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特許7389740HCV抗原のマルチエピトープ融合タンパク質およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】HCV抗原のマルチエピトープ融合タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/18 20060101AFI20231122BHJP
   C07K 14/245 20060101ALI20231122BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231122BHJP
   G01N 33/576 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/51 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C07K14/18 ZNA
C07K14/245
C12P21/02 A
G01N33/576 Z
C12N15/51
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020502704
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2018069985
(87)【国際公開番号】W WO2019020599
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】17183523.4
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ボルハーゲン,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウプマイアー,バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】ツァルント,トラルフ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263983(JP,A)
【文献】特開2007-127671(JP,A)
【文献】国際公開第2016/069762(WO,A2)
【文献】特表2015-529211(JP,A)
【文献】特開2009-284902(JP,A)
【文献】Journal of Immunology Research,2015年,Vol 2015 ID 762426,1-12
【文献】Immunology Letters,2002年,Vol 84 No 2,89-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質のアミノ酸配列に存在する2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを含む、マルチエピトープ融合タンパク質であって、前記ペプチドのそれぞれが、前記マルチエピトープ融合タンパク質中に1~5重に存在し、前記異なるペプチドのそれぞれが、シャペロンアミノ酸配列を含む非HCVアミノ酸配列からなるスペーサーによって、他の前記ペプチドから分離されており、さらなるHCV特異的アミノ酸配列が、前記マルチエピトープ融合タンパク質に存在しない、マルチエピトープ融合タンパク質であって、
ここで、前記2~6つの線形ペプチドのそれぞれが5~50個のアミノ酸の長さを有し、
前記シャペロンが、SlyD、SlpA、FkpA、およびSkpからなる群から選択される、
前記マルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項2】
前記HCVコアタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列に対応する、請求項1に記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項3】
前記2~6つの線形ペプチドのそれぞれが、5~31個のアミノ酸、ある実施形態では5~25個のアミノ酸、ある実施形態では7~21個のアミノ酸、ある実施形態では15~21個のアミノ酸、ある実施形態では15~30個のアミノ酸の長さを有する、請求項1または2に記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項4】
前記HCVコアタンパク質のアミノ酸配列に存在する3つの異なる線形ペプチドが、前記マルチエピトープ融合タンパク質の一部である、請求項1から3のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項5】
前記3つの異なる線形ペプチドが、配列番号1のアミノ酸55位~80位、配列番号1のアミノ酸90位~120位、および配列番号1のアミノ酸145位~175位内に存在する線形アミノ酸配列を含む、請求項に記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項6】

X-スペーサー-Y-スペーサー-Z
(式中、X、Y、およびZは、HCVコアタンパク質に存在する異なる非オーバーラップ線形アミノ酸配列を指し、Zが、1~5重に存在し、スペーサーが、シャペロンアミノ酸配列を含む非HCVアミノ酸の配列を指す)
を有する、請求項1から5のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項7】
Xが、配列番号1のアミノ酸55位~80位内に存在する線形アミノ酸配列を含み、Yが、配列番号1のアミノ酸90位~120位内に存在する線形アミノ酸配列を含み、Zが、配列番号1のアミノ酸145位~175位内に存在する線形アミノ酸配列を含む、請求項6に記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項8】
前記スペーサーが、少なくとも25個の非HCVアミノ酸、ある実施形態では少なくとも100個、ある実施形態では少なくとも150個、ある実施形態では少なくとも200個、ある実施形態では25個~200個の非HCVアミノ酸の配列を含む、請求項1から7のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号4から6のいずれかからなる、請求項1から8のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
【請求項10】
可溶性マルチエピトープ融合タンパク質を産生する方法であって、
a)請求項1から9のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質をコードする作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクターが形質導入された宿主細胞を培養するステップと、
b)前記マルチエピトープ融合タンパク質を発現させるステップと、
c)前記マルチエピトープ融合タンパク質を製するステップと
を含む方法。
【請求項11】
HCVコア抗原を検出するためのインビトロ試験における、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料としての、請求項1から9のいずれかに記載のHCVコア抗原のアミノ酸配列を含むマルチエピトープ融合タンパク質の使用。
【請求項12】
インビトロイムノアッセイにおいてHCVコア抗原を検出するための方法であって、請求項1から9のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質が、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料として使用される、方法。
【請求項13】
HCVコア抗原の検出のための試薬キットであって、別個の容器または単一の容器の別個のコンパートメントに、少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤、およびキャリブレーター材料としての少なくとも1つの請求項1から9のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質を含む、試薬キット。
【請求項14】
少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤を含み、前記少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤のうちの1つが、検出できるように標識されている、請求項13に記載の試薬キット。
【請求項15】
マイクロ粒子をさらに含む、請求項13および14のいずれかに記載の試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
信頼性のあるコントロールおよびキャリブレーター材料は、特に、感染性疾患の分野において、血清学的インビトロ診断アッセイに欠かせない部分である。ウイルス感染診断の支援に関して、核酸試験およびウイルス抗原の検出は、当該技術分野において周知の方法に属する。C型肝炎は、肝臓に罹患し、慢性化する傾向にあるRNAウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる、世界中に蔓延しているウイルス感染症である。HCVは、血液と血液との接触によって(たとえば、静脈内薬物の使用、輸血、妊娠/出産中の母親から子への伝播によって)伝播される。RNA試験以外では、HCVの構造抗原、たとえば、コア抗原の血清学的検出が、C型肝炎感染の早期検出の一般的な方法である。
【0002】
Abbott Architect HCV Ag、Ortho HCV Core Ag EIA、Fujirebio Lumipulse II HCVコアアッセイ、Murex HCV Ag/Ab Combination、Bio-Rad Monolisa HCV Ag-Ab Ultraなど、HCVコア抗原を検出するための複数の市販キットが、入手可能である。これらのアッセイのそれぞれには、陰性標本および陽性標本を区別するための信頼性のあるカットオフを生成するために、キャリブレーション材料が必要である。定量的アッセイについては、キャリブレーション材料は、試験されている検体の機器での測定値と、この検体の実際の濃度との間の相関性を示し、それを証明するために、試験システムの読取りを調節するために使用することもできる。加えて、キャリブレーション検証材料または(品質)コントロール材料もまた、必要である。定量的アッセイについては、そのようなコントロール材料は、公知の検体濃度を有し、患者サンプルと同じ様式で試験される。コントロールの測定値により、試験システムが、報告可能な測定範囲全体にわたり、サンプルを正確に測定していることが、保証される。単に検体の存在を判定する定性的アッセイについては、コントロールの測定値により、試験システムが、適正に作動しており、したがって、品質の良い結果をもたらすことについてそれを頼ることができることが保証される。
【0003】
HCVコアのインビトロ診断アッセイについては、感染患者に由来する天然の血清または組換えで産生されたHCVコア抗原のいずれかが、キャリブレーション材料として使用され、しばしば、コントロール材料としても使用される。HCV感染症の有効な治療的処置を踏まえると、HCV陽性患者の血清の入手可能性は、ますます困難になっている。したがって、組換えHCVコア抗原を産生し、次いで、天然の血清または人工マトリックスおよび緩衝系を、組換え材料でスパイクすることが、1つの選択肢である。しかしながら、そのような人工的に産生されたマトリックスにおける回収が、天然の血清における回収と非常に近似していること、ならびに人工マトリックス自体が、いずれの干渉も引き起こさないことを、注意深く評価しなければならない。
【0004】
ヒト血清または血漿におけるHCVコア抗原の安定性については、ほとんど知られていない。Tanakaら(Hepatol Res 2003,26(4):261~267)は、HCVコア抗原が、25℃で7日間インキュベートした場合に、熱的ストレスに対して非常に安定であると記載している。このストレス手順の後、依然として、ELISAによりHCVコア抗原を検出することができる。しかしながら、本発明者らは、コア抗原陽性のヒト血清の反応性、ならびに組換えHCVコア抗原でスパイクしたサンプルの反応性は、室温で数日間保管した後に、著しく減少することを発見した。
【0005】
したがって、観察されている制限を克服する、HCVイムノアッセイをキャリブレートおよびコントロールするための、より高い長期安定性およびより長い保管寿命を有する材料を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、マルチエピトープ融合タンパク質、ならびにHCVコア抗原を検出するためのインビトロ診断イムノアッセイにおけるキャリブレーターおよび/またはコントロールとしてのその使用に関する。マルチエピトープ融合タンパク質は、C型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質のアミノ酸配列に存在する2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを含み、ここで、前記異なるペプチドのそれぞれは、前記マルチエピトープ融合タンパク質において、1~5重に存在し、前記異なるペプチドのそれぞれは、非HCVアミノ酸配列からなり、かつシャペロンアミノ酸配列を含む、スペーサーによって、他の前記ペプチドから分離されている。さらなるHCV特異的アミノ酸配列は、前記ポリペプチドに存在しない。
【0007】
ある実施形態において、前記線形ペプチドのそれぞれは、5~50個のアミノ酸の長さを有し、別の実施形態では、3つの異なる線形ペプチドが、マルチエピトープ融合タンパク質に存在する。さらなる態様は、キャリブレーターもしくはコントロールまたはその両方としての前記マルチエピトープ融合タンパク質を含むマルチエピトープ融合抗原を含む、HCVコア抗原を検出するための試薬キットに関する。
開示されるアミノ酸配列の凡例
配列番号1、HCVコア、UniProt番号P26664による遺伝子型1a(アイソレート1)、191個のアミノ酸
MSTNPKPQKK NKRNTNRRPQ DVKFPGGGQI VGGVYLLPRR GPRLGVRATR KTSERSQPRG
RRQPIPKARR PEGRTWAQPG YPWPLYGNEG CGWAGWLLSP RGSRPSWGPT DPRRRSRNLG
KVIDTLTCGF ADLMGYIPLV GAPLGGAARA LAHGVRVLED GVNYATGNLP GCSFSIFLLA
LLSCLTVPAS A
配列番号2、HCVエンベロープE1、UniProt番号P26664による遺伝子型1a(アイソレート1)、192個のアミノ酸
YQVRNSTGLY HVTNDCPNSS IVYEAADAIL HTPGCVPCVR EGNASRCWVA MTPTVATRDG
KLPATQLRRH IDLLVGSATL CSALYVGDLC GSVFLVGQLF TFSPRRHWTT QGCNCSIYPG
HITGHRMAWD MMMNWSPTTA LVMAQLLRIP QAILDMIAGA HWGVLAGIAY FSMVGNWAKV
LVVLLLFAGV DA
配列番号3、HCVエンベロープE2、UniProt番号P26664による遺伝子型1a(アイソレート1)、363個のアミノ酸
ETHVTGGSAG HTVSGFVSLL APGAKQNVQL INTNGSWHLN STALNCNDSL NTGWLAGLFY
HHKFNSSGCP ERLASCRPLT DFDQGWGPIS YANGSGPDQR PYCWHYPPKP CGIVPAKSVC
GPVYCFTPSP VVVGTTDRSG APTYSWGEND TDVFVLNNTR PPLGNWFGCT WMNSTGFTKV
CGAPPCVIGG AGNNTLHCPT DCFRKHPDAT YSRCGSGPWI TPRCLVDYPY RLWHYPCTIN
YTIFKIRMYV GGVEHRLEAA CNWTRGERCD LEDRDRSELS PLLLTTTQWQ VLPCSFTTLP
ALSTGLIHLH QNIVDVQYLY GVGSSIASWA IKWEYVVLLF LLLADARVCS CLWMMLLISQ
AEA
配列番号4、HCVコア-3エピトープのキャリブレーター(HCVコア-3Epi-EcS-FP)、432個のアミノ酸。3つの異なるHCVコアエピトープが、2つの大腸菌SlyDスペーサーポリペプチドによって分離されている。下線で示した部分が、3つの異なるHCVコアペプチドである。
MRGSGRRQPI PKARRPEGRT GGGSGGGMKV AKDLVVSLAY QVRTEDGVLV DESPVSAPLD
YLHGHGSLIS GLETALEGHE VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE NLVQRVPKDV FMGVDELQVG
MRFLAETDQG PVPVEITAVE DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN VEVVAIREAT EEELAHGHVH
GAHDHHHDHD HDGGGSGGGL LSPRGSRPSW GPTDPRRRSR GGGSGGGMKV AKDLVVSLAY
QVRTEDGVLV DESPVSAPLD YLHGHGSLIS GLETALEGHE VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE
NLVQRVPKDV FMGVDELQVG MRFLAETDQG PVPVEITAVE DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN
VEVVAIREAT EEELAHGHVH GAHDHHHDHD HDGGGSGGGA HGVRVLEDGV NYATGNLPGG
GGSGGGHHHH HH
配列番号5、HCVコア-3エピトープのキャリブレーター(HCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A))、473個のアミノ酸。3つの異なるHCVコアエピトープが、2つの大腸菌SlyDスペーサーポリペプチドによって分離されている。下線で示した部分が、3つの異なるHCVコアペプチドである。
MRGSGRRQPI PKARRPEGRT GGGSGGGMKV AKDLVVSLAY QVRTEDGVLV DESPVSAPLD
YLHGHGSLIS GLETALEGHE VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE NLVQRVPKDV FMGVDELQVG
MRFLAETDQG PVPVEITAVE DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN VEVVAIREAT EEELAHGHVH
GAHDHHHDHD HDGGGSGGGL LSPRGSRPSW GPTDPRRRSR GGGSGGGMKV AKDLVVSLAY
QVRTEDGVLV DESPVSAPLD YLHGHGSLIS GLETALEGHE VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE
NLVQRVPKDV FMGVDELQVG MRFLAETDQG PVPVEITAVE DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN
VEVVAIREAT EEELAHGHVH GAHDHHHDHD HDGGGSGGGD PRRRSRNLGK VIDTLTAGFA
DLMGYIPLVG APLGGAARAL AHGVRVLEDG VNYATGNLPG GGGSGGGHHH HHH
配列番号6、HCVコア-3エピトープのキャリブレーター(HCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4)、513個のアミノ酸。3つの異なるHCVコアエピトープが、2つの大腸菌SlyDスペーサーポリペプチドによって分離されている。下線で示した部分は、3つの異なるHCVコアペプチドを表す。C末端エピトープは、4回存在しているが、2つの他のエピトープは、単一エピトープとして存在している。
MRGSGRRQPI PKARRPEGRT GGGSGGGMKV AKDLVVSLAY QVRTEDGVLV DESPVSAPLD
YLHGHGSLIS GLETALEGHE VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE NLVQRVPKDV FMGVDELQVG
MRFLAETDQG PVPVEITAVE DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN VEVVAIREAT EEELAHGHVH
GAHDHHHDHD HDGGGSGGGL LSPRGSRPSW GPTDPRRRSR GGGSGGGMKV AKDLVVSLAY
QVRTEDGVLV DESPVSAPLD YLHGHGSLIS GLETALEGHE VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE
NLVQRVPKDV FMGVDELQVG MRFLAETDQG PVPVEITAVE DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN
VEVVAIREAT EEELAHGHVH GAHDHHHDHD HDGGGSGGGA HGVRVLEDGV NYATGNLPGG
GGSGGGAHGV RVLEDGVNYA TGNLPGGGGS GGGAHGVRVL EDGVNYATGN LPGGGGSGGG
AHGVRVLEDG VNYATGNLPG GGGSGGGHHH HHH
【発明を実施するための形態】
【0008】
天然に存在する抗原に対応する組換え抗原は、天然の検体を効果的に模倣すると考えられる。HCV抗原の部分的な配列は、先行技術分野において広範に説明されている。国際公開第WO2016/172121号は、全長コア抗原の部分的な配列を含むC型肝炎ウイルスコア抗原ポリペプチドについて説明している。開示される抗原は、ラクダ抗体を産生するため、およびその後のスクリーニングのための免疫原として使用することができる。この公開は、安定性の問題に関して言及しておらず、コア抗原をキャリブレーターまたはコントロールとして使用することについてのいずれの情報も開示していない。しかしながら、本発明者らは、使用されたマトリックス(血清、血漿、または人工マトリックス、たとえば、水性緩衝液)とは無関係に、天然の全長コア抗原に近似するサイズのC型肝炎コア抗原が、数日以内に、これらのマトリックスのそれぞれにおけるその反応性を、かなりの程度まで喪失することを観察した。この不安定性の原因は、不明であるが、タンパク質分解もしくは化学分解、または前記マトリックスに含有される他の物質による抗原のマスキングに起因する可能性がある。また、機械的ストレスおよび熱的ストレスも、HCVコア抗原の安定性に影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
驚くべきことに、ほぼ全長のコア抗原(168個のアミノ酸)の代わりに、コア抗原の短い切片のみを、インビトロ診断イムノアッセイにおいてマルチエピトープ融合抗原として使用し、適用した場合、結果として得られるシグナル回収は、35℃で14日間の熱的ストレス試験において、非常に高かった。組換えマルチエピトープ融合タンパク質のシグナルの減少は、10%未満であったが、全長コア抗原は、もともとのシグナルの約3分の2への継続的なシグナル喪失を示した。
【0010】
本発明は、したがって、C型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質のアミノ酸配列に存在する2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを含む、マルチエピトープ融合タンパク質であって、前記異なるペプチドのそれぞれが、前記マルチエピトープ融合タンパク質中に1~5重に存在し、前記異なるペプチドのそれぞれが、シャペロンアミノ酸配列を含む非HCVアミノ酸配列からなるスペーサーによって、他の前記ペプチドから分離されており、さらなるHCV特異的アミノ酸配列が、前記ポリペプチドに存在しない、マルチエピトープ融合タンパク質に関する。
【0011】
「マルチエピトープ融合タンパク質」という用語は、「マルチエピトープ融合抗原」と同義である。マルチエピトープ融合タンパク質は、抗体、たとえば、エピトープを検出するためのイムノアッセイにおいて試薬として適用される抗体によって特異的に認識および結合される結合部位である、1つを上回るエピトープを含む。
【0012】
本発明によるマルチエピトープ融合タンパク質は、HCVコアタンパク質のみのエピトープを含む。これは、2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドが、たとえば、コアペプチドとエンベロープペプチドの混合物のエピトープではなく、コアタンパク質の明確なエピトープを表すことを意味する。いくつかのウイルスタンパク質またはいくつかのウイルスタンパク質のエピトープが、マルチエピトープ融合タンパク質の一部、たとえば、HCVコア、env、NS3、およびNS4である、先行技術分野、たとえば、国際特許出願第WO97/44469号またはChienら(J Clin Microbiol 1999,37(5):1393~1397)において説明されているC型肝炎マルチエピトープ融合抗原は、本発明によって包含されない。先行技術とは対照的に、本発明のマルチエピトープ融合タンパク質は、天然に存在するHCVコア抗原に存在するエピトープを含む。代表的なHCVコアタンパク質(遺伝子型1a、アイソレート1)のアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。配列番号2および3は、それぞれ、エンベロープ1(E1)およびエンベロープ2(E2)のアミノ酸配列を示す。
【0013】
マルチエピトープ融合タンパク質は、上述のC型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質のアミノ酸配列に存在する2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを含み、ある実施形態では、3つの異なる線形ペプチドを含む。線形ペプチドは、直接配列で、アミノ酸が、1つずつ順番にペプチド結合を介して連結されたものであり、ここで、個々のアミノ酸は、互いに隣接しており、共有結合で連結されている。マルチエピトープ融合タンパク質は、共有結合で連結されたアミノ酸の継続的な中断されない連続的な鎖である。
【0014】
「非オーバーラップ」という用語は、選択されたアミノ酸領域が、天然のコア抗原内で、オーバーラップするアミノ酸配列を共通して有さない、別個のエピトープであることを意味する。例示として、アミノ酸60位~75位のコアエピトープがエピトープとして選択される場合、追加で選択されるエピトープは、76位から開始し得るか、または59位で終了し得る。60位~75位、97位~117位、および152位~171位のエピトープの組合せは、非オーバーラップの要件を満たす例である。
【0015】
このマルチエピトープ融合タンパク質内のエピトープは、通常、連続的なポリペプチド鎖上に少なくとも5つのアミノ酸、ある実施形態では5~50個のアミノ酸、ある実施形態では5~31個のアミノ酸、ある実施形態では5~25個のアミノ酸、ある実施形態では7~21個のアミノ酸、ある実施形態では15~21個のアミノ酸を含む。
【0016】
ペプチドおよびポリペプチドという用語は、本明細書において、同義であると理解され、最大で50個のアミノ酸からできた分子を指す。タンパク質という用語は、50個を上回るアミノ酸からできたポリペプチドを指す。抗原は、ポリペプチドまたはタンパク質のいずれかであり得る。抗原という用語は、抗体がそれに特異的に結合することができるという事実を指す。抗原は、少なくとも1つのエピトープ(抗体への結合部位)を含むが、通常、1つを上回るエピトープを有する。
【0017】
通常、マルチエピトープ融合タンパク質に含まれるペプチドは、線形ペプチド配列が、イムノアッセイにおいてHCV構造タンパク質、ある実施形態ではHCVコア抗原を検出する特異的試薬として適用される抗体によって認識されるエピトープに対応するような様式で、選択される。個々のペプチドは、天然の検体のある特定のエピトープを模倣する。人工的に構成されたマルチエピトープ融合タンパク質が、天然のサンプルにおけるコアタンパク質の場合のように、アッセイの指定物、すなわち、検体特異的結合剤と非常に近似する様式で反応することが、重要である。そうでなければ、インビトロ診断アッセイは、適切にキャリブレートすることができない。ある実施形態において、3つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドは、マルチエピトープ融合タンパク質の一部である。別の実施形態において、前記3つの異なる線形ペプチドは、配列番号1のアミノ酸55位~80位、配列番号1のアミノ酸90位~120位、および配列番号1のアミノ酸145位~175位内に存在する線形アミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、前記3つの異なる線形ペプチドは、配列番号1のアミノ酸60位~75位、配列番号1のアミノ酸97位~117位、および配列番号1のアミノ酸152位~171位からなる。別の実施形態において、前記3つの異なる線形ペプチドは、配列番号1のアミノ酸60位~75位、配列番号1のアミノ酸97位~117位、および配列番号1のアミノ酸111位~171位からなる。
【0018】
異なるHCV遺伝子型のコア抗原など、配列番号1のバリアントもまた、包含される。これらのバリアントは、開示されるアミノ酸配列の保存的または相同的置換(たとえば、システインのアラニンまたはセリンへの置換など)によって、当業者によって容易に作製することができる。この文脈における「バリアント」という用語はまた、前記ポリペプチドに実質的に類似するポリペプチドにも関連する。具体的には、バリアントは、最も出現度の高いタンパク質アイソフォームのアミノ酸配列と比較して、アミノ酸の交換、欠失、または挿入を示す、アイソフォームであり得る。一実施形態において、そのような実質的に類似するタンパク質は、最も出現度の高いタンパク質アイソフォームに対して、少なくとも90%、別の実施形態では少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。配列番号1のバリアントは、たとえば、HCV遺伝子型1~7のコアアミノ酸配列である。HCV遺伝子型、それらの出現度、および全体的な分布は、当該技術分野において十分に説明されており、たとえば、Messinaら、Hepatology 2015 61(1)、77~87ページによって概説されている。
【0019】
2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを除き、さらなるHCV特異的アミノ酸配列は、前記マルチエピトープ融合タンパク質に存在しない。「さらなるHCV特異的アミノ酸配列はない」および「非HCVアミノ酸配列」という用語は、さらなるアミノ酸片が、マルチエピトープ融合タンパク質の一部であり得ることを意味する。しかしながら、非HCV特異的アミノ酸配列が存在する場合、これらの非HCV特異的配列のいずれかに対する抗体が、HCV構造抗原、たとえば、コア抗原に、高い親和性で結合することはないと予想される。そのような抗体のHCV構造抗原に対する親和性は、10l/molよりも低いと予想される。2~6つの異なるペプチドのみが、患者サンプル中の抗体、またはHCV構造タンパク質を検出するために特異的イムノアッセイ試薬として使用される抗体と、免疫反応することができる。典型的には、イムノアッセイにおいてHCV構造タンパク質に特異的に結合する抗体は、前記タンパク質に対して、少なくとも10l/mol、ある実施形態では10l/molの親和性を有する。
【0020】
ある実施形態において、2~6つの線形ペプチドは、選択された配列がオーバーラップしないような様式で、選択される。
さらに別の実施形態において、本発明は、式X-スペーサー-Y-スペーサー-Z(式中、X、Y、およびZは、HCVコアタンパク質に存在する異なる非オーバーラップ線形アミノ酸配列を指し、スペーサーは、非HCVアミノ酸の配列を指し、シャペロンアミノ酸配列を含む)を有するマルチエピトープ融合タンパク質である。ある実施形態において、X、Y、およびZのそれぞれは、1~5重に存在する。別の実施形態において、Zは、1~5重に存在する。上記に提供されているすべての説明および定義は、本実施形態にも適用される。ある実施形態において、Xは、配列番号1のアミノ酸55位~80位内に存在する線形アミノ酸配列を含み、Yは、配列番号1のアミノ酸90位~120位内に存在する線形アミノ酸配列を含み、Zは、配列番号1のアミノ酸145位~175位内に存在する線形アミノ酸配列を含む。ある実施形態において、Xは、配列番号1のアミノ酸位60位~75位からなり、Yは、配列番号1のアミノ酸位97位~117位からなり、Zは、配列番号1のアミノ酸位152~171位からなり、ある実施形態では、Zは、配列番号1のアミノ酸位111~171位からなる。
【0021】
2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドは、C型肝炎ポリタンパク質には存在しない、特に、HCV構造抗原コアまたはenvのいずれにも存在しない、アミノ酸配列からなるスペーサーによって、分離されている。少なくとも25個の非HCVアミノ酸、ある実施形態では少なくとも100個、ある実施形態では少なくとも150個、ある実施形態では少なくとも200個、ある実施形態では25~200個の非HCVアミノ酸の長さを有する任意の非HCVポリペプチドは、スペーサーとして機能し得る。ある実施形態において、スペーサーは、シャペロン、またはHCV特異的ペプチドに結合することが想定される抗体と免疫学的に交差反応しない任意の他のタンパク質の、アミノ酸配列を含む。ある実施形態において、前記シャペロンは、SlyD、SlpA、FkpA、およびSkpからなる群から選択される。
【0022】
異なるペプチドのそれぞれは、マルチエピトープ融合タンパク質に、1~5重に存在し得る。これは、個々のエピトープの同一な反復が存在することを意味する。これらの反復的エピトープは、シャペロンアミノ酸配列によって分離されている必要はないが、非シャペロン配列、たとえば、短い非HCVペプチドを含むスペーサーによって分離されていてもよい。例として、反復されるグリシン残基のような、2~15個のアミノ酸を含むスペーサーにより、同一なHCVコアエピトープが分離されていてもよい。同一なエピトープを分離しているスペーサーのさらなる例は、アミノ酸配列GGGSGGGである。
【0023】
さらなる態様において、マルチエピトープ融合タンパク質は、たとえば、クローニング手順に起因して存在し得るか、または精製目的で必要とされ得る、さらなる非HCVアミノ酸が隣接していてもよい。これらの追加のアミノ酸は、N末端もしくはC末端、または両方の末端に付加され得る。
【0024】
別の実施形態において、マルチエピトープ融合タンパク質は、配列番号4からなる。さらなる実施形態において、これは、配列番号5または6からなる。
本発明のさらなる態様は、上述の節に記載されている可溶性マルチエピトープ融合タンパク質を産生する方法であって、a)上記に詳述されているマルチエピトープ融合タンパク質をコードする作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクターが形質導入された宿主細胞を培養するステップと、b)前記ポリペプチドを発現させるステップと、c)前記ポリペプチドを精製するステップとを含む方法に関する。組換えDNA技術は、当業者に公知であり、先行技術において、たとえば、Sambrookら(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual)によって、詳細に説明されている。本発明のなおも別の態様は、本発明による作動可能に連結された組換えDNA分子、すなわち、1つのC型肝炎ウイルス(HCV)構造タンパク質のアミノ酸配列に存在する2~6つの異なる線形ペプチドを含むマルチエピトープ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子を含む、発現ベクターであって、前記ペプチドのそれぞれが、非HCVアミノ酸配列からなるスペーサーによって、他の前記ペプチドから分離されており、さらなるHCV特異的アミノ酸配列が、前記ポリペプチドに存在しない、発現ベクターである。
【0025】
さらなる態様は、HCVコア抗原の2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを含む可溶性で安定性かつ免疫反応性のマルチエピトープ融合タンパク質を産生するための方法である。この方法は、
a)前記マルチエピトープ融合タンパク質をコードする遺伝子を含む上述の発現ベクターが形質導入された宿主細胞を培養するステップと、
b)前記マルチエピトープ融合タンパク質をコードする遺伝子を発現させるステップと、
c)前記マルチエピトープ融合タンパク質を精製するステップと
を含む。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、HCVコア抗原を検出するためのインビトロ診断試験における、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料としての、本明細書において開示されるHCVコアタンパク質のアミノ酸配列を含むマルチエピトープ融合タンパク質の使用に関する。
【0027】
HCV抗原を検出するためのイムノアッセイを行うインビトロ診断(IVD)機器のキャリブレーションは、次のように機能する:具体的なアッセイについてのIVD機器のキャリブレーション手順は、通常、分析装置に特異的なアッセイ指示に適したオペーレーターマニュアルに従って行われる。一般に、すべての試薬パックが、提供されたキャリブレーター材料を使用して、キャリブレーションされる。例として、HCVコア抗原については、異なるコア特異的抗体を、標識された形式および/または抗体が固相に付着するのを可能にする形式で、使用される。キャリブレーター材料、ある実施形態では本明細書に記載されるマルチエピトープ融合タンパク質は、特定のコア抗体とともにインキュベートされ、サンプルと同じ様式でプロセシングされる。シグナルを検出した後、この結果を、所定の値と比較し、適切な測定範囲が設定される。製造業者の説明書に応じて、たとえば、品質管理の所見が、指定された限度から外れている場合、キャリブレーションは、所定の間隔でかまたは必要に応じて反復される。
【0028】
ある実施形態において、本明細書に定義されるマルチエピトープ融合タンパク質は、品質コントロールのための材料として使用される。これは、マルチエピトープ融合タンパク質が、IVDシステムが適正に作動していること、および特に定量的アッセイについては、正確に測定していることを検証するために、サンプルの代わりに既定の濃度で使用される。
【0029】
本発明のなおもさらなる態様は、HCVコア抗原を検出するための方法である。前記方法は、より上記に詳細に記載されているマルチエピトープ融合タンパク質を、キャリブレーターもしくはコントロール材料またはその両方として適用する。ある実施形態において、前記方法は、a)体液サンプルを、少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤と混合することによって、免疫反応混合物を形成するステップと、b)前記免疫反応混合物を、体液サンプル中に存在するHCVコア抗原が前記少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤と免疫反応して、免疫反応生成物を形成することを可能にするのに十分な期間、維持するステップと、c)前記免疫反応生成物のいずれかの存在および/または濃度を検出するステップとを含み、ここで、本明細書に開示されるマルチエピトープ融合タンパク質は、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料として使用される。
【0030】
タンパク質の検出のためのイムノアッセイは、当該技術分野において周知であり、そのようなアッセイを実行するための方法ならびに実践的な応用および手順も同様に周知である。ある実施形態において、マルチエピトープ融合タンパク質は、サンドイッチ形式で使用され、ここで、前記マルチエピトープ融合タンパク質には、少なくとも2つの抗体、標識化された抗体および固相への結合を可能にする抗体が結合する。しかしながら、マルチエピトープ融合タンパク質がキャリブレーターおよび/またはコントロール材料としての機能を果たす場合、このタンパク質は検体を模倣するため、任意の検出原理(たとえば、酵素イムノアッセイ、電気化学発光アッセイ、放射性同位体アッセイなど)またはアッセイ形式(たとえば、試験ストリップアッセイ、サンドイッチアッセイ、間接的試験概念、もしくは同種アッセイなど)を選択することができる。
【0031】
本発明のある実施形態において、イムノアッセイは、マイクロ粒子を固相として適用する、粒子に基づくイムノアッセイである。「粒子」は、本明細書において使用されるとき、体積、質量、または平均サイズなどの物理的特性が帰属し得る、小さな局在化した対象物を意味する。マイクロ粒子は、したがって、対称的な、球状、本質的に球状もしくは球形の形状であり得るか、または不規則な非対称の形状もしくは形式であり得る。本発明によって想定される粒子のサイズは、多様であり得る。一実施形態において、使用されるマイクロ粒子は、球状形状であり、たとえば、ナノメートルおよびマイクロメートル範囲の直径を有するマイクロ粒子である。一実施形態において、本開示による方法において使用されるマイクロ粒子は、50ナノメートルから20マイクロメートルの直径を有する。さらなる実施形態では、マイクロ粒子は、100nm~10μmの直径を有する。一実施形態において、本開示による方法において使用されるマイクロ粒子は、200nm~5μmまたは750nm~5μmの直径を有する。
【0032】
本明細書において上記に定義されているマイクロ粒子は、当業者に公知の任意の好適な材料を含み得るかまたはそれからなり得る、たとえば、マイクロ粒子は、無機または有機材料を含み得るか、またはそれからなり得るか、または本質的にそれからなり得る。典型的には、マイクロ粒子は、金属もしくは金属の合金、または有機材料を含み得るか、それからなり得るか、または本質的にそれからなり得るか、あるいは、炭水化物エレメントを含み得るか、それからなり得るか、または本質的にそれからなり得る。想定されるマイクロ粒子材料の例としては、アガロース、ポリスチレン、ラテックス、ポリビニルアルコール、シリカ、および強磁性金属、合金、または複合材料が挙げられる。一実施形態において、マイクロ粒子は、磁性もしくは常磁性の金属、合金、または組成物である。さらなる実施形態において、材料は、特定の特性を有し得る、たとえば、疎水性または親水性であり得る。そのようなマイクロ粒子は、典型的に、水溶液中に分散され、小さな負の表面電荷を保持し、マイクロ粒子を分離したまま保ち、非特異的なクラスタリングを回避する。
【0033】
本発明の一実施形態において、マイクロ粒子は、常磁性マイクロ粒子であり、本開示による測定方法におけるそのような粒子の分離は、磁力によって促進される。磁力は、常磁性粒子または磁性粒子を、溶液/懸濁液から引き出し、それらを所望される通りに保持するように適用され、その間に、溶液/懸濁液の液体を除去することができ、粒子を、たとえば、洗浄および再懸濁することができる。
【0034】
当業者に公知のすべての生物学的液体は、単離されたサンプルとして使用することができる。通常使用されるサンプルは、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄流体(脳脊髄液)、または唾液であり、ある実施形態では血清または血漿である。
【0035】
本発明の別の部分は、HCVコア抗原の検出のための試薬キットであって、別個の容器または単一の容器の別個のコンパートメントに、少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤、およびキャリブレーター材料としての少なくとも1つの本明細書に定義されるマルチエピトープ融合タンパク質を含む、試薬キットに関する。
【0036】
単一の容器という用語は、Roche diagnosticsからのElecsys(登録商標)分析装置シリーズなどの多くの自動分析装置について、ある特定の検体を測定するために必要とされる試薬が、試薬パックの形式で、すなわち、分析装置に適合し、目的の検体の測定に必要とされるすべての重要な試薬を異なるコンパートメントに格納する、1つの容器ユニットとして、提供されるという事実に関する。
【0037】
ある実施形態において、キットは、少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤を含み、ここで、前記少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤のうちの1つは、検出できるように標識されている。加えて、上記に定義されるマイクロ粒子は、試薬キットの一部であり得る。ある実施形態において、試薬キットは、結合ペアの第1のパートナーがコーティングされたマイクロ粒子を含み、前記少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤のうちの第2のものは、前記結合ペアの第2のパートナーに結合されている。
【0038】
別の態様において、キットは、コントロール材料としての、本明細書に記載されるマルチエピトープ融合タンパク質を含む、追加の別個の容器を含む。
加えて、上記に定義される試薬キットは、コントロールおよび標準溶液、ならびに平均的な当業者によって使用される一般的な添加剤、緩衝剤、塩、界面活性剤などを有する1つまたは複数の溶液中の試薬を、使用のための説明書とともに含む。
【0039】
以下の実施形態もまた、本発明の一部である。
1. C型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質のアミノ酸の配列に存在する2~6つの異なる非オーバーラップ線形ペプチドを含む、マルチエピトープ融合タンパク質であって、前記異なるペプチドのそれぞれが、1~5重に存在し、前記異なるペプチドのそれぞれが、シャペロンアミノ酸配列を含む非HCVアミノ酸配列からなるスペーサーによって、他の前記ペプチドから分離されており、さらなるHCV特異的アミノ酸配列が、前記ポリペプチドに存在しない、マルチエピトープ融合タンパク質。
2. 前記HCVコアタンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対応する、実施形態1のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
3. 前記2~6つの線形ペプチドのそれぞれが、5~50個のアミノ酸、ある実施形態では5~31個のアミノ酸、ある実施形態では5~25個のアミノ酸、ある実施形態では7~21個のアミノ酸、ある実施形態では15~21個のアミノ酸の長さを有する、実施形態1から2のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
4. 1つのC型肝炎ウイルス(HCV)構造タンパク質のアミノ酸配列に存在する3つの異なる線形ペプチドが、前記マルチエピトープ融合タンパク質の一部である、実施形態1から3のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
5. 前記3つの異なる線形ペプチドが、配列番号1のアミノ酸55位~80位、配列番号1のアミノ酸90位~120位、および配列番号1のアミノ酸145位~175位内に存在する線形アミノ酸配列を含む、実施形態1から4のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
6. 前記3つの異なる線形ペプチドが、配列番号1のアミノ酸60位~75位、配列番号1のアミノ酸97位~117位、および配列番号1のアミノ酸152位~171位からなる、実施形態1から5のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
7. 式
X-スペーサー-Y-スペーサー-Z
(式中、X、Y、およびZが、HCVコアタンパク質に存在する異なる非オーバーラップ線形アミノ酸配列を指し、スペーサーが、シャペロンアミノ酸配列を含む非HCVアミノ酸の配列を指す)
を有する、実施形態1から6のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
8. Xが、配列番号1のアミノ酸55位~80位内に存在する線形アミノ酸配列を含み、Yが、配列番号1のアミノ酸90位~120位内に存在する線形アミノ酸配列を含み、Zが、配列番号1のアミノ酸145位~175位内に存在する線形アミノ酸配列を含む、実施形態7に記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
9. Xが、配列番号1のアミノ酸60位~75位からなり、Yが、配列番号1のアミノ酸97位~117位からなり、Zが、配列番号1のアミノ酸152位~171位からなる、実施形態7から8のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
10. 前記スペーサーが、少なくとも25個の非HCVアミノ酸、ある実施形態では少なくとも100個、ある実施形態では少なくとも150個、ある実施形態では少なくとも200個、ある実施形態では25個~200個の非HCVアミノ酸の配列を含む、実施形態1から9のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
11. 前記シャペロンが、SlyD、SlpA、FkpA、およびSkpからなる群から選択される、実施形態1から10のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
12. 配列番号4、5、および6からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、実施形態1から11のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質。
13. 可溶性マルチエピトープ融合タンパク質を産生する方法であって、
a)実施形態1から12のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質をコードする作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクターが形質導入された宿主細胞を培養するステップと、
b)前記ポリペプチドを発現させるステップと、
c)前記ポリペプチドを精製するステップと
を含む方法。
14. HCV抗原、ある実施形態ではHCVコア抗原を検出するためのインビトロ診断試験における、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料としての、実施形態1から12のいずれかに記載のHCVコアタンパク質のアミノ酸配列を含むマルチエピトープ融合タンパク質の使用。
15. イムノアッセイにおいてHCVコア抗原を検出するための方法であって、実施形態1から12のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質が、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料として使用される、方法。
16. 単離されたサンプル中のHCVコア抗原を検出するための方法であって、
a)体液サンプルを、少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤と混合することによって、免疫反応混合物を形成するステップと、
b)前記免疫反応混合物を、体液サンプル中に存在するHCVコア抗原が前記少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤と免疫反応して、免疫反応生成物を形成することを可能にするのに十分な期間、維持するステップと、
c)前記免疫反応生成物のいずれかの存在および/または濃度を検出するステップと
を含み、
実施形態1から12のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質が、キャリブレーターおよび/またはコントロール材料として使用される、方法。
17. HCVコア抗原の検出のための試薬キットであって、別個の容器または単一の容器の別個のコンパートメントに、少なくとも1つのHCVコア抗原特異的結合剤、およびキャリブレーター材料としての少なくとも1つの実施形態1から12のいずれかに記載のマルチエピトープ融合タンパク質を含む、試薬キット。
18.少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤を含み、前記少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤のうちの1つが、検出できるように標識されている、実施形態17に記載の試薬キット。
19. マイクロ粒子をさらに含む、実施形態17および18のいずれかに記載の試薬キット。
20. 前記マイクロ粒子が、結合ペアの第1のパートナーでコーティングされており、前記少なくとも2つのHCVコア抗原特異的結合剤のうちの第2のものが、前記結合ペアの第2のパートナーに結合されている、実施形態19に記載の試薬キット。
21. 実施形態1から12のいずれかにに記載のマルチエピトープ融合タンパク質をコントロール材料として含むさらなる別個の容器を含む、実施形態17に記載のHCVコア抗原の検出のための試薬キット。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、14日間にわたる35℃のストレス後の、両方の組換えHCVコア抗原(ほぼ全長の組換えHCVコア、組換えHCVコア(2~169)、および組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP)のシグナル回収を示す。
図2図2は、追加のマルチエピトープ融合タンパク質である組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)、および組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4によって拡張した、図1に関して記載されるように実行された独立した実験の結果を示す。
【0041】
本発明は、実施例によってさらに例証される。
【実施例
【0042】
実施例1
方法
モノクローナル抗体
適切な動物の免疫付与に必要とされる組換えHCVコア抗原は、当該技術分野において公知の標準的な技法を使用して、所望される抗原アミノ酸配列をコードするDNAフラグメントを、大腸菌発現プラスミドに挿入し、続いて、タンパク質の過剰発現および精製を行うことによって得た。これらの標準的な分子生物学的方法は、たとえば、Sambrook,J.ら、Molecular cloning: A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、New York、1989において説明されている。
【0043】
HCVコアに対するマウスまたはウサギモノクロ-ナル抗体は、それぞれ、当業者に公知の標準的なハイブリドーマ技術によってかまたは組換え核酸技法によって、たとえば国際公開第WO2016/091755号に記載されるものと類似の様式で、調製した。
【0044】
以下の実施例において捕捉化合物として使用されるHCVコアタンパク質に対するモノクローナル抗体は、HCVコアタンパク質(配列番号1)のアミノ酸157~169および65~71のエピトープに結合する。非常に類似するエピトープおよびそれらの判定は、すでに欧州公開第EP1308507号に開示されている。検出化合物として、欧州公開第EP0967484号および同第EP1308507号にも記載されているエピトープに関連するエピトープであるアミノ酸102~112のコアエピトープに結合することができるモノクローナル抗体を、選択した。マウスおよびウサギの免疫付与については、HCV遺伝子型1によってコードされる完全ポリタンパク質を開示しているGenbank受託番号P26664.3 GI:130455(配列番号1)による遺伝子型1aのHCVコア抗原配列を、使用した。
【0045】
具体的には、国際公開第WO 03/000878号A2、米国公開第US 2009/0291892号A1、国際公開第WO 2013/107633号A1に開示されている手順に従った大腸菌SlyDを有する組換え融合タンパク質としてのアミノ酸110~171に由来するペプチド、またはBoulant,S.ら、2005,J.Virol.79:11353~11365により説明されている手順に従った組換えタンパク質としてのアミノ酸2~169に由来するペプチドのいずれかを、免疫付与に使用した。追加のアプローチにおいて、KLH(キーホール・リンペットヘモシアニン)に連結した、アミノ酸82~117に由来するペプチドを、公知の方法による免疫付与に使用した。
キャリブレーター/コントロール試薬として使用される組換えHCVコア抗原
アミノ酸2~169に由来する組換えHCVコア抗原(組換えHCVコア(2~169))を、Boulant,S.ら、2005,J.Virol.79:11353~11365により説明されている手順に従って調製した。
【0046】
上述の3つのモノクローナル抗HCVコア抗体のエピトープおよび2つの大腸菌SlyDユニットを含む組換えHCVコア抗原融合タンパク質(組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、配列番号4)をコードする合成遺伝子を、Eurofins MWG Operon(Ebersberg、Germany)から購入した。Novagen(Madison、WI、USA)のpET24a発現プラスミドに基づいて、以下のクローニングステップを実行した。ベクターを、NdeIおよびXhoIで消化させ、記載される融合タンパク質を含むカセットを挿入した。結果として得られたプラスミドのインサートを、シーケンシングし、所望される融合タンパク質をコードすることが見出された。結果として得られたタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)を、本発明の配列プロトコールで示す。これは、Ni-NTAに補助される精製を促進するC末端ヘキサヒスチジンタグを含んでいた。組換えHCVコア-3Epi-EcS-FPを、以下のプロトコールに従って精製した。発現プラスミドを有する大腸菌BL21(DE3)細胞を、カナマイシン(30μg/ml)を含むLB培地においてOD600が1になるまで成長させ、37℃の成長温度において、1mMの最終濃度までイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を添加することによって、サイトゾル過剰発現を誘導した。誘導の4時間後に、細胞を、遠心分離(5000×gにおいて20分間)により採取し、-20℃で凍結させ、保管した。細胞溶解のために、凍結したペレットを、20mMのTris緩衝液pH8.0、10mMのMgCl、10U/mlのBenzonase(登録商標)、1錠のComplete(登録商標)、および1錠のComplete(登録商標)EDTA不含(緩衝液50ml当たり)(プロテアーゼ阻害剤カクテル)中に再懸濁させ、結果として得られた懸濁液を、高圧均質化により溶解させた。粗溶解物に、最大20mMのイミダゾールを補充した。遠心分離の後に、上清を、緩衝液A(100mMのリン酸ナトリウムpH8.0、300mMの塩化ナトリウム、20mMのイミダゾール、1錠のComplete(登録商標)EDTA不含(緩衝液50ml当たり))中で事前に平衡処理したNi-NTA(ニッケル-ニトリロトリアセテート)カラムに適用した。溶出の前に、混入タンパク質を除去するために、イミダゾール濃度を、40mMに上昇させた。次いで、250mMの濃度のイミダゾールを適用することによって、タンパク質を溶出させた。透析の後に、タンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー(Q-Sepharose)によってさらに精製した。最後に、タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーに供し、タンパク質を含有する画分をプールした。
タンパク質の判定
精製したポリペプチドのタンパク質濃度は、ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて計算したモル吸光係数を使用して、または比色分析BCA法を使用して、280nmにおける光学密度(OD)を判定することによって判定した。
【0047】
実施例2
活性化ビオチン標識試薬の合成
ビオチン-PEGn-NHS-ビオチン標識試薬(CAS番号365441-71-0、n=エチレンオキシドユニットの数)は、IRIS Biotech GmbHから入手したか、または社内で合成したかのいずれかであった。
【0048】
デノボ合成では、明確なエチレンオキシドユニット数のコントロールは、ChenおよびBaker、J.Org.Chem.1999,64,6840~6873により記載される方法に従って、より短いPEG、たとえば、テトラエチレングリコールの段階的伸長によって、確実に行った。
【0049】
第1のステップにおいて、ビス-トリチル-PEG1を、得た(当然ながら、nは、エチレングリコールユニットの数を表す)。
ジオキサン中1MのHClにおいて、室温で1時間撹拌することによって、1の脱保護を実行した。蒸発させた後、残渣を、透明な溶液が得られるまでメタノール中で還流させ、フラスコを、4℃で一晩保持した。濾過した後、溶液を、ヘキサンで抽出し、メタノール層を蒸発させ、乾燥させて、対応するPEG-ジオール2を、油またはワックスとして得た(稠度は、長さ/PEGのユニット数(n)に依存する)。
【0050】
次に、SeitzおよびKunz、J.Org.Chem.1997,62,813~826に従い、ナトリウムに触媒されるPEG-ジオールのtert-ブチルアクリレートへの添加によって、酸官能基の導入を行った。このようにして、化合物3を得る。
【0051】
塩化メチレン中のHO-PEG-COOtBu 3(1当量)およびトリエチルアミン(2.5当量)の溶液に、メチルスルホニルクロリド(2当量)を、0℃で滴下添加した。1時間撹拌した後、水性の後処理および蒸発を続いて行った。
【0052】
ジメチルホルムアミドを室温で2日間撹拌することによって、メシレート4(1当量)を、NaN(2当量)と直接的に反応させた。固体およびジメチルホルムアミドを除去した後、ジエチルエーテルおよびNaCOでの水系後処理を続いて行った。
【0053】
粗生成物5を、15/1の酢酸エチル/メタノールにおいて、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。4/1のテトラヒドロフラン/水中で、トリフェニルホスフィン(1.1当量)とともに24時間撹拌することによって、アジド5(1当量)の還元を行った。蒸発させた後、残渣を、水中に懸濁し、酢酸エチルで数回洗浄した。水層を、蒸発させ、乾燥させて、アミン6を無色の油として得た。
【0054】
tert-ブチルエーテルの切断を、水中5%のトリフルオロ酢酸で行った。アミノ-PEG-酸7を、水での数回の蒸発によって得た。
ビオチンを、ジメチルホルムアミド中で、室温で一晩、トリエチルアミン(4当量)とともに対応するN-ヒドロキシスクシンイミドエステル8(1.05当量)とカップリングさせることによって、導入した。蒸発させた後、粗生成物9を、アセトニトリル/水でのRP-HPLCによって精製した。
【0055】
最後に、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル10を、塩化メチレン中のN-ヒドロキシスクシンイミド(1.1当量)およびエチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(1.1当量)との反応によって、形成した。反応の完了後に、反応混合物を、塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。蒸発および乾燥により、純粋なビオチン-PEG-NHS 10を、エチレンオキシドユニットの数に応じて、それぞれ、油、ワックス、または固体として得た。
【0056】
【化1】
【0057】
実施例3
抗体の標識化
ビオチン部分およびルテニウム部分それぞれの、抗体へのカップリング:
抗体は、当業者には完全に熟知されている、最新の手順に従って入手し、精製した。
【0058】
標識化の前に、検出抗体を、ペプシンで切断して、F(ab’)フラグメントを得、干渉の傾向があるFcフラグメントを排除した(方法は、A.JohnstoneおよびR.Thorpe in Immunochemistry in Practice,Blackwell Scientific 1987によって説明されている)。精製したF(ab’)フラグメントを、さらに、ホモ二官能性架橋性スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)を用いて重合させ、S400ゲル濾過クロマトグラフィーに適用して、最適なサイズ範囲のF(ab’)ポリマーを収集した(原理は、DE3640412において記載されている)。
【0059】
それぞれの標識の付加のために、一般に、抗体のリシンε-アミノ基を、N-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化化合物による標的とした。10mg/mlのタンパク質濃度において、抗体を、それぞれ、N-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化ビオチン標識試薬(ビオチン-PEG24-NHS)およびN-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化ルテニウム標識化試薬と反応させた。ビオチン標識またはルテニウム標識化試薬の標識/タンパク質の比は、それぞれ、5~6:1または15:1であった。反応緩衝液は、50mMのリン酸カリウム(pH8.5)、150mMのKClであった。反応は、室温で15分間実行し、L-リシンを10mMの最終濃度まで添加することによって停止させた。標識の加水分解による不活性化を回避するために、それぞれのストック溶液は、無水DMSO(Sigma-Aldrich、Germany)において調製した。カップリング反応の後に、未反応の遊離ビオチンまたはルテニウム標識は、粗抗体コンジュゲートをゲル濾過カラム(Superde×200 HI Load)に通すことによって、または透析によって、除去した。
【0060】
実施例4
プロトタイプElecsys HCVコア抗原アッセイ
Elecsys HCVコア抗原プロトタイプアッセイの測定は、自動化cobas(登録商標)e601またはe801分析装置(Roche Diagnostics GmbH)において、サンドイッチアッセイ形式で行った。この分析装置におけるシグナルの検出は、電気化学発光に基づく。このサンドイッチアッセイにおいて、1つまたは複数の捕捉抗体-ビオチンコンジュゲート(すなわち、検体特異的結合剤)は、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズの表面に固定化されている。検出抗体(さらなる検体特異的結合剤)は、シグナル伝達部分として、錯体形成したルテニウムカチオンを有する。検体の存在下において、ルテニウム錯体は、固相に架橋され、分析装置の測定セルに含まれる白金電極での励起の後に、620nmで光を放出する。シグナル出力は、任意の光ユニット単位である。測定は、いくつかの供給源から購入したHCVコア抗原陽性および陰性のヒト血清および血漿サンプル(表1および2)、ならびに組換え抗原HCVコア(2~169、配列番号1のアミノ酸2位~169位に対応する)、およびHCVコア-3Epi-EcS-FP(配列番号4、表1ならびに図1および2)、HCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)(配列番号5、表2および図2)、およびHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4(配列番号6、表2および図2)を用いて行った。
【0061】
実験的HCVコア抗原アッセイは、以下のように行った。5.4%のマンニトールおよび5.9%のD(+)-スクロース、0.01%のN-メチルイソチアゾロン塩酸塩、0.1%のオキシプリオン、および0.4%のウシアルブミンを含有する36mMのHEPES-緩衝液中の、50μlの正常ヒト血清、HCV抗原陽性サンプル、または組換え抗原であるHCVコア(2~169)、またはHCVコア-3Epi-EcS-FP、またはHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)、またはHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4、ならびに前処置試薬(PT:0.25M KOH、1.125M KCl、1.5%のヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HTAC)、0.85%オクチルグリコシド)を含有する25μlの界面活性剤を、9分間一緒にインキュベートして、抗原を放出させた後、2つの異なる抗体-ビオチンコンジュゲート(1.5μg/mlおよび0.9μg/mL)の混合物35μl、ならびに同じアッセイ緩衝液(200mMのTris pH7.0、225mMのKCl、0.5%のタウロデオキシコール酸ナトリウム、0.3%の双性イオン3~14、0.1%のオキシプリオン、0.01%のメチルイソチアゾリノン、0.2%のウシ血清アルブミン、0.2%のウシIgG、50μg/mlのMAK33-IgG1、50μg/mlのMAK33-F(ab’)-ポリ、50μg/mlのMAK IgG2b/Fab2a-ポリ)中の1.2μg/mlの検出抗体ルテニウム標識コンジュゲートR1およびR2 40μlを添加した。さらに9分間のインキュベーションの後、50μlのストレプトアビジンコーティング常磁性マイクロ粒子を添加し、さらに9分間インキュベートした。その後、HCVコア抗原を検出した(これらの実験において生成された電気化学発光シグナルを介して)。
【0062】
図1は、14日間にわたる35℃のストレス後の、両方の組換えHCVコア抗原(ほぼ全長の組換えHCVコア、組換えHCVコア(2~169)、および組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP)のシグナル回収を示す。0日目(熱的ストレスよりも前)に、両方のキャリブレーターを比較するために、両方のキャリブレーターのシグナルを、100%として設定した。しかしながら、熱的ストレスの期間(キャリブレーターの35℃でのインキュベーション)の間は、マルチエピトープ融合タンパク質を含むキャリブレーターが、コア(2~169)キャリブレーターよりも優れており、組換えHCVコア-3Epi-EcS-FPのシグナルは、4日後には10%未満減少し、熱的ストレス後の数日間、安定なままであった。もとのシグナルの約3分の2までのHCVコア(2~169)の継続的なシグナル喪失は、観察された期間にわたって、より顕著であった。この状況は、キャリブレーターおよび/またはコントロールを含む試薬キットが、輸送中の高い外気温条件下など、不適切な条件下で保管された場合の、現実的な条件を反映している。また、キットの一部であり得るキャリブレーターの保管寿命は、増大される。安定性の理由で、組換えHCVコア-3Epi-EcS-FPなどのマルチエピトープ融合タンパク質は、全長またはほぼ全長の組換えキャリブレーターHCVコア(2~169)よりも、キャリブレーターまたは/およびコントロール試薬として、より好適である。
【0063】
表1は、実施例4に記載されるイムノアッセイの結果を示し、ここで、本発明によるマルチエピトープ融合タンパク質は、「Cal2」(350pg/mlの組換えHCVコア-3Epi-EcS-FPを検体類似体として含む陽性キャリブレーター)として適用された。「Cal1」は、いずれのHCV抗体も含有しない陰性キャリブレーター(プールした正常サンプル)である。Cal2キャリブレーターで提供されたシグナルは、正常な(陰性)サンプルプールで得られたシグナルよりも約12倍高く、アッセイが陽性結果と陰性結果とを区別することができるような優れた測定範囲を提供する。「COI」は、カットオフインデックスを意味し、測定されたシグナルを所定のカットオフで除すことによって得られる比である。カットオフは、陽性サンプルと陰性サンプルを区別するための閾値である。この事例では、カットオフは、陽性キャリブレーターCal2の平均値に0.2を乗じることによって判定され(表1を参照されたい)、カットオフとして2041のカウントが得られた。この数よりも低いカウントを有するサンプルは、陰性として分類され、2041カウントを上回るサンプルは、陽性(反応性または感染)サンプルとして分類される。
【0064】
測定結果に移ると、正常(陰性)サンプルで得られた値は、陰性(Cal 1)キャリブレーターに非常に近い。同じことが、すべてが陰性として検出された血液ドナーサンプルにも当てはまる。一方で、陽性(HCV-感染)サンプルも、陽性として正しく検出されている。換言すると、本明細書に記載されるマルチエピトープ融合タンパク質は、HCV構造抗原を検出するため、特に、HCVコア抗原を検出するためのイムノアッセイをキャリブレートするための信頼性のある材料としての機能を果たす。
【0065】
図2は、追加のマルチエピトープ融合タンパク質である組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)、および組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4によって拡張した、図1に関して記載されるように実行された独立した実験の結果を示す。一貫して、安定性の理由から、マルチエピトープ融合タンパク質、たとえば、組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)、および組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4が、全長またはほぼ全長の組換えキャリブレーターHCVコア(2~169)よりも、キャリブレーターまたは/およびコントロール試薬として、より好適である。
【0066】
表2は、表1および実施例4に記載されるように実行した独立した実験の結果を報告し、ここで、追加の本発明によるマルチエピトープ融合タンパク質を、「Cal2」(検体類似体として400pg/mlの組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)または520pg/mlの組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4を含有する陽性キャリブレーター)として適用した。組換えHCVコア-3Epi-EcS-FPの他に、マルチエピトープ融合タンパク質組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z、エクストラロング、C/A)および組換えHCVコア-3Epi-EcS-FP、XY(Z)4もまた、HCV構造抗原を検出するため、特にHCVコア抗原を検出するためのイムノアッセイをキャリブレートするための信頼性のある材料としての機能を果たす。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
図1
図2
【配列表】
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