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特許7389744ムコ多糖症IIIA型のための遺伝子療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ムコ多糖症IIIA型のための遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20231122BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20231122BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231122BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20231122BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20231122BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231122BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/55
C12N15/861 Z
C12N15/869 Z
C12N15/867 Z
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K48/00
A61K38/46
A61K9/10
A61P3/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020529562
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2018063168
(87)【国際公開番号】W WO2019108857
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】62/593,081
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】オルドー,ジュリエット
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531490(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02492347(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/01
C12N 15/00-15/90
A61K 35/76
A61K 35/761
A61K 35/763
A61K 48/00
A61K 38/46
A61K 9/10
A61P 3/00
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAVカプシドおよびそこにパッケージングされたベクターゲノムを含む、組換えAAV(rAAV)であって、前記ベクターゲノムが、AAV5’末端逆位配列(ITR)、機能的N-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(hSGSH)をコードする操作された核酸配列、標的細胞におけるhSGSHの発現を指示する制御配列、およびAAV3’ITRを含み、前記hSGSHコード配列が、配列番号1と少なくとも99%同一である、組換えAAV(rAAV)。
【請求項2】
前記hSGSHコード配列が、配列番号1である、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記制御配列が、プロモーターを含む、請求項1または2に記載のrAAV。
【請求項4】
前記制御配列が、エンハンサー、イントロンおよび/またはポリAをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のrAAV。
【請求項5】
前記AAVベクターゲノムが、配列番号4の配列(AAV.CB7.CI.hSGSHco.RBG)を含む、請求項1~4のいずれかに記載のrAAV。
【請求項6】
前記AAVカプシドが、AAV9カプシドである、請求項1~5のいずれかに記載のrAAV。
【請求項7】
それを必要とする対象における、ムコ多糖症IIIA(MPS IIIA)を処置するのに、および/または歩行もしくは運動を改善するか、振戦を低減するか、攣縮を低減するか、姿勢を改善するか、または視力喪失の進行を低減するのに使用するために適した、請求項1~6のいずれかに記載のrAAV。
【請求項8】
製剤緩衝液中の請求項1~7のいずれかに記載のrAAVを含む、医薬組成物。
【請求項9】
(a)機能的hSGSHタンパク質または機能的スルファターゼ変更因子1(SUMF1)との同時投与に適当である、

(b)脳室内(ICV)、くも膜下腔内(IT)、嚢内または静脈内(IV)注射を介したデリバリーのため製剤化される、
(c)脳質量1グラム当たり用量1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCにて投与可能である、および/または、
(d)pH約7.28~約7.32を有するように製剤化される、
請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
それを必要とする対象における、MPS IIIAと診断されたヒト対象を処置するのに、および/または歩行もしくは運動を改善するか、振戦を低減するか、攣縮を低減するか、姿勢を改善するか、もしくは視力喪失の進行を低減するのに使用するための、請求項1~7のいずれかに記載のrAAVの懸濁液であって、製剤緩衝液中で脳質量1グラム当たり1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCにて、前記rAAVの懸濁液が前記対象に投与される、懸濁液。
【請求項11】
(a)前記処置が、健常対照の少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の血清SGSH活性をもたらす、
(b)前記懸濁液が、少なくとも1×109ゲノムコピー(GC)/mLの前記rAAVを有する、
(c)前記懸濁液が、機能的hSGSHタンパク質または機能的SUMF1タンパク質と同時投与するのに適当である、
(d)前記懸濁液が、必要とする前記対象に、脳室内、くも膜下腔内、または静脈内にデリバリーされる、
(e)前記懸濁液が、pH約7.28~約7.32を有する、
(f)前記rAAVが、必要とする前記対象に1回投与される、および/または、
(g)前記rAAVが、必要とする前記対象に1回より多く投与される、
請求項10に記載の使用のためのrAAVの懸濁液。
【請求項12】
(a)前記対象が、酵素補充療法のみを介した標準的処置と比較して、減少した投薬量にて、またはより少ない頻度で前記酵素補充療法を受ける;および/または
(b)前記対象が、MPS IIIAに関連するバイオマーカーの改善を示す
請求項10に記載の使用のためのrAAVの懸濁液。
【請求項13】
機能的hSGSHをコードする操作された核酸配列および標的細胞におけるその発現を指示する制御配列を含む、ベクターであって、前記hSGSHコード配列が、配列番号1と少なくとも99%同一である、ベクター。
【請求項14】
(a)前記hSGSHコード配列が、配列番号1である、
(b)前記ベクターが、組換えウイルス、プラスミド、Lipoplexes、Polymersome、Polyplexes、デンドリマー、細胞透過性ペプチド(CPP)結合体、磁気粒子、またはナノ粒子である、
(c)前記ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、ボカウイルス、ハイブリッドAAV/ボカウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはレンチウイルスである、および/または、
(d)前記標的細胞が、単離された細胞、培養細胞、細胞株、大腸菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、非哺乳類細胞、昆虫細胞、HEK-293細胞、肝細胞、腎細胞、中枢神経系の細胞、ニューロン、グリア細胞、または幹細胞である、
請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
それを必要とする対象における、MPS IIIAの処置のための方法に、および/または歩行もしくは運動を改善するか、振戦を低減するか、攣縮を低減するか、姿勢を改善するか、または視力喪失の進行を低減するのに使用するための、請求項1~7のいずれかに記載のrAAVまたは請求項13若しくは14に記載のベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子形態で提出された事項の参照による取り込み
本出願人は、本明細書により、本明細書と共に電子形態で提出された配列表を参照により取り込む。このファイルを、「18-8476PCT_ST25.txt」と名前を付ける。
【背景技術】
【0002】
ムコ多糖症IIIa型(MPS IIIa、MPS IIIA、またはサンフィリポ症候群A型)は、グリコサミノグリカン(GAG)ヘパラン硫酸のリソソーム代謝において関与する、酵素N-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(SGSH)の欠乏により引き起こされる常染色体劣性遺伝性障害である。この欠乏は、中枢神経系における非分解性ヘパラン硫酸ならびにガングリオシドGM2およびGM3の細胞内蓄積を導き、神経機能障害および神経炎症を引き起こす。疾患は、3歳ごろの認知の遅延としてまず現れ、異常な活動亢進および攻撃行動が現れる。次に、疾患の進行は、最初の10年間に運動および神経学的な機能の喪失を導き、年齢中央値15歳での死亡を伴う。
【0003】
MPS IIIAを有する人のための治癒または標準的処置は、現在存在しない。医薬を使用して、症状(例えば、てんかん発作用の抗けいれん剤)を軽減し、クオリティ・オブ・ライフを改善する。造血幹細胞移植は、神経心理学的悪化を有意に改善しないと思われる。MPS IIIにおける欠乏のための組換え酵素が、利用可能であるが、酵素は、中枢神経系に進入することができないので、酵素補充療法(ERT)における治験は、進行の改善において好ましくなかった。例えば、Germaine L Defendi、Genetics of Mucopolysaccharidosis Type III、Medscape、2014年3月21日を参照。食事に対する変化は、疾患の進行を予防しないが、牛乳、砂糖および乳製品の制限は、過剰な粘液を有する一部の人に役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野において、MPS IIIAの効率的な処置のための組成物および方法についての続く要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
1つの態様において、機能的ヒトN-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(hSGSH)および標的細胞におけるその発現を指示する制御配列をコードする操作された核酸配列を含むベクターが提供される。1つの実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも96%同一である。さらなる実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1である。
【0006】
別の態様において、AAVカプシドおよびそこにパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えAAV(rAAV)であって、ベクターゲノムが、AAV5’末端逆位配列(ITR)、機能的hSGSHをコードする操作された核酸配列、標的細胞におけるhSGSHの発現を指示する制御配列、およびAAV3’ITRを含む、組換えAAV(rAAV)が提供される。1つの実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも95%同一である。さらなる実施形態において、AAVベクターゲノムは、配列番号4の配列(AAV.CB7.CI.hSGSHco.RBG)を含む。いくつかの
実施形態において、AAVカプシドは、AAV9カプシドである。1つの実施形態において、rAAV(AAV9.CB7.CI.hSGSHco.RBG)は、AAV9カプシドおよび配列番号4の配列を含むベクターゲノムを含む。
【0007】
製剤緩衝液中に本明細書において記載されるrAAVを含む医薬組成物が、さらに提供される。
【0008】
なお別の態様において、対象に製剤緩衝液中の本明細書において記載されるrAAVの懸濁液を投与する工程を含む、MPS IIIAと診断されたヒト対象を処置する方法が、本明細書において提供される。
【0009】
さらなる態様において、機能的hSGSHをコードする操作された核酸配列を含む発現カセット、およびその発現を指示する制御配列が、提供される。1つの実施形態において、発現カセットにおけるhSGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも96%同一である。
【0010】
本発明の他の態様および利点は、以下の発明の詳細な説明から容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1A~1Eは、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGの脳室内投与の6ヶ月後の、脳(図1A)、脊髄(図1B)、肝臓(図1C)におけるSGSH活性、ならびに心臓(図1D)および脳(図1E)におけるトータルのGAG貯蔵を提供する。SGSH活性における用量依存性増大を、脳、脊髄、および肝臓において観察した。トータルのGAGは、高用量のみで心臓において低減された。GAGは、KO MPS IIIAマウスの脳において増大し、処置により中(MD)および高用量(HD)にて正常化された。図1A~1Cにおいて、塗りつぶされてない記号は、オスを表し、一方、塗りつぶされた記号は、メスを表す。LDは、低用量を指す。
図1B】同上。
図1C】同上。
図1D】同上。
図1E】同上。
図2A図2Aおよび2Bは、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGの脳室内投与の6ヶ月後の、LIMP2免疫染色により評価したリソソーム貯蔵(図2B)および定量(図2A)を示す。リソソーム膜のLIMP2免疫染色は、中用量および高用量での貯蔵負荷の低減を示した。図2Aにおいて、塗りつぶされてない記号は、オスを表し、一方、塗りつぶされた記号は、メスを表す。
図2B】同上。
図3A図3Aおよび3Bは、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGのICV投与の6ヶ月後の、脳(図3A)および脊髄(図3B)における病理組織学累積スコアを提供する。脳スコアは、脳におけるグリア細胞空胞化、大脳におけるニューロン空胞化、脳幹におけるニューロン空胞化、脳におけるGFAP強度スコア、および単核細胞浸潤(最大スコア15)の3-グレード重症度スコアの累積計である。脊髄スコアは、ニューロン空胞化(運動ニューロンにおいてより顕著)、グリア細胞空胞化、およびGFAP強度(最大スコア9)の3グレード重症度スコアの累積計である。低用量MPS IIIaマウスは、ビークルで処置したものと類似し、一方、中用量と高用量で処置したマウスの両方が、脳および脊髄において減少した神経病理学スコアを有した。神経病理学の補正は、高用量群の処置した動物において統計上有意である(事後のダンの多重比較検定を含む一元配置分散分析クラスカル・ウォリス検定、アルファ0.05)。塗りつぶされてない記号は、オスを表し、一方、塗りつぶされた記号は、メスを表す。
図3B】同上。
図4図4は、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGのICV投与の6ヶ月後の、ロッキングロータロッドにより評価した神経機能を提供する。マウスを、それぞれの回転の後、回転方向の反転を伴う、回転ロッド(1分当たり10回転)に置いた。落下までの時間を、3回の連続アッセイ中に最長期間300秒に渡り測定した。3回のアッセイの平均時間を、測定器の平衡および調整として報告した。マンフォイトニー検定p<0.05。ビークルで処置したMPS IIIaマウスは、ヘテロ接合体マウスより前に回転ロッドから落下させる神経障害を提示した。中用量と高用量で処置したマウスの両方が、無処置のマウスより有意に良好に、ヘテロ接合体マウスと同様に行動した。しかしながら、低用量MPS IIIaマウスは、ビークルで処置したマウスの様に行動した。
図5図5は、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBG処置の長期効果を決定するための研究において使用したマウスの臨床上の健康状態を評価するために使用した評価スケールを提供する。
図6A図6Aおよび6Bは、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBG投与後の長期研究におけるマウスについての臨床スコアを提供する。マウスを、年齢2ヶ月において高用量のAAV9.CB7.CI.hSGSH.rBG(9×1010GC、ICV)を注射し、毎週評価した。オス(図6A)およびメス(図6B)マウスについてのスコアを示す。対照群の野生型(WT)およびMPS IIIa(KO)マウスは、PBS注射を受けた。
図6B】同上。
図7図7は、MPS IIIa(KO)マウスへのAAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGの高用量の投与後のオープン・フィールド運動(ビームブレイク活性により評価した)の測定の結果を提供する。PBS注射を受けた対照群の野生型(WT)およびMPS IIIa(KO)マウスも評価した。
図8A図8Aおよび8Bは、高用量のAAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGを受けたMPS IIIaマウスを用いて行った高い迷路アッセイの結果を提供する。オープンアームアクティビティを、持続時間(図8A)および頻度(図8B)に関して測定した。PBS注射を受けた対照群の野生型(WT)およびMPS IIIa(KO)マウスも評価した。
図8B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ムコ多糖症IIIa型(MPS IIIA)の処置および/またはMPSIIIAの症状を緩和するのに有用な組成物が、本明細書において提供される。これらの組成物は、機能的ヒトN-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(hSGSH)をコードする核酸配列および標的細胞におけるその発現を指示する制御配列を含み、hSGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも96%同一である。
【0013】
1つの実施形態において、本明細書において記載される組成物および方法は、核酸配列、発現カセット、ベクター、組換えウイルス、機能的ヒトSGSHの発現のための他の組成物および方法を含む。別の実施形態において、本明細書において記載される組成物および方法は、核酸配列、発現カセット、ベクター、組換えウイルス、宿主細胞、機能的ヒトSGSHをコードする核酸配列を含む組成物の製造のための他の組成物および方法を含む。なお別の実施形態において、本明細書において記載される組成物および方法は、核酸配列、発現カセット、ベクター、組換えウイルス、MPS IIIAの処置のため対象に機能的ヒトSGSHをコードする核酸配列のデリバリーのための他の組成物および方法を含む。1つの実施形態において、本明細書において記載される組成物および方法は、治療レベルのSGSHを中枢神経系(CNS)にもたらすのに有用である。加えてまたはあるいは、本明細書において記載される組成物および方法は、例えば、血液、肝臓、腎臓、または末梢神経系のような末梢において治療レベルのSGSHをもたらすのに有用である。ある種の実施形態において、本明細書において記載されるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベ
クターベースの方法は、必要とする対象においてSGSHタンパク質の発現をもたらすことにより、SGSHの所望される機能を回復させるか、MPS IIIAと関連する症状を緩和するか、MPS IIIA関連バイオマーカーを改善するか、またはMPS IIIAのための他の処置(複数可)を促進するのを助ける、新規処置オプションを提供する。
【0014】
本明細書において使用される、用語「治療レベル」は、健常対照の少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、100%より高い、約2倍、約3倍、または約5倍の酵素活性を意味する。SGSH酵素活性を測定するのに適当なアッセイが、本明細書において記載される。いくつかの実施形態において、かかる治療レベルのSGSHは、MPS IIIA関連症状の緩和;疾患のMPS IIIA関連バイオマーカーの改善;またはMPS IIIAのための他の処置(複数可)の促進、例えば、脳脊髄液(CSF)、血清、尿および/または他の生物学的試料におけるGAGレベル;認知神経科学的低下の予防;ある種のMPS IIIA関連症状の逆転および/もしくはMPS IIIA関連のある種の症状の進行の予防;または任意のその組み合わせをもたらし得る。
【0015】
本明細書において使用される、「健常対照」は、対象、またはそれ由来の生物学的試料を指し、対象は、MPS障害を有さない。健常対照は、一対象由来であることができる。別の実施形態において、健常対照は、複数の対象のプールである。
【0016】
本明細書において使用される、用語「生物学的試料」は、任意の細胞、生物学的液体、または組織を指す。本発明における使用に適当な試料は、非限定的に、全血、白血球、線維芽細胞、血清、尿、血漿、唾液、骨髄、脳脊髄液、羊水、および皮膚細胞を含み得る。かかる試料は、食塩水、緩衝液、または生理的に許容される希釈液を用いてさらに希釈されてもよい。あるいは、かかる試料は、従来の手段により濃縮される。
【0017】
これらの発明の説明に関して、本明細書において記載される組成物のそれぞれが、本発明の方法における別の実施形態において有用であることが意図される。加えて、方法において有用であると本明細書において記載される組成物が、別の実施形態において、それ自体本発明の実施形態であることも意図される。
【0018】
本明細書において別段定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により、および当業者に本出願において使用される用語の多くについての一般的な指針をもたらす、公開されたテキストを参照することにより、通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書において使用される、「疾患」、「障害」および「状態」は、ムコ多糖症IIIa型(MPS IIIA、MPS IIIa、サンフィリポ症候群A型、またはサンフィリポA型疾患としても知られる)である。
【0020】
本明細書において使用される、用語「MPS IIIA関連症状(複数可)」、または「症状(複数可)」は、MPS IIIA患者においてならびにMPS IIIA動物モデルにおいて見られる症状(複数可)を指す。かかる症状は、言語遅滞;社会的相互作用およびコミュニケーションに伴う困難;睡眠障害;進行性知的障害および既に獲得した技術の喪失(発達の退行);てんかん発作および運動障害;巨大な頭部;若干肥大した肝臓(軽度の肝腫大);臍周りの軟膨出(臍ヘルニア)もしくは下腹部(鼠径ヘルニア);低身長、関節硬直、軽度の多発性骨形性不全症、複数の骨格異常;慢性下痢;再発上気道感染;再発耳感染;難聴;視力異常;非対称性心室中隔肥大;粗顔面特徴;粗毛;密な頭蓋
冠;多発性骨形性不全症;成長異常;尿中のヘパラン硫酸排出;脳脊髄液(CSF)、血清、尿および/もしくは任意の他の生物学的試料中のGAG蓄積;N-アセチル-アルファ-D-グルコサミニダーゼ(NAGLU)もしくはN-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(IDUA)の異常な発現および/もしくは酵素活性;GM2およびGM3の蓄積;リソソーム酵素の変化した活性;CNSにおける遊離の非エステル化コレステロールの蓄積;CNSおよび骨格組織における炎症反応;過剰な毛成長(多毛);過剰活性;卵形胸腰椎骨;脾腫;眉毛叢生;肥厚した肋骨;ヘルニア;ならびに不安定および迷走性歩行を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において使用される「患者」または「対象」は、男性もしくは女性のヒト、イヌ、および臨床研究のため使用される動物モデルを意味する。1つの実施形態において、これらの方法および組成物の対象は、MPS IIIAと診断されたヒトである。ある種の実施形態において、これらの方法および組成物のヒト対象は、出生前、新生児、乳児、幼児、就学前、小学生、10代、若年成人または成人である。さらなる実施形態において、これらの方法および組成物の対象は、小児MPS IIIA患者である。
【0022】
臨床検査および尿検査(過剰なムコ多糖は、尿において排泄される)は、MPS疾患の診断における第一段階である。血液、皮膚細胞、または様々な細胞における酵素活性のレベルを測定する酵素アッセイをまた使用して、MPS IIIAの確定診断をもたらす。MPS IIIAと関連するSGSHの変異を検出する様々な遺伝子検査が利用可能である。例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/gtr/conditions/-C0086647/; www.ncbi.nlm.nih.gov/gtr/all/tests/?term=C0086647[DISCUI]を参照。羊水穿刺および絨毛膜絨毛試料採取を使用した出生前診断は、胎児が、障害に罹患しているかを検証することができる。遺伝子カウンセリングは、ムコ多糖症の家族歴を有する両親が、彼らが、障害を引き起こす変異した遺伝子を有するかを決めるのを助けることができる。例えば、A Guide to Understanding MPS III, National MPS Society, 2008, mpssociety.org/learn/diseases/mps-iii/を参照。
【0023】
「含むこと」は、他の成分または方法の工程を含めて意味する用語である。「含むこと」が使用されるとき、関連する実施形態が、他の成分または方法の工程を除外する、専門用語「からなる」、および実施形態または本発明の性質を実質的に変化する任意の成分または方法の工程を除外する、専門用語「本質的にからなる」を使用した記載を含むことは理解されるべきである。明細書における様々な実施形態が、「含むこと」という語句を使用して提示される一方、様々な状況下で、関連する実施形態もまた、「からなる」または「本質的にからなる」という語句を使用して記載されることは、理解されるべきである。
【0024】
用語「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し、例えば、「ベクター」は、1つまたは複数のベクター(複数可)を表すと解されることは、注意されるべきである。従って、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0025】
本明細書において使用される、用語「約」は、別段特定されない限り、与えられた参照からプラスマイナス10%の変動制を意味する。
【0026】
1.N-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(SGSH)
本明細書において使用される、用語「N-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ」および「SGSH」は、ヘパラン-N-スルファターゼ、HNSと互換的に使用される。本発明は、本明細書において提供される核酸配列から発現されるSGSHタンパク質、または
その機能的フラグメントの任意のバリアントを含み、本明細書において提供される組成物においてまたは方法によりデリバリーされるとき、所望される機能を回復させるか、症状を改善するか、MPS IIIA関連バイオマーカーと関連する症状を改善するか、またはMPS IIIAのための他の処置を促進する。 MPSIIIに適当なバイオマーカーの例は、国際公開第2017/136533号において記載されるものを含み、参照により本明細書に取り込まれる。
【0027】
本明細書において使用される、用語「機能的SGSH」は、全長の野生型(天然の)ヒトSGSHアミノ酸配列(配列番号2およびUniProtKB受託番号P51688において示される)を有する酵素、そのバリアント、保存的アミノ酸置換を有するその変異体、そのフラグメント、正常なヒトSGSHの生物学的活性レベルの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはほぼ同じか、もしくは100%より高い活性レベルをもたらす、バリアントおよび変異体の任意の組み合わせの全長またはフラグメントを意味する。いくつかの実施形態において、機能的SGSHは、配列番号2の配列を有する野生型タンパク質を指す。
【0028】
SGSHバリアントの例は、野生型におけるバリン(Val、V)の代わりに、361番目のアミノ酸にてイソロイシン(Ile、I)を有する配列番号2のアミノ酸配列からなる、V361I;野生型におけるメチオニン(Met、M)の代わりに、372番目のアミノ酸にてイソロイシン(Ile、I)を有する配列番号2のアミノ酸配列からなる、M372I;野生型におけるバリン(Val、V)の代わりに、387番目のアミノ酸にてメチオニン(Met、M)を有する配列番号2のアミノ酸配列からなる、V387M;野生型におけるメチオニン(Met、M)の代わりに、394番目のアミノ酸にてイソロイシン(Ile、I)を有する配列番号2のアミノ酸配列からなる、M394I;および野生型におけるアルギニン(Arg、R)の代わりに、456番目のアミノ酸にてヒスチジン(His、H)を有する配列番号2のアミノ酸配列からなる、R456Hを含むが、これらに限定されない。SGSHバリアントはまた、上で同定された位置にてアミノ酸の変異の任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ、または全5つを含んでもよい。SGSHバリアントのさらなる例は、当業者にとって利用可能な生物情報学ツールにより予想されるものを含んでもよい。例えば、Ugrinov KGら、A multiparametric computational algorithm for comprehensive assessment of genetic mutations in
mucopolysaccharidosis type IIIA (Sanfilippo syndrome)、PLoS One、2015年3月25日;10(3):e0121511、 doi: 10.1371/journal.pone.0121511、eCollection 2015を参照のこと、これは、参照により全体が本明細書に取り込まれる。
【0029】
本明細書において使用される、「保存的アミノ酸置換」または「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸の、類似の生化学的特性(例えば、荷電、疎水性およびサイズ)を有する異なるアミノ酸への変更、置き換えまたは置換を指し、当業者により知られている。例えば、FRENCHら、What is a conservative substitution? Journal of Molecular Evolution、1983年3月、第19巻、第2号、171~175頁、およびYAMPOLSKYら、The
Exchangeability of Amino Acids in Proteins、Genetics、2005年8月;170(4):1459~1472頁も参照のこと、これらのそれぞれは、参照により全体が本明細書に取り込まれる。
【0030】
従来の方法によりSGSH発現および活性レベルを測定するための様々なアッセイが存在する。例えば、本明細書において記載される実施例1;www.ncbi.nlm.nih.gov/gtr/all/tests/?term=C0086647[DISCUI]&filter=method:1_2;testtype:clinical;Karpova EAら、A fluorimetric enzyme assay for the diagnosis of Sanfilippo disease type A (MPS IIIA)、J Inherit Metab Dis、1996年;19(3):278~85頁;Tardieu Mら、Intracerebral administration of adeno-associated viral vector serotype rh.10 carrying human
SGSH and SUMF1 cDNAs in children with mucopolysaccharidosis type IIIA disease: results of a phase I/II trial、Hum Gene Ther、2014年6月;25(6):506~16頁、doi: 10.1089/hum.2013.238、Epub 2014年5月5日;Whyte LSら、Variables influencing fluorimetric N-sulfoglucosamine sulfohydrolase (SGSH) activity measurement in brain homogenates、Mol Genet Metab Rep、2015年10月22日;5:60~62頁、doi:
10.1016/j.ymgmr.2015.10.005、eCollection
2015年12月;Hopwood JJら、Diagnosis of Sanfilippo type A syndrome by estimation of sulfamidase activity using a radiolabelled tetrasaccharide substrate、Clin Chim Acta、1982年8月18日;123(3):241~50頁を参照のこと、これらのそれぞれが、参照により全体が本明細書に取り込まれる。
【0031】
1つの態様において、機能的SGSHタンパク質をコードする核酸配列が提供される。1つの実施形態において、核酸配列は、配列番号3において再産生される野生型コード配列である。1つの実施形態において、核酸配列は、配列番号3の野生型hSGSH配列に少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%同一である。1つの実施形態において、核酸配列は、配列番号3の野生型hSGSH配列に83.3%未満同一である。
【0032】
核酸は、多量体形態のヌクレオチドを指し、RNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、ペプチド核酸(PNA)および合成形態、ならびに上のもの混合多量体を含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチドまたはヌクレオチドのいずれかのタイプの改変された形態(例えば、ペプチド核酸オリゴマー)を指す。用語はまた、DNAの1本および2本鎖形態を含む。当業者は、これらの核酸分子の機能的バリアントが、本発明の一部であることも意図されることを理解する。機能的バリアントは、基準遺伝子コードを使用して、直接翻訳して、親核酸分子から翻訳されたものと同一のアミノ酸配列をもたらし得る、核酸配列である。
【0033】
ある種の実施形態において、機能的ヒトSGSH(hSGSH)をコードする核酸分子、ならびに本発明により包含され、発現カセットおよびベクターゲノムを生成するのに有用な他のコンストラクトが、酵母細胞、昆虫細胞またはヒト細胞のような、哺乳類細胞における発現のため操作されてもよい。方法は、公知であり、既に記載されている(例えば、国際公開第96/09378号)。野生型配列と比較して少なくとも1つの好ましくないコドンが、より好ましいコドンにより置換されるなら、配列は、操作されたとみなされる。故に、好ましくないコドンは、同じアミノ酸をコードする別のコドンより生物におい
てより少ない頻度で使用されるコドンであり、より好ましいコドンは、好ましくないコドンより生物においてより高い頻度で使用されるコドンである。特定の生物についてのコドン利用の頻度は、www. kazusa.jp/codonのような、コドン頻度の表において見ることができる。好ましくは、1つより多くの好ましくないコドン、好ましくは、大部分または全ての好ましくないコドンは、より好ましいコドンにより置換される。好ましくは、生物において最も頻繁に使用されるコドンは、操作された配列において使用される。好ましいコドンによる置換は、一般に、より高い発現を導く。多数の異なる核酸分子が、同じポリペプチドを遺伝子コードの縮重の結果としてコードし得ることはまた、当業者により理解される。当業者が、日常的な技術を使用し、ポリペプチドが発現されるべき、任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するよう、核酸分子によりコードされるアミノ酸配列に影響しないヌクレオチド置換を行うことはまた、理解される。それ故、別段特定されない限り、「アミノ酸配列をコードする核酸配列」は、互いのバージョンを縮重し、同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。核酸配列は、日常的な分子生物学的技術を使用し、クローニングされ得るか、または日常的な手法を使用し、DNA合成および/または分子クローニングの分野におけるビジネスを有するサービス会社(例えば、GeneArt、GenScript、Life Technologies、Eurofins)により行われ得る、DNA合成により新規に生成され得る。
【0034】
1つの態様において、SGSHコード配列は、操作された配列である。1つの実施形態において、操作された配列は、対象における産生、転写、発現または安全性を改善するのに有用である。別の実施形態において、操作された配列は、得られた治療組成物または処置の有効性を増大させるのに有用である。さらなる実施形態において、操作された配列は、発現されている機能的SGSHタンパク質の有効性を増大させるのに有用であるが、機能的タンパク質をデリバリーするより低用量の治療試薬が、安全性を増大させるのも可能にし得る。
【0035】
1つの実施形態において、操作されたSGSHコード配列は、野生型SGSHコード配列と比較して改善された翻訳割合により特徴付けられる。1つの実施形態において、SGSHコード配列は、配列番号3の野生型hSGSH配列に83.3%未満同一である。1つの実施形態において、SGSHコード配列は、野生型SGSHコード配列と約99%未満、約98%未満、約97%未満、約96%未満、約95%未満、約94%未満、約93%未満、約92%未満、約91%未満、約90%未満、約89%未満、約88%未満、約87%未満、約86%未満、約85%未満、約84%未満、約83%未満、約82%未満、約81%未満、約80%未満、約79%未満、約78%未満、約77%未満、約76%未満、約75%未満、約74%未満、約73%未満、約72%未満、約71%未満、約70%未満、約69%未満、約68%未満、約67%未満、約66%未満、約65%未満、約64%未満、約63%未満、約62%未満、約61%未満、またはそれ未満の同一性を有する。別の実施形態において、SGSHコード配列は、野生型SGSHコード配列と約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、またはそれ未満の同一性を有する。1つの実施形態において、配列番号1の配列を含む操作された核酸配列であって、機能的hSGSHをコードする、核酸配列が提供される。1つの実施形態において、機能的hSGSHをコードする、配列番号1の操作された核酸配列、またはそれと少なくとも約95%同一の核酸配列が、本明細書において提供される。別の実施形態において、SGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89
%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性であり、機能的hSGSHをコードする。
【0036】
「操作された」により、本明細書において記載される機能的SGSHタンパク質をコードする核酸配列が、構築され、例えば、非ウイルスデリバリーシステム(例えば、RNAベースのシステム、ネイキッドDNAなど)を生成するため、またはパッケージング宿主細胞においてウイルスベクターを生成するため、および/または対象における宿主細胞にデリバリーするため、保有されるSGSH配列を宿主細胞に導入する、任意の適当な遺伝要素、例えば、ネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどに置かれる。1つの実施形態において、遺伝要素は、ベクターである。1つの実施形態において、遺伝要素は、プラスミドである。かかる操作されたコンストラクトを作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に公知であり、遺伝子操作、組換え操作、および合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2012年)を参照のこと。
【0037】
核酸配列の文脈における、用語「パーセント(%)同一性」、「配列同一性」、「パーセント配列同一性」または「パーセント同一」は、一致について整列されたとき、同じである2つの配列における残基を指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長に渡ってもよく、または少なくとも約500~5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかしながら、例えば、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常、少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36以上のヌクレオチドのより小さなフラグメントの間の同一性はまた、望ましくてもよい。
【0038】
核酸配列についての複数の配列整列化プログラムがまた利用可能である。かかるプログラムの例は、インターネットのウェブサービスを介してアクセス可能である、「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、および「MEME」を含む。かかるプログラムの他のソースは、当業者に公知である。あるいは、Vector NTI utilitiesがまた、使用される。上で記載されたプログラムにおいて含有されるものを含む、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用され得る、当該技術分野において公知の多数のアルゴリズムも存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1におけるプログラム、Fasta(商標)を使用し比較することができる。Fasta(商標)は、クエリーと検索配列の間の最善の重複の領域の整列化およびパーセント配列同一性をもたらす。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、GCGバージョン6.1において提供される、そのデフォルトパラメーター(ワードサイズ6およびスコアリングマトリックスについてのNOPAM因子)を用いたFasta(商標)を使用し決定され得る。
【0039】
パーセント同一性は、タンパク質の全長、ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸、またはそのペプチドフラグメントもしくは対応する核酸配列コード配列に渡るアミノ酸配列について容易に決定され得る。適当なアミノ酸フラグメントは、少なくとも約8個のアミノ酸長であってもよく、最大約700個のアミノ酸であってもよい。一般に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、または「類似性」について言及するとき、「同一性」、「相同性」、または「類似性」は、「整列された」配列に関して決定される。「整列された」配列または「整列化」は、参照配列と比較して、欠損してい
るかまたは追加の塩基もしくはアミノ酸についての補正を大抵含有する、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0040】
同一性は、配列の整列化を調製することにより、当該技術分野において公知であるか、または市販(例えば、BLAST、ExPASy;Clustal Omega;FASTA;例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムを使用する)の様々なアルゴリズムおよび/またはコンピュータープログラムの使用を通じて決定されてもよい。整列化は、様々な公的または市販の複数配列アライメントのいずれかを使用し、行われる。配列整列化プログラム、例えば、「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、および「Match-Box」プログラムが、アミノ酸配列について利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれかが、デフォルト設定にて使用されるが、当業者は、これらの設定を必要に応じて変えることができる。あるいは、当業者は、言及されたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるものと、同一性または整列化のレベルを少なくとももたらす別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。例えば、J. D. Thomsonら、Nucl. Acids. Res、「A comprehensive comparison of multiple sequence alignments」、27(13):2682~2690頁(1999年)を参照のこと。
【0041】
本明細書において使用される、「所望される機能」は、健常対照の少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%のSGSH酵素活性を指す。
【0042】
本明細書において使用される、語句「症状を寛解させる」、「症状を改善する」または任意のその文法上の異形は、MPS IIIA関連症状の逆転、MPS IIIA関連症状の進行の対決または予防を指す。1つの実施形態において、寛解または改善は、投与または使用前と比較して、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%低減されている、記載される組成物(複数可)の投与または記載される方法の使用後の患者における症状の総数を指す。別の実施形態において、寛解または改善は、投与または使用前と比較して、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%低減されている、記載される組成物(複数可)の投与または記載される方法の使用後の症状の重症度または進行を指す。
【0043】
本明細書において記載されるSGSH機能的タンパク質およびSGSHコード配列における組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0044】
2.発現カセット
1つの態様において、機能的hSGSHをコードする操作された核酸配列、およびその発現を指示する制御配列を含む発現カセットが、提供される。1つの実施形態において、機能的hSGSHをコードする、本明細書において記載される操作された核酸配列、およびその発現を指示する制御配列を含む発現カセット。
【0045】
本明細書において使用される、用語「発現」または「遺伝子発現」は、遺伝子からの情報が、機能的遺伝子産物の合成において使用される、プロセスを指す。遺伝子産物は、タンパク質、ペプチド、または核酸ポリマー(例えば、RNA、DNAもしくはPNA)であり得る。
【0046】
本明細書において使用される、「発現カセット」は、機能的SGSHのコード配列、プロモーターを含み、カセットが、ベクターにパッケージングされ得る、それらの他の制御配列を含んでもよい、核酸ポリマーを指す。
【0047】
本明細書において使用される、用語「制御配列」、または「発現調整配列」は、それらが、作動可能に結合される核酸配列をコードするタンパク質の転写を誘導するか、抑制するか、またはそうでなければ調整する、開始配列、エンハンサー配列、およびプロモーター配列のような、核酸配列を指す。
【0048】
本明細書において使用される、用語「作動可能に結合された」は、機能的hSGSHをコードする核酸配列と連続する発現調整配列および/または順にまたはその転写およびその発現を調整する距離で作用する発現調整配列の両方を指す。
【0049】
核酸配列またはタンパク質を記載するために使用される、用語「外来性」は、核酸またはタンパク質が、それが、染色体、または宿主細胞に存在する位置において天然で生じないことを意味する。外来性核酸配列はまた、同じ宿主細胞または対象からもたらされ、挿入されるが、非天然の状態、例えば、異なるコピー数、または異なる制御エレメントの制御下で存在する、配列を指す。
【0050】
核酸配列またはタンパク質を記載するために使用される、用語「異種性」は、核酸またはタンパク質が、それが発現される宿主細胞または対象と異なる生物または同じ生物の異なる種からもたらされたことを意味する。用語「異種性」は、プラスミド、発現カセット、またはベクターにおけるタンパク質または核酸に関して使用されるとき、タンパク質または核酸が、問題のタンパク質または核酸が、天然で互いに同じ関連性で見られない、別の配列または亜配列と共に存在することを示す。
【0051】
1つの実施形態において、制御配列は、プロモーターを含む。1つの実施形態において、プロモーターは、トリβ-アクチンプロモーターである。さらなる実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス最初期エンハンサーとトリβ-アクチンプロモーター(CB7プロモーター)のハイブリッドである。別の実施形態において、適当なプロモーターは、伸長因子1アルファ(EF1アルファ)プロモーター(例えば、Kim DWら、Use of the human elongation factor 1 alpha promoter as a versatile and efficient expression system、Gene、1990年7月16日;91(2):217~23頁を参照)、シナプシン1プロモーター(例えば、Kugler Sら、Human synapsin 1 gene promoter confers highly neuron-specific long-term transgene expression from an adenoviral vector in the adult rat brain depending on the transduced area、Gene Ther、2003年2月;10(4):337~47頁を参照)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、Kim Jら、Involvement of cholesterol-rich lipid rafts in interleukin-6-induced neuroendocrine differentiation of LNCaP prostate cancer cells、Endocrinology、2004年2月;145(2):613~9頁、Epub 2003年10月16日を参照)、またはCB6プロモーター(例えば、Large-Scale Production of
Adeno-Associated Viral Vector Serotype-9 Carrying the Human Survival Motor Neur
on Gene、Mol Biotechnol、2016年1月;58(1):30~6頁、doi: 10.1007/s12033-015-9899-5を参照)を含み得るが、これらに限定されない。
【0052】
1つの実施形態において、発現カセットは、ヒト対象における発現および分泌のため設計される。1つの実施形態において、発現カセットは、脳脊髄液および脳を含む、中枢神経系(CNS)における発現のため設計される。さらなる実施形態において、発現カセットは、CNSと肝臓の両方における発現に有用である。恒常的プロモーター、組織特異的プロモーターまたは誘導可能/制御性プロモーターを含むが、これらに限定されない、適当なプロモーターが、選択されてもよい。恒常的プロモーターの例は、トリベータ-アクチンプロモーターである。様々なトリベータ-アクチンプロモーターは、単独、または様々なエンハンサーエレメントと組み合わせて記載されている(例えば、CB7は、サイトメガロウイルスエンハンサーエレメントを含むトリベータ-アクチンプロモーターである;プロモーター、トリベータアクチンの第1のエクソンおよび第1のイントロン、およびウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含む、CAGプロモーター;CBhプロモーター、SJ Grayら、Hu Gene Ther、2011年9月;22(9):1143~1153頁)。組織特異的であるプロモーターが、肝臓(アルブミン、Miyatakeら、(1997年)、J. Virol.、 71:5124~32;B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、(1996年)、Gene
Ther、3:1002~9頁;アルファフェトプロテイン(AFP)、Arbuthnotら、(1996年)、Hum. Gene Ther、7:1503~14頁)、ニューロン(例えば、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、Andersenら、(1993年)、Cell. Mol. Neurobiol、13:503~15頁;ニューロフィラメント鎖遺伝子、Piccioliら、(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88:5611~5頁;およびニューロン特異的vgf遺伝子、Piccioliら、(1995年)、Neuron、15:373~84頁)、および他の組織について周知である。 あるいは、制御可能なプロモーターが、選択されてもよい。例えば、参照により本明細書に取り込まれる、国際公開第2011/126808B2号を参照。
【0053】
1つの実施形態において、制御配列は、エンハンサーをさらに含む。1つの実施形態において、制御配列は、1つのエンハンサーを含む。別の実施形態において、制御配列は、2つ以上の発現エンハンサーを含有する。これらのエンハンサーは、同じであっても、または異なっていてもよい。例えば、エンハンサーは、アルファmic/bikエンハンサーまたはCMVエンハンサーを含んでもよい。このエンハンサーは、互いに隣接する位置にある2つのコピーに存在してもよい。あるいは、エンハンサーの二重のコピーは、1つまたは複数の配列により分けられていてもよい。
【0054】
1つの実施形態において、制御配列は、イントロンをさらに含む。さらなる実施形態において、イントロンは、トリベータ-アクチンイントロンである。他の適当なイントロンは、ヒトβ-グロブリンイントロン、および/または市販のPromega(登録商標)イントロンによる当該技術分野において公知のもの、ならびに国際公開第2011/126808号において記載されるものを含む。
【0055】
1つの実施形態において、制御配列は、ポリアデニル化シグナル(ポリA)をさらに含む。さらなる実施形態において、ポリAは、ウサギグロビンポリAである。例えば、国際公開第2014/151341号を参照。あるいは、別のポリA、例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列、SV40ポリA、または合成ポリAは、発現カセットにおいて含まれてもよい。
【0056】
本明細書において記載される発現カセットにおける組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0057】
3.ベクター
1つの態様において、機能的ヒトN-スルホグルコサミンスルホヒドラーゼ(hSGSH)および標的細胞におけるその発現を指示する制御配列をコードする操作された核酸配列を含むベクターが、本明細書において提供される。1つの実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも96%同一である。さらなる実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1である。
【0058】
本明細書において使用される「ベクター」は、当該核酸配列の複製または発現に適当な標的細胞に導入され得る核酸配列を含む生物学的または化学部分である。ベクターの例は、組換えウイルス、プラスミド、Lipoplexes、Polymersome、Polyplexes、デンドリマー、細胞透過性ペプチド(CPP)結合体、磁気粒子、またはナノ粒子を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、ベクターは、機能的SGSHをコードする外来性または異種性または操作された核酸が、挿入され得、次に、適当な標的細胞に導入することができる、核酸分子である。かかるベクターは、好ましくは、複製の1つまたは複数の起源、および組換えDNAが挿入され得る、1つまたは複数の部位を有する。ベクターは、大抵、ベクターを含む細胞が、含まないものから選択することができるという意味を有し、例えば、それらが、薬物耐性遺伝子をコードする。共通のベクターは、プラスミド、ウイルスゲノム、および「人工染色体」を含む。ベクターの生成、産生、特徴または定量の従来の方法が、当業者にとって利用可能である。
【0059】
1つの実施形態において、ベクターは、その記載される発現カセットを含む非ウイルスプラスミド、例えば、「ネイキッドDNA」、「ネイキッドプラスミドDNA」、RNA、およびmRNA;例えば、ミセル、リポソーム、陽イオン性脂質-核酸組成物、ポリ-グリカン組成物および他のポリマー、脂質および/またはコレステロールベースの核酸結合体、ならびに本明細書において記載される他のコンストラクトなどを含む、様々な組成物およびナノ粒子に結合された発現カセットを含む非ウイルスプラスミドである。例えば、X.Suら、Mol.Pharmaceutics、2011年、8(3)、774~787頁;ウェブ公開:2011年3月21日;国際公開第2013/182683号、国際公開第2010/053572号および国際公開第2012/170930号を参照し、これらの全てが、参照により本明細書に取り込まれる。
【0060】
ある種の実施形態において、本明細書において記載されるベクターは、SGSHをコードする核酸配列を含有する発現カセットが、ウイルスカプシドまたはエンベロープにおいてパッケージングされる、合成または人工ウイルス粒子を指す「複製欠損ウイルス」または「ウイルスベクター」であり、ウイルスカプシドまたはエンベロープ内にまたパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列は、複製欠損である;すなわち、それらは、子孫ビリオンを生成できないが、標的細胞に感染する能力を保持する。1つの実施形態において、ウイルスベクターのゲノムは、複製するために要求される酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムを操作して、「惰弱」であり得、人工ゲノムの増幅およびパッケージングのため要求されるシグナルにより隣接されるSGSHをコードする核酸配列のみを含有する)が、これらの遺伝子は、産生中に供給されてもよい。それ故、子孫ビリオンによる複製および感染は、複製のため要求されるウイルス酵素の存在下を除き生じることができないので、それは、遺伝子治療における使用について安全とみなされる。
【0061】
本明細書において使用される、組換えウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、ボカウイルス、ハイブリッドAAV/ボカウイルス、単純ヘルペ
スウイルスまたはレンチウイルスである。
【0062】
本明細書において使用される、用語「宿主細胞」は、ベクター(例えば、組換えAAV)が産生される、パッケージング細胞株を指してもよい。宿主細胞は、任意の手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソームデリバリー、膜融合技術、高速度DNAコートペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合により、細胞に導入された外来性または異種性DNAを含有する、原核生物または真核生物の細胞(例えば、ヒト、昆虫、もしくは酵母)であってもよい。宿主細胞の例は、単離された細胞、細胞培養液、大腸菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、非哺乳類細胞、昆虫細胞、HEK-293細胞、肝細胞、腎細胞、中枢神経系の細胞、ニューロン、グリア細胞、または幹細胞を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書において使用される、用語「標的細胞」は、機能的SGSHの発現が所望される、任意の標的細胞を指す。ある種の実施形態において、用語「標的細胞」は、MPS IIIAの処置をされている対象の細胞を参照することを意図される。標的細胞の例は、肝細胞、腎細胞、中枢神経系の細胞、ニューロン、グリア細胞、および幹細胞を含むが、これらに限定されない。ある種の実施形態において、ベクターは、エクスビボで標的細胞にデリバリーされる。ある種の実施形態において、ベクターは、インビボで標的細胞にデリバリーされる。
【0064】
本明細書において記載されるベクターにおける組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0065】
4.アデノ随伴ウイルス(AAV)
1つの態様において、AAVカプシドおよびそこにパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えAAV(rAAV)が、本明細書において提供される。rAAVは、ムコ多糖症IIIA(MPS IIIA)の処置における使用のためである。ベクターゲノムは、AAV5’末端逆位配列(ITR)、本明細書において記載される機能的hSGSHをコードする操作された核酸配列、標的細胞におけるhSGSHの発現を指示する制御配列、およびAAV3’ITRを含む。1つの実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1と少なくとも95%同一である。さらなる実施形態において、hSGSHコード配列は、配列番号1である。
【0066】
1つの実施形態において、制御配列は、上で記載された通りである。1つの実施形態において、ベクターゲノムは、AAV5’末端逆位配列(ITR)、本明細書において記載される発現カセット、およびAAV3’ITRを含む。
【0067】
1つの実施形態において、AAVセロタイプ9(AAV9)カプシドを含むrAAVおよびウサギベータ-グロビン(rBG)ポリA配列を含むヒトN-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)の操作されたバージョンを発現するCB7プロモーターを含むベクターゲノムが、提供される。さらなる実施形態において、rAAVベクターゲノムは、配列番号4の配列(AAV.CB7.CI.hSGSHco.RBG)を含む。1つの実施形態において、rAAVは、AAV9カプシドおよび配列番号4の配列を含むベクターゲノムを含み、rAAVは、AAV9.CB7.CI.hSGSHco.RBGとして表される。1つの実施形態において、rAAVは、配列番号5のアミノ酸配列を含むhSGSHの操作されたバージョンを発現する。
【0068】
本明細書において使用される、「ベクターゲノム」は、ベクター内にパッケージングさ
れた核酸配列を指す。1つの実施形態において、ベクターゲノムは、rAAVカプシド形成rAAVベクター内にパッケージングされた核酸配列を指す。かかる核酸配列は、AAV末端逆位配列(ITR)を含有する。1つの実施形態において、ITRは、カプシドを供給するものと異なるAAV由来である。好ましい実施形態において、便宜上使用して、規制上の承認を加速し得る、AAV2由来のITR配列、またはその欠損バージョン(ΔITR)。しかしながら、他のAAV源由来のITRが、選択されてもよい。ITRの源が、AAV2由来であり、AAVカプシドが、別のAAV源由来である場合、得られたベクターは、偽型と呼ばれてもよい。典型的には、AAVベクターゲノムは、AAV5’ITR、SGSHコード配列および任意の制御配列、ならびにAAV3’ITRを含む。しかしながら、これらのエレメントの他の配置が、適当であってもよい。D配列および末端分離部位(trs)が欠損されている、ΔITRと呼ばれる5’ITRの短縮バージョンが、記載されている。他の実施形態において、全長AAV5’および3’ITRが、使用される。
【0069】
本明細書において使用される、用語「AAV」は、天然に存在するアデノ随伴ウイルス、当業者にとってならびに/または本明細書において記載される組成物(複数可)および方法(複数可)に照らして利用可能なアデノ随伴ウイルス、ならびに人工AAVを指す。アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、標的細胞へのデリバリーのためAAV末端逆位配列(ITR)により隣接されるパッケージングされた発現カセットである、AAVタンパク質カプシドを有するAAV DNase抵抗性粒子である。AAVカプシドは、選択されたAAVに依存し、およそ1:1:10~1:1:20の比で、正二十面体対称性で配置されている、60種のカプシド(cap)タンパク質サブユニット、VP1、VP2、およびVP3を含む。様々なAAVが、上で定義されたAAVウイルスベクターのカプシドについての源として選択されてもよい。例えば、米国特許公開第2007-0036760-A1号;米国特許公開第2009-0197338-A1号;欧州特許第1310571号を参照のこと。例えば、国際公開第2003/042397号(AAV7および他のサルAAV)、米国特許第7790449号および米国特許第7282199号(AAV8)、国際公開第2005/033321号および米国特許第7,906,111号(AAV9)、および国際公開第2006/110689号、および国際公開第2003/042397号(rh.10)をまた参照のこと。これらの文書はまた、AAVを生成するため選択され得、参照により取り込まれる、他のAAVを記載する。ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離されるかまたは操作され、十分に特徴付けられたAAVのうち、ヒトAAV2は、遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVであり;それは、異なる標的組織および動物モデルにおいて効率的な遺伝子導入実験のため広く使用されている。別段特定されない限り、AAVカプシド、ITR、および本明細書において記載される他の選択されたAAV成分は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8およびAAVAnc80として一般に同定されるAAV、公知または述べられたAAVのいずれかのバリアントもしくはまだ発見されていないAAV、またはそのバリアントもしくは混合物を含むが、これらに限定されない、任意のAAVから容易に選択され得る。例えば、本明細書に参照により取り込まれる、国際公開第2005/033321号を参照のこと。1つの実施形態において、AAVカプシドは、AAV9カプシドまたはそのバリアントである。ある種の実施形態において、カプシドタンパク質は、rAAVベクターの名称における用語「AAV」の後の数字または数字と文字の組み合わせにより設計される。
【0070】
本明細書において使用される通り、AAVに関して、用語「バリアント」は、保存的アミノ酸置換を有するもの、およびアミノ酸または核酸配列に渡り少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、またはそれより高い配列同一性を有するも
のを含む、公知のAAV配列からもたらされる、任意のAAV配列を意味する。別の実施形態において、AAVカプシドは、任意の記載されるか、または公知のAAVカプシド配列から最大約10%のバリエーションを含み得るバリアントを含む。すなわち、AAVカプシドは、本明細書において提供される、および/または当該技術分野において公知のAAVカプシドと約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性または約97%~約98%の同一性を有する。1つの実施形態において、AAVカプシドは、AAVカプシドと少なくとも95%の同一性を有する。AAVカプシドのパーセント同一性を決定するとき、比較は、可変タンパク質(例えば、vp1、vp2、またはvp3)のいずれかに渡り成されてもよい。
【0071】
ITRまたは他のAAV成分は、当業者にとって利用可能な技術を使用し、AAVから容易に単離されるか、または操作され得る。かかるAAVは、学術的、市販、または公的な供給源(例えば、American Type Culture Collection、Manassas、VA)から単離されるか、操作されるか、または得られてもよい。あるいは、AAV配列は、合成または他の適当な手段を通じて、文献または例えば、GenBank、PubMedなどのようなデータベースにおいて入手可能である、公的な配列を参照して操作されてもよい。AAVウイルスは、核酸配列の細胞特異的デリバリーのため、免疫原性を最小にするため、安定性および粒子半減期を調整するため、効率的な分解のため、核への正確なデリバリーなどのため、これらの粒子を最適化することを可能にする、従来の分子生物学的技術により操作されてもよい。
【0072】
本明細書において使用される、互換的に使用される、用語「rAAV」および「人工AAV」は、カプシドタンパク質を含むAAVおよびそこにパッケージングされたベクターゲノムを非限定的に意味し、ベクターゲノムは、AAVにとって異種性の核酸を含む。1つの実施形態において、カプシドタンパク質は、天然に存在しないカプシドである。かかる人工カプシドは、任意の適当な技術により、異なる選択されたAAVから、同じAAVの不連続な部分から、非AAVウイルス源から、または非ウイルス源から得られ得る異種性配列と組み合わせて選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質のフラグメント)を使用し、生成されてもよい。人工AAVは、偽型AAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであってもよいが、これらに限定されない。1つのAAVのカプシドが、異種性カプシドタンパク質で置換されている、偽型ベクターは、本発明において有用である。1つの実施形態において、AAV2/5およびAAV2/8は、典型的な偽型ベクターである。選択された遺伝要素は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソームデリバリー、膜融合技術、高速度DNAコートペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を含む、任意の適当な方法によりデリバリーされてもよい。 かかるコンストラクトを作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に公知であり、遺伝子操作、組換え操作、および合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2012年)を参照のこと。
【0073】
本明細書において使用される、(a)「AAV9カプシド」は、本明細書において参照により取り込まれ、AAV vp1カプシドタンパク質が配列番号6において再生産される、GenBank受託:AAS99264のアミノ酸配列、および/または(b)GenBank受託:AY530579.1:(nt 1..2211)(配列番号7において再産生される)のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有するAAV9を指す。 このコードされる配列由来のいくつかのバリエーションは、本発明により包含され、GenBank受託:AAS99264および米国特許第7906111号(または国際公開第2005/033321号)における参照されたアミノ酸配列に対して約9
9%同一性を有する配列(すなわち、参照された配列から約1%未満のバリエーション)を含んでもよい。かかるAAVは、例えば、天然の単離物(例えば、hu68(2017年2月28日付けで出願された同時係属中の米国特許出願第62/464,748号、および2019年11月27日付けで出願された、米国特許出願第62/591,002号、両方が「Novel Adeno-associated virus (AAV) Clade F Vector and Uses Therefor」と名称付けられ、ならびに国際公開第2018/160582号)、hu31もしくはhu32)、または例えば、AAV9カプシドを用いて整列された任意の他のAAVカプシドにおける対応する位置から「補充された」代替の残基から選択されるアミノ酸置換を含むが、これらに限定されない、アミノ酸置換、欠損、もしくは付加を有するAAV9のバリアント;例えば、米国特許第9,102,949号、米国特許第8,927,514、米国特許第2015/349911;国際公開第2016/049230A1l号;米国特許第9,623,120号;米国特許第9,585,971号において記載されるものなどを含んでもよい。しかしながら、他の実施形態において、上で参照された配列と少なくとも約95%の同一性を有するAAV9、またはAAV9カプシドの他のバリアントが、選択されてもよい。例えば、米国特許出願公開第2015/0079038号を参照。カプシド、そのためのコード配列を生成する方法、およびrAAVウイルスベクターの産生方法が、記載されている。例えば、Gaoら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A、100(10)、6081~6086頁(2003年)および米国特許第2013/0045186A1号を参照のこと。
【0074】
1つの実施形態において、本明細書において記載されるrAAVは、自己相補的AAVである。「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列により保有されるコード領域が、分子内2本鎖DNA鋳型を形成するよう設計されている、コンストラクトを指す。感染の際、第2の鎖の細胞介在性合成を待つよりむしろ、2つの相補レベルのscAAVは、即座の複製および転写の用意ができている1つの2本鎖DNA(dsDNA)単位を形成するよう結合する。例えば、D M McCartyら、「Self-complementary recombinant adeno-associated virus
(scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis」、Gene Therapy、(2001年8月)、第8巻、No.16、1248~1254頁を参照のこと。自己相補的AAVは、米国特許第6,596,535号;第7,125,717号;および第7,456,683号において記載され、これらのそれぞれが、参照により全体が本明細書に取り込まれる。
【0075】
ある種の実施形態において、本明細書において記載されるrAAVは、ヌクレアーゼ抵抗性である。かかるヌクレアーゼは、単一のヌクレアーゼ、またはヌクレアーゼの混合物であってもよく、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼであってもよい。ヌクレアーゼ抵抗性rAAVは、AAVカプシドが完全にアセンブルされ、産生プロセスから存在し得る混入している核酸を取り除くために設計されたヌクレアーゼインキュベーション工程中に、分解(消化)からこれらのパッケージングされたゲノム配列を保護することを示す。多くの例において、本明細書において記載されるrAAVは、DNase抵抗性である。
【0076】
本明細書において記載される組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、公知である技術を使用し、生成されてもよい。例えば、国際公開第2003/042397号;国際公開第2005/033321号、国際公開第2006/110689号;米国特許第7588772B2号を参照のこと。かかる方法は、AAVカプシドをコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;AAV末端逆位配列(ITR)により隣接される本明細書において記載される発現カセット;および発現カセットのAAVカプシドタンパク質へのパッケージ
ングを可能にするための十分なヘルパー機能を含有する、宿主細胞を培養する工程を含む。AAVカプシドをコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;記載されるベクターゲノム;およびベクターゲノムのAAVカプシドタンパク質へのパッケージングを可能にする十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞がまた、本明細書において提供される。1つの実施形態において、宿主細胞は、HEK293細胞である。これらの方法は、参照により本明細書に取り込まれる、国際公開第2017160360A2号においてより詳細に記載されている。
【0077】
当業者にとって利用可能なrAAVを産生する他の方法が、利用されてもよい。適当な方法は、バキュロウイルス発現系または酵母を介した産生を含み得るが、これらに限定されない。例えば、Robert M. Kotin、Large-scale recombinant adeno-associated virus production、Hum Mol Genet、2011年4月15日;20(R1):R2-R6、2011年4月29日にオンラインで公開、doi: 10.1093/hmg/ddr141;Aucoin MGら、Production of adeno-associated viral vectors in insect cells using triple infection: optimization of baculovirus concentration ratios、Biotechnol
Bioeng、2006年12月20日;95(6):1081~92頁;SAMI S. THAKUR、Production of Recombinant Adeno-associated viral vectors in yeast、Thesis presented to the Graduate School of the University of Florida、2012年;Kondratov
Oら、Direct Head-to-Head Evaluation of Recombinant Adeno-associated Viral Vectors
Manufactured in Human versus Insect Cells、Mol Ther、2017年8月10日、pii: S1525-0016(17)30362~3頁、doi: 10.1016/j.ymthe.2017.08.003、[Epub ahead of print];Mietzsch Mら、OneBac 2.0: Sf9 Cell Lines for Production of AAV1, AAV2, and AAV8 Vectors with Minimal Encapsidation of Foreign DNA、Hum Gene Ther Methods、2017年2月;28(1):15~22頁、doi: 10.1089/hgtb.2016.164;Li Lら、Production
and characterization of novel recombinant adeno-associated virus replicative-form genomes: a eukaryotic source of DNA for gene transfer、PLoS One、2013年8月1日;8(8):e69879頁、doi: 10.1371/journal.pone.0069879、2013年出版;Galibert Lら、Latest developments in the large-scale production of adeno-associated virus vectors in insect cells toward the treatment of neuromuscular
diseases、J Invertebr Pathol、2011年7月;107
Suppl:S80~93頁、doi: 10.1016/j.jip.2011.05.008;およびKotin RM、Large-scale recombinant adeno-associated virus production、Hum Mol Genet、2011年4月15日;20(R1):R2~6頁、doi: 10.1093/hmg/ddr141、2011年4月29日に電子公開、を参照のこと。
【0078】
高い塩濃度での2つの工程アフィニティークロマトグラフィー精製、続く陰イオン交換樹脂 クロマトグラフィーを使用して、ベクター薬物産物を精製し、空のカプシドを取り除く。これらの方法は、参照により本明細書に取り込まれる、「AAV9の測定可能な精製方法」と名称付けられた、国際公開第2017/160360号においてより詳細に記載される。簡単に言うと、ゲノム欠損AAV9中間体由来のパッケージングされたゲノム配列を有するrAAV9粒子を分離する方法は、組換えAAV9ウイルス粒子およびAAV9カプシド中間体を含む懸濁液を、迅速な性能液体クロマトグラフィーの対象にする工程を含み、AAV9ウイルス粒子およびAAV9中間体は、pH10.2にて平衡化された強力な陰イオン交換樹脂に結合し、約260および約280での紫外線吸光度について溶出液をモニタリングしながら塩勾配の対象にする。rAAV9にあまり適してないが、pHは、約10.0~10.4の範囲にあってもよい。この方法において、AAV9全カプシドは、A260/A280の比が屈曲点に達したとき、分画から収集される。1つの例において、アフィニティークロマトグラフィー工程のため、完全に濾過した産物は、AAV2/9セロタイプを効率的に捕獲するCapture Select(商標)Poros-AAV2/9親和性樹脂(Life Technologies)に適用されてもよい。これらのイオン条件下で、有意なパーセンテージの残りの細胞DNAおよびタンパク質は、カラムを流れるが、一方、AAV粒子は、効率的に捕獲される。
【0079】
rAAVの従来の特徴決定または定量方法は、当業者にとって利用可能である。空および完全な粒子内容物を計算するために、選択された試料(例えば、本明細書における実施例において、イオジキサノール勾配精製調製物、GCの#=粒子の#)についてのVP3バンド体積が、添加したGC粒子に対してプロットされる。得られた一次方程式(y=mx+c)を使用して、試験物ピークのバンド体積における粒子の数を計算する。 次に、添加した20μL当たりの粒子(pt)の数に50を掛けて、粒子(pt)/mLを得る。 GC/mLにより割ったPt/mLは、粒子のゲノムコピーに対する比(pt/GC)となる。 Pt/mL-GC/mLは、空のpt/mLとなる。 pt/mLにより割り、100を掛けた空のpt/mLは、空の粒子のパーセンテージとなる。一般に、空のカプシドおよびパッケージングされたゲノムを含むAAVベクター粒子をアッセイする方法が、当該技術分野において公知である。例えば、Grimmら、Gene Therapy、(1999年)6:1322~1330頁;Sommerら、Molec.
Ther、(2003年)7:122~128頁を参照のこと。変性したカプシドを試験するために、方法は、処理したAAVストックを、3種のカプシドタンパク質を分離する能力がある任意のゲル、例えば、緩衝液中の3~8%トリス酢酸を含有する勾配ゲルからなる、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の対象にする工程、次に、試料物質が分離されるまで、ゲルを電気泳動する工程、およびゲルをナイロンまたはニトロセルロース膜、好ましくは、ナイロンにブロットする工程を含む。次に、抗AAVカプシド抗体は、変性したカプシドタンパク質に結合する一次抗体、好ましくは、抗AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗AAV-2モノクローナル抗体として使用される(Wobusら、J. Virol、(2000年)74:9281~9293頁)。次に、二次抗体、一次抗体に結合し、一次抗体との結合を検出する手段を含有するもの、より好ましくは、それに共有結合した検出分子を含有する抗IgG抗体、最も好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合したヒツジ抗マウスIgG抗体が、使用される。結合を検出する方法、好ましくは、放射性同位元素放射、電磁放射、または比色分析変化を検出する能力がある検出方法、最も好ましくは、化学発光検出キットを使用して、一次と二次抗体の間の結合を半定量的に決定する。例えば、SDS-PAGEのため、カラム分画由来の試料が、採取され、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGE添加緩衝液において加熱され得、カプシドタンパク質は、成形済勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)において分解された。銀染色は、製造元の指示に従いSilverXpress(Invitrogen、CA)、または他の適当な染色方法、すな
わち、SYPROルビーまたはクーマシー染色を使用し、行われてもよい。1つの実施形態において、カラム分画中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)により測定することができる。試料を希釈し、DNase I(または別の適当なヌクレアーゼ)を用いて消化して、外来性のDNAを取り除く。ヌクレアーゼの不活性化後、試料は、さらに希釈され、プライマーおよびプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを使用して増幅される。定義されたレベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に達するために要求されるサイクル数は、Applied Biosystems Prism 7700配列検出システムにおいてそれぞれの試料について測定される。AAVベクターにおいて含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを利用して、Q-PCR反応における標準曲線を生成する。試料から得られたサイクル閾値(Ct)の値を使用して、それをプラスミド標準曲線のCtに正規化することにより、ベクターゲノムタイターを決定する。デジタルPCRに基づく終点アッセイをまた使用することができる。
【0080】
1つの態様において、広範なスペクトルセリンタンパク質分解酵素、例えば、タンパク質分解酵素K(例えば、Qiagenから市販されている)を利用する、最適化されたq-PCR方法が使用される。より具体的には、DNase I消化の後に、試料が、タンパク質分解酵素K緩衝液を用いて希釈され、タンパク質分解酵素Kを用いて処理され、その後、熱不活性化されることを除き、最適化されたqPCRゲノムタイターアッセイは、標準的アッセイに類似する。試料は、試料サイズと等しい量のタンパク質分解酵素K緩衝液を用いて希釈される。タンパク質分解酵素K緩衝液は、2倍以上に濃縮されてもよい。典型的には、タンパク質分解酵素K処置は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLで変動してもよい。処置工程は、一般に、約55℃にて約15分間行われるが、より低い温度(例えば、約37℃~約50℃)にてより長い期間(例えば、約20分~約30分)、またはより高い温度(例えば、最大約60℃)にてより短い期間(例えば、約5~10分)行われる。同様に、熱不活性化は、一般に、約95℃にて約15分間であるが、温度は、下げ(例えば、約70~約90℃)、時間を延長してもよい(例えば、約20分~約30分)。次に、試料は、希釈され(例えば、1000倍)、標準アッセイにおいて記載されるTaqMan解析の対象にされる。
【0081】
加えて、またはあるいは、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)が使用されてもよい。例えば、ddPCRによる1本鎖および自己相補的AAVベクターゲノムタイターを決定する方法が、記載されている。例えば、M. Lockら、Hu Gene Therapy Methods、Hum Gene Ther Methods、2014年4月;25(2):115~25頁、doi: 10.1089/hgtb.2013.131、2014年2月14日電子公開、を参照のこと。
【0082】
カプシドタンパク質のvp1、vp2およびvp3の比を決定する方法がまた、利用可能である。例えば、Vamseedhar Rayaproluら、Comparative Analysis of Adeno-Associated Virus Capsid Stability and Dynamics、J Virol、2013年12月;87(24):13150~13160頁;Buller RM、Rose JA、1978年、Characterization of adenovirus-associated virus-induced polypeptides in
KB cells、J. Virol、25:331~338頁;およびRose JA、Maizel JV、Inman JK、Shatkin AJ、1971年、Structural proteins of adenovirus-associated viruses、J. Virol、8:766~770頁を参照のこと。
【0083】
本明細書において使用される、用語「処置」または「処置すること」は、MPS II
IAの1つまたは複数の症状の寛解の目的のための組成物(複数可)および/もしくは方法(複数可)、SGSHの所望される機能の回復、または疾患のバイオマーカーの改善を指す。いくつかの実施形態において、用語「処置」または「処置すること」は、本明細書において示される目的のため、対象に本明細書において記載される1つまたは複数の組成物を投与する工程を包含すると定義される。従って、「処置」は、所定の対象において、MPS IIIAの発症もしくは進行を低減すること、疾患を予防すること、疾患症状の重症度を低減すること、それらの進行を遅延させること、疾患の症状を取り除くこと、疾患の進行を遅延させること、または治療の有効性を増大させることの1つまたは複数を含み得る。
【0084】
本明細書において記載されるrAAVにおける組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0085】
5.医薬組成物
1つの態様において、製剤緩衝液中に本明細書において記載されるベクターを含む医薬組成物が、本明細書において提供される。1つの実施形態において、医薬組成物は、機能的hSGSHタンパク質または機能的スルファターゼ変更因子1(SUMF1)との同時投与に適当である。1つの実施形態において、製剤緩衝液中に本明細書において記載されるrAAVを含む医薬組成物が、提供される。1つの実施形態において、rAAVは、約1×10ゲノムコピー(GC)/mL~約1×1014GC/mLにて製剤化される。さらなる実施形態において、rAAVは、約3×10GC/mL~約3×1013GC/mLにて製剤化される。なおさらなる実施形態において、rAAVは、約1×10GC/mL~約1×1013GC/mLにて製剤化される。1つの実施形態において、rAAVは、少なくとも約1×1011GC/mLにて製剤化される。
【0086】
1つの実施形態において、製剤は、水性懸濁液に溶解した、界面活性剤、保存剤、賦形剤、および/または緩衝液をさらに含む。1つの実施形態において、緩衝液は、PBSである。別の実施形態において、緩衝液は、人工脳脊髄液(aCSF)、例えば、エリオットの製剤緩衝液;またはハーバード装置灌流液(終イオン濃度(mM):Na、150;K、3.0;Ca、1.4;Mg、0.8;P、1.0;Cl、155を有する人工CSF)である。緩衝食塩水、界面活性剤、および生理的に適合可能な塩もしくは約100mM塩化ナトリウム(NaCl)~約250mM塩化ナトリウムに均等なイオン強度に調節された塩の混合物、または均等なイオン濃度に調節された生理的に適合可能な塩の1つまたは複数を含むものを含む、様々な適当な溶液が、公知である。
【0087】
適当には、製剤は、生理的に許容可能なpH、例えば、pH6~8、またはpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、またはpH7.2~7.8の範囲に調節される。脳脊髄液のpHは、約7.28~約7.32であるので、くも膜下腔内デリバリーのため、この範囲内のpHが所望されてもよく、一方、静脈内デリバリーのため、pH6.8~約7.2が所望され得る。しかしながら、広範囲およびこれらの部分範囲内の他のpHが、他の経路のデリバリーのため選択されてもよい。
【0088】
適当な界面活性剤、または界面活性剤の組み合わせが、無毒性である非イオン性界面活性剤から選択されてもよい。1つの実施形態において、例えば、中性pHを有し、平均分子量8400を有する、ポロクサマー188としても知られた、Pluronic(登録商標)F68[BASF]のような、一次ヒドロキシル基で終わる二機能ブロックコポリマー界面活性剤が、選択される。他の界面活性剤および他のポロクサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖により隣接されるポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心の疎水性鎖を含む非イオン性ト
リブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリルグリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノールならびにポリエチレングリコールが、選択されてもよい。1つの実施形態において、製剤は、ポロクサマーを含有する。これらのコポリマーは、文字「P」(ポロクサマーについて)、続いて、3つのアラビア数字:最初の2つのアラビア数字×100が、ポリオキシプロピレン中心のおよその分子量を与え、最後のアラビア数字×10が、パーセンテージポリオキシエチレン含量を与える、を用いて一般に名称付けられる。1つの実施形態において、ポロクサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の量最大約0.0005%~約0.001%で存在してもよい。
【0089】
1つの例において、製剤は、例えば、水中に塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、デキストロース、硫酸マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム、7HO)、塩化カリウム、塩化カルシウム(例えば、塩化カルシウム、2HO)、リン酸水素ナトリウム、およびその混合物の1つまたは複数を含む緩衝食塩水溶液を含有してもよい。適当には、くも膜下腔内デリバリーのため、モル浸透圧濃度は、脳脊髄液と適合可能な範囲内にある(例えば、約275~約290);例えば、emedicine.medscape.com/article/2093316-overviewを参照のこと。場合により、くも膜下腔内デリバリーのため、市販の希釈剤が、懸濁化剤として、または別の懸濁剤および他の任意選択の賦形剤と組み合わせて使用されてもよい。例えば、Elliotts B(登録商標)溶液[Lukare Medical]を参照のこと。
【0090】
他の実施形態において、製剤は、1つまたは複数の浸透エンハンサーを含有してもよい。適当な浸透エンハンサーの例は、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウレルエーテル、またはEDTAを含み得る。
【0091】
加えて、医薬的に許容される担体および本明細書において記載される機能的SGSHをコードする核酸配列を含むベクターを含む医薬組成物が、提供される。本明細書において使用される、「担体」は、任意および全ての溶媒、分散媒、ビークル、コーティング剤、希釈剤、抗菌および抗真菌剤、等調および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。医薬上有効な物質のためのかかる媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補足の有効成分をまた、組成物に取り込むことができる。リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクルなどのようなデリバリービークルが、本発明の組成物の適当な宿主細胞への導入のため使用されてもよい。特に、rAAVベクターは、デリバリーのため製剤化されるか、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、またはナノ粒子などに包含されるかのいずれかであってもよい。1つの実施形態において、治療上有効量の当該ベクターが、医薬組成物において含まれる。担体の洗濯は、本発明の限定ではない。保存剤、または化学安定剤のような、他の好適な医薬的に許容される担体。適当な典型的な保存剤は、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールを含む。適当な化学安定剤は、ゼラチンおよびアルブミンを含む。
【0092】
語句「医薬的に許容される」は、宿主に投与されたとき、アレルギーまたは類似の不都合な反応を生じない分子実体および組成物を指す。
【0093】
本明細書において使用される、用語「投薬量」または「量」は、処置のうちに対象にデリバリーされるトータルの投薬量もしくは量、または1単位(または複数単位若しくは分
割投薬量)投与においてデリバリーされる投薬量または量を指すことができる。
【0094】
また、複製欠損ウイルス組成物を、ヒト患者について、範囲、好ましくは、1.0×1012GC~1.0×1014GC内の全成分または分別量を含む、(体重70kgの平均的な対象を処置するため)約1.0×10GC~約1.0×1016GCの範囲内にある複製欠損ウイルスの量を含有するよう投薬単位で製剤化され得る。1つの実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または9×10GCを含有するよう製剤化される。別の実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または9×1010GCを含有するよう製剤化される。別の実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、または9×1011GCを含有するよう製剤化される。別の実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、または9×1012GCを含有するよう製剤化される。別の実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、または9×1013GCを含有するよう製剤化される。別の実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、または9×1014GCを含有するよう製剤化される。別の実施形態において、組成物は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、または9×1015GCを含有するよう製剤化される。1つの実施形態において、ヒト適用のため、用量は、範囲内の全成分または分別量を含む1用量当たり1×1010~約1×1012GCの範囲にあり得る。
【0095】
1つの実施形態において、本明細書において記載されるrAAVを含む医薬組成物は、脳質量1グラム当たり約1×10GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCにて投与可能である。
【0096】
本明細書において記載される水性懸濁液または医薬組成物は、任意の適当な経路または異なる経路の組み合わせによるそれを必要とする対象へのデリバリーのため設計される。1つの実施形態において、医薬組成物は、脳室内(ICV)、くも膜下腔内(IT)、または嚢内注射を介したデリバリーのため製剤化される。1つの実施形態において、本明細書において記載される組成物は、静脈注射によるそれを必要とする対象へのデリバリーのため設計される。あるいは、他の投与経路が、選択されてもよい(例えば、経口、吸入、鼻腔内、気管内、動脈内、眼内、筋肉内、および他の非経口経路)。
【0097】
本明細書において使用される、用語「くも膜下腔内デリバリー」または「くも膜下腔内投与」は、薬物が脳脊髄液(CSF)に達するように、脊柱管、より具体的には、くも膜下腔への注射を介した薬物についての投与経路を指す。くも膜下腔内デリバリーは、腰椎穿刺、脳室内、後頭下/嚢内、および/またはC1-2穿刺を含み得る。例えば、物質は、腰椎穿刺によるくも膜下腔を介した拡散のため導入され得る。別の例において、注射は、大槽へのものであってもよい。 大槽内デリバリーは、ベクター拡散を増大させ、および/または投与により引き起こされる毒性および炎症を低減し得る。例えば、Chris
tian Hindererら、Widespread gene transfer in the central nervous system of cynomolgus macaques following delivery of AAV9 into the cisterna magna、Mol Ther Methods
Clin Dev、2014年;1:14051頁、2014年12月10日にオンラインで公開、doi:10.1038/mtm.2014.51を参照のこと。
【0098】
本明細書において使用される、用語「嚢内デリバリー」または「嚢内投与」は、脳室または大槽小脳延髄内の脳脊髄液に直接、より具体的には、後頭下穿刺を介した、または大槽への直接注射によるまたは持続的に配置された管を介した、薬物についての投与経路を指す。図6は、嚢内注射がどのようになされるかについての説明を提供する。
【0099】
本明細書において記載される医薬組成物における組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0100】
6.処置方法
1つの態様において、MPS IIIAと診断されたヒト対象を処置する方法が、本明細書において提供される。現在、MPS IIIの臨床上の疑いが存在するとき、最初の工程は、ジメチルメチレンブルー(DMB)を使用した分光光度方法を介した尿中のGAGの存在を検出するための定量検査の要求である。DMB検査は、GAGのジメチルメチレンブルーへの結合および分光光度計を用いたGAG-DMB複合体の定量に基づく。この検査の感度は100%であり、特異性は75~100%である。尿中のGAGを検出したときの陰性結果は、減弱形態の疾患を有する幾人かの患者において、健常対照を用いたGAG排出のレベルが重複し得、MPS IIIにおけるヘパラン硫酸の増大した排出が、無視され得るという事実に起因して、MPS IIIの存在を除外しない。現在の診断のゴールドスタンダード技術は、培養皮膚線維芽細胞、白血球、血漿または血清における酵素活性の決定である。MPS IIIAの特異的な診断は、患者の白血球または線維芽細胞におけるヘパラン硫酸の分解に関与するSGSH酵素活性の減少または不存在を示すことにより確かにされ;低減は、他のスルファターゼにおいて正常である、健常な個体における活性と比較したとき、10%未満であるべきである。疾患はまた、複数のスルファターゼにおける欠乏に起因して、ヘパランN-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼおよび他のスルファターゼの活性における低減を示すので、少なくとも他のスルファターゼの生化学的解析は、MPS IIIの診断を確かにするために要求され、これにより、複数のスルファターゼ欠乏を除外する。しかしながら、診断方法は、本発明の制限ではなく、他の適当な方法が選択されてもよい。
【0101】
方法は、対象に本明細書において記載されるベクターの懸濁液を投与する工程を含む。1つの実施形態において、方法は、対象に脳質量1グラム当たり約1×10GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCの用量で製剤緩衝液中の本明細書において記載されるrAAVの懸濁液を投与する工程を含む。
【0102】
本明細書において提供される組成物(複数可)および方法(複数可)は、MPS IIIAを有する必要とする対象の処置における有効性を達成する。対象における方法の有効性は、(a)SGSH酵素活性における増大;(b)MPS IIIA症状の寛解;(c)MPS IIIA関連バイオマーカー、例えば、脳脊髄液(CSF)、血清、尿および/または他の生物学的試料におけるGAGレベルポリアミン(例えば、スペルミン)レベルの改善;または(e)MPS IIIAについての任意の処置(複数可)の促進を評価することにより、示すことができる。ある種の実施形態において、有効性は、認知の改善および/または不安の是正、歩行および/または運動改善、振戦頻度および/または重症
度における低減、把持/攣縮における低減、姿勢における改善、角膜混濁における改善をモニタリングすることにより、決定されてもよい。加えてまたはあるいは、方法の有効性は、動物モデルに基づき、予想されてもよい。適当なマウスモデルの一例が、実施例1において記載される。別の実施形態において、複数パラメーターの評価スケールを開発して、疾患補正および動物モデルにおける本明細書において記載されるMPSIIIAベクター療法への応答を評価した。参照により本明細書に取り込まれる、図5を参照のこと。動物は、振戦、姿勢、毛の質、把持、角膜薄濁、および歩行/運動の組み合わせの評価に基づきスコアを割り当てられる。ある種の実施形態において、これらの要素の1つまたは複数の任意の組み合わせを使用して、単独、または他の要素との組み合わせた有効性を示してもよい。例えば、Burkholderら、Curr Protoc Mouse Biol、2012年6月、2:145~65頁;Tumpeyら、J Virol、1998年5月、3705~10頁;およびGuyenetら、J Vis Exp、2010年5月、39;1787頁を参照のこと。処置された動物の認知の改善および不安の補正は、オープンフィールド(すなわち、例えば、Tatemら、J Vis Exp、2014年、(91):51785頁において記載されるビームブレイク測定)および上昇した十字路迷路(例えば、WalfおよびFrye、Nat Protoc、2007年、2(2):322~328頁において記載される)における運動を評価することにより、評価される。
【0103】
本明細書において使用される、「MPS IIIAのための任意の処置(複数可)の促進」またはその文法上の異形は、記載される組成物(複数可)の投与および記載される方法(複数可)の使用を含まない標準的な処置のものと比較して、本発明においてまず開示される組成物(複数可)または方法(複数可)以外の、対象におけるMPS IIIAの処置の減少した投薬量またはより少ない頻度を指す。本明細書において記載される組成物(複数可)または方法(複数可)により促進される適当な処置の例は、症状(例えば、てんかん発作および睡眠障害)を軽減し、クオリティ・オブ・ライフを改善するため使用される医薬;骨髄移植または臍帯血移植のような、造血幹細胞移植;静脈内投与または脳室内注入を介した酵素置換療法(ERT);および任意のその組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されない。1つの実施形態において、記載される方法は、MPS IIIAと関連するバイオマーカーの改善を示している対象をもたらす。
【0104】
「SGSH酵素活性における増大」は、用語「所望されるSGSH機能における増大」と互換的に使用され、健常患者についてのSGSH酵素範囲の少なくとも約5%、10%、15%、20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%のSGSH活性を指す。SGSH酵素活性は、本明細書において記載されるアッセイにより測定されてもよい。1つの実施形態において、SGSH酵素活性は、血清、血漿、血液、尿、CSF、または別の生物学的試料において測定されてもよい。1つの実施形態において、本明細書において記載される組成物の投与、または本明細書において記載される方法の使用は、血清、血漿、唾液、尿、または他の生物学的試料におけるSGSH酵素活性における増大をもたらす。あるいは、CSF GAGレベルおよびスペルミンレベルのような他のCSFバイオマーカーを測定して、治療効果を決定してもよい。例えば、国際公開第2017/136533号を参照のこと。
【0105】
神経認知は、従来の方法により決定することができ、例えば、国際公開第2017/136500A1号を参照のこと。認知神経科学的低下の予防は、MPS IIIA患者のものと比較して少なくとも約5%、少なくとも約20%、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の本明細書において記載される組成物を投与された、または本明細書において記載される方
法を受けとった対象の認知神経科学的低下の減速を指す。
【0106】
本明細書において使用される、用語「バイオマーカー」または「MPS IIIA関連バイオマーカー」は、正または負の問題においてMPS IIIAの進行または発生と相関する、対象の生物学的試料における生物学的または化学分子の存在、濃度、発現レベルまたは活性を指す。1つの実施形態において、バイオマーカーは、脳脊髄液(CSF)、血清、尿、皮膚線維芽細胞、白血球、血漿、または任意の他の生物学的試料におけるGAGレベルである。別の実施形態において、バイオマーカーは、臨床化学を使用し、評価される。なお別の実施形態において、バイオマーカーは、肝臓または脾臓体積である。1つの実施形態において、バイオマーカーは、ヘパランN-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼおよび他のスルファターゼの活性である。別の実施形態において、バイオマーカーは、CSF、血清、または別の生物学的試料におけるスペルミンレベルである。なお別の実施形態において、バイオマーカーは、血清、CSF、または別の生物学的試料におけるリソソーム酵素活性である。1つの実施形態において、バイオマーカーは、脳の磁気共鳴画像法(MRI)を介して評価される。別の実施形態において、バイオマーカーは、神経認知発症検査により測定される神経認知スコアである。本明細書において使用される、語句「バイオマーカーの改善」は、疾患の進行と正に相関するバイオマーカーにおける低減、または疾患の進行と負に相関するバイオマーカーにおける増大を意味し、低減または増大は、本明細書において記載される組成物の投与または本明細書において記載される方法の使用前のものと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約20%、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%である。
【0107】
1つの実施形態において、方法は、本明細書において提供される治療を用いた治療の開始に先立ち、 対象におけるMPS IIIAと関連するバイオマーカーを検出する工程またはモニタリングする工程をさらに含む。ある種の実施形態において、方法は、対象由来の使用におけるポリアミン(例えば、スペルミン)であるバイオマーカーの検出を含む(参照により本明細書に取り込まれる、国際公開第2017/136533号を参照のこと)。ある種の実施形態において、患者試料におけるスペルミン濃度レベルを検出して、本明細書において記載されるベクターを使用したMPSIIIのための処置の有効性をモニターする。
【0108】
現在、MPSIIIAを有する患者は、骨髄移植(BMT)、基質還元療法(SRT)または酵素補充療法(ERT)の候補とみなされない。しかしながら、ある種の実施形態において、本明細書において記載されるSGSHを発現するベクターを用いて処置された遺伝子治療の患者は、最低でも、任意の亜正常範囲の酵素レベルが、ERTまたはSRTを用いて処理され得る、十分な酵素発現レベルを有する。かかるERTは、ERTの用量が、ベクター投与後数ヶ月または数年間、モニターされ、調節される、同時治療であってもよい。加えてまたはあるいは、SRTは、SRTの用量が、ベクター投与後数ヶ月または数年間、モニターされ、調節される、同時治療であってもよい。
【0109】
従って、1つの実施形態において、懸濁液は、機能的hSGSHタンパク質または機能的SUMF1タンパク質との同時投与に適している。
【0110】
1つの実施形態において、懸濁液は、必要とする対象に脳室内、くも膜下腔内、嚢内または静脈内デリバリーされる。
【0111】
1つの実施形態において、懸濁液は、pH約7.28~約7.32を有する。
【0112】
本明細書において使用される、酵素補充療法(ERT)は、特定の酵素が、欠損しているか、または不存在である、患者において酵素を置換することを含む医薬処置である。酵素は、通常、組換えタンパク質として産生され、患者に投与される。1つの実施形態において、酵素は、機能的SGSHである。別の実施形態において、酵素は、機能的SGSHを含む組換えタンパク質である。全身、くも膜下腔内、脳室内または嚢内デリバリーは、ERTを使用し、成され得る。本明細書において使用される、基質還元療法(SRT)は、SGSHの不存在下で蓄積する、化合物の生合成を部分的に阻害する小分子薬物を使用した治療を指す。1つの実施形態において、SRTは、ゲネステインを介した治療である。例えば、Ritva Tikkanenら、Less Is More: Substrate Reduction Therapy for Lysosomal Storage Disorders、Int J Mol Sci、2016年7月;17(7):1065頁、2016年7月4日にオンラインで公開、doi: 10.3390/ijms17071065;Delgadillo Vら、Genistein supplementation in patients affected by Sanfilippo disease、J Inherit Metab Dis、2011年10月;34(5):1039~44頁、doi: 10.1007/s10545-011-9342-4、2011年5月10日に電子公開;およびde Ruijter Jら、Genistein in Sanfilippo disease: a
randomized controlled crossover trial、Ann Neurol、2012年1月;71(1):110~20頁、doi: 10.1002/ana.22643を参照のこと。
【0113】
これらの用量および濃度のデリバリーに適した体積は、当業者により決定され得る。例えば、体積約1μL~150mLが選択されてもよく、より大きな体積は、成人のため選択される。典型的には、新生児について、適当な体積は、約0.5mL~約10mLであり、より大きな乳児について、約0.5mL~約15mLが、選択されてもよい。幼児について、約0.5mL~約20mLの体積が、選択されてもよい。小児について、最大約30mLの体積が、選択されてもよい。10代前および10代について、体積最大約50mLが、選択されてもよい。なお他の実施形態において、患者は、選択される約5mL~約15mL、または約7.5mL~約10mLの体積でのくも膜下腔内投与を受けてもよい。他の適当な体積および投薬量が、決定されてもよい。投薬量を調節して、任意の副作用に対する治療恩恵のバランスを取り、かかる投薬量は、組換えベクターが利用される治療適用に依存して、変動してもよい。
【0114】
1つの実施形態において、本明細書において記載されるrAAVは、脳質量1グラム当たり約1×10GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCにて投与される。ある種の実施形態において、rAAVは、体重1kg当たり約1×10GC~体重1kg当たり約1×1013GCの用量にて全身に同時投与される。
【0115】
1つの実施形態において、対象に、治療上有効量の本明細書において記載されるベクターがデリバリーされる。本明細書において使用される、「治療上有効量」は、標的細胞において、有効性を達成するのに十分な酵素の量をデリバリーし、発現するhSGSHをコードする核酸配列を含む組成物の量を指す。1つの実施形態において、ベクターの投薬量は、範囲内の全整数または分別量および末端を含む、脳質量1グラム当たり約1×10GC~脳質量1グラム(g)当たり約1×1013ゲノムコピー(GC)である。別の実施形態において、投薬量は、脳質量1グラム当たり1×1010GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCである。特定の実施形態において、患者に投与されるベクターの用量は、少なくとも約1.0×10GC/g、約1.5×10GC/g、約2.0×10GC/g、約2.5×10GC/g、約3.0×10GC/g、約3.5×10GC/g、約4.0×10GC/g、約4.5×10GC/g、約5.0×10
GC/g、約5.5×10GC/g、約6.0×10GC/g、約6.5×10GC/g、約7.0×10GC/g、約7.5×10GC/g、約8.0×10GC/g、約8.5×10GC/g、約9.0×10GC/g、約9.5×10GC/g、約1.0×1010GC/g、約1.5×1010GC/g、約2.0×1010GC/g、約2.5×1010GC/g、約3.0×1010GC/g、約3.5×1010GC/g、約4.0×1010GC/g、約4.5×1010GC/g、約5.0×1010GC/g、約5.5×1010GC/g、約6.0×1010GC/g、約6.5×1010GC/g、約7.0×1010GC/g、約7.5×1010GC/g、約8.0×1010GC/g、約8.5×1010GC/g、約9.0×1010GC/g、約9.5×1010GC/g、約1.0×1011GC/g、約1.5×1011GC/g、約2.0×1011GC/g、約2.5×1011GC/g、約3.0×1011GC/g、約3.5×1011GC/g、約4.0×1011GC/g、約4.5×1011GC/g、約5.0×1011GC/g、約5.5×1011GC/g、約6.0×1011GC/g、約6.5×1011GC/g、約7.0×1011GC/g、約7.5×1011GC/g、約8.0×1011GC/g、約8.5×1011GC/g、約9.0×1011GC/g、約9.5×1011GC/g、約1.0×1012GC/g、約1.5×1012GC/g、約2.0×1012GC/g、約2.5×1012GC/g、約3.0×1012GC/g、約3.5×1012GC/g、約4.0×1012GC/g、約4.5×1012GC/g、約5.0×1012GC/g、約5.5×1012GC/g、約6.0×1012GC/g、約6.5×1012GC/g、約7.0×1012GC/g、約7.5×1012GC/g、約8.0×1012GC/g、約8.5×1012GC/g、約9.0×1012GC/g、約9.5×1012GC/g、約1.0×1013GC/g、約1.5×1013GC/g、約2.0×1013GC/g、約2.5×1013GC/g、約3.0×1013GC/g、約3.5×1013GC/g、約4.0×1013GC/g、約4.5×1013GC/g、約5.0×1013GC/g、約5.5×1013GC/g、約6.0×1013GC/g、約6.5×1013GC/g、約7.0×1013GC/g、約7.5×1013GC/g、約8.0×1013GC/g、約8.5×1013GC/g、約9.0×1013GC/g、約9.5×1013GC/g、または約1.0×1014GC/脳質量1gである。
【0116】
1つの実施形態において、方法は、対象が、免疫抑制同時療法を受けることをさらに含む。かかる同時療法のための免疫抑制剤は、グルココルチコイド、ステロイド、代謝拮抗物質、T細胞阻害剤、マクロライド(例えば、ラパマイシンもしくはラパログ)、およびアルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、抗体、またはイムノフィリン上で活性な剤を含む細胞増殖抑制剤を含むが、これらに限定されない。免疫抑制剤は、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、プラチナ化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミスラマイシン、IL-2受容体-(CD25-)またはCD3指示抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、またはTNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)結合剤を含み得る。
【0117】
ある種の実施形態において、免疫抑制療法は、遺伝子療法投与の0、1、2、7日以上前に開始されてもよい。かかる療法は、同日での2つ以上の薬物(例えば、プレドニゾン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)および/またはシロリムス(すなわち、ラパマイシン))の同時投与を含んでもよい。1つまたは複数のこれらの薬物は、遺伝子療法投与後、同じ用量または調節された用量にて継続されてもよい。かかる療法は、必要に応じて、約1週間(7日間)、約60日間以上であってもよい。ある種の実施形態において、タクロリムスを含まない投与計画が、選択される。
【0118】
ある種の実施形態において、方法は、血清抗hSGSH抗体の測定を含む。抗hSGSH抗体を測定する適当なアッセイが、利用可能であり、例えば、実施例1を参照のこと。
【0119】
1つの実施形態において、本明細書において記載されるrAAVが、必要とする対象に1回投与される。別の実施形態において、rAAVは、必要とする対象に1回より多く投与される。
【0120】
本明細書において記載される方法における組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0121】
7.キット
ある種の実施形態において、製剤(場合により、凍結された)において懸濁された濃縮ベクター、任意選択の希釈緩衝液、およびくも膜下腔内、脳室内または嚢内投与に要求される装置および成分を含むキットが、提供される。別の実施形態において、キットは、静脈内デリバリーのための成分をさらにまたは代わりに含んでもよい。1つの実施形態において、キットは、注射を可能にするのに十分な緩衝液を提供する。かかる緩衝液は、濃縮ベクターの約1:1~1:5の希釈、またはそれ以上を可能にする。他の実施形態において、より多いかもしくは少ない量の緩衝液または無菌水を含んで、用量タイトレーションおよび臨床医による他の調節を可能にする。なお他の実施形態において、1つまたは複数の装置が、キットにおいて含まれる。食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)またはグリセロール/PBSのような、適当な希釈緩衝液が、利用可能である。
【0122】
本明細書において記載されるキットにおける組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【0123】
8.装置
1つの態様において、本明細書において提供されるベクターは、例えば、参照により全体が本明細書に取り込まれる、国際公開第2017/136500号において記載される方法および/または装置を介してくも膜下腔内投与されてもよい。あるいは、他の装置および方法が、選択されてもよい。要約すると、方法は、くも膜下穿刺針を患者の大槽に進める工程、長い柔軟性のあるチューブを、くも膜下穿刺針の近位中心に、バルブの出力ポートを柔軟性のあるチューブの近位末端に繋げる工程、および当該進め、繋げる工程後、およびチューブを患者の脳脊髄液を用いて自己刺激することを可能にした後、多量の等調溶液を含有する第1の容器を、バルブのフラッシュ入口ポートに繋げ、その後、多量の医薬組成物を含有する第2の容器を、バルブのベクター入口ポートに繋げる工程を含む。第1および第2の容器をバルブに繋げた後、液体流の通り道が、ベクター入口ポートとバルブの取り出し口の間で開かれ、医薬組成物が、くも膜下穿刺針を通じて患者に注射され、医薬組成物を注射後、液体流の通り道が、フラッシュ入口ポートを通じて開けられ、バルブの取り出し口および等調溶液をくも膜下穿刺針に注入して、医薬組成物を患者に流す。この方法およびこの装置はそれぞれ、場合により、本明細書において提供される組成物のくも膜下腔内デリバリーのため志位陽されてもよい。あるいは、他の方法および装置が、かかるくも膜下腔内デリバリーのため使用されてもよい。
【0124】
本明細書において記載される装置における組成は、本明細書に渡り記載される他の組成物、大群、態様、実施形態および方法に適用されることが意図されることは、理解されるべきである。
【実施例
【0125】
本発明は、ここで、以下の実施例を参照して記載される。これらの実施例は、説明のみの目的で提供され、本発明は、決してこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書において提供される教示の結果として証拠となる任意および全てのバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0126】
実施例1:方法
A.ベクター-AAV9.CB7.CI.hSGSHco.rBG
配列番号1において示すhSGSH(MPS IIIA)操作した配列を、CB7プロモーター(サイトメガロウイルス最初期エンハンサーとトリβ-アクチンプロモーターのハイブリッド)、トリβ-アクチンイントロン(CI)、およびウサギベータグロビン(rBG)ポリアデニル化配列を含有する発現コンストラクトにクローニングした。発現コンストラクトに、AAV2末端逆位配列が隣接し、AAV9トランスプラスミドを、キャプシド形成のため使用した。
【0127】
AAVベクターを、イオジキサノール勾配方法を用いてPenn Vector Coreにより製造した。Lock、M.ら、Rapid, Simple, and Versatile Manufacturing of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors at Scale、Human Gene Therapy、2010年、21(10): 1259~1271頁を参照のこと。精製したベクターを、MPS IIIAについてDroplet Digital PCR(Lock, M.ら、Absolute Determination of Single-Stranded and Self-Complementary Adeno-Associated Viral Vector Genome
Titers by Droplet Digital PCR、Human Gene Therapy Methods、2014年、25(2):115~125頁)を用いてタイトレーションした。
【0128】
カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコのリン酸緩衝食塩水(dPBS)を、対照物質(ビークル対照)およびベクターのための希釈剤として使用した。試験物質を、無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いてそれぞれの用量群に適当な濃度まで希釈した。希釈したベクターを、湿った氷の上で維持し、希釈後4時間以内に動物に注射した。
【0129】
B.動物の手法
全ての動物プロトコールは、ペンシルベニア大学のInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。自然発生マウスSGSH変異体を含むマウスコロニーを、ペンシルベニア大学においてGene Therapy Program vivariumにおいて維持した。全ての子孫を、自動システム(Transnetyx Inc、8110 Cordova Road Suite 119 Cordova、TN 38016)を使用し、尾の切れ目のDNAのPCR解析により遺伝子型同定した。マウスを、離乳後、それらの遺伝子型に基づきグループ分けし、その後は混ぜずに、戦闘を防ぎ、所定のケージの全ての動物は、同じ処置を受けた。ケージを、それらのそれぞれの処置に無作為化した(www.randomizer.org)。
【0130】
動物を、1~5匹の動物/ケージの標準的ケージングで、自動タイマーを介して制御した12時間の明/暗サイクル下、湿度30~70%で収容した。温度を、64~79°F(18~26℃)の範囲内で維持した。オートクレーブしたげっ歯類固形飼料を、自由に提供した。水は、それぞれのケージ内の個々に置かれた水のボトルを介して自由に全ての動物にアクセス可能であった。少なくとも、水のボトルを、毎週のケージ交換中に1週間
当たり1回交換した。水供給を、フィラデルフィア市から引き、Getinge水濾過を使用し、精製した。水の質を、ULARにより塩素レベルについて毎日、ならびにpHおよび硬度について年4回試験した。ネスティング物質(Nestlet(登録商標))を、それぞれの変化後、それぞれのケージにおいて提供した。動物を、GTPスタッフおよびULAR獣医スタッフにより毎日モニターした。
【0131】
C.ベクターおよびビークル投与
MPS IIIAマウスは、平均14週齢にて右側脳室に、1匹のマウス当たりベクター9×10GC(低用量)または9×10GC(中用量)もしくは9×1010GC(高用量)、またはPBS5μLを受けた。マウスを、イソフルレンを用いて麻酔した。それぞれの麻酔したマウスの後頭部のたるんだ皮膚によりしっかり握り、3mmの深さに挿入するよう調節した、27ゲージの針を取り付けたHamiltonの針を用いてブレグマの前側および後側にフリーハンドで注射した。
【0132】
D.神経行動学的評価
ロッキングロータロッドを行い、注射の4ヶ月後の調整および平衡を評価した(MPS
IIIA)。一定の低速(5rpm)にて120秒間の2回のトライアル中に、マウスをロータロッドに慣らした。2分の休憩後、マウスを、ロータロッドに戻し、ロッキングパラダイムに従い、ロッドを、10rpmの一定速度で回転し、他の回転毎に回転の向きを逆転させた。トライアル間の休憩2分間で、3回のトライアルを行った。結果を、ロッドから落下までの平均時間として表す;時間が長いほど、良好な調整。
【0133】
E.組織学
マウスを、注射の5.5ヶ月後にケタミン/キシラジン麻酔下で心臓穿刺瀉血により安楽死させた。組織を迅速に集め、半分を、ドライアイス上で簡単に凍結し(酵素活性)、半分を、10%中性ホルマリンにおいて浸漬固定し、組織学のためパラフィンに包埋した。集めた組織は、脳、脊髄、肝臓、および心臓であった。
【0134】
ヘマトキシリン&エオジン(H&E)染色を、標準プロトコールに従い、パラフィン切片上で行った。処置について盲検で、委員会認定の獣医病理学者により、脳および脊髄において、病理組織学をスコア化した。脳スコアは、脳におけるグリア細胞空胞化、大脳におけるニューロン空胞化、脳幹におけるニューロン空胞化、脳におけるGFAP強度スコア、および単核細胞浸潤(最大スコア15)の3-グレード重症度スコアの累積計であった。脊髄スコアは、ニューロン空胞化(運動ニューロンにおいてより顕著)、グリア細胞空胞化、およびGFAP強度(最大スコア9)の3グレード重症度スコアの累積計であった。累積スコアを、事後のダンの多重比較検定、アルファ0.05を含む一元配置分散分析クラスカル・ウォリス検定により解析した。
【0135】
リソソーム貯蔵を、LIMP2免疫染色および定量により評価した。LIMP2免疫染色を、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した脳組織由来の6μmの切片において行った。切片を、エタノールおよびキシレン連続を通して脱パラフィンし、マイクロ波において6分間、10mmol/Lクエン酸緩衝液(pH6.0)において抗原回収のためボイルし、PBS+0.2%トリトン中の1%ロバ血清を用いて15分間ブロッキングし、続いて連続して、ブロッキング緩衝液において希釈した一次(1時間)および標識した二次(45分)抗体とインキュベーションした。一次抗体は、ウサギ抗LIMP2(Novus
Biologicals、Littleton、CO、1:200)および二次抗体は、FITCまたはTRITC標識したロバ抗ウサギ(Jackson Immunoresearch)であった。LIMP2について陽性に染色した細胞の数を、訓練を受けたGTP Morphologyの中心人物により、それぞれの動物由来の2~4つの脳切片(90日目の剖検)において定量した。
【0136】
F.酵素活性およびグリコサミノグリカン貯蔵
酵素活性アッセイおよびGAG含有量のため、タンパク質を、機械的均質化(Qiagen TissueLizer)により、酸性溶解溶液(0.2%トリトン、0.9%NaCl、pH4に調節)において抽出した。試料を凍結融解し、遠心分離により清澄化した。タンパク質を、BCAアッセイにより定量した。
【0137】
SGSH活性を、試料10μLを、14.3mM酢酸ナトリウム、pH5.5+0.7%NaCl+0.01M酢酸鉛において溶解した、5mM 4-メチルウンベリフェリル2-スルファミノ-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシドナトリウム塩(Toronto Research Chemicals)20μLとインキュベーションすることにより、測定した。17時間、37℃にてインキュベーション後、リン酸/クエン酸McIlvain緩衝液、pH6.7、6μLおよび10U/ml酵母由来のアルファ-グルコシダーゼ(sigma)10μLを、反応混合物に加え、37℃にてインキュベーションした。混合物を、グリシンNaOH緩衝液、pH10.6において希釈し、放出された4-MUを、遊離4-MUの標準希釈液と比較して、蛍光(励起365nm、放出450nm)により定量し、タンパク質含有量により正常化した。
【0138】
MPS IIIA動物由来の組織抽出物におけるGAG含有量を、製造元の推奨毎に使用した市販のキット(Blyscan Biocolor GAGsキット)を用いた色素結合方法を使用し、測定した。
【0139】
G.抗導入遺伝子抗体
血清抗hSGSH抗体の測定のための血液を、顎下出血により何回かのインビボでの時間点にて、ならびに心臓穿刺により最終剖検にて集めた。血清を分離させ、ドライアイス上で凍結し、解析まで-80℃にて保存した。ポリスチレンプレートを、pH5.8に設定した、組換えヒトSGSH(R&D Systems)、PBS中の5μg/mLを用いて一晩コーティングした。プレートを洗浄し、1時間、中性PBS中の2%ウシ血清アルブミン(BSA)においてブロッキングした。次に、プレートを、PBSにおいて1:1000希釈した血清試料とインキュベーションした。結合した抗体を、2%BSAを含むPBSにおいて1:10,000希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウス抗体(Abcam)を用いて検出した。アッセイを、テトラメチルベンジジン基質を使用して発生させ、2N硫酸を用いて停止させた後、450nmにて吸光度を測定した。
【0140】
実施例2:MPSIIIaのマウスモデルにおける最小有効用量(MED)の決定
MPSIIIaのマウスモデルにおいて、実験を行い、AAV9.CB7.CI.hSGSHco.rBG、ヒトSGSHを発現するAAV9ベクターの1回の脳室内(ICV)投与の発現、生物活性、および最小有効用量(MED)を評価した。
【0141】
AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGを、注射後(pi)6ヶ月の観察期間を用いた0日目に、1匹のマウス当たり用量9×10GCまたは9×10GCまたは9×1010GC(ベクターのddPCRタイター決定により決定)にて3ヶ月齢のMPS
IIIaマウス(1群当たりn=10)にICV経路を通じて投与した。ビークル処置したMPS IIIaおよびヘテロ接合体同腹仔のうちの一匹が、対照として機能する(1群当たりn=7~8)。
【0142】
生物活性を、血清における注射の14日および56日後におけるSGSH活性、ならびに脳、脊髄、肝臓および心臓における注射の6ヶ月後におけるSGSH活性を測定することにより、評価した。有効性およびMEDを、注射の4ヶ月後におけるロッキングロータ
ロッドでの行動、ならびに注射の6ヶ月後における脳リソソーム貯蔵および神経炎症を測定することにより、決定した。
【0143】
1匹のマウス当たり最大9×1010GCでのAAV9.CB7.CI.hSGSHco.rBGのMPS IIIaマウスへのICV投与は十分に許容され、処置に関連する臨床上の徴候または死亡率を伴わず、中枢神経系全体(CNS、脳および脊髄)ならびに抹消組織(肝臓および血清)におけるSGSH発現をもたらした。
【0144】
注射の6ヶ月後での脳、脊髄および肝臓においてSGSH活性における用量依存性増大が存在し(図1A~1C)、中用量でのヘテロ接合体レベルおよび高用量でのヘテロ接合体レベルに近い酵素活性を伴った。トータルのグリコサミノグリカン貯蔵は、心臓において高用量にて低減し(図1D)、一方、脳組織におけるグリコサミノグリカン貯蔵を調べる。注射の6ヶ月後の中および高用量での脳におけるLIMP2染色における低減により示す通り、リソソーム区画の用量依存性正常化が存在した(図2Aおよび2B)。ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色した脳切片において、リソソーム貯蔵の指標である、グリアおよびニューロンの空胞化の量ならびに頻度における用量依存性低減を観察した(図3A)。GFAP免疫染色はまた、脳において全ての用量にて、および脊髄において高用量にて神経炎症の低減を明らかにした(図3B)。CNSリソソーム含有量における変化およびH&E染色した切片における疾患関連形態学における改善に対応し、注射の4カ月後でのロッキングロータロッドアッセイにより評価した平衡および調整における改善が存在し、これは、中用量および高用量にて統計上有意な改善であった(図4)。
【0145】
試験物質および注射手法は、十分に許容された。MPS IIIa表現型と関連する徴候とは別に、マウスにおいて、臨床上の異常さを示さなかった。1匹を除き全てのマウスが、スケジュールで決められた安楽死まで生存した。死亡したマウスは、中用量で処置したMPS IIIaオスであり、重篤な戦闘の傷が原因で、ICV注射の4日後に安楽死させなければならなかった。これは、ケージ内の仲間の攻撃に関連し、処置または手法に関連するものではなかった。ICV投与手法自体に関連する変化を、幾匹かのマウスにおいて観察した(ヘモシデロファージおよび単核細胞が、脳室周囲の実質および髄膜に浸潤する)が、病理組織学において脳における試験物質に関連する毒性の証拠は存在しなかった。
【0146】
結論として、AAV9.CB7.CI.hSGSH.rBGは、MPS IIIaマウスにおいて全ての用量レベルにて十分に許容され、神経行動学的表現型で補正した、MPS IIIaのCNSと抹消パラメーターの両方における改善と関連する、SGSHレベルにおける用量依存性増大(発現および酵素活性)をもたらした。中用量で投与した、9×10GCが、本研究における最小有効用量であった。
【0147】
実施例3:AAV.hSGSH投与の長期効果
実験を行い、MPS IIIaマウスにおけるAAV.hSGSHの長期効果を調べた。20匹のMPS IIIaマウスは、2ヶ月齢にて高用量のAAV9.CB7.CI.hSGSH.rBG(9×1010GC、ICV)を受けた。さらに20匹のMPS IIIaマウスおよび20匹の野生型マウスが、PBS対照注射を受けた。マウスを、注射後7ヶ月間モニタリングし、その間、毎週臨床スコアを評価し、行動および認知検査を受けさせた。
【0148】
複数パラメーター評価スケールを開発して、疾患補正および研究の継続中の処置に対する応答を評価した。マウスを、振戦、姿勢、毛の質、把持、角膜薄濁、および歩行/運動の組み合わせの評価に基づきスコアを割り当てられた(図5)。臨床スコアシステムを、既に記載された方法(例えば、Burkholderら、Curr Protoc Mo
use Biol、2012年6月、2:145~65頁;Tumpeyら、J Virol、1998年5月、3705~10頁;およびGuyenetら、J Vis Exp、2010年5月、39;1787頁を参照のこと)に基づき適合させた。AAV.hSGSHを投与した、オス(図6A)とメス(図6B)両方のMPS IIIaマウスについて、臨床スコアが改善した。
【0149】
本研究におけるMPS IIIaマウスの認知の改善および不安の補正を、オープンフィールド(すなわち、例えば、Tatemら、J Vis Exp、2014年、(91):51785頁において記載されるビームブレイク測定)および上昇した十字路迷路(例えば、WalfおよびFrye、Nat Protoc、2007年、2(2):322~328頁において記載される)における運動を評価することにより、評価した。ビームブレイクアッセイの結果は、AAV.hSGSHを投与したMPS IIIaマウスが、30分後に、対照マウスと匹敵する活性レベルを有したことを示した(図7)。高い迷路試験の結果は、開放空間により誘導された恐怖に対する減少した感受性/不安、およびAAV.hSGSHを受けたMPS IIIaマウスにおいて最高であったことを示した(図8A)。さらに、オープンアームへの進入の頻度の測定は、AAV.hSGSHを投与したMPS IIIaマウスが、探索するそのままの好奇心および覚醒を有したことを示唆する(図8B)。
【0150】
神経行動学的検査後、マウスを安楽死させ、それらの器官を試料採取して、脳における酵素活性およびリソソーム貯蔵補正を調べる。
【0151】
概して、これらの長期研究の結果は、AAV.hSGSH処置が、MPS IIIaマウスにおいて、健康状態を改善し、正常な認知行動を回復させ得ることを示唆する。
【0152】
実施例4:アカゲザルにおける薬理学/毒性学研究
実験を行い、2回用量のAAV.hSGSHのくも膜下腔内投与の安全性および周囲の免疫抑制を評価する。
【0153】
対照物質を、群1における2匹のマカク(1匹のオスおよび1匹のメス)に後頭下穿刺を介して投与する。試験物質(AAV.hSGSH)を、群2~5に無作為化した12匹のアカゲザルに後頭下穿刺を介して投与する。群2におけるマカクは、AAV.hSGSHを高用量にて(N=3);群3におけるマカクは、AAV.hSGSHを低用量にて(N=3);ならびに群4および5におけるマカクは、免疫抑制剤投与計画に置き、それぞれ、高用量または低用量のAAV.hSGSHを受ける(N=3/群)。血液および脳脊髄液を、一般的な安全性パネルの一部として集める。血清および抹消血単核細胞(PBMC)を集めて、カプシドおよび導入遺伝子に対する体液性および細胞性免疫応答を調べる。
【0154】
ベクター投与の90±3日後での、これらの研究の存命フェーズの終了後、マカクを剖検し、総合的な病理組織学的調査のため組織を回収した。リンパ球を、脾臓、および骨髄から回収して、剖検時のこれらの器官におけるCTLの存在を調べる。
【0155】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報は、配列を含むフリーテキストについて数値識別子<223>下で提供される。
【0156】
【表1-1】
【表1-2】
【0157】
本明細書において引用される全ての刊行物は、2017年11月30日付けで出願された、米国仮特許出願第62/593,081号であるように、参照により全体が本明細書に取り込まれる。同様に、本明細書において言及され、添付の配列表において現れる配列番号は、参照により取り込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して記載される一方、修飾が、本発明の精神から逸脱することなく成され得ることは理解される。かかる修飾は、添付の請求の範囲内にあることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
【配列表】
0007389744000001.app