(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ポリマーの作製に有用な液状エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
C08G59/24
(21)【出願番号】P 2021140064
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2018543038の分割
【原出願日】2016-11-03
【審査請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス,リチャード・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,ベンジャミン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ロバート・エム
(72)【発明者】
【氏名】ニーダースト,ジェフリー
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207932(JP,A)
【文献】特開2004-262977(JP,A)
【文献】特開2000-007757(JP,A)
【文献】特開2000-007891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00- 59/72
C08G65/00- 67/48
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用または飲料用の容器をコーティングするために用いられるポリエーテルポリマーの形成に使用するのに好適な液状エポキシ樹脂組成物であって、
液状エポキシ樹脂組成物は、20℃、大気圧において液体であり、液状エポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAのエポキシド、ビスフェノールFのエポキシド、ビスフェノールSのエポキシドを実質的に含まず、
液状エポキシ樹脂組成物は、1以上のエピハロヒドリンと1以上のオルソ置換ジフェノール化合物を含む反応物質由来であり、オルソ置換ジフェノール化合物は、下式:
【化1】
[式中、Hは、存在する場合、水素原子を示し、各R
1は有機
基であり、vは1~4、mは0または1、R
2は、存在する場合、
2価の基であり、
tは1であり、2つ以上のR
1および/またはR
2基は、任意に結合して1つ以上の環式基を形成してもよいものである]
を有し、少なくとも1つのオルソ置換有機基R
1
は水酸基に対してオルソ位に位置しており、
ここで、液状エポキシ樹脂組成物は、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物に由来するベースの構造単位と、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物に由来する追加の構造単位「n」個と、を含んでなり、
液状エポキシ樹脂組成物は、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物に由来する少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物および存在する場合は未反応のオルソ置換ジフェノール化合物の総重量を基準として、
・60重量%を超えて75重量%未満の、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物に由来するn=0のジエポキシド樹脂と、
・15重量%以上で25重量%未満の、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物に由来するn=1のジエポキシド樹脂と、
を含み、液状エポキシ樹脂組成物の加水分解性塩化物の含有量が0.05重量%以下である、液状エポキシ組成物。
【請求項2】
1以上のオルソ置換ジフェノール化合物に由来するn=0およびn=1のジエポキシド樹脂が、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物および存在する場合は未反応のオルソ置換ジフェノール化合物の総重量の少なくとも85重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1以上のエピハロヒドリンがエピクロロヒドリンを含んでなり、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物がテトラメチルビスフェノールF(TMBPF)を含んでなり、組成物がTMBPF含有モノエポキシド樹脂をさらに含んでいてもよく、
TMBPF由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物および存在する場合は未反応のTMBPFの総重量の少なくとも85重量%がn=0およびn=1のTMBPF含有ジエポキシド樹脂であり、5重量%未満がTMBPF含有モノエポキシド樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1以上のオルソ置換ジフェノール化合物由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物および存在する場合は未反応のオルソ置換ジフェノール化合物の総重量に基づいて、60重量%を超えて75重量%未満のテトラメチルビスフェノールF由来のn=0のジエポキシド樹脂を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
n=0およびn=1のTMBPF含有ジエポキシド樹脂が、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物および存在する場合は未反応のオルソ置換ジフェノール化合物の総重量の少なくとも85重量%を構成する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
液状エポキシ樹脂組成物が、20℃、大気圧において、少なくとも1カ月間、貯蔵安定性を有し、52℃で2000~4000cpsの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
液状エポキシ樹脂組成物が、
・0.05重量%未満の水と、
・10ppm未満の未反応のエピクロロヒドリンと、
・1000ppm未満の未反応のオルソ置換ジフェノール化合物と、
・3重量%未満の、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物のモノエポキシド樹脂と、
・1以上のオルソ置換ジフェノール化合物由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物および存在する場合は未反応のオルソ置換ジフェノール化合物の総重量を基準として5重量%未満の、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物由来のn≧2のジエポキシド樹脂と、
をさらに含んでいてよく、ここで、特に記載しない場合、上記の濃度は、液状エポキシ樹脂組成物の総重量に基づくものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
1以上のオルソ置換ジフェノール化合物がテトラメチルビスフェノールFを含み、液状エポキシ樹脂組成物のエポキシド1当量当たりの重量が、200~220g/エポキシ1当量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
液状エポキシ樹脂組成物が、1以上のオルソ置換ジフェノール化合物から得られたジエポキシド樹脂を、液状エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて90重量%以上含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の液状エポキシ樹脂組成物を形成する方法であって、
7:1~1:1のモル比でエピクロロヒドリンを1以上のオルソ置換ジフェノール化合物と反応させることを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]
本出願は、その全てが参照により本明細書に組み込まれる、「Liquid Epoxy Resin Composition Useful For Making Polymers」と題された、2015年11月3日に出願された、米国特許仮出願第62/250,217号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[002]
種々のポリマーは、連鎖延長化合物と反応するジエポキシド反応物質を使用して従来より作製され、分子量を構築する。例えば、ビスフェノールA(「BPA」)とBPAのグリシジルエーテル(「BADGE」)とを反応させることによって作製されるエポキシポリマーは、金属腐食の防止又は抑制に使用するためのコーティング組成物を含む、種々のポリマーの最終使用用途において使用される。
【発明の概要】
【0003】
[003]
本発明は、好ましくは、ポリマー、例えば芳香族ポリエーテルポリマーなどを作製するのに有用な液状エポキシ樹脂組成物を提供する。いくつかの実施形態では、このようなポリマーは、食品に接触する食品又は飲料用容器コーティングを含む、食品又は飲料用容器コーティングを配合するのに有用である。液状エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、周囲条件下で、少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも3カ月間、更により好ましくは少なくとも6カ月、又は更には1年以上貯蔵安定性である。好ましい実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、ビスフェノールS(「BPS」)以上のエストロゲン活性を有する材料を、実質的に含まず、より好ましくは、全く含まない。
【0004】
[004]
一実施形態では、好ましくは、ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、及びBPS(これらのいずれのエポキシドも含む)を実質的に含まず、かつエピハロヒドリン(より好ましくはエピクロロヒドリン)及びジフェノール(より好ましくは置換ジフェノール、更により好ましくは、オルソ置換ジフェノール)を含む反応物質由来である、液状エポキシ樹脂組成物が提供される。液状エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、任意の未反応のジフェノール、及びジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、存在する場合は80重量パーセント未満のジフェノール由来のn=0のジエポキシド化合物を含む。
【0005】
[005]
別の実施形態では、好ましくは、BPA、BPF、BPS(これらのいずれのエポキシドも含む)を実質的に含まず、かつエピクロロヒドリン及びテトラメチルビスフェノールF(「TMBPF」)を含む反応物質由来である、液状エポキシ樹脂組成物が提供される。液状エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、TMBPF由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する任意の化合物、及び存在し得る任意の未反応のTMBPFの総重量を基準として、少なくとも85重量パーセントのn=0及びn=1のTMBPF含有ジエポキシド樹脂を含む。液状エポキシ樹脂組成物はまた、好ましくは、TMBPF由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する化合物、及び存在し得る任意の未反応のTMBPFの総重量を基準として、80重量パーセント未満のn=0のTMBPF含有ジエポキシド樹脂
を含む。好ましくは、液状エポキシ樹脂組成物は、存在する場合は5重量パーセント未満のTMBPF含有モノエポキシド樹脂を含む。
【0006】
[006]
更に別の実施形態では、本発明の液状エポキシ樹脂組成物を含む構成材料の反応生成物である、ポリエーテルポリマーが提供される。好ましいこのような実施形態では、ポリエーテルポリマーは、好ましくは少なくとも2,000、又は少なくとも4,000の数平均分子量(Mn)、及び少なくとも60℃、又は少なくとも70℃のガラス転移温度(Tg)を有する芳香族ポリエーテルポリマーである。
【0007】
[007]
更に別の実施形態では、エピハロヒドリン(好ましくはエピクロロヒドリン)と、ジフェノール(好ましくは置換ジフェノール、より好ましくはオルソ置換ジフェノール、及び更により好ましくはテトラメチルビスフェノールF)を、約7:1~約1:1、より好ましくは約6:1~約1.01:1、更により好ましくは約5:1~約3:1のモル比で反応させて、本発明の液状エポキシ樹脂組成物を提供することを含むプロセスが提供される。
【0008】
[008]
本発明の上の「発明の概要」は、本発明のそれぞれ開示された実施形態又は全ての実施を説明することを意図したものではない。以下の説明により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。明細書全体にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通して指針を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0009】
[009]
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下に説明する。本発明の他の特徴、目的、及び利益は、説明及び特許請求の範囲により明らかとなるであろう。
【0010】
選択された定義
[010]
特に明記しない限り、以下の用語は、本明細書で使用するとき、以下に提示する意味を有する。
【0011】
[011]
特定の化合物を「実質的に含まない」という用語は、本発明の組成物が、列挙した化合物を1,000百万分率(ppm)未満含有することを意味する。特定の化合物を「本質的に含まない」という用語は、本発明の組成物が、列挙した化合物を100百万分率(ppm)未満含有することを意味する。特定の化合物を「完全に含まない」という用語は、本発明の組成物が、列挙した化合物を20十億分率(ppb)未満含有することを意味する。上記の慣用句の文脈では、本発明の組成物は、上記の量未満の化合物を含有し、化合物そのものが未反応形態で存在するか、1つ以上の他の材料と反応している。
【0012】
[012]
特に指定のない限り、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー(すなわち、2つ以上の異なるモノマーのポリマー)の両方を含む。
【0013】
[013]
「含む(comprises)」という用語及びその変形は、これら用語が明細書及び特許請求
の範囲に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
【0014】
[014]
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかし、同一の又は他の状況下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0015】
[015]
本明細書において使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換
的に使用される。したがって、例えば「1つの(an)」添加剤を含むコーティング組成物は、コーティング組成物が、「1つ以上の」添加剤を含むことを意味すると解釈し得る。
【0016】
[016]
また、本明細書では、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。更に、範囲の開示は、より広い範囲内に含まれる全ての部分範囲の開示を含む(例えば、1~5は、1~4、1.5~4.5、1~2等を開示する)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[017]
本発明は、好ましくは、周囲条件において液体形態で存在する、エポキシ樹脂組成物に関する。好ましい実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物は、周囲条件下で、何ら特別な予防措置を必要とすることなく、長期間貯蔵安定性である。例えば、本発明の好ましい液状エポキシ樹脂組成物は、周囲条件下(例えば、大気圧、及び周囲温度、例えば約15~25℃など)で貯蔵される場合、少なくとも1カ月、より好ましくは少なくとも3カ月、更により好ましくは少なくとも6カ月又は少なくとも1年間貯蔵安定性である。
【0018】
[018]
周囲環境での上記の貯蔵期間の経過中、好ましい貯蔵安定性エポキシ樹脂組成物は、明らかに結晶質エポキシ樹脂を含まない均質な液体のままであり、エポキシ樹脂組成物は、使用されて、何ら特別なプロセス工程を必要とすることなく、ポリエーテルポリマーを作製することができ、試料を使用可能な液体形態及び/又は明らかに非結晶質形態に戻すことができる。液状エポキシ樹脂組成物中の、微量以上の目視可能な結晶の存在は、組成物が貯蔵安定性ではないことを示す。同様に、「固体」である又は(例えば、ブルックフィールドサーモセルを使用して)粘度が測定され得ない組成物は、貯蔵安定性ではない。例として、透明(例えば、肉眼で見ることができるヘーズを含まない)であり、肉眼で見ることができる懸濁した結晶を含まない液状エポキシ樹脂は、明らかに結晶質を含まないエポキシ樹脂である。このような液状エポキシ樹脂は、界面(例えば、液体と貯蔵槽の表面との界面)に位置する少量の結晶を含んでもよく、依然として明らかに結晶質を含まないエポキシ樹脂と見なされる。本明細書で記載される液状エポキシ樹脂組成物は、典型的には、特定の種類のジエポキシド樹脂の高純度試料ではなく、2つ以上の異なるジエポキシド樹脂(いくつかの実施形態では、3つ以上の異なるジエポキシド樹脂ジエポキシド樹脂、又は更に4つ以上の異なるジエポキシド樹脂ジエポキシド樹脂)の混合物を構成する。更に、モノエポキシド化合物、未反応の出発化合物、反応中間体、及び/又は反応副生成物の量は、このような化合物の存在が、(i)周囲環境での液状エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性、又は(ii)液状エポキシ樹脂組成物からのポリエーテルポリマーの調製のどちらかを、不適に妨害しないことを条件として存在し得る。
【0019】
[019]
液状エポキシ樹脂組成物は、1つ以上のエピハロヒドリンと、1つ以上のジフェノール化合物、より典型的には1つ以上の置換ジフェノール、更により典型的には1つ以上のオルソ置換ジフェノール、及び更により典型的には1つ以上のオルソ置換ビスフェノールとを反応させることによって調製することができる。液状コーティング組成物中に存在する、全ての、又は実質的に全てのエポキシ樹脂は、典型的にはジフェノール、より典型的にはオルソ置換ジフェノール由来である。現時点で好ましい実施形態では、単一種類のジフェノールが使用されるが、所望に応じて、異なるジフェノール化合物の混合物が用いられ得る。その上、現時点で好ましくはないが、ジフェノール由来ではないいくつかのエポキシ樹脂(例えば、モノエポキシド樹脂及び/又はポリエポキシド樹脂)、例えば1つ以上の脂肪族エポキシ樹脂(例えば、脂肪族材料、例えば脂肪族ジオール又は二酸など由来のエポキシド)等が任意に存在し得ると考えられる。
【0020】
[020]
本明細書で使用することができる好適なエピハロヒドリンとしては、以下の式によって表されるものが挙げられる。
【0021】
【0022】
式中、Rは、水素又は1~約4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Xは、ハロゲン、好ましくは塩素又は臭素である。エピクロロヒドリンは、本発明における使用に好ましいエピハロヒドリンである。
【0023】
[021]
本開示を通して、ジエポキシド樹脂(簡潔にするために「ジエポキシド」と称されることもある)は、n=0、n=1、n=2、n=3などであるジエポキシドの文脈で論じられる。この文脈では、「n」の整数値は、存在する場合はジフェノール由来であるジエポキシドに存在する、(ジフェノール由来のベース構造単位を超えて)追加の構造単位を指す。これらの概念を更に例示するために、エピクロロヒドリンと、nが整数値、例えば0、1、2、又は3以上などである、テトラメチルビスフェノールF(「TMBPF」)との反応を介して生成されるテトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルを以下に示す。
【0024】
【0025】
[022]
したがって、上記の構造表示から見ることができるように、nが0である場合、TMBPF由来の単一の構造単位が存在する一方で、nが1である場合、2つのこのような構造単位が存在し、nが2である場合、3つのこのような構造単位が存在し、nが3である場合、4つのこのような構造単位が存在する、などである。上で示されるように、ジフェノ
ール由来の2つ以上の構造単位が存在する場合、構造単位は、典型的には、-CH2-CH(OH)-CH2-部分を介して互いに結合している。特定の例では、結合は、代替的に-CH2-CH2-CH(OH)-部分であってもよい。
【0026】
[023]
nが1以上である場合、ジエポキシドは、典型的には、同じ種類のジフェノール化合物由来である構造単位を有する。それにもかかわらず、所与のジエポキシドが、2つ以上の異なるジフェノール化合物由来の構造単位を有してもよいと考えられる。例えば、n=1のジエポキシドに関して、1つの構造単位は、第1のジフェノール(例えば、オルソ置換ジフェノール、例えばTMBPFなど)由来であり得、別の構造単位は、異なる化学構造を有する第2のジフェノール由来(例えば、単一のフェニレン基、例えば2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンなどを有するオルソ置換ジフェノール)であり得る。
【0027】
[024]
具体的には、特定のジフェノール(例えば、特定のオルソ置換ジフェノール)に関して、組成物中に存在するn=0のジエポキシド樹脂の量が、組成物の貯蔵安定性及び/又は組成物が周囲条件で液体であるかどうかに影響を及ぼし得ることが発見された。具体的には、n=0のジエポキシド樹脂の量が多すぎると、過剰な結晶化度、次に周囲条件(及び更に高温条件)で不十分な貯蔵安定性を引き起こす可能性があると考えられる。例えば、エピクロロヒドリン及びTMBPFを使用して、ジエポキシド樹脂組成物を生成することにおいて、エポキシ樹脂組成物が85%を超えるn=0のジエポキシドであった場合、結果として得られる組成物は、周囲条件で、過剰な結晶化度の出現以前に、最長で数日間のみ貯蔵することができ、過剰な結晶化度は、ポリエーテルポリマー生成用の商業用樹脂反応器内で、反応物質として使用可能になる前に、特別なプロセス工程を必要とすることになるということが見出された。このような追加のプロセス工程は、このような工程が、製造複雑性を増し、サイクル時間を遅くし、及び/又は他の追加の製造コスト(例えば、貯蔵中及び/又はポリマー製造前に、結晶化度問題を回避する及び/又は軽減することを目的とした、高温プロセス工程と関連する追加のエネルギーコスト)をもたらし得るため、不利である。
【0028】
[025]
したがって、エポキシ樹脂組成物中に存在するn=0のジエポキシド樹脂の量は、好ましくは、制御され、その結果、樹脂の量が十分に低く、高品質ポリエーテルポリマーを作製するのに有用な貯蔵安定性液状組成物を得る。液状エポキシ樹脂組成物中に存在するn=0のジエポキシド樹脂の適切な量を評価するための有用な表現は、(i)ジフェノール由来のn=0のジエポキシド樹脂の、(ii)ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位、及び存在し得る任意の残留ジフェノールを含む、液状エポキシ樹脂組成物中に存在する任意の化合物の総重量に対する、重量比(又はパーセント)である。したがって、例えば、ジフェノール由来の以下の化合物が、液状エポキシ樹脂組成物中に示された重量部の量で存在する場合、適切なn=0のジエポキシドの量は、75重量パーセント(重量%)である、
・ジフェノール由来のn=0のジエポキシド樹脂75部、
・ジフェノール由来のn=1のジエポキシド樹脂15部、
・ジフェノール由来のn=2のジエポキシド樹脂4部、
・ジフェノール由来のn=3のジエポキシド樹脂2部、
・ジフェノール由来のモノエポキシド3部、及び
・未反応ジフェノール1部。
【0029】
[026]
特に明確に定義されない限り、n=0、n=1、n=2、及びn=3(など)のジエポ
キシドの%は、先の項に記載されている重量パーセント表現に従って解釈されるべきである。
【0030】
[027]
液状エポキシ樹脂組成物中に存在し得る、異なる「n」のジエポキシド樹脂のそれぞれの量を評価するための好適な手法の例は、以下の「試験方法」の項に記載されるHPLC方法である。
【0031】
[028]
液状エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、存在する場合、約80重量%未満のn=0のジエポキシド樹脂、より好ましくは約75重量%未満、又は約70重量%未満を含む。典型的には、組成物は、少なくとも約50重量%、好ましくは60重量%を超える、更により好ましくは65重量%を超える、場合によっては70重量%を超えるn=0のジエポキシド樹脂を含む。
【0032】
[029]
理論に拘束されることを意図しないが、50重量%を超える、より好ましくは60重量%を超えるn=0のジエポキシド樹脂を含むことは、液状エポキシ樹脂組成物の粘度が不適に高いことを回避するために、有益であると考えられる。
【0033】
[030]
液状エポキシ樹脂組成物は、典型的には、5重量%を超えるn=1のジエポキシド樹脂を含む。好ましくは、組成物は、少なくとも10重量%のn=1のジエポキシド樹脂、より好ましくは少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%のn=1のジエポキシド樹脂を含む。組成物中に存在するn=1のジエポキシド樹脂の上限量は制限されないが、典型的には、組成物は、約25重量%未満のこのような化合物、場合によっては約20重量%未満のこのような化合物を含む。
【0034】
[031]
好ましい実施形態では、n=0及びn=1のジエポキシド樹脂は、十分に多量に液状エポキシ樹脂組成物中に存在し、それにより、n=0及びn=1の合計重量パーセントは、少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、及び更により好ましくは少なくとも95重量%である。ジフェノール由来ではないいくつかのエポキシド化合物(例えば、材料、例えばシクロヘキサンジメタノール又はテトラメチルシクロブタンジオールなど由来の脂肪族ジエポキシド)が、液状エポキシ樹脂組成物中に含まれ得るが、典型的には、存在するエポキシド材料の全て又は実質的に全て(残留未反応のエピハロヒドリン以外)は、ジフェノール由来であるということが考えられる。
【0035】
[032]
n≧2のジエポキシド樹脂(例えば、n=2及びn=3のジエポキシド樹脂)の量もまた、好ましくは、所望の特性のバランスを有する液状エポキシ樹脂組成物を提供するように制御される。理論に拘束されることを意図しないが、過度のn≧2のエポキシド樹脂の存在は、好適な貯蔵安定性を欠いているエポキシ組成物の一因となり得、更に周囲条件で固体であるエポキシ樹脂組成物を生じさせ得ると考えられる。したがって、このような樹脂(複数可)が存在する場合、n≧2のエポキシド樹脂の量は、好ましくは、このような問題を回避するために制御される。
【0036】
[033]
本開示の好ましい液状エポキシ組成物中に存在し得る特定の成分が存在する場合、その量に関する指針を示す表が以下に提供される。以下の開示は、(i)別個の各成分濃度閾
値、及び(ii)成分濃度閾値の任意の可能な組み合わせの両方の開示として意図される。
【0037】
【0038】
[034]
液状エポキシ樹脂組成物は、任意の好適な粘度を有することができる。好ましい実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物は、52℃で、10,000センチポアズ(cP)未満、好ましくは5,000cP未満、及び更により好ましくは2,000cP未満の粘度を有する。好適な粘度測定装置の例としては、好適なスピンドルを備えたブルックフィールドサーモセルがあり、1分当たりの回転数は、装置の測定スケールのほとんどを占めるように調製された。現時点で好ましい実施形態では、液状エポキシ樹脂は、周囲条件下で、長期貯蔵後(例えば、周囲条件下で、少なくとも1カ月間の貯蔵後、より好ましくは周囲条件下で、少なくとも6カ月又は1年以上の貯蔵後)、上記の範囲の1つ又は全てに収まる粘度を有する。
【0039】
[035]
エポキシド1当量当たりの重量は、液状エポキシ樹脂組成物中に存在し得る種々の「n」のエポキシ樹脂の相対的な量を評価するのに有用であり得る別の尺度である。例えば、理論に拘束されることを意図しないが、液状エポキシ樹脂組成物のエポキシド1当量当たりの最終重量が、n=0のジエポキシド樹脂のエポキシド1当量当たりの理論上の重量の約10%~約20%の範囲内、より好ましくは約13%~約17%の範囲内であることが望ましいと考えられる。2つ以上のジフェノールが使用され、ジフェノールが異なる分子量を有する場合、上記のパーセントは、用いられる特定のジフェノール反応物質とこれらに対応するn=0のジエポキシド樹脂の比を因数分解する平均値の文脈で解釈されるであろう。TMBPFが、使用される唯一のジフェノールである実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物のエポキシド1当量当たりの重量は、好ましくは約200~約220グラム/エポキシ1当量、より好ましくは約208~約218グラム/エポキシ1当量である。
【0040】
[036]
先に論じられたように、好ましい実施形態では、置換ジフェノール、より典型的にはオルソ置換ジフェノール、更により典型的にはオルソ置換ビスフェノールが使用されて、液状エポキシ樹脂組成物を形成する。有機基は好ましい置換基であり、アルキル基が好ましく、具体的にはメチル基が好ましいオルソ置換基である。いくつかの実施形態では、結合したヒドロキシル基を有するビスフェノールの2つの芳香環が、-CH2-結合基を介して互いに結合している。
【0041】
[037]
本発明の液状エポキシ樹脂組成物の形成に使用するための好ましいオルソ置換ジフェノールは、以下の構造を有する。
【0042】
【0043】
式中、
・存在する場合、Hは水素原子を示し、
・各R1は有機基、より好ましくはエポキシ基と実質的に反応しないことが好ましいアルキル基であり、
・vは1~4であり、
・nは0又は1であり、
・R2は、存在する場合、好ましくは2価の基、より好ましくは-CH2-基であり、
・tは0又は1であり、
・2つ以上のR1及び/又はR2基は、任意に結合して1つ以上の環式基を形成することができる。
【0044】
[038]
好ましくは、各示されたフェニレン環上の少なくとも1つのR1は、環上のヒドロキシル基に対してオルソ位に位置する。特定の好ましい実施形態では、vは2~4、より好ましくは2であり、R1は、環上のヒドロキシル基に対してそれぞれオルソ位に位置する。メチル基は、現時点で好ましいオルソR1基である。他の好適なオルソR1基としては、エチル、プロピル、プロピル、ブチル、及びこれらの異性体(例えば、t-ブチル)を挙げることができる。
【0045】
[039]
tが1である好ましいオルソ置換ジフェノール(すなわち、ビスフェノール)が以下に提供され、一般的にテトラメチルビスフェノールFと称される。
【0046】
【0047】
[040]
tが0であるジフェノールもまた使用され得ると考えられるが、典型的には、ジフェノールはビスフェノールである。tが0であるオルソ置換ジフェノールの例が以下に提供され、一般的に2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノンと称される。
【0048】
【0049】
[041]
米国特許出願公開第2013/0206756号、又は同第2015/0021323号に記載されている任意のジフェノール化合物が使用され得、明らかに非エストロゲン性であるジフェノール化合物が、特に好ましいと考えられる。好ましい実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、ビスフェノールS(「BPS」)、又は任意のこれらのジエポキシド(例えば、BPAのジグリシジルエーテル(「BADGE」)などの、これらのジグリシジルエーテル)由来の構造単位を何ら含まない。更に、液状エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール、又は他の多価フェノール由来の構造単位を何ら含まない。より好ましくは、液状エポキシ樹脂組成物は、BPS以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール、又は他の多価フェノール由来の構造単位を何ら含まない。更により好ましくは、液状エポキシ樹脂組成物は、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,6-ジブロモフェノール)を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール、又は他の多価フェノール由来の構造単位を何ら含まない。最適には、液状エポキシ樹脂組成物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール、又は他の多価フェノール由来の構造単位を何ら含まない。このような好ましい実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物はまた、好ましくは、上に記載されている特性を有するこのような未反応のビスフェノールモノマーを含まない。エストロゲンアゴニスト活性を評価するための有用な方法(例えば、ジフェノールが明らかに非エストロゲン性であるかどうか)は、米国特許出願公開第2013/0206756号に記載されているMCF-7アッセイ法である。
【0050】
[042]
必要に応じて、1つ以上の希釈剤又は他の材料が、液状エポキシド樹脂組成物中に存在し得る。例えば、有機溶媒が、液状エポキシド樹脂組成物中に含まれ得る。このような希釈剤又は他の材料の量及び独自性は、好ましくは、液状ジエポキシド樹脂組成物を含む反応物質からポリマーを形成するために使用され得る、下流の重合反応を不適に妨害することを回避するように制御される。
【0051】
[043]
いくつかの実施形態では、液状エポキシ樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として、ジエポキシド樹脂の少なくとも90重量%、より好ましくはジエポキシド樹脂の少なくとも93重量%、更により好ましくはジエポキシド樹脂の少なくとも96重量%を構成する。
【0052】
[044]
周囲条件でのエポキシ樹脂組成物の文脈で「液状」という用語の意味は、当業者によって容易に理解されるべきである。しかしながら、この文脈で「液状」という用語の意味を
更に例示するために、非限定的な例が続く。便宜上、以下に記載される試験方法は、以下で「流動点試験」と称される。50グラムの評価されるエポキシ樹脂組成物を、標準的な100ミリリットルガラスビーカー(例えば、高さ約6.5センチメートルの垂直の側壁を有する、円筒状100ミリリットルパイレックスビーカー)に、周囲条件(例えば、大気圧及び22℃の温度)下で秤量する。ビーカーが垂直で、直ちに受け入れ容器上に配置されるように、充填したビーカーを逆さまにする。好ましくは、液状エポキシ樹脂組成物は、逆さまにした後180分以内、より好ましくは実質的により早く(例えば、120分以内、60分以内、30分以内、15分以内、10分以内など)、初期のビーカーから(例えば、その外側縁を超えて)流失し始めた。180分以内に流出し始めなかった、エポキシ樹脂組成物は、本明細書で記載される好ましいコーティング組成物の形成に使用するのに、好適なポリマーを形成するための取り扱い及び使用に関連する困難のためにあまり好ましくない。
【0053】
[045]
任意の好適な方法を使用して、本明細書で記載される「n」ジエポキシド樹脂の所望の占有率を有する、液状エポキシ樹脂組成物を調製することができる。このような方法としては、例えば、「規格外」エポキシ樹脂組成物を取り除き、「規格内」液状エポキシ樹脂組成物に変換することができる変換プロセス(例えば、選択的濾過など)を挙げることさえできる。このような変換と関連する潜在的コストのため、本発明者らは、「規格内」である液状エポキシ樹脂組成物を得るために適応した合成プロセスを使用することが好都合であることを見出した。このような代表的な合成プロセスが、以下の説明に記載され、「実施例」の項に例示されているが、他の好適なプロセスもまた使用され得ると考えられる。
【0054】
[046]
液状エポキシ樹脂組成物を形成することにおいて、エピハロヒドリン(好ましくはエピクロロヒドリンである)は、好ましくは、ジフェノールに対して化学量論的に過剰量で使用されるが、過剰量は、好ましくは、n=0のジエポキシドを約80重量%未満に維持するために制御される。理論に拘束されることを意図しないが、エピハロヒドリンの過剰量が多すぎる場合、過剰量のn=0のジエポキシドの存在をもたらし得、過剰な結晶化度及び更に固化を引き起こし得、それによって、ジエポキシドからポリエーテルポリマーの製造を可能にするために、特別な(及びより高価な)手段を用いる必要があると考えられる。例えば、エピクロロヒドリン及びTMBPFからエポキシ樹脂組成物を作製することにおいて、エピクロロヒドリンが、ジフェノールに対して化学量論的に非常に大過剰量で使用される場合、結果として得られる液状樹脂組成物は、85%を超えるn=0のジエポキシド樹脂であり、結果として得られる液状組成物は、結晶化度問題のため、最大で数日を超える貯蔵安定性は得られないことが発見された。
【0055】
[047]
本明細書で開示される非限定的な、代表的な合成プロセスにおいて、エピハロヒドリン(複数可)及びジフェノール化合物(複数可)は、好ましくは約7:1~約1:1、より好ましくは約6:1~約1.01:1、及び更により好ましくは約5:1~約3:1のモル比で用いられる。一実施形態では、約4:1のモル比が使用される。このようなモル比はまた、他の好適な合成プロセスにおいて使用され得ると考えられる。
【0056】
[048]
所望に応じて、カップリング触媒が、エピハロヒドリンとジフェノールの反応を促進するために使用され得る。好適なこのような触媒の例は、塩化アンモニウム塩、例えばブチルトリメチルアンモニウムクロライドなどである。このような触媒は、反応混合物中に、反応混合物中のジフェノール反応物質(例えば、TMBPF)の濃度に対して、約2%~
約10%重量パーセントを含む、任意の好適な濃度で含まれ得る。
【0057】
[049]
典型的には、合成プロセスは、エピハロヒドリン(典型的には、エピクロロヒドリン)とジフェノールの反応が完了、又は順調に進行した後、以下の工程、(i)1つ以上の工程で(例えば、真空及び/又は加熱の適用を介して)過剰のエピハロヒドリンを除去する工程、(ii)低濃度の加水分解性塩化物含有量を好適に達成するために、1つ以上の工程で組成物を脱ハロゲン化水素反応させる工程(過剰のエピハロヒドリンの除去前及び/又は後)、並びに(iii)いずれの脱ハロゲン化水素反応させる工程(複数可)中に生成され得た塩も洗い流す(例えば、水性処理を介したNaCl)工程の1つ以上(又は全て)を含む。用いられ得る好適な脱ハロゲン化水素剤としては、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0058】
[050]
液状エポキシ樹脂組成物は、例えば、コーティング又は接着剤業界で使用するためのポリマーを含む、ジエポキシド反応物質が典型的に使用される任意の種類のポリマーを作製するために使用され得ると考えられる。本明細書で開示される液状ジエポキシド樹脂組成物は、食品又は飲料用容器(例えば、金属製食品若しくは飲料用缶、又はこれらの部分)の内側又は外側表面での使用を意図した、コーティング組成物を配合するために使用されるポリエーテル結合剤ポリマーの種類を含む、コーティング業界で使用するためのポリエーテルポリマーの作製に使用するために特に有用である。このようなポリマーの作製に使用するための好適な構成材料及びプロセスを含む、このようなポリエーテルポリマーは、米国特許出願公開第2013/0206756号、及び同第2015/0021323号に記載されている。
【0059】
[051]
一般的に、ジエポキシド樹脂組成物の分子量は、1つ以上の連鎖延長化合物との反応を介して「向上」して、所望の分子量及び所望の特性のバランスを有するポリエーテルポリマーを得る。好適なこのような連鎖延長剤の例としては、ポリオール(ジオールが好ましく、ジフェノールが特に好ましい)、多酸(二酸が好ましい)、又はフェノールヒドロキシル基及びカルボン酸基の双方を有するフェノール化合物(例えば、パラヒドロキシル安息香酸及び/又はパラヒドロキシフェニル酢酸)を挙げることができる。いくつかの実施形態では、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、これらの置換変異体、又はこれらの混合物が好ましい連鎖延長剤である。
【0060】
[052]
ポリエーテルポリマーは、種々の分子量で作製され得る。好ましいポリエーテルポリマーは、少なくとも2,000、より好ましくは少なくとも3,000、及び更により好ましくは少なくとも4,000の数平均分子量(Mn)を有する。このポリエーテルポリマーの分子量は、所望の用途に必要とされる分子量と同様に高くてもよい。しかしながら、典型的には、液体コーティング組成物での使用に適応する場合、ポリエーテルポリマーのMnは、約11,000を超えないであろう。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリマーは、約5,000~約8,000のMnを有する。ポリマーが、コポリマー、例えばポリエーテル-アクリル系コポリマーなどである実施形態では、全体的なポリマーの分子量は、上に列挙されたものよりも高くなり得るが、ポリエーテルポリマー部分の分子量は典型的には上に記載されたとおりである。しかしながら、このようなコポリマーは、典型的には、約20,000未満のMnを有する。
【0061】
[053]
ポリエーテルポリマーは、任意の好適な多分散指数(PDI)を示すことができる。ポリマーが、液体の塗布されるパッケージングコーティング(例えば、食品又は飲料用の缶コーティング)の結合剤ポリマーとしての使用が意図されるポリエーテルポリマーである実施形態では、ポリエーテルポリマーは、典型的には、約1.5~5、より典型的には約2~3.5、及び場合によっては約2.2~3又は約2.4~2.8のPDIを示す。
【0062】
[054]
特定の好ましい実施形態では、ポリエーテルポリマーは、(例えば、主要な結合剤ポリマーとして)食品に接触する包装コーティングの配合に使用するために好適である。腐食性であり得るパッケージ化された食品又は飲料用製品と長期に接触する場合、好適な耐食性を含む、食品に接触する包装用コーティングとしての使用のためにコーティング特性の好適なバランスを促進するために、ポリマーは、好ましくは、少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃、及び更により好ましくは少なくとも80℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する。好ましい実施形態では、Tgは、150℃未満、より好ましくは130℃未満、更により好ましくは110℃未満である。Tgは、試験方法の項に開示される方法を使用して、示差走査熱量測定法(「DSC」)によって測定できる。好ましい実施形態では、このポリマーは、前述のTg値に従うTgを示すポリエーテルポリマーである。例えば、コーティング組成物が、食品又は飲料用容器の外側面ニスとしての使用が意図されるなどのいくつかの実施形態では、ポリマーのTgは、上に記載されたものより低い場合がある(例えば、約30℃程度の低さ)と考えられる。
【0063】
[055]
理論に拘束されることを意図しないが、ポリエーテルポリマー中のアリール及び/又はヘテロアリール基(典型的には、フェニレン基)の十分な数の含有は、特にパッケージ化される製品が、いわゆる「ハードトゥホールド」食品又は飲料用製品である場合、食品に接触する包装用コーティングの好適なコーティング性能を達成するための重要な因子である得ると考えられる。ザワークラウトは、ハードトゥホールド製品の一例である。好ましい実施形態では、アリール及び/又はヘテロアリール基は、ポリエーテルポリマーの重量に対するポリマー中のアリール及びヘテロアリール基の総重量を基準として、ポリエーテルポリマーの少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、更により好ましくは少なくとも35重量%、及び最も好ましくは少なくとも45重量%を構成する。アリール/ヘテロアリール基の上限濃度は特に限定されないが、好ましくは、このような基の量は、ポリエーテルポリマーのTgが、上述したTg範囲以内になるように設定される。ポリエーテルポリマー中のアリール及び/又はヘテロアリール基の総量は、典型的には、ポリエーテルポリマーの約80重量%未満、より好ましくは75重量%未満、更により好ましくは約70重量%未満、及び最適には60重量%未満を構成する。ポリエーテルポリマー中のアリール及び/又はヘテロアリール基の総量は、ポリエーテルポリマーに組み込まれるアリール-又はヘテロアリール-含有モノマーの重量、及びアリール又はヘテロアリール基を構成する、このようなモノマーの重量分画を基準として判定され得る。ポリマーがポリエーテルコポリマー(例えば、ポリエーテル-アクリルコポリマー)である実施形態では、コポリマーのポリエーテルポリマー部分(複数可)中のアリール又はヘテロアリール基の重量分画は、一般的に上記のとおりであるが、コポリマーの総重量に対する重量分画は、より少ないものである場合がある。
【0064】
[056]
好ましいアリール又はヘテロアリール基は、20個未満の炭素原子、より好ましくは11個未満の炭素原子、更により好ましくは8個未満の炭素原子を含有する。このアリール又はヘテロアリール基は、好ましくは、少なくとも4個の炭素原子、より好ましくは少なくとも5個の炭素原子、更により好ましくは少なくとも6個の炭素原子を有する。置換又は非置換のフェニレン基は、好ましいアリール又はヘテロアリール基である。したがって
、好ましい実施形態では、ポリマーのポリエーテル分画は、上記の量に従うフェニレン基の量を含有する。
【0065】
[057]
いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリマーの少なくとも25%、少なくとも50%、又は更に少なくとも60重量%が、液状エポキシ樹脂組成物由来の構造単位を構成する。
【0066】
試験方法
[058]
別途記載のない限り、以下の試験方法を以下の実施例で用いた。
【0067】
加水分解性塩化物含有量(HCC)
[059]
「液状エポキシ樹脂の加水分解性塩化物含有量の標準的な試験方法(Standard
Test Methods for Hydrolyzable Chloride Content of Liquid Epoxy Resins)」と題されたASTM D1726-11の試験方法Aを使用して、HCCを判定した。
【0068】
特定のジエポキシド樹脂%のHPLC判定
[060]
液状エポキシ樹脂を、10,000ppm(1%)の理論上濃度で、アセトニトリル中で調製した。これをアセトニトリル:水(50:50v/v)で100ppmに希釈した。シリーズ200高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(PerkinElmer,Waltham,MA)を使用して、紫外線検出(LC/UV)を備えた液体クロマトグラフィによって、以下の条件で試料を分析した。
【0069】
【0070】
【0071】
[061]
各ピークの構造を、化学イオン化質量分析法によって判定する。各ピークの重量パーセントは、各ピーク下面積に比例すると推定される。
【0072】
示差走査熱量測定
[062]
示差走査熱量測定(「DSC」)試験用の試料を、最初に液状樹脂組成物をアルミニウムシートのパネルに塗布することによって調製する。次いで、このパネルを、Fisher Isotemp電気炉オーブン内にて149℃(300°F)で20分間焼成して、揮発性材料を除去する。室温まで冷却した後、サンプルをパネルからかき取り、標準的なサンプルパンの中で計量し、標準的なDSC加熱/冷却/加熱法を使用して分析する。サンプルを-60℃で平衡化し、次いで、20℃/分で200℃まで加熱し、-60℃まで冷却し、次いで、再度20℃/分で200℃まで加熱する。最後の熱サイクルのサーモグラムからガラス転移を計算する。ガラス転移を転移の変曲点において測定する。
【実施例】
【0073】
[063]
本発明を以下の実施例によって例示する。特定の実施例、材料、量、及び手順は、本明細書で記載の本発明の範囲及び趣旨に従って広く解釈されるべきであることが理解される。特に指示しない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての分子量は重量平均分子量である。特に指定しない限り、使用される化学物質は全て、例えば、Sigma-Aldrich(St.Louis,Missouri)から市販されている。
【0074】
比較例A
[064]
375.3部のエピクロロヒドリンを、機械的撹拌器、窒素入口、還流冷却器、並びに熱電対及び温度調整装置を備えた加熱マントルを備えた、四つ口フラスコに添加した。装備を窒素で不活性化し、撹拌を開始し、86.6部のTMBPFを添加した。混合物がひとたび均質になると、85℃に加熱し、その時点で、8.4部の60%ブチルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液を、約1時間にわたって添加して、温度を85~90℃に維持した。添加が完了した後、混合物を85~90℃で4時間保持した。この時点で、混合物の残留TMBPFを、HPLCによって毎時間試験した。残留TMBPFが1%未満である場合(8時間後に起きた)、反応器を55℃に冷却し、79部の25%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、撹拌を55℃で1時間保持した。この時点で、撹拌を停止し、層を分離させた。比較的清純な境界面が観察された際、塩水層(下層)を除去した。撹拌を開始し、55℃で有機層を平衡化し、30.4部の25%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。55℃で30分間撹拌した後、36.5部の水を添加し、撹拌を55℃で1時間保持した。撹拌を停止し、下層を除去した。有機層の加水分解性塩化物含有量を試験して、0.5重量%未満であると判定した。この時点で、減圧を徐々に適用した。真空度が25inHg(水銀のインチ)超に到達した際、122℃に到達するように加熱を徐々に適用した。エピクロロヒドリンが収集されなくなった際、材料のエピクロロヒドリン%を試験した。エピクロロヒドリンの重量パーセントが0.2%未満になった場合、真空を中断し(値が0.2%を超える場合は、ストリッピングを継続した)、混合物を55℃に冷却し、250.3部のトルエン及び30.9部のイソプロパノールを撹拌下で添加し、55℃に加熱した。14.9部の50%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、1時間混合し、次いで17.9部の水を添加した。上層の加水分解性塩化物含有量(HCC)%を試験した。HCC%が0.01%未満になった場合、下層を除去し(HCC%が0.01%であった場合、追加の苛性処理を実行した)、等量の水を添加した。2つの層を撹拌しながら50℃で30分間加熱し、その時点で撹拌を停止し、層を分離させた。下層を除去し、124.3部の0.4%リン酸一ナトリウム水溶液を添加した。層を撹拌しながら50℃で30分間加熱した。下層を除去し、等量の水を添加し、撹拌しながら50℃で30分間加熱した。撹拌を停止し、層を分離させ、水性層を除去した。全ての塩が洗い流されたことを示す、有機層が完全に透明になるまでこれを繰り返した。この時点で、トルエンを真空下で
122℃で除去し、表1に示される特性を有するTMBPFジグリシジルエーテル樹脂組成物を残した。
【0075】
【0076】
実施例1:貯蔵安定性液状ジエポキシド組成物の調製
[065]
168.22部のエピクロロヒドリンを、機械的撹拌器、窒素入口、還流冷却器、並びに熱電対及び温度調整装置を備えた加熱マントルを備えた、四つ口フラスコに添加した。装備を窒素で不活性化し、撹拌を開始し、116.53部のTMBPFを添加した。混合物がひとたび均質になると、85℃に加熱し、その時点で、2.81部の60%ブチルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液を、約1時間にわたって添加して、温度を85~90℃に維持した。添加が完了した後、混合物を85~90℃で40時間保持した。この時点で、混合物の残留TMBPFを、HPLCによって毎時間試験する。残留TMBPFが<1%である場合(40時間)、反応器を55℃に冷却し、106.2部の25%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、撹拌を55℃で1時間保持した。この時点で、撹拌を停止し、層を分離させた。比較的清純な境界面が観察された際、塩水層(下層)を除去した。撹拌を開始し、55℃で有機層を平衡化し、40.95部の25%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。55℃で30分間撹拌した後、49.14部の水を添加し、撹拌を55℃で1時間保持した。撹拌を停止し、下層を除去した。有機層の加水分解性塩化物含有量を試験した。それは0.5重量%未満であった。この時点で、減圧を徐々に適用した。真空度が25inHg未満に到達した際、122℃に到達するように加熱を徐々に適用した。エピクロロヒドリンが収集されなくなった際、材料のエピクロロヒドリン%を試験した。エピクロロヒドリンの重量パーセントが0.2%未満になった場合、真空を中断し(値が0.2%を超える場合は、ストリッピングを継続した)、混合物を55℃に冷却し、336.6部のトルエン及び41.6部のイソプロパノールを撹拌下で添加し、55℃に加熱した。20.0部の50%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、1時間混合し、次いで24部の水を添加した。上層の加水分解性塩化物含有量(HCC)%を試験した。HCC重量パーセントが0.01%未満になった場合、下層を除去し(HCC重量%が0.01%を超えている場合、追加の苛性処理を実行した)、等量の水を添加した。2つの層を撹拌しながら50℃で30分間加熱し、その時点で撹拌を停止し、層を分離させた。下層を除去し、167.14部の0.4%リン酸一ナトリウム水溶液を添加した。層を撹拌しながら50℃で30分間加熱した。下層を除去し、等量の水を添加し、撹拌しながら50℃で30分間加熱した。撹拌を停止し、層を分離させ、水性層を除去した。全ての塩が洗い流されたことを示す、有機層が完全に透明になるまでこれを繰り返した。この時点で、トルエ
ンを真空下で122℃で除去し、以下の表2に示される特性を有するTMBPFジグリシジルエーテル樹脂組成物を残した。液状エポキシ樹脂組成物は、周囲条件下で3カ月を超えて貯蔵安定性であり、周囲条件下で最大約6カ月間貯蔵可能であった。
【0077】
【0078】
実施例2:ポリエーテルポリマーの調製
[066]
405.3部の実施例1からの液状エポキシ樹脂、94.5部のヒドロキノン、0.5部のエチルトリフェニルホスホニウムヨージド、及び15.5部のエチルカルビトールを、機械的撹拌器、窒素入口、還流冷却器、並びに熱電対及び温度調整装置を備えた加熱マントルを備えた、四つ口フラスコに添加した。装備を窒素で不活性化し、撹拌を開始し、バッチを130℃に加熱した。次いで、加熱を止めて、バッチを180℃まで発熱させた。1エポキシド当たりの重量が2083になるまで、バッチを160Cで安定させた。この時点で、加熱を止めて、以下の溶媒、106.5部のシクロヘキサノン、232.4部の芳香族化合物100、及び145.3部のPMアセテートを順次添加した。ポリエーテルポリマーは、50%の固形分、及び2128の1エポキシド当たりの重量、及び11,000cpsの粘度を有していた。このポリマーを、レゾールフェノール樹脂で配合した際、これは、食品に接触する缶コーティングの業界標準と類似の可撓性及び耐食性を有していた。
【0079】
実施例3:貯蔵安定性液状ジエポキシド組成物
[067]
エピクロロヒドリン及びTMBPF製品を使用して合成した、実施例1と異なる方法を使用して生成した、液状エポキシ樹脂を形成した。実施例3の液状ジエポキシド樹脂組成物の特性を、以下の表3に示す。液状エポキシ樹脂組成物は、周囲条件下で、長期間(例えば、数か月)貯蔵安定性であった。本明細書で記載される流動点試験を使用して試験した際、液状エポキシ樹脂組成物は、(ビーカーを逆さまにした後)約5~10分以内にビーカーから、126分で切断した連続的な「紐状」で注出し始めた。
【0080】
[068]
実施例3の液状エポキシ樹脂組成物を使用して、(実施例2の方法及び実施例2の他の材料を使用して)ポリエーテルポリマーをうまく生成し、このポリエーテルポリマーは、食品及び飲料用缶の内側コーティング組成物を配合に使用するために好適であった。
【0081】
【0082】
[069]
本明細書で引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に入手可能な資料の完全な開示は、参考によって組み込まれる。上記の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を助けるために示したものである。これらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。本発明は、示され記載された厳密な詳細事項に限定されるべきではないが、当業者に対して明らかな変形が特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に包含される。いくつかの実施形態では、本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素の不在下で好適に実行されてもよい。
[1]
ポリエーテルポリマーの形成に使用するのに好適な液状エポキシ樹脂組成物であって、前記液状エポキシ樹脂組成物は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)を実質的に含まず、エピハロヒドリン及びオルソ置換ジフェノールを含む反応物質由来であり;前記液状エポキシ樹脂組成物は、存在し得る任意の未反応のオルソ置換ジフェノール、及び前記オルソ置換ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、60重量パーセントを超え、80重量パーセント未満の前記オルソ置換ジフェノール由来のn=0のジエポキシド化合物を含み;前記液状エポキシ樹脂組成物は、周囲条件(例えば、20℃及び大気圧)で液体である、液状エポキシ組成物。
[2]
前記組成物が、存在し得る任意の未反応のオルソ置換ジフェノール、及び前記オルソ置換ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、存在する場合は75重量パーセント未満の前記オルソ置換ジフェノール由来のn=0のジエポキシドを含む、[1]に記載の組成物。
[3]
前記組成物が、存在し得る任意の未反応のオルソ置換ジフェノール、及び前記オルソ置換ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、少なくとも10重量パーセントの前記オルソ置換ジフェノール由来のn=1のジエポキシドを含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]
前記組成物が、存在し得る任意の未反応のオルソ置換ジフェノール、及び前記オルソ置換ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、10~約20重量パーセントの前記オルソ置換ジフェノール由来のn=1のジエポキシド樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
前記エピハロヒドリンが、エピクロロヒドリンを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
ヒドロキシル基を有する前記オルソ置換ジフェノールの各芳香環が、オルソ位においてメチル基で置換されている、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
結合したヒドロキシル基を有する前記オルソ置換ジフェノールの各芳香環が、2つのオルソ位においてメチル基で置換されている、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]
前記オルソ置換ジフェノールが、ビスフェノールを含む、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
結合したヒドロキシル基を有する前記ビスフェノールの2つの芳香環が、-CH2-結合によって互いに結合している、[8]に記載の組成物。
[10]
前記オルソ置換ジフェノールが、テトラメチルビスフェノールFを含む、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]
前記オルソ置換ジフェノール由来のジエポキシド樹脂は、ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する任意の化合物、及び存在し得る任意の未反応のジフェノールの総重量の少なくとも85重量パーセントを構成する、[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]
ポリエーテルポリマーの形成に使用するのに好適な液状エポキシ樹脂組成物であって、前記組成物が、
(1)BPA、BPF、及びBPS(これらのエポキシドを含む)を実質的に含まず、
(2)エピクロロヒドリン及びテトラメチルビスフェノールF(「TMBPF」)を含む反応物質由来であり、
(3)TMBPF由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する化合物、及び存在し得る任意の未反応のTMBPFの総重量を基準として、少なくとも85重量パーセントのn=0及びn=1のTMBPF含有ジエポキシド樹脂を含み、
(4)TMBPF由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する化合物、及び存在し得る任意の未反応のTMBPFの総重量を基準として、80重量パーセント未満のn=0のTMBPF含有ジエポキシド樹脂を含み、
(5)存在する場合は5重量パーセント未満のTMBPF含有モノエポキシド樹脂を含む、液状エポキシ樹脂組成物。
[13]
前記組成物が、TMBPF由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する化合物、及び存在し得る任意の未反応のTMBPFの総重量を基準として、存在する場合は60重量パーセントを超え、75重量パーセント未満のテトラメチルビスフェノールF由来のn=0のジエポキシド化合物を含む、[12]に記載の組成物。
[14]
TMBPF含有ジエポキシド樹脂が、ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む存在する化合物、及び存在し得る任意の未反応のジフェノールの総重量の少なくとも85重量パーセントを構成する、[12]又は[13]に記載の組成物。
[15]
前記組成物が、存在する場合は1重量パーセント未満の加水分解性塩素化合物を含有する、[1]~[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]
前記組成物が、存在する場合は1重量パーセント未満の水を含有する、[1]~[15]のいずれかに記載の組成物。
[17]
前記組成物が、存在する場合は50ppm未満の未反応のエピクロロヒドリンを含有する、[1]~[16]のいずれかに記載の組成物。
[18]
前記組成物が、存在する場合は1000ppm未満の未反応のジフェノールを含有する、[1]~[17]のいずれかに記載の組成物。
[19]
前記組成物が、存在する場合は5重量パーセント未満のモノエポキシド化合物を含有する、[1]~[18]のいずれかに記載の組成物。
[20]
前記組成物が、存在し得る任意の未反応のオルソ置換ジフェノール、及び前記オルソ置換ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、存在する場合は10重量パーセント未満の前記オルソ置換ジフェノール由来のn≧2のジエポキシド樹脂を含有する、[1]~[19]のいずれかに記載の組成物。
[21]
前記組成物が、約20℃、大気圧で、少なくとも1カ月間貯蔵安定性である、[1]~[20]のいずれかに記載の組成物。
[22]
前記組成物が、約20℃、大気圧で、少なくとも6カ月間貯蔵安定性である、[1]~[21]のいずれかに記載の組成物。
[23]
前記組成物が、52℃で、2000~4000cpsの粘度を有する、[1]~[22]のいずれかに記載の組成物。
[24]
前記組成物が、
存在する場合は0.05重量パーセント未満の加水分解性塩素化合物と、
存在する場合は0.05重量パーセント未満の水と、
存在する場合は10ppm未満の未反応のエピクロロヒドリンと、
存在する場合は1000ppm未満の未反応のジフェノールと、
存在する場合は3重量パーセント未満のモノエポキシド化合物と、
存在し得る任意の未反応のオルソ置換ジフェノール、及び前記オルソ置換ジフェノール由来の少なくとも1つの構造単位を含む任意の化合物の総重量を基準として、存在する場合は5重量パーセント未満の前記オルソ置換ジフェノール由来のn≧2のジエポキシド樹脂と、を含有し、
指定されない限り、前記示された濃度が、前記液状エポキシ樹脂組成物の総重量を基準としている、[1]~[23]のいずれかに記載の組成物。
[25]
[1]~[24]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物由来の芳香族ポリエーテル
ポリマーであって、前記ポリエーテルポリマーが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)を実質的に含まない、芳香族ポリエーテルポリマー。
[26]
前記ポリエーテルポリマーが、[1]~[24]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物、及びジフェノールを含む構成材料の反応生成物であり、前記ポリエーテルポリマーが、少なくとも2000の数平均分子量、及び少なくとも60℃のTgを有する、[25]に記載の芳香族ポリエーテルポリマー。
[27]
前記ポリエーテルポリマーが、[1]~[24]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物、及びジフェノールを含む構成材料の反応生成物であり、前記ポリエーテルポリマーが、少なくとも4000の数平均分子量、及び少なくとも70℃のTgを有する、[25]に記載の芳香族ポリエーテルポリマー。
[28]
少なくとも50重量パーセントの前記ポリエーテルポリマーが、前記液状エポキシ樹脂組成物由来の構造単位を構成する、[25]~[27]のいずれかに記載の芳香族ポリエーテルポリマー。
[29]
オルソ置換ジフェノールとエピクロロヒドリンとを、約7:1~約1:1、又は約6:1~約1.01:1、又は約5:1~約3:1のモル比で反応させることを含むプロセスを使用して、[1]~[25]のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物を形成するための方法。
[30]
前記液状樹脂組成物のエポキシ1当量当たりの最終重量が、前記オルソ置換ジフェノール由来の前記n=0のジエポキシド樹脂のエポキシ1当量当たりの理論上の重量の約10%~約20%の範囲内である、[1]~[29]のいずれかに記載の組成物、ポリマー、又は方法。
[31]
TMBPFが、使用される唯一のジフェノールであり、前記液状エポキシ樹脂組成物のエポキシド1当量当たりの重量が、約200~約220グラム/エポキシ1当量である、[10]~[14]に記載の組成物。
[32]
前記液状エポキシ樹脂組成物が、前記液状エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として、少なくとも90重量%の前記オルソ置換ジフェノール由来のジエポキシド樹脂を含む、[1~[31]のいずれかに記載の組成物、ポリマー、又は方法。
[33]
本明細書で記載される流動点試験を使用して、周囲条件下で試験した際、前記液状エポキシ樹脂組成物が、180分以内、120分以内、60分以内、30分以内、15分以内、又は10分以内にビーカーから流出し始める、[1]~[32]のいずれかに記載の組成物、ポリマー、又は方法。