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特許7389674スプリングガイド及びサスペンション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】スプリングガイド及びサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20231122BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F16F9/32 B
F16F1/12 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020020839
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021127772
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健太
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052355(JP,A)
【文献】特開2002-130351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023529(US,A1)
【文献】特開平11-294511(JP,A)
【文献】特開2018-105492(JP,A)
【文献】特開2018-071756(JP,A)
【文献】実開昭61-057011(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102010028290(DE,A1)
【文献】特開平11-280810(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235311(WO,A1)
【文献】特開2003-343634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバに取り付けられ、前記車体を弾性支持するコイルスプリングを支持するスプリングガイドであって、
樹脂材料によって形成され、前記コイルスプリングが載置される本体部と、
前記本体部において前記コイルスプリングとは反対側の反スプリング側を覆う被覆部と、を備え、
前記被覆部は、エラストマーにより形成されることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項2】
車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバに取り付けられ、前記車体を弾性支持するコイルスプリングを支持するスプリングガイドであって、
樹脂材料によって形成され、前記コイルスプリングが載置される本体部と、
前記本体部において前記コイルスプリングとは反対側の反スプリング側の全体を覆う被覆部と、
前記本体部と前記コイルスプリングの端部との間において前記本体部と一体成形され、前記本体部において前記コイルスプリングが載置される側の全体を覆う支持部と、を備え、
前記被覆部は、前記本体部を形成する前記樹脂材料とは物性値が異なる材質により形成されることを特徴とするスプリングガイド。
【請求項3】
前記本体部には、外側端部から前記コイルスプリングが載置される側に向かって延在する側壁を備え、
前記側壁は、前記被覆部で覆われることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリングガイド。
【請求項4】
前記被覆部と前記支持部とは、同じ材質によって形成されることを特徴とする請求項2に記載のスプリングガイド。
【請求項5】
前記本体部の反スプリング側には、前記本体部の下面から突出するリブが設けられ、
前記被覆部は、前記リブを埋没させるように前記本体部の反スプリング側を覆うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のスプリングガイド。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のスプリングガイドと、
前記ショックアブソーバと、
前記ショックアブソーバのロッドの先端に取り付けられるアッパーマウントと、
前記スプリングガイドと前記アッパーマウントとの間に設けられる前記コイルスプリングと、
前記ショックアブソーバのシリンダに固定され、前記スプリングガイドを支持する金属製の支持部材と、を備えることを特徴とするサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングガイド及びサスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダと、シリンダの外周に取り付けられるコイルスプリングと、コイルスプリングの下端部を支持するスプリングシートと、を備える懸架装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-52355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなサスペンション装置では、スプリングガイドが樹脂材料によって形成されるため、飛び石や水等の外乱によってスプリングガイドの強度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サスペンション装置におけるスプリングガイドの耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スプリングガイドであって、樹脂材料によって形成され、車体側にコイルスプリングが載置される本体部と、本体部においてコイルスプリングとは反対側の反スプリング側を覆う被覆部と、を備え、被覆部は、エラストマーにより形成されることにより形成されることを特徴とする。
【0007】
この発明では、スプリングガイドの反スプリング側に設けられる被覆部によって、スプリングガイドに対する地面からの飛び石の衝突や水の付着が防止される。
【0008】
また、本発明は、樹脂材料によって形成され、車体側にコイルスプリングが載置される本体部と、本体部においてコイルスプリングとは反対側の反スプリング側の全体を覆う被覆部と、本体部とコイルスプリングの端部との間において本体部と一体成形され、本体部においてコイルスプリングが載置される側の全体を覆う支持部と、を備え、被覆部は、本体部を形成する樹脂材料とは物性値が異なる材質により形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、スプリングガイドのスプリング側であって、車体重量を支える最も負荷がかかる領域に対し飛び石の衝突や水の付着が防止される。また、特に飛び石等の衝突による衝撃からスプリングガイドを保護することができる。
【0010】
また、本発明は、本体部には、外側端部からコイルスプリングが載置される側に向かって延在する側壁を備え、側壁は、被覆部で覆われることを特徴とする。
【0011】
この発明では、特に飛び石等の衝突による衝撃からスプリングガイドを保護することができる。
【0012】
また、本発明は、被覆部と支持部とは、同じ材質によって形成されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、被覆部と支持部が同じ材質であるため、異なる材質である場合よりも、コストを低減しやすい。
【0014】
また、本発明は、本体部の反スプリング側には、前記本体部の下面から突出するリブが設けられ、被覆部は、リブを埋没させるように本体部の反スプリング側を覆うことを特徴とする。
【0015】
この発明では、リブによって本体部が補強され、本体部の耐久性を向上させることができる。また、リブが被覆部に埋没されるため、リブへの飛び石等の衝突を抑制でき、リブの損傷による耐久性の低下を抑制できる。
【0016】
また、本発明は、サスペンション装置であって、上記のいずれかのスプリングガイドと、ショックアブソーバと、ショックアブソーバのロッドの先端に取り付けられるアッパーマウントと、スプリングガイドとアッパーマウントとの間に設けられるコイルスプリングと、ショックアブソーバのシリンダに固定され、スプリングガイドを支持する金属製の支持部材と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明では、被覆部によって、スプリングガイドに対する地面からの飛び石の衝突や水の付着が防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サスペンション装置におけるスプリングガイドの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンション装置の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの本体部を上面側からみた斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの本体部を下面側から平面図である。
図4図3におけるA-O-A線に沿った断面図である。
図5】本発明の実施形態の変形例に係るスプリングガイドを下面側から平面図である。
図6図4に対応する断面図であって、本発明の実施形態の変形例に係るスプリングガイドの断面図である。
図7図4に対応する断面図であって、本発明の実施形態の他の変形例に係るスプリングガイドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るサスペンション装置10について説明する。サスペンション装置10は、自動車(図示せず)に取り付けられ、車輪(図示せず)を位置決めするとともに減衰力を発生させて車両走行中に路面から受ける衝撃や振動を吸収して車体を安定的に懸架する装置である。
【0021】
図1に示すように、サスペンション装置10は、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバ1と、ショックアブソーバ1のピストンロッド(以下、ロッドと記す)1aの先端に取り付けられるアッパーマウント2と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周に取り付けられるスプリングガイド100と、スプリングガイド100とアッパーマウント2との間に設けられ、車体を弾性支持するコイルスプリング4と、ロッド1aに嵌装されショックアブソーバ1の縮み側のストロークを規制するバンプクッション5と、シリンダ1bのロッド1a側の端部に嵌装されるバンプストッパ6と、ロッド1aを保護する筒状のダストブーツ7と、を備える。
【0022】
ショックアブソーバ1は、シリンダ1bと、シリンダ1bの開口部から突出する円柱状のロッド1aと、を有する。ショックアブソーバ1は、複筒型のショックアブソーバであり、シリンダ1bは、シリンダ1bの外郭を構成する有底円筒状のアウターチューブと、アウターチューブの内側に設けられるインナーチューブ(不図示)と、を有する。ロッド1aの下端部には、インナーチューブ(不図示)内を伸側室と圧側室とに区画するピストン(不図示)が連結されている。
【0023】
シリンダ1bのロッド1a側とは反対側の端部には、車輪を保持するハブキャリア(不図示)とショックアブソーバ1とを連結するためのブラケット1cが設けられる。説明の便宜上、アッパーマウント2側をサスペンション装置10の上側、ブラケット1c側をサスペンション装置10の下側として上下方向を図示するように規定する。なお、サスペンション装置10の上下方向は、サスペンション装置10の軸方向(中心軸方向)であり、ショックアブソーバ1の伸縮方向である。また、サスペンション装置10の径方向(ショックアブソーバ1の径方向)は、サスペンション装置10の軸方向に直交する。
【0024】
ショックアブソーバ1は、アッパーマウント2を介して車体に連結されるとともに、ブラケット1cによりハブキャリアに連結されて車両に組み付けられる。このように構成されたショックアブソーバ1は、ロッド1aがシリンダ1bに対して軸方向(図1の上下方向)に移動したときに、減衰力が発生するように構成されている。サスペンション装置10は、このショックアブソーバ1の減衰力によって車体の振動を素早く減衰させる。
【0025】
コイルスプリング4は、スプリングガイド100とアッパーマウント2との間に設けられる。コイルスプリング4は、スプリングガイド100とアッパーマウント2とによって圧縮された状態で挟持され、ショックアブソーバ1を伸長方向に付勢する。
【0026】
アッパーマウント2とコイルスプリング4の上端部との間にはラバーシート8が設けられる。これにより、アッパーマウント2とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。スプリングガイド100の本体部101とコイルスプリング4の下端部との間には、後述する弾性部102が設けられる。これにより、スプリングガイド100の本体部101とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。
【0027】
図1に示すように、スプリングガイド100は、シリンダ1bの外周に取り付けられ、コイルスプリング4を下方から支持する部材である。
【0028】
スプリングガイド100は、樹脂材料からなる本体部101と、本体部101の上面に一体成形された支持部としての弾性部102と、本体部101の下面に一体成形され当該下面を覆う被覆部103と、を有する。なお、以下では、コイルスプリング4が載置される本体部101の上面側(図1図4中の上側)を本体部101の「スプリング側」、その反対である本体部101の下面側を本体部101の「反スプリング側」とも称する。本体部101の反スプリング側は、サスペンション装置10が車両に取り付けられた状態において、地面に面する側のことである。つまり、本体部101のスプリング側に弾性部102が設けられ、本体部101の反スプリング側に被覆部103が設けられる。
【0029】
図2は本体部101を上面側(スプリング側)から見た斜視図、図3は本体部101を下面側(反スプリング側)から見た平面図、図4図3におけるA-O-A線に沿ったスプリングガイド100の断面図である。スプリングガイド100の本体部101は、図2から図4に示すように、コイルスプリング4の下端部が載置される円板状のベース部110と、ベース部110から上方及び下方に突出するように形成される円筒状の筒部112と、ベース部110の径方向外側端部から斜め上方に向かって延在する側壁111と、筒部112の外周側に設けられるハブ113と、本体部101の下面から突出する複数のリブ114(図3参照)と、を備える。側壁111は、円環状であり、図4に示すように、ベース部110から上方に向かうにしたがって内径が大きくなるように傾斜している。
【0030】
筒部112は、サスペンション装置10の軸方向(上下方向)に貫通し、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通される挿通孔120を有する。図1に示すように、挿通孔120は、スプリングガイド100をシリンダ1bの外周に取り付けたときに、スプリングガイド100の中心から車体側に偏心した位置に形成される。
【0031】
図2に示すように、挿通孔120には、その内周面121から径方向内側に向かって突出する複数の凸部122が設けられる。凸部122は、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周面を支持する。各凸部122は、挿通孔120の軸方向(すなわち、サスペンション装置10の軸方向)に沿って直線状に設けられる。なお、図2を除いた図面では、凸部122の図示を省略している。
【0032】
凸部122は、例えば、その断面形状が丸みを帯びた台形状あるいは半円形状となるように形成され、シリンダ1bの外周面に線接触する。凸部122は、挿通孔120の周方向に沿って等間隔で複数配置される。このため、スプリングガイド100は、挿通孔120の中心軸がシリンダ1bの中心軸に一致するように位置決めされる。
【0033】
図1に示すように、シリンダ1bの外周面には、金属製の支持リング3が溶接により固定されている。支持リング3は、スプリングガイド100を支持する支持部材である。スプリングガイド100は、挿通孔120がシリンダ1bの外周に嵌合され、スプリングガイド100の筒部112の下端部が支持リング3によって支持されることにより、シリンダ1bの外周に取り付けられる。
【0034】
スプリングガイド100は、上方からシリンダ1bに嵌め込まれ、支持リング3に当接することで、シリンダ1bに取り付けられる。換言すれば、シリンダ1bは、スプリングガイド100の挿通孔120の下部開口端125Lから挿入される。つまり、下部開口端125Lは、シリンダ1bが挿入される入口であり、下部開口端125Lとは反対側の開口端である上部開口端125Uからシリンダ1bの上端部が突出する。
【0035】
ハブ113は、図1及び図2に示すように、コイルスプリング4の内側において、ベース部110から上方に突出するように設けられる。ハブ113は、有底円筒形状であり、上部113bが底部とされ、下部に開口部を有する(図1参照)。ハブ113の筒部113cの外周は、コイルスプリング4の下端部の内周に当接し、コイルスプリング4の径方向の位置を規定する。つまり、ハブ113は、コイルスプリング4の下端部の位置を規定する位置規定部として機能する。ハブ113によってコイルスプリング4の下端部が保持されるので、コイルスプリング4の傾き(倒れ)が防止される。
【0036】
複数のリブ114は、図3に示すように、径方向に延びるよう、筒部112又はハブ113から略放射状に設けられる。つまり、ハブ113の筒部113c(図1図4参照)の内側にも、複数のリブ114が設けられている。本体部101の下面(反スプリング側)に複数のリブ114が設けられることによって、本体部101が補強され、スプリングガイド100の耐久性(剛性)が向上する。なお、リブ114の数、形状、配置は、図3に示す形態に限定されるものではない。また、図3においてハッチングを施した部分がリブ114であり、一部のリブ114については図3における符示を省略している。また、図1図4、及び後述する図6及び図7における二点鎖線は、リブ114とベース部110との境界部分を模式的に表したものである。
【0037】
弾性部102及び被覆部103は、それぞれ本体部101の樹脂材料とは物性値が異なる材質により形成される。具体的には、弾性部102及び被覆部103は、それぞれ本体部101の樹脂材料よりも弾性率が小さい熱可塑性エラストマーによって、樹脂製の本体部101に一体成形される。つまり、本実施形態では、弾性部102と被覆部103とは、互いに同じ材質によって形成される。熱可塑性エラストマーには、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、シリコーンエラストマー等が含まれる。
【0038】
図4に示すように、弾性部102は、ベース部110の上面の全体及び側壁111の上面(内側面)の全体を覆うように形成される。弾性部102は、その厚みが一様となるように形成される。なお、弾性部102の厚みは、一様に限定されるものではなく、部位によって厚みが異なっていてもよい。
【0039】
コイルスプリング4が載置される本体部101のベース部110には、車体重量に応じた荷重が作用する。弾性部102がベース部110に一体成形されることで、車体重量に応じた荷重が作用するベース部110において、水等の外乱に伴う強度低下が抑制される。また、弾性部102は、本体部101の上面においてコイルスプリング4が当接する部分と当該当接する部分から径方向内側の領域の全体を覆うように設けられることが望ましい。同様に、被覆部は、本体部101(及び弾性部102)を挟んでコイルスプリング4及びコイルスプリング4の径方向内側の空間に対向する領域の全体において本体部101の下面を覆うように設けられることが望ましい。これらの構成によれば、車体重量に応じた荷重を支える領域において本体部101に対する水等の外乱の影響を排除することができ、本体部101の強度低下を抑制することができる。なお、本実施形態では、弾性部102と被覆部103は一体に成形されるが、弾性部102は本体部101と一体に形成されていればよく、被覆部103とは別体として(分離して)形成されていてもよい。
【0040】
なお、本明細書において、「コイルスプリング4が本体部101のベース部110に載置される」とは、コイルスプリング4の下端がベース部110に直接接触する場合のみならず、本実施形態のようにコイルスプリング4の下端がベース部110に設けられる弾性部102に接触する場合も含む意味である。言い換えれば、「コイルスプリング4が本体部101のベース部110に載置される」とは、コイルスプリング4が本体部101のベース部110に直接載置される場合と、コイルスプリング4が弾性部102(支持部)を介して本体部101のベース部110に間接的に載置される場合との両方を含む意味である。
【0041】
さらに、弾性部102は、ベース部110の上面全体及び側壁111の上面(内側面)全体にわたって形成されている。このため、コイルスプリング4が破断(折損)した場合、コイルスプリング4の破断部が、ベース部110及び側壁111の上面に落下したとしても、弾性部102によって、破断部からの衝撃を吸収することができる。これにより、スプリングガイド100の本体部101に作用する荷重が分散される。その結果、スプリングガイド100のベース部110及び側壁111の破損を効果的に防止することができる。なお、コイルスプリング4の破断部とは、例えば、コイルスプリング4の破断時に飛散した破片の破断部、及び、コイルスプリング4が上下に分離されるように破断したときの上側のコイルスプリング4の下端の破断部である。
【0042】
また、スプリングガイド100のベース部110上面全面及び側壁111の上面全面が、弾性部102によって被覆されることで、衝突位置の予測が難しい飛び石等の衝突に起因する本体部101の損傷も防止することができる。
【0043】
被覆部103は、本体部101の反スプリング側の全体にわたって本体部101を覆うように設けられる。具体的には、被覆部103は、ベース部110の下面全体及び側壁111の下面(外側面)全体を覆うように形成される。また、被覆部103は、リブ114の形状に沿って複数のリブ114の外面全体に設けられる。つまり、被覆部103は、図3に示す本体部101の反スプリング側の形状を転写したような形状で本体部101の反スプリング側(下面)に設けられる。
【0044】
ここで、一般に、車両に取り付けられるサスペンション装置では、車両の走行に伴いスプリングガイドへの飛び石の衝突や水の付着が起こる可能性がある。スプリングガイドでは、本体部における下面側であって地面に面する反スプリング側で特に飛び石の衝突や水の付着が起きやすい。飛び石の衝突や水の付着によってスプリングガイドが劣化・損傷し、スプリングガイドの耐久性が低下するおそれがある。また、スプリングガイドが樹脂材料によって形成される場合には、融雪剤などに含まれる塩化カルシウムを含んだ水がスプリングガイドに付着すると、特にスプリングガイドの劣化・損傷が生じやすい。
【0045】
これに対し、本実施形態では、飛び石の衝突や水の付着が生じやすいスプリングガイド100の本体部101の反スプリング側は、被覆部103で覆われている。このため、被覆部103によって飛び石の衝突による衝撃が緩和されると共に、水の付着が抑制される。したがって、スプリングガイド100、ひいては、サスペンション装置10の耐久性を向上させることができる。なお、被覆部103の厚さは、所望する耐久性を実現できるものであれば、任意に形成することができるが、可能な限り薄くすることで重量増加を抑制することができる。
【0046】
被覆部103及び弾性部102は、それぞれ射出成型により本体部101に一体成形される。さらに言えば、被覆部103及び弾性部102は、図4に示すように互いに一体に形成される。これにより、被覆部103及び弾性部102を容易に製造できると共に製造工程が簡素化されるため、コスト低減することができる。
【0047】
被覆部103及び弾性部102の成型方法としては、例えば、本体部101を予め成形さしておくと共に、本体部101にはスプリング側と反スプリング側を連通させる孔を設けておく。そして、本体部101を金型内に収容した状態で被覆部103及び弾性部102の材料を金型内に注入し、本体部101の孔を通じてスプリング側と反スプリング側との両方に材料をいきわたらせる。このようにすることで、金型交換や段取替をすることなく、本体部101のスプリング側と反スプリング側との一方からの材料注入によって、本体部101の両側(スプリング側及び反スプリング側)にそれぞれ被覆部103及び弾性部102を同時に成形することができる。なお、被覆部103及び弾性部102の成形方法は、このような方法に限られるものではなく、射出成型以外の方法であってもよい。
【0048】
本体部101の材料、被覆部103の材料、及び弾性部102の材料は、上述の耐久性向上の観点に加え、本体部101の材料と被覆部103及び弾性部102の材料との結合力が高くなる材料の組み合わせを考慮して選定することが好ましい。
【0049】
ここで、本明細書における「物性値が異なる材質」について説明する。樹脂成形体の製法(成型方法)としては、上述の射出成形のほか、押出成形など種々の製法が知られている。そして、樹脂成型体は、製法の違いにより、同じ材料であっても物性値が異なることがある。本明細書における「物性値が異なる材質」とは、材料としての種類が異なる材質ことのみならず、同種の材料であっても異なる製法によって製造されることで物性値が異なる材質も含む意味である。
【0050】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0051】
本実施形態では、飛び石の衝突や水の付着が起きやすいスプリングガイド100の本体部101の反スプリング側が被覆部103によって覆われているため、飛び石の衝突や水の付着による本体部101の劣化・損傷を抑制することができる。したがって、スプリングガイド100及びサスペンション装置10の耐久性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、コイルスプリング4が載置されるベース部110の上面を含む本体部101のスプリング側には、支持部としての弾性部102が設けられる。これにより、本体部101のスプリング側への飛び石の衝突や水の付着による劣化・損傷が抑制される。
【0053】
また、スプリングガイド100における被覆部103と弾性部102とは、互いに同じ材質、具体的にはエラストマーによって形成される。よって、被覆部103と弾性部102とが異なる材質で形成される場合と比較して、コストを低減することができる。また、被覆部103と弾性部102とが同じ材質であるため、両者の同時成形や一体成形を行いやすく、製造が容易となる。
【0054】
また、本実施形態では、被覆部103と弾性部102とは、本体部101を形成する樹脂材料よりも弾性率が小さいエラストマーによって形成されるため、特に飛び石等の衝突による衝撃からスプリングガイド100を効果的に保護することができる。また、弾性部102がエラストマーによって形成されることで、コイルスプリング4からスプリングガイド100に入力される荷重を弾性部102によって吸収することができる。
【0055】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0056】
まず、図5及び図6に示す被覆部103の変形例について説明する。
【0057】
上述のように、本体部101の下面にリブ114を設けると、本体部101が補強され、本体部101の耐久性を向上させることができる。その一方、飛び石等によってリブ114に対して側面114a,114b(図3参照)から衝撃が加わると、リブ114が破損し、本体部101の耐久性が低下するおそれがある。
【0058】
上記実施形態では、被覆部103は、リブ114を含む本体部101の反スプリング側の形状に沿って設けられる。上記実施形態では、リブ114の側面114a,114bも被覆部103によって覆われるため、被覆部103によってリブ114の側面114a,114bへの衝撃を緩和でき、リブ114、ひいては本体部101の耐久性を向上させることができる。
【0059】
これに対し、図5及び図6に示す変形例では、被覆部103は、本体部101の反スプリング側の形状に沿うものではない。この変形例では、リブ114が被覆部103に埋没しており、被覆部103は、略円錐台形状に形成される(図6参照)。つまり、リブ114が埋没するように被覆部103によって覆われることで、リブ114の形状が露出せず、リブ114の外形状が外観から視認されない(図5参照)。これにより、飛び石等によってリブ114の側面114a,114bに衝撃が作用することが抑制されるため、上記実施形態よりもさらに耐久性を向上させることができる。なお、本変形例における被覆部103の形状は、略円錐台形状に限られず、複数のリブ114が埋没するように構成されるものであれば、本変形例と同様の効果を奏する。
【0060】
次に、その他の変形例について説明する。
【0061】
上記実施形態では、ベース部110の径方向外側端部から斜め上方に向かって側壁111が延在するスプリングガイド100について説明したが、本発明はこれに限定されない。側壁111は省略することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、被覆部103は、本体部101の樹脂材料とは物性値が異なる熱可塑性エラストマーである。これに対し、被覆部103は、本体部101の樹脂材料と物性値が異なるものである限り、その他の材質で形成されるものでもよい。例えば、被覆部103は、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマーを採用してもよい。また、被覆部103は、エラストマーに限定されることもなく、その他の材料を採用してもよい。具体的には、被覆部103には、本体部101の材料と比較して吸水率の低い樹脂材料(例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレンなど)を採用してもよい。また、被覆部103は、スプレー等の既知の方法で本体部101に施される防水コーティング材であってもよい。被覆部103を防水コーティング材とすることで、スプリングガイド100を軽量化しつつ、特に水の付着による本体部101の劣化・損傷を抑制できる。また、被覆部103は、本体部101に施される金属メッキでもよい。被覆部103を金属メッキとすることで、環境劣化を抑制することができる。
【0063】
また、被覆部103は、本体部101よりも弾性率が大きいものであってもよい。被覆部103は、本体部101よりも弾性率が小さいほうが割れ等を生じずに衝撃を吸収できるため、本体部101を保護するには効果的であるが、101より弾性率が大きい場合であっても、衝撃から本体部101を保護することが可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、被覆部103と弾性部102とは、同じ材質であるが、互いに異なる材質であってもよい。弾性部102としては、被覆部103と同様に、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマーを採用してもよい。また、弾性部102は、エラストマーに限定されることもなく、その他の樹脂材料を採用してもよい。また、支持部として、コーティング材や金属メッキを採用してもよい。また、被覆部103と弾性部102とは、互いに別体に形成され、互いに異なる材質であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、本体部101のスプリング側に支持部としての弾性部102が設けられる。これに対し、支持部(弾性部102)は、必須の構成ではない。図7に示すように、本体部101のスプリング側に支持部が設けられず、反スプリング側に被覆部103が設けられるのみの構成であってもよい。なお、少なくとも側壁111の上面を覆い被覆部103と連続する(一体に形成される)樹脂層によって係止部を形成することで、側壁111に対して被覆部103及び係止部が引っ掛かるため、本体部101からの被覆部103の剥離を抑制することができる。また、少なくとも側壁111の上面及び内面(つまり、側壁111全体)を覆う係止部を設けることで、外乱による側壁の強度低下を抑制することができ、コイルスプリング4の破断時にコイルスプリング4が車体に衝突するおそれを低減することができる。また、反対に、挿通孔120の内周を除くスプリングガイド100の全周に樹脂層(被覆部103及び弾性部102)を設けてもよい。これによれば、スプリングガイド100の全面を飛び石や水から保護することができると共に、スプリングガイド100をシリンダ1bに圧入できるため、取り付けがしやすくなる。
【0066】
また、上記実施形態では、単一層の被覆部103が設けられる。これに対し、本体部101には、2層以上の複数層(多層)の被覆部103が設けられてもよい。この場合、複数の層の材質は、一部又は全部が重複してもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、被覆部103は、本体部101の反スプリング側の全体にわたって設けられる。これに対し、被覆部103は、本体部101の反スプリング側の一部に設けられるものでもよい。本体部101を保護するには、本体部101の反スプリング側の全体にわたって被覆部103が設けられることが望ましいが、少なくとも一部に設けられれば、本体部101を飛び石から保護する効果を発揮できる。
【0068】
また、スプリングガイド100の表面に設けられる樹脂層(支持部102、被覆部103)は、ダストブーツ7と同じ材質によって形成され、ダストブーツ7と一体に形成されてもよい。この場合には、サスペンション装置10の製造コストを低減することができる。
【0069】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0070】
スプリングガイド100は、樹脂材料によって形成され車体側にコイルスプリング4が載置される本体部101と、本体部101においてコイルスプリング4とは反対側の反スプリング側を覆う被覆部103と、を備え、被覆部103は、本体部101を形成する樹脂材料とは物性値が異なる材質により形成される。
【0071】
この構成では、スプリングガイド100の反スプリング側に設けられる被覆部103によって、スプリングガイド100に対する地面からの飛び石の衝突や水の付着が防止される。したがって、スプリングガイド100の耐久性を向上させることができる。
【0072】
また、スプリングガイド100は、本体部101を形成する樹脂材料とは物性値が異なる材質により形成され本体部101とコイルスプリング4の端部との間において本体部101と一体成形される弾性部102をさらに備える。
【0073】
この構成では、スプリングガイド100のスプリング側であって、車体重量を支える最も負荷がかかる領域に対し飛び石の衝突や水の付着が防止される。よって、スプリングガイド100の耐久性をより一層向上させることができる。
【0074】
また、スプリングガイド100では、被覆部103と弾性部102とは、同じ材質によって形成される。
【0075】
この構成では、被覆部103と弾性部102が同じ材質であるため、異なる材質である場合よりも、コストを低減しやすい。また、被覆部103と支持部との同時成形や一体成形を行いやすく、製造が容易となる。
【0076】
また、スプリングガイド100では、被覆部103と弾性部102とは、本体部101を形成する樹脂材料よりも弾性率が小さいエラストマーによって形成される。
【0077】
この構成では、特に飛び石等の衝突による衝撃からスプリングガイド100を保護することができる。また、弾性部102がエラストマーによって形成されることで、コイルスプリング4からスプリングガイド100に入力される荷重を支持部によって吸収することができる。
【0078】
また、変形例に係るスプリングガイド100では、本体部101の反スプリング側には、リブ114が設けられ、被覆部103は、リブ114を埋没させるように本体部101の反スプリング側を覆う。
【0079】
この構成では、リブ114によって本体部101が補強され、本体部101の耐久性を向上させることができる。また、リブ114が被覆部103に埋没されるため、リブ114への飛び石等の衝突を抑制でき、リブ114の損傷による耐久性の低下を抑制できる。
【0080】
また、サスペンション装置10は、スプリングガイド100と、ショックアブソーバ1と、ショックアブソーバ1のロッド1aの先端に取り付けられるアッパーマウント2と、スプリングガイド100とアッパーマウント2との間に設けられるコイルスプリング4と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bに固定され、スプリングガイド100を支持する金属製の支持リング3と、を備える。
【0081】
この構成では、被覆部103によって、スプリングガイド100に対する地面からの飛び石の衝突や水の付着が防止される。したがって、サスペンション装置10の耐久性を向上させることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0083】
1…ショックアブソーバ、1a…ロッド、1b…シリンダ、2…アッパーマウント、3…支持リング(支持部材)、4…コイルスプリング、10…サスペンション装置、100…スプリングガイド、101…本体部、102…弾性部(支持部)、103…被覆部、114…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7