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特許7389763紙ブッシングの含浸における使用用の硬化性混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】紙ブッシングの含浸における使用用の硬化性混合物
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/52 20060101AFI20231122BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20231122BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20231122BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20231122BHJP
   C08L 55/04 20060101ALI20231122BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231122BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20231122BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01B3/52 A
C08G59/42
C08K5/09
C08K5/54
C08L55/04
C08L63/00 A
C08L75/04
H01B3/40 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572620
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056468
(87)【国際公開番号】W WO2019175338
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】18162344.8
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイゼル,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ビルベルス,フーベルト
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0203897(US,A1)
【文献】特表2009-503169(JP,A)
【文献】特表2014-518921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/52
C08G 59/42
C08K 5/09
C08K 5/54
C08L 55/04
C08L 63/00
C08L 75/04
H01B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(BADGE);BADGEと異なるポリグリシジルエーテル及び/又は脂環式エポキシ樹脂;N-グリシジル成分;ナノサイズ又は溶解可能強靭化剤;及びシラン成分を含む樹脂組成物並びに
b)メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)及び硬化剤組成物の100pbw当たり0.1ないし0.001pbwの量で存在する少なくとも1種の硬化促進剤を含む硬化剤組成物
を含む紙ブッシングの含浸における使用のための硬化性混合物であって、
100pbwの樹脂組成物当たりのpbwとしての、樹脂組成物の成分の比率は以下の通りであり:
30-75のBADGE;
20-50のBADGEと異なるポリジグリシジルエーテル及び/又は脂環式エポキシ樹脂;
2-10のN-グリシジル成分;
2-10のナノサイズの又は溶解可能な強靭剤化剤;
1-3のシラン成分;
0-3の他の成分、
100pbwの硬化剤組成物当たりのpbwとしての、硬化剤組成物の成分の比率は以下の通りであり:
99.9-99.999のMTHPA;
0.001-1.0の促進剤、
硬化剤組成物に対する樹脂組成物の比率は、硬化性混合物中の無水物基に対するエポキシの化学量論比に関して80ないし120%の範囲内である、
硬化性混合物
【請求項2】
BADGEのISO 3001に従うエポキシ指数が3.5と5.9eq/kgの間の範囲内である請求項1に記載の硬化性混合物。
【請求項3】
BADGEのISO 3001に従うエポキシ指数が5.0と5.9eq/kgの間の範囲内である請求項2に記載の硬化性混合物。
【請求項4】
BADGEと異なるポリグリシジルエーテルがビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-E-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-ジグリシジル-エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロ-エチレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニル-メタン-ジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-フルオレン-ジグリシジルエーテル、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール-ジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック、エポキシクレゾールノボラック又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項1ないし3のいずれかに記載の硬化性混合物。
【請求項5】
脂環式エポキシ樹脂がビス-(エポキシシクロヘキシル)-メチルカルボキシレート又はヘキサヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン-ジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、4-メチルテトラヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項1ないし4のいずれかに記載の硬化性混合物。
【請求項6】
N-グリシジル成分がN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレン-ビス-ベンゼンアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-メチレン-ビス[N,N-ビス-(2,3-エポキシプロピル)アニリン]、2,6-ジメチル-N,N-ビス[(オキシラン-2-イル)メチル]アニリン又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項1ないし5のいずれかに記載の硬化性混合物。
【請求項7】
ナノサイズ強靭化剤が(i)シリコーン及び有機ブロックを有するブロックコポリマー及び/又は(ii)エポキシ樹脂中のナノサイズSiO2粒子から選ばれる請求項1ないし
6のいずれかに記載の硬化性混合物。
【請求項8】
溶解可能強靭化剤が(i)ポリウレタンと4,4’-イソプロピリデン-ビス[2-アリルフェノール]に基づく強靭化剤及び/又は(ii)官能基化ポリブタジエンから選ばれる請求項1ないし6のいずれかに記載の硬化性混合物。
【請求項9】
シラン成分が[3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]トリメトキシシラン又は他のエポキシ官能基性若しくはアミン官能基性アルコキシシランである請求項1ないし8のいずれかに記載の硬化性混合物。
【請求項10】
硬化剤組成物に対する樹脂組成物の比率が、硬化性混合物中の無水物基に対するエポキシの化学量論比に関して90ないし110%の範囲内である請求項に記載の硬化性混合物。
【請求項11】
硬化剤組成物に対する樹脂組成物の比率が、硬化性混合物中の無水物基に対するエポキシの化学量論比に関して95ないし105%の範囲内である請求項10に記載の硬化性混合物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の硬化性混合物が含浸された紙ブッシング。
【請求項13】
紙ブッシングが高電圧用途のためのブッシングである請求項12に記載の紙ブッシング。
【請求項14】
高電圧用途のための紙ブッシングのため含浸系としての請求項1ないし11のいずれかに記載の硬化性混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本開示は、特に紙ブッシングの含浸における使用用の硬化性混合物、そのような混合物により含浸された紙ブッシング並びにそのような混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
樹脂含浸紙(RIP)ブッシングは、例えば高電圧スイッチギヤ又は変圧器のような高電圧装置に用途を見出す。
【0003】
そのようなブッシングの導電性の芯は通常紙で巻かれ、隣接するそのような巻紙(paper windings)の間に電気メッキが挿入される。硬化性液体樹脂/硬化剤混合物が次いで紙の含浸のためにアセンブリ(assembly)中に導入され、続いて硬化される。
【0004】
そのようなRIPブッシングに関連する多数の特許、例えば特許文献1がある。
【0005】
特許文献2は、0.02-10重量%のメラミンとジシアンジアミドの混合物を含み、ここでメラミン:ジシアンジアミドの比率は1-5:1-4であるセルロース性シート材料の層であって、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の100部当たり10-60部の無水マレイン酸架橋剤の反応から得られ、ここでエポキシ樹脂は好ましくは3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-メチルシクロ-ヘキサン-カルボキシレート又はジシクロペンタジエンジオキシドである不溶性の塊(infusible mass)を用いて結合された(bound together with)セルロース性シート材料の層を含む電気絶縁材料及びブッシングを記載している。他の架橋剤は例えばドデセニルコハク酸無水物、トリメリト酸無水物又はヘキサヒドロフタル酸無水物の場合がある。しかしながらこの含浸系はいくらか高価である。
【0006】
特許文献3は、少なくとも部分的に高電圧導電体の電場の勾配をゆるくする(grading)ためであって、高分子マトリックス及びその中に埋め込まれた繊維を含む高電圧導電体を有する高電圧装置において用いるための複合材料に関する。
【0007】
特許文献4は、高度に充填剤が加えられたエポキシ樹脂組成物並びに鋳造法及び注型封入法におけるそれらの使用に関する。そのような組成物を特殊な含浸法のために、すなわちイグニッションコイルの含浸のために用いることもできる。そのような用途において、充填剤が加えられた系は、充填剤が巻き線(windings)においてろ過され、正味の樹脂の一部のみが非常に微細な巻き線の間に浸透できるようなやり方で用いられる場合がある。特許文献4に記載されている組成物は触媒的に硬化する系であり、ここで実施例3において用いられるメチルテトラヒドロフタル酸無水物はスルホニウム塩のための担体としてのみ用いられ、1-メチルイミダゾールは促進剤として用いられずにスルホニウム塩の安定剤として用いられる。従ってそのような系においてメチルテトラヒドロフタル酸無水物は硬化剤ではない。そうではなく、スルホニウム塩がエポキシ樹脂の単独重合を開始させる硬化剤である。そのような種類の化学は、それが遥かに速すぎ、必要な発熱の滑らかな放出を伝えないので、紙ブッシングの含浸のために役立たない。さらに、特許文献4の実施例3に示されているエポキシ樹脂当たりのメチルテトラヒドロフタル酸無水物の量は、適切な重付加型の硬化のためには遥かに少なすぎる(化学量論下で、それはスルホニウム塩のための担体として働くことのみが必要なので)。最後に、特許文献4の実施例
3に従うエポキシ系はわずか0.5ないし1%の大きさの不満足に低い破断点伸びを生ずる。
【0008】
RIPブッシングの製造のためのビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(BADGE)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)及びベンジルジメチルアミン(BDMA)の混合物の使用も既知である。そのような混合物が含浸された紙ブッシングは、硬化した混合物が非常に脆く、それは亀裂を生じる場合があるので、所望の厚さ及び表面の質に機械加工する(get machined)のが困難なことがある。さらに、この系は比較的潜在性であり、それはすでに反応の開始に比較的高い温度を必要とすることを意味する。しかしながら開始すると反応は速く、発熱反応エンタルピーを速すぎる速度で放出する場合があり、それは局所的な過熱を生ずる場合があり、収縮及び亀裂のような関連する問題を伴う。
【0009】
RIPブッシングの製造のための別の既知の系は、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)及びMHHPAを含む硬化剤組成物と混合されたBADGEに基づく。この系は前節に記載したものより低い活性化エネルギーを有するが、比較的低い機械的性能のためにそれはまだ最適ではない。さらに、系は比較的高価である。
【0010】
しかしながら健康的及び環境的理由で、REACH規則においてSVHC(高懸念物質(Substance of Very High Concern))と分類されているMHHPAを含まない含浸系を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第1 798 740 A1号明細書
【文献】米国特許第3,271,509 A号明細書
【文献】米国特許第2015/0031789 A1号明細書
【文献】欧州特許第1 907 436 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
開示の目的
本開示の基礎となる目的は、MHHPA及びREACH規則に従ってSVHC又は化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(the Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)に従って毒性と現在表示されている他の材料を含まず、より高い靭性を与え且つ発熱の熱(exothermic heat)のより滑らかな放出に導くことにより前に議論した既知の系の問題を克服しながら、例えば120ないし130℃のTg、23℃において<0.3%の50Hzにおけるタンデルタ、40℃において<250mPasの粘度、<55kJ/モルの活性化エネルギー(80℃及び140℃で測定されるゲル化時間を介して決定される)、>80MPaの引張り強さ、>3.5%の破断点伸び、KIC>0.7MPa.m0.5及び>150J/m2のGICを含むRIP用途のためのすべての他の必要な重要品質側面を保持している、特に高電圧用途用の紙ブッシングの含浸のための費用対効果の高い系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示
本明細書で他にことわらなければ、本開示と結び付けて用いられる技術用語は当業者が通常理解する意味を有するものとする。さらに、状況により他の意味が必要とされなければ、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0014】
明細書中で挙げられるすべての特許、公開特許出願及び非特許出版物は、本開示が関係する当業者の熟練者のレベルの指標である。本出願のいずれかの部分において言及されるすべての特許、公開特許出願及び非特許出版物は明らかに、個々の特許又は出版物が特定的且つ個別に引用することによりそれらが本開示と矛盾しない程度まで本明細書の内容となると示される場合と同じ程度まで、それらの記載事項全体が引用することにより本明細書の内容となる。
【0015】
本明細書において開示される組成物及び/又は方法のすべては、本開示を見て不必要な実験なしで製造され得、実施され得る。本開示の組成物及び方法を好ましい態様の点で記載するが、本開示の概念、精神及び範囲から逸脱することなく組成物及び/又は方法に並びに本明細書に記載される方法の段階又は段階の順序において変更が適用される場合があることは、当業者に明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の置き換え及び修正は本開示の精神、範囲及び概念内であるとみなされる。
【0016】
本開示に従って用いられる場合、以下の用語は他にことわらなければ以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0017】
“a”又は“an”という用語の使用は、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」又は「含む(containing)」という用語(あるいはそのような用語の変形)と一緒に用いられる場合、「1つ」を意味する場合があるが、それは「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0018】
「又は」という用語の使用は、選択肢(alternatives)のみを指すと明らかに示されていなければ、並びに選択肢が互いに排他的である場合のみに、「及び/又は」を意味するために用いられる。
【0019】
本開示全体を通じて、「約」という用語は、値が定量装置、機構又は方法に関する誤差の固有の変動或いは測定されるべき対象の間に存在する固有の変動を含むことを示すために用いられる。例えば、しかし制限としてではなく、「約」という用語が用いられる場合、それが指す指定される値はプラス又はマイナス10パーセント又は9パーセント又は8パーセント又は7パーセント又は6パーセント又は5パーセント又は4パーセント又は3パーセント又は2パーセント又は1パーセント又はそれらの間の1つ以上の分数だけ変わる場合がある。
【0020】
「少なくとも1つ」の使用は1つ並びに1つより大きいいずれの量も含み、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに限られないことが理解されるであろう。「少なくとも1つ」という用語はそれが指す用語に依存して最高で100又は1000以上に拡大される場合がある。さらに、100/1000の量は、下限又は上限も満足な結果を生む場合があるので、制限と考えられるべきではない。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」のような含む(comprising)のいずれかの形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)
」及び「有する(has)」のような有する(having)のいずれかの形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」のような含む(including)のいずれかの形態)又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び含む(contain))のような含む(containing)のいずれかの形態)という用語は包括的又は非制限的であり、追加の挙げられていない要素又は方法段階を排除しない。
【0022】
「又はそれらの組み合わせ」並びに「及びそれらの組み合わせ」という句は、本明細書で用いられる場合、前記の用語に先行する挙げられている項目のすべての順列及び組み合わせを指す。例えば「A、B、C又はそれらの組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC又はABC及び特定の状況において順序が重要である場合はまたBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABの少なくとも1つ含むことが意図されている。この例で続けると、BB、AAA、CC、AABB、AACC、ABCCCC、CBBAAA、CABBBなどのような1つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせは明らかに含まれる。当業者は、状況から他であることが明らかでなければ、典型的にいずれの組み合わせにおいても項目又は用語の数に制限はないことを理解するであろう。同じ考え方で、「又はそれらの組み合わせ」並びに「及びそれらの組み合わせ」という用語は、「より選ばれる」又は「からなる群より選ばれる」という句と一緒に用いられる場合、句に先行する挙げられている項目のすべての順列及び組み合わせを指す。
【0023】
「1つの態様において(in one embodiment)」、「1つの態様において(in an embodiment)」、「1つの態様に従うと」などの句は一般に、句に続く特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの態様に含まれ、且つ本開示の1つより多い態様に含まれる場合があることを意味する。重要なことに、そのような句は非制限的であり、必ずしも同じ態様を指さず、もちろん1つ以上の前の及び/又は後の態様を指すことができる。例えば添付の請求項において、特許請求される態様のいずれをもいずれの組み合わせにおいても用いることができる。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「室温」という用語は、硬化を助長するために硬化性組成物に熱を直接適用する結果として起こるいずれの温度変化をも除く回りの作業環境の温度(例えば硬化性組成物が用いられる領域、建築物又は室の温度)を指す。室温は典型的に約10℃と約30℃の間、より特定的に約15℃と約25℃の間である。「室温(ambient temperature)」という用語は本明細書で「室温(room temperature)」と互換的に用いられる。
【0025】
本開示に目を向けると前記の目的は:
a)ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(BADGE);BADGEと異なるポリグリシジルエーテル及び/又は脂環式エポキシ樹脂;N-グリシジル成分;ナノサイズ又は溶解可能強靭化剤;及びシラン成分を含む樹脂組成物並びに
b)メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)及び硬化剤組成物の100pbw当たり0.1ないし0.001pbwの量の少なくとも1種の硬化促進剤を含む硬化剤組成物
を含む特に紙ブッシングの含浸における使用のための硬化性混合物により解決される。
【0026】
1つの特定の態様において、硬化剤組成物は硬化剤組成物の100pbw当たりに99.9ないし99.999pbwのMTHPAを含む。
【0027】
好ましい態様において、ISO 3001に従うBADGEのエポキシ指数(epoxy index)は3.5ないし5.9eq/kgの範囲内であり、好ましくはBADGEのISO 3001に従うエポキシ指数は5.0と5.9eq/kgの間の範囲内であ
る。
【0028】
好ましい態様において、BADGEと異なるポリグリシジルエーテルはビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-E-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-ジグリシジル-エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン-ジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン-ジグリシジル-エーテル、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール-ジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック、エポキシクレゾールノボラック又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0029】
別の好ましい態様において、脂環式エポキシ樹脂はビス(エポキシシクロヘキシル)-メチルカルボキシレート又はヘキサヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、ビス(4-ヒドロキシシクロ-ヘキシル)メタン-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン-ジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、4-メチルテトラヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0030】
さらなる態様において、N-グリシジル成分はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレン-ビス-ベンゼンアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-メチレン-ビス[N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン]、2,6-ジメチル-N,N-ビス[(オキシラン-2-イル)メチル]アニリン又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0031】
別の態様において、ナノサイズ強靭化剤は(i)シリコーン及び有機ブロックを有するブロックコポリマー及び/又は(ii)エポキシ樹脂中のナノサイズSiO2粒子から選ばれる。
【0032】
あるいはまた、溶解可能強靭化剤は(i)ポリウレタンと4,4’-イソプロピリデン-ビス[2-アリルフェノール]に基づく強靭化剤及び/又は(ii)官能基化ポリブタジエンから選ばれる場合がある。
【0033】
さらなる態様において、シラン成分は[3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]トリメトキシシラン又は他のエポキシ官能基性若しくはアミン官能基性アルコキシシランである。
【0034】
本開示の別の態様において、樹脂成分はさらに湿潤剤、着色剤、熱安定剤、レオロジー調節剤又は脱気助剤(degassing aids)のような添加剤を含む。
【0035】
本開示の好ましい態様において、硬化剤組成物に対する樹脂組成物の比率は、硬化性混合物中の無水物基に対するエポキシの化学量論比に関して80ないし120%、より好ましくは90ないし110%、最も好ましくは95ないし105%の範囲内である。
【0036】
成分の好ましい比率は以下の通りである(それぞれ100pbwの樹脂組成物当たり又は100pbwの硬化剤組成物当たりのpbw):
【表1】
【表2】
【0037】
さらにもっと好ましくは、成分の比率は以下の通りである(それぞれ100pbwの樹脂組成物当たり又は100pbwの硬化剤組成物当たりのpbw):
【表3】
【表4】
【0038】
本開示は、本発明の硬化性混合物が含浸された紙ブッシングにも関する。
【0039】
好ましくは、紙ブッシングは高電圧用途のためのブッシングである。
【0040】
最後に、本開示は紙ブッシングのための、特に高電圧用途のための含浸系としての本開示の硬化性混合物の使用にも関する。
【0041】
驚くべきことに、本開示により提案される解法は、本明細書上記で示した先行技術の系の問題を克服するRIPブッシングの製造用の系を生ずる。
【0042】
特に前記系はMHHPAのようなSHVCs及びAccelerator DY 062促進剤のような化学品の分類及び表示に関する世界調和システムに従って毒性と表示される他の材料を含まない。さらに、特殊な樹脂組成物は本明細書上記で示したような所望の材料特性を得ることを可能にする。最後に、非常に少量の硬化促進剤の使用は、最適化された反応の制御を可能にする。
【0043】
主樹脂成分としてのビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(BADGE)の他に、樹脂組成物はより詳細に以下の通りに記載される追加の成分を含む。
【0044】
BADGEと異なるポリグリシジルエーテルは、アルカリ性条件下における又は酸性触媒の存在下且つ続いてアルカリ性処理を用いる、少なくとも2つの遊離のアルコール性及び/又はフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族又は脂環式化合物とエピクロロヒドリン又はβ-エピクロロヒドリンの反応から得ることのできるいずれの液体又は固体グリシジルエーテルの場合もある。
【0045】
この型のポリグリシジルエーテルはレゾルシノール又はヒドロキノンのような単環フェノールに由来することができるか、あるいはそれらはビス(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス-4-ヒドロキシフェニル-スルホン、1,1,2,2-テトラキス-4-ヒドロキシフェニル-エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン又は2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンのような多環フェノールに基づき、並びにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラール又はフルフルアルデヒドのようなアルデヒドとフェノールのようなフェノール又は4-クロロフェノール、2-メチルフェノール若しくは4-tert-ブチルフェノールのような環上で塩素原子若しくはC1ないしC9-アルキル基で置換されたフェノールとの縮合により或いは本明細書上記で挙げたもののようなビスフェノールとの縮合により得ることができるノボラックに由来することができる。
【0046】
しかしながらこの型のポリグリシジルエールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-メタン又は2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパンのような脂環式アルコールに由来する場合もあるか、あるいは
それらはN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-アニリン又はp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)-ジフェニルメタンのような芳香環を有する。
【0047】
本開示の状況で用いられるべきそのようなポリグリシジルエーテルの好ましい例は:ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-E-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-ブタン-ジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロ-エチレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニル-メタン-ジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-フルオレン-ジグリシジルエーテル、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール-ジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック及びエポキシクレゾールノボラックである。
【0048】
BADGEと異なるポリグリシジルエーテルの代わりに又はそれに加えて用いられ得る脂環式エポキシ樹脂は、この群の化合物のいずれの場合もある。本開示の状況における「脂環式エポキシ樹脂」は脂環式構造単位を有するいずれのエポキシ樹脂も意味し、それが脂環式グリシジル化合物及びβ-メチルグリシジル化合物の両方並びにシクロアルケンオキシドに基づくエポキシ樹脂を含むことを意味する。
【0049】
適した脂環式グリシジル化合物及びβ-メチルグリシジル化合物は、テトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸及び4-メチルヘキサヒドロフタル酸のような脂環式ポリカルボン酸のグリシジル及びβ-メチルグリシジルエステルである。
【0050】
さらなる適した脂環式エポキシ樹脂は、1,2-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3-ジヒドロキシシクロヘキサン及び1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサ-3-エン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン並びにビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-スルホンのような脂環式アルコールのジグリシジルエーテル及びβ-メチルグリシジルエーテルである。
【0051】
シクロアルケンオキシド構造を有するエポキシ樹脂の例はビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチル-グリシジルエーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エタン、ビニル-シクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-シクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-シクロヘキシルメチル)アジペート及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペートである。
【0052】
好ましい脂環式エポキシ樹脂は、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-シクロヘキシル)プロパン-ジクリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、4-メチルテトラヒドロフタル酸-ジグリシジル-エステル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’-,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸-ジグリシジルエステル及びそれらの組み合わせである。
【0053】
N-グリシジル成分もこの群の化合物のいずれの場合もある。この型のN-グリシジル成分は、エピクロロヒドリンと少なくとも2つのアミン水素原子を含む芳香族アミンとの
反応生成物の脱塩化水素により得ることができる。これらのアミンはアニリン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシレンジアミン又はビス(4-メチルアミノフェニル)メタンの場合がある。しかしながら、1,2-エポキシ基が異なる複素原子又は官能基に結合しているエポキシ樹脂を用いることも可能であり;それらの化合物の中に4-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体又はサリチル酸のグリシジルエーテル-グリシジルエステルがある。
【0054】
典型的な例は、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンビスベンゼンアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミンジフェニルメタン、4,4’-メチレン-ビス[N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン]又は2,6-ジメチル-N,N-ビス-[(オキシラン-2-イル)メチル]アニリンである。
【0055】
本開示の樹脂組成物中で用いられるナノサイズ強靭化剤は、例えばシリコーン及び有機ブロックを有するブロックコポリマー(例えばWacker Chemie AG,Munich,GermanyからのGenioperl(登録商標) W35)又はエポキシ樹脂中のナノサイズSiO2粒子(例えばEvonik Industries,Essen,GermanyからのNanopox(登録商標) E470)の場合がある。ブロックコポリマー中の有機ブロックは、例えばカプロラクトン又は他のラクトンに基づく場合がある。
【0056】
溶解性強靭化剤の例はHuntsman Corporation又はその系列会社(affiliate)(The Woodlands,TX)からのFlexibilizer DY 965(下記を参照されたい)又は官能基化ポリブタジエン(例えばカルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル(CTBN)に基づく強靭化剤)である。
【0057】
本開示の樹脂組成物のシラン成分は、好ましくは[(3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]トリメトキシシランであるが、しかしながらシラン成分は3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランのような他のエポキシ官能基性アルコキシ-シラン又は3-アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミン官能基性アルコキシシランのようなエポキシと反応性の他のシランの場合もある。
【0058】
本開示の硬化剤組成物中で用いられるMTHPAはMTHPAのいずれの異性体又は>99%の純度におけるその混合物の場合もある。
【0059】
本開示の硬化剤組成物中で非常に少量で用いられ得る硬化促進剤は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(Huntsman Corporation又はその系列会社からのAccelerator DY 067)、イミダゾール、ボロンハロゲニド-アミン錯体、いずれかの有機酸のZn塩(例えばZn-ネオデカノエート、Zn-ナフテネート)、例えばJEFFCAT(登録商標) ZF-10触媒(N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル)、JEFFCAT(登録商標) ZR-50触媒(N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン)、JEFFCAT(登録商標) ZR-70触媒(2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、JEFFCAT(登録商標) ZR-110触媒(N,N,N’-トリメチル-アミノエチル-エタノールアミン)、JEFFCAT(登録商標) DPA触媒(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン又はJEFFCAT(登録商標) DMEA触媒(N,N-ジメチルエタノールアミン)(すべてのJEFFCAT(登録商標)触媒はHuntsman Corporation又はその系列会社から入手可能)のような第3級アルキルアミンアミノエチルアルコール又はそれらの対応するエーテルのようなエポキシ/無水物のための典型的
な硬化促進剤の場合がある。好ましくは、硬化促進剤はスルホニウム塩ではない。
【0060】
1つの態様において、組成物は実質的にスルホニウム塩を含まない。
【0061】
1つの特定の態様において、少なくとも1種の硬化促進剤が硬化剤組成物の100pbw当たり0.1から0.001pbwまでの量で硬化剤組成物中に存在する。
【0062】
本開示の系の主な用途は、RIPsを得るための紙ブッシングの含浸用である。しかしながらそれはMHHPA及び/又はHPPAを避けることを目的とする他の電気的用途のため、例えば注型樹脂型高電圧ブッシング及び低電圧ブッシング並びにスイッチギヤ部品又は絶縁部品のための基本材料(basic material)としても有用な場合がある。
【0063】
さらなる詳細及び利点は以下の実施例から明らかになるであろう。そこで用いられる成分は、Genioperl(登録商標) W35及びSilquest(商標) A-187シラン(Momentive Performance Materials,Albany,NYから)を除いてすべてHuntsman Corporation又はその系列会社から入手可能であり、以下の通りである:
1.Araldite(登録商標) MY 740樹脂:5.0-5.9eq/kgのエポキシ指数を有するBADGE
2.Aradur(登録商標) HY 1102硬化剤:MHHPA
3.Accelerator DY 062促進剤:ベンジルジメチルアミン
4.XB 5860:3-7重量%の4,4’-メチレン-ビス[N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)アニリン]を含むBADGEに基づく樹脂調製物
5.Aradur(登録商標) HY 1235硬化剤:HHPAとMHHPAの混合物
6.Araldite(登録商標) LY 556:5.30-5.45eq/kgのエポキシ指数を有するBADGE
7.Aradur(登録商標) HY 918-1硬化剤:ISO 12058に従って25℃において50-80mPasの粘度を有するMTHPAの種々の異性体の混合物
8.JEFFCAT(登録商標) ZF-10触媒:N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシ-エチル-ビスアミノエチルエーテル
9.Accelerator DY 067促進剤:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
10.Flexibilizer DY 965強靭化剤:ポリウレタン及び4,4’-イソプロピリデン-ビス[2-アリルフェノール]に基づく強靭化剤
11.Araldite(登録商標) EPN 1138樹脂:5.5-5.7eq/kgのエポキシ指数を有するエポキシ-フェノール-ノボラック
12.Araldite(登録商標) CY 179-1樹脂:ビス-(エポキシシクロヘキシル)メチルカルボキシレート
13.Araldite(登録商標) MY 9512樹脂:N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレン-ビスベンゼンアミン
14.Araldite(登録商標) PY 302-2樹脂:5.65-5.90eq/kgのエポキシ指数を有するBADGE/BFDGEの混合物
15.Araldite(登録商標) GY 280樹脂:3.57-4.45eq/kgのエポキシ指数を有するビスフェノール-A-エポキシ樹脂
16.Genioperl(登録商標) W35:シリコーン及び有機ブロックを有するブロックコポリマー
17.Silquest A 187シラン:[(3-(2,3-エポキシプロポキシ)-プロピル]トリメトキシシラン
【発明を実施するための形態】
【0064】
比較実施例1(BADGE/MHHPA/BDMA)
200gのAraldite(登録商標) MY 740樹脂を金属反応器中に入れた。次いで180gのAradur(登録商標) HY 1102及び0.1gのAccelerator DY 062促進剤を加えた。次いでアンカー撹拌機を用いて室温で約15分間成分を混合した。最後に混合物を真空に供し、すべて又は実質的にすべての泡を混合物から除去した。
【0065】
次いで混合物を用いてその粘度及びゲル化時間を決定した。
【0066】
混合物の一部を金型(80℃に予備加熱された)中に流し込み、機械的及び電気的試験のための試験試料を調製した。
【0067】
金型を80℃において12時間+130℃において16時間の硬化条件に供した。
【0068】
室温に冷ました後、Tg、機械的及び電気的性質を本明細書に示される標準的な方法に従って決定した。
【0069】
比較実施例2(Araldite(登録商標) MY 740樹脂/Aradur(登録商標) HY 918-1硬化剤/0.05pbw BDMA)
200gのAraldite(登録商標) MY 740樹脂を金属反応器中に入れた。次いで170gのAradur(登録商標) HY 918-1硬化剤及び0.05gのAccelerator DY 062促進剤を加えた。次いでアンカー撹拌機を用いて室温で約15分間成分を混合した。最後に混合物を真空に供し、すべて又は実質的にすべての泡を混合物から除去した。
【0070】
次いで混合物を用いてその粘度及びゲル化時間を決定した。
【0071】
混合物の一部を金型(80℃に予備加熱された)中に流し込み、機械的及び電気的試験のための試験試料を調製した。
【0072】
金型を80℃において12時間+130℃において16時間の硬化条件に供した。
【0073】
室温に冷ました後、Tg、機械的及び電気的性質を標準的な方法に従って決定した。
【0074】
比較実施例3(XB 5860/Aradur(登録商標) HY 1235硬化剤)
200gのXB 5860を金属反応器中に入れた。次いで170gのAradur(登録商標) HY 1235硬化剤を加えた。次いでアンカー撹拌機を用いて室温で約15分間成分を混合した。最後に混合物を真空に供し、すべて又は実質的にすべての泡を混合物から除去した。
【0075】
次いで混合物を用いて粘度及びゲル化時間を決定した。
【0076】
混合物の一部を金型(80℃に予備加熱された)中に流し込み、機械的及び電気的試験のための試験試料を調製した。
【0077】
金型を100℃において6時間+140℃において12時間の硬化条件に供した。
【0078】
室温に冷ました後、Tg、機械的及び電気的性質を標準的な方法に従って決定した。
【実施例1】
【0079】
樹脂A-1の調製
60.450gのAraldite(登録商標) LY 556樹脂を90℃に加熱した。次いで3.9gのGenioperl(登録商標) W35を加え、混合物を90℃で30分間攪拌しながら樹脂中に溶解した。次いで混合物を60℃に冷ました。20gのAraldite(登録商標) EPN 1138樹脂、10gのAraldite(登録商標) CY 179-1樹脂及び5gのAraldite(登録商標) MY 9512樹脂を加え、すべてを一緒に60℃で5分間混合した。最後に0.65gのSilquest(商標) A 187シランを加え、10分間攪拌混入し、樹脂A-1を得た。
【0080】
硬化剤Bの調製
室温で5分間攪拌しながら99.2gのAradur(登録商標) HY 918-1硬化剤を0.8gのAccelerator DY 067促進剤と混合し、マスターバッチBを得た。
【0081】
99gのAradur(登録商標) HY 918-1硬化剤を正確に1.0gのマスターバッチBに加え、5分間攪拌しながら混合し、硬化剤B(0.008%のAccelerator DY 067促進剤を含む)を得た。
【0082】
100gの樹脂A-1に95gの硬化剤Bを加え、次いですべての成分を室温で約15分間、アンカー撹拌機を用いて混合した。最後に混合物を真空に供し、すべて又は実質的にすべての泡を混合物から除去した。
【0083】
次いで混合物を用いてその粘度及びゲル化時間を決定した。
【0084】
混合物の一部を金型(80℃に予備加熱された)中に流し込み、試験試料を調製した。金型を80℃において12時間+130℃において16時間の硬化プログラムに供した。
【0085】
室温に冷ました後、Tg、機械的及び電気的性質を標準的な方法に従って決定した。
【実施例2】
【0086】
樹脂A-2の調製
30gのAraldite(登録商標) GY 280樹脂(約60℃に予備加熱された)を加熱可能な混合容器中に入れた。次いで46.50gのAraldite(登録商標) PY 302-2樹脂、13.0gのAraldite(登録商標) CY 179-1樹脂、5.0gのAraldite(登録商標) MY 9512樹脂及び5gのFlexibilizer DY 965強靭化剤を加えた。最高で60℃まで加熱しながらすべての成分を10分間混合した。40℃に冷ました後、0.50gのSilques(商標) A 187シランを加え、10分間攪拌混入し、樹脂A-2を得た。
【0087】
100gの樹脂A-2に85gの硬化剤B(実施例1を参照されたい)を加え、次いですべての成分を室温で約15分間、アンカー撹拌機を用いて混合した。最後に混合物を真空に供し、すべて又は実質的にすべての泡を除去した。
【0088】
次いで混合物を用いてその粘度及びゲル化時間を決定した。
【0089】
混合物の一部を金型(80℃に予備加熱された)中に流し込み、試験試料を調製した。金型を80℃において12時間+130℃において16時間の硬化プログラムに供した。
【0090】
室温に冷ました後、Tg、機械的及び電気的性質を標準的な方法に従って決定した。
【0091】
調製物組成(formulations)並びに種々の測定の結果を下記の表1に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【0092】
ゲル化時間はISO 9396に従ってGel Norm機器を用いて決定された。
【0093】
引張り強さ及び破断点伸びはISO R527に従って23℃において決定された。
【0094】
MPa・m0.5におけるKIC(臨界応力拡大係数)及びJ/m2におけるGIC(比破壊エネルギー)は、23℃において二重捩じり実験(double torsion experiment)により決定された。
【0095】
TgはISO 11357-2に従って決定された。
【0096】
25枚のろ紙(MN 713型、直径 70mm)をまとめ、5.5cmの内径を有する環を用いてそれらを一緒にプレート上に押すことにより含浸を試験した。この装置(set up)をオーブン中で80℃に予備加熱した。次いで10gの試験系(室温)をろ紙上に注いだ。装置全体を80℃で8時間及び130℃で10時間オーブン中に入れた。硬化後、25枚のろ紙中の何枚が材料により含浸されたかそれを調べた。すべてが含浸されたら、含浸能力は「良」と評価され、そうでない場合は「悪」と評価された。
【0097】
活性化エネルギーEaはこの方法で計算された:
a=(ln((80℃におけるゲル化時間)/分)-ln((140℃におけるゲル化時間)/分))/(1/(80℃*1K/℃+273K)-1/(140℃*1K/℃+273K))*8.31J/(モル*K)/1000J/kJ
【0098】
比較実施例1は工業において最も広く用いられる系:BADGE/MHHPA/BDMAを示す。
【0099】
この参照系の主な問題は、MHHPAについてのREACH問題及びAccelerator DY 062が化学品の分類及び表示に関する世界調和システムに従って毒性とみなされる事実である。
【0100】
さらに、機械的性能及び潜在性すぎる反応(72.6J/モルの高い活性化エネルギー)を改良する必要がある:反応が開始すると(このためにそれは高い温度を必要とする)、それは速すぎる(ある用途のために)速度で進み(processes)、発熱の熱を速すぎる速度で放出する。500gの実験において反応が例えば100℃において開始される場合、温度上昇は117.8℃までに達するであろう。より小さい応力を引き起こすために、反応開始温度と最高温度の間の差はより小さくなければならない。
【0101】
比較実施例2は、MHHPAをMTHPAに置き換えることによる比較実施例1のREACH問題の解決のための最も狭い考え(narrow idea)を示す。REACH
問題は解決されるが、毒性とみなされるAccelerator DY 062、Tgが遥かに低すぎる事実、機械的性質がまだ劣っている事実及び反応が比較実施例1におけるよりさらにもっと潜在性である(Ea=77.3kJ/モル)事実の故のこの系の問題がまだある。発熱実験における温度上昇は121.1℃までにも達する。
【0102】
比較実施例3はXB 5860/Aradur(登録商標) HY 1235硬化剤を示す。この系は事実、ずっと低い活性化エネルギーの故に熱放出の点でずっと良い。しかしながらAradur(登録商標) HY 1235硬化剤を用いてREACH問題を有するままであり、機械的性質は比較実施例1におけるよりさらに悪い。
【0103】
実施例1は、比較実施例1-3の系と比較して優れた機械的性質を有し、低い活性化エネルギーを示すREACH適合(REACH-compliant)毒素非含有系の例である。かくして発熱実験における熱放出は温度を112.1℃までしか上昇させない。
【0104】
本開示に従うこの系は、本明細書上記で挙げたすべての要求を満たす。
【0105】
活性化エネルギーが低いので、それは反応を開始させるためにより低い温度しか必要とせず、かくしてさらに低いピーク温度に導く場合もある。
【0106】
実施例2は実施例1と全く異なる組成を用いる本開示の実現の別の例であるが、しかしながら:REACH適合、毒素非含有、十分に高いTg、すべての参照系と比較してずっと良い機械的性質並びにより低い活性化温度及びかくして発熱の熱のより滑らかな放出並びに優れた含浸能力のような全く類似の性能側面に導く。
【0107】
上記で開示された主題は例であり、制限的ではないと考えられるべきであり、添付の請求項は本開示の真の範囲内に含まれるすべてのそのような修正、強調及び他の態様を包含することが意図されている。かくして本開示の範囲は法律により許される最大の程度まで以下の請求項及びそれらの同等事項の許され得る最も広い解釈により決定されるべきであり、前記の詳細な記述により限定されるか又は制限されるべきではない。