(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61M1/00 135
(21)【出願番号】P 2020009274
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】平松 雅規
(72)【発明者】
【氏名】森下 知志
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538116(JP,A)
【文献】特表2016-500280(JP,A)
【文献】特表2017-532074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腔である体腔内の液体を吸引するための吸引装置であって、
前記液体を貯留するための貯留空間を区画し、前記貯留空間内の気体を吸引する吸引ポンプが接続される接続部と、前記吸引ポンプの吸引によって前記貯留空間に前記液体を流入させるための流入口と、を有
し、前記吸引ポンプの吸引によって前記貯留空間の圧力が大気圧よりも低い吸引圧とされる貯留容器と、
前記流入口と連通し、前記吸引ポンプの吸引によって前記体腔から前記流入口に向かう前記液体の流れを許容する液体導入路と、
前記液体導入路から分離された流路であって、前記貯留空間及び前記液体導入路の各々と連通
することで前記吸引ポンプの吸引によって流路内の圧力が前記吸引圧とされ、前記液体導入路との間に差圧が生じた場合に、
前記吸引圧とされた前記貯留空間内の気体を前記液体導入路に導く気体導入路と、を備える、吸引装置。
【請求項2】
前記気体導入路は、その一端が前記液体導入路に接続されており、
前記気体導入路上において前記液体導入路との接続部分には、前記気体導入路から前記液体導入路への前記気体の流れを許容し、前記液体導入路から前記気体導入路への前記気体の逆流を防止する逆止弁が設けられている、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記気体導入路は、その一端が前記液体導入路に接続されており、
前記気体導入路上には、当該気体導入路を経由して前記液体導入路に向けて前記気体を圧送する圧送ポンプが設けられている、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記液体導入路は、その一端が前記体腔内に挿入される第1チューブに接続されており、
前記気体導入路は、その一端が前記体腔内に挿入される第2チューブに接続されている、請求項1に記載の吸引装置。
【請求項5】
前記気体導入路上には、当該気体導入路を経由して前記液体導入路に向けて前記気体を圧送する圧送ポンプが設けられている、請求項4に記載の吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸腔等の体腔内の液体を吸引するための吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の胸腔等の体腔内において滲出した血液等の液体を吸引するための医療用の吸引装置が知られている。例えば、特許文献1には、液体を貯留する貯留空間を有する収集容器と、前記貯留空間内の気体を吸引する吸引ポンプと、収集容器に接続されるドレナージチューブと、一端がドレナージチューブに接続され他端が患者の体腔内に挿入されるチェストチューブと、リリーフ弁とを備えた吸引装置が開示されている。リリーフ弁は、ドレナージチューブとチェストチューブとの間に設けられる弁体である。
【0003】
特許文献1に開示される従来技術の吸引装置では、リリーフ弁が閉鎖状態で吸引ポンプが駆動されると、患者の体腔内の液体や気体がチェストチューブ及びドレナージチューブを通じて収集容器の貯留空間内に流入する。収集容器に流入した液体は、当該収集容器の底部に貯留される。そして、ドレナージチューブに詰まり等が生じて貯留空間への液体の流通不良が発生した場合、リリーフ弁が開放されることにより、外部空間の空気がドレナージチューブを通じて導入される。この外部空間の空気の導入によってドレナージチューブの詰まりを除去し、ドレナージチューブを通じた貯留空間への液体の流通状態の回復が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される吸引装置では、リリーフ弁が開放されることにより、貯留空間内に一時的に外部空間の空気が大量に流入した場合、貯留空間内が過陽圧状態となる。この過陽圧状態では、患者は肺を膨らませること(呼吸すること)が困難になる。また、リリーフ弁が開放されている間に貯留空間が外部空間と連通するので、患者とそれ以外の人との間で感染が発生する虞がある。具体的に、リリーフ弁が開放されている間は、貯留空間の気体、すなわち患者の体腔内の気体が外部空間に放出される可能性があるので、その気体に病原体が含まれる場合に当該患者以外の人に感染が生じる虞があると共に、外部空間の空気によって患者に感染が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、患者とそれ以外の人との間での感染の発生と貯留空間が過陽圧状態となることとの双方を抑制可能とした上で、貯留空間への液体の流通不良が発生した場合に、その液体の流通状態の回復を適切に行うことが可能な吸引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る吸引装置は、胸腔である体腔内の液体を吸引するための装置である。この吸引装置は、前記液体を貯留するための貯留空間を区画し、前記貯留空間内の気体を吸引する吸引ポンプが接続される接続部と、前記吸引ポンプの吸引によって前記貯留空間に前記液体を流入させるための流入口と、を有し、前記吸引ポンプの吸引によって前記貯留空間の圧力が大気圧よりも低い吸引圧とされる貯留容器と、前記流入口と連通し、前記吸引ポンプの吸引によって前記体腔から前記流入口に向かう前記液体の流れを許容する液体導入路と、前記液体導入路から分離された流路であって、前記貯留空間及び前記液体導入路の各々と連通することで前記吸引ポンプの吸引によって流路内の圧力が前記吸引圧とされ、前記液体導入路との間に差圧が生じた場合に、前記吸引圧とされた前記貯留空間内の気体を前記液体導入路に導く気体導入路と、を備える。
【0008】
この吸引装置によれば、液体を貯留するための貯留容器の流入口と連通する液体導入路と、貯留容器の貯留空間及び液体導入路の各々と連通する気体導入路と、を備えている。液体導入路は、患者の体腔から貯留容器の流入口に液体を導く流路であって、吸引ポンプの吸引によって体腔から流入口に向かう液体の流れを許容する。気体導入路は、液体導入路から分離された流路であって、液体導入路との間に差圧が生じた場合に、貯留空間内の気体を液体導入路に導く流路である。液体導入路において気体導入路の接続部分に対して下流側の領域に詰まり等が生じて貯留空間への液体の流通不良が発生した場合、液体導入路と気体導入路との間に、液体導入路の圧力が気体導入路の圧力よりも低い差圧が生じる。このような差圧が生じた場合に、貯留空間内の気体が気体導入路を経由して液体導入路に導かれる。これにより、流入口を通じた貯留空間と液体導入路との間で、気体導入路を経由して貯留空間内の気体を循環させることができる。この貯留空間内の気体の循環によって、液体導入路の詰まりを除去し、液体の流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。この際、従来技術のように外部空間の空気を導入するのではなく、貯留空間内の気体を循環させるので、患者とそれ以外の人との間での感染の発生と貯留空間が過陽圧状態となることとの双方を抑制可能である。
【0009】
上記の吸引装置において、前記気体導入路は、その一端が前記液体導入路に接続されており、前記気体導入路上において前記液体導入路との接続部分には、前記気体導入路から前記液体導入路への前記気体の流れを許容し、前記液体導入路から前記気体導入路への前記気体の逆流を防止する逆止弁が設けられている構成であってもよい。
【0010】
この態様では、貯留空間内の気体の循環経路が、貯留空間、気体導入路及び液体導入路によって構成される。この際、気体導入路上において液体導入路との接続部分には逆止弁が設けられているので、貯留空間内の気体が貯留空間、気体導入路、液体導入路の順番で循環するように、気体の流れ方向を規制することができる。
【0011】
上記の吸引装置において、前記気体導入路は、その一端が前記液体導入路に接続されており、前記気体導入路上には、当該気体導入路を経由して前記液体導入路に向けて前記気体を圧送する圧送ポンプが設けられている構成であってもよい。
【0012】
この態様では、貯留空間内の気体の循環経路が、貯留空間、気体導入路及び液体導入路によって構成される。この際、気体導入路上には圧送ポンプが設けられているので、当該圧送ポンプの駆動によって、気体導入路を経由して貯留空間内の気体を強制的に循環させることができる。この貯留空間内の気体の循環によって、液体導入路の詰まりを除去し、液体の流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【0013】
上記の吸引装置において、前記液体導入路は、その一端が前記体腔内に挿入される第1チューブに接続されており、前記気体導入路は、その一端が前記体腔内に挿入される第2チューブに接続されている構成であってもよい。
【0014】
この態様では、貯留空間内の気体の循環経路が、貯留空間、気体導入路、第2チューブ、第1チューブ及び液体導入路によって構成される。これにより、液体導入路に加えて体腔内に挿入される第1チューブに詰まり等が生じて貯留空間への液体の流通不良が発生した場合に、流入口を通じた貯留空間と液体導入路との間で、気体導入路、第2チューブ及び体腔を経由して、貯留空間内の気体を循環させることができる。この貯留空間内の気体の循環によって、液体導入路及び第1チューブの詰まりを除去し、液体の流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【0015】
上記の吸引装置において、前記気体導入路上には、当該気体導入路を経由して前記液体導入路に向けて前記気体を圧送する圧送ポンプが設けられている構成であってもよい。
【0016】
この態様では、貯留空間内の気体の循環経路が、貯留空間、気体導入路、第2チューブ、第1チューブ及び液体導入路によって構成される。この際、気体導入路上には圧送ポンプが設けられているので、当該圧送ポンプの駆動によって、気体導入路、第2チューブ及び体腔を経由して、貯留空間内の気体を強制的に循環させることができる。この貯留空間内の気体の循環によって、液体導入路及び第1チューブの詰まりを除去し、液体の流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、患者とそれ以外の人との間での感染の発生と貯留空間が過陽圧状態となることとの双方を抑制可能とした上で、貯留空間への液体の流通不良が発生した場合に、その液体の流通状態の回復を適切に行うことが可能な吸引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸引装置において収納ケースの開閉カバー部を開放した状態の正面図である。
【
図2】吸引装置において収納ケースの開閉カバー部を開放した状態の側面図である。
【
図3】
図2の吸引装置を切断面線III-IIIから見た断面図である。
【
図4】吸引装置において液体の吸引中の状態を示す断面図である。
【
図5】患者の呼吸等に伴う体腔内の圧力変動を示すグラフである。
【
図6】吸引装置に備えられる導入部材を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る吸引装置について説明する。
図1~
図4は、本実施形態に係る吸引装置1の構成を示すものであって、
図1が正面図、
図2が側面図、
図3及び
図4が断面図である。
【0020】
吸引装置1は、患者の胸腔等の体腔200内において滲出した血液等の液体LQを吸引するための医療用の吸引装置である。吸引装置1は、液体LQを貯留可能な貯留容器2と、貯留容器2に接続される導入部材5と、気体を吸引可能な吸引ユニット6とを備える。吸引装置1において、貯留容器2と吸引ユニット6とは収納ケース8に収納され、導入部材5は貯留容器2に接続された状態において収納ケース8に対して上方側に露出している。また、
図3に示すように、吸引装置1は、圧力センサ71と、検知器72と、記憶部73とを更に備え、圧力センサ71、検知器72及び記憶部73は収納ケース8に収納されている。
【0021】
収納ケース8は、ケース本体81と開閉カバー部82とを含み、略直方体の外形を有する箱状に形成されたケースである。ケース本体81は、貯留容器2等を収納する本体部分を構成し、挿通孔8111を有する上面部811と、下面部812と、を有する。導入部材5は、ケース本体81の上面部811に形成された挿通孔8111の上方側において、収納ケース8から上方側に露出している。検知器72は、ケース本体81に収納される貯留容器2に下方側から当接するように、下面部812に取り付けられる。開閉カバー部82は、
図2に示すように、ケース本体81の下面部812に設けられた水平方向に延びる軸部8121回りの回動が可能となるように、ケース本体81に支持されるカバーである。開閉カバー部82が開放された状態において、ケース本体81に対する貯留容器2等の出し入れが可能である。
【0022】
貯留容器2は、液体LQを貯留するための貯留空間S1を区画し、当該貯留空間S1に液体LQを流入させるための流入口321を有する貯留部3と、貯留空間S1内において当該空間から分離された調整空間S2を区画する調整部4と、を含んで構成される。
【0023】
貯留部3は、貯留本体31と、前記流入口321を有する流入ポート32とを含む。貯留本体31は、貯留部3の本体部分を構成し、液体LQを貯留するための貯留空間S1を区画する、略直方体の外形を有する容器状に形成される。貯留本体31は、吸引ユニット6の駆動によって貯留空間S1内が所定の吸引圧とされた吸引環境下、並びに大気圧環境下においてその外形を維持する(変形しない)剛性を有する。貯留部3は、貯留本体31の貯留空間S1において液体LQの貯留が可能な空間の容積(液体貯留可能容積)の最大値、すなわち、貯留空間S1における液体LQの貯留可能量の最大値が、例えば2L(リットル)程度とされた、比較的大容量の液体LQの貯留が可能となるように設計されている。貯留本体31は、鉛直に延びる上下方向に所定の間隔を隔てて互いに対向配置される、水平に延びる上面部311と下面部312とを有する。貯留本体31の上面部311には、貯留空間S1内において下方に突出する突片311Aが突設されている。この突片311Aに後記の調整部4における周壁部41の上端411が接続される。また、上面部311には、後記の第2吸引ポンプ622が接続される第2流路部621の接続を許容する接続部311Bが設けられている。また、貯留本体31には、後記の第1吸引ポンプ612が接続される第1流路部611の接続を許容する接続部313が設けられている。
【0024】
貯留部3において流入ポート32は、その下端が貯留本体31の上面部311に接続されたポートであって、貯留空間S1に液体LQを流入させるための流入口321を取り囲む筒状に形成されている。流入ポート32は、貯留本体31の上面部311から上方に突出するように、当該上面部311に接続されている。貯留容器2が収納ケース8に収納された状態において、流入ポート32は、その上端が収納ケース8から露出するように、ケース本体81の上面部811に形成された挿通孔8111に挿通されている。なお、本実施形態では、
図1に示すように、2つの流入ポート32が設けられている。2つの流入ポート32は何れも、患者の体腔200内の液体LQを貯留空間S1内に流入させるためのポートである。同一患者に対して2つの流入ポート32を用いても良いし、1つの流入ポート32のみを用いても良い。1つの流入ポート32のみを用いる場合には、他の流入ポート32はキャップ33によって閉鎖しておく。
【0025】
貯留容器2において調整部4は、貯留空間S1内に配置され、貯留空間S1から分離された調整空間S2を区画する。調整部4は、貯留空間S1内における液体LQの貯留量の増加に応じて調整空間S2の容積を縮小させることが可能に構成されている。本実施形態では、調整部4は、有底容器状に形成され、貯留空間S1内に位置するように貯留部3の貯留本体31に接続されることにより、貯留空間S1から分離された調整空間S2を区画する。調整部4は、貯留部3の貯留空間S1内において、調整空間S2の容積が変化するように上下方向に伸縮可能に構成される。
【0026】
具体的に、調整部4は、貯留空間S1内に貯留された液体LQの液面に接する底板部42と、貯留空間S1内において上下方向に延びるように底板部42の周縁から立ち上がる周壁部41とを有する。周壁部41は、貯留空間S1内に貯留された液体LQの液面の上昇に応じて底板部42の上昇を許容するための可撓性を有する。周壁部41は、伸縮可能な蛇腹状に形成され、伸縮の方向が上下方向と一致するように、上端411が貯留本体31の上面部311における突片311Aに接続されることにより貯留空間S1内に配置される。調整部4は、周壁部41の上端411が突片311Aに接続されることにより、貯留空間S1内において吊り下げられている。周壁部41は、吸引ユニット6の駆動によって貯留空間S1内が所定の吸引圧とされた吸引環境下、並びに大気圧環境下において、上下方向と交差する方向に変形しないような剛性を有する。すなわち、周壁部41は、上下方向に伸縮変形するが、当該上下方向と交差する方向には変形しないように構成されている。底板部42は、周壁部41の下端412に接合されることにより水平に延びる板状に形成され、周壁部41とともに調整空間S2を区画する。底板部42は、吸引ユニット6の駆動によって貯留空間S1内が所定の吸引圧とされた吸引環境下、並びに大気圧環境下において変形しないような剛性を有する。
【0027】
貯留部3と伸縮可能な調整部4とを含んで構成される貯留容器2では、貯留部3の貯留空間S1において液体LQの貯留が可能な空間の容積(液体貯留可能容積)は、調整部4における周壁部41の伸縮状態で変化させることができる。つまり、貯留空間S1において液体貯留可能容積は、周壁部41が最も収縮した状態(最収縮状態)で最大となり、周壁部41が最も伸長した状態(最伸長状態)で最小となる。換言すると、貯留部3の貯留空間S1における液体LQの貯留可能量は、調整部4における周壁部41の伸縮状態で変化させることができ、周壁部41が最収縮状態で最大となり、周壁部41が最伸長状態で最小となる。
【0028】
導入部材5は、貯留部3の流入口321と連通するように当該貯留部3に接続され、患者の体腔200から流入口321に液体LQを導く管状の部材である。この導入部材5の詳細については後述する。
【0029】
吸引ユニット6は、貯留部3の貯留空間S1内の圧力と調整部4の調整空間S2内の圧力とが同一の吸引圧となるように、貯留空間S1及び調整空間S2の各々の気体を吸引するためのユニットである。吸引ユニット6は、第1吸引部61と第2吸引部62とを含む。第1吸引部61は、貯留部3の接続部313に接続されることにより貯留空間S1と連通する第1流路部611と、第1流路部611を通じて貯留空間S1内の気体を吸引する第1吸引ポンプ612とを有する。第1吸引ポンプ612は、貯留空間S1内の気体を吸引することにより、導入部材5を経由して流入口321を通じて貯留空間S1に液体LQを流入させる。第2吸引部62は、貯留部3の接続部311Bに接続されることにより調整空間S2と連通し、前記第1流路部611から分離された第2流路部621と、第2流路部621を通じて調整空間S2内の気体を吸引する第2吸引ポンプ622とを有する。第1吸引ポンプ612及び第2吸引ポンプ622は、収納ケース8内におけるポンプの占有面積が可及的に小さくなるように、小型のマイクロポンプである。本実施形態では、貯留空間S1内の気体を吸引するための第1吸引部61と、調整空間S2内の気体を吸引するための第2吸引部62とが、互いに分離されている。これにより、貯留空間S1及び調整空間S2の各々の圧力を、より確実に所定の吸引圧に到達させることができる。
【0030】
なお、吸引ユニット6は、第1流路部611と第2流路部621とが合流するように構成され、その合流部分に1台の吸引ポンプが接続される構成であってもよい。この場合、1台の吸引ポンプの駆動によって、貯留空間S1内の圧力と調整空間S2内の圧力とが同一の吸引圧となるように、貯留空間S1及び調整空間S2の各々の気体を吸引する構成となる。
【0031】
第1吸引部61の第1流路部611には、圧力センサ71が接続されている。圧力センサ71は、第1流路部611と連通する貯留空間S1の圧力を検知するセンサである。圧力センサ71の検知結果は、記憶部73に記憶される。すなわち、記憶部73は、圧力センサ71の検知結果を記憶する圧力情報記憶部としての機能を有する。圧力センサ71の検知結果の利用方法については、後述する。
【0032】
また、収納ケース8においてケース本体81の下面部812には、検知器72が取り付けられている。検知器72は、収納ケース8内の貯留容器2に下方側から当接するように、下面部812に取り付けられる。検知器72は、例えばロードセルによって構成され、貯留部3の貯留空間S1内に貯留された液体LQの貯留量を検知する。検知器72の検知結果は、記憶部73に記憶される。すなわち、記憶部73は、検知器72の検知結果を記憶する貯留情報記憶部としての機能を有する。検知器72の検知結果の利用方法については、後述する。
【0033】
次に、本実施形態に係る吸引装置1の使用方法を説明する。まず、貯留容器2において貯留部3の貯留空間S1での液体LQの貯留前の初期状態では、調整部4における周壁部41が最も伸長した最伸長状態とされる。
【0034】
既述の通り、貯留部3と伸縮可能な調整部4とを含んで構成される貯留容器2では、貯留部3の貯留空間S1において液体LQの貯留が可能な空間の容積(液体貯留可能容積)は、調整部4における周壁部41の伸縮状態で変化させることができる。つまり、貯留空間S1において液体貯留可能容積は、周壁部41が最も収縮した状態(最収縮状態)で最大となり、周壁部41が最も伸長した状態(最伸長状態)で最小となる。前記初期状態において周壁部41は最伸長状態とされるので、周壁部41が最収縮状態とされるときの貯留空間S1における液体貯留可能量の大容量化を図った場合であっても、前記初期状態において周壁部41が最伸長状態とされることに伴って貯留空間S1の液体貯留可能容積を小さくすることができる。
【0035】
貯留容器2において調整部4の周壁部41が最伸長状態とされた状態で、カテーテル等のチューブ100の一端が導入部材5の液体導入路51の一端511に接続され、当該チューブ100がクランプ101等で閉塞される。これにより、液体導入路51と連通した流入口321と通じた貯留部3の貯留空間S1が外部空間(外気)から遮断される。この際、貯留空間S1内において当該貯留空間S1から分離された調整部4の調整空間S2についても、外部空間から遮断されている。
【0036】
その後、吸引ユニット6の第1吸引ポンプ612及び第2吸引ポンプ622を駆動させる。これにより、第1吸引ポンプ612が第1流路部611を通じて貯留空間S1内の気体を吸引し、第2吸引ポンプ622が第2流路部621を通じて調整空間S2内の気体を吸引するので、貯留空間S1の圧力と調整空間S2の圧力とが、大気圧よりも低い同一の吸引圧とされる。この状態で、前記チューブ100の他端が患者の体腔200(胸腔等)に挿入され、前記クランプ101が外される。これにより、患者の体腔200内の液体LQや気体が導入部材5の液体導入路51を経由して流入口321を通じて貯留空間S1内に流入すると共に、患者の体腔200内の圧力が貯留空間S1の圧力と等しくなる。貯留空間S1内に流入した液体LQは、当該貯留空間S1内に貯留される。一方、貯留空間S1内に流入した気体は、第1流路部611を通じて第1吸引ポンプ612から排気される。
【0037】
吸引ユニット6による吸引中において、貯留空間S1の圧力が圧力センサ71によって検知され、その検知結果が記憶部73に記憶される。記憶部73に記憶される圧力センサ71の検知結果は、吸引ユニット6による吸引中においては、貯留空間S1内の圧力が所定の吸引圧となるように制御する際の管理データとして用いることができる。貯留空間S1内の圧力は、制御ユニットによって制御される。制御ユニットは、圧力センサ71の検知結果に基づいて吸引ユニット6を制御することにより、貯留空間S1内の圧力を制御する。また、吸引ユニット6による吸引中において、貯留空間S1内に貯留された液体LQの貯留量が検知器72によって検知され、その検知結果が記憶部73に記憶される。記憶部73に記憶される検知器72の検知結果は、患者の体腔200内からの液体LQの排出量の管理データとして用いることができる。
【0038】
吸引ユニット6による吸引中においては、貯留空間S1内の圧力が所定の吸引圧とされることに伴って、流入口321を通じて貯留空間S1に液体LQが流入する。ここで、吸引ユニット6による吸引前の前記初期状態においては、調整部4は、周壁部41が最伸長状態とされている。
【0039】
吸引ユニット6による吸引中において、貯留空間S1に液体LQが流入すると、その流入に応じて貯留空間S1内に貯留された液体LQの液面が上昇する。このような吸引ユニット6による吸引中において、調整部4は、貯留空間S1における液面の上昇に応じて調整空間S2の容積が小さくなるように収縮する(
図4参照)。具体的に、貯留空間S1内に貯留された液体LQの液面が上昇すると、その液面に接する調整部4の底板部42が液面の上昇に応じて上昇する。調整部4においては、液面の上昇に応じて底板部42が上昇すると、周壁部41が調整空間S2の容積が小さくなるように収縮する。これにより、吸引ユニット6の駆動に応じた貯留空間S1への液体LQの流入中においても、液体LQの流入に応じて貯留空間S1における液体貯留可能容積を比較的小さい状態のままで変化させることができる。すなわち、貯留部3の貯留空間S1における液体貯留可能容積は、貯留空間S1内への液体LQの流入に伴う周壁部41の収縮に応じて、吸引ユニット6による吸引の停止に至るまで比較的小さい状態で維持される。これにより、患者の体腔200内の液体LQを吸引するための装置として吸引装置1を適用した場合には、患者の呼吸の負担を軽減することが可能である。なお、液体LQの流入に伴って貯留空間S1内に当該液体LQが貯留された状態においては、貯留空間S1における液体貯留可能容積は、貯留空間S1において液体LQの貯留分を除いた残余の気相空間の容積となる。
【0040】
患者の体腔200内から液体LQを排出させる吸引処置が終了すると、吸引ユニット6の駆動が停止される。吸引ユニット6の駆動が停止された状態においても、患者の体腔200と貯留部3の貯留空間S1とは、チューブ100及び導入部材5の液体導入路51を経由して流入口321を通じて連通した状態が維持される。すなわち、患者の体腔200内の圧力は、貯留部3の貯留空間S1内の圧力と等しい。このため、吸引ユニット6の吸引停止状態において、貯留部3の貯留空間S1内の圧力変動を圧力センサ71で検知することにより、患者の呼吸等に伴う体腔200内の圧力変動の推定が可能である。
【0041】
図5は、患者の呼吸等に伴う体腔200(胸腔)内の圧力変動を示すグラフである。
図5において実線で示されるグラフG1は、患者に吸引装置を接続していない状態、すなわち、患者の体腔200に対して貯留空間が連通していない状態における、患者の呼吸等に伴う体腔200内の圧力変動を示す。一方、
図5において一点鎖線で示されるグラフG2、二点鎖線で示されるグラフG3、及び破線で示されるグラフG4は、患者の体腔200に対して貯留空間が連通した状態における、患者の呼吸等に伴う体腔200内の圧力変動を示す。この際、グラフG2とグラフG3とグラフG4との間では、患者の体腔200に対して連通された貯留空間の容積が異なり、グラフG2、グラフG3、グラフG4の順に貯留空間の容積が大きくされている。
【0042】
図5から明らかなように、患者の体腔200に連通する貯留空間の容積が大きくなるに従って、患者の呼吸等に伴う体腔200内の圧力変動の変動幅が小さくなる。すなわち、貯留空間の容積が大きくなるに従って、患者の体腔200と同一圧の貯留空間内の圧力変動の変動幅が小さくなる。この事実に鑑みると、患者の体腔200に連通する貯留空間の容積が大きい状態のときには、貯留空間内の圧力変動を圧力センサ71によって精度よく検知することが困難となる。
【0043】
これに対し、本実施形態に係る吸引装置1においては、上記の通り、貯留部3の貯留空間S1における液体貯留可能容積は、前記初期状態と同様に、貯留空間S1内への液体LQの流入に伴う調整部4における周壁部41の収縮に応じて、吸引ユニット6による吸引の停止に至るまで、比較的小さい状態で維持される。このため、吸引ユニット6の吸引停止状態において、患者の呼吸等に伴う貯留空間S1内の圧力変動の変動幅が小さくなることを抑制することができる。この結果、患者の呼吸等に伴う貯留空間S1内の圧力変動を圧力センサ71によって精度よく検知することが可能となる。これにより、圧力センサ71の検知結果は、患者の呼吸等に伴う体腔200内の圧力変動の管理データとして用いることができると共に、患者の肺から気体が漏出しているか否か、すなわち患者の肺からのエアリークの有無の管理データとして用いることができる。
【0044】
次に、
図3及び
図4に加えて
図6を参照して、導入部材5の詳細を説明する。既述の通り、導入部材5は、貯留部3の流入口321と連通するように当該貯留部3に接続され、患者の体腔200から流入口321に液体LQを導く管状の部材である。具体的に、導入部材5は、貯留部3の流入ポート32に接続されることにより流入口321と連通する。導入部材5は、液体導入路51と気体導入路52とを有している。液体導入路51は、流入口321と連通し、吸引ユニット6の駆動によって患者の体腔200から流入口321に向かう液体LQの流れを許容する流路である。液体導入路51は、その一端511が患者の体腔200内に挿入されるチューブ100(
図1)に接続されると共に、他端512が流入口321に接続される。気体導入路52は、液体導入路51から分離された流路である。気体導入路52は、流入口321を介して貯留空間S1と連通すると共に液体導入路51と連通し、液体導入路51との間に差圧が生じた場合に、貯留空間S1内の気体を液体導入路51に導く。気体導入路52は、その一端521が液体導入路51に接続されると共に、他端522が流入口321に接続される。
【0045】
液体導入路51において気体導入路52の接続部分に対して下流側の領域に詰まり等が生じて、貯留空間S1への液体LQの流通不良が発生した場合を想定する。この場合、液体導入路51と気体導入路52との間に、液体導入路51の圧力が気体導入路52の圧力よりも低い差圧が生じる。このような差圧が生じた場合に、貯留空間S1内の気体が気体導入路52を経由して液体導入路51に導かれる。これにより、流入口321を通じた貯留空間S1と液体導入路51との間で、気体導入路52を経由して貯留空間S1内の気体を循環させることができる。この貯留空間S1内の気体の循環によって、液体導入路51の詰まりを除去し、液体LQの流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。この際、外部空間の空気を導入するのではなく、貯留空間S1内の気体を循環させるので、患者とそれ以外の人との間での感染の発生と貯留空間S1が過陽圧状態となることとの双方を抑制可能である。
【0046】
また、気体導入路52上において液体導入路51との接続部分には、逆止弁53が設けられている。逆止弁53は、気体導入路52から液体導入路51への気体の流れを許容し、液体導入路51から気体導入路52への気体の逆流を防止する弁体である。導入部材5を備えた吸引装置1において、液体導入路51と気体導入路52との間に差圧が生じた場合における貯留空間S1内の気体の循環経路は、貯留空間S1、気体導入路52及び液体導入路51によって構成される。この際、気体導入路52上において液体導入路51との接続部分には逆止弁53が設けられているので、貯留空間S1内の気体が貯留空間S1、気体導入路52、液体導入路51の順番で循環するように、気体の流れ方向を規制することができる。
【0047】
図7は、第1変形例に係る導入部材5Aを示す断面図である。貯留容器2において貯留部3の流入ポート32には、上記の導入部材5に代えて、
図7に示す導入部材5Aが接続されてもよい。導入部材5Aは、貯留部3の流入ポート32に接続されることにより流入口321と連通する。導入部材5Aは、液体導入路51と気体導入路52Aとを有している。液体導入路51は、流入口321と連通し、吸引ユニット6の駆動によって患者の体腔200から流入口321に向かう液体LQの流れを許容する流路である。液体導入路51は、その一端511が患者の体腔200内に挿入されるチューブ100に接続されると共に、他端512が流入口321に接続される。気体導入路52Aは、液体導入路51から分離された流路である。気体導入路52Aは、流入口321を介して貯留空間S1と連通すると共に液体導入路51と連通し、液体導入路51との間に差圧が生じた場合に、貯留空間S1内の気体を液体導入路51に導く。気体導入路52Aは、その一端521Aが液体導入路51に接続されると共に、他端522Aが流入口321に接続される。
【0048】
液体導入路51と気体導入路52Aとを有した導入部材5Aを備えた吸引装置1では、液体導入路51において気体導入路52Aの接続部分に対して下流側の領域に詰まり等が生じて貯留空間S1への液体LQの流通不良が発生した場合、液体導入路51と気体導入路52Aとの間に差圧が生じる。このような差圧が生じた場合に、貯留空間S1内の気体が気体導入路52Aを経由して液体導入路51に導かれる。これにより、流入口321を通じた貯留空間S1と液体導入路51との間で、気体導入路52Aを経由して貯留空間S1内の気体を循環させることができる。この貯留空間S1内の気体の循環によって、液体導入路51の詰まりを除去し、液体LQの流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【0049】
また、
図7に示すように、気体導入路52A上には、当該気体導入路52Aを経由して液体導入路51に向けて、貯留空間S1内の気体を圧送する圧送ポンプ54が設けられている。導入部材5Aを備えた吸引装置1において、液体導入路51と気体導入路52Aとの間に差圧が生じた場合における貯留空間S1内の気体の循環経路は、貯留空間S1、気体導入路52A及び液体導入路51によって構成される。この際、気体導入路52A上には圧送ポンプ54が設けられているので、当該圧送ポンプ54の間欠的もしくは連続的な駆動によって、気体導入路52Aを経由して貯留空間S1内の気体を強制的に循環させることができる。この貯留空間S1内の気体の循環によって、液体導入路51の詰まりを除去し、液体LQの流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【0050】
図8は、第2変形例に係る導入部材5Bを示す断面図である。貯留容器2において貯留部3の流入ポート32には、上記の導入部材5に代えて、
図8に示す導入部材5Bが接続されてもよい。導入部材5Bは、貯留部3の流入ポート32に接続されることにより流入口321と連通する。導入部材5Bは、液体導入路51と気体導入路52Bとを有している。液体導入路51は、流入口321と連通し、吸引ユニット6の駆動によって患者の体腔200から流入口321に向かう液体LQの流れを許容する流路である。液体導入路51は、その一端511が患者の体腔200内に挿入されるチューブ100(第1チューブ)に接続されると共に、他端512が流入口321に接続される。気体導入路52Bは、液体導入路51から分離された流路である。気体導入路52Bは、流入口321を介して貯留空間S1と連通すると共に液体導入路51と連通し、液体導入路51との間に差圧が生じた場合に、貯留空間S1内の気体を液体導入路51に導く。気体導入路52Bは、その一端521Bが患者の体腔200内に挿入される循環チューブ102(第2チューブ)に接続されると共に、他端522Bが流入口321に接続される。なお、循環チューブ102には、体腔200内に挿入される部分の近傍に逆止弁53が設けられている。この逆止弁53は、循環チューブ102から体腔200への気体の流れを許容し、体腔200から循環チューブ102への気体の逆流を防止する弁体である。
【0051】
液体導入路51と気体導入路52Bとを有した導入部材5Bを備えた吸引装置1では、液体導入路51と気体導入路52Bとの間に差圧が生じた場合における貯留空間S1内の気体の循環経路は、貯留空間S1、気体導入路52B、循環チューブ102、チューブ100及び液体導入路51によって構成される。これにより、液体導入路51に加えて患者の体腔200内に挿入されるチューブ100に詰まり等が生じて貯留空間S1への液体LQの流通不良が発生した場合に、流入口321を通じた貯留空間S1と液体導入路51との間で、気体導入路52B、循環チューブ102及び体腔200を経由して、貯留空間S1内の気体を循環させることができる。この貯留空間S1内の気体の循環によって、液体導入路51及びチューブ100の詰まりを除去し、液体LQの流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【0052】
図9は、第3変形例に係る導入部材5Cを示す断面図である。貯留容器2において貯留部3の流入ポート32には、上記の導入部材5に代えて、
図9に示す導入部材5Cが接続されてもよい。導入部材5Cは、貯留部3の流入ポート32に接続されることにより流入口321と連通する。導入部材5Cは、液体導入路51と気体導入路52Cとを有している。液体導入路51は、流入口321と連通し、吸引ユニット6の駆動によって患者の体腔200から流入口321に向かう液体LQの流れを許容する流路である。液体導入路51は、その一端511が患者の体腔200内に挿入されるチューブ100(第1チューブ)に接続されると共に、他端512が流入口321に接続される。気体導入路52Cは、液体導入路51から分離された流路である。気体導入路52Cは、流入口321を介して貯留空間S1と連通すると共に液体導入路51と連通し、液体導入路51との間に差圧が生じた場合に、貯留空間S1内の気体を液体導入路51に導く。気体導入路52Cは、その一端521Cが患者の体腔200内に挿入される循環チューブ102(第2チューブ)に接続されると共に、他端522Cが流入口321に接続される。
【0053】
また、
図9に示すように、気体導入路52C上には、当該気体導入路52Cを経由して液体導入路51に向けて、貯留空間S1内の気体を圧送する圧送ポンプ54が設けられている。液体導入路51と気体導入路52Cとを有した導入部材5Cを備えた吸引装置1では、液体導入路51と気体導入路52Cとの間に差圧が生じた場合における貯留空間S1内の気体の循環経路は、貯留空間S1、気体導入路52C、循環チューブ102、チューブ100及び液体導入路51によって構成される。この際、気体導入路52C上には圧送ポンプ54が設けられているので、当該圧送ポンプ54の間欠的もしくは連続的な駆動によって、気体導入路52C、循環チューブ102及び患者の体腔200を経由して、貯留空間S1内の気体を強制的に循環させることができる。この貯留空間S1内の気体の循環によって、液体導入路51及びチューブ100の詰まりを除去し、液体LQの流通状態の回復を適切に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 吸引装置
2 貯留容器
3 貯留部
31 貯留本体
32 流入ポート
321 流入口
4 調整部
5,5A,5B,5C 導入部材
51 液体導入路
52,52A,52B,52C 気体導入路
53 逆止弁
54 圧送ポンプ
6 吸引ユニット
61 第1吸引部
611 第1流路部
612 第1吸引ポンプ
62 第2吸引部
621 第2流路部
622 第2吸引ポンプ
100 チューブ(第1チューブ)
102 循環チューブ(第2チューブ)
200 体腔
S1 貯留空間
S2 調整空間