(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】自動車用シートのブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20231122BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20231122BHJP
F16D 51/22 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/16
F16D51/22 Z
(21)【出願番号】P 2020092175
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】金澤 卓弥
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044855(JP,A)
【文献】特開2020-044856(JP,A)
【文献】特開2007-202627(JP,A)
【文献】特開平11-000234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0184554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/16
F16D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオン軸からの逆入力に対して回転しないように支持するブレーキ部と、上記ピニオン軸を操作するための操作部とが、上記ピニオン軸の軸方向に重ねて配置される自動車用シートのブレーキ装置であって、
上記ブレーキ部は、ハウジング部材と、当該ハウジング部材内に収容されるとともに、上記ピニオン軸に挿入されて当該ピニオン軸と一体回転可能な駆動ホイールと、を有し、
上記操作部は、上記ピニオン軸に回転可能に挿入されて、上記駆動ホイールに対して常時回転方向の摩擦力を有する保持プレートと、当該保持プレートに設けた第1支持部に回転可能に支持されるとともに、上記駆動ホイールに設けた内歯に噛み合う一対の外歯を有するツースプレートと、上記ピニオン軸に回転可能に挿入されるとともに、上記第1支持部とは異なる位置で上記ツースプレートと係合する第2支持部を有する入力レバーと、当該入力レバーを中立位置方向に付勢するコイルばねと、上記ハウジング部材と結合されて、当該ハウジング部材とともに上記保持プレートと上記ツースプレートと上記入力レバーを収容するカバー部材と、当該カバー部材の外側で上記入力レバーと連結されるレバーブラケットと、を有し、
上記保持プレートは、板ばねであり、上記ツースプレートのうち入力レバー側とは反対側の面に沿って延びるアーム部と、上記ツースプレートのうち入力レバー側の面に沿って延びる一対の保持部と、を備え、
上記アーム部と上記保持部は、上記ピニオン軸の中心から径方向に延びるように形成されて、上記ツースプレートを挟むように支持し、
上記アーム部には、上記ツースプレート側に突出して当該ツースプレートに係合する規制部が形成され
、
上記規制部は、上記ピニオン軸と上記第1支持部との間に位置し、上記ツースプレートの中央部に形成された凹部に係合することを特徴とする自動車用シートのブレーキ装置。
【請求項2】
上記規制部は、上記アーム部と一体に形成された切起こし片であることを特徴とする請求項
1に記載の自動車用シートのブレーキ装置。
【請求項3】
上記切起こし片は、舌片状を呈し、先端が上記ピニオン軸を指向することを特徴とする請求項
2に記載の自動車用シートのブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ピニオン軸側からの逆入力に対して回転しないように支持するブレーキ部と、このブレーキ部のピニオン軸を操作するための操作部とが、軸方向に重ねて配置された自動車用シートのブレーキ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1においては、操作部の構成要素である保持プレートとツースプレートとが相対位置関係を自己保持できるようにツース組立体として予め仮組されている。ツースプレートは、保持プレートに設けた第1支持部に回転可能に支持されている。第1支持部は、保持プレートに設けられたアーム部の先端に形成されている。また、ツースプレートは、アーム部と保持プレートに設けられた一対の保持片とで挟むように支持されている。
【0004】
この特許文献1においては、保持部によってツースプレートが第1支持部から外れてしまうのを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保持部は、アーム部と挟むようにツースプレートを支持しているにすぎず、仮組されたツース組立体の状態のときに保持プレートから誤って脱落してしまう虞がある。
【0007】
すなわち、特許文献1においては、ブレーキ装置の組み立て中におけるツースプレートの保持プレートから脱落防止を図る上で更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動車用シートのブレーキ装置は、ピニオン軸からの逆入力に対して回転しないように支持するブレーキ部と、上記ピニオン軸を操作するための操作部とが、上記ピニオン軸の軸方向に重ねて配置されるものである。
【0009】
上記ブレーキ部は、ハウジング部材と、当該ハウジング部材内に収容されるとともに、上記ピニオン軸に挿入されて当該ピニオン軸と一体回転可能な駆動ホイールと、を有している。
【0010】
上記操作部は、上記ピニオン軸に回転可能に挿入されて、上記駆動ホイールに対して常時回転方向の摩擦力を有する保持プレートと、当該保持プレートに設けた第1支持部に回転可能に支持されるとともに、上記駆動ホイールに設けた内歯に噛み合う一対の外歯を有するツースプレートと、上記ピニオン軸に回転可能に挿入されるとともに、上記第1支持部とは異なる位置で上記ツースプレートと係合する第2支持部を有する入力レバーと、当該入力レバーを中立位置方向に付勢するコイルばねと、上記ハウジング部材と結合されて、当該ハウジング部材とともに上記保持プレートと上記ツースプレートと上記入力レバーを収容するカバー部材と、当該カバー部材の外側で上記入力レバーと連結されるレバーブラケットと、を有している。
【0011】
上記保持プレートは、板ばねであり、上記ツースプレートのうち入力レバー側とは反対側の面に沿って延びるアーム部と、上記ツースプレートのうち入力レバー側の面に沿って延びる一対の保持部と、を備えている。
【0012】
上記アーム部と上記保持部は、上記ピニオン軸の中心から径方向に延びるように形成されて、上記ツースプレートを挟むように支持している。
【0013】
その上で、上記アーム部には、上記ツースプレート側に突出して当該ツースプレートに係合する規制部が形成されていることを特徴としている。
【0014】
上記規制部は、より具体的には、上記ピニオン軸と上記第1支持部との間に位置し、上記ツースプレートの中央部に形成された凹部に係合する。
【0015】
上記規制部は、より具体的には、上記アーム部と一体に形成された切起こし片である。
【0016】
上記切起こし片は、より具体的には、舌片状を呈し、先端が上記ピニオン軸を指向する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アーム部の規制部がツースプレートに係合する(引っかかる)ことによって、アーム部と保持部に挟まれたツースプレートは、ピニオン軸の径方向への移動が阻止される。
【0018】
そのため、保持プレートに挟み込まれたツースプレートは、規制部によって保持プレートからの脱落(外れ)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】シートアジャスタとしてシートリフタ機構およびシートリクライニング機構を備えた自動車用シートの一例を示す斜視図。
【
図2】
図1に示したシートリフタ機構に用いられるブレーキ装置を示す車載時と同等の正面図。
【
図4】
図3に示したブレーキ装置のレバーブラケットを取り外した状態を示す左側面図。
【
図6】
図2に示したブレーキ装置におけるブレーキ部および操作部のそれぞれの構成要素の分解斜視図。
【
図7】
図6に示したブレーキ部の中立状態での説明図。
【
図11】
図6に示したブレーキ部および操作部を、ブレーキ組立体とツース組立体およびレバー組立体としてそれぞれに仮組みした状態を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、シートアジャスタを備えた自動車用シート(以下、単に「シート」と記す)の一例を示している。
【0022】
シート1は、シートアジャスタとして、シート1の前後位置調整のためのシートスライド機構2と、座面となるシートクッション3の高さ位置調整のためのシートリフタ機構と、背もたれ部となるシートバック4の角度調整のためのリクライニング機構と、を備えている。そのため、シートクッション3の側部には、シートリフタ機構の操作レバー5とリクライニング機構の操作レバー6とが並べて設けられている。
【0023】
シート1は、シートリフタ機構に着目した場合、シートリフタ機構の操作レバー5を操作することによって座面の高さ位置調整が可能となっている。
【0024】
シート1は、操作レバー5を例えば中立位置(以下の説明では、操作レバー5が中立位置にある状態を中立状態とも言う。)から上方へ引き上げ操作する毎に少しずつシートクッション3の位置が高くなる。また、シート1は、操作レバー5を中立位置から下方へ押し下げ操作する毎に少しずつシートクッション3の位置が低くなる。
【0025】
図2は、
図1に示したシート1のシートリフタ機構に適用されるブレーキ装置7の車載状態と同等の正面図を示している。
図3は、
図2の左側面図を示している。また、
図4は、
図3におけるレバーブラケット24を取り外した状態での左側面図を示している。
図5は、
図3のA-A線に沿った断面図を示している。さらに、
図6は、
図2に示したブレーキ装置7の分解斜視図をそれぞれ示している。
【0026】
図2及び
図6に示すように、ブレーキ装置7は、半割り状のハウジング部材であるハウジング11とカバー部材であるカバー22とを突き合わせることで略円筒状のケース8が形成される。このケース8内に、後述する
図6のブレーキ部9と操作部10の一部の構成要素とが同軸上に収容される。また、ケース8を形成しているハウジング11とカバー22とにまたがるかたちで、それらの中心部に、実質的にブレーキ部9と操作部10とが共有するピニオン軸12が軸心方向に貫通して配置される。ピニオン軸12の一端には、
図1に示した操作レバー5と操作部材として機能するレバーブラケット24とが回転可能に支持される。ピニオン軸12の他端には外部に露出するピニオンギヤ12gが一体に形成される。
【0027】
なお、レバーブラケット24は、中立位置から正転方向及び逆転方向のいずれの方向にも回転操作可能である。また、レバーブラケット24には、
図1に示した操作レバー5がレバーブラケット24側のねじ孔24e(
図3参照)を用いてねじ締め固定される。
【0028】
そして、ブレーキ装置7は、カバー22側のフランジ部29に形成された取付孔29aを用いて、
図1に示したシート1のうち図示を省略したサイドブラケットに固定され、ピニオンギヤ12gが図示を省略したシートリフタ機構側の従動側ギヤに噛み合うことになる。
【0029】
ブレーキ装置7は、レバーブラケット24が中立位置にある時、ピニオン軸12への逆入力によっては当該ピニオン軸12が回転しないように制動状態を保持する。また、ブレーキ装置7は、レバーブラケット24を中立位置から正転方向及び逆転方向のうちいずれか一方に回転操作した時、ピニオン軸12の制動状態を解除して、レバーブラケット24の回転操作に伴うピニオン軸12の回転を許容する。ピニオン軸12の回転は、ピニオンギヤ12gを介して図示を省略したシートリフタ機構の従動側ギヤの回転変位に変換され、さらにはリンク機構を介してシート1のシートクッション3の上下方向変位に変換される。
【0030】
なお、このタイプのブレーキ装置7では、レバーブラケット24のストロークが比較的小さいために、多くの場合には特定の方向へのレバーブラケット24の回転操作を複数回繰り返すことで所期の目的を達成することができる。
【0031】
図6に示すように、ブレーキ部9は、ケース8の一部として機能するハウジング11と、ハウジング11に回転可能にされるピニオン軸12と、ハウジング11内に互いに対向配置される二つで一組の略半円形状のロックプレート14と、これらの一組のロックプレート14同士が共有しているロックばね15と、同じくハウジング11内の一組のロックプレート14の上に軸方向に重ねて配置される同形状のもう一組のロックプレート16と、これらの一組のロックプレート16同士が共有しているロックばね17と、一組のロックプレート16の上に重ねて配置される浅皿状の駆動ホイール18と、を有している。
【0032】
また、
図6に示した操作部10は、駆動ホイール18の上に重ねて配置される保持プレート19と、保持プレート19と組み合わされるツースプレート20と、保持プレート19及びツースプレート20と重ね合わされる入力レバー21と、ブレーキ部9側のハウジング11と突き合わされてケース8を形成することになるカバー22と、カバー22の外側に配置されるねじりコイルばねタイプのコイルばね23と、同じくカバー22の外側に配置される操作部材としてのレバーブラケット24と、を有している。
【0033】
図6に示したブレーキ部9のハウジング11は、例えば所定厚みの板金素材を用いて略深皿状に絞りプレス成形したものであり、そのハウジング11の内周面が円筒状の制動面13となっている。
【0034】
ハウジング11の底部には、ピニオン軸12のうちピニオンギヤ12g側の大径軸部12fが挿入される軸孔11aが形成される。また、ハウジング11の開口縁部にはフランジ部11bが形成される。フランジ部11bの例えば三箇所には、係止凹部11cが形成される。これら三つの係止凹部11cは後述するカバー22との結合固定部となる。
【0035】
図6に示したブレーキ部9のピニオン軸12は、小径軸部12aと、中径軸部12bと、二面幅部12dを有する略矩形軸状の異形軸部12cと、
図5に示すようにハウジング11の内底面に当接してピニオン軸12の軸方向への移動を規制するフランジ部12eと、ハウジング11の底部に形成した軸孔11aに回動可能に支持される大径軸部12fと、駆動側ギヤとしてのピニオンギヤ12gと、ピニオンギヤ12gの先端の先端軸部12hと、が同軸一体に形成されたいわゆる多段の段付き軸状のものである。このピニオン軸12は、後述するようにブレーキ部9と操作部10とに共用化されている。また、ピニオン軸12における異形軸部12cの二面幅部12dは、二組のロックプレート14,16に対し外力を及ぼす作用部として機能する。
【0036】
図6に示したブレーキ部9の一組のロックプレート14は、ハウジング11の内底面に着座しつつ両端部の外周面が制動面13に接するように左右対称または上下対称に対向配置される。さらに、一組のロックプレート14の上にもう一組のロックプレート16が左右対称または上下対称となるようにピニオン軸12の軸方向に重ねて対向配置される。これら二組のロックプレート14,16の外周面のうち凹部25をはさんで離間した両端部には、ハウジング11の制動面13と接触可能な円弧状の制動ロック面26がそれぞれに形成される。
【0037】
そして、一組のロックプレート14のうち双方の一端部(第1端部)同士の間に付勢手段としてのロックばね15が介装される。このロックばね15により、一組のロックプレート14の一端部(第1端部)同士が互いに離間する方向に付勢されている。同様に、もう一組のロックプレート16のうち双方の一端部(第2端部)同士の間に付勢手段としてのロックばね17が介装される。このロックばね17により、一組のロックプレート16の一端部(第2端部)同士が互いに離間する方向に付勢されている。なお、
図6に示すロックばね15,17は、略M字状に折り曲げた板ばね17aと、その板ばね17aの双方の脚部の端部同士の間にコイルばね17bを挟み込んだいわゆる複合ばねタイプのものであり、コイルばね17bは板ばね17aの両脚部が広がる方向に付勢している。
【0038】
図6に示したブレーキ部9の駆動ホイール18は、外周側のリング部18aの内周面にその全周にわたって内歯18bが形成されたいわゆる内歯車状のものである。駆動ホイール18の中心部には、ピニオン軸12の異形軸部12cと一体的に回転可能なように、その異形軸部12cが嵌め合わされる角孔18cが形成される。さらに、駆動ホイール18の背面側には、二組のロックプレート14,16側に向かって突出する一対の円弧状の解除爪部18dが一体に形成される(
図7参照)。
【0039】
なお、駆動ホイール18の角孔18cとピニオン軸12の異形軸部12cとの間には回転方向に所定の遊びを有している。また、駆動ホイール18は、例えば金属製の円板をプレス成形により半抜きして内歯18bを有するリング部18aを形成し(
図5参照)、リング部18aの内側の底部及び解除爪部18dをいわゆるインサート成形法等の手法により樹脂材料にて一体に形成している。
【0040】
図6に示したピニオン軸12は、
図5にも示すように、ピニオンギヤ12gの根元部分に形成された大径軸部12fがハウジング11の軸孔11aに回転可能に挿入支持される。また、ピニオン軸12は、異形軸部12cの二面幅部12dが一組のロックプレート14同士及び他の一組のロックプレート16同士の対向間隙内にそれぞれ位置するように挿通される。さらに、ピニオン軸12は、その異形軸部12cが駆動ホイール18の角孔18cに遊嵌的に且つ微少角度だけ回転可能に嵌め合わされる。すなわち、角孔18cは、異形軸部12cよりもわずかに大きく形成されている。
【0041】
その際に、
図7にも示すように、駆動ホイール18側の一対の解除爪部18dが、二組のロックプレート14,16の外周側において、各ロックプレート14,16の凹部25にピニオン軸12の回転方向に隙間を有して嵌め合わされる。そして、それら一対の解除爪部18dの円弧状の外周面は、ハウジング11の制動面13に対して、各解除爪部18d自体の弾性力により圧接している。
【0042】
図7は、
図6に示したブレーキ部9の中立状態での説明図である。
図7に示すように、ピニオン軸12の異形軸部12cの両側に位置する一組のロックプレート16,16同士の対向端面Pのうち、異形軸部12cの二面幅部12dと対峙する部分には、異形軸部12cの回転中心の左右二箇所に相当する位置に円弧状の凸部16a,16bが形成される。そして、一組のロックプレート16の一端部(第2端部)同士の間にロックばね17が介装されていて、それら一端部(第2端部)同士が互いに離間する方向に付勢されている。
【0043】
そのため、一組のロックプレート16は、ハウジング11の制動面13に沿って所定量だけ回転移動し、それによってロックプレート16の第2端部同士のなす距離よりも第1端部同士のなす距離の方が小さいものとなっている。その結果として、一組のロックプレート16同士の対向端面Pに形成された一対の凸部16a,16bは、一方の凸部16bが異形軸部12cの二面幅部12dの一方側に接触し、他方の凸部16aは異形軸部12cの二面幅部12dから離間している。
【0044】
これらの関係は、
図6に示したもう一組のロックプレート14についても同様であり、一組のロックプレート14の一端部(第1端部)同士の間にロックばね15が介装されていて、それら一端部(第1端部)同士が互いに離間する方向に付勢されている。それ故に、後述するように、異形軸部12cの作用部として機能する二面幅部12dは、二組のロックプレート14,16に対して回転方向に隙間なく当接することになる。
【0045】
なお、
図7に示したピニオン軸12の二面幅部12dは、同図の上下方向の中央部を頂部として上下両端に向かって傾斜したテーパ面として描いてあるが、二面幅部12dは傾斜のない単純な平坦面であっても良い。
【0046】
図8は、
図7のQ部の拡大図を示している。同図に示すように、一組のロックプレート16の外周面における制動ロック面26には、対向端面P側に向かって半径がわずかに小さくなるように設定され、且つハウジング11の制動面13に対する円周方向での接触長が長い大径制動面26aと、凹部25に近い位置に形成された極小円弧状の制動突起部26bと、大径制動面26aと制動突起部26bとを互いに離間させるべく両者の間に形成された逃げ凹部26cと、が含まれている。なお、この制動ロック面26の形状は、もう一組のロックプレート14についても同様である。
【0047】
図8に示すように、通常時において、各ロックプレート16の上下の大径制動面26aがハウジング11の制動面13に接触している状態では、制動突起部26bがハウジング11の制動面13に接触することがないように、制動面13aと制動突起部26bとのなす隙間a及び制動面13aからの逃げ凹部26cの深さbがa<bの関係を満たすようにそれぞれ設定される。
【0048】
図6に示した操作部10の保持プレート19は、
図9に拡大して示すように、ピニオン軸12の軸心方向でばね特性を発揮する板ばね状のものである。この保持プレート19は、ピニオン軸12の中径軸部12bに挿入される軸孔19bが形成されたボス部19aと、ボス部19aから半径方向に延び、駆動ホイール18側に向かって一体に折り曲げ形成されて駆動ホイール18の底部に着座する一対の脚部19cと、同じくボス部19aから半径方向に延び、後述する
図11に示すように段付き状に一体に折り曲げ形成されたアーム部19dと、を備える。アーム部19dには、先端を切り起こすかたちで略円筒状に丸めた第1支持部として機能する第1軸部19eが形成される。
【0049】
さらにアーム部19dには、ツースプレート20側に突出して当該ツースプレート20に係合する規制部としての切起こし片19iが形成されている。
【0050】
切起こし片19iは、軸孔19bと第1軸部19eとの間に位置している。換言すれば、切起こし片19iは、軸孔19bにピニオン軸12が挿入された状態では、ピニオン軸12と第1軸部19eとの間に位置している。
【0051】
切起こし片19iは、アーム部19dを略U字状(略コ字状)の切り込み線19jに沿って打ち抜くようにしてその内側の部分をツースプレート20側に引き起こしたものであって、アーム部19dと一体に形成されている。つまり、切起こし片19iは、舌片状を呈し、先端が軸孔19bを指向するよう形成されている。換言すれば、切起こし片19iは、軸孔19bにピニオン軸12が挿入された状態では、先端がピニオン軸12を指向する。
【0052】
保持プレート19には、
図6及び
図9に示すように、アーム部19d側において当該アーム部19dと干渉しないように半径方向に延びる一対の作用片19fがカバー22側に向かって折り曲げ形成される。各作用片19fの先端には係止部19gが湾曲形成される。保持プレート19には、それら一対の作用片19fの内側でアーム部19dを挟むように一対の保持部としての保持片19hが半径方向に真っ直ぐに突出形成される。
【0053】
図6に示したツースプレート20は、保持プレート19のアーム部19dの上から重ねて駆動ホイール18内に配置される略半円弧状のものである。このツースプレート20の中央部には、異形の軸部20aがカバー22側に突出形成されているとともに、ピニオン軸12を中心とする径方向において軸部20aよりも外側にオフセットした位置に円形の軸孔20bが形成される。さらに、ツースプレート20の両端部には、駆動ホイール18側の内歯18bと対向するようにリム部20cが形成される。このリム部20cの外周面には駆動ホイール18側の内歯18bと噛み合う外歯20dが形成される。ツースプレート20には、
図10に示すように、中央部に保持プレート19の切起こし片19iと係合する凹部20eが形成されている。凹部20eは、軸部20aの裏側に形成されている。ツースプレート20には、例えばプレス成形により半抜きして凹部20eが形成される。
図10は、ツース組立体50の断面図である。
【0054】
なお、上記の軸部20aは一部が切り欠かれて略D字状をなしているが、これは近接する軸孔20bとの干渉を回避するためであり、かかる干渉を回避できるならば、軸部20aは円筒軸状のものであっても良い。
【0055】
図6に示した入力レバー21は、操作部10での入力部材として機能するものである。入力レバー21の中央部には、ピニオン軸12の中径軸部12bに回転可能に支持される軸孔21aが形成される。また、その軸孔21aから外側にオフセットした位置には、ツースプレート20の軸部20aが挿通される第2支持部としての小径軸孔21bが形成される。さらに、入力レバー21の周縁部には、端部が二股状をなす三つの折り曲げ係止片21cがカバー22側に向かって突出形成される。
【0056】
そして、入力レバー21の小径軸孔21bに対してツースプレート20の軸部20aが回転可能に挿入支持される。これにより入力レバー21とツースプレート20とが相対回転可能に連結される。また、ツースプレート20の軸孔20bが保持プレート19の第1軸部19eに係合して、ツースプレート20と保持プレート19とが相対回転可能に連結される。この場合において、後述する
図11に示すように、保持プレート19のアーム部19dと保持片19hとの間にツースプレート20が挟み込まれる。つまり、アーム部19dと保持片19hは、ピニオン軸12の軸方向でツースプレート20を挟み込んでいる。なお、ツースプレート20の軸孔20bと保持プレート19の第1軸部19eとの軸と孔の関係は逆であっても良い。
【0057】
図6に示したカバー22は、例えばプレスによる深絞り成形にて略カップ状に一体成形したものである。このカバー22は、
図2及び
図5に示すように、ブレーキ部9側のハウジング11と突き合わされることで、ハウジング11と共にブレーキ装置7のケース8を形成する。そして、先にも述べたように、このケース8の内部にブレーキ部9と操作部10の一部の構成要素が収容配置される。
【0058】
この場合に、
図5に示すように、保持プレート19が駆動ホイール18と入力レバー21との間に挟まれて撓み変形することで、保持プレート19が両者に圧接することになる。また、保持プレート19における脚部19cの端部が駆動ホイール18の底壁部の樹脂モールドされた部分に圧接することで、保持プレート19は少なくとも駆動ホイール18との間で相対回転方向での摺動抵抗を付与する。つまり、保持プレート19は、駆動ホイール18に対して常時回転方向の摩擦力を有している。
【0059】
カバー22の側壁部には、
図4に示すように、中央部の軸孔22aとともに、その軸孔22aを挟んで互いに対向する位置に、二つで一組の円弧状の長孔22bが開口形成される。また、一組の長孔22b同士の対向方向と直交する方向においては、一方には円弧状の長孔からなる開口部22cが形成されるとともに、他方には矩形の開口部22dと共に切り起こし片22eが外側に直立するように形成される。開口部22cの長さ(円弧の周長)は、一組の長孔22bそれぞれの長さ(円弧の周長)よりも大きく設定される。そして、カバー22がブレーキ部9側のハウジング11と突き合わされる際に、軸孔22aがピニオン軸12の小径軸部12aに嵌め合わされることで、ピニオン軸12はハウジング11とカバー22とで回転可能に両持ち支持される。
【0060】
二つで一組の長孔22bと開口部22cには、
図4に示すように、入力レバー21側の二股状をなす二つの折り曲げ係止片21cがレバーブラケット24側に向かって突出するように挿入される。三つの折り曲げ係止片21cの幅寸法に対して、一組の長孔22b及び開口部22cの長さ(周長)は十分に大きく設定される。これにより、正転方向及び逆転方向に回転可能な入力レバー21の回転範囲、ひいてはその入力レバー21と結合されるレバーブラケット24の回転範囲が一組の長孔22bの長さの範囲内に規制される。つまり、一組の長孔22bにおける長手方向両端部の内周面は、レバーブラケット24の回転範囲を規制するストッパ面として機能する。
【0061】
また、
図4に示すように、入力レバー21が同図のような中立位置にある状態で、カバー22の開口部22cにおいては、その長手方向の両端部に、
図9に示した保持プレート19の作用片19fの係止部19gがそれぞれに係合離脱可能に係止される。これにより、保持プレート19は、ツースプレート20を介して入力レバー21と共に回転変位する。保持プレート19は、入力レバー21が中立位置に復帰すれば、それに伴っても中立位置に復帰することになる。
【0062】
図4に示すように、カバー22に形成された一組の長孔22bの周縁部からは内側に向けてそれぞれにガイド突起部27が折り曲げ形成されている。これらのガイド突起部27は、
図5及び
図11に示すようにブレーキ部9の内部空間に臨んでいて、後述するようにツースプレート20の動きをガイドする役目をする。
【0063】
また、
図4及び
図6に示すカバー22のうち、ハウジング11と対面する側の開口縁部には、例えば円周方向の三箇所に、取付孔29aを有するフランジ部29が外側に向けて折り曲げ形成される。さらに、各フランジ部29と干渉しない円周方向の三箇所に、フランジ部29よりも突出長の小さな係止フランジ部30が突出形成される。これらの係止フランジ部30は、
図2にも示すように、ハウジング11とカバー22とでケース8を形成するべく両者を突き合わせた際に、ハウジング11側の係止凹部11cに嵌め合わされる。その上で、係止フランジ部30を
図2に仮想線で示す状態から実線で示すようにかしめることで、ハウジング11とカバー22とが不離一体に結合固定される。なお、カバー22のフランジ部29は、
図1に示したシート1に対するブレーキ装置7の取付部となる。
【0064】
図6に示したレバーブラケット24は、
図5にも示すように略浅皿状に絞りプレス成形されたものであって、カバー22の側壁部の外側に配置される。カバー22とレバーブラケット24との間には、レバーブラケット24の凹状空間に収容されるかたちでコイルばね23が配置される。レバーブラケット24の中央部には軸孔24aが形成される。軸孔24aはピニオン軸12の小径軸部12aに回転可能に支持される。また、
図3に示すように、レバーブラケット24の周縁部には、一対の位置決め片24bとともに、それらの位置決め片24b同士の間に、カバー22側に向かって突出する切り起こし片24cが形成される。
【0065】
さらに、
図6に示すレバーブラケット24には、
図3にも示すように、ねじ孔24e付きの一対のフランジ部24dとともに、
図7に示した入力レバー21側の三つの折り曲げ係止片21cに対応する角孔24fが形成される。三つの折り曲げ係止片21cは、カバー22の長孔22bと開口部22cを挿通した上で、レバーブラケット24の角孔24fに係合しつつ突出するかたちとなる。
【0066】
そして、
図3に示すように、角孔24fから突出する各折り曲げ係止片21cにおける一対の先端分割片121cを互いに離間する方向に折り曲げることで、カバー22を挟むかたちで、レバーブラケット24と入力レバー21が互いに固定される。これにより、レバーブラケット24と入力レバー21との相対回転が阻止され、レバーブラケット24は入力レバー21と共に正転方向及び逆転方向に一体的に回転可能となる。
【0067】
レバーブラケット24に形成された切り起こし片24cは、カバー22の切り起こし片22eと位置的一致するように設定されている。そのため、
図3及び
図4に示すように、カバー22を挟んでレバーブラケット24と入力レバー21を固定した際に、双方の切り起こし片22e,24c同士が互いに重なり合うことになる。
【0068】
図3及び
図6に示したレバーブラケット24には、
図1に示した操作レバー5が装着される。操作レバー5は、レバーブラケット24の一対の位置決め片24bを用いて相対位置決めが施された上で、二つのねじ孔24eと図外の止めねじとによりレバーブラケット24に固定される。これにより、レバーブラケット24は、操作レバー5と共に操作部10における操作部材として機能する。
【0069】
図6に示したコイルばね23は、カバー22とレバーブラケット24との間に収容されて、入力レバー21をレバーブラケット24と共に中立位置に向けて付勢保持する機能を有する。コイルばね23の両端部にはフック部23aが外向きに折り曲げ形成される。そして、
図3にも示すように、コイルばね23自体を巻き締まり状態とした上で、それら一対のフック部23aは、カバー22とレバーブラケット24との間で互いに重なり合っている双方の切り起こし片22e,24cを両側から挟み込むようにして、それらの切り起こし片22e,24cに係止される。
【0070】
これにより、
図1に示した操作レバー5を正転方向及び逆転方向のいずれの方向に回転操作した場合であっても、その操作力を解除するならば、コイルばね23の付勢力により、入力レバー21がレバーブラケット24及び操作レバー5と共に中立位置に復帰することになる。
【0071】
ここで、
図6に示したブレーキ部9の構成要素であるピニオン軸12や二組のロックプレート14,16、ならびに操作部10の構成要素である駆動ホイール18のリング部18a、ツースプレート20等はいずれも金属材料で形成されている。その上で、各構成要素は、各々の機能よりして予め焼き入れ処理が施されて硬質化が図られている。これに対して、同様に金属材料で形成されるハウジング11は、後述するように、二組のロックプレート14,16との摺動抵抗を確保しつつ、それらのロックプレート14,16の大径制動面26aや制動突起部26bが食い込み易いようにするために焼き入れ処理は施されていないことが望ましい。
【0072】
このように構成されたブレーキ装置7の機能及び挙動は、先に特許文献1として例示した特開2020-44855号公報に記載のものと基本的に同様である。
【0073】
ここで、上記のようなブレーキ装置7を組み立てるには、次のような手順で行う。すなわち、
図6に分解図で示したブレーキ部9及び操作部10のそれぞれの構成要素を、ブレーキ組立体40とツース組立体50及びレバー組立体60の三つの組立体にグループ分けし、それぞれに仮組み状態としておく。その上で、それら三つの組立体40,50,60同士を軸方向に重ね合わせるように組み付けて一体化する工法とする。
【0074】
図11は、仮組み状態とされたブレーキ組立体40とツース組立体50及びレバー組立体60の相対位置関係を示している。
図11に示したブレーキ組立体40は、
図6に示したブレーキ部9の構成要素同士を組み合わせたものである。
図6に示したハウジング11を母体として、このハウジング11に、ピニオン軸12、ロックばね15を含む一対のロックプレート14、同じくロックばね17を含む一対のロックプレート16、及び駆動ホイール18のそれぞれを、軸方向に重ねるように仮組みして、
図11に示すブレーキ組立体40として組み立てる。
【0075】
この場合において、二つで一組のロックプレート14同士の間に介装されるロックばね15と、もう一組のロックプレート16同士の間に介装されるロックばね17の弾性力により、二組のロックプレート14,16の制動ロック面26はそれぞれハウジング11の内周面である制動面13に圧接することになる。
【0076】
また、駆動ホイール18は、先に述べたように、解除爪部18dがそれ自体の弾性力によりハウジング11の内周面である制動面13に圧接することになる。そのため、ハウジング11、ピニオン軸12、二組のロックプレート14,16及び駆動ホイール18を構成要素とするブレーキ組立体40は、正規組み付け状態と同じ構成要素同士の相対位置関係を自己保持して、
図11の状態を維持することが可能である。
【0077】
図11に示したツース組立体50は、
図6に示した操作部10の構成要素のうち、保持プレート19とツースプレート20とを組み合わせたものである。
図6に示した保持プレート19のアーム部19dと一対の保持片19hとを利用して、それらのアーム部19dと一対の保持片19hとの間にツースプレート20を挟み込む。さらに、アーム部19dの第1軸部19eにツースプレート20の軸孔20bを嵌め合わせる。
【0078】
この場合において、アーム部19dと一対の保持片19hとのなす距離は、ツースプレート20の厚みを受容可能な大きさに予め設定されているので、アーム部19dと一対の保持片19hとの間にツースプレート20を挟み込んだ上で、アーム部19dの第1軸部19eにツースプレート20の軸孔20bを嵌め合わせれば、両者が離脱することはなくなる。これによって、保持プレート19とツースプレート20を構成要素とするツース組立体50は、正規組み付け状態と同じ構成要素同士の相対位置関係を自己保持して、
図11の状態を維持することが可能である。
【0079】
図11に示したレバー組立体60は、
図6に示した操作部10の構成要素のうち、入力レバー21と、カバー22、コイルばね23及びレバーブラケット24を組み合わせたものである。
図6に示したカバー22の内側から入力レバー21を装着し、カバー22の二つの長孔22bと開口部22cとから入力レバー21の折り曲げ係止片21cを突出させる。また、カバー22の外側にコイルばね23を当てがい、カバー22から突出している三つの折り曲げ係止片21cをコイルばね23で取り囲むように配置する。そして、コイルばね23の双方のフック部23aをカバー22の切り起こし片22eに両側から係止させる。
【0080】
さらに、コイルばね23を覆うようにカバー22にレバーブラケット24をかぶせる。そして、レバーブラケット24の切り起こし片24cとカバー22の切り起こし片22eとを重ね合わせて、レバーブラケット24の切り起こし片24cにもコイルばね23の双方のフック部23aを係止させる。同時に、カバー22から突出している入力レバー21の折り曲げ係止片21cを、レバーブラケット24の角孔24fから突出させる。
【0081】
その上で、入力レバー21と、カバー22、コイルばね23及びレバーブラケット24を正規組み付け状態として、レバーブラケット24の角孔24fから突出している入力レバー21の折り曲げ係止片21cを折り曲げる。より具体的には、入力レバー21の三つの折り曲げ係止片21cの先端分割片121cを互いに離間する方向に折り曲げて塑性変形させる。これにより、入力レバー21と、カバー22、コイルばね23及びレバーブラケット24を構成要素とするレバー組立体60は、正規組み付け状態と同じ構成要素同士の相対位置関係を自己保持して、
図11の状態を維持することが可能である。
【0082】
このようにして、それぞれに仮組み状態とされた
図11のブレーキ組立体40とツース組立体50及びレバー組立体60の三者は、同図のようにレバー組立体60のカバー22を上向きにした上で、その上にツース組立体50を重ね合わせ、最後にツース組立体50の上からブレーキ組立体40を重ね合わせる。
【0083】
レバー組立体60の上からツース組立体50を重ね合わせる際には、ツースプレート20の軸部20aを入力レバー21の小径軸孔21bに嵌め合わせる。
【0084】
また、ツース組立体50の上からブレーキ組立体40を重ね合わせる際には、ピニオン軸12を保持プレート19の軸孔19bに挿通させるとともに、ピニオン軸12を入力レバー21の軸孔21aとカバー22の軸孔22a及びレバーブラケット24の軸孔24aにそれぞれ挿入する。そして、カバー22の三箇所の係止フランジ部30とハウジング11の三箇所の係止凹部11cとを合致させる。
【0085】
こうして、ブレーキ組立体40とツース組立体50及びレバー組立体60の三者を組み合わせたならば、カバー22の各係止フランジ部30を
図2に示すようにかしめることで、両者を不離一体に結合する。以上により、
図2に示したブレーキ装置7が完成する。
【0086】
このように本実施の形態のブレーキ装置7によれば、ブレーキ部9の構成要素であるハウジング11と、ピニオン軸12と、ロックばね15,17を含む二組のロックプレート14,16と、駆動ホイール18と、がそれぞれの構成要素同士の相対位置関係を自己保持できるようにブレーキ組立体40として予め仮組みされている。
【0087】
同様に、操作部10の構成要素である保持プレート19と、ツースプレート20と、が両者の相対位置関係を自己保持できるようにツース組立体50として予め仮組みされている。
【0088】
さらに、操作部10の構成要素である入力レバー21と、カバー22と、コイルばね23と、レバーブラケット24と、がそれぞれの構成要素同士の相対位置関係を自己保持できるようにレバー組立体60として予め仮組みされている。
【0089】
その上で、ブレーキ組立体40とツース組立体50及びレバー組立体60の三者を軸方向で重ねて組み付けることでブレーキ装置7が構成されている。
【0090】
そのため、ブレーキ装置7は、組付性が向上するとともに、組付工数の削減によるコストダウンを図ることができる。また、ブレーキ装置7は、例えば組付ロボット等の自動化設備での自動組み立てにも容易に対応することが可能となる。
【0091】
ここで、ツース組立体50において、保持プレート19に設けた第1軸部19eは、ツースプレート20の小径軸孔21bを挿入されて回転可能に支持されている。また、保持プレート19は、ツース組立体50を裏返しにした際に支持するための保持片19hが設けられている。この保持片19hは、第1軸部19eを有するアーム部19dとこの保持片19hとでツースプレート20を挟みむように支持しており、裏返した際にツースプレート20を支える働きをする。
【0092】
保持プレート19は、アーム部19dが脚部19cとともに、ブレーキ組立体40とレバー組立体60の間に挟まれた際に、軸方向に付勢力を発生する。そのため、アーム部19dは、組付け前の状態においては、軸方向に対して直交しておらず、軸方向に傾斜するように形成されている。なお、保持片19hは、軸方向に対して直交する平面上に形成されている。したがって、保持プレート19の軸中心から半径方向に離れるに従って、保持片19hとアーム部19dの間隔は広がるように形成されている。そして、第1軸部19eは、アーム部19dに半径方向の最も遠い位置に形成されていることから、組付け時にツース組立体50を裏返しにすると、ツースプレート20を支えた状態では第1軸部19eがツースプレート20の軸孔20bから半分抜けた状態になる。ここで、ばらつきによりアーム部19dの傾斜が大きいものでは、ツース組立体50をレバー組立体60の上に重ねる際に、保持プレート19を持って、すばやく移動して止める、または、上下に振るような動きをすると、ツースプレート20が保持プレート19から外れる虞がある。
【0093】
しかしながら、上述した実施例のブレーキ装置7にあっては、保持プレート19のアーム部19dにツースプレート20側に突出してツースプレート20の凹部20eと係合する(引っかかる)切起こし片19iが形成されている。
【0094】
アーム部19dと保持片19hに挟まれたツースプレート20は、切起こし片19iが凹部20eに係合する(引っかかる)ことによって、ピニオン軸12の径方向への移動が阻止される。そのため、保持プレート19に挟み込まれたツースプレート20は、切起こし片19iによって保持プレート19からの脱落(外れ)が抑制される。
【0095】
そして、ブレーキ装置7は、保持プレート19からのツースプレート20の脱落(外れ)が抑制され、組み付け性能を一層向上させることができる。
【0096】
つまり、ブレーキ装置7は、簡単な構成で、ツースプレート20の外れを確実に防止して、組み付け性の更なる向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0097】
7…ブレーキ装置
9…ブレーキ部
10…操作部
11…ハウジング(ハウジング部材)
12…ピニオン軸
18…駆動ホイール
18b…内歯
19…保持プレート
19c…脚部
19d…アーム部
19e…第1軸部(第1支持部)
19f…作用片
19h…保持片(保持部)
19i…切起こし片(規制部)
20…ツースプレート
20d…外歯
20e…凹部
21…入力レバー
21b…小径軸孔(第2支持部)
22…カバー(カバー部材)
22e…切り起こし片
23…コイルばね
23a…フック部(端部)
24…レバーブラケット
24c…切り起こし片
40…ブレーキ組立体
50…ツース組立体
60…レバー組立体