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特許7389761ボルチオキセチンおよびボルチオキセチン中間体を調製するためのワンポット有機擬触媒C-H活性化手法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ボルチオキセチンおよびボルチオキセチン中間体を調製するためのワンポット有機擬触媒C-H活性化手法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/14 20060101AFI20231122BHJP
   C07D 295/096 20060101ALI20231122BHJP
   C07C 323/37 20060101ALI20231122BHJP
   A61K 31/495 20060101ALN20231122BHJP
   A61P 25/22 20060101ALN20231122BHJP
   A61P 25/24 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C07C319/14
C07D295/096
C07C323/37
A61K31/495
A61P25/22
A61P25/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020571494
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019025189
(87)【国際公開番号】W WO2019242889
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/025164
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520496822
【氏名又は名称】バイオ アーゲー ファーマシューティカルズ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コフティス, ヴィー.テオカリス
(72)【発明者】
【氏名】ネオコスミディス, エフストラティオス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレウ, サノス
(72)【発明者】
【氏名】キジス, ペトロス
(72)【発明者】
【氏名】リタディオティ, アレクサンドラ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103922978(CN,A)
【文献】国際公開第2015/155153(WO,A1)
【文献】特開2014-234376(JP,A)
【文献】特表2019-525900(JP,A)
【文献】Dawei Wang, Xin Yu, Keyan Zhao, Liang Li, Yuqiang Ding,Rapid synthesis of aryl sulfides through metal-free C-S coupling of thioalcohols with diaryliodonium salts,Tetrahedron Letters,NL,Elsevier Ltd.,2014年08月29日,55(6),5739-5741
【文献】Anna M. Wagner and Melanie S. Sanford,Transition-Metal-Free Acid-Mediated Synthesis of Aryl Sulfides from Thiols and Thioethers,The Journal of Organic Chemistry,米国,American Chemical Society,2014年02月19日,79,2263-2267
【文献】Li Wang and Zhen-Chu Chen,HYPERVALENT IODINE IN SYNTHESIS 55: AN EFFICENT METHOD FOR SYNTHESIS OF ARYL SULFIDES BY PALLADIUM-CATALYZED REACTION OF HYPERVALENT IODONIUM SALTS WITH MERCAPTANS,SYNTHETIC COMMUNICATIONS,米国,Marcel Dekker, Inc.,2001年01月01日,31(8),1227-1232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIIの化合物[式中、Rは水素またはo-アミノチオフェノール基である]を、式IVの化合物[式中、アニオンXはアリールヨードニウム塩の調製から、その調製に用いられる酸から得られる]との反応に供することを含む、式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項2】
下記の工程:
a) 式IIIの化合物[式中、Rは水素またはo-アミノチオフェノール基である]を、式IVの化合物との反応に供する工程;
b) 式Iの化合物を式IIの化合物に変換する工程;
を含む、式IIの化合物を調製するための方法。
【請求項3】
アニオンXが、ハロゲン、トシル酸、四フッ化ホウ素、トリフレート、過塩素酸、トリフルオロ酢酸または酢酸アニオンから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程bが、式Iの化合物と2,2’-ジクロロジエチルアミンとを反応させることによって行われる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
Rが水素であり、式IIIの化合物が式IIIaの化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Rがo-アミノチオフェノール基であり、式IIIの化合物が式IIIbの化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンが、式IIIとIVの化合物の間の反応後に単離される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品有効成分ボルチオキセチンの調製における中間体として有用な化合物を調製するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルチオキセチンは、Lundbeckにより開発された、うつ病および不安症の治療に使用される薬物である。これは欧州ではBrintellixとして、米国ではTrintellixとして販売されている。ボルチオキセチンは、WO2003/029232A1の実施例1eに開示されている。
【0003】
ボルチオキセチンを調製するためのいくつかの方法が先行技術で開示されている。
【0004】
WO2013102573において、ボルチオキセチンは、スキーム1に従い、Pd触媒の存在下、2-ブロモチオフェノール、1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼン、およびピペラジンの混合物の反応によって調製される。
【0005】
WO2014161976では異なる合成手法が提供され、2つの芳香族成分を合わせる代替方法が実現されている。これはスキーム1で開示されたものに比べて3工程プロセスであるが、高価なo-ブロモチオフェノールおよびPd触媒の使用が回避される。式Iの中間体化合物の前駆体、即ち、それぞれのニトロ誘導体は、o-ニトロクロロベンゼンによる2,4-ジメチルチオフェノールのアルキル化を用いて形成される。所望の芳香族アミンにニトロ基を還元するためのFe触媒が、式Iの化合物の重要な中間体を得るのに必要とされる。次いでボルチオキセチンが、遊離芳香族アミン基の二重アルキル化により提供される。
【0006】
IN201641001393Aは、オルト-アミノチオフェノールから2,2’-ジアミノフェニルジスルフィドを介する2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンの調製及びボルチオキセチンへのその変換を開示している。求電子剤としてジメチルブロモベンゼンが使用されており、本発明とは異なる。
【0007】
ボルチオキセチンを調製するための、先行技術で利用可能な合成手順を改善し、特に合成プロセス全体を短縮しつつ簡単で費用効果のある試薬を維持することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、超原子価ヨウ素化学に基づくワンポット有機擬触媒反応手法を利用することによって、式Iの化合物を調製するための新規な方法を提供する。式Iの化合物は、ボルチオキセチン(式IIの化合物)の合成に有用な中間体である。
【0009】
本発明はさらに、本発明の新規な方法による式Iの化合物の調製と、式Iの化合物から式IIのボルチオキセチン化合物への変換とを含む、ボルチオキセチンを調製するための改善された方法を提供する。
【0010】
定義
「酸」は、水素を含有しかつ水または溶媒中で解離して正の水素イオンを生成する任意の化合物、ならびに塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、トリハロ酢酸(例えば、トリフルオロ酢酸)、臭化水素、マレイン酸、スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、およびカンファースルホン酸、プロピオン酸、例えば(R)-クロロプロピオン酸、フタル酸、例えばN-[(R)-1-(1-ナフチル)エチル]フタルアミド酸、マンデル酸、酒石酸、例えばD-またはL-酒石酸、およびジベンジル-L-酒石酸、およびその誘導体、例えばジアロイル酒石酸、乳酸、カンファー酸、アスパラギン酸、シトロネル酸、および同様のものなどの酸を含むがこれらに限定されないルイス酸を指す。したがってこの用語は、弱酸、例えばエタン酸、および硫化水素;有機強酸、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などを含む。
【0011】
「塩基」は、本明細書で使用される場合、水酸化物またはアルコキシド、水素化物、またはアミンなどの化合物、およびその誘導体であって、水または溶媒中でプロトンを受容するものを含む。したがって、例示的な塩基には、アルカリ金属水酸化物およびアルコキシド(即ち、MOR、但しMはアルカリ金属、例えばカリウム、リチウム、またはナトリウムであり、Rは水素または上記定義されたアルキルであり、より好ましくは、Rは直鎖または分岐鎖C1~5アルキルであり、したがって限定するものではないが水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ペントキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、水酸化リチウムなどを含む);その他の水酸化物、例えば水酸化マグネシウム(Mg(OH))または水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH));アルカリ金属水素化物(即ち、MH、但しMは上記にて定義されたとおりであり、したがって限定するものではないがナトリウム、カリウム、および水素化リチウムを含む);アルキル化ジシラジド、例えばカリウムヘキサメチルジシラジド、およびリチウムヘキサメチルジシラジド;炭酸塩、例えば炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、重炭酸カリウム(KHCO)、および重炭酸ナトリウム(NaHCO)、水酸化アルキルアンモニウム、例えば水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)および同様のものが含まれるがこれらに限定するものではない。水性塩基には、金属水酸化物、例えばLi、Na、K、Mg、Caなどの1族/2族金属の水酸化物(例えば、水性LiOH、NaOH、KOHなど)、水酸化アルキルアンモニウム、および水性炭酸塩が含まれる。非水性塩基には、限定するものではないがアミンおよびその誘導体、例えばトリアルキルアミン(例えば、Et3N、ジイソプロピルエチルアミンなど)、および芳香族アミン(例えば、Ph-NH、PhN(Me)Hなど);アルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属水素化物;アルキル化ジシラジド;および非水性炭酸塩が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の実施形態において、本発明は、式IIIの化合物[式中、Rは水素またはo-アミノチオフェノール基である]を、式IVの化合物との反応に供することを含む、式Iの化合物を調製するための方法(スキーム4)を提供する。アニオンXは、アリールヨードニウム塩(IV)の調製から、通常はその調製に用いられる酸から得られ、したがって共役塩基である。それらの化合物の調製に利用可能な、先行技術で公知に複数の方法があり(下記参照)、アニオンXは、前記酸に関係する多数の共役塩基の中から選択されてもよい。さらに、調製された初期アリールヨードニウム塩は、別のイオン性化合物の存在下、アニオン交換に供されることもあり得る。したがってアニオンXは、アニオンの比較的大きな多様性を示し得る。好ましくは、アニオンXは、ハロゲン、トシル酸、四フッ化ホウ素、トリフレート、過塩素酸、トリフルオロ酢酸または酢酸アニオンであってもよい。
【0013】
本発明者らは意外にも、o-二置換ジアリールヨードニウム塩(IV)が、チオフェノール(R-H、式IIIaの化合物)またはジスルフィド(R=o-アミノチオフェノール基、式IIIbの化合物)のいずれかであり得る式IIIの化合物と反応して、式Iの化合物を生じる(スキーム4)ことを見出した。この反応により、容易に入手可能な費用効果のある出発物質から式Iの化合物が得られるようになり、したがって、先行技術に開示されるようなニトロ基からアミンに還元するという要件が回避される。同時に、先行技術で教示されるPdなどの高価な金属触媒を使用する必要がなく、ジメチルアリール基質に対するアミン保持部分の直接結合が実現される。
【0014】
式IIIとIVの化合物の間の反応の副生成物(図示せず)は、アリールヨードニウム塩、即ち、1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼン(式Vの化合物)の残りの部分である。この副生成物は、本発明により有利に単離されてもよく、式IVの新しい化合物を調製するのに使用されてもよいがこれは先行技術により十分確立された手順である[Bielawksi et al, ChemistryOpen 2014, 3 (1), pp 19-22およびMonastyrskyi et al, J. Org. Chem. 2015, 80 (5), pp 2513-2520]。そのような特徴は、高価なヨウ素含有試薬に対して全プロセスを擬触媒的にする(式IVの化合物)。
【0015】
一般式IVのジアリールヨードニウム塩は、十分確立された先行技術の手順に従い調製され得る。Merritt A., Olofsson B., “Diaryliodonium salts: A journey from Obscurity to Fame”, Ang. Chemie Int. Ed. 2009, 48, 9052による包括的検証は、とりわけ、そのような化合物の様々な既存の調製方法について記述する。引用された文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。ジアリールヨードニウム塩は、2つの主な手法により、事前に形成された超原子価ヨウ素試薬を介して、またはヨウ素が酸化を必要とするワンポット合成によって、調製され得る。後者の重要な特徴は、酸化試薬が必要であることである。m-クロロ過安息香酸は一般的な選択肢であるが、より最近の文献は、環境に優しい試薬、例えば尿素-過酸化水素を用いることを試みている(Merritt, E.; Malmgren, J; Klinke, F;, Olofsson, B; “Synthesis of Diaryliodonium Triflates Using Enviromentally Bening Oxidizing Agents”, Synlett 2009, 14, 2277)。その他の将来性ある酸化剤、例えばTRIAZOXなども、この文脈において十分考えられ得る。
【0016】
式IIIの化合物と式IVの化合物の間の反応は、アリールヨードニウム塩の化学に属する反応である。この反応は、塩基および/または適切な添加剤の存在下で行われ得る。一般原則として、塩基および/または任意のその他の適切な添加剤は、硫黄原子の求核特性を高める。したがって、塩基および/または添加剤の選択は、とりわけ基質(IIIaまたはIIIb)の性質に依存する。先行技術の手順によれば(Krief et al, Synlett 2006, 3, p.484)、水素化ナトリウムなどの強塩基を使用してチオール部分を脱プロトン化してもよい。その他の先行技術の開示は、超原子価ヨードニウム塩とメルカプタンとの反応によってアリールスルフィドが調製されるように、重炭酸ナトリウムなどのそれほど強くない塩基とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとの使用を組み合わせる(Wang et al, Synthetic Communications 2001, 31(8), 1227)。この文脈において、本発明は、反応を行うために様々な塩基を用いてきた。特に、塩基は、ジスルフィド基質IIIbの場合にも同様に有効であることが証明された。さらに、亜鉛およびアルミニウム塩化物も同様にIIIbの場合に用いることができることが報告された(Movassagh et al, Phosphorus, Sulfur, Silicon, 2005, 180, 2275)。塩基および/または適切な添加剤の選択は、本発明の文脈において重要ではなく、当業者の共通する一般的知識によって実現することができる。
【0017】
反応媒体は、極性非プロトン性溶媒、無極性溶媒、および深共晶溶媒(DES)から選択されてもよい。DESは、ルイスまたはブレンステッド酸および塩基であって様々なアニオン性および/またはカチオン性種を含有できるものの、共晶混合物から形成された系である。それらは、より環境に優しいと見なされ、かつ低蒸気圧およびリサイクルの可能性などの有用な特性を持たせる。DES溶媒の包括的検証は、SmithらによるChem. Rev. 2014, 114, 11060に見出すことができる。
【0018】
さらに別の好ましい実施形態では、Rは水素であり、式IIIの化合物は式IIIaの化合物である。
【0019】
さらに別の好ましい実施形態では、Rはo-アミノチオフェノール基であり、式IIIの化合物は式IIIbの化合物である。
【0020】
さらに別の好ましい実施形態において、式IIIとIVの化合物の間の反応を含む上述の方法は、得られた副生成物(式Vの化合物)を単離することをさらに含む。次いで式Vの化合物は、再び式IVの化合物が得られるようにリサイクルされてもよい。
【0021】
第2の実施形態では、本発明は、下記の工程:
a) 式III[式中、Rは水素またはo-アミノチオフェノール基である]の化合物を、式IVの化合物との反応に供する工程;
b) 式Iの化合物を式IIの化合物に変換する工程、
を含み、式中、Xは第1の実施形態で定義されたアニオンである、式IIの化合物を調製するための方法を提供する。
【0022】
式Iの化合物から式IIの化合物への変換は、先行技術に開示される手順に従い実現され得る。変換は、当業者の一般的知識により実現されてもよい。
【0023】
WO2014161976において、式Iの化合物は、式Iの化合物と2,2’-ジクロロジエチルアミンとを反応させることによって、式IIの化合物に変換される。さらに、2,2’-ジブロモジエチルアミンまたは2,2’-イミノジエタノールジメタンスルホネートを代わりに使用してもよい。
【0024】
WO2015155153において、式Iの化合物は、芳香族アミンをヨウ素に置き換えることによって最初にそのそれぞれのヨウ素に変換され、この中間体を、配位子の存在下でCuIおよびピペラジンと反応させて、式IIの化合物を得る。
【0025】
WO2016125191において、式Iの化合物は、二重アルキル化アミン中間体(式Nの化合物)に最初に変換され、次いでそのそれぞれの閉環誘導体(式Mの化合物)に変換され、必要な場合にはアミン基の脱保護が式IIの化合物を提供する。
【0026】
EP3023417において、式Iの化合物は、ビス-置換中間体(式Lの化合物、Rはアルデヒドまたはカルボキシ基である)に変換され、引き続き式Qの化合物(Zは、Hまたはアミノ保護基)と反応して、ピペラジン環を持つそれぞれの誘導体を提供し、必要な場合には、アミン基の脱保護が式IIの化合物へと向かう。
【0027】
CN104230852では、式Iの化合物を、N,N-ビス(2-クロロエチル)-4-メチル-ベンゼンスルホンアミドと反応させ、得られた中間体化合物を、p-トルオリルスルホニル部分から脱保護して、式IIの化合物を得る。
【0028】
CN104829557では、式Iの化合物と塩化2-クロロ-アセチルとを反応させることによって、式Iの化合物を式Rの化合物に変換し、その後、2-アミノ-エタノールと反応させ、環化する。式Rの中間体化合物を、還元条件下で式IIの化合物に変換する。
【0029】
したがって当業者は、上述の方法のいずれかを使用することによって、式Iの化合物を式IIの化合物に変換し得る。
【0030】
好ましい実施形態では、工程bは、式Iの化合物と2,2’-ジクロロジエチルアミンおよび2,2’-ジブロモジエチルアミンおよび2,2’-イミノジエタノールジメタンスルホネートとを反応させることによって行われる。
【0031】
さらに別の好ましい実施形態では、式IIIの化合物が式IIIaの化合物である。
【0032】
さらに別の好ましい実施形態では、式IIIの化合物が式IIIbの化合物である。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、式Iの化合物を調製するための方法における式IVの化合物の使用を提供する。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物を調製するための方法における式IIIの化合物の使用を提供する。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明は、式IIの化合物を調製するための方法における式IVの化合物の使用を提供する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、式IIの化合物を調製するための方法における式IIIの化合物の使用を提供する。
【0037】
他の実施形態では、本発明は、式IIIの化合物を式IVの化合物と反応させて式Iの化合物を得る工程を含む、式IIの化合物を調製するための方法を提供する。
【実施例
【0038】
実施例1: アリールヨードニウム塩IVの合成
実施例1a
m-キシレン(52mmol、6.4ml)を、10mlの硫酸および70mlの氷酢酸に溶解し、得られた混合物を、撹拌しながら50~55℃に温めた。同じ温度を保ちながら、過ヨウ素酸ナトリウム(4.28g、20mmol)を1.5時間かけて少しずつゆっくり添加した。撹拌を継続し、同じ温度で1.5時間温めた。冷却した最終混合物を、撹拌した氷水(200g)に注いだ。得られた固体を濾別した。冷濾液をジエチルエーテルで抽出し(4×100ml)、エーテル抽出物を廃棄した。臭化カリウム(4.0g、33.6mmol)を水(20mL)に溶かした溶液を、激しく撹拌された残りの水溶液に添加した。1時間後、沈殿した臭化ジアリールヨードニウム(IVa)を濾過によって収集し、濾液が中性になるまで結晶を冷水で十分洗浄し、真空乾燥器内で乾燥することにより、粗生成物(IVa)5.3gが得られた。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.87- 7.85 (d, J=8,2Hz, 2H), 7.09 (s, 2H), 6.89- 6.87 (d, J=8,2Hz, 2H), 2.58 (s, 6H), 2.26 (s, 6H).
13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 142.16, 140.08, 136.43, 132.22, 129.53, 121.69, 25.49, 21.15
【0039】
実施例1b
ヨウ素(2.98g、11.8mmol)、m-キシレン(5.81ml、47.2mmol)、およびm-クロロ過安息香酸(6.12g、35.4mmol)を、115.5 ジクロロメタンに添加する。p-トルエンスルホン酸一水和物(8.968g、47.2mmol)を添加し、得られた混合物を還流条件下で14時間撹拌する。TLC分析が、出発物質の消費を示す場合、加熱を中断し、反応混合物を減圧下で濃縮する。次いで残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーに供することにより、化合物IVbが黄色固体(融点159~160℃)として得られた。
【0040】
回収された1-ヨード-2,4-ジメチル-ベンゼンからのアリールヨードニウム塩IVの合成
1-ヨード-2,4-ジメチル-ベンゼンを使用して、Bielawksi et al, ChemistryOpen 2014, 3 (1), pp 19-22およびMonastyrskyi et al, J. Org. Chem. 2015, 80 (5), pp 2513-2520に開示される先行技術の手順に従い、新たにアリールヨードニウム塩(式IVの化合物)を調製する。
【0041】
実施例2: アミノチオフェノールIIIaからの式Iの化合物の合成
実施例2a
ジアリールヨードニウム塩IVa(150mg、0.36mmol)、および水素化ナトリウムの鉱油中60%分散体(29mg、0.72mmol)を、オートクレーブに添加する。次いでアミノチオフェノールIIIa(0.077ml、0.72mmol)を、2.5mlのテトラヒドロフランと共に添加する。混合物を、反応が終了するまで撹拌する。
【0042】
DM水を添加し、得られた混合物を、ジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を留去し、残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーに供することにより、式Iの化合物47mg(収率57%)が得られる。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンも、定量的収率(88mg)で単離した。
【0043】
実施例2b
ジアリールヨードニウム塩IVa(150mg、0.36mmol)、および水素化ナトリウムの鉱油中60%分散体(29mg、0.72mmol)を、丸底フラスコに添加する。次いでアミノチオフェノールIIIa(0.077ml、0.72mmol)を、2.5mlのジメチルスルホキシドと共に添加する。混合物を、反応が終了するまで撹拌する。
【0044】
DM水を添加し、得られた混合物をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を留去し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーに供することにより、式Iの化合物が41mg(収率50%)得られる。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンも、86%の収率(72mg)で単離した。
【0045】
実施例2c
ジアリールヨードニウム塩IVa(150mg、0.36mmol)、および水素化ナトリウムの鉱油中60%分散体(29mg、0.72mmol)を、丸底フラスコに添加する。次いでアミノチオフェノールIIIa(0.077ml、0.72mmol)を、2.5mlのトルエンと共に添加する。混合物を、反応が終了するまで撹拌する。
【0046】
DM水を添加し、得られた混合物をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を留去し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーに供することにより、式Iの化合物39mg(収率47%)が得られる。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンも、定量的収率(88mg)で単離した。
【0047】
実施例2d
ジアリールヨードニウム塩IVa(0.15g、0.36mmol)およびナトリウムメトキシド(39mg、0.72mmol)を、丸底フラスコに添加する。次いでアミノチオフェノールIIIa(0.077ml、0.72mmol)を、2.5mlのトルエンと共に添加する。混合物を、反応が終了するまで撹拌する。
【0048】
DM水を添加し、得られた混合物をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を留去し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーに供することにより、式Iの化合物39mg(収率47%)が得られる。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンも収率92%(76mg)で単離した。
【0049】
実施例2e
ジアリールヨードニウム塩IVa(0.15g、0.36mmol)およびナトリウムメトキシド(39mg、0.72mmol)を、丸底フラスコに添加する。次いでアミノチオフェノールIIIa(0.077ml、0.72mmol)を、2.5mlのメタノールと共に添加する。混合物を、反応が終了するまで撹拌する。
【0050】
DM水を添加し、得られた混合物をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機層を、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を留去し、残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーに供することにより、式Iの化合物21mg(収率25%)が得られる。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンも、56%の収率(47mg)で単離された。
【0051】
実施例2f
ジアリールヨードニウム塩IVb(0.1g、0.19mmol)およびアミノチオフェノールIIIa(0.0203ml、0.19mmol)を、オートクレーブ内で5mlの1,4-ジオキサンに溶解する。トリフルオロ酢酸を、撹拌しながら添加する(0.056ml、0.76mmol)。混合物を、反応が終了するまで110℃で撹拌する。反応混合物を室温まで冷ます。DM水を添加し、得られた混合物をジエチルエーテルで3回抽出する。合わせた有機層をDM水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥する。溶媒を留去し、残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーに供することにより、式Iの化合物が得られる。
【0052】
実施例3: ジスルファンIIIbからの式Iの化合物の合成
実施例3a
DMSO(1ml)を、撹拌棒を含有する5mlのシールド管に添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリンIIIb(59.6mg、0.24mmol)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウムIVa(200mg、0.48mmol)を添加した。この後、tert-カリウムブトキシド(67.3mg、0.6mmol)を少しずつ添加し、得られた反応混合物を40~45℃で15分間撹拌し、次いで80℃で加熱した。反応の進行を、TLCによってモニターした。反応(3時間)が終了したら、混合物を室温に冷却し、水に注ぎ、酢酸エチル10mLで抽出した。合わせた有機相を、10mlのブラインで2回抽出した。まず、有機層を、10mlの37%HClで2回洗浄した。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンを、有機相から純生成物として回収し(収率62%)、それに対して2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンの塩酸を、水性相から回収した。水性相のpHを、固体の重炭酸ナトリウムの添加により7に調節し、酢酸エチルで抽出する。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮することにより、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンが純粋な生成物(収率99%)として得られた。
【0053】
式Iの化合物の分光分析データ
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.35 (d, J=7,8Hz, 2H), 7.23-7.20 (t, 1H), 7.01 (s, 1H), 6.86-6.85 (d, J=8,2Hz, 1H), 6.81-6.79 (d, J=8,3Hz, 1H), 6.77- 6.74 (t, 1H), 6.72-6.71 (d, J=7,8Hz, 1H), 2.39 (s, 3H), 2.27 (s, 3H),.
13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 148.38, 136.60, 135.79, 135.36, 131.74, 131.20, 130.48, 127.33, 126.60, 118.86, 115.34, 115.13, 20.82, 20.07.
【0054】
回収された1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンの分光分析データ
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.68-7.66 (d, J=8,7Hz, 1H), 7.07 (s, 1H), 6.71-6.69 (d, J=8,1Hz, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.28 (s, 3H).
13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 141.00, 138.64, 138.07, 130.76, 128.34, 97.01, 27.92, 20.85.
【0055】
実施例3b
DMSO(2ml)を、撹拌棒を含有する5mlのシールド管に添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリンIIIb(119mg、0.48mmol)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウムIVa(400mg、0.96mmol)を添加した。この後、BuOK(135mg、1.2mmol)を少しずつ添加し、得られた反応混合物を、40~45℃で15分間撹拌し、次いで80℃で加熱した。1時間、2時間、および3時間後、反応質量を、4/1のシクロヘキサン/酢酸エチルでTLCによりチェックし、その後、アリコートの後処理を水および酢酸エチルで行う。目標生成物への最大変換率は、60%であった。
【0056】
反応混合物を室温に冷却し、水に注ぎ、2×10mLの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を、2×10mlのブラインで抽出した。有機層を、2×10mlの37%HClで洗浄した。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンを純生成物(160mg)として得たのに対し、水性相には、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンおよび2,2’-ジスルファンジイルジアニリンの塩酸があった。水性相のpHを、固体のNaHCOの添加により7に調節し、2×10mlの酢酸エチルで抽出する。有機層をNaSOで乾燥し、エバポレートして、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンIおよび2,2’-ジスルファンジイルジアニリンIIIbの混合物(200mg)を得た。
【0057】
実施例3c
DMF(0.2ml)を、撹拌棒を含有する5mlの丸底フラスコに添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリンIIIb(12mg、0.048mmol)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウムIVa(40mg、0.096mmol)を添加した。この後、BuOK(13.5mg、0.12mmol)を少しずつ添加し、得られた反応混合物を、40~45℃で15分間撹拌し、次いで80℃で加熱した。1時間、2時間、および3時間後、反応質量を、4/1のシクロヘキサン/酢酸エチル中でTLCによりチェックし、その後、アリコートの後処理を水および酢酸エチルで行う。目標生成物への最大変換率は、60%であった。
【0058】
実施例3d
MeCN(0.2ml)を、撹拌棒を含有する5mlの丸底フラスコに添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリン(12mg、0.048mmol)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウム(40mg、0.096mmol)を添加した。この後、BuOK(13.5mg、0.12mmol)を少しずつ添加し、得られた反応混合物を、40~45℃で15分間撹拌し、次いで80℃で加熱した。反応の進行を、TLCによってモニターした。1時間、2時間、および3時間後、反応質量を、4/1のシクロヘキサン/酢酸エチル中でTLCによりチェックし、その後、アリコートの後処理を水および酢酸エチルで行う。目標生成物への最大変換率は、40%であった。
【0059】
実施例3e
DMSO(2ml)を、撹拌棒を含有する5mlのシールド管に添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリン(59.6mg、0.24mmol)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウム(200mg、0.48mmol)を添加した。この後、tBuOK(67.3mg、0.6mmol)を少しずつ添加し、得られた反応混合物を40~45℃で15分間撹拌し、次いで80℃で加熱した。反応の進行を、TLCによってモニターした。1時間、2時間、および3時間後、反応質量を、4/1のシクロヘキサン/酢酸エチル中でTLCによりチェックする。約100μlを反応質量から引き出し、飽和ブラインに注ぐ。混合物を酢酸エチルにより抽出し、有機層は、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンおよび2,2’-ジスルファンジイルジアニリンの95:5の混合物を含有することが見出される。反応混合物を室温に冷却し、10mlの飽和ブラインに注ぎ、2×10mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を、2×10mlの9N HClで洗浄した。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンが、NaSOでの乾燥およびエバポレーション後に、純生成物(80mg)として得られた。水性相には、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンおよび2,2’-ジスルファンジイルジアニリンの塩酸が残っていた。水性相のpHを、固体NaHCOの添加により7に調節し、3×10mlの酢酸エチルで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、エバポレートすることにより、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリン97mgが得られた。
【0060】
実施例3f
DMSO(17ml)を、撹拌棒を含有する三つ口丸底フラスコに添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリン(1.192g)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウム(4.0g)を添加した。BuOK(1.344g)を少しずつ、40~45℃で30分間にわたり添加した。次いで混合物を、80℃で加熱する。反応の進行を、TLCによってモニターした。反応が終了したら(3時間)、混合物を室温に冷却し、50mlの飽和ブラインに注ぎ、2×40mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、3×50mlのブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を留去した。有機層を濃縮することにより、油状混合物が得られる。油状混合物に、塩化水素をジエチルエーテル(8ml)に溶かしたものを、ジエチルエーテル(20ml)と共に撹拌しながら添加した。2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリン塩酸塩を沈殿させ、濾過し、減圧下で乾燥させる(1.72g)。
【0061】
濾液には、1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンおよび2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンが遊離塩基として存在する。濾液を濃縮して乾燥し、塩化水素をジエチルエーテル(8ml)に溶かしたものを、シクロヘキサン(50ml)と共に残留物に添加する。2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリン塩酸塩を沈殿させる。濾液を濃縮することにより、粗製の1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンが得られる。
【0062】
実施例3g
下記の実施例の目的で、DES-尿素、即ち塩化コリン:尿素が1:2のイオン性化合物を、ACIE 2014 53 23 5969に開示される手順に従い調製した。
【0063】
Des-尿素(0.7ml)を、撹拌棒を含有するシールド管に添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリン(29.8mg)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウム(100mg)を添加した。BuOK(33.65mg)を少しずつ、40~45℃で5分間にわたり添加した。次いで混合物を、80℃で加熱する。反応の進行を、TLCによってモニターした。反応が終了したら(3時間)、混合物を室温に冷却し、飽和ブラインに注ぎ、酢酸エチル10mLで2回抽出した。有機層を合わせ、10mlの9N HClで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去することにより、粗油状生成物として1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼン26mgが得られた。水性相は、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリン(式Iの化合物のHCl塩)の塩酸を含む。水性相のpHを、固体のNaHCOの添加により7に調節し、10mlの酢酸エチルで2回、新たに抽出する。有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、エバポレートすることにより、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンが粗油状生成物(48mg)として得られた。
【0064】
実施例3h
下記の実施例の目的で、DES-グリセロール、即ち塩化コリン:グリセロールが1:2のイオン性化合物を、ACIE 2014 53 23 5969に開示される手順に従い調製した。
【0065】
Des-グリセロール(0.7ml)を、撹拌棒を含有するシールド管に添加した。このフラスコに、2,2’-ジスルファンジイルジアニリン(29.8mg)および臭化ビス(2,4-ジメチルフェニル)ヨードニウム(100mg)を添加した。BuOK(33.65mg)を少しずつ、40~45℃で5分間にわたり添加した。次いで混合物を、80℃で加熱する。反応の進行を、TLCによってモニターした。反応が終了したら(3時間)、混合物を室温に冷却し、飽和ブラインに注ぎ、酢酸エチル10mLで2回抽出した。有機層を合わせ、10mlの9N HClで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去した。1-ヨード-2,4-ジメチルベンゼンが、粗油状生成物(27mg)として得られた。水性相は、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリン アニリンの塩酸を含む(式Iの化合物のHCl塩)。水性相のpHを、固体のNaHCOの添加により7に調節し、10mlの酢酸エチルで2回抽出する。有機層を合わせ、NaSO上で乾燥し、溶媒をエバポレートすることにより、2-((2,4-ジメチルフェニル)チオ)アニリンが粗油状生成物(46mg)として得られた。