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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231122BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
E06B5/16
E04B1/94 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020074031
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169748
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】網谷 志郎
(72)【発明者】
【氏名】平下 幸孝
(72)【発明者】
【氏名】小笹 太寛
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-83133(JP,A)
【文献】特開2015-25269(JP,A)
【文献】特開2017-218870(JP,A)
【文献】特開2017-66623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E06B 1/00 - 1/70
E06B 3/04 - 3/88
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル材と、左右竪枠と、上枠と、下枠と、第1加熱発泡材と、第2加熱発泡材とを備え、左右枠と、上枠と、下枠とは、それぞれパネル収容部を有し、パネル材は、パネル収容部に呑み込まれて、取り付けられ、第1加熱発泡材は、各々の枠のパネル収容部内の見込面の一端部から他端部まで取り付けられ、第2加熱発泡材は、第1加熱発泡材よりも短尺であり、いずれかの枠のパネル収容部内の前記見込面の一端部および他端部にそれぞれ設けられ、第1加熱発泡材の発泡する空間と同じ空間に向けて発泡する位置に取り付けられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具は、下記非特許文献1に記載されたFIX窓のように、枠でパネル材を囲むように支持したサッシ窓が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三協立山株式会社が2019年11月に発行したカタログ「ビル用サッシ 総合カタログSTB0604A」の第566ページ、第567ページに記載されたFIX窓。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この建具は、火災時に生じる高熱によって、枠が変形してパネル材の脱落の発生、あるいは、枠とパネル材との間の隙間が大きくなることによる炎の侵入および空気の流入による炎の拡大が発生するおそれがあり、このことから、防火機能を高めた建具が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題を解決するために請求項1記載による建具は、パネル材と、左右竪枠と、上枠と、下枠と、第1加熱発泡材と、第2加熱発泡材とを備え、左右枠と、上枠と、下枠とは、それぞれパネル収容部を有し、パネル材は、パネル収容部に呑み込まれて、取り付けられ、第1加熱発泡材は、各々の枠のパネル収容部内の見込面の一端部から他端部まで取り付けられ、第2加熱発泡材は、第1加熱発泡材よりも短尺であり、いずれかの枠のパネル収容部内の前記見込面の一端部および他端部にそれぞれ設けられ、第1加熱発泡材の発泡する空間と同じ空間に向けて発泡する位置に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上の構成により、防火機能を高めた建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る建具の実施形態を示す室内側から見た正面図である。
図2図1の(2)-(2)線断面図であり、中間省略して示す。
図3図1の(3)-(3)線断面図であり、中間省略して示す。
図4図2の上部拡大図である。
図5】第1加熱発泡材および第2加熱発泡材の配置構成を示す構成図である。
図6】第2加熱発泡材の他の配置構成を示す断面図である。
図7】第1加熱発泡材および第2加熱発泡材の配置構成を示す構成図である。
図8】本発明に係る建具の防火作用を示す作用図であり、(a)は、平常時を示し、(b)は、加熱時を示す。
図9】本発明に係る建具と従来構造の建具との枠が伸びた状態の比較図であり、(a-1)、(a-2)は、従来構造の建具を示し、(b-1)、(b-2)は、本実施形態の建具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の建具Aを図面を参照して説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
[建具の構成]
本実施形態で示す建具Aは、図1図3に示すように、躯体Bの開口B1に、嵌め込み固定されるFIX窓である。
建具Aは、正面方形状のパネル材1を枠体2で囲んで支持したものであり、枠体2には、火災による熱で発泡する第1加熱発泡材3および第2加熱発泡材4が配置されている。
図2に示すように、パネル材1は、複層構造のものであり、スペーサ10および封止材11を介して互いに向かい合うように、室内側に配置された耐熱結晶化ガラス材1aと、室外側に配置されたLow-Eガラス材1bとで構成されている。
【0010】
[枠の構成]
枠体2は、図1図3に示すように、パネル材1の左右側を支持する左竪枠2aおよび右竪枠2bと、パネル材1の上下側を支持する上枠2cおよび下枠2dとを連結して構成されている。
左竪枠2a、右竪枠2b、上枠2c、下枠2dは、図2および図3に示すように、躯体Bの開口B1の見込面B10にアンカーにより固定されている。
左竪枠2a、右竪枠2b、上枠2c、下枠2dは、パネル材1の周囲を呑み込んで支持するパネル収容部20a、20b、20c、20dが設けられている。
パネル収容部20a、20b、20c、20dは、内周側が開口された凹形状に形成さた空間であり、左竪枠2a、右竪枠2b、上枠2c、下枠2dのそれぞれに、室外側から押縁5を取付けて構成されている。
このようなパネル収容部20a、20b、20c、20dに呑み込まれたパネル材1は、バックアップ材13およびシーリング材12により固定される。
下枠2dのパネル収容部20dには、セッティングブロック14が配置されており、このセッティングブロック14に、パネル収容部20dに呑み込まれたパネル材1が載置される。
【0011】
[第1加熱発泡材および第2加熱発泡材の配置構成]
第1加熱発泡材3は、図1図3に示すように、パネル収容部20a、20b、20c、20dのそれぞれの内周側の見込面21a、21b、21c、21dに貼り付けられている。
第1加熱発泡材3は、長尺帯状のものであり、パネル収容部20a、20b、20c、20dの見込面21a、21b、21c、21dの一端部から他端部の全長にわたって、配置されている。
このような配置構成による第1加熱発泡材3は、図9(b-1)に示すように、火災発生時において建具Aが加熱されたときに発泡して、パネル収容部20a、20b、20c、20d内の空間に充満することで、パネル材1と枠体2との隙間S1を塞ぐことができる。
【0012】
第2加熱発泡材4は、図1図5に示すように、第1加熱発泡材3の内周側の見込面30に重ねて貼り付けられている。
第2加熱発泡材4は、図1および図5に示すように、第1加熱発泡材3よりも長手方向の長さを短く形成した帯状のものであり、長手方向を左右竪枠2a、2bと上枠2cとが連結されている上部コーナー部200から左右竪枠2a、2bおよび上枠2cの長手方向に沿う方向として、耐熱結晶化ガラス材1aの見込面10aと対向する位置に配置されている。
このような配置構成による第2加熱発泡材4は、図8(b)および図9(b-1)に示すように、火災時の熱による左右竪枠2a、2bおよび上枠2cの上部コーナー部200周りの局所的な変形が生じた場合でも、第2加熱発泡材4が発泡することによって、上部コーナー部200周りの変形によって拡大されたパネル収容部20a、20b、20c内に充満し、上部コーナー部200周りの変形によって拡大された隙間Sを塞ぐことができる。
さらに、第2加熱発泡材4が耐熱結晶化ガラス材1aの見込面10aと対向するように配置されているため、図8(b)に示すように、火災時に室外側のLow-Eガラス材1bが割れたり、脱落したりしてパネル収容部20a、20b、20c内に広い空間が生じた場合でも、発泡した第2加熱発泡材4でその空間を塞ぐことができる。
【0013】
[第2加熱発泡材の他の配置構成]
第2加熱発泡材4の他の配置構成として、図6および図7に示すように、第1加熱発泡材3に対して見込方向で隣接するように配置した構成が挙げられる。
本例の第2加熱発泡材4は、左右竪枠2a、2bと上枠2cとが連結されている上部コーナー部200から左右竪枠2a、2bおよび上枠2cの長手方向に沿って、耐熱結晶化ガラス材1aの見込面10aと対向する位置に配置されている。
このような配置構成による第2加熱発泡材4によっても、火災時の熱による左右竪枠2a、2bおよび上枠2cの上部コーナー部200周りに変形が生じた場合でも、発泡によって、上部コーナー部200周りの変形によって拡大されたパネル収容部20a、20b、20c内に充満し、上部コーナー部200周りの変形によって拡大された隙間Sを塞ぐことができる。
さらに、第2加熱発泡材4が耐熱結晶化ガラス材1aの見込面10aと対向するように配置されているため、図8(b)に示すように、火災時に室外側のLow-Eガラス材1bが割れたり、脱落したりしてパネル収容部20a、20b、20c内に広い空間が生じた場合でも、発泡した第2加熱発泡材4でその空間を塞ぐことができる。
【0014】
第2加熱発泡材4の配置構成は、例示した構成に限るものではなく、上部コーナー部200の上枠2c側にのみに配置した構成、あるいは上部コーナー部200の左右竪枠2a、2b側にのみ配置した構成としてもよい。
また、第2加熱発泡材4の配置構成は、上部コーナー200側に加えて、下部コーナー側にも第2加熱発泡材4を配置した構成としてもよく、下部コーナー側においても、左右竪枠2a、2bと下枠2dの双方、あるいはいずれか一方に配置した構成である。
【0015】
[建具の防火作用の説明]
次に、前述の構成の建具Aの防火作用を図8および図9を参照して説明する。
ここで説明する建具Aは、第1加熱発泡材3に第2加熱発泡材4を重ねて配置した建具Aである。
図9(a-1)、(a-2)は、加熱発泡材を備えていない従来構造の建具aを示し、図9(b-1)、(b-2)は、第1加熱発泡材3および第2加熱発泡材4を備えた本実施形態の建具Aを示している。
従来構造の建具aに用いられているパネル材1は、本実施形態の建具Aのパネル材1と同じ素材および同じ構造で構成され、かつ枠体2対して同じ構造で取付けられたものである。
図8(a)、図9(a-1)、図9(b-1)は、平常時の状態を示し、図8(b)、図9(a-2)、図9(b-2)は、火災時に加熱された状態を示している。
【0016】
火災時においては、図8(b)、図9(a-2)、図9(b-2)に示すように、枠体2に熱延びが生じて、左右枠体2a、2bと上枠2cとの上部コーナー部200周りが対角線の延長方向(図面上、斜め上方)に変形し、この上部コーナー部200周りの変形に伴って、パネル収容部20a、20b、20cが拡大される。
このとき、パネル材1は、図8(b)に示すように、室外側のLow-Eガラス材1bが、火災時の熱膨張による破壊によって枠体2から脱落している。
また、室内側の耐熱結晶化ガラス材1aは、火災時に熱膨張しないため、Low-Eガラス材1bのように破壊の発生はなく、枠体2に支持された状態で残るが、上部コーナー部200周りの変形によって、パネル材1の周囲とパネル収容部20a、20b、20cとの隙間S1が、上部コーナー部200周りにおいて拡大されて大きな隙間Sが生じる。
【0017】
火災時において、従来構造の建具aは、図9(a-2)に示すように、拡大された隙間Sからの火災による災の侵入や空気の流入による炎の拡大が抑制できない状態となる。
従来構造の建具aに対して、本実施形態の建具Aは、図8(b)、図9(b-2)に示すように、火災時の熱によって、第1加熱発泡材3および第2加熱発泡材4が発泡し、パネル収容部20a、20b、20c、20d内に充満する。
発泡した第1加熱発泡材3は、パネル収容部20a、20b、20c、20d内に充満することで、パネル材1の周囲とパネル収容部20a、20b、20c、20dとの間の隙間S1を塞ぐ。
また、発泡した第2加熱発泡材4は、上部コーナー部200周りのパネル収容部20a、20b、20cに充満することで、上部コーナー部200周りで拡大された隙間Sを塞ぐ。
【0018】
すなわち、本実施形態の建具Aは、第1加熱発泡材3および第2加熱発泡材4が発泡によって、パネル材1とパネル収容部20a、20b、20cとの隙間S1を塞ぐことができる上に、上部コーナー部200周りで拡大された隙間Sを塞ぐことができる。
したがって、本実施形態の建具Aは、高い防火機能を備えており、隙間S1および拡大された隙間Sからの火災による災の侵入や空気の流入による炎の拡大を防ぐことができる。
【0019】
以上、本発明に係る実施形態の建具Aを、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0020】
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
A:建具
a:従来構造の建具
B:躯体
B1:開口
B10:見込面
1:パネル材
1a:耐熱結晶化ガラス材
1b:Low-Eガラス材
10a:見込面
10:スペーサ
11:封止材
12:シーリング材
13:バックアップ材
14:セッティングブロック
2:枠体
2a:左竪枠
2b:右竪枠
2c:上枠
2d:下枠
20a:パネル収容部
20b:パネル収容部
20c:パネル収容部
20d:パネル収容部
21a:見込面
21b:見込面
21c:見込面
21d:見込面
200:上部コーナー部
3:第1加熱発泡材
30:見込面
4:第2加熱発泡材
S:隙間
S1:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9