(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】可変バルブの作動
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
F01L13/00 301J
(21)【出願番号】P 2020550692
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 IB2019052219
(87)【国際公開番号】W WO2019180611
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】102018000003742
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514319984
【氏名又は名称】エフピーティー モーターエンフォーシュング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェッズラー、ハラルド
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510874(JP,A)
【文献】特表2004-522065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0152769(US,A1)
【文献】実開昭60-192204(JP,U)
【文献】特開2008-223517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変バルブ機構(VVA)であって、
カム(CS)と、
前記カムの回転により引き起こされる閉鎖位置と開放状態との間で変位するのに適したバルブ(V)と、
支点(F)上で揺動するのに適したメインロッカーアーム(MA)と、
備え、
前記メインロッカーアーム(MA)は、ガイドプロファイル(WV)を介して前記バルブ(V)と機械的に相互作用し、
前記カムは、前記メインロッカーアームとスライド式に又は回転式に相互作用することで、前記メインロッカーアームの揺動の結果として前記バルブの変位を生じさせ、
前記可変バルブ機構は、
前記支点を前記カムに対して相対的に移動させるように配置された調整手段(SPT,PT)
により得られ、
前記カム(CS)は、前記メインロッカーアームと直接相互作用し、
前記支点が可動であり、
前記支点は、油圧回路のサポートピストン(SPT,PT)により支持されていて、
ピストン(SPT)は、前記ピストンにより特定されるチャンバ(CH1)内に配置されたスプリング(STS)により、完全膨張に向かって予め付勢されており、
前記油圧回路は、分機管(BC)を介して前記チャンバ(CH1)に接続されたオイルアキュムレータ(ACC)を備え、
ソレノイドバルブ(SV)が、前記チャンバ(CH1)と前記オイルアキュムレータ(ACC)との間を行き来して流れるオイルを制御するように、前記オイルアキュムレータ(ACC)に配置されている、
可変バルブ機構(VVA)。
【請求項2】
前記ガイドプロファイルは、前記揺動の結果として
ランプ(傾斜)の変位を規定するようにスパー(SPUR)が設けられた円周弧の形状として形成されている、
請求項1に記載の
可変バルブ機構。
【請求項3】
前記メインロッカーアームは、前記カム(CS)に向かって押され又は押し付けられるためにホームスプリング(SP)により予め付勢されている、
請求項2に記載の
可変バルブ機構。
【請求項4】
前記ホームスプリングは、前記支点(F)上に取り付けられたスパイラルである、又は前記メインロッカーアームと
前記可変バルブ機構を含むエンジンのヘッドの固定点との間に介在されたスプリングである、
請求項3に記載の
可変バルブ機構。
【請求項5】
前記メインロッカーアームは、前記バルブと直接的に相互作用する、又はいわゆる
フィンガーフォロワ構成を規定する補助ロッカーアーム(SA)を用いて間接的に相互作用する、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の
可変バルブ機構。
【請求項6】
前記サポートピストン(PT)が、対向する2つのチャンバ(CH1,CH2)を規定している複動ピストンであり、
当該複動ピストンが、前記対向するチャンバの一方(CH1)に配置されたスプリング(STS)により、完全膨張に向かって予め付勢されており、
ソレノイドバルブ(SV)が、前記対向するチャンバを短絡させるように配置されている、
請求項1に記載の
可変バルブ機構。
【請求項7】
前記サポートピストン(SPT,PT)は、前記メインロッカーアームに対して前記カム(
CS)とは反対の位置に配置されている、
請求項1又は6に記載の
可変バルブ機構。
【請求項8】
ホームスプリング(SP)は、前記メインロッカーアームと固定点との間に介在されるとき、前記メインロッカーアームに対して前記サポートピストン(SPT、PT)と同じ側に配置される、
請求項7に記載の
可変バルブ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月19日に出願された伊国特許出願第102018000003742号の優先権を主張し、その開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0002】
本発明は、特に、重工業用車両の分野における、可変バルブ機構(可変動弁)装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ロストモーションVVAシステムが、当業者に良く知られている。
【0004】
ロストモーションVVAシステムは、通常、マスターピストンとスレーブピストンとの間の油圧リンクの変動により制御される。マスターピストンは、例えばカムにより機械的に(物理的に接触して)駆動され、スレーブピストンは、油圧リンクを介してマスターピストンにより(油圧的に)駆動される。油圧リンクは、ピストン間の流体(通常はエンジンオイル)を排出してバルブリフトプロファイルを変えることにより変動し得るが、ランプ(傾斜)を有する完全なカムプロファイルにはもはや追従しなくなるため、エンジンバルブ閉鎖の制御が妨げられることになる。
【0005】
適切な着座速度を実現するためには、これら全ての油圧オプションにバルブブレーキシステム(バルブキャッチ)が必要である。
【0006】
しかし、この解決方法は最適でない。なぜなら、ブレーキ作用が常に存在し、これにより、VVAを画成している構成要素が、関連する力及びエンジンノイズの増大の影響を受けるからである。さらなる欠点は、バルブで発生した力を支える油圧リンクにより、バルブトレインの剛性が低下することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の主な目的は、少なくとも代替的な方法で上述の問題/欠点を解決でき、具体的には、バルブブレーキシステムを実装せずにバルブ着座をバルブ作動の変動中にもガイドできる可変バルブ機構(VVA)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主な原理は、支点上で振動し、バルブステムと直接的に(或いは二次ローラロッカーアームを介して間接的に)スライド式ガイドプロファイルによりスライド式に相互作用するメインロッカーアームを導入することであり、自身の軸を中心に回転するのに適したカムが、前記メインロッカーアームと機械的又は油圧的に、すなわち、直接的又は間接的に相互作用する。さらに、前記メインロッカーアームの導入により、バルブトレインの剛性が向上する。
【0009】
前記メインロッカーアームは、前記メインロッカーアームを「ホーム」ポジションに向かって押すメインスプリングにより付勢されている。
【0010】
前記油圧相互作用は、メインピストン及びスレーブピストンを含む油圧回路により実現され得る。
【0011】
オイルアキュムレータが油圧回路に接続され得る。
【0012】
本発明の説明において、「機械的相互作用」とは、剛性の構成要素間の物理的接触を意味し、前記剛性の構成要素が、前記バルブの作動を前記カムシャフトから前記バルブステムに伝達するための、前記剛性の構成要素間での直接的な相互作用を画成している。一方、「油圧相互作用」とは、剛性の2つの構成要素、例えば、マスターピストンとスレーブピストン(液体、通常はエンジンオイルに作用する)間の間接的な相互作用を意味する。
【0013】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、前記支点は固定されており、前記カムシャフトと前記メインロッカーアームとの前記相互作用は、油圧作動による油圧式である。
【0014】
本発明の第2の好ましい実施形態によれば、前記支点は油圧構成により可動であり、前記カムシャフトと前記メインロッカーアームとの前記相互作用は機械的である。
【0015】
前記第1実施形態及び第2実施形態の各々に関し、2つのサブ実施形態を、オイルアキュムレータを有し又は有さない以下の詳細な説明に開示する。
【0016】
いずれにせよ、本発明によれば、前記メインロッカーアームのプロファイルが前記カムのプロファイルをバルブリフトに変換する。前記カムシャフトとの運動学的相互接続が失われた場合、油圧リンク又は油圧アセンブリからの一時的なオイル放出により、メインスプリングが前記メインロッカーアームを動作させ、これにより、前記バルブに、前記メインロッカーアームの前記プロファイルにより制御されるガイド付き運動をさせる。
【0017】
前記プロファイルのおかげで、バルブブレーキが回避される。なぜなら、前記メインロッカーアームの前記支点が変位するか、又は、前記油圧アクチュエータからオイル放出された場合でも、前記バルブが前記メインロッカーアームプロファイルに従って動かなければならないからである。
【0018】
エンジンバルブからの力は、主に前記メインロッカーアームの前記支点により支えられる。従って、本発明のシステムは、長時間のヘビーデューティーな動作においても剛性及び耐久性が向上されることを示す。
【0019】
デコンプレッション中のバルブ力は非常に高いため、システムの剛性を高めることがエンジンブレーキングにとって特に重要である。
【0020】
有利なことに、最終ロッカー比を、前記メインロッカーアームの前記プロファイルにより、及び、アーム間の比を変更することにより調整できる。当該アームとは、
-第1の距離、すなわち、前記支点と平均ガイドプロファイルとの間の距離、及び、
-第2の距離、すなわち、前記カムシャフトとの直接的又は間接的な相互作用点と前記支点との間の距離、である。
【0021】
バルブラッシュが、特には二次ローラロッカーアームが実装されている場合に調整され得る。実際、この場合、前記メインロッカーアームの動作が前記二次ロッカーアームのローラに伝達される。前記二次ロッカーアームは、前記バルブステムと接触している第1端と、ラッシュアジャスタによりガイドされる反対端とを有する。ラッシュアジャスタは、機械的に調整されるラッシュアジャスタであっても、或いは、自動ラッシュ油圧アジャスター(HLA)であってもよい。
【0022】
すなわち、前記メインロッカーアームは、通常のカムのように回転するのではなく、振動に適したセカンダリカムとして機能する。
【0023】
これらの及びさらなる目的は、本明細書の不可欠な部分を形成する、本発明の好ましい実施形態を記載している添付の特許請求の範囲により達成される。
【0024】
本発明は、添付図面を参照しつつ読まれるべき、単なる例示的で非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明から完全に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】固定された支点を有するメインロッカーアームを備えた、本発明の第1実施形態の概略図である。
【
図2】固定された支点を有するメインロッカーアームを備えた、本発明の第2実施形態の概略図である。
【
図3】可動支点を有するメインロッカーアームを備えた、本発明の第3実施形態の概略図である。
【
図4】可動支点を有するメインロッカーアームを備えた、本発明の第4実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図中の同一の参照番号及び文字は、同一の又は機能的に同等の部品を示す。
【0027】
本発明によれば、用語「第2の要素」は「第1の要素」の存在を意味しない。「第1」「第2」などは、説明の明確性の向上のためにのみ使用され、これらの用語は限定的に解釈されるべきではない。
【0028】
本発明のシステムは、少なくともバルブVの運動を指令する2つ以上のこぶ状部(ハンプ)1,2,3を有するカムCSを備えている。
【0029】
全ての図によれば、カムシャフトCSは、そのプロファイルにより、メインロッカーアームMAの運動を決定する。
【0030】
図1によれば、メインロッカーアームMAはアンカー(錨)の形状である。細長いアームが、支点Fに固定的に関連付けられた第1端と、第1端の反対側の第2端とを有し、第2端は、ガイドプロファイルWVを画成している円周弧に関連付けられている。
【0031】
カムシャフトは、メインロッカーアームの細長いアームと、支点とガイドプロファイルWVとの間の中間点R2にて相互作用する。
【0032】
ガイドプロファイルWVは、バルブステムと直接的に相互作用する。これは、例えば、バルブステムVSに二次ローラRSを設けることによる。或いは、ガイドプロファイルWVは、フィンガーフォロアとして知られている補助ロッカーアームSAを介してバルブステムVSと間接的に相互作用し得る。
【0033】
フィンガーフォロアは2つの対向端SA1及びSA2を有する。第1端はバルブステムの自由端と接触しており、第2端SA2はHLA(すなわちラッシュアジャスタ)により支持されている。ラッシュアジャスタはエンジンシリンダのヘッドの固定部分により支持されている。中間位置において、ローラRSが補助ロッカーアームに関連付けられて、メインロッカーアームのガイドと機械的に(物理的に)相互作用する。
【0034】
本明細書における全ての実施形態によれば、カムCSの回転軸、支点F、ローラRSの回転軸は互いに平行であり、且つ、シートに対して垂直である。
【0035】
二次ロッカーアーム自体は公知である。二次ロッカーアームは、2つの対向端SA1とSA2を有する細長い要素である。
【0036】
第1端SA1はバルブステムVSと機械的に接触している。一方、第2端SA2はラッシュアジャスタと動作的に接触している。ラッシュアジャスタは、機械式又は油圧式のHLAであり得る。油圧式タイプは、好ましくはエンジンオイルで満たされており、バルブラッシュを自動的に調整する。
【0037】
二次アームの中間位置に二次ローラRSが配置されている。
【0038】
二次ローラRSはガイドプロファイルWVと直接接触しているため、メインロッカーアームがカムシャフトの命令下で振動すると、二次ローラはメインロッカーアームのガイドプロファイルWVに従って動く。
【0039】
二次ローラRSが必須ではないことを理解されたい。従って、ローラRSが存在する場合、ガイドプロファイルWVとバルブV又はフィンガーフォロアSAとの相互作用は、スライド式又は回転式であり得る。
【0040】
本発明によれば、ガイドプロファイルは、メインロッカーアームの揺動が、開口プロファイルに関するランプ(傾斜)を画定するように形作られる。
【0041】
カムCSのプロファイルがメインロッカーアームの回転角度及び速度を画定する。メインロッカーアームの角度位置が、ランププロファイルを介して、フィンガーフォロアSAでのローラRSの運動に変換される。
【0042】
最後に、二次ロッカーアーム比がバルブリフトを画定する。
【0043】
バルブリフトは、カムプロファイル、アームL1/L2に関するアンカー比、アンカーガイドプロファイルWV、及び、フィンガーフォロアの形状寸法に依存する。
【0044】
アンカー比は、L1とL2との距離の比率であり、
・L1:支点Fからガイドプロファイルまでの第1の細長い要素の全長、
・L2:支点Fから、油圧リンクが作用する中間点R2までの距離、である。
【0045】
図1、
図3、及び
図4の例によれば、メインロッカーアームがアンカー形状である場合、このようなガイドプロファイルは、アンカー形状を画成している円周弧の片側から突出している一種のスパー(蹴爪状部)SPURにより得られる。
【0046】
図2の例によれば、ガイドプロファイルは、外周から突出している一種のこぶ状部により得られる。しかし、概念は変わっていない。より詳細に関しては以下に説明する。
【0047】
図1の例に戻ると、運動は、カムシャフトCSからメインロッカーアームの中間点R2に、マスターピストンMPT及びスレーブピストンSPTを含む油圧相互接続部により伝達される。油圧相互接続部HIは、シリンダの対向端にスライド可能に関連付けられているマスターピストンMPTとスレーブピストンSPTの2つのピストンを備えたシリンダの形状であり得る。
【0048】
マスターピストンは、ローラR1によりカムシャフトCSと動作的に接触している。スレーブピストンは、マスターピストンに油圧により関連付けられており、メインロッカーアームの中間点R2と物理的に接触している。
【0049】
従って、カムシャフトのプロファイルが、油圧リンクHIを介してメインロッカーアームMAに間接的に伝達される。
【0050】
油圧相互接続部HIの膨張が、メインロッカーアームの角度位置を、カムコマンドに対するアセンブリの応答を変化させることにより変化させる。
【0051】
従って、油圧相互接続部HIの膨張が大きくなるとバルブリフトがより大きくなる。逆に、膨張が小さくなるとバルブリフトが小さくなる。
【0052】
メインロッカーアームMAはスプリングSPにより付勢される。スプリングSPは、メインロッカーアームの支点に動作可能に取り付けられ得るか(
図1又は
図2を参照)、或いは、対応する内燃機関のヘッドの固定点と、メインロッカーアームの一部との間に、メインロッカーアームをスレーブピストンSPTに向かって押すために介在され得る(
図3又は
図4を参照)。
【0053】
オイルアキュムレータACCが、マスターピストンMPTとスレーブピストンSPTとの間で油圧相互接続部/リンクHIに、分岐管BCを介して油圧接続されている。
【0054】
高速ソレノイドバルブSVが、アキュムレータと上記の油圧相互接続部/リンクとの間に介在された分岐管上に配置されている。
【0055】
このような高速ソレノイドバルブSVは、マスターピストンとスレーブピストンとの間に閉じ込められた高圧オイルの放出を制御し、それにより可変バルブの運動を可能にするように構成されている。高圧オイルはアキュムレータ内に放出されて、油圧相互接続部/リンクHIの迅速な補充を可能にする。
【0056】
マスターピストンMPTとスレーブピストンSPTとの油圧相互接続が常にオイルを流出するため、チェックバルブV1及びV2は、それぞれ、油圧相互接続部HI及びアキュムレータを、対応する内燃機関のオイル回路のメインギャラリーに接続し、これにより、無負荷時間ウィンドウ中の回路の前記油圧部分にオイル補充する。
【0057】
好ましくは、別のチェックバルブV3がバルブSVと並列に配置されてバルブSVをバイパスし、アキュムレータからの油圧相互接続部HIのオイル補充を、ソレノイドバルブSVが閉じているときでも可能にする。ソレノイドバルブと逆止弁とを並列に実装することは、当業者によく知られている一般的な方法である。
【0058】
有利には、バルブは、メインロッカーアームにより画成されたガイドプロファイルを介して、油圧接続HIの状態とは無関係に所定の軌道を辿るようになっている。従って、バルブは常にランププロファイルにより駆動される。
【0059】
図2に開示されている解決方法は
図1の解決方法に類似している。
【0060】
メインロッカーアームとスレーブピストンとが1つの構成要素に統合されている。
【0061】
メインロッカーアームは、相補的ハウジングHOに挿入された円形の回転可能なアクチュエータを画成している。
【0062】
この回転可能なアクチュエータには、対向する2つのチャンバCH1’とCH2’とを分割する可動隔壁(セプタム)SPTが設けられており、チャンバCH1’及びCH2’に、相補的ハウジングHOにて実現されているような入口IN1と入口IN2を通してオイルが供給される。固定壁FXWが、支点F上で回転可能な複動ピストンを画成しており、メインロッカーアームMAの回転を誘導する。隔壁とメインロッカーアームとは一体になっている。そして、このような入口にオイルが、複動ピストンMPTの対向する2つのチャンバCH1及びCH2により供給される。複動ピストンMPTは、相対シリンダ内で、ピストンの各面がこのような対向チャンバCH1及びCH2の一方内に突き出るように変位可能である。
【0063】
従って、一方の側のチャンバCH1及びCH1’が、反対側のCH2及びCH2’と共に、
図1の実施形態に関して上述した油圧相互接続部HIを画成している。
【0064】
ここで、対向する2つの油圧相互接続部を、HI及びHI’とみなす。
【0065】
オイルが、チャンバCH1’のIN1を通して介してポンプ送出されるとき、チャンバCH1’を膨張させる唯一の方法は、スパーを反時計回りに回転させることである。一方、オイルが対向するチャンバCH2にポンプ送出されるとき、チャンバCH2’を膨張させる唯一の方法は、
図2の図によれば、スパーを時計回りに回転させることである。
【0066】
隔壁が、約270°Cをカバーする固体の厚い壁として開示されていることを理解されたい。しかし、それは薄い壁であってもよく、従って、チャンバCH1’及びCH2’はより大きくなり、回転可能なメインロッカーアームMA内の隔壁と相補的である。
【0067】
図2の実施形態においても、アームL1及びアームL2を認識できる。L1は、
図1の実施形態の場合と同様のものと認識でき、一方、L2は、固定壁FXWの中間点に対応している。
【0068】
(マスター)ピストンMPTは、ローラR1を介して前記シャフトSHに動作可能に関連付けられたカムシャフトCSにより、関連するシャフトを介して指令される。
【0069】
複動(マスター)ピストンMPTの変位が、チャンバCH1(又はCH2)からチャンバCH1’(又はCH2’)へのオイルの流れを決定する。これは、メインロッカーアームMAを、この変位に対応して回転させて、対向するチャンバCH1’及びCH2’により複動スレーブピストンを画成することにより行われる。
【0070】
メインロッカーアームの支点Fに取り付けられている第1スプリングSPが、メインロッカーアームに予め付勢してカムをホームポジションに押し付けている。詳細には、スプリングがMAを反時計回り方向に回転させ、これによりチャンバCH1’が圧縮されて、マスターピストンPTの対応するCH1チャンバが膨張される。この状態がローラR1をカムCSに接触させる。
【0071】
第2スプリングSTSが、複動(マスター)ピストンPTを予め付勢して、ピストンPTのシャフトSHとカムシャフトとの常時接触を維持する。
【0072】
図1においては、アンカー形状の半円周と組み合わされたスパーが上述のガイドを画成しているが、この2番目の例においては、ガイドプロファイルは、カムのような形状のメインロッカーアームの外周から突出しているこぶ状のスパーSUPRにより画成されていることに留意されたい。
【0073】
このガイドプロファイルWVは
図1に類似しており、同じバルブ変位を生じる。
【0074】
いずれにせよ、第1実施形態及び第2実施形態において、支点を覆うか、又は、対応する内燃機関のヘッドの固定点とメインロッカーアームの一部との間に介在されたスプリングSPは、「ホームポジション」に到達するように、すなわち、ガイドプロファイルをローラRSに対して適切に位置決めするように配置されている。
【0075】
図2に開示されているこの第2の実施形態(メインロッカーアームが特定の実現形態であるだけでなく、複動スレーブピストンも実装されている)は、
図1の第1実施形態とは異なり、アキュムレータを有さない。
【0076】
この実施形態においては、ソレノイドバルブSVが、複動ピストンMPTの上述の対向するチャンバCH1とCH2とを短絡するために実装されている。高速ソレノイドバルブSVの作用により、オイルを一方のチャンバから他方のチャンバに、又はその逆方向に迅速に移動できる。
【0077】
第1実施形態と同様に、チェックバルブV1及びチェックバルブV2が、対応する内燃機関のオイル回路のメインギャラリーからチャンバCH1及びCH2に選択的にオイル補充するために実装されている。
【0078】
図3及び
図4は、
図1及び2に開示した駆動装置の代わりに、油圧リンクにより与えられた「融通性」がピボットポイントに実装されている構成を示している。こうして、メインロッカーアームの第1端(ガイドプロファイルWVを画成している端とは反対側)が、第1チャンバCH1に関連付けられたスレーブピストンSPTに回転可能に接続されており、スプリングSTSが、ピストンSPSをその最大伸長に向かって押すように配置されている。
【0079】
この実施形態において、油圧サポートSPTの膨張/収縮により、メインロッカーアームとカムSCとの間の往復位置が変化する。これにより、メインロッカーアームの角度位置が、カムコマンドに対するアセンブリの応答を変化させることにより変化する。
【0080】
これらの実施形態は、より効率的である。なぜなら、カムとメインロッカーアームとの相互作用が、中間油圧リンクがなく直接的であり、従って、オイルが、支点の移動をもたらすトリガーイベントでのみ流れて、リフトプロファイルのカットが達成されるからである。
【0081】
上述の実施形態とは対照的に、カムシャフトは、直接、すなわち物理的に、メインロッカーアームMA(好ましくは、
図1に開示したようなアンカーの形状でつくられる)の中間点R1と相互作用する。
【0082】
図3は、オイルアキュムレータACCを含む解決方法を開示しており、ピストンPTRがスプリングSTSRにより付勢されて、オイルをメインロッカーアームの支点Fの油圧サポートに向けて圧縮する。油圧サポートは、チャンバCH1を画成しているシリンダと、シリンダから出るピストンSPTとを含んでいる。ピストンの出現部分に、メインロッカーアームMAがヒンジ連結されている。
【0083】
スプリングSTSがチャンバCH1に収容されて、ピストンを予付勢している。
図1と同様に、高速ソレノイドバルブSVが分岐管BC上に配置されて、アキュムレータと油圧リンクのチャンバCH1とを接続している(この実施形態においては、油圧リンクがメインロッカーアームMAの支点を支持している)。従って、ソレノイドバルブが開くと、ピストンSPTに作用する力が増大し、ピストンSPTをシリンダの外側に押し出す。
【0084】
油圧サポートCH1、SPTはメインロッカーアームの一方の第1の側に配置されており、一方、カムCSはメインロッカーアームの第2の側に、前記第1の側に対向して配置されている。従って、油圧サポートの膨張が大きくなるとバルブリフトが大きくなる。逆に、膨張が小さくなるとバルブリフトが小さくなる。
【0085】
油圧サポートCH1、SPT、及びカムCSが同じ側に配置されている場合には、油圧サポートの距離が小さいほどバルブリフトが大きくなり、その逆も同様である。
【0086】
この実施形態においても、チェックバルブV1及びV2は、アキュムレータと支点の油圧サポートのチャンバCH1にそれぞれオイル補充するための補充バルブとして配置されている。この実施形態においても、V3は、ソレノイドバルブSVが閉じている場合でもアキュムレータからのオイル補充を可能にするためにソレノイドバルブSVと並列に配置されたバイパスバルブである。さらに、バイパスバルブV3は、チャンバCH1の、アキュムレータへの過圧排出を可能にする。
【0087】
図4は、本発明の第4実施形態を開示しており、支点Fが可動である
図3の実施形態の特徴と、
図2の油圧アクチュエータの特徴を混合しており、この実施形態は、油圧アクチュエータが、アキュムレータを実装せずにメインロッカーの支点の動きを生じさせるように実行される。
【0088】
詳細には、メインロッカーアームMAは、対向する2つのチャンバCH1及びCH2に面する複動ピストンPTのワンピースのシャフトSHにヒンジ連結されている。既に開示したように、高速ソレノイドバルブが、前記チャンバCH1とCH2とを短絡するように配置され、バルブV3が高速ソレノイドバルブと並列に配置されて、所定の油圧閾値を超えたときに、チャンバ間をオイルが高速ソレノイドバルブの状態とは独立に流れることを可能にしている。
【0089】
バルブV1及びバルブV2は、エンジンのメインギャラリーからチャンバCH1及びチャンバCH2にオイル補充するように配置されている。
【0090】
支点の油圧サポートとカムCSとが、メインロッカーアームの対向する側に配置されている。
【0091】
スプリングSPが、メインロッカーアームとエンジンヘッドの固定点との間に配置されて、メインロッカーアームを所定の「ホームポジション」に押し付けている。
【0092】
上記の実施形態1~実施形態4の説明から、油圧アクチュエータが、メインロッカーアームの揺動動作を変更するために、又は、メインロッカーアームとカムCSの間の中間要素として、若しくは、メインロッカーアームの支点をシフトするために実装されることが明らかである。
【0093】
第1実施形態及び第2実施形態と、第3実施形態及び第4実施形態との比較から、以下のことが明らかである。すなわち、最初の2つの実施形態によれば、ローラRSは、ガイドプロファイルWVにより画成された、カムシャフト指令の幾分かの増幅が含まれる軌道を辿ることを強制される。これとは異なり、次の2つの実施形態によれば、ガイドプロファイルにより画成されるランプ(傾斜)は、支点の運動に従う可変の傾きを有する。
【0094】
油圧接続部又は油圧サポートにより、カムCSを備えたメインロッカーアームの相対運動が誘発される。これにより、追加のこぶ状部2,3の有効化/無効化が可能になる。例えば、本発明が排気バルブに実装される場合、このようなこぶ状部が、内部EGR(排ガス再循環)及び/又はリチャージハンプ(2)並びにエンジンブレーキプロファイル(3)を可能にし得る。
【0095】
本発明が吸気弁に使用される場合、追加のこぶ状部が内部EGRを可能にする。
【0096】
一般に、アキュムレータの存在は、システムの迅速な再充填に有用である(
図1及び
図3)。V1及びV2が漏出を補償する。V3は、トリガーバルブへのバイパスバルブであり、オイルの、ベースシステムの位置の方向への流れのみを可能にする。
【0097】
従って、
図4を
図3と比較すると、
図3は、アキュムレータを有さないシステムの良い例を示している。オイルがピストンPTの一方の側から他方側に移動する場合、オイルを保管するアキュムレータは必要ない。保管は、迅速な補充及び損失の低減のための短距離を確保するために必要なのである。アキュムレータは低圧側にあるため、補充以外にパフォーマンスに直接的な影響を与えない。
【0098】
本明細書により、可変バルブ機構を、カムCSとメインロッカーアームMAとの相互作用に関して、又はメインロッカーアーム支点の位置に関して説明してきた。しかし、両方の解決方法を同時に実装して、システムの応答性を向上させることが可能である。
【0099】
本発明の多くの変更、修正、変型例及びその他の使用及び用途は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の好ましい実施形態を開示した明細書及び添付図面を検討すれば、当業者に明らかになるであろう。
【0100】
先行技術に開示されている特徴は、本発明のより良好な理解のためにのみ紹介されており、公知の先行技術の存在についての宣言として記載したのではない。また、前記特徴は本発明の文脈を規定するため、これらの特徴は、詳細な説明と共通して考慮されるものとする。
【0101】
当業者は本発明を、上記の説明の教示から出発して実行できるため、さらなる実施の詳細は説明しない。
【符号の説明】
【0102】
1,2,3 こぶ状部(ハンプ)
ACC オイルアキュムレータ
BC 分岐管
CS カムシャフト
F 支点
HI 油圧相互接続部
MA メインロッカーアーム
MPT マスターピストン
PT ピストン
R2 中間点
SA フィンガーフォロア
R1 ローラ
RS 二次ローラ
SP ホームスプリング
SPT スレーブピストン
STS スプリング
SPUR スパー
SV ソレノイドバルブ
V バルブ
VS バルブステム
VVA 可変バルブ機構
WV ガイドプロファイル