(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ホイールキャップ
(51)【国際特許分類】
B60B 7/10 20060101AFI20231122BHJP
B60B 7/00 20060101ALI20231122BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60B7/10
B60B7/00 S
F16B21/06
(21)【出願番号】P 2020055170
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】的場 啓介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-193601(JP,A)
【文献】特開昭56-127810(JP,A)
【文献】実開昭54-112968(JP,U)
【文献】実開昭62-000004(JP,U)
【文献】特開2015-098207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 7/00 - 7/14
F16B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体と、
車両のホイールに設けられた取付部へ取付け可能とされ、前記取付部への取付状態で所定方向側へ変形されることによって前記取付部から外れる方向への移動が制限されるリテーナと、
前記キャップ本体に設けられ、前記リテーナに荷重を付与して前記リテーナを所定方向側へ変形させると共に、前記リテーナへ係合されて前記リテーナから外れる方向への移動が制限される荷重付与部と、
を備え
、
前記荷重付与部は、前記リテーナを変形させる前の状態で前記リテーナの保持が可能とされ、前記リテーナの保持状態で前記荷重付与部が前記リテーナを変形させる方向へ前記リテーナに対して移動されると前記保持状態が解消される、ホイールキャップ。
【請求項2】
前記リテーナは、前記取付部に形成された孔部に貫通配置され、前記取付部への取付状態では、前記リテーナは、前記孔部の開口径方向外側へ弾性変形されることによって前記孔部から抜ける方向への移動が抑制され、
前記荷重付与部は、前記リテーナと共に前記孔部に貫通配置されると共に、前記リテーナを前記孔部の開口径方向外側へ弾性変形させる請求項1に記載のホイールキャップ。
【請求項3】
前記リテーナは、前記キャップ本体とは別体で構成された請求項1又は請求項2に記載のホイールキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪を構成するホイールに設けられるホイールキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に開示されているホイールキャップは、ホイールキャップの本体部分へ一体的に連結されたカバー部材を備えている。カバー部材は、互いに対向配置された一対の弾性片を備えている。一対の弾性片の間に板ばねが設けられており、板ばねは、両弾性片を互いに離間する方向へ付勢している。弾性片は、ホイールにおけるカバー部材の取付部分に形成された孔部に貫通配置され、板ばねの付勢力によって孔部の縁等へ圧接されている。このようにしてホイールキャップがホイールへ組付けられている。
【0003】
このような構成では、ホイールへのホイールキャップの組付時に両弾性片が、各々の弾性片の基端側の部分を中心に互いに接近する方向及び互いに離間する方向へ弾性変形される。このような構成では、弾性片での弾性変形の繰り返しによる弾性片の基端側の部分への曲げ応力の集中を抑制するために弾性片を長くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ホイールキャップのホイールへの組付部分におけるホイールキャップのホイールへの組付方向の寸法が長くなることを抑制できるホイールキャップを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のホイールキャップは、キャップ本体と、車両のホイールに設けられた取付部へ取付け可能とされ、前記取付部への取付状態で所定方向側へ変形されることによって前記取付部から外れる方向への移動が制限されるリテーナと、前記キャップ本体に設けられ、前記リテーナに荷重を付与して前記リテーナを所定方向側へ変形させると共に、前記リテーナへ係合されて前記リテーナから外れる方向への移動が制限される荷重付与部と、を備えている。
【0007】
本発明の第1の態様のホイールキャップでは、リテーナがホイールに設けられた取付部へ取付けられる。この状態でキャップ本体に設けられた荷重付与部がリテーナへ荷重を付与すると、リテーナは、所定方向側へ変形される。このように、ホイールの取付部に対するリテーナの取付状態でリテーナが所定方向側へ変形されることによってホイールの取付部から外れる方向へのリテーナの移動が制限される。このようにして、キャップ本体がホイールに取付けられる。
【0008】
また、上記のようにキャップ本体の荷重付与部がリテーナを所定方向側へ変形させ、更に、荷重付与部がリテーナに係合されると、リテーナから外れる方向への荷重付与部の移動が制限される。このように、リテーナから外れる方向への荷重付与部の移動が制限されることによって、所定方向側へ変形されたリテーナの元の形状へ戻るような変形が抑制される。これによって、キャップ本体のホイールへの取付状態を維持できる。
【0009】
ここで、リテーナは、キャップ本体の荷重付与部からの荷重によって変形される。したがって、リテーナがホイールの取付部に取付けられる際にリテーナに生じる変形を無くす又は小さくできる。これによって、キャップ本体のホイールへの組付けの際にリテーナに曲げ等の応力が集中することを抑制できる。このため、キャップ本体のホイールへの組付方向へのリテーナ及び荷重付与部の寸法を短くできる。
【0010】
本発明の第2の態様のホイールキャップは、上記第1の態様のホイールキャップにおいて、前記リテーナは、前記取付部に形成された孔部に貫通配置され、前記取付部への取付状態では、前記リテーナは、前記孔部の開口径方向外側へ弾性変形されることによって前記孔部から抜ける方向への移動が抑制され、前記荷重付与部は、前記リテーナと共に前記孔部に貫通配置されると共に、前記リテーナを前記孔部の開口径方向外側へ弾性変形させる。
【0011】
本発明の第2の態様のホイールキャップによれば、リテーナ及び荷重付与部がホイールの取付部に形成された孔部に貫通配置された状態では、リテーナが荷重付与部によって孔部の開口径方向外側へ変形される。このように、リテーナが変形されることによって、ホイールの取付部の孔部から抜ける方向へのリテーナの移動が抑制され、取付部からのリテーナの脱落が抑制される。したがって、この状態で、荷重付与部がリテーナへ係合されてリテーナから外れる方向への荷重付与部の移動が制限されると、キャップ本体のホイールからの脱落が抑制される。
【0012】
本発明の第3の態様のホイールキャップは、上記第1の態様又は第2の態様のホイールキャップにおいて、前記リテーナは、前記キャップ本体とは別体で構成されている。
【0013】
本発明の第3の態様のホイールキャップによれば、リテーナとキャップ本体とが別体で構成される。このため、キャップ本体にメッキ等を施してもリテーナにメッキ等を施さないようにできる。
【0014】
本発明の第4の態様のホイールキャップは、上記第1の態様から第3の態様の何れか1つのホイールキャップにおいて、前記荷重付与部は、前記リテーナを変形させる前の状態で前記リテーナの保持が可能とされ、前記リテーナの保持状態で前記荷重付与部が前記リテーナを変形させる方向へ前記リテーナに対して移動されると前記保持状態が解消される。
【0015】
本発明の第4の態様のホイールキャップによれば、リテーナは、荷重付与部からの荷重によって変形される前の状態で荷重付与部によって保持される。荷重付与部によるリテーナの保持状態で荷重付与部がリテーナを変形させる方向へリテーナに対して移動されると保持状態が解消される。このように、荷重付与部がリテーナに対して移動されると、荷重付与部からリテーナへ荷重が付与されてリテーナが変形される。
【0016】
このように、リテーナが荷重付与部からの荷重によって変形される前の状態で荷重付与部によって保持されることで、リテーナのホイールへの取付作業及びリテーナへの荷重の付与の作業が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明の第1の態様に係るホイールキャップは、キャップ本体のホイールへの組付方向へのリテーナ及び荷重付与部の寸法を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るホイールキャップをホイールに組付けた状態を示す車両の車幅方向外側からの側面図である。
【
図2】ホイールキャップを車両の車幅方向内側から見た側面図である。
【
図3】ホイールキャップのキャップ固定部及びリテーナを拡大した分解斜視図である。
【
図4】キャップ固定部の軸部、リテーナ、ホイールの取付部を拡大した軸部の中心軸線方向に対して直交する方向に切った断面図で、(A)は、キャップ固定部の軸部へのリテーナの仮保持状態を示し、(B)は、軸部及びリテーナが取付部の孔部へ貫通配置された状態を示し、(C)は、ホイールキャップのホイールへの組付状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、
図1から
図4の各図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において適宜示される矢印Aは、車両の車輪を構成するホイール12のリム16の軸方向一方の側及び後述するキャップ固定部22の軸部30の中心軸線方向一方の側を示す。また、矢印Bは、リム16の軸方向他方の側及び軸部30の中心軸線方向他方の側を示す。
【0020】
<本実施の形態の構成>
図1には、ホイールキャップ10が取付けられたホイール12がホイール12の中心軸方向一方の側(車両の車幅方向外側で、
図3等の矢印A方向側)から見た側面図が示されている。また、
図2には、ホイールキャップ10をホイール12の中心軸方向他方の側(車幅方向内側で、
図3等の矢印B方向側)から見た側面図が示されている。
【0021】
図1に示されるように、ホイール12は、例えば、鉄やアルミニウム等を含んだ金属が鋳造成形されることによって形成されている。ホイール12は、センタディスク14を備えている。センタディスク14は、略円板状に形成されている。センタディスク14は、車両のハブにボルト等の締結手段によって固定されている。また、ホイール12は、リム16を備えている。リム16は、略円筒形状とされており、リム16には、タイヤ(図示省略)が装着される。また、リム16は、センタディスク14の径方向外側でセンタディスク14に対する同軸上に配置されている。
【0022】
さらに、ホイール12は、複数のスポーク18を備えている。スポーク18は、センタディスク14とリム16との間で、リム16の周方向に所定角度毎に配置されている。センタディスク14とリム16とは、スポーク18によって一体的に連結されている。本実施の形態のホイールキャップ10は、リム16の周方向に互いに隣合うスポーク18の間に設けられる。
【0023】
ホイールキャップ10は、全体的に合成樹脂材によって形成されている。また、ホイールキャップ10には、装飾のための金属メッキが施されている。ホイールキャップ10は、キャップ本体20を備えている。キャップ本体20は、概ね、板状とされており、キャップ本体20の厚さ方向は、概ね、車幅方向とされている。
【0024】
キャップ本体20の外周形状は、ホイール12においてリム16の周方向に互いに隣合うスポーク18の間の空間の形状に倣っている。ホイールキャップ10がホイール12に取付けられることで、ホイール12においてリム16の周方向に互いに隣合うスポーク18の間の空間が、ホイール12の中心軸方向一方の側(車両の車幅方向外側)から覆われる。
【0025】
図2に示されるように、キャップ本体20におけるホイール12の中心軸方向他方の側(車幅方向内側で、
図3等の矢印B方向側)には、複数、好ましくは、3つのキャップ固定部22が設けられている。
図3に示されるように、キャップ固定部22は、キャップ本体20と一体成形されている。キャップ固定部22は、荷重付与部としての軸部30が設けられている。軸部30は、円筒形状とされており、軸部30の中心軸線方向は、ホイール12の中心軸方向に沿っている。
【0026】
また、軸部30の中心軸線方向に対して直交する側の軸部30の側方には、複数の当接片32が設けられている。これらの当接片32は、軸部30の中心軸線方向一端側(
図3の矢印A方向側)で軸部30の外周方向に所定の間隔をおいて設けられている。当接片32は、軸部30の外周面から連続して形成されており、当接片32における軸部30の径方向外側の面は、軸部30の中心軸線方向他方の側(
図3の矢印B方向側)から一方の側へ向けて軸部30の中心軸線から離れている。
【0027】
当接片32よりも軸部30の中心軸線方向他方の側には複数の押圧片34が設けられている。これらの押圧片34は、軸部30の外周方向に所定の間隔をおいて設けられている。各押圧片34は、軸部30の外周面から軸部30の径方向外側へ突出形成されている。また、
図3及び
図4に示されるように、押圧片34における軸部30の中心軸線方向他方の側の端部は、斜辺部36とされており、斜辺部36では、軸部30の中心軸線方向他方の側へ向けて軸部30の径方向外側へ突出寸法が小さくなっている。また、各押圧片34には、保持溝38が形成されている。各保持溝38は、上記の押圧片34の軸部30とは反対側の面で軸部30とは反対側へ向けて開口されている。
【0028】
一方、
図3に示されるように、本ホイールキャップ10は、リテーナ40を備えている。リテーナ40は、合成樹脂材によって形成され、ホイール12に設けられた取付部42の円形の孔部44(
図4(A)~(C)参照)に軸部30と共に貫通配置される。リテーナ40は、一対の基部46を備えている。一方の基部46は、軸部30の中心軸線を挟んで他方の基部46とは反対側に配置されている。両基部46は、板状に形成されており、基部46の厚さ方向は、軸部30の中心軸線方向に沿っている。
【0029】
基部46における軸部30の径方向外側の端部は、概ね、軸部30の中心軸線を曲率の中心として湾曲されている。一方の基部46における軸部30の径方向外側の端部から軸部30の中心軸線を通って他方の基部46における軸部30の径方向外側の端部までの長さ、すなわち、両基部46の外側の径方向寸法は、取付部42の孔部44の内径寸法よりも大きくされている。
【0030】
また、一方の基部46における軸部30の径方向内側の端部から軸部30の中心軸線を曲率の中心を通って他方の基部46における軸部30の径方向内側の端部までの長さ、すなわち、両基部46の内側の径方向寸法は、全ての押圧片34における軸部30の径方向外側の端を通る仮想円の直径寸法よりも小さくされている。各基部46における軸部30の径方向内側の端部は、上述した、各押圧片34の保持溝38の内側に入ることができ、各基部46における軸部30の径方向内側の端部が保持溝38に入ることによって、基部46、すなわち、リテーナ40がキャップ固定部22に保持される。
【0031】
基部46における軸部30の中心軸線方向他方の側には、一対の弾性片48が設けられている。弾性片48は、基部46における軸部30の中心軸線方向他方の面から延出された板状とされており、概ね、基部46の中心線を曲率の中心として弧状に湾曲されている。したがって、各弾性片48の厚さ方向は、軸部30の中心軸線方向に対して、概ね、直交する方向とされ、一方の弾性片48は、他方の弾性片48に対して基部46の中心線を挟んで対向されている。
【0032】
各弾性片48における軸部30の中心軸線方向他方の側には、突出部50が設けられている。突出部50は、各弾性片48における軸部30の中心軸線方向他方の端部から軸部30の径方向外側へ突出形成されている。ここで、各突出部50における軸部30の径方向外側部分を通る仮想円の直径寸法の最大値は、ホイール12の取付部42の孔部44の内径寸法以下とされている。このため、突出部50は、弾性片48を弾性変形させないか、又は、弾性片48の弾性変形を最小に抑えた状態で孔部44(
図4(A)、(B)参照)を通ることができる。
【0033】
また、各突出部50における軸部30の径方向外側面は、斜面とされており、斜面は、軸部30の中心軸線方向一方の側(
図3の矢印A方向側)へ向けて軸部30の中心軸に対して軸部30の径方向外側へ離れている。さらに、リテーナ40の弾性片48において軸部30の中心軸線方向他方の側の端部における軸部30の中心軸線側の面は、変形保持部52とされている。軸部30の中心軸線を挟んだ一方の弾性片48の変形保持部52と他方の弾性片48の変形保持部52との間の最大間隔は、上述した軸部30の複数の押圧片34において軸部30の径方向に軸部30の中心軸線から最も離れた部分を通る仮想円の直径寸法よりも短い。
【0034】
このため、押圧片34において軸部30の径方向に軸部30の中心軸線から最も離れた部分と、変形保持部52とが対向された状態では、変形保持部52が押圧片34から受ける押圧力によって弾性片48が軸部30の径方向外側へ弾性変形される。この状態では、各押圧片34において軸部30の径方向に軸部30の中心軸線から最も離れた部分に対して変形保持部52が弾性片48の弾性によって圧接される。
図4(C)に示されるように、この状態での各弾性片48の突出部50において軸部30の径方向に軸部30の中心軸線から最も離れた部分を通る仮想円の直径寸法は、ホイール12の取付部42の孔部44の内径寸法よりも大きくなる。
【0035】
一方、
図4に示されるように、弾性片48において変形保持部52よりも軸部30の中心軸線方向一方の側には、斜面部58が設定されている。斜面部58は、軸部30の中心軸線一方の側(
図4の矢印A方向側)へ向けて軸部30の中心軸線から離れる斜面とされている。斜面部58が軸部30の中心軸線方向一方の側から荷重を受けると、両弾性片48は、各弾性片48における軸部30の中心軸線方向一方の側の端部を中心に回動して互いに離れるように弾性変形される。
【0036】
また、各弾性片48における突出部50よりも軸部30の中心軸線一方の側には、抜止部54が設定されている。リテーナ40がホイール12の取付部42の孔部44へ貫通配置されて抜止部54が取付部42よりも軸部30の中心軸線方向他方の側(
図4の矢印B方向側)に配置された状態で両弾性片48が互いに離れるように弾性変形されると、抜止部54と取付部42における軸部30の中心軸線方向他方の側の面とが軸部30の中心軸線方向に互いに対向される(
図4(C)図示状態)。このため、この状態ではリテーナ40の軸部30の中心軸線方向一方の側への移動が制限される。
【0037】
上述したように、本実施の形態では、キャップ本体20に3つのキャップ固定部22が設けられている。ここで、3つのキャップ固定部22のうち、少なくとも1つのキャップ固定部22の軸部30に設けられるリテーナ40の一対の弾性片48の対向方向は、他の1つのキャップ固定部22の軸部30に設けられるリテーナ40の一対の弾性片48の対向方向とは異なる方向とされている。
【0038】
<本実施の形態の作用、効果>
このような構成の本実施の形態では、キャップ本体20とリテーナ40とが別体で構成される。キャップ本体20が、ホイール12へ取付けられる前の状態で、
図4(A)に示されるように、キャップ本体20の各キャップ固定部22の軸部30にリテーナ40が仮保持される。この仮保持状態では、
図4(A)に示されるように、軸部30における軸部30の中心軸線方向他方の側(
図4(A)の矢印B方向側)の部分がリテーナ40の両
弾性片48の間に配置される。この状態では、リテーナ40の基部46と、軸部30の押圧片34の保持溝38とが軸部30の径方向に互い対向され、基部46が保持溝38の内側に入る。これによって、リテーナ40がキャップ固定部22に保持され、キャップ固定部22に対するリテーナ40の相対移動が抑制される。
【0039】
この仮保持状態で、リテーナ40及び軸部30が、軸部30の中心軸線方向一方の側(
図4(A)の矢印A方向側)からホイール12の取付部42の孔部44へ貫通配置される(
図4(B)図示状態)。この状態では、リテーナ40の各弾性片48の突出部50が、取付部42よりも軸部30の中心軸線方向他方の側に配置される。ここで、各突出部50における軸部30の径方向外側部分を通る仮想円の直径寸法の最大値は、ホイール12の取付部42の孔部44の内径寸法以下とされている。このため、突出部50は、弾性片48を弾性変形させないか、又は、弾性片48の弾性変形を最小に抑えた状態で孔部44を通ることができる。
【0040】
また、この状態では、リテーナ40の基部46における軸部30の中心軸線方向他方の側の面が、取付部42における軸部30の中心軸線方向一方の側の面へ当接される。このため、この状態では、リテーナ40は、それ以上の軸部30の中心軸線方向他方の側(
図4(B)の矢印B方向側)への移動が制限される。
【0041】
次いで、この状態から更にキャップ本体20がホイール12に対して軸部30の中心軸線方向他方の側(
図4(B)の矢印B方向側)へ移動される。上記のように、この状態では、既に、リテーナ40における軸部30の中心軸線方向他方の側への移動が制限されている。このため、この状態では、軸部30がリテーナ40に対して軸部30の中心軸線方向他方の側へ移動される。このように、軸部30がリテーナ40に対して相対移動されると、リテーナ40の各弾性片48の斜面部58が押圧片34の斜辺部36によって軸部30の中心軸線方向他方の側へ押圧される。
【0042】
このように、弾性片48の斜面部58は、軸部30の中心軸線方向一方(
図4(B)の矢印A方向)の側へ向けて軸部30の径方向外側へ変位するように傾斜されている。このため、弾性片48の斜面部58が軸部30の中心軸線方向一方の側から押圧されると、両弾性片48は、各弾性片48における軸部30の中心軸線方向一方の側の端部を中心に回動して互いに離れるように弾性変形される。
【0043】
このように、リテーナ40の各弾性片48が押圧片34の斜辺部36からの押圧によって弾性変形されると、弾性片48の抜止部54と取付部42における軸部30の中心軸線方向他方の側の面とが軸部30の中心軸線方向に互いに対向される(
図4(C)図示状態)。これによって、軸部30の中心軸線方向一方の側へのリテーナ40の移動が制限され、ホイール12の取付部42からのリテーナ40の脱落が阻止される。さらに、
図4(C)に示されるように、この状態では、リテーナ40の基部46における軸部30の中心軸線側の部分が、キャップ固定部22の押圧片34に対して軸部30の中心軸線方向一方の側で対向されている。このため、キャップ固定部22のリテーナ40に対する軸部30の中心軸線方向一方の側への相対移動が制限される。
【0044】
上記のように、この状態では、ホイール12の取付部42からのリテーナ40の脱落が阻止され、キャップ固定部22のリテーナ40に対する軸部30の中心軸線方向一方の側への相対移動が制限されるため、ホイールキャップ10のホイール12からの脱落を効果的に制限できる。
【0045】
ここで、本実施の形態では、リテーナ40がホイール12の取付部42の孔部44を貫通して、キャップ本体20の軸部30がリテーナ40の弾性片48の間を軸部30の中心軸線方向に貫通する。このため、ホイール12における各取付部42の孔部44の位置に対して、キャップ本体20の各軸部30の位置にばらつきが生じても、リテーナ40の取付部42の孔部44に対する軸部30の径方向への相対移動や、軸部30のリテーナ40に対する軸部30の径方向への相対移動によって上記のようなばらつきを吸収できる。これによって、キャップ本体20のホイール12への取付けが容易になる。
【0046】
また、リテーナ40がホイール12の取付部42の孔部44へ貫通配置される際には、リテーナ40の弾性片48は、弾性変形されないか、又は、リテーナ40の弾性片48の弾性変形が小さい。このような弾性片48が軸部30の押圧片34に押圧されることによって、弾性片48は、軸部30の径方向外側へ弾性変形されて上記のようにリテーナ40の孔部44からの抜けが抑制される。このように、本実施の形態では、ホイール12へホイールキャップ10を取付けるに際しての弾性片48が繰り返し変形されることを抑制できる。
【0047】
このため、このような弾性片48の変形の繰り返しによる弾性片48の弾性の低下等を抑制できる。これによって、押圧片34からの押圧力による弾性片48の基部46側を中心とする変形角度が大きくても、弾性片48の弾性の低下等に起因する弾性片48の破断等の発生を抑制できる。したがって、本実施の形態では、弾性片48の基部46側を中心とする変形角度を大きくできる。
【0048】
これによって、弾性片48の基部46側の変形の中心から弾性片48における軸部30の軸方向他方(
図3及び
図4(A)の矢印B方向側)の端部までの長さを短くしても、弾性片48における軸部30の軸方向他方の端部は、充分に軸部30の径方向外側へ移動でき、弾性片48の突出部50をホイール12の取付部42の孔部44の周囲の部分と対向させることができる。このように、弾性片48の基部46側の変形の中心から弾性片48における軸部30の軸方向他方の端部までの長さを短くできるため、取付部42の孔部44の貫通方向の寸法を短くでき、取付部42を薄くできる。
【0049】
さらに、キャップ本体20と共にリテーナ40に金属メッキが施されると、キャップ本体20のホイール12への取付状態では、金属製のホイール12の取付部42と金属メッキされた弾性片48が接触する。このように、ホイール12を構成する金属とリテーナ40の金属メッキとが異なる金属であると、両者の間に電位差が生じる。ここで、本実施の形態では、リテーナ40がキャップ本体20とは別体で構成される。このため、例えば、キャップ本体20に金属メッキが施されていても、リテーナ40には金属メッキが施されない構成にできる。これによって、上記のような電位差の発生を防止できる。
【0050】
また、このように、リテーナ40がキャップ本体20とは別体で構成される。このため、例えば、キャップ本体20に金属メッキが施されていても、リテーナ40には金属メッキが施されない構成にできる。これによって、弾性片48の弾性を保ちつつキャップ本体20に金属メッキを施すことができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、リテーナ40と軸部30とを一度の作業でホイール12の取付部42の孔部44に貫通配置できる。しかも、このようにリテーナ40及び軸部30を孔部44に貫通配置させた際のリテーナ40及び軸部30の移動方向と同じ方向へ軸部30をリテーナ40に対して相対移動させることで、軸部30の押圧片34がリテーナ40の弾性片48を弾性変形させる。このように、リテーナ40と軸部30とが別体で構成されているが、一作業でリテーナ40及び軸部30(すなわち、キャップ本体20)のホイール12への組付けが可能である。このため、ホイールキャップ10をホイール12へ組付ける際の作業性の低下を抑制できる。
【0052】
また、本実施の形態では、3つのキャップ固定部22のうち、少なくとも1つのキャップ固定部22の軸部30に設けられるリテーナ40の一対の弾性片48の対向方向は、他の1つのキャップ固定部22の軸部30に設けられるリテーナ40の一対の弾性片48の対向方向とは異なる方向とされている。このため、上記の少なくとも1つのキャップ固定部22での一対の弾性片48がホイール12の取付部42の孔部44の内周部に圧接する方向と、他の1つのキャップ固定部22での一対の弾性片48がホイール12の取付部42の孔部44の内周部に圧接する方向とを異ならせることができる。これによって、ホイール12のリム16の径方向にホイールキャップ10をホイール12に対してバランスよく配置できる。
【0053】
なお、本実施の形態では、キャップ本体20は、ホイール12においてリム16の周方向に互いに隣合うスポーク18の間の空間に対応してホイール12に取付けられる構成、すなわち、個々のキャップ本体20は、ホイール12の一部を覆う構成であった。しかしながら、1つのキャップ本体20がホイール12の略全体を覆う構成のホイールキャップ10に本発明を適用してもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、リテーナ40とキャップ本体20とが別体で構成されていた。しかしながら、機械的強度が他の部分よりも低い脆弱部によってキャップ本体20とリテーナ40とを一体に繋いだ構成とし、キャップ本体20のホイール12への取付けによって脆弱部が破断されてリテーナ40とキャップ本体20とが別体になる構成にしてもよい。
【0055】
さらに、本実施の形態では、金属メッキがキャップ本体20に施される構成であったが、キャップ本体20に金属メッキを施さない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10・・・ホイールキャップ、12・・・ホイール、20・・・キャップ本体、30・・・軸部(荷重付与部)、40・・・リテーナ、42・・・取付部、44・・・孔部