(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】固体酸触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/30 20060101AFI20231122BHJP
B01J 27/188 20060101ALI20231122BHJP
B01J 27/19 20060101ALI20231122BHJP
B01J 27/199 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B01J23/30 M
B01J27/188 M
B01J27/19 M
B01J27/199 M
(21)【出願番号】P 2020192866
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2019211814
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002683
【氏名又は名称】日本新金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正崇
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043909(JP,A)
【文献】特開2011-224505(JP,A)
【文献】特開昭62-212203(JP,A)
【文献】特開昭53-010387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形状を有する固体のヘテロポリ酸であって、pHが1.0未満である固体のヘテロポリ酸
からなり、
前記固体のヘテロポリ酸は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンバナドタングステン酸、および、リンバナドモリブデン酸からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロポリ酸を含み、
前記pHは、前記固体酸触媒6gが純水30gに混合されてなる溶解液またはスラリーの上澄み液のpHを示す
ことを特徴とする、固体酸触媒。
【請求項2】
前記固体のヘテロポリ酸の平均一次粒子径は、40μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の固体酸触媒。
【請求項3】
前記固体のヘテロポリ酸は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、および、リンモリブデン酸からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロポリ酸を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の固体酸触媒。
【請求項4】
前記固体のヘテロポリ酸は、固体のヘテロポリ酸の0~15水和物を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体酸触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の反応に用いられる酸触媒として、ヘテロポリ酸が知られている。
【0003】
そのようなヘテロポリ酸の製造方法として、例えば、ヘテロポリモリブデン酸水溶液にアルカリを投入して、ヘテロポリモリブデン酸塩が析出した懸濁液を調製し、この懸濁液を減圧加熱濃縮してヘテロポリモリブデン酸塩のスラリーを形成し、このスラリーを乾燥させる、ヘテロポリモリブデン酸塩の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そのようなヘテロポリモリブデン酸塩の製造方法では、不定形状を有し、平均結晶粒度が0.3~2.0μmであるヘテロポリモリブデン酸塩が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のヘテロポリモリブデン酸塩の製造方法によって製造されるヘテロポリモリブデン酸塩は、通常、水などの溶媒に溶解されて使用される。
【0007】
しかるに、用途に応じて、ヘテロポリ酸を固体酸触媒として使用したいという要望がある。そこで、特許文献1に記載のヘテロポリモリブデン酸塩を固体酸触媒として使用することが検討される。しかし、特許文献1に記載のヘテロポリモリブデン酸塩では、塩を形成しているので、固体酸触媒の活性を十分に確保できないおそれがある。また、固体酸触媒では、他の成分と混合されたときの分散性が要求されるが、特許文献1に記載のヘテロポリモリブデン酸塩では、十分な分散性を確保することが困難である。
【0008】
本発明は、分散性の向上を図ることができながら、活性の向上を図ることができる固体酸触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、球形状を有する固体のヘテロポリ酸であって、pHが1.0未満である、固体酸触媒を含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、前記固体のヘテロポリ酸の平均一次粒子径は、40μm以下である、上記[1]に記載の固体酸触媒を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記固体のヘテロポリ酸が、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、および、リンモリブデン酸からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロポリ酸を含む、上記[1]または[2]に記載の固体酸触媒を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記固体のヘテロポリ酸が、固体のヘテロポリ酸の0~15水和物を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の固体酸触媒を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の固体酸触媒は、pHが上記上限未満の固体のヘテロポリ酸を含んでいる。このようなヘテロポリ酸は、塩を形成しておらず、酸性プロトンを与える遊離のヒドロキシ基を含む。そのため、固体酸触媒に要求される酸性度を十分に確保することができ、固体酸触媒として十分な活性を有することができる。また、固体のヘテロポリ酸は、球形状を有する。そのため、固体酸触媒が他の成分と混合されたときの分散性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1の固体酸触媒の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【
図2】
図2は、実施例2の固体酸触媒のSEM写真を示す。
【
図3】
図3は、
図1よりも高倍率の実施例1の固体酸触媒のSEM写真を示す。
【
図4】
図4は、比較例1の固体酸触媒のSEM写真を示す。
【
図5】
図5は、実施例1の固体酸触媒を鋳物砂に分散した状態のデジタルマイクロスコープ写真を示す。
【
図6】
図6は、比較例1の固体酸触媒を鋳物砂に分散した状態のデジタルマイクロスコープ写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
固体酸触媒は、常温(25℃)において固体状を有し、酸性を示す。固体酸触媒は、固体のヘテロポリ酸を含有する。固体酸触媒は、好ましくは、固体のヘテロポリ酸からなる。
【0016】
固体のヘテロポリ酸では、金属原子(例えば、タングステン、モリブデン、バナジウムなど)を含むイソポリ酸骨格に、ヘテロ原子(例えば、ケイ素、リン、ヒ素などのpブロック元素)が含まれている。固体のヘテロポリ酸は、金属原子のオキソ酸とヘテロ原子のオキソ酸との縮合物である。固体のヘテロポリ酸は、塩を形成しておらず、酸性プロトンを与える遊離のヒドロキシ基を含んでいる。
【0017】
固体のヘテロポリ酸として、例えば、ケイタングステン酸(H4SiW12O40・nH2O)、ケイモリブデン酸(H4SiMo12O40・nH2O)、リンタングステン酸(H3PW12O40・nH2O)、リンモリブデン酸(H3PMo12O40・nH2O)、ケイタングストモリブデン酸(H4SiWxMo12-xO40・nH2O)、リンバナドタングステン酸(H3+xPVxW12-xO40・nH2O)、リンバナドモリブデン酸(H3+xPVxMo12-xO40・nH2O)、リンタングストモリブデン酸(H3PWxMo12-xO40・nH2O)、ケイバナドタングステン酸(H4+xSiVxW12-xO40・nH2O)、および、ケイバナドモリブデン酸(H4+xSiVxMo12-xO40・nH2O)などが挙げられる。なお、固体のヘテロポリ酸の各化学式において、xは、1以上11以下の整数を示す。
【0018】
このような固体のヘテロポリ酸は、結晶水を含んでもよく、結晶水を含まなくてもよい。固体のヘテロポリ酸の各化学式において、nは、結晶水の数を示し、例えば、0以上、好ましくは、5以上、例えば、30以下、好ましくは、15以下である。言い換えれば、固体のヘテロポリ酸は、好ましくは、ヘテロポリ酸の0~15水和物を含み、より好ましくは、ヘテロポリ酸の5~15水和物を含む。なお、結晶水数は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0019】
固体のヘテロポリ酸は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0020】
固体のヘテロポリ酸のなかでは、好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンバナドタングステン酸、および、リンバナドモリブデン酸が挙げられ、より好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸およびリンモリブデン酸が挙げられ、さらに好ましくは、ケイタングステン酸が挙げられる。
【0021】
言い換えれば、固体のヘテロポリ酸は、好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンバナドタングステン酸、および、リンバナドモリブデン酸からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロポリ酸を含む。固体のヘテロポリ酸は、より好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸およびリンモリブデン酸からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロポリ酸を含む。固体のヘテロポリ酸は、さらに好ましくは、ケイタングステン酸を含み、とりわけ好ましくは、ケイタングステン酸からなる。
【0022】
固体のヘテロポリ酸がケイタングステン酸を含むと、固体酸触媒が他の固体のヘテロポリ酸を含む場合と比較して、固体酸触媒の触媒活性の向上を確実に図ることができる。
【0023】
また、ケイタングステン酸のなかでは、より好ましくは、ケイタングステン酸の0~15水和物が挙げられ、さらに好ましくは、ケイタングステン酸の5~15水和物が挙げられる。
【0024】
このような固体のヘテロポリ酸のpHは、1.0未満、好ましくは、0.95以下、より好ましくは、0.90以下である。なお、固体のヘテロポリ酸のpHは、固体のヘテロポリ酸を水に溶解した溶解液のpH、または、固体のヘテロポリ酸を水に分散させた分散液の上澄み液のpHを測定することにより、測定できる。より具体的には、固体のヘテロポリ酸のpHは、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0025】
固体のヘテロポリ酸のpHが上記上限以下であれば、固体のヘテロポリ酸を固体酸触媒に好適に利用できる。
【0026】
また、固体のヘテロポリ酸は、球形状を有する。固体のヘテロポリ酸の平均一次粒子径は、例えば、0.2μm以上、好ましくは、0.4μm以上、例えば、40μm以下、好ましくは、30μm以下である。なお、平均一次粒子径は、例えば、JIS 8827-1(2008)に基づく最大フェレー径の長さ平均粒子径として測定できる。
【0027】
固体のヘテロポリ酸の平均一次粒子径が上記下限以下であれば、固体酸触媒の分散性の向上を図ることができる。固体のヘテロポリ酸の平均一次粒子径が上記下限以上であれば、工業上有効にハンドリングできる。
【0028】
このような固体のヘテロポリ酸は、平均一次粒子径によって分類できる。固体のヘテロポリ酸は、好ましくは、平均一次粒子径が5μm以下である第1粒子、および/または、平均一次粒子径が5μmを超過し40μm以下である第2粒子を含む。
【0029】
第1粒子の平均一次粒子径は、例えば、0.2μm以上、好ましくは、0.4μm以上、例えば、5μm以下、好ましくは、3μm以下である。
【0030】
このような第1粒子を調製するには、まず、上記したヘテロポリ酸を溶媒に溶解して、ヘテロポリ酸溶液を調製する。
【0031】
溶媒に溶解されるヘテロポリ酸(原料ヘテロポリ酸)は、好ましくは、結晶水を有している。原料ヘテロポリ酸における上記した各化学式のnは、例えば、16以上、好ましくは、20以上、例えば、30以下である。言い換えれば、原料ヘテロポリ酸は、例えば、ヘテロポリ酸の16~30水和物を含み、好ましくは、ヘテロポリ酸の20~30水和物を含み、より好ましくは、ヘテロポリ酸の20~30水和物からなる。
【0032】
溶媒として、例えば、水、エタノール、アセトンなどが挙げられる。溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。溶媒のなかでは、好ましくは、水が挙げられる。
【0033】
ヘテロポリ酸溶液におけるヘテロポリ酸の濃度は、例えば、1.2g/cm3以上、好ましくは、1.5g/cm3以上、例えば、3.0g/cm3以下、好ましくは、2.5g/cm3以下である。
【0034】
次いで、ヘテロポリ酸溶液を、スプレードライヤーにより処理する。スプレードライヤーで処理することにより、ヘテロポリ酸をアルカリで中和することなく、固体状(粉体状)にすることができる。
【0035】
スプレードライヤーの噴霧方式として、例えば、4流体ノズル方式、アトマイザータイプディスク方式などが挙げられる。
【0036】
第1粒子を調製する場合、スプレードライヤーの噴霧方式として、好ましくは、4流体ノズル方式が選択される。
【0037】
また、スプレードライヤーの入口温度は、例えば、130℃以上、好ましくは、150℃以上、例えば、220℃以下、好ましくは、200℃以下である。
【0038】
スプレードライヤーの排気温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、140℃以下、好ましくは、120℃以下である。
【0039】
スプレードライヤーの塔内差圧は、例えば、0.6kPa以上、好ましくは、0.8kPa以上、例えば、1.4kPa以下、好ましくは、1.2kPa以下である。
【0040】
なお、給気風量、ノズルエアーおよび送液速度は、適宜変更される。
【0041】
これにより、乾燥粉末が調製される。そして、乾燥粉末を、必要に応じて、上記した第1粒子の平均一次粒子径となるように篩分けする。以上によって、第1粒子が調製される。
【0042】
第2粒子の平均一次粒子径は、例えば、5μmを超過し、好ましくは、10μm以上、例えば、40μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0043】
このような第2粒子を調製するには、まず、第1粒子の調製と同様に、ヘテロポリ酸溶液を調製する。次いで、ヘテロポリ酸溶液を、スプレードライヤーにより処理する。
【0044】
第2粒子を調製する場合、スプレードライヤーの噴霧方式として、好ましくは、アトマイザータイプディスク方式が選択される。
【0045】
また、スプレードライヤーの入口温度は、例えば、140℃以上、好ましくは、160℃以上、例えば、220℃以下、好ましくは、210℃以下である。
【0046】
スプレードライヤーの排気温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0047】
これにより、乾燥粉末が調製される。そして、乾燥粉末を、必要に応じて、上記した第2粒子の平均一次粒子径となるように篩分けする。以上によって、第2粒子が調製される。
【0048】
固体のヘテロポリ酸は、例えば、第1粒子および第2粒子のいずれか一方のみからなってもよく、第1粒子および第2粒子の混合物からなってもよい。固体のヘテロポリ酸は、好ましくは、第1粒子および第2粒子のいずれか一方のみからなる。また、ヘテロポリ酸が第1粒子および第2粒子を含む場合、第2粒子の含有割合は、第1粒子および第2粒子の総和に対して、例えば、60質量%以上80質量%以下である。
【0049】
このような固体酸触媒は、種々の反応に好適に用いられる。固体酸触媒の用途として、例えば、鋳物砂硬化添加剤、化学繊維合成、有機溶媒合成などが挙げられる。また、固体酸触媒は、粉粒体などの他の成分と混合される用途にとりわけ有用である。そのような用途として、例えば、固体酸触媒が、粉粒体としての砂(例えば、天然珪砂、人工砂など)に混合される鋳物砂などが挙げられる。
【0050】
<作用効果>
上記した固体酸触媒は、pHが上記上限未満の固体のヘテロポリ酸を含んでいる。そのため、固体酸触媒に要求される酸性度を十分に確保することができ、固体酸触媒として十分な活性を有することができる。
【0051】
また、固体のヘテロポリ酸は、球形状を有する。そのため、固体酸触媒が他の成分と混合されたときの分散性の向上を図ることができる。その結果、固体酸触媒の使用量を低減することができる。
【0052】
また、固体のヘテロポリ酸の平均一次粒子径は、好ましくは、上記上限以下である。そのため、固体酸触媒の分散性のさらなる向上を図ることができる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0054】
<<実施例1>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、水(溶媒)に溶解して、ケイタングステン酸溶液を調製した。ケイタングステン酸溶液の濃度は、2.08g/cm3であった。
【0055】
次いで、ケイタングステン酸溶液を、スプレードライヤー(GF社製、MDL-050CM)により、以下の条件で処理した。
噴霧方式:4流体ノズル方式、
入口温度:170℃、
排気温度:100℃、
塔内差圧:1.0kPa、
バグフィルター差圧:0.3kPa、
給気風量:1.0m3/min、
ノズルエアー
一次圧力:0.6MPaG、流量1:40NL/min、流量2:40NL/min、
送液速度
流量1:5mL/min、流量2:5mL/min。
【0056】
これによって、乾燥粉末を得た。
【0057】
次いで、乾燥粉末を、公称目開き250μmのSUS製篩(60メッシュ)により篩分けして、篩下粒子を、ケイタングステン酸からなる固体酸触媒として得た。
【0058】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、0.8μmであり、固体酸触媒は、第1粒子に相当した。
【0059】
<<実施例2>>
実施例1と同様にして調製したケイタングステン酸溶液を、スプレードライヤー(大川原化工機社製、CLT-8)により、以下の条件で処理した。
噴霧方式:アトマイザータイプディスク方式、
入口温度:175℃、
排気温度:115℃、
送液速度:15mL/min、
アトマイザー:25Hz。
【0060】
これによって、乾燥粉末を得た。
【0061】
次いで、乾燥粉末を、公称目開き150μmのSUS製篩(100メッシュ)により篩分けして、篩下粒子を、ケイタングステン酸からなる固体酸触媒として得た。
【0062】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、19.4μmであり、固体酸触媒は、第2粒子に相当した。
【0063】
<<実施例3>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、リンタングステン酸30水和物(H3[PW12O40]・30H2O)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、リンタングステン酸からなる固体酸触媒を得た。
【0064】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、22.1μmであり、固体酸触媒は、第2粒子に相当した。
【0065】
<<実施例4>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、リンタングステン酸30水和物(H3[PW12O40]・30H2O)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、リンタングステン酸からなる固体酸触媒を得た。
【0066】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、1.3μmであり、固体酸触媒は、第1粒子に相当した。
【0067】
<<実施例5>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、リンモリブデン酸30水和物(H3PMo12O40・30H2O)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、リンモリブデン酸からなる固体酸触媒を得た。
【0068】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、1.5μmであり、固体酸触媒は、第1粒子に相当した。
【0069】
<<実施例6>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、リンモリブデン酸30水和物(H3PMo12O40・30H2O)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、リンモリブデン酸からなる固体酸触媒を得た。
【0070】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、18.8μmであり、固体酸触媒は、第2粒子に相当した。
【0071】
<<実施例7>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、リンバナドタングステン酸30水和物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、リンバナドタングステン酸からなる固体酸触媒を得た。
【0072】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、1.5μmであり、固体酸触媒は、第1粒子に相当した。
【0073】
<<実施例8>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、リンバナドモリブデン酸30水和物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、リンバナドモリブデン酸からなる固体酸触媒を得た。
【0074】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、1.5μmであり、固体酸触媒は、第1粒子に相当した。
【0075】
<<比較例1>>
ケイタングステン酸30水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、水(溶媒)に溶解して、ケイタングステン酸溶液を調製した。ケイタングステン酸溶液の濃度は、800g/Lであった。
【0076】
また、水酸化カリウムを、水(溶媒)に溶解して、水酸化カリウム溶液を調製した水酸化カリウムの濃度は、90g/Lであった。
【0077】
次いで、ケイタングステン酸溶液1.9Lに対して、水酸化カリウム溶液を、60mL/minの添加速度で、20分間添加した。このとき、混合溶液を、マグネチックスターラーによって、500rpmの回転数で撹拌した。
【0078】
次いで、水酸化カリウム溶液の添加終了後、混合溶液の撹拌を30分間継続して、ケイタングステン酸カリウムが析出して分散した懸濁液を調製した。
【0079】
次いで、ケイタングステン酸カリウムの懸濁液を、ロータリーエバポレーターにより、40rpmで回転させ、かつ、液温を60℃に維持した状態で減圧濃縮した。これによって、懸濁液が濃縮されたスラリーを得た。
【0080】
その後、スラリーを容器に移して、恒温乾燥機において、70℃で24時間乾燥した。これによって、微結晶が凝集した塊になったケイタングステン酸カリウムを得た。そして、その塊を乳鉢で粉砕した後、公称目開き250μmのSUS製篩(60メッシュ)により篩分けして、篩下粒子を、ケイタングステン酸カリウムからなる固体酸触媒として得た。
【0081】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、4.2μmであった。
【0082】
<<比較例2>>
ケイタングステン酸水和物(H4[SiW12O40]・30H2O)を、水(溶媒)に溶解して、ケイタングステン酸溶液を調製した。ケイタングステン酸溶液の濃度は、800g/Lであった。
【0083】
次いで、ケイタングステン酸溶液1.9Lに対して、濃度が27g/Lであるアンモニア水を、60ml/minの添加速度で、20分間添加した。このとき、混合溶液を、マグネチックスターラーによって、500rpmの回転数で撹拌した。
【0084】
次いで、アンモニア水の添加終了後、混合溶液の撹拌を30分間継続して、ケイタングステン酸アンモニウムが析出して分散した懸濁液を調製した。
【0085】
次いで、ケイタングステン酸アンモニウムの懸濁液を、ロータリーエバポレーターにより、40rpmで回転させ、かつ、液温を60℃に維持した状態で減圧濃縮した。これによって、懸濁液が濃縮されたスラリーを得た。
【0086】
その後、スラリーを容器に移して、恒温乾燥機において、70℃で24時間乾燥した。これによって、微結晶が凝集した塊になったケイタングステン酸アンモニウムを得た。そして、その塊を乳鉢で粉砕した後、公称目開き250μmのSUS製篩(60メッシュ)により篩分けして、篩下粒子を、ケイタングステン酸アンモニウムからなる固体酸触媒として得た。
【0087】
固体酸触媒の平均一次粒子径は、5.7μmであった。
【0088】
<結晶水数の算出>
以下によって、各実施例および各比較例の固体酸触媒に含まれるヘテロポリ酸の結晶水数を算出した。
【0089】
まず、下記測定条件の水分分析によって、各実施例および各比較例の固体酸触媒の質量減少率を測定した。
【0090】
測定条件:
水分分析手法:TG-DTA
測定装置:ブルカージャパン社製 TG-DTA 2000SA
昇温:10℃/minで700℃まで
雰囲気:Airフロー(150mL/min)
測定容器:アルミナ製パン
標準試料:アルミナ粉末
サンプル:30~60mg
実施例1の固体酸触媒の質量減少率は、-6.98質量%であり、実施例2の固体酸触媒の質量減少率は、-7.66質量%であった。そして、得られた質量減少率から、各実施例および各比較例の固体酸触媒に含まれるヘテロポリ酸の結晶水数を算出した。その結果を表1に示す。
【0091】
<pH測定>
各実施例および各比較例の固体酸触媒6gを、純水30gに混合して、溶解液またはスラリー(分散液)を調製した。そして、溶解液またはスラリーの上澄み液のpHを、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(東興化学研究所社製 TPX-999Si)によって測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
<球形性>
各実施例および各比較例の固体酸触媒の形状を、走査電子顕微鏡(SEM)写真により確認して、下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。
〇:球形
×:非球形。
【0093】
図1および
図3に、実施例1の固体酸触媒のSEM写真を示す。また、
図2に、実施例2の固体酸触媒のSEM写真を示す。また、
図3に、比較例1の固体酸触媒のSEM写真を示す。
【0094】
<分散性の評価>
各実施例および各比較例の固体酸触媒0.2gと、鋳物砂50gとを、ポリ容器に入れて、1時間攪拌混合した。なお、鋳物砂は、スピネル砂の市販品「ナイスビーズ(キンセイマテック社製、-250μm)」を用いた。
【0095】
そして、鋳物砂に対する固体酸触媒の分散の程度を、デジタルマイクロスコープ(オリンパス社製 DSX500)によって確認して、下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。
〇:均一な分散
×:不均一な分散。
【0096】
球形状を有する固体酸触媒(実施例1~8)は、鋳物砂に対して均一に分散していた。
図5に、実施例1の固体酸触媒を鋳物砂に分散した状態のデジタルマイクロスコープ写真を示す。一方、球形状を有さず、不定形状を有する固体酸触媒(比較例1および2)は、鋳物砂に対して不均一に分散していた。
図6に、比較例1の固体酸触媒を鋳物砂に分散した状態のデジタルマイクロスコープ写真を示す。
【0097】