(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】熱処理された塩化マグネシウム成分を有するチーグラー-ナッタ触媒系
(51)【国際特許分類】
C08F 4/658 20060101AFI20231122BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C08F4/658
C08F10/02
(21)【出願番号】P 2020564453
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 US2019033706
(87)【国際公開番号】W WO2019231815
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ミングズ
(72)【発明者】
【氏名】バートン、デビッド、ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゼコーン、カート、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】オナム、サデカ
(72)【発明者】
【氏名】ニキアス、ピーター、エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ハイチ、アンドリュー、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、トーマス、エイチ.
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513629(JP,A)
【文献】特表2017-513734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/、10/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一なプロ触媒であって、
チタン種と、
構造A(Cl)
x(R
1)
3-xを有する塩素化剤であって、ここで、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
R
1は、(C
1~C
30)ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、塩素化剤と、
熱処理された塩化マグネシウム成分と、を含み、
前記不均一なプロ触媒が、
溶媒中に分散された塩化マグネシウムのスラリーを不活性雰囲気中で150~500℃の温度で0.5~240時間熱処理することと、
前記チタン種および前記塩素化剤を前記熱処理された塩化マグネシウムと組み合わせることと、の生成物を含み、
前記塩素化剤対MgCl
2
成分のモル比(塩素化剤:MgCl
2
成分)が、3:40~14:40であり、
前記チタン種対MgCl
2
成分のモル比(チタン種:MgCl
2
成分)が、0.5:40~5:40である、不均一なプロ触媒。
【請求項2】
不均一なプロ触媒であって、
チタン種と、
構造A(Cl)
x
(R
1
)
3-x
を有する塩素化剤であって、ここで、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
R
1
は、(C
1
~C
30
)ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、塩素化剤と、
熱処理された塩化マグネシウム成分と、を含み、
前記不均一なプロ触媒が、
前記チタン種および前記塩素化剤を溶媒中に分散された塩化マグネシウムのスラリーと組み合わせて、プロ触媒スラリーを生成することと、
前記プロ触媒スラリーを
不活性雰囲気中で150~500℃の温度で
2~240時間熱処理することと、による生成物を含
み、
前記塩素化剤対MgCl
2
成分のモル比(塩素化剤:MgCl
2
成分)が、3:40~14:40であり、
前記チタン種対MgCl
2
成分のモル比(チタン種:MgCl
2
成分)が、0.5:40~5:40である、不均一なプロ触媒。
【請求項3】
VX
4、VOX
3、またはVO(OR
2)
3から選択されるバナジウム種をさらに含み、ここで、各Xは、独立してハロゲン原子または(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビルアニオンであり、R
2は、(C
1~C
20)ヒドロカルビルまたは-C(O)R
11であり、R
11は、(C
1~C
30)ヒドロカルビルである、請求項
1または2に記載の不均一なプロ触媒。
【請求項4】
前記不均一なプロ触媒におけるバナジウム対チタンの比
(チタン/バナジウム)が、20(モル/モル)
以下である、請求項
3に記載の不均一なプロ触媒。
【請求項5】
前記不均一なプロ触媒におけるバナジウム
種対塩化マグネシウムのモル比
(バナジウム種/塩化マグネシウム)が、0.10(モル/モル)
以下である、請求項
3または4に記載の不均一なプロ触媒。
【請求項6】
エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスであって、触媒系の存在下で、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを接触させて、エチレン系ポリマーを生成することを含み、前記触媒系が、請求項
1~5のいずれかに記載の不均一なプロ触媒と、アルミニウムのアルキル、アルミニウムのハロアルキル、ハロゲン化アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、アルカリ金属水素化アルミニウム、アルカリ金属水素化ホウ素、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ土類金属水素化物から選択される任意選択的な助触媒と、を含む、プロセス。
【請求項7】
プロ触媒を作製するためのプロセスであって、
少なくとも溶媒中に分散された塩化マグネシウム
(MgCl
2
)を含む、塩化マグネシウムスラリーを
不活性雰囲気中で150~500℃の処理温度で
0.5~240時間熱処理することと、
塩素化剤およびチタン種を前記塩化マグネシウムスラリーと組み合わせることであって、前記塩素化剤が、構造A(Cl)
x(R
1)
3-xを有し、ここで、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
R
1は、(C
1~C
30)ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、組み合わせることと、を含
み、
前記塩素化剤対MgCl
2
成分のモル比(塩素化剤:MgCl
2
成分)が、3:40~14:40であり、
前記チタン種対MgCl
2
成分のモル比(チタン種:MgCl
2
成分)が、0.5:40~5:40である、プロセス。
【請求項8】
プロ触媒を作製するためのプロセスであって、
少なくとも溶媒中に分散された塩化マグネシウム(MgCl
2
)、塩素化剤、およびチタン種含む、塩化マグネシウムスラリーを不活性雰囲気中で150~500℃の処理温度で2~240時間熱処理することであって、前記塩素化剤が、構造A(Cl)
x
(R
1
)
3-x
を有し、ここで、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
R
1
は、(C
1
~C
30
)ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、熱処理することを、を含み、
前記塩素化剤対MgCl
2
成分のモル比(塩素化剤:MgCl
2
成分)が、3:40~14:40であり、
前記チタン種対MgCl
2
成分のモル比(チタン種:MgCl
2
成分)が、0.5:40~5:40である、プロセス。
【請求項9】
バナジウム種を前記塩化マグネシウム、チタン種、および前記塩素化剤と組み合わせることをさらに含む、請求項
7または8に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/679,305号の利益を主張し、これは参照によってその全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、オレフィン重合に有用なチーグラー-ナッタ触媒に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、増加した分子量および高密度画分を有するエチレ系ポリマーを生成するためのチーグラー-ナッタ触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンポリマーは、最も一般的なプラスチックのうちの1種であり、ポリマーの構造に応じて様々な様式、例えば、袋/ライナ、キャップ/クロージャ、衛生フィルム、工業用射出成形などで使用され得る。毎年約8000万トンのエチレン系ポリマーが生成されていると推定されている。ポリエチレン業界では、ポリマー製品の大幅かつ継続的な差別化が必要であるため、研究者らは、多大な努力を注いで、そのような新たな製品をもたらすプロセスの変更を探してきた。
【0004】
例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの多くのポリエチレンポリマーおよびコポリマーの場合、エチレンは、一般に短鎖オレフィンコモノマー(例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、および/または1-オクテン)と共重合される。結果として得られたポリエチレンポリマーは実質的に線形であるが、かなりの数の短い枝が含まれており、これらの特性により、低密度ポリエチレン(LDPE)よりも高い引張強度、高い衝撃強度、および高い耐パンク性が得られる。これらの改善された特性は、次に、減少した厚さ(ゲージ)のフィルムを吹き飛ばすことができ、フィルムが改善された環境応力亀裂耐性を示すことを意味する。LLDPEは、その靭性、柔軟性、および相対的な透明性により、主にフィルム用途で使用される。製品の例は、農業用フィルム、食品保護ラップ、気泡緩衝材から、多層フィルムおよび複合フィルムまで多岐にわたる。
【0005】
チーグラー-ナッタ触媒は、LLDPEを含む様々なポリエチレンの生成に長年使用されてきた。これらの触媒は、一般に、ハロゲン化マグネシウム担体および少なくとも1つの遷移金属化合物を含む。これらの触媒は、効果的だが、多くの場合、幅広い多分散性と望ましくないほど広い短鎖分岐分布(SCBD)を有するLLDPE樹脂をもたらす。さらに、チーグラー-ナッタ触媒は、一般に分子量能力に制限がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、新しい、差別化されたエチレン系ポリマー(例えば、LLDPEポリマー)を生成するためのプロセス、触媒組成物、および方法に対する継続的な必要性が存在する。特に、重量平均分子量(Mw)が増加し、高密度画分(HDF)が増加し、コモノマー重量パーセントが減少したエチレン系ポリマーを生成するためのプロセス、触媒組成物、および方法に対する継続的な必要性が存在する。本開示は、不均一なプロ触媒および触媒系ならびにこれらの不均一なプロ触媒および触媒系を利用してエチレン系ポリマーを生成する方法およびプロセスを対象とする。いくつかの実施形態では、不均一なプロ触媒で生成されたエチレン系ポリマーは、同じ反応条件下で比較チーグラー-ナッタ触媒を使用して生成されたエチレン系ポリマーと比較して、MwおよびHDFを増加させ、コモノマー重量パーセントを減少させ得る。いくつかの実施形態では、不均一なプロ触媒は、メルトインデックス比(I10/I2)が低下したエチレン系ポリマーを生成し得る。さらに他の実施形態では、不均一なプロ触媒は、エチレン系ポリマーが調整可能なMwおよびHDFを有することを可能にし得る。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一なプロ触媒は、チタン種および構造A(Cl)x(R1)3-xを有する塩素化剤を含み得、ここで、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、xは、1、2、または3である。不均一なプロ触媒は、熱処理された塩化マグネシウム成分をさらに含み得る。
【0008】
少なくとも別の実施形態によれば、エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスは、触媒系の存在下でエチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンと接触させることを含む。触媒系は、チタン種、熱処理された塩化マグネシウム成分、および構造A(Cl)x(R1)3-xを有する塩素化剤を含む不均一なプロ触媒を含み得、ここで、Aは、アルミニウムまたはホウ素、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、xは、1、2、または3である。
【0009】
さらに他の実施形態によれば、プロ触媒を生成するためのプロセスは、塩化マグネシウムスラリーを少なくとも100℃の処理温度で少なくとも30分間熱処理することを含み得る。塩化マグネシウムスラリーは、溶媒中に分散された少なくとも塩化マグネシウム(MgCl2)を含み得る。プロ触媒を作製するためのプロセスは、塩素化剤およびチタン種を塩化マグネシウムスラリーと組み合わせることをさらに含み得、塩素化剤は、構造A(Cl)x(R1)3-xを有し、ここで、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、xは、1、2、または3である。
【0010】
追加の特徴および有益性は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の「発明を実施するための形態」、および特許請求の範囲を含む本明細書に開示された実施形態を実践することによって認識されるであろう。上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられる用語「ホモポリマー」、および2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0012】
「エチレン系ポリマー」とは、50重量%超のエチレンモノマーから誘導された単位を含むポリマーを意味する。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーから誘導される単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のエチレン系ポリマーの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(ultra low density)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(very low density)ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度樹脂と実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」とは、溶液重合を実施する容器であり、エチレンモノマーが、任意選択的にコモノマーと、触媒を含有する非反応性溶媒に溶解された後に、重合または共重合する。熱は、溶液重合反応器に、典型的には反応器を1つ以上の熱交換器に結合された後に、除去または追加され得る。溶液重合プロセスでは、水素が利用され得るが、全ての溶液重合プロセスにおいて必要なわけではない。
【0014】
チーグラー-ナッタ触媒は、エチレンおよび1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマーを共重合するための共重合プロセスでエチレン系ポリマーを生成するために一般的に使用される。典型的なチーグラー-ナッタ触媒を使用するこれらの共重合プロセスでは、ポリマーの平均分子量は、重合温度が上昇するにつれて急速に減少する。しかしながら、溶液重合プロセスでの高い重合温度は、生成スループットを向上させ、優れた光学系およびダーツ/引き裂きバランスなどの望ましいポリマー特性を備えたエチレン系ポリマーを生成する。チーグラー-ナッタ触媒の分子量能力を高めると、新製品を生成する能力が拡大し、より高い重合温度での操作が可能になる可能性がある。
【0015】
本開示は、既存のチーグラー-ナッタ触媒と比較して増加した分子量能力を示すチーグラー-ナッタ型の不均一なプロ触媒および触媒系を対象とする。本明細書に開示された触媒系は、不均一なプロ触媒および助触媒を含む。不均一なプロ触媒は、チタン種、熱処理された塩化マグネシウム成分、および塩素化剤を含む。実施形態では、熱処理された塩化マグネシウム成分は、塩化マグネシウムスラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理した生成物であり得、塩化マグネシウムスラリーは、溶媒中に分散された少なくとも塩化マグネシウムを含み、後でより詳細に説明する。熱処理は、塩化マグネシウムの形態を変化し得る。塩化マグネシウムは、塩化マグネシウムに塩素化剤およびチタン化合物を添加する前または後に熱処理され得る。塩化マグネシウムの形態の変化は、不均一なプロ触媒の分子量能力を高め得る。エチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンコモノマーを、本明細書に開示された不均一なプロ触媒および任意選択的に助触媒を含む触媒系と接触させてエチレン系ポリマーを形成することを含む重合プロセスも開示される。熱処理された塩化マグネシウムとともに不均一なプロ触媒を使用して生成されたエチレン系ポリマーは、本明細書に開示されたように、塩化マグネシウムが熱処理されていない比較チーグラー-ナッタ触媒で作製された同等のポリマーと比較して、より大きな重量平均分子量(Mw)、より大きな高密度画分(HDF)、および任意選択的なコモノマーのより少ない含有量を示し得る。
【0016】
不均一なプロ触媒の調製は、塩化マグネシウム(MgCl2)の調製を含み得る。いくつかの実施形態では、MgCl2を調製することは、有機マグネシウム化合物、または有機マグネシウム化合物を含む錯体を金属または非金属塩化物などの塩化物化合物と反応させて反応生成物を形成し、次いで反応生成物を熱処理して熱処理された塩化マグネシウム(MgCl2)成分を形成することを含み得る。有機マグネシウム化合物および/または錯体の例は、これらに限定されないが、マグネシウムC2~C8アルキルおよびアリール、マグネシウムアルコキシドおよびアリールオキシド、カルボキシル化マグネシウムアルコキシド、およびカルボキシル化マグネシウムアリールオキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、マグネシウムC2~C8アルキル、マグネシウムC1~C8アルコキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、ブチルエチルマグネシウムであり得る。
【0017】
有機マグネシウム化合物または複合体は、不活性炭化水素希釈剤などの炭化水素希釈剤に可溶であり得る。炭化水素希釈剤の例は、これらに限定されないが、液化エタン、プロパン、イソブタン、n-ブタン、n-ヘキサン、個々のヘキサン異性体またはこれらの混合物、イソオクタン、5~20個の炭素原子を有するアルカンのパラフィン混合物、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロヘキサン、ドデカン、ケロセンおよび/またはナフタなどの飽和または芳香族炭化水素から構成される工業用溶媒、ならびにこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、炭化水素希釈剤は、オレフィン化合物および他の不純物を実質的に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、成分を「実質的に含まない」という用語は、組成物が0.1重量%未満の成分(例えば、不純物、化合物、元素など)を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、炭化水素希釈剤は、約-50℃~約200℃の範囲の沸点を有し得る。いくつかの実施形態では、炭化水素希釈剤は、イソパラフィン系溶媒を含み得る。イソパラフィン系溶媒の例は、これらに限定されないが、ExxonMobileから入手可能なISOPAR(商標)合成パラフィン溶媒(例えば、ISOPAR(商標)パラフィン系溶媒)およびShell Chmicalsから入手可能な特殊沸点(SBP)溶媒(例えば、SBP 100/140高純度脱芳香族炭化水素溶媒)を含み得る。炭化水素希釈剤の他の例は、エチルベンゼン、クメン、デカリン、およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、MgCl2を調製するプロセスは、有機マグネシウム化合物を炭化水素希釈剤に分散させて溶液またはスラリーを形成することを含み得る。炭化水素希釈剤中の有機マグネシウム化合物の濃度は、過剰量の溶媒を使用することなく塩化マグネシウムの効率的な生成を提供するのに十分であり得る。有機マグネシウム化合物の濃度は、溶液またはスラリーが合成中および合成後に適切に混合/撹拌または流体輸送されないほど高くてはならない。炭化水素希釈剤中に分散された有機マグネシウム化合物の溶液またはスラリーを塩化物と接触させて、MgCl2を生成し得る。塩化物化合物は、金属または非金属の塩化物であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、塩化物化合物は、塩酸塩ガスであり得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物および塩化物化合物の溶液またはスラリーは、-25℃~100℃、または0℃~50℃の温度で接触され得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物および金属または非金属塩化物の溶液またはスラリーは、1時間~12時間、または4時間~6時間の時間接触され得る。
【0019】
塩化物化合物と有機マグネシウム化合物との反応は、未処理のMgCl2を生成し得る。未処理のMgCl2は、炭化水素希釈剤中に分散された複数のMgCl2粒子を含むMgCl2スラリーの形態であり得る。いくつかの実施形態では、未処理のMgCl2スラリーは、炭化水素希釈剤中に分散された複数のMgCl2粒子からなるか、または本質的にそれからなり得る。いくつかの実施形態において、MgCl2スラリーは、0.05モル/L~10.0モル/L、0.1~5.0モル/L、または約0.2モル/LのMgCl2の濃度を有し得る。
【0020】
未処理のMgCl2スラリーは、未処理のMgCl2スラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理して、炭化水素希釈剤中に分散された熱処理されたMgCl2成分を生成することによってさらに処理され得る。MgCl2スラリーの熱処理は、MgCl2スラリーに塩素化剤およびチタン種を添加する前または後に実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、炭化水素希釈剤に分散されたMgCl2粒子を含むMgCl2スラリーは、塩素化剤およびチタン種を添加する前に、100℃以上、120℃以上、130℃以上、150℃以上、または190℃以上の温度で熱処理され得る。いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーは、100℃~500℃、100℃~300℃、100℃~200℃、120℃~500℃、120℃~300℃、120℃~200℃、130℃~500℃、130℃~300℃、130℃~200℃、150℃~500℃、150℃~300℃、150℃~200℃、190℃~500℃、または190℃~300℃の温度で熱処理され得る。いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーは、熱処理中に2つ以上の異なる温度で熱処理され得る。
【0021】
MgCl2スラリーは、熱処理されたMgCl2成分を生成するために30分(0.5時間)以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、または10時間以上の時間熱処理され得る。例えば、いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーは、熱処理されたMgCl2成分を生成するために0.5時間~240時間、0.5時間~120時間、0.5時間~48時間、0.5時間~24時間、1時間~240時間、1時間~120時間、1時間~48時間、1時間~24時間、2時間~240時間、2時間~120時間、2時間~48時間、2時間~24時間、3時間~240時間、3時間~120時間、3時間~48時間、3時間~24時間、6時間~240時間、6時間~120時間、6時間~48時間、6時間~24時間、10時間~240時間、10時間~120時間、10時間~48時間、または10時間~24時間の時間熱処理され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーを熱処理することは、MgCl2スラリーを撹拌することを含み得る。MgCl2スラリーの撹拌は、MgCl2スラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理すると同時に実施され得る。いくつかの実施形態では、MgCl2スラリーは、最大1000回転/分(rpm)、最大100rpm、1rpm~1000rpm、または1rpm~100rpmの速度で撹拌され得る。いくつかの実施形態では、MgCl2を熱処理することは、不活性雰囲気中でMgCl2を熱処理することを含み得る。不活性雰囲気は、MgCl2または不均一なプロ触媒の他の成分と反応しない化合物および/またはガスから本質的になる雰囲気を指す。例えば、MgCl2の熱処理は、例えば、MgCl2と反応しない窒素またはアルゴンなどの不活性ガスの存在下で実行され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、MgCl2を熱処理することは、炭化水素希釈剤中に分散されたMgCl2粒子からなるMgCl2スラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理することを含み得る。「からなる(consisting of)」および「からなる(consists of)」という句は、組成物または方法を列挙された成分または方法の工程および任意の天然に存在する不純物に限定する閉じた移行句として使用される。他の実施形態では、MgCl2を熱処理することは、炭化水素希釈剤中に分散された本質的にMgCl2粒子からなるMgCl2スラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理することを含み得る。「本質的にからなる(consisting essentially of)」および「本質的にからなる(consists essentially of)」という句は、組成物または方法を列挙された構成要素または方法の工程、ならびに特許請求される主題の新しい特徴に実質的に影響を及ぼさない任意の列挙されていない構成要素または方法の工程に限定する部分的に閉じた移行句であることが意図されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、熱処理されたMgCl2成分は、以前に開示されたように調製されたMgCl2スラリーを熱処理した生成物であり得る。熱処理されたMgCl2成分は、炭化水素希釈剤中に分散され、熱処理から変化した形態を有するMgCl2粒子を含み得る。理論に拘束されることを意図するものではなく、MgCl2成分を熱処理すると、MgCl2粒子の表面形態および表面積が変化し得ると考えられる。熱処理されたMgCl2の表面形態の結果として生じる変化は、オレフィンを重合するための不均一なプロ触媒の活性を変更し、不均一なプロ触媒の重合挙動ならびに結果として生じるポリマーの分子量を変え得る。いくつかの実施形態では、熱処理後、熱処理されたMgCl2は、50平方メートル/g(m2/g)~1000m2/g、100m2/g~1000m2/g、200m2/g~1000m2/g、または400m2/g~1000m2/gの平均表面積を有し得る。いくつかの実施形態では、熱処理されたMgCl2は、150m2/g~400m2/g、または約200m2/gの平均表面積を有し得る。
【0025】
不均一なプロ触媒を調製することは、熱処理されたMgCl2成分を塩素化剤と接触させることをさらに含み得る。塩素化剤は、構造式A(Cl)x(R1)3-xを有し得、ここで、Aは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、およびテルルからなる群から選択される元素であり、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビル、xは、1、2、または3である。いくつかの実施形態では、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり得る。いくつかの実施形態では、塩素化剤は、三塩化アルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、三塩化エチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、二塩化ヘキシルアルミニウム、ジ-n-ヘキシルアルミニウムクロリド、n-オクチルアルミニウムジクロリド、ジ-n-オクチルアルミニウムクロリド、ボロントリクロリド、フェニルボロンジクロリド、ジシクロヘキシルボロンクロリド、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、クロロトリメチルシラン、エチルトリクロロシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン、n-プロピルトリクロロシラン、ジクロロジ(n-プロピル)シラン、クロロトリ(n-プロピル)シラン、イソプロピルトリクロロシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、クロロトリイソプロピルシラン、n-ブチルトリクロロシラン、ジクロロジ(n-ブチル)シラン、クロロトリ(n-ブチル)シラン、イソブチルトリクロロシラン、ジクロロジイソブチルシラン、クロロトリイソブチルシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、ジクロロジシクロペンチルシラン、n-ヘキシルリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロジシクロヘキシルシラン、またはこれらの組み合わせから選択され得る。
【0026】
熱処理されたMgCl2成分は、熱処理されたMgCl2成分を調整するのに十分な条件下で塩素化剤と接触させ得る。熱処理されたMgCl2成分は、0℃~50℃、0℃~35℃、25℃~50℃、25℃~35℃の温度で塩素化剤と接触させ得る。熱処理されたMgCl2成分は、1時間~144時間、1時間~72時間、1時間~24時間、1時間~12時間、4時間~144時間、4時間~72時間、4時間~24時間、4時間~12時間、6時間~144時間、6時間~72時間、6時間~24時間、または6時間~12時間の時間塩素化剤と接触させ得る。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではなく、熱処理されたMgCl2成分を塩素化剤と接触させることによって熱処理されたMgCl2成分を調整することは、例えば熱処理されたMgCl2成分へのチタン種などの追加の金属の吸着を促進または増強し得ると考えられる。いくつかの実施形態では、不均一なプロ触媒における熱処理された塩素化剤対MgCl2成分のモル比は、3:40~14:40、3:40~12:40、6:40~14:40、または6:40から12:40であり得る。
【0027】
次いで、塩素化剤によって調整された熱処理されたMgCl2成分をチタン種と接触させて、不均一なプロ触媒を生成し得る。チタン種は、助触媒で活性化されたときにプロ触媒に組み込まれた後、触媒活性を有する任意のチタン化合物またはチタン錯体であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、チタン種は、ハロゲン化チタン、チタンアルコキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、チタン種は、TiCl4-c(OR)cまたはTiCl3-d(OR)dであり、ここで、Rは、C1~C20)ヒドロカルビルであり、cは、0、1、2、3、または4であり、dは、0、1、2、または3である。例えば、いくつかの実施形態では、チタン種は、これらに限定されないが、四塩化チタン(IV)、三塩化チタン(III)、二塩化ジエトキシチタン(IV)、二塩化ジイソプロポキシチタン(IV)、ジ-n-ブトキシチタン(IV)二塩化物、ジイソブトキシチタン(IV)二塩化物、クロロトリイソプロポキシチタン(IV)、トリ-n-ブトキシチタン(IV)クロリド、クロロトリイソブトキシチタン(IV)、チタン(IV)テトライソプロポキシド(Ti(OiPr)4)、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)n-ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)2-エチルヘキサキシド、ジクロロビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタネジオナト)チタン(IV)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタネジオナト)チタン(III)、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)チタン(IV)、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)チタン(III)、メチルチタン(IV)トリクロリド、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、チタン種は、チタン(IV)四塩化物またはチタン(IV)テトライソプロポキシド(Ti(OiPr)4)であり得る。
【0028】
塩素化剤によって調整された熱処理されたMgCl2成分は、チタン種の少なくとも一部をMgCl2成分に吸着するのに十分な条件下でチタン種と接触させ得る。例えば、いくつかの実施形態では、熱処理されたMgCl2成分は、0℃~50℃、0℃~35℃、25℃~50℃、または25℃~35℃の温度でチタン種と接触させ得る。いくつかの実施形態では、熱処理されたMgCl2成分は、0.5時間~72時間、0.5時間~24時間、0.5時間~12時間、0.5時間~6時間、3時間~72時間、3時間~24時間、3時間~12時間、6時間~72時間、6時間~24時間、または6時間~12時間の時間チタン種と接触させ得る。いくつかの実施形態では、不均一なプロ触媒は、0.5:40~5:40、0.5:40~3:40、1.5:40~5:40、または1.5:40~3:40の不均一なプロ触媒におけるチタン種対熱処理されたMgCl2成分のモル比を含み得る。
【0029】
以前に開示されたように、いくつかの実施形態では、未処理のMgCl2スラリーは、塩素化剤およびチタン種をMgCl2スラリーに添加した後に熱処理して、熱処理されたMgCl2成分を生成し得る。例えば、いくつかの実施形態では、不均質なプロ触媒を調製することは、未処理のMgCl2スラリーを調製することと、未処理のMgCl2スラリーを塩素化剤と接触させて、塩素化剤によって調整された未処理のMgCl2スラリーを生成することと、塩素化剤によって調整された未処理のMgCl2スラリーをチタン種と接触させて、前処理された不均一なプロ触媒を生成することと、前処理された不均一なプロ触媒を熱処理して、熱処理されたMgCl2成分、塩素化剤、およびチタン種を含む不均一なプロ触媒を生成することと、を含み得る。前処理された不均一なプロ触媒は、チタン種および塩素化剤によって調整された未処理のMgCl2スラリーの混合物を指す。次いで、前処理された不均一なプロ触媒は、少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理されて、熱処理されたMgCl2成分を有する不均一なプロ触媒を生成し得る。いくつかの実施形態では、前処理された不均一なプロ触媒は、100℃以上、120℃以上、130℃以上、150℃以上、または190℃以上の温度で熱処理され得る。いくつかの実施形態では、前処理された不均一なプロ触媒は、100℃~500℃、100℃~300℃、100℃~200℃、120℃~500℃、120℃~300℃、120℃~200℃、130℃~500℃、130℃~300℃、130℃~200℃、150℃~500℃、150℃~300℃、150℃~200℃、190℃~500℃、または190℃~300℃の温度で熱処理され得る。
【0030】
前処理された不均一なプロ触媒は、熱処理されたMgCl2成分を有する不均一なプロ触媒を生成するために30分(0.5時間)以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間、または10時間以上の時間熱処理され得る。例えば、いくつかの実施形態では、前処理された不均一なプロ触媒は、0.5時間~240時間、0.5時間~120時間、0.5時間~48時間、0.5時間~24時間、1時間~240時間、1時間~120時間、1時間~48時間、1時間~24時間、2時間~240時間、2時間~120時間、2時間~48時間、2時間~24時間、3時間~240時間、3時間~120時間、3時間~48時間、3時間~24時間、6時間~240時間、6時間~120時間、6時間~48時間、6時間~24時間、10時間~240時間、10時間~120時間、10時間~48時間、または10時間~24時間の時間熱処理され得る。いくつかの実施形態では、塩素化剤およびチタン種をMgCl2スラリーに添加した後、前処理された不均一なプロ触媒を熱処理することは、以前に開示されたように、熱処理中に前処理された不均一なプロ触媒を撹拌することを含み得る。いくつかの実施形態では、前処理された不均一なプロ触媒を熱処理することは、不活性雰囲気中で実行され、熱処理されたMgCl2成分、塩素化剤、およびチタン種を含む不均一なプロ触媒を生成し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、不均一なプロ触媒は、バナジウム化合物を含み得る。不均一なプロ触媒へのバナジウム化合物の組み込みは、不均一なプロ触媒が狭い分子量分布(MWD)を有するエチレン系ポリマーを生成することを可能にし得、これは、同じ反応条件下でバナジウム化合物を含まない比較触媒を使用して生成されたポリマーと比較して、減少した多分散性指数(PDI)および減少したメルトフロー比I10/I2が7以下、または6.5以下に反映され得る。バナジウム種を不均一なプロ触媒に含めることにより、不均一なプロ触媒によって生成されるエチレン系ポリマーの高密度画分をバナジウム種のタイプおよび/または量を変更することによって調整することも可能になり得る。
【0032】
バナジウム種は、触媒活性を有するバナジウム種であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、バナジウム種は、これらに限定されないが、ハロゲン化バナジウム、オキソハライドバナジウム、オキソアルコキシドバナジウム、またはこれらの組み合わせを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、バナジウム種は、VX4、VOX3、またはVO(OR2)3から選択され得、ここで、各Xは、独立してハロゲン原子または(C1~C40ヘテロヒドロカルビル)であり、R2は、(C1~C20)ヒドロカルビルまたは-C(O)R3であり、R3は、(C1~C30)ヒドロカルビルである。1つ以上の実施形態では、R2およびR3は、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、ノニル、またはデシルから選択され得る。いくつかの実施形態では、R2が-C(O)R3であるとき、R3は、3-ヘプチルである。いくつかの実施形態では、バナジウム種は、塩化バナジウム(IV)、オキシ三塩化バナジウム(V)(VOCl3)、オキシトリメトキシドバナジウム(V)、オキシトリエトキシドバナジウム(V)、オキシトリイソプロポキシドバナジウム(V)、オキシトリブトキシドバナジウム(V)、オキシトリイソブトキシドバナジウム(V)、オキシプロポキシドバナジウム(V)(VO(OnPr)3)、酢酸バナジル、ステアリン酸バナジウム(IV)、オクタン酸バナジウム、およびこれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、バナジウム種は、不均一なプロ触媒に添加され得る。いくつかの実施形態では、バナジウム種は、前処理された不均一なプロ触媒または塩素化剤によって調整されたMgCl2スラリーに添加され得る。いくつかの実施形態では、不均一なプロ触媒は、0.1:40~8:40、0.1:40~4:40、0.2:40~5:40、または0.2:40~4:40の不均一なプロ触媒におけるバナジウム種対MgCl2のモル比を有し得る。
【0033】
以前に開示されたプロセスのいずれかによって調製された不均一なプロ触媒は、助触媒と組み合わせて、触媒系を生成し得る。助触媒は、アルミニウムのアルキルまたはハロアルキル、アルミノキサン、アルキルアルミニウムアルコキシド、ハロゲン化アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、アルカリ金属水素化アルミニウム、金属アルキル、アルカリ金属水素化ホウ素、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物などの少なくとも1つの有機金属化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、助触媒は、有機アルミニウム化合物であり得る。いくつかの実施形態では、助触媒は、アルミニウムのアルキル、アルミニウムのハロアルキル、ハロゲン化アルキルアルミニウム、およびこれらの混合物から選択され得る。いくつかの実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、ジエチルアルミニウムエトキシド、およびこれらの混合物から選択され得る。先で考察されるように、触媒系は、不均一なプロ触媒および助触媒を含み得る。触媒系の調製は、不均一なプロ触媒を助触媒と接触させることを含み得る。
【0034】
不均一なプロ触媒および助触媒の反応からの触媒系の形成は、重合反応器に入る直前、または重合前に、その場で(例えば、反応器内の適所で)実行され得る。このように、不均一なプロ触媒および助触媒の組み合わせは、多種多様な条件下で行われ得る。そのような条件は、例えば、窒素、アルゴンまたは他の不活性ガスなどの不活性雰囲気下で、0℃~250℃、0℃~200℃、15℃~250℃、15°~200℃、15℃~50℃、または150℃~250℃の温度で不均一なプロ触媒および助触媒と接触させることを含み得る。触媒反応生成物(すなわち、触媒系)の調製では、炭化水素可溶性成分を炭化水素不溶性成分から分離する必要はない。重合反応前の不均一なプロ触媒と助触媒との間の接触時間は、0分超~10日、0分超~60分、0分超~5分、0.1分~5分、0.1分~2分、または1分~24時間であり得る。これらの条件の様々な組み合わせは、使用され得る。いくつかの実施形態では、触媒系は、0.5:1~50:1、3:1~20:1、3:1~15:1、3:1~10:1、3:1~8:1、5:1~20:1、5:1~15:1、5:1~10:1、8:1~20:1、または8:1~15:1の不均一なプロ触媒における助触媒対チタン種のモル比を有し得る。
【0035】
不均一なプロ触媒および助触媒を含む触媒系は、オレフィンを重合するための重合または共重合プロセスで使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、触媒系を重合または共重合プロセスで利用して、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および/または他のエチレン系ポリマーなどのエチレン系ポリマーを作製し得る。いくつかの実施形態では、重合または共重合プロセスは、エチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンコモノマーを、不均一なプロ触媒および任意選択的に助触媒を含む触媒系と接触させて、エチレン系ポリマーを形成することを含み得る。オレフィン重合/共重合反応は、反応媒体中で実行され得る。反応媒体は、イソパラフィン系溶媒、脂肪族炭化水素、またはこの開示で以前に開示された他の炭化水素希釈剤のいずれかなどの炭化水素希釈剤であり得る。オレフィン重合/共重合プロセスは、不均一なプロ触媒および助触媒を含む触媒系の存在下で、オレフィンまたはオレフィンの組み合わせを反応媒体と接触させることを含み得る。条件は、重合反応を開始および維持するのに適したものであり得る。いくつかの実施形態では、例えば水素などの分子量調節剤はまた、望ましくない高分子量を有するポリマー分子の形成を抑制するために、反応容器内に存在し得る。
【0036】
任意のエチレン重合または共重合反応系は、本明細書に開示された触媒系を使用してエチレン系ポリマーを生成するため使用され得る。そのような反応系は、これらに限定されないが、スラリー相重合プロセス、溶液相重合プロセス、気相重合プロセス、およびこれらの組み合わせを含み得る。重合または共重合プロセスは、1つ以上の従来の反応器を使用して実施され得、その例は、これらに限定されないが、ループ反応器、撹拌槽型反応器、流動床反応器、並列もしくは直列のバッチ反応器、および/またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、直列、並列、またはこれらの組み合わせの2つ以上の反応器で実施され得る。他の実施形態では、重合プロセスは、単一の反応器で実施され得る。重合プロセスは、バッチ重合プロセスまたは連続重合プロセスであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、重合プロセスは、撹拌槽型反応器で実行され得るバッチ重合プロセスであり得る。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、連続溶液重合反応器で実行される重合反応など、連続的であり得る。他の実施形態では、重合プロセスは、2つ以上の重合工程を含み得る。これらの実施形態では、本明細書に開示された不均一なプロ触媒を含む触媒系は、任意の1つ以上の重合ステップに使用され得る。
【0037】
本明細書に開示された不均一なプロ触媒を利用する重合/共重合プロセスから生成されるポリマーは、エチレン、プロピレン、または4-メチル-1-ペンテンなどのC2~C20アルファ-オレフィンのホモポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された不均一なプロ触媒を使用する重合プロセスからのポリマーは、エチレンまたはプロピレンと少なくとも1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマーとのコポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、エチレンと上記のC3~C20アルファーオレフィン、ジオレフィンのうちの少なくとも1つとのコポリマーなどのエチレン系ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、コモノマーは、20個以下の炭素原子を有するα-オレフィンコモノマーであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、α-オレフィンコモノマーは、3~20個の炭素原子、3~10個の炭素原子、または3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーは、これらに限定されないが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択されるα-オレフィンコモノマーを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示された触媒系を使用して生成されるエチレン系ポリマーは、エチレンモノマー単位および1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはこれらの組み合わせから選択されるコモノマー単位のコポリマーであり得る。
【0038】
本明細書に開示された触媒系を利用する重合/共重合プロセスでは、重合は、選択されたα-オレフィンモノマー(例えば、エチレンおよび/または1つ以上のα-オレフィンコモノマー)を含む重合反応器に不均一な触媒を含む触媒系の触媒量を添加すること、またはその逆によって行われる。重合反応器は、50℃~300℃の温度に維持され得る。例えば、いくつかの実施形態では、重合反応器は、50℃~230℃、50℃~200℃、100℃~300℃、100℃~230℃、100℃~200℃、または60℃~120℃の温度に維持され得る。いくつかの非限定的な実施形態では、反応物、触媒系、またはその両方は、重合反応器内で5分~4時間、5分~20分、または0.5時間~4時間の滞留時間を有し得る。より長いまたはより短い滞留時間が、代替的に使用され得る。一般に、湿気および酸素の非存在下で、触媒系の存在下で重合を実行することが望ましい。触媒系の量は、エチレン系ポリマーの所望の生産性(例えば、収率)を提供するのに十分であり得るが、触媒系の量が法外な費用がかかるほど多くはない。しかしながら、最も有利な触媒濃度は、温度、圧力、溶媒、および触媒毒の存在などの重合条件に依存することが理解される。
【0039】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、150~3,000psig(1.0~20.7MPa)、250~1,000psig(1.7~6.9MPa)、または450~800psig(3.1~5.5MPa)の圧力などの比較的低い圧力で実行され得る。しかしながら、本明細書に開示された触媒系を使用する重合/共重合は、大気圧から重合装置の能力(例えば、圧力定格)によって判定される圧力までの圧力で実行され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、不活性有機希釈剤、過剰のモノマー、またはその両方であり得る担体を含み得る。ポリマーによる担体の過飽和は、一般に、重合/共重合プロセス中に回避され得る。触媒系が枯渇する前にポリマーによる担体のそのような飽和が起こる場合、触媒系の完全な効率は、実現されない可能性がある。いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、担体/希釈剤中のポリマーの量を、ポリマーの過飽和濃度よりも低い濃度に維持するのに十分な条件で操作され得る。例えば、いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、反応混合物の総重量に基づいて、担体/希釈剤中のポリマーの量を30重量パーセント(重量%)未満に維持するのに十分な条件下で操作され得る。いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、温度制御を維持し、重合ゾーン全体にわたる重合反応の均一性を高めるために、反応混合物を混合または撹拌することを含み得る。比較的活性な触媒とのより迅速な反応などのいくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、希釈剤が含まれる場合、還流モノマーおよび希釈剤を含み得、それにより、反応熱の少なくとも一部を除去する。いくつかの実施形態では、熱伝達装置(例えば、熱交換器、冷却ジャケット、または他の熱伝達手段)は、重合の発熱の少なくとも一部を除去するために提供され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスに加えられる反応混合物は、反応器の安定性を維持し、触媒効率を高めるのに十分な量のエチレンモノマーを含み得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1:2~1:8、1:2~1:5、1:3~1:8、または1:3~1:5の希釈剤対エチレンモノマーのモル比を有し得る。いくつかの実施形態では、過剰のエチレンモノマーの一部を重合プロセスから排出して、反応器内のエチレンモノマーの濃度を維持し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、反応中に水素ガスを反応混合物と接触させることを含み得る。水素ガスは、エチレン系ポリマーの分子量を低減するために、ならびにエチレン系ポリマーの超高分子量分子の形成を低減するように動作可能であり得る。水素ガスが導入されるいくつかの実施形態では、反応混合物中の水素ガスの濃度は、モノマー1モル当たり0.001モル~1モルの水素に維持され得、ここで、モノマーは、エチレンモノマーおよび任意の任意選択的なα-オレフィンコモノマーを含む。水素は、モノマーストリームとともに、別個の水素供給ストリームとして、またはその両方で重合反応器に添加することができる。水素は、モノマーを重合反応器に添加する前、最中、および/または後に重合反応器に添加され得る。いくつかの実施形態では、水素は、触媒系の添加前または添加中に添加され得る。いくつかの実施形態では、重合/共重合プロセスは、水素ガスを導入することなく実行され得る。
【0043】
結果として得られるエチレン系ポリマーは、未反応のモノマー、コモノマー、希釈剤、またはその両方を追い出すことによって、重合混合物から回収され得る。いくつかの実施形態では、不純物のさらなる除去は必要とされない可能性がある。結果として得られるエチレン系ポリマーは、少量の触媒残留物を含み得る。結果として得られるポリマーは、さらに溶融スクリーニングされ得る。例えば、エチレン系ポリマーは、押出機で溶融され、次いで、2μm~約400μmのミクロン保持サイズを有する、複数の直列に位置付けられた1つ以上の活性スクリーンを通過し得る。溶融スクリーニング時に、エチレン系ポリマーの質量流量は、で5ポンド/時/in2~約100ポンド/時/in2であり得る。
【0044】
本明細書に開示された不均一なプロ触媒および触媒系の増加した分子量能力は、重合/共重合プロセスがより高いプロセス温度で実施されることを可能にし得、これにより、より低いプロセス温度で作製されたポリマーと比較して、重合/共重合プロセスがより高い生成スループットで速度光学特性および/またはダーツ衝撃/引き裂きバランス(すなわち、ダーツ衝撃性能とエチレン系ポリマーの引き裂き性能との間のバランス)などの改善された特性を有するエチレン系ポリマーを生成することを可能にし得る。さらに、本明細書に開示された触媒系は、二峰性ポリマーの生成のために分子触媒系とともに使用され得、本明細書に開示された触媒系は、高分子量および低コモノマー含量のポリマー成分を生成する。
【0045】
エチレン系ポリマーは、1つ以上のα-オレフィンコモノマーに由来する50重量パーセント未満の単位を含み得る。50重量パーセント未満からの全ての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ開示されている。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、5重量%以下、または3重量%以下の1つ以上のα-オレフィンコモノマーに由来する単位を含み得る。エチレン系ポリマーは、エチレンに由来する少なくとも50重量パーセント(重量%)の単位を含み得る。少なくとも50~100重量%の全ての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、70重量%~100重量%、80重量%~100重量%、85重量%~100重量%、90重量%~100重量%、95重量%~100重量%、またはさらには97重量%~100重量のエチレン由来の単位を含み得る。
【0046】
本明細書に開示された触媒系を使用して生成されるエチレン系ポリマーは、他のポリマーおよび/または添加剤などの追加の成分をさらに含み得る。添加剤の例は、これらに限定されないが、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、充填剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、Ciba Geigyから入手可能なIRGAFOS(商標)168およびIRGANOX(商標)1010酸化防止剤などの酸化防止剤を使用して、エチレン系ポリマー組成物を熱および/または酸化分解から保護し得る。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.0重量%~10.0重量%、0.0重量%~7.0重量%、0.0重量%~5.0重量%、0.0重量%~3.0重量%、0.0重量%~2.0重量%、0.0重量%~1.0重量%、またはさらには0.0重量%~0.5重量%のそのような添加剤を含むエチレン系ポリマー組成物の総重量に基づく添加剤を含み得る。
【0047】
本明細書に開示された触媒系を使用して生成されるエチレン系ポリマーは、特定の実施形態では、LLDPEだけでなく、高密度ポリエチレン(HDPE)、プラストマー、中密度ポリエチレン、およびポリプロピレンコポリマーを含む多種多様な製品に含まれ得る。これらおよび他の用途のために、エチレン系ポリマーの平均分子量および高密度画分の増加により、全体的な品質が向上することを示す物品が調製され得る。ポリマーの有用な形成操作は、これらに限定されないが、フィルム、シート、パイプ、および繊維の押出および共押出を含み得、かつブロー成形、射出成形、および回転成形が実行され得る。フィルムは、共押出または積層によって形成されたインフレーションまたはキャストフィルムを含み得、収縮フィルム、クリングフィルム、延伸フィルム、封止フィルム、配向フィルム、軽食包装、重包装袋、食料品袋、焼成および冷凍食品包装、医療用包装、工業用ライナ、農業用フィルム用途、ならびに、例えば、食品接触および非食品接触用途における膜として有用であり得る。繊維は、フィルタ、おむつ布地、医療用衣類、およびジオテキスタイルを作製するための織布および不織布の形態で使用するための溶融紡糸、溶液紡糸、およびメルトブロー繊維操作を含み得る。押出物品は、医療用チューブ、ワイヤおよびケーブルのコーティング、ジオメンブレン、および池用ライナを含み得る。成形物品は、ボトル、タンク、大型中空物品、硬質食品容器、および玩具の形態の単層および多層構造を含み得る。
【0048】
試験方法
比表面積
MgCl2担体の比表面積は、ブルナウアー、エメット、テラー(BET)表面積法によって測定された。MicromeriticsによるTristar 3020表面積分析器が使用された。30mLのMgCl2のスラリーは、溶媒を除去するために濾過され、次いで、30mLのヘキサン中に再スラリー化した。結果として得られたスラリーを不活性雰囲気下で再度濾過し、追加のヘキサンで洗浄した。このプロセスを1回繰り返して、MgCl2のフィルタケーキを作製した。残留溶媒を真空下でフィルタケーキから除去した。フィルタケーキは、MicromeriticsによるVac Prep 061で、0.5インチ(1.27cm)のサンプルチューブおよび真空乾燥したMgCl2の試料0.2gをTransealストッパ付きの不活性雰囲気下で管に装填することにより、不活性試料保護用に設計されたTransealストッパを使用してさらに乾燥させた。サンプルチューブは、窒素パージを使用してVac Prep 061ユニットに接続された。Transealストッパを開くことによりサンプルチューブを真空処理し、真空にしたチューブをアルミニウムチューブプロテクター付きの加熱ブロックに配置した。試料をVac Prep 061ユニットの真空下で110℃で3時間乾燥させた。その後、窒素をサンプルチューブに導入した。サンプルチューブをVac Prep 061ユニットから外す前に、乾燥した試料を室温まで冷却して、完全に乾燥した試料を得た。不活性雰囲気下で、完全に乾燥した試料0.1500~0.2000gをチューブフィラーロッド付きのきれいなサンプルチューブに移した。次いで、サンプルチューブをTransealストッパで密封し、表面積測定のためにTristar 3020機器に接続した。データの取得にはQUICKSTART方法を使用した。
【0049】
メルトインデックス
メルトインデックス(I2)は、ASTM D1238に従って、190℃および2.16kgの負荷の条件下で測定される。メルトフローインデックス(I2)は、CEAST 7026またはInstron MF20機器を使用して取得された。機器は、ASTM D1238、方法EおよびNに従った。上記の方法は、190℃および10kgの負荷の条件でのメルトインデックス(I10)を判定するためにも使用された。メルトインデックス(I2)は、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。メルトインデックスI2は、ポリマーの特性評価のために使用された。より高いI2値は、一般に、より低いMwと相関し得る。さらに、メルトインデックス比I10/I2はまた、ポリマーの特性評価のために使用された。より低いI10/I2は、一般に、より狭い分子量分布(MWD)と相関し得る。
【0050】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
クロマトグラフィシステムは、Precision Detectors(現在はAgilent Technologies)二角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された内部IR5赤外検出器(IR5)を備えた、PolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフからなる。全ての光散乱測定について、15度角を測定目的で使用した。オートサンプラのオーブンコンパートメントは、160℃に設定され、カラムコンパートメントは、150℃に設定された。使用したカラムは、3つのAgilent「Mixed B」30cm、20ミクロンの直線状混合床カラムであった。使用したクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入量は、200マイクロリットル(μL)であり、流量は、1.0ミリリットル/分(mL/分)であった。
【0051】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を、摂氏80度(℃)で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。ポリスチレン標準ピーク分子量を、式1(EQU.1)を用いてポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J. Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り):
【数1】
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0052】
第5次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。NIST標準NBS1475が52,000Mwで得られるように、カラム分解能およびバンドの広がり効果を補正するために、Aに対してわずかな調整(約0.415~0.44)を行った。
【0053】
GPCカラムセットの総プレート計数を、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製し、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)エイコサンで行った。プレート計数(式2(EQU.2))および対称性(式3(EUQ.3))を、次の式に従って200マイクロリットル注入で測定した:
【数2】
式中、RVは、ミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅は、ミリリットルであり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
式中、RVは、ミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅は、ミリリットルであり、ピーク最大値は、ピークの最大位置であり、1/10の高さは、ピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークは、ピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークは、ピーク最大値よりも前の保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィシステムのプレート計数は、24,000超であるべきであり、対称性は、0.98~1.22であるべきである。
【0054】
試料は、PolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製された:2mg/mLを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪しながら160℃で2時間溶解した。
【0055】
Mn
(GPC)、Mw
(GPC)、およびMz
(GPC)の計算は、PolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用し、下記の式4~6(EQU.4、EQU.5、およびEQU.6)に従い、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ回収点(i)でベースラインを差し引いたRクロマトグラム、および式1からの点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用したGPC結果に基づいた。
【数4】
【0056】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカ(デカン)を導入した。この流量マーカ(FM)は、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークのRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのRVと一致させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正するために使用した。次いで、デカンマーカピークのいかなる時間変化も、ラン全体の流量(流量(実効))の線形シフトに関連すると仮定した。流量マーカピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカ濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に関して)有効流量を式7(EQU.7)のように計算する。流量マーカピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容可能な流量補正は、実効流量が公称流量の+/-2%以内となるべきものであった。
【数5】
【0057】
IR5検出器比の較正は、ホモポリマー(0SCB/1000個の総C)からおよそ50SCB/1000個の総C(式中、総C=主鎖中の炭素+分岐中の炭素)までの範囲の既知の短鎖分岐(SCB)頻度(
13C NMR法で測定される)の少なくとも10個のエチレン系ポリマー標準(ポリエチレンホモポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマー)を使用して実施した。各標準は、GPC-LALLSによって判定された36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有した。各標準は、GPCによって判定された2.0~2.5の分子量分布(Mw/Mn)を有した。コポリマー標準のポリマー特性の例を表Aに示す。
【表1】
【0058】
「IR5メチルチャネルセンサのベースラインを差し引いた面積応答」対「IR5測定チャネルセンサのベースラインを差し引いた面積応答」の「IR5面積比(または「IR5
メチルチャネル面積/IR5
測定チャネル面積」)」(PolymerCharによって供給される標準フィルタおよびフィルタホイール:Part Number IR5_FWM01はGPC-IR機器の一部として含まれる)を、「コポリマー」標準の各々について計算した。コモノマー重量%対「IR5面積比」の線形回帰は、次の式8(EQU.8)の形態で構築した:
【数6】
各クロマトグラフスライスで判定された分子量によりコモノマー終端(メチル)と有意なスペクトルの重複がある場合、コモノマー重量%データの末端基補正は、終端メカニズムの知識を用いて行うことができる。
【0059】
HDF(高密度画分)の測定
改善されたコモノマー含有量分布(iCCD)分析は、IR-5検出器(PolymerChar、Spain)と二角光散乱検出器モデル2040(Precision検出器、現在はAgilent Technologies)を備えたCrystalization Elution Fractionation機器(CEF)(PolymerChar、Spain)を使用して実行された。検出器オーブン内のIR-5検出器の直前に、10cm(長さ)×1/4インチ(ID)(0.635cm ID)のステンレス鋼に20~27ミクロンのガラス(MoSCi Corporation、USA)を詰めたガードカラムを取り付けた。オルトジクロロベンゼン(ODCB、99%無水グレードまたはテクニカルグレード)を使用した。EMD Chemicalsからシリカゲル40(粒子サイズ0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)を入手した(以前はODCB溶媒の乾燥に使用され得る)。CEF機器は、N2パージ能力を備えたオートサンプラが装備された。ODCBを、使用前に1時間、乾燥窒素(N2)でスパージする。試料調製は、160℃で1時間振盪しながら、オートサンプラを4mg/mLで用いて(特に指定のない限り)行う。注入量は、300μLであった。iCCDの温度プロファイルは、3℃/分で105℃~30℃での結晶化、30℃で2分間の熱平衡(2分間に設定された可溶性画分溶出時間を含む)、3℃/分で30℃~140℃での溶出、であった。結晶化中の流量は、0.0ml/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1つのデータ点/秒で収集された。
【0060】
iCCDカラムには、金でコーティングされたニッケル粒子(Bright 7GNM8-NiS、日本化学工業)が15cm(長さ)×1/4インチ(ID)(0.635cm)のステンレスチューブに詰められた。カラムの充填およびコンディショニングは、参考文献(Cong,R;Parrott,A.;Hollis,C.;Cheatham,M.WO2017/040127A1)によるスラリー法を使用した。TCBスラリーパッキンの最終圧力は、150バールであった。
【0061】
カラム温度較正は、標準物質の線形ホモポリマーポリエチレン(コモノマー含量がゼロ、メルトインデックス(I2)が1.0、多分散度Mw/Mnが従来のゲル浸透クロマトグラフィで約2.6、1.0mg/mL)およびODCB中のエイコサン(2mg/mL)の混合物を使用して実施された。iCCD温度較正は、(1)測定されたエイコサンのピーク溶出温度から30.00℃を差し引いた、温度オフセットとして定義される、遅延体積を計算すること;(2)溶出温度の温度オフセットをiCCD生温度データから差し引くこと、ここで、この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることが留意される;(3)線状ホモポリマーポリエチレンリファレンスが101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲にわたる溶出温度を変換する線形較正直線を作成すること、(4)30℃で等温的に測定された可溶性画分について、30.0℃未満の溶出温度では、参考文献(Cerk and Cong et al.,US9,688,795)に従って3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿されること、の4工程から構成される。
【0062】
iCCDのコモノマー含量対溶出温度は、12の標準物質(エチレンホモポリマーおよびシングルサイトメタロセン触媒で作製されたエチレン-オクテンランダムコポリマー、35,000~128,000の範囲のエチレン当量平均分子量を有する)を使用して構築された。これらの標準物質は全て、4mg/mLで以前に指定したのと同じ方法で分析した。線形回帰を使用したオクテンモル%の関数としての報告された溶出ピーク温度のモデリングにより、R2が0.978である式9(EQU.9)のモデルが得られた。
【数7】
【0063】
樹脂全体に対して、23.0℃~115℃の範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で全てのクロマトグラムを積分するように積分ウィンドウが設定される。樹脂の高密度画分(HDF)の重量パーセントは、次の式10(EQU.10)で定義される。
【数8】
【実施例】
【0064】
本開示の実施形態は、以下の実施例によってさらに明確化される。
【0065】
実施例1A~1F:熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒を使用するエチレン系ポリマーのバッチ共重合。
実施例1A~1F(1A、1B、1C、1D、1E、および1F)では、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合は、熱処理されたMgCl2を含む不均一なプロ触媒を使用して実施された。熱処理されたMgCl2成分を組み込んだ不均一なプロ触媒は、最初にISOPAR(商標)Eパラフィン系溶媒溶液中のブチルエチルマグネシウムを塩酸塩ガスと反応させてMgCl2粒子のスラリーを生成することによりMgCl2粒子を合成することによって調製された。MgCl2スラリーは、湿気および酸素からの汚染を避けるために、窒素パージされたグローブボックスに保管および処理された。MgCl2スラリーを熱処理するために、2LのMgCl2スラリーは、MgCl2が空気または湿気にさらされないように、気密に設計された移送容器を介して5.9リットル(L)の反応器に充填された。N2雰囲気は、反応器ラインのパージおよび分離に使用された。次いで、反応器を加熱ジャケットで190℃に1時間加熱した。反応器の加熱は、約1時間の傾斜時間(室温から190℃まで)で、ステップコントローラによって制御された。指定された加熱時間の後、反応器は、約3時間で室温まで冷却された。加熱プロセス中、反応器の内容物を100rpmで撹拌した。温度の変動は、+/-2℃以内に制御された。反応器が室温に冷却された後、熱処理されたMgCl2を含むスラリーは、空気および/または湿気への暴露を防ぐために気密移送容器を使用してグローブボックスに移送された。
【0066】
次いで、熱処理されたMgCl2を使用して、実施例1A~1Fの不均一なプロ触媒を生成した。N2パージされたグローブボックスにおいて、実施例1A~1Fの不均一なプロ触媒は、二塩化エチルアルミニウム(EADC、Aldrich、ヘキサン中1.0M)(塩素化剤)およびテトライソプロポキシドチタン(TiPT、Aldrich、ISOPAR(商標)E溶媒中0.125M)(チタン種)の次のプロセスに従って熱処理されたMgCl2を含むスラリーへの連続添加によって生成された。各不均一なプロ触媒について、10mLの熱処理されたMgCl2スラリーを、蓋をしたガラスバイアル内で一定の撹拌下で維持した。最初の日に、指定量の1.0M EADC溶液を熱処理されたMgCl2スラリーに添加し、結果として得られたスラリーを一晩撹拌したままにした。2日目に、指定量の0.125M TiPT溶液を加え、結果として得られたスラリーを一晩撹拌したままにした。不均一なプロ触媒は、3日目に使用できるようになった。実施例1A~1Fの各不均一なプロ触媒について、指定された量のEADC溶液およびTiPT溶液、ならびにMgCl2対EADC対TiPtのモル比(MgCl2/EADC/TiPT)は、以下の表1に提供される。
【0067】
実施例1A~1Fの場合、バッチ共重合反応は、2LのParrバッチ反応器内で実行された。反応器は、電気加熱マントルによって加熱され、水を使用して内部蛇行冷却コイルによって冷却された。反応器の底部には、触媒キル溶液(典型的にはBASFからのIRGAFOS(登録商標)有機ホスファイト加工安定剤、BASFからのIRGANOX(登録商標)酸化防止剤、およびトルエンの混合物5mL)が事前に充填されたステンレス鋼ダンプポットに反応器の内容物を空にするためのダンプバルブが取り付けられた。ダンプポットは、連続的なN2パージ下でブローダウンタンクに排出された。共重合および触媒補給に使用された全ての溶媒は、不純物を除去するために精製カラムを通過した。溶媒は、A2アルミナを含む第1のカラム、アルミナ上の還元銅(Q5反応物)を含む第2のカラムの2つのカラムに通過させた。エチレンは、A204アルミナおよび4オングストローム(Å)モレキュラーシーブを含む第1のカラム、Q5反応物を含む第2のカラムの2つのカラムに通過させた。N2は、A204アルミナ、4Åモレキュラーシーブ、およびQ5反応物を含む単一のカラムに通過させた。
【0068】
反応器には、最初に664グラム(g)のISOPAR(商標)E溶媒および134±2gの1-オクテンを別のタンクから充填し、Ashcroft差圧セルを使用してロード設定値まで充填した。溶媒添加後、14.8±0.3mmolの水素を添加し、反応器を190℃に加熱した。次いで、反応温度が反応圧力(すなわち、475psi)に達したときに、56±1gのエチレンが反応器に添加された。重合反応中のさらなるエチレン添加量は、マイクロ-モーション流量計で監視した。
【0069】
実施例1A~1Fの各々について、ある量の不均一なプロ触媒スラリーをピペットで5mLのバイアルに入れ、次いで、18ゲージの針を備えた20mLの注射器に取った。バイアルを溶媒ですすぎ、すすぎ液も注射器に取り込んだ。両端が隔膜で密封されたバイアルを使用して、グローブボックスの外からバッチ反応器に輸送するための注射器にキャップを付けた。さらに、ある量のトリエチルアルミニウムの溶媒中の助触媒溶液(TEA、ISOPAR(商標)E溶媒中の1.00~0.05M溶液)を別の5mLバイアルにピペットで移し、次いで、18ゲージの針を備えた別の20mLの注射器に入れた。実施例1A~1Dの各々について、不均一なプロ触媒スラリーの量は、1.5μmolのTiを含み、助触媒溶液の量は、12.0μmolのTEAを含んでいた。実施例1Eおよび1Fの場合、不均一なプロ触媒の量は2.2μmolのTiを含み、助触媒溶液の量は17.6μmolのTEAを含んでいた。
【0070】
不均一なプロ触媒およびTEA助触媒溶液を別々の注射器に取り、調製後数分以内に注入した。不均一なプロ触媒スラリーおよび助触媒溶液は各々、N2の流れの下で反応器に取り付けられたショットタンクに注入された。不均一なプロ触媒スラリーを2番目に調製したが、最初に注入し、TEA溶液を3回すすいだ(2.5、2.5、5mL)。2つの溶液の混合物をショットタンク内で5分間維持し、反応器の設定値に達した後、次いで、150psiの差圧で反応器に導入した。
【0071】
触媒系(不均一なプロ触媒および助触媒溶液)の注入後、共重合反応を開始して、エチレン系ポリマーを生成した。反応混合物は、溶媒除去のためにステンレス鋼鍋に分析のために収集された。反応器を、140℃~160℃の間の温度で、850gのISOPAR(商標)E溶媒で2回洗浄した。最初の洗浄液を収集し、反応混合物と組み合わせた。実施例1A~1Fの各々について収集されたエチレン系ポリマー試料を一晩風乾して溶媒の大部分を除去し、次いで、N2下の真空オーブンに入れて、捕捉された溶媒をさらに除去した。真空オーブンは、次のことを行うように設計された:5分の窒素フローと40トルまでの真空の間で3回サイクルし、温度を1℃/分で80℃まで上昇させ、真空下で3時間保持し、次いで、140℃まで上昇させ、4時間保持する。次いで、実施例1A~1Fの冷却されたエチレン系ポリマーを、本明細書に開示された試験方法に従って、Mw、メルトインデックス(I2)、HDF重量%について分析した。結果は、以下の表2に提供される。
【0072】
実施例2A~2B:熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒を使用するエチレン系ポリマーのバッチ共重合。
実施例2Aおよび2Bにおいて、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合反応は、190℃で24時間熱処理されたMgCl2を含む不均一なプロ触媒を使用して実施された。MgCl2スラリーは、ISOPAR(商標)E溶媒中のブチルエチルマグネシウムを塩酸塩ガスと反応させて、溶液(希釈剤)中のMgCl2粒子のスラリーを生成することによって最初に生成された。MgCl2スラリーは、湿気および酸素からの汚染を避けるために、窒素パージされたグローブボックスに保管および処理された。実施例2Aおよび2Bの場合、150mLのMgCl2スラリーを、N2パージボックス内の300mLのステンレス鋼Parr反応器に充填し、反応器を密閉した。次いで、Parr反応器をN2パージボックスから取り出し、加熱ジャケットで190℃の温度に加熱し、190℃で24時間維持した。反応器の加熱は、約30分の傾斜時間(室温から190℃まで)で、ステップコントローラによって制御された。指定された加熱時間の後、反応器を約1.5時間で室温まで冷却させた。加熱プロセスの間、反応器の内容物は撹拌することなく静的に保たれた。温度の変動は、+/-2℃以内に制御された。反応器を室温に冷却した後、反応器をパージボックスに戻し、熱処理されたMgCl2を空気および/または湿気にさらすことなく収集した。
【0073】
次いで、熱処理されたMgCl2を使用して、実施例1A~1Fに開示されたプロセスに従って、熱処理されたMgCl2を含むスラリーにEADCおよびTiPTを順次添加することにより、実施例2Aおよび2Bの不均一なプロ触媒を生成した。実施例2Aおよび2Bの不均一なプロ触媒についてのEADC溶液およびTiPT溶液の指定された量、ならびにMgCl2対EADC対TiPtのモル比(MgCl2/EADC/TiPT)は、以下の表1に提供される。
【0074】
実施例2Aおよび2Bの場合、バッチ共重合は、実施例1A~1Fに開示された共重合プロセスに従って、2LのParrバッチ反応器内で実行された。反応条件および反応器パラメータは、反応器に充填された不均一なプロ触媒およびTEA溶液の量を除いて、実施例1A~1Fに開示されたものと同じであった。実施例2Aおよび2Bの場合、不均一なプロ触媒スラリーの充填量は、1.4μmolのTiを含み、助触媒溶液の充填量は、11.2μmolのTEAを含んでいた。実施例2Aおよび2Bのエチレン系ポリマーを収集し、本明細書に開示された試験方法に従って、Mw、メルトインデックス(I2)、およびHDF重量%について分析した。結果は、以下の表2に提供される。
【0075】
比較例CE1およびCE2:非熱的に処理されたMgCl2と不均一なプロ触媒を使用するエチレン系ポリマーのバッチ共重合。
比較例CE1およびCE2では、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合反応は、熱処理を受けていないMgCl2を含む不均一なプロ触媒を使用して実行された。比較例CE1およびCE2のためのMgCl2は、ISOPAR(商標)E溶媒中のブチルエチルマグネシウムを塩酸塩ガスと反応させてMgCl2粒子のスラリーを溶液(希釈剤)に生成することにより、MgCl2粒子を合成することによって調製した。MgCl2スラリーは、湿気および酸素からの汚染を避けるために、窒素パージされたグローブボックスに保管および処理された。比較例CE1およびCE2の場合、MgCl2は、熱処理されなかった。実施例1A~1Fのプロセスに従って、非熱的に処理されたMgCl2スラリーを使用して、EADCおよびTiPTをMgCl2スラリーに順次添加することにより、CE1およびCE2の不均一なプロ触媒を生成した。CE1およびCE2のプロ触媒のEADC溶液およびTiPT溶液の指定量、およびMgCl2対EADC対TiPTのモル比(MgCl2/EADC/TiPT)は、以下の表1に提供される。
【0076】
CE1およびCE2の場合、バッチ共重合は、実施例1A~1Fに開示された共重合プロセスに従って、2LのParrバッチ反応器内で実行された。CE1およびCE2の反応条件および反応器パラメータは、反応器に充填された不均一なプロ触媒およびTEA溶液の量を除いて、実施例1A~1Fに開示されたものと同じであった。CE1およびCE2の場合、不均一なプロ触媒スラリーの充填量(110μL)には1.4μmolのTiが含まれ、助触媒溶液の充填量には11.2μmolのTEAが含まれていた。CE1およびCE2で生成されたエチレン系ポリマーを収集し、本明細書に開示された試験方法に従って、Mw、メルトインデックス(I2)、およびHDF重量%について分析した。結果は、以下の表2に提供される。
【0077】
実施例3:実施例1A~1Fおよび実施例2Aおよび2Bと比較例CE1およびCE2との比較。
次の表1は、実施例1A~1F、2A、および2Bならびに比較例CE1およびCE2の各不均一なプロ触媒の組成パラメータを提供する。表1はまた、実施例1A~1Fおよび実施例2Aおよび2BについてのMgCl
2の熱処理の温度および処理時間を提供する。
【表2】
【0078】
次の表2は、実施例1A~1F、2A、および2Bならびに比較例CE1およびCE2のエチレン系ポリマーのMw、メルトインデックス(I
2)、およびHDF重量%の測定値を含む。表2では、実施例1A~1F、2Aおよび2BのMwの変化(ΔMw)、I
2の変化(ΔI
2)、およびHDF重量%の変化(ΔHDF重量%)は、これらの特性の比較例CE1およびCE2の平均に対する比較として計算されている。
【表3】
【0079】
実施例1A~1F、2A、および2Bで生成されたエチレン系ポリマーと比較例CE1およびCE2で生成されたものとの比較は、熱処理されたMgCl2を不均一なプロ触媒に含めると、非熱的に処理されたMgCl2を含むプロ触媒で生成されたCE1およびCE2の比較エチレン系ポリマーと比較して、エチレン系ポリマーのMwおよびHDF重量%が増加し、I2が減少することを示す。したがって、EADC(塩素化剤)を添加する前に熱処理されたMgCl2およびチタン種を含む不均一なプロ触媒は、非熱的に処理されたMgCl2を有するプロ触媒で作製された比較ポリマーと比較して、MwおよびHDFが増加し、I2が減少したエチレン系ポリマーを生成し得ることが示される。
【0080】
実施例4A~4D:塩素化剤およびTi種の添加後にMgCl2を熱処理することによって調製された不均一なプロ触媒を使用するバッチ共重合
実施例4A~4D(4A、4B、4C、および4D)の場合、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合は、塩素化剤およびチタン種をMgCl2に添加した後、MgCl2を熱処理することによって調製された不均一なプロ触媒を使用して実施された。共重合プロセスが実施される前に、不均一なプロ触媒が合成された。MgCl2は、ISOPAR(商標)Eパラフィン系溶媒溶液中のブチルエチルマグネシウムを塩酸塩ガスと反応させてMgCl2粒子のスラリーを溶液(希釈剤)に生成することにより、MgCl2粒子を合成することによって最初に生成された。MgCl2は、湿気および酸素からの汚染を避けるために、不活性雰囲気中で保管および処理された。
【0081】
次いで、MgCl2スラリーを使用して、EADC(Aldrich、ヘキサン中1.0M EADC)(塩素化剤)およびTiPT(Aldrich、ISOPAR(商標)E溶媒中0.125M TiPT)(チタン種)をMgCl2スラリーに順次添加することにより、実施例4A~4Dの不均一なプロ触媒を生成した。各不均一なプロ触媒について、MgCl2スラリーを一定の撹拌下で維持し、指定量の1.0M EADC溶液をMgCl2スラリーに添加して一定時間混合した。次いで、指定された量の0.125M TiPT溶液を添加し、結果として得られた不均一なプロ触媒スラリーをさらに一定時間混合した。実施例4A~4Dの不均一なプロ触媒は各々、40/12/3のMgCl2対EADC対TiPTのモル比(MgCl2/EADC/TiPT)を有した。
【0082】
5.9リットル(L)の反応器を使用して、MgCl2、EADCおよびTiPTを添加した不均一なプロ触媒スラリーを熱処理した。2Lの不均一なプロ触媒スラリーは、MgCl2が空気または湿気にさらされないように、気密に設計された移送容器を介して反応器に充填された。N2雰囲気は、反応器ラインのパージおよび分離に使用した。次いで、反応器を加熱ジャケットで190℃に加熱した。反応器の加熱は、約1時間の傾斜時間(室温から190℃まで)で、ステップコントローラによって制御された。加熱プロセス中、反応器の内容物を100rpmで撹拌した。温度の変動は、+/-2℃以内に制御された。実施例4A~4Dの各不均一なプロ触媒は、異なる熱処理時間に供された。実施例4A~4Dの1つについて指定された熱処理時間が経過した後、不均一なプロ触媒の一部を、触媒が空気または湿気と接触するのを防ぐために圧力伝達に使用するN2保護下のサンプリングシステムを使用して反応器から収集した。熱処理された不均一なプロ触媒の試料は、1時間(実施例4A)、3時間(実施例4B)、6時間(実施例4C)、および10時間(実施例4D)後に収集された。
【0083】
次いで、実施例4A~4Bの熱処理された不均一なプロ触媒を利用して、エチレンおよび1-オクテンの共重合を実行して、エチレン系ポリマーを生成した。実施例4A~4Dの場合、バッチ共重合は、2LのParrバッチ反応器内で実行された。反応器は、電気加熱マントルによって加熱され、水を使用して内部蛇行冷却コイルによって冷却された。反応器の底部には、触媒キル溶液(典型的にはBASFからのIRGAFOS(登録商標)有機ホスファイト加工安定剤、BASFからのIRGANOX(登録商標)酸化防止剤、およびトルエンの混合物5mL)が事前に充填されたステンレス鋼ダンプポットに反応器の内容物を空にするためのダンプバルブが取り付けられた。ダンプポットは、連続的なN2パージ下でブローダウンタンクに排出された。共重合および触媒補給に使用された全ての溶媒は、不純物を除去するために精製カラムを通過した。溶媒は、A2アルミナを含む第1のカラム、アルミナ上の還元銅(Q5反応物)を含む第2のカラムの2つのカラムに通過させた。エチレンは、A204アルミナおよび4オングストローム(Å)モレキュラーシーブを含む第1のカラム、Q5反応物を含む第2のカラムの2つのカラムに通過させた。N2は、A204アルミナ、4Åモレキュラーシーブ、およびQ5反応物を含む単一のカラムに通過させた。
【0084】
反応器には、最初に662±1グラム(g)のISOPAR(商標)E溶媒と131gの1-オクテンを別のタンクから充填し、Ashcroft差圧セルを使用してロード設定値まで充填した。溶媒添加後に11.2mmolの水素を添加し、反応器を190℃に加熱した。次いで、反応温度が反応圧力(すなわち、475psi)に達したときに、56±1gのエチレンを反応器に添加した。重合反応中のさらなるエチレン添加量は、マイクロ-モーション流量計で監視した。
【0085】
実施例4A~4Dの各々について、110μLの熱処理された不均一なプロ触媒を5mlのバイアルにピペットで移し、次いで、18ゲージの針を備えた20mLの注射器に取った。バイアルを溶媒ですすぎ、すすぎ液も注射器に取り込んだ。両端が隔膜で密封されたバイアルを使用して、グローブボックスの外からバッチ反応器に輸送するための注射器にキャップを付けた。さらに、11.2μmolのTEA(ISOPAR(商標)E溶媒中の1.00~0.05M溶液)を別の5mLバイアルにピペットで移し、次いで、18ゲージの針を備えた別の20mL注射器に入れた。熱処理された不均一なプロ触媒およびTEA溶液が反応系に添加され、反応は、実施例1A~1Fで以前に開示されたプロセスに従って実行された。次いで、実施例4A~4Dの反応器システムから収集されたエチレン系ポリマーを、本明細書に開示された試験方法に従って、Mw、メルトインデックス(I2)、コモノマー重量パーセント(C8重量%)、およびHDF重量%について分析した。結果は、以下の表3に提供される。
【0086】
比較例CE3:非熱的に処理された不均一なプロ触媒を使用するエチレン系ポリマーのバッチ共重合。
比較例CE3の場合、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合は、不均一なプロ触媒を熱処理せずに、不均一なプロ触媒を使用して実施された。共重合プロセスを実行する前に、ISOPAR(商標)E溶媒溶液中のブチルエチルマグネシウムを塩酸塩ガスと反応させて、溶液中のMgCl2粒子のスラリー(希釈剤)を生成することにより、不均一なプロ触媒を合成した。MgCl2スラリーは、湿気および酸素からの汚染を避けるために、窒素パージされたグローブボックスに保管および処理された。次いで、MgCl2スラリーを使用して、実施例4A~4Dに以前に開示されたように、EADCおよびTiPTを順次添加することにより、CE3の不均一なプロ触媒を生成した。CE3の不均一なプロ触媒は、その後熱処理を受けなかった。CE3の不均一なプロ触媒は、40/12/3のMgCl2対EADC対TiPTのモル比(MgCl2/EADC/TiPT)のモル比を有した。
【0087】
実施例5:実施例4A~4Dと比較例CE3の比較
次の表3は、実施例4A~4Dおよび比較例CE3のエチレン系ポリマーのMw、メルトインデックス(I
2)、C8重量%、およびHDF重量%の測定値を提供する。表3において、実施例4A~4DのMwの変化(ΔMw)およびHDF重量%の変化(ΔHDF重量%)は、比較例CE3との比較として計算されている。表3はまた、実施例4A~4Dの不均一なプロ触媒の熱処理条件を提供する。
【表4】
【0088】
実施例4A~4Dのエチレン系ポリマーと比較例CE3のものとの比較は、塩素化剤(EADC)およびチタン種(TiPT)の添加後にMgCl2を熱処理することにより、非熱的に処理されたMgCl2を含むプロ触媒と比較して、増加したMwおよびHDF重量%ならびに減少したC8重量%およびI2を示すエチレン系ポリマーを生成することが可能な不均一なプロ触媒を生成できることを示す。
【0089】
実施例6:エチレンの減少および水素の増加を伴う実施例4Bの不均一なプロ触媒を利用するバッチ共重合
実施例6については、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合が、実施例4Bの不均一なプロ触媒を使用して実施された。バッチ共重合は、反応器に添加されるエチレンの量が53±1gに減少し、反応器に投入される水素の量が44.9±0.1mmolの水素に増加したことを除いて、実施例4A~4Dで以前に開示された共重合プロセスに従って実施した。他の全ての反応器条件は、実施例4A~4Dに開示されたものと同じであった。
【0090】
比較例CE4:エチレンが減少し水素が増加したCE3のプロ触媒を利用するバッチ共重合
比較例CE4については、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合が、熱処理を受けていない比較例CE3の不均一なプロ触媒を使用して実施された。バッチ共重合は、実施例4A~4Dに開示されたプロセスを含み、エチレンを減少させ、水素を増加させた、実施例6で以前に開示された共重合プロセスに従って実施した。
【0091】
実施例7:実施例6と比較例CE4との比較
実施例6および比較例CE4の共重合反応器から収集されたエチレン系ポリマーを、本明細書に開示された試験方法に従って、Mw、メルトインデックス(I
2)、およびコモノマー重量パーセント(C8重量%)について分析した。結果は、以下の表4に提供される。
【表5】
【0092】
実施例6のエチレン系ポリマーと比較例CE4のそれとの比較は、塩素化剤(EADC)およびチタン種(TiPT)の添加後に熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒が、追加の水素が反応器システムに導入された場合でも、CE4と比較してMwが増加し、C8重量%およびI2が減少したエチレン系ポリマーを生成できることを示し、これにより、反応器内の高分子量分子の形成が制限されると予想される。
【0093】
実施例8:熱処理された不均一なプロ触媒を利用するバッチ共重合
実施例8では、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合は、異なる熱処理条件下で不均一なプロ触媒を熱処理することによって調製された不均一なプロ触媒を使用して実施された。不均一なプロ触媒は、最初に、MgCl2を調製し、実施例4A~4Dに開示されたようにEADCおよびTiPTをMgCl2スラリーに順次添加することによって合成した。
【0094】
次いで、実施例8の不均一なプロ触媒を熱処理した。熱処理のために、25mLの実施例8の不均一なプロ触媒およびフリーサイズのマグネチックスターラを、10インチ(25.4ミリメートル(mm))の長さおよび0.75インチ(19.05mm)の内径を有する厚壁のガラス管に入れた。ガラス管内の不均一なプロ触媒は、熱処理前に黄褐色を示した。ガラス管は、PTFEねじ付きキャップでしっかりと密封され、加熱ブロックに配置された。次いで、不均一なプロ触媒を150℃の温度に加熱し、150℃で60時間維持した。ガラス管を周囲温度に冷却し、不均一なプロ触媒をその後の使用のためにシンチレーションバイアルに移した。
【0095】
次いで、熱処理された不均一なプロ触媒を、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合に利用して、実施例8のエチレン系ポリマーを生成した。バッチ共重合プロセスは、水素(0.0mmol H2)をバッチ共重合反応に使用せず、62±1gのエチレンを最初に反応器に充填したことを除いて、実施例4A~4Dで以前に開示されたプロセスに従って実行された。他の全ての反応器処理条件およびパラメータは、実施例4A~4Dと同じであった。実施例8のバッチ共重合を2回実施した。実施例8の2つの反応実行(試料8-Aおよび8-B)のためのエチレン系ポリマーは、さらなる分析のために収集された。
【0096】
比較例CE5:実施例8の反応条件でのCE3のプロ触媒を利用するバッチ共重合。
比較例CE5については、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合を、熱処理を受けていない比較例CE3の不均一なプロ触媒を使用して実施した。CE5のバッチ共重合は、実施例4A~4Dに開示されたプロセスを含み、反応器システムに水素を添加せず、62±1gのエチレンを含む、実施例8で以前に開示された共重合プロセスに従って実施した。CE5のエチレン系ポリマーを分析のために収集した。
【0097】
実施例9:実施例8と比較例CE5の比較
実施例8および比較実施例CE5の共重合反応器から収集されたエチレン系ポリマーは、本明細書に開示された試験方法に従って、MwおよびC8重量%について分析された。各エチレン系ポリマーの2つの試料を分析した。結果は、以下の表5に提供される。ΔMwおよびΔC8重量%は、CE5-AおよびCE5-Bに対して、それぞれ、平均MwおよびC8重量%との比較として計算された。
【表6】
【0098】
実施例8Aおよび8Bのエチレン系ポリマーと比較例CE5-AおよびCE5-Bのそれとの比較は、塩素化剤(EADC)およびチタン種の添加後に熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒が、反応器システムに水素が存在しない場合のCE5-AおよびCE5-Bのポリマーと比較して、Mwが増加し、C8重量%およびI2が減少したエチレン系ポリマーを生成できることを示す。
【0099】
実施例10A~10C:バナジウム種として熱処理されたMgCl2成分およびVOCl3を含む不均一なプロ触媒を使用したバッチ共重合
実施例10A~10C(10A、10B、および10C)において、エチレンおよび1-オクテンのバッチ共重合は、熱処理されたMgCl2およびバナジウム種をEADC塩素化剤およびTiCl4チタン種と組み合わせて含む不均一なプロ触媒を使用して実施された。共重合プロセスの前に、熱処理されたMgCl2成分およびバナジウム種を組み込んだ不均一なプロ触媒が合成された。熱処理されたMgCl2成分は、実施例1A~1Fに以前に開示されたプロセスに従って合成され、熱処理された。
【0100】
次いで、熱処理されたMgCl2を使用して、次のプロセスに従って熱処理されたMgCl2を含むスラリーにEADC(Aldrich、ヘキサン中1.0M)、塩化チタン(TiCl4、Aldrich、ISOPAR(商標)E溶媒中0.125M)、およびバナジウム種を連続添加することにより、実施例10A~1Cの不均一なプロ触媒を生成した。各不均一なプロ触媒について、10ミリリットル(mL)の熱処理されたMgCl2スラリーを、蓋をしたガラスバイアル内で一定の撹拌下で維持した。最初の日に、指定量の1.0M EADC溶液を熱処理されたMgCl2スラリーに添加し、一晩撹拌した。2日目に、指定量の0.125M TiCl4溶液およびバナジウム種溶液を添加し、結果として得られたスラリーを一晩撹拌したままにした。不均一なプロ触媒は、3日目に使用できるようになった。実施例10A~10Cの場合、バナジウム種は、オキシ三塩化バナジウム(VOCl3、ISOPAR(商標)E溶媒中の0.125M溶液)であった。実施例10A~10Cの各不均一なプロ触媒のMgCl2対EADC対TiCl4対バナジウム種のモル比(MgCl2/EADC/TiCl2/V)およびMgCl2熱処理の温度および時間は、以下の表6に提供される。
【0101】
次いで、実施例10A~10Cの不均一系プロ触媒を、実施例1A~1Fに以前に開示されたプロセスに従って実施されるバッチ共重合反応に使用した。実施例10A~10Cでは、反応器への反応物チャージは、660gのISOPAR(商標)E溶媒、132gの1-オクテン、14.5mmolの水素、および56gのエチレンであった。実施例10A~10Cの触媒系について、16モル当量のTEA(16:1の触媒系においてTEA対Tiのモル比を生成するためのTEAの量)を、反応器への注入前にショットタンク内の不均一なプロ触媒と組み合わせた。実施例10A~10Cのエチレン系ポリマーは、さらなる分析のために収集された。
【0102】
実施例11Aおよび11B:バナジウム種として熱処理されたMgCl2成分およびVO(OnPr)3を含む不均一なプロ触媒を使用するバッチ共重合
実施例11Aおよび11Bの場合、バッチ共重合は、バナジウム種として熱処理されたMgCl2およびバナジウムオキシプロポキシド(VO(OnPr)3)を含む不均一なプロ触媒を使用して実行された。VO(OnPr)3がバナジウム種に使用されたことを除いて、11Aおよび11Bの不均一なプロ触媒は、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスに従って調製された。実施例11A~11Bの各不均一プロ触媒のMgCl2対EADC対TiCl4対バナジウム種(MgCl2/EADC/TiCl2/V)のモル比、およびMgCl2熱処理の温度および時間は、以下の表6に提供される。次いで、実施例11Aおよび11Bの不均一なプロ触媒を、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスに従って実行されるバッチ共重合プロセスで使用して、エチレン系ポリマーを生成し、これをさらなる分析のために収集した。
【0103】
実施例12A~12C:バナジウム種として熱処理されたMgCl2成分およびVO(OnPr)3を含む不均一なプロ触媒を使用するバッチ共重合
実施例12A~12C(12A、12B、および12C)の場合、バッチ共重合は、バナジウム種として熱処理されたMgCl2およびVO(OnPr)3を含む不均一なプロ触媒を使用して実行された。12A~12Cの不均一なプロ触媒は、MgCl2の熱処理の条件が変化したことを除いて、実施例11Aおよび11Bに以前に開示されたプロセスによって調製された。実施例12A~12Cの各不均一なプロ触媒のMgCl2対EADC対TiCl4対バナジウム種(MgCl2/EADC/TiCl2/V)のモル比、およびMgCl2熱処理の温度および時間は、以下の表6に提供される。次いで、実施例12A~12Cの不均一なプロ触媒を、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスに従って実行されるバッチ共重合プロセスで使用して、エチレン系ポリマーを生成し、これをさらなる分析のために収集した。
【0104】
実施例13:バナジウム種として熱処理されたMgCl2成分およびVOCl3を含む不均一なプロ触媒を使用するバッチ共重合
実施例13では、バッチ共重合は、バナジウム種として熱処理されたMgCl2およびVOCl3を含む不均一なプロ触媒を使用して実行された。実施例13の不均一なプロ触媒は、MgCl2を190℃で1時間熱処理したことを除いて、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスによって調製された。MgCl2対EADC対Ti対Vのモル比も変更された。さらに、0.5モル当量(TiCl4に対して)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)(Zr(TMHD)4)を、配合プロセス中にVOCl3とともに配合に添加した。ISOPAR(溶媒)E溶媒溶液中の0.125モル/LのZr(TMHD)4は、ISOPAR(商標)E溶媒に固体のZr(TMHD)4を溶解することによって調製された。実施例13の不均一なプロ触媒は、Ti対V対Zrのモル比が1:2:0.5であった。実施例13のMgCl2対EADC対TiCl4対バナジウム種(MgCl2/EADC/TiCl2/V)のモル比、および実施例13のMgCl2熱処理の温度および時間は、以下に表6に提供される。次いで、実施例13の不均一なプロ触媒を、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスに従って実行されるバッチ共重合プロセスで使用して、エチレン系ポリマーを生成し、これをさらなる分析のために収集した。
【0105】
実施例14A~14C:バナジウム種を含まない熱処理されたMgCl2を含む不均一なプロ触媒とのバッチ共重合。
実施例14A~14Cの場合、バッチ共重合は、熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒を使用して実行された。14A~14Cの不均一なプロ触媒は、バナジウム種が合成に含まれなかったことを除いて、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスによって調製された。実施例14A~14Cの各不均一プロ触媒のMgCl2対EADC対TiCl4(MgCl2/EADC/TiCl2)のモル比、およびMgCl2熱処理の温度および時間は、以下の表6に提供される。次いで、実施例14A~14Cの不均一なプロ触媒を、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスに従って実行されるバッチ共重合プロセスで使用して、エチレン系ポリマーを生成し、これをさらなる分析のために収集した。
【0106】
比較例CE6A~CE6C:非熱的に処理されたMgCl2との不均一なプロ触媒を利用するバッチ共重合。
比較例CE6A~CE6Cの場合、バッチ共重合は、MgCl2が熱処理されていない不均一なプロ触媒を使用して実行された。CE6A~CE6Cの不均一なプロ触媒は、MgCl2が熱処理されなかったことを除いて、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスによって調製された。CE6Aの場合、バナジウム種としてVOCl3が添加された。CE6BおよびCE6Cの場合、バナジウム種は不均一なプロ触媒に添加されなかった。さらに、実施例13で以前に開示されたように、0.5モル当量(TiCl4に対して)のジルコニウムテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)(Zr(TMHD)4)が、プロ触媒合成中にVOCl3とともにCE6Aの不均一なプロ触媒に添加された。CE6Aの不均一なプロ触媒は、1:2:0.5のTi対V対Zrのモル比を有した。CE6Bの場合、Ti種としてTiCl4の代わりにTiPTが使用された。CE6A~CE6Cの各不均一なプロ触媒のMgCl2対EADC対Ti対V(MgCl2/EADC/TiCl2/V)のモル比は、以下の表6に提供される。次いで、CE6A~CE6Cの不均一なプロ触媒を、実施例10A~10Cに以前に開示されたプロセスに従って実行されるバッチ共重合プロセスで使用して、エチレン系ポリマーを生成した。CE6Bの場合、8モル当量のTEAを不均一なプロ触媒と組み合わせて、触媒系におけるTEA対Tiのモル比が16:1ではなく8:1になるようにした。エチレン系ポリマーは、さらなる分析のために収集された。
【0107】
実施例15:比較
以下の表6は、実施例10A~10C、11A~11B、12A~12C、13、および14A~14Cならびに比較例CE6A~CE6Bで生成された不均一なプロ触媒の合成情報を提供する。
【表7】
【0108】
実施例10A~10C、11A~11B、12A~12C、13、および14A~14Cならびに比較例CE6A~CE6Bの共重合反応器から収集されたエチレン系ポリマーを、本明細書に開示された試験方法に従って、Mw、多分散性指数(PDI)、C8重量%、HDF重量%、メルトインデックス(I
2)、およびメルトフロー比I
10/I
2について分析した。結果は、以下の表7に提供される。
【表8】
【0109】
CE6A~CE6Cの不均一なプロ触媒は、全て熱処理されていないMgCl2を使用して生成された。CE6Aのプロ触媒にはVOCl3バナジウム種が含まれ、CE6BおよびCE6Cのプロ触媒にはバナジウム種は含まれていなかった。さらに、CE6Bのプロ触媒は、3:40のTi対MgCl2のモル比を有し、CE6Cのプロ触媒は、1:40のTi対MgCl2のモル比を有した。同じバッチ反応器条件下で、CE6Aのエチレン系ポリマーは低いI10/I2(約7)を示した。対照的に、CE6Bのエチレン系ポリマーは、約7.5より大きいI10/I2を有し、CE6Cのエチレン系ポリマーは、8より大きいI10/I2を有した。CE6Aのエチレン系ポリマーは、CE6Bのエチレン系ポリマー(4.48)と比較して低いPDI(4.26)も示した。CE6Cのエチレン系ポリマーは、3つの比較プロ触媒の中でMwおよびHDFが最低であった。CE6Cのプロ触媒は、HDFの低いエチレン系ポリマーを生成したが、CE6Cのプロ触媒は、Mwビルドが低すぎるため、実際には適用可能ではない可能性がある。
【0110】
実施例13の不均一なプロ触媒は、実施例13が熱処理されたMgCl2を含むことを除いて、CE6Aの比較プロ触媒と同じ組成を有した。実施例13とCE6Aとの比較は、熱処理されたMgCl2を不均一なプロ触媒に組み込むことにより、狭い分子量分布(MWD)を有するエチレン系ポリマーを生成できることを示し、これは、CE6Aと比較して、実施例13のエチレン系ポリマーについて、I10/I2が0.4単位減少し、PDIが少なくとも0.50単位減少することによって示される。同じ反応器プロセス条件下で、熱処理されたMgCl2を使用すると、同様のコモノマー含量(C8重量%)を維持しながら、エチレン系ポリマーのMwおよびHDFも増加する。実施例13の不均一なプロ触媒は、結果として得られたエチレン系ポリマーのMWDに関して、CE6AおよびCE6Bの比較プロ触媒を上回り、CE6AおよびCE6Bの比較プロ触媒で生成されたエチレン系ポリマーと比較してMwおよびC8重量%が大きいエチレン系ポリマーを生成する。
【0111】
実施例10A~10Cと実施例13との比較は、熱処理されたMgCl2およびVOCl3種(10A~10C)の組み合わせを含む不均一なプロ触媒が、Zr化合物を不均一なプロ触媒に組み込むことなく、狭められたMWDを有するエチレン系ポリマーを生成することができることを実証する(実施例13)。
【0112】
実施例10Aと実施例14Aの比較および実施例10Bと実施例14Bの比較は、熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒(例えば、実施例10Aおよび10B)へのVOCl3の添加が、他のバナジウム化合物が使用されていない場合、PDIおよびI10/I2が減少したエチレン系ポリマーを生成し得ることを実証する。さらに、熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒にVOCl3を添加すると、VOCl3を含まない不均一なプロ触媒と比較して、MwおよびHDFが大幅を増加し、エチレン系ポリマーのC8重量%がわずかに減少し得る。
【0113】
実施例10Bと実施例10Cとの比較は、不均一なプロ触媒中のVOCl3の量を増加させると、MwおよびHDFが増加し、生成されるエチレン系ポリマーのC8重量%がわずかに減少し得ることを示している。したがって、不均一なプロ触媒中のバナジウム種の量を制御することにより、エチレン系ポリマーのHDFの微調整および制御が可能になり、最終的なLLDPEフィルム製品の所望の光学/引き裂き特性バランスを達成することができることが示される。
【0114】
実施例10Aと実施例10Bとの比較は、狭められたMWD(すなわち、低いPDIおよびI10/I2)を有するエチレン系ポリマーが、熱処理されたMgCl2の40当量モル当たり2.3/0.23/0.46という低いEADC/Ti/V負荷を有する不均一なプロ触媒が得られることを実証する。
【0115】
実施例11Bと実施例14Cとの比較は、VOCl3が使用されない場合、熱処理されたMgCl2を有する不均一なプロ触媒にVO(OnPr)3を組み込むことにより、MWDが狭くなったエチレン系ポリマーを生成することができることを示す(実施例11B)。不均一なプロ触媒にVO(OnPr)3を含むエチレン系ポリマーのMWDを狭める(すなわち、PDIおよびI10/I2を減らす)ことに加えて、エチレン系ポリマーのMwも増加させ得る。不均一なプロ触媒でVOCl3の代わりにVO(OnPr)3を使用すると、触媒中の遊離塩素濃度も低下し得、これにより、生成されたエチレン系ポリマー中の遊離塩素濃度が低下する。
【0116】
実施例11Aと11Bの比較は、他の全ての濃度を固定した同じ反応条件下で、不均一なプロ触媒中のVO(OnPr)3の量を増加させると、エチレン系ポリマーのMwおよびHDFが増加し、C8重量%が減少し得ることを示す。実施例11Aおよび11Bのエチレン系ポリマーのPDIおよびI10/I2は、不均一なプロ触媒のVO(OnPr)3の量が変更されたとしても、低レベルに維持された。
【0117】
実施例13の不均一なプロ触媒の性能は、MgCl2の熱処理の処理時間の長さが、190℃で1時間以下と短くなり得ることを示す。実施例12Aおよび12Cの比較は、熱処理がMgCl2に対して行われる限り、熱処理が実行されるプロセス温度が、不均一なプロ触媒を使用して生成されたエチレン系ポリマーの特性に有意な影響を及ぼさないことを示す。
【0118】
実施例10A~10C、11A、11B、および12A~12Cと実施例13との比較は、熱処理されたMgCl2を不均一なプロ触媒に含めることにより、不均一なプロ触媒にZrを含まなくても、バナジウム種が不均一なプロ触媒に含まれているため、MWDが狭くなったエチレン系ポリマーの生成が可能であることを示す。
【0119】
実施例10A~10C、11A、11B、および12A~12Cと比較例CE6AおよびCE6Bとの比較は、熱処理されたMgCl2およびバナジウム種を含む不均一なプロ触媒(例えば、実施例10A~10C、11A、11B、および12A~12C)は、CE6Aのプロ触媒(バナジウム種および非熱的に処理されたMgCl2)で生成されたエチレン系ポリマーおよびCE6Bのプロ触媒(バナジウム種なし、および非熱的に処理されたMgCl2)で生成されたエチレン系ポリマーと比較して、MWDが大幅に狭い(すなわち、PDIが4未満でI10/I2が7未満)エチレン系ポリマー(例えば、LLDPE)を生成できる。さらに、熱処理されたMgCl2およびバナジウム種を有する不均一なプロ触媒を利用することにより、エチレン系ポリマーのHDFを、同じ反応器プロセス条件で比較的広い範囲(例えば、10~20重量%)で調整および制御して、最終的なLLDPEフィルムの光学/引き裂き特性のバランスを制御することができる。
【0120】
本開示の第1の態様では、不均一なプロ触媒は、チタン種、塩素化剤、および熱処理された塩化マグネシウム成分を含み得る。塩素化剤は、構造A(Cl)x(R1)3-xを有し得、ここで、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、xは、1、2、または3である。
【0121】
本開示の第2の態様は、熱処理された塩化マグネシウム成分が、塩化マグネシウムスラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理した生成物を含む、第1の態様を含み得る。塩化マグネシウムスラリーは、溶媒中に分散された少なくとも塩化マグネシウムを含み得る。
【0122】
本開示の第3の態様は、塩化マグネシウムスラリーが、チタン種および塩素化剤を含む、第2の態様を含み得る。
【0123】
本開示の第4の態様は、不均一なプロ触媒が、溶媒中に分散された塩化マグネシウムのスラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理することと、チタン種および塩素化剤を熱処理された塩化マグネシウムと組み合わせることと、による生成物を含み得る、第1の態様を含み得る。
【0124】
本開示の第5の態様は、不均一なプロ触媒が、チタン種および塩素化剤を溶媒中に分散された塩化マグネシウムのスラリーと組み合わせて、プロ触媒スラリーを生成することと、プロ触媒スラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理することと、による生成物を含む、第1の態様を含み得る。
【0125】
本開示の第6の態様は、チタン種が触媒活性を有するチタン種を含む、第1~第5の態様のいずれかを含み得る。
【0126】
本開示の第7の態様は、不均一なプロ触媒におけるチタン対塩化マグネシウムのモル比が、0.0050~0.075(モル/モル)である、第1~第6の態様のいずれかを含み得る。
【0127】
本開示の第8の態様は、バナジウム種をさらに含む、第1~第7の態様のいずれかを含み得る。
【0128】
本開示の第9の態様は、バナジウム種が、VX4、VOX3、またはVO(OR2)3から選択され、ここで、各Xは、独立してハロゲン原子または(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルアニオンであり、R2は、(C1~C20)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11であり、R11は(C1~C30)ヒドロカルビルである、第8の態様を含み得る。
【0129】
本開示の第10の態様は、不均一なプロ触媒におけるバナジウム対チタンの比が、0.0~20(モル/モル)である、第8または第9の態様のいずれかを含み得る。
【0130】
本開示の第11の態様は、不均一なプロ触媒におけるバナジウム対塩化マグネシウムのモル比が、0.0~0.10(モル/モル)である、第8~第10の態様のいずれかを含み得る。
【0131】
本開示の第12の態様は、エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスが、触媒系の存在下で、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンと接触することを含み得、触媒系が、本開示の第1~第11の態様のいずれかによる不均一なプロ触媒を含む、第1~第11の態様のいずれかを含み得る。
【0132】
本開示の第13の態様は、触媒系が、助触媒をさらに含む、第12の態様を含み得る。
【0133】
本開示の第14の態様は、助触媒が、アルミニウムのアルキル、アルミニウムのハロアルキル、ハロゲン化アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、アルカリ金属水素化アルミニウム、アルカリ金属水素化ホウ素、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ土類金属水素化物から選択される、第13の態様を含み得る。
【0134】
本開示の第15の態様は、第12~第14の態様のいずれかのプロセスによって調製されたエチレン系ポリマーを含み得る。
【0135】
本開示の第16の態様では、プロ触媒を作製するためのプロセスは、塩化マグネシウムスラリーを少なくとも100℃の処理温度で少なくとも30分間熱処理することを含み得、塩化マグネシウムスラリーが、少なくとも溶媒中に分散された塩化マグネシウム(MgCl2 )を含む。本プロセスは、塩素化剤およびチタン種を塩化マグネシウムスラリーと組み合わせることをさらに含み得る。塩素化剤は、構造A(Cl)x(R1)3-xを有し得、ここで、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、R1は、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、xは1、2、または3である。
【0136】
本開示の第17の態様は、塩素化剤およびチタン種を塩化マグネシウムスラリーと組み合わせる前に、塩化マグネシウムスラリーを熱処理することを含む、第16の態様を含み得る。
【0137】
本開示の第18の態様は、塩素化剤およびチタン種を塩化マグネシウムスラリーと組み合わせた後に、塩化マグネシウムスラリーを熱処理することを含む、第16の態様を含み得る。
【0138】
本開示の第19の態様は、塩化マグネシウムスラリーを熱処理することが、塩化マグネシウムスラリーを撹拌することを含む、第16~18の態様のいずれかを含み得る。
【0139】
本開示の第20の態様は、バナジウム種を塩化マグネシウム、チタン種、および塩素化剤と組み合わせることをさらに含む、第16~第19の態様のいずれかを含み得る。
【0140】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された実施形態に様々な修正および変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書は、本明細書に開示された様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]不均一なプロ触媒であって、
チタン種と、
構造A(Cl)
x
(R
1
)
3-x
を有する塩素化剤であって、ここで、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
R
1
は、(C
1
~C
30
)ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、塩素化剤と、
熱処理された塩化マグネシウム成分と、を含み、前記熱処理された塩化マグネシウム成分は、塩化マグネシウムスラリーを少なくとも150℃の温度で少なくとも30分間熱処理することによる生成物を含む、不均一なプロ触媒。
[2]前記塩化マグネシウムスラリーが、少なくとも溶媒中に分散された塩化マグネシウムを含む、上記[1]に記載の不均一なプロ触媒。
[3]前記塩化マグネシウムスラリーが、前記チタン種および前記塩素化剤を含む、上記[2]に記載の不均一なプロ触媒。
[4]前記不均一なプロ触媒が、
溶媒中に分散された塩化マグネシウムのスラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理することと、
前記チタン種および前記塩素化剤を前記熱処理された塩化マグネシウムと組み合わせることと、の生成物を含む、上記[1]に記載の不均一なプロ触媒。
[5]前記不均一なプロ触媒が、
前記チタン種および前記塩素化剤を溶媒中に分散された塩化マグネシウムのスラリーと組み合わせて、プロ触媒スラリーを生成することと、
前記プロ触媒スラリーを少なくとも100℃の温度で少なくとも30分間熱処理することと、による生成物を含む、上記[1]に記載の不均一なプロ触媒。
[6]前記不均一なプロ触媒におけるチタン対塩化マグネシウムのモル比が、0.0050~0.075(モル/モル)である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の不均一なプロ触媒。
[7]VX
4
、VOX
3
、またはVO(OR
2
)
3
から選択されるバナジウム種をさらに含み、ここで、各Xは、独立してハロゲン原子または(C
1
~C
40
)ヘテロヒドロカルビルアニオンであり、R
2
は、(C
1
~C
20
)ヒドロカルビルまたは-C(O)R
11
であり、R
11
は、(C
1
~C
30
)ヒドロカルビルである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の不均一なプロ触媒。
[8]前記不均一なプロ触媒におけるバナジウム対チタンの比が、0.0~20(モル/モル)である、上記[7]に記載の不均一なプロ触媒。
[9]前記不均一なプロ触媒におけるバナジウム対塩化マグネシウムのモル比が、0.0~0.10(モル/モル)である、上記[7]または[8]に記載の不均一なプロ触媒。
[10]エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスであって、触媒系の存在下で、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを接触させて、エチレン系ポリマーを生成することを含み、前記触媒系が、上記[1]~[9]のいずれかに記載の不均一なプロ触媒と、アルミニウムのアルキル、アルミニウムのハロアルキル、ハロゲン化アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、アルカリ金属水素化アルミニウム、アルカリ金属水素化ホウ素、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ土類金属水素化物から選択される任意選択的な助触媒と、を含む、プロセス。
[11]上記[11]に記載のプロセスによって調製されたエチレン系ポリマー。
[12]プロ触媒を作製するためのプロセスであって、
塩化マグネシウムスラリーを少なくとも100℃の処理温度で少なくとも30分間熱処理することであって、前記塩化マグネシウムスラリーが、少なくとも溶媒中に分散された塩化マグネシウム(MgCl
2
)を含む、熱処理することと、
塩素化剤およびチタン種を前記塩化マグネシウムスラリーと組み合わせることであって、前記塩素化剤が、構造A(Cl)
x
(R
1
)
3-x
を有し、ここで、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
R
1
は、(C
1
~C
30
)ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、組み合わせることと、を含む、プロセス。
[13]前記塩素化剤および前記チタン種を前記塩化マグネシウムスラリーと組み合わせる前に、前記塩化マグネシウムスラリーを熱処理することを含む、上記[12]に記載のプロセス。
[14]前記塩素化剤および前記チタン種を前記塩化マグネシウムスラリーと組み合わせた後に、前記塩化マグネシウムスラリーを熱処理することを含む、上記[12]に記載のプロセス。
[15]バナジウム種を前記塩化マグネシウム、チタン種、および前記塩素化剤と組み合わせることをさらに含む、上記[12]~[14]のいずれかに記載のプロセス。