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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】肺感染症を低減させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7036 20060101AFI20231122BHJP
   A61K 31/397 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 38/14 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231122BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61K31/397
A61K38/14
A61K38/12
A61K31/427
A61K31/496
A61K31/198
A61K31/133
A61K45/00
A61K9/72
A61K47/18
A61P31/04
A61P29/00
A61P39/06
A61P11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019571249
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 AU2018050610
(87)【国際公開番号】W WO2018232453
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】2017902364
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2018900765
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519451935
【氏名又は名称】レスピリオン・ファーマシューティカルズ・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】クレメンツ,バリー
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/142677(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0263151(US,A1)
【文献】国際公開第2008/137747(WO,A1)
【文献】Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 2009, Vol.41, pp.305-313
【文献】J. Pure Appl. Microbiol., 2012, Vol.6, No.1, pp.363-367, Abstract
【文献】Letters in Applied Microbiology, 1999, Vol.28, pp.13-16
【文献】Infection, 2016.5, Vol.45, pp.23-31
【文献】Antimicrob. Agents Chemother., 2010, Vol.54, No.11, pp.4582-4588
【文献】Aerosol EDTA to Eliminate Respiratory-Tract Pseudomonas,THE LANCET, 1984, Vol.2, No.8394, p.99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00~45/08
31/00~31/80
47/00~47/69
A61P31/00~31/22
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗生剤とキレート剤とを含み、肺における細菌感染症を治療するための吸入用組成物であって、前記キレート剤の前記組成物中の濃度が少なくとも50mMであり、前記組成物が、前記キレート剤を37.5mg/日から1200mg/日で送達し、前記抗生剤を10mg/日から2000mg/日で送達する用途に使用されるとともに、前記キレート剤および前記抗生剤の各1回当たりの用量を2時間以下の期間で送達する用途に使用され前記キレート剤が、鉄キレート剤または亜鉛キレート剤であり、前記抗生剤が、アミノグリコシド抗生剤、ベータラクタム抗生剤、グリコペプチド抗生剤、コリスチン、アズトレオナムまたはシプロフロキサシンを含むリストから選択され、前記組成物が酸性化亜硝酸塩を含まない、組成物。
【請求項2】
前記キレート剤がCaEDTAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノグリコシド抗生剤がトブラマイシンである、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記キレート剤が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)と組み合わせられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
i)前記キレート剤、毎日1~4回投与する用途に使用される、および/または
ii)前記抗生剤、毎日1~4回投与する用途に使用される
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
肺における細菌感染症の治療のための吸入用組成物の製造のための、少なくとも50mMの濃度のキレート剤の使用であって、前記組成物が、前記キレート剤を37.5mg/日から1200mg/日で送達する用途に使用され、前記キレート剤を含む組成物が、吸入用抗生剤とともに使用される際に前記吸入用抗生剤を10mg/日から2000mg/日で送達する用途に使用されるとともに、前記キレート剤および前記吸入用抗生剤の各1回当たりの用量を2時間以下の期間で送達する用途に使用され前記キレート剤が、鉄キレート剤又は亜鉛キレート剤であり、前記抗生剤が、アミノグリコシド抗生剤、ベータラクタム抗生剤、グリコペプチド抗生剤、コリスチン、アズトレオナムまたはシプロフロキサシンを含むリストから選択され、前記組成物が酸性化亜硝酸塩を含まない、使用。
【請求項7】
肺における細菌感染症の治療のための吸入用組成物の製造のための、抗生剤の使用であって、前記組成物が、前記抗生剤を10mg/日から2000mg/日で送達する用途に使用され、前記抗生剤を含む吸入用組成物が、吸入用キレート剤とともに使用される際に少なくとも50mMの濃度の前記吸入用キレート剤を37.5mg/日から1200mg/日で送達する用途に使用されるとともに、前記吸入用キレート剤および前記抗生剤の各1回当たりの用量を2時間以下の期間で送達する用途に使用され前記キレート剤が、鉄キレート剤又は亜鉛キレート剤であり、前記抗生剤が、アミノグリコシド抗生剤、ベータラクタム抗生剤、グリコペプチド抗生剤、コリスチン、アズトレオナムまたはシプロフロキサシンを含むリストから選択され、前記組成物が酸性化亜硝酸塩を含まない、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の吸入用キレート剤を吸入用抗生剤と組み合わせて投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法、および本方法で使用する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物感染の根絶は、特に宿主防御に障害が起きた場合、困難となり得る。加えて、多くの微生物は、バイオフィルムと呼ばれる極めて組織化された構造を形成し、このバイオフィルム内で微生物はいくつかの機序を介して免疫細胞および抗生剤による死滅から保護されている。これらの機序は、抗生剤浸透の低減、低い代謝活性、生理学的適応、抗生剤分解酵素、および遺伝的に耐性のある変異体に対する選択を含む(Stewart & Costerton Lancet.2001年、358巻(9276号):135~138頁)。
【0003】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、障害が起きた宿主において急性および慢性の感染症を引き起こすグラム陰性細菌の一例である。緑膿菌は集中治療室において共通して見出され、抗生剤による治療介入に対する周知の障害である強いバイオフィルム形成能力を有する。緑膿菌感染症に関与している疾患は、嚢胞性線維症(CF)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む(Moradaliら、Front Cell Infect Microbiol.2017年、7巻:39頁;Hassettら、J Microbiol.2014年、52巻(3号):211~226頁)。
【0004】
緑膿菌などの生物は、CF呼吸器内で基盤を確立してしまえば、CF肺環境および菌耐性機序、例えば、バイオフィルム形成および抗生剤中和酵素などを含む問題により、根絶を成功させることが不可能となる。緑膿菌感染症は最終的に慢性となり、感染株は抗菌剤に対して次第に耐性を持ち、持続性の炎症は肺機能を徐々に低減させる(Hassettら、J Microbiol.2014年、52巻(3号):211~226頁)。処置は改善されているが、現存する薬物は有する効力が限定され、患者は移植手術を最終的に必要とするか、または呼吸不全により死亡する。
【0005】
肺内の感染症を処置または予防する方法、または少なくとも以前から公知の処置方法を補助するための方法が必要とされる。
【0006】
本発明は、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、抗生剤と組み合わせて投与することにより、肺内の感染症を処置または予防するための改善されたまたは代替となる方法を提供することを探究している。
【0007】
背景技術の先行する考察は、本発明の理解を促進することのみを意図している。この考察は、言及された材料のいずれもが、出願の優先日において共通の一般知識の一部である、または一部であったことを承認または許可するものではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される方法を提供する。
【0009】
好ましくは、キレート剤および抗生剤のそれぞれは1日当たり1~4回の投与で投与される。
【0010】
好ましくは、37.5mg/日~1,200mg/日のキレート剤が投与される。好ましくは、少なくとも50mg/日のキレート剤が投与される。キレート剤は、約1,200mg/日までの総1日用量を毎日1~4回の間で投与することができる。好ましくは、キレート剤および/または抗生剤は、1時間以下の期間にわたり投与される。好ましくは、キレート剤はCaEDTAである。
【0011】
好ましくは少なくとも10mg/日の抗生剤が投与される、または10mg/日~1,250mg/日の間の抗生剤が投与される。抗生剤は、約1,250mg/日、好ましくは1,000mg/日までの総1日用量を毎日1~4回の間で投与することができる。好ましくは、抗生剤はトブラマイシンである。
【0012】
本発明は、吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、処置が炎症を低減させる、方法をさらに提供する。
【0013】
本発明は、吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防がMMP活性の低下または低減を伴うまたはこれをもたらす、方法をさらに提供する。
【0014】
本発明は、吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防がヒドロキシルラジカルの産生の低下または低減を伴うまたはこれをもたらす、方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防が努力呼気肺活量(FEV)の増加をもたらす、方法をさらに提供する。
【0016】
本発明は、感染症を処置するための、吸入用キレート剤を含む、吸入用製剤(dosage form)であって、吸入用抗生剤と組み合わせて、それぞれ1回または複数回の投与で投与され、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される。
【0017】
本発明は、感染症を処置するための、吸入用抗生剤を含む、吸入用製剤であって、吸入用キレート剤と組み合わせて、それぞれ1回または複数回の投与で投与され、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される。
【0018】
本発明は、感染症を処置するための、吸入用キレート剤および吸入用抗生剤を含む、吸入用製剤であって、それぞれ1回または複数回の投与で、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される。
【0019】
本発明は、(i)少なくとも37.5mgの吸入用キレート剤と、(ii)使用のための指示であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が吸入用抗生剤と共に送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与されることを定める指示とを備える、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防するためのキットを提供する。
【0020】
本発明は、(i)吸入用抗生剤と、(ii)使用のための指示であって、抗生剤が少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤と共に送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与されることを定める指示とを備える、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防するためのキットを提供する。
【0021】
本発明は、(i)少なくとも37.5mgの吸入用キレート剤および吸入用抗生剤と、(ii)使用のための指示であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与されることを定める指示とを備える、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防するためのキットを提供する。
【0022】
本発明は、感染症の処置のための医薬を製造するための吸入用キレート剤の使用であって、吸入用キレート剤が吸入用抗生剤と組み合わせて使用され、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される、使用を提供する。
【0023】
本発明は、感染症の処置のための医薬を製造するための吸入用抗生剤の使用であって、吸入用抗生剤が吸入用キレート剤と組み合わせて使用され、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される、使用を提供する。
【0024】
本発明は、感染症の処置のための医薬を製造するための吸入用キレート剤および吸入用抗生剤の使用であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される、使用を提供する。
【0025】
本発明のさらなる特徴は、いくつかのその非限定的実施形態の以下の説明においてより完全に記載されている。この説明は、単に本発明を例証するという目的のためだけに含まれている。この説明は、上記に提示されたような本発明の広範な概要、開示または説明を制限するものとして理解されるべきではない。添付の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】緑膿菌WACC91に対して示されるような、トブラマイシンおよびCaEDTAまたは緩衝型CaEDTAの相乗効果を実証する図である。有酸素性条件下での、チェッカーボード式の、浮遊性増殖(OD600nm)の表である。データは、トブラマイシンとCaEDTAとの間(図1A)およびトブラマイシンとトリス緩衝型CaEDTAとの間(図1B)に相乗効果があることを示している。
図2】緑膿菌WACC91に対して示されるような、トブラマイシンおよびCaEDTAまたは緩衝型CaEDTAの相乗効果を実証する図である。有酸素性条件下での、チェッカーボード式の、バイオフィルム成長(CV染色)の表である。データは、トブラマイシンとCaEDTAとの間(図2A)の相乗効果を示し、これは、トリス緩衝型CaEDTA(図2B)でさらに増強される。
図3】緑膿菌WACC91に対して示されるような、トブラマイシンおよびCaEDTAまたは緩衝型CaEDTAの相乗効果を実証する図である。嫌気性条件下での、チェッカーボード式の、浮遊性増殖(OD600nm)の表である。データは、トブラマイシンとCaEDTAとの間(図3A)およびトブラマイシンとトリス緩衝型CaEDTAとの間(図3B)に相乗効果があることを示している。
図4】緑膿菌WACC91に対して示されるような、トブラマイシンおよびCaEDTAまたは緩衝型CaEDTAの相乗効果を実証する図である。嫌気性条件下での、チェッカーボード式の、バイオフィルムの表である。データは、トブラマイシンとCaEDTAとの間(図4A)およびトブラマイシンとトリス緩衝型CaEDTAとの間(図4B)に相乗効果があることを示している。
図5】緑膿菌WACC91に対して示されるような、トブラマイシンおよびCaEDTAまたは緩衝型CaEDTAの相乗効果を実証する図である。有酸素性および嫌気性条件下でのCaEDTAおよび緩衝型CaEDTAの浮遊性細胞およびバイオフィルムに対する作用である。濃度は、示されている通り、トブラマイシン:4μg/ml、CaEDTA:6.25mMおよびトリス緩衝液:12.5mMであった。
図6】緑膿菌WACC91に対して示されるような、トブラマイシンおよびCaEDTAまたは緩衝型CaEDTAの相乗効果を実証する図である。in vitroでの緑膿菌バイオフィルムの代謝で測定した、CaEDTAとトブラマイシンのサブミクロン粒子の相乗効果を示している。緑膿菌バイオフィルムを96-ウェルマイクロタイタープレート内で成長させ、エアゾール化抗生剤およびEDTA粒子に曝露した。図6A:CaEDTAは、トブラマイシン濃度<1mg/mlにおいて死滅を実質的に増強する。図6B:相乗効果は送達モードに依存しない(溶液または乾燥粉末)。
図7】CaEDTAが緑膿菌に対する様々な抗生剤の効力を増強させることを実証する図である。チェッカーボード式であり、緑膿菌WACC91浮遊性細胞と、メチシリンおよびCaEDTAとの対比である。
図8】CaEDTAが緑膿菌に対する様々な抗生剤の効力を増強させることを実証する図である。チェッカーボード式であり、緑膿菌001-11R(CF臨床的株)浮遊性細胞(図8A)およびバイオフィルム(図8B)と、カルベニシリンおよびCaEDTAとの対比である。
図9】CaEDTAが緑膿菌に対する様々な抗生剤の効力を増強させることを実証する図である。OD600nm(図9A)およびコロニー形成単位、CFU/ml(図9B)で測定された、緑膿菌WACC91浮遊性細胞と、テトラサイクリンおよび緩衝型CaEDTAとの対比である。
図10】CaEDTAが緑膿菌に対する様々な抗生剤の効力を増強させることを実証する図である。OD600nm(図10A)およびCFU/ml(図10B)で測定された、緑膿菌WACC91と、アズトレオナム(Azactam)および緩衝型CaEDTAとの対比である。
図11】CaEDTAが緑膿菌に対する様々な抗生剤の効力を増強させることを実証する図である。OD600nm(図11A)およびCFU/ml(図11B)で測定された、緑膿菌WACC91と、エリスロマイシンおよび緩衝型CaEDTAとの対比である。
図12】CaEDTAが緑膿菌に対する様々な抗生剤の効力を増強させることを実証する図である。示されている通り、緑膿菌WACC91浮遊性細胞と、コリスチンおよび緩衝型CaEDTAとの対比である。
図13】他のキレート化剤もまた抗生剤の効力を増強することを実証する図である。チェッカーボード式であり、緑膿菌WACC91浮遊性細胞と、トブラマイシンおよびエチレングリコール四酢酸(EGTA)との対比である。
図14】他のキレート化剤もまた抗生剤の効力を増強することを実証する図である。トブラマイシンと、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)との間の相乗効果を示す。図14A:チェッカーボード式である;図14B~C:示されている通り、選択された濃度の抗生剤およびキレート化剤に対するOD600nmおよびコロニーカウント数である。
図15】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。バークホルデリアセパシア(Burkholderia cepacia)浮遊性細胞と、トブラマイシンおよびCaEDTAとの対比である。図21A:チェッカーボード式アッセイである;図21B:選択された濃度のコロニーカウント数である。
図16】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。チェッカーボード式であり、セパシア菌(B.cepacia)浮遊性細胞と、シプロフロキサシンおよびCaEDTAとの対比である。
図17】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。チェッカーボード式であり、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)浮遊性細胞(図17A)およびバイオフィルム(図17B)と、コリスチンおよびCaEDTAとの対比である。
図18】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。チェッカーボード式であり、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)浮遊性細胞と、テトラサイクリンおよびCaEDTAとの対比である。
図19】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。チェッカーボード式であり、黄色ブドウ球菌MRSA(Staphylococcus aureus MRSA)浮遊性細胞と、バンコマイシンおよびCaEDTAとの対比である。
図20】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。示されている通り、黄色ブドウ球菌MSSA浮遊性細胞と、シプロフロキサシンおよびCaEDTAとの対比である。図20A:OD600nm;図20B:CFU/ml。
図21】緩衝型CaEDTAは、グラム陽性とグラム陰性の両方の異なる細菌種に対して、様々な臨床的に関連する抗生剤の効力を増強することを実証する図である。示されている通り、黄色ブドウ球菌MRSA浮遊性細胞と、シプロフロキサシンおよびCaEDTAとの対比である。図21A:OD600nm;図21B:CFU/ml。
図22】CaEDTAは抗生剤の殺菌活性を増加させることを実証する図である。緩衝型CaEDTA(20mM)有りまたは無しの、緑膿菌ATCC27853およびセフタジジム(128ug/ml)のタイムキルアッセイである。
図23】CaEDTAは抗生剤の殺菌活性を増加させることを実証する図である。緩衝型CaEDTA(20mM)有りまたは無しの、セパシア菌ATCC25416およびメロペネム(32ug/ml)のタイムキルアッセイである。
図24】CaEDTAのサブミクロン粒子が緑膿菌バイオフィルムを死滅させ、in vitroでトブラマイシンと相乗的に作用することを示す図である。緑膿菌バイオフィルムを懸滴のCF粘液中で成長させ、エアゾール化EDTA粒子および/またはトブラマイシンで処理した。小滴中のトブラマイシンの最終濃度は325μg/mlであった。図24A:BacLight LIVE/DEADで染色したバイオフィルムの共焦点顕微鏡画像である;図24B:処置の定量的作用を示す細菌カウント数である。
図25】トブラマイシンに加えて、緩衝型CaEDTAでのCF対象の処置がトブラマイシン単独での処置よりも有効であることを実証する図である。トブラマイシンに加えて、緩衝型CaEDTAでのCF対象の処置が、抗生剤単独での処置より速くCF肺内の細菌量を低減させることを示している。CF対象を噴霧用CaEDTA(EDTA)または生理食塩水(プラセボ)で処置し、喀痰された粘液中の細菌量をモニターした(粘液1グラム当たりのコロニー形成単位)。
図26】トブラマイシンに加えて、緩衝型CaEDTAでのCF対象の処置がトブラマイシン単独での処置よりも有効であることを実証する図である。処置の開始から、10週間全体にわたる(処置後4週間)CaEDTAまたはプラセボで処置した患者におけるFEV1(%ポイント)の平均変化を示している。
図27】トブラマイシンに加えて、緩衝型CaEDTAでのCF対象の処置がトブラマイシン単独での処置よりも有効であることを実証する図である。FEV1の改善(0~2週間)と体重との間の関係を示している。
図28】トブラマイシンに加えて、緩衝型CaEDTAでのCF対象の処置がトブラマイシン単独での処置よりも有効であることを実証する図である。75mgの噴霧用CaEDTAによる処置から5分後および2時間後に、3人のCF対象の痰において達成されたEDTA濃度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[処置または予防の方法]
本発明は、吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される方法を提供する。
【0028】
好ましくは、対象は動物であり、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0029】
吸入用EDTAは単独では細菌感染症を処置しないことが以前に示されている(Brownら(Am J Dis Child.1985年、139巻(8号):836~9頁);Hassett(Front Microbiol.2016年、7巻:291頁))。Brownら(1985年)は、緑膿菌に慢性的に感染しているCF小児を、噴霧用ナトリウムEDTAおよび経口テトラサイクリンで3カ月処置し、肺機能または感染症状態における変化は観察されなかった。EDTAは濃度依存性気管支収縮(Beasleyら(Br Med J(Clin Res Ed).1987年、294巻(6581号):1197~8頁))を引き起こすこと、EDTAはFEV1に対する作用がないことが他者により報告された(Asmusら、(J Allergy Clin Immunol.2001年、107巻(1号):68~72頁))。したがって、高用量の吸入用キレート剤が、対象に対して、例えば、嚢胞性線維症(CF)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または感染症および炎症を引き起こすまたはこれに伴う肺の他の状態を有するものなどに対して任意のプラス効果を有すると信じる根拠は何もない。しかし、本発明は驚くことに、抗生剤と組み合わせた、ある特定の吸入用キレート剤の投与が肺感染症および炎症を処置または予防することができることを見出した。
【0030】
CF肺環境は酸性であると一般に信じられている。しかし、CF肺は正常な肺と同じpHを有することが最近になり示されている(Schultzら、「Airway surface liquid pH inchildren with cystic fibrosis」Nature Communications(8巻:1409頁(2017年)))。したがって、酸性化亜硝酸を使用する現行の技術、例えば、米国特許出願公開第2016/0263151号において論じられているものなどは、製剤は、酸性化された状態には留まらず、正常な肺のpH7.4に直ちに戻るので、CFにおいて臨床的に働く可能性は低い。
【0031】
CF肺の酸性度は正常ではあるが、鉄のレベルは正常な肺とは著しく異なることが判明した。Stitesら、(Am J Respir Crit Care Med.1999年、160巻(3号):796~80頁)は、鉄のレベルはCF患者の肺内で、ならびに喫煙者の肺内で、健康な個体と比較して大きく上昇していることを示した。この鉄の大部分は、第一鉄の形態、Fe(II)であり、疾患重症度と有意に相関することも示されている(Hunterら、MBio.2013年、4巻(4号):1~8頁)。第一鉄は、組織およびDNAを激しく損傷し得る極めて反応性の高い酸素ラジカルを生成するフェントン反応に参加することができる(Jomovaら、Toxicology.、2011年、283巻(2~3号):65~87頁;MacNee、Eur J Pharmacol.、2001年、429巻(1~3号):195~207頁)。
【0032】
理論に制約されることを望むことなく、本発明の方法は、主要なイオン、例えば、鉄および亜鉛などを細菌から奪うことにより、肺内の感染症を低減させると考えられている。これは、いくつかのレベルで起こり得る:
(i)鉄は細菌増殖および生存に不可欠である。これはバイオフィルム形成の事例に特に当てはまる。バイオフィルム内では鉄の除去が細菌の飢餓および死亡につながるからである、
(ii)バイオフィルム細胞は、正荷電金属イオンで結び付いている負荷電の多糖およびDNAからなる水和したポリマーマトリックスで囲まれている。カチオン除去は、バイオフィルムの分散を引き起こし、これによって、抗生剤および免疫細胞が個々の細菌に到達可能となる、
(iii)緑膿菌および他のグラム陰性細菌の外膜は、二価カチオンで架橋された負荷電リポ多糖からなる(Cliftonら、Langmuir、2015年、31巻:404~412頁)。カチオンの除去は、外膜浸透率および抗生剤感受性を増加させ、この作用はシュードモナス属(Pseudomonas spp.)において特に著しい(Vaara、M.Microbiol Rev、1992年、56巻:395~411頁)、ならびに/または
(iv)宿主における緑膿菌生存の鍵となるのが、分泌される病毒性因子の産生であり、これらのいくつかは、その機能が金属イオンに依存する。これらの例がエラスターゼ(Zn-dependent、Olson and Ohman、J Bacteriol、1992年、174巻:4140~4147頁)およびβ-ラクタマーゼである(Zn-dependent、Fajardoら、J Antimicrob Chemother、2014年、69巻:2972~2978頁)。
【0033】
吸入は、局所投与の方法であり、したがって、標的領域、すなわち、肺に到達するのにより有効であり得、吸入用キレート剤および抗生剤の高いおよび局所的な濃度を提供する。吸入は、活性物質の全身曝露による所望しない副作用を回避し、抗生剤耐性の危険性を低減させる。
【0034】
キレート剤および抗生剤は、1つの単一製剤、または2つの別個の製剤で送達することができる。製剤が別個である場合、製剤は一緒に(同時に)、または逐次的に摂取してもよい。2種の活性物質の製剤の送達の間に、数秒、数分、数時間または数日の一時的なずれがあってもよい。
【0035】
本発明の組成物は、パファーにより(加圧された定量式吸入器、ドライパウダー吸入器)またはネブライザーにより送達することができる。組成物が1つのデバイス(すなわち、1つのデバイス内にキレート剤と抗生剤の両方)で提供されてもよいし、または2種の活性物質が2つの異なるデバイスから送達されてもよい。例えば、2種の活性物質は、各デバイス内に1種の活性物質を含んだ、2つの別個のパファーで、2つの別個のネブライザーで、またはパファーとネブライザーで送達されてもよい。
【0036】
吸入用抗生剤と、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤とを、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置(treat)または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される方法は、酸性化亜硝酸塩(acidified nitrite)の非存在下で提供され得る。
【0037】
本発明は、吸入用抗生剤、および少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防がFEVの増加をもたらす、方法をさらに提供する。
【0038】
本発明は、吸入用抗生剤、および少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防が、キレート剤の存在による、肺内の細菌により生成されるバイオフィルムの除去または低減に起因する、方法をさらに提供する。
【0039】
本発明は、吸入用抗生剤、および少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防が、キレート剤の存在による細菌性外膜浸透率の増加に起因する、方法をさらに提供する。
【0040】
本発明は、吸入用抗生剤、および少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、感染症の処置または予防が、キレート剤での金属イオンのキレート化による細菌性病毒性因子の低減に起因する、方法をさらに提供する。
【0041】
本発明は、吸入用抗生剤、および少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、炎症の処置または予防がMMP活性の低下を伴う、方法をさらに提供する。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が肺損傷を引き起こすこと(Garrattら、Eur Respir J.2015年、46巻(2号):384~94頁)およびMMP活性がZn2+に依存すること(Hazraら、Molecular Vision、2012年;18巻:1701~1711頁)は公知である。しかし、肺内のMMPを標的にする過去の試みは不成功であった。本発明は、肺内で亜鉛をキレートする吸入用キレート剤を使用し、よってMMP誘発性肺損傷を低減させ、炎症を処置または予防する。
【0042】
本発明は、吸入用抗生剤、および少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与され、炎症の処置または予防がヒドロキシルラジカルの産生の低下を伴う、方法をさらに提供する。Fe(II)は、ヒドロキシルラジカルの形成を触媒するので、鉄は肺損傷における主要因子である(Stitesら、(Am J Respir Crit Care Med.、1999年、160巻(3号):796~80頁))。Fe(II)はCF肺内で豊富であり、疾患重症度と有意に相関するが(Hunterら、MBio.、2013年、4巻(4号):1~8頁)、抗酸化剤治験は、今までのところ肺機能における著しい改善をもたらすことができでいない。本発明は肺内の鉄をキレート化するために吸入用キレート剤を使用し、よってヒドロキシルラジカル誘発性肺損傷を低減させ、炎症を処置または予防する。
【0043】
好ましくは、キレート剤は鉄キレート剤または亜鉛キレート剤である。より好ましくは、キレート剤は鉄と亜鉛の両方のキレート化剤である(鉄/亜鉛キレート化剤)。代わりに、キレート剤は、2種またはそれより多くのキレート剤の混合物、例えば、鉄キレート剤と亜鉛キレート剤、または鉄/亜鉛キレート剤と亜鉛キレート剤、または鉄キレート剤と鉄/亜鉛キレート剤の混合物であってよい。
【0044】
キレート剤は、好ましくは、クエン酸、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のジナトリウム塩、トリナトリウム塩およびテトラナトリウム塩、EDTAのカルシウム塩、エチレングリコール-ビス-(b-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA);1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-四酢酸(BAPTA);エチレン-N,N’-ジグリシン(EDDA);2,2’-(エチレンジイミノ(ethylendiimino))-ジブタン酸(EBDA);ラウロイルEDTA;ジラウロイルEDTA、トリエチレンテトラミンジヒドロクロリド(dihydrochioride)(TRIEN)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTG)、デフェロキサミン(DFO)、デフェラシロクス(DSX)、ジメルカプロール、クエン酸亜鉛、ペニシラミン(penicilamine)、サクシマー、エジトロネート、ヘキサメタリン酸ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、D-ペニシラミン、ポリフェノール、ガロール、カテコール、ジメルカプロール、テトラチオモリブデート、ラクトフェリン、およびクリオキノールおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0045】
好ましくは、キレート剤は薬学的に許容されるキレート剤である。
【0046】
一実施形態では、キレート剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。別の実施形態では、キレート剤はデフェロキサミン(DFO)である。別の実施形態では、キレート剤はデフェラシロクス(DSX)である。
【0047】
好ましくは、キレート剤は、EDTAとおよそ同じ鉄親和性、および/またはEDTAとおよそ同じ亜鉛親和性を有する。25℃および0.1MでのEDTAに対する生成定数または安定度定数(log K)は、Fe2+に対しては14.3であり、Fe3+に対しては25.1であり、亜鉛に対しては16.5である。
【0048】
一実施形態では、キレート剤はキレート剤のカルシウム塩である。好ましくは、キレート剤はCaEDTAである。
【0049】
一実施形態では、キレート剤は37.5mg/投与~300mg/投与の間、約75mg/投与~200mg/投与の間、約75mg/投与~100mg/投与の間、約50mg/投与~200mg/投与の間、好ましくは約37.5mg/投与、50mg/投与、75mg/投与、100mg/投与、200mg/投与または300mg/投与を含有する吸入用投与形態で提供される。キレート剤は、少なくとも37.5mg/投与を含有する吸入用投与形態で好ましくは提供される。
【0050】
1日当たり吸入されるキレート剤の総量は、好ましくは約37.5mg/日~1,200mg/日の間、約50mg/日~1,200mg/日の間、約100mg/日~1,000mg/日の間、約300mg/日~900mg/日の間、約400mg/日~800mg/日の間、好ましくは約300mg/日、500mg/日または600mg/日、または少なくとも600mg/日である。キレート剤は、約1,200mg/日まで、好ましくは少なくとも37.5mg/日の全用量を投与することができる。
【0051】
吸入用キレート剤は、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分、30分、20分、15分、10分、または5分以下の期間にわたり好ましくは送達される。投与が乾燥粉末の送達による場合、吸入用キレート剤は、数秒の期間、例えば、エアゾール剤デバイスまたはドライパウダー吸入器の「パフ」1回当たり1秒にわたり送達することができ、各時間点で、1回または複数回のパフが投与される。
【0052】
好ましくは吸入用キレート剤および吸入用抗生剤は少なくとも連続28日間投与される。吸入用キレート剤および吸入用抗生剤は、2日間またはそれよりも多く、3日間、4日間、5日間、6日間または7日間送達することができる。吸入用キレート剤および吸入用抗生剤は、2~28日の間、1週間、2週間、3週間または4週間送達することができる。一部の対象は、数日または数週の期間にわたるより高用量またはより頻繁な投与、これに続くより低い用量または維持量の投与で、対象に抗生剤および/またはキレート剤を「負荷する」期間により恩恵を受けることができる。
【0053】
吸入用キレート剤および吸入用抗生剤は、酸性化亜硝酸の非存在下で提供することができる。
【0054】
よって、本発明は、
・37.5mg/日~1,200mg/日の間の吸入用キレート剤総量を送達する、
・10mg/日~500mg/日の間の吸入用抗生剤総量を送達する、
・少なくとも1日当たり1回から1日当たり6回まで、好ましくは1日4回まで投与される、
・両方の活性剤を含有する単一製剤として、もしくは別個の製剤に分けて投与される、および/または
・8時間以下の期間にわたり投与される。
【0055】
好ましくは、本発明は、
・37.5mg/日~1,200mg/日の間の吸入用キレート剤総量を送達する、
・10mg/日~500mg/日の間の吸入用抗生剤総量を送達する、
・両方の活性剤を含有する単一製剤として投与される、
・1日当たり1回もしくは2回投与される、
・1回の投与当たり1時間以下の期間にわたり投与される、
・CaEDTAをキレート剤として含有する、および/または
・トブラマイシンを抗生剤として含有する。
【0056】
CaEDTAなどのキレート剤75mgが吸入された場合、約0.4mM~1.34mMのキレート剤が5分後、肺からの痰の中に検出され得ることが断定されている。
【0057】
任意のキレート剤の好ましい量は、薬剤のキレート化能力を、CaEDTAのものと比較し、次いで上に与えた用量範囲にその数をかけることにより計算することができる。結果は、好ましい量のEDTAにより提供される好ましいレベルのキレート化とおよそ等しいレベルのキレート化を提供するはずである。
【0058】
好ましくは、抗生剤はトブラマイシンである。しかし、本発明をトブラマイシン限定することを要望するわけではない。他の抗生剤または抗感染剤、例えば、アミノグリコシド、テトラサイクリン、スルホンアミド、p-アミノ安息香酸、ジアミノピリミジン、キノロン、β-ラクタム、β-ラクタムおよびβ-ラクタマーゼ阻害剤、グリコペプチド、クロラフェニコール、マクロライド、ペニシリン、セファロスポリン、コルチコステロイド、プロスタグランジン、シプロフロキサシン、リンコマイシン(linomycin)、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、コリスチン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、エチオナミド、アミノサリチル酸、サイクロセリン、カプレオマイシン、スルホン、クロファジミン、サリドマイド、ポリエン抗真菌剤、フルシトシン、イミダゾール、トリアゾール、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾールシクロピラックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、テルビナフィン、またはその任意の組合せからなる群から選択されるものなどを使用することができる。
【0059】
本発明により包含される抗生剤は、これらに限定されないが、キノロン(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンなど)、スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール(sulfamethaoxazole)、スルフイソキサゾール、スルファセタミドなど)、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシンなど)、テトラサイクリン(例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)、パラ-アミノ安息香酸、ジアミノピリミジン(例えば、トリメトプリム、多くの場合スルファメトキサゾールと併せて使用されている、ピラジナミドなど)、ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリンなど)、ペニシリナーゼ耐性ペニシリン(例えば、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリンなど)、第1世代セファロスポリン(例えば、セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、セファロチン、セファピリン、セファゾリンなど)、第2世代セファロスポリン(例えば、セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セフィネタゾール、セフプロジル、ロラカルベフ、セホラニドなど)、第3世代セファロスポリン(例えば、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテンなど)、他のβ-ラクタム(例えば、イミペネム、メロペネム、アズトレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタムなど)、ベータラクタマーゼ阻害剤(例えば、クラブラン酸など)、クロラムフェニコール、マクロライド(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシンなど)、リンコマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、ポリミキシン(例えば、ポリミキシンA、B、C、D、E(コリスチンA)、またはE、コリスチンBまたはCなど)コリスチン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、エチオナミド、アミノサリチル酸、サイクロセリン、カプレオマイシン、スルホン(例えば、ダプソン、スルホキソンナトリウムなど)、クロファジミン、サリドマイド、または脂質封入できる任意の他の抗菌剤を含む。抗感染剤は、ポリエン抗真菌剤(例えば、アムホテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシンなど)、フルシトシン、イミダゾール(例えば、ミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾールなど)、トリアゾール(例えば、イトラコナゾール、フルコナゾールなど)、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾールシクロピラックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、テルビナフィンを含む抗真菌剤、または任意の他の抗生剤およびその薬学的に許容される塩およびその組合せを含むことができる。考察および例は、主にトブラマイシンを対象とするが、本出願の範囲がこの抗生剤に限定されることを意図しない。薬物の組合せを使用することができる。
【0060】
適切な「薬学的に許容される塩」は、慣例的に使用されている無毒性塩、例えば、無機塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩など)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えば、アミン塩(例えば、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル-モノエタノールアミン塩、プロカイン塩およびカフェイン塩など)、塩基性アミノ酸塩(例えば、アルギニン塩およびリシン塩など)、テトラアルキルアンモニウム塩など、あるいは肺血圧降下剤が液体媒体中で溶解性を維持することを可能にする、または液体媒体、好ましくは水性媒体中で調製されるおよび/もしくは効果的に投与される他の塩形態を含む。上記塩は、従来のプロセス、例えば、対応する酸性および塩基から、または塩交換により調製することができる。
【0061】
例えば、1つの代替の実施形態では、抗生剤は、遊離塩基形態または塩形態(例えば、薬学的に許容される塩として)で利用することができる。適切な薬学的に許容される塩の例は、無機酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、および硝酸塩など;有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびアスコルビン酸塩など;with酸性アミノ酸との塩、例えば、アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩など;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩など;アルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウム塩およびカルシウム塩など;アンモニウム塩;有機塩基性塩、例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、およびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩など;ならびに塩基性アミノ酸との塩、例えば、リシン塩およびアルギニン塩などを含む。塩は、場合によっては水和物またはエタノール溶媒和物であってもよい。
【0062】
エーテルの例は、これらに限定されないが、アルキルエーテル、例えば、低級アルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t-ブチルエーテル、ペンチルエーテルおよび1-シクロプロピルエチルエーテルなど;および中級または高級アルキルエーテル、例えば、オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテルおよびセチルエーテルなど;不飽和エーテル、例えば、オレイルエーテルおよびリノレニルエーテルなど;低級アルケニルエーテル、例えば、ビニルエーテル、アリルエーテルなど;低級アルキニルエーテル、例えば、エチニルエーテルおよびプロピニルエーテルなど;ヒドロキシ(低級)アルキルエーテル、例えば、ヒドロキシエチルエーテルおよびヒドロキシイソプロピルエーテルなど;低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル、例えば、メトキシメチルエーテルおよび1-メトキシエチルエーテルなど;場合によって置換されているアリールエーテル、例えば、フェニルエーテル、トシルエーテル、t-ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4-ジ-メトキシフェニルエーテルおよびベンズアミドフェニルエーテルなど;ならびにアリール(低級)アルキルエーテル、例えば、ベンジルエーテル、トリチルエーテルおよびベンズヒドリルエーテルなど、あるいは抗生剤が液体媒体中で溶解性を維持することを可能にする、または液体媒体、好ましくは水性媒体中で調製されるおよび/もしくは効果的に投与される他のエーテル形態を含むことができる。
【0063】
エステルの例は、これらに限定されないが、脂肪族エステル、例えば、低級アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステルおよび1-シクロプロピルエチルエステルなど;低級アルケニルエステル、例えば、ビニルエステルおよびアリルエステルなど;低級アルキニルエステル、例えば、エチニルエステルおよびプロピニルエステルなど;ヒドロキシ(低級)アルキルエステル、例えば、ヒドロキシエチルエステルなど;低級アルコキシ(低級)アルキルエステル、例えば、メトキシメチルエステルおよび1-メトキシエチルエステルなど;ならびに場合によって置換されているアリールエステル、例えば、フェニルエステル、トシルエステル、t-ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4-ジ-メトキシフェニルエステルおよびベンズアミドフェニルエステルなど;ならびにアリール(低級)アルキルエステル、例えば、ベンジルエステル、トリチルエステルおよびベンズヒドリルエステルなど、あるいは抗生剤が液体媒体中で溶解性を維持することを可能にする、または液体媒体中、好ましくは水性媒体中で調製されるおよび/もしくは効果的に投与される他のエステル型を含むことができる。
【0064】
また、本明細書に提供されている製剤および方法において使用するための抗生剤は、1つまたは複数のキラル中心を含有することができる。このようなキラル中心は、(R)もしくは(S)配置のいずれかであってよく、またはその混合物であってもよい。よって、本明細書に提供されている製剤に使用するための抗生剤は、エナンチオマーとして純粋な、または立体異性またはジアステレオマーの混合物であってよい。本明細書に提供されている化合物のキラル中心は、in vivoでエピマー化され得ることを理解されたい。よって、当業者であれば、その(R)形態での化合物の投与は、in vivoでエピマー化された化合物については、その(S)形態での化合物の投与と同等であることを認識している。
【0065】
一実施形態では、抗生剤は、10mg/投与~500mg/投与の間、約50mg/投与~400mg/投与の間、約100mg/投与~400mg/投与の間、約200mg/投与~300mg/投与の間;好ましくは約10mg/投与、20mg/投与、30mg/投与、50mg/投与,200mg/投与、250mg/投与、200mg/投与または300mg/投与を含有する吸入用投与形態で提供される。
【0066】
1日当たり吸入される抗生剤の総量は、好ましくは約10mg/日~2,000mg/日の間、10mg/日および1,000mg/日、50mg/日および2,000mg/日、250mg/日および2,000mg/日、約300mg/日~1,100mg/日の間、約500mg/日~1,000mg/日の間、約800mg/日~1,000mg/日の間;好ましくは約200mg/日、300mg/日、500mg/日、1,000mg/日または1,250mg/日である。
【0067】
抗生剤は、送達1回当たり8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分、30分、20分、15分、10分、または5分以下の期間にわたり好ましくは送達される。投与が乾燥粉末の送達による場合、吸入用抗生剤は、数秒の期間にわたり、例えば、エアゾール剤デバイスまたはドライパウダー吸入器のパフ1回当たり1秒にわたり好ましくは送達され、各時間点で、1回または複数回のパフが投与される。
【0068】
抗生剤がトブラマイシンである場合、共通して処方される吸入用トブラマイシンの用量は、TOBI(登録商標)Podhaler(登録商標)(乾燥粉末)が28mg(112mg用量)のパフ4回、毎日2回、合計224mg/日であり、OR Nebulised TOBI(登録商標)が毎日2回、5ml中300mgである。
【0069】
キレート剤がパファーで送達される場合、好ましくは、各パフは、37.5mg/パフ~300mg/パフの間、約75mg/パフ~200mg/パフの間、約75mg/パフ~100mg/パフの間、約50mg/パフ~200mg/パフの間、好ましくは約37.5mg/パフ、50mg/パフ、75mg/パフ、100mg/パフ、200mg/パフまたは300mg/パフを送達する。
【0070】
代わりに、キレート剤がパファーで送達される場合、好ましくは2回ごとのパフは、37.5mg/2×パフ~300mg/2×パフの間、約75mg/2×パフ~200mg/2×パフの間、約75mg/2×パフ~100mg/2×パフの間、約50mg/2×パフ~200mg/2×パフの間;好ましくは約37.5mg/2×パフ、50mg/2×パフ、75mg/2×パフ、100mg/2×パフ、200mg/2×パフまたは300mg/2×パフを送達する。
【0071】
抗生剤がパファーで送達される場合、好ましくは、各パフは、10mg/パフ~500mg/パフの間、約50mg/パフ~400mg/パフの間、約100mg/パフ~400mg/パフの間、約200mg/パフ~300mg/パフの間;好ましくは約10mg/パフ、20mg/パフ、30mg/パフ、50mg/パフ、200mg/パフ、250mg/パフ、200mg/パフまたは300mg/パフを送達する。
【0072】
代わりに、抗生剤がパファーで送達される場合、好ましくは2回ごとのパフは10mg/2×パフ~500mg/2×パフの間、約50mg/2×パフ~400mg/2×パフの間、約100mg/2×パフ~400mg/2×パフの間、約200mg/2×パフ~300mg/2×パフの間;好ましくは約10mg/2×パフ、20mg/2×パフ、30mg/2×パフ、50mg/2×パフ、200mg/2×パフ、250mg/2×パフ、200mg/2×パフまたは300mg/2×パフを送達する。
【0073】
組成物がキレート剤と抗生剤の両方を含有する場合、好ましくはキレート剤:抗生剤の比率は約3:1、1:10、30:1、3:5または1:1.5である。
【0074】
好ましくは、感染症は、嚢胞性線維症(CF);喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);肺高血圧;肺がん;肺線維症;気管支拡張症;急性呼吸促迫症候群;結核;非結核性ミコバクテリア(NTM)肺感染症;これらに限定されないが、人工呼吸器関連肺炎、市中感染性肺炎、気管支肺炎、大葉性肺炎を含む肺炎;細菌、例えば、シュードモナス属の種、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、クラミジア(Chlamydia)、マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)、ブドウ球菌属の種、クレブシエラ属の種(Klebsiella spp)、大腸菌(E.coli)、ステノトロフォモナス属(Stenotrophomonas spp)、およびアスペルギルス(Aspergillus)、スケドスポリウム(Scedosporium)ならびにカンジダ属の種(Candida sp)を含む真菌による感染症;感染症が、例えば、挿管したもしくは人工呼吸器をつけている患者に生じ得る状態に対する予防的処置もしくは予防;肺移植患者における感染症;気管支炎;百日咳(百日咳);内耳感染;連鎖球菌の喉感染症;肺炭疽;野兎病;または副鼻腔炎などの肺状態により引き起こされるか、またはこれらを引き起こすか、またはこれらに伴う。
【0075】
好ましくは、キレート剤および/または抗生剤は、必要とする対象に、1日当たり約1回~1日当たり約6回の間、より好ましくは1日当たり約2、3または4回投与される。
【0076】
代わりに、キレート剤および/または抗生剤は、連続的な吸入を介して、ネブライザーを介して、必要とする対象に投与することができる。噴霧されるキレート剤および/または抗生剤は、8時間、6時間、4時間、2時間または1時間送達することができ、これら送達のそれぞれは、24時間の期間以内に数回繰り返すことができる。
【0077】
一実施形態では、吸入用キレート剤および抗生剤は、1日1、2、または3回次々に(すなわち逐次的に)投与されるか、または一緒に同時投与される。薬剤が同時投与される場合、2種の化合物は、投与直前に混合することができ、またはこれらの化合物は、内臓式調製物内の1つの均質の混合物として混和することができるが、ただし、物理的および化学的安定性は維持されるものとする。一実施形態では、吸入用キレート剤および抗生剤は1つの医薬製剤として混和され、吸入により対象に投与される。単一の医薬製剤および単一回の処置は、使いやすさを提供し、対象のより良いコンプライアンスをもたらす。
【0078】
吸入用キレート剤および抗生剤の投与は、エアゾール剤デバイスまたはドライパウダー吸入器から噴霧されるか、または少なくとも1回の、好ましくは数回の「パフ」により通常投与される。例えば、対象は、1日にわたり単回投与、または数回の投与を受けることができる。
【0079】
1日当たりの総用量は、少なくとも1日当たり1回または1日当たり2回好ましくは投与されるが、1日当たり3回またはそれより多くの投与に分割してもよい。一部の対象は、数日または数週の期間にわたるより高用量またはより頻繁な投与、これに続くより低い用量または維持量の投与で、対象に抗生剤および/またはキレート剤を「負荷する」期間により恩恵を受けることができる。嚢胞性線維症、COPDなどは通常慢性の状態であるため、対象は、長時間にわたりこのような療法を受けると予想されている。
【0080】
薬物製剤の形態に関わらず、約0.1μm~12μm、または約0.25μm~6μm、好ましくは1μm~6μm、より好ましくは約2μm~4μmの範囲の吸入用小滴または粒子を作り出すことが好ましい。代わりに、粒子は0.1μm~1.0μm、0.2μm~0.9μm、0.3μm~0.8μm、0.4μm~0.7μm、または0.5μmであってよい。比較的に狭い範囲のサイズを有する吸入用粒子を作り出すことによって、ドラッグデリバリーシステムの効率をさらに増加させ、投薬の再現性を改善することが可能である。よって、粒子が0.1μm~12μmまたは2μm~6μmまたは約3~4μmの範囲のサイズを有するだけでなく、平均粒径が狭い範囲内であることによって、対象に送達される粒子の80%またはこれより多くが、平均粒径の±20%、好ましくは平均粒径の±10%、より好ましくは±5%の範囲内である粒子直径を有することが好ましい。
【0081】
「粒径」は、固体粒子、液体粒子(小滴)の寸法を比較するために導入された概念である。小滴およびエアゾール剤に対して、「空気力学的径」および「空気動力学的質量中央粒子径(MMAD)」などの用語が使用される。定義は以下に与える。
【0082】
「空気力学的径」とは、対象の粒子と同じ限界沈降速度を有する単位-密度球の直径である。呼吸器内でこのような粒子がどこに堆積するかを予測するために使用される。
【0083】
「空気動力学的質量中央粒子径」は、幾何平均空気力学的径である。50重量パーセントの粒子はMMADより小さく、50重量%の粒子はより大きい。
【0084】
粒径測定の実験中、懸濁液は、動いている異なるサイズの無数の数の粒子を含有する。粒径測定機器がこれらの粒子を分析する場合、この機器は、粒子分布曲線を形成し、この曲線は、1nmともなり得る最も小さな粒子から出発して、100μmともなり得る最も大きな粒子まで全粒径範囲を包含する。粒径分布曲線では、累積的頻度を粒子に対して計算する。D10は、懸濁液中の10%の数の粒子がこの特定の粒子直径より小さな直径または等しい直径を有するという特定の粒子直径を指す。
【0085】
50:D10と同様に、D50は、製剤中の粒子集団の50%に対するカットオフ直径であり、懸濁液中の50%の粒子が、この特定の粒子直径より小さな直径または等しい直径を有するという特定の粒子直径を指す。
【0086】
90:D90は、製剤中の粒子集団の90%に対するカットオフ直径であり、懸濁液中の90%の粒子が、この特定の粒子直径より小さな直径または等しい直径を有するという特定の粒子直径を指す。
【0087】
「呼吸器官」という用語は、呼吸において機能する細胞および器官の系を意味するとみなされるものとし、特に、呼吸器の器官、組織および細胞は、肺、鼻、鼻道、副鼻腔、上咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支、呼吸器の細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞、肺細胞(1型および2型)、繊毛粘膜上皮、粘膜上皮、扁平上皮細胞、肥満細胞、杯細胞、および上皮内樹状細胞を含む。
【0088】
本発明の1つの形態では、治療有効量または予防有効量の吸入用抗生剤および治療有効量または予防有効量の少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される方法。
【0089】
本発明の1つの形態では、治療有効量の吸入用抗生剤および治療有効量の少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を処置する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される方法。
【0090】
本発明の1つの形態では、予防有効量の吸入用抗生剤および予防有効量の少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を、それぞれ1回または複数回の投与で投与することにより対象の肺内の細菌感染症を予防する方法であって、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される方法。
【0091】
本発明の1つの形態では、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防する方法は、このような処置を必要とする対象の肺内の細菌感染症を処置または予防することを含む。
【0092】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の投与レジメンに従い投与された場合、所望の治療効果を少なくとも部分的に達成する、あるいは感染症および/またはこれに伴う炎症の開始を遅延させる、または進行を阻害する、開始もしくは進行を部分的にもしくは完全に停止するのに十分な製剤の量を意味する。治療有効量は、感染症の開始を遅延する、または進行を阻害する、開始もしくは進行を部分的にもしくは完全に停止する、あるいは病原体微生物(複数可)の抗菌剤感受性を反転または部分的に反転させることをさらに包含し得る。
【0093】
「予防有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の投与レジメンに従い投与された場合、微生物感染および/またはこれに伴う炎症を少なくとも部分的に予防する、またはその開始を遅延させるのに十分な製剤の量を意味する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」は、疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発症またはその臨床的または無症候性症状の少なくとも1つを止めるまたは低減させることを指す。「処置する」または「処置」は、疾患または状態を軽減すること、すなわち、疾患または状態またはその臨床的または無症候性症状の少なくとも1つの退縮を引き起こすことをさらに指す。処置することになる対象に対するメリットは、対象および/または医師にとって統計学的に有意であるか、または少なくとも知覚可能である。細菌感染症を処置する状況で、処置という用語は、細菌および/または細菌の増殖による定着を低減または排除することを含み、バイオフィルム形成を低減させるまたは現存するバイオフィルムを破壊することを含む。
【0095】
上記に基づき、複数の異なる処置および投与の手段を使用して単一の対象を処置することができることは、当業者であれば理解している。よって、このような薬物、例えば、静脈内シプロフロキサシンまたは抗生剤などの投与をすでに受けている対象は、本発明の製剤の吸入から恩恵を受けることができる。一部の対象は、抗生剤と組み合わせて、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤の投与を、吸入により受けることができる。このような対象は、嚢胞性線維症の症状を有してもよいし、肺感染症を有すると診断されていてもよいし、または少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤を抗生剤と組み合わせて対象に投与することから恩恵を受け得る症状である医学的状態の症状を有していてもよい。本発明はまた診断用に使用することもできる。一実施形態では、例えば、対象は、肺感染症を診断するための手順の一部として、キレート剤および/または抗生剤の投与を受けることができ、この場合、対象の症状の1つまたは複数が、キレート剤および/または抗生剤に応答して改善する。
【0096】
[製剤]
吸入用製剤は吸入用のエアゾール剤または乾燥粉末形態、または吸入用の噴霧形態であってよい。好ましくは、製剤は肺内の感染症を処置または予防するための吸入に適応している。
【0097】
キレート剤および抗生剤のそれぞれは、1つの単一製剤、または2つまたはそれより多くの別個の製剤で送達することができる。キレート剤および抗生剤のそれぞれは、例えば、ドライパウダー吸入器の数回のパフで送達することができる。
【0098】
キレート剤および抗生剤は、1つの単一製剤、または2つの別個の製剤で送達することができる。製剤が別個である場合、製剤は一緒に(同時に)、または逐次的に摂取してもよい。2種の活性物質の製剤の送達の間に、数秒、数分、数時間または数日の一時的なずれがあってもよい。
【0099】
本発明の組成物は、パファーにより(加圧された定量式吸入器、ドライパウダー吸入器)またはネブライザーにより送達することができる。組成物が1つのデバイス(すなわち、1つのデバイス内にキレート剤と抗生剤の両方)で提供されてもよいし、または2種の活性物質が2つの異なるデバイスから送達されてもよい。例えば、2種の活性物質は、各デバイス内に1種の活性物質を含んだ、2つの別個のパファーで、2つの別個のネブライザーで、またはパファーとネブライザーで送達されてもよい。
【0100】
吸入用キレート剤および吸入用抗生剤は、酸性化亜硝酸の非存在下で提供することができる。
【0101】
一実施形態では、キレート剤はキレート剤のカルシウム塩である。好ましくは、キレート剤はCaEDTAである。
【0102】
好ましくは、キレート剤は、37.5mg/投与~300mg/投与の間、約75mg/投与~200mg/投与の間、約75mg/投与~100mg/投与の間、約50mg/投与~200mg/投与の間;好ましくは約37.5mg/投与、50mg/投与、75mg/投与、100mg/投与、200mg/投与または300mg/投与を含有する吸入用投与形態で提供される。キレート剤は、少なくとも37.5mg/投与を含有する吸入用投与形態で好ましくは提供される。
【0103】
1日当たり吸入されるキレート剤総量は、好ましくは約37.5mg/日~1,200mg/日の間、約50mg/日~1,200mg/日の間、約100mg/日~1,000mg/日の間、約300mg/日~900mg/日の間、約400mg/日~800mg/日の間;好ましくは約300mg/日、500mg/日または600mg/日、または少なくとも600mg/日である。キレート剤は、約1,200mg/日まで、好ましくは少なくとも37.5mg/日の全用量を投与することができる。
【0104】
吸入用キレート剤は、1回の送達当たり、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分、30分、20分、15分、10分または5分以下の期間にわたり好ましくは送達される。投与が乾燥粉末投与による場合、吸入用キレート剤は、数秒の期間、例えば、エアゾール剤デバイスまたはドライパウダー吸入器の「パフ」1回当たり1秒にわたり好ましくは送達され、各時間点で、1回または複数回のパフが投与される。
【0105】
例えば、50mg投与のCaEDTAは、4mLの33mM噴霧用溶液として投与することができる(分子質量C1012CaNNaは274.27g/モルである)。同様に、75mgの投与が50mMで4ml投与されてもよいし、または100mgの投与が66mMで4ml投与されてもよい。
【0106】
好ましくは、抗生剤はトブラマイシンである。
【0107】
一実施形態では、抗生剤は、10mg/投与~500mg/投与の間、約50mg/投与~400mg/投与の間、約100mg/投与~400mg/投与の間、約200mg/投与~300mg/投与の間;好ましくは約10mg/投与、20mg/投与、30mg/投与、50mg/投与、200mg/投与、250mg/投与、200mg/投与または300mg/投与を含有する吸入用投与形態で提供される。
【0108】
1日当たり吸入される抗生剤の総量は、好ましくは約10mg/日~2,000mg/日の間、10mg/日および1,000mg/日、50mg/日および2,000mg/日、250mg/日および2,000mg/日、約300mg/日~1,100mg/日の間、約500mg/日~1,000mg/日の間、約800mg/日~1,000mg/日の間;好ましくは約200mg/日、300mg/日、500mg/日、1,000mg/日または1,250mg/日である。
【0109】
吸入用抗生剤の投与は、投与1回当たり、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分、30分、20分、15分、10分、または5分以下の期間にわたり好ましくは投与される。投与が乾燥粉末送達による場合、吸入用抗生剤は、数秒の期間、例えば、エアゾール剤デバイスまたはドライパウダー吸入器の「パフ」1回当たり1秒にわたり好ましくは投与され、各時間点で、1回または複数回のパフが投与される。
【0110】
好ましくは、キレート剤および/または抗生剤は、必要とする対象に、1日当たり約1回~1日当たり約6回の間、より好ましくは1日当たり約2回投与される。
【0111】
代わりに、キレート剤および/または抗生剤は、必要とする対象に、連続的な吸入を介して、ネブライザーを介して投与することができる。噴霧用製剤は、8時間、6時間、4時間、2時間または1時間送達することができ、これらの送達のそれぞれは、24時間の期間以内に数回繰り返すことができる。
【0112】
本発明の製剤は、使い捨てパッケージおよび携帯用、手持ち式、電池式デバイス、例えば、AERxデバイスなどを使用して対象に投与することができる(米国特許第5,823,178号、Aradigm、Hayward、Calif.)。代わりに、本発明の製剤は、機械的(非電子)デバイスを使用して行うこともできる。従来のジェット式ネブライザー、超音波ネブライザー、ソフトミスト吸入器、ドライパウダー吸入器(DPI)、定量式吸入器(MDI)、凝縮エアゾール剤発生器、および他のシステムを含めた他の吸入デバイスを使用して製剤を送達することができる。
【0113】
エアゾール剤としての使用のため、本発明の化合物は、溶液または懸濁液中で、加圧したエアゾール剤容器に、従来のアジュバントと共に、適切な噴霧剤、例えば、プロパン、ブタン、またはイソブタンなどの炭化水素噴霧剤などと一緒に包装することができる。ドライパウダー吸入器は、極小容量に圧縮された医薬製剤の乾燥粉末粒子を生成する加圧した空気の供給源を用いて動作可能なシステムである。吸入のため、システムは、単回用量の医薬製剤および単回用量を放出するための選択要素をそれぞれ含有する複数のチャンバーまたはブリスタ-を有する。
【0114】
エアゾール剤は、膜の細孔に薬物を押し通すことにより作り出すことができ、この細孔は約0.25~6μmの範囲のサイズを有する(米国特許第5,823,178号)。細孔がこのサイズを有する場合、細孔を介して脱出してエアゾール剤を作り出す粒子は、0.5~12μmの範囲の直径を有することになる。薬物粒子は、粒子をこのサイズ範囲内に保つことを意図した気流と共に放出することができる。小粒子の生成は、約800~約4000キロヘルツの範囲の振動周波数を提供する振動デバイスの使用により促進することができる。一部の調節は、パラメーター、例えば、薬物が放出される細孔のサイズ、振動周波数、圧力、および製剤の密度および粘度に基づく他のパラメーターなどにおいて行うことができることを、当業者であれば認識しているが、一部の実施形態の目的は約0.5~12μmの範囲の直径を有するエアゾール化した粒子を提供することであることに留意されたい。
【0115】
[賦形剤]
本明細書に記載されている製剤の上記で例示された形態は、製剤科学の当業者に周知の方法で製造することができる。さらに、本明細書に記載されている製剤は、本明細書に記載されている製剤の製造および/または投与に役立つ他の任意選択の賦形剤を含むことができる。このような賦形剤の非限定的例は当技術分野で周知であり、製剤の製造および/または投与に役立つ、香味剤、着色剤、パラタント、抗酸化剤、粘度調整剤、等張化剤、薬物担体、持続放出剤、快適助長剤、乳化剤、可溶化補助剤、滑沢剤、結合剤および他の安定化剤を含む。
【0116】
好ましくは、本発明の製剤は滅菌である。別の実施形態では、本発明の製剤は安定している。
【0117】
さらに、緩衝剤を加えて、製剤のpHレベルを調節することができる。好ましくは、本発明の製剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、これはTHAMとしても公知、またはトロメタミン)を緩衝剤として含有する。TRISは、EDTAによる細菌死滅作用を増加させるさらなる作用を有し得る。好ましくは、TRISは、製剤を緩衝すること、細菌感染症の処置または予防におけるEDTAおよび/または抗生剤の有効性を増加させること、両方のために本発明の製剤に加える。
【0118】
さらに、本発明の製剤は、抗菌性保存剤を含有することができる。
【0119】
好ましくは、本発明の製剤のpHは、約6.5~8.0の間、より好ましくは約7.0~7.4の間である。細菌は、pHが落下するほど、抗菌性療法に対する耐性が強くなることが以前に判明している。好ましいpHは、製剤、吸入用キレート剤および/または抗生剤に対する菌耐性を回避することを助ける。
【0120】
吸入用キレート剤および吸入用抗生剤は、酸性化亜硝酸の非存在下で提供することができる。
【0121】
1つの代替の実施形態では、本発明の製剤は保存剤、懸濁剤、湿潤剤、等張化剤および/または希釈剤を含み得る。本明細書に提供されている製剤は、吸入の際に生理学的に許容される、約0.01%~約90%、または約0.01%~約50%、または約0.01%~約25%、または約0.01%~約10%、または約0.01%~約5%の1種または複数種の薬理学的に適切な懸濁化流体を含むことができる。本明細書での使用に対して薬理学的に適切な流体は、これらに限定されないが、ヒドロキシル基または他の極性基を含有する化合物を含めた、これらに限定されないが、極性溶媒を含む。溶媒は、これらに限定されないが、水またはアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ならびにプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロールおよびポリオキシエチレンアルコールを含むグリコールなどを含む。極性溶媒はまた、これらに限定されないが、水、1種または複数種の薬学的に許容される塩(複数可)を有する水性生理食塩水、アルコール、グリコールまたはこれらの混合物を含む、プロトン性溶媒を含む。1つの代替の実施形態では、本発明の製剤における使用のための水は、吸入用薬物における使用に対して適用可能な法的要求事項を満たすまたは超えるべきである。
【0122】
一実施形態では、本明細書に記載されている製剤は水性であって、0~90%の水を含有してもよい。他の実施形態では、本明細書に記載されている水性製剤は20~80%の水を含有し得る。さらなる他の実施形態では、水性製剤は50~70%の水を含有し得る。水は、淡水であり、蒸留させた、滅菌の、鉱質除去されたまたは脱イオン化された水をさらに含み得る。
【0123】
代わりに、製剤は、非水性であって、水を含有しないか、またはごくわずかな量の水を含有してもよい(例えば1%未満、0.1%未満、0.01%未満)。
【0124】
一実施形態では、製剤は、1種または複数種の薬学的もしくは生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む。
【0125】
殺菌に加えてまたは殺菌の代わりに、本発明の製剤は微生物の夾雑の可能性を最小化するために薬学的に許容される保存剤を含有することができる。さらに、薬学的に許容される保存剤を本発明の製剤に使用して、製剤の安定性を増加させることができる。しかし、処置した組織は刺激剤に対して感受性があり得るので、吸入の安全性に対して任意の保存剤を選択しなければならないことに注目されたい。本明細書での使用に対して適切な保存剤は、これらに限定されないが、病原体の粒子との夾雑から溶液を保護するものを含み、フェニルエチルアルコール、塩化ベンズアルコニウムもしくは安息香酸、または安息香酸塩、例えば、安息香酸ナトリウムなどおよびフェニルエチルアルコールが含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書の製剤は約0.001%~約10.0%w/wの塩化ベンズアルコニウム、または約0.01%v/wのフェニルエチルアルコールを含む。保存剤はまた、約0.001%~約1%、好ましくは約0.002%~約0.02%、より好ましくは0.02%w/wの量で存在し得る。
【0126】
本明細書に提供されている製剤はまた、約0.001%~約90%、または約0.001%~約50%、または約0.001%~約25%、または約0.001%~約10%、または約0.001%~約1%の1種または複数種の乳化剤、湿潤剤、または懸濁剤を含んでもよい。本明細書の使用するためのこのような薬剤は、これらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはポリソルベート、例えば、これらに限定されないが、ポリエチレンモノオレイン酸ソルビタン(ポリソルベート80)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)トリステアリン酸ソルビタン)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸ソルビタンを含めたもの;レシチン;寒天;カラギーナム;ローカストビーンガム;グアーガム;トラガント;アカシア;キサンタンガム;インドゴム;ペクチン;アミド化したペクチン;アンモニウムホスファチド;微結晶性セルロース;メチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;エチルメチルセルロース;カルボキシメチルセルロース;脂肪酸のナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酒石酸エステル;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのモノアセチル酒石酸エステルおよびジアセチル酒石酸エステル;脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの混合した酢酸および酒石酸エステル;脂肪酸のスクロースエステル;スクログリセリド;脂肪酸のポリグリセロールエステル;ヒマシ油のポリ凝縮脂肪酸のポリグリセロールエステル;脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル;ナトリウムステアロイル-21アクリレート(actylate);カルシウムステアロイル-2-ラクチレート;ステアロイル酒石酸塩;モノステアリン酸ソルビタン;トリステアリン酸ソルビタン;モノラウリン酸ソルビタン;モノオレイン酸ソルビタン;モノパルミチン酸ソルビタン;キラヤ抽出物;大豆油の二量体化脂肪酸のポリグリセロールエステル;酸化的重合した大豆油;およびペクチン抽出物を含む。
【0127】
本発明の製剤は、粘膜の乾燥を阻害し、刺激を予防するための約0.001重量%~約5重量%の保湿剤を含み得る。ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールまたはその混合物を含めた、様々な薬学的に許容される保湿剤のいずれも利用することができる。
【0128】
本発明の製剤は、気管支拡張剤、別の抗炎症剤、界面活性剤、アスピリン、またはエチルアルコールなどのアジュバントをさらに含み得る。
【0129】
本発明の製剤に場合によって使用されている気管支拡張剤は、これらに限定されないが、β-アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、アルブテロール、バンブテロール、サルブタモール、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、レボサルブタモール、プロカテロール、インダカテロール、カルモテロール、ミルベテロール、プロカテロール、テルブタリンなど)、および抗ムスカリン(例えば、トロスピウム、イプラトロピウム、グリコピロニウム、アクリジニウムなど)を含む。薬物の組合せを使用することができる。
【0130】
本発明の製剤に場合によって使用してもよい追加の抗炎症剤は、これらに限定されないが、吸入用コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルチカゾン、エチプレドノール、モメタゾンなど)、ロイコトリエン受容体アンタゴニストおよびロイコトリエン合成阻害剤(例えば、モンテルカスト、ジレウトン、イブジラスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、アメルバント、タイペルカストなど)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、インドメタシン、ナプロキセン、ザルトプロフェン、ロルノキシカム、メロキシカム、セレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ピロキシカム、アンピロキシカム、シンノキシカム、ジクロフェナク、フェルビナク、ロルノキシカム、メサラジン、トリフルサール、チノリジン、イグラチモド、パミコグレルなど)を含む。薬物の組合せを使用することができる。抗炎症剤として作用するアスピリンもまた加えることができる。
【0131】
抗酸化剤、例えば、グルタチオンおよびビタミンE、亜鉛およびEDTAの亜鉛塩などを加えることができる。
【0132】
本発明により包含される界面活性剤は、これらに限定されないが、合成界面活性剤(Exosurf(登録商標))、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびオレイン酸を含む。薬物の組合せを使用することができる。
【0133】
エチルアルコール蒸気は、肺内で消泡剤として作用し、痰をより液状化させ、これによって、呼吸を補助し、肺浮腫を低減させることができる。エタノールを本発明の製剤に、0.5%~60%の間、より好ましくは1~40%の間、1~20%の間、または1~10%の間になるように加えることができる。エタノールを、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または60%になるように加えることができる。
【0134】
本発明はまた、吸入用抗生剤と組み合わせて使用される吸入用キレート剤の使用であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が、吸入を介して投与される他の薬物とさらに組み合わせて、8時間以下の期間にわたり投与される使用に関する。これら他の薬物は、適切な送達ベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターなどに組み込まれてもよいヌクレオチド配列を含むことができる。他の薬物は、治療用ヌクレオチド配列(DNA、RNA、siRNA)、粘液の粘弾性を低減させる酵素、例えば、DNaseおよび他の粘液溶解剤など、塩素イオンチャネルを上方調節するもしくは細胞を横断するイオンの流動を増加させる化学物質、ニコチン、P2Y2アゴニスト、例えば、α-1アンチトリプシン(AAT)を含むエラスターゼ阻害剤、N-アセチルシステイン、抗生剤およびカチオン性ペプチド、例えば、ランチビオティック、具体的には、デュラマイシン、短時間作用性気管支拡張剤(例えば、β2-アドレナリン受容体アゴニスト様アルブテロールまたはインダカテロール)、M3ムスカリンアンタゴニスト(例えば、イプラトロピウム臭化物)、K-チャネルオープナー、長時間作用性気管支拡張剤(例えば、ホルモテロール、サルメテロール)、ステロイド(例えば、ブデソニド、フルチカゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、シクレソニドなど)、キサンチン、ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテルカストナトリウム)、ホスホジエステラーゼ4阻害剤、アデノシン受容体アンタゴニスト、他の様々な抗炎症剤(例えば、Sykキナーゼ阻害剤(AVE-0950)、トリプターゼ阻害剤(AVE-8923およびAVE-5638)、タキキニンアンタゴニスト(AVE-5883)、誘導性一酸化窒素シンターゼ阻害剤(GW-274150)およびその他)、転写因子デコイ、TLR-9アゴニスト、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、DNA、CGRP、リドカイン、逆β2-アゴニスト、抗感染酸化治療法、サイトカインモジュレーター(例えば、CCR3受容体アンタゴニスト(GSK-766994、DPC-168、AZD-3778)、TNF-α産生阻害剤(LMP-160およびYS-TH2)、ならびにIL-4アンタゴニスト(AVE-0309))、IgEの小分子阻害剤、細胞接着分子(CAM)阻害剤、小分子を標的とするVLA4受容体もしくはインテグリン.アルファ.4.β.1(例えば、R-411、PS-460644、DW-908eおよびCDP-323)、カルシニューリンの阻害によりT細胞シグナル伝達を遮断するものを含む免疫調節物質(タクロリムス)、ヘパリン中和剤(タラクトフェリンα)、サイトゾルのPLA2阻害剤(Efipladib)、またはその組合せであってよい。必要とする対象がCFを有する場合、対象にはまた、標準的な実施に従い、本発明の製剤と組み合わせて、標準的薬物、例えば、イバカフトル、プルモザイム、マンニトールなど、または他の承認薬物も投与することができる。
【0135】
組合せ生成物の送達は、薬物を合わせて1つの安定した製剤にする、または投与の時点で合わせることになる別個の容器内の薬物を提供する、または代わりに逐次的に生成物を送達することにより達成することができる。
【0136】
好ましくは、本発明の製剤は安定している。本明細書で使用される場合、本明細書に提供されている製剤の安定性とは、所与の温度で、原薬、例えば、キレート剤および抗生剤の最初の量の少なくとも80%、85%、90%または95%が製剤中に存在する時間の長さを指す。例えば、本明細書に提供されている製剤は、約15℃~約30℃の間で貯蔵されてもよく、少なくとも1、2、12、18、24または36カ月の間依然として安定している。また、製剤は、25℃での、1、2、12、18、24または36カ月超の貯蔵後、必要とする対象への投与に対して適切となり得る。また、別の代替の実施形態では、Arrhenius速度論を使用して、約15℃~約30℃の間での1、2、12、18、24または36カ月超の製剤の貯蔵後も、原薬(例えば、キレート剤および抗生剤)の最初の量の80%超、または85%超、または90%超、または95%超が残存する。
【0137】
本明細書で使用される場合、製剤が「長期貯蔵」の間安定しているという記述は、製剤が25℃において少なくとも1、2または3カ月の利用時間の、予測された貯蔵寿命および5℃において少なくとも1、2または3年の貯蔵時間またはこれと等しい貯蔵時間を有する場合、製剤はそれを必要とする対象への投与に対して適切であることを意味する。本明細書のある特定の実施形態では、Arrhenius速度論を使用して、このような貯蔵後、>80%または>85%または>90%または>95%のキレート剤および抗生剤は残存することが予測される。
【0138】
「感染症」という用語は、本明細書で使用される場合、微生物による定着および/または微生物、特に、細菌の増殖を意味する。細菌は、グラム陰性、例えば、シュードモナス属のメンバーなど、またはグラム陽性、例えば、黄色ブドウ球菌などであってもよい。感染症は明白ではなかったり、または局所的な細胞損傷をもたらしたりすることもある。感染症は、局所的で、無症候性であることもあり、一時的にまたは代わりに、拡大して拡散することにより、急性または慢性の臨床感染にもなり得る。感染症はまた、緑膿菌の嫌気性増殖に伴うタンパク質からの残余抗原、または代わりに緑膿菌タンパク質のタンパク質またはそこからのペプチドから単離するために結合する反応性宿主抗体が宿主内に残存する過去の感染症でもあり得る。感染症はまた、微生物は対象内に存在するが、対象がこの生物に伴う疾患の症状を示さない潜在的感染症でもあり得る。好ましくは、感染症は呼吸器感染症であり、好ましくは、緑膿菌で引き起こされる呼吸器感染症である。
【0139】
[医薬を製造するための方法]
本発明は、感染症の処置のための医薬を製造するための吸入用キレート剤の使用であって、吸入用キレート剤が吸入用抗生剤と組み合わせて使用され、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される使用を提供する。
【0140】
本発明は、感染症の処置のための医薬を製造するための吸入用抗生剤の使用であって、吸入用抗生剤が吸入用キレート剤と組み合わせて使用され、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される使用を提供する。
【0141】
本発明は、感染症の処置のための医薬を製造するための吸入用キレート剤および吸入用抗生剤の使用であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与される使用を提供する。好ましくは、医薬は酸性化亜硝酸を含有しない。
【0142】
好ましくは、キレート剤は、37.5mg/日~1,200mg/日の間までの全用量が毎日1~4回の間投与される。好ましくは、キレート剤は、1時間以下の期間にわたり投与される。好ましくは、キレート剤はCaEDTAである。
【0143】
好ましくは、抗生剤は、約10mg/日~2,000mg/日の間、好ましくは1,000mg/日までの全用量が毎日1~4回の間投与される。好ましくは、抗生剤を含有する製剤は、1時間以下の期間にわたり投与される。好ましくは、抗生剤はトブラマイシンである。
【0144】
[キット]
本発明は、(i)少なくとも37.5mgの吸入用キレート剤と、(ii)使用のための指示であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が吸入用抗生剤と共に送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与されることを定める指示とを含有する、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防するためのキットを提供する。
【0145】
本発明は、(i)吸入用抗生剤と、(ii)使用のための指示であって、抗生剤が少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤と共に送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与されることを定める指示とを含有する、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防するためのキットを提供する。
【0146】
本発明は、(i)少なくとも37.5mgの吸入用キレート剤および吸入用抗生剤と、(ii)使用のための指示であって、少なくとも37.5mg/日の吸入用キレート剤が送達され、キレート剤および/または抗生剤のその投与または各投与が8時間以下の期間にわたり投与されることを定める指示とを含有する、対象の肺内の細菌感染症を処置または予防するためのキットを提供する。
【0147】
好ましくは、吸入用キレート剤および/または吸入用抗生剤は、酸性化亜硝酸の非存在下で提供される。
【0148】
好ましくは、キレート剤は、毎日1~4回の間、37.5mg/日~1,200mg/日の間までの全用量が投与される。好ましくは、キレート剤は、1時間以下の期間にわたり投与される。好ましくは、キレート剤はCaEDTAである。
【0149】
好ましくは、抗生剤は、毎日1~4回の間、約10mg/日~2,000mg/日の間、好ましくは1,000mg/日までの全用量が投与される。好ましくは、抗生剤を含有する製剤は、1時間以下の期間にわたり投与される。好ましくは、抗生剤はトブラマイシンである。
【0150】
キレート剤および/または抗生剤は予め測定され、プレミックスされ、および/または予め包装されていてもよい。好ましくは、吸入溶液は滅菌されている。
【0151】
本発明のキットはまた、ユーザーコンプライアンスを促進するように設計された指示を含み得る。指示とは、本明細書で使用される場合、任意のラベル、添付文書などを指し、包装材料の1つもしくは複数の表面上に配置してもよいし、または指示は別個のシート上、もしくはその任意の組合せで提供することができる。例えば、一実施形態では、本発明のキットは、本発明の製剤を投与するための指示を含む。一実施形態では、指示は、本発明の製剤が肺感染症の処置に対して適切であることを示す。このような指示はまた、製剤についての指示、ならびにネブライザーまたはドライパウダー吸入器を介した投与についての指示も含み得る。
【0152】
吸入用キレート剤および抗生剤は、必要に応じて、医師またはユーザーがそれぞれを医薬製剤に製剤化することができるよう個々に包装することができる。代わりに、吸入用キレート剤および抗生剤を含む医薬製剤を一緒に包装することができ、よって、医師またはユーザーによるデミニマス製剤が必要となる。いずれにしても、包装は、活性成分の化学的、物理的、および見た目に美しい統合性を維持すべきある。
【0153】
[通則]
当業者であれば、本明細書に記載されている本発明は、具体的に記載されているもの以外の変更形態および修飾形態の可能性があることを認識している。本発明は、すべてのこのような変更形態および修飾形態を含む。本発明はまた、明細書において言及されたまたは示されたステップ、特徴、製剤および化合物のすべてを、個々にまたは総合的に、ならびにいずれかのおよびすべての組合せまたはいずれか2つのもしくはそれより多くのステップまたは特徴を含む。
【0154】
本テキストに引用された各文書、参考文献、特許出願または特許は、それら全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれており、これは、それがリーダーによりこのテキストの一部として読み取られ、考えられるべきであることを意味する。本テキストで引用された文書、参考文献、特許出願または特許が本テキストで繰り返されていないということは、単に簡潔さの理由によるものである。
【0155】
本明細書中に記述されている任意の製品に対するまたは本明細書で参照により組み込まれている任意の文書における、任意の製造業者の指示、説明、製品明細書、および製品シートは、本明細書によって参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施において利用することができる。
【0156】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態のいずれかによっても、範囲が限定されないものとする。これらの実施形態は、例証のみの目的を意図する。機能的に同等の製品、製剤および方法は明確に、本明細書に記載されているように本発明の範囲内である。
【0157】
本明細書に記載されている本発明は、1つまたは複数の範囲の値(例えば、サイズ、置換および磁界の強さなど)を含むことができる。値の範囲とは、範囲内のすべての値を含むと考えられ、これには、その範囲を定義する値、および範囲に対する境界を定義する値に直ちに隣接する値と同じまたは実質的に同じ結果をもたらす範囲に隣接する値が含まれる。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲に記載の数値的パラメーターは、本発明により得ようとされる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。したがって「約80%」とは、「約80%」、さらに「80%」も意味する。少なくとも、各数値的パラメーターは、有効桁数および普通の四捨五入手法を踏まえて解釈されるべきである。
【0158】
本明細書全体にわたり、文脈により他が必要とされない限り、単語「含む(comprise)」または変化形、例えば、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」は、述べられている整数または整数の群の包含を意味すると考えられているが、任意の他の整数または整数の群を排除するものではない。本開示および特に特許請求の範囲および/または段落の中で、「含む(comprises)」、「含んだ(comprised)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は、米国特許法に帰属する意味を有することができる。例えば、これらは、「含む(includes)」、「含まれた(included)」、「含んでいる(including)」などを意味することができ、「本質的に~からなっている(consisting essentially of)」および「本質的に~からなる(consists essentially of)」などの用語は米国特許法に帰する意味を有し、例えば、これらは、明示的に列挙されていない要素を許容するが、従来の技術に見出される、または本発明の基本的もしくは新規の特徴に影響を与える要素を排除することにも注目されたい。
【0159】
本明細書で使用されている、選択された用語に対する他の定義は、発明の詳細な説明の中に見出すことができ、全体にわたり適用される。他に定義されない限り、本明細書で使用されているすべての他の科学用語および技術用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されているものと同じ意味を有する。「活性剤」という用語は、1種の活性剤を意味してもよいし、または2種もしくはそれより多くの活性剤を包含してもよい。
【0160】
以下の実施例は、上に記載された発明を使用する方式をより完全に記載するよう、ならびに本発明の様々な態様を実行するために想定される最も良いモードを記載するように機能する。これらの方法は、本発明の真の範囲を限定するように機能するわけでは決してなく、むしろ例示的目的のために提示されていることを理解されたい。
【実施例
【0161】
本発明のさらなる特徴は、以下の非限定的例においてより完全に説明される。この説明は、本発明を例証する目的のためだけに含まれている。上記に提示されているような本発明の広範な説明に対する制限として理解されるべきではない。
【0162】
[抗生剤およびアジュバントのマイクロプレート試験]
増殖法1:各ウェルに、緑膿菌株WACC91の一晩培養物200μLを播種することにより、ポリスチレン96-ウェルプレート(Nunc)内の、アルギニンおよびMgSOを補充したM9媒体中で細胞を増殖させ、37℃で24時間インキュベートした。
【0163】
増殖法2:グルコース(0.5%w/v)、カザミノ酸(0.2%w/v)およびMgSO(1mM)を補充したM63媒体中で、緑膿菌の関連株の一晩培養物を35℃で振盪しながら増殖させた。示されているような抗生剤およびアジュバントの段階希釈と共に、M63を含有する96-ウェルマイクロプレートを、最終容量200μl中でOD600nm0.01に植菌した。プレートは、振盪なしで、35℃で一晩インキュベートした。
【0164】
酸素を除去するために、嫌気性サシェ剤と共に、嫌気性培養物を密閉チャンバー内でインキュベートした。
【0165】
浮遊性増殖を、OD読み取りまたはプレートカウンティングによりモニターした。40μlの結晶バイオレット染料(水中1%w/v)を用いて10分間室温で染色し、250μlの水で2回洗浄し、染料を250μlの50%エタノールに溶解し、光学密度を595nmで読み取ることにより、バイオフィルムを定量化した。
【0166】
記載されているように細胞を増殖させ、ピペット操作により浮遊性細胞を除去することにより、バイオフィルムの破壊または死滅をモニターした。付着したバイオフィルムを滅菌PBSで3回慎重に洗浄し、治療薬(トブラマイシン単独で、または溶液中CaNaEDTA、トリス緩衝液と一緒に、または乾燥粉末粒子として)を含有する新鮮培地を加えた。プレートをさらに24時間インキュベートし、代謝活性を測定した。バイオフィルムを上に記載されているように洗浄し、次いで0.02%w/vのレサズリンを含有する新鮮培地を加えた。プレートを素早く振盪させて、混合し、次いで37℃で2時間インキュベートした。レサズリンのレサフリンへの変換により反映される代謝活性を、励起波長530nm、検出590nmでの蛍光の増加を測定することにより評価した。
【0167】
以下の変更とは別に、増殖法1を使用して他の種のチェッカーボード式アッセイを行った。バークホルデリアセパシアを30℃でインキュベートし、他の細菌を37℃でインキュベートした。化膿連鎖球菌および肺炎連鎖球菌をTodd Hewitt Broth中で増殖させ、黄色ブドウ球菌をVeal Infusion Broth中で増殖させた。
【0168】
[実施例1]
高濃度のキレート剤は、緑膿菌浮遊性細胞およびバイオフィルムに対するトブラマイシンの効力を増強する
EDTAは、ずっと低い濃度の抗生剤に対して細菌が感受性を有するようにすることができる。緑膿菌WACC91の細胞を方法1に従い増殖させて、異なる濃度のトブラマイシンおよびCaEDTAに対してチェッカーボード式アッセイで試験した。
【0169】
図1は、有酸素性条件で増殖させた緑膿菌浮遊性細胞に対して、CaEDTAが、トブラマイシンのMICを引き下げ、この作用がトリス緩衝により増強されることを示している。図2は、CaEDTAが緑膿菌バイオフィルム形成を遮断するのに必要なトブラマイシンの濃度を引き下げることを示している。多くの抗生剤は、代謝がより遅いことが原因で、嫌気性条件下での働きが非常に乏しい。これは、嚢胞性線維症を有する患者の慢性肺感染症における際だった難題であり、この場合、細菌はトラップされた気道粘液の嫌気性ポケットの内側にバイオフィルムを形成する。図3および4は、図1および2に見られる作用が嫌気性条件下で、特に緩衝型CaEDTAに対して維持されることを実証している。
【0170】
下位MIC濃度において、トブラマイシンおよび他の抗生剤が緑膿菌におけるバイオフィルム形成を実際に増加させることは、過去の刊行物から知られている(Hoffman,L.R.、D’Argenio,D.A.、MacCoss,M.J.、Zhang,Z.、Jones,R.A.およびMiller,S.I.(2005年)。「Aminoglycoside antibiotics induce bacterial biofilm formation.」Nature、436巻、1171~1175頁;Jones,C.、Allsopp,L.、Horlick,J.、Kulasekara,H.およびFilloux,A.(2013年)「Subinhibitory concentration of kanamycin induces the Pseudomonas aeruginosa type VI secretion system」PLoS One 8、e81132.)。図5は、実際にトブラマイシン単独に対する事例であるが、CaEDTAを加えると、作用は反転し、有酸素性条件と嫌気性条件の両方で浮遊性およびバイオフィルム成長が低減することを示している。新規バイオフィルムの形成を予防することに加えて、図6は、代謝活性で測定した場合、CaEDTAが現存する緑膿菌バイオフィルムに対するトブラマイシンの効力を増加させることをさらに示している。
【0171】
[実施例2]
高濃度のキレート剤は、緑膿菌に対する一連の異なる抗生剤の抗菌効力を増強する
過去の実施例に見られる作用は、アミノグリコシドクラスの抗生剤に属する抗生剤トブラマイシンに特異的ではない。方法2に従い細胞を増殖させ、緩衝型CaEDTAおよび一連の臨床的に関連する、異なる作用形態を有する、異なるクラスの抗生剤を用いてチャレンジした。図7~12は、緩衝型CaEDTAが、抗生剤メチシリン(ベータラクタム、図7)、カルベニシリン(カルボキシペニシリン、図8)、テトラサイクリン(テトラサイクリン、図9)、アズトレオナム(モノバクタム;製品Azactam、図10)、エリスロマイシン(マクロライド、図11)、およびコリスチン(ポリミキシン、図12)の、示されているような緑膿菌浮遊性細胞およびバイオフィルムの感受性を増加させることを示している。
【0172】
[実施例3]
異なるキレート剤は、緑膿菌に対するトブラマイシンの効力を増強する
過去の実施例で観察されたように、抗生剤感受性に対するキレート化の作用は、キレート剤EDTAに限定されるものではない。方法2に従い細胞を増殖させ、異なる濃度のトブラマイシンでチャレンジした。図13および14は、エチレングリコール四酢酸(EGTA)およびジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)もまた、EDTAに対して観察されたものと同様の濃度依存性方式で、緑膿菌に対するトブラマイシンのMICを低減させることを示している。
【0173】
[実施例4]
高濃度のキレート剤は、様々な細菌性種に対する抗生剤の効力を増強する
キレート剤によって抗生剤に対し細菌が感受性になるのは、緑膿菌に特異的なことではなく、様々な他の細菌性種に対して実証されている。図15~21は、ヒトにおいて肺感染症を引き起こすことが知られている異なる種の細菌が、緩衝型CaEDTAの存在下で臨床的に関連する抗生剤に対して感受性になることを示している。この作用はグラム陰性細菌とグラム陽性細菌の両方に見られ、多くの場合、非常に異なる抗菌剤に応答する。
【0174】
バークホルデリアセパシアは、嚢胞性線維症を有する患者において重篤な呼吸器感染を引き起こす可能性があるグラム陰性細菌である(Silva Filho,L.V.、Ferreira Fde,A.、Reis,F.J.、Britto,M.C.,Levy、C.E.,Clark、O.およびRibeiro,J.D.(2013年)「Pseudomonas aeruginosa infection in patients with cystic fibrosis:scientificevidence regarding clinical impact、diagnosis、andtreatment.」J Bras Pneumol、39巻、495~512頁)。図15および16は、2つの異なるクラスの抗生剤、すなわちトブラマイシン(アミノグリコシド)およびシプロフロキサシン(フルオロキノロン)に対するセパシア菌のMICが緩衝型CaEDTAの存在下で引き下げられることを示している。図17は、別のグラム陰性の肺の病原体である肺炎桿菌の浮遊性細胞(図17A)およびバイオフィルム(図17B)が、緩衝型CaEDTAの存在下で、抗生剤コリスチンに対して感受性になることを示している。
【0175】
グラム陽性細菌に対して、図18~21は、緩衝型CaEDTAの存在下で、テトラサイクリンに対する化膿連鎖球菌(図18)、バンコマイシンに対する黄色ブドウ球菌MRSA(図19)、ならびにシプロフロキサシンに対するMSSA(図20)およびMRSA(図21)の浮遊性細胞およびバイオフィルムに対するMIC値の低減を示している。
【0176】
[実施例5]
高濃度のキレート剤は抗生剤による細菌の死滅を増加させる
過去の実施例は、キレート剤が、単独での抗生剤の濃度より低い抗生剤の濃度で、浮遊性細胞およびバイオフィルムの成長を阻止できることを実証している。これは、恐らく抗生剤による死滅の増加の結果である。チャレンジ微生物を固体寒天上で増殖させ、0.9%塩化ナトリウム(SCI)中に懸濁させて、チャレンジ懸濁液を作り出した。次いで、およそ1×10コロニー形成単位を含有する、0.1mLアリコートのチャレンジ懸濁液を、示されているような適当な抗生剤または抗生剤とキレート化剤を有する10mLのCation-Adjusted Mueller Hinton Broth(CaMHB)に植菌し、十分に混合した。次いで、チャレンジ懸濁液/抗生剤混合物を35℃で曝露時間の間インキュベートした。各時間点において、0.1mLアリコートを取り出し、プロダクト中和剤を有する9.9mLのButterfieldリン酸緩衝液に入れ、ボルテックスにより十分に混合し、適当な寒天を使用してプレーティングした。手動計数器を使用して回収したコロニーを数えた。
【0177】
図21は、セフタジジムによる緑膿菌の死滅が、緩衝型CaEDTAの存在下でずっと急速になることを示している。図22はセパシア菌に対するメロペネムの同様の作用を示している。
【0178】
[実施例6]
高濃度の噴霧用または乾燥粉末キレート剤は、現実的な条件で成長させた緑膿菌バイオフィルムに対してトブラマイシンによる死滅を増強させる
吸入用治療薬の製剤は噴霧溶液および乾燥粉末を含む。乾式粉砕によりCaEDTA乾燥粉末を調製して、標準的デリバリーデバイスにより分散させることができるサブミクロンサイズの粒子を生成した。
【0179】
上皮細胞株から収集した嚢胞性線維症粘液の懸濁液滴を使用して、現実的なin vitroモデルにおいてバイオフィルムを成長させた(Haley,C.L.、Colmer-Hamood,J.A.およびHamood,A.N.(2012年)「Characterization of biofilm-like structures formed by Pseudomonasaeruginosa in a synthetic mucus medium」BMC Microbiol、12巻、181頁)。緑膿菌臨床株(MICトブラマイシン>256μg/ml)の培養物は、栄養素制限を模倣する炭素源なしで、M63中で増殖させて後期静止相に移行させた。
【0180】
数滴の粘液(5μl)を反転させたIBIDIカバースリップから懸濁させ、10 cfuを植菌し、次いで、加湿環境で、35℃で72時間インキュベートして、バイオフィルムを発生させた。次いで、液滴を、噴霧用トブラマイシン(20mg/ml)、エアゾール化EDTA粒子(10mg/ml)のいずれか、または両方で、5分間処理した。対照を噴霧用0.9%生理食塩水/水の50/50溶液で処理した。処理後、液滴を16時間インキュベートし、次いでBacLight LIVE/DEAD(1μl)で染色し、パラホルムアルデヒド蒸気で30分間固定した。共焦点顕微鏡を使用して、バイオフィルムを視覚化した。
【0181】
図24Aは、噴霧用生理食塩水での処理後の、大部分生細胞(グリーン)を有する、厚いおよび強力なバイオフィルムを示している。耐性株で予想された通り、トブラマイシン単独での処理は生存率に対する作用がわずかである。CaEDTA単独で、ある程度の死滅(赤血球)を引き起こす。トブラマイシンおよびCaEDTAの組合せは、際立ってバイオフィルム細胞の大部分を死滅させている。図241Bは、図24Aの顕微鏡法画像の定量的表示を示す。対照バイオフィルムは1×10コロニー形成単位(CFU)/mlであったが、EDTA-トブラマイシン処理したバイオフィルムは、>6桁低減させ、<10CFU/mlまで低減させた。
【0182】
アミノグリコシド抗生剤は低い治療指数を有し、これは、治療作用と毒性作用との間に狭い治療域が存在することを意味し、トブラマイシンの場合、腎毒性および聴器毒性を含む。高いピーク濃度を達成するための肺への直接のドラッグデリバリーはまた、肺機能が低減した患者には特に困難となり得る。これは、多くの場合、抑制濃度以下の抗生剤での処置につながり、これにより感染細菌の耐性株が選択される。
【0183】
[実施例7]
高用量の吸入用キレート剤は、CF肺における緑膿菌感染症を低減させる
症状増悪により入院した、年齢≧6才のCFを有する患者を、無作為抽出して、静脈内抗生剤および噴霧用トブラマイシンによるこれらの通常処置に加えてEDTAまたは生理食塩水(プラセボ)を投与する。EDTAを、トブラマイシンと一緒に、4mlの50mM CaNaEDTA、0.9%生理食塩水中111mMトリス、pH7.1の噴霧用溶液として投与した。無作為抽出後、対象を病院内で2週間処置し、この間患者には1日4回処置を施した(300mgのEDTA/日、または3.3mgEDTA/kg/日まで)。次いで、患者を退院させ、処置を1日2回4週間継続した。患者をさらに4週間モニターし、全実験時間を10週間とした。
【0184】
噴霧用3%高張生理食塩水を8~10L/分、≧5分間用いて痰を誘発させた。処置前に試料を収集し、2、6および10週の時点で関連プロトコルに従い処理し、-80℃で貯蔵した。粘液を透明な痰から解離し、Sputalysin(痰1グラム当たり1ml)と混合し、ボルテックスし、1時間インキュベートし、次いでSkim Milk Glycerol貯蔵媒体内に配置し、-80℃で貯蔵した。
【0185】
試料を氷上で解凍し、元の濃度の最大10~7まで段階希釈を作製し、20μLの各希釈物を、シュードモナス属の種用のMcConkey寒天の3つの培養物プレートのそれぞれの上に配置した。プレートを35℃で48時間インキュベートし、細菌をコロニーカウント数で数えた。緑膿菌の識別をグラム染料(ネガティブ)、オキシダーゼ試験(ネガティブ)およびC390抗生剤に対する耐性でさらに確認した。データは、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU/ml)として表現した。
【0186】
図25は、2および6週の時点での緑膿菌(P.aerugionsa)(McC)に対するコロニーカウント数の変化を、処置の開始時と比較して示している。処置の2週後、コロニーカウント数の低減は、プラセボ群での4.5倍と比較して、EDTA群では>400倍であった。
【0187】
[実施例8]
高用量の吸入用キレート剤は、FEV1における濃度依存性増加をもたらす
症状増悪により入院した、年齢≧6才のCFを有する患者を、無作為抽出して、静脈内抗生剤および噴霧用トブラマイシンによるこれらの通常処置に加えてEDTAまたは生理食塩水(プラセボ)を投与する。EDTAを、トブラマイシンと一緒に、4mlの50mM CaEDTA、0.9%生理食塩水中111mMトリス、pH7.1の噴霧用溶液として投与した。無作為抽出後、対象を病院内で2週間処置し、この間患者には1日4回処置を施した(300mgのEDTA/日、または3.3mgEDTA/kg/日まで)。次いで、対象を退院させ、処置を1日2回4週間継続した。患者をさらに4週間モニターし、全実験時間を10週間とした。各実験の臨検において、肺機能をスパイロメトリで測定した。3回の試みのうち最も良いものとしてデータを記録し、結果を予測値の%として表現した。
【0188】
図26は、処置開始後、2、6および10週の時点での、両方の群に対するFEV1の平均変化を示している。これは、EDTA群における肺機能の明白な改善を実証しているが、プラセボ群ではわずかな変化しか実証していない。
【0189】
図27は、EDTA群(R=0.70)におけるFEV1改善と体重の間の逆の相関関係を示しているが、トブラマイシン単独で処置したプラセボ群には相関関係がないことを示している(R=0.01)。これは、EDTAが、肺機能に対して用量依存性作用(mg EDTA/kg体重)があることを示す。
【0190】
喀痰された痰中で達成されたEDTAの濃度をLC-MS/MSで測定した。EDTAがCF粘液に浸透して、処置するのに最も困難な細菌に到達するのを確認するため、痰を粘液栓から切断し、公知の質量をスモークガラスHPLCバイアルに配置した。3-C13標識EDTA(10μM)を含有するLC-MS等級メタノール(1ml)を各バイアルに加え、5分間ボルテックスすることによって混合し、-20℃で20分間冷やした。次いで、バイアルを100gで5分間遠心分離して、沈殿したタンパク質を堆積させ、754μLのメタノール抽出物を誘導体化のために採取した。濃塩酸(246μl)を加え、バイアルをボルテックス混合し、65℃で6時間インキュベートして、EDTAをメチルエステル化した。誘導体化した抽出物(1μl)を三連四重極質量分析計検出器を備えたWaters microflow HPLCに注入した。フラグメント化エネルギー135.0Vにおいて、標識EDTAに対してm/z190.1および非標識EDTAに対してm/z188.0の定量化イオンのカウント数を使用して、試料中に存在する抽出した誘導体化EDTAの量を定量した。
【0191】
図28は、処置から5分後の粘液栓におけるEDTA濃度がミリモル範囲内にあることを示している。これは、粘液を介した効率的な送達および良好な浸透を実証している。気道表面液体中のピーク濃度は恐らくより高い。EDTAは、ずっと低いレベルではあるが、2時間後の粘液中でさらに検出可能であり、これは恐らく分布とクリアランスの組合せによるものであろう。
【0192】
[仮想実施例P1:キレート化剤は、抗生剤と相乗的に作用することで、抗生剤効力を増強する]
抗生剤とキレート化剤との間の相乗効果を試験する方法はチェッカーボード法である。一連の異なる細菌性種を96-ウェルプレート内でバイオフィルムに成長させ、次いで、異なる濃度のキレート化剤および抗生剤でチャレンジする。比色分析試験を使用して、バイオフィルムレベルおよび代謝活性を示す(Bueno「Anti-Biofilm Drug Susceptibility Testing Methods:Looking for New Strategies against Resistance Mechanism」J Microbial Biochem Technol 2014年、S3;Orhanら、「Synergy test sby E test and checkerboard methods of antimicrobial combinations against Brucella melitensis」J Clin Microbiol、2005年1月;43巻(1号):140~3頁)。
【0193】
この実験は、抗生剤またはキレート化剤のそれぞれ単独での濃度の増加と共に、バイオフィルムが濃度依存的に低減することを示し、両方を組み合わせるとバイオフィルムレベルはさらに低減することを示すことが予想される。
【0194】
[仮想実施例P2:緩衝は、抗生剤によるバイオフィルム死滅を倍加させるキレート化剤の能力を増強させる]
一連の異なる細菌性種を96-ウェルプレート内でバイオフィルムに成長させ、次いで、異なる濃度のキレート化剤および緩衝剤、例えば、トリスなどでチャレンジする。比色分析試験を使用して、バイオフィルムレベルおよび代謝活性を示す。環境の酸性度を変化させながら、細菌性バイオフィルムを、キレート化剤および抗生剤でさらにチャレンジする。
【0195】
アミノグリコシド抗生剤は、in vitroおよびin vivoで、高いpHで、浮遊性細胞およびバイオフィルムに対してよりうまく働くこと(Lebeauxら、J Infect Dis.2014年、210巻(9号):1357~66年)、およびEDTAなどのキレート化剤の親和性はpHと共に増加することが知られている。したがって、本実験は、抗生剤アジュバントとしてのキレート化剤の効力が生理学的pHまたはそれよりも上で最も高いことを示すと予想される。
【0196】
[仮想実施例P3:炎症、肺損傷、および酸化ストレスに対する高用量の噴霧用キレート剤の作用のin vivo実験]
症状増悪により入院した、年齢≧6才のCFを有する対象を、無作為抽出して、静脈内抗生剤および噴霧用トブラマイシンによるこれらの通常の処置に加えて噴霧用EDTAまたは生理食塩水(プラセボ)を投与する。EDTAは、トブラマイシンと一緒に、4mlの50mMCaEDTA、0.9%生理食塩水中111mMトリス、pH7.1の噴霧用溶液として投与する。
【0197】
無作為抽出後、対象を病院内で2週間処置し、この間対象は1日4回の処置を受ける(300mgEDTA/日、または3.3mgEDTA/kg/日まで)。次いで、対象を退院させ、処置を1日2回4週間継続する。対象をさらに4週間モニターし、全実験時間を10週間とする。8~10L/分で、≧5分間、噴霧用3%高張生理食塩水で誘発させることにより痰を収集する。試料を処置前に収集し、2、6および10週の時点で、関連するプロトコルに従い処理し、-80℃で貯蔵する。
【0198】
・炎症性マーカーの発現
喀痰された痰をRNAlater(登録商標)中で貯蔵し、Qiagen RNEasy(登録商標)または同様の抽出キットを使用して全RNAを抽出し、cDNAに変換し、Sivanesonら(Sivaneson,M.、Mikkelsen,H.、Ventre,I.、Bordi,C.およびFilloux,A.(2011年)「Two-component regulatory systems in Pseudomonas aeruginosa:an intricate network mediating fimbrial and efflux pump gene expression」Mol Microbiol、79巻、1353~1366頁)に記載されているようにqPCRを使用して、炎症性マーカーをモニターし、公知のハウスキーピング遺伝子、例えば、アクチンおよび/またはGAPDHなどと比べて定量化する。
【0199】
この実験は、プラセボ群と比較して、EDTA群における炎症性マーカーの遺伝子発現の平均的低減を示すことが予想される。
【0200】
・細胞損傷、遊離鉄および酸化ストレス
喀痰された痰を加工なしにそのまま凍結し、上記の通り炎症性マーカーについてアッセイする。構造的損傷の尺度として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)およびメタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤のレベルを、ゼラチンザイモグラフィーおよびイムノアッセイをそれぞれ使用して、以前に記載されている通り測定する(Gaggarら、Eur RespirJ.2011年、38巻(3号):721~27頁;Garrattら、Eur Respir J.、2015年、46巻(2号):384~94頁)。痰の中の鉄の量を以前に記載されている通りICP-MSで定量化する(Hunterら、MBio.2013年、4巻(4号):1~8頁)。イムノアッセイを使用して、鉄結合タンパク質の量を評価する。イムノアッセイを使用して、以前に記載されている通りグルタチオン(GSSGおよびGSH)を測定することにより、酸化ストレスを評価する(Kettleら、Eur Respir J.2014年、44巻(1号):122~9頁)。
【0201】
この実験は、プラセボ群と比較して、EDTA群の中の炎症性マーカーの低減を示すことが予想される。この実験は、MMPとTIMPとの間、特にMMP-9とTIMP-1との間のバランスの変化(これは気管支拡張症の進行に伴うものである)を示すことがさらに予想される。
【0202】
[仮想実施例P4:感染症、炎症、および酸化ストレスに対する高用量の乾燥粉末キレート剤の作用のin vivo実験]
乾燥粉末トブラマイシンで処置する必要があるCFを有する対象を、4つのコホートに割り当て、112mgの乾燥粉末を1日2回、28日間投与する。加えて、コホート1(患者>18才)には上昇する用量の乾燥粉末CaEDTAを投与する(37.5mgBIDを1週間;75mgBIDを2週間、150mgBIDを1週間)。コホート2(>18才)の患者には、CaEDTA(37.5mgBIDを1週間;75BIDを2週間;75mgQIDを1週間)を投与する。コホート3の患者(12~18才)には、CaEDTA(37.5mgBIDを1週間;75mgBIDを2週間、150mgBIDを1週間)を投与する。最後に、対照コホートはトブラマイシンの投与を単独で28日間受ける。
【0203】
痰試料を毎週収集し、感染症および炎症のマーカーについて評価する。細菌を痰コロニーカウント数によりモニターする。構造的損傷の尺度として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)およびメタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤のレベルを、ゼラチンザイモグラフィーおよびイムノアッセイをそれぞれ使用して、以前に記載されている通り測定する(Gaggarら、Eur Respir J.2011年、38巻(3号):721~27頁;Garrattら、Eur Respir J.2015年、46巻(2号):384~94頁)。痰の中の鉄の量を以前に記載されている通りICP-MSで定量化する(Hunterら、2013年)。イムノアッセイを使用して、鉄結合タンパク質の量を評価する。ミエロペルオキシダーゼ活性もまた好中球の炎症の尺度として、以前に記載されている通りアッセイする(Gaggarら、2011年)。3-クロロチロシンを強力な酸化剤である次亜塩素酸のバイオマーカーとして測定する。質量分析法を用いた安定同位体希釈ガスクロマトグラフィーを使用してレベルを測定する(Gaggarら、2011年)。市販のイムノアッセイキットを使用して、反応性酸素種(ROS)の指標としてタンパク質カルボニルを測定する(Gaggarら、2011年)。イムノアッセイを使用して、以前に記載されている通りグルタチオン(GSSGおよびGSH)を測定することにより、酸化ストレスを評価する(Kettleら、2014年)。炎症性および酸化ストレスマーカー(例えばIL-8、IL-6、TNFa)の遺伝子発現もまたNanostringでモニターし、タンパク質をELISAで測定する。酸化ストレスはまた、代謝産物を介して、例えば、マロンジアルデヒド(molondialdehyde)(比色分析アッセイ)または8-イソプラスタン(ELISA)などで測定することができる。鉄は、レーザー除去-誘導結合された血漿-質量分析法(LA-ICP-MS)を使用して、元素分析で測定する。
【0204】
この実験は、プラセボ群と比較して、EDTA群における炎症性マーカーの低減および鉄レベルの低下を示すことが予想される。この実験は、MMPとTIMPとの間、特にMMP-9とTIMP-1との間のバランスの変化(これは気管支拡張症の進行に伴う)を示すことがさらに予想される。
【0205】
この実験は、対照患者と比較して、EDTAで処置した対象において、痰の中の細菌量の低減およびFEV1の増加を示すことがさらに予想される。
【0206】
[仮想実施例P5:炎症、肺損傷、および酸化ストレスに対する高用量の乾燥粉末キレート剤の作用のin vivo実験]
症状増悪により入院した、年齢≧6才のCFを有する対象を、無作為抽出して、静脈内抗生剤および噴霧用トブラマイシンによるこれらの通常の処置に加えて乾燥粉末EDTAまたは生理食塩水(プラセボ)を投与する。EDTAは、トブラマイシンと一緒に、4mlの50mM CaEDTA、0.9%生理食塩水中111mMトリス、pH7.1の噴霧用溶液として投与する。
【0207】
無作為抽出後、対象を病院内で2週間処置し、この間対象には1日4回の処置を施す(300mgEDTA/日、または3.3mgEDTA/kg/日まで)。次いで対象を退院させ、処置を1日2回4週間継続する。対象をさらに4週間モニターし、全実験時間を10週間とする。8~10L/分で≧5分間、噴霧用3%高張生理食塩水で誘発させることにより痰を収集する。試料を処置前に収集し、2、6および10週の時点で、関連するプロトコルに従い処理し、-80℃で貯蔵する。
【0208】
・炎症性マーカーの発現
喀痰された痰をRNAlater中で貯蔵し、Qiagen RNEasy(登録商標)または同様の抽出キットを使用して全RNAを抽出し、cDNAに変換し、Sivanesonら(Sivaneson,M,、Mikkelsen,H.、Ventre,I.、Bordi,C.およびFilloux,A.(2011年)「Two-component regulatory systems in Pseudomonas aeruginosa:an intricate network mediating fimbrial and efflux pump gene expression」Mol Microbiol、79巻、1353~1366頁)に記載されているようにqPCRを使用して、炎症性マーカーをモニターし、公知のハウスキーピング遺伝子、例えば、アクチンおよび/またはGAPDHなどと比べて定量化する。
【0209】
この実験は、プラセボ群と比較して、EDTA群における炎症性マーカーの遺伝子発現の平均的低減を示すことが予想される。
【0210】
・細胞損傷、遊離鉄および酸化ストレス
喀痰された痰を加工なしにそのまま凍結し、上記の通り炎症性マーカーについてアッセイする。構造的損傷の尺度として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)およびメタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤のレベルを、ゼラチンザイモグラフィーおよびイムノアッセイをそれぞれ使用して、以前に記載されている通り測定する(Gaggarら、Eur Respir J.2011年、38巻(3号):721~27頁;Garrattら、Eur Respir J.2015年、46巻(2号):384~94頁)。痰の中の鉄の量を以前に記載されている通りICP-MSで定量化する(Hunterら、MBio 2013年、4巻(4号):1~8頁)。イムノアッセイを使用して、鉄結合タンパク質の量を評価する。以前に記載されている通りグルタチオン(GSSGおよびGSH)を測定することにより、酸化ストレスを評価する(Kettleら、Eur Respir J.2014年、44巻(1号):122~9頁)。
【0211】
この実験は、プラセボ群と比較して、EDTA群における炎症性マーカーの低減および鉄レベルの低下を示すことが予想される。この実験は、MMPとTIMPとの間、特にMMP-9とTIMP-1との間のバランスの変化(これは、気管支拡張症の進行に伴う)を示すことがさらに予想される。
【0212】
この実験は、プラセボ(担体のみ)と比較して、EDTAで処置した対象におけるFEV1の増加を示すことがさらに予想される。
【0213】
これは、上記実施例4において実証されている。
【0214】
[仮想実施例P6:炎症、肺損傷、および酸化ストレスに対する高用量のキレート剤の作用のin vivo実験]
嚢胞性線維症対象の単一施設、無作為抽出、二重盲検、クロスオーバー実験を行う。吸入用CaEDTAまたは生理食塩水(プラセボ)での1日2~4回、2週間の処置に対して対象を無作為抽出する。この後、ウォッシュアウト期間および次いで2週間の他の処置(EDTAまたはプラセボ)が続く。
【0215】
鉄のレベル、炎症性マーカー、MMP/TIMPおよびFEV1を上記の通りモニターする。以前に記載されている通り、好中球の炎症の尺度として、ミエロペルオキシダーゼ活性もまたアッセイする(Gaggarら、2011年)。強力な酸化剤次亜塩素酸のバイオマーカーとして3-クロロチロシンを測定する。質量分析法を用いた安定同位体希釈ガスクロマトグラフィーを使用してレベルを測定する(Gaggarら、2011年)。市販のイムノアッセイキットを使用して、ROSの指標としてタンパク質カルボニルを測定する(Gaggarら、2011年)。
【0216】
この実験は、プラセボと比較して、EDTAで処置した対象において、鉄および炎症性マーカーのレベルの低減、MMP/TIMPのバランスの変化、および平均FEV1の増加を示すことが予想される。この実験は、ミエロペルオキシダーゼ活性の低減およびクロロチロシンおよびカルボニルの平均レベルの引き下げを示すことがさらに予想される。
【0217】
臨床データは、2週間の300mg/日(75mgQID)投与における効力(図25は細菌カウント数の低減;図26は肺機能の改善)およびさらに4週間の150mg/日(75mgBID)投与に対する作用の維持を実証している。著しい規模の改善(平均16%ポイント)を考慮すると、当業者であれば理解されるように、仮想実施例P4により想定されるように、ずっとより低い用量が、すなわち75mg/日(37.5mgBID)が有効である可能性が極めて高い。
【0218】
図28は、75mgのCaEDTAの単回投与が30分後、粘液栓内側で、1.34mMまでのEDTAをもたらすことを示す。したがって、気道表面液体中の濃度は、実質的により高い可能性が最も高い。in vitroデータ(図1Bおよび2B)は、CaEDTAが、0.078mM EDTAまで低い濃度、または痰濃度より17倍低い濃度で有効であることを実証している。よって、1日用量の37.5(臨床的メリットのある低い用量より4倍低い)が、完全に強化した実験で効力を示すと予想するのが妥当であろう。これは、体重当たりの用量がより高い量で投与される幼い患者に特に当てはまり、一般的にFEV1においてより大きな治療効果を示す(図27)。
【0219】
基本的本発明の概念から逸脱することなく、開示された発明に関係する上記教示に基づき、本発明の様々な実施形態を実行する、上に記載のモードの多くの変更形態および修飾形態が当業者には明らかである。本発明の上記実施形態は単に例示であり、限定であるとは決して解釈されるべきではなく、すべてのこのような変更形態および修飾形態は、その性質が前述の説明から決定される本発明の範囲内であると考えられるものとする。
【0220】
本発明の研究は、Cystic Fibrosis Foundation Therapeuticsからの賞金により援助された。
図1
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