する位置に、好ましくはPhe又はPro、より好ましくはPheを有する、〔9〕記載の形質転換体。
〔11〕前記〔7〕~〔10〕のいずれか1項記載の形質転換体を培養することを含む、アルカリプロテアーゼの製造方法。
【0044】
〔12〕改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼの製造方法であって、
配列番号1のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる親プロ配列において、配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基をLeuに置換することを含み、
該アルカリプロテアーゼの成熟酵素が、配列番号2のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、
方法。
〔13〕前記親プロ配列における配列番号1の3位に相当する位置のアミノ酸残基が、好ましくはPhe又はProであり、より好ましくはPheである、〔12〕記載の方法。
〔14〕好ましくは、前記改変プロ配列を含むアルカリプロテアーゼが、配列番号3のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるシグナル配列をさらに含む、〔12〕又は〔13〕記載の方法。
〔15〕前記成熟酵素が、
好ましくはpH8以上のアルカリ性領域で作用するアルカリプロテアーゼであり、
より好ましくは、以下の酵素核的性質:
pH8以上のアルカリ性領域で作用する;
酸化剤耐性を有する(該アルカリプロテアーゼを50mM過酸化水素、5mM塩化カルシウムを含む20mMブリットンロビンソン緩衝液(pH10)中、30℃で20分間放置した後の残存活性が5%以上である);
50℃、pH10で10分間処理したとき80%以上の残存活性を有する;かつ、
SDS-PAGEによる分子量が43,000±2,000である、
を有するアルカリプロテアーゼである、
〔12〕~〔14〕のいずれか1項記載の方法。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0046】
(1)KP43発現プラスミドの構築
プラスミドpHY300PLK(タカラバイオ)を鋳型としてプライマーペアpHY_KP43_fw/pHY_KP43_rv(配列番号6及び7、表1)及びPrimeSTAR Max Premix(タカラバイオ)を使用してPCRを行った。特開2010-273673の実施例記載の、配列番号5のヌクレオチド配列(配列番号4からなるアルカリプロテアーゼのプレプロタンパク質をコードする)を含むプラスミドpHA64TSAを鋳型とし、プライマーペアKP43_pHY_fw/KP43_pHY_rv(配列番号8及び9、表1)を使用して、同様にPCRを行った。得られた断片を用いて、In-Fusion,HD Cloning kit(Clontech)のプロトコルに従ってIn-Fusion反応を行った。In-Fusion反応液をECOSTM Competent E.coli DH5α(ニッポンジーン、310-06236)に形質転換してプラスミド(pHY-KP43)を構築した。このプラスミドは、配列番号4のアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼのプレプロタンパク質(野生型KP43)をコードする。
【0047】
(2)KP43 F34L変異体発現プラスミドの構築
プラスミドpHY-KP43を鋳型としてプライマーペアF34L_fw/F34L_rv(配列番号10及び11、表1)及びPrimeSTAR Max Premix(タカラバイオ)を使用してPCRを行った。PCR反応液をECOSTM Competent E.coli DH5α(ニッポンジーン、310-06236)に形質転換してプラスミド(pHY-KP43 F34L)を構築した。このプラスミドは、配列番号1の3位に相当する位置(配列番号4の34位)のPheをLeuに置換した以外は配列番号4のアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼのプレプロタンパク質(KP43 F34L変異体)をコードする。
【0048】
【0049】
(3)形質転換株の作製
宿主には、枯草菌168株(Bacillus subtilis Marburg No.168株:Nature,390,1997,p.249)を使用した。プラスミドpHY300PLK(タカラバイオ)、pHY-KP43及びpHY-KP43 F34Lをそれぞれ以下の方法によって導入した。1mLのLB培地に枯草菌168株を植菌し、30℃、200rpmで一晩振盪培養した。1mLの新たなLB培地にこの培養液を10μL植菌して37℃、200rpmで3時間培養した。この培養液を遠心分離してペレットを回収した。ペレットに4mg/mLのリゾチーム(SIGMA)を含むSMMP(0.5Mシュークロース、20mMマレイン酸二ナトリウム、20mM塩化マグネシウム6水塩、35%(w/v)Antibiotic medium 3(Difco))を500μL添加し、37℃で1時間インキュベートした。次に遠心分離によりペレットを回収し、400μLのSMMPに懸濁した。懸濁液33μL、各プラスミド20ngを混合し、さらに100μLの40%PEGを加え攪拌し、さらにSMMPを350μL加えた後、30℃で1時間振盪した。この液200μLを、テトラサイクリン(15μg/mL、SIGMA)を含むDM3再生寒天培地(0.8%寒天(和光純薬)、0.5%コハク酸2ナトリウム6水塩、0.5%カザミノ酸テクニカル(Difco)、0.5%酵母エキス、0.35%リン酸1カリウム、0.15%リン酸2カリウム、0.5%グルコース、0.4%塩化マグネシウム6水塩、0.01%牛血清アルブミン(SIGMA)、0.5%カルボキメチルセルロース、0.005%トリパンブルー(Merck)及びアミノ酸混液(トリプトファン、リジン、メチオニン各10μg/mL);%は(w/v)%)に塗抹して30℃で3日間インキュベートし、形成したコロニーを取得した。
【0050】
(4)酵素生産培養
15ppmテトラサイクリンを添加したLB培地5mLを分注した試験管に(3)で得た組換え枯草菌コロニーを植菌した後、30℃、250spmで一晩培養した。翌日、培養液500μLを2×L-マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン五水和物、0.04%塩化カルシウム二水和物、15ppmテトラサイクリン;%は(w/v)%)20mLを分注したひだ付きフラスコに植菌し、30℃、210rpmで3日間培養した後、菌体から産生された酵素を含む培養上清を遠心分離により回収した。
【0051】
(5)培養上清のタンパク質濃度測定
培養上清のタンパク質濃度測定にはプロテインアッセイラピッドキット ワコーII(富士フイルム和光純薬株式会社)を用いた。KP43発現カセットを持たないpHY300PLK導入株の培養上清のタンパク質濃度をブランクとすることで、培養上清中のKP43の濃度を概算した。測定の結果、野生型KP43を発現するpHY-KP43導入株では、培養上清中のKP43濃度は17.2mg/Lであった。一方、KP43 F34L変異体を発現するpHY-KP43 F34L導入株では、培養上清中のKP43濃度は48.6mg/Lであった。プロ配列中の変異F34Lの導入によって、野生型KP43と比べて、KP43成熟酵素の生産性が2.8倍に向上した(表2)。
【0052】
【配列表】