(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】シールドケース及びシールドケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
H05K9/00 E
(21)【出願番号】P 2020096086
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森次 宣文
(72)【発明者】
【氏名】宇野 貴昭
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-326988(JP,A)
【文献】特開2014-232846(JP,A)
【文献】特開2006-216782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のケース本体と、カバー部材と
、固定部材とを有し、前記ケース本体の周縁端部において前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧されて固定されるシールドケースであって、
前記カバー部材は、基材と、前記基材における前記ケース本体側の面に設けられた金属板とを有し、
前記金属板は、前記金属板の端部において前記ケース本体側に折りたたまれた折りたたみ部を有し、
前記ケース本体の前記周縁端部には、前記カバー部材と向かい合う第一面と、前記カバー部材と向かい合い、前記第一面よりも前記シールドケースの内部空間側において前記カバー部材側に位置する第二面と、を形成する段差が設けられており、
前記折りたたみ部が前記基材と前記第一面との間に挟まれ、前記金属板における前記折りたたみ部よりも手前側の部分が前記基材と前記第二面との間に挟まれて
おり、
前記固定部材が、前記ケース本体における前記第二面の位置で前記ケース本体と前記カバー部材とを固定している、シールドケース。
【請求項2】
前記折りたたみ部の少なくとも一部の厚さが、前記金属板における前記折りたたみ部よりも前記シールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さい、請求項1に記載のシールドケース。
【請求項3】
金属製のケース本体と、カバー部材とを有し、前記ケース本体の周縁端部において前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧されて固定されるシールドケースであって、
前記カバー部材は、基材と、前記基材における前記ケース本体側の面に設けられた金属板とを有し、
前記金属板は、前記金属板の端部において前記ケース本体側に折りたたまれた折りたたみ部を有し、
前記ケース本体の前記周縁端部には、前記カバー部材と向かい合う第一面と、前記カバー部材と向かい合い、前記第一面よりも前記シールドケースの内部空間側において前記カバー部材側に位置する第二面と、を形成する段差が設けられており、
前記折りたたみ部が前記基材と前記第一面との間に挟まれ、前記金属板における前記折りたたみ部よりも手前側の部分が前記基材と前記第二面との間に挟まれて
おり、
前記折りたたみ部の少なくとも一部の厚さが、前記金属板における前記折りたたみ部よりも前記シールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さい、シールドケース。
【請求項4】
前記段差の高さが前記金属板の厚さよりも小さい、請求項2
又は請求項3に記載のシールドケース。
【請求項5】
前記折りたたみ部には、前記金属板の一部を凹ませることにより前記ケース本体側に突出した凸部が設けられており、
前記折りたたみ部における前記凸部が設けられた部分の厚さが、前記金属板における前記折りたたみ部よりも前記シールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さい、請求項2
又は請求項3に記載のシールドケース。
【請求項6】
前記折りたたみ部における前記金属板の先端が、前記段差における前記第一面と前記第二面とをつなぐ壁面に当接している、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のシールドケース。
【請求項7】
金属製のケース本体と、カバー部材とを有し、前記ケース本体の周縁端部において前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧されて固定されるシールドケースの製造方法であって、
前記カバー部材は、基材と、前記基材における前記ケース本体側の面に設けられた金属板とを有し、
前記ケース本体の前記周縁端部には、前記カバー部材と向かい合う第一面と、前記カバー部材と向かい合い、前記第一面よりも前記シールドケースの内部空間側において前記カバー部材側に位置する第二面と、を形成する段差が設けられており、
前記金属板の端部を前記ケース本体側に折り曲げて、折り曲げられた前記金属板の先端を前記第一面に当接させた状態から、前記ケース本体と前記カバー部材とを押圧することにより、前記金属板の先端を前記段差における前記第一面と前記第二面とをつなぐ壁面に向かうようにスライドさせて前記金属板を折りたたむことを含み、
前記金属板における折りたたまれた部分が前記基材と前記第一面との間に挟まれ、前記金属板における前記折りたたまれた部分よりも手前側の部分が前記基材と前記第二面との間に挟まれるまで、前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧される、シールドケースの製造方法。
【請求項8】
前記金属板における前記折りたたまれた部分の少なくとも一部の厚さが、前記金属板における折りたたまれた部分よりも前記シールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さくなるまで、前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧される、請求項7に記載のシールドケースの製造方法。
【請求項9】
前記段差の高さが前記金属板の厚さよりも小さい、請求項8に記載のシールドケースの製造方法。
【請求項10】
前記金属板における折りたたまれた部分には、前記金属板の一部を凹ませることにより前記ケース本体側に突出した凸部が設けられており、
前記金属板における折りたたまれた部分において前記凸部が設けられた部分の厚さが、前記金属板における折りたたまれた部分よりも前記シールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さくなるまで、前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧される、請求項8に記載のシールドケースの製造方法。
【請求項11】
前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧される過程で、前記金属板の前記先端が前記段差における前記第一面と前記第二面とをつなぐ前記壁面に当接する、請求項7~請求項10のいずれか1項に記載のシールドケースの製造方法。
【請求項12】
前記シールドケースは、前記ケース本体における前記第二面の位置で前記ケース本体と前記カバー部材とを固定する固定部材を有し、
前記固定部材を用いて前記ケース本体と前記カバー部材とが押圧される、請求項7~請求項11のいずれか1項に記載のシールドケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドケース及びシールドケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、当該電子機器が発する電磁波が他の機器の動作に影響を与えることを抑制するため、電磁波をシールド可能なシールドケースに収納される。
シールドケースとしては、例えば、ケース本体とカバー部材とを有し、両者をボルト及びナット等の固定部材で固定したものがある。ケース本体とカバー部材との固定が不十分であると、両者の隙間から電磁波が外部に漏れシールド性が損なわれる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、板状のカバー部材の周縁端部を折りたたんだ折りたたみ構造部をケース本体の周縁端部に押圧固定することにより、折りたたみ構造部の弾発力を利用してシールド性を高めたシールド構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カバー部材内で厚さにばらつきが生じる場合がある。本発明者らの検討によれば、ケース本体とカバー部材との固定箇所においてカバー部材の厚さにばらつきがあると、厚さの薄い部分でケース本体とカバー部材との接触が十分でなくなり、シールド性が損なわれる可能性があることが判明した。
【0006】
本開示の一態様は、カバー部材の厚さにばらつきがある場合でも高いシールド性が得られるシールドケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、金属製のケース本体と、カバー部材とを有し、ケース本体の周縁端部においてケース本体とカバー部材とが押圧されて固定されるシールドケースである。カバー部材は、基材と、基材におけるケース本体側の面に設けられた金属板とを有する。金属板は、金属板の端部においてケース本体側に折りたたまれた折りたたみ部を有する。ケース本体の周縁端部には、カバー部材と向かい合う第一面と、カバー部材と向かい合い、第一面よりもシールドケースの内部空間側においてカバー部材側に位置する第二面と、を形成する段差が設けられている。折りたたみ部が基材と第一面との間に挟まれ、金属板における折りたたみ部よりも手前側の部分が基材と第二面との間に挟まれている。このような構成によれば、金属板の厚さにばらつきがある場合でも高いシールド性が得られる。
【0008】
本開示の一態様では、折りたたみ部の少なくとも一部の厚さが、金属板における折りたたみ部よりもシールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さくてもよい。
例えば、本開示の一態様では、段差の高さが金属板の厚さよりも小さくてもよい。また例えば、本開示の一態様では、折りたたみ部には、金属板の一部を凹ませることによりケース本体側に突出した凸部が設けられており、折りたたみ部における凸部が設けられた部分の厚さが金属板における折りたたみ部よりもシールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さくてもよい。
【0009】
このような構成によれば、折りたたみ部の高い反発力によって、基材と第一面との間の領域が塞がれるため、高いシール性が得られる。
【0010】
本開示の一態様では、折りたたみ部における金属板の先端が、段差における第一面と第二面とをつなぐ壁面に当接していてもよい。このような構成によれば、金属板の先端と第一面と第二面とをつなぐ壁面との間に隙間がある場合と比較して、折りたたみ部によるシールド性が向上する。
【0011】
本開示の一態様では、シールドケースが、ケース本体における第二面の位置でケース本体とカバー部材とを固定する固定部材を有してもよい。このような構成によれば、ケース本体とカバー部材とを固定部材を用いて押圧する過程で金属板を折りたたむことができるため、固定部材がケース本体における第一面の位置に設けられる場合と比較してケース本体とカバー部材との組付け性が高い。
【0012】
本開示の一態様は、金属製のケース本体と、カバー部材とを有し、ケース本体の周縁端部においてケース本体とカバー部材とが押圧されて固定されるシールドケースの製造方法である。カバー部材は、基材と、基材におけるケース本体側の面に設けられた金属板とを有する。ケース本体の周縁端部には、カバー部材と向かい合う第一面と、カバー部材と向かい合い、第一面よりもシールドケースの内部空間側においてカバー部材側に位置する第二面と、を形成する段差が設けられている。製造方法は、金属板の端部をケース本体側に折り曲げて、折り曲げられた金属板の先端を第一面に当接させた状態から、ケース本体とカバー部材とを押圧することにより、金属板の先端を段差における第一面と第二面とをつなぐ壁面に向かうようにスライドさせて金属板を折りたたむことを含む。金属板における折りたたまれた部分が基材と第一面との間に挟まれ、金属板における折りたたまれた部分よりも手前側の部分が基材と第二面との間に挟まれるまで、ケース本体とカバー部材とが押圧される。
【0013】
このような構成によれば、ケース本体とカバー部材とを押圧する過程で金属板が折りたたまれるため、上記構成を有するシールドケースを簡単な工程で製造することができる。
本開示の一態様では、金属板における折りたたまれた部分の少なくとも一部の厚さが金属板における折りたたまれた部分よりもシールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さくなるまで、ケース本体とカバー部材とが押圧されてもよい。
【0014】
例えば、本開示の一態様では、段差の高さが金属板の厚さよりも小さくてもよい。また例えば、本開示の一態様では、金属板における折りたたまれた部分には、金属板の一部を凹ませることによりケース本体側に突出した凸部が設けられており、金属板における折りたたまれた部分において凸部が設けられた部分の厚さが、金属板における折りたたまれた部分よりもシールドケースの内部空間側の部分の厚さの2倍よりも小さくなるまで、ケース本体とカバー部材とが押圧されてもよい。
【0015】
このような構成によれば、折りたたみ部の高い反発力によって、基材と第一面との間の領域が塞がれるため、高いシール性を有するシールドケースを製造することができる。
【0016】
本開示の一態様では、ケース本体とカバー部材とが押圧される過程で、金属板の先端が段差における第一面と第二面とをつなぐ壁面に当接してもよい。このような構成によれば、金属板の先端と第一面と第二面とをつなぐ壁面との間に隙間がある場合と比較して、折りたたみ部によるシールド性が向上したシールドケースを製造することができる。また、金属板の先端の位置が壁面によって定まるため、折りたたみ部を所望の位置に安定して形成することができる。
【0017】
本開示の一態様では、シールドケースは、ケース本体における第二面の位置でケース本体とカバー部材とを固定する固定部材を有してもよい。また、固定部材を用いてケース本体とカバー部材とが押圧されてもよい。このような構成によれば、ケース本体とカバー部材とを固定部材を用いて押圧する過程で金属板を折りたたむことができるため、固定部材がケース本体における第一面の位置に設けられる場合と比較してケース本体とカバー部材との組付け性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】シールドケースの周縁端部の拡大断面図である。
【
図3】シールドケースの製造方法を説明する図である。
【
図4】金属板にリブを設けた場合の、シールドケースの周縁端部の拡大断面図である。
【
図5】リブとして枠状の突起が形成された金属板をケースの内部側から見た図である。
【
図6】リブとして複数の丸突起が形成された金属板をケースの内部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.シールドケースの構成]
図1に示すシールドケース1は、車両に搭載される電池ユニット2を収納するケースである。電池ユニット2は、リチウムイオン電池セルと、リチウムイオン電池セルの電圧等を監視するIC等の補助機器を含むユニットである。シールドケース1は、補助機器が発する電磁波がシールドケース1の外部に漏れることを抑制する。
【0020】
シールドケース1は、ケース本体3と、カバー部材4と、ケース本体3とカバー部材4とを固定する固定部材5と、ケース本体3とカバー部材4との隙間を封止するためのシール部材6とを有する。
【0021】
ケース本体3は金属製である。ケース本体3の周縁端部31は、電池ユニット2が収納される内部空間側を内側として外側に向けて突出した形状を有する。ケース本体3とカバー部材4とは、ケース本体3の周縁端部31において、固定部材5によって押圧されて固定されている。固定部材5は、例えばボルト及びナットである。
【0022】
ケース本体3の周縁端部31には段差32が設けられている。段差32は、カバー部材4と向かい合う第一面33と、カバー部材4と向かい合い、第一面33よりもシールドケース1の内部空間側においてカバー部材4側に位置する第二面34と、を形成する。固定部材5は、ケース本体3における第二面34の位置に設けられている。また、第二面34における固定部材5よりも内側の部分に、シール部材6を設けるための凹部35が設けられている。
【0023】
カバー部材4は、基材41と、基材41におけるケース本体3側の面に設けられた金属板42とを有する。基材41は繊維強化樹脂製である。金属板42としては、後述する折りたたみ部43を形成するために塑性変形しやすく、かつ、シールド性が高い金属、例えばアルミが好適に用いられる。
【0024】
図2に示すように、金属板42は、その端部においてケース本体3側に折りたたまれた折りたたみ部43を有する。折りたたみ部43は、基材41と第一面33との間に挟まれている。折りたたみ部43における金属板42の先端44は、段差32における第一面33と第二面34とをつなぐ壁面36に当接している。一方、金属板42における折りたたみ部43よりも手前側の部分45(言い換えれば、折りたたみ部43よりもシールドケース1の内部空間側の部分)は、基材41と第二面34との間に挟まれている。
【0025】
金属板42における折りたたみ部43よりも手前側の部分45と第二面34との接触箇所は、主に、金属どうしの面接触により、シールドケース1の内部空間から外部へ漏れようとする電磁波Fをシールドする機能を有する。一方、折りたたみ部43と第一面33との接触箇所は、折りたたみ部43が以下に述べるように押しつぶされて第一面33に押圧固定されることにより、主に、シールドケース1の外部から内部空間へ水が浸入することを防ぐ機能(以下、単に「シール性」という。)を有する。
【0026】
ここで、段差32の高さt2、言い換えれば第一面33と第二面34との高さ方向における距離は、金属板42の厚さt1よりも小さい。そのため、基材41と第二面34との間に金属板42が挟まれ金属板42と第二面34との距離が金属板42の厚さt1と同じ状態では、基材41と第一面33との距離が金属板42の厚さt1の2倍よりも小さくなる。金属板42として塑性変形しやすいものを用いることにより、折りたたみ部43を基材41と第一面33との間で挟みこんで押しつぶすことができる。折りたたみ部43が押しつぶされた結果、折りたたみ部43の厚さt3は、基材41と第一面33との距離に等しく、金属板42の厚さt1の2倍よりも小さくなっている。ここでいう金属板42の厚さt1は、金属板42における折りたたみ部43よりもシールドケース1の内部空間側の部分、例えば、金属板42において、シールドケース1の内部空間に面する部分の厚さとする。また、金属板42の厚さt1は、金属板42に厚さのばらつきがあることを考慮して最も薄い部分の厚さとする。
【0027】
[2.シールドケースの製造方法]
続いて、シールドケース1の製造方法について説明する。
まず、
図3の(a)に示すように、金属板42の端部をケース本体3側に折り曲げて、折り曲げられた金属板42の先端44をケース本体3の第一面33に当接させる。
【0028】
その状態から、
図3の(b)に示すように、固定部材5であるボルト及びナットを締め付けることによりケース本体3とカバー部材4とを押圧して、金属板42の先端44を段差32の壁面36に向かうように第一面33上でスライドさせる。その結果、
図3の(c)に示すように、金属板42が折りたたまれて、折りたたまれた部分43が基材41と第一面33との間に挟まれる。また、この過程で金属板42の先端44が段差32の壁面36に当接する。なお、折りたたまれた部分43が未だ押しつぶされていないため、この状態では、金属板42における折りたたまれた部分43よりも手前側の部分45は第二面34と接触していない。
【0029】
その状態から更に、ケース本体3とカバー部材4とを押圧すると、
図3の(d)に示すように、金属板42における折りたたまれた部分43よりも手前側の部分45が第二面34に接触する。また、この過程で、金属板42における折りたたまれた部分43の一部が、ケース本体3及びカバー部材4の外側の面12よりも外側にはみ出す。
【0030】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)ケース本体3の周縁端部31には、カバー部材4と向かい合う第一面33と、カバー部材4と向かい合い、第一面33よりもシールドケース1の内部空間側においてカバー部材4側に位置する第二面34と、を形成する段差32が設けられている。
【0031】
そして、金属板42の折りたたみ部43が基材41と第一面33との間に挟まれ、金属板42における折りたたみ部43よりも手前側の部分45が基材41と第二面34との間に挟まれている。
【0032】
このような構成によれば、以下に述べるように、金属板42の厚さにばらつきがある場合でも高いシールド性が得られる。
シールドケース1においてシールド性を発揮する箇所、すなわち、金属板42における折りたたみ部43よりも手前側の部分45と第二面34との接触箇所において金属板42の厚さにばらつきが生じ、わずかに隙間が空いた場合を考える。この場合において、
図2に示すように、シールドケース1の内部空間から外部へ漏れようとする電磁波Fがその隙間を伝っていったとしても、折りたたみ部43に当たって反射する。そのため、シールドケース1の内部空間から外部へ電磁波が漏れにくく、高いシールド性が得られる。
【0033】
(3b)折りたたみ部43の厚さt3が、金属板42における折りたたみ部43よりもシールドケース1の内部空間側の部分の厚さt1の2倍よりも小さい。具体的には、段差32の高さt2が、金属板42における折りたたみ部43よりもシールドケース1の内部空間側の部分の厚さt1よりも小さく、第一面33と基材41のケース本体3側の面との間で折りたたみ部43が挟まれることにより、折りたたみ部43の厚さt3が上記厚さt1の2倍よりも小さくなっている。
【0034】
このような構成によれば、上記厚さt1の2倍よりも厚さが小さい折りたたみ部43の高い反発力によって、基材41と第一面33との間の領域が塞がれるため、高いシール性が得られる。
【0035】
(3c)折りたたみ部43における金属板42の先端44が、段差32における第一面33と第二面34とをつなぐ壁面36に当接している。このような構成によれば、金属板42の先端44と壁面36との間に隙間がある場合と比較して、折りたたみ部43によるシールド性及びシール性が向上する。
【0036】
(3d)固定部材5は、ケース本体3における第二面34の位置でケース本体3とカバー部材4とを固定する。
固定部材5が、例えば、ケース本体3における第一面33の位置でケース本体3とカバー部材4とを固定している場合、あらかじめ金属板42を折りたたんで折りたたみ部43を形成したうえで、折りたたみ部43に固定部材5が貫通するための貫通孔を設ける必要がある。すなわち、金属板42を折りたたむ工程と、固定部材5によってケース本体3とカバー部材4とを固定する工程とを分ける必要があり、上記製造方法のように、ケース本体3とカバー部材4とを固定部材5を用いて押圧する過程で金属板42を折りたたむことができない。
【0037】
これに対し、上記構成によれば、上記製造方法のようにケース本体3とカバー部材4とを固定部材5を用いて押圧する過程で金属板42を折りたたむことができるため、ケース本体3とカバー部材4との組付け性が高い。
【0038】
(3e)上記製造方法は、金属板42の端部をケース本体3側に折り曲げて、折り曲げられた金属板42の先端44を第一面33に当接させた状態から、ケース本体3とカバー部材4とを押圧することにより、金属板42の先端44を段差32の壁面36に向かうようにスライドさせて金属板42を折りたたむことを含む。また、上記製造方法において、金属板42における折りたたまれた部分43が基材41と第一面33との間に挟まれ、金属板42における折りたたまれた部分43よりも手前側の部分45が基材41と第二面34との間に挟まれるまで、ケース本体3とカバー部材4とが押圧される。
【0039】
このような製造方法によれば、ケース本体3とカバー部材4とを押圧する過程で金属板42が折りたたまれるため、上記構成を有するシールドケース1を簡単な工程で製造することができる。
【0040】
特に、上記製造方法では、ケース本体3とカバー部材4とを押圧する過程で、金属板42の先端44が壁面36に当接する。そのため、金属板42の先端44の位置が壁面36によって定まり、折りたたみ部43を所望の位置に安定して形成することができる。
【0041】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0042】
(4a)上記実施形態では、ケース本体3の段差32の高さt
2が金属板42における折りたたみ部43よりもシールドケース1の内部空間側の部分の厚さt
1よりも小さく、基材41と第二面34との隙間に金属板42が挟まれることにより、折りたたみ部43の厚さt
3が上記厚さt
1の2倍よりも小さくなっている。しかし、
図4に示すように、金属板42に凸部46が設けられることにより、折りたたみ部43における凸部46が設けられた部分の厚さt
3が上記厚さt
1の2倍よりも小さくなっていてもよい。凸部46は、金属板42において折りたたみ部43となる予定の部分に形成される。また、凸部46は、金属板42の一部を凹ませることによりケース本体3側に突出した部分である。
【0043】
凸部46の形状は特に限定されない。例えば、凸部46は、
図5に示すように金属板42の外周に沿って形成された枠状の凸部46aであってもよく、
図6に示すように金属板42の外周に沿って形成された複数の丸突起46bであってもよい。
【0044】
このような構成においても、凸部46が設けられた部分の高い反発力によって、基材41と第一面33との間の領域が塞がれるため、高いシール性が得られる。
(4b)上記実施形態では、折りたたみ部43の一部がケース本体3及びカバー部材4の外側の面12よりも外側にはみ出しているが、折りたたみ部43は外側の面12よりも外側にはみ出さなくてもよい。特に、上記構成では、折りたたみ部43が押しつぶされることにより高いシール性が得られているため、金属板42において折りたたみ部43となる予定の部分の長さにばらつきが生じ折りたたみ部43のはみ出しが生じたり生じなかったりしたとしても、高いシール性が得られる。
【0045】
(4c)上記実施形態では、固定部材5がケース本体3における第二面34の位置でケース本体3と前記カバー部材4とを固定しているが、固定部材5が、ケース本体3における第一面33の位置でケース本体3と前記カバー部材4とを固定してもよい。
【0046】
(4d)上記実施形態では、基材41が繊維強化樹脂製である。そのため、カバー部材4全体が例えば金属製である場合よりもシールドケース1を軽量化しつつ高い強度を保つことができる。ただし、基材41の材質はこれに限定されない。例えば、基材41が鉄等の硬い金属であってもよい。この場合には、基材41によってアルミ等の金属板42を強固に押圧することができ、折りたたみ部43を押しつぶしやすい。
【0047】
(4e)上記実施形態では、シールドケース1にシール部材6が設けられているが、シール部材6はなくてもよい。
(4f)上記実施形態では、シールドケース1の内部にリチウムイオン電池の電池ユニット2が収納されている。しかし、シールドケース1には、リチウムイオン電池以外の電池の電池ユニットが収納されてもよく、電池ユニット以外の他の電子機器が収納されてもよい。
【0048】
(4g)上記実施形態では、ケース本体3全体が金属製であるが、例えば、上記カバー部材4と同様に部分的に他の材質で形成されていてもよい。
(4h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…シールドケース、2…電池ユニット、3…ケース本体、4…カバー部材、5…固定部材、6…シール部材、31…周縁端部、32…段差、33…第一面、34…第二面、36…壁面、41…基材、42…金属板、43…折りたたみ部(折りたたまれた部分)、44…金属板の先端、45…金属板における折りたたみ部よりも手前側の部分、46…凸部。