(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】原子炉格納容器の冷却システム
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20231122BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C15/18 A
G21C15/18 M
G21C15/18 W
G21C15/18 T
(21)【出願番号】P 2021004834
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 匠
(72)【発明者】
【氏名】グランジョン ギヨームローラント
(72)【発明者】
【氏名】小野 花梨
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-141594(JP,U)
【文献】特開昭62-194195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358136(US,A1)
【文献】特開昭59-052788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/004
G21C 15/18
G21C 13/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心を内蔵する原子炉圧力容器を格納する鋼製の原子炉格納容器を冷却する冷却システムであって、
前記原子炉格納容器
の外壁に接触する複数の水冷伝熱管と、
前記複数の水冷伝熱管の各々の両端と連結し、前記複数の水冷伝熱管の各々に冷却水を流通させる冷却水配管と、
前記冷却水配管と連通し、前記冷却水配管に冷却水を供給する冷却水槽とを備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記冷却水配管は、補機を冷却する冷却水系統に含まれる配管であり、
前記冷却水槽は、前記補機を冷却する冷却水系統に含まれるサージタンクであることを特徴とする冷却システム。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記冷却水槽が、原子炉ウェルであることを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記冷却水槽の排水口が前記複数の水冷伝熱管の各々より上方に設けられ、
前記複数の水冷伝熱管の下端と前記冷却水槽の排水口を連通する冷水下降用配管と、
前記冷水下降用配管を流れる冷却水の流れを制御する制御弁を備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項5】
請求項4に記載の冷却システムにおいて、
前記制御弁が逆止弁であることを特徴とする冷却システム。
【請求項6】
請求項4に記載の冷却システムにおいて、
前記制御弁が電磁弁であることを特徴とする冷却システム。
【請求項7】
請求項4に記載の冷却システムにおいて、
前記制御弁が、空気圧により冷却水の流れを遮断する遮断弁であることを特徴とする冷却システム。
【請求項8】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記原子炉格納容器の側面が、前記複数の水冷伝熱管により覆われていることを特徴とする冷却システム。
【請求項9】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記複数の水冷伝熱管の内周壁に複数の放熱フィンが設けられていることを特徴とする冷却システム。
【請求項10】
請求項1に記載の冷却システムにおいて、
前記複数の水冷伝熱管の各々には、前記原子炉格納容器の外壁に対向し、前記原子炉格納容器の外壁と面接触する第1側面が設けられていることを特徴とする冷却システム。
【請求項11】
請求項10に記載の冷却システムにおいて、
前記複数の水冷伝熱管のうち隣合う2つの水冷伝熱管の各々には、互いに対向し、互いに面接触する第2側面が設けられていることを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)においては、原子炉圧力容器内で発生する蒸気を原子炉格納容器内のサプレッションプールに導入して凝縮させ、原子炉圧力容器および原子炉格納容器の過圧を防止している。また、サプレッションプールに導入される蒸気で駆動しサプレッションプールの冷却水を原子炉圧力容器内に注水し、炉心の冠水および冷却を維持している。
【0003】
また、蒸気により熱せられるサプレッションプールの冷却水は、残留熱除去系のポンプにより原子炉格納容器外の熱交換器に送られ冷却される。これにより、原子炉格納容器は、温度および圧力の上昇を防止されている。
【0004】
しかし、例えば、全交流電源喪失(Station Black Out:SBO)により残留熱除去系のポンプが停止した場合、サプレッションプールの冷却水を原子炉格納容器外の熱交換器に送ることができず、原子炉格納容器の温度および圧力が長期的に緩やかに上昇する。これにより、原子炉格納容器の放射性物質の閉じ込め機能に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
全交流電源喪失時に原子炉格納容器を継続して冷却できる冷却システムが、特許文献1に開示されている。特許文献1の原子炉格納容器の冷却システムは、冷却水が原子炉格納容器を冷却する外周プールへ原子炉格納容器の外に設置した補給水タンクから重力により給水され、給水調整弁により外周プールの水位に応じて補給水タンクから外周プールへ供給される冷却水の水量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の原子力格納容器の冷却システムは、大量の冷却水を貯蔵する外周プールと補給水タンクが必要で、これらの建設のためにかかる工期やコストの点で改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、全交流電源喪失時等により既存の冷却システムが停止した場合でも原子炉格納容器を継続して冷却でき、工期とコストを抑制できる冷却システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、炉心を内蔵する原子炉圧力容器を格納する鋼製の原子炉格納容器を冷却する冷却システムであって、前記原子炉鋼製容器の外壁に接触する複数の水冷伝熱管と、前記複数の水冷伝熱管の各々の両端と連結し、前記複数の水冷伝熱管の各々に冷却水を流通させる冷却水配管と、前記冷却水配管と連通し、前記冷却水配管に冷却水を供給する冷却水槽とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全交流電源喪失時等により既存の冷却システムが停止した場合でも原子炉格納容器を継続して冷却でき、工期とコストを抑制できる冷却システムを提供できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムを用いた原子力発電プラントの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムにおける複数の水冷伝熱管と原子炉格納容器の配置を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムに用いられる水冷伝熱管の断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムにおける複数の水冷伝熱管の各々の断面形状と、複数の水冷伝熱管と原子炉格納容器の配置を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムを用いた原子力発電プラントの構成を示す概略図である。
【
図6】本発明の第5の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムを用いた原子力発電プラントの構成の一例を示す概略図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムを用いた原子力発電プラントの構成の他の例を示す概略図である。
【
図8】本発明の第6の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムを用いた原子力発電プラントの構成を示す概略図である。
【
図9】本発明の第7の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムを用いた原子力発電プラントの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第7の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムの構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。また、各図面は、互いに直交するXYZ軸により方向を特定し、+Xを「右」、-Xを「左」、+Yを「上」、-Yを「下」、+Zを「前」、-Zを「後」と規定する。また、本発明の冷却システムは、沸騰水型軽水炉(BWR)に用いることができ、原子力発電プラントの熱出力に対して原子炉格納容器の表面積が大きい小型炉(SMR)に特に好適である。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による原子炉格納容器の冷却システム10を用いた原子力発電プラント100の構成を示す概略図で、
図2は、本発明の第1の実施形態による原子炉格納容器の冷却システムにおける複数本の水冷伝熱管と原子炉格納容器の配置を示す概略断面図である。
【0014】
原子力発電プラント100は沸騰水型軽水炉(BWR)で、
図1に示すように、炉心1と、炉心1を内蔵する原子炉圧力容器2と、原子炉圧力容器2を格納する原子炉格納容器3と、原子炉格納容器3を冷却する冷却システム10とを備える。
【0015】
原子炉格納容器3は、原子炉圧力容器を格納するための気密性の高い容器で、冷却システム10により効率よく冷却するために鋼製になっている。また、本実施形態の原子炉格納容器3は略円筒形となっている。
【0016】
冷却システム10は、鋼製の原子炉格納容器3を冷却するシステムで、原子炉格納容器3の側面に接触する複数の水冷伝熱管4と、複数の水冷伝熱管4の各々の両端と連結し、複数の水冷伝熱管4の各々に冷却水CWを流通させる冷却水配管5と、冷却水配管5と連通し冷却水CWを供給する冷却水槽6とを備える。
【0017】
複数の水冷伝熱管4の各々は鋼管で、
図1に示すように原子炉格納容器3の側面に沿ってY軸方向(上下方向)に伸び、原子炉格納容器3の側面に接触する。また、複数の水冷伝熱管4は、
図2に示すように、原子炉格納容器3の周方向に隙間なく配列され、隣合う水冷伝熱管4どうしが接している。これにより、冷却システム10は、原子炉格納容器3の熱を複数の水冷伝熱管4に移動させ、原子炉格納容器3を冷却できる。
【0018】
冷却水配管5は、複数の水冷伝熱管4の各々の両端と連結し、複数の水冷伝熱管4の各々に冷却水CWを流通させるための配管である。
図1に示すように冷却水配管5は、水冷伝熱管4の上端と連結し冷却水配管5において上方(+Y軸方向)に配置される上方配管5aと、水冷伝熱管4の下端と連結し冷却水配管5において下方(-Y軸方向)に配置される下方配管5bと、上方配管5aと下方配管5bとの間に設けられ上方配管5aと下方配管5bとを連結する中間配管5cとを備える。中間配管5cには冷却水ポンプ5dと熱交換器5eが設けられ、冷却水ポンプ5dから熱交換器5eに冷却水が吐出されるように配置されている。
【0019】
なお、冷却システム10の冷却水配管5としては、原子力発電プラント100の補機(図示せず)を冷却する冷却水系統(原子炉補機冷却水系)に含まれる既存の配管を用いることができる。この場合、冷却水ポンプ5dと熱交換器5eには、同じく原子炉補機冷却水系に含まれる冷却水ポンプと熱交換器が用いることができる。
【0020】
冷却水槽6は、冷却水CWが貯蔵されるタンクで、
図1に示すように水冷伝熱管4の上端より上方(+Y軸方向)に配置されている。冷却水槽6の下部(本実施形態では底面)には第1排水口6aが設けられ、第1排水口6aには排水管6bの一端が取り付けられている。そして、排水管6bの他端には上方配管5aが連結し、これにより冷却水槽6と上方配管5aが連通される。そのため、冷却水槽6に冷却水CWを満たすことにより、水冷伝熱管4と冷却水配管5には冷却水CWが確保される。なお、冷却システム10の冷却水槽6としては原子炉補機冷却水系に含まれるサージタンクを用いることができる。
【0021】
(動作)
まず、通常通りに稼動する冷却システム10の動作について説明する。冷却水槽6から注入され、冷却水配管5と水冷伝熱管4に充満する冷却水CWは、冷却水ポンプ5dが稼動することにより冷却水配管5と水冷伝熱管4を循環する。
【0022】
水冷伝熱管4を流通する冷却水CWには、原子炉格納容器3から水冷伝熱管4に移動した熱が移動する。熱が移動した冷却水CWは、水冷伝熱管4から上方配管5aへ、上方配管5aから中間配管5cへ流入する。中間配管5cには冷却水ポンプ5dが設けられていて、冷却水CWは冷却水ポンプ5dにより熱交換器5eへ吐出される。熱交換器5eに送られた冷却水CWは熱交換器5eにより熱が奪われ冷却される。冷却された冷却水CWは、中間配管5cから下方配管5bへ流入し、下方配管5bから再び水冷伝熱管4に送られる。水冷伝熱管4では再び原子炉格納容器3から水冷伝熱管4に移動した熱が冷却水CWに移動する。このように、通常通りに原子力発電プラント100が稼動する場合の冷却システム10は、冷却水ポンプ5dを稼動させることにより冷却水CWを循環させ、原子炉格納容器3を冷却する。
【0023】
次に、全交流電源喪失時等により冷却水ポンプ5dが停止した場合の冷却システム10の動作について説明する。この場合、冷却水ポンプ5dが停止するため、冷却水CWは冷却水配管5と水冷伝熱管4を循環せず、冷却水配管5と水冷伝熱管4に滞留する。
【0024】
水冷伝熱管4に滞留する冷却水CWは、原子炉格納容器3から水冷伝熱管4に移動した熱により熱せられる。これにより、水冷伝熱管4の冷却水CWは、冷却水配管5と冷却水槽6の冷却水CWと比較して相対的に高温になる。そのため、水冷伝熱管4の冷却水CWは上昇し、上方配管5aを介して冷却水槽6に流入する。また、冷却水槽6の冷却水CWは下降し、上方配管5aを介して水冷伝熱管4に流入する。そのため、水冷伝熱管4と冷却水槽6の間には、冷却水CWの自然対流現象が発生する。これにより、水冷伝熱管4の熱を冷却水CWに移動させ、原子炉格納容器3を冷却することができる。
【0025】
特に原子炉圧力容器2と原子炉格納容器3の間に存在する配管(図示せず)が破断し原子炉圧力容器2の崩壊熱を含んだ蒸気が原子炉格納容器3に流入する原子炉冷却材喪失事故(LOCA)時において、原子炉格納容器3を密閉したまま効率よく原子炉格納容器3を冷却できるので、本実施形態は好適である。
【0026】
なお、水冷伝熱管4の上端から第1排水口6aに至るまでの上方配管5a及び排水管6bの高さは単調に増加するように設けることが好ましい。このように上方配管5a及び排水管6bを設けると、冷却水槽6内の冷却水CWが重力により水冷伝熱管4内に容易に導入されるので、水冷伝熱管4と冷却水槽6の間における冷却水CWの対流が発生しやすくなり、原子炉格納容器3を冷却しやすくなる。
【0027】
(効果)
本実施形態の原子炉格納容器3の冷却システム10は、全交流電源喪失時等により冷却水ポンプ5dが稼動せず、通常時における冷却システム10が停止する非常時において、原子炉格納容器3に接する水冷伝熱管4と冷却水槽6の間に冷却水CWの自然対流現象が発生し、原子炉格納容器3を継続して冷却できる。
【0028】
また、本実施形態の原子炉格納容器3の冷却システム10は、大量の冷却水を貯蔵する外周プールを備えないため、工期とコストを抑制できる。特に、本実施形態の原子炉格納容器3の冷却システム10は、冷却水配管5として原子炉補機冷却水系に含まれる既存の配管を用い、冷却水槽6として原子炉補機冷却水系に含まれる既存のサージタンクを用いることができる。そのため、冷却水配管5と冷却水槽6として新規設備を設けなくてもよく、工期とコストをさらに抑制できる。
【0029】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム10に用いられる水冷伝熱管4の断面図である。
【0030】
本実施形態に係る冷却システム10が第1実施形態と異なる点は、水冷伝熱管4の内壁に複数の伝熱フィン4aが設けられている点である。これにより、水冷伝熱管4は冷却水CWと接する表面積が大きくなり、原子炉格納容器3の熱を第1実施形態の円環の水冷伝熱管4よりも多く冷却水CWに移動させることができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム10における複数の水冷伝熱管4の各々の断面形状と、複数の水冷伝熱管4と原子炉格納容器3の配置を示す概略断面図である。
【0032】
本実施形態に係る冷却システム10が第1実施形態と異なる点は、水冷伝熱管4の形状である。具体的には、本実施形態に係る複数の水冷伝熱管4の各々には、原子炉格納容器3の外壁に対向し、原子炉格納容器3の外壁と面接触する第1側面4bが設けられている。これにより、複数の水冷伝熱管4の各々の原子炉格納容器3の外壁と接触する面積が大きくなり、原子炉格納容器3から水冷伝熱管4に移動する熱を多くすることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る複数の水冷伝熱管4のうち隣合う2つの水冷伝熱管4の各々には、互いに対向し、互いに面接触する第2側面4cが設けられている。これにより、複数の水冷伝熱管4の各々は、冷却水CWの流量と冷却水CWに接する水冷伝熱管4の内壁の表面積を増加させることができ、原子炉格納容器3から冷却水CWに移動する熱量が多くなるので、原子炉格納容器3を効果的に冷却できる。
【0034】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム20を用いた原子力発電プラント100の構成を示す概略図である。
【0035】
本実施形態に係る冷却システム20が第1実施形態と異なる点は、冷却水槽6の形態である。即ち、本実施形態に係る冷却システム20は、冷却水槽6として、原子炉格納容器3の上部に設けられ、燃料交換時に水が貯蔵される原子炉ウェルを用いる。そのため、冷却水槽6を新たに設けなくてもよく、工期とコストを抑制できる。なお、
図5において、第1排水口6aの位置を冷却水槽6である原子炉ウェルの側面の下部に示したが、これは一例であり、原子炉ウェルの底面でもよいことは言うまでもない。
【0036】
(第5の実施形態)
図6は、本発明の第5の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム30を用いた原子力発電プラント100の構成の一例を示す概略図である。また、
図7は、本発明の第5の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム30を用いた原子力発電プラント100の構成の他の例を示す概略図である。
【0037】
本実施形態に係る冷却システム30が第1実施形態または第4の実施形態と異なる点は、冷却水槽6(サージタンクまたは原子炉ウェル)に第2排水口6cと冷水下降用配管6dと冷水下降用配管6dの冷却水CWの流れを制御する制御弁(本実施形態では逆止弁6e)とを備える点である。
【0038】
第2排水口6cは、第1排水口6aと同様に冷却水槽6の下部に設けられ、冷水下降用配管6dが取り付けられている。冷水下降用配管6dは下方配管5bに連結し、冷却水槽6と下方配管5bを連通する。なお、冷却水槽6に貯蔵された冷却水CWを水冷伝熱管4へ短時間で供給するためには、冷水下降用配管6dの長さはできるだけ短いことが好ましい。
【0039】
また、冷水下降用配管6dには、冷却水槽6から下方配管5bへの冷却水CWの流れを許容し、下方配管5bから冷却水槽6への冷却水CWの流れを禁止する逆止弁6eが設けられている。なお、逆止弁6eは、冷却水ポンプ5dが停止したときに、冷水下降用配管6d内の冷却水CWの自重を加えた圧力によって逆止弁6eの弁がより開きやすいように、冷水下降用配管6dの下部(下方配管5bのできるだけ近く)に設けることが好ましい。
【0040】
(動作)
全交流電源喪失時等により冷却水ポンプ5dが停止した場合、水冷伝熱管4に滞留する冷却水CWは、原子炉格納容器3から水冷伝熱管4に移動した熱により熱せられる。これにより、水冷伝熱管4の冷却水CWは、冷却水配管5と冷却水槽6の冷却水CWと比較して相対的に高温になる。そのため、水冷伝熱管4の冷却水CWは上昇し、上方配管5aと排水管6bを介して冷却水槽6に流入する。そして、冷却水槽6の冷却水CWは下降し、冷水下降用配管6dと下方配管5bを介して水冷伝熱管4に流入する。これにより、水冷伝熱管4の熱を冷却水CWに移動させ、原子炉格納容器3を冷却することができる。
【0041】
なお、逆止弁6eは、冷却水ポンプ5dが稼動する場合(通常時)には、冷却水ポンプ5dにより中間配管5cから下方配管5bへ吐出された冷却水CWが冷水下降用配管6dに流入することを防止する。一方、冷却水ポンプ5dが停止する場合(非常時)には、逆止弁6eは冷却水槽6に貯蔵されている冷却水CWの水圧により開き、冷却水槽6から下方配管5bに冷却水CWを流す。
【0042】
(効果)
本実施形態の冷却システム30は、全交流電源喪失時等により冷却水ポンプ5dを稼動できない非常時において、原子炉格納容器3から水冷伝熱管4に移動した熱により加熱されて上昇する冷却水(温水)CWが上方配管5aを介して排水管6bから冷却水槽6に流入するときに、冷却水槽6内の冷却水(冷水)CWを下方配管5b(水冷伝熱管4の下端)に流入できる冷水下降用配管6dを備えている。すなわち、本実施形態の冷却システム30では、冷水下降用配管6dが追加することにより水冷伝熱管4と冷却水槽6の間を冷却水CWが自然対流により循環する流路が形成されるので、原子炉格納容器3を確実に継続して冷却できる。
【0043】
また、冷却水ポンプ5dを稼動できる場合(通常時)には、冷却水ポンプ5dにより中間配管5cから下方配管5bへ吐出された冷却水CWは、逆止弁6eにより冷水下降用配管6dに流入することが防止されるため、水冷伝熱管4を流通する冷却水CWの量の減少が抑制され冷却性能を維持できる。
【0044】
(第6の実施形態)
図8は、本発明の第6の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム40を用いた原子力発電プラント100の構成を示す概略図である。
【0045】
本実施形態に係る冷却システム40が第5実施形態と異なる点は、逆止弁6e(制御弁)に代えて、電磁弁6fとバッテーリー等の直流電源(図示せず)と制御装置(図示せず)を備える点である。
【0046】
電磁弁6fは、非通電時に閉じ通電時に開くノーマルクローズタイプの電磁弁である。制御装置は、直流電源と電磁弁6fの通電を制御する装置で、通常時には電磁弁6fに通電せず、非常時には電磁弁6fに通電する。すなわち、通常時には、電磁弁6fが閉じ、冷却水ポンプ5dにより中間配管5cから下方配管5bへ吐出された冷却水CWが冷水下降用配管6dに流入することが防止されるため、水冷伝熱管4を流通する冷却水CWの量の減少が抑制され、冷却性能を維持できる。
【0047】
一方、異常時には、制御装置が電磁弁6fを通電して開き、冷却水槽6の冷却水CWを冷水下降用配管6dにより下降させ、下方配管5bを介して水冷伝熱管4に流入させることができる。そのため、原子炉格納容器3に接する水冷伝熱管4と冷却水槽6の間に自然対流による冷却水CWの循環を発生させ、原子炉格納容器3を確実に継続して冷却できる。
【0048】
(第7の実施形態)
図9は、本発明の第7の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム50を用いた原子力発電プラント100の構成を示す概略図である。本実施形態に係る冷却システム50が第5実施形態と異なる点は、逆止弁6eに代えて、遮断弁6gと圧縮空気設備(図示せず)が設けられている点である。
【0049】
遮断弁6gは、空圧により閉じるノーマルオープンタイプの空圧弁である。圧縮空気設備は、例えばコンプレッサーであり、通常時(通電時)には空気を供給して遮断弁6gを閉じ、異常時(非通電時)には空気の供給を停止して遮断弁6gを開く。
【0050】
すなわち、通常時には、遮断弁6gが閉じ、冷却水ポンプ5dにより中間配管5cから下方配管5bへ吐出された冷却水CWは冷水下降用配管6dに流入できない。それにより、水冷伝熱管4を流通する冷却水CWの量の減少が抑制され、冷却性能を維持できる。
【0051】
一方、異常時には、遮断弁6gが開き、冷却水槽6の冷却水CWを冷水下降用配管6dにより下降させ、下方配管5bを介して水冷伝熱管4に流入させることができる。そのため、原子炉格納容器3に接する水冷伝熱管4と冷却水槽6の間に自然対流による冷却水CWの循環が発生し、原子炉格納容器3を確実に継続して冷却できる。
【0052】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、第3の実施形態による原子炉格納容器3の冷却システム10における複数の水冷伝熱管4の各々の内壁に複数の伝熱フィン4aを設けても良い。そして、複数の伝熱フィン4aの形状は、複数の水冷伝熱管4の各々の内壁から複数の水冷伝熱管4の各々の中心軸に向かって突出する形状でも良く、複数の水冷伝熱管4の各々の内壁面の法線方向に突出する形状でもよく、その他の形状でもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…炉心、2…原子炉圧力容器、3…原子炉格納容器、4…水冷伝熱管、5…冷却水配管、6…冷却水槽